説明

抗炎症性化合物の非晶形

本発明は、抗炎症性化合物、特に、ステロイドの性質の化合物の技術分野に関し、特に、副腎皮質ステロイドのニトロオキシ誘導体の新規な非晶形、その医薬製剤及び皮膚又は粘膜の疾患又は症状の治療又は予防におけるその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗炎症性化合物、特に、ステロイドの性質の化合物の技術分野に関し、特に、副腎皮質ステロイドのニトロオキシ誘導体の新規な非晶形、その医薬製剤及び皮膚又は粘膜の疾患又は症状の治療又は予防におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚又は粘膜の疾患又は症状の多くは、非限定的な例として、悪性細菌性、真菌性、ウイルス性、寄生虫性、自己免疫性、アレルギー性、ホルモン性及び/又は炎症性の作用物質などの炎症性作用物質によって起こる腫脹によって起こる。皮膚又は粘膜の最も一般的な疾患又は症状には、非限定的な例として、皮膚の痂皮、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、皮膚病、湿疹、表皮水疱症、紅斑、糜爛、皮膚薄片剥離、滲出、炎症、扁平苔癬、赤い苔癬、浮腫、そう痒、おむつによる発疹、股部白癬、乾癬及び疣贅が含まれる。皮膚炎及び湿疹は、真皮上層及び表皮が関与する炎症プロセスの結果として起こる。湿疹が発生する場合、海綿状変化として知られるプロセスにおいて、表皮のケラチノサイトが拡張し、その内部に液体が蓄積する。慢性型の湿疹又は皮膚炎において、主要な変化には表皮の隆起が含まれ、これは皮膚の表面上のそう痒、荒れ及び皮膚薄片剥離を引き起こす。皮膚から水が失われると、角質層の腫脹が引き起こされ、結果として皮膚のひび割れ及び痛みが生じる。さらに、皮膚炎は、接触性皮膚炎(アレルギー性又は非アレルギー性)、アトピー性皮膚炎及び脂漏性皮膚炎に分類することができる。非アレルギー性の接触性皮膚炎は、酸、アルカリ、油、洗剤及び溶剤などの皮膚刺激物への応答として起こる。
【0003】
アトピー性皮膚炎は、多種多様の共通抗原によって誘発される、免疫学的原因の皮膚の再発性及び/又は慢性腫脹である。それは、紅斑性であることが多い、強いそう痒及び湿疹を伴う発疹を特徴とする。それは、主に幼児期に現れ、発症する身体部位は通常、顔、首、体幹上部、手首、手及び皮下脂肪である。それは、世界中で子供のかなり広範囲に及び、国によって最大30%に達し、大人においてはいくぶん少ない。それは、患者の生活の質及びその家庭環境に重大に影響する疾患である。
【0004】
アレルギー性の接触性皮膚炎は、抗原への度重なる暴露への感作の結果として起こる。アレルギー性の接触性皮膚炎は、抗原と接触した皮膚の領域で起こる。
【0005】
脂漏性皮膚炎は、酵母又は細菌によって引き起こされた腫脹の結果として、頭皮及び毛で覆われた他の領域、顔、皮下脂肪を有する領域に影響を及ぼす。人口の多くは、脂漏性皮膚炎の軽症型である、フケを患っている。乾癬は、常染色体優性の炎症性疾患であり、ケラチノサイトの増殖を特徴とし、その増殖は、例えば、膝、肘及び臀部上に鱗片状のプレートの形成をもたらす。それらは、美学的見地からすると不愉快であり、発症した人に不快感を引き起こす。
【0006】
皮膚疾患は、通常、ステロイド性の薬剤及び/又は抗菌薬及び/又は抗真菌薬を含有するクリーム、ゲル又は軟膏で治療する。
【0007】
局所副腎皮質ステロイドは、皮膚疾患の治療のための強力な手段である。しかしながら、超強力な局所ステロイドは、皮膚萎縮、灼熱感、そう痒、過敏症、乾燥、毛包炎、多毛症、ざ瘡、色素脱失、口囲皮膚炎、アレルギー性の接触性皮膚炎、皮膚の浸軟及び二次感染などの副作用を通常伴うため、診療においてこれらの使用は概して、2週間のみに限られる。
【0008】
副腎皮質ステロイドの局所投与は、全身投与と比較して、副作用を最小限に抑えるが、その有効成分は、血流中に入る可能性があり、したがって全身的に活性化する。副腎皮質ステロイドの全身的な吸収は、視床下部−下垂体−副腎皮質系(HPA)の可逆的抑制、クッシング症候群、高血糖、子供の骨成長及び高齢者の骨密度への影響、眼合併症(白内障及び緑内障の形成)並びに皮膚萎縮などの症状を引き起こす可能性がある。さらに、局所副腎皮質ステロイドの使用は、タキフィラキシーを引き起こす可能性もある。
【0009】
現代のグルココルチコイドは最初に導入されたものよりもずっと安全であるにもかかわらず、臨床効果が改善され、副作用が少ない、新しい分子及び製剤の製造は、今なお研究中である。局所薬の効率及び/又は効果を増加させるために、いくつかの製品が開発されたが、かかる製品は、ある程度しか成功しなかった。したがって、有効成分の放出効率を増加させようと試みて、例えば、クリーム、ローション、ゲルなどの多種多様の局所製剤が開発された。しかしながら、皮膚表面への皮膚病薬剤の直接的及び局所的適用にもかかわらず、最適と推定される製剤を用いても通常部分的な改善しか達成されず、皮膚病変は、治療時間が著しく短縮されることなく持続することが多かったので、完全な解決策を示した局所製剤は非常に少なかった。
【0010】
米国特許第4,335,121号は、6α,9α−ジフルオロ−17α−(1−オキソプロポキシ)−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17−0−チオカルボン酸のS−フルオロメチルエステル(その一般名フルチカゾンプロピオン酸エステルで既知の)及びその誘導体を記載している。これらの化合物は、特に局所的な適用において優れた抗炎症性活性を有する。
【0011】
特許文献EP929565は、副腎皮質ステロイドのニトロオキシエステルを記載しており、その用途の中には皮膚疾患の治療がある。その特許文献は、特に、ニトロオキシ基がアルキル鎖によってグルココルチコイド部分に共有結合している、副腎皮質ステロイドのニトロオキシエステルを記載している。その文献は、ステロイド化合物のこれらのニトロ誘導体は、全身投与後、その元の化合物と比較して、より優れた胃耐性及び心臓血管副作用の減少など、より大きい効果及びより優れた全身的耐性を示すと述べている。
【0012】
特許出願WO03064443は、ニトロオキシ基が芳香環又はヘテロアリールを有するコネクターWORによってグルココルチコイド部分に共有結合している、副腎皮質ステロイドのニトロオキシ誘導体を記載している。その文献は、ステロイド化合物のこれらのニトロオキシ誘導体は、その前駆体化合物と比較して、改善された薬理活性及びより少ない副作用を示すと報告している。
【0013】
特許出願WO0061604は、ニトロオキシ基が「抗酸化剤部分」によってグルココルチコイド部分に共有結合しており、「抗酸化剤部分」は、その出願に記載された試験に基づいて選択された遊離基の生成を防ぐことができる化合物の断片である、副腎皮質ステロイドのニトロオキシ誘導体を記載している。その文献は、これらの化合物を、対応する前駆体化合物がより低い活性又はより大きい毒性を示す酸化ストレスの状態と関連した病態の治療に使用することができると報告している。
【0014】
上述の文献は、局所投与後の副腎皮質ステロイドのニトロオキシ誘導体の活性を記載しておらず、その化合物の局所的耐性を研究した情報を特に提供していない。
【0015】
特許出願WO9734871は、ニトロソ化した又はニトロシル化したステロイド及び呼吸器疾患の治療におけるその使用を記載しており、アレルギー性喘息及び肺炎症の肺モデルにおける9−フルオロ−11β−ヒドロキシ−16α,17α−[(1−メチルエチリデン)ビス(オキシ)]プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン−21(4−ニトロオキシ)−ブタノアートの活性を特に記載している。その出願は、皮膚疾患の治療におけるこれらの化合物の使用に言及していない。
【0016】
Hyun E.et al.,British Journal of Pharmacology(2004)143,618−625は、急性皮膚炎モデルにおけるヒドロコルチゾン21−[4’−(ニトロオキシメチル)安息香酸]活性の研究に言及し、この研究において浮腫の形成及び白血球の動員を評価し、その結果から、この化合物が、その前駆体ヒドロコルチゾンより大きい抗炎症性活性を有することが実証された。その文献は、長期治療後の化合物の皮膚への効果に関する情報を提供していない。さらに、Hyun E.et al.によって記載された実験モデルは、他の皮膚疾患に関して予測的でない。
【0017】
特許出願WO2007025632は、ステロイド化合物のニトロオキシ誘導体、それらを含有する局所製剤、皮膚又は粘膜の疾患の治療におけるそれらの使用を記載しており、改善された薬理活性及び増加した局所的耐性を示している。特に請求された化合物の1つは、(11β,16α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16,17−[(1−メチルエチリデン)ビス(オキシ)]−21−[[4−[(ニトロオキシ)メチル]ベンゾイル]オキシ]−プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオンである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、(11β,16α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16,17−[(1−メチルエチリデン)ビス(オキシ)]−21−[[4−[(ニトロオキシ)メチル]ベンゾイル]オキシ]−プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオンに化学的に対応する抗炎症性ステロイド化合物の非晶形、並びにその調製手順、治療的に活性のある薬剤としてのその使用及び新規な形を含む医薬組成物に関する。
【0019】
本出願を通して、「化合物(I)」という用語は、(11β,16α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16,17−[(1−メチルエチリデン)ビス(オキシ)]−21−[[4−[(ニトロオキシ)メチル]ベンゾイル]オキシ]−プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオンに関する。
【0020】
特許出願WO2007025632は、化合物(I)及びその調製物を記載している。その構造式は、以下である。
【化1】

【0021】
化合物(I)は、重要な局所的抗炎症性活性を有する。それは、皮膚の痂皮、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、皮膚病、湿疹、表皮水疱症、紅斑、糜爛、皮膚薄片剥離、滲出、炎症、扁平苔癬、赤い苔癬、浮腫、そう痒、おむつによる発疹、股部白癬、乾癬及び疣贅などの、皮膚又は粘膜のいくつかの疾患又は症状の治療又は予防において臨床的に有用である。それは、概して、クリーム、ローション、軟膏、噴霧用の液剤などとして適用される。
【0022】
化合物(I)の製剤の提示は、一般に、液体又は半液体であり、上述の出願で得られるような化合物は、上述の調製物の製造において取り扱いが難しい結晶物質であるため、この製造に関して取り扱いがより容易な形で、化合物(I)を得る必要が生じる。したがって、Agatha粉砕機で化合物(I)の結晶を粉砕している間、結晶が部分的に非結晶物質に変わったことが偶然に発見された。非結晶物質は、液体及び半液体の調製物の製造に極めて有利であり、液体又は半液体の調製物を製造する場合の、結晶形での化合物(I)使用の問題への解決策を構成する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、その主な実施形態において、非晶形の化合物(I)に言及する。
【0024】
非結晶物質を得るための従来の手順は、対応する結晶物質の融合及び融合した物質の急速冷却を含む。しかしながら、かかる手順は、通常、実験室規模に限定され、工業規模では実行不可能であり、ほとんど適していない。同様に、上述のAgatha粉砕機での粉砕手順は、非晶形を量的に提供せず、したがって、産業化のための適切な手順でもない。
【0025】
したがって、別の実施形態において、本発明は、化合物(I)の非晶形を調製する手順であって、
(i)化合物(I)をジオキサンに溶解する段階と、
(ii)溶液を濾過する段階と、
(iii)得られた非結晶化合物(I)を、−5〜5℃の温度で凍結乾燥することによって回収する段階と
を含む手順を提供する。
【0026】
本発明の好ましい実施形態において、段階(iii)で得られた非結晶化合物(I)を、−2〜2℃の温度で凍結乾燥することによって乾燥させる。
【0027】
本発明の好ましい実施形態において、段階(iii)で得られた非結晶化合物(I)を、0℃の温度で凍結乾燥することによって乾燥させる。
【0028】
本発明の別の実施形態において、非晶形の化合物(I)を、局所的薬物の調製に使用する。
【0029】
本発明の別の実施形態において、非晶形の化合物(I)を、クリーム、ローション、軟膏、噴霧用の液剤などの形での薬物の調製に使用する。
【0030】
別の実施形態において、本発明は、皮膚の痂皮、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、皮膚病、湿疹、表皮水疱症、紅斑、糜爛、皮膚薄片剥離、滲出、炎症、扁平苔癬、赤い苔癬、浮腫、そう痒、おむつによる発疹、股部白癬、乾癬及び疣贅を含む、皮膚又は粘膜のいくつかの疾患又は症状の治療又は予防に使用する非晶形の化合物(I)を含む医薬製剤に関する。
【0031】
別の実施形態において、本発明は、皮膚の痂皮、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、皮膚病、湿疹、表皮水疱症、紅斑、糜爛、皮膚薄片剥離、滲出、炎症、扁平苔癬、赤い苔癬、浮腫、そう痒、おむつによる発疹、股部白癬、乾癬及び疣贅を含む、皮膚又は粘膜のいくつかの疾患又は症状の治療又は予防に使用する、クリーム、ローション、軟膏及び噴霧用の液剤を含む局所的薬物の製造における非晶形の化合物(I)の使用に関する。
【0032】
好ましい医薬形には、クリーム、ローション、軟膏及び噴霧用の液剤が含まれる。上述の医薬形を、当技術分野でよく知られている手順によって調製する。
【0033】
本発明の局所製剤における化合物(I)の比率は、調製する製剤の特定の種類によって決まり、通常、0.001〜12重量%にわたる。しかしながら、多くの調製物にとって、最も有利な比率は、通常、0.001〜1%、より好ましくは0.01〜0.5%、特に約0.025〜0.1%にわたる。いくつかの薬学的に許容される不活性成分も、種々の製剤中に存在することができる。上述の成分は、それらに限定されないが、エタノール、プロピレングリコール、トリアセチン、ヘキシレングリコール及びそれらの組合せを含めたいくつかのアルコールなどの1種又は複数の溶媒;局所製剤中に存在することができ、それらに限定されないが、ワセリン、微結晶性ワックス、ジメチコン、蜜ろう、鉱物油、スクアラン、流動パラフィン、シアバター、カルナウバロウ、SEPIGEL(イソパラフィン、ポリアクリルアミド及びラウリルアルコール7OEの混合物)及びそれらの組合せを含めた適切な閉鎖剤;それらに限定されないが、CETOMACROGOL1000,(Crodor,Inc.)、グリセリンステアラート、ポリオキシエチレンステアラート、グリセリンステアラート及びPEG−100ステアラートの混合物(ARLACEL165など)、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、CETETH−20、ソルビタンモノパルミタート、ソルビタンモノステアラート、ソルビタンモノオレアート及びそれらの組合せなどを含めた界面活性剤である。他の多くの不活性成分も、局所製剤中に存在することができる。これらは、担体(水又は鉱物油など)、皮膚コンディショナー(ラノリン、グリセリン、コレステロール、セトステアリルアルコール、ジメチコン、PEG100、PEG200、PEG300、PEG400又はイソプロピルミリスタートなど)、緩衝剤(クエン酸塩/クエン酸、リン酸二ナトリウム/クエン酸、又はリン酸一ナトリウム/クエン酸など)又は保存料(イミド尿素、メチルパラベン又はプロピルパラベンなど)とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】非晶形の化合物(I)の粉末X線回折曲線を示す図である。Y軸上で、強度をcpsで表す。X軸は、2θ角に相当する。
【図2】結晶形の化合物(I)の粉末X線回折曲線を示す図である。Y軸上で、強度をcpsで表す。X軸は、2θ角に相当する。
【図3】非晶形の化合物(I)のフーリエ変換ラマンスペクトルを示す図である。Y軸は、強度に相当する。X軸は、cm−1で表される、波数に相当する。
【図4】結晶形の化合物(I)のフーリエ変換ラマンスペクトルを示す図である。Y軸は、強度に相当する。X軸は、cm−1で表される、波数に相当する。
【図5】非晶形の化合物(I)の示差走査熱量測定を示す図である。Y軸は、mWで表される、熱流量に相当する。X軸は、℃で表される、温度に相当する。
【図6】結晶形の化合物(I)の示差走査熱量測定を示す図である。Y軸は、mWで表される、熱流量に相当する。X軸は、℃で表される、温度に相当する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明を、以下の実施例によってさらに例示するが、その範囲を限定することを意図していない。
【0036】
(例1):(11β,16α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16,17−[(1−メチルエチリデン)ビス(オキシ)]−21−[[4−[(ニトロオキシ)メチル]ベンゾイル]オキシ]−プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオンの非晶形の調製
160mgの(11β,16α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16,17−[(1−メチルエチリデン)ビス(オキシ)]−21−[[4−[(ニトロオキシ)メチル]ベンゾイル]オキシ]−プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオンを25mLフラスコ中、10mlのジオキサンに溶解した。この溶液を濾過し、物質を0℃で凍結乾燥することによって回収し、次いで同じ温度で冷蔵保持した。
【0037】
非晶形の特徴
化合物(I)の非晶形を、以下の手順を使用して特徴付けた。
機器及び実験条件
粉末X線回折:Bruker D8 Advance。放射線Cu Kα(λ=1.5418Å)、管電力35kV/45mA、VANTEC1検出器、間隔サイズ2θ 0.017°、1間隔あたり105±5秒、走査間隔2θ 2°〜50°。使用した試料スライドは、直径12mmの単一ガラスシリカ製であった。
FT−ラマン分光法:Bruker RFS100。1064nmで励起されるNd:YAG、レーザー出力100mW、Ge検出器、64走査、区間50〜3500cm−1、解像度2cm−1。アルミニウム試料スライドを使用した。
示差走査熱量測定:Perkin Elmer DSC7。使用したるつぼは、金製であった。
【0038】
非晶形の特徴
非晶形の化合物(I)の粉末X線回折パターンは、非晶形の特徴である、基準線におけるわずかな増加にある広幅なハローを示している(図1)。一方、結晶形は、8.0°、14.9°、15.2°及び16.9°の2θで最も強いピークを示している(図2)。
【0039】
非晶形の化合物(I)のラマンスペクトルは、ピークの有意な広幅化によって特徴付けられる(図3)。ピークの位置は、結晶形の位置と同じであるが、微細構造の部分が失われている。結晶形の最も強いピークは、1740cm−1、1657cm−1、1616cm−1及び1604cm−1の波数で、C=O及びC=C振動から生じている。C−H領域に、多数のよく分割されたピークがある(図4)。
【0040】
非晶形の化合物(I)の示差走査熱量測定は、40°Cに近くにΔCp=0.23J/(gK)の不十分に分割されたガラス転移を示している。ガラス転移の後には、71℃でのピーク発熱を有する再結晶及び150J/gの再結晶エンタルピーが続く(図5)。一方、結晶形の物質は、約200℃で分解し始めるまで、何の事象も示さない(図6)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のステロイド抗炎症性化合物の非晶形。
【化1】

【請求項2】
請求項1に記載の非晶形を調製する手順であって、
(i)化合物(I)をジオキサンに溶解する段階と、
(ii)この溶液を濾過する段階と、
(iii)得られた非結晶化合物(I)を、−5〜5℃の温度で凍結乾燥することによって回収する段階と
を含む手順。
【請求項3】
段階(iii)の非結晶化合物(I)を−2〜2℃の温度で凍結乾燥する、請求項2に記載の手順。
【請求項4】
段階(iii)の非結晶化合物(I)を0℃の温度で凍結乾燥する、請求項3に記載の手順。
【請求項5】
皮膚又は粘膜の疾患又は症状の治療又は予防のための医薬製剤を調製するための、請求項1に記載の非晶形の使用。
【請求項6】
皮膚の痂皮、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、皮膚病、湿疹、表皮水疱症、紅斑、糜爛、皮膚薄片剥離、滲出、炎症、扁平苔癬、赤い苔癬、浮腫、そう痒、おむつによる発疹、股部白癬、乾癬又は疣贅の治療のための医薬製剤を調製するための、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記製剤が、クリーム、ローション、軟膏及び噴霧用の液剤の形である、請求項5又は6に記載の使用。
【請求項8】
請求項1に記載の非晶形及び1種又は複数の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬製剤。
【請求項9】
クリーム、ローション、軟膏及び噴霧用の液剤の形の、請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
皮膚又は粘膜の疾患又は症状の治療又は予防に使用するための、請求項1に記載の非晶形。
【請求項11】
皮膚の痂皮、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、皮膚病、湿疹、表皮水疱症、紅斑、糜爛、皮膚薄片剥離、滲出、炎症、扁平苔癬、赤い苔癬、浮腫、そう痒、おむつによる発疹、股部白癬、乾癬又は疣贅の治療又は予防に使用するための、請求項10に記載の非晶形。
【請求項12】
請求項1に記載の非晶形の有効量を患者へ投与することを含む、皮膚又は粘膜の疾患又は症状を治療又は予防する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−500762(P2011−500762A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530461(P2010−530461)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際出願番号】PCT/EP2008/064387
【国際公開番号】WO2009/053439
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(501108452)フエルレル インターナショナル,ソシエダッド アノニマ (39)
【出願人】(510114918)ニコックス ソシエテアノニム (3)
【Fターム(参考)】