説明

手元切換手段

【課題】 チャイルドロックの設定・解除を簡単に行なうと共に、チャイルドロックの設定/解除状態を明確に識別することができ、しかも不用意にチャイルドロックが設定/解除されない手元切換手段を提供する。
【解決手段】 チャイルドロックスイッチ11を、オン状態とオフ状態で異なる位置に保持される操作軸31を備えたプッシュロックスイッチで構成する。これにより、押動部33の露出面46の位置を確認するだけで、チャイルドロックの設定/解除状態を明確に識別できる。また、操作軸31に防水ゴムシート28を固着すると共に、操作軸31と連動する防水ゴムシート28の押動部33に、筐体1の表面よりも突出しない露出面46を形成し、露出面46を直接押すだけで、チャイルドロックの設定・解除を簡単に行なえるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば介護用ベッドなどの福祉用器具に利用される手元切換手段に関わり、特にチャイルドロック切換部を含む手元切換手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
介護用ベッドなどの福祉用器具には、電動で高さを調節したり、上半身を起き上がらせたりするようにしたものなどがあるが、そのほとんどが手元で操作する手元切換手段としての手元スイッチ(いわゆるリモコン)が使用されている。
【0003】
介護を必要とする人は、身体の自由が利かないので、このような手元スイッチの操作キーが不用意に押されたり、落下して操作キーがオンするような状態になり、福祉用器具の可動部分が動き出して、患者が危険を蒙ることがある。このような過誤があっても、福祉用器具が動作しないように、操作キーの誤動作を防止するためのチャイルドロックスイッチ(チャイルドロック切換部)が装備されている。
【0004】
チャイルドロックスイッチは、一般的には、子供や痴呆症患者などが間違って不用意に操作できないような構造となっており、例えば、専用の工具を差込み口に装着して回動させたり、手元スイッチの裏側にある付属キーを利用したり、複数個のスイッチを所定時間押し続けるなどして、チャイルドロックの開閉(設定/解除)を意識的に操作することが要求されるようになっている。
【0005】
また、福祉用器具を使う環境では、手元スイッチが水に濡れることも多く、スイッチは防水を行うことが要求される。防水式のスイッチとしては、例えば図8および図9に示すように、使用者が直接操作する押動部たる押しボタン51と、スイッチ52の操作軸53との間に、防水のためにゴムなどの可撓性材料54を挟むことで、押しボタン51の突出部55を挿通する外郭部材56の孔57からカバー部材58の孔59を経て、スイッチ52やこのスイッチ52を実装するプリント基板60などの外郭部材56の内部に水が入らないようにしてあり、押しボタン51の突出部55を押すと、可撓性材料54が撓んで下の操作軸53が動くようになっているものがある(例えば、特許文献1を参照)。なお、図8はスイッチのオフ状態、図9はオン状態を表している。このような防水式の手元スイッチは、一般にスイッチ52のオン/オフ時における操作軸53のストロークが小さいので、オン/オフの状態が分かり難く、オンかオフの状態を示すために、LED(発光ダイオード)などの表示装置を設けていることが多い。
【特許文献1】特開平8−129925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の専用の工具や付属のキーを利用したチャイルドロックスイッチは、チャイルドロックの設定/解除を行なうに際し、その都度工具やキーが必要になって面倒である。また、表示装置などを別に設けない限り、チャイルドロックされたか否かを判断することが難しいといった欠点がある。
【0007】
また、複数個のスイッチを特定の時間押し続けるものでは、手元スイッチに物などが落下した時に、当該複数個のスイッチに接触して誤動作の虞れがある。さらに、この場合も表示装置などを別に設けない限り、チャイルドロックされたか否かを判断することが難しい。
【0008】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、特別な道具を用いなくても、チャイルドロックの設定・解除を簡単に行なうことができると共に、外郭部材内部に対する防水性を維持しつつも、チャイルドロックの設定/解除状態を明確に識別することができ、しかも不用意にチャイルドロックが設定/解除されない手元切換手段を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1における手元切換手段では、軸部と連動する部分に露出部が形成されているので、特別な道具を用いなくても、この露出部を直接押すことによって、チャイルドロックの設定・解除を簡単に行なうことができる。また、チャイルドロック切換部の軸部は、オン状態とオフ状態で異なる位置に保持されるので、露出部の位置を確認するだけで、チャイルドロックの設定/解除状態を明確に識別できる。しかも、軸部のオン/オフ位置に拘らず、露出部は外郭部材よりも突出しないため、手元切換手段に物などが落下した場合などでも、不用意にチャイルドロックが設定/解除されない。さらに、軸部に防水部を固着できるように、防水部の形状を変更するだけで、外郭部材内部の防水性を安価に実現できる。
【0010】
請求項2における手元切換手段では、防水部のシート本体と押動部を同じ肉厚で直接繋げると、露出部を押し込んだときに、押動部の周辺部分が変形しにくくなって、軸部を動作させるのに大きな力が必要になるが、押動部とシート本体との間にゴム強度を意図的に弱くするような薄肉状の可動部が介在するため、必要以上に大きな力をかけずに、軸部を動作させることが可能になる。したがって、チャイルドロックの設定/解除を無理なく確実に行なうことができ、信頼性の高いチャイルドロック構造を提供できる。
【0011】
請求項3における手元切換手段では、防水部の押動部を別の材料が覆っているため、先端の尖ったもので押動部を押し込んでも、押動部が切れたり、押動部の周辺にある防水部の内面を突き刺すことはない。さらに、押動部が斜めに押し込まれて、外郭部材の内壁に押動部を覆う材料が当接しても、当該材料がそこで摩擦により引っ掛かることはなく、防水部の傷付きを防止できることと相俟って、信頼性の高いチャイルドロック構造を実現できる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の手元切換手段によれば、特別な道具を用いなくても、チャイルドロックの設定・解除を簡単に行なうことができると共に、外郭部材内部に対する防水性を維持しつつも、チャイルドロックの設定/解除状態を明確に識別することができ、しかも不用意にチャイルドロックが設定/解除されない構造を実現できる。
【0013】
請求項2の手元切換手段によれば、チャイルドロックの設定/解除を無理なく確実に行なうことができ、信頼性の高いチャイルドロック構造を提供できる。
【0014】
請求項3の手元切換手段によれば、防水部の傷付きを防止すると共に、防水部の押動部が外郭部材の内壁に摩擦で引っ掛かる虞れを防止し、信頼性の高いチャイルドロック構造を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明における好ましい実施例について、添付図面を参照しながら説明する。なお、各実施例に共通する部分には共通の符号を付し、共通する箇所の説明は重複するため省略する。
【実施例1】
【0016】
図1〜図5は、本発明の第1実施例における手元スイッチを示したものである。ここにある手元スイッチは、病院などにおいて、福祉用器具である介護ベッドを手元で遠隔操作するために設けられている。手元スイッチの全体構成を示した図1において、1は手元スイッチの外郭部材となる例えば樹脂製の筺体で、この筺体1は有底凹状に形成されたケース2と、このケース2の上面開口部を覆うカバー3とにより構成され、ケース2の上方には介護ベッドなどの手摺に掛けることができるように、柔軟性の材料で構成されたフック4が取り付けられている。また、筐体1の下側面から引き出された制御ケーブル5の先端が、図示しない介護ベッドの制御装置またはモータなどのアクチュエータなどに接続されている。
【0017】
前記カバー3には、その正面から凹状に凹んだ操作部6が形成され、当該操作部6に複数個のスイッチ穴7が設けられる。また、これらの各スイッチ穴7に対応して、複数の自動復帰型の操作スイッチ8が設置されている。前記操作部6の凹みは、筺体1が落下したり、筐体1の正面に物が不用意に置かれても、操作スイッチ8が入り難くするためのものである。また操作スイッチ8は、例えば介護ベッドの背側,腰側,脚側の各フレームを起伏させる指令信号を、通信線である制御ケーブル5から介護ベッドに与えるものである。
【0018】
11は、前記操作スイッチ8の押動操作を有効若しくは無効に切替える誤動作防止用のチャイルドロックスイッチである。12は操作部6に設けられた表示用の発光素子たる表示ランプであり、操作スイッチ8の操作状況に応じて、当該表示ランプ12が点灯または点滅するようになっている。ここでのチャイルドロックスイッチ11は、オン状態とオフ状態で異なる位置に保持される後述の操作軸31を備えたプッシュロックスイッチで構成される。
【0019】
次に、筐体1内部の構成を図2〜図5に基づき説明する。前記操作スイッチ8は、軸方向に可動する操作軸21を備えたスイッチ機構部22と、前記操作軸21と共に可動し、前記スイッチ穴7を挿通する操作キー23とにより構成される。また、スイッチ機構部22の底部より突出する導電性のリード24は、筺体1内のケース2とカバー3との間にねじ25を介して設けられた基板26に半田付けで固定され、操作スイッチ8の操作軸21がケース2のスイッチ穴7に位置するように組み立てられる。操作部6の表面すなわち内底面には操作銘板27が固着されており、ここに各操作スイッチ8の機能説明が記されている。前記操作軸21を覆う操作キー23の表面は、操作銘板27の表面よりも外方に突出している。
【0020】
一方、操作スイッチ8とは別個に設けられるチャイルドロックスイッチ11は、操作性を損なわないように操作部6の近傍に配置される。当該チャイルドロックスイッチ11は、軸方向に可動する操作軸31を備えたスイッチ機構部32と、前記操作軸31と共に可動し、カバー3に形成したスイッチ穴37を挿通する押動部33とにより構成される。また、スイッチ機構部32の底部より突出する導電性のリード34は、前記基板26に半田付けで固定され、チャイルドロックスイッチ11の操作軸31がケース2のスイッチ穴37に位置するように組み立てられる。
【0021】
チャイルドロックスイッチ11の押動部33と、前記操作スイッチ8の各操作キー23は、いずれもケース2とカバー3の外周嵌合部を覆う防水ゴムシート28の一部として、当該防水ゴムシート28と一体的に形成される。防水ゴムシート28は、前記筺体1内に配置された基板26の全体を覆う比較的柔軟性に富んだ薄板シート状のシート本体35と、前記操作軸21に対応する位置にあって、シート本体35の表面側に形成した凸形状の操作キー23と、前記操作軸31に対応する位置にあって、シート本体35の表面側に形成した凸形状の押動部33と、制御ケーブル5の基端部5Aを筺体1内の基板24に導いて接続するための貫通部36とを備えて構成され、ケース2とカバー3との間に挟持されて筐体1内部の気密を保っている。そして、この防水ゴムシート28によって、ケース2とカバー3との隙間およびスイッチ穴7,37などから、スイッチ機構部22や基板26への異物の侵入を防いでいる。また、表示ランプ12の発光を確認しやすいように、防水ゴムシート28の表示ランプ12に対向した部分は、シート本体35よりも肉厚が薄く形成されている。
【0022】
特に図4および図5を参照して、チャイルドロックスイッチ11周辺の構成をさらに詳しく説明すると、操作軸31の途中には当該操作軸31の全周にわたって溝部41が形成される。これに対応して、押動部33の内側面に形成した操作軸31を挿入する凹部42の内壁面には、溝部41に当接し嵌合する突起43が設けられ、操作軸31の先端部に押動部33が確実に装着される。また、操作軸31の近傍周辺に位置して、押動部33の基端部とシート本体35とを繋ぐ防水ゴムシート28の可動部44が、シート本体35よりも薄肉状で、且つ波形(蛇腹)状に形成される。
【0023】
一方、チャイルドロックスイッチ11の操作軸天面をなす押動部33の露出面46は、操作軸31の位置に拘らず、スイッチ穴37周囲のカバー3の表面(外面)と同じ高さか、或いは幾分落ち込んだ位置にある。また、この押動部33の露出面46は、ボールペンなどの先端が尖ったものが操作軸31の中心を押せるように、その中央が窪んだ漏斗状に形成されている。さらに、押動部33を強く押し込んだときに、当該押動部33がスイッチ穴37から離脱しないように、カバー3の内側面には、操作軸31ひいては押動部33の外周を囲むようにしてスイッチ穴37を延設するガイドリブ48が一体的に形成される。
【0024】
次に、上記構成についてその作用を説明する。通常の手元スイッチとして介護ベッドを遠隔操作する際には、操作銘板27で目視確認しながら、操作部6の表面に露出する操作スイッチ8の操作キー23を押動する。ここで、どの操作キー23を押すと、介護ベッドのどの部分が動作するのかについては、本発明の主旨と関連性が薄いので説明を省略する。
【0025】
チャイルドロックスイッチ11を操作して、各操作スイッチ8の操作を無効にするチャイルドロック状態に移行させるには、前記凹状に形成された押動部33の露出面46を、例えばボールペンなどの先端の尖った棒体で押し込む。このときの押動力が操作軸31に伝われば、可動部44が変形して操作軸31がスイッチ機構部22側に収納され、チャイルドロックスイッチ11がオフからオン状態に切り替わる。また、操作軸31の溝部41に押動部33の突起43が嵌合しているので、この操作軸31と押動部33との固着力が作用して、凹状の露出面46を含む押動部33全体が、操作軸31と共にスイッチ穴37に沿って筐体1の内部側に押し込まれる。このとき、可動部44の動的な弾性力に対して、操作軸31と押動部33との固着力を大きくすれば、露出面46を含む押動部33全体が変形することなく、操作軸31と同期して無理なく連動させることが可能になる。
【0026】
また、押動部33と操作軸31を押し込んだ状態から、押す力を取り除いても、チャイルドロックスイッチ11はいわゆるプッシュロックスイッチとしての機能を備えているため、チャイルドロックスイッチ11はオン状態を保ち続け、操作軸31もスイッチ機構部22側に収納されたままとなる。したがって、押動部33の露出面46はカバー3の外面よりも奥にある凹んだ状態で維持され、チャイルドロックスイッチ11が機能していることを目視で直ちに確認できる。図5は、チャイルドロック状態における各部の配置を表しており、この状態では、操作キー23の全ての機能が停止する。
【0027】
さらに、操作軸31がスイッチ機構部22に収納された状態でも、ガイドリブ48が可動部33の先端側外周面を囲んでいるので、可動部33がカバー3の内部に入り込むのを防止できる。
【0028】
図5に示すチャイルドロック状態から、押動部33の露出面46を再度押すと、スイッチ機構部22における操作軸31のロック状態が解除されて、操作軸31と押動部33は共にカバー3の表面側に移動する。これにより、チャイルドロックスイッチ11はオンからオフ状態に切り替わり、操作キー23は機能回復して動作可能になる。図4は、このときのチャイルドロック解除状態を示しているが、押動部33の露出面46がカバー3の表面に位置しており、チャイルドロックスイッチ11の機能が停止していることを目視で直ちに確認できる。また、露出面46はカバー3の表面より突出していないため、手元スイッチに物などが落下した場合などでも、不用意にチャイルドロックスイッチ11がオンしない。
【0029】
以上のように本実施例では、誤動作防止用のチャイルドロック切換部たるチャイルドロックスイッチ11を備えた手元スイッチとしての手元切換手段において、前記チャイルドロックスイッチ11は、オン状態とオフ状態で異なる位置に保持される軸部としての操作軸31を備えたプッシュロックスイッチ(プッシュロック切換部)で構成され、操作軸31に防水部たる防水ゴムシート28の押動部33を取付けると共に、操作軸31と連動する部分である押動部33に、外郭部材である筐体1の表面よりも突出しない露出部としての露出面46を形成している。
【0030】
この場合、操作軸31と連動する防水ゴムシート28の押動部33に露出面46が形成されているので、特別な道具を用いなくても、この露出面46を直接押すことによって、チャイルドロックの設定・解除を簡単に行なうことができる。また、チャイルドロックスイッチ11の操作軸31は、オン状態とオフ状態で異なる位置に保持されるので、押動部33の露出面46の位置を確認するだけで、チャイルドロックの設定/解除状態を明確に識別できる。しかも、操作軸31のオン/オフ位置に拘らず、押動部33の露出面46は筐体1の表面よりも外方に突出しないため、手元スイッチに物などが落下した場合などでも、不用意にチャイルドロックが設定/解除されない。さらに、操作軸31に防水ゴムシート28を固着できるように、防水ゴムシート28の形状を変更するだけで、筺体1内部の防水性を安価に実現できる。
【0031】
また、操作軸31の近傍に位置して、押動部33とシート本体35とを繋ぐ薄肉状の可動部44を防水ゴムシート28に設けるのが好ましい。つまり、防水ゴムシート28のシート本体35と押動部33を同じ肉厚で直接繋げると、押動部33の露出面46を押し込んだときに、押動部33の周辺部分が変形しにくくなって、操作軸31を動作させるのに大きな力が必要になるが、押動部33とシート本体35との間にゴム強度を意図的に弱くする薄肉状の可動部46が介在するため、必要以上に大きな力をかけずに、操作軸31を動作させることが可能になる。したがって、チャイルドロックの設定/解除を無理なく確実に行なうことができ、信頼性の高いチャイルドロック構造を提供できる。
【実施例2】
【0032】
図6および図7は、本発明の第2実施例を示すもので、チャイルドロックスイッチ11周辺を除いては、前記第1実施例で示した手元スイッチとその構成が共通している。同図において、本実施例では、前記チャイルドロックスイッチ11の操作軸31に固着する防水ゴムシート28の押動部33が、チャイルドロックスイッチ11のオフ状態においても、スイッチ穴37周囲のカバー3の表面(外面)よりも幾らか落ち込んだ位置にあり、操作軸31ひいては押動部33の周囲を覆う樹脂製のスイッチカバー51が押動部33に固着される。また、チャイルドロックスイッチ11の操作軸天面をなすスイッチカバー51の露出面52は、第1実施例における押動部33の露出面46と同様に、その中央が窪んだ漏斗状に形成されている。
【0033】
押動部33およびスイッチカバー51を挿通するスイッチ穴37は、カバー3の表面側縁部に位置して面取り部53を形成している。この面取り部53は、スイッチカバー51の露出面52周縁と、スイッチ穴37の縁部との引っ掛かりを防止するもので、ここではC状に面取り形成されているが、R状であってもよい。スイッチカバー51の露出面52は、チャイルドロックスイッチ11がオフ状態の場合に、スイッチ穴37周囲のカバー3の表面と同じ高さでもよいが、図6に示すように、スイッチ穴37周囲のカバー3の表面よりも幾分落ち込んだ位置にあって、前記面取り部53の基端にほぼ一致させるのが好ましい。さらに、カバー3の内側面には、操作軸31の外周を囲むようにしてスイッチ穴37を延設するガイドリブ48が一体的に形成されているが、スイッチカバー51がスイッチ穴37から離脱するのを確実に防止するために、このガイドリブ48の先端開口側を取り囲むように、スイッチカバー51の基端部にはフランジ部としての折返し部55が設けられている。
【0034】
次に、上記構成における作用を説明すると、チャイルドロックスイッチ11を操作する際に、押動部33ではなく、スイッチ穴37を通して直接露出しているスイッチカバー51の露出面52を押し込む以外は、第1実施例における手元スイッチとその動作は共通している。この第2実施例では、図7に示すチャイルドロックスイッチ11をオンにした状態で、スイッチカバー51の露出面52が面取り部53の基端よりも奥にある凹んだ状態で維持されるため、チャイルドロックスイッチ11が機能していることを目視で直ちに確認できる。また、図6に示すチャイルドロックスイッチ11をオフにした状態では、スイッチカバー51の露出面52が面取り部53の基端と略同一面に位置しており、チャイルドロックスイッチ11の機能が停止していることを目視で直ちに確認できる。
【0035】
さらに前記第1実施例では、摩擦係数が大きい防水ゴムシート28の押動部33が直接カバー3の内壁であるスイッチ穴37に触れていたので、チャイルドロックスイッチ11をオン状態からオフ状態に戻すときに、操作軸31が動き難いことが懸念されるが、本実施例では、スイッチカバー51の材料を比較的自由に選択できるので、例えばフッ素樹脂などの防水ゴムシート28よりも摩擦係数が小さな材料でスイッチカバー51を構成することにより、スイッチカバー51とカバー3との摩擦を減らして、操作軸31を滑らかに動くようにすることができる。
【0036】
さらに本実施例では、操作軸31を出し入れする際に、操作軸31がスイッチ機構部32に対し若干ぶれるようなことがあっても、ガイドリブ48の先端部がスイッチカバー51の折返し部55に接触して、それ以上のぶれを防ぐので、ガイドリブ48を設けたことと相俟って、カバー3の内部へのスイッチカバー51の入り込みを確実に防止できる。
【0037】
以上のように本実施例では、誤動作防止用のチャイルドロックスイッチ11を備えた手元スイッチにおいて、前記チャイルドロックスイッチ11は、オン状態とオフ状態で異なる位置に保持される操作軸31を備えたプッシュロックスイッチで構成され、操作軸31に防水ゴムシート28の押動部33を固着すると共に、操作軸31と連動する部分であるスイッチカバー51に、外郭部材である筐体1の表面よりも突出しない露出面52を形成している。
【0038】
この場合、操作軸31と連動するスイッチカバー51に露出面52が形成されているので、特別な道具を用いなくても、この露出面52を直接押すことによって、チャイルドロックの設定・解除を簡単に行なうことができる。また、チャイルドロックスイッチ11の操作軸31は、オン状態とオフ状態で異なる位置に保持されるので、スイッチカバー51の露出面52の位置を確認するだけで、チャイルドロックの設定/解除状態を明確に識別できる。しかも、操作軸31のオン/オフ位置に拘らず、スイッチカバー51の露出面52は筐体1の表面よりも外方に突出しないため、手元スイッチに物などが落下した場合などでも、不用意にチャイルドロックが設定/解除されない。さらに、操作軸31に防水ゴムシート28を固着できるように、防水ゴムシート28の形状を変更するだけで、筺体1内部の防水性を安価に実現できる。
【0039】
また、操作軸31の近傍に位置して、押動部33とシート本体35とを繋ぐ薄肉状の可動部44を防水ゴムシート28に設けているので、必要以上に大きな力をかけずに、操作軸31を動作させることが可能になる。
【0040】
しかも本実施例では、防水ゴムシート28と摩擦係数が異なる別の材料(スイッチカバー51)で押動部33を覆っているので、先端の尖ったもので押動部33を押し込んでも、押動部33が切れたり、押動部33の周辺にある防水ゴムシート28の内面を突き刺すことはない。さらに、押動部33が斜めに押し込まれて筐体1の内壁であるスイッチ穴37にスイッチカバー51が当接しても、当該スイッチカバー51がそこで摩擦により引っ掛かることはなく、防水ゴムシート28の傷付きを防止できることと相俟って、信頼性の高いチャイルドロック構造を実現できる。
【0041】
なお、本発明は上記各実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。実施例の形態では、介護ベッドの手元スイッチとして本発明を説明したが、電動車椅子や入浴用の器具などの手元スイッチにも適用できることは勿論である。また、チャイルドロックスイッチ11のオン/オフと、チャイルドロックの設定/解除との関係は、実施例と逆であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施例における手元スイッチの全体斜視図である。
【図2】同上、カバーを外した状態の手元スイッチの平面図である。
【図3】同上、手元スイッチの縦断面図である。
【図4】同上、チャイルドロックスイッチがオフ状態のときの要部の縦断面図である。
【図5】同上、チャイルドロックスイッチがオン状態のときの要部の縦断面図である。
【図6】本発明の第2実施例における手元スイッチに関し、チャイルドロックスイッチがオフ状態のときの要部の縦断面図である。
【図7】同上、チャイルドロックスイッチがオン状態のときの要部の縦断面図である。手元スイッチの要部縦断面図である。
【図8】従来例におけるチャイルドロックスイッチのオフ状態における要部断面図である。
【図9】同上、チャイルドロックスイッチのオン状態における要部断面図である。
【符号の説明】
【0043】
11 チャイルドロックスイッチ(チャイルドロック切換部)
28 防水ゴムシート(防水部)
31 操作軸(軸部)
33 押動部
44 可動部
46,52 露出面(露出部)
51 スイッチシート(摩擦係数が異なる材料)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャイルドロック切換部を備えた手元切換手段において、前記チャイルドロック切換部は、軸部を備えたプッシュロック切換部で構成され、前記軸に防水部を取付けると共に、前記軸部と連動する部分に外郭部材よりも突出しない露出部を形成したことを特徴とする手元切換手段。
【請求項2】
前記軸部の近傍に位置する可動部を前記防水部に設けたことを特徴とする請求項1記載の手元切換手段。
【請求項3】
前記防水部と摩擦係数が異なる材料で、前記防水部の押動部を覆ったことを特徴とする請求項1または2記載の手元切換手段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−54062(P2006−54062A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−232722(P2004−232722)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【出願人】(390010168)東芝ホームテクノ株式会社 (292)
【Fターム(参考)】