説明

投写型映像表示装置

【課題】投写画像の視認性に影響を及ぼす投写条件の変化を反映して光源装置の出射光量を適切に調整する。
【解決手段】プロジェクタ100は、光源装置10と、入力された映像信号に基づいて光源装置10から出射された光を変調して映像光を生成する光変調素子40と、光変調素子40で生成された映像光を投写面に投写する投写部50と、投写面を撮像して撮像画像を生成する撮像部500と、撮像画像に基づいて、少なくとも投写部50が投写する画像の表示サイズを指定するための投写条件を推定するための投写条件推定手段と、投写条件推定手段によって推定された投写条件に応じて、投写画像が所定の明るさとなるように、光源装置の出射光量を調整するための光量調整手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、投写型映像表示装置に関し、より特定的には、投写画像の明るさを調整する機能を備えた投写型映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の投写型映像表示装置(以下、プロジェクタという)として、たとえば特開2003−131323号公報(特許文献1)には、投写レンズにズーム機構を備えたズームレンズを使用し、ズームレンズの焦点距離に連動して、光源ランプの明るさを調節するプロジェクタが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−131323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるプロジェクタでは、ズーム機構によって投写画像のサイズを小さくした場合には、自動的に光源の発光出力を絞ることにより、投写画像が明るすぎることによる視認性の低下を防止する。
【0005】
しかしながら、投写画像のサイズは、投写レンズのズーム状態だけでなく、プロジェクタから投写面までの距離である投写距離によっても変化する。そのため、投写距離に応じて投写画像の明るさが変化する。上記の特許文献1では、投写距離による投写画像の明るさの変化に対応することができないため、プロジェクタの設置場所が変更されると、投写画像を最適な明るさに調整することが困難となる。
【0006】
また、投写画像の明るさやコントラストなどの視認性は、投写画像のサイズ以外にも、プロジェクタの設置環境や投写面の状態などによっても変化する。さらに、三次元表示が可能に構成されたプロジェクタにおいては、二次元表示を行なう場合と三次元表示を行なう場合とでは、光源装置の出射光量と投写画像の明るさとの関係が異なってくる。したがって、これらの要素を反映して光源装置の光量を調整しなければ、投写画像の視認性を低下させる虞がある。
【0007】
それゆえ、この発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、その目的は、投写画像の視認性に影響を及ぼす投写条件の変化を反映して光源装置の出射光量を適切に調整することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のある局面に従えば、投写型映像表示装置は、光源装置と、入力された映像信号に基づいて光源装置から出射された光を変調して映像光を生成する光変調素子と、光変調素子で生成された映像光を投写面に投写する投写部と、投写面を撮像して撮像画像を生成する撮像部と、撮像画像に基づいて、少なくとも投写部が投写する画像の表示サイズを指定するための投写条件を推定するための投写条件推定手段と、投写条件推定手段によって推定された投写条件に応じて、投写画像が所定の明るさとなるように、光源装置の出射光量を調整するための光量調整手段とを備える。
【0009】
好ましくは、投写型映像表示装置は、二次元表示と三次元表示とを切替え可能に構成される。投写部は、左目用の映像信号に基づく第1の映像光と右目用の映像信号に基づく第2の映像光とを時分割で投写することにより、投写面に三次元表示を実現するように構成される。投写条件推定手段は、二次元表示のときの投写画像の輝度に対して三次元表示のときの投写画像の輝度が低減する割合である輝度低減率を推定するための輝度低減率推定手段を含む。光量調整手段は、投写条件推定手段によって推定された投写条件および輝度低減率に応じて、光源装置の出射光量を調整する。
【0010】
好ましくは、投写条件推定手段は、環境光の輝度を推定するための環境光輝度推定手段を含む。光量調整手段は、投写条件推定手段によって推定された投写条件および環境光の輝度に応じて、光源装置の出射光量を調整する。
【0011】
好ましくは、投写条件推定手段は、投写面の反射率を推定するための反射率推定手段を含む。光量調整手段は、投写条件推定手段によって推定された投写条件および投写面の反射率に応じて、光源装置の出射光量を調整する。
【0012】
好ましくは、投写部は、投写画角を調整することにより、映像光を任意のズーム倍率で投写可能に構成される。投写条件推定手段は、投写部が投写する画像の表示サイズを指定するための投写条件として、ズーム倍率および投写距離を推定する。
【0013】
好ましくは、光量調整手段は、少なくともズーム倍率および投写距離をパラメータとして算出された光量調整係数を有し、推定されたズーム倍率および投写距離に応じて光量調整係数を設定する。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、投写画像の視認性に影響を及ぼす投写条件の変化を反映して光源装置の出射光量を適切に制御することにより、投写条件の変化による投写画像の視認性を損なうことを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態1に係るプロジェクタの外観構成を示す図である。
【図2】本体キャビネットの内部構成を説明するための斜視図である。
【図3】本実施の形態1に係るプロジェクタの制御構造を説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るプロジェクタにおける光量調整処理を実現するための制御処理手順を示したフローチャートである。
【図5】テストパターンの一例を示す図である。
【図6】テストパターンの他の例を示す図である。
【図7】図4のステップS03の処理を説明するフローチャートである。
【図8】投写条件推定部によるテストパターンの特徴点の検出を説明する図である。
【図9】投写条件推定部によるテストパターンの特徴点の検出を説明する図である。
【図10】投写条件推定部によるズーム状態の推定を説明する概念図である。
【図11】投写条件推定部による投写距離の推定を説明する概念図である。
【図12】図4のステップS06の処理を説明するフローチャートである。
【図13】本発明の実施の形態2に係るプロジェクタにおける光量調整を実現するための制御処理手順を示したフローチャートである。
【図14】図13のステップS072の処理を説明するフローチャートである。
【図15】投写面と光量調整係数Krとの関係を説明する図である。
【図16】本発明の実施の形態3に係るプロジェクタにおける光量調整を実現するための制御処理手順を示したフローチャートである。
【図17】三次元表示が可能なプロジェクタの一形態を説明する概念図である。
【図18】本発明の実施の形態4に係るプロジェクタにおける光量調整を実現するための制御処理手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0017】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1に係るプロジェクタの外観構成を示す図である。本実施の形態では、便宜上、プロジェクタ100から見て投写面のある方を前、投写面と反対方向を後ろ、投写面からプロジェクタ100から見て右方向を右、投写面からプロジェクタ100を見て左方向を左、前後左右方向に垂直な方向であってプロジェクタ100から投写面に向かう方向を下、その反対方向を上と定義する。また、上記左右方向をX方向、上記前後方向をY方向、上記上下方向をZ方向と定義する。
【0018】
図1を参照して、プロジェクタ100は、いわゆる短焦点投写型のプロジェクタであって、略方形状の本体キャビネット200と、撮像部500とを備える。
【0019】
本体キャビネット200には、映像光を透過するための投写口210が設けられている。投写口210から下斜め前方へ出射された映像光が、プロジェクタ100の前方に配された投写面に拡大投写される。本実施の形態では、投写面は、プロジェクタ100が載置される床面に設けられる。なお、本体キャビネット200の後面が床面に接するようにプロジェクタ100を設置する場合には、投写面を壁面に設けることができる。
【0020】
撮像部500は、本体キャビネット200の上面側に設置される。撮像部500は、たとえばCCD(Charge Couple Device)センサ、あるいはCMOS(Completely Metal Oxide Semiconductor)センサ等からなる撮像素子と、撮像素子の前方に配置された光学レンズ等とを備える。撮像部500は、プロジェクタ100が映像光を投写可能な範囲(以下、「投写領域」ともいう)410を少なくとも含む範囲を撮像する。撮像部500は、その撮像画像を示す画像データ(以下、「撮像データ」という)を生成する。なお、撮像部500は、図1に示すように本体キャビネット200に併設されていてもよく、本体キャビネット200に内蔵されていてもよい。
【0021】
図2は、本体キャビネット200の内部構成を説明するための斜視図である。
図2を参照して、本体キャビネット200は、光源装置10と、クロスダイクロイックミラー20と、折り返しミラー30と、DMD(Digital Micromirror Device)40と、投写ユニット50とを備える。
【0022】
光源装置10は、複数(たとえば3個とする)の光源10R,10G,10Bを含む。光源10Rは、赤色波長域の光(以下、「R光」という)を発光する赤色光源であり、たとえば赤色LED(Light Emitting Device)や赤色LD(Laser Diode)からなる。光源10Rには、光源10Rで発生した熱を放出するためのヒートシンクおよびヒートパイプからなる冷却部400R(図示せず)が設けられている。
【0023】
光源10Gは、緑色波長域の光(以下、「G光」という)発光する緑色光源であり、たとえば緑色LEDや緑色LDからなる。光源10Gには、光源10Gで発生した熱を放出するためのヒートシンク410Gおよびヒートパイプ420Gからなる冷却部400Gが設けられている。
【0024】
光源10Bは、青色波長域の光(以下、「B光」という)を発光する青色光源であり、たとえば青色LEDや青色LDからなる。光源10Bには、光源10Bで発生した熱を放出するためのヒートシンク410Bおよびヒートパイプ420Bからなる冷却部400Bが設けられている。
【0025】
クロスダイクロイックミラー20は、光源10から入射された光のうち、B光のみを透過し、R光およびG光を反射する。クロスダイクロイックミラー20を透過したB光、およびクロスダイクロイックミラー20で反射されたR光およびG光は、折り返しミラー30へ導かれ、そこで反射され、DMD40に入射される。
【0026】
DMD40は、マトリクス状に配置された複数のマイクロミラーを含む。1つのマイクロミラーは、1つの画素を構成する。マイクロミラーは、入射するR光、G光およびB光に対応するDMD駆動信号に基づいて、高速でオン・オフ駆動される。
【0027】
マイクロミラーの傾斜角度が変えられることによって各光源からの光(R光、G光、B光)が変調される。具体的には、ある画素のマイクロミラーがオフ状態のときには、このマイクロミラーによる反射光は投写ユニット50には入射しない。一方、マイクロミラーがオン状態のときには、このマイクロミラーによる反射光は投写ユニット50に入射する。各光源の発光期間に占めるマイクロミラーがオン状態となる期間の比率を調整することにより、画素ごとに画素の階調が調整される。
【0028】
DMD40は、光源装置10からR光、G光、B光が時分割で出射されるタイミングに同期して、各マイクロミラーを駆動する。投写ユニット50は、投写レンズユニット51と、反射ミラー52とを含む。DMD40により反射された光(映像光)は、投写レンズユニット51を通過し、反射ミラー52へ出射される。映像光は、反射ミラー52によって反射され、本体キャビネット200に設けられた投写口210から外部へ出射される。投写面には、R,G,Bの色光による画像が順に投写される。投写面上に投写される各色の色光による画像は、人間の目には、それらの色光による画像が重ね合わせて生成されるカラー画像として認識される。
【0029】
図3は、本発明の実施の形態1に係るプロジェクタ100の制御構造を説明する図である。
【0030】
図3を参照して、プロジェクタ100は、光源装置10(図2)と、DMD40(図2)と、投写ユニット50(図2)と、撮像部500(図1)と、テストパターン発生部310と、映像信号入力部320と、セレクタ(選択回路)330と、補正指示部350と、投写条件推定部360と、操作受付部340とを備える。
【0031】
映像信号入力部320は、図示しない外部の映像ソース機器から与えられる映像信号を受信する。映像信号入力部320は、受信した映像信号を、表示のための信号に処理して出力する。
【0032】
具体的には、映像信号入力部320は、受信した映像信号を1フレーム(1画面)ごとにフレームメモリ(図示せず)に書込むとともに、フレームメモリに書込まれた映像を読出す。そして、この書込みと読出しとの処理の過程において、各種の画像処理を施すことにより、受信した映像信号を変換して投写画像用の表示映像信号を生成する。なお、映像信号入力部320が行なう画像処理には、プロジェクタ100からの投写光の光軸と投写面との相対的な傾きによって生じる画像歪みを補正するための画像歪み補正処理や、投写面に表示される投写画像の表示サイズを拡大または縮小させるための画像サイズ調整処理などが含まれる。
【0033】
テストパターン発生部310は、後述する光源装置10の出射光量の調整処理(以下では、単に「光量調整処理」ともいう)に用いるテストパターンを発生する。テストパターンは、投写面に表示される画像の投写条件を推定するための画像である(図5,6参照)。投写条件には、投写画像の表示サイズを指定するための投写条件が少なくとも含まれる。この投写画像の表示サイズを指定するための投写条件には、投写レンズユニット51のズーム倍率および投写距離が含まれる。
【0034】
なお、テストパターンは、上述した画像歪み補正処理や画像サイズ調整処理などにおいて、画像の投写状態(画像の歪み状態や表示位置など)を認識するためのテストパターンとしても利用することができる。
【0035】
セレクタ330は、映像信号入力部320からの表示映像信号を第1の入力端子に受け、テストパターン発生部310からのテストパターンを第2の入力端子に受ける。セレクタ330は、補正指示部350から与えられるセレクト信号に従って、表示映像信号およびテストパターンのいずれか一方を選択してDMD40へ出力する。
【0036】
操作受付部340は、ユーザが操作するリモコンから送信されるリモコン信号を受信する。操作受付部340は、リモコン信号を受信するだけでなく、本体キャビネット200に設けられた操作パネルからの信号を受付けることができる。操作受付部370は、リモコンまたは操作パネルへの操作がなされると、当該操作を受付け、各種動作のトリガとなるコマンド信号を生成する。
【0037】
具体的には、操作受付部340は、ユーザがリモコン、操作パネルまたはメニュー画面を操作することにより、投写画像の明るさ調整を指示した場合には、光源装置10の出射光量の調整処理(光量調整処理)を行なうためのコマンド信号(以下、「光量調整指示」ともいう)を生成して補正指示部350へ出力する。
【0038】
あるいは、補正指示部350は、ユーザの指示に従って光量調整処理を行なう構成とする以外に、映像信号入力部320から与えられた表示映像信号の明るさに応じて自動的に光量調整処理を行なうことも可能である。または、プロジェクタ100の配置が変更されたことが図示しない傾斜センサ等によって検知された場合において、自動的に光量調整処理を実行する構成としてもよい。
【0039】
補正指示部350は、操作受付部340からの光量調整指示に応じて、表示映像信号およびテストパターンのいずれか一方を選択するためのセレクト信号を生成して、セレクタ330に出力する。具体的には、補正指示部350は、操作受付部340から光量調整指示を受付けていない場合には、表示映像信号を選択するためのセレクト信号を生成してセレクタ330へ出力する。セレクタ330は、セレクト信号に従って、表示映像信号をDMD40へ出力する。DMD40は、表示映像信号に基づいてDMD駆動信号(オンオフ信号)を生成すると、光源装置10からR光、G光、B光が時分割で出射されるタイミングに同期して、DMD駆動信号に基づいて各マイクロミラーを駆動する。これにより、表示映像信号に応じた映像光が色光ごとに形成され、投写ユニット50によって投写面上に拡大投写される。
【0040】
一方、操作受付部340から光量調整指示を受付けた場合には、補正指示部350は、テストパターンを選択するためのセレクト信号を生成してセレクタ330へ出力する。セレクタ330は、セレクト信号に従って、テストパターンをDMD40へ出力する。DMD40は、テストパターンに基づいて生成されたDMD駆動信号に基づいて各マイクロミラーを駆動する。これにより、テストパターンに応じた映像光が色光ごとに形成され、投写ユニット50によって投写面上に拡大投写される。
【0041】
補正指示部350は、テストパターンを選択するためのセレクト信号を生成するとともに、投写面上に表示されるテストパターンの投写条件の推定を指示するための制御信号を生成して投写条件推定部360へ出力する。
【0042】
投写条件推定部360は、補正指示部350の指示に従って、投写条件を推定する。具体的には、投写条件推定部360は、撮像部500により生成された投写面の撮像画像を表わす画像データ(撮像データ)を取得すると、撮像データに基づいて投写条件を推定する。そして、投写条件推定部360は、推定された投写条件に応じて、投写画像の明るさを所定の明るさにするために、光源装置10の出射光量を調整する。
【0043】
以下に、本発明の実施の形態1に係るプロジェクタ100において実行される光量調整処理について、図面を参照して説明する。
【0044】
(光量調整処理)
図4は、本発明の実施の形態1に係るプロジェクタにおける光量調整処理を実現するための制御処理手順を示したフローチャートである。なお、図4を始めとして、以下に示すフローチャートの各ステップの処理は、図3に示す制御構造によるソフトウェア処理またはハードウェア処理によって実行される。また、図4に示すフローチャートの処理は、一定時間ごとまたは所定の条件が成立する毎に実行される。
【0045】
図4を参照して、補正指示部350は、ステップS01により、操作受付部340から光量調整指示が入力されたか否かを判定する。光量調整指示が入力されていない場合(ステップS01のNO判定時)には、以降の処理を行なわず、処理を終了する。
【0046】
一方、光量調整指示が入力されている場合(ステップS01のYES判定時)には、補正指示部350は、光量調整処理を実行する。具体的には、補正指示部350は、ステップS02により、テストパターンを選択するためのセレクト信号を生成してセレクタ330へ出力する。セレクタ330は、セレクト信号に従ってテストパターンを選択してDMD40へ出力する。DMD40によってテストパターンに応じた映像光が形成されると、投写ユニット50によって投写面上に投写される。
【0047】
図5にテストパターンの一例を示す。図5を参照して、テストパターンは、4つの交点(C1〜C4)を構成する4つの線分(L1〜L4)の少なくとも一部を構成する画像である。同図では、4つの線分(L1〜L4)は、濃淡あるいは明暗の差(エッジ)によって表わされる。テストパターンは、黒の背景と白抜きの菱形とからなる画像であり、白抜きの菱形の4辺は、4つの線分(L1〜L4)の少なくとも一部を構成する。なお、4つの線分(L1〜L4)は、所定の読出し方向(水平方向)に対して傾きを有する。
【0048】
なお、テストパターンは、図6(a)に示すように、黒の背景と白抜きの三角形とからなる画像であってもよい。あるいは、図6(b)に示すように、黒の背景と一対の白抜きの三角形とからなる画像であってもよいし、図6(c)に示すように、黒色無地の画像(以下、輝度0%画像とも称する)であってもよい。
【0049】
図4に戻って、撮像部500は、ステップS03では、投写面に表示されたテストパターンを撮像して撮像データを生成する。投写条件推定部360は、撮像データに基づいて、投写領域を検出する。具体的には、投写条件推定部360は、図5の撮像画像400における投写領域410の4隅を検出する。さらに、投写条件推定部360は、撮像データに基づいて、撮像画像における3つ以上の交点を検出する。以下では、テストパターンが図5に示す画像(白抜きの菱形)である場合について例示する。撮像画像における3つ以上の交点は、テストパターンにおける3つ以上の交点とそれぞれ対応している。このテストパターンにおける3つ以上の交点を、テストパターンの「特徴点」とも表記する。
【0050】
以下に、図7〜図9を参照して、投写条件推定部360によるテストパターンの特徴点の検出について説明する。
【0051】
図7は、図4のステップS03の処理を説明するフローチャートである。
図7を参照して、投写条件推定部360は、ステップS031により、撮像部500により生成されたテストパターンの撮像データを取得する。そして、投写条件推定部360は、ステップS032により、テストパターンにおける所定の読み出し方向に沿ってテストパターンの撮像画像を順に読み出す。
【0052】
具体的には、投写条件推定部360は、ラインバッファを有しており、撮像部500によって生成された撮像画像のうち、テストパターンを構成する所定ラインごとに、所定ラインに対応する撮像画像をラインバッファに読み出す。
【0053】
さらに、投写条件推定部360は、ステップS033により、ラインバッファに読み出された撮像画像に基づいて、テストパターンの特徴点を検出する。
【0054】
詳細には、投写条件推定部360は、最初に、ラインバッファに読み出された撮像画像に基づいて、濃淡あるいは明暗の差(エッジ)を有する点Pedgeを取得する(図8参照)。すなわち、投写条件推定部360は、テストパターン(図5)の白抜きの菱形の4辺に対応する点Pedge群を取得する。
【0055】
次に、投写条件推定部360は、図9に示すように、点Pedge群に基づいて、撮像画像における4つの線分(L1〜L4)を取得する。すなわち、投写条件推定部360は、テストパターンにおける4つの線分(L1〜L4)に対応する4つの線分(L1〜L4)を取得する。
【0056】
さらに、投写条件推定部360は、取得された4つの線分(L1〜L4)に基づいて、撮像画像における4つの交点(C1〜C4)を取得する。すなわち、投写条件推定部360は、テストパターンの特徴点である4つの交点(C1〜C4)に対応する4つの交点(C1〜C4)を取得する。
【0057】
図4に戻って、ステップS03の処理により、撮像画像におけるテストパターンの特徴点C1〜C4が検出されると、投写条件推定部360は、ステップS04により、検出された特徴点C1〜C4を用いて、投写レンズユニット51のズーム倍率を推定する。そして、投写条件推定部360は、推定したズーム倍率に基づいて、光量調整処理における光量調整係数Kzを算出する。
【0058】
図10は、投写条件推定部360によるズーム状態の推定を説明する概念図である。
本実施の形態1によるプロジェクタ100は、投写面に表示される画像の表示サイズを調整するためのズーム調整機能を備えている。具体的には、投写ユニット50に設けられたズーム機構(図示せず)によって、投写レンズユニット51の光軸方向の相対位置を変化させることにより、投写レンズユニット51のズーム倍率を調整することができる。
【0059】
図10(a)には、ズーム倍率を最も広角側(ワイド端)にした場合に投写面に表示されるテストパターンが示される。図10(b)には、ズーム倍率を最も望遠側(テレ端)にした場合に投写面に表示されるテストパターンが示される。
【0060】
本実施の形態1では、ズーム倍率をワイド端にした場合には、ズーム倍率をテレ端にした場合に比べて、表示サイズが2倍になるようになっている。すなわち、図10(a)に示すように、ズーム倍率をワイド端にした場合に表示されるテストパターンの中心点M1から各特徴点C1〜C4までの距離xを1と定義すると、ズーム倍率をテレ端にして同一の投写面にテストパターンを表示した場合には、テストパターンの中心点M1から各特徴点C1〜C4までの距離xは、1/2となる。
【0061】
本実施の形態1では、投写条件推定部360は、図4のステップS03の処理によってよってテストパターンの特徴点(C1〜C4)を検出すると、現在のズーム倍率における中心点M1と各特徴点C1〜C4との距離xを算出する。そして、投写条件推定部360は、ズーム倍率をワイド端にした場合の距離x=lに対する現在のズーム倍率での距離xの割合を、光量調整係数Kzとして算出する。たとえば、図10(b)に示すように、ズーム倍率をテレ端にした場合、光量調整係数Kz=1/2となる。
【0062】
なお、図10では、プロジェクタ100の光軸と投写面の法線とが平行である場合を想定してズーム倍率の推定する手法を説明したが、プロジェクタ100の光軸と投写面の法線とのずれ量を考慮して、ズーム倍率を推定することも可能である。この場合、撮像画像の中心点とテストパターン(白抜きの菱形)の中心点M1とが一致していないため、投写条件推定部360は、撮像画像の中心点から特徴点C1〜C4までの距離x1〜X4をそれぞれ算出し、その算出された距離x1〜X4を総合的に考慮することにより、ズーム倍率を推定する。そして、投写条件推定部360は、推定されたズーム倍率に基づいて、光量調整係数Kzを算出する。
【0063】
再び図4を参照して、投写条件推定部360は、ステップS05では、ステップS03で検出されたテストパターンの特徴点C1〜C4を用いて、プロジェクタ100から投写面までの距離である投写距離を推定する。投写条件推定部360は、推定した投写距離に基づいて、光量調整処理における光量調整係数Kdを算出する。
【0064】
図11は、投写条件推定部360による投写距離の推定を説明する概念図である。
図11(a)は、投写距離を予め定められている設定可能範囲の最大値(最大投写距離)Dmaxとした場合に撮像部500により生成される撮像画像を示す。同図では、投写面に向かって投写ユニット50の右側に撮像部500が配置されている場合を想定する。この場合、撮像部500の撮像領域とプロジェクタ100の投写領域との位置関係は、撮像領域に対して、投写領域が左側にずれている。
【0065】
図11(a)に示す状態から投写距離を短くすると、撮像領域と投写領域との位置関係が変化する。図11(b)には、最大投写距離Dmaxよりも短い投写距離D(D<Dmax)としたときに撮像部500により生成される撮像画像を示す。
【0066】
図11(b)に示すように、投写距離Dとした場合には、最大投写距離Dmaxの場合と比べて、撮像領域に対する投写領域のずれ量が大きくなる。同図には、投写距離D(D<Dmax)でのテストパターンを実線で示すとともに、最大投写距離Dmaxでの撮像領域と投写領域との位置関係を適用したときのテストパターンを破線で示す。投写距離Dの場合には、最大投写距離Dmaxの場合に比べて、テストパターンが左側にずれている。
【0067】
本実施の形態1では、投写条件推定部360は、最大投写距離Dmaxでのテストパターンの撮像画像と、現在の投写距離でのテストパターンの撮像画像とを比較し、撮像領域における投写領域のずれ量を検出する。そして、この検出された投写領域のずれ量に基づいて、現在の投写距離を推定する。
【0068】
具体的には、投写条件推定部360は、投写距離を最大投写距離Dmaxとした場合のテストパターンの撮像画像から、撮像領域に対するテストパターンの中心点M1の相対位置を検出する。さらに、投写条件推定部360は、現在の投写距離でのテストパターンの撮像画像から、撮像領域に対するテストパターンの中心点M1の相対位置を検出する。そして、投写条件推定部360は、最大投写距離Dmaxでの中心点M1の相対位置に対する現在の投写距離での中心点M1の相対位置のずれ量(図中のΔsに相当)に基づいて、現在の投写距離を推定する。本実施の形態1では、投写条件推定部360は、中心点M1の相対位置のずれ量Δsと投写距離との関係を予め取得しておくとともに、その取得した関係を参照することによって、対応する相対位置のずれ量Δsから投写距離を推定する。
【0069】
そして、投写条件推定部360は、最大投写距離Dmaxに対する現在の投写距離の割合を、光量調整係数Kdとして算出する。すなわち、光量調整係数Kdは、最大投写距離DmaxのときにKd=1となり、図10(b)に示すように、投写距離Dでは、光量調整係数Kd=D/Dmaxとなる。
【0070】
図4に戻って、投写条件推定部360は、ステップS06においては、ステップS04およびS05で算出された光量調整係数Kz,Kdを用いて、光源装置10の出射光量を調整する。
【0071】
図12は、図4のステップS06の処理を説明するフローチャートである。
図12を参照して、投写条件推定部360は、ステップS061では、ズーム倍率に基づいて算出された光量調整係数Kzおよび投写距離に基づいて算出された光量調整係数Kdを取得する。
【0072】
さらに、投写条件推定部360は、ステップS062により、光源装置10の出射光量の目標値(以下、「目標光量」ともいう)Lgを設定する。目標光量Lgは、光量調整係数Kz,Kdがともに1である場合に、投写画像を所定の明るさとするための光源装置10の出射光量に相当する。すなわち、目標光量Lgは、ズーム倍率がワイド端であり、かつ、投写距離が最大投写距離Dmaxであるという投写条件において、投写映像を所定の明るさとするのに必要な光源装置10の出射光量に相当する。
【0073】
次に、投写条件推定部360は、ステップS063では、目標光量Lgおよび光量調整係数Kz,Kdに基づいて、現在の投写条件において投写映像を所定の明るさとするために必要な光源装置10の出射光量Lpを設定する。
【0074】
ここで、目標光量Lgと現在の投写条件での光源装置10の出射光量(以下、「現在の光量」ともいう)Lpとの間には、式(1)に示す関係が成立する。
【0075】
【数1】

【0076】
上記の式(1)において、光量調整係数Kz=Kd=1のときには、目標光量Lg=現在の光量Lpとなる。すなわち、ズーム倍率がワイド端であり、かつ、投写距離が最大投写距離Dmaxである場合には、光源装置10の出射光量Lpが目標光量Lgとなるように、光源装置10を駆動制御する。
【0077】
これに対して、図10で説明したように、ズーム倍率がワイド端からテレ端へと変化すると、光量調整係数Kzは1よりも小さい値となる。上記式(1)により、光量調整係数Kzの低下に伴なって、現在の光量Lpは目標光量Lgよりも小さくなる。これは、光源装置10の出射光量が同じであっても、ズーム倍率が高くなるに従って(すなわち、投写画角が小さくなるに従って)投写領域が狭くなるために、投写画像が明るくなることによる。たとえば、ズーム倍率がテレ端(光量調整係数Kz=1/2)である場合には、ズーム倍率がワイド端(光量調整係数Kz=1)である場合に比べて、投写領域が1/4に減少するため、投写画像の明るさは4倍となる。したがって、光源装置10の出射光量Lpをズーム倍率がワイド端であるときの目標光量Lgの1/4倍に低減しても、所定の明るさの投写画像を得ることができる。上記式(1)における1/Kzは、このようなズーム倍率と投写画像の明るさとの関係を反映している。
【0078】
同様の趣旨から、上記式(1)において、1/Kdは、投写距離と投写画像の明るさとの関係を反映したものである。投写画角が一定の場合、光源装置10の出射光量が同じであっても、投写距離が短くなるに従って投写領域が減少するため、投写画像が明るくなる。たとえば、図11において、投写距離が最大投写距離Dmaxの1/2となると、投写領域は1/4に減少し、投写画像の明るさは4倍に増える。したがって、光源装置10の出射光量Lpを投写距離が最大投写距離Dmaxであるときの目標光量Lgの1/4倍に低減しても、所定の明るさの投写画像を得ることができる。
【0079】
図12に戻って、投写条件推定部360は、ステップS063の処理によって光源装置10の出射光量Lpを設定すると、ステップS064により、出射光量Lpを出射光量の指令値として、光源装置10へ出力する。光源装置10は、投写条件推定部360から与えられる出射光量の指令値に従って、複数の光源10R,10G,10Bの出射光量を調整する。
【0080】
このように、本発明の実施の形態1によるプロジェクタによれば、所定のテストパターンの撮像画像に基づいて投写条件(ズーム倍率および投写距離)を推定し、その推定した投写条件に応じて光源装置の出射光量を調整する。これにより、プロジェクタの配置を変更したことによる投写距離の変更に伴なって投写面上の画像の表示サイズが変化しても、投写画像を所定の明るさに保つことができる。また、投写条件に適応するように光源装置の出射光量を調整するため、投写画像の視認性を確保しながら低消費電力化を実現することができる。
【0081】
なお、実施の形態1による投写条件の推定は、投写画像の表示サイズを指定するためのズーム倍率および投写距離をパラメータとし、これらのパラメータを推定する構成について例示したが、投写画像の視認性に影響を及ぼすパラメータであれば、上述の例に限定されるものではない。以下の実施の形態2〜4では、ズーム倍率および投写距離以外のパラメータをさらに推定し、推定された複数のパラメータを総合的に考慮して、光源装置10の出射光量を調整する構成について説明する。
【0082】
[実施の形態2]
投写画像の明るさは、上述したズーム倍率および投写距離(すなわち、投写画像の表示サイズ)以外に、投写面における映像光の反射率によっても変化する。たとえば、反射型スクリーンでは、投写面の反射率が高いために、明るい投写画像を表示できる一方で、拡散型スクリーンでは、投写面の反射率が上記の反射型スクリーンに比べて低いために、プロジェクタ100から出射される映像光の光量が同じであっても、投写画像の明るさが低下してしまう。
【0083】
また、図1で示したように、投写面をプロジェクタ100が戴置される床面に設けた場合には、床面が光沢を有するとき、または白色であるときには、床面が光沢を有しないとき、または黒色であるときと比べて、投写面の反射率が高くなる。そのため、照明光などの環境光が床面で反射されて投写領域に入り込むことによって、投写画像のコントラストを低下させる虞がある。
【0084】
そこで、本実施の形態2では、投写条件に、投写面の反射率をさらに含めることにより、光源装置10の光量調整によって、投写面の反射率の影響を補償する。
【0085】
図13は、本発明の実施の形態2に係るプロジェクタにおける光量調整を実現するための制御処理手順を示したフローチャートである。なお、図13に示すフローチャートは、図4に示したフローチャートにおけるステップS06の処理(光源装置10の光量調整処理)として実行されるものである。
【0086】
図13を参照して、投写条件推定部360は、ステップS071により、光量調整係数Kz,Kdを取得すると、続いてステップS072により、投写面の反射率を推定する。そして、投写条件推定部360は、推定した反射率に基づいて、光量調整処理における光量調整係数Krを算出する。
【0087】
図14は、図13のステップS072の処理を説明するフローチャートである。
図14を参照して、補正指示部350は、ステップS081により、輝度0%画像からなるテストパターン(図6(c)参照)を投写させる。具体的には、補正指示部350は、テストパターン発生部310により生成された輝度0%画像のテストパターンを選択するためのセレクト信号を生成してセレクタ330へ出力する。セレクタ330は、セレクト信号に従って、テストパターンをDMD40へ出力する。DMD40は、テストパターンに基づいて生成されたDMD駆動信号に基づいて各マイクロミラーを駆動する。これにより、輝度0%画像に応じた映像光が色光ごとに形成され、投写ユニット50によって投写面上に拡大投写される。
【0088】
撮像部500は、輝度0%画像のテストパターンが投写された投写面を撮像する。投写条件推定部360は、ステップS082により、撮像部500により取得された撮像画像を取り込み、第1の画像として保存する。
【0089】
さらに、投写条件推定部360は、ステップS83では、ステップS081と同様の処理を行なうことによって、白色無地の画像(以下、輝度100%画像とも称する)からなるテストパターンを投写面に投写させる。撮像部500は、輝度100%画像のテストパターンが投写された投写面を撮像する。投写条件推定部360は、ステップS084により、撮像部500により取得された撮像画像を取り込み、第2の画像として保存する。
【0090】
次に、投写条件推定部360は、ステップS085により、第1の画像(輝度0%表示)と第2の画像(輝度100%表示)とを比較することにより、第1の画像と第2の画像との差分を検出する。そして、投写条件推定部360は、検出した差分に基づいて、投写面の反射率を推定する。第1の画像(輝度0%表示)と第2の画像(輝度100%表示)との差分は、投写面によって反射された映像光の光量に相当する。投写条件推定部360は、プロジェクタ100から投写面へ入射される映像光の光量に対する投写面によって反射された映像光の光量の割合を算出することにより、投写面の反射率を推定することができる。
【0091】
なお、投写面の反射率を推定するためには、明るさの異なる2つの画像を投写面に投写させればよく、これら2つの画像は輝度0%画像および輝度100%画像に限定されない。
【0092】
投写条件推定部360は、ステップS086により、推定された投写面の反射率を光量調整係数Krに設定する。
【0093】
図13に戻って、投写条件推定部360は、ステップS073により、光源装置10の目標光量Lgを設定する。このステップS073の処理は、図12のステップS062の処理と同じである。
【0094】
次に、投写条件推定部360は、ステップS074では、目標光量Lgおよび光量調整係数Kz,Kd,Krに基づいて、現在の投写条件において投写映像を所望の明るさとするために必要な光源装置10の出射光量Lpを設定する。
【0095】
本実施の形態2では、目標光量Lgと現在の投写条件での光源装置10の出射光量(現在の光量)Lpとの間には、式(2)に示す関係が成立する。
【0096】
【数2】

【0097】
上記の式(2)は、本実施の形態1による光量調整処理で示した式(1)と比較して、現在の光量Lpに、投写面の反射率に基づく光量調整係数Krをさらに乗算する点で異なる。これは、投写面の反射率と投写画像の明るさとは比例関係にあることに基づいている。すなわち、投写面の反射率が低くなるほど(光量調整係数Krが小さくなるほど)、投写画像の明るさが低下する。そのため、投写面の反射率が1(光量調整係数Kr=1)である場合の目標光量Lgよりも光源装置10の出射光量Lpを増大させることによって、投写面の反射率の影響を補償する。
【0098】
投写条件推定部360は、ステップS073の処理によって光源装置10の出射光量Lpを設定すると、ステップS074では、出射光量Lpを出射光量の指令値として、光源装置10へ出力する。光源装置10は、投写条件推定部360から与えられる出射光量の指令値に従って、複数の光源10R,10G,10Bの出射光量を調整する。
【0099】
このように、本発明の実施の形態2によるプロジェクタによれば、所定のテストパターンの撮像画像に基づいて投写条件(ズーム倍率、投写距離および投写面の反射率)を推定し、その推定した投写条件に応じて光源装置の出射光量を調整する。これにより、投写条件の変更により、投写画像の表示サイズ、もしくは投写面の反射率が変化しても、低消費電力化を実現しながら、投写画像の視認性(明るさおよびコントラスト)を最適な状態に保つことができる。
【0100】
なお、実施の形態2では、輝度差のある2つのテストパターンの撮像画像に基づいて投写面の反射率を推定する構成としたが、投写面に利用されることが想定される各種の物体について、反射率(光量調整係数Krに相当)を予め取得しておくことも可能である。図15に、投写面と光量調整係数Kr(反射率)との関係の一例を示す。ユーザは、図15に示す投写面と光量調整係数Krとの関係を参照することにより、対応する投写面に応じて光量調整係数Krを設定することができる。
【0101】
[実施の形態3]
投写画像の視認性は、プロジェクタが設置される室内での照明光などのプロジェクタの周囲の光(環境光)によっても変化する。たとえば、環境光の輝度が高い場合には、投写画像のコントラストや色再現性が低下する。実施の形態3では、投写条件に、環境光の輝度をさらに含めることにより、光源装置10の光量調整によって環境光の影響を補償する。
【0102】
図16は、本発明の実施の形態3に係るプロジェクタにおける光量調整を実現するための制御処理手順を示したフローチャートである。なお、図16に示すフローチャートは、図4に示したフローチャートにおけるステップS06の処理(光源装置10の光量調整処理)として実行されるものである。
【0103】
図16を参照して、投写条件推定部360は、ステップS091により、光量調整係数Kz,Kdを取得すると、続いてステップS092により、環境光の輝度を推定する。そして、投写条件推定部360は、推定した環境光の輝度に基づいて、光量調整処理における光量調整係数Keを算出する。
【0104】
具体的には、補正指示部350は、輝度0%画像からなるテストパターン(図6(c)参照)を投写させる。投写条件推定部360は、輝度0%画像のテストパターンが投写面に投写されている状態において、プロジェクタ100の設置環境の明るさを本体キャビネット200の側面に設置された照度センサ(図示せず)によって検出する。そして、投写条件推定部360は、照度センサの検出値に基づいて環境光の輝度を推定する。
【0105】
投写条件推定部360は、環境光の輝度が所定の閾値以下となるときの光量調整係数Keを1として、環境光の輝度が高くなるほど大きな値となるように、光量調整係数Keを設定する。
【0106】
投写条件推定部360は、ステップS093により、光源装置10の目標光量Lgを設定する。このステップS093の処理は、図12のステップS062の処理と同じである。
【0107】
次に、投写条件推定部360は、ステップS094により、目標光量Lgおよび光量調整係数Kz,Kd,Keに基づいて、現在の投写条件において投写映像を所望の明るさとするために必要な光源装置10の出射光量Lpを設定する。
【0108】
本実施の形態3では、目標光量Lgと現在の投写条件での光源装置10の出射光量(現在の光量)Lpとの間には、式(3)に示す関係が成立する。
【0109】
【数3】

【0110】
上記の式(3)は、本実施の形態1による光量調整処理で示した式(1)と比較して、現在の光量Lpに、環境光の輝度に基づく光量調整係数Keの逆数をさらに乗算する点で異なる。これは、環境光の輝度が高くなるほど、すなわち、光量調整係数Keが大きくなるほど、投写画像の視認性(コントラストや色再現性など)が低下することに基づく。本実施の形態3では、光量調整係数Keが大きい場合には、光量調整係数Ke=1である場合の目標光量Lgよりも光源装置10の出射光量Lpを増大させることによって、環境光の影響を補償する。
【0111】
投写条件推定部360は、ステップS094の処理によって光源装置10の出射光量Lpを設定すると、ステップS095では、出射光量Lpを出射光量の指令値として、光源装置10へ出力する。光源装置10は、投写条件推定部360から与えられる出射光量の指令値に従って、複数の光源10R,10G,10Bの出射光量を調整する。
【0112】
このように、本発明の実施の形態3によるプロジェクタによれば、投写条件として、ズーム倍率および投写距離に加えて環境光の輝度を推定し、その推定した投写条件に応じて光源装置の出射光量を調整する。これにより、投写条件の変更により、投写画像の表示サイズ、もしくは環境光の輝度が変化しても、低消費電力化を実現しながら、投写画像の視認性を最適な状態に保つことができる。
【0113】
なお、実施の形態3では、輝度0%画像を投写させたときの照度センサの検出値に基づいて環境光の輝度を推定する構成について説明したが、輝度0%画像(または輝度100%画像)を投写させたときの撮像画像に基づいて環境光の輝度を推定する構成としてもよい。この場合、DMD40で形成される輝度0%画像(または輝度100%画像)と、輝度0%画像(または輝度100%画像)の撮像画像との差分に基づいて、環境光の輝度を推定することができる。
【0114】
[実施の形態4]
実施の形態4では、立体的に投写画像を知覚させる三次元表示が可能に構成されたプロジェクタに対する本発明の適用について説明する。
【0115】
図17は、三次元表示が可能なプロジェクタの一形態を説明する概念図である。本実施の形態4では、三次元表示の一形態として、右目用の映像光を画面右側に、左目用の映像光を画面左側に位置させたサイドバイサイド方式を用いる。なお、三次元表示の方式は、サイドバイサイド方式に特に限定されず、周知の各種方法を用いてもよい。また、サイドバイサイド方式としては、右目用の映像光と左目用の映像光とを左右に分割して形成する構成に代えて、右目用の映像光と左目用の映像光とを上下に分割して形成する構成としてもよい。
【0116】
図17を参照して、実施の形態4によるプロジェクタ100には、三次元表示用の映像信号が入力される。この三次元表示用の映像信号は、左目用(L側)の映像信号のフレームと右目用(R側)の映像信号のフレームとが、それぞれ水平方向に1/2に圧縮され、さらにこれらが横方向に並べられて1フレームを構成する。プロジェクタ100の投影方向には、プロジェクタ100から出射される映像光を遮光または透過させるための光学シャッタ70と、L側またはR側に対応する偏光方向に入射される光を偏光するための偏光素子80とが配置される。
【0117】
プロジェクタ100では、DMD40によって、L側映像信号に対応する映像光(左目用の映像光)と、R側映像信号に対応する映像光(右目用の映像光)とが順次形成される。左目用の映像光および右目用の映像光は、プロジェクタ100から時分割で出射されると、光学シャッタ70を通過し、さらに偏光素子80によって所定の偏光方向に偏光された後に、投写面に表示される。
【0118】
ユーザは、偏光メガネ1000を装着することにより、左目には左目用の映像光が入射され、右目には右目用の映像光が入射される。これにより、ユーザは両眼視差による立体映像を知覚することができる。なお、二次元表示では、このような両眼視差がないため、左目で視認される映像と、右目で視認される映像とは同じである。
【0119】
このように、1台のプロジェクタ100で三次元表示を行なう場合には、左目用の映像光および右目用の映像光が時分割で表示される。そのため、左目用の映像光および右目用の映像光の各々の光量は、二次元表示を行なう場合の映像光の光量と比較して、1/2に低減される。したがって、二次元表示のときと同じ明るさで画像を三次元表示させるためには、光源装置10の出射光量を2倍に増やすことが必要となる。
【0120】
なお、プロジェクタが多視点三次元表示を実現可能に構成されている場合には、設定される視点数が増えるに従って、左目用の映像光および右目用の映像光の各々の光量はさらに低減する。たとえば視点数をN(Nは自然数)とすると、各映像光の光量は、二次元表示時の映像光の光量の1/(2N)に低減する。
【0121】
本実施の形態4では、二次元表示時の映像光の光量に対する三次元表示時の映像光の光量の割合を、投写画像の明るさの低減度合いを示す輝度低減率として算出する。そして、算出された輝度低減率を三次元表示時における光量調整係数K3Dとして、光源装置10の出射光量を調整する。
【0122】
図18は、本発明の実施の形態4に係るプロジェクタにおける光量調整を実現するための制御処理手順を示したフローチャートである。なお、図18に示すフローチャートは、図4に示したフローチャートにおけるステップS06の処理(光源装置10の光量調整処理)として実行されるものである。
【0123】
図18を参照して、投写条件推定部360は、ステップS011により、光量調整係数Kz,Kdを取得すると、続いてステップS012により、プロジェクタ100が三次元表示をしているか否かを判定する。プロジェクタ100が二次元表示をしている場合(ステップS012のNO判定時)には、投写条件推定部360は、輝度低減率が1であることに対応して、光量調整係数K3D=1に設定する。
【0124】
これに対して、プロジェクタ100が三次元表示をしている場合(ステップS012のYES判定時)には、投写条件推定部360は、ステップS013に進み、三次元表示による輝度低減率を算出する。そして、投写条件推定部360は、算出した輝度低減率を、光量調整処理における光量調整係数K3Dに設定する。すなわち、視点数Nを用いて、光量調整係数K3D=1/(2N)に設定される。
【0125】
次に、投写条件推定部360は、ステップS015により、光源装置10の目標光量Lgを設定する。このステップS015の処理は、図12のステップS062の処理と同じである。
【0126】
投写条件推定部360は、ステップS016では、目標光量Lgおよび光量調整係数Kz,Kd,K3Dに基づいて、現在の投写条件において投写映像を所望の明るさとするために必要な光源装置10の出射光量Lpを設定する。
【0127】
本実施の形態4では、目標光量Lgと現在の投写条件での光源装置10の出射光量(現在の光量)Lpとの間には、式(4)に示す関係が成立する。
【0128】
【数4】

【0129】
上記の式(4)は、本実施の形態1による光量調整処理で示した式(1)と比較して、現在の光量Lpに、三次元表示の視点数Nに基づく光量調整係数K3Dをさらに乗算する点で異なる。三次元表示における視点数Nが増えるほど、すなわち、光量調整係数K3Dが小さくなるほど、左目用および右目用の映像光の光量が少なくなり、投写画像の明るさが低下するためである。本実施の形態3では、光量調整係数K3Dが小さい場合には、二次元表示時(光量調整係数K3D=1)の目標光量Lgに比べて光源装置10の出射光量Lpを増大させることによって、三次元表示時の画像を所望の明るさとする。
【0130】
投写条件推定部360は、ステップS016の処理によって光源装置10の出射光量Lpを設定すると、ステップS017では、出射光量Lpを出射光量の指令値として、光源装置10へ出力する。光源装置10は、投写条件推定部360から与えられる出射光量の指令値に従って、複数の光源10R,10G,10Bの出射光量を調整する。
【0131】
このように、本発明の実施の形態4によるプロジェクタによれば、投写条件として、ズーム倍率および投写距離に加えて、三次元表示による輝度低減率を推定し、その推定した投写条件に応じて光源装置の出射光量を調整する。これにより、投写条件の変更により、三次元表示時においても、投写画像の視認性を最適な状態に保つことができる。
【0132】
なお、実施の形態2〜4では、投写画像の視認性に影響を及ぼすパラメータとして、投写面の反射率、環境光の輝度、三次元表示時の輝度低減率をそれぞれ例示するとともに、パラメータごとに光量調整処理手順について説明した。しかしながら、これらのパラメータを組合せて光量調整処理を実行することも可能である点について確認的に記載する。
【0133】
また、実施の形態1〜4では、光源装置から出射される光を変調する光変調素子として、DMDを例示したが、反射型の液晶パネルや、透過型の液晶パネルであってもよい。
【0134】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0135】
10 光源装置、10R,10G,10B 光源、20 クロスダイクロイックミラー、30 ミラー、50 投写ユニット、51 投写レンズユニット、52 反射ミラー、70 光学シャッタ、80 偏光素子、100 プロジェクタ、200 本体キャビネット、210 投写口、310 テストパターン発生部、320 映像信号入力部、330 セレクタ、340 操作受付部、350 投写条件推定部、360 投写条件推定部、370 操作受付部、400R,400G,400B 冷却部、400 撮像画像、410G,410B ヒートシンク、410 投写領域、420G,420B ヒートパイプ、500 撮像部、1000 偏光メガネ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源装置と、
入力された映像信号に基づいて前記光源装置から出射された光を変調して映像光を生成する光変調素子と、
前記光変調素子で生成された映像光を投写面に投写する投写部と、
前記投写面を撮像して撮像画像を生成する撮像部と、
前記撮像画像に基づいて、少なくとも前記投写部が投写する画像の表示サイズを指定するための投写条件を推定するための投写条件推定手段と、
前記投写条件推定手段によって推定された前記投写条件に応じて、投写画像が所定の明るさとなるように、前記光源装置の出射光量を調整するための光量調整手段とを備える、投写型映像表示装置。
【請求項2】
前記投写型映像表示装置は、二次元表示と三次元表示とを切替え可能に構成され、
前記投写部は、左目用の映像信号に基づく第1の映像光と右目用の映像信号に基づく第2の映像光とを時分割で投写することにより、前記投写面に前記三次元表示を実現するように構成され、
前記投写条件推定手段は、前記二次元表示のときの投写画像の輝度に対して前記三次元表示のときの投写画像の輝度が低減する割合である輝度低減率を推定するための輝度低減率推定手段を含み、
前記光量調整手段は、前記投写条件推定手段によって推定された前記投写条件および前記輝度低減率に応じて、前記光源装置の出射光量を調整する、請求項1に記載の投写型映像表示装置。
【請求項3】
前記投写条件推定手段は、環境光の輝度を推定するための環境光輝度推定手段を含み、
前記光量調整手段は、前記投写条件推定手段によって推定された前記投写条件および前記環境光の輝度に応じて、前記光源装置の出射光量を調整する、請求項1に記載の投写型映像表示装置。
【請求項4】
前記投写条件推定手段は、前記投写面の反射率を推定するための反射率推定手段を含み、
前記光量調整手段は、前記投写条件推定手段によって推定された前記投写条件および前記投写面の反射率に応じて、前記光源装置の出射光量を調整する、請求項1に記載の投写型映像表示装置。
【請求項5】
前記投写部は、投写画角を調整することにより、映像光を任意のズーム倍率で投写可能に構成され、
前記投写条件推定手段は、前記投写部が投写する画像の表示サイズを指定するための投写条件として、前記ズーム倍率および投写距離を推定する、請求項1から4のいずれか1項に記載の投写型映像表示装置。
【請求項6】
前記光量調整手段は、少なくとも前記ズーム倍率および投写距離をパラメータとして算出された光量調整係数を有し、前記推定された前記ズーム倍率および投写距離に応じて前記光量調整係数を設定する、請求項5に記載の投写型映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−73076(P2013−73076A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212795(P2011−212795)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】