説明

抗癌タンパク質−白金コンジュゲート

本発明は、癌細胞に比較的特異的に結合するポリペプチドにコンジュゲートさせた抗癌白金錯体を含むポリペプチド−白金コンジュゲートを提供する。これにより、コンジュゲートが癌細胞に向けられ、シスプラチン及び他の従来の抗癌白金錯体と比べて抗癌効果が上昇し、副作用が低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
シスプラチンは利用可能な最も強力な抗癌化学療法薬であり、とりわけ、精巣、卵巣、膀胱、頭頸部、結腸、及び肺の癌に対して広く使用されている。しかし、シスプラチンは多くの他の化学療法薬よりも副作用がはるかに強く、とりわけ、骨髄抑制、悪心、神経障害、及び腎毒性を引き起こす。より新しい白金系薬物であるカルボプラチン及びオキサリプラチンが開発されたが、これらもシスプラチンと大きく変わらない全身性作用及び副作用プロフィールを有する。
【背景技術】
【0002】
シスプラチンの構造を以下に示す。
【0003】
【化1】

【0004】
引用した全ての特許文献及びその他の文献を参照により援用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Momekov, G. et al., 2005, Novel approaches towards development of non-classical platinum-based antineoplastic agents: design of platinum complexes characterized by an alternative DNA-binding pattern and/or tumor-targeted cytotoxicity. Curr. Med. Chem. 12:2177-2191.
【非特許文献2】Cleare, M.J. et al. 1978. Anti-tumour platinum complexes: relationships between chemical properties and activity. Biochimie 60:835-850.
【非特許文献3】Harrison, R.C. et al. 1980. An efficient route for the preparation of highly soluble platinum(II) antitumour agents. Inorganica Chimica Acta 46:L15-L16.
【非特許文献4】Kidani, Y. et al. 1978. Antitumor activity of 1,2-diaminocyclohexane-platinum complexes against Sarcoma-180 ascites form. J. Med. Chem. 21:1315-1318.
【非特許文献5】Li, Jie Jack, et al. 2007. Modern Organic Synthesis in the Laboratory: a collection of standard experimental procedures. Oxford University Press, Oxford, UK.
【非特許文献6】Wyatt, Paul, and Stuart Warren. 2007. Organic Synthesis: strategy and control. John Wiley, Hoboken, NJ, USA.
【非特許文献7】Tojo, Gabriel. 2006. Oxidation of primary alcohols to carboxylic acids: a guide to common practice. Springer Science and Business Media, Boston, MA, USA.
【非特許文献8】Tojo, Gabriel. 2006. Oxidation of alcohols to aldehydes and ketones: a guide to common practice. Springer Science and Business Media, Boston, MA, USA.
【非特許文献9】Taber, D.F. 2007. Organic synthesis: state of the art 2005-2007. John Wiley, Hoboken, NJ, USA.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
癌標的化の向上した新規な化学療法薬剤が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、タンパク質にコンジュゲートさせることができる新規な白金錯体、タンパク質及びペプチドと白金錯体とのコンジュゲート、コンジュゲートの製造方法、並びにコンジュゲートを用いて癌を処置する方法を提供する。
【0008】
例えば、化合物11が提供される。
【0009】
【化2】

【0010】
錯体11は、錯体の配位していないカルボキシル基を介してタンパク質のアミノ基にカップリングすることができる。タンパク質は、好ましくは、白金錯体をより特異的に癌細胞に向けることができるタンパク質であり、例えば癌細胞上にだけ若しくは主に癌細胞上に見られる受容体タンパク質に対する抗体、又はその受容体が癌細胞上で過剰発現されている成長因子である。
【0011】
したがって、一実施形態では、式I又はIIで表される白金錯体が提供される:
【0012】
【化3】

【0013】
式I中、
は、H又は(C〜C)アルキルであり;
は、COOH、NX、SH、HOOC−(C〜C10)アルキル、XN−(C〜C10)アルキル、HS−(C〜C10)アルキル、−CHO、OHC−(C〜C10)アルキル、又は(C〜C)アルキル−C(O)C(O)−(C〜C)アルキルであり;
、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、H、(C〜C)アルキルであり、R及びRは一緒に(C〜C10)アルキルを形成してもよく、
式II中、
及びLは、Cl、ギ酸イオン(formate)、炭酸水素イオン(bicarbonate)、NX、(C〜C10)アルキル−NX、及び(C〜C10)アルキル−COOから選択されるリガンドであり、L及びLは一緒にOOC−COO、カルボキシ(C〜C10)アルキル−カルボキシ、XN−(C〜C10)アルキル−NX、又はXN−(C〜C10)アルキル−カルボキシを形成してもよく;
、R10、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立して、H、(C〜C10)アルキル、XN−(C〜C10)アルキル、HOOC−(C〜C10)アルキル、HS−(C〜C10)アルキル、−CHO、OHC−(C〜C10)アルキル、又は(C〜C)アルキル−C(O)C(O)−(C〜C)アルキルであり、R及びR10は一緒に(C〜C10)アルキル、HOOC−(C〜C10)アルキル、XN−(C〜C10)アルキル、HS−(C〜C10)アルキル、OHC−(C〜C10)アルキル、又は(C〜C)アルキル−C(O)C(O)−(C〜C)アルキルを形成してもよく;
、R、R、及びR10の少なくとも1つはHOOC−(C〜C10)アルキル、XN−(C〜C10)アルキル、HS−(C〜C10)アルキル、−CHO、OHC−(C〜C10)アルキル、又は(C〜C)アルキル−C(O)C(O)−(C〜C)アルキルであり;
はR13であってもよく、LはR14であってもよく;
各Xは、独立して、H又は(C〜C10)アルキルであり;
各アルキルは、飽和又は不飽和のいずれであってもよく、直鎖、分枝、又は環状のいずれであってもよく、−NH−、−O−、−S−、又は=N−が割り込んでいてもよく、OH、ハロ、又はオキソで置換されていてもよい。
【0014】
別の実施形態は、式III又はIVで表されるポリペプチド−白金コンジュゲートを提供する:
【0015】
【化4】

【0016】
式III中、
は、H又は(C〜C)アルキルであり;
は、1〜100原子のリンカー部分であり;
、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、H、(C〜C)アルキルであり、R及びRは一緒に(C〜C10)アルキルを形成してもよく、
式IV中、
及びLは、Cl、ギ酸イオン、炭酸水素イオン、NX、(C〜C10)アルキル−NX、及び(C〜C10)アルキル−COOから選択されるリガンドであり、L及びLは一緒にCOO−COO、カルボキシ−(C〜C10)アルキル−カルボキシ、XN−(C〜C10)アルキル−NX、又はXN−(C〜C10)アルキル−カルボキシを形成してもよく;
は、1〜100原子のリンカー部分であり;
10、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立して、H、(C〜C10)アルキル、XN−(C〜C10)アルキル、HOOC−(C〜C10)アルキル、又はHS−(C〜C10)アルキルであり;R11及びR10は一緒に(C〜C10)アルキル、HOOC−(C〜C10)アルキル、XN−(C〜C10)アルキル、又はHS−(C〜C10)アルキルを形成してもよく;R及びR10は一緒に1〜100原子のリンカー部分を形成してもよく;
はR13であってもよく、LはR14であってもよく;
各Xは、独立して、H又は(C〜C10)アルキルであり;
各アルキルは、飽和又は不飽和のいずれであってもよく、直鎖、分枝、又は環状のいずれであってもよく、−NH−、−O−、−S−、又は=N−が割り込んでいてもよく、OH、ハロ、又はオキソで置換されていてもよい。
【0017】
別の実施形態は、以下を含むポリペプチド−白金コンジュゲートの製造方法を提供する:上記白金錯体を形成する工程;及び白金錯体をリンカー反応物及びポリペプチドと反応させてポリペプチド−白金コンジュゲートを形成する工程。
【0018】
別の実施形態は、以下を含むポリペプチド−白金コンジュゲートの製造方法を提供する:白金錯体を、式VIで表されるポリペプチド−二座リガンドコンジュゲート
【0019】
【化5】

【0020】
と反応させて式VIIで表されるポリペプチド−白金コンジュゲート
【0021】
【化6】

【0022】
(式中、L〜Lはそれぞれリガンドである。)を形成する工程。特定の実施形態におけるポリペプチド−白金は式III又はIVで表されるコンジュゲートである。
【0023】
別の実施形態は、以下を含むポリペプチド−白金コンジュゲートの製造方法を提供する:白金錯体を、式VIbで表されるポリペプチド−リガンドコンジュゲート
【0024】
【化7】

【0025】
と反応させて式VIIbで表されるポリペプチド−白金コンジュゲート
【0026】
【化8】

【0027】
(式中、L〜Lはそれぞれリガンドである。)を形成する工程。好ましくは、式VIIbで表されるポリペプチド−白金コンジュゲートは式III又はIVで表されるポリペプチド−白金コンジュゲートである。
【0028】
別の実施形態は、式Xで表されるポリペプチド−白金錯体を提供する:
【0029】
【化9】

【0030】
式中、Lは、Ptのリガンドであるポリペプチドのアミノ、カルボキシ、又はスルフヒドリル基であり、L〜Lはリガンドである。
【0031】
別の実施形態は、癌に罹患している哺乳動物に式III、IV、VII、VIIb、又はXで表されるポリペプチド−白金コンジュゲートを投与することを含む癌の処置方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
定義:
特定の受容体に対するリガンドの「結合親和性(binding affinity)」という用語は、会合定数K(解離定数Kの逆数)又は実験により決定されたその近似値を意味する。
【0033】
「アゴニスト」という用語は、受容体(例えば、インスリン受容体、1型IGF受容体、又はEGF受容体)のリガンドであって、受容体に結合した時に、その受容体の天然リガンド(例えば、インスリン受容体に対するインスリン、IGF−1受容体に対するIFG−1、又はEGF受容体に対するEGF)の結合により引き起こされる正常な生化学的及び生理学的事象を活性化するものを意味する。特定の実施形態では、アゴニストは、天然リガンドの少なくとも20%、少なくとも30%、又は少なくとも50%の生物学的活性を有する。インスリン受容体リガンドの活性は例えば血糖降下作用を測定することによって測定することができる(Poznansky, M.J., et al., 1984, Science 223:1304)。インスリン受容体リガンド又はIGF−1受容体リガンドの活性は、Satyamarthy, K., et al., 2001, Cancer Res. 61:7318に記載されているように、リガンドの結合に応答する受容体の自己リン酸化の程度を測定することでインビトロで測定することができる。IGF−1受容体の場合にはMAPキナーゼリン酸化を測定することもできる(Satyamarthy, K., et al., 2001, Cancer Res. 61:7318)。EGF受容体チロシンキナーゼの活性はBeerli, R.R., et al., 1996, J. Biol. Chem. 271:6071-6076に記載されているようにアッセイすることができる。
【0034】
「アンタゴニスト」という用語は、受容体に結合した時に刺激活性をほとんど又は全く有さず、受容体への天然リガンドの結合と競合するかこれを阻害するリガンドを意味する。特定の実施形態では、アンタゴニストの活性は天然リガンド(インスリン受容体に対するインスリン又はIGF−1受容体に対するIGF−1)の20%未満、10%未満、又は5%未満である。
【0035】
アルキルは、本明細書中で、飽和又は不飽和のいずれであってもよく、直鎖、分岐、又は環状のいずれであってもよく、−NH−、−O−、−S−、又は=N−が割り込んでいてもよく、OH、ハロ、又はオキソで置換されていてもよいと記載されている。したがって、例えば「(C〜C10)アルキル」はヘテロアリール環であってもよい。
【0036】
説明:
本発明の実施形態は、癌の処置に適したポリペプチド−白金コンジュゲート及びその製造方法に関する。シスプラチンは、最も効果的な抗癌化学療法薬の1つであるが、極度の副作用を生じるという欠点がある。カルボプラチン、オキサリプラチン等の抗癌特性を有する複数のその他の白金錯体が研究されてきた(文献1〜4)が、シスプラチン同様、これらは癌細胞を特異的に標的とせず、体内の全ての細胞に取り込まれる。したがって、これらも同様に極度の全身性副作用を有する。
【0037】
本発明の目的は、癌細胞に少なくとも幾分特異的に結合するタンパク質又はペプチドに結合した抗癌白金錯体を含むコンジュゲートを開発することである。好適なタンパク質の例としては、癌細胞上でその受容体が過剰発現されている成長因子又はホルモンが含まれる。上皮成長因子(EGF)受容体、I型インシュリン様成長因子受容体、及びインスリン受容体は全て、ほとんどではなくとも多くの種類の癌で過剰発現されている。したがって、これらの受容体のリガンド又は癌細胞に幾分特異的に結合するその他のポリペプチドを白金錯体に結合させて白金錯体をより特異的に癌細胞に送達させることができる。これらのポリペプチドリガンドはその受容体に結合した時に細胞によって内部移行されることが好ましい。これによって、白金錯体も効率的に癌細胞中に内部移行される。アゴニストは内部移行されるが、アンタゴニストは内部移行されないこともある。
【0038】
コンジュゲートは、ポリペプチドへの架橋に化学的に適したフリーの基を備えた少なくとも1つのリガンドを有する白金錯体を作製することで形成される。そのような基としては、カルボキシル基、アミノ基、及びメルカプト基、並びにアルデヒド基及びジ−ケトン基が含まれる。カルボキシル基及びアミノ基と反応して例えばこれらを互いに架橋することができる架橋剤が存在する。したがって、フリーのカルボキシル基を有する白金錯体をタンパク質上のアミノ基、例えばリジン側鎖に架橋して、ポリペプチド−白金錯体を形成することができる。あるいは、フリーのリガンド分子をタンパク質に架橋し、その後、白金に配位(ligate)させることでポリペプチド−白金錯体を形成することもできる。
【0039】
例えば、CH(COOH)を白金に配位させて、CH(COOH)の3つのカルボキシルの2つが白金に配位し且つ1つのカルボキシルが架橋剤との反応にフリーである白金錯体11を形成することができる。
【0040】
【化10】

【0041】
あるいは、CH(COOH)を最初にタンパク質に架橋して、その後、得られた(タンパク質−NH)−CO−CH(COOH)コンジュゲートを錯体中の白金原子に配位させて同じタンパク質−白金コンジュゲートを形成してもよい。
【0042】
別の例としては、アミノ基と反応してそのアミノ基を介してリガンドをポリペプチドのアミノ基に架橋する二機能性架橋試薬によって二座リガンドHNCH(COOH)をポリペプチドにカップリングさせてコンジュゲート(ポリペプチド−NH)−リンカー−NH−CH(COOH)を形成させ、その後、コンジュゲートの2個のカルボキシルを介してコンジュゲートを白金原子に配位させてもよい。
【0043】
リガンド又は白金錯体をポリペプチドにカップリングさせるための指針
本発明の白金錯体は通常、タンパク質上に存在する反応性基を介してポリペプチドにカップリングされている。これらには、N末端アルファ−アミノ基、C末端アルファ−カルボキシル基、リジンの側鎖アミノ基、アスパラギン酸及びグルタミン酸の側鎖カルボキシル基、システインの側鎖チオール、及びアルギニン側鎖が含まれる。タンパク質上に見られるその他の反応性側鎖としては、セリン及びスレオニンの側鎖ヒドロキシル、チロシンのヒドロキシアリール、ヒスチジンのイミダゾール、及びメチオニン側鎖が挙げられる。しかし、主な反応性基は、ポリペプチドのアミノ酸側鎖及びアミノ末端及びカルボキシル末端に見られるアミノ基、カルボキシル基、及びメルカプト基である。
【0044】
本発明の実施形態では、白金へのリガンド上、好ましくは白金への二座リガンド上に、同じ反応性基が配置され、リガンドの反応性基がポリペプチドの反応性基に架橋される。したがって、ポリペプチドへのリガンド又は白金錯体の架橋は2個のポリペプチドの架橋と類似している。
【0045】
タンパク質のコンジュゲート化及び架橋の化学及び原理はWong, Shan S., Chemistry of Protein Conjugation and Cross-Linking, 1991, CRC Press, Boca Raton, Floridaに記載されている。この化学に関するその他の情報源としてはピアース・バイオケミストリー社(Pierce Biochemistry)のカタログ、並びにGreene, T. W., and Wutz, P.G.M., Protecting Groups in Organic Synthesis, second edition 1991, John Wiley & Sons, Inc., New York及びその中に引用されている文献が含まれる。
【0046】
アミノ酸側鎖の最も強力な求核試薬は還元システイン側鎖のチオールである。チオールはほとんどのタンパク質修飾試薬と反応する。アルファ−ハロアセトアミド及びマレイミドは、特にpH7.0以下で、システイン残基と特異的に反応すると考えられている。チオールはジスルフィド試薬とのジスルフィド交換によっても反応する。
【0047】
【化11】

【0048】
タンパク質上に見られるその次に強い求核試薬はアミノ基である。アルデヒドはアミノ基と反応してシッフ塩基を形成する。シッフ塩基は加水分解でき、このことは本発明において利点となり得る。リガンド−化学療法薬コンジュゲートの癌細胞中への取込みと共に、化学療法薬が活性になるためにコンジュゲートから化学療法薬が切断される必要がある場合がある。これは化学療法薬が加水分解可能な結合等の切断可能な結合によってリガンドに連結されている場合によりよく達成される。切断可能な結合は細胞中で自発的に又は酵素によって切断され得る。例えば、アミド結合はプロテアーゼ等の特定の酵素によって切断される。シッフ塩基結合はかなりの速度で自発的に加水分解する。ジスフルフィド結合は癌細胞の細胞内還元性環境中で還元切断されると予想される。
【0049】
【化12】

【0050】
アミノ基とアルデヒドの反応によって形成されたシッフ塩基は、例えば水素化ホウ素ナトリウム又はピリジンボランによる還元によって安定化することができる。ピリジンボランには、インスリン、IGF−1、及びIGF−2で見られ且つこれらのタンパク質の構造に必須であるジスルフィドを還元しないという利点がある。
【0051】
グルタルアルデヒド等のジアルデヒドはアミノ基を有する2個の分子を架橋する。
【0052】
その他のアミノ試薬としては、活性カルボニル、例えばN−ヒドロキシスクシンイミドエステル、p−ニトロフェニルエステル、又は酸無水物(例えば無水コハク酸)が含まれる。
【0053】
【化13】

【0054】
アミノ基はハロゲン化スルホニル及びハロゲン化アリール(例えば2,4−ジニトロフルオロベンゼン)とも反応する。
【0055】
【化14】

【0056】
アミノ基はまた、イソシアナート及びイソチオシアナートと反応して尿素又はチオ尿素誘導体を形成する。
【0057】
【化15】

【0058】
イミドエステルはアミノ基の最も特異的なアシル化剤である。イミドエステルはpH約7〜10でアミンと特異的に反応してイミドアミド(imidoamide)を形成する。この反応には、元のアミノ基に正に帯電した基(イミドアミド)を生じることで電荷安定性を維持するという利点がある。イミドアミドはまた、中性より高いpHで徐々に加水分解される。このことも、加水分解によって癌細胞中にフリーの化学療法薬が放出される点で利点となり得る。
【0059】
【化16】

【0060】
カルボキシル基は穏やかな酸条件下、例えばpH5で、ジアゾアセタート及びジアゾアセトアミドと特異的に反応する。
【0061】
【化17】

【0062】
カルボキシルの最も重要な化学修飾では、カルボジイミド、例えば1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジイミド(CMC)及び3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)を使用する。アミン存在下でカルボジイミドは2段階でカルボキシルへのアミド結合を形成する。第1段階では、カルボキシル基がカルボジイミドに付加されてO−アシルイソ尿素中間体が形成される。その後のアミンとの反応によって対応するアミドが生成する。
【0063】
【化18】

【0064】
特に重要なカルボジイミド反応は、N−ヒドロキシスクシンイミドを用いてカルボキシルを活性化してN−ヒドロキシスクシンイミドエステルを形成する際におけるその使用である。
【0065】
【化19】

【0066】
活性化カルボキシルは単離するのに十分な安定性を有するが、その後容易にアミノ基と反応してアミド結合を形成する。
【0067】
N−スクシンイミジル−3−[2−ピリジルジチオ]プロピオナート(SPDP)等のスクシンイミドを用いてアミノ基を介して2個の化合物をカップリングさせることができる(ピアース・バイオテクノロジー社(pierce Biotechnology)のカタログ及びThorpe, P.E. et al. 1982, Immunol. Rev. 62:119-158参照)。
【0068】
【化20】

【0069】
アルギニンはビシナルなジアルデヒド又はジケトン、例えばグリオキサール、2,3−ブタンジオン、及び1,2−シクロヘキサンジオンと反応する。安定化が所望される場合、ボラート(borate)は付加体を安定化し得る。
【0070】
【化21】

【0071】
上記の反応のいくつかによって反応性基を別の反応性基と交換することもできる。例えば、無水コハク酸等の酸無水物を用いてアミノ基を修飾することで、正に帯電したアミノ基がフリーのカルボキシル基で置換される。同様に、カルボキシル基とカルボジイミド及びジアミン(例えばエチレンジアミン)との反応は、カルボキシル基をフリーのアミノ基で置換する。
【0072】
架橋:
上記反応性基を2個含む試薬、例えば2個のアミノ反応性基を含む試薬又はアミノ反応性基とチオール反応性基を含む試薬を用いて、適当な基の1つ、特にカルボキシル、アミノ、又はメルカプト、を含む白金錯体(又は白金と錯体を形成することができるリガンド)を別の適当な基を含むポリペプチドに架橋することができる。例えば、2個のアミン反応性基を有する架橋剤により、フリーのアミノ基を含む白金錯体をポリペプチドのアミノ基(リジン側鎖又はN末端アミノ)に架橋することができる。例えば、白金錯体又は白金リガンド上のフリーのアミノを、ジ−イミドエステル、例えばアジプイミド酸ジメチル−2−HCl(ピアース・バイオケミカル社(Pierce Biochemical, Inc.)製)によって、又はジスクシンイミジルエステル、例えばジスクシンイミジルグルタラート(ピアース・バイオケミカル社製)によって、ポリペプチド上のアミノにカップリングさせることができる。
【0073】
カルボジイミド又はカルボジイミド及びN−ヒドロキシスクシンイミドを用いてカルボキシル(例えば、白金錯体のフリーのカルボキシル)を活性化させて(例えばタンパク質リガンドの)アミノ基と反応させてアミド結合架橋を形成させることができる。
【0074】
リガンド又は試薬が市販されていない場合、有機化学者に公知の原理及び手法並びに文献5〜9に記載されている原理及び手法によって合成することができる。
【0075】
具体的実施形態
式Iで表される白金錯体又は式IIIで表されるポリペプチド−白金コンジュゲートの特定の実施形態では、R〜RはそれぞれHである。別の実施形態では、R及びRは一緒に(C〜C)アルキルを形成し、R〜RはそれぞれHである。
【0076】
式Iで表される白金錯体又は式IIIで表されるポリペプチド−白金コンジュゲートのいくつかの実施形態では、R及びRは一緒に(C〜C)アルキルを形成し、これは(C〜C10)アルキルで置換されていてもよく、両方のアルキルに−NH−、−O−、−S−、又は=N−が割り込んでいてもよく、OH、ハロ、オキソ、アミノ、カルボキシ、又はメルカプトで置換されていてもよい。この場合、白金に配位している2個のアミンが一緒に連結されて二座リガンドを形成する。
【0077】
同様に、式IIで表される錯体の特定の実施形態では、R及びR10は一緒に(C〜C)アルキルを形成し、これは(C〜C10)アルキルで置換されていてもよく、両方のアルキルに−NH−、−O−、−S−、又は=N−が割り込んでいてもよく、OH、ハロ、オキソ、アミノ、カルボキシ、又はメルカプトで置換されていてもよい。この場合、白金に配位している2個のアミンが一緒に連結されて二座リガンドを形成する。
【0078】
いくつかの実施形態では、R11及びR12はそれぞれHであり、R及びR10は一緒に、カルボキシ、アミノ、メルカプト、カルボキシ(C〜C)アルキル、アミノ(C〜C)アルキル、又はメルカプト(C〜C)アルキルで置換されていてもよい−(C〜C)アルキル−を形成し;R13及びR14は独立してH、カルボキシ(C〜C)アルキル、アミノ(C〜C)アルキル、又はメルカプト(C〜C)アルキルである。
【0079】
式IIで表される錯体の別の実施形態では、R及びR10は一緒に、カルボキシ又はカルボキシ(C〜C)アルキルで置換されていてもよい−(C〜C)アルキル−を形成し;R11〜R14はそれぞれ独立してH、(C〜C)アルキル、又はカルボキシ(C〜C)アルキルであり;R〜R14の少なくとも1つはカルボキシ(C〜C)アルキルである。
【0080】
ポリペプチド−白金コンジュゲートの特定の実施形態では、錯体はアミド結合によってポリペプチドに連結されている。したがって、リンカー部分はアミド結合の−C(=O)−又は−NH−部分を含む。別の実施形態では、錯体はジスルフィド結合又はシッフ塩基又は還元シッフ塩基によってポリペプチドに連結されている。
【0081】
ポリペプチド−白金コンジュゲートの製造方法の特定の実施形態では、方法は、式Vで表される白金錯体を式VIで表されるポリペプチド−二座リガンドコンジュゲート
【0082】
【化22】

【0083】
と反応させて式VIIで表されるポリペプチド−白金コンジュゲート
【0084】
【化23】

【0085】
(式中、L〜Lはそれぞれリガンドである。)を形成する工程を含む。
【0086】
特定の実施形態では、式VIで表されるポリペプチド−二座リガンドコンジュゲートは式VIIIで表されるコンジュゲートである:
【0087】
【化24】

【0088】
式中、Rは、H又は(C〜C)アルキルであり、Rは1〜100原子のリンカー部分であり;各アルキルは、飽和又は不飽和のいずれであってもよく、直鎖、分枝、又は環状のいずれであってもよく、−NH−、−O−、−S−、又は=N−が割り込んでいてもよく、OH、ハロ、又はオキソで置換されていてもよい。
【0089】
別の実施形態では、式VIで表されるポリペプチド−二座リガンドコンジュゲートは式IXで表されるコンジュゲートである:
【0090】
【化25】

【0091】
式中、R21は、(C〜C)アルキルで置換されていてもよい(C〜C)アルキルであり、各Xは、独立して、H又は(C〜C10)アルキルであり;各アルキルは、飽和又は不飽和のいずれであってもよく、直鎖、分枝、又は環状のいずれであってもよく、−NH−、−O−、−S−、又は=N−が割り込んでいてもよく、OH、ハロ、又はオキソで置換されていてもよい。
【0092】
式VIIで表されるポリペプチド−白金コンジュゲートは、癌を処置するための最終生成物にするために更なるリガンドの置換がなされてもよい。例えば、L及びLが二座ジアミンリガンドである場合、L及びLはヨード(iodide)であってもよく、このヨードは後の工程において例えばクロリド、オキサラート、又はマロナートで置換されてもよい。
【0093】
ポリペプチド
白金錯体にコンジュゲートさせるのに適したタンパク質の例としては、その受容体が癌細胞上で過剰発現されている成長因子又はホルモンが含まれる。上皮成長因子(EGF)受容体、I型インシュリン様成長因子受容体、及びインスリン受容体は全て、ほとんどではなくとも多くの種類の癌において過剰発現されている。したがって、これらの受容体のリガンド、又は癌細胞に幾分特異的に結合するその他のポリペプチドが、白金錯体をより特異的に癌細胞に送達するために白金錯体に結合され得る。ポリペプチドリガンドはその受容体に結合した時に細胞によって内部移行されることが好ましい。これによって、白金錯体も効率的に癌細胞中に内部移行される。アゴニストは内部移行されるが、アンタゴニストは内部移行されないこともある。
【0094】
当然ながら、インスリンはインスリン受容体の天然リガンドである。インシュリン様成長因子1(IGF−1)はI型IGF受容体の天然リガンドである。インスリン及びIGF−1は互いの受容体とも交差反応し、IGF−2も両方の受容体に結合する。
【0095】
しばしば癌細胞中で同じ種類の組織の正常細胞中よりも多く見られる別の受容体は上皮成長因子(EGF)受容体である(Nicholson, R.I. et al., 2001, Eur. J. Cancer 37:S9-S15;Kopp, R., et al, 2003, Recent Results in Cancer Research 162:115-132;Fox, S.B. et al., 1994, Breast Cancer Res. Treat. 29:41-49。EGF受容体はErbB−1としても知られ、EGF自身、形質転換成長因子アルファ(TGFα)、アンフィレギュリン(AR)、ヘパリン結合EGF様成長因子(HB−EGF)、ベータセルリン(BTC)等の複数のアゴニストによって活性化される(Beerli, R.R. et al., 1996, J. Biol. Chem. 271:6071-6076;Earp, H.S., et al., 2003, Trans. Am. Clin. Clim. Assoc. 114:315-333)。3つのその他の受容体もEGFファミリーの受容体の一員とみなされる。それらはErbB−2、ErbB−3、及びErbB−4(それぞれヒトEGF受容体2、3、及び4を意味するHER2、HER3、及びHER4としても知られる)である。これらの受容体、特にErbB−2も、癌細胞上で過剰発現されていることが多い。受容体ErbB−2及びErbB−4はチロシンキナーゼである。上記のEGF受容体アゴニストはEGF受容体に最も強く結合する。EGF受容体ファミリーに含まれる他の受容体にはこれらはそれほど強く結合しない。Neu分化因子(NDF)/ヘレグリンはEbrB−3及びErbB−4のリガンドである(Beerli, R.R., 1996, J. Biol. Chem. 271:6071-6076;Carraway, K.L. et al., 1994 J. Biol. Chem. 269:14303-14306;Plowman, G.D., et al., 1993, Nature 366:473-475)。
【0096】
したがって、EGF、TGFα、HB−EGF、BTC、及びNDFも白金錯体にカップリングされ得るタンパク質である。
【0097】
例えばファージディスプレイライブラリー技術によってペプチドライブラリーをスクリーニングし、インスリン受容体、IGF−1受容体、EGF受容体、ErbB−2等の癌細胞上で過剰発現されている標的受容体タンパク質の1つに結合する非天然ペプチドを同定してもよい。これらのペプチドを前述の白金錯体とコンジュゲートさせてもよい。
【0098】
これらの受容体又は癌細胞に比較的特異的なその他の標的に対する抗体を白金錯体とコンジュゲートさせることもできる。例としてCA125に対する抗体が挙げられる。
【0099】
したがって、ポリペプチドは、化学合成された短いペプチドから巨大なマルチサブユニットタンパク質までの如何なるサイズであってよい。
【0100】
白金錯体にコンジュゲートさせる別の特定のポリペプチドはI型IGF受容体への結合が低下しているIGF−1のバリアントである。
【0101】
特定の実施形態では、ポリペプチドはインスリン受容体、IGF−1受容体、EGF受容体、又はErb−2のリガンドである。
【0102】
EGF前駆体の配列が配列番号1である。成熟EGFでは、配列番号1のアミノ末端メチオニンが除去されている(Gregory, H., 1975, Nature 257:325-327)。TGFα前駆体の配列が配列番号2である。成熟TGFαは配列番号2の残基40〜89であると考えられている(Qian, J.F., et al., 1993, Gene 132:291- 296;Higashayaam, S., et al., 1991, Science 251:936-939)。アンフィレギュリン前駆体の配列が配列番号3である。成熟アンフィレギュリンは配列番号3の残基101〜184であると考えられている(Plowman, G.D., et al., 1990, Mol Cell Biol. 10:1969-1981)。HB−EGF前駆体の配列が配列番号4である。成熟HB−EGFは配列番号4の残基63〜148であると考えられている(Higashayama, S. et al., 1992, J. Biol Chem. 267:6205-6212;Higashayaam, S., et al., 1991, Science 251:936-939)。ベータセルリン前駆体の配列が配列番号5である。成熟ベータセルリンは配列番号5の残基32〜111であると考えられている(Sasada, R. et al., 1993, Biochem. Biophys. Res. Comm. 190:1173-1179)。成熟EGFでは、配列番号1のシステイン残基7と21、15と32、及び34と43が互いにジスルフィドブリッジを形成している(Gregory, H., 1975, Nature 257:325-327)。他の天然EGF受容体リガンド中の相同なシステイン残基もジスルフィドブリッジを形成する(Higashayaam, S., et al., 1991, Science 251:936-939)。EGF受容体の別のポリペプチドリガンドとして、天然EGF受容体リガンドの配列のキメラ、例えば、EGF配列とTGFα配列とのキメラであり且つEGF又はTGFαよりも活性なアゴニストであるキメラE4Tが挙げられる(Lenferink, A.E.G., et al., 1998, EMBO J. 17:3385-3397;Kramer, R.H., et al., 1994, J Biol. Chem. 269:8708-8711)。
【0103】
特定の実施形態では、ポリペプチドはEGF受容体のリガンドであって、リガンドは、配列番号1の残基2〜54、配列番号2の残基40〜89、配列番号3の残基101〜184、配列番号4の残基63〜148、配列番号5の残基32〜111、及びE4Tからなる群から選択されるポリペプチド配列を含む。
【0104】
インスリンの構造は周知であり、米国特許出願公開第20060258569号に開示されている。IGF−1のアミノ酸配列は配列番号6である。
【0105】
IGF−1受容体のアゴニスト及びアンタゴニストであるペプチドリガンド並びにIGF−1受容体のアゴニスト及びアンタゴニストであるペプチドリガンドの同定方法の例は米国特許出願公開第2004/0023887号及び同第2003/0092631号に開示されている。アンタゴニストの1つはペプチドSFYSCLESLVNGPAEKSRGQWDGCRKK(配列番号7)である。
【0106】
IGF−1受容体アゴニストのその他の例としては、米国特許第4,876,242号に開示されている、受容体を活性化するが可溶性IGF−1結合タンパク質への親和性が低下しているIGF−1のバリアントが含まれる。IGF結合タンパク質は、IGF−1に結合してIGF−1の循環を維持し且つその生物学的半減期を延長する、天然の血清タンパク質である。本発明のIGF−1受容体リガンド、特に別個の分子として化学療法薬剤と共投与されるアゴニストのIGF−1結合タンパク質への結合が低下していることは、薬剤が放出されてIGF−1受容体に結合し易くなるため、利点となり得る。したがって、いくつかの実施形態では、IGF−1受容体のリガンド又はアゴニストは、天然IGF−1と比較して、可溶性IGF−1結合タンパク質への親和性が低下している。米国特許第4,876,242号に開示されているバリアントには、バリアントIGF−1がポリペプチド構造A−A−A−A−LCG−A−A−LV−A−AL−A−A−R(式中、AはG、V、又はFVであり;AはP又はNであり;AはE又はQであり;AはT、H、又はAであり;AはA又はSであり;AはE又はHであり;AはD又はEであり;AはQ又はYであり;AはF又はLであり;Rは配列番号8である。)を含む、バリアントが含まれる。具体的な実施形態では、AはFVであり、AはNであり、AはQであり、AはHであり、AはSであり、AはHであり、AはEであり、AはYであり、及びAはLであり、したがって、バリアントは配列番号14である。別の実施形態では、バリアントは、配列番号14又は米国特許第4,876,242号に開示されている別のバリアントを含む。別の実施形態では、バリアントは配列番号8を含む。
【0107】
本発明の方法及びコンジュゲートに使用するための、可溶性IGF結合タンパク質への結合が低下した好ましいバリアントIGF−1の1つは、LONG−R3−IGF−1(配列番号13)である(Francis, G.L., et al.l992, J. Mol. Endocrinol. 8:213-223;Tomas, F.M. et al., 1993, J. Endocrinol. 137:413-421)。可溶性IGF−1結合タンパク質への親和性が低下したその他のバリアントIGF−1としては、配列番号9〜12、特に野生型IGF−1の最初の3残基が欠けたDes(1−3)IGF−1(配列番号12)が含まれる。したがって、特定の実施形態では、可溶性IGF−1結合タンパク質への結合が低下したバリアントIGF−1であるポリペプチドは配列番号9〜13のいずれか1つを含む。
【0108】
好ましくは、可溶性IGF−1結合タンパク質への親和性が低下したIGF−1受容体リガンドは、可溶性IGF−1結合タンパク質への結合親和性が野生型IGF−1の5分の1以下、より好ましくは10分の1以下、更により好ましくは100分の1以下である。可溶性IGF−1結合タンパク質への結合親和性は、Francis, G.L., et al.(1992 J. Mol Endocrinol. 8:213-223)及びSzabo, L. et al.(1988, Biochem. Biophys. Res. Commun. 151:207-214)に記載されているように、精製IGF−1結合タンパク質の混合物又はラットL6筋芽細胞馴化培地(IGF−1結合タンパク質の天然生成混合物)を用いて標識IGF−1(例えばI−125−IGF−1)に対する競合結合アッセイにより測定することができる。好ましくは、L6筋芽細胞馴化培地中での可溶性IGF−1結合タンパク質への結合に対する標識野生型IGF−1との競合結合アッセイにおけるバリアントIGF−1のIC50は、10nM超、より好ましくは100nM超である。
【0109】
好ましくは、可溶性IGF−1結合タンパク質への親和性が低下したバリアントIGF−1は、野生型IGF−1に近いIGF−1受容体への親和性を有する(例えば野生型IGF−1の30倍未満、より好ましくは野生型IGF−1の10倍未満)。具体的な実施形態では、(例えばMCF−7細胞上の)IGF−1受容体への結合に対する標識野生型IGF−1との競合結合アッセイにおけるバリアントIGF−1のIC50は、50nM未満、より好ましくは10nM未満、更により好ましくは5nM未満、更により好ましくは3nM未満)である。このアッセイは、Ross, M. et al.(1989, Biochem. J. 258:267-272)及びFrancis, G.L., et al.(1992, J. Mol. Endocrinol. 8:213-223)に記載されている。
【0110】
好ましくは、ポリペプチド及び/又はポリペプチド−白金コンジュゲートは、癌細胞に幾分特異的な標的受容体又は標的分子へのKが10μM未満、1μM未満、100nM未満、50nM未満、20nM未満、10nM未満、5nM未満、2nM未満、又は1nM未満である。
【0111】
ほとんどのサイトカインは中性水溶液中で極度に可溶性ではない。したがって、可溶性を増大させるために、これらを血清アルブミンの全体又は一部等のより可溶性の高い配列との融合タンパク質として発現させてもよい。したがって、いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、サイトカインの全体若しくは一部又は別のポリペプチド配列の全体若しくは一部を含む融合タンパク質である。
【0112】
EGF前駆体:
MNSDSECPLS HDGYCLHDGV CMYIEALDKY ACNCVVGYIG ERCQYRDLKW WELR(配列番号1)
【0113】
TGFα前駆体
MVPSAGQLAL FALGIVLAAC QALENSTSPL SADPPVAAAV VSHFNDCPDS HTQFCFHGTC RFLVQEDKPA CVCHSGYVGA RCEHADLLAV VAASQKKQAI TALVVVSIVA LAVLIITCVL IHCCQVRKHC EWCRALICRH EKPSALLKGR TACCHSETVV(配列番号2)
【0114】
アンフィレギュリン前駆体:
MRAPLLPPAP VVLSLLILGS GHYAAGLDLN DTYSGKREPF SGDHSADGFE VTSRSEMSSG SEISPVSEMP SSSEPSSGAD YDYSEEYDNE PQIPGYIVDD SVRVEQVVKP PQNKTESENT SDKPKRKKKG GKNGKNRRNR KKKNPCNAEF QNFCIHGECK YIEHLEAVTC KCQQEYFGER CGEKSMKTHS MIDSSLSKIA LAAIAAFMSA VILTAVAVIT VQLRRQYVRK YEGEAEERKK LRQENGNVHA IA(配列番号3)
【0115】
HD−EGF前駆体
MKLLPSVVLK LLLAAVLSAL VTGESLEQLR RGLAAGTSNP DPSTGSTDQL LRLGGGRDRK VRDLQEADLD LLRVTLSSKP QALATPSKEE HGKRKKKGKG LGKKRDPCLR KYKDFCIHGE CKYVKELRAP SCICHPGYHG ERCHGLSLPV ENRLYTYDHT TILAVVAVVL SSVCLLVIVG LLMFRYHRRG GYDVENEEKV KLGMTNSH(配列番号4)
【0116】
ベータセルリン前駆体:
MDRAARCSGA SSLPLLLALA LGLVILHCVV ADGNSTRSPE TNGLLCGDPE ENCAATTTQS KRKGHFSRCP KQYKHYCIKG RCRFVVAEQT PSCVCDEGYI GARCERVDLF YLRGDRGQIL VICLIAVMVV FIILVIGVCT CCHPLRKRRK RKKKEEEMET LGKDITPINE DIEETNIA(配列番号5)
【0117】
IGF−1:
GPETLCGAELVDALQFVCGDRGFYFNKPTGYGSSSRRAPQT GIVDECCFRSCDLRRLEMYCAPLKPAKSA(配列番号6)
【0118】
配列番号7
SFYSCLESLVNGPAEKSRGQWDGCRKK(配列番号7)
【0119】
配列番号8
VCGDRGFYFN KPTGYGSSSR RAPQTGIVDE CCFRSCDLRR LEMYCAPLKP AKSA(配列番号8)
【0120】
Long−IGF−1
MFPAMPLSSL FVNGPETLCG AELVDALQFV CGDRGFYFNK PTGYGSSSRR APQTGIVDEC CFRSCDLRRL EMYCAPLKPA KSA(配列番号9)
【0121】
Long−Gly3−IGF1
MFPAMPLSSL FVNGPGTLCG AELVDALQFV CGDRGFYFNK PTGYGSSSRR APQTGIVDEC CFRSCDLRRL EMYCAPLKPA KSA(配列番号10)
【0122】
R3−IGF1
GPRTLCGAEL VDALQFVCGD RGFYFNKPTG YGSSSRRAPQ TGIVDECCFR SCDLRRLEMY CAPLKPAKSA(配列番号11)
【0123】
Des(1−3)−IGF1
TLCGAELVDA LQFVCGDRGF YFNKPTGYGS SSRRAPQTGI VDECCFRSCD LRRLEMYCAP LKPAKSA(配列番号12)
【0124】
Long−R3−IGF1:
MFPAMPLSSL FVNGPRTLCG AELVDALQFV CGDRGFYFNK PTGYGSSSRR APQTGIVDEC CFRSCDLRRL EMYCAPLKPA KSA(配列番号13)
【0125】
インスリン−IGF1ハイブリッド
FVNQHLCGSHLVEALYL VCGDRGFYFN KPTGYGSSSR RAPQTGIVDE CCFRSCDLRR LEMYCAPLKP AKSA(配列番号14)
【実施例1】
【0126】
ヨード白金沈殿の形成を避けるために全ての手順を暗黒下又は薄明りの中で行う。
【0127】
<KPtIの形成>
5g(12mmol)のKPtCLの溶液をKI(12g、72mmol)水溶液18mlで処理し、70℃に加熱して冷ます(0.5時間)。生成物のKPtIをろ過する。
【0128】
<シス(NHPtIの形成>
ろ過したKPtIの溶液を12〜13mlの2.0M NHで処理する。30分後、生成物のシス(NHPtIをろ過し、冷水で洗浄し、デシケーター中で乾燥させる。
【0129】
<シス(NHPt(CH(COO))の形成>
シス(NHPtIを2モル当量の硝酸銀と水溶液中で一晩撹拌する。次いで、AgIをろ過して取り除く。ろ液には生成物であるシス−[(NHPt(OH](NOが含まれる。
【0130】
シス−[(NHPt(OH](NOを1モル当量のKCH(COO)と混合する。この溶液を24時間置き、その後、真空下で蒸発させて乾燥させる。生成物は錯体11である。
【0131】
【化26】

【0132】
この生成物混合物には硝酸カリウムも含まれる。
【0133】
<タンパク質コンジュゲート化>
白金錯体11(30μモル)をインスリン(2μモル)と共に3.4mlの20mMリン酸ナトリウム(pH7.4、6.5M尿素)中に溶解させる。架橋剤の1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)(300μモル)を新たに0.6mlのバッファーに溶解させ、タンパク質−錯体11溶液に添加する。この溶液を室温で2時間反応させ、その後、透析バッグ(カットオフ3,500m.w.)に入れる。溶液を、20mMリン酸ナトリウム(pH7.4、6.5M尿素)に対して3時間透析し、その後、2mMのNaOHに対して一晩透析する。
【0134】
この生成物は、インスリンのアミノ基と錯体11のフリーのカルボキシル基の間の直接アミド結合によりインスリン1個当たり約3個の錯体11がコンジュゲートしたインスリン−白金コンジュゲートである。
【0135】
インスリンは尿素のない中性pHでは溶解性が低く、尿素はより高い濃度の可溶性インスリンを可能にするので、透析バッファーは尿素を含む。同様に、インスリンは中性pHよりも2mMのNaOH中で溶解性が高いため、生成物を2mMのNaOHに対して透析する。尿素がPtのリガンドとして競合することが分かった場合には透析バッファーから尿素を省いてもよいが、インスリンの可溶性を維持するために反応混合物の体積を増やすべきである(比例して全成分の濃度が低くなる)。同様に、2mMのNaOHが白金錯体に悪影響を与えることが分かった場合、可溶性を維持するためにコンジュゲートの濃度をより低くして20mMのリン酸ナトリウム(pH7.4)に対して生成物を透析してもよい。
【実施例2】
【0136】
本実施例では、ジカルボキシラート二座リガンドを最初にタンパク質にコンジュゲートさせ、その後、この修飾タンパク質を白金錯体に配位させて、実施例1と同じインスリン−白金コンジュゲートを形成する。
【0137】
CH(COO)Na(30μモル)をインスリン(2μモル)と共に3.4mlの20mMリン酸ナトリウム(pH7.4、6.5M尿素)に溶解させる。架橋剤の1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)(300μモル)を新たに0.6mlのバッファーに溶解させ、インスリン溶液に添加する。この溶液を室温で2時間反応させ、その後、透析バッグ(カットオフ3,500m.w.)に入れる。溶液を20mMリン酸ナトリウム(pH7.4、6.5M尿素)に対して3時間透析し、その後、2mMのNaOHに対して一晩透析する。この生成物は、全てのアミノ基が−NHCOCH(COO)Naを形成するように修飾されたインスリンである。これにより、タンパク質のアミノ末端及び各リジン側鎖に二座ジカルボキシラート配位基(ligating group)が生じる。
【0138】
<インスリン−白金コンジュゲートの形成>
修飾されたインスリンを実施例1と同様に調製した4モル当量のシス−[(NHPt(OH](NOと混合する。このジカルボキシラートが水リガンドに取って代わり、コンジュゲート12が形成される。
【0139】
【化27】

【実施例3】
【0140】
本実施例では、錯体13を作製し、インスリンにコンジュゲートさせる。
【0141】
【化28】

【0142】
PtI(12mmol)を実施例1と同様に形成し、その後、12〜13mlの2.0Mグリシンと混合する。30分後、生成物のシス−(COOHCHNHPtI沈殿物をろ過し、冷水で洗浄し、乾燥させる。
【0143】
シス−(COOHCHNHPtIを2モル当量の硝酸銀と一晩撹拌する。沈殿したAgIをろ過して取り除く。ろ液にはシス−[(COOHCHNH)2Pt(OH](NOが含まれる。
【0144】
シス−[(COOHCHNH)2Pt(OH](NOを1モル当量のシュウ酸ナトリウムと混合する。この溶液を24時間置き、その後、真空下で蒸発させて乾燥させる。生成物は錯体13である。生成物混合物には硝酸カリウムも含まれる。
【0145】
インスリンとのコンジュゲート化を実施例1と同様に行う。この生成物は、インスリン1モル当たり約3個の錯体13を有するコンジュゲート14である。
【0146】
【化29】

【実施例4】
【0147】
本実施例では、リジン残基及びN末端の第一級アミノ基を白金へのリガンドとして用い、白金をインスリンと錯体化する。KPtIをインスリン及びアンモニアと3KPtI:1インスリン:3NHのモル比でインキュベートする。混合物を中性pHの水溶液中で一晩撹拌する。インスリンには3個のアミノ基がある(1個のリジン及び成熟インスリンの2個のポリペプチドに対する2個のアミノ末端)ので、インスリン1個当たり3個のPtが錯体化され、各Ptは、平均して、2個のIに加えてインスリンの1個のアミノ基及び1個のNHによって錯体化される。
【0148】
次いで、この錯体を、Pt1モル当たり2モル当量の硝酸銀と一晩撹拌する。AgIをろ過して取り除く。ろ液を1モル当量のシュウ酸カリウムと混合し、一晩置く。生成物はコンジュゲート15である。
【0149】
【化30】

【実施例5】
【0150】
実施例1と同様に調製したKPtIを1モル当量のエチレンジアミン−N,N’−ジ酢酸(EDDA)で処理する。EDDAを有する白金錯体をろ過し、冷水で洗浄する。次いで、2モル当量の硝酸銀と水溶液中で一晩撹拌する。次いで、AgIをろ過して取り除く。ろ液にはEDDA−Pt(OH(NOが含まれる。EDDA−Pt(OH(NOを1モル当量のシュウ酸カリウムと混合し、24時間置き、その後、真空下で蒸発させて乾燥させる。生成物は錯体16である。
【0151】
【化31】

【0152】
実施例1と同様に、インスリンのアミノ基とアミド結合を形成する錯体16のフリーのカルボキシルを介して、錯体16をインスリンにコンジュゲートさせて、コンジュゲート17を形成する。
【0153】
【化32】

【実施例6】
【0154】
本実施例では、実施例2でCH(COOH)をインスリンにコンジュゲートさせたのと同様な手順で最初にEDDAをインスリンにコンジュゲートさせることでコンジュゲート17を調製する。これによりコンジュゲート18が生成する。
【0155】
【化33】

【0156】
次いで、このコンジュゲートを実施例5と同様にKPtIと反応させ、その後、実施例5と同様に硝酸銀及びシュウ酸カリウムと反応させて、Ptが配位したコンジュゲート17を形成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I又はIIで表される白金錯体:
【化1】


式I中、
は、H又は(C〜C)アルキルであり;
は、COOH、NX、SH、HOOC−(C〜C10)アルキル、XN−(C〜C10)アルキル、HS−(C〜C10)アルキル、−CHO、OHC−(C〜C10)アルキル、又は(C〜C)アルキル−C(O)C(O)−(C〜C)アルキルであり;
、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、H、(C〜C)アルキルであり、R及びRは一緒に(C〜C10)アルキルを形成してもよく;
式II中
及びLは、Cl、ギ酸イオン、炭酸水素イオン、NX、(C〜C10)アルキル−NX、及び(C〜C10)アルキル−COOから選択されるリガンドであり、L及びLは一緒にOOC−COO、カルボキシ(C〜C10)アルキル−カルボキシ、XN−(C〜C10)アルキル−NX、又はXN−(C〜C10)アルキル−カルボキシを形成してもよく、
、R10、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立して、H、(C〜C10)アルキル、XN−(C〜C10)アルキル、HOOC−(C〜C10)アルキル、HS−(C〜C10)アルキル、−CHO、OHC−(C〜C10)アルキル、又は(C〜C)アルキル−C(O)C(O)−(C〜C)アルキルであり;R及びR10は一緒に(C〜C10)アルキル、HOOC−(C〜C10)アルキル、XN−(C〜C10)アルキル、HS−(C〜C10)アルキル、OHC−(C〜C10)アルキル、又は(C〜C)アルキル−C(O)C(O)−(C〜C)アルキルを形成してもよく;
、R、R、及びR10の少なくとも1つは、HOOC−(C〜C10)アルキルXN−(C〜C10)アルキル、HS−(C〜C10)アルキル、−CHO、OHC−(C〜C10)アルキル、又は(C〜C)アルキル−C(O)C(O)−(C〜C)アルキルであり;
はR13であってもよく、LはR14であってもよく;
各Xは、独立して、H又は(C〜C10)アルキルであり;
各アルキルは、飽和又は不飽和のいずれであってもよく、直鎖、分枝、又は環状のいずれであってもよく、−NH−、−O−、−S−、又は=N−が割り込んでいてもよく、OH、ハロ、又はオキソで置換されていてもよい。
【請求項2】
前記錯体が式IIで表されるものであり、R11及びR12がそれぞれHであり、R及びR10が一緒に、カルボキシ、アミノ、メルカプト、カルボキシ(C〜C)アルキル、アミノ(C〜C)アルキル、又はメルカプト(C〜C)アルキルで置換されていてもよい−(C〜C)アルキル−を形成し;R13及びR14が、独立して、H、カルボキシ(C〜C)アルキル、アミノ(C〜C)アルキル、又はメルカプト(C〜C)アルキルである、請求項1に記載の白金錯体。
【請求項3】
前記錯体が式IIで表されるものであり、R及びR10が一緒に、カルボキシ又はカルボキシ(C〜C)アルキルで置換されていてもよい−(C〜C)アルキル−を形成し;R11〜R14が、それぞれ独立して、H、(C〜C)アルキル、又はカルボキシ(C〜C)アルキルであり;R〜R14の少なくとも1つがカルボキシ(C〜C)アルキルである、請求項1に記載の白金錯体。
【請求項4】
前記錯体が式Iで表されるものであり、R及びRが一緒に(C〜C)アルキルを形成する、請求項1に記載の白金錯体。
【請求項5】
式III又は式IVで表されるポリペプチド−白金コンジュゲート:
【化2】


式III中、
は、H又は(C〜C)アルキルであり;
は、1〜100原子のリンカー部分であり;
、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、H、(C〜C)アルキルであり、R及びRは一緒に(C〜C10)アルキルを形成してもよく;
式IV中、
及びLは、Cl、ギ酸イオン、炭酸水素イオン、NX、(C〜C10)アルキル−NX、及び(C〜C10)アルキル−COOから選択されるリガンドであり、L及びLは一緒にCOO−COO、カルボキシ−(C〜C10)アルキル−カルボキシ、XN−(C〜C10)アルキル−NX、又はXN−(C〜C10)アルキル−カルボキシを形成してもよく;
は、1〜100原子のリンカー部分であり;
10、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立して、H、(C〜C10)アルキル、XN−(C〜C10)アルキル、HOOC−(C〜C10)アルキル、又はHS−(C〜C10)アルキルであり;はR11及びR10は一緒に(C〜C10)アルキル、HOOC−(C〜C10)アルキル、XN−(C〜C10)アルキル、又はHS−(C〜C10)アルキルを形成してもよく;R及びR10は一緒に1〜100原子のリンカー部分を形成してもよく;
はR13であってもよく、LはR14であってもよく;
各Xは、独立して、H又は(C〜C10)アルキルであり;
各アルキルは、飽和又は不飽和のいずれであってもよく、直鎖、分枝、又は環状のいずれであってもよく、−NH−、−O−、−S−、又は=N−が割り込んでいてもよく、OH、ハロ、又はオキソで置換されていてもよい。
【請求項6】
前記ポリペプチドが、インスリン受容体、IGF−1受容体、又はEGF受容体のリガンドである、請求項5に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
前記R又はRのリンカー部分が、前記タンパク質又はペプチドの残基であるアミン又はカルボキシ基へのアミド結合連結の−C(=O)−又は−NH−部分を含む、請求項5に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
前記ポリペプチドが、EGF受容体のリガンドであり、前記リガンドが、配列番号1の残基2〜54、配列番号2の残基40〜89、配列番号3の残基101〜184、配列番号4の残基63〜148、配列番号5の残基32〜111、及びE4Tからなる群から選択されるポリペプチド配列を含む、請求項6に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
前記ポリペプチドが、IGF−1受容体のリガンドであり、前記リガンドが、配列番号8〜14からなる群から選択されるポリペプチド配列を含む、請求項6に記載のコンジュゲート。
【請求項10】
請求項1に記載の白金錯体を形成する工程;及び
前記請求項1に記載の白金錯体をリンカー反応物及びポリペプチドと反応させて請求項5に記載のポリペプチド−白金コンジュゲートを形成する工程
を含む、ポリペプチド−白金コンジュゲートの製造方法。
【請求項11】
ポリペプチド−白金コンジュゲートの製造方法であって、
白金錯体を式VIで表されるポリペプチド−二座リガンドコンジュゲート
【化3】


と反応させて式VIIで表されるポリペプチド−白金コンジュゲート
【化4】


(式中、L〜Lはそれぞれリガンドである)を形成する工程であって、前記式VIIで表されるポリペプチド−白金コンジュゲートが請求項5に記載のポリペプチド−白金コンジュゲートである工程
を含む、方法。
【請求項12】
式Vで表される白金錯体を式VIで表されるポリペプチド−二座リガンドコンジュゲート
【化5】


と反応させて式VIIで表されるポリペプチド−白金コンジュゲート
【化6】


(式中、L〜Lはそれぞれリガンドである)を形成する工程であって、前記式VIIで表されるポリペプチド白金コンジュゲートが請求項21に記載のポリペプチド−白金コンジュゲートである工程
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記式VIで表されるポリペプチド−二座リガンドコンジュゲートが式VIIIで表されるコンジュゲートである、請求項11に記載の方法:
【化7】


式中、Rは、H又は(C〜C)アルキルであり、Rは、1〜100原子のリンカー部分であり;各アルキルは、飽和又は不飽和のいずれであってもよく、直鎖、分枝、又は環状のいずれであってもよく、−NH−、−O−、−S−、又は=N−が割り込んでいてもよく、OH、ハロ、又はオキソで置換されていてもよい。
【請求項14】
前記式VIで表されるポリペプチド−二座リガンドコンジュゲートが式IXで表されるコンジュゲートである、請求項11に記載の方法:
【化8】


式中、R21は、(C〜C)アルキルで置換されていてもよい(C〜C)アルキルであり、各Xは、独立して、H又は(C〜C10)アルキルであり;
各アルキルは、飽和又は不飽和のいずれであってもよく、直鎖、分枝、又は環状のいずれであってもよく、−NH−、−O−、−S−、又は=N−が割り込んでいてもよく、OH、ハロ、又はオキソで置換されていてもよい。
【請求項15】
ポリペプチド−白金コンジュゲートの製造方法であって、
白金錯体を式VIbで表されるポリペプチド−リガンドコンジュゲート
【化9】


と反応させて式VIIbで表されるポリペプチド−白金コンジュゲート
【化10】


(式中、L〜Lはそれぞれリガンドである。)を形成する工程であって、前記式VIIbで表されるポリペプチド−白金コンジュゲートが請求項5に記載のポリペプチド−白金コンジュゲートである工程
を含む、方法。
【請求項16】
式Xで表されるポリペプチド−白金錯体:
【化11】


式中、Lは、Ptのリガンドであるポリペプチドのアミノ、カルボキシ、又はスルフヒドリル基であり、L〜Lはリガンドである。
【請求項17】
癌に罹患している哺乳動物に請求項5に記載のポリペプチド−白金コンジュゲートを投与すること
を含む、癌の処置方法。

【公表番号】特表2012−516330(P2012−516330A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−547980(P2011−547980)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/000250
【国際公開番号】WO2010/087976
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(506137527)アイジーエフ オンコロジー エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】