説明

抗β1アドレナリン受容体抗体を阻害する手段

本発明は、以下の(a)〜(d)を含む群より選択されるペプチドに関する:
(a)下記式(I)の環状ペプチド:
シクロ(Ala-x-x-x-x-x-x-x-x-x-Cys-x-x-x-Pro-x-Cys-Cys-xk-Gln) (I)
式中、kは0〜6の任意の整数、好ましくは1〜6の任意の整数であり、より好ましくはkは6である;
(b)下記式(II)の環状ペプチド:
シクロ(Ala-x-x-Trp-x-x-Gly-x-Phe-x-Cys-xh-Gln) (II)
式中、hは0〜2の任意の整数、好ましくは1又は2である;
(c)下記式(III)の環状ペプチド:
シクロ(Ala-x-x-x-x-x-x-x-x-x-Cys-xj-Cys-x-x-x-Pro-x-Cys-Cys-xi-Gln) (III)
式中、jは0〜4の任意の整数であり、好ましくはjは4であり;iは0〜6の任意の整数、好ましくは1〜6の任意の整数であり、より好ましくはiは6である;及び
(d)下記式(IV)のペプチド:
Ala-xl-Cys-xm-Cys-x-x-x-Pro-x-Cys-Cys-xn-Gln (IV)
式中、lは0〜9の任意の整数、好ましくは1〜9の任意の整数であり、より好ましくはnは9であり;mは0〜4の任意の整数、好ましくは1〜4の任意の整数であり、より好ましくはmは4であり;nは0〜6の任意の整数、好ましくは1〜6の任意の整数であり、より好ましくはnは6であり;xは任意のアミノ酸、好ましくは任意の天然アミノ酸、より好ましくは任意の天然Lアミノ酸である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド、抗β1アドレナリン受容体抗体の検出及び阻害におけるそれらの使用、並びにそれらを含む診断薬剤及び薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
拡張型心筋症(DCM)は若年者の重篤な心疾患であり、処置しなければ心機能を徐々に衰弱させる。その衰弱とは心筋が拡張する際の心機能の低下に基づくものである。拡張型心筋症はこの症例の約30%において遺伝的要因によるものであり、症例の約10%は毒性物質(例えば、アルコール及び化学療法)に起因し、症例の残りの60%は心筋の急性的又は慢性的な感染並びにそれに付随して起こる免疫学的二次反応に起因する。最終的には、心臓移植が拡張型心筋症の処置のために選択される手段である。処置を行わなければ、患者は早期に死亡する(Richardson et al. (1996) Circulation, 93, 841-842(非特許文献1))。
【0003】
明確な病因なく心機能を喪失することで特徴付けられる突発性拡張型心筋症においては、心疾患と多種の心筋抗原(例えば、ミオシンの重鎖、ラミニン及びADP/ATPトランスポーターに対する自己抗体)に対する自己免疫反応との相関関係が見出された(Schulze et al.(1990) Circulation, 81, 859-869(非特許文献2))。しかし、これらの抗原のどれかが病因論的に関連するという証拠はない。対照的に、心臓のβ1受容体に対する機能性抗体が、拡張型心筋症の病因において重要な役割を果たすことが見出された。免疫学的な分析により、β1アドレナリン受容体の合計三つの細胞外ドメインのうちの第二の細胞外ドメインがT細胞エピトープ及びB細胞エピトープを提示すること(Hoebecke et al. (1994), Methods Neuroscie. 25, 345-365(非特許文献3))、つまり第一のWitebskyの仮説に従う自己抗原の基準を満たすことが明らかになった。
【0004】
この自己抗原が拡張型心筋症の病因に関連するという実験的証拠を提供するために、第二のWitebskyの仮説に従う免疫性心筋症の誘導が試された。ラットモデルにおいて、β1アドレナリン受容体の第二細胞外ドメイン(β1-ECII)に対する刺激性抗β1-AR抗体が拡張型心筋症の病因に関与するという実験的証拠が提供された(Jahns et al. (2004) J. Clin. Invest. 113, 1419-1429(非特許文献4))。使用されたβ1-ECII-/GST融合蛋白質はヒトとラットの間で100%の相同性を示した。β1-ECIIに対して免疫された各動物は刺激性抗β1抗体を産生し、左心室の重度の進行性拡張及びポンプ機能不全を発症した(これらは心エコー検査で検出でき、その動物の侵襲的測定及び組織学的分析により確認された免疫性心筋症と一致する)。β1自己抗体を刺激するために、β1抗体陽性動物の血清を、四週間毎に遺伝的に同一のラットの静脈内に移植した。ここでも、血清移植後9ヶ月で穏やかに進行する拡張型免疫性心筋症が観察された(これらは心エコー検査により証明され、移植動物の心臓の侵襲的測定及び形態学的組織学的研究によっても確認された)。このアプローチにより、β1抗体誘導性の免疫性心筋症が移植され得ること、すなわち拡張型心筋症の自己免疫的病因に関する古典的な第三のWitebskyの仮説を満たすことが初めて示された(Freedman & Lefkowitz (2004) J. Clin. Invest. 113, 1378-1382(非特許文献5))。
【0005】
動物実験に加え、患者由来の血液サンプルについてもβ1受容体抗体の分析が行われた。Jahnsらは、心不全及び突発性拡張型心筋症に罹患した全患者の約30%において組換えヒトβ1受容体に対する自己抗体を検出した。これらの患者は、このようなβ1受容体抗体を有さない患者と比較して有意に低下した心機能を示す(Jahns et al.(1999) Circulation 99,649-654(非特許文献6))。この抗体の刺激効果は、心臓選択的β1遮断剤ビソプロロールによって打ち消すことができた。このような背景から、Jahnsら(Jahns et al.(1999), Circulation 99, 649-654(非特許文献6);Jahns et al.(2000) JACC 36, 1280-1287(非特許文献7);Jahns et al. (2004) JCI 113, 1419-1429(非特許文献4))は、抗β1アドレナリン受容体抗体とネイティブの組換え及び非組換えβ1アドレナリン受容体の間の相互作用の阻害剤としてβ1受容体拮抗剤(例えば、ビソプロロール)を使用することを提案した。
【0006】
拡張型心筋症の処置に関する代替的な治療アプローチは、免疫吸着法及び免疫アフェレーシス法を用いて機能性でかつ潜在的に有害なβ1受容体抗体を有する患者の循環からこの抗体を除去することである。このような手法において、患者の血液は、非受容体相同ペプチド結合マトリクスを用いて又はプロテインAカラム若しくはヤギ抗ヒトIgG抗体結合マトリクスにこの抗体を結合させることによって、IgGサブクラスの抗体を非特異的に除去することによりβ1アドレナリン受容体に対する自己抗体を除去するカラムを通される。しかしこのような手法は時間も労力もかかる。さらに、そのように処置された患者の血液からは全ての免疫グロブリンが非特異的に除去されるので、例えば、免疫系及び免疫応答の不均等化等の様々な不利益が生じる。それにも関わらず、抗体陽性DCM患者は少なくとも短期的にはこのような処置からの利益を享受すると考えられる。
【0007】
従って、本発明の根幹をなす課題は、抗β1アドレナリン受容体抗体の阻害のためのさらなる手段を提供することである。より具体的には、本発明の根幹をなす課題は、抗β1アドレナリン受容体抗体の阻害のための手段を提供することである。
【0008】
【非特許文献1】Richardson et al. (1996) Circulation, 93, 841-842
【非特許文献2】Schulze et al.(1990) Circulation, 81, 859-869
【非特許文献3】Hoebecke et al. (1994), Methods Neuroscie. 25, 345-365
【非特許文献4】Jahns et al. (2004) J. Clin. Invest. 113, 1419-1429
【非特許文献5】Freedman & Lefkowitz (2004) J. Clin. Invest. 113, 1378-1382
【非特許文献6】Jahns et al.(1999) Circulation 99,649-654
【非特許文献7】Jahns et al.(2000) JACC 36, 1280-1287
【発明の開示】
【0009】
本発明の根幹をなす課題は、第一の局面において、以下の(a)〜(d)を含む群より選択されるペプチドにより解決される:
(a)下記式Iの環状ペプチド:

式中、kは0〜6の任意の整数、好ましくは1〜6の任意の整数であり、より好ましくはkは6である;
(b)下記式IIの環状ペプチド:

式中、hは0〜2の任意の整数、好ましくは1又は2である;
(c)下記式IIIの環状ペプチド:

式中、jは0〜4の任意の整数であり、好ましくはjは4であり;
iは0〜6の任意の整数、好ましくは1〜6の任意の整数であり、より好ましくはiは6である;
及び
(d)下記式IVのペプチド:

式中、lは0〜9の任意の整数、好ましくは1〜9の任意の整数であり、より好ましくはnは9であり、
mは0〜4の任意の整数、好ましくは1〜4の任意の整数であり、より好ましくはmは4であり、
nは0〜6の任意の整数、好ましくは1〜6の任意の整数であり、より好ましくはnは6であり、
xは任意のアミノ酸、好ましくは任意の天然アミノ酸、より好ましくは任意の天然Lアミノ酸である。
【0010】
1つの態様において、ペプチドは下記式Iaの環状ペプチドである:

式中、kは0〜6の任意の整数、好ましくは1〜6の任意の整数であり、より好ましくはkは6であり;
x1は個々に独立して酸性アミノ酸を含む群より選択され;かつ
x2は個々に独立して塩基性アミノ酸を含む群より選択される。
【0011】
1つの態様において、ペプチドは下記式Ibの環状ペプチドである:

式中、x1は個々に独立して酸性アミノ酸を含む群より選択され;
x2は個々に独立して塩基性アミノ酸を含む群より選択され;
x3は個々に独立してLeu、Ile、Val、Met、Trp、Tyr及びPheを含む群より選択され;
x4は個々に独立してSer、Thr、Ala及びGlyを含む群より選択され;かつ
x5は個々に独立してGln、Asnを含む群より選択される。
【0012】
1つの態様において、ペプチドは下記式Ic:

のペプチドである。
【0013】
好ましい態様において、酸性アミノ酸残基の少なくとも1つが、酸性アミノ酸を含む群より選択される異なるアミノ酸で置換される。
【0014】
好ましい態様において、塩基性アミノ酸残基の少なくとも1つが、塩基性アミノ酸を含む群より選択される異なるアミノ酸で置換される。
【0015】
好ましい態様において、脂肪族アミノ酸残基の少なくとも1つが、脂肪族アミノ酸を含む群より選択される異なるアミノ酸で置換される。
【0016】
より好ましい態様において、Alaアミノ酸残基の少なくとも1つがGluで置換される。
【0017】
1つの態様において、ペプチドは下記式IIaの環状ペプチドである:

式中、nは0〜2の整数、好ましくは1又は2であり;
x1は個々に独立して酸性アミノ酸を含む群より選択され;
x2は個々に独立して塩基性アミノ酸を含む群より選択され;
x3は個々に独立してLeu、Ile、Val、Met、Trp、Tyr及びPheを含む群より選択され;かつ
x4は個々に独立してSer、Thr、Ala及びGlyを含む群より選択される。
【0018】
好ましい態様において、ペプチドは下記式IIb:

のペプチド又は下記式IIc:

のペプチドである。
【0019】
より好ましい態様において、酸性アミノ酸残基の少なくとも1つが、酸性アミノ酸を含む群より選択される異なるアミノ酸で置換される。
【0020】
別のより好ましい態様において、塩基性アミノ酸残基の少なくとも1つが、塩基性アミノ酸を含む群より選択される異なるアミノ酸で置換される。
【0021】
別のより好ましい態様において、脂肪族アミノ酸残基の少なくとも1つが、脂肪族アミノ酸を含む群より選択される異なるアミノ酸で置換される。
【0022】
別のより好ましい態様において、少なくとも1つのAlaアミノ酸残基がGluで置換される。
【0023】
好ましい態様において、ペプチドは下記式IIIaの環状ペプチドである:

式中、iは0〜6の任意の整数、好ましくは1〜6の任意の整数であり、より好ましくはiは6であり;
jは0〜4の任意の整数、好ましくは1〜4の任意の整数であり、より好ましくはjは4であり;
x1は個々に独立して酸性アミノ酸を含む群より選択され;
x2は個々に独立して塩基性アミノ酸を含む群より選択され;
x3は個々に独立してLeu、Ile、Val、Met、Trp、Tyr及びPheを含む群より選択され;かつ
x4は個々に独立してSer、Thr、Ala及びGlyを含む群より選択される。
【0024】
より好ましい態様において、ペプチドは下記式IIIb:

のペプチドである。
【0025】
より好ましい態様において、酸性アミノ酸残基の少なくとも1つが、酸性アミノ酸を含む群より選択される異なるアミノ酸で置換される。
【0026】
別のより好ましい態様において、塩基性アミノ酸残基の少なくとも1つが、塩基性アミノ酸を含む群より選択される異なるアミノ酸で置換される。
【0027】
別のより好ましい態様において、脂肪族アミノ酸残基の少なくとも1つが、脂肪族アミノ酸を含む群より選択される異なるアミノ酸で置換される。
【0028】
別のより好ましい態様において、Alaアミノ酸残基の少なくとも1つがGluで置換される。
【0029】
好ましい態様において、ペプチドは下記式IVaの直鎖状ペプチドである:

式中、nは0〜6の任意の整数、好ましくは1〜6の任意の整数であり、より好ましくはnは6であり;
mは0〜4の任意の整数、好ましくは1〜4の任意の整数であり、より好ましくはmは4であり;
x1は酸性アミノ酸を含む群より選択され;
x2は塩基性アミノ酸を含む群より選択され;
x3はLeu、Ile、Val、Met、Trp、Tyr及びPheを含む群より選択され;かつ
x4はSer、Thr、Ala及びGlyを含む群より選択される。
【0030】
より好ましい態様において、ペプチドは下記式IVb:

のペプチドである。
【0031】
さらなる局面において、本発明は、以下の2つの式:

のいずれかを有する環状ペプチドに関する。両ペプチドは、式IVに包含されるが追加的な環状ペプチドであることが理解されるはずである。
【0032】
別のより好ましい態様において、酸性アミノ酸残基の少なくとも1つが、酸性アミノ酸を含む群より選択される異なるアミノ酸で置換される。
【0033】
別のより好ましい態様において、塩基性アミノ酸残基の少なくとも1つが、塩基性アミノ酸を含む群より選択される異なるアミノ酸で置換される。
【0034】
別のより好ましい態様において、脂肪族アミノ酸残基の少なくとも1つが、脂肪族アミノ酸を含む群より選択される異なるアミノ酸で置換される。
【0035】
別のより好ましい態様において、少なくとも1つのAlaアミノ酸残基がGluで置換される。
【0036】
1つの態様において、ペプチドが環状ペプチドである場合に、その環化は、S-S連結、ペプチド結合、炭素結合(例えば、C-C又はC=C)、エステル結合、エーテル結合、アゾ結合、C-S-C連結、C-N-C連結、及びC=N-C連結を含む群より選択される共有結合である連結により生じる。
【0037】
好ましい態様において、S-S連結はペプチド上の2つのCys残基により形成される。
【0038】
代替的な好ましい態様において、ペプチド結合は、N末端アミノ酸のNH2基及びC末端アミノ酸のCOOH基により形成される。
【0039】
別の代替的な好ましい態様において、さらなる結合が構成アミノ酸のNH2基及びCOOH基の側鎖によって形成される。
【0040】
本発明の根幹をなす課題は、第二の局面において、本発明の第一の局面によるペプチドの少なくとも1つ及び担体を含む組成物により解決される。
【0041】
本発明の根幹をなす課題は、第三の局面において、本発明の第一の局面によるペプチドの少なくとも1つを含む診断薬剤により解決される。
【0042】
1つの態様において、診断薬剤は抗βアドレナリン受容体抗体の検出のためのものである。
【0043】
好ましい態様において、診断薬剤は生物学的に活性なさらなる化合物を少なくとも1つ含む。
【0044】
本発明の根幹をなす課題は、第四の局面において、本発明の第一の局面によるペプチド又は本発明の第三の局面による診断薬剤を含む、抗β1アドレナリン受容体抗体検出用診断キットにより解決される。
【0045】
本発明の根幹をなす課題は、第五の局面において、本発明の第一の局面によるペプチドの少なくとも1つ及び薬学的に許容できる担体を含む薬学的組成物により解決される。
【0046】
1つの態様において、薬学的組成物は薬学的に活性なさらなる薬剤を追加的に含む。
【0047】
好ましい態様において、薬学的に活性なさらなる薬剤は、β受容体遮断剤、好ましくは選択的β1アドレナリン受容体遮断剤を含む群より選択される。
【0048】
より好ましい態様において、薬学的に活性なさらなる薬剤は、アテノロール、メトプロロール、ネビボロール及びビソプロロールを含む選択的β1アドレナリン受容体遮断剤又は非選択的β遮断剤カルベジロールの群より選択される。
【0049】
本発明の根幹をなす課題は、第六の局面において、薬物の製造のための本発明の第一の局面によるペプチドの使用により解決される。
【0050】
1つの態様において、薬物は疾患の処置及び/又は予防のためのものであり、このような疾患は、感染性心疾患及び非感染性心疾患、虚血性心疾患及び非虚血性心疾患、炎症性心疾患及び心筋炎、心拡大、突発性心筋症、突発性拡張型心筋症、免疫性心筋症、心不全、並びに心室性期外捕捉収縮及び上室性期外捕捉収縮(ventricular and supraventricular premature capture beats)を含む任意の心不整脈、を含む心疾患の群より選択される。
【0051】
好ましい態様において、疾患は突発性拡張型心筋症、好ましくは抗β-AR抗体誘導性の拡張型免疫性心筋症である。
【0052】
1つの態様において、薬物は薬学的に活性なさらなる薬剤を少なくとも1つ含む。
【0053】
1つの態様において、薬物はβアドレナリン受容体、好ましくはβ1アドレナリン受容体に対する抗体を有する患者の処置及び/又は予防のためのものである。
【0054】
1つの態様において、薬物は免疫寛容を誘導するためのものである。
【0055】
本発明の根幹をなす課題は、第七の局面において、免疫寛容、好ましくは抗βアドレナリン受容体抗体の産生の抑制による免疫寛容、より好ましくは抗β1アドレナリン受容体抗体の産生の抑制による免疫寛容を誘導するための薬物の製造のための、本発明の第一の局面によるペプチドの使用により解決される。
【0056】
本発明の根幹をなす課題は、第八の局面において、抗体産生プレB細胞の抗原認識部位の遮断を通じた抗β1アドレナリン受容体抗体の産生の抑制による免疫寛容を誘導するための、本発明の第一の局面によるペプチドの使用により解決される。
【0057】
なおさらなる局面において、本発明の根幹をなす課題は、診断方法における本発明によるペプチドの使用により解決される。
【0058】
1つの態様において、該方法は、突発性拡張型心筋症、好ましくは抗β-AR抗体誘導性の拡張型免疫性心筋症の診断のためのものである。
【0059】
好ましい態様において、該方法はFRETベースの方法である。
【0060】
以下、いかなる学説にも拘束されることを望まない。本発明者らは驚くべきことに、環状ペプチド及び直鎖状ペプチド共に多くのペプチドが、原理的に、抗βアドレナリン受容体抗体の阻害剤として、より具体的には抗β1アドレナリン受容体抗体の阻害剤として作用することを見出した。しかし図2は、環状ペプチドが見かけ上、直鎖状ペプチドの2〜3倍、抗βアドレナリン受容体抗体によって、より具体的には抗β1アドレナリン受容体抗体によって認識されること(すなわち、同じ抗体濃度において2〜3倍高いDO値を生ずること)を実証する。さらに、頭尾(head-to-tail)型の分子構造が、分子内システイン架橋と共に、インビボでの熱分解、化学分解及び酵素分解に対する環状ペプチドの耐性を強化していると考えられる(Ireland D.C. et al. (2006) J Mol Biol 12, 1-14)。
【0061】
図12及び図13に示され実施例3及び4にも記載されることだが、拡張型心筋症及び刺激性抗β1アドレナリン受容体抗体に起因するその他の疾患の処置に使用され得る先行技術の薬剤、すなわちβ遮断剤(例えば、ビソプロロール)は、心拍数及び血圧の両方を有意に低下させるということを認識する必要がある。つまり、気管支痙攣を誘導する可能性があるためにβ遮断剤に対して禁忌を示す気管支ぜん息患者において、又はすでに心拍数の低下及び/若しくは全身血圧の低下を起こした患者においては、さらなる心拍数又は血圧の低下が重篤な結果(死又は外科手術(すなわちペースメーカーの移植)の必要性等)をもたらし得るため、ビソプロロール及び類似作用の化合物を使用することができない。これとは対照的に、本発明のペプチドは、肺機能、心拍数又は血圧に対して負の影響を有さず、従って、別の方法でβ遮断剤を用いて処置することができない特別な患者群、すなわち、すでに徐脈を起こしているため先行技術のβ遮断剤(例えば、ビソプロロール)の使用ができない患者の処置に適する。
【0062】
また、本発明者らは驚くべきことに、本発明によるペプチドが、β1アドレナリン受容体を活性化することにより特に拡張型免疫性心筋症及び心不全を誘発する自己抗体の捕捉とは明らかに異なる別機序を通じて作用することを見出した。それよりも、抗β1アドレナリン受容体抗体の内因的産生が、予防的に処置した動物(図4)及び治療的に処置した動物(図8)の両方において急速に減少し最終的には5〜6ヶ月以内に停止することから、本発明によるペプチドは免疫寛容を誘導するのに適するようである。本発明者らが大いに驚いたのは、図4及び図8に示されるように、僅か数ヶ月内に追加抗原刺激(4週間毎)に対して有意な免疫反応が観察されなくなったことである。このことは、β1受容体抗原に対する継続的なアネルギーによる脱感作に相当するある種の免疫学的寛容が起こったこと、その効果は、抗β1-ECII産生B細胞の有意な減少及び/又は抑制(恐らくアポトーシスさえも起こす)に起因する可能性が最も高いことを意味する。実際、この免疫学的寛容の性質をさらに分析すると、環状ペプチドの存在下で抗原特異的抗体を産生する脾B細胞が有意に減少すること(図20)、それに対して調節性CD4+ T細胞及び/又はその他のT細胞誘導性の耐性機序は、この非応答状態を明確に説明するものではないことが明らかになった。図19は、予防的(図19a)又は治療的(図19b)に処置した抗β1-ECII抗体陽性免疫動物から単離したCD4+ T細胞を用いて実施した典型的なT細胞リコールアッセイを示す。このアッセイは、Schmidt, J. et al. J. of Neuroimmunology 140, 143-152 (2003)の文献に従い実施した。いずれの処置群においても、単離したCD4+ T細胞を環状ペプチド(特にβ1-ECII 25AA(アミノ酸)ペプチド(式Icを有するペプチド又は式Icのペプチドと称する))と共にインキュベートすることにより、T細胞をβ1-ECII/GST融合蛋白質抗原(FP 1.0μg/mL又はO.lμg/mL)又は非特異的T細胞刺激物質コンカナバリンA(ConA、正の対照)と共にインキュベートした際に見られる用量依存的な細胞増殖反応と比較して有意な刺激及びその後のT細胞増殖を示さなかった。対照的に、図20は、脾B細胞を用いたELISPOTアッセイの結果を示す。その結果は、特異的抗β1-ECII IgGを分泌するB細胞が、1 mg/kgの式Icの環状ECII-25AAペプチドで処置した動物の脾臓において顕著な影響を受け有意に減少するのに対し、処置動物の骨髄中に永続する抗β1-ECII特異的メモリーB細胞はこの環状ペプチドによる影響を受けないことを実証する。外来(微生物等)抗原に対するあらゆる種の体液性応答に必要とされる脾臓又は骨髄中のβ1-ECII非特異的な、すなわち総IgG産生性のB細胞は、1 mg/kgの式Icの環状ペプチドで処置した動物において全く影響を受けなかった(環状ペプチドによる広汎な免疫抑制効果を除く)。
【0063】
本発明の多種のペプチドについて、少なくともいくつかの固定のアミノ酸残基及びそれらの空間的配置により規定される各ペプチドの全体的な二次構造及び三次構造が確保される限り、その一次配列、すなわちアミノ酸配列においては一定の柔軟性及び変動性が生じ得ることが理解されると考えられる。さらに、アミノ酸の数、つまり一次構造の長さは、本発明の多種のペプチドの生物学的効果に関して重要であると考えられる。26アミノ酸又はそれ以上のペプチド長(一次構造)が、免疫応答性T細胞を直接的に(すなわち、担体蛋白質を使用せずに)刺激することができると考えられ、それによって、T細胞媒介性のB細胞刺激を通じた抗β1受容体抗体産生の逆説的な増加を惹起し得る(データは示さず)。従って、少数の追加のパイロット動物を用いたその後の治療研究において、本発明者らは、25アミノ酸β1-ECIIペプチドの短縮型ペプチド変異体、すなわち18アミノ酸(AA)又は16アミノ酸のいずれかを含む環状ペプチド変異体を試験した。作製した構築物は、

であった。循環の抗β1-ECII抗体価は25AA環状ペプチドIc又は18AA構築物のいずれによってもほぼ同程度減少したが(図8b参照)(両者はまた、同じような生物学的効果(すなわち、心筋症表現型の逆転;図10d参照)を生じる)、16AA構築物は両者よりも効果が小さいようであり、循環の抗β1-ECII抗体価の持続的減少(図8bの灰色のダイヤモンド参照:ペプチド注射によっても抗体価は減少せずに安定的である)及び生物学的効果(すなわち、2匹の処置ラットにおける曖昧な結果(一方の動物は心筋症の表現型を完全に逆転させたが、もう一方の動物は進行性のLV拡張及び機能不全を示した);図10d参照)は、環状受容体相同ペプチドがその有益な生物学的効果を獲得するのに一定の長さが必要と考えられることを示す。
【0064】
この限りにおいて、アミノ酸配列が規定されているという点で具体的なペプチドは、より一般的なペプチド、すなわち、本明細書の一般式により表現されるペプチドの、特に好ましい態様である。
【0065】
従って、多種の一般式は、式I、II、III及びIVで示される基本ペプチド構造を参照し、より具体的な式、つまりペプチドは、本明細書中ではそれぞれ式Ia、Ib、Ic、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa及びIVbで示される式I、II、III及びIVに包含されるが一般性の低い様式でさらに規定される。個々のアミノ酸は、好ましくは両アミノ酸が同じアミノ酸のカテゴリーに属する場合に、別の天然アミノ酸又は合成アミノ酸で置換され得ることもまた当業者に理解されるはずである。従って、例えば、酸性アミノ酸は別の酸性アミノ酸で置換され得、塩基性アミノ酸は別の塩基性アミノ酸で置換され得る等である。本発明のペプチドを形成する1つ又は複数のアミノ酸が修飾され得ることもまた当業者に認識されるはずである。従って、本明細書中で使用される任意のアミノ酸は、好ましくはその修飾型をも表す。例えば、本明細書中で使用されるアラニン残基は、修飾アラニンも含む。特にこのような修飾はメチル化又はアシル化等であり得、このような修飾又は修飾アミノ酸は、好ましくは、そのような修飾アミノ酸、より具体的にはそのような修飾アミノ酸を含むペプチドが、本明細書中に規定されるように機能的に活性である限り、より具体的にはβ1アドレナリン受容体の阻害剤として機能的に活性である限り、さらに好ましくはβ1アドレナリン受容体と抗体(より好ましくはβ1アドレナリン受容体に対する自己抗体)の間の相互作用を阻害する上で有効である限りにおいて本発明に包含される。このようなペプチド、すなわち1つ又は複数の修飾アミノ酸を含むペプチドがこの要件を満たすか否かを決定するための各アッセイは当業者に公知であり、とりわけ本明細書(特に実施例の部)にも記載される。
【0066】
本発明はまた、ペプチドの誘導体、例えば、HCl、H2SO4、H3PO4、リンゴ酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、酢酸等の生理的有機酸及び無機酸との塩を含む。
【0067】
本明細書中で使用される場合、多種のペプチドの配列は、N末端からC末端に向かって示され、N末端が各々記載されるアミノ酸配列の左側、そしてC末端が右側である。
【0068】
好ましくは酸性アミノ酸は、Asp、Asn、Glu及びGlnを含む群より選択されるアミノ酸であり;好ましくは塩基性アミノ酸は、Arg及びLysを含む群より選択されるアミノ酸であり;好ましくは中性アミノ酸は、Gly、Ala、Ser、Thr、Val、Leu、Ileを含む群より選択されるアミノ酸であり;好ましくは脂肪族アミノ酸は、Gly、Ala、Ser、Thr、Val、Leu、Ile、Asp、Asn、Glu、Gln、Arg、Lys、Cys及びMetを含む群より選択されるアミノ酸である。
【0069】
本明細書中で使用される場合、ある特定のアミノ酸(例えば、塩基性アミノ酸)がそれぞれの特定のアミノ酸群(例えば、塩基性アミノ酸を含む群)から選択される異なるアミノ酸で置換されるという表現は、好ましくは、その特定のアミノ酸が、このような異なるアミノ酸がそれぞれの特定のアミノ酸群の一部であるという条件下で、別のアミノ酸、すなわち異なるアミノ酸で置換されることを意味する。本明細書で示される限り、これは特定のアミノ酸の各々に適用でき、かつ、このような各々の置換は原理的に、それぞれのペプチドを形成する他のアミノ酸に関して必要に応じてなされる任意の他の置換から独立している。
【0070】
本発明によるペプチドは、診断薬剤として及び疾患の処置のための薬物の製造のために使用され得るか、又は好ましくは抗βアドレナリン受容体抗体の検出のため、より好ましくは抗β1アドレナリン受容体抗体の検出のための組成物、好ましくは薬学的組成物、診断組成物及び診断キットにおいて使用され得る。このような疾患は、好ましくは、β1アドレナリン受容体が非生理学的様式で活性化される、より具体的には抗体により、より好ましくはβ1アドレナリン受容体に対する自己抗体により活性化される疾患である。さらに具体的には、このような疾患は、感染性心疾患及び非感染性心疾患、虚血性心疾患及び非虚血性心疾患、炎症性心疾患及び心筋炎、心拡大、突発性心筋症、突発性拡張型心筋症、免疫性心筋症、心不全、並びに心室性期外捕捉収縮及び上室性期外捕捉収縮を含む任意の心不整脈を含む心疾患群を含むがこれらに限定されない。このような薬学的組成物はまた、βアドレナリン受容体、好ましくはβ1アドレナリン受容体に対する抗体を有する患者の処置のために、追加的又は代替的に使用され得る。本発明による薬学的組成物により処置され得るさらなる下位患者群は、本明細書中に記載される任意の疾患、より具体的には感染性心疾患及び非感染性心疾患、虚血性心疾患及び非虚血性心疾患、炎症性心疾患及び心筋炎、心拡大、突発性心筋症、突発性拡張型心筋症、免疫性心筋症、心不全、並びに心室性期外捕捉収縮及び上室性期外捕捉収縮を含む任意の心不整脈を含む心疾患群に罹患し、同時にβアドレナリン受容体に対する抗体、より好ましくはβ1アドレナリン受容体に対する抗体(好ましい態様において抗体は自己抗体である)を有する患者である。本明細書中で薬学的組成物について言及した事項は、本発明のペプチドを使用する製品薬物についても適用される。本明細書中で使用される場合、化合物及びペプチドは、本明細書中で互換的様式で使用される。
【0071】
本発明のペプチドを少なくとも1つ含むのとは別に、当該組成物は、本発明の環状ペプチドを2つ若しくは複数、及び/又は他のβ遮断剤、より具体的にはβ1アドレナリン受容体遮断剤を含み得る。その例は、特に、ビソプロロール、メトプロロール、アテノロール、ネビボロール、及びカルベジロールである。この種の組み合わせは、本ペプチドによる抗体誘導性の選択的なβ1受容体のダウンレギュレーションからの保護(図17及び18参照)と共にビソプロロール又はメトプロロール等のβ遮断剤による相乗的なβ1受容体のアップレギュレーション(図17及び18参照)を提供し、最終的には動物モデルにおいて見られるような相乗的効果(図10、11及び13参照)をもたらす。従って、心筋症の表現型の逆転は、環状ペプチド単剤療法又はβ遮断剤/ペプチド併用療法によってのみ達成でき、CIBIS I、II及びIII研究及びMERIT-HF研究において報告されるようにヒトの心不全及び拡張型心筋症に有益であることが証明されているものの、β遮断剤の単剤療法によっては成し得ない。
【0072】
典型的には薬学的組成物は、担体、より好ましくは薬学的に許容できる担体、賦形剤、又は希釈剤を含む。
【0073】
皮下注射又は静脈内注射のために、本発明の化合物は、水溶液、好ましくは生理学的に適合する緩衝液(例えば、ハンク溶液、リンガー溶液又は生理食塩水緩衝液)を用いて処方され得る。経粘膜投与及び経肺投与のためには、浸透対象の障壁に適した浸透剤がその処方物において使用される。このような浸透剤は、当技術分野で一般的に知られている。
【0074】
本発明による化合物を全身投与(すなわち静脈内/動脈内投与)又は皮下投与に適した製剤又は薬学的組成物として処方するための薬学的に許容できる担体の使用は、本発明の範囲に含まれる。担体を適当に選択し適切な製造工程を選択することで、本発明の組成物、特に溶液として処方された本発明の組成物は、非経口的に、例えば静脈内注射によって投与され得る。当該化合物は、当技術分野で周知の薬学的に許容できる担体を用いることで、皮下投与又は経口投与に適した製剤として容易に処方できる。このような担体は、本発明による化合物を、処置対象の被験者による経口摂取のための錠剤、丸剤、カプセル剤、糖衣剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤等として処方することを可能にする。
【0075】
体内/細胞内への投与を意図された本発明による化合物又はこれを含有する薬物は、当業者に周知の技術を用いて投与され得る。例えば、このような薬剤は、リポソームで被包され得、その後に上記の通り投与され得る。リポソームは球状の脂質二重層であり、水性の内部空間を有する。リポソーム処方時に水溶液中に存在する全ての分子は、この水性の内部空間に組み込まれる。リポソーム含有物は、外部の微小環境から保護され、かつ、リポソームが細胞膜と融合するため細胞表面付近に効率的に送達される。リポソームに関連する送達系は、Janoffらに対する米国特許第4,880,635号に開示される。その公報及び特許は、有用なリポソーム薬物送達技術の詳細を提供し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0076】
本発明による化合物を含む、非経口投与及び/又は皮下投与のための薬学的組成物は、水溶解形態の活性化合物の水溶液を含む。さらに、活性化合物の懸濁物は、適当な油状注射懸濁物として調製され得る。適切な親油性の溶媒又は賦形剤としては、脂肪油(例えば、ゴマ油若しくはヒマシ油)、若しくは合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチル若しくはトリグリセリド)、又はリポソームがある。水性注射懸濁物は、懸濁物の粘性を増加させる化合物(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、デキストラン等)を含み得る。状況に応じて懸濁物は、高濃度溶液を調製するため及び生体内で物質を継続的に徐放するために適切な安定化剤又は化合物の溶解性を増加させる薬剤も含み得る。
【0077】
本発明による化合物を含む経口用の薬学的組成物は、活性化合物と固体の賦形剤を混合し、得られた混合物を任意で粉砕し、そして所望の場合、適切な補助物質を添加した後に、錠剤又は糖衣剤核部分を得るため顆粒の混合物を処理することによって獲得され得る。
【0078】
適切な賦形剤は、特に、充填剤(例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール等を含む糖)、セルロース調製物(例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン(PVP)等)、及びこれらの任意の2つ以上の混合物である。所望の場合、崩壊剤(例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギニン酸又はこれらの塩(例えば、アルギニン酸ナトリウム)等)が添加され得る。
【0079】
本発明による化合物を含む薬学的組成物としての糖衣剤核部分は、適切なコーティングを施されて提供される。この目的のために、状況に応じてアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラカー溶液、適切な有機溶媒又は溶媒混合物等を含み得る濃縮糖溶液が使用され得る。好ましくは、胃液耐性コーティング(例えば、セルロース誘導体Aquateric(登録商標)、HP50(登録商標)若しくはHP55(登録商標)、メタクリン酸及びメタクリン酸エステルのポリマー(Eutragid(登録商標)L、Eutragid(登録商標)S;遅延型Eutragid(登録商標)RL及びEutragid(登録商標)RS)又はポリビニルの誘導体が使用される。染料又は色素は、識別性のため又は活性化合物の用量の異なる組み合わせを特徴付けるために錠剤又は糖衣剤のコーティングに添加され得る。
【0080】
本発明による化合物を含む経口的に使用され得る薬学的製剤としては、ゼラチンから製造したプッシュフィット(push-fit)型カプセル剤、並びにゼラチン及び可塑剤(例えば、グリセロール又はソルビトール)から製造した軟密封型カプセル剤がある。プッシュフィット型カプセル剤は、活性成分を充填剤(例えば、ラクトース)、結合剤(例えば、デンプン)、及び/又は潤滑剤(例えば、タルク若しくはステアリン酸マグネシウム)、並びに状況に応じて安定化剤と混合した状態で含み得る。軟カプセル剤において、活性化合物は、適切な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィン又は液体ポリエチレングリコール)に溶解又は懸濁され得る。さらに、安定化剤が添加され得る。
【0081】
薬学的組成物は、その適用形式(好ましくは2週間毎又は4週間毎のs.c.適用又はi.v.適用)に基づいて10μg/kg〜100mg/kgの範囲であり得る。ラットにおいては、本発明による化合物の治療レベルを獲得するのに隔月1mg/kg s.c.又はi.v.で十分であり、ヒトに対する各用量は好ましくは約1〜10mg/kg i.v.又はs.c.である。
【0082】
薬学的組成物が、患者における上記化合物を用いた抗β受容体抗体の検出を含む上述の任意の疾患及び患者群の処置のために使用されることは、本発明の範囲内である。また、本発明によるペプチドは、薬学的組成物と関連して、上述の任意の疾患及び患者群の処置及び/又は予防のための薬物の調製用に使用され得る。
【0083】
最後に、本発明は、本明細書中に開示される疾患に、より具体的には、感染性心疾患及び非感染性心疾患、虚血性心疾患及び非虚血性心疾患、炎症性心疾患及び心筋炎、心拡大、突発性心筋症、突発性拡張型心筋症、免疫性心筋症、心不全、並びに心室性期外捕捉収縮及び上室性期外捕捉収縮を含む任意の心不整脈を含む心疾患に、罹患しているか又は発症するリスクのある患者の処置のための方法に関するものであり、ここで、該患者にはこのような処置をする必要があり、該方法は薬学的有効量の本発明のペプチド又は本明細書中に開示される薬学的組成物若しくは薬物を該患者に投与することを包含する。好ましくは、治療有効用量は、当業者が慣用的な試験を行うことにより決定され得る、徴候の改善又は被験者の延命をもたらす活性成分の量をさす。
【0084】
本発明における「患者」、すなわち、本発明による化合物又は本発明による薬学的組成物を投与される者は、ヒト並びにその他の動物及び生物の両方を含む。従って、当該化合物、薬学的組成物及び方法は、ヒトの治療及び獣医学的適用(診断、診断的手技及び方法を含む)の両方、並びに病期分類手技及び方法に対して適用できるし、又はこれらと関連して適用することもできる。例えば、獣医学的適用としては、イヌ、ウシ、ネコ、ブタ、ヤギ、ウマ及びヒツジという動物、並びに爬虫類(例えば、イグアナ、カメ及びヘビ)、鳥類(例えば、フィンチ及びオウム科のメンバー)、ウサギ類(例えば、ウサギ)、齧歯類(例えば、ラット、マウス、モルモット及びハムスター)、両生類、魚類及び節足動物を含むその他の家畜動物があるがこれらに限定されない。貴重な非家畜動物(例えば、動物園の動物)もまた処置され得る。好ましい態様において、患者は哺乳動物であり、最も好ましい態様において、患者はヒトである。
【0085】
さらなる局面において、本発明は、本発明によるペプチド、薬学的組成物及び薬物で処置され得る患者を診断する方法に関する。好ましくは、このような方法は、本明細書の実施例の部に記載されるような工程を包含する。従って、本発明は、診断薬剤として又は診断試験剤の製造のための本発明によるペプチドの使用に関する。本発明によるペプチドの診断用途を裏付ける論理は、上記構造、特に抗βアドレナリン受容体抗体とそれらとの相互作用である。
【0086】
これまで、抗体が陽性かどうかの定義は、例えば、受容体ペプチドを用いたELISA、心組織のウェスタンブロッティング、新生仔ラットの心筋細胞を用いた機能アッセイ、又は表面プラズモン共鳴による検出等の、極めて不統一なスクリーニング法に基づくものである。今日までこの問題は十分に解決されていない。
【0087】
本発明によるペプチドをそれぞれ診断薬剤として及び診断方法において使用する1つのアプローチは、本発明によるペプチドを用いたELISAの実施、免疫蛍光の測定及びネイティブのヒトβ-ARを発現する細胞におけるcAMP反応の測定を含む三工程スクリーニング手順である。本発明によるペプチドを用いて該抗体を検出するために、上記工程の各々及びいずれかがそのように実施され得ることが認識されるはずである。従って、多くの心不全患者が機能性抗β1-Absについてスクリーニングされ得る。このような診断方法に関連して、機能性抗β1-Absの定義は、好ましくは、受容体媒介性のシグナル伝達に対するそれらの効果、すなわち、細胞cAMPレベル及びcAMP依存性プロテインにキナーゼ(PKA)の活性に対するそれらの効果に基づく。環状AMPは、βアドレナリン受容体ファミリーを含む多くのG蛋白質共役受容体の万能セカンドメッセンジャーである。cAMPは、PKA、cAMP依存性イオンチャネル、ホスホジエステラーゼ、及びcAMPによって直接的に活性化される交換蛋白質(Epac 1及びEpac 2として公知である)を介してその効果を発揮する。先行技術は、無傷な細胞中のcAMPを測定する様々な蛍光測定法を説明し、これらは全て本発明の診断方法と関連して使用され得る。PKAの調節サブユニット及び触媒サブユニットに融合した緑色蛍光蛋白質(GFP)変異体間の蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)は、神経細胞(Hempel CM, Vincent P, Adams SR, Tsien RY, Selverston AI. Nature. 1996; 384: 113-114)又は心筋細胞(Zaccolo M, Pozzan T., Science. 2002; 295: 1711-1715)におけるcAMPの時空間的動態の研究のために説明されている。
【0088】
最近になって、強発色シアン蛍光蛋白質(CFP)又は黄色蛍光蛋白質(YEP)がEpac蛋白質のcAMP結合ドメインに直接的に融合されていることで特徴付けられる単鎖蛍光指示薬が、当技術分野において説明され、これにより、cAMP測定の高感度化及び時間分解能向上を達成することが可能となった。このような系は、特に、その開示の全体が参照として本明細書に組み入れられるWO 2005/052186に記載される。このような系は、本発明によるペプチドを用いる任意の診断手技と関連して使用され得る。この系はまた、限定されないが、機能性抗β1-Absの有病率を分析するためにも使用され得る。好ましくはこのような診断方法は、過去に抗体型DCMに罹った患者若しくはその範囲の評価の対象となる任意の個体又は本明細書中に記載される任意の疾患に罹患していると疑われるか若しくは罹患するリスクを有する任意の個体の集団に適用される。診断方法及びスクリーニング方法のさらなる段階においては、抗β1-Ab誘導性の受容体活性化を阻害するβ遮断剤の能力が、それぞれ、評価及び測定され得る。
【0089】
本発明によるペプチドを使用する上記アッセイ(WO 2005/052186に記載されるFRETベースの方法)は、より簡単で、より時間を節約でき、同時に過去に抗β1-ECII陽性と判断された全DCM患者を発見又は同定できるという点で優れている。本発明によるペプチドの1つ又は複数を診断的に使用するこのFRETベースの方法の態様は、抗体誘導性のcAMPの増加の検出に基づく。このセカンドメッセンジャーは、抗β1-Absの活性化により惹起される有害な効果の主原因である可能性が最も高い。従って、好ましくは診断方法として使用され、かつ抗体誘導性のcAMPシグナルを定量化するこの方法は、機能性抗β1-Abのクラスの識別を可能にする点で優れている。実際、この方法を適用することにより、異なる受容体ドメインを標的にすると思われる「低」活性化自己抗体の存在により特徴付けられる、これまで検出されなかった患者集団が同定された。さらに、この方法は、これらのクラスがこの受容体の異なるエピトープに対する優先的指向性を有することを示唆する。まとめると、Epac-FRETによるスクリーニング法は、非常に高感度の一工程アプローチであると考えられ、ヒトβ1-ARに対する異なる種類の活性化抗体の検出を可能にする。従って、本発明はまた、Epac-FRETアッセイにおいて使用するための、本発明による1つ又は複数のペプチドの使用に関する。より好ましくは、このようなEpac-FRETアッセイは、診断のために使用され、さらに好ましくは、本明細書中に記載される任意の疾患に罹患しているか又は罹患していると疑われる患者の診断のために使用される。
【0090】
本発明の根幹をなすさらなる知見は、機能性抗β1-AbがDCM患者のほぼ3分の2で検出されたことである(その約半分は「高」アクチベーターIgG(β1-ECIIに対するものであることを意味する)であり、残りの約半分は「低」アクチベーターIgG(β1-ECIに対するものであることを意味する)である)。この限りにおいて、これらの患者は、本発明によるペプチドを用いてそれぞれ診断及び処置され得る患者群であると定義される。この2つのFRET式分類集団についての死亡率曲線は、「低」アクチベーターIgG患者は活性化自己抗体を有さないDCM患者と死亡率の点で有意な差はないが、「高」アクチベーターIgG患者の死亡率は有意に高いことを実証した。従って、β1-ECIIに対する抗β1-Absは、臨床的に特に適する、それ故本明細書中に開示される診断方法における特に好ましいマーカーであり、かつ本明細書中に開示される診断方法に供される特に好ましい標的である。本発明による好ましい診断方法であるFRETベースのアプローチの、心不全、好ましくはDCMに起因する心不全における、予後の異なる抗β1-Absを識別する能力は、この方法の臨床的妥当性を支持する。
【0091】
なおさらなる局面において、本発明は診断薬剤に関する。このような診断薬剤は、本発明のペプチドの少なくとも1つからなるか又は少なくとも1つを含む。好ましくは、診断薬剤は、本発明のペプチドからなり、該ペプチドは好ましくは標識を含む。このような標識は、放射性標識及び蛍光標識を含む群より選択され得る。各々の標識は当業者に公知である。典型的には、ペプチドは、その診断薬剤に特異的な結合特性を与える(好ましくは抗β1アドレナリン受容体抗体に結合する)診断薬剤の一部分であり、標識は診断薬剤にシグナル特性を与える。
【0092】
診断薬剤は、本発明の標識ペプチド又は非標識ペプチドの他に、生物学的に活性なさらなる化合物を含み得る。好ましい態様において、このような生物学的に活性なさらなる化合物は、特に本発明のペプチドが標識されない場合に、診断薬剤にシグナル特性を与えるものである。例えば、生物学的に活性なさらなる化合物は、本発明のペプチド又は本発明のペプチド及び抗βアドレナリン受容体抗体(好ましくは、抗β1アドレナリン受容体抗体)からなる複合体に特異的に結合する抗体、好ましくはモノクローナル抗体、より好ましくは標識抗体であり得る。
【0093】
本発明によるキットは、本発明のペプチド及び本発明による診断薬剤を含む群より選択される特徴を少なくとも1つ含む。1つの態様において、キットはさらに、説明書、及び/又はキット適用時に使用する緩衝剤、及び/又はキットが使用される若しくは使用されるべき検出反応を実施するための少なくとも1つの反応容器を含む。さらなる態様において、該キットの適用に関連して使用される試薬の一部又は全部が、キットが使用されるべき反応を実施する上で有用な部品として含まれる。
【0094】
好ましい態様において、次の略語は次の意味を有する;Ab又はab:抗体、Abs又はabs:抗体(複数)、AR:アドレナリン受容体、EC:細胞外、及びAA:アミノ酸。
【0095】
以下、添付図面及び実施例によって本発明をさらに解説する。これらからさらなる利点、特徴、及び態様が把握され得ると考えられる。
【0096】
実施例1:ペプチドの合成
直鎖状ペプチドは、Multiple Peptide Synthesizer(SYROII, MultiSynTech GmbH, Witten)による固相Fmocプロトコルを用いて合成する。合成は、側鎖を保護したFmocアミノ酸誘導体を用い、Rink Amide樹脂又はRink Amide MBHA樹脂(Novabiochem-Merk Biosciences GmbH, Bad Soden)上で実施した。Fmocアミノ酸は、ジイロプロピルカルボジイミド/N-ヒドロキシベンゾトリアゾール又はベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェートにより活性化される。
【0097】
固相上での環状ペプチドの合成のために、Fmoc-Glu-ODmab又は選択的に直角に切断され得る側鎖保護基を有する別のFmocアミノ酸を、直鎖状ペプチドのC末端に組み込む。N,N'-ジメチルホルムアミド中2%ヒドラジン一水和物を用いてDmab側鎖を選択的に除去した後、樹脂に結合した直鎖状ペプチドを、N,N'-ジメチルホルムアミド中のジイソプロピルカルボジイミド及びN-ヒドロキシ-9-アザベンゾトリアゾールの存在下で数時間処理する。環化は、サンプルを採取し、カイザー試験を実施し、そして必要な場合はこれらを反復することによって確認した。合成樹脂から環状ペプチドを切断してペプチドアミドを得、側鎖の保護基の除去は、この樹脂をトリフルオロ酢酸/トリイソプロピルシラン/エタンジチオール/水で2時間処理することによって行う。
【0098】
実施例2:動物モデル
本実施例及び本明細書中に記載される任意の他の実施例で使用した動物モデルは、そうでないことが示されない限り、ヒト類似ラットモデルである。ビソプロロール及び本発明の多種の化合物、より具体的には、式Icの化合物を用いて、このヒト類似ラットモデルをそれぞれ評価及び試験する前に、この動物を以下の通り処置した。
【0099】
抗β1受容体抗体を生成するために、この動物を第二β1受容体ループに対して免疫した。ビソプロロール又は本発明による任意のペプチドのいずれも与えない動物において、免疫の8ヶ月後に進行性の拡張型免疫性心筋症を観察した(図6)。予防研究及び治療研究の両方において、全ての免疫動物は、高力価の刺激性抗β1-ECII抗体を生成した。特異的抗β1-ECII価は、この動物を4週間毎に継続的に追加免疫すること6〜9ヶ月で最大値に達した(図4及び8)。
【0100】
実施例3:ビソプロロール又は本発明によるペプチドのいずれかを用いたヒト類似ラットモデルにおける免疫性心筋症の予防
式Icの環状ペプチド1mg/kgを4週毎に皮下投与(n=4)又は静脈内投与(n=4)のいずれかを行うことによるこの動物の予防的処置は、特異的抗β1-ECII抗体価のさらなる増加を防止し、その後の研究経過においては抗体力価は継続的に減少すらした(図4)。
【0101】
本発明者らが大いに驚かされたことは、図4に示されるように、5ヶ月目以降は、4週毎の抗原追加刺激に対してそれ以上免疫応答が観察されなかったことである。このことは、継続的なアネルギーによる脱感作、すなわち、抗β1-ECII産生B細胞の活性化の抑制又は減少という意味のある種の免疫寛容が起こったことを意味する。この「免疫学的アネルギー」の性質に関するさらなる分析は、環状ペプチドの存在下における抗原特異的抗体産生脾B細胞の重大な減少を明らかにした(図20)。一方、調節性CD4+ T細胞及び/又は他のT細胞誘導性の耐性機序は、この非応答状態を明確に説明するものではない(図19a)。図20は、特異的抗β1-ECII産生B細胞が式Icの環状ペプチド1mg/kgで処置した動物の脾臓において有意に減少したことを示す。
【0102】
図5及び12に示されるように、環状ペプチドは心拍数及び血圧のいずれも低下させなかった。これとは対照的に、ビソプロロールの予防的投与は、これも図5及び12に示されるが、心拍数を有意に低下させ、その有意水準はp<0.01であった。図6から導き出し得ることは、予防的処置を行った抗β1-ECII抗体陽性動物と処置を行わなかった動物との間には心エコー検査の表現型に有意差が存在することである。
【0103】
実施例4:ビソプロロール及び本発明によるペプチドを用いたヒト類似ラットモデルにおける免疫性心筋症の処置
本発明のペプチドIcを4週毎に投与すると、図8a及びbに示されるように、驚くほど急激な特異的抗β1-ECII価の減少が観察された。ペプチド処置動物と比較すると、ビソプロロールを与えられた群は、ずっと高いβ1抗体価を有していた。図10及び11に示されるように、(免疫し、有意なLV拡張が発生した後の)ビソプロロール投与及び本発明のペプチドの投与の両方の場合とも、12ヶ月(これらの動物にこの種の処置を施した期間)の間に、心エコー検査により確認した限りでは未処置の抗β1-ECII抗体陽性動物と比較して進行は見られなかった。それ以上に驚かされたことは、全てのペプチド処置動物においてはLV拡張の有意な後退すら見られた(β1-ECII-16AAはβ1-ECII-25AA又はβ1-ECII-18AAよりも見かけ上の効果が小さかった)(図11)が、単独治療剤としてビソプロロールを用いた場合はLV拡張を完全に逆転できなかったことである。これらの結果は、ビソプロロールのみによってこの疾患を安定化させ得ること、又は、本発明のペプチドを用いることによって心筋症の表現型の後退すら達成し得ることを示す。
【0104】
実施例5:本発明の環状ペプチド及びビソプロロールからなる組み合わせの投与
ラットモデル及びDCM患者のいずれにおいても、β1-ECII抗体の刺激効果、すなわちアロステリック効果は、心選択性β遮断剤によって打ち消され得る(標準的な投薬法に従って使用された場合)。このことから、β1(自己)抗体陽性患者は、β1(自己)抗体陰性患者よりも本発明から多くの利益を享受すると言える。このことから、ビソプロロール及び本発明のペプチドからなる併用療法の効果は抗β1-ECII抗体陽性患者に対してずっと高いことが示唆される。想定される付加的な機序は、特に、抗体誘導性の受容体ダウンレギュレーションの当該ペプチドによる保護と共に、β遮断剤(ビソプロロール又はメトプロロール等、図18参照)による相乗的なβ1受容体アップレギュレーションであり得る。動物モデルにおける相乗的効果については、図10c、11c及び13を参照のこと。
【0105】
実施例6:本発明の環状ペプチドの短縮型変異体(すなわち、16アミノ酸環状ペプチド対18アミノ酸環状ペプチド対25アミノ酸環状ペプチド)の投与
概して、アミノ酸の数、つまり一次構造の長さは、本発明のペプチドの生物学的効果にとって重要だと考えられる。26アミノ酸又はそれ以上のペプチド長(一次構造)は、免疫応答性のT細胞を直接的に、すなわち、担体蛋白質を使用せずに刺激することができ、従って、T細胞を媒介するB細胞の刺激を通じて抗β1受容体抗体の産生の逆説的な増加を惹起すると考えられる。従って、治療研究の枠組みで、25アミノ酸ペプチドIcの短縮型ペプチド変異体、すなわち、この環状ペプチドの18アミノ酸又は16アミノ酸のいずれかを含む変異体で、少数のパイロット動物を処置した。使用した構築体は

であった。本発明のペプチドの短縮型ペプチド変異体を4週毎に投与すると、特異的抗β1-ECII価の急激な減少が治療の最初の6ヶ月の間に観察された。その後においては、循環の抗β1-ECII抗体価は、25AA環状ペプチドIc又は18AA構築体のいずれによってもほぼ同程度減少し(図8b参照)、両者はまた同程度の生物学的効果(すなわち、心筋症の表現型の逆転;図10d参照)を有したが、16AA構築体は循環の抗β1-ECII抗体価の持続的減少(図8bの灰色のダイヤモンド参照;ペプチド注射によっても抗体価は減少せずに安定的である)及び生物学的効果(すなわち、2匹の処置ラットにおける曖昧な結果(一方の動物は心筋症の表現型を完全に逆転させたが、もう一方の動物は進行性のLV拡張及び機能不全を示した);図10d及び11d参照)の両方について効果が小さい傾向があった。これらの予備的な結果は、この環状の受容体相同ペプチドの一定の長さがその有益な生物学的効果を獲得するのに必要と考えられることを示す。しかし、この種の処置を動物に施した12ヶ月の間に心エコー検査により確認されたように、16AAによっても、未処置の抗β1-ECII抗体陽性動物と比較して少なくとも疾患の進行が停止又は安定化した(β遮断剤を用いた単独療法の効果に匹敵する)ことは留意されるべきである(図10d)。
【0106】
実施例7:cAMP系を用いるβ受容体抗体の診断アッセイ
体液中のβ受容体抗体(抗β1-Abs)のこの検出は、細胞内メッセンジャーである環状アデノシン一リン酸(cAMP)の濃度変化の光学的検出によりβ受容体が媒介するシグナル伝達に対する抗体の影響を測定することに基づく。このようなcAMP試験系は、原則的には、PCT出願WO2005/052186に記載される。
【0107】
β1受容体媒介性のcAMP増加を誘導する能力により抗β1-Absを検出するために、蛍光共鳴エネルギー転移を用いる新しい高感度cAMPセンサ(Epac1-camps)を用いる。この技術により、合計56人の患者血清及び40人の対照血清の集合を本法を用いて分析した。この患者集団は、1999年にJahnsらによりすでに公開され、β受容体抗体についてペプチド免疫アッセイ(ELISA)及び125ヨウ素標識cAMPアッセイを用いてアッセイが行われたのと同じである(Jahns et al., Circulation 1999(前出))。この初期研究においてβ受容体抗体陽性であった患者(n=17)は全員、有意なEpac-1シグナルも示した(49±4%)。対照及び過去に抗β1-ECII陰性と判断されたDCM患者の約半数(17/39)由来のIgGは、細胞性cAMPに有意に影響しなかった。
【0108】
驚くべきことに、この新技術は、以前は抗体陰性と判断されたDCM患者の半数以上(22/39)において抗β1-Absを検出したが、これらの抗体により誘導されたcAMPシグナルは、上述の群よりも概して低かった(31±5%)。β遮断剤は、抗体誘導性のβ1受容体活性化を十分に防止できず、カルベジロールが他のβ遮断剤よりも有効であった。遮断実験は、「高」アクチベーターIgG又は「低」アクチベーターIgGが、それぞれ第二細胞外β1受容体ループ又は第一細胞外β1受容体ループに対応するペプチドによってより強く遮断されることを実証した。
【0109】
まとめると、全56人の患者のEpac-FRETシグナルの分析は、DCMにおける抗β1-Ab有病率がほぼ70%(n=39/56)であることを明らかにした。これは、ELISA、免疫蛍光法、及びcAMP-RIAによって検出された有病率よりもずっと高く、このことはDCM診断における本発明によるペプチドの適合性を証明するものである。Abs+群は、FRETデータに基づき2つの下位集団に分けることができる(「低」アクチベーター(FRETの振幅が最大イソプロテレノール(isomax)の20〜40%)及び「高」アクチベーター(FRETの振幅が最大イソプロテレノールの40%以上)に分類した)。新たに同定した2つのFRET陽性集団についてより詳細に研究した。その濃度反応相関を分析することで、本発明者らは、「低」アクチベーターIgGが、高濃度の場合でさえも、「高」アクチベーターIgGにより誘導されるのと同程度のcAMPレベルを達成しえないことを見出した(図23)。この知見は、「低」アクチベーターの血清における抗β1-Absの力価の低さが「低い」cAMP反応を説明するものであるという可能性をむしろ低下させ、この類型の抗β1-Absの受容体レベルでの異なる作用機序を示唆するものである。抗体間のFRET活性の質的差異についての1つの理由は、異なる抗β1-Absにより標的化される受容体エピトープの差異であり得る。これまでに、免疫法によりβ1-ECIIエピトープ及びβ1-ECIエピトープに対する機能的抗β1-Absを動物内で作製することに成功しているが、このことは、これら2つのエピトープの一定の抗原性を示唆するものである(Mobini R, et al., J. Autoimmun. 1999; 13: 179-186)。標的化された異なるエピトープが抗β1-Absの「高度」又は「低度」のFRET活性化能を説明するものであるかどうかを分析するために、本発明者らは、β1-ECII又はβ1-ECIに対応する合成ペプチドと共にこれらをインキュベートし、これらのペプチド各々の遮断効果を分析した。これらの遮断実験は、「高」アクチベーターIgGのFRETシグナルが、β1-ECIIに対応するペプチドにより減衰され得るが、β1-ECIペプチドによっては減衰され得ないことを明らかにした(7人の患者を試験した;図24)。対照的に、「低」アクチベーターIgGは、β1-ECIに対応するペプチドによってのみ阻害された(8人の患者を試験した;図24)。「高」アクチベーター及び「低」アクチベーターの間のカットオフ値付近のcAMPシグナルを生ずる抗β1-Absを有するDCM患者由来の全ての血清を、このような遮断実験において試験し、本発明者らの分類の精度を確認した。強いEpac-FRETシグナル(40〜60%のFRET反応)を示す過去にAbs判定された3人の患者は、「高」アクチベーター抗β1-ECII Absであることが確認され、試験した全「低」アクチベーターIgG(20〜40%のEpac-FRET反応を生じる)はβ1-ECIペプチドにより阻害された。これらのデータは、「高」アクチベーター及び「低」アクチベーターのcAMP産生における差が、異なるエピトープが標的化されたこと、つまり異なる活性受容体配置が誘導されたことに依存する可能性が最も高いという仮説と一致する。抗β1-Absの類型及び活性化能における差がDCMに起因する心不全の臨床過程に関連し得るかどうかの疑問に取り組むために、本発明者らは、10年間の経過観察期間をかけて本明細書で分析した56人のDCM患者における総死亡率に対する遡及分析において多変量Cox回帰を用いた。図4は、「無」アクチベーター、「低」アクチベーター、及び「高」アクチベーターにグループ分けし、年齢、性別、ニューヨーク心臓協会の機能分類、血流力学的状態、及び投薬法について調整した生存曲線を示す。「低」アクチベーター群における死亡リスクは、活性化抗β1-Absについて陰性の患者と有意な差がなかった。対照的に、「高」アクチベーターは、「低」アクチベーターよりも有意に高い死亡率であった。このことは、抗β1-ECII-AbsがDCMにおける予後の悪化と関連することを示唆する。これは、心不全における活性化抗β1-Absの潜在的な病態生理学的、臨床的関連性を裏付けるものである。
【0110】
βアドレナリン受容体に対する抗体についてのこのアッセイにおいて、抗体誘導性のcAMP産生を、例えば、βアドレナリン受容体を発現し(好ましくは0.15〜0.3pmol/mg膜蛋白質の濃度で)、Epac-1センサを一過的にトランスフェクトしたHEK293細胞又はCHW細胞等の単一細胞において測定する。
【0111】
使用したEpac-1センサは、Nikolaevら(JBC, 2004, 279 (36), 37215-8)の論文に記載される、Epac(exchange protein-1 directly activated by cAMP(cAMPによって直接的に活性化される交換蛋白質-1))並びに黄色蛍光蛋白質(YFP)及びシアン色蛍光蛋白質(CFP)に結合された結合ドメインE157-E316からなる融合蛋白質である。
【0112】
これらの細胞に、好ましくはリン酸カルシウム沈降によって、好ましくは10μg Epac-1センサ/10cm皿(直径)をトランスフェクトする。その培地を、好ましくはトランスフェクションの12〜18時間後に交換する。好ましくは、トランスフェクションの24〜48時間後に、Nikoaevら(前出)に記載される蛍光共鳴エネルギー転移を用いて細胞性cAMP価の変化を測定することにより、抗体誘導性の受容体媒介シグナル伝達を決定する。
【0113】
このアッセイは、好ましくは、拡張型心筋症に罹患した患者及び健常な対照の血清サンプルを用いて実施する。IgG抗体は、好ましくは、Jahnsら(Eur. J. Pharmacol., 1996, 113, 1419-1429)の論文に記載されるカプリル酸法を用いて血清から単離する。使用前に、好ましくはサンプルをPBS緩衝液で1:6希釈する。抗体を添加すると、約100〜150秒後に細胞内cAMPレベルの上昇が検出され得、これは(受容体の活性化に相当する)Epac-1センサへのcAMPの結合により生じる蛍光シグナルの減少により表される。この抗体誘導値を、βアドレナリン作動薬イソプロテレノールを5μM添加した際に得られる値の百分率として算出する。
【0114】
それとは別に、この特定のアッセイを用いて、2つのさらなる抗体陽性患者群を同定した:3人の患者は細胞内cAMPの上昇に対して同様の効果(44±2%)を有する受容体抗体を有し、別の19人の患者はcAMP上昇に対して有意に低い効果(31±5%)を有するEpac-1-FRET陽性抗体を有した。エピトープ相同ペプチドを用いた遮断実験は、第一群の抗体が第二細胞外β1受容体ループに対するものであり、第二群の抗体が第一細胞外β1受容体ループに対するものであることを示した。
【0115】
抗β1-Absを検出するこの新規の方法は、従来の方法よりもずっと迅速かつ高感度であることが証明され、さらに、多種の受容体ドメインに対する機能性β受容体抗体を同定するのに適している。本法はまた、抗β1-Ab誘導性の受容体活性化を防止する能力がβ遮断剤は不十分であることも明らかにした。これは、心不全における抗β1-Absに関する調査及び最終的な処置の選択にとっての新たな立場を提案するものである。
【0116】
本明細書、特許請求の範囲及び/又は図面に開示される本発明の特徴は、個別及びその任意の組み合わせにおいて、本発明をその多種の形態で実現するための材料であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】自己抗体誘導性の拡張型免疫性心筋症の処置における異なる治療アプローチを示す。βアドレナリン受容体が媒介するシグナル伝達カスケード(β受容体(β-AR)、G蛋白質(サブユニットGs-α、β、γ及びアデニル酸シクラーゼ(AC))並びにβ遮断剤(左パネル)又は環状ペプチド(右パネル)によるそれらの遮断を図示する)を示す。このペプチドの1つの治療的作用様式、すなわちこの環状ペプチドによるβ1アドレナリン受容体に対する抗体の捕捉を図示する。
【図2】Cr1BR Lewisラットにおいて抗原としてβ1-ECII/GSTを用いて作製した特異的抗β1-ECII受容体抗体による、直鎖状25AAβ1-ECIIペプチド(すなわちペプチドIc)対環状25AAβ1-ECIIペプチドの認識における差を示す。カラムは、直鎖状(黒)又は環状(白)のいずれかのβ1-ECIIペプチドに結合した特異的抗β1-ECII抗体の量を表す。6匹の異なるラットから獲得した典型的な結果を示す。
【図3】免疫性心筋症の予防及び/又は治療に関する多種の実験計画の概略図である。ここで、「免疫性心筋症」は、免疫した未処置の動物(心筋症表現型)を意味し;「ビソプロロール予防/治療」は、免疫した動物がビソプロロールを用いて予防的又は治療的様式で処置されることを意味し;かつ「ペプチド予防/治療」は、免疫した動物が本発明によるペプチドを用いて処置されることを意味し;「アドオン」治療は、ビソプロロール(15mg/kg、経口投与)及び環状ペプチドIc(1mg/kg、静脈内投与)による免疫動物の平行処置を意味する。動物としてLewis Cr1BRラットを用いた。各種実験ブランチにおいて使用した動物の数を各処置アームの最後に示し;全ての添付図面に示されるデータはこれらの数字を参照する;ビソプロロール対照は15mg/kgの経口投与、ペプチド対照は1mg/kgのi.v.又はs.c.投与、そしてNaCl/GST対照はs.c.投与により処置した。
【図4】本研究の予防アームにおける特異的抗β1-ECII抗体価の経過を示す図である。ここで、「β1未処置」は免疫動物が処置されていないことを意味し、「β1/ビソプロロール」は免疫動物が15mg/kgの用量のビソプロロールを用いて予防的に処置されたことを意味し、「β1/ペプチドECII-25AA i.v.」及び「β1/ペプチドECII-25AA s.c.」は、免疫動物が各々1mg/kgの用量のペプチドIcの静脈内(i.v.)又は皮下(s.c.)的使用により予防的に処置されたことを意味する。
【図5】本研究の予防アームにおける動物の心拍数の時間経過である。ここで、「β1未処置」は免疫動物が処置されなかったことを意味し、「β1/ビソプロロール」は免疫動物が最初の4ヶ月は10mg/kg、その後は15mg/kgのビソプロロールを用いて予防的に処置されたことを意味し、「β1/ペプチドECII-25AA」は、免疫動物がペプチドIc(1mg/kg;n=4皮下、n=4静脈内)で予防的に処置されたことを意味し;そして「対照」は対応する対照群を意味し;「bpm」は拍動数/分を意味する。
【図6】心エコー検査(心エコー検査システム:Vivid Seven, GE Vingmed Ultrasound, Horten, Norway、10〜12.5 MHz変換器付属)により測定した、収縮末期及び拡張末期の左心室内径を示す図である。ここで、「β1未処置」は免疫動物が処置されなかったことを意味し、「β1/ビソプロロール」は免疫動物がビソプロロールで予防的に処置されたことを意味し、「β1/ペプチドECII-25AA」は、免疫動物が25AAペプチドIcで予防的に処置されたことを意味し、そして「対照」は対応する対照群を意味し、LVES/LVEDは、左心室収縮末期径/左心室拡張末期径である。
【図7】心エコー検査(心エコー検査システムについては上記参照)により測定した「心臓指標」(ml/分/g(体重))を示す図である。ここで、「β1未処置」は免疫動物が処置されなかったことを意味し、「β1/ビソプロロール」は免疫動物がビソプロロールで予防的に処置されたことを意味し、「β1/ペプチド」は、免疫動物がβ1-ECII 25AAペプチドIcで予防的に処置されたことを意味し、そして「対照」は対応する対照群を意味する。
【図8】図8aは、この研究の治療アームにおける特異的抗ECII抗体価の経過を示す図である(処置を開始した時点のそれぞれの力価(初期価)の%で表す)。ここで、「β1未処置」は免疫した抗1陽性心筋症の未処置動物を意味し、「β1/ビソプロロール」は免疫した抗1陽性心筋症動物がビソプロロール(15mg/kg、経口)で処置されたことを意味し、「β1/ペプチドECII-25AA」は、免疫した抗1陽性心筋症動物が1mg/kgの用量の25AAペプチドIcで静脈内処置されたことを意味し、「β1/ビソプロロール+ペプチド25AA」は、ビソプロロール及び25AAペプチドIcの併用処置を意味する。治療は、定期的(毎月1回)免疫の8ヶ月後に開始した。治療中は月毎の免疫を継続した。図8bは、本研究の治療アームで使用した異なるペプチド変異体に基づく特異的抗ECII抗体価の経過を比較する図である。ここで、25AAは環状ペプチドIcを意味し、18AAはこのペプチドの短縮型18アミノ酸変異体を意味し、そして16AAはこのペプチドの短縮型16アミノ酸変異体を意味する。「β1未処置」は免疫した抗1陽性心筋症の未処置動物を意味し、「β1/ペプチドECI」は、免疫した抗1陽性心筋症動物が第一細胞外受容体ループ(静脈内1mg/kg、負の対照、抗ECII抗体価には影響を及ぼさないと考えられ、かつそのことが示されている)に対応するペプチドにより処置されたことを意味し、「β1/ペプチドECII-25AA、ECII-18AA、ECII-16AA」は、免疫した抗1陽性心筋症動物が、それぞれ、25AA、18AA、又は16AAペプチドで処置されたことを意味する。
【図9】この治療研究に用いた動物の心拍数を示す図である。ここで、「β1未処置」は免疫した抗1陽性心筋症の未処置動物を意味し、「β1/ビソプロロール」は免疫した抗1陽性心筋症動物が8ヶ月後にビソプロロール(15mg/kg)で処置されたことを意味し、「β1/ペプチドECII-25AA、ECII-18AA、ECII-16AA」は、免疫した抗1陽性心筋症動物が、それぞれ、免疫の8ヶ月後に1mg/kgの25AA、18AA、又は16AAペプチドで処置されたことを意味し、そして「対照」は各対照群を意味し、「β1/ビソプロロール+ペプチドECII-25AA」は、免疫した抗1陽性心筋症動物が8ヶ月後にビソプロロール及びβ1-ECII-25AAペプチドの組み合わせで処置されたことを意味する。
【図10】4つの図に分割された、各々心エコー検査により測定した収縮末期及び拡張末期の左心室内径の時間経過を示す。ここで、「β1未処置」は免疫した抗1陽性心筋症の未処置動物を意味し、そして「対照」は未免疫対照動物を意味し、(a)15mg/kgのビソプロロールで処置した免疫抗1陽性心筋症動物(「β1/ビソプロロール」)、ビソプロロールで処置した未免疫対照動物(「ビソプロロール対照」)、(b)25AA環状ペプチド、すなわちペプチドIc(1mg/kg、免疫の8ヶ月後に開始;「β1/ペプチドECII-25AA」)で処置した免疫抗1陽性心筋症動物、及び同じペプチドを注射した未免疫対照動物(「ペプチド対照」)、(c)ビソプロロール(「β1/ビソプロロール」)、25AA環状ペプチド(「β1/ペプチドECII-25AA」)、又はビソプロロール/環状ペプチドの組み合わせ(「β1/ビソプロロール+ペプチドECII-25AA」)で処置した免疫抗1陽性心筋症動物、並びに(d)ECII-25AA/18AA/16AAペプチド又はECIペプチド、すなわち、それぞれペプチドIIb又はIIc(「β1/ペプチドECII-25AA、ECII-18AA、ECII-16AA」、又は「β1/ペプチドECI」)で処置した免疫抗1陽性心筋症動物と共にプロットした。LVESは左心室収縮末期径を意味し、LVEDは左心室拡張末期径を意味する。
【図11】4つの図に分割された、心エコー検査により測定した「心臓指標」(ml/分/g(体重))の時間経過を示す(心エコー検査システムについて上記参照)。ここで、「β1未処置」は免疫した抗1陽性心筋症の未処置動物を意味し、そして「対照」は未免疫対照動物を意味し、(a)15mg/kgのビソプロロールで処置した抗1陽性免疫動物(「β1/ビソプロロール」)、ビソプロロールで処置した未免疫対照動物(「ビソプロロール対照」)、(b)25AA環状ペプチド、すなわちペプチドIcで処置した免疫抗1陽性心筋症動物(1mg/kg、免疫の8ヶ月後に開始;「β1/ペプチドECII-25AA」)、及び25AA環状ペプチドを注射した未免疫対照動物(「ペプチド対照」)、(c)ビソプロロール(「β1/ビソプロロール」)、25AA環状ペプチド(「β1/ペプチドECII-25AA」)、又はビソプロロール/環状ペプチドの組み合わせ(「β1/ビソプロロール+ペプチドECII-25AA」)で8ヶ月後に処置した免疫抗1陽性心筋症動物、並びに(d)ECII-25AA/18AA/16AAペプチド又はβ1-ECIペプチド、好ましくはそれぞれペプチドIIb及びIIc(「β1/ペプチドECII-25AA、ECII-18AA、ECII-16AA」、又は「β1/ペプチドECI」(負の対照))で処置した免疫抗1陽性心筋症動物と共にプロットした。
【図12】予防研究において得た血流力学パラメータ、詳細には(a)心拍数、(b)LV収縮期血圧、(c)LV拡張末期圧、及び(d)収縮/弛緩を示す。ここで、「β1未処置」は未処置の免疫動物を意味し、「β1/ビソプロロール」は免疫動物がビソプロロールで予防的に処置されたことを意味し、「β1/ペプチドECII-25AA」は、免疫動物が環状β1-ECII-25AAペプチドIcで予防的に処置されたことを意味し、そして「対照」は各対照群を意味する。
【図13】治療研究において得た血流力学パラメータ、詳細には(a)心拍数、(b)LV収縮期血圧、(c)LV拡張末期圧、及び(d)収縮/弛緩を示す。ここで、「β1未処置」は免疫抗β1陽性心筋症の未処置動物を意味し、「β1/ビソプロロール」は免疫抗1陽性心筋症動物がビソプロロールで治療的に処置されたことを意味し、「β1/ペプチドECII-25AA」は、免疫の8ヶ月後に免疫抗1陽性心筋症動物が環状β1-ECII-25AAペプチドIc又はビソプロロール/環状ペプチドの組み合わせ(「アドオン」)で治療的に処置されたことを意味し、そして「対照」は各対照群を意味する。
【図14】それぞれ予防研究(上パネル)及び治療研究(下パネル)の最後に動物の血清において測定した異なる研究パラメータを示す。ここで、「β1未処置」は免疫抗1陽性の未処置動物を意味し、「β1/ビソプロロール」は免疫動物がビソプロロールで予防的(上パネル)又は治療的(下パネル)に処置されたことを意味し、「β1/ペプチド」は、免疫動物が25AAペプチドIcで予防的(上パネル)又は治療的(下パネル)に処置されたことを意味し、「アドオン」は、免疫抗1陽性動物が免疫の8ヶ月後にビソプロロール及び環状25AAペプチドIcの組み合わせで治療的に処置されたことを意味し、そして「対照」は予防研究及び治療研究の両方における各々の対照群を意味する。Creaはクレアチンを意味し、Hst-Nは尿素を意味し、GOTはグルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼを意味し、Biliはビリルビンを意味し、GLDHはグルタミン酸乳酸デヒドロゲナーゼを意味する。
【図15】予防研究に用いた動物の巨視的な解剖パラメータをカラムで示す。異なる器官の相対重量(g)を測定した。ここで、「β1未処置」は免疫動物が処置されなかったことを意味し、「β1/ビソプロロール」は免疫動物が15mg/kgの用量のビソプロロールで予防的に処置されたことを意味し、「β1/ペプチドECII-25AA」は、免疫動物が各々1mg/kgの用量の25AA-ECIIペプチドIcで予防的に処置されたことを意味し、「対照」は各対照群を意味し、腎臓Rは右腎を意味し、そして腎臓Lは左腎を意味する。
【図16】治療研究に用いた動物の巨視的な解剖パラメータをカラムで示す。異なる器官の相対重量(g)を測定した。ここで、「β1未処置」は免疫抗1陽性心筋症動物が処置されなかったことを意味し、「β1/ビソプロロール」は免疫抗1陽性心筋症動物が15mg/kgの用量のビソプロロールで治療的に処置されたことを意味し、「β1/ペプチドECII-25AA」は、免疫抗1陽性心筋症動物が各々1mg/kgの用量の25AA-ECIIペプチドIcで治療的に処置されたことを意味し、「アドオン」は免疫の8ヶ月後のビソプロロール/環状ペプチドの組み合わせによる免疫抗1陽性心筋症動物の治療的処置を意味し、そして「対照」は各対照群を意味する。腎臓Rは右腎を意味し、腎臓Lは左腎を意味する。
【図17】予防研究に用いた動物の心臓における心臓βアドレナリン受容体の密度をカラムで示す。上パネルは心膜β-ARの総量をフェトモル/ミリグラム(fmol/mg)膜蛋白質で示す。下パネルはβ2-ARサブタイプ(左)及びβ1-ARサブタイプ(右)の各々の量を示す。ここで、「β1未処置」は免疫抗1陽性動物が処置されなかったことを意味し、「β1/ビソプロロール」は免疫抗1陽性動物が15mg/kgの用量のビソプロロールで予防的に処置されたことを意味し、そして「β1/ペプチドECII-25AA」は、免疫抗1陽性動物が各々1mg/kgの用量の25AA-ECIIペプチドIcで予防的に処置されたことを意味し、「対照」は各対照群を意味する。
【図18】治療研究に用いた動物の心臓における心臓βアドレナリン受容体の密度をカラムで示す。上パネルは心膜β-ARの総量をフェトモル/ミリグラム(fmol/mg)膜蛋白質で示す。下パネルはβ2-ARサブタイプ(左)及びβ1-ARサブタイプ(右)の各々の量を示す。「β1未処置」は免疫抗1陽性心筋症動物が処置されなかったことを意味し、「β1/ビソプロロール」は免疫抗1陽性心筋症動物が15mg/kgの用量のビソプロロールで治療的に処置されたことを意味し、そして「β1/ペプチドECII-25AA」は、免疫抗1陽性心筋症動物が各々1mg/kgの用量の25AA-ECIIペプチドIcで治療的に処置されたことを意味し、「アドオン」は免疫の8ヶ月後のビソプロロール/環状ペプチドの組み合わせによる免疫抗1陽性心筋症動物の治療的処置を意味し、そして「対照」は各対照群を意味する。
【図19】免疫抗1陽性心筋症未処置動物(「β1未処置」)の脾臓から調製したT細胞を用いて実施したT細胞リコールアッセイの結果を、ビソプロロール(「β1/ビソプロロール」)又は環状25AA-ECIIシクロペプチドIc(「β1/ペプチドECII-25AA」)で(a)予防的又は(b)治療的に処置した免疫抗1陽性心筋症動物由来のそれらと比較して示す。「対照」は各々の未免疫対照動物を意味する。このアッセイは、Schmidt J. et al. (2003) J Neuroimmunol 140, 143-152に従い実施した。簡単に説明すると、脾細胞調製物からCD4+ T細胞を精製するために、B細胞及びCD8+ T細胞を市販の磁気ビーズ(MACS(登録商標))により枯渇させ、これにより85%以上の純度のCD4+を得た。次いで96ウェルプレート上で1×105のCD4+精製T細胞を1×106の照射胸膜の抗原提示細胞(若いラットから調製した)と共にインキュベートした。異なるアッセイ(条件)において添加した試薬は:10μg/mlのグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、2μg/mlのコンカナバリンA(ConA、正の対照)、10μg/mlの25AA-ECIIペプチド(ペプチド25AA)、及び各々1.0及び0.1μg/mlのGST/β1-ECII融合蛋白質(FP)であった。測定したT細胞反応は、各条件下で平行して実施した、10μg/mlの精製蛋白質誘導体(PPD)により得られた各々のT細胞反応に対して正規化した。インキュベーションの48時間後、上清の50%を除去し、別の培地で置き換えた。次いで細胞を、1.25μCi/ウェルの[3H]-チミジンと共にパルスし、そしてさらに16時間インキュベートした後に細胞を回収し、そしてDNAに組み込まれた放射能をβプレートを用いて測定した。
【図20】免疫抗1陽性心筋症未処置動物(「β1未処置」)の脾臓又は骨髄のいずれかから調製したB細胞を用いて実施したELISPOTアッセイの結果を、25AA-ECIIペプチドIc(β1/ペプチドECII-25AA)で治療的に処置した免疫抗1陽性心筋症動物から単離したそれらと比較して示す。このアッセイのために、ELIspotプレートを、0.05mol/lのTris緩衝液(pH9.4)中1.8μg/mlの抗ラットIgG(H+L)又は特異的抗原(GST/β1-ECII-FP)のいずれかで一晩コーティングした。次いで、このプレートを3回洗浄し、37℃で3時間、BSAでブロッキングした。その後このプレートを、1×106又は1×103細胞/ウェルの脾臓又は骨髄のいずれか由来のB細胞(10%胎仔ウシ血清(FCS)を添加したRPMI 1640/X-VIVO-15培地で培養した)と共に37℃で一晩インキュベートした。12時間後、B細胞を廃棄し、B細胞の分泌したIgGが結合したプレートを数回洗浄(PBS/0.5% Tween)した後、結合したラットIgGを検出するためにアルカリホスファターゼ結合二次抗ラットIgG(0.3μg/ml)を添加した。次いで、このプレートを37℃でさらに3時間インキュベートし、PBS/0.5% Tweenで数回洗浄し、そしてLMP/BICP 5:1(1ml/ウェル;「LMP」は低融点アガロースを意味し、そして「BICP」は5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェートp-トルイジン塩、青色色素を意味する)を用いて展開し、得られた青色のスポットを定量化した(各スポットは、それぞれ、(a)IgG又は(b)抗原特異的IgG分泌脾細胞又は骨髄細胞のいずれかを表す)。パネルaは、104のコーティング細胞あたりのIgG分泌細胞の総量を示し、パネルbは特異的抗β1-ECII IgGを分泌する細胞の画分を示す。「BM」は骨髄を意味する。
【図21】(a)高速液体クロマトグラフィ(HPLC)及び(b)質量分析法(MALDI-TOF)による、25AA-ECII、すなわち環状ペプチドIcの分光学的特性の典型例を示す。HPLCは、Waters Dual Lambda UV検出器を備えるWaters Separation Modul 2690を用いて実施し、波長を220nmに設定した。ペプチドの合成及び環化後、サンプルをH2O/5%アセトニトリル(ACN)に溶解し、流速1ml/分で逆相カラム(Nuclosil 100-5/ C18, Macherey-Nagel Inc., Germany;カラム長250mm、直径4mm)に充填した。分離のために、5%〜60%のACN(0.2% TFA含有)の勾配を用いた。典型的には14〜16分の間に非常に小さな直鎖状β1-ECII-25AAペプチドのピークが見られ、環状β1-ECII-25AAペプチドを含む画分は18〜22分の範囲に現れた。20〜80μg/mlの環状ペプチドを含むこれらの画分の一部を質量分析法によってさらに分析した。直鎖状β1-ECII-25AA対環状β1-ECII-25AAの予想される分子量は、それぞれ2948〜2949対2929〜2930である。図21bに示される例は、環状β1-ECII-25AAペプチドの典型的な質量分析結果を示す。縦軸座標はシグナル強度(「a.u.」は独自の単位を意味する)を示し、横軸座標は分子量(m/z)を示す。
【図22】機能性抗β1-Absの検出のための細胞ベースのアプローチを示す。a、抗体がそのアクセス可能な細胞外ループに結合することにより誘導される受容体の活性化は、Gs蛋白質及びアデニル酸シクラーゼ(adenylyl cyclase)(AC)の連続的な活性化を通じてcAMPを増加させ、これを、CFP(シアン)蛋白質とYFP(黄色)蛋白質の間に融合されたEpac1(Epac1-camps)のcAMP結合ドメインにおけるコンホメーションの変化としてFRETにより検出する。b、従来のラジオイムノアッセイ(Amersham)によるイソプロテレノール刺激したHEKβ1AR細胞におけるcAMPレベル(fmol/細胞)の測定、又は、c、Epac-FRET。3つの独立した実験(EC50=0.53±0.19nM)のうちの1つを示す。Epac-FRETにより確認できるcAMPの範囲は、図22bにおいて水平な灰色の帯で表す。イソプロテレノールEpac1-campsは0.1nMで飽和する。このことは細胞内cAMP濃度が約20μMであることを示す。この超高感度センサは、生理学的に関連するcAMP濃度0.1〜20μM(最大cAMP-RIAシグナルの10%程度で網羅する)における高いダイナミックレンジにより特徴付けられ、微量の、従来のアッセイにおいて有意でないcAMPの変化をEpac-FRETで十分に検出することができる。d、ヒトβ1-ARの第二細胞外ループ(β1-ECII)で免役したラットから調製したIgGを、Epac1-campsをトランスフェクトしたHEKβ1AR細胞を用いてその活性について試験し、かつこの方法の信頼性を評価するため未免疫動物と比較した。FRET比のトレースを示す(%はYEP/CFP強度比における相対変化に対応する;ISO、(-)イソプロテレノール)。FRETの減少は、細胞内cAMPの上昇を反映する(代表実験、n=6)。
【図23】Epac-FRETによるcAMPの測定がDCM患者における抗β1-Absを検出することを示す。a、健常な対照(n=40)から調製したIgGは、生存細胞において有意なcAMP反応を誘導しなかったこと(左)を示す。過去に抗β1-Ab陽性5(Abs+)と診断されたDCM患者由来のIgGは、顕著なcAMP反応を誘導した(最大イソプロテレノールシグナルの49.5±3.8%、中央値)。過去に抗β1-Ab陰性と診断された患者(Abs-)の33.9%由来のIgGは、堅実であるが有意に小さいcAMP上昇を示した(30.7±5.6%、P<0.01)。各血清について少なくとも3つの細胞の代表実験。b、健常な対照及びDCM患者におけるFRETシグナルの強度の正規曲線によるヒストグラム。抗体の誘導するFRET反応により、対照及び3つの活性群(活性なし(n=17)、低活性(n=19)、高活性(n=20);「高」アクチベーター及び「低」アクチベーターの間の差についてP<0.01)を識別することができる。c、広範囲の抗体濃度における異なる活性化能を実証する「高」アクチベーターIgG及び「低」アクチベーターIgGの間の濃度反応相関。最大イソプロテレノールの誘導するcAMP反応の%±SEM(「高」アクチベーターにより生じるFRETの最大変化に対して正規化)を示す(代表実験、n=4)。
【図24】異なるクラスの抗β1-Absの遮断実験を示す。a、「高」アクチベーターにより誘導されたcAMP産生は、第二細胞外β1-ARループ(β1-ECII)から得られた特異的ペプチドによってのみ軽減される。b、「低」アクチベーターのシグナルは、全ての例で、第一細胞外ループ(β1-ECI)に対応するペプチドにより遮断することができたが、β1-ECIIペプチドによっては遮断できなかった(1つの条件あたり少なくとも3つの細胞からの典型的な実験結果)。c、n=7の典型的な「高」アクチベーターDCM患者及びn=8の典型的な「低」アクチベーターDCM患者から獲得したIgGとの交差遮断実験の結果。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)〜(d)を含む群より選択されるペプチド:
(a)下記式Iの環状ペプチド:

式中、kは0〜6の任意の整数、好ましくは1〜6の任意の整数であり、より好ましくはkは6である;
(b)下記式IIの環状ペプチド:

式中、hは0〜2の任意の整数、好ましくは1又は2である;
(c)下記式IIIの環状ペプチド:

式中、jは0〜4の任意の整数であり、好ましくはjは4であり;
iは0〜6の任意の整数、好ましくは1〜6の任意の整数であり、より好ましくはiは6である;
及び
(d)下記式IVのペプチド:

式中、lは0〜9の任意の整数、好ましくは1〜9の任意の整数であり、より好ましくはnは9であり、
mは0〜4の任意の整数、好ましくは1〜4の任意の整数であり、より好ましくはmは4であり、
nは0〜6の任意の整数、好ましくは1〜6の任意の整数であり、より好ましくはnは6であり、
xは任意のアミノ酸、好ましくは任意の天然アミノ酸、より好ましくは任意の天然Lアミノ酸である。
【請求項2】
下記式Iaの環状ペプチドである、請求項1記載のペプチド:

式中、kは0〜6の任意の整数、好ましくは1〜6の任意の整数であり、より好ましくはkは6であり;
x1は個々に独立して酸性アミノ酸を含む群より選択され;かつ
x2は個々に独立して塩基性アミノ酸を含む群より選択される。
【請求項3】
下記式Ibの環状ペプチドである、請求項1及び2のいずれか一項記載のペプチド:

式中、x1は個々に独立して酸性アミノ酸を含む群より選択され;
x2は個々に独立して塩基性アミノ酸を含む群より選択され;
x3は個々に独立してLeu、Ile、Val、Met、Trp、Tyr及びPheを含む群より選択され;
x4は個々に独立してSer、Thr、Ala及びGlyを含む群より選択され;かつ
x5は個々に独立してGln、Asnを含む群より選択される。
【請求項4】
下記式Ic:

のペプチドである、請求項1〜3のいずれか一項記載のペプチド。
【請求項5】
酸性アミノ酸残基の少なくとも1つが、酸性アミノ酸を含む群より選択される異なるアミノ酸で置換される、請求項4記載のペプチド。
【請求項6】
塩基性アミノ酸残基の少なくとも1つが、塩基性アミノ酸を含む群より選択される異なるアミノ酸で置換される、請求項3〜5のいずれか一項記載のペプチド。
【請求項7】
脂肪族アミノ酸残基の少なくとも1つが、脂肪族アミノ酸を含む群より選択される異なるアミノ酸で置換される、請求項3〜6のいずれか一項記載のペプチド。
【請求項8】
少なくとも1つのAlaアミノ酸残基がGluで置換される、請求項3〜7のいずれか一項記載のペプチド。
【請求項9】
下記式IIaの環状ペプチドである、請求項1記載のペプチド:

式中、nは0〜2の整数、好ましくは1又は2であり;
x1は個々に独立して酸性アミノ酸を含む群より選択され;
x2は個々に独立して塩基性アミノ酸を含む群より選択され;
x3は個々に独立してLeu、Ile、Val、Met、Trp、Tyr及びPheを含む群より選択され;かつ
x4は個々に独立してSer、Thr、Ala及びGlyを含む群より選択される。
【請求項10】
下記式IIb:

のペプチド又は下記式IIc:

のペプチドである、請求項9記載のペプチド。
【請求項11】
酸性アミノ酸残基の少なくとも1つが、酸性アミノ酸を含む群より選択される異なるアミノ酸で置換される、請求項10記載のペプチド。
【請求項12】
塩基性アミノ酸残基の少なくとも1つが、塩基性アミノ酸を含む群より選択される異なるアミノ酸で置換される、請求項10又は11記載のペプチド。
【請求項13】
脂肪族アミノ酸残基の少なくとも1つが、脂肪族アミノ酸を含む群より選択される異なるアミノ酸で置換される、請求項10〜12のいずれか一項記載のペプチド。
【請求項14】
少なくとも1つのAlaアミノ酸残基がGluで置換される、請求項10〜13のいずれか一項記載のペプチド。
【請求項15】
下記式IIIaの環状ペプチドである、請求項1記載のペプチド:

式中、iは0〜6の任意の整数、好ましくは1〜6の任意の整数であり、より好ましくはiは6であり;
jは0〜4の任意の整数、好ましくは1〜4の任意の整数であり、より好ましくはjは4であり;
x1は個々に独立して酸性アミノ酸を含む群より選択され;
x2は個々に独立して塩基性アミノ酸を含む群より選択され;
x3は個々に独立してLeu、Ile、Val、Met、Trp、Tyr及びPheを含む群より選択され;かつ
x4は個々に独立してSer、Thr、Ala及びGlyを含む群より選択される。
【請求項16】
下記式IIIb:

のペプチドである、請求項15記載のペプチド。
【請求項17】
酸性アミノ酸残基の少なくとも1つが、酸性アミノ酸を含む群より選択される異なるアミノ酸で置換される、請求項16記載のペプチド。
【請求項18】
塩基性アミノ酸残基の少なくとも1つが、塩基性アミノ酸を含む群より選択される異なるアミノ酸で置換される、請求項16又は17記載のペプチド。
【請求項19】
脂肪族アミノ酸残基の少なくとも1つが、脂肪族アミノ酸を含む群より選択される異なるアミノ酸で置換される、請求項16〜18のいずれか一項記載のペプチド。
【請求項20】
少なくとも1つのAlaアミノ酸残基がGluで置換される、請求項16〜19のいずれか一項記載のペプチド。
【請求項21】
下記式IVaの直鎖状ペプチドである、請求項1記載のペプチド:

式中、nは0〜6の任意の整数、好ましくは1〜6の任意の整数であり、より好ましくはnは6であり;
mは0〜4の任意の整数、好ましくは1〜4の任意の整数であり、より好ましくはmは4であり;
x1は酸性アミノ酸を含む群より選択され;
x2は塩基性アミノ酸を含む群より選択され;
x3はLeu、Ile、Val、Met、Trp、Tyr及びPheを含む群より選択され;かつ
x4はSer、Thr、Ala及びGlyを含む群より選択される。
【請求項22】
下記式IVb:

のペプチドである、請求項21記載のペプチド。
【請求項23】
酸性アミノ酸残基の少なくとも1つが、酸性アミノ酸を含む群より選択される異なるアミノ酸で置換される、請求項22記載のペプチド。
【請求項24】
塩基性アミノ酸残基の少なくとも1つが、塩基性アミノ酸を含む群より選択される異なるアミノ酸で置換される、請求項21又は22記載のペプチド。
【請求項25】
脂肪族アミノ酸残基の少なくとも1つが、脂肪族アミノ酸を含む群より選択される異なるアミノ酸で置換される、請求項22〜24のいずれか一項記載のペプチド。
【請求項26】
少なくとも1つのAlaアミノ酸残基がGluで置換される、請求項22〜25のいずれか一項記載のペプチド。
【請求項27】
ペプチドが環状ペプチドである場合に、環化が、S-S連結、ペプチド結合、炭素結合(例えば、C-C又はC=C)、エステル結合、エーテル結合、アゾ結合、C-S-C連結、C-N-C連結、及びC=N-C連結を含む群より選択される共有結合である連結により生じる、請求項1〜26のいずれか一項記載のペプチド。
【請求項28】
S-S連結がペプチド上の2つのCys残基により形成される、請求項27記載のペプチド。
【請求項29】
ペプチド結合が、N末端アミノ酸のNH2基及びC末端アミノ酸のCOOH基により形成される、請求項27記載のペプチド。
【請求項30】
さらなる結合が構成アミノ酸のNH2基及びCOOH基の側鎖によって形成される、請求項27記載のペプチド。
【請求項31】
請求項1〜30のいずれか一項記載のペプチドの少なくとも1つ及び担体を含む組成物。
【請求項32】
請求項1〜30のいずれか一項記載のペプチドの少なくとも1つを含む診断薬剤。
【請求項33】
抗βアドレナリン受容体抗体の検出のための、請求項32記載の診断薬剤。
【請求項34】
生物学的に活性なさらなる化合物を少なくとも1つ含む、請求項32及び33のいずれか一項記載の診断薬剤。
【請求項35】
請求項1〜30のいずれか一項記載のペプチド又は請求項32若しくは33記載の診断薬剤を含む、抗β1アドレナリン受容体抗体検出用の診断キット。
【請求項36】
請求項1〜30のいずれか一項記載のペプチドの少なくとも1つ及び薬学的に許容できる担体を含む薬学的組成物。
【請求項37】
薬学的に活性なさらなる薬剤を追加的に含む、請求項36記載の薬学的組成物。
【請求項38】
薬学的に活性なさらなる薬剤が、β受容体遮断剤、好ましくは選択的β1アドレナリン受容体遮断剤を含む群より選択される、請求項37記載の薬学的組成物。
【請求項39】
薬学的に活性なさらなる薬剤が、アテノロール、メトプロロール、ネビボロール、及びビソプロロールを含む選択的β1アドレナリン受容体遮断剤の群より選択される、請求項38記載の薬学的組成物。
【請求項40】
薬物の製造のための、請求項1〜30のいずれか一項記載のペプチドの使用。
【請求項41】
薬物が疾患の処置及び/又は予防のためのものであり、疾患が、感染性心疾患及び非感染性心疾患、虚血性心疾患及び非虚血性心疾患、炎症性心疾患及び心筋炎、心拡大、突発性心筋症、突発性拡張型心筋症、免疫性心筋症、心不全、並びに心室性期外捕捉収縮及び上室性期外捕捉収縮を含む任意の心不整脈、を含む心疾患の群より選択される、請求項40記載の使用。
【請求項42】
疾患が突発性拡張型心筋症、好ましくは抗β-AR抗体誘導性の拡張型免疫性心筋症である、請求項41記載の使用。
【請求項43】
薬物が薬学的に活性なさらなる薬剤を少なくとも1つ含む、請求項40〜42のいずれか一項記載の使用。
【請求項44】
薬物がβアドレナリン受容体、好ましくはβ1アドレナリン受容体に対する抗体を有する患者の処置及び/又は予防のためのものである、請求項40〜43のいずれか一項記載の使用。
【請求項45】
薬物が免疫寛容を誘導するためのものである、請求項40〜43のいずれか一項記載の使用。
【請求項46】
免疫寛容、好ましくは抗βアドレナリン受容体抗体の産生の抑制による免疫寛容、より好ましくは抗β1アドレナリン受容体抗体の産生の抑制による免疫寛容を誘導するための薬物の製造のための、請求項1〜30のいずれか一項記載のペプチドの使用。
【請求項47】
抗体産生プレB細胞の抗原認識部位の遮断を通じた抗β1アドレナリン受容体抗体の産生の抑制による免疫寛容を誘導するための、請求項1〜30のいずれか一項記載のペプチドの使用。
【請求項48】
診断方法における請求項1〜30のいずれか一項記載のペプチドの使用。
【請求項49】
方法が、突発性拡張型心筋症、好ましくは抗β-AR抗体誘導性の拡張型免疫性心筋症の診断のための方法である、請求項48記載の使用。
【請求項50】
方法が、FRETベースの方法である、請求項48〜49のいずれか一項記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2008−534545(P2008−534545A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503437(P2008−503437)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【国際出願番号】PCT/EP2006/002977
【国際公開番号】WO2006/103101
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(507324430)ユリウス−マクシミリアンズ−ユニバーシタット ブルツブルグ (1)
【Fターム(参考)】