説明

把持装置およびその制御方法

【課題】複雑な装置や大掛りな装置を必要とせずに、把持対象物を安定して把持し、容易に離すことができるマニピュレータを提供する。
【解決手段】マニピュレータに搭載される吸着離脱補助機構は、把持対象物の表面に向かって突出した外周部およびその外周部に囲まれた窪み部34を有して弾性変形可能な吸盤31と、吸盤31の背面35と指部材21の間に配置されて、指部材21と把持対象物とが互いに押し付けられたときに吸盤31の背面35を押す押付け力伝達部32と、吸盤31の外周部と指部材21の間に配置されて、指部材21と把持対象物とが互いに引き離されるときに吸盤31の外周部を指部材21側に引っ張る引張力伝達部材33とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持対象物を把持する把持装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場内で主として用いられる産業用マニピュレータなどは、予め決められた作業を行い、扱う把持対象物も予め決まっていることが多い。したがって、これら産業用マニピュレータの手先に取り付けられるエンドエフェクタは、多くの場合、把持対象物の形状に合わせて設計された専用のエンドエフェクタである。よって、安定に把持できる把持対象物は、設計時に想定される限られた種類のものである。
【0003】
また、産業用マニピュレータには、対象物を把持するものではなく、マニピュレータに吸着装置が取り付けられて、対象物を吸着するなどの、特殊な形状および機能を持つ専用のエンドエフェクタを備えたマニピュレータも存在する。
【0004】
これに対して、近年、人間のそばを動きまわり、人間のそばでマニピュレータなどを動作させて、人間に各種サービスを提供することで、人々の生活を支援することを目的とした、人間共存ロボットが開発されてきている。このような人間共存ロボットのマニピュレータは、予め対象とする作業が決まっておらず、予め把持対象も決まっていない。したがって、人間共存ロボットなどは、様々な把持対象物を安定して把持し、様々な作業を行える、汎用性の高いマニピュレータを必要とする。
【0005】
このような汎用マニピュレータは、例えば、平行する2本の指を開閉して対象物体を把持する平行開閉2指ハンドなどがある。また、任意の形状の物体を安定に把持することができるエンドエフェクタは、多関節の指部を有し、それらの関節を動作させて、把持対象物の表面形状に倣って、対象物を把持することができる多関節ロボットハンドなどがある。
【0006】
平行開閉2指ハンドや多関節ロボットハンドには、把持対象物を安定に把持することを目的として、把持時のエンドエフェクタの指部表面と把持対象物体表面の接触面積を増大させるため、エンドエフェクタの指部表面にゴムなどの柔軟部材を貼り付けたものなどがある。
【0007】
しかし、エンドエフェクタの指部表面と把持対象物体表面の接触面積は限られているため、把持力が把持対象物に十分に伝達されない場合もある。この場合、把持対象物がエンドエフェクタからすべり落ちる等の問題が発生する。
【0008】
また、エンドエフェクタの指部表面にゴムなどの柔軟体を貼り付けたものであっても、エンドエフェクタが発生する把持力が不足すると、把持対象物のすべりを十分に押さえることが困難になる場合がある。
【特許文献1】特開2006−292159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の問題を解決する方法としては、エンドエフェクタに吸着装置を設け、対象物を吸着して把持する産業用エンドエフェクタなどがある。この方法によれば、エンドエフェクタが対象物に密着するために把持対象物がエンドエフェクタからすべり落ちることを避けることができる。
【0010】
しかし、この場合には、エンドエフェクタに接続される吸引および吸着のための装置が複雑かつ大掛りになる。したがって、このようなエンドエフェクタは、人間共存ロボットなどの、一般の家庭や施設内などで用いられることが想定されるロボットに搭載するエンドエフェクタには、不向きである。
【0011】
この問題を解決するために、マニピュレータに搭載するエンドエフェクタに吸盤を取り付ける例もある。しかし、把持時に滑り落ちる等の問題に対しては有効であるが、把持対象物を離すときには、把持対象物が離れにくいなどの問題がある。なお、吸盤を容易に離脱させる機構の例としては、特許文献1に開示されているように、剥離ばねを設けた例もある。
【0012】
人間共存ロボットなどに搭載するマニピュレータは、把持対象物を離そうとする動作とともに、吸盤の吸着が容易に解除される必要がある。したがって、上述の吸盤の例では、吸着を解除するために、把持対象物を離す動作とは異なる動作が必要となるため、マニピュレータへの適用は難しい。
【0013】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、複雑な装置や大掛りな装置を必要とせずに、把持対象物を安定して把持し、容易に離すことができる把持装置およびその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため本発明に係る把持装置は、把持対象物を把持可能な少なくとも対向する2つの指部材と、前記指部材に設けられ、前記把持対象物の表面に向かって突出した外周部およびその外周部に囲まれた窪み部を有して弾性変形可能な吸盤と、前記吸盤の窪み部の背面側と前記指部材の間に配置されて、前記指部材と把持対象物とが互いに押し付けられたときに前記吸盤の窪み部の背面側を押す押付け力伝達部と、前記吸盤の外周部と前記指部材の間に配置されて、前記指部材と把持対象物とが互いに引き離されるときに前記吸盤の外周部を前記指部材側に引っ張る引張力伝達部材と、を有し、前記引張り力伝達部材の少なくとも一部が可撓性を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る把持装置の制御方法は、把持対象物を把持可能な少なくとも2つが対向して配置される指部材と、前記指部材に設けられ、前記把持対象物の表面に向かって突出した外周部およびその外周部に囲まれた窪み部を有して弾性変形可能な吸盤と、前記吸盤の窪み部の背面と前記把持面とを接続する押付け力伝達部と、前記押付け力伝達部の外周側で前記背面上に配置される引張力伝達部材と、を有する吸着離脱補助機構と、を具備する把持装置の制御方法において、前記指部材が前記把持対象物に向かって閉じる方向に駆動し、前記押付け力伝達部が前記吸盤を前記把持対象物に押付け力を作用させて、前記引張力伝達部材を撓ませる吸盤押付け工程と、前記押付け力伝達部による押付け力を計測する押付け力計測工程と、前記押付け力計測工程で計測される押付け力に基づいて、前記吸盤が前記把持対象物に押し付けられていることを判定する押付け状態判定工程と、前記押付け状態判定工程で押し付けられていると判定された後に、前記引張力伝達部材が撓んだ状態を維持する範囲内で前記指部材を開く方向に駆動して、その後に停止させる微開駆動工程と、前記指部材を開く方向に駆動して、前記引張力伝達部材に張力を作用させて前記窪み部の背面側の外周部を引っ張って、前記吸盤の吸着を解除して、前記指部材を離脱させる離脱工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複雑な装置や大掛りな装置を必要とせずに、把持対象物を安定して把持し、容易に離すことが可能な把持装置およびその制御方法を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明に係るマニピュレータの実施形態について説明する。なお、同一部分または類似部分には、同一符号を付して、重複説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明に係るマニピュレータの一実施形態を示す正面図であり、図2は、図1のエンドエフェクタ20(把持装置)を示す拡大正面図である。このマニピュレータは、ベース部材11、上腕部13、前腕部15、エンドエフェクタ20などにより構成されている。さらに、ベース部材11および上腕部13を連結するアーム肩関節部12、上腕部13および前腕部15を連結するアーム肘関節部14、前腕部15およびエンドエフェクタ20を連結するアーム手首関節部16などを有する。さらに、このマニピュレータの動作を制御する制御装置(図示せず)なども有している。
【0019】
エンドエフェクタ20は、第1指部材21および第2指部材22と、第1指部材21の第1把持面23および第2指部材22の第2把持面24に配置された複数の吸着離脱補助機構30などにより構成されている。
【0020】
第1指部材21と第2指部材22との間に、配置される把持対象物50は、第1指部材21および第2指部材22が閉じる方向に駆動することにより把持される。このとき、吸着離脱補助機構30により把持対象物50が吸着され、滑り落ちない状態を維持することが可能である。次に、把持対象物50を離すときは、第1指部材21および第2指部材22を開く方向、すなわち把持対象物50から離れる方向に駆動される。このとき、吸着離脱補助機構30により容易に吸着された状態を解除することが可能である。
【0021】
図3は、図2の吸着離脱補助機構30を示す拡大断面図である。エンドエフェクタ20に配置される吸着離脱補助機構30は、吸盤31、押付け力伝達部32、および引張力伝達部材33などから構成されている。吸盤31は弾性部材からなり、略半球状で、吸着面側は凹面となり、窪み部34を形成している。また、窪み部34と反対側の背面35は凸面を形成している。
【0022】
図4は、エンドエフェクタ20が把持対象物50を把持しようとしている状態の概略を示す断面図である。第1指部材21および第2指部材22が、把持対象物50に接近して吸盤31の窪み部34側と把持対象物50が接触する。さらに第1指部材21および第2指部材22を把持対象物50に近づけると、第1指部材21および第2指部材22は、押付け力伝達部32を介して、吸盤31を押し付ける力を作用させる。
【0023】
押付け力伝達部32は、吸盤31の背面35のほぼ中央で凸部の頂上部に、第1把持面23と吸盤31とを接続するように構成されている。この押付け力伝達部32は、弾性部材部分を有し、本実施形態では、ばね要素などを有する部材をフレキシブルなチューブなどに収納したものなどを使用している。第2把持面24においても同様に、吸盤31は押付け力伝達部32により接続される。
【0024】
押付け力伝達部32は、第1指部材21および第2指部材22が把持対象物50を把持する方向、すなわちこれらの指部材が開閉する方向の弾性係数が、開閉方向と垂直方向の弾性係数よりも小さくなるように構成されている。よって、エンドエフェクタ20が把持対象物50を把持するときに、第1指部材21および第2指部材22の開閉方向に垂直な方向に、把持対象物50がずれ動くことを防ぐことを可能とする。
【0025】
なお、この押付け力伝達部32は、弾性部材に限られることはなく、例えば棒状の剛体を使用することも可能である。棒状の剛体を使用する場合、第1指部材21および第2指部材22の一部、または吸盤31の一部に弾性を有する部分を予め形成することができる。
【0026】
また、押付け力伝達部32は、吸盤31に別体として取り付けてもよいが、吸盤31の一部分として一体となるように予め形成しておいてもよい。
【0027】
引張力伝達部材33は、吸盤31の背面35側で押付け力伝達部32の外周側に配置され、第1把持面23と接続されている。同様に、第2把持面24においても、引張力伝達部材33は接続されている。
【0028】
この引張力伝達部材33は、曲げおよび圧縮に対して柔軟な可撓性部材で、例えば紐、ロープ、または布材などを用いている。なお、引張力伝達部材33は、吸盤31の背面35の周辺部に数箇所配置してもよい。さらに引張力伝達部材33は、押付け力伝達部32の周囲を囲うように、筒状の部材を用いてもよい。第1指部材21および第2指部材22が把持対象物50を把持しているときには、この引張力伝達部材33は、撓んだ状態を維持している。
【0029】
図5は、エンドエフェクタ20が把持対象物50を離そうとしている状態の概略を示す断面図である。第1把持面23および第2把持面24に配置される吸盤31が、把持対象物50を吸着しているときに、第1指部材21および第2指部材22を把持対象物50から離れる方向に駆動する。このとき、引張力伝達部材33に張力が作用して、吸盤31は、背面35の外周部を引っ張られることにより、窪み部34と把持対象物50との間に形成される密閉空間36の密閉状態が解除され吸着状態を解除する。
【0030】
また、引張力伝達部材33は、吸盤31が把持対象物50と吸着していないときには、指部材および吸盤31から引っ張られる状態となっており、押付け力伝達部32が、若干圧縮されるように形成されている。
【0031】
よって、吸盤31の吸着状態を解除するときの吸盤31は、その外周部は引張力伝達部材33に作用する張力により引っ張られ、その中央部は押付け力伝達部32に作用する圧縮力により押し付けられる力(復元力)が作用する。したがって、容易に把持対象物50を離脱させることが可能となる。さらに、第1指部材21および第2指部材22のいずれか一方から把持対象物50が離脱した後も、他方から容易に把持対象物50を離脱させることが可能となる。
【0032】
本実施形態のマニピュレータが、把持対象物50を把持する動作について、図6および図7を用いて説明する。図6は、把持対象物50を把持する動作のフロー図である。図7は、把持対象物50を把持する動作の概略を示す断面図である。図7(a)はマニピュレータのエンドエフェクタ20の離脱状態を示す概略断面図、図7(b)は吸盤31が把持対象物50に接触した状態を示す概略断面図、図7(c)は押付け力が作用する状態を示す概略断面図、および図7(d)は把持が完了した状態を示す概略断面図である。なお図7(a)〜(d)は、エンドエフェクタ20における第1指部材21の部分の動作を示す。第2指部材22の図示は省略するが、第1指部材21および第2指部材22は、把持対象物50を挟んで対称の形状となる。
【0033】
まず、図7(a)に示すように、エンドエフェクタ20の第1指部材21および第2指部材22を、把持対象物50に近づけて、これらの指部材の間に把持対象物50が配置される位置まで移動させる(ステップS101)。
【0034】
次に、図7(b)に示すように、第1指部材21および第2指部材22を閉じる方向に駆動して(ステップS102)、吸着離脱補助機構30の吸盤31と把持対象物50とを接触させる(ステップS103)。
【0035】
さらに、図7(c)に示すように、第1指部材21および第2指部材22を閉じる方向に駆動することにより(ステップS104)、押付け力伝達部32が、吸盤31を把持対象物50に向かって押し付けるように力を発生させる(ステップS105)。この押付け力により、吸盤31が変形し、吸盤31の窪み部34と把持対象物50の間に挟まれた密閉空間36内の空気が吸盤31の外周部から排出される。
【0036】
吸着離脱補助機構30に搭載される例えば圧力センサ等の力計測手段37により、押付け力を計測する(ステップS106)。次に、この計測値が予め設定されている所定の閾値を超えるかどうかを判定する(ステップS107)。閾値を超えるときに、第1指部材21および第2指部材22は、閉動作を停止する(ステップS108)。なお、このときの引張力伝達部材33は、撓んだ状態で、張力は作用していない。
【0037】
最後に、引張力伝達部材33が撓んだ状態を維持する範囲内で、第1指部材21および第2指部材22を開く方向に微開する(ステップS109)。この動作により、第1指部材21および第2指部材22は、吸盤31の弾性により窪み部34側の外周が密着したままで変形が若干緩和され、把持対象物50と窪み部34とで形成された密閉空間36を拡大させる。これにより密閉空間36の圧力が低下し、大気圧との差圧により、吸盤31と把持対象物50とが引き着けられる力が発生する。
【0038】
以上の動作により、図7(d)に示すように、把持対象物50を把持する動作を完了する(ステップS110)。
【0039】
続いて、本実施形態のマニピュレータのエンドエフェクタ20が、把持対象物50を把持した状態から、これを離す動作について図8および図9を用いて説明する。図8は、把持対象物50をマニピュレータから離脱する動作のフロー図である。図9は、把持対象物50を離脱する動作の概略を示す断面図である。図9(a)は把持対象物50を把持している状態を示す概略断面図、図9(b)は引張力伝達部材33に張力が作用している状態を示す概略断面図、および図9(c)は離脱動作が完了した状態を示す概略断面図である。なお図9(a)〜(c)は、第1指部材21の部分の動作を示す。第2指部材22の図示は省略するが、第1指部材21および第2指部材22は、把持対象物50を挟んで対称の形状となる。
【0040】
図9(a)に示すように、把持対象物50を把持している状態から、第1指部材21および第2指部材22を開く方向、すなわち把持対象物50から離れる方向に駆動する(ステップS201)。このとき、図9(b)に示すように、把持対象物50に吸着している吸盤31は、吸着状態を維持したままで、把持対象物50から離れる方向に引っ張られる。
【0041】
第1指部材21および第2指部材22をさらに開くことにより、引張力伝達部材33には張力が作用する。このとき、押付け力伝達部32が吸盤31の背面35の中央を押す力は、図9(a)の状態よりも小さくなるが、それでも若干は押す力として残っている。このため、引張力伝達部材33が吸盤31を変形させ、窪み部34と把持対象物50との間に形成される密閉空間36に空気が流入する。よって、この密閉空間36の密閉状態が解除され吸着状態が解除される(ステップS204)。
【0042】
第1指部材21および第2指部材22は、所定の位置になるまで開く方向に駆動されて(ステップS205)、この後に停止させる(ステップS206)。以上の動作により、図9(c)に示すように、把持対象物50を離脱する動作を完了する(ステップS207)。
【0043】
上記実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。又、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0044】
例えば、図10に示すように、マニピュレータのエンドエフェクタ20の指部材に、任意の形状の物体を安定して把持することができるように、指関節部25を設けてもよい。この例のマニピュレータは、例えば曲面形状などの把持対象物50などを把持することが可能となる。よって、より汎用性が高く、様々な形状の把持対象物50を把持することが可能となる。
【0045】
また、押付け力伝達部32は、図7(c)の状態(ステップS105〜S108)および図9(b)(ステップS203)では押す力が発生していることが必要であるが、他の状態では押付け力が発生しなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係るマニピュレータの一実施形態を示す概略正面図である。
【図2】図1のエンドエフェクタを示す拡大正面図である。
【図3】図2の吸着離脱補助機構を示す拡大断面図である。
【図4】図2のエンドエフェクタが把持対象物を把持しようとしている状態の概略を示す断面図である。
【図5】図2のエンドエフェクタが把持対象物を離そうとしている状態を示す概略断面図である。
【図6】図1のマニピュレータが把持対象物を把持する動作のフロー図である。
【図7】図1のマニピュレータが把持対象物を把持する動作を示す概略断面図である。
【図8】図1のマニピュレータが把持対象物を離脱する動作のフロー図である。
【図9】図1のマニピュレータが把持対象物を離脱する動作を示す概略断面図である。
【図10】関節を備えた指部材を有するマニピュレータの例を示す概略正面図である。
【符号の説明】
【0047】
11…ベース部材、12…アーム肩関節部、13…上腕部、14…アーム肘関節部、15…前腕部、16…アーム手首関節部、20…エンドエフェクタ、21…第1指部材、22…第2指部材、23…第1把持面、24…第2把持面、25…指関節部、30…吸着離脱補助機構、31…吸盤、32…押付け力伝達部、33…引張力伝達部材、34…窪み部、35…背面、36…密閉空間、37…力計測手段、50…把持対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持対象物を把持可能な少なくとも対向する2つの指部材と、
前記指部材に設けられ、前記把持対象物の表面に向かって突出した外周部およびその外周部に囲まれた窪み部を有して弾性変形可能な吸盤と、
前記吸盤の窪み部の背面側と前記指部材の間に配置されて、前記指部材と把持対象物とが互いに押し付けられたときに前記吸盤の窪み部の背面側を押す押付け力伝達部と、
前記吸盤の外周部と前記指部材の間に配置されて、前記指部材と把持対象物とが互いに引き離されるときに前記吸盤の外周部を前記指部材側に引っ張る引張力伝達部材と、
を有し、
前記引張力伝達部材の少なくとも一部が可撓性を有することを特徴とする把持装置。
【請求項2】
前記押付け力伝達部は、弾性を有する部材であって、前記指部材の開閉方向と同方向の弾性係数が前記開閉方向と垂直な方向の弾性係数よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記押付け力伝達部は、弾性を有する部材であって、前記引張力伝達部材は、前記指部材と前記把持対象物が離れているときに、前記押付け力伝達部が圧縮される状態を維持するように構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の把持装置。
【請求項4】
前記吸盤を前記把持対象物の表面に押し付ける力の大きさを計測する押付け力計測手段と、
前記押付け力計測手段で計測される押付け力に基づいて、前記吸盤が前記把持対象物に押し付けられていることを判定する押付け状態判定手段と、
前記押付け状態判定手段により押し付けられていると判定されたとき前記指部材を、前記引張力伝達部材が撓んだ状態を維持する範囲で前記指部材を開く方向に微開する微開駆動手段と、
を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の把持装置。
【請求項5】
把持対象物を把持可能な少なくとも2つが対向して配置される指部材と、前記指部材に設けられ、前記把持対象物の表面に向かって突出した外周部およびその外周部に囲まれた窪み部を有して弾性変形可能な吸盤と、前記吸盤の窪み部の背面と前記把持面とを接続する押付け力伝達部と、前記押付け力伝達部の外周側で前記背面上に配置される引張力伝達部材と、を有する吸着離脱補助機構と、を具備する把持装置の制御方法において、
前記指部材が前記把持対象物に向かって閉じる方向に駆動し、前記押付け力伝達部が前記吸盤を前記把持対象物に押付け力を作用させて、前記引張力伝達部材を撓ませる吸盤押付け工程と、
前記押付け力伝達部による押付け力を計測する押付け力計測工程と、
前記押付け力計測工程で計測される押付け力に基づいて、前記吸盤が前記把持対象物に押し付けられていることを判定する押付け状態判定工程と、
前記押付け状態判定工程で押し付けられていると判定された後に、前記引張力伝達部材が撓んだ状態を維持する範囲内で前記指部材を開く方向に駆動して、その後に停止させる微開駆動工程と、
前記指部材を開く方向に駆動して、前記引張力伝達部材に張力を作用させて前記窪み部の背面側の外周部を引っ張って、前記吸盤の吸着を解除して、前記指部材を離脱させる離脱工程と、
を有することを特徴とする把持装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−39820(P2009−39820A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208078(P2007−208078)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】