抗生物質107891、そのA1及びA2因子、薬学的に許容されるその塩及び組成物、並びにその使用
本発明は、微生物由来の抗生物質である、Microbispora sp.ATCC PTA−5024の発酵によって産生される任意に命名された抗生物質107891、薬学的に許容されるその塩及び組成物、並びに感受性微生物に対する抑制活性を有する抗菌剤としてのその使用に関する。A1及びA2因子と命名された2つの因子を含む複合体である抗生物質107891は、ランチビオティックスグループの抗生物質の典型的な特徴であるランチオニン及びメチルランチオニンを成分として含有するペプチド構造を有する。抗生物質107891及びそのA1及びA2因子は、メチシリン耐性及びバンコマイシン耐性株を含めたグラム陽性細菌に対する良好な抗菌活性を示し、且つ、モラクセラカタラーリス(M.catarrhalis)、ナイセリア種(Neisseria species)及びインフルエンザ菌(H.influenzae)及びマイコバクテリア(Mycobacteria)などのグラム陰性細菌に対しても活性である。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2003年7月18日に出願されたEP出願第03016306.7号の優先権を主張する2004年7月12日に出願されたPCT/EP2004/007658の米国特許法第371条に基づく国内出願である2005年1月11日に出願された米国特許出願第10/521,336号の一部係属出願である2005年1月12日に出願された米国特許出願第11/035,296号の一部係属出願である2005年1月26日に出願された米国特許出願第[代理人整理番号892,280−500]に基づく国際出願であり、これらの出願の全ては参照によりその全体が本明細書に明確に組み込まれる。
【0002】
本発明は、A1因子とA2因子を含む複合体である、微生物起源の抗生物質である、任意に命名された抗生物質107891、薬学的に許容されるその塩、その医薬組成物、及び抗菌剤としてのその使用に関する。
【0003】
本発明の別の目的は、抗生物質107891の調製方法であり、該方法はMicrobispora sp.107891(以下Microbispora sp.ATCC PTA−5024と識別される)或いは前記抗生物質を産生する能力を保持しているその変種又は突然変異体を培養すること、菌糸体から及び/又は発酵ブロスから本発明の抗生物質を回収すること、クロマトグラフ手段で純物質を単離すること、並びにA1及びA2因子を分離することを含む。
【背景技術】
【0004】
抗生物質107891は、成分としてランチオニン及びメチルランチオンを含有する、ペプチド構造を有する新規の抗菌剤である。これらは、ランチビオティックスの、とりわけ細胞壁生合成に主に作用するサブグループの代表的な特徴である。
【0005】
ランチビオティックスは、チオエーテルアミノ酸ランチオニン及びいくつかの他の修飾されたアミノ酸を含むペプチドである(H.G.Sahl and G.Bierbaum,(1998)“Lantibiotics:biosynthesis and biological activities of uniquely modified peptides from gram−positive bacteria”,Ann.Rev.Microbiol.52:41−79)。いくらかのものは異なる薬理学的標的に活性であると報告されているが、公知のランチビオティックスの大部分は抗菌作用を有する。抗菌性のランチビオティックスは、それらの構造を基に2つの群に広く分けることができ、タイプAランチビオティックスは一般的に細長い、両親媒性のペプチドであるが、タイプBランチビオティックスは小型で球形である(O.McAuliffe,R.P.Ross and C.Hill,(2001):“Lantibiotics:structure,biosynthesis and mode of action”,.FEMS Microb.Rev.25:285−308)。ナイシンはタイプAランチビオティックの典型であるが、アクタガルジン[ガルジマイシン(gardimycin)]及びメルサシジンはタイプBランチビオティックのサブクラスに属する。ナイシンタイプとメルサシジンタイプランチビオティックスの2つのクラスは細菌の増殖プロセスでそれらが引き起こす効果において異なるが、両方とも膜結合ペプチドグリカン前駆体脂質IIと相互に作用する。ナイシンタイプランチビオティックスは、主に細胞膜の透過化によって細菌を死滅させるが(H.Brotz,M.Josten,I.Wiedemann,U.Schneider,F.Gotz,G.Bierbaum and H.G.Sahl,(1998):“Role of lipid−bound peptidoglycan precursors in the formation of pores by nisin,epidermin and other lantibiotics”,Mol.Microbiol.30:317−27)、メルサシジンタイプランチビオティックスは、主に細胞壁生合成を阻害することによって細菌細胞を死滅させる(H.Brotz,G.Bierbaum,K.Leopold,P.E.Reynolds and H.G.Sahl,(1998):“The lantibiotic mersacidin inhibits peptidoglycan synthesis by targeting lipid II”,Antimicrob Agents Chemother.42:154−60)。
【0006】
それぞれ抗生物質MF−BA−1768α1及びMF−BA−1768β1と識別された、ミクロビスポラコラリナ(Microbispora corallina)株NRRLL30420によって産生された2種の抗生物質は、米国特許第6551591B1号に記載されている。上記に明らかにされた特許に報告された物理化学的データ(例えば質量分析データ、分子量、アミノ酸含量)及びLC−MS実験解析の保持時間の比較は、抗生物質107891複合体とその成分A1因子及びA2因子は、抗生物質MF−BA1768α1及びMF−BA−1768β1と異なる化学物質であることを明らかに示している。
【0007】
欧州特許出願公開第0592835A2号は、抗腫瘍抗生物質BU−4803TA1、A2、B、C1、C2及びDを記載している。抗生物質BU−4803TA1、A2及びBは、Microbispora ATCC 55327(AA 9966)の発酵ブロスから回収されるが、抗生物質BU4803TC1、C2及びDは、それぞれ抗生物質BU 4803TA1、A2及びBの変換の産生物であり、これらの産生物はジメチルスルホキシド中に貯蔵される。上記抗生物質について欧州特許出願公開第0592835A号に報告された物理化学的データ(例えば、外観、U.V.吸収、分子量、抗腫瘍活性)は、それらは抗生物質107891複合体とそのA1及びA2因子と異なる化学物質であることを明らかに示している。
【発明の開示】
【0008】
菌株及び発酵
Microbispora sp.107891は、環境中で単離されて、2003年2月27日にブダペスト条約の規定の下で米国20110−2209、バージニア州、Manassas市、University Blvd、10801、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)に寄託された。該菌株は寄託番号PTA−5024が与えられた。
【0009】
抗生物質107891の産生は、それを産生することが可能なMicrobispora sp.株、即ちMicrobispora sp.ATCC PTA−5024、或いは前記抗生物質を産生する能力を保持しているその変種又は突然変異体を培養すること、得られる抗生物質を全培養ブロスから、及び/又は分離された菌糸体から、及び/又はろ過された発酵ブロスから単離すること、並びに単離された抗生物質をクロマトグラフィー手段によって精製することによって達成される。いずれの場合でも、抗生物質107891を好気条件下で容易に同化できる炭素、窒素、及び無機塩の供給源を含有する水性栄養培地中において産生することが好ましい。発酵の分野で通常使用される栄養培地の多くが使用することができるが、特定の培地が好ましい。
【0010】
好ましい炭素源は、スクロース、フルクトース、グルコース、キシロースなどである。好ましい窒素源は、大豆かす、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、トリプトン、アミノ酸、加水分解カゼインなどである。培地に混合することができる無機塩のなかに、ナトリウム、カリウム、鉄、亜鉛、コバルト、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム、クロリド、カーボネート、スルフェート、ホスフェート、ナイトレートなどのイオンを生ずることが可能な通例の可溶性塩がある。
【0011】
好ましくは、抗生物質107891を産生する菌株は、発酵管中で又は振盪フラスコ中で前培養され、次いでこの培養物を使用してかなりの量の物質の産生用のジャーファーメンターに入れる。前培養用に使用される培地は、より多量の発酵用に使用されるものと同じであってよいが、他の培地も使用することができる。抗生物質107891を産生する菌株は、17℃から37℃の温度で、最適温度としては約28〜30℃で増殖することができる。
【0012】
発酵中に、抗生物質107891の産生は、感受性微生物のバイオアッセイによって、及び/又はHPLC分析によって監視することができる。抗生物質107891の最大の産生は、一般的に発酵の約90時間後で200時間前に生ずる。
【0013】
抗生物質107891は、Microbispora sp.ATCC PTA 5024、或いは抗生物質107891を産生することが可能なその変種又は突然変異体を培養することによって産生され、それは培養ブロス中に、及び/又は菌糸体中に見出される。
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲においては、「抗生物質107891」という用語は、特別の定めのない限り、A1及びA2因子を含む抗生物質107891複合体を意味する。
【0015】
Microbispora sp.ATCC PTA−5024の形態学的特徴
Microbispora sp.ATCC PTA−5024は、種々の標準の固体培地でよく増殖する。微細な寸法は、1ml/lのビタミン溶液(チアミン塩酸塩25mg/l、パントテン酸カルシウム250mg/l、ニコチン酸250mg/l、ビオチン0.5mg/l、リボフラビン1.25g/l、シアノコバラミン6.25mg/l、パラアミノ安息香酸25mg/l、葉酸500mg/l、塩酸ピリドキサール500mg/l)が添加されたフミン酸−Trace Salts Agar(g/lでの組成:フミン酸0.5、FeSO4・7H2O 0.001、MnCl2・4H2O 0.001、ZnSO4・7H2O 0.001、NiSO4・6H2O 0.001、MOPS 2、寒天20)上で増殖された培養物を用いて測定された。
【0016】
液体培養(V6培地、g/lでの組成:デキストロース22、肉エキス5、酵母エキス5、カゼイン3、NaCl 1.5)においては、菌糸体の断片化は28℃での培養の6日後に観察されない。フミン酸−Trace Salts Agar(28℃でのインキュベーションの21日後)の顕微鏡検査は、分岐した、断片化されていない基質菌糸体、及び単軸分岐した気中菌糸体を明らかにし、多くの長い真直ぐな分岐の少ない気中菌糸も目に見える。特徴的な縦の胞子の組は、枝から又は直接主要な気中菌糸から側面に立ち上がっている短い担胞子体によって支持されている。胞子は球形で非運動性である。胞子嚢様体又は他の特異な構造は観察されない。
【0017】
Microbispora sp.ATCC PTA−5024の培養特徴
Microbispora sp.ATCC PTA−5024を、AF/MS液体培地(実施例1を参照されたい)で28℃及び200rpmにおいて6日間増殖し、次いで新しいAF/MS液体培地に移し(5%接種材料)、更に6日間培養して、最終的に100mlのV6液体培地(実施例1を参照されたい)中に接種した(7%接種材料)。28℃及び200rpmでの培養の6日後に、菌糸体を遠心分離で回収し、無菌食塩水で3度洗浄し、次いで希釈して適切な接種材料を得た。懸濁液のアリコットを、Shirling及びGottlieb(E.B.Shirling and D.Gottlieb,(1966):“Method for Characterization of Streptomyces species”,Int.J.Syst.Bacteriol.16:313−340)によって推奨された種々の培地、及びS.A.Waksman(1961):“The Actinomycetes”,The Williams and Wilkins Co.,Baltimore.Vol.2:328−334によって推奨された培地にクロスハッチング式に(cross−hatched manner)すじをつけて(streak)接種した。
【0018】
種々の炭水化物を炭素及びエネルギー源として使用する能力が、基礎培地としての上記に記載された1ml/lのビタミン溶液が添加された、デンプンを含まないISP4培地を用いて決定され;各炭素源が1%(w/v)の最終濃度で添加された。
【0019】
増殖のNaCl許容範囲、pH領域、及び異なる温度での増殖能力が、ISP2培地上で決定された。全ての培地は28℃で3週間インキュベートされ;説明は定めのない限り21日による。色は自然の昼光でMaerz及びPaulのカラーアトラス(A.Maerz and M.R.Paul,1950−A Dictionary of Colour,2nd edition.McGraw−Hill Book Co.Inc.,New York)を用いて評価された。ナイトレートをナイトライトに還元する能力は、Williams他(S.T.Williams、M.Goodfellow、G.Alderson、E.M.H.Wellington、P.H.A.Sneath及びM.J.Sackin、1983−Numerical classification of Streptomyces and related genera−J.Gen.Microbiol.129,1743−1813)によって記載された手順に従ってスロッピイなナイトレート培地中で評価された。
【0020】
菌株Microbispora sp.ATCC PTA−5024についての増殖、コロニー出現、基質及び気中菌糸体の色、並びに色素産生が表Iに記録されている。栄養増殖は、使用された培地のいくらかにしか現れない気中菌糸体と異なり、その大部分で現れる。明らかな色素沈着は使用されたいずれの培地にも見られない。菌株の生理的特徴は表IIに示されている。増殖及び気中菌糸体の産生は17℃で現れるが、43℃では現れない。ISP2上の気中菌糸体の産生は、6を超えたpHにおいて現れるが、1%NaClの存在下では現れない。
【0021】
種々の炭水化物を増殖に使用する能力は表IIIに示されている。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
Microbispora sp.ATCC PTA−5024の化学分類学的特徴
Microbispora sp.ATCC PTA−5024を、GYM培地(グルコース4g/l、酵母エキス4g/l、麦芽エキス10g/l)中28℃において回転式振盪機で増殖し、菌糸体を回収し、無菌蒸留水で2度洗浄し次いで凍結乾燥した。アミノ酸の分析が、Staneck及びRoberts(J.L.Staneck and G.D.Roberts,(1974):“Simplified approach to identification of aerobic actinomycetes by thin−layer chromatography”,Appl.Microbiol.28:226−231)の方法に従って実施された。メナキノン及び極性脂質が、Minnikin他(D.E.Minnikin,A.G.O’Donnell,M.Goodfellow.,G.Alderson,M.Athalye,A.Schaal and J.H.Parlett,(1984):“An integrated procedure of isoprenoid quinones and polar lipids”,J.Microbiol.Meth.2:233−241)の手順に従って抽出された。極性脂質が、薄層クロマトグラフィーによって分析され(D.E.Minnikin,V.Patel,L.Alshamaony,and M.Goodfellow,(1977):“Polar lipid composition in the classification of Nocardia and related bacteria”,Int.J.Syst.Bacteriol.27:104−117)、メナキノンが、HPLCによって分析され(R.M.Kroppenstedt,(1982):“Separation of bacterial menaquinones by HPLC using reverse phase RP18 and a silver loaded ion exchanger as stationary phase”,J.Liquid.Chromat.5:2359−2367;R.M.Kroppenstedt,(1985):“Fatty acid and menaquinone analysis of actinomycetes and related organisms”,in:Chemical Methods in Bacterial Systematics.No20 SAB Technical Series pp.173−199,M.Goodfellow and D.E.Minnikin eds,Academic Press,London)、脂肪酸メチルエステルが、ガス液体クロマトグラフィーによってそれぞれ分析された(L.T.Miller,(1982):“A single derivatization method for bacterial fatty acid methyl esters including hydroxy acids”,J.Clin.Microbiol.16:584−586;M.Sasser,(1990):“Identification of bacteria by gas chromatography of cellular fatty acids”,USFCC News Letters 20:1−6)。ミコール酸の存在は、Minnikin他(D.E.Minnikin,L.Alshamaony,and M.Goodfellow,(1975):“Differentiation of Mycobacterium,Nocardia and related taxa by thin layer chromatographic analysis of whole organism methanolyzates”,.J.Gen.Microbiol.88:200−204)の方法によって確かめられた。
【0026】
Microbispora sp.ATCC PTA−5024の菌株の全細胞加水分解物は、ペプチドグリカンのジアミノ酸としてのメソ−ジアミノピメリン酸を含む。主要なメナキノンは、MK−9(III、VIII−H4)、MK−9(H2)及びMK−9(H0)である。極性脂質の型は、ホスファチジルエタノールアミン、メチルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルイノシトールマンノシド、及びリン脂質を含有するN−アセチルグルコサミン、即ちLechevalier他(H.A.Lechevalier,C.De Brieve and M.P.Lechevalier,(1977):“Chemotaxonomy of aerobic actinomycetes:phospholipid composition”,Biochem.Syst.Ecol.5:246−260)によるリン脂質IV型の存在によって特徴づけられる。脂肪酸型の主要な成分は、アンテイソ15:0、イソ16:0、n−16:0、アンテイソ17:0、及び10−メチルヘプタデカノイック(10−Me−17:0)、即ち、3cセンスクロッペンシュテッド(3c sensu Kroppenstedt)である(R.M.Kroppenstedt,(1985):“Fatty acid and menaquinone analysis of actinomycetes and related organisms”,in:Chemical Methods in Bacterial Systematics.No20 SAB Technical Series pp.173−199.M.Goodfellow and D.E.Minnikin eds,Academic Press,London)。ミコール酸は検知されない。
【0027】
Microbispora sp.ATCC PTA−5024の16S rDNAシーケンシング
Microbispora sp.ATCC PTA−5024株の全rRNAの95%に相当する、16 rRNA遺伝子(16S rDNA)の部分配列、即ち1443ヌクレオチドは、公開された手順に従って達成された(P.Mazza,P.Monciardini,L.Cavaletti,M.Sosio and S.Donadio,(2003):“Diversity of Actinoplanes and related genera isolated from an Italian soil”,Microbial Ecol.5:362−372)。それは配列番号1に報告された。この配列は、米国特許第6551591B1号に報告されたように菌株Microbispora corallina NRRL 30420(MF−BA−1768)の配列と比較された。これら2つの配列は整列され、差異は1456整列位置のうちの31で見出され、全体で2.13%の配列相違があった。97.5%未満の配列同一性を共有する任意の2つの菌株は、一般的に異なる種に属する(Stackebrandt,E.and Embley,M.T.(2000)“Diversity of Uncultered Microorganisms in the Environment”.In:Nonculturable Microorganisms in the Environment,R.R.Colwell and D.J.Grimes(eds).ASM,Press,Washington DC,pp.57−75)。従って、配列相違の2%レベルは、極めて高く(Rossello−Mora,R.,and Amann,R.(2001).“The Species Concept for Prokaryotes”.FEMS Microbiol.Rev.25:39−67)、Microbispora sp.ATCC PTA−5024とMicrobispora corallina NRRL 30420(MF−BA−1768)は異なる菌株であることを示している。
【0028】
Microbispora sp.ATCC PTA−5024の同一性
抗生物質107891を産生する菌株は、次の化学分類学的及び形態学的特徴によりストレプトスポランギアセアエ(Streptosporangiaceae)科、ミクロビスポラ(Microbispora)属に割り当てられる。
・細胞壁中のメソ−ジアミノピメリン酸の存在、
・多量のMK−9(III、VIII−H4)、及びLechevalier他(H.A.Lechevalier,C.De Brieve and M.P.Lechevalier,(1977):“Chemotaxonomy of aerobic actinomycetes:phospholipid composition”,Biochem.Syst.Ecol.5:246−260)によるリン脂質IV型、
・3cセンスクロッペンシュテッド(R.M.Kroppenstedt,(1992):“The genus Nocardiopsis”,in:The Prokariotes,Vol II,,pp.1139−1156,A.Balows,H.Truper,M.Dworkin,W.Harder and K.H.Schleifer eds;New York,Springer−Verlag)の脂肪酸プロフィール、
・ミコール酸の欠如、
・気中菌糸から側面に分岐する短い担胞子体の先端の特徴的な縦の胞子の組の形成。非運動性胞子、
・記載されたMicrobispora sp.からの16S rDNA配列に対して>97%の同一性を示す、配列番号1に報告された、全rRNAの95%に相当する、16 rRNA遺伝子(16S rDNA)の部分配列、即ち1443ヌクレオチド。
【0029】
他の微生物と同様に、抗生物質107891を産生する菌株の特徴は変わる場合がある。例えば、菌株の人工的な変種及び突然変異体は、紫外線、並びに亜硝酸、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン及び他多数の物質などの化学物質などの種々の知られている突然変異原での処理によって得ることができる。抗生物質107891を産生することが可能な、Microbispora sp.ATCC PTA−5024株の全ての天然及び人工的な変種及び突然変異体は、本発明の目的についてMicrobispora sp.ATCC PTA−5024株と同等であるとみなされ、従って発明の範囲内とみなされる。
【0030】
抗生物質107891の抽出及び精製
上記の通り、抗生物質107891は、菌糸体中と発酵ブロスのろ過画分中の両方に殆ど等しく配分されていることが見出される。
回収されたブロスは、発酵ブロスの上澄みから菌糸体を分離するよう処理することができ、菌糸体は、水混和性溶媒で抽出して、使用済み菌糸体の除去後に107891抗生物質を含む溶液を得ることができる。この菌糸体エキスは、次いで、上澄み画分についてこれから先に報告される手順に従って上澄みと別に、又は一緒に処理することができる。水混和性溶媒が菌糸体エキスから抗生物質を回収する操作に支障をもたらしうる場合、水混和性溶媒は蒸留によって除去することができ、又は支障のない濃度に水で希釈することができる。
【0031】
本出願で使用される「水混和性溶媒」は、この用語の技術分野で現在与えられる意味を有するよう意図されており、使用の状態において、合理的に広い濃度範囲で水に混和できる溶媒を意味する。本発明の化合物の抽出に使用できる水混和性有機溶媒の例は、低級アルカノール、例えばメタノール、エタノール、及びプロパノールなどの(C1〜C3)アルカノール;ベンジルアルコールなどのフェニル(C1〜C3)アルカノール、低級ケトン、例えばアセトン及びエチルメチルケトンなどの(C3〜C4)ケトン;ジオキサン及びテトラヒドロフランなどの環状エーテル;エチレングリコール、プロピレングリコール、及びエチレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール及びそれらの部分エーテル化の生成物;ジメチルホルムアミド及びジエチルホルムアミドなどの低級アミド;酢酸、ジメチルスルホキシド並びにアセトニトリルである。
【0032】
産生している微生物の発酵ブロスの上澄みからの化合物の回収は、それ自体公知の技術に従って行われ、該技術は、溶媒による抽出、非溶媒の添加による又は溶液のpH変化による析出、分配クロマトグラフィー、逆相分配クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、分子排除クロマトグラフィーなどによる抽出、或いは前記技術の2つ以上の組合せを含む。ろ過された発酵ブロスからの本発明の化合物の回収の手順は、水非混和性有機溶媒による抗生物質107891の抽出、それに続いての場合によっての析出剤の添加による濃縮された抽出物からの析出を含む。
【0033】
この場合もまた、本出願で使用される「水非混和性溶媒」という用語は、前記用語に当技術分野で現在与えられる意味を有することが意図されており、使用の状態において、目的の用途に適した合理的に広い濃度範囲で水にわずかに混和する又は実質的に混和しない溶媒を意味する。
【0034】
発酵ブロスからの本発明の化合物の抽出に使用できる水非混和性有機溶媒の例は、
n−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、4−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、2,2−ジメチル−3−ペンタノール、2,4−ジメチル−3−ペンタノール、4,4−ジメチル−2−ペンタノール、5−メチル−2−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、5−メチル−1−ヘキサノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−メチル−3−ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、シクロペンタノール、2−シクロペンチルエタノール、3−シクロペンチル−1−プロパノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、2,3−ジメチル−シクロヘキサノール、4−エチルシクロヘキサノール、シクロオクチルメタノール、6−メチル−5−ヘプテン−2−オル、1−ノナノール、2−ノナノール、1−デカノール、2−デカノール、及び3−デカノールなどの直鎖、分枝又は環状であってよい少なくとも4個の炭素原子のアルカノール;メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、メチルイソアミルケトンなどの少なくとも5個の炭素原子のケトン、並びにそれらの混合物である。
【0035】
当技術分野で知られているように、ろ過された発酵ブロスからの産生物抽出は、pHを適切な数値に調節すること、及び/又は抽出溶媒に可溶性である、抗生物質とイオン対を形成する適切な有機塩を添加することによって改良することができる。
【0036】
当技術分野で知られているように、相分離は水性相に加塩することによって改良することができる。
抽出に続いて、相当量の水を含む有機相が回収される場合、それより水を共沸的に蒸発することが便利であるかもしれない。一般的に、このことは、最小の水との共沸混合物を形成することが可能な溶媒の添加、及びそれに続く必要ならば所望の産成物を析出させるための析出剤の添加を必要とする。最小の水との共沸混合物を形成することが可能な有機溶媒の代表例は、n−ブタノール、ベンゼン、トルエン、ブチルエーテル、四塩化炭素、クロロホルム、シクロヘキサン、2,5−ジメチルフラン、ヘキサン、及びm−キシレンであり、好ましい溶媒はn−ブタノールである。
【0037】
析出剤の例は、石油エーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、及びブチルエーテルなどの低級アルキルエーテル、並びにアセトンなどの低級アルキルケトンである。
抗生物質107891を回収するための好ましい一手順によれば、ろ過された発酵ブロスは、吸着マトリックスと接触させ、次いで極性の水混和性溶媒又はその混合物で溶離し、減圧下で油状の残渣に濃縮し、前述のタイプの析出剤で析出させることができる。
【0038】
本発明の化合物の回収に好都合に使用できる吸着マトリックスの例は、ポリスチレン又は混合ポリスチレン−ジビニルベンゼン樹脂(例えばM112又はS112、Dow Chemical Co.;Amberlite(登録商標)XAD2又はXAD4、Rohm & Haas;Diaion HP 20、Mitsubishi)、アクリル樹脂(例えばXAD7又はXAD8、Rohm & Haas)、ポリカプロラクタム、ナイロン及び架橋ポリビニルピロリドンなどのポリアミド(例えばPolyamide−CC 6、Polyamide−SC 6、Polyamide−CC 6.6、Polyamide−CC 6AC及びPolyamide−SC 6AC、Macherey−Nagel & Co.、ドイツ;PA 400、M.Woelm AG、ドイツ)、及びポリビニルピロリドン樹脂PVP−CL(Aldrich Chemie GmbH & Co.,KG、ドイツ)、並びに細孔制御(controlled pore)架橋デキストラン(例えばSephadex(登録商標)LH−20、Pharmacia Fine Chemicals,AB)である。好ましくは、ポリスチレン樹脂が使用され、とりわけ好ましいのはDiaion HP 20樹脂である。
【0039】
ポリスチレン樹脂、ポリスチレン−ジビニルベンゼン樹脂、ポリアミド樹脂又はアクリル樹脂の場合においては、好ましい溶離液は、水混和性溶媒又はその水性混合物である。水性混合物は、適切なpH値の緩衝液を含有することができる。
【0040】
この場合においてまた、本説明及び特許請求の範囲に使用される「水混和性溶媒」という用語は、上記に記載された前記用語に当技術分野で現在与えられる意味を有することが意図されている。
【0041】
抗生物質の単離及び精製の連続的な手順は、ブロスの上澄みからと菌糸体からの合わせた抽出物について行うことができる。例えば、ろ過された発酵ブロス又は上澄みに含まれた抗生物質産生物の部分が、吸収樹脂上の吸収によって回収され、菌糸体に含まれた抗生物質産生物の部分が、水混和性溶媒でそれから抽出され次いで吸収樹脂上で吸着される場合、2組の吸収樹脂のそれぞれからの溶離画分は、場合によっては濃縮後に混合して、次いで更に単一の群として処理することができる。別法として、別々の抽出段階に利用された2組の吸収樹脂が同一のタイプであり、同一の機能的特徴を有する場合、それらを一緒にすることができ、この混合物は、例えば、水混和性溶媒又は水とその混合物を用いた単一の溶離ステップを受けることができる。
【0042】
いずれの場合でも、粗抗生物質107891を回収するために採用された手順が何であっても、連続的な精製ステップが、通常、別々の抽出段階に由来する産生物の組合せから得られた粗材料の混合物について実施される。
【0043】
粗抗生物質107891の精製は、それ自体公知の技術のいずれかによって達成することができるが、好ましくはクロマトグラフ法を用いて実施される。これらのクロマトグラフ法の例は、回収ステップに関して報告されたものであり、様々な機能的誘導体化、及び水混和性溶媒又は上記の種類の水混和性溶媒の水性混合物を用いての溶離を有する、シリカゲル、アルミナ、活性ケイ酸マグネシウムなどの固定相上のクロマトグラフィー、又はシラン処理シリカゲル上の逆相クロマトグラフィーも含む。
【0044】
例えば、固定相としてRP−8又はRP−18、及び溶離系としてHCOONH4 緩衝液:CH3CNの混合物を用いる、分取HPLCクロマトグラフィーを使用することができる。
【0045】
精製ステップで回収された活性画分を一緒にし、真空下で濃縮し、上記の種類の析出剤の添加によって析出し、1回又は反復して乾燥又は凍結乾燥する。産生物がギ酸アンモニウム又は他の緩衝塩の残量を含む場合においては、これらを固相抽出カラム、例えばSPE Superclean LCP18 Supelco(Bellefonte PA、米国)などの逆相樹脂カラム上の抗生物質107891の吸収、続いての蒸留水での洗浄及び適切な水性溶媒混合物、例えばエタノール:水を用いた溶離によって除去することができる。抗生物質を次いで溶離溶媒を除去することによって回収する。
【0046】
その結果、精製された抗生物質107891複合体乾燥製剤が白色粉末として得られる。この技術分野で常のごとく、産生、並びに回収及び精製ステップは、感受性微生物に対する阻害アッセイ、及びHPLC又は質量分析と組み合わせたHPLCを用いた分析管理を含めた種々の分析的な手順によって監視することができる。
【0047】
好ましい一分析的HPLC技術が、流速1ml/分で溶離されるカラムWaters Simmetry−shield RP8、5μ(250×4.6mm)を備えたWaters装置(Waters Chromathography、Milford、MA)で温度50℃において実施される。
【0048】
溶離は多段階プログラム、即ち、時間=0(30%B相)、時間=8分(30%B相)、時間=28分(B相の40%)を伴った。相Aはアセトニトリル:100mMギ酸アンモニウム緩衝液(pH:5.0)5:95(v/v)であり、相Bはアセトニトリルであった。UV検知器は282nmであった。
【0049】
カラムからの溶出液は5:95の比に分割し、大部分(約950μl/分)はフォトダイオードアレイ検出器に回された。残りの50 μl/分はFinnigan LCQイオントラップ質量分析計(Thermoquest、Finnigan MAT、San Jose CA)のESIインターフェースに回された。
【0050】
質量分光分析が次の条件下で実施された。
試料注入口条件:
シートガス(N2) 60psi(約413685Pa)、
補助ガス(N2) 5psi(約34474Pa)、
キャピラリー加熱器 250℃
試料注入口電圧設定:
陽極性及び陰極性の両方、
イオンスプレイ電圧 +/−5kV、
キャピラリー電圧 +/−19V
走査条件:最大イオン時間 200ms、
イオン時間 5ms、
フルミクロスキャン 3、
セグメント:持続時間 30min、スキャンイベントポジティブ(150〜2000m/z)及びネガティブ(150〜2000m/z)
【0051】
これらの分析的HPLC条件においては、抗生物質107891のA1及びA2因子は、それぞれ13.2分及び13.9分の保持時間を示した。同じHPLC系においては、ラモプラニンA2因子(L.Gastaldo,R.Ciabatti,F.Assi,E.Restelli,J.K.Kettenring,L.F.Zerilli,G.Romano,M.Denaro and B.Cavalleri,(1992):“Isolation,structure determination and biological activity of A−16686 Factors A’1,A’2 and A’3 glycolipodepsipeptide antibiotics”,J.Ind.Microbiol.11:13−18)は7.5分の保持時間で溶離された。
【0052】
抗生物質107891のA1及びA2因子は、抗生物質107891複合体の精製された試料から分取HPLCを用いて分離することができる。
A1因子は、DMSO:ギ酸 95:5(v/v)中に溶解された精製された抗生物質107891複合体から、流速3.5mlにおける30%から45%のB相の25分線形勾配溶離を用いて、Symmetry Prep.C18カラム上で分離され精製された。
【0053】
B相はアセトニトリルであった。A相は、25mMギ酸アンモニウム緩衝液pH4.5:アセトニトリル 95:5(v/v)であった。純粋な抗生物質107891A1因子を含む溶離された画分は、集められ真空下で濃縮された。残留溶液は、凍結乾燥されて純粋なA1因子が白色粉末として得られた。
【0054】
A2因子は、酢酸:アセトニトリル:100mMギ酸アンモニウム緩衝液(pH4)50:120:80(v/v)の混合物中に溶解された精製された抗生物質107891複合体の試料からSymmetry Prep.C18カラム上の定組成溶離によって分離され精製された。定組成溶離は、100mMギ酸アンモニウム緩衝液pH4:アセトニトリルの82.5:17.5(v/v)の比率の混合物を用いて流速7mlで実施された。純粋な抗生物質107891A2因子を含む溶離された画分は、集められ真空下で濃縮された。残留溶液は、凍結乾燥されて純粋なA2因子が白色粉末として得られた。
【0055】
抗生物質107891並びにそのA1及びA2因子は、2−メトキシエタノール(MCS):H2O 12:3(v/v)中の酸/塩基滴定によって示されたように、塩基性官能基を含むので、それらは通常の手順によって適切な酸と塩を形成することができ、それらは遊離塩基の形態でも存在することができる。
【0056】
抗生物質107891及びそのA1及びA2因子は、遊離塩基の形態で得られた場合、酸で対応する塩に変換することができ、それらの塩は無毒性の薬学的に許容される塩を含む。適切な塩は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、コハク酸、クエン酸、アスコルビン酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸、パルミチン酸、コール酸、パモ酸、粘液酸、グルタミン酸、樟脳酸、グルタル酸、グリコール酸、フタル酸、酒石酸、ラウリン酸、ステアリン酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ソルビン酸、ピクリン酸、安息香酸、桂皮酸などの有機酸及び無機酸の両方との標準の反応によって形成される塩を含む。抗生物質107891並びにそのA1及びA2因子の酸との付加塩は、一般的に用いられる通常の手順に従って調製することができる。一例として、抗生物質107891又はそのA1因子又はそのA2因子は、遊離塩基の形態で、最小量の適切な溶媒、一般的に低級アルカノール、又は低級アルカノール/水の混合物に溶解され、化学量論的量の適切な選択された酸が、得られた溶液に徐々に添加され、得られた塩は非溶媒の添加によって析出する。形成する付加塩は、次いでろ過又は溶媒の蒸発によって回収される。
【0057】
別法として、これらの塩は、凍結乾燥による実質的に無水の形態で調製することができ、この場合、揮発性酸との抗生物質107891又はそのA1因子又はそのA2因子の塩が、適切な量の不揮発性酸を用いて溶解される。この溶液は、次いでいずれかの不溶性物質からろ過され、1回又は反復して凍結乾燥される。
【0058】
特定の付加塩は、所望の塩が適切なアニオンの付加によって析出する場合に、抗生物質107891又はそのA1因子又はそのA2因子の別の塩の形態の溶液からも得ることができる。
【0059】
本発明の非塩化合物(non salts compound)の対応する付加塩への変換、及びその逆、即ち本発明の化合物の付加塩の非塩形態への変換は、通常の技術的手腕の範囲内であり、本発明によって包含される。
【0060】
抗生物質107891並びにそのA1及びA2因子の塩の形成は、前記抗生物質107891並びにそのA1及びA2因子の分離、精製、及び治療薬又は動物成長促進剤としてのそれらの使用を含めたいくつかの目的に役立ちうる。治療目的用には、薬学的に許容される塩が通常用いられる。
【0061】
「薬学的に許容される塩」という用語は、温血動物の治療に利用できる無毒性の塩を意味する。
抗生物質107891複合体、そのA1及びA2因子、並びに前記因子の任意の比率の混合物は、そのまま又は薬学的に許容される担体と混合して投与することができ、ペニシリン、セファロスポリン、アミノグリコシド及びグリコペプチドなどの他の抗菌剤と併せて投与することもできる。
【0062】
併用療法(Conjunctive therapy)は、従って、最初に投与されたものの治療効果がそれに続くものが投与されるときに完全には消滅していないような、活性化合物の逐次的な、同時の及び別々の投与を含む。
【0063】
本発明の化合物、又はその薬学的に許容される付加塩は、非経口の、経口の又は局所の投与に適した形態に製剤することができる。抗生物質に感受性の微生物を含む任意の感染症の治療における静脈内投与用の非経口製剤は、例えば、ポリプロピレングリコール又はジメチルアセトアミドなどの適切な可溶化剤、及び界面活性剤(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート又はポリエトキシル化ヒマシ油)、或いは注射用の滅菌水中のシクロデキストリン又はリン脂質ベースの製剤と共に水に溶解される。注射製剤もまた、適切なシクロデキストリンを用いて得ることができる。
【0064】
抗生物質107891複合体、そのA1及びA2因子、並びに前記因子の任意の比率の混合物はまた、経口投与用のカプセル、錠剤又は水性懸濁液などの適切な医薬形態に、或いは局所適用のための従来のクリーム又はゼリーと共に使用することができる。ヒト及び獣医用の治療における薬剤としてのそれらの使用の他に、本発明の化合物はまた、動物の成長促進剤として使用することができる。この目的のためには、本発明の化合物は適切な飼料中に経口で投与される。使用される正確な濃度は、通常の量の飼料が消費される場合に成長促進に有効な量の活性剤を供給するのに必要な濃度である。
【0065】
本発明の活性化合物の動物の飼料への添加は、好ましくは、有効量の活性化合物を含む適切な飼料プレミックスを調製してこのプレミックスを完全飼料に混合することによって達成される。別法として、活性成分を含む中間体濃縮物又は飼料添加物(feed supplement)を飼料中にブレンドすることができる。このような飼料プレミックス及び完全飼料を調製し投与できる様式が参考文献(例えば“Applied Animal Nutrition”,W.H.Freedman and CO.,S.Francisco,U.S.A.,1969 or“Livestock Feeds and Feeding”0 and B books,Corvallis,Ore.,U.S.A.,1977)に記載されている。
【0066】
抗生物質107891の物理化学的特徴
A)質量分析:
Thermofinnigan較正ミックス(calibration mix)を用いた、エレクトロスプレイ源を備えたThermofinnigan LCQ deca装置上のMS実験においては、抗生物質107891は、2つの二重にプロトン化されたイオンを、複合体A1因子とA2因子の最も低い同位体組成にそれぞれ対応するm/z=1124とm/z=1116において示す。エレクトロスプレイ条件は、スプレイ電圧4.7kV、キャピラリー温度220℃、キャピラリー電圧3V、注入モード 10μl/分であった。スペクトルは、トリフルオロ酢酸0.1%を含むメタノール/水80/20(v/v)中の0.2mg/ml溶液から記録され、図1A(完全走査低解像度スペクトル)及び1B(拡大高解像度スペクトル)に示される。
【0067】
B)Brukerフーリエ変換赤外分光光度計IFS48型を用いてKBr中で記録された抗生物質107891の赤外線スペクトルは、3263、2929、1661、1533、1402、1114、1026(cm−1)に吸収極大を示す。赤外線スペクトルは図2に示されている。1631、1596及び1346における吸収帯は、ギ酸アンモニウムの残量に起因する。
C)Perkin−Elmer分光光度計λ16を用いてメタノール/H2O(80:20の比率)中で実施された抗生物質107891の紫外スペクトルは、226と267nmにおいて2つの肩を示す。紫外スペクトルは図3に示されている。
D)1H−NMRスペクトルが、水抑制シーケンス(water suppression seqience)を適用するBruker AMX 600分光計でメタノール−d4:H2O(pH4.3 HCl)40:10(v/v)の混合物中40℃において記録された。内部標準として、3.31ppmにおけるメタノール−d4の残留シグナルが考慮された。
【0068】
抗生物質107891の1H−NMRスペクトルが図4に示されている。
メタノール−d4:H2O(0.01N HCl)40:10(v/v)中に溶解された抗生物質107891の1H−NMRスペクトルは、600MHzにおいてMeOH−d4を内部標準(3.31ppm)として用いて次のシグナルのグループ(ppmで)を示す[δ=ppm、多重度(帰属)]:0.93d(CH3)、0.98d(CH3)、1.07t(重複CH3)、1.18t(重複CH3)、1.26s(CH3)、1.30t(重複CH3)、1.62〜1.74m(CH2)、1.78d(CH3)、1.80d(CH3)、2.03m(CH2)、2.24m(CH)、2.36m(CH2)、2.72〜3.8m(ペプチド性アルファCH)、3.8〜5.2m(ペプチド性アルファCH)、5.53〜6.08s(CH2)、5.62d(CH二重結合)、6.42m(CH)、6.92d(CH二重結合)、7.0〜7.55m(芳香族CH)、7.62〜10.4d及びm(芳香族及びペプチド性NH)。
E)13C−NMRスペクトルが、内部標準として49.15ppmにおけるメタノール−d4の残留シグナルを用いるBruker AMX 600分光計上でメタノール−d4:H2O(pH4.3 HCl)40:10(v/v)の混合物中40℃において記録された。抗生物質107891のbbデッカプル(bb decoupled)13C−NMRスペクトルが図5に示されている。
メタノール−d4:H2O(0.01N HCl)40:10(v/v)中に溶解された抗生物質107891の13C−NMRスペクトルは、MeOH−d4を内部標準(49.15ppm)として用いて600MHzにおいて次のシグナルのグループ(ppmで)を示す[δ=ppm、(帰属)]:13.6〜23.2(脂肪族CH3)、26.16〜73(脂肪族CH2及びペプチド性アルファCH)、105〜136(芳香族及び二重結合CH及び四級炭素)、164.3〜176.3(ペプチド性カルボニル)。
F)抗生物質107891複合体が、過剰モルの0.01M塩酸を含む2−メトキシエタノール(MCS):H2O 12:3(v/v)に溶解された。この溶液は、次いで、0.01N水酸化カリウムの溶液で逆滴定された。得られた滴定曲線は、1つの塩基性イオン性官能基を示した。
【0069】
抗生物質107891並びにそのA1及びA2因子のアミノ酸組成
A)抗生物質107891複合体中の「耐酸性」アミノ酸の決定
抗生物質107891が完全な酸加水分解(HCl 6N、105℃、24時間)にかけられ、酸処理に耐性がある抗生物質のアミノ酸成分が同定された。酸に不安定なアミノ酸はこの手法で検知できない。加水分解物は、適切な誘電体化の後に、同様に誘電体化された標準のアミノ酸の混合物と比較して、HPLC−MS及びGC−MS分析によって研究された。HPLC分析については、加水分解された試料は、6−アミノキノリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート(AccQ−Tag(商標)Fluor試薬キット)で処理され、GC分析については、無水メタノール及びトリフルオロ酢酸無水物中の3N HClの混合物で処理された。
【0070】
定性的HPLC分析が、同時のDAD及びMS検知を用いる液体クロマトグラフィー系上で実施された。
【0071】
HPLC法は次の条件を有した。
カラム:AccQ−Tag(商標)(Waters C18 NovoPak 4μm 3.9×150mm)
カラム温度:37℃
流速:1mL/分
A相:酢酸アンモニウム140mM pH5(酢酸)
B相:水:アセトニトリル60:40(v/v)
【0072】
【表4】
【0073】
UV検知:254nm
MS条件は次の通りである。
分光計:標準エレクトロスプレイ源を備えたFinnigan LCQ Deca
キャピラリー温度:250℃
供給源電圧:4.70KV
供給源電流:80μA
キャピラリー電圧:−15V
定性的GC分析は、MS−EI検知が取り付けられたガスクロマトグラフ上で実施された。
【0074】
GC法は、次の条件を有した。
カラム:J & W Scientific DB−5、30m×0.254mm ID×0.25μm FT
キャリヤーガス:ヘリウム
注入モード:スプリットレス
注入温度:200℃
トランスファーライン温度:300℃
温度プログラム:2.5℃/分で50℃から100℃まで(10分)、10℃/分で100℃から250℃まで(15分)、250℃で15分
注入量:1μl
【0075】
MS条件は次の通りであった。
分光計:Finnigan TSQ700
イオン化モード:電子衝撃
電圧設定:
フィラメント電流:400mA
電子マルチプライヤ:1400V
電子エネルギー:70eV
陽イオンモード
走査条件:
走査範囲:40〜650amu
走査時間:1秒
【0076】
抗生物質107891の加水分解物で得られたLC/MS及びGC/MSクロマトグラムにおいては、次のアミノ酸が他の同定されていないピークと共に同定された:ランチオニン、メチルランチオニン、グリシン、プロリン、バリン、アスパラギン酸(NMR研究は、これは加水分解によってアスパラギン酸を生成するアルパラギンの変換産成物であることを示している)、フェニルアラニン及びロイシン。
【0077】
抗生物質107891A1及びA2因子が、複合体について報告された同じ条件(誘電体化及びHPLC−MS)で完全な酸加水分解にかけられた。GC−MS分析は、PTV注射器を備えたThermo Finnigan Trace GC−MS装置上で実施された。
【0078】
GC法は次の条件を有した。
カラム:Restek RTX−5MS、15m×0.25mm ID×0.25μm FT
キャリヤーガス:ヘリウム
インターフェース温度:250℃
温度プログラム:50℃で1.5分、20℃/分で50℃から100℃まで、100℃で1分、20℃/分で100℃から135℃まで、135℃で1分、20℃/分で135℃から250℃まで、250℃で1分
注入量:1μl
注射器:スプリットレスモード、基本温度50°C、トランスファー(transfer)温度 280°C、トランスファーレート 14.5°C/min
【0079】
MS条件は次の通りであった。
イオン化モード:電子衝撃
電圧設定:
フィラメント電流:149μA
電子マルチプライヤ:200V
電子エネルギー:70eV
陽イオンモード:
走査条件:
走査範囲:33〜500amu
走査時間:0.6秒
【0080】
抗生物質107891のA1因子の加水分解物中において、HPLC/MS及びGC/MSクロマトグラムは、他の同定されていないピークと共に次のアミノ酸の存在を示した:ランチオニン、メチルランチオニン、グリシン、プロリン、バリン、アスパラギン酸(NMR研究は、これは加水分解によってアスパラギン酸を生成するアルパラギンの変換産成物であることを示している)、フェニルアラニン及びロイシン。
【0081】
A2因子に実施された上記の手順は、他の同定されていないピークと共に次のアミノ酸の存在を明らかにした:ランチオニン、メチルランチオニン、グリシン、プロリン、バリン、アスパラギン酸(NMR研究は、これは加水分解によってアスパラギン酸を生成するアルパラギンの変換産成物であることを示している)、フェニルアラニン及びロイシン。
【0082】
B)抗生物質107891複合体中並びにそのA1因子及びA2因子中の5−クロロトリプトファンの決定
精製された107891複合体並びにその単一のA1及びA2因子の完全な加水分解が、Simpson RJ,Neuberger MR,Liu TY,“Complete Aminoacid Analysis of Proteins from a Single Hydrolysate”.Journal Biol.Chem(United States),April 10,1976,251(7),1936−40によって記載された方法に従って実施された。
【0083】
この加水分解手順は、鉱酸の消化(digestion)中は通常不安定であるアミノ酸の分解を防止し、従ってペプチドの加水分解物からの、トリプトファンを含むこれらのアミノ酸の決定を可能にする。5−クロロ−DL−トリプトファンの標準試料は、Biosynt AG、Staad、スイスから購入され、その構造はNMR分析によって確認された;DL−トリプトファンは、Merck KGaA、Darmstadt、ドイツから購入された。
【0084】
A1因子(1.5mg)が、0.2%(w/v)3−(2−アミノエチル)インドールを加水分解用の触媒として含む0.6mlの4Nメタンスルホン酸中に懸濁された。加水分解が、115℃において16時間実施された。加水分解物は次いで、5N NaOHで中和され、同量の蒸留水で希釈された。この溶液の100μlが、LC−MSによって分析された。分離がSymmetry C18(5μm)3.9×20mm前置カラムを備えたSymmetry C18(5μm)4.6×250mmカラム(Waters Co.Milford MA、米国)上で実施された。溶離が流速1ml/分においてB相の0%から50%からの25min線形勾配を用いて実施された。A相は25mM HCOONH4緩衝液pH 4.5:CH3CN 95:5(v/v)であり、B相はCH3CNであった。UV検知は280nmにおいてであった。HPLC装置は、Finnigan LCQイオントラップ質量分析計(Thermoquest、Finnigan MAT、San Jose、CA、米国)と連結された。カラムからの50μl/分の溶出液が、LCQ質量分析計のエレクトロスプレイイオン化(ESI)インターフェースに回された。MS分析が次の条件で実施された。試料注入口:シアーガス(shear gas)(N2)60psi(約413685Pa)、キャピラリー加熱器 210°C、試料注入口電圧極性:陽極及び陰極の両方、イオンスプレイ電圧+/−4.5KV、キャピラリー電圧+/−21V、走査条件:最大イオン時間50ms、フルミクロ(full micro):スキャン(scan)3。
【0085】
トリプトファン及び5−クロロトリプトファンの標準は、それぞれm/z 205及び239のM+H+に対応する8.1分及び11.5分の保持時間で溶離された。抗生物質107891A1因子の加水分解物においては、238.97のm/zを有する11.5分におけるピークの存在は、5−クロロトリプトファンの存在を示した。
【0086】
標準のトリプトファンは、0.3μg/mlの検出限界で使用されたクロマトグラフ系で検出可能であった。この数値は、試験された抗生物質試料中の前記アミノ酸の存在を示したであろう数値に比べてより低い。トリプトファンは、抗生物質107891A1因子の加水分解物のクロマトグラムの前記限界内で検出されなかった。同一の結果が、A2因子の加水分解物及び抗生物質107891複合体の精製された試料の加水分解物のLC−MS分析から得られた。
【0087】
抗生物質107891A1因子及びA2因子の質量分析
Thermofinnigan較正ミックスを用いる、エレクトロスプレイ源を取り付けたThermofinnigan LCQ deca装置上のMS実験で、最低の同位体組成に対応して、抗生物質107891A1因子はm/z=1124において、A2因子はm/z1116において二重にプロトン化されたイオンを示す。エレクトロスプレイ条件は、スプレイ電圧:4.7kV、キャピラリー温度:250℃、キャピラリー電圧:8V、注入モード 10μl/分であった。スペクトルは、酢酸0.5%を含むアセトニトリル:水 50:50(v/v)中の0.1mg/ml溶液から記録され、図6A(完全走査低解像度スペクトル)及び6B(拡大走査高解像度スペクトル)及び図7A(完全走査低解像度スペクトル)及びB(拡大走査高解像度スペクトル)に報告されている。
【0088】
抗生物質A1因子及びA2因子の正確な質量は、エレクトロスプレイ源を取り付けたBruker Daltonics APEX II,4.7 Tesla分光計を用いて決定された。これらのデータに基づいて、A1因子は、高解像度ESI−FTMSによって決定された、m/z 1124.36124(精度30ppm)における[M+2H]2+から算出されたモノアイソトピック質量である、2246.71±0.06の分子量が与えられる。A2因子は、高解像度ESI−FTMSによって決定された、m/z 1116.36260(精度30ppm)における[M+2H]2+から算出されたモノアイソトピック質量である、2230.71±0.06の分子量が与えられる。
【0089】
抗生物質107891A1因子及びA2因子と抗生物質MF−BA−1768α1及びMF−BA−1768β1の比較
A)米国特許第6551591B1号に記載されたMicrobispora corallina NNRL 30420(MF−BA−1768)は、NNRLコレクションから得られた。予備的な実験においては、M.corallina NNRL 30420(MF−BA−1768)株を米国特許第6551591B1号に記載された条件で三角フラスコ中で発酵した。回収されたブロスは、メタノールでの希釈によって抽出された。菌糸体の遠心分離後、上澄みをHP20ポリスチレン吸収樹脂に載せ、メタノール:水 70:30の混合物で溶離し、その溶離液を小容量にし、次いで凍結乾燥した。
【0090】
クロマトグラムにおいて、2つのピークが、それぞれMF−BA−1768β1及びMF−BA−1768α1について米国特許第6551581B1号に報告された[M+2H]2+に相当する1091及び1108[M+2H]2+シグナルを示した。上記の抽出物は次いで、抗生物質107891A1及びA2因子で加え(spike)、その混合物はLC−MSで分析された。抗生物質MF−BA−1768β1とMF−BA−1768α1の、並びに抗生物質107891A1とA2因子のピークは、異なる保持時間及び異なる[M+2H]2+ MS断片を有することが見出された。
B)更なる一実験においては、Microbispora sp.株NRRL 30420 (MF−BA−1768)の30l槽発酵が実施され、回収されたブロスが米国特許第6551591B1号の記載に従って処理された。HP20ポリスチレン樹脂及びポリアミドCC 6 0.1〜0.3mm(Macherey−Nagel)樹脂上で逐次行われた精製ステップの後、27ml/分の流速で溶離された、次の多段階プログラム、即ち時間=0分(B相の32%)、時間=8分(B相の32%)、時間=20分(B相の36%)、時間=32分(B相の90%)を用いた、μ10粒子サイズC18 Phenomenex(Torrance CA、USA)Luna(250×12.2mm)カラム上の分取HPLCによって2つの個別の物質が純粋な形態で得られた。A相は水中の0.05%(v/v)ギ酸であり、B相はCH3CNであった。
【0091】
これらの物質は、表IVに示されたようにブドウ球菌(staphylococci)及び腸球菌(enterococci)に対して抗菌作用を示した。LC−MS実験において、2つの物質は、米国特許第6551591B1号に記載されたように、抗生物質MF−BA−1768α1及びMF−BA−1768β1に相当する[M+2H]++二重プロトン化イオンシグナルを示した。
【0092】
【表5】
【0093】
抗菌試験の実験条件は、以下の表VIに報告された試験に利用したものと同一であった。
単離された抗生物質MF−BA−1768α1及びMF−BA−1768β1のLC−MS分析が、Symmetry C18(5:m)3.9×20mm前置カラムを備えたSymmetry C18(5:m)4.6×250mm.カラム(Waters;Milford MA、USA)上(両方とも温度50℃でオーブン中に保たれた)で実施された。溶離は、次の多段階溶離プログラム、即ち時間=0分(B相30%)、時間=8分(B相30%)、時間=20分(B相45%)、時間=24分(B相90%)、及び時間=28分(B相90%)を用いて流速1ml/分で実施された。A相は、25mM HCOONH4緩衝液pH4.5:CH3CN 95:5(v/v)であり、B相はCH3CNであった。HPLC装置は、Finnigan LCQイオントラップ質量分析計(Thermoquest、Finnigan MAT、San Jose CA、USA)と連結された。カラムからの100μl/分の溶離液は、LCQ質量分析計のESIインターフェースに回された。MS分析が次の条件、即ち、試料注入口:シートガスフロー(N2)25psi(約172369Pa)、補助ガスフロー5psi(約34474Pa)、キャピラリー加熱器:210°C、試料注入口電圧極性 陽極及び陰極の両方、イオンスプレイ電圧:+/−4.75KV、キャピラリー電圧:+/−12V、走査条件:最大イオン時間50ms、フルミクロ:スキャン3で実施された。
【0094】
個別の抗生物質因子MF−BA−1768α1及びMF−BA−1768β1と抗生物質107891A1及びA2因子が個別に及び混合物で分析された。結果が次の表Vに要約されている。
【0095】
【表6】
【0096】
同じクロマトグラフ系においては、ラモプラニンA2因子(L.Gastaldo,R.Ciabatti,F.Assi,E.Restelli,J.K.Kettenring,L.F.Zerilli,G.Romano,M.Denaro and B.Cavalleri,(1992):“Isolation,structure determination and biological activity of A−16686 Factors A’1,A’2 and A’3 glycolipodepsipeptide antibiotics”,J.Ind.Microbiol.11:13−18)が11.00分の保持時間で溶離された。
【0097】
抗生物質107891A1因子及びA2因子のNMRスペクトロスコピー
抗生物質107891A1因子及びA2因子の1H−NMRスペクトルが、水抑制シーケンスを適用するBruker AMX 600分光計上でCD3CN:D2O(1:1)の混合物中298Kにおいて記録された。内部標準として1.94ppmにおけるアセトニトリル−d3の残留シグナルが考えられた。
A)抗生物質107891A1因子の1H−NMRスペクトルが図8に報告されている。
【0098】
CD3CN:D2O(1:1)中に溶解された抗生物質107891A1因子の1H NMRスペクトルは、600MHzにおいてCD3CNを内部標準(1.94ppm)として用いて次のシグナル群(ppmで)を示す[δ=ppm、多重度;(帰属)]:0.84d(CH3)、0.89d(CH3)、0.94t(重複したCH3)、1.1d(CH3)、1.13d(CH3)、1.15t(重複したCH3)、149m(CH2)、1.69d(CH3)、1.75m(CH2)、2.11m(CH)、2.26m(CH)、2.5m(CH2)、2.68〜3.8m(ペプチド性CHβ)、3.8〜5.0m(ペプチド性CHα)、5.45〜6.17s(CH2)、5.58d(CH二重結合)、6.36m(CH)、6.86d(CH二重結合)、7.0〜7.45m(芳香族CH)。不純物として、ジメチルスルホキシドのシグナルが2.58ppmに存在し、ホルメートのシグナルがまた8.33ppmに存在する。
B)抗生物質107891A2因子のbbデカップル1H NMRスペクトルが図9に報告されている。
【0099】
CD3CN:D2O(1:1)中に溶解された抗生物質107891A2因子の1H NMRスペクトルは、600MHzにおいてCD3CNを内部標準(1.94ppm)として用いて次のシグナル群(ppmで)を示す[δ=ppm、多重度;(帰属)]:0.84d(CH3)、0.88d(CH3)、0.94d(CH3)、1.06d(CH3)、1.14d(CH3)、148m(CH2)、1.65〜1.75m(CH2)、1.67d(CH3)、2.15m(CH)、2.25m(CH)、2.5m(CH2)、2.77〜3.8m(ペプチド性CHβ)、3.8〜4.9m(ペプチド性CHα)、5.45〜6.14s(CH2)、5.59d(CH二重結合)、6.34m(CH)、6.84d(CH二重結合)、7.0〜7.42m(芳香族CH)。不純物として、ジメチルスルホキシドのシグナルが2.58ppmに存在し、ホルメートのシグナルがまた8.32ppmに存在する。
【0100】
抗生物質107891A1因子及びA2因子の13C−NMRスペクトルが、1.39ppmにおけるアセトニトリル−d3の残留シグナルを内部標準として使用するBruker AMX 600分光計上でCD3CN:D2O(1:1)の混合物中で298Kにおいて記録された。
C)抗生物質107891A1因子の13C−NMRスペクトルが図10に示されている。CD3CN:D2O(1:1)に溶解された抗生物質107891A1因子の13C−NMRスペクトルは、CD3CNを内部標準(1.39ppm)として使用して600MHzにおいて次のシグナル群(ppmで)を示す[δ=ppm;(帰属)]:13.6〜23.03(脂肪族CH3)、25.69〜77.9(脂肪族CH2及びペプチド性CHα)、105〜137.3(芳香族及び二重結合CH及び四級炭素)、165.6〜176.6(ペプチド性カルボニル)。
D)抗生物質107891A2因子のbbデカップル13C−NMRスペクトルが図11に示されている。
【0101】
CD3CN:D2O(1:1)に溶解された抗生物質107891A2因子の13C−NMRスペクトルは、CD3CNを内部標準(1.39ppm)として使用して600MHzにおいて次のシグナル群(ppmで)を示す[δ=ppm;(帰属)]:13.6〜22.9(脂肪族CH3)、25.65〜73(脂肪族CH2及びペプチド性CHα)、105〜137.3(芳香族及び二重結合CH及び四級炭素)、165.7〜176.1(ペプチド性カルボニル)。
【0102】
抗生物質107891A1因子及びA2因子の紫外及び赤外スペクトル
A)Brukerフーリエ変換赤外分光光度計IFS 48型でKBr中で記録された抗生物質107891A1因子の赤外スペクトルは、3294;3059;2926;1661;1529;1433;1407;1287;1114;1021に(cm−1)において吸収極大を示した。赤外スペクトルは図12に報告されている。
B)Perkin−Elmer分光光度計λ16を用いてメタノール:H2O 80:20(v/v)中で記録された抗生物質107891A1因子の紫外スペクトルは、226と267nmに2つの肩を示す。紫外スペクトルは図13に報告されている。
C)Brukerフーリエ変換赤外分光光度計IFS 48型を用いてKBr中で記録された抗生物質107891A2因子の赤外スペクトルは、3296;3060;2928;1661;1529;1433;1407;1288;1116に(cm−1)において吸収極大を示す。赤外スペクトルは図14に報告されている。
D)Perkin−Elmer分光光度計λ16を用いてメタノール:H2O 80:20(v/v)中で記録された抗生物質107891A2因子の紫外スペクトルは、226と267nmに2つの肩を示す。紫外スペクトルは図15に報告されている。
【0103】
上記に報告された物理化学的データに基づき、次の構造式を抗生物質107891に与えることができ、
【0104】
【化1】
【0105】
式中、XはH又はハロゲン(F、Cl、Br、I)であり、Y1、Y2、Y3、Y4、及びY5は独立にS、S−O−、S=O、O−−S=O、及びO=S=Oであってよく、式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は独立にH、OH、アルキル(分枝若しくは非分枝の、置換若しくは非置換の)、又はアリール(置換若しくは非置換の)であってよい。
【0106】
別の一実施形態においては、R1、R2、R3、及びR4はH又はOHであってよい。従って、R1、R2、R3、及びR4の可能な組合せは次のものを含む。
【0107】
【表7】
【0108】
同様に、R5、R6、R7、及びR8はH又はOHであってよい。従って、R5、R6、R7、及びR8の可能な組合せは次のものを含む。
【0109】
【表8】
【0110】
更に、上記に報告された物理化学的データに基づき、次の構造式を抗生物質107891A1因子に与えることができ、式中、XはClであり、Y1、Y2、Y3、Y4、及びY5はSであり、R1はHであり、R2はOHであり、R3はHであり、R4、R5、R6、R7、及びR8はHであり、この構造式は、薬学的に許容されるその塩と共に本発明の好ましい一実施形態である。
【0111】
【化2】
【0112】
更に、上記に報告された物理化学的データに基づき、次の構造式を抗生物質107891A2因子に与えることができ、式中、XはClであり、Y1、Y2、Y3、Y4、及びY5はSであり、R1はOHであり、R2はOHであり、R3はHであり、R4、R5、R6、R7、及びR8はHであり、この構造式は、薬学的に許容されるその塩と共に本発明の好ましい一実施形態である。
【0113】
【化3】
【0114】
抗生物質107891のインビトロ生物活性
抗生物質107891の抗菌活性が、米国臨床研究所規格委員会の提案(NCCLS、文書M7−A5)によるブロス微量希釈法によって測定された。
【0115】
使用された菌株は、臨床分離株、又はアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)からの菌株であった。試験の結果は表VIと表VIIに報告されている。
抗生物質107891をDMSO中に溶解して、1000μg/mlの原液を得、次いで水に希釈して使用液を得た。使用された培地は、Staphylococci、モラキサラカタラーリス(M.catarrhalis)、Enterococci及びリステリア菌(L.monocytogenes)用の陽イオン調整したMueller Hintonブロス(CAMHB);連鎖球菌(Streptococci)用のTodd Hewittブロス(THB);ナイセリア spp.(Neisseria spp.)用のGC培地+1% Isovitalex+1% ヘミン(haemine);インフルエンザ菌(H.influenzae)用のBrain Hearth Infusion+1% Cサプリメント(C supplement);乳酸菌(Lactobacilli)用の乳酸菌ブロス;スメグマ菌(M.smegmatis)用のMiddlebrook OADC濃縮を含むMiddlebrook 7H9;カンジダアルビカンス(C.albicans)用のRPMI 1640培地;クロストリジウム(Clostridia)用のWilkins Chalgrenブロス+オキシラーゼ(oxyrase)(1:25v/v);プロピオン酸菌属(Propionibacteria)用のシステイン(cisteine)(0.5g/L)を含むBrucellaブロスであった。バクテリアの接種原は105CFU/mlであった。C.albicansの接種原は1X104CFU/mlであった。全ての試験は、0.02%のウシ血清アルブミン(BSA)の存在下で実施された。培養物は、嫌気性雰囲気を必要とするClostridia及びPropioniobacteria菌株以外は空気中35℃でインキュベートされた。18〜24時間後、視覚による記録が行われ、MICが測定された。MICは目に見える増殖がない抗生物質のより低い濃度として定義された。
【0116】
【表9】
【0117】
【表10】
【0118】
抗生物質107891は、グラム陽性細菌に対する良好な抗菌活性を示す。
メチシリン耐性(MRSA)及びグリコペプチド中間体(GISA)耐性株を含めたStaphylococcus spp.に対するMIC範囲は、=0.13〜4μg/mlであり、最近の臨床分離株である、バンコマイシン耐性菌(VRE)を含めたEnterococcus spp.に対するMIC範囲は、0.5〜4μg/mlである。Streptococcus spp.に対しては、MICは≦0.13μg/mlである。
【0119】
抗生物質107891はまた、嫌気性グラム陽性株に対して活性であり、MICはClostridiaに対して≦0.13μg/mlであり、Propionibacteriaに対して≦0.004〜4μg/mlである。抗菌活性が、L.monocytogenes(MIC 0.125μg/ml)及びLactobacilli株(MIC範囲≦0.13−4μg/ml)に対して示された。いくらかのグラム陰性細菌は抗生物質107891の影響を受けやすく、MICはM.catarrhalisに対して1〜0.25μg/ml、Neisseria spp.に対して0.5〜0.25μg/ml、及びH.influenzaeに対して32μg/mlである。
【0120】
抗生物質107891は、試験された大腸菌(E.coli)及びC.albicans株に対して活性ではない。
タイムキル(time−kill)実験においては、抗生物質107891は、S.aureus GISA及びE.faecalis VanA株に対して殺菌活性を示し、24時において殺菌濃度はMueller Hintonブロス中でMIC値である。
【0121】
S.aureusは、生死にかかわる感染を引き起こす恐れがあり、MRSAは特に臨床的に重要である。というのは、それが全てのペニシリン及びセファロスポリンに、また多数の他の抗生物質に耐性があり、更にそれが患者から患者へ容易に伝染して、保健施設に対する重要な影響を伴って感染の大発生を引き起こすためである(W.Witte,(1999):“Antibiotic resistance in Gram−positive bacteria:epidemiological aspects”,Journal of Antimicrobial Chemotherapy 44:1−9)。疾病管理センター(CDC)米国院内感染監視制度(NNIS)は、米国病院のS.aureusのメチシリン耐性が1975年の2.4%から1991年の29%に、集中治療室でのより高い程度の耐性を伴って増加したことを報告した(L.Archibald,L.Philips,D.Monnet,J.E.Jr Mc Gowan,F.Tenover,R.Gaynes,(1997):“Antimicrobial resistance in isolates from inpatients and outpatients in the United States:increasing importance of the intensive care unit”,Clinic Infect.Dis.24:211−5)。院内のブドウ球菌感染は、多数の罹患率及び死亡率と係わり合いを持ち、在留期間を引き延ばし入院費用を増加させる。MRSA菌株の大多数は、マクロライド、アミノグリコシド、及びセファロスポリンの最新世代を含めた現在使用中のβ−ラクタム系抗生物質を含めた最も一般に使用される抗菌剤のいくつかに耐性がある。
【0122】
感染に関与するバンコマイシン耐性院内感染性(心内膜炎、髄膜炎及び敗血症などの)の病原菌は、増大する治療上の難問をもたらしている(Y.Cetinkaya,P.Falk and C.G.Mayhall,(2000):“Vancomycin−resistant enterococci”,Clin.Microbiol.Rev.13:686−707;L.B.Rice,(2001):“Emergence of vancomycin−resistant enterococci”,.Emerg.Infec.Dis.7:183−7)。
【0123】
肺炎球菌(S.pneumoniae)及びM.catarrhalisは、広く認められている重要なヒトの病原菌である。それらは、呼吸器感染、特に子供の中耳炎及び高齢者の下部呼吸器感染の共通する原因である。M.catarrhalis及びS.pneumoniaeは、近年、最も一般的な気道の病原として認められている(M.C.Enright and H.McKenzy,(1997):“Moraxella (Branhamella)catarrhalis.Clinical and molecular aspect of a rediscovered pathogen”,J.Med.Microbiol.46:360−71)。
【0124】
Clostridiaは、様々な疾患、即ちガス壊疽及び関連創傷感染、破傷風、ボツリヌス中毒、抗生物質による下痢(CDAD)及び偽膜性大腸炎に関与する。これらの微生物の多くが、疾患の病因で重要な役割を果たす外毒素を産生する。クロストリジウムディフィシル(C.difficile)は、CDADの症例の25%に、また偽膜性大腸炎のほぼ全ての症例に関与する原因物質である。最近数年にわたって、C.difficileの同時感染の発生が、バンコマイシン耐性腸球菌感染症又はコロニー形成を有する患者に生じた(J.G.Bartlett,(1992):“Antibiotic associated diarrhea”,Clinic.Infect.Dis.15:573−581)。
【0125】
抗生物質107891A1及びA2因子のインビトロ生物活性
表VIIIは、抗生物質107891のA1及びA2因子の個々の抗菌活性を報告している。MICは、上記に記載された微量ブロス希釈法によって測定された。
【0126】
【表11】
【0127】
抗生物質107891のインビボ生物活性
23〜25gの体重の雌性ICRマウス(Harlan Italia SpA−S.Pietro al Natisone、イタリア)が、免疫応答性又は好中球減少性マウスの急性致死性感染症の実験に使用された。好中球減少症が、4日及び1日でそれぞれ200及び100mg/kgのシクロホスファミドの2種の腹腔内投与によって誘発された後、マウスが感染された。
【0128】
メチシリン耐性ブドウ球菌(staphylococcus)の臨床分離株(Staph.aureus SA3817)又は標準のメチシリン感受性菌株(Staph.aureus Smith ATCC19636)のいずれかの細菌浮遊液を免疫応答性マウス(8動物/用量/処置群)の腹腔内に接種することによって、或いは好中球減少性マウスにグリコペプチド耐性enterococcusの臨床分離株(Ent.faecalis A533)を接種することによって感染症が誘発された。0.5mLの5%バクテリアをムチン(Difco)中に懸濁して、細菌のチャレンジ(約106細胞/マウス)が行われた。未処置動物は、感染後24〜72時間以内に死んだ。抗生物質処置は、チャレンジ後10〜15分以内に始まった。抗生物質107891は、異なる水性製剤で静脈内に又は皮下に1回投与された。50%有効量(ED50)及び95%信頼限界が、7日において生き残っている動物の百分率からSpearman−Karber法(D.J.Finney,(1952):“The Spearman−Karber method”,in:Statistical methods in biological assay.pp.524−530,Charles Griffin & Co.,Ltd.,London)によって算出された。結果は次の表IXに報告されている。
【0129】
抗生物質107891は、200mg/kgの最大試験用量まで毒性ではない。
【0130】
【表12】
【実施例】
【0131】
実施例1 Microbispora sp.ATCC PTA−5024の発酵方法
Microbispora sp.ATCC PTA−5024株が、オートミール寒天斜面上に2〜3週間28℃で維持された。一斜面の微生物含有量が、5ml滅菌水でかき取られ、デキストロース20、酵母エキス2、大豆かす8、NaCl1、及び炭酸カルシウム4(g/l)から構成される100mlの種培地(AF/MS)を収容する500ml三角フラスコ中に接種された。培地は、蒸留水中で調製され、121℃での20分間の殺菌の前に、pHが7.3に調節された。接種されたフラスコは、28℃において200rpmで作動する回転式振とう機上で培養された。4〜6日後、この培養物の5%が、同じ発酵培地を収容する第二シリーズのフラスコ中に接種された。72時間のインキュベーションの後、200mlが3Lの同じ栄養培地を収容する4Lバイオリアクター中に移された。
【0132】
発酵が30℃において700rpmでの撹拌及び0.5vvmのエアレーションを行いながら実施された。72時間後、培養物(1.5L)が15Lの同じ栄養培地を収容する20Lバイオリアクター中に移された。発酵が48時間30℃において500rpmでの撹拌及び0.5vvmのエアレーションを行いながら実施され、次いで産生槽に移された。抗生物質107891の産生が、g/lでデンプン20、グルコース10、酵母エキス2、加水分解カゼイン4、肉エキス2及び炭酸カルシウム3から構成される200Lの産生培地M8を収容する300L発酵槽中で実施された。培地は脱イオン水中で調製され121℃において25分間殺菌される前にpHが7.2に調節された。冷却後、発酵槽は、約14L(7%)の前培養物で接種された。発酵槽は、29℃において180rpmでの撹拌及び0.5vvmのエアレーションを行いながら36000Pa(0.36bar)の頭部圧力で運転された。発酵槽は98時間の発酵の後に回収された。
【0133】
抗生物質107891の産生は、全培養ブロスの同量のメタノールでの抽出の後に、前述のようにHPLCによって監視された。抽出は室温で1時間撹拌しながら実施した。
【0134】
実施例2 Microbispora sp.ATCC PTA−5024の別の発酵方法
Microbispora sp.ATCC PTA−5024が、グルコース10、マルトース10、ダイズ油10、ダイズ粉8、酵母エキス2及び炭酸カルシウム4g/lから構成される100mlの培養培地(G1)を収容する500ml三角フラスコ中に接種された。培地は脱イオン水中で調製され、pH調節することなく120℃×20分殺菌された。接種されたフラスコは、120〜168時間28℃において200rpmで撹拌しながら良好な増殖が観察されるまでインキュベートされた。このフラスコは次いで、実施例1に記載の通り構成された3Lの種培地AF/MSを収容する4Lバイオリアクターを接種(3%)するのに使用された。700rpmでの撹拌及び0.5vvmエアレーションを行いながらの30℃における120時間の発酵の後、1.5Lの培養物が、15Lの同じ栄養培地を収容する20Lバイオリアクターに移された。発酵は30℃において600rpmでの撹拌及び0.5vvmエアレーションを行いながら96時間実施され、次いで産生槽に移された。
【0135】
抗生物質の産生が、デキストロース20、酵母エキス5、肉エキス5、加水分解カゼイン3、ペプトン5及びNaCl1.5(g/l)から構成される200Lの生産培地(V6)を収容する300L発酵槽中で得られた。培地が脱イオン水中で調製されpHが7.5にNaOHで調節され、121℃において20分間殺菌された。
【0136】
発酵槽が14Lの種培地(7%)で接種され、発酵が29℃において180rpmで撹拌し毎分100Lの標準の空気(0.5 vvm)で通気しながら実施された。抗生物質107891の産生が、前述のようにHPLCによって監視された。発酵物は約160時間後に回収された。
【0137】
実施例3 抗生物質107891の回収
実施例1に記載された発酵ブロスを、接線ろ過システム(tangential filtration system)(0.1μm細孔サイズ膜、Koch Carbo−Cor、Koch Wilmington、米国)によってろ過して170Lの上澄み及び30Lの濃縮された菌糸体を得た。抗生物質107891複合体が、ろ液(A)中及び菌糸体(B)中の両方で見出された。
(A)ろ過されたブロスは、Diaion HP−20ポリスチレン樹脂(4L)の存在下で室温において終夜撹拌された。樹脂は次いで回収され、10Lのメタノール:水 4:6(v/v)で洗浄され、バッチ式に最初に10Lのメタノール:水 9:1(v/v)で、次いで10Lのメタノール:ブタノール:水 9:1:1(v/v)で溶離された。合わされた抗生物質107891を含む溶離された画分は、回転式蒸発器で小容量に濃縮され、次いで凍結乾燥され、32gの粗材料が得られた。この粗材料がn−ブタノール(1L)中に溶解され、次いで800mlの水で逐次的に3回抽出された。有機相が減圧下で濃縮されて油状残留物になり、その油状残留物がメタノール中に溶解された。石油エーテルが添加されると、5gの粗抗生物質製剤が析出によって得られた。
(B)25Lのメタノールの添加後、菌糸体を含む残存部分が1時間撹拌され、ろ過されて45Lの菌糸体エキスが得られた。この溶液が次いで水(20L)で希釈され室温でDiaion HP−20ポリスチレン樹脂(1L)と共に室温で終夜撹拌された。樹脂が次いで回収され、2Lのメタノール:水 40:60(v/v)で洗浄されてバッチ式に逐次的に3Lのメタノール:水 85:15(v/v)で、及び次いで2Lのメタノール:水 90:10(v/v)で溶離された。溶離された画分は、抗生物質107891の存在が、Staphylococcus aureusについての寒天拡散アッセイによって、また先に報告された分析的HPLC法によって監視された。
【0138】
抗生物質107891を含む溶離された画分が合わされ、減圧下で濃縮されて凍結乾燥され、8.1グラムの粗抗生物質107891が得られた。
【0139】
実施例4 抗生物質107891の別の回収法
実施例2に記載された200L槽発酵から回収されたブロスがpH6.8にされ、このブロスが接線ろ過(0.1μm細孔サイズ膜、Koch Carbo−Cor)によってろ過された。透過水(180L)がバッチ式に終夜室温で2LのDiaion HP20樹脂(三菱化学)と一緒に撹拌され、樹脂が次いで回収された。
【0140】
メタノール(25L)が、接線ろ過装置(約20L)中の、濃縮された菌糸体を含む残存部分に添加された。この懸濁液が約1時間撹拌され、次いで精密ろ過システムでろ過されて約20Lの残渣残存部になった。更なるメタノール(25L)が次いで添加され、上記プロセスが逐次的に合計5サイクル繰り返された。合わされたメタノール抽出物(約125L)が160Lの脱塩水で希釈されバッチ式に終夜室温で3LのDiaion HP20樹脂と一緒に撹拌された。樹脂が次いで回収され、上記の記載されたプロセスに従ってブロス透過水を抽出するのに使用されたDiaion HP20樹脂と合わされた。合わされた樹脂が、20Lの水:メタノール 6:4(v/v)でクロマトグラフカラム中に洗いこまれた。抗生物質107891が、23Lのメタノール:50mMギ酸アンモニウム緩衝液pH3.5:n−ブタノール 9:1:1(v/v)で溶離された。この溶離液が、次いで真空下で濃縮されて3Lの最終体積となった。濃縮された溶液が、次いでpH4.5において、水:メタノール 7:3(v/v)で調整された2.5LのポリアミドCC6 0.1〜0.3mm(Macherey−Nagel)カラムに装入された。カラムが、水:メタノール 7:3(v/v)で、次いで25mMギ酸アンモニウム緩衝液pH3.5:メタノール 7:3(v/v)で洗浄された。抗生物質が、水:メタノール 3:7(v/v)で、次いで1:9(v/v)混合物で溶離された。溶離は、1:9(v/v)の比の25mMギ酸アンモニウム緩衝液pH2.8:メタノールで完了した。抗生物質107891を含む溶離液が合わされ、真空下で濃縮されて1Lの最終体積になった。濃縮された溶液のpHを7M水酸化アンモニウムを用いて4から5.7にし、次いでこの混合物が遠心分離されて析出物が回収された。この固体が、水に懸濁され凍結乾燥され、6.96gの抗生物質107891製剤が得られた。
【0141】
実施例5 抗生物質107891の精製
実施例3に記載の通りに調製された粗抗生物質107891(3.6g)は、B−687グラジェントフォーマー(gradient former)、B−684フラクションコレクター(fraction collector)、B−685ガラスカラム70×460mmを備えたBuchi B−680中圧クロマトグラフィーシステム(Buchi laboratoriums−technik AG、Flawil、スイス)を使用することによって、100gの逆相C8(EC)40〜70μm粒子サイズ、60A細孔サイズ、IST(International Sorbent Technology、Mid−Glamorgan、英国)上の中圧クロマトグラフィーによって精製された。樹脂は、A相:B相 8:2(v/v)で先に調整され、次いで、60分でB相の20%から60%の60分線形勾配で25ml/分で溶離された。
【0142】
A相は、アセトニトリル:20mMギ酸アンモニウム緩衝液(pH6.6)10:90(v/v)であり、B相は、アセトニトリル:20mMギ酸アンモニウム緩衝液(pH:6.6)90:10(v/v)であった。
【0143】
抗生物質107891を含む画分が合わされ、真空下で濃縮されて水から2回凍結乾燥され、430mgの精製された抗生物質107891が得られた。
【0144】
実施例6 分取HPLCによる抗生物質107891の精製
抗生物質107891が、更に、B相の30%から45%の25分線形勾配溶離を用いて流速30ml/分でHibar prepacked lichrosorb RP8(7:m 粒子サイズ)カラムRT250〜25mm、Merck上の分取HPLCによって精製された。A相は、25mMギ酸アンモニウム緩衝液pH4.5:アセトニトリル 95:5(v/v)であり、B相は、アセトニトリルであった。
【0145】
実施例5からの抗生物質107891のサンプル(300mg)が、DMSO:ギ酸 95:5(v/v)の1,5ml 350:l中に溶解され、300μlがクロマトグラフ処理された。抗生物質107891は、典型的には15〜16分で溶離された。抗生物質107891を含む5つのクロマトグラフ処理の溶離画分が合わされ、真空下で濃縮された。残った溶液が、逐次的に3回水から凍結乾燥され、31mgの抗生物質107891が白色粉末として得られた。
【0146】
実施例7 抗生物質107891のA1及びA2因子の個々の分離と精製
A1及びA2因子が、2つの異なる溶離プログラムを使用して、Symmetry Prep C18(7μm粒子サイズ)カラム7.8×300mm Waters(Mildfold、米国)上の分取HPLCによって実施例5の抗生物質107891複合体から分離され精製された。
A)A1因子は、流速3.5mlでB相の30%から45%の25分線形勾配溶離によって精製された。A相は、25mMギ酸アンモニウム緩衝液pH4.5:アセトニトリル 95:5(v/v)であり、B相は、アセトニトリルであった。精製された抗生物質107891複合体(15mg)が、350μlのDMSO:ギ酸 95:5(v/v)に溶解され、クロマトグラフ処理された。A1及びA2因子は、典型的には11〜13分の時間枠中に溶離された。溶離された画分が、次いで、上記に記載された分析的条件下でHPLCによって分析された。純粋な抗生物質107891A1因子を含む14のクロマトグラフ処理の画分が合わされ、真空下で濃縮された。残った溶液が、逐次的に3回水から凍結乾燥されて、15mgの純粋なA1因子が白色粉末として得られた。
B)A2因子が、流速7mlで100mMのギ酸アンモニウム緩衝液pH4:アセトニトリル 82.5:17.5(v/v)で定組成溶離によって精製された。精製された抗生物質107891複合体(5mg)が、250μlの酢酸:アセトニトリル:100mMギ酸アンモニウム緩衝液pH4 50:120:80(v/v)混合物中に溶解され、クロマトグラフ処理された。A1及びA2因子は、典型的には9〜10分時間枠中に溶離された。溶離された画分が、次いで、上記に記載された分析的条件下でHPLCによって分析された。純粋な抗生物質107891A2因子を含む20のクロマトグラフ処理の画分が合わされ、真空下で濃縮された。残った溶液が、水から2回凍結乾燥され、8mgの純粋なA2因子が白色粉末として得られた。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1A】m/z1124及びm/z1116に二重プロトン化イオンを示している抗生物質107891の質量スペクトル(完全走査低解像度スペクトル)を表す図である。
【図1B】m/z1124及びm/z1116に二重プロトン化イオンを示している抗生物質107891の質量スペクトル(拡大走査高解像度スペクトル)を表す図である。
【図2】KBr中に分散した抗生物質107891の赤外吸収スペクトルを表す図である。
【図3】メタノール:H2O中に溶解した抗生物質107891の紫外スペクトルを表す図である。
【図4】水抑制シーケンスを適用するBruker AMX600分光計上でメタノール−d4:H2O(pH4.3 HCl)40:10(v/v)の混合物中40℃で記録された1H−NMRスペクトルを表す図である。
【図5】Bruker AMX600分光計上でメタノール−d4:H2O(pH4.3 HCl)40:10(v/v)の混合物中40℃で記録された13C−NMRスペクトルを表す図である。
【図6A】m/z1124に二重プロトン化イオン[M+2H]2+を示している抗生物質107891A1因子の質量スペクトル(完全走査低解像度スペクトル)を表す図である。
【図6B】m/z1124に二重プロトン化イオン[M+2H]2+を示している抗生物質107891A1因子の質量スペクトル(拡大走査高解像度スペクトル)を表す図である。
【図7A】m/z1116に二重プロトン化イオン[M+2H]2+を示している抗生物質107891A2因子の質量スペクトル(完全走査低解像度スペクトル)を表す図である。
【図7B】m/z1116に二重プロトン化イオン[M+2H]2+を示している抗生物質107891A2因子の質量スペクトル(拡大走査高解像度スペクトル)を表す図である。
【図8】水抑制シーケンスを適用するBruker AMX600分光計上でCD3CN:D2O(1:1)の混合物中298Kで記録された抗生物質107891A1因子の1H−NMRスペクトルを表す図である。
【図9】水抑制シーケンスを適用するBruker AMX600分光計上でCD3CN:D2O(1:1)の混合物中298Kで記録された抗生物質107891A2因子の1H−NMRスペクトルを表す図である。
【図10】Bruker AMX600分光計上でCD3CN:D2O(1:1)の混合物中298Kで記録された抗生物質107891A1因子の13C−NMRスペクトルを表す図である。
【図11】Bruker AMX600分光計上でCD3CN:D2O(1:1)の混合物中298Kで記録された抗生物質107891A2因子の13C−NMRスペクトルを表す図である。
【図12】KBr中に分散した抗生物質107891A1因子の赤外吸収スペクトルを表す図である。
【図13】メタノール:H2O中に溶解した抗生物質107891A1因子の紫外スペクトルを表す図である。
【図14】KBr中に分散した抗生物質107891A2因子の赤外吸収スペクトルを表す図である。
【図15】メタノール:H2O中に溶解した抗生物質107891A2因子の紫外スペクトルを表す図である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2003年7月18日に出願されたEP出願第03016306.7号の優先権を主張する2004年7月12日に出願されたPCT/EP2004/007658の米国特許法第371条に基づく国内出願である2005年1月11日に出願された米国特許出願第10/521,336号の一部係属出願である2005年1月12日に出願された米国特許出願第11/035,296号の一部係属出願である2005年1月26日に出願された米国特許出願第[代理人整理番号892,280−500]に基づく国際出願であり、これらの出願の全ては参照によりその全体が本明細書に明確に組み込まれる。
【0002】
本発明は、A1因子とA2因子を含む複合体である、微生物起源の抗生物質である、任意に命名された抗生物質107891、薬学的に許容されるその塩、その医薬組成物、及び抗菌剤としてのその使用に関する。
【0003】
本発明の別の目的は、抗生物質107891の調製方法であり、該方法はMicrobispora sp.107891(以下Microbispora sp.ATCC PTA−5024と識別される)或いは前記抗生物質を産生する能力を保持しているその変種又は突然変異体を培養すること、菌糸体から及び/又は発酵ブロスから本発明の抗生物質を回収すること、クロマトグラフ手段で純物質を単離すること、並びにA1及びA2因子を分離することを含む。
【背景技術】
【0004】
抗生物質107891は、成分としてランチオニン及びメチルランチオンを含有する、ペプチド構造を有する新規の抗菌剤である。これらは、ランチビオティックスの、とりわけ細胞壁生合成に主に作用するサブグループの代表的な特徴である。
【0005】
ランチビオティックスは、チオエーテルアミノ酸ランチオニン及びいくつかの他の修飾されたアミノ酸を含むペプチドである(H.G.Sahl and G.Bierbaum,(1998)“Lantibiotics:biosynthesis and biological activities of uniquely modified peptides from gram−positive bacteria”,Ann.Rev.Microbiol.52:41−79)。いくらかのものは異なる薬理学的標的に活性であると報告されているが、公知のランチビオティックスの大部分は抗菌作用を有する。抗菌性のランチビオティックスは、それらの構造を基に2つの群に広く分けることができ、タイプAランチビオティックスは一般的に細長い、両親媒性のペプチドであるが、タイプBランチビオティックスは小型で球形である(O.McAuliffe,R.P.Ross and C.Hill,(2001):“Lantibiotics:structure,biosynthesis and mode of action”,.FEMS Microb.Rev.25:285−308)。ナイシンはタイプAランチビオティックの典型であるが、アクタガルジン[ガルジマイシン(gardimycin)]及びメルサシジンはタイプBランチビオティックのサブクラスに属する。ナイシンタイプとメルサシジンタイプランチビオティックスの2つのクラスは細菌の増殖プロセスでそれらが引き起こす効果において異なるが、両方とも膜結合ペプチドグリカン前駆体脂質IIと相互に作用する。ナイシンタイプランチビオティックスは、主に細胞膜の透過化によって細菌を死滅させるが(H.Brotz,M.Josten,I.Wiedemann,U.Schneider,F.Gotz,G.Bierbaum and H.G.Sahl,(1998):“Role of lipid−bound peptidoglycan precursors in the formation of pores by nisin,epidermin and other lantibiotics”,Mol.Microbiol.30:317−27)、メルサシジンタイプランチビオティックスは、主に細胞壁生合成を阻害することによって細菌細胞を死滅させる(H.Brotz,G.Bierbaum,K.Leopold,P.E.Reynolds and H.G.Sahl,(1998):“The lantibiotic mersacidin inhibits peptidoglycan synthesis by targeting lipid II”,Antimicrob Agents Chemother.42:154−60)。
【0006】
それぞれ抗生物質MF−BA−1768α1及びMF−BA−1768β1と識別された、ミクロビスポラコラリナ(Microbispora corallina)株NRRLL30420によって産生された2種の抗生物質は、米国特許第6551591B1号に記載されている。上記に明らかにされた特許に報告された物理化学的データ(例えば質量分析データ、分子量、アミノ酸含量)及びLC−MS実験解析の保持時間の比較は、抗生物質107891複合体とその成分A1因子及びA2因子は、抗生物質MF−BA1768α1及びMF−BA−1768β1と異なる化学物質であることを明らかに示している。
【0007】
欧州特許出願公開第0592835A2号は、抗腫瘍抗生物質BU−4803TA1、A2、B、C1、C2及びDを記載している。抗生物質BU−4803TA1、A2及びBは、Microbispora ATCC 55327(AA 9966)の発酵ブロスから回収されるが、抗生物質BU4803TC1、C2及びDは、それぞれ抗生物質BU 4803TA1、A2及びBの変換の産生物であり、これらの産生物はジメチルスルホキシド中に貯蔵される。上記抗生物質について欧州特許出願公開第0592835A号に報告された物理化学的データ(例えば、外観、U.V.吸収、分子量、抗腫瘍活性)は、それらは抗生物質107891複合体とそのA1及びA2因子と異なる化学物質であることを明らかに示している。
【発明の開示】
【0008】
菌株及び発酵
Microbispora sp.107891は、環境中で単離されて、2003年2月27日にブダペスト条約の規定の下で米国20110−2209、バージニア州、Manassas市、University Blvd、10801、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)に寄託された。該菌株は寄託番号PTA−5024が与えられた。
【0009】
抗生物質107891の産生は、それを産生することが可能なMicrobispora sp.株、即ちMicrobispora sp.ATCC PTA−5024、或いは前記抗生物質を産生する能力を保持しているその変種又は突然変異体を培養すること、得られる抗生物質を全培養ブロスから、及び/又は分離された菌糸体から、及び/又はろ過された発酵ブロスから単離すること、並びに単離された抗生物質をクロマトグラフィー手段によって精製することによって達成される。いずれの場合でも、抗生物質107891を好気条件下で容易に同化できる炭素、窒素、及び無機塩の供給源を含有する水性栄養培地中において産生することが好ましい。発酵の分野で通常使用される栄養培地の多くが使用することができるが、特定の培地が好ましい。
【0010】
好ましい炭素源は、スクロース、フルクトース、グルコース、キシロースなどである。好ましい窒素源は、大豆かす、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、トリプトン、アミノ酸、加水分解カゼインなどである。培地に混合することができる無機塩のなかに、ナトリウム、カリウム、鉄、亜鉛、コバルト、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム、クロリド、カーボネート、スルフェート、ホスフェート、ナイトレートなどのイオンを生ずることが可能な通例の可溶性塩がある。
【0011】
好ましくは、抗生物質107891を産生する菌株は、発酵管中で又は振盪フラスコ中で前培養され、次いでこの培養物を使用してかなりの量の物質の産生用のジャーファーメンターに入れる。前培養用に使用される培地は、より多量の発酵用に使用されるものと同じであってよいが、他の培地も使用することができる。抗生物質107891を産生する菌株は、17℃から37℃の温度で、最適温度としては約28〜30℃で増殖することができる。
【0012】
発酵中に、抗生物質107891の産生は、感受性微生物のバイオアッセイによって、及び/又はHPLC分析によって監視することができる。抗生物質107891の最大の産生は、一般的に発酵の約90時間後で200時間前に生ずる。
【0013】
抗生物質107891は、Microbispora sp.ATCC PTA 5024、或いは抗生物質107891を産生することが可能なその変種又は突然変異体を培養することによって産生され、それは培養ブロス中に、及び/又は菌糸体中に見出される。
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲においては、「抗生物質107891」という用語は、特別の定めのない限り、A1及びA2因子を含む抗生物質107891複合体を意味する。
【0015】
Microbispora sp.ATCC PTA−5024の形態学的特徴
Microbispora sp.ATCC PTA−5024は、種々の標準の固体培地でよく増殖する。微細な寸法は、1ml/lのビタミン溶液(チアミン塩酸塩25mg/l、パントテン酸カルシウム250mg/l、ニコチン酸250mg/l、ビオチン0.5mg/l、リボフラビン1.25g/l、シアノコバラミン6.25mg/l、パラアミノ安息香酸25mg/l、葉酸500mg/l、塩酸ピリドキサール500mg/l)が添加されたフミン酸−Trace Salts Agar(g/lでの組成:フミン酸0.5、FeSO4・7H2O 0.001、MnCl2・4H2O 0.001、ZnSO4・7H2O 0.001、NiSO4・6H2O 0.001、MOPS 2、寒天20)上で増殖された培養物を用いて測定された。
【0016】
液体培養(V6培地、g/lでの組成:デキストロース22、肉エキス5、酵母エキス5、カゼイン3、NaCl 1.5)においては、菌糸体の断片化は28℃での培養の6日後に観察されない。フミン酸−Trace Salts Agar(28℃でのインキュベーションの21日後)の顕微鏡検査は、分岐した、断片化されていない基質菌糸体、及び単軸分岐した気中菌糸体を明らかにし、多くの長い真直ぐな分岐の少ない気中菌糸も目に見える。特徴的な縦の胞子の組は、枝から又は直接主要な気中菌糸から側面に立ち上がっている短い担胞子体によって支持されている。胞子は球形で非運動性である。胞子嚢様体又は他の特異な構造は観察されない。
【0017】
Microbispora sp.ATCC PTA−5024の培養特徴
Microbispora sp.ATCC PTA−5024を、AF/MS液体培地(実施例1を参照されたい)で28℃及び200rpmにおいて6日間増殖し、次いで新しいAF/MS液体培地に移し(5%接種材料)、更に6日間培養して、最終的に100mlのV6液体培地(実施例1を参照されたい)中に接種した(7%接種材料)。28℃及び200rpmでの培養の6日後に、菌糸体を遠心分離で回収し、無菌食塩水で3度洗浄し、次いで希釈して適切な接種材料を得た。懸濁液のアリコットを、Shirling及びGottlieb(E.B.Shirling and D.Gottlieb,(1966):“Method for Characterization of Streptomyces species”,Int.J.Syst.Bacteriol.16:313−340)によって推奨された種々の培地、及びS.A.Waksman(1961):“The Actinomycetes”,The Williams and Wilkins Co.,Baltimore.Vol.2:328−334によって推奨された培地にクロスハッチング式に(cross−hatched manner)すじをつけて(streak)接種した。
【0018】
種々の炭水化物を炭素及びエネルギー源として使用する能力が、基礎培地としての上記に記載された1ml/lのビタミン溶液が添加された、デンプンを含まないISP4培地を用いて決定され;各炭素源が1%(w/v)の最終濃度で添加された。
【0019】
増殖のNaCl許容範囲、pH領域、及び異なる温度での増殖能力が、ISP2培地上で決定された。全ての培地は28℃で3週間インキュベートされ;説明は定めのない限り21日による。色は自然の昼光でMaerz及びPaulのカラーアトラス(A.Maerz and M.R.Paul,1950−A Dictionary of Colour,2nd edition.McGraw−Hill Book Co.Inc.,New York)を用いて評価された。ナイトレートをナイトライトに還元する能力は、Williams他(S.T.Williams、M.Goodfellow、G.Alderson、E.M.H.Wellington、P.H.A.Sneath及びM.J.Sackin、1983−Numerical classification of Streptomyces and related genera−J.Gen.Microbiol.129,1743−1813)によって記載された手順に従ってスロッピイなナイトレート培地中で評価された。
【0020】
菌株Microbispora sp.ATCC PTA−5024についての増殖、コロニー出現、基質及び気中菌糸体の色、並びに色素産生が表Iに記録されている。栄養増殖は、使用された培地のいくらかにしか現れない気中菌糸体と異なり、その大部分で現れる。明らかな色素沈着は使用されたいずれの培地にも見られない。菌株の生理的特徴は表IIに示されている。増殖及び気中菌糸体の産生は17℃で現れるが、43℃では現れない。ISP2上の気中菌糸体の産生は、6を超えたpHにおいて現れるが、1%NaClの存在下では現れない。
【0021】
種々の炭水化物を増殖に使用する能力は表IIIに示されている。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
Microbispora sp.ATCC PTA−5024の化学分類学的特徴
Microbispora sp.ATCC PTA−5024を、GYM培地(グルコース4g/l、酵母エキス4g/l、麦芽エキス10g/l)中28℃において回転式振盪機で増殖し、菌糸体を回収し、無菌蒸留水で2度洗浄し次いで凍結乾燥した。アミノ酸の分析が、Staneck及びRoberts(J.L.Staneck and G.D.Roberts,(1974):“Simplified approach to identification of aerobic actinomycetes by thin−layer chromatography”,Appl.Microbiol.28:226−231)の方法に従って実施された。メナキノン及び極性脂質が、Minnikin他(D.E.Minnikin,A.G.O’Donnell,M.Goodfellow.,G.Alderson,M.Athalye,A.Schaal and J.H.Parlett,(1984):“An integrated procedure of isoprenoid quinones and polar lipids”,J.Microbiol.Meth.2:233−241)の手順に従って抽出された。極性脂質が、薄層クロマトグラフィーによって分析され(D.E.Minnikin,V.Patel,L.Alshamaony,and M.Goodfellow,(1977):“Polar lipid composition in the classification of Nocardia and related bacteria”,Int.J.Syst.Bacteriol.27:104−117)、メナキノンが、HPLCによって分析され(R.M.Kroppenstedt,(1982):“Separation of bacterial menaquinones by HPLC using reverse phase RP18 and a silver loaded ion exchanger as stationary phase”,J.Liquid.Chromat.5:2359−2367;R.M.Kroppenstedt,(1985):“Fatty acid and menaquinone analysis of actinomycetes and related organisms”,in:Chemical Methods in Bacterial Systematics.No20 SAB Technical Series pp.173−199,M.Goodfellow and D.E.Minnikin eds,Academic Press,London)、脂肪酸メチルエステルが、ガス液体クロマトグラフィーによってそれぞれ分析された(L.T.Miller,(1982):“A single derivatization method for bacterial fatty acid methyl esters including hydroxy acids”,J.Clin.Microbiol.16:584−586;M.Sasser,(1990):“Identification of bacteria by gas chromatography of cellular fatty acids”,USFCC News Letters 20:1−6)。ミコール酸の存在は、Minnikin他(D.E.Minnikin,L.Alshamaony,and M.Goodfellow,(1975):“Differentiation of Mycobacterium,Nocardia and related taxa by thin layer chromatographic analysis of whole organism methanolyzates”,.J.Gen.Microbiol.88:200−204)の方法によって確かめられた。
【0026】
Microbispora sp.ATCC PTA−5024の菌株の全細胞加水分解物は、ペプチドグリカンのジアミノ酸としてのメソ−ジアミノピメリン酸を含む。主要なメナキノンは、MK−9(III、VIII−H4)、MK−9(H2)及びMK−9(H0)である。極性脂質の型は、ホスファチジルエタノールアミン、メチルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルイノシトールマンノシド、及びリン脂質を含有するN−アセチルグルコサミン、即ちLechevalier他(H.A.Lechevalier,C.De Brieve and M.P.Lechevalier,(1977):“Chemotaxonomy of aerobic actinomycetes:phospholipid composition”,Biochem.Syst.Ecol.5:246−260)によるリン脂質IV型の存在によって特徴づけられる。脂肪酸型の主要な成分は、アンテイソ15:0、イソ16:0、n−16:0、アンテイソ17:0、及び10−メチルヘプタデカノイック(10−Me−17:0)、即ち、3cセンスクロッペンシュテッド(3c sensu Kroppenstedt)である(R.M.Kroppenstedt,(1985):“Fatty acid and menaquinone analysis of actinomycetes and related organisms”,in:Chemical Methods in Bacterial Systematics.No20 SAB Technical Series pp.173−199.M.Goodfellow and D.E.Minnikin eds,Academic Press,London)。ミコール酸は検知されない。
【0027】
Microbispora sp.ATCC PTA−5024の16S rDNAシーケンシング
Microbispora sp.ATCC PTA−5024株の全rRNAの95%に相当する、16 rRNA遺伝子(16S rDNA)の部分配列、即ち1443ヌクレオチドは、公開された手順に従って達成された(P.Mazza,P.Monciardini,L.Cavaletti,M.Sosio and S.Donadio,(2003):“Diversity of Actinoplanes and related genera isolated from an Italian soil”,Microbial Ecol.5:362−372)。それは配列番号1に報告された。この配列は、米国特許第6551591B1号に報告されたように菌株Microbispora corallina NRRL 30420(MF−BA−1768)の配列と比較された。これら2つの配列は整列され、差異は1456整列位置のうちの31で見出され、全体で2.13%の配列相違があった。97.5%未満の配列同一性を共有する任意の2つの菌株は、一般的に異なる種に属する(Stackebrandt,E.and Embley,M.T.(2000)“Diversity of Uncultered Microorganisms in the Environment”.In:Nonculturable Microorganisms in the Environment,R.R.Colwell and D.J.Grimes(eds).ASM,Press,Washington DC,pp.57−75)。従って、配列相違の2%レベルは、極めて高く(Rossello−Mora,R.,and Amann,R.(2001).“The Species Concept for Prokaryotes”.FEMS Microbiol.Rev.25:39−67)、Microbispora sp.ATCC PTA−5024とMicrobispora corallina NRRL 30420(MF−BA−1768)は異なる菌株であることを示している。
【0028】
Microbispora sp.ATCC PTA−5024の同一性
抗生物質107891を産生する菌株は、次の化学分類学的及び形態学的特徴によりストレプトスポランギアセアエ(Streptosporangiaceae)科、ミクロビスポラ(Microbispora)属に割り当てられる。
・細胞壁中のメソ−ジアミノピメリン酸の存在、
・多量のMK−9(III、VIII−H4)、及びLechevalier他(H.A.Lechevalier,C.De Brieve and M.P.Lechevalier,(1977):“Chemotaxonomy of aerobic actinomycetes:phospholipid composition”,Biochem.Syst.Ecol.5:246−260)によるリン脂質IV型、
・3cセンスクロッペンシュテッド(R.M.Kroppenstedt,(1992):“The genus Nocardiopsis”,in:The Prokariotes,Vol II,,pp.1139−1156,A.Balows,H.Truper,M.Dworkin,W.Harder and K.H.Schleifer eds;New York,Springer−Verlag)の脂肪酸プロフィール、
・ミコール酸の欠如、
・気中菌糸から側面に分岐する短い担胞子体の先端の特徴的な縦の胞子の組の形成。非運動性胞子、
・記載されたMicrobispora sp.からの16S rDNA配列に対して>97%の同一性を示す、配列番号1に報告された、全rRNAの95%に相当する、16 rRNA遺伝子(16S rDNA)の部分配列、即ち1443ヌクレオチド。
【0029】
他の微生物と同様に、抗生物質107891を産生する菌株の特徴は変わる場合がある。例えば、菌株の人工的な変種及び突然変異体は、紫外線、並びに亜硝酸、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン及び他多数の物質などの化学物質などの種々の知られている突然変異原での処理によって得ることができる。抗生物質107891を産生することが可能な、Microbispora sp.ATCC PTA−5024株の全ての天然及び人工的な変種及び突然変異体は、本発明の目的についてMicrobispora sp.ATCC PTA−5024株と同等であるとみなされ、従って発明の範囲内とみなされる。
【0030】
抗生物質107891の抽出及び精製
上記の通り、抗生物質107891は、菌糸体中と発酵ブロスのろ過画分中の両方に殆ど等しく配分されていることが見出される。
回収されたブロスは、発酵ブロスの上澄みから菌糸体を分離するよう処理することができ、菌糸体は、水混和性溶媒で抽出して、使用済み菌糸体の除去後に107891抗生物質を含む溶液を得ることができる。この菌糸体エキスは、次いで、上澄み画分についてこれから先に報告される手順に従って上澄みと別に、又は一緒に処理することができる。水混和性溶媒が菌糸体エキスから抗生物質を回収する操作に支障をもたらしうる場合、水混和性溶媒は蒸留によって除去することができ、又は支障のない濃度に水で希釈することができる。
【0031】
本出願で使用される「水混和性溶媒」は、この用語の技術分野で現在与えられる意味を有するよう意図されており、使用の状態において、合理的に広い濃度範囲で水に混和できる溶媒を意味する。本発明の化合物の抽出に使用できる水混和性有機溶媒の例は、低級アルカノール、例えばメタノール、エタノール、及びプロパノールなどの(C1〜C3)アルカノール;ベンジルアルコールなどのフェニル(C1〜C3)アルカノール、低級ケトン、例えばアセトン及びエチルメチルケトンなどの(C3〜C4)ケトン;ジオキサン及びテトラヒドロフランなどの環状エーテル;エチレングリコール、プロピレングリコール、及びエチレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール及びそれらの部分エーテル化の生成物;ジメチルホルムアミド及びジエチルホルムアミドなどの低級アミド;酢酸、ジメチルスルホキシド並びにアセトニトリルである。
【0032】
産生している微生物の発酵ブロスの上澄みからの化合物の回収は、それ自体公知の技術に従って行われ、該技術は、溶媒による抽出、非溶媒の添加による又は溶液のpH変化による析出、分配クロマトグラフィー、逆相分配クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、分子排除クロマトグラフィーなどによる抽出、或いは前記技術の2つ以上の組合せを含む。ろ過された発酵ブロスからの本発明の化合物の回収の手順は、水非混和性有機溶媒による抗生物質107891の抽出、それに続いての場合によっての析出剤の添加による濃縮された抽出物からの析出を含む。
【0033】
この場合もまた、本出願で使用される「水非混和性溶媒」という用語は、前記用語に当技術分野で現在与えられる意味を有することが意図されており、使用の状態において、目的の用途に適した合理的に広い濃度範囲で水にわずかに混和する又は実質的に混和しない溶媒を意味する。
【0034】
発酵ブロスからの本発明の化合物の抽出に使用できる水非混和性有機溶媒の例は、
n−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、4−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、2,2−ジメチル−3−ペンタノール、2,4−ジメチル−3−ペンタノール、4,4−ジメチル−2−ペンタノール、5−メチル−2−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、5−メチル−1−ヘキサノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−メチル−3−ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、シクロペンタノール、2−シクロペンチルエタノール、3−シクロペンチル−1−プロパノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、2,3−ジメチル−シクロヘキサノール、4−エチルシクロヘキサノール、シクロオクチルメタノール、6−メチル−5−ヘプテン−2−オル、1−ノナノール、2−ノナノール、1−デカノール、2−デカノール、及び3−デカノールなどの直鎖、分枝又は環状であってよい少なくとも4個の炭素原子のアルカノール;メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、メチルイソアミルケトンなどの少なくとも5個の炭素原子のケトン、並びにそれらの混合物である。
【0035】
当技術分野で知られているように、ろ過された発酵ブロスからの産生物抽出は、pHを適切な数値に調節すること、及び/又は抽出溶媒に可溶性である、抗生物質とイオン対を形成する適切な有機塩を添加することによって改良することができる。
【0036】
当技術分野で知られているように、相分離は水性相に加塩することによって改良することができる。
抽出に続いて、相当量の水を含む有機相が回収される場合、それより水を共沸的に蒸発することが便利であるかもしれない。一般的に、このことは、最小の水との共沸混合物を形成することが可能な溶媒の添加、及びそれに続く必要ならば所望の産成物を析出させるための析出剤の添加を必要とする。最小の水との共沸混合物を形成することが可能な有機溶媒の代表例は、n−ブタノール、ベンゼン、トルエン、ブチルエーテル、四塩化炭素、クロロホルム、シクロヘキサン、2,5−ジメチルフラン、ヘキサン、及びm−キシレンであり、好ましい溶媒はn−ブタノールである。
【0037】
析出剤の例は、石油エーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、及びブチルエーテルなどの低級アルキルエーテル、並びにアセトンなどの低級アルキルケトンである。
抗生物質107891を回収するための好ましい一手順によれば、ろ過された発酵ブロスは、吸着マトリックスと接触させ、次いで極性の水混和性溶媒又はその混合物で溶離し、減圧下で油状の残渣に濃縮し、前述のタイプの析出剤で析出させることができる。
【0038】
本発明の化合物の回収に好都合に使用できる吸着マトリックスの例は、ポリスチレン又は混合ポリスチレン−ジビニルベンゼン樹脂(例えばM112又はS112、Dow Chemical Co.;Amberlite(登録商標)XAD2又はXAD4、Rohm & Haas;Diaion HP 20、Mitsubishi)、アクリル樹脂(例えばXAD7又はXAD8、Rohm & Haas)、ポリカプロラクタム、ナイロン及び架橋ポリビニルピロリドンなどのポリアミド(例えばPolyamide−CC 6、Polyamide−SC 6、Polyamide−CC 6.6、Polyamide−CC 6AC及びPolyamide−SC 6AC、Macherey−Nagel & Co.、ドイツ;PA 400、M.Woelm AG、ドイツ)、及びポリビニルピロリドン樹脂PVP−CL(Aldrich Chemie GmbH & Co.,KG、ドイツ)、並びに細孔制御(controlled pore)架橋デキストラン(例えばSephadex(登録商標)LH−20、Pharmacia Fine Chemicals,AB)である。好ましくは、ポリスチレン樹脂が使用され、とりわけ好ましいのはDiaion HP 20樹脂である。
【0039】
ポリスチレン樹脂、ポリスチレン−ジビニルベンゼン樹脂、ポリアミド樹脂又はアクリル樹脂の場合においては、好ましい溶離液は、水混和性溶媒又はその水性混合物である。水性混合物は、適切なpH値の緩衝液を含有することができる。
【0040】
この場合においてまた、本説明及び特許請求の範囲に使用される「水混和性溶媒」という用語は、上記に記載された前記用語に当技術分野で現在与えられる意味を有することが意図されている。
【0041】
抗生物質の単離及び精製の連続的な手順は、ブロスの上澄みからと菌糸体からの合わせた抽出物について行うことができる。例えば、ろ過された発酵ブロス又は上澄みに含まれた抗生物質産生物の部分が、吸収樹脂上の吸収によって回収され、菌糸体に含まれた抗生物質産生物の部分が、水混和性溶媒でそれから抽出され次いで吸収樹脂上で吸着される場合、2組の吸収樹脂のそれぞれからの溶離画分は、場合によっては濃縮後に混合して、次いで更に単一の群として処理することができる。別法として、別々の抽出段階に利用された2組の吸収樹脂が同一のタイプであり、同一の機能的特徴を有する場合、それらを一緒にすることができ、この混合物は、例えば、水混和性溶媒又は水とその混合物を用いた単一の溶離ステップを受けることができる。
【0042】
いずれの場合でも、粗抗生物質107891を回収するために採用された手順が何であっても、連続的な精製ステップが、通常、別々の抽出段階に由来する産生物の組合せから得られた粗材料の混合物について実施される。
【0043】
粗抗生物質107891の精製は、それ自体公知の技術のいずれかによって達成することができるが、好ましくはクロマトグラフ法を用いて実施される。これらのクロマトグラフ法の例は、回収ステップに関して報告されたものであり、様々な機能的誘導体化、及び水混和性溶媒又は上記の種類の水混和性溶媒の水性混合物を用いての溶離を有する、シリカゲル、アルミナ、活性ケイ酸マグネシウムなどの固定相上のクロマトグラフィー、又はシラン処理シリカゲル上の逆相クロマトグラフィーも含む。
【0044】
例えば、固定相としてRP−8又はRP−18、及び溶離系としてHCOONH4 緩衝液:CH3CNの混合物を用いる、分取HPLCクロマトグラフィーを使用することができる。
【0045】
精製ステップで回収された活性画分を一緒にし、真空下で濃縮し、上記の種類の析出剤の添加によって析出し、1回又は反復して乾燥又は凍結乾燥する。産生物がギ酸アンモニウム又は他の緩衝塩の残量を含む場合においては、これらを固相抽出カラム、例えばSPE Superclean LCP18 Supelco(Bellefonte PA、米国)などの逆相樹脂カラム上の抗生物質107891の吸収、続いての蒸留水での洗浄及び適切な水性溶媒混合物、例えばエタノール:水を用いた溶離によって除去することができる。抗生物質を次いで溶離溶媒を除去することによって回収する。
【0046】
その結果、精製された抗生物質107891複合体乾燥製剤が白色粉末として得られる。この技術分野で常のごとく、産生、並びに回収及び精製ステップは、感受性微生物に対する阻害アッセイ、及びHPLC又は質量分析と組み合わせたHPLCを用いた分析管理を含めた種々の分析的な手順によって監視することができる。
【0047】
好ましい一分析的HPLC技術が、流速1ml/分で溶離されるカラムWaters Simmetry−shield RP8、5μ(250×4.6mm)を備えたWaters装置(Waters Chromathography、Milford、MA)で温度50℃において実施される。
【0048】
溶離は多段階プログラム、即ち、時間=0(30%B相)、時間=8分(30%B相)、時間=28分(B相の40%)を伴った。相Aはアセトニトリル:100mMギ酸アンモニウム緩衝液(pH:5.0)5:95(v/v)であり、相Bはアセトニトリルであった。UV検知器は282nmであった。
【0049】
カラムからの溶出液は5:95の比に分割し、大部分(約950μl/分)はフォトダイオードアレイ検出器に回された。残りの50 μl/分はFinnigan LCQイオントラップ質量分析計(Thermoquest、Finnigan MAT、San Jose CA)のESIインターフェースに回された。
【0050】
質量分光分析が次の条件下で実施された。
試料注入口条件:
シートガス(N2) 60psi(約413685Pa)、
補助ガス(N2) 5psi(約34474Pa)、
キャピラリー加熱器 250℃
試料注入口電圧設定:
陽極性及び陰極性の両方、
イオンスプレイ電圧 +/−5kV、
キャピラリー電圧 +/−19V
走査条件:最大イオン時間 200ms、
イオン時間 5ms、
フルミクロスキャン 3、
セグメント:持続時間 30min、スキャンイベントポジティブ(150〜2000m/z)及びネガティブ(150〜2000m/z)
【0051】
これらの分析的HPLC条件においては、抗生物質107891のA1及びA2因子は、それぞれ13.2分及び13.9分の保持時間を示した。同じHPLC系においては、ラモプラニンA2因子(L.Gastaldo,R.Ciabatti,F.Assi,E.Restelli,J.K.Kettenring,L.F.Zerilli,G.Romano,M.Denaro and B.Cavalleri,(1992):“Isolation,structure determination and biological activity of A−16686 Factors A’1,A’2 and A’3 glycolipodepsipeptide antibiotics”,J.Ind.Microbiol.11:13−18)は7.5分の保持時間で溶離された。
【0052】
抗生物質107891のA1及びA2因子は、抗生物質107891複合体の精製された試料から分取HPLCを用いて分離することができる。
A1因子は、DMSO:ギ酸 95:5(v/v)中に溶解された精製された抗生物質107891複合体から、流速3.5mlにおける30%から45%のB相の25分線形勾配溶離を用いて、Symmetry Prep.C18カラム上で分離され精製された。
【0053】
B相はアセトニトリルであった。A相は、25mMギ酸アンモニウム緩衝液pH4.5:アセトニトリル 95:5(v/v)であった。純粋な抗生物質107891A1因子を含む溶離された画分は、集められ真空下で濃縮された。残留溶液は、凍結乾燥されて純粋なA1因子が白色粉末として得られた。
【0054】
A2因子は、酢酸:アセトニトリル:100mMギ酸アンモニウム緩衝液(pH4)50:120:80(v/v)の混合物中に溶解された精製された抗生物質107891複合体の試料からSymmetry Prep.C18カラム上の定組成溶離によって分離され精製された。定組成溶離は、100mMギ酸アンモニウム緩衝液pH4:アセトニトリルの82.5:17.5(v/v)の比率の混合物を用いて流速7mlで実施された。純粋な抗生物質107891A2因子を含む溶離された画分は、集められ真空下で濃縮された。残留溶液は、凍結乾燥されて純粋なA2因子が白色粉末として得られた。
【0055】
抗生物質107891並びにそのA1及びA2因子は、2−メトキシエタノール(MCS):H2O 12:3(v/v)中の酸/塩基滴定によって示されたように、塩基性官能基を含むので、それらは通常の手順によって適切な酸と塩を形成することができ、それらは遊離塩基の形態でも存在することができる。
【0056】
抗生物質107891及びそのA1及びA2因子は、遊離塩基の形態で得られた場合、酸で対応する塩に変換することができ、それらの塩は無毒性の薬学的に許容される塩を含む。適切な塩は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、コハク酸、クエン酸、アスコルビン酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸、パルミチン酸、コール酸、パモ酸、粘液酸、グルタミン酸、樟脳酸、グルタル酸、グリコール酸、フタル酸、酒石酸、ラウリン酸、ステアリン酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ソルビン酸、ピクリン酸、安息香酸、桂皮酸などの有機酸及び無機酸の両方との標準の反応によって形成される塩を含む。抗生物質107891並びにそのA1及びA2因子の酸との付加塩は、一般的に用いられる通常の手順に従って調製することができる。一例として、抗生物質107891又はそのA1因子又はそのA2因子は、遊離塩基の形態で、最小量の適切な溶媒、一般的に低級アルカノール、又は低級アルカノール/水の混合物に溶解され、化学量論的量の適切な選択された酸が、得られた溶液に徐々に添加され、得られた塩は非溶媒の添加によって析出する。形成する付加塩は、次いでろ過又は溶媒の蒸発によって回収される。
【0057】
別法として、これらの塩は、凍結乾燥による実質的に無水の形態で調製することができ、この場合、揮発性酸との抗生物質107891又はそのA1因子又はそのA2因子の塩が、適切な量の不揮発性酸を用いて溶解される。この溶液は、次いでいずれかの不溶性物質からろ過され、1回又は反復して凍結乾燥される。
【0058】
特定の付加塩は、所望の塩が適切なアニオンの付加によって析出する場合に、抗生物質107891又はそのA1因子又はそのA2因子の別の塩の形態の溶液からも得ることができる。
【0059】
本発明の非塩化合物(non salts compound)の対応する付加塩への変換、及びその逆、即ち本発明の化合物の付加塩の非塩形態への変換は、通常の技術的手腕の範囲内であり、本発明によって包含される。
【0060】
抗生物質107891並びにそのA1及びA2因子の塩の形成は、前記抗生物質107891並びにそのA1及びA2因子の分離、精製、及び治療薬又は動物成長促進剤としてのそれらの使用を含めたいくつかの目的に役立ちうる。治療目的用には、薬学的に許容される塩が通常用いられる。
【0061】
「薬学的に許容される塩」という用語は、温血動物の治療に利用できる無毒性の塩を意味する。
抗生物質107891複合体、そのA1及びA2因子、並びに前記因子の任意の比率の混合物は、そのまま又は薬学的に許容される担体と混合して投与することができ、ペニシリン、セファロスポリン、アミノグリコシド及びグリコペプチドなどの他の抗菌剤と併せて投与することもできる。
【0062】
併用療法(Conjunctive therapy)は、従って、最初に投与されたものの治療効果がそれに続くものが投与されるときに完全には消滅していないような、活性化合物の逐次的な、同時の及び別々の投与を含む。
【0063】
本発明の化合物、又はその薬学的に許容される付加塩は、非経口の、経口の又は局所の投与に適した形態に製剤することができる。抗生物質に感受性の微生物を含む任意の感染症の治療における静脈内投与用の非経口製剤は、例えば、ポリプロピレングリコール又はジメチルアセトアミドなどの適切な可溶化剤、及び界面活性剤(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート又はポリエトキシル化ヒマシ油)、或いは注射用の滅菌水中のシクロデキストリン又はリン脂質ベースの製剤と共に水に溶解される。注射製剤もまた、適切なシクロデキストリンを用いて得ることができる。
【0064】
抗生物質107891複合体、そのA1及びA2因子、並びに前記因子の任意の比率の混合物はまた、経口投与用のカプセル、錠剤又は水性懸濁液などの適切な医薬形態に、或いは局所適用のための従来のクリーム又はゼリーと共に使用することができる。ヒト及び獣医用の治療における薬剤としてのそれらの使用の他に、本発明の化合物はまた、動物の成長促進剤として使用することができる。この目的のためには、本発明の化合物は適切な飼料中に経口で投与される。使用される正確な濃度は、通常の量の飼料が消費される場合に成長促進に有効な量の活性剤を供給するのに必要な濃度である。
【0065】
本発明の活性化合物の動物の飼料への添加は、好ましくは、有効量の活性化合物を含む適切な飼料プレミックスを調製してこのプレミックスを完全飼料に混合することによって達成される。別法として、活性成分を含む中間体濃縮物又は飼料添加物(feed supplement)を飼料中にブレンドすることができる。このような飼料プレミックス及び完全飼料を調製し投与できる様式が参考文献(例えば“Applied Animal Nutrition”,W.H.Freedman and CO.,S.Francisco,U.S.A.,1969 or“Livestock Feeds and Feeding”0 and B books,Corvallis,Ore.,U.S.A.,1977)に記載されている。
【0066】
抗生物質107891の物理化学的特徴
A)質量分析:
Thermofinnigan較正ミックス(calibration mix)を用いた、エレクトロスプレイ源を備えたThermofinnigan LCQ deca装置上のMS実験においては、抗生物質107891は、2つの二重にプロトン化されたイオンを、複合体A1因子とA2因子の最も低い同位体組成にそれぞれ対応するm/z=1124とm/z=1116において示す。エレクトロスプレイ条件は、スプレイ電圧4.7kV、キャピラリー温度220℃、キャピラリー電圧3V、注入モード 10μl/分であった。スペクトルは、トリフルオロ酢酸0.1%を含むメタノール/水80/20(v/v)中の0.2mg/ml溶液から記録され、図1A(完全走査低解像度スペクトル)及び1B(拡大高解像度スペクトル)に示される。
【0067】
B)Brukerフーリエ変換赤外分光光度計IFS48型を用いてKBr中で記録された抗生物質107891の赤外線スペクトルは、3263、2929、1661、1533、1402、1114、1026(cm−1)に吸収極大を示す。赤外線スペクトルは図2に示されている。1631、1596及び1346における吸収帯は、ギ酸アンモニウムの残量に起因する。
C)Perkin−Elmer分光光度計λ16を用いてメタノール/H2O(80:20の比率)中で実施された抗生物質107891の紫外スペクトルは、226と267nmにおいて2つの肩を示す。紫外スペクトルは図3に示されている。
D)1H−NMRスペクトルが、水抑制シーケンス(water suppression seqience)を適用するBruker AMX 600分光計でメタノール−d4:H2O(pH4.3 HCl)40:10(v/v)の混合物中40℃において記録された。内部標準として、3.31ppmにおけるメタノール−d4の残留シグナルが考慮された。
【0068】
抗生物質107891の1H−NMRスペクトルが図4に示されている。
メタノール−d4:H2O(0.01N HCl)40:10(v/v)中に溶解された抗生物質107891の1H−NMRスペクトルは、600MHzにおいてMeOH−d4を内部標準(3.31ppm)として用いて次のシグナルのグループ(ppmで)を示す[δ=ppm、多重度(帰属)]:0.93d(CH3)、0.98d(CH3)、1.07t(重複CH3)、1.18t(重複CH3)、1.26s(CH3)、1.30t(重複CH3)、1.62〜1.74m(CH2)、1.78d(CH3)、1.80d(CH3)、2.03m(CH2)、2.24m(CH)、2.36m(CH2)、2.72〜3.8m(ペプチド性アルファCH)、3.8〜5.2m(ペプチド性アルファCH)、5.53〜6.08s(CH2)、5.62d(CH二重結合)、6.42m(CH)、6.92d(CH二重結合)、7.0〜7.55m(芳香族CH)、7.62〜10.4d及びm(芳香族及びペプチド性NH)。
E)13C−NMRスペクトルが、内部標準として49.15ppmにおけるメタノール−d4の残留シグナルを用いるBruker AMX 600分光計上でメタノール−d4:H2O(pH4.3 HCl)40:10(v/v)の混合物中40℃において記録された。抗生物質107891のbbデッカプル(bb decoupled)13C−NMRスペクトルが図5に示されている。
メタノール−d4:H2O(0.01N HCl)40:10(v/v)中に溶解された抗生物質107891の13C−NMRスペクトルは、MeOH−d4を内部標準(49.15ppm)として用いて600MHzにおいて次のシグナルのグループ(ppmで)を示す[δ=ppm、(帰属)]:13.6〜23.2(脂肪族CH3)、26.16〜73(脂肪族CH2及びペプチド性アルファCH)、105〜136(芳香族及び二重結合CH及び四級炭素)、164.3〜176.3(ペプチド性カルボニル)。
F)抗生物質107891複合体が、過剰モルの0.01M塩酸を含む2−メトキシエタノール(MCS):H2O 12:3(v/v)に溶解された。この溶液は、次いで、0.01N水酸化カリウムの溶液で逆滴定された。得られた滴定曲線は、1つの塩基性イオン性官能基を示した。
【0069】
抗生物質107891並びにそのA1及びA2因子のアミノ酸組成
A)抗生物質107891複合体中の「耐酸性」アミノ酸の決定
抗生物質107891が完全な酸加水分解(HCl 6N、105℃、24時間)にかけられ、酸処理に耐性がある抗生物質のアミノ酸成分が同定された。酸に不安定なアミノ酸はこの手法で検知できない。加水分解物は、適切な誘電体化の後に、同様に誘電体化された標準のアミノ酸の混合物と比較して、HPLC−MS及びGC−MS分析によって研究された。HPLC分析については、加水分解された試料は、6−アミノキノリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート(AccQ−Tag(商標)Fluor試薬キット)で処理され、GC分析については、無水メタノール及びトリフルオロ酢酸無水物中の3N HClの混合物で処理された。
【0070】
定性的HPLC分析が、同時のDAD及びMS検知を用いる液体クロマトグラフィー系上で実施された。
【0071】
HPLC法は次の条件を有した。
カラム:AccQ−Tag(商標)(Waters C18 NovoPak 4μm 3.9×150mm)
カラム温度:37℃
流速:1mL/分
A相:酢酸アンモニウム140mM pH5(酢酸)
B相:水:アセトニトリル60:40(v/v)
【0072】
【表4】
【0073】
UV検知:254nm
MS条件は次の通りである。
分光計:標準エレクトロスプレイ源を備えたFinnigan LCQ Deca
キャピラリー温度:250℃
供給源電圧:4.70KV
供給源電流:80μA
キャピラリー電圧:−15V
定性的GC分析は、MS−EI検知が取り付けられたガスクロマトグラフ上で実施された。
【0074】
GC法は、次の条件を有した。
カラム:J & W Scientific DB−5、30m×0.254mm ID×0.25μm FT
キャリヤーガス:ヘリウム
注入モード:スプリットレス
注入温度:200℃
トランスファーライン温度:300℃
温度プログラム:2.5℃/分で50℃から100℃まで(10分)、10℃/分で100℃から250℃まで(15分)、250℃で15分
注入量:1μl
【0075】
MS条件は次の通りであった。
分光計:Finnigan TSQ700
イオン化モード:電子衝撃
電圧設定:
フィラメント電流:400mA
電子マルチプライヤ:1400V
電子エネルギー:70eV
陽イオンモード
走査条件:
走査範囲:40〜650amu
走査時間:1秒
【0076】
抗生物質107891の加水分解物で得られたLC/MS及びGC/MSクロマトグラムにおいては、次のアミノ酸が他の同定されていないピークと共に同定された:ランチオニン、メチルランチオニン、グリシン、プロリン、バリン、アスパラギン酸(NMR研究は、これは加水分解によってアスパラギン酸を生成するアルパラギンの変換産成物であることを示している)、フェニルアラニン及びロイシン。
【0077】
抗生物質107891A1及びA2因子が、複合体について報告された同じ条件(誘電体化及びHPLC−MS)で完全な酸加水分解にかけられた。GC−MS分析は、PTV注射器を備えたThermo Finnigan Trace GC−MS装置上で実施された。
【0078】
GC法は次の条件を有した。
カラム:Restek RTX−5MS、15m×0.25mm ID×0.25μm FT
キャリヤーガス:ヘリウム
インターフェース温度:250℃
温度プログラム:50℃で1.5分、20℃/分で50℃から100℃まで、100℃で1分、20℃/分で100℃から135℃まで、135℃で1分、20℃/分で135℃から250℃まで、250℃で1分
注入量:1μl
注射器:スプリットレスモード、基本温度50°C、トランスファー(transfer)温度 280°C、トランスファーレート 14.5°C/min
【0079】
MS条件は次の通りであった。
イオン化モード:電子衝撃
電圧設定:
フィラメント電流:149μA
電子マルチプライヤ:200V
電子エネルギー:70eV
陽イオンモード:
走査条件:
走査範囲:33〜500amu
走査時間:0.6秒
【0080】
抗生物質107891のA1因子の加水分解物中において、HPLC/MS及びGC/MSクロマトグラムは、他の同定されていないピークと共に次のアミノ酸の存在を示した:ランチオニン、メチルランチオニン、グリシン、プロリン、バリン、アスパラギン酸(NMR研究は、これは加水分解によってアスパラギン酸を生成するアルパラギンの変換産成物であることを示している)、フェニルアラニン及びロイシン。
【0081】
A2因子に実施された上記の手順は、他の同定されていないピークと共に次のアミノ酸の存在を明らかにした:ランチオニン、メチルランチオニン、グリシン、プロリン、バリン、アスパラギン酸(NMR研究は、これは加水分解によってアスパラギン酸を生成するアルパラギンの変換産成物であることを示している)、フェニルアラニン及びロイシン。
【0082】
B)抗生物質107891複合体中並びにそのA1因子及びA2因子中の5−クロロトリプトファンの決定
精製された107891複合体並びにその単一のA1及びA2因子の完全な加水分解が、Simpson RJ,Neuberger MR,Liu TY,“Complete Aminoacid Analysis of Proteins from a Single Hydrolysate”.Journal Biol.Chem(United States),April 10,1976,251(7),1936−40によって記載された方法に従って実施された。
【0083】
この加水分解手順は、鉱酸の消化(digestion)中は通常不安定であるアミノ酸の分解を防止し、従ってペプチドの加水分解物からの、トリプトファンを含むこれらのアミノ酸の決定を可能にする。5−クロロ−DL−トリプトファンの標準試料は、Biosynt AG、Staad、スイスから購入され、その構造はNMR分析によって確認された;DL−トリプトファンは、Merck KGaA、Darmstadt、ドイツから購入された。
【0084】
A1因子(1.5mg)が、0.2%(w/v)3−(2−アミノエチル)インドールを加水分解用の触媒として含む0.6mlの4Nメタンスルホン酸中に懸濁された。加水分解が、115℃において16時間実施された。加水分解物は次いで、5N NaOHで中和され、同量の蒸留水で希釈された。この溶液の100μlが、LC−MSによって分析された。分離がSymmetry C18(5μm)3.9×20mm前置カラムを備えたSymmetry C18(5μm)4.6×250mmカラム(Waters Co.Milford MA、米国)上で実施された。溶離が流速1ml/分においてB相の0%から50%からの25min線形勾配を用いて実施された。A相は25mM HCOONH4緩衝液pH 4.5:CH3CN 95:5(v/v)であり、B相はCH3CNであった。UV検知は280nmにおいてであった。HPLC装置は、Finnigan LCQイオントラップ質量分析計(Thermoquest、Finnigan MAT、San Jose、CA、米国)と連結された。カラムからの50μl/分の溶出液が、LCQ質量分析計のエレクトロスプレイイオン化(ESI)インターフェースに回された。MS分析が次の条件で実施された。試料注入口:シアーガス(shear gas)(N2)60psi(約413685Pa)、キャピラリー加熱器 210°C、試料注入口電圧極性:陽極及び陰極の両方、イオンスプレイ電圧+/−4.5KV、キャピラリー電圧+/−21V、走査条件:最大イオン時間50ms、フルミクロ(full micro):スキャン(scan)3。
【0085】
トリプトファン及び5−クロロトリプトファンの標準は、それぞれm/z 205及び239のM+H+に対応する8.1分及び11.5分の保持時間で溶離された。抗生物質107891A1因子の加水分解物においては、238.97のm/zを有する11.5分におけるピークの存在は、5−クロロトリプトファンの存在を示した。
【0086】
標準のトリプトファンは、0.3μg/mlの検出限界で使用されたクロマトグラフ系で検出可能であった。この数値は、試験された抗生物質試料中の前記アミノ酸の存在を示したであろう数値に比べてより低い。トリプトファンは、抗生物質107891A1因子の加水分解物のクロマトグラムの前記限界内で検出されなかった。同一の結果が、A2因子の加水分解物及び抗生物質107891複合体の精製された試料の加水分解物のLC−MS分析から得られた。
【0087】
抗生物質107891A1因子及びA2因子の質量分析
Thermofinnigan較正ミックスを用いる、エレクトロスプレイ源を取り付けたThermofinnigan LCQ deca装置上のMS実験で、最低の同位体組成に対応して、抗生物質107891A1因子はm/z=1124において、A2因子はm/z1116において二重にプロトン化されたイオンを示す。エレクトロスプレイ条件は、スプレイ電圧:4.7kV、キャピラリー温度:250℃、キャピラリー電圧:8V、注入モード 10μl/分であった。スペクトルは、酢酸0.5%を含むアセトニトリル:水 50:50(v/v)中の0.1mg/ml溶液から記録され、図6A(完全走査低解像度スペクトル)及び6B(拡大走査高解像度スペクトル)及び図7A(完全走査低解像度スペクトル)及びB(拡大走査高解像度スペクトル)に報告されている。
【0088】
抗生物質A1因子及びA2因子の正確な質量は、エレクトロスプレイ源を取り付けたBruker Daltonics APEX II,4.7 Tesla分光計を用いて決定された。これらのデータに基づいて、A1因子は、高解像度ESI−FTMSによって決定された、m/z 1124.36124(精度30ppm)における[M+2H]2+から算出されたモノアイソトピック質量である、2246.71±0.06の分子量が与えられる。A2因子は、高解像度ESI−FTMSによって決定された、m/z 1116.36260(精度30ppm)における[M+2H]2+から算出されたモノアイソトピック質量である、2230.71±0.06の分子量が与えられる。
【0089】
抗生物質107891A1因子及びA2因子と抗生物質MF−BA−1768α1及びMF−BA−1768β1の比較
A)米国特許第6551591B1号に記載されたMicrobispora corallina NNRL 30420(MF−BA−1768)は、NNRLコレクションから得られた。予備的な実験においては、M.corallina NNRL 30420(MF−BA−1768)株を米国特許第6551591B1号に記載された条件で三角フラスコ中で発酵した。回収されたブロスは、メタノールでの希釈によって抽出された。菌糸体の遠心分離後、上澄みをHP20ポリスチレン吸収樹脂に載せ、メタノール:水 70:30の混合物で溶離し、その溶離液を小容量にし、次いで凍結乾燥した。
【0090】
クロマトグラムにおいて、2つのピークが、それぞれMF−BA−1768β1及びMF−BA−1768α1について米国特許第6551581B1号に報告された[M+2H]2+に相当する1091及び1108[M+2H]2+シグナルを示した。上記の抽出物は次いで、抗生物質107891A1及びA2因子で加え(spike)、その混合物はLC−MSで分析された。抗生物質MF−BA−1768β1とMF−BA−1768α1の、並びに抗生物質107891A1とA2因子のピークは、異なる保持時間及び異なる[M+2H]2+ MS断片を有することが見出された。
B)更なる一実験においては、Microbispora sp.株NRRL 30420 (MF−BA−1768)の30l槽発酵が実施され、回収されたブロスが米国特許第6551591B1号の記載に従って処理された。HP20ポリスチレン樹脂及びポリアミドCC 6 0.1〜0.3mm(Macherey−Nagel)樹脂上で逐次行われた精製ステップの後、27ml/分の流速で溶離された、次の多段階プログラム、即ち時間=0分(B相の32%)、時間=8分(B相の32%)、時間=20分(B相の36%)、時間=32分(B相の90%)を用いた、μ10粒子サイズC18 Phenomenex(Torrance CA、USA)Luna(250×12.2mm)カラム上の分取HPLCによって2つの個別の物質が純粋な形態で得られた。A相は水中の0.05%(v/v)ギ酸であり、B相はCH3CNであった。
【0091】
これらの物質は、表IVに示されたようにブドウ球菌(staphylococci)及び腸球菌(enterococci)に対して抗菌作用を示した。LC−MS実験において、2つの物質は、米国特許第6551591B1号に記載されたように、抗生物質MF−BA−1768α1及びMF−BA−1768β1に相当する[M+2H]++二重プロトン化イオンシグナルを示した。
【0092】
【表5】
【0093】
抗菌試験の実験条件は、以下の表VIに報告された試験に利用したものと同一であった。
単離された抗生物質MF−BA−1768α1及びMF−BA−1768β1のLC−MS分析が、Symmetry C18(5:m)3.9×20mm前置カラムを備えたSymmetry C18(5:m)4.6×250mm.カラム(Waters;Milford MA、USA)上(両方とも温度50℃でオーブン中に保たれた)で実施された。溶離は、次の多段階溶離プログラム、即ち時間=0分(B相30%)、時間=8分(B相30%)、時間=20分(B相45%)、時間=24分(B相90%)、及び時間=28分(B相90%)を用いて流速1ml/分で実施された。A相は、25mM HCOONH4緩衝液pH4.5:CH3CN 95:5(v/v)であり、B相はCH3CNであった。HPLC装置は、Finnigan LCQイオントラップ質量分析計(Thermoquest、Finnigan MAT、San Jose CA、USA)と連結された。カラムからの100μl/分の溶離液は、LCQ質量分析計のESIインターフェースに回された。MS分析が次の条件、即ち、試料注入口:シートガスフロー(N2)25psi(約172369Pa)、補助ガスフロー5psi(約34474Pa)、キャピラリー加熱器:210°C、試料注入口電圧極性 陽極及び陰極の両方、イオンスプレイ電圧:+/−4.75KV、キャピラリー電圧:+/−12V、走査条件:最大イオン時間50ms、フルミクロ:スキャン3で実施された。
【0094】
個別の抗生物質因子MF−BA−1768α1及びMF−BA−1768β1と抗生物質107891A1及びA2因子が個別に及び混合物で分析された。結果が次の表Vに要約されている。
【0095】
【表6】
【0096】
同じクロマトグラフ系においては、ラモプラニンA2因子(L.Gastaldo,R.Ciabatti,F.Assi,E.Restelli,J.K.Kettenring,L.F.Zerilli,G.Romano,M.Denaro and B.Cavalleri,(1992):“Isolation,structure determination and biological activity of A−16686 Factors A’1,A’2 and A’3 glycolipodepsipeptide antibiotics”,J.Ind.Microbiol.11:13−18)が11.00分の保持時間で溶離された。
【0097】
抗生物質107891A1因子及びA2因子のNMRスペクトロスコピー
抗生物質107891A1因子及びA2因子の1H−NMRスペクトルが、水抑制シーケンスを適用するBruker AMX 600分光計上でCD3CN:D2O(1:1)の混合物中298Kにおいて記録された。内部標準として1.94ppmにおけるアセトニトリル−d3の残留シグナルが考えられた。
A)抗生物質107891A1因子の1H−NMRスペクトルが図8に報告されている。
【0098】
CD3CN:D2O(1:1)中に溶解された抗生物質107891A1因子の1H NMRスペクトルは、600MHzにおいてCD3CNを内部標準(1.94ppm)として用いて次のシグナル群(ppmで)を示す[δ=ppm、多重度;(帰属)]:0.84d(CH3)、0.89d(CH3)、0.94t(重複したCH3)、1.1d(CH3)、1.13d(CH3)、1.15t(重複したCH3)、149m(CH2)、1.69d(CH3)、1.75m(CH2)、2.11m(CH)、2.26m(CH)、2.5m(CH2)、2.68〜3.8m(ペプチド性CHβ)、3.8〜5.0m(ペプチド性CHα)、5.45〜6.17s(CH2)、5.58d(CH二重結合)、6.36m(CH)、6.86d(CH二重結合)、7.0〜7.45m(芳香族CH)。不純物として、ジメチルスルホキシドのシグナルが2.58ppmに存在し、ホルメートのシグナルがまた8.33ppmに存在する。
B)抗生物質107891A2因子のbbデカップル1H NMRスペクトルが図9に報告されている。
【0099】
CD3CN:D2O(1:1)中に溶解された抗生物質107891A2因子の1H NMRスペクトルは、600MHzにおいてCD3CNを内部標準(1.94ppm)として用いて次のシグナル群(ppmで)を示す[δ=ppm、多重度;(帰属)]:0.84d(CH3)、0.88d(CH3)、0.94d(CH3)、1.06d(CH3)、1.14d(CH3)、148m(CH2)、1.65〜1.75m(CH2)、1.67d(CH3)、2.15m(CH)、2.25m(CH)、2.5m(CH2)、2.77〜3.8m(ペプチド性CHβ)、3.8〜4.9m(ペプチド性CHα)、5.45〜6.14s(CH2)、5.59d(CH二重結合)、6.34m(CH)、6.84d(CH二重結合)、7.0〜7.42m(芳香族CH)。不純物として、ジメチルスルホキシドのシグナルが2.58ppmに存在し、ホルメートのシグナルがまた8.32ppmに存在する。
【0100】
抗生物質107891A1因子及びA2因子の13C−NMRスペクトルが、1.39ppmにおけるアセトニトリル−d3の残留シグナルを内部標準として使用するBruker AMX 600分光計上でCD3CN:D2O(1:1)の混合物中で298Kにおいて記録された。
C)抗生物質107891A1因子の13C−NMRスペクトルが図10に示されている。CD3CN:D2O(1:1)に溶解された抗生物質107891A1因子の13C−NMRスペクトルは、CD3CNを内部標準(1.39ppm)として使用して600MHzにおいて次のシグナル群(ppmで)を示す[δ=ppm;(帰属)]:13.6〜23.03(脂肪族CH3)、25.69〜77.9(脂肪族CH2及びペプチド性CHα)、105〜137.3(芳香族及び二重結合CH及び四級炭素)、165.6〜176.6(ペプチド性カルボニル)。
D)抗生物質107891A2因子のbbデカップル13C−NMRスペクトルが図11に示されている。
【0101】
CD3CN:D2O(1:1)に溶解された抗生物質107891A2因子の13C−NMRスペクトルは、CD3CNを内部標準(1.39ppm)として使用して600MHzにおいて次のシグナル群(ppmで)を示す[δ=ppm;(帰属)]:13.6〜22.9(脂肪族CH3)、25.65〜73(脂肪族CH2及びペプチド性CHα)、105〜137.3(芳香族及び二重結合CH及び四級炭素)、165.7〜176.1(ペプチド性カルボニル)。
【0102】
抗生物質107891A1因子及びA2因子の紫外及び赤外スペクトル
A)Brukerフーリエ変換赤外分光光度計IFS 48型でKBr中で記録された抗生物質107891A1因子の赤外スペクトルは、3294;3059;2926;1661;1529;1433;1407;1287;1114;1021に(cm−1)において吸収極大を示した。赤外スペクトルは図12に報告されている。
B)Perkin−Elmer分光光度計λ16を用いてメタノール:H2O 80:20(v/v)中で記録された抗生物質107891A1因子の紫外スペクトルは、226と267nmに2つの肩を示す。紫外スペクトルは図13に報告されている。
C)Brukerフーリエ変換赤外分光光度計IFS 48型を用いてKBr中で記録された抗生物質107891A2因子の赤外スペクトルは、3296;3060;2928;1661;1529;1433;1407;1288;1116に(cm−1)において吸収極大を示す。赤外スペクトルは図14に報告されている。
D)Perkin−Elmer分光光度計λ16を用いてメタノール:H2O 80:20(v/v)中で記録された抗生物質107891A2因子の紫外スペクトルは、226と267nmに2つの肩を示す。紫外スペクトルは図15に報告されている。
【0103】
上記に報告された物理化学的データに基づき、次の構造式を抗生物質107891に与えることができ、
【0104】
【化1】
【0105】
式中、XはH又はハロゲン(F、Cl、Br、I)であり、Y1、Y2、Y3、Y4、及びY5は独立にS、S−O−、S=O、O−−S=O、及びO=S=Oであってよく、式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は独立にH、OH、アルキル(分枝若しくは非分枝の、置換若しくは非置換の)、又はアリール(置換若しくは非置換の)であってよい。
【0106】
別の一実施形態においては、R1、R2、R3、及びR4はH又はOHであってよい。従って、R1、R2、R3、及びR4の可能な組合せは次のものを含む。
【0107】
【表7】
【0108】
同様に、R5、R6、R7、及びR8はH又はOHであってよい。従って、R5、R6、R7、及びR8の可能な組合せは次のものを含む。
【0109】
【表8】
【0110】
更に、上記に報告された物理化学的データに基づき、次の構造式を抗生物質107891A1因子に与えることができ、式中、XはClであり、Y1、Y2、Y3、Y4、及びY5はSであり、R1はHであり、R2はOHであり、R3はHであり、R4、R5、R6、R7、及びR8はHであり、この構造式は、薬学的に許容されるその塩と共に本発明の好ましい一実施形態である。
【0111】
【化2】
【0112】
更に、上記に報告された物理化学的データに基づき、次の構造式を抗生物質107891A2因子に与えることができ、式中、XはClであり、Y1、Y2、Y3、Y4、及びY5はSであり、R1はOHであり、R2はOHであり、R3はHであり、R4、R5、R6、R7、及びR8はHであり、この構造式は、薬学的に許容されるその塩と共に本発明の好ましい一実施形態である。
【0113】
【化3】
【0114】
抗生物質107891のインビトロ生物活性
抗生物質107891の抗菌活性が、米国臨床研究所規格委員会の提案(NCCLS、文書M7−A5)によるブロス微量希釈法によって測定された。
【0115】
使用された菌株は、臨床分離株、又はアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)からの菌株であった。試験の結果は表VIと表VIIに報告されている。
抗生物質107891をDMSO中に溶解して、1000μg/mlの原液を得、次いで水に希釈して使用液を得た。使用された培地は、Staphylococci、モラキサラカタラーリス(M.catarrhalis)、Enterococci及びリステリア菌(L.monocytogenes)用の陽イオン調整したMueller Hintonブロス(CAMHB);連鎖球菌(Streptococci)用のTodd Hewittブロス(THB);ナイセリア spp.(Neisseria spp.)用のGC培地+1% Isovitalex+1% ヘミン(haemine);インフルエンザ菌(H.influenzae)用のBrain Hearth Infusion+1% Cサプリメント(C supplement);乳酸菌(Lactobacilli)用の乳酸菌ブロス;スメグマ菌(M.smegmatis)用のMiddlebrook OADC濃縮を含むMiddlebrook 7H9;カンジダアルビカンス(C.albicans)用のRPMI 1640培地;クロストリジウム(Clostridia)用のWilkins Chalgrenブロス+オキシラーゼ(oxyrase)(1:25v/v);プロピオン酸菌属(Propionibacteria)用のシステイン(cisteine)(0.5g/L)を含むBrucellaブロスであった。バクテリアの接種原は105CFU/mlであった。C.albicansの接種原は1X104CFU/mlであった。全ての試験は、0.02%のウシ血清アルブミン(BSA)の存在下で実施された。培養物は、嫌気性雰囲気を必要とするClostridia及びPropioniobacteria菌株以外は空気中35℃でインキュベートされた。18〜24時間後、視覚による記録が行われ、MICが測定された。MICは目に見える増殖がない抗生物質のより低い濃度として定義された。
【0116】
【表9】
【0117】
【表10】
【0118】
抗生物質107891は、グラム陽性細菌に対する良好な抗菌活性を示す。
メチシリン耐性(MRSA)及びグリコペプチド中間体(GISA)耐性株を含めたStaphylococcus spp.に対するMIC範囲は、=0.13〜4μg/mlであり、最近の臨床分離株である、バンコマイシン耐性菌(VRE)を含めたEnterococcus spp.に対するMIC範囲は、0.5〜4μg/mlである。Streptococcus spp.に対しては、MICは≦0.13μg/mlである。
【0119】
抗生物質107891はまた、嫌気性グラム陽性株に対して活性であり、MICはClostridiaに対して≦0.13μg/mlであり、Propionibacteriaに対して≦0.004〜4μg/mlである。抗菌活性が、L.monocytogenes(MIC 0.125μg/ml)及びLactobacilli株(MIC範囲≦0.13−4μg/ml)に対して示された。いくらかのグラム陰性細菌は抗生物質107891の影響を受けやすく、MICはM.catarrhalisに対して1〜0.25μg/ml、Neisseria spp.に対して0.5〜0.25μg/ml、及びH.influenzaeに対して32μg/mlである。
【0120】
抗生物質107891は、試験された大腸菌(E.coli)及びC.albicans株に対して活性ではない。
タイムキル(time−kill)実験においては、抗生物質107891は、S.aureus GISA及びE.faecalis VanA株に対して殺菌活性を示し、24時において殺菌濃度はMueller Hintonブロス中でMIC値である。
【0121】
S.aureusは、生死にかかわる感染を引き起こす恐れがあり、MRSAは特に臨床的に重要である。というのは、それが全てのペニシリン及びセファロスポリンに、また多数の他の抗生物質に耐性があり、更にそれが患者から患者へ容易に伝染して、保健施設に対する重要な影響を伴って感染の大発生を引き起こすためである(W.Witte,(1999):“Antibiotic resistance in Gram−positive bacteria:epidemiological aspects”,Journal of Antimicrobial Chemotherapy 44:1−9)。疾病管理センター(CDC)米国院内感染監視制度(NNIS)は、米国病院のS.aureusのメチシリン耐性が1975年の2.4%から1991年の29%に、集中治療室でのより高い程度の耐性を伴って増加したことを報告した(L.Archibald,L.Philips,D.Monnet,J.E.Jr Mc Gowan,F.Tenover,R.Gaynes,(1997):“Antimicrobial resistance in isolates from inpatients and outpatients in the United States:increasing importance of the intensive care unit”,Clinic Infect.Dis.24:211−5)。院内のブドウ球菌感染は、多数の罹患率及び死亡率と係わり合いを持ち、在留期間を引き延ばし入院費用を増加させる。MRSA菌株の大多数は、マクロライド、アミノグリコシド、及びセファロスポリンの最新世代を含めた現在使用中のβ−ラクタム系抗生物質を含めた最も一般に使用される抗菌剤のいくつかに耐性がある。
【0122】
感染に関与するバンコマイシン耐性院内感染性(心内膜炎、髄膜炎及び敗血症などの)の病原菌は、増大する治療上の難問をもたらしている(Y.Cetinkaya,P.Falk and C.G.Mayhall,(2000):“Vancomycin−resistant enterococci”,Clin.Microbiol.Rev.13:686−707;L.B.Rice,(2001):“Emergence of vancomycin−resistant enterococci”,.Emerg.Infec.Dis.7:183−7)。
【0123】
肺炎球菌(S.pneumoniae)及びM.catarrhalisは、広く認められている重要なヒトの病原菌である。それらは、呼吸器感染、特に子供の中耳炎及び高齢者の下部呼吸器感染の共通する原因である。M.catarrhalis及びS.pneumoniaeは、近年、最も一般的な気道の病原として認められている(M.C.Enright and H.McKenzy,(1997):“Moraxella (Branhamella)catarrhalis.Clinical and molecular aspect of a rediscovered pathogen”,J.Med.Microbiol.46:360−71)。
【0124】
Clostridiaは、様々な疾患、即ちガス壊疽及び関連創傷感染、破傷風、ボツリヌス中毒、抗生物質による下痢(CDAD)及び偽膜性大腸炎に関与する。これらの微生物の多くが、疾患の病因で重要な役割を果たす外毒素を産生する。クロストリジウムディフィシル(C.difficile)は、CDADの症例の25%に、また偽膜性大腸炎のほぼ全ての症例に関与する原因物質である。最近数年にわたって、C.difficileの同時感染の発生が、バンコマイシン耐性腸球菌感染症又はコロニー形成を有する患者に生じた(J.G.Bartlett,(1992):“Antibiotic associated diarrhea”,Clinic.Infect.Dis.15:573−581)。
【0125】
抗生物質107891A1及びA2因子のインビトロ生物活性
表VIIIは、抗生物質107891のA1及びA2因子の個々の抗菌活性を報告している。MICは、上記に記載された微量ブロス希釈法によって測定された。
【0126】
【表11】
【0127】
抗生物質107891のインビボ生物活性
23〜25gの体重の雌性ICRマウス(Harlan Italia SpA−S.Pietro al Natisone、イタリア)が、免疫応答性又は好中球減少性マウスの急性致死性感染症の実験に使用された。好中球減少症が、4日及び1日でそれぞれ200及び100mg/kgのシクロホスファミドの2種の腹腔内投与によって誘発された後、マウスが感染された。
【0128】
メチシリン耐性ブドウ球菌(staphylococcus)の臨床分離株(Staph.aureus SA3817)又は標準のメチシリン感受性菌株(Staph.aureus Smith ATCC19636)のいずれかの細菌浮遊液を免疫応答性マウス(8動物/用量/処置群)の腹腔内に接種することによって、或いは好中球減少性マウスにグリコペプチド耐性enterococcusの臨床分離株(Ent.faecalis A533)を接種することによって感染症が誘発された。0.5mLの5%バクテリアをムチン(Difco)中に懸濁して、細菌のチャレンジ(約106細胞/マウス)が行われた。未処置動物は、感染後24〜72時間以内に死んだ。抗生物質処置は、チャレンジ後10〜15分以内に始まった。抗生物質107891は、異なる水性製剤で静脈内に又は皮下に1回投与された。50%有効量(ED50)及び95%信頼限界が、7日において生き残っている動物の百分率からSpearman−Karber法(D.J.Finney,(1952):“The Spearman−Karber method”,in:Statistical methods in biological assay.pp.524−530,Charles Griffin & Co.,Ltd.,London)によって算出された。結果は次の表IXに報告されている。
【0129】
抗生物質107891は、200mg/kgの最大試験用量まで毒性ではない。
【0130】
【表12】
【実施例】
【0131】
実施例1 Microbispora sp.ATCC PTA−5024の発酵方法
Microbispora sp.ATCC PTA−5024株が、オートミール寒天斜面上に2〜3週間28℃で維持された。一斜面の微生物含有量が、5ml滅菌水でかき取られ、デキストロース20、酵母エキス2、大豆かす8、NaCl1、及び炭酸カルシウム4(g/l)から構成される100mlの種培地(AF/MS)を収容する500ml三角フラスコ中に接種された。培地は、蒸留水中で調製され、121℃での20分間の殺菌の前に、pHが7.3に調節された。接種されたフラスコは、28℃において200rpmで作動する回転式振とう機上で培養された。4〜6日後、この培養物の5%が、同じ発酵培地を収容する第二シリーズのフラスコ中に接種された。72時間のインキュベーションの後、200mlが3Lの同じ栄養培地を収容する4Lバイオリアクター中に移された。
【0132】
発酵が30℃において700rpmでの撹拌及び0.5vvmのエアレーションを行いながら実施された。72時間後、培養物(1.5L)が15Lの同じ栄養培地を収容する20Lバイオリアクター中に移された。発酵が48時間30℃において500rpmでの撹拌及び0.5vvmのエアレーションを行いながら実施され、次いで産生槽に移された。抗生物質107891の産生が、g/lでデンプン20、グルコース10、酵母エキス2、加水分解カゼイン4、肉エキス2及び炭酸カルシウム3から構成される200Lの産生培地M8を収容する300L発酵槽中で実施された。培地は脱イオン水中で調製され121℃において25分間殺菌される前にpHが7.2に調節された。冷却後、発酵槽は、約14L(7%)の前培養物で接種された。発酵槽は、29℃において180rpmでの撹拌及び0.5vvmのエアレーションを行いながら36000Pa(0.36bar)の頭部圧力で運転された。発酵槽は98時間の発酵の後に回収された。
【0133】
抗生物質107891の産生は、全培養ブロスの同量のメタノールでの抽出の後に、前述のようにHPLCによって監視された。抽出は室温で1時間撹拌しながら実施した。
【0134】
実施例2 Microbispora sp.ATCC PTA−5024の別の発酵方法
Microbispora sp.ATCC PTA−5024が、グルコース10、マルトース10、ダイズ油10、ダイズ粉8、酵母エキス2及び炭酸カルシウム4g/lから構成される100mlの培養培地(G1)を収容する500ml三角フラスコ中に接種された。培地は脱イオン水中で調製され、pH調節することなく120℃×20分殺菌された。接種されたフラスコは、120〜168時間28℃において200rpmで撹拌しながら良好な増殖が観察されるまでインキュベートされた。このフラスコは次いで、実施例1に記載の通り構成された3Lの種培地AF/MSを収容する4Lバイオリアクターを接種(3%)するのに使用された。700rpmでの撹拌及び0.5vvmエアレーションを行いながらの30℃における120時間の発酵の後、1.5Lの培養物が、15Lの同じ栄養培地を収容する20Lバイオリアクターに移された。発酵は30℃において600rpmでの撹拌及び0.5vvmエアレーションを行いながら96時間実施され、次いで産生槽に移された。
【0135】
抗生物質の産生が、デキストロース20、酵母エキス5、肉エキス5、加水分解カゼイン3、ペプトン5及びNaCl1.5(g/l)から構成される200Lの生産培地(V6)を収容する300L発酵槽中で得られた。培地が脱イオン水中で調製されpHが7.5にNaOHで調節され、121℃において20分間殺菌された。
【0136】
発酵槽が14Lの種培地(7%)で接種され、発酵が29℃において180rpmで撹拌し毎分100Lの標準の空気(0.5 vvm)で通気しながら実施された。抗生物質107891の産生が、前述のようにHPLCによって監視された。発酵物は約160時間後に回収された。
【0137】
実施例3 抗生物質107891の回収
実施例1に記載された発酵ブロスを、接線ろ過システム(tangential filtration system)(0.1μm細孔サイズ膜、Koch Carbo−Cor、Koch Wilmington、米国)によってろ過して170Lの上澄み及び30Lの濃縮された菌糸体を得た。抗生物質107891複合体が、ろ液(A)中及び菌糸体(B)中の両方で見出された。
(A)ろ過されたブロスは、Diaion HP−20ポリスチレン樹脂(4L)の存在下で室温において終夜撹拌された。樹脂は次いで回収され、10Lのメタノール:水 4:6(v/v)で洗浄され、バッチ式に最初に10Lのメタノール:水 9:1(v/v)で、次いで10Lのメタノール:ブタノール:水 9:1:1(v/v)で溶離された。合わされた抗生物質107891を含む溶離された画分は、回転式蒸発器で小容量に濃縮され、次いで凍結乾燥され、32gの粗材料が得られた。この粗材料がn−ブタノール(1L)中に溶解され、次いで800mlの水で逐次的に3回抽出された。有機相が減圧下で濃縮されて油状残留物になり、その油状残留物がメタノール中に溶解された。石油エーテルが添加されると、5gの粗抗生物質製剤が析出によって得られた。
(B)25Lのメタノールの添加後、菌糸体を含む残存部分が1時間撹拌され、ろ過されて45Lの菌糸体エキスが得られた。この溶液が次いで水(20L)で希釈され室温でDiaion HP−20ポリスチレン樹脂(1L)と共に室温で終夜撹拌された。樹脂が次いで回収され、2Lのメタノール:水 40:60(v/v)で洗浄されてバッチ式に逐次的に3Lのメタノール:水 85:15(v/v)で、及び次いで2Lのメタノール:水 90:10(v/v)で溶離された。溶離された画分は、抗生物質107891の存在が、Staphylococcus aureusについての寒天拡散アッセイによって、また先に報告された分析的HPLC法によって監視された。
【0138】
抗生物質107891を含む溶離された画分が合わされ、減圧下で濃縮されて凍結乾燥され、8.1グラムの粗抗生物質107891が得られた。
【0139】
実施例4 抗生物質107891の別の回収法
実施例2に記載された200L槽発酵から回収されたブロスがpH6.8にされ、このブロスが接線ろ過(0.1μm細孔サイズ膜、Koch Carbo−Cor)によってろ過された。透過水(180L)がバッチ式に終夜室温で2LのDiaion HP20樹脂(三菱化学)と一緒に撹拌され、樹脂が次いで回収された。
【0140】
メタノール(25L)が、接線ろ過装置(約20L)中の、濃縮された菌糸体を含む残存部分に添加された。この懸濁液が約1時間撹拌され、次いで精密ろ過システムでろ過されて約20Lの残渣残存部になった。更なるメタノール(25L)が次いで添加され、上記プロセスが逐次的に合計5サイクル繰り返された。合わされたメタノール抽出物(約125L)が160Lの脱塩水で希釈されバッチ式に終夜室温で3LのDiaion HP20樹脂と一緒に撹拌された。樹脂が次いで回収され、上記の記載されたプロセスに従ってブロス透過水を抽出するのに使用されたDiaion HP20樹脂と合わされた。合わされた樹脂が、20Lの水:メタノール 6:4(v/v)でクロマトグラフカラム中に洗いこまれた。抗生物質107891が、23Lのメタノール:50mMギ酸アンモニウム緩衝液pH3.5:n−ブタノール 9:1:1(v/v)で溶離された。この溶離液が、次いで真空下で濃縮されて3Lの最終体積となった。濃縮された溶液が、次いでpH4.5において、水:メタノール 7:3(v/v)で調整された2.5LのポリアミドCC6 0.1〜0.3mm(Macherey−Nagel)カラムに装入された。カラムが、水:メタノール 7:3(v/v)で、次いで25mMギ酸アンモニウム緩衝液pH3.5:メタノール 7:3(v/v)で洗浄された。抗生物質が、水:メタノール 3:7(v/v)で、次いで1:9(v/v)混合物で溶離された。溶離は、1:9(v/v)の比の25mMギ酸アンモニウム緩衝液pH2.8:メタノールで完了した。抗生物質107891を含む溶離液が合わされ、真空下で濃縮されて1Lの最終体積になった。濃縮された溶液のpHを7M水酸化アンモニウムを用いて4から5.7にし、次いでこの混合物が遠心分離されて析出物が回収された。この固体が、水に懸濁され凍結乾燥され、6.96gの抗生物質107891製剤が得られた。
【0141】
実施例5 抗生物質107891の精製
実施例3に記載の通りに調製された粗抗生物質107891(3.6g)は、B−687グラジェントフォーマー(gradient former)、B−684フラクションコレクター(fraction collector)、B−685ガラスカラム70×460mmを備えたBuchi B−680中圧クロマトグラフィーシステム(Buchi laboratoriums−technik AG、Flawil、スイス)を使用することによって、100gの逆相C8(EC)40〜70μm粒子サイズ、60A細孔サイズ、IST(International Sorbent Technology、Mid−Glamorgan、英国)上の中圧クロマトグラフィーによって精製された。樹脂は、A相:B相 8:2(v/v)で先に調整され、次いで、60分でB相の20%から60%の60分線形勾配で25ml/分で溶離された。
【0142】
A相は、アセトニトリル:20mMギ酸アンモニウム緩衝液(pH6.6)10:90(v/v)であり、B相は、アセトニトリル:20mMギ酸アンモニウム緩衝液(pH:6.6)90:10(v/v)であった。
【0143】
抗生物質107891を含む画分が合わされ、真空下で濃縮されて水から2回凍結乾燥され、430mgの精製された抗生物質107891が得られた。
【0144】
実施例6 分取HPLCによる抗生物質107891の精製
抗生物質107891が、更に、B相の30%から45%の25分線形勾配溶離を用いて流速30ml/分でHibar prepacked lichrosorb RP8(7:m 粒子サイズ)カラムRT250〜25mm、Merck上の分取HPLCによって精製された。A相は、25mMギ酸アンモニウム緩衝液pH4.5:アセトニトリル 95:5(v/v)であり、B相は、アセトニトリルであった。
【0145】
実施例5からの抗生物質107891のサンプル(300mg)が、DMSO:ギ酸 95:5(v/v)の1,5ml 350:l中に溶解され、300μlがクロマトグラフ処理された。抗生物質107891は、典型的には15〜16分で溶離された。抗生物質107891を含む5つのクロマトグラフ処理の溶離画分が合わされ、真空下で濃縮された。残った溶液が、逐次的に3回水から凍結乾燥され、31mgの抗生物質107891が白色粉末として得られた。
【0146】
実施例7 抗生物質107891のA1及びA2因子の個々の分離と精製
A1及びA2因子が、2つの異なる溶離プログラムを使用して、Symmetry Prep C18(7μm粒子サイズ)カラム7.8×300mm Waters(Mildfold、米国)上の分取HPLCによって実施例5の抗生物質107891複合体から分離され精製された。
A)A1因子は、流速3.5mlでB相の30%から45%の25分線形勾配溶離によって精製された。A相は、25mMギ酸アンモニウム緩衝液pH4.5:アセトニトリル 95:5(v/v)であり、B相は、アセトニトリルであった。精製された抗生物質107891複合体(15mg)が、350μlのDMSO:ギ酸 95:5(v/v)に溶解され、クロマトグラフ処理された。A1及びA2因子は、典型的には11〜13分の時間枠中に溶離された。溶離された画分が、次いで、上記に記載された分析的条件下でHPLCによって分析された。純粋な抗生物質107891A1因子を含む14のクロマトグラフ処理の画分が合わされ、真空下で濃縮された。残った溶液が、逐次的に3回水から凍結乾燥されて、15mgの純粋なA1因子が白色粉末として得られた。
B)A2因子が、流速7mlで100mMのギ酸アンモニウム緩衝液pH4:アセトニトリル 82.5:17.5(v/v)で定組成溶離によって精製された。精製された抗生物質107891複合体(5mg)が、250μlの酢酸:アセトニトリル:100mMギ酸アンモニウム緩衝液pH4 50:120:80(v/v)混合物中に溶解され、クロマトグラフ処理された。A1及びA2因子は、典型的には9〜10分時間枠中に溶離された。溶離された画分が、次いで、上記に記載された分析的条件下でHPLCによって分析された。純粋な抗生物質107891A2因子を含む20のクロマトグラフ処理の画分が合わされ、真空下で濃縮された。残った溶液が、水から2回凍結乾燥され、8mgの純粋なA2因子が白色粉末として得られた。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1A】m/z1124及びm/z1116に二重プロトン化イオンを示している抗生物質107891の質量スペクトル(完全走査低解像度スペクトル)を表す図である。
【図1B】m/z1124及びm/z1116に二重プロトン化イオンを示している抗生物質107891の質量スペクトル(拡大走査高解像度スペクトル)を表す図である。
【図2】KBr中に分散した抗生物質107891の赤外吸収スペクトルを表す図である。
【図3】メタノール:H2O中に溶解した抗生物質107891の紫外スペクトルを表す図である。
【図4】水抑制シーケンスを適用するBruker AMX600分光計上でメタノール−d4:H2O(pH4.3 HCl)40:10(v/v)の混合物中40℃で記録された1H−NMRスペクトルを表す図である。
【図5】Bruker AMX600分光計上でメタノール−d4:H2O(pH4.3 HCl)40:10(v/v)の混合物中40℃で記録された13C−NMRスペクトルを表す図である。
【図6A】m/z1124に二重プロトン化イオン[M+2H]2+を示している抗生物質107891A1因子の質量スペクトル(完全走査低解像度スペクトル)を表す図である。
【図6B】m/z1124に二重プロトン化イオン[M+2H]2+を示している抗生物質107891A1因子の質量スペクトル(拡大走査高解像度スペクトル)を表す図である。
【図7A】m/z1116に二重プロトン化イオン[M+2H]2+を示している抗生物質107891A2因子の質量スペクトル(完全走査低解像度スペクトル)を表す図である。
【図7B】m/z1116に二重プロトン化イオン[M+2H]2+を示している抗生物質107891A2因子の質量スペクトル(拡大走査高解像度スペクトル)を表す図である。
【図8】水抑制シーケンスを適用するBruker AMX600分光計上でCD3CN:D2O(1:1)の混合物中298Kで記録された抗生物質107891A1因子の1H−NMRスペクトルを表す図である。
【図9】水抑制シーケンスを適用するBruker AMX600分光計上でCD3CN:D2O(1:1)の混合物中298Kで記録された抗生物質107891A2因子の1H−NMRスペクトルを表す図である。
【図10】Bruker AMX600分光計上でCD3CN:D2O(1:1)の混合物中298Kで記録された抗生物質107891A1因子の13C−NMRスペクトルを表す図である。
【図11】Bruker AMX600分光計上でCD3CN:D2O(1:1)の混合物中298Kで記録された抗生物質107891A2因子の13C−NMRスペクトルを表す図である。
【図12】KBr中に分散した抗生物質107891A1因子の赤外吸収スペクトルを表す図である。
【図13】メタノール:H2O中に溶解した抗生物質107891A1因子の紫外スペクトルを表す図である。
【図14】KBr中に分散した抗生物質107891A2因子の赤外吸収スペクトルを表す図である。
【図15】メタノール:H2O中に溶解した抗生物質107891A2因子の紫外スペクトルを表す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式の化合物
【化1】
[式中、Xは、H、F、Cl、Br、及びIからなる群から選択され、
Y1、Y2、Y3、Y4、及びY5は、独立に、S、S−O−、S=O、O−−S=O、及びO=S=Oからなる群から選択され、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、独立に、H、OH、アルキル、及びアリールからなる群から選択される]。
【請求項2】
XがClであり、Y1、Y2、Y3、Y4、及びY5がSであり、R2がOHであり、R1、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8がHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
XがClであり、Y1、Y2、Y3、Y4、及びY5がSであり、R1がOHであり、R2がOHであり、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8がHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R4、R5、R6、R7、及びR8がHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
R1がHであり、R2がHであり、R3がHである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
R1がHであり、R2がHであり、R3がOHである、請求項4に記載の化合物。
【請求項7】
R1がHであり、R2がOHであり、R3がOHである、請求項4に記載の化合物。
【請求項8】
R1がOHであり、R2がOHであり、R3がOHである、請求項4に記載の化合物。
【請求項9】
R1がOHであり、R2がHであり、R3がHである、請求項4に記載の化合物。
【請求項10】
R1がOHであり、R2がHであり、R3がOHである、請求項4に記載の化合物。
【請求項11】
Y1がS−O−、S=O、O−−S=O、及びO=S=Oからなる群から選択され、Y2、Y3、Y4、及びY5がSである、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
Y2がS−O−、S=O、O−−S=O、及びO=S=Oからなる群から選択され、Y1、Y3、Y4、及びY5がSである、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
Y3がS−O−、S=O、O−−S=O、及びO=S=Oからなる群から選択され、Y1、Y2、Y4、及びY5がSである、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
Y4がS−O−、S=O、O−−S=O、及びO=S=Oからなる群から選択され、Y1、Y2、Y3、及びY5がSである、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
Y5がS−O−、S=O、O−−S=O、及びO=S=Oからなる群から選択され、Y1、Y2、Y3、及びY4がSである、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
次式の化合物。
【化2】
【請求項17】
次式の化合物。
【化3】
【請求項18】
A1因子及びA2因子を含む抗生物質107891複合体であって、次の特徴、即ち
(A)次のエレクトロスプレイ条件、即ちスプレイ電圧:4.7kV、キャピラリー温度:220℃、キャピラリー電圧:3V、注入モード 10μl/分を用いて、Thermofinnigan較正ミックスを使用して、エレクトロスプレイ源を取り付けたThermofinnigan LCQ deca装置上で、トリフルオロ酢酸0.1%を含むメタノール:水 80/20(v/v)中の0.2mg/ml溶液から記録された、A1及びA2因子の最も低い同位体組成にそれぞれ対応するm/z1124及びm/z1116に2つの二重プロトン化イオンを示す質量スペクトルと、
(B)Brukerフーリエ変換赤外分光光度計IFS48型を用いてKBr中で記録され、3263、2929、1661、1533、1402、1114、1026(cm−1)に吸収極大を示す赤外スペクトルと、
(C)Perkin−Elmer分光光度計λ16を用いてメタノール:H2O 80:20(v/v)中で実施され、226と267nmにおいて2つの肩を示す紫外スペクトルと、
(D)内部標準として3.31ppmにおけるメタノール−d4残留シグナルを用いて、水抑制シーケンスを適用するBruker AMX 600分光計で40℃においてメタノール−d4:H2O(pH4.3 HCl)40:10(v/v)の混合物中で600MHzにおいて記録された、次のシグナル[δ=ppm 多重度(帰属)]、即ち、0.93d(CH3)、0.98d(CH3)、1.07t(重複CH3)、1.18t(重複CH3)、1.26s(CH3)、1.30t(重複CH3)、1.62〜1.74m(CH2)、1.78d(CH3)、1.80d(CH3)、2.03m(CH2)、2.24m(CH)、2.36m(CH2)、2.72〜3.8m(ペプチド性アルファCH)、3.8〜5.2m(ペプチド性アルファCH)、5.53〜6.08s(CH2)、5.62d(CH二重結合)、6.42m(CH)、6.92d(CH二重結合)、7.0〜7.55m(芳香族CH)、7.62〜10.4d及びm(芳香族及びペプチド性NH)を示す1H−NMRスペクトルと、
(E)内部標準として49.15ppmにおけるメタノール−d4の残留シグナルを使用して、Bruker AMX 600分光計で40℃においてメタノール−d4:H2O(pH4.3 HCl)40:10(v/v)の混合物中で記録された、次のシグナル[δ=ppm、(帰属)]、即ち、13.6〜23.2(脂肪族CH3)、26.16〜73(脂肪族CH2及びペプチド性アルファCH)、105〜136(芳香族及び二重結合CH及び四級炭素)、164.3〜176.3(ペプチド性カルボニル)を示す13C−NMRスペクトルと、
(F)6−アミノキノリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメートでの誘電体化後に、他の同定されていないピークと共に次のアミノ酸、即ち、ランチオニン、メチルランチオニン、グリシン、プロリン、バリン、アスパラギン酸(アスパラギンの加水分解生成物)、フェニルアラニン及びロイシンの存在を示す6N HCl中(105℃、24時間)の酸加水分解物と、
(G)5−クロロトリプトファンの存在を示す、0.2%(w/v)3−(2−アミノエチル)インドールを触媒として含む4N メタンスルホン酸中(115℃、16時間)の酸加水分解物と、
(H)過剰モルの0.01N 塩酸を含む2−メトキシエタノール(MCS):H2O 12:3(v/v)中で0.01N 水酸化カリウムを用いて実施される酸/塩基滴定で検知される塩基性イオン性基と
を有する白色粉末である複合体。
【請求項19】
抗生物質107891のA1因子であって、次の特徴、即ち、
(A)次のエレクトロスプレイ条件、即ち、スプレイ電圧:4.7kV、キャピラリー温度:250℃、キャピラリー電圧:8V、注入モード10μl/分を用いる、Thermofinnigan較正ミックスを使用する、エレクトロスプレイ源を取り付けたThermofinnigan LCQ deca装置上で、酢酸0.5%を含むアセトニトリル:水 50:50(v/v)中の0.1mg/ml溶液から記録された質量スペクトル中の最も低い同位体組成に対応するm/z1124における二重プロトン化イオンと、
(B)エレクトロスプレイ源を取り付けたBruker Daltonics APEX II,4.7Tesla分光計を用いて決定された、m/z 1124.36124(精度30ppm)における[M+2H]2+から算出されたモノアイソトピック質量である、2246.71±0.06の分子量に相当する抗生物質の正確な質量と、
(C)CD3CN:D2O(1:1)に溶解された場合に、600MHzにおける、CD3CNを内部標準(1.94ppm)として使用する[δ=ppm、多重度(帰属)]、次のシグナルのグループ(ppmで)、即ち、0.84d(CH3)、0.89d(CH3)、0.94t(重複したCH3)、1.1d(CH3)、1.13d(CH3)、1.15t(重複したCH3)、149m(CH2)、1.69d(CH3)、1.75m(CH2)、2.11m(CH)、2.26m(CH)、2.5m(CH2)、2.68〜3.8m(ペプチド性CHβ)、3.8〜5.0m(ペプチド性CHα)、5.45〜6.17s(CH2)、5.58d(CH二重結合)、6.36m(CH)、6.86d(CH二重結合)、7.0〜7.45m(芳香族CH)を示す1H NMRスペクトルと、
(D)CD3CN:D2O(1:1)に溶解された場合に、600MHzにおける、CD3CNを内部標準(1.39ppm)として使用する[δ=ppm、(帰属)]、次のシグナル(ppmで)、即ち、13.6〜23.03(脂肪族CH3)、25.69〜77.9(脂肪族CH2及びペプチド性CHα)、105〜137.3(芳香族及び二重結合CH及び四級炭素)、165.6〜176.6(ペプチド性カルボニル)を示す13C NMRスペクトルと、
(E)Brukerフーリエ変換赤外分光光度計IFS48型を用いてKBr中で記録された、3294、3059、2926、1661、1529、1433、1407、1287、1114、1021(cm−1)に吸収極大を示す赤外スペクトルと、
(F)Perkin−Elmer分光光度計λ16を用いてメタノール:H2O(80:20の比で)中で記録された、226及び267nmにおいて2つの肩を示す紫外スペクトルと、
(G)6−アミノキノリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメートでの誘電体化後に、他の同定されていないピークと共に次のアミノ酸、即ち、ランチオニン、メチルランチオニン、グリシン、プロリン、バリン、アスパラギン酸(アスパラギンの加水分解生成物)、フェニルアラニン及びロイシンの存在を示す6N HCl(105℃、24時間)中の酸加水分解物と、
(H)5−クロロトリプトファンの存在を示す、0.2%(w/v)3−(2−アミノエチル)インドールを触媒として含む4N メタンスルホン酸中(115℃、16時間)の酸加水分解物と
を有する白色粉末であるA1因子。
【請求項20】
抗生物質107891のA2因子であって、次の特徴、即ち、
(A)次のエレクトロスプレイ条件、即ち、スプレイ電圧:4.7kV、キャピラリー温度:250℃、キャピラリー電圧:8V、注入モード10μl/分を用いる、Thermofinnigan較正ミックスを使用する、エレクトロスプレイ源を取り付けたThermofinnigan LCQ deca装置上で、酢酸0.5%を含むアセトニトリル:水 50:50(v/v)中の0.1mg/ml溶液から記録された質量スペクトル中の最も低い同位体組成に対応するm/z1116における二重プロトン化イオンと、
(B)エレクトロスプレイ源を取り付けたBruker Daltonics APEX II,4.7Tesla分光計を用いて決定された、m/z 1116.36260(精度30ppm)における[M+2H]2+から算出されたモノアイソトピック質量である、2230.71±0.06の分子量に相当する正確な質量と、
(C)CD3CN:D2O(1:1)に溶解された場合に、600MHzにおける、CD3CNを内部標準(1.94ppm)として使用する[δ=ppm、多重度(帰属)]、次のシグナル(ppmで)、即ち、0.84d(CH3)、0.88d(CH3)、0.94d(CH3)、1.06d(CH3)、1.14d(CH3)、148m(CH2)、1.65〜1.75m(CH2)、1.67d(CH3)、2.15m(CH)、2.25m(CH)、2.5m(CH2)、2.77〜3.8m(ペプチド性CHβ)、3.8〜4.9m(ペプチド性CHα)、5.45〜6.14s(CH2)、5.59d(CH二重結合)、6.34m(CH)、6.84d(CH二重結合)、7.0〜7.42m(芳香族CH)を示す1H NMRスペクトルと、
(D)CD3CN:D2O(1:1)に溶解された場合に、600MHzにおける、CD3CNを内部標準(1.39ppm)として使用する[δ=ppm、(帰属)]、次のシグナル(ppmで)、即ち、13.6〜22.9(脂肪族CH3)、25.65〜73(脂肪族CH2及びペプチド性CHα)、105〜137.3(芳香族及び二重結合CH及び四級炭素)、165.7〜176.1(ペプチド性カルボニル)を示す13C NMRスペクトルと、
(E)Brukerフーリエ変換赤外分光光度計IFS48型を用いてKBr中で記録された、3296、3060、2928、1661、1529、1433、1407、1288、1116(cm−1)に吸収極大を示す赤外スペクトルと、
(F)Perkin−Elmer分光光度計λ16を用いてメタノール:H2O(80:20の比で)中で記録された、226及び267nmにおいて2つの肩を示す紫外スペクトルと、
(G)6−アミノキノリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメートでの誘電体化後に、他の同定されていないピークと共に次のアミノ酸、即ち、ランチオニン、メチルランチオニン、グリシン、プロリン、バリン、アスパラギン酸(アスパラギンの加水分解生成物)、フェニルアラニン及びロイシンの存在を示す6N HCl(105℃、24時間)中の酸加水分解物と、及び
(H)5−クロロトリプトファンの存在を示す、0.2%(w/v)3−(2−アミノエチル)インドールを触媒として含む4N メタンスルホン酸中(115℃、16時間)の酸加水分解物と
を有する白色粉末である抗生物質107891のA2因子。
【請求項21】
抗生物質107891、そのA1若しくはA2因子、又は酸とのそれらの塩を産生する方法であって、
炭素、窒素及び無機塩の同化できる供給源を含有する水性栄養培地中において、好気条件下で、Microbispora sp.ATCC PTA−5024或いは前記抗生物質を産生する能力を保持するその変種又は突然変異体を培養するステップと、
得られた抗生物質を、菌糸体及び/又はろ過された発酵ブロスから単離するステップと、
単離された抗生物質107891を精製するステップと
を含む方法。
【請求項22】
菌株のMicrobispora sp.ATCC PTA−5024或いは抗生物質107891産生性のその変種又は突然変異体が前培養される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
抗生物質107891の単離が、発酵ブロスのろ過によって実施され、当該抗生物質が、ろ過された発酵ブロスから、水非混和性溶媒による抽出、非溶剤の添加による又は溶液のpH変化による析出、吸収クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、逆相分配クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、分子排除クロマトグラフィー、及び前記技術の2つ以上の組合せからなる群から選択される技術によって回収される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
抗生物質107891の単離が、発酵ブロスの上澄みから菌糸体を分離することによって実施され、該菌糸体が水混和性溶媒で抽出され、使用済み菌糸体の除去後に、粗抗生物質を含む水混和性溶液が得られ、該溶液を、ろ過された発酵ブロスと別々に又は合わせて、溶媒による抽出、非溶剤の添加又は溶液のpH変化によっての析出、吸収クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、逆相分配クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー及び分子排除クロマトグラフィー、並びに前記技術の2つ以上の組合せからなる群から選択される技術を用いて処理して抗生物質107891を回収することができる、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
菌糸体抽出物中の水混和性溶媒の濃度を低下させた後に、菌糸体抽出物が、抗生物質をそれから回収するために処理される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ろ過された発酵ブロスを吸収樹脂に接触させ、前記樹脂を、極性の水混和性溶媒又はその水との混合物で溶離し、それにより粗抗生物質107981を含む溶液を得る、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記吸収樹脂が、ポリスチレン、混合ポリスチレン−ジビニルベンゼン、及びポリアミド樹脂からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
菌糸体を、C1〜C3アルカノールで抽出し、その菌糸体抽出物を、吸収樹脂と接触させ、極性水混和性溶媒又はその水との混合物を用いてそれから溶離し、それにより粗抗生物質107891を含む溶液を得る、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
粗抗生物質107891を含む溶液が合わされ前記抗生物質107891の更なる精製のために処理される、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
粗抗生物質107981を含む溶液が濃縮され次いで凍結乾燥されて粗抗生物質107891固体生成物が得られる、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
吸収された抗生物質を含む吸収樹脂が合わされ、その混合物が極性の水混和性溶媒又はその水との混合物で溶離される、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
抗生物質107981が、クロマトグラフ法を用いて、好ましくは分取HPLC又は中圧クロマトグラフィーによって精製される、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
A1因子又はA2因子が、精製された抗生物質107891から分取HPLCによって分離される、請求項21に記載の方法。
【請求項34】
抗生物質107891、抗生物質107891A1因子、抗生物質107891A2因子、及び前記因子の任意の比率の混合物、又は酸との薬学的に許容されるその塩から選択される抗生物質を含む医薬組成物。
【請求項35】
薬学的に許容される担体を更に含む、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項36】
薬剤としての使用のための、抗生物質107891、そのA1因子、そのA2因子、又は前記因子の任意の比率の混合物、又は酸との薬学的に許容されるその塩。
【請求項37】
細菌性感染症の治療又は予防用の薬剤の製造のための、抗生物質107891、そのA1因子、そのA2因子、又は前記因子の任意の比率の混合物、又は酸との薬学的に許容されるその塩の使用。
【請求項38】
動物成長促進剤としての、抗生物質107891、そのA1因子、そのA2因子、又は前記因子の任意の比率の混合物、又は酸とのその無毒性塩の使用。
【請求項39】
菌株Microbispora sp.ATCC PTA−5024、又は炭素、窒素及び無機塩の同化できる供給源の存在下で液内の好気条件下で培養された場合に、抗生物質107891を産生する能力を保持するその変種若しくは突然変異体の、生物学的に純粋な培養物。
【請求項1】
次式の化合物
【化1】
[式中、Xは、H、F、Cl、Br、及びIからなる群から選択され、
Y1、Y2、Y3、Y4、及びY5は、独立に、S、S−O−、S=O、O−−S=O、及びO=S=Oからなる群から選択され、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、独立に、H、OH、アルキル、及びアリールからなる群から選択される]。
【請求項2】
XがClであり、Y1、Y2、Y3、Y4、及びY5がSであり、R2がOHであり、R1、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8がHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
XがClであり、Y1、Y2、Y3、Y4、及びY5がSであり、R1がOHであり、R2がOHであり、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8がHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R4、R5、R6、R7、及びR8がHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
R1がHであり、R2がHであり、R3がHである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
R1がHであり、R2がHであり、R3がOHである、請求項4に記載の化合物。
【請求項7】
R1がHであり、R2がOHであり、R3がOHである、請求項4に記載の化合物。
【請求項8】
R1がOHであり、R2がOHであり、R3がOHである、請求項4に記載の化合物。
【請求項9】
R1がOHであり、R2がHであり、R3がHである、請求項4に記載の化合物。
【請求項10】
R1がOHであり、R2がHであり、R3がOHである、請求項4に記載の化合物。
【請求項11】
Y1がS−O−、S=O、O−−S=O、及びO=S=Oからなる群から選択され、Y2、Y3、Y4、及びY5がSである、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
Y2がS−O−、S=O、O−−S=O、及びO=S=Oからなる群から選択され、Y1、Y3、Y4、及びY5がSである、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
Y3がS−O−、S=O、O−−S=O、及びO=S=Oからなる群から選択され、Y1、Y2、Y4、及びY5がSである、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
Y4がS−O−、S=O、O−−S=O、及びO=S=Oからなる群から選択され、Y1、Y2、Y3、及びY5がSである、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
Y5がS−O−、S=O、O−−S=O、及びO=S=Oからなる群から選択され、Y1、Y2、Y3、及びY4がSである、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
次式の化合物。
【化2】
【請求項17】
次式の化合物。
【化3】
【請求項18】
A1因子及びA2因子を含む抗生物質107891複合体であって、次の特徴、即ち
(A)次のエレクトロスプレイ条件、即ちスプレイ電圧:4.7kV、キャピラリー温度:220℃、キャピラリー電圧:3V、注入モード 10μl/分を用いて、Thermofinnigan較正ミックスを使用して、エレクトロスプレイ源を取り付けたThermofinnigan LCQ deca装置上で、トリフルオロ酢酸0.1%を含むメタノール:水 80/20(v/v)中の0.2mg/ml溶液から記録された、A1及びA2因子の最も低い同位体組成にそれぞれ対応するm/z1124及びm/z1116に2つの二重プロトン化イオンを示す質量スペクトルと、
(B)Brukerフーリエ変換赤外分光光度計IFS48型を用いてKBr中で記録され、3263、2929、1661、1533、1402、1114、1026(cm−1)に吸収極大を示す赤外スペクトルと、
(C)Perkin−Elmer分光光度計λ16を用いてメタノール:H2O 80:20(v/v)中で実施され、226と267nmにおいて2つの肩を示す紫外スペクトルと、
(D)内部標準として3.31ppmにおけるメタノール−d4残留シグナルを用いて、水抑制シーケンスを適用するBruker AMX 600分光計で40℃においてメタノール−d4:H2O(pH4.3 HCl)40:10(v/v)の混合物中で600MHzにおいて記録された、次のシグナル[δ=ppm 多重度(帰属)]、即ち、0.93d(CH3)、0.98d(CH3)、1.07t(重複CH3)、1.18t(重複CH3)、1.26s(CH3)、1.30t(重複CH3)、1.62〜1.74m(CH2)、1.78d(CH3)、1.80d(CH3)、2.03m(CH2)、2.24m(CH)、2.36m(CH2)、2.72〜3.8m(ペプチド性アルファCH)、3.8〜5.2m(ペプチド性アルファCH)、5.53〜6.08s(CH2)、5.62d(CH二重結合)、6.42m(CH)、6.92d(CH二重結合)、7.0〜7.55m(芳香族CH)、7.62〜10.4d及びm(芳香族及びペプチド性NH)を示す1H−NMRスペクトルと、
(E)内部標準として49.15ppmにおけるメタノール−d4の残留シグナルを使用して、Bruker AMX 600分光計で40℃においてメタノール−d4:H2O(pH4.3 HCl)40:10(v/v)の混合物中で記録された、次のシグナル[δ=ppm、(帰属)]、即ち、13.6〜23.2(脂肪族CH3)、26.16〜73(脂肪族CH2及びペプチド性アルファCH)、105〜136(芳香族及び二重結合CH及び四級炭素)、164.3〜176.3(ペプチド性カルボニル)を示す13C−NMRスペクトルと、
(F)6−アミノキノリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメートでの誘電体化後に、他の同定されていないピークと共に次のアミノ酸、即ち、ランチオニン、メチルランチオニン、グリシン、プロリン、バリン、アスパラギン酸(アスパラギンの加水分解生成物)、フェニルアラニン及びロイシンの存在を示す6N HCl中(105℃、24時間)の酸加水分解物と、
(G)5−クロロトリプトファンの存在を示す、0.2%(w/v)3−(2−アミノエチル)インドールを触媒として含む4N メタンスルホン酸中(115℃、16時間)の酸加水分解物と、
(H)過剰モルの0.01N 塩酸を含む2−メトキシエタノール(MCS):H2O 12:3(v/v)中で0.01N 水酸化カリウムを用いて実施される酸/塩基滴定で検知される塩基性イオン性基と
を有する白色粉末である複合体。
【請求項19】
抗生物質107891のA1因子であって、次の特徴、即ち、
(A)次のエレクトロスプレイ条件、即ち、スプレイ電圧:4.7kV、キャピラリー温度:250℃、キャピラリー電圧:8V、注入モード10μl/分を用いる、Thermofinnigan較正ミックスを使用する、エレクトロスプレイ源を取り付けたThermofinnigan LCQ deca装置上で、酢酸0.5%を含むアセトニトリル:水 50:50(v/v)中の0.1mg/ml溶液から記録された質量スペクトル中の最も低い同位体組成に対応するm/z1124における二重プロトン化イオンと、
(B)エレクトロスプレイ源を取り付けたBruker Daltonics APEX II,4.7Tesla分光計を用いて決定された、m/z 1124.36124(精度30ppm)における[M+2H]2+から算出されたモノアイソトピック質量である、2246.71±0.06の分子量に相当する抗生物質の正確な質量と、
(C)CD3CN:D2O(1:1)に溶解された場合に、600MHzにおける、CD3CNを内部標準(1.94ppm)として使用する[δ=ppm、多重度(帰属)]、次のシグナルのグループ(ppmで)、即ち、0.84d(CH3)、0.89d(CH3)、0.94t(重複したCH3)、1.1d(CH3)、1.13d(CH3)、1.15t(重複したCH3)、149m(CH2)、1.69d(CH3)、1.75m(CH2)、2.11m(CH)、2.26m(CH)、2.5m(CH2)、2.68〜3.8m(ペプチド性CHβ)、3.8〜5.0m(ペプチド性CHα)、5.45〜6.17s(CH2)、5.58d(CH二重結合)、6.36m(CH)、6.86d(CH二重結合)、7.0〜7.45m(芳香族CH)を示す1H NMRスペクトルと、
(D)CD3CN:D2O(1:1)に溶解された場合に、600MHzにおける、CD3CNを内部標準(1.39ppm)として使用する[δ=ppm、(帰属)]、次のシグナル(ppmで)、即ち、13.6〜23.03(脂肪族CH3)、25.69〜77.9(脂肪族CH2及びペプチド性CHα)、105〜137.3(芳香族及び二重結合CH及び四級炭素)、165.6〜176.6(ペプチド性カルボニル)を示す13C NMRスペクトルと、
(E)Brukerフーリエ変換赤外分光光度計IFS48型を用いてKBr中で記録された、3294、3059、2926、1661、1529、1433、1407、1287、1114、1021(cm−1)に吸収極大を示す赤外スペクトルと、
(F)Perkin−Elmer分光光度計λ16を用いてメタノール:H2O(80:20の比で)中で記録された、226及び267nmにおいて2つの肩を示す紫外スペクトルと、
(G)6−アミノキノリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメートでの誘電体化後に、他の同定されていないピークと共に次のアミノ酸、即ち、ランチオニン、メチルランチオニン、グリシン、プロリン、バリン、アスパラギン酸(アスパラギンの加水分解生成物)、フェニルアラニン及びロイシンの存在を示す6N HCl(105℃、24時間)中の酸加水分解物と、
(H)5−クロロトリプトファンの存在を示す、0.2%(w/v)3−(2−アミノエチル)インドールを触媒として含む4N メタンスルホン酸中(115℃、16時間)の酸加水分解物と
を有する白色粉末であるA1因子。
【請求項20】
抗生物質107891のA2因子であって、次の特徴、即ち、
(A)次のエレクトロスプレイ条件、即ち、スプレイ電圧:4.7kV、キャピラリー温度:250℃、キャピラリー電圧:8V、注入モード10μl/分を用いる、Thermofinnigan較正ミックスを使用する、エレクトロスプレイ源を取り付けたThermofinnigan LCQ deca装置上で、酢酸0.5%を含むアセトニトリル:水 50:50(v/v)中の0.1mg/ml溶液から記録された質量スペクトル中の最も低い同位体組成に対応するm/z1116における二重プロトン化イオンと、
(B)エレクトロスプレイ源を取り付けたBruker Daltonics APEX II,4.7Tesla分光計を用いて決定された、m/z 1116.36260(精度30ppm)における[M+2H]2+から算出されたモノアイソトピック質量である、2230.71±0.06の分子量に相当する正確な質量と、
(C)CD3CN:D2O(1:1)に溶解された場合に、600MHzにおける、CD3CNを内部標準(1.94ppm)として使用する[δ=ppm、多重度(帰属)]、次のシグナル(ppmで)、即ち、0.84d(CH3)、0.88d(CH3)、0.94d(CH3)、1.06d(CH3)、1.14d(CH3)、148m(CH2)、1.65〜1.75m(CH2)、1.67d(CH3)、2.15m(CH)、2.25m(CH)、2.5m(CH2)、2.77〜3.8m(ペプチド性CHβ)、3.8〜4.9m(ペプチド性CHα)、5.45〜6.14s(CH2)、5.59d(CH二重結合)、6.34m(CH)、6.84d(CH二重結合)、7.0〜7.42m(芳香族CH)を示す1H NMRスペクトルと、
(D)CD3CN:D2O(1:1)に溶解された場合に、600MHzにおける、CD3CNを内部標準(1.39ppm)として使用する[δ=ppm、(帰属)]、次のシグナル(ppmで)、即ち、13.6〜22.9(脂肪族CH3)、25.65〜73(脂肪族CH2及びペプチド性CHα)、105〜137.3(芳香族及び二重結合CH及び四級炭素)、165.7〜176.1(ペプチド性カルボニル)を示す13C NMRスペクトルと、
(E)Brukerフーリエ変換赤外分光光度計IFS48型を用いてKBr中で記録された、3296、3060、2928、1661、1529、1433、1407、1288、1116(cm−1)に吸収極大を示す赤外スペクトルと、
(F)Perkin−Elmer分光光度計λ16を用いてメタノール:H2O(80:20の比で)中で記録された、226及び267nmにおいて2つの肩を示す紫外スペクトルと、
(G)6−アミノキノリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメートでの誘電体化後に、他の同定されていないピークと共に次のアミノ酸、即ち、ランチオニン、メチルランチオニン、グリシン、プロリン、バリン、アスパラギン酸(アスパラギンの加水分解生成物)、フェニルアラニン及びロイシンの存在を示す6N HCl(105℃、24時間)中の酸加水分解物と、及び
(H)5−クロロトリプトファンの存在を示す、0.2%(w/v)3−(2−アミノエチル)インドールを触媒として含む4N メタンスルホン酸中(115℃、16時間)の酸加水分解物と
を有する白色粉末である抗生物質107891のA2因子。
【請求項21】
抗生物質107891、そのA1若しくはA2因子、又は酸とのそれらの塩を産生する方法であって、
炭素、窒素及び無機塩の同化できる供給源を含有する水性栄養培地中において、好気条件下で、Microbispora sp.ATCC PTA−5024或いは前記抗生物質を産生する能力を保持するその変種又は突然変異体を培養するステップと、
得られた抗生物質を、菌糸体及び/又はろ過された発酵ブロスから単離するステップと、
単離された抗生物質107891を精製するステップと
を含む方法。
【請求項22】
菌株のMicrobispora sp.ATCC PTA−5024或いは抗生物質107891産生性のその変種又は突然変異体が前培養される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
抗生物質107891の単離が、発酵ブロスのろ過によって実施され、当該抗生物質が、ろ過された発酵ブロスから、水非混和性溶媒による抽出、非溶剤の添加による又は溶液のpH変化による析出、吸収クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、逆相分配クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、分子排除クロマトグラフィー、及び前記技術の2つ以上の組合せからなる群から選択される技術によって回収される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
抗生物質107891の単離が、発酵ブロスの上澄みから菌糸体を分離することによって実施され、該菌糸体が水混和性溶媒で抽出され、使用済み菌糸体の除去後に、粗抗生物質を含む水混和性溶液が得られ、該溶液を、ろ過された発酵ブロスと別々に又は合わせて、溶媒による抽出、非溶剤の添加又は溶液のpH変化によっての析出、吸収クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、逆相分配クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー及び分子排除クロマトグラフィー、並びに前記技術の2つ以上の組合せからなる群から選択される技術を用いて処理して抗生物質107891を回収することができる、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
菌糸体抽出物中の水混和性溶媒の濃度を低下させた後に、菌糸体抽出物が、抗生物質をそれから回収するために処理される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ろ過された発酵ブロスを吸収樹脂に接触させ、前記樹脂を、極性の水混和性溶媒又はその水との混合物で溶離し、それにより粗抗生物質107981を含む溶液を得る、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記吸収樹脂が、ポリスチレン、混合ポリスチレン−ジビニルベンゼン、及びポリアミド樹脂からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
菌糸体を、C1〜C3アルカノールで抽出し、その菌糸体抽出物を、吸収樹脂と接触させ、極性水混和性溶媒又はその水との混合物を用いてそれから溶離し、それにより粗抗生物質107891を含む溶液を得る、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
粗抗生物質107891を含む溶液が合わされ前記抗生物質107891の更なる精製のために処理される、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
粗抗生物質107981を含む溶液が濃縮され次いで凍結乾燥されて粗抗生物質107891固体生成物が得られる、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
吸収された抗生物質を含む吸収樹脂が合わされ、その混合物が極性の水混和性溶媒又はその水との混合物で溶離される、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
抗生物質107981が、クロマトグラフ法を用いて、好ましくは分取HPLC又は中圧クロマトグラフィーによって精製される、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
A1因子又はA2因子が、精製された抗生物質107891から分取HPLCによって分離される、請求項21に記載の方法。
【請求項34】
抗生物質107891、抗生物質107891A1因子、抗生物質107891A2因子、及び前記因子の任意の比率の混合物、又は酸との薬学的に許容されるその塩から選択される抗生物質を含む医薬組成物。
【請求項35】
薬学的に許容される担体を更に含む、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項36】
薬剤としての使用のための、抗生物質107891、そのA1因子、そのA2因子、又は前記因子の任意の比率の混合物、又は酸との薬学的に許容されるその塩。
【請求項37】
細菌性感染症の治療又は予防用の薬剤の製造のための、抗生物質107891、そのA1因子、そのA2因子、又は前記因子の任意の比率の混合物、又は酸との薬学的に許容されるその塩の使用。
【請求項38】
動物成長促進剤としての、抗生物質107891、そのA1因子、そのA2因子、又は前記因子の任意の比率の混合物、又は酸とのその無毒性塩の使用。
【請求項39】
菌株Microbispora sp.ATCC PTA−5024、又は炭素、窒素及び無機塩の同化できる供給源の存在下で液内の好気条件下で培養された場合に、抗生物質107891を産生する能力を保持するその変種若しくは突然変異体の、生物学的に純粋な培養物。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2008−528581(P2008−528581A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553072(P2007−553072)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/002733
【国際公開番号】WO2006/080920
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(507251848)ヴィキュロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/002733
【国際公開番号】WO2006/080920
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(507251848)ヴィキュロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】
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