説明

抗癌剤としての4‐(テトラゾール‐5‐イル)‐キナゾリン誘導体

本発明は、抗癌活性などの抗増殖性活性を持ち、従って人体または動物の身体を処置する方法において有用な、式Iの置換された4−(テトラゾール‐5‐イル)‐キナゾリン誘導体、またはその薬学的に許容される塩に関する。本発明はまた、置換された4−(テトラゾール‐5‐イル)‐キナゾリン誘導体を製造する方法、本化合物を含有する薬学的組成物、およびヒトなどの温血動物において抗増殖性効果をもたらすための医薬の製造におけるその使用、にも関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、抗癌活性などの抗増殖性活性を持ち、従って人体または動物の身体を処置する方法において有用な、式Iの置換された4‐(テトラゾール‐5‐イル)キナゾリン誘導体、またはその薬学的に許容される塩:

に関する。更に、本発明はまた、置換された4‐(テトラゾール‐5‐イル)‐キナゾリン誘導体を製造する方法、本化合物を含有する薬学的組成物、およびヒトなどの温血動物において抗増殖性効果をもたらすための医薬の製造におけるその使用、にも関する。
【背景技術】
【0002】
乾癬や癌などの細胞増殖性疾患に対する従来の治療法の多くは、DNA合成を阻害する化合物を利用する。そのような化合物は、一般的に細胞に対して毒性があるものの、腫瘍細胞などの急速に分裂する細胞に対するそれらの毒性の作用は、有益となりうる。DNA合成の阻害以外の機構で作用する抗増殖剤への別のアプローチは、作用の選択性の強化を示す可能性がある。
【0003】
細胞は、そのDNAの一部が形質転換して癌遺伝子、即ち、活性化されると悪性腫瘍細胞の形成につながる遺伝子となることにより、癌性となりうることが近年見いだされた(Bradshaw, Mutagenesis, 1986, 1, 91)。このような癌遺伝子の幾つかは、増殖因子のレセプターであるペプチドの生産を引き起こす。増殖因子レセプター複合体は、その後、細胞増殖の増加につながる。例えば、幾つかの癌遺伝子がチロシンキナーゼ酵素をコードし、特定の増殖因子受容体もチロシンキナーゼ酵素であることが知られている(Yarden et al., Ann. Rev. Biochem, 1988, 57, 443;Larsen et al. Ann. Reports in Med. Chem. 1989, Chpt. 13)。
【0004】
異常なシグナル伝達は、発癌の顕著な特徴である。細胞表面の受容体、そのリガンド、およびタンパク質チロシンキナーゼは、増殖シグナル伝達経路の重要な要素であり、幅広い種類のヒト腫瘍において、これらは変異または上方制御されている。特に、上皮成長因子受容体(EGFR)経路は、細胞分裂、細胞接着および遊走、血管新生、および抗アポトーシス、等の腫瘍促進現象に関与しているとされている。上皮癌全体の三分の一に見られるEGFRの高発現は、組織学的な型によって20%から80%まで様々であり、ホルモン療法、細胞障害性の薬剤、および放射線に対する抵抗性と関連している。
【0005】
EGFRは、EGFR(HER-1、erbB1)、HER-2/neu(erbB2)、HER-3(erbB3)、およびHER-4(erbB4)を含む、構造的に関連する受容体のerbBファミリーに属する。これらの膜貫通型糖タンパク質は、基質結合のための外部リガンド結合ドメイン、細胞質チロシンキナーゼ(TK)ドメイン、およびSrcホモロジー2(SH2)ドメインを有する。EGF、形質転換成長因子‐a、およびアンフィレギュリンは、EGFRに独占的に結合する一方、ヘパリン結合EGF、ベータセルリン、およびエピレギュリンは、EGFRおよびHER-4と結合し、ヘレギュリンおよびニューレギュリンはHER-3およびHER-4と結合する。
【0006】
癌におけるEGFRの中心的役割は、EGFR拮抗薬の開発に向けた積極的な取り組みを生み出した。臨床試験において最も進捗している二つの戦略は、リガンド結合および受容体の活性化を遮断する受容体モノクローナル抗体、およびEGFR TKの低分子阻害剤である。第一世代低分子阻害剤は、ATP類似物として作用し、TK触媒部位に可逆的に競合する。現在開発中の最近の阻害剤は、非可逆的な拮抗作用を生じる、および/または、複数のerbB受容体を標的とする。
【0007】
受容体チロシンキナーゼは、生化学的シグナルの伝達において重要であり、細胞複製を開始させる。これらは細胞膜の内外にまたがる大きな酵素であり、上皮成長因子(EGF)等の成長因子のための細胞外結合ドメイン、およびタンパク質内のアミノ酸チロシンをリン酸化するキナーゼとして作用する細胞内部分を有し、その結果、細胞増殖に影響を及ぼす。異なる受容体チロシンキナーゼに結合する成長因子のファミリーに基づいて、様々なクラスの受容体チロシンキナーゼが公知である(Wilks, Advances in Cancer Research, 1993, 60, 43-73)。分類としては、EGF、TGFα、NEU、erbB、Xmrk、HER、およびlet23受容体、等の受容体チロシンキナーゼのEGFファミリーを含むクラスI受容体チロシンキナーゼ;インスリン、IGFI、およびインスリン関連受容体(IRR)、等の受容体チロシンキナーゼのインスリンファミリーを含むクラスII受容体チロシンキナーゼ;およびPDGFα、PDGFβ、およびコロニー刺激因子1(CDF1)受容体等の受容体チロシンキナーゼの血小板由来成長因子(PDGF)ファミリーを含むクラスIII受容体チロシンキナーゼが含まれる。
【0008】
受容体チロシンキナーゼのEGFファミリー等のクラスIキナーゼは、乳癌(Sainsbury e.t al., Brit. J. Cancer, 1988, 58, 458、Guerin et al., Oncogene Res., 1988, 3, 21、およびKlijn et al., Breast Cancer Res. Treat., 1994, 29, 73)、腺癌を含む非小細胞肺癌(NSCLCs)(Cerny et., Brit. J. Cancer, 1986, 54, 265、Reubi et al., Int. J. Cancer, 1990, 45, 269、およびRusch et al., Cancer Research, 1993, 53, 2379)、および肺扁平上皮細胞癌(Hendler et al., Cancer Cells, 1989, 7, 347)、膀胱癌(Neal et al., Lancet, 1985, 366)、食道癌(Mukaida et al., Cancer, 1991, 68, 142)、結腸、直腸、または胃癌等の胃腸癌(Bolen et al., Oncogene Res., 1987, 1, 149)、前立腺癌(Visakorpi et al., Histochem. J., 1992, 24, 481)、白血病(Konaka et al., Cell, 1984, 31, 1035)、および卵巣、気管支、または膵臓癌(欧州特許出願第0400586号)などの一般的なヒト癌に高頻度で存在することが知られている。ヒト腫瘍組織に対して、受容体チロシンキナーゼのEGFファミリーにつて検査を更に行うにつれて、その広範にわたる保有率が甲状腺癌、子宮癌、等の他の癌においても確立されることが期待される。EGF型チロシンキナーゼ活性は、正常細胞ではめったに検出されないが、その一方で悪性細胞においては、より頻繁に検出されることも知られている(Hunter, Cell., 1987, 50, 823)。チロシンキナーゼ活性を持つEGF受容体が、脳、肺扁平上皮細胞、膀胱、胃、乳、頭頸部、食道、婦人科、および甲状腺の腫瘍、等の多くのヒト癌において高発現していることが最近明らかにされている(W J Gullick, Brit. Med. Bull., 1991, 47, 87)。
【0009】
従って、受容体チロシンキナーゼの阻害剤は、哺乳類癌細胞の増殖の選択的阻害剤として価値があるはずであることが認識されている(Yaish et al. Science, 1988, 242, 933)。この見解に対する支持を示す実証は、EGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるエルブスタチンが、胸腺欠損ヌードマウスに移植されたEGF受容体チロシンキナーゼを発現するヒト乳癌において特異的に増殖を減弱させるが、その一方で、EGF受容体チロシンキナーゼを発現しない他の細胞腫の増殖に対しては効果を示さないことである(Toi et al., Eur. J. Cancer Clin. Oncol., 1990, 26, 722)。スチレンの様々な誘導体もチロシンキナーゼ阻害特性を持つことが記述されており(欧州特許出願第0211363号、第0304493号、および第0322738号)、これらは抗腫瘍剤として有用であると言われている。二つのこの様なEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるスチレン誘導体のインビボ阻害効果が、ヌードマウスに接種したヒト扁平上皮細胞癌の増殖に対して示された(Yoneda et al., Cancer Research, 1991, 51, 4430)。様々な公知のチロシンキナーゼ阻害剤がT. R. Burke Jr.著の最近の総説(Drugs of the Future, 1992, 17, 119)に開示されている。
【0010】
4位にアニリノ置換基を有する特定のキナゾリン誘導体は、受容体チロシンキナーゼ阻害活性を持つことが特許出願第EP0520722号、第EP0566226号、および第EP0635498号より知られている。更に、4位にヘテロアリールアミノ置換基を有する特定のキナゾリン誘導体も、受容体チロシンキナーゼ阻害活性を持つことが特許出願第EP0602851号より知られている。
【0011】
更に、特定のアリールおよびヘテロアリール化合物が、EGFおよび/またはPDGF受容体チロシンキナーゼを阻害することが特許出願第WO92/20642号より知られている。特定のキナゾリン誘導体がここに開示されているが、4‐アニリノキナゾリン誘導体については言及されていない。
【0012】
4‐アニリノキナゾリン誘導体のインビトロにおける抗増殖効果は、Fry et al., Science, 1994, 265, 1093により開示されている。化合物4‐(3’‐ブロモアニリノ)‐6,7‐ジメトキシキナゾリンが、EGF受容体チロシンキナーゼの極めて強力な阻害剤であることが記述されている。
【0013】
更に、EGF型受容体チロシンキナーゼの阻害剤は、乾癬など、その他の過剰な細胞増殖による疾患の治療に有用となることが期待される。AstraZenecaは、経口で有効であり、選択的な上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TK1)である式IIのゲフィチニブ(US5770599):

を開発し、発売した。これは、ゲフィチニブの恩恵を受けているか過去に恩恵を受け、白金を用いた化学療法およびドセタキセル化学療法の両方が失敗した後に、局所的に進行しているかまたは転移性の非小細胞肺癌患者の継続的治療のために単剤療法として処方される。商標名はIressaである。
【0014】
OSI Pharmaceuticals社は、経口で有効であり、ATP競合性のEGFR TK低分子阻害剤である式IIIのエルロチニブ(US 5747498):

を開発し、発売した。現在は、非小細胞肺癌(NSCLC)および膵臓癌疾患の標準的な治療として利用されている。その活性は、標準的な細胞毒性抗生物質抗癌剤と組み合わせた場合に増強することが期待される。商標名はTarcevaである。
【0015】
更に、EGFRおよびerbB2に対する抑制抗体(それぞれ、erbitux(登録商標)(c-255/セツキシマブ)およびherceptin(登録商標)(トラスツマブ))は、選択された固形腫瘍の治療に臨床において有益であることが証明されている(Mendelsohn et al, 2000, 5 Oncogene, 19, 6550-6565に概説されている)。
【0016】
最近、非小細胞肺癌(NSCLCs)の特定のサブセットで、EGF受容体の細胞内触媒領域のATP結合ポケット内に変異が発見されている。受容体中の変異の存在は、ゲフィチニブ等のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(Lynch et al, N Engl J Med 2004; 350: 2129-2139、Paez et al, Science 2004; 304: 1497-1500)に対する応答と相関すると見られるが、ゲフィチニブおよびエルロチニブ等の化合物の臨床的利点は、EGFR変異のみを介してではありそうにないことが明らかになってきている。リガンド刺激は、変異型受容体において、野生型受容体のものとは異なるリン酸化パターンをもたらすことが示されており、変異EGF受容体は選択的に生存シグナルを伝達し、NSCLCはこれに依存的になると考えられている。ゲフィチニブ等の化合物によるこれらのシグナルの抑制は、その様な薬物の効力に寄与しうる(Sordella et al. Science 2004; 305: 1163-1167)。同様に、最近、erbB2キナーゼ領域中の変異が、NSCLC、神経膠芽腫、胃および卵巣の腫瘍、等の特定の原発腫瘍において発見されている(Stephens et al., Nature 2004; 431; 525-526)。従って、野生型および変異型受容体の両方におけるEGFおよび/またはerbB2チロシンキナーゼの阻害は、抗癌作用をもたらすことが期待される重要な標的である。
【0017】
erbB型受容体チロシンキナーゼに属するものの増幅および/または活性は検出されており、乾癬(Ben-Bassat, Curr. Pharm. Pes., 2000, 6, 933、Elder et al., Science, 1989, 243, 811)、良性前立腺肥大症(BPH)(Kumar et al., Int. Urol. Nephrol., 2000, 32, 73)、アテローム性動脈硬化症および再狭窄(Bokemeyer et al., Kidney Int., 2000, 58, 549)などの複数の非悪性の増殖性疾患に関与している。従って、erbB型受容体チロシンキナーゼの阻害剤は、これら、およびその他の過剰な細胞増殖の非悪性疾患の治療に有用となることが期待される。WO 96/09294、WO 96/15118、WO 96/16960、WO 96/30347、WO 96/33977、WO 96/33978、WO 96/33979、WO 96/33980、WO 96/33981、WO 97/03069、WO 97/13771、WO 97/30034、WO 97/30035、WO 97/38983、WO 98/02437、WO 98/02434、WO 98/02438、WO 98/13354、WO 99/35146、WO 01/21596、WO 01/55141、およびWO 02/18372はそれぞれ、4位にアニリノ置換基を有する特定のキナゾリン誘導体が受容体チロシンキナーゼ抑制活性を持つことを開示している。WO 99/35132は、特定の4‐(インダゾール‐5‐イルアミノ)キナゾリン誘導体を開示している。しかしながら、これらのキナゾリン誘導体は、いずれもキナゾリン環の5位に置換基を含むものではない。
【0018】
WO 01/94341は、5位に置換基を有する特定のキナゾリン誘導体が、c‐Src、c‐Yes、およびc‐Fyn等の非受容体チロシンキナーゼのSrcファミリーの阻害剤であることを開示している。インダゾリル基の窒素原子がアリールまたはヘテロアリール基を含む置換基で置換されている4‐(インダゾール‐5‐イルアミノ)キナゾリン誘導体については、WO 01/94341において開示されていない。
【0019】
WO 03/040108およびWO 03/040109は、それぞれ、5位に置換基を有する特定のキナゾリン誘導体が、チロシンキナーゼ阻害剤のerbBファミリー、特にEGFおよびerbB2受容体チロシンキナーゼの阻害剤、であることを開示している。また、WO 03/040108およびWO 03/040109は、それぞれ特定の4‐(インダゾール‐5‐イルアミノ)キナゾリン誘導体を開示している。開示されているキナゾリン誘導体は、いずれもキナゾリン環の5位にアシルアミノエトキシ基を含まない。
【0020】
US-2004/0048880は、特定の4‐アニリノキナゾリン誘導体、および腫瘍性疾患の治療におけるその使用を開示している。キナゾリン誘導体は、キナゾリン環の5位に置換基を含まない。WO 2004/46101は、特定の4‐(インダゾール‐5‐イルアミノ)キナゾリン誘導体、並びにEGFおよびerbB2受容体チロシンキナーゼの阻害剤としてのその利用を開示している。キナゾリン誘導体は、キナゾリン環の5位に置換基を含まない。
【0021】
WO 2004/093880およびWO 2005/051923は、それぞれ特定の4‐アニリノキナゾリン誘導体、およびerbB2受容体チロシンキナーゼの阻害剤としてのその使用を開示している。いずれの文献も4‐(インダゾール‐5‐イルアミノ)キナゾリン誘導体を開示していない。
【0022】
既知のerbBチロシンキナーゼ阻害剤、具体的には、選択的erbB2チロシンキナーゼ阻害剤である化合物と比較して改善された薬理学的性質と共に、良好なインビボ活性を有するさらなる化合物を見出すことが依然として要求されている。例えば、有利な、および/または改善された特性、例えば、限定されないが、(i)物理的性質;(ii)高バイオアベイラビリティーおよび/または有利な半減期および/または有利な分布容積量および/または高吸収などの好ましいDMPK性質;(iii)臨床的薬物−薬物相互作用(例えば、シトクロムP450酵素の阻害または誘導)の不都合を減少させる因子;および(iv)患者のQT間隔延長について不都合が少ない化合物、例えば、HERG検定において不活性または弱活性である化合物、等の特性を有する新規な化合物が要求されている。
【0023】
驚くべきことに、本発明者らは、本発明の厳選された置換された4‐(テトラゾール‐5‐イル)キナゾリン誘導体の群、またはその薬学的に許容される塩が、強力な抗腫瘍活性を持つことを発見した。
【0024】
このような方法は、本発明のキナゾリン誘導体またはその薬学的に許容される塩を調製するのに用いられた場合、本発明のもう一つの特徴として提供され、次の代表的な例によって詳しく説明される。必要な出発物質は、有機化学の標準的な手順によって得てもよい。このような出発物質の調製は、下記の非限定の実施例中に記載されている。或いは、必要な出発物質は、示されているものに類似した手順によって入手可能であり、それらは、有機化学者の通常の技術の範囲内である。
【発明の概要】
【0025】
発明の詳細な説明
本発明は、式Iの置換された4‐(テトラゾール‐5‐イル)キナゾリン誘導体:

に関するものであり、
式中、
nは1、2、または3であり、
Wは単結合、‐O‐、‐S‐、‐COR6、‐NH‐、‐SO‐、SO2‐、‐NR6CO‐、‐CONR6‐、‐SO2NR7‐、‐NR7SO2‐、または‐NR8‐(式中、R6、R7、およびR8はそれぞれ独立して、水素、C1‐C6アルキル、C3‐C6シクロアルキル、C2‐C5アルケニル、C2‐C5アルキニルを表す)より選択され、
または、R1はそれぞれR9であり、R9は独立して分岐C1‐C6アルキル、分岐C2‐C6アルケニル、または分岐C2‐C6アルキニルより選択され;
または、R1はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ヒドロキシルアミノ、カルボキシ、ニトロ、グアニジノ、ウレイド、シアノ、トリフルオロメチル、アジドからなる群より選択され;
または、R1はそれぞれ独立して、C1‐C6アルキル、C3‐C6シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、R3置換アリール、R3置換ヘテロシクリル、アリールC1‐C6アルコキシ、C3‐C6シクロアルコキシ、(C1‐C6)アルカノイルオキシ、R5‐アリールオキシ、C1‐C6アルコキシ C1‐C6アルキルオキシ、C1‐C6アルコキシ‐C3‐C6シクロアルキルオキシ、C1‐C6アルコキシ‐R5‐アリールオキシ、C1‐C6アルコキシ‐ヘテロシクリルオキシ、C1‐C6アルコキシ‐縮合-ヘテロシクリルオキシ、N‐モノ(C1‐C6)アルキルアミノ、N,N‐ジ(C1‐C6)アルキルアミノ、ホルムアミド、アミド、アセトアミド、C1‐C6‐アルコキシアミノ、ヒドラジノ、トリフルオロメトキシ、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、縮合アリール、縮合ヘテロアリール、および縮合ヘテロシクリルからなる群より選択され;ここでR3は、C1‐C6アルキル、C3‐C6シクロアルキル、アリール、およびアラルキルより選択され;R5は、独立して水素またはR4であり;かつここで、R4は、C1-C4アルキルであり;
または、R1はそれぞれ独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ヒドロキシルアミノ、カルボキシ、ニトロ、グアニジノ、ウレイド、シアノ、トルフルオロメチル、アジドで置換されたR9より選択され;ここで、R9は、R4、‐OR5、‐NR5R5、‐C(O)R6、‐NHOR4、‐OC(O)R5、P、および‐QR4からなる群より選択され;R6はR3、‐OR5、または‐NR5R5であり;Pは、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジノ、4‐R3‐ピペラジン‐1‐イル、イミダゾール‐1‐イル、4‐ピリドン‐1‐イル、‐(C1‐C4アルキレン)(CO2H)、フェノキシ、フェニル、フェニルスルホニル、C2‐C4アルケニル、および‐(C1‐C4アルキレン)C(O)NR5R5より選択され;かつQはS、SO、またはSO2であり;
または、R1はそれぞれ独立して、フタルイミド‐(C1‐C4)‐アルキルスホニルアミノ、ベンズアミド、ベンゼンスルホニルアミノ、3‐フェニルウレイド、2‐オキソピロリジン‐1‐イル、2,5‐ジオキソピロリジン‐1‐イル、およびR4‐(C2‐C4)-アルカノイルアミノより選択され、かつここで前記‐NHSO2 R4、フタルイミド‐(C1-C4)‐アルキルスルホニルアミノ、ベンズアミド、ベンゼンスルホニルアミノ、3‐フェニルウレイド、2‐オキソピロリジン‐1‐イル、2,5‐ジオキソピロリジン‐1‐イル、およびR4‐(C2‐C4)‐アルカノイルアミノR1基は、独立して、ハロ、C1-C4アルキル、シアノ、メタンスルホニル、およびC1-C4アルコキシより選択される、一つまたは二つの置換基で置換されていてもよく;
R2は、水素、またはC1‐C6アルキル、C3‐C6シクロアルキル、(C1‐C6)カルボニルオキシアルキル、R4‐アリール、(R11)mで置換されたR4‐アリールからなる群より選択され、ここで、m=1、2、または3であり、かつR11は独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロキシルアミノ、カルボキシ、ニトロ、グアニジノ、ウレイド、シアノ、トリフルオロメチル、アジド、またはR3(上記定義と同じ)、R4‐縮合アリール、(R10)mで置換されたR4‐縮合アリール、R4‐ヘテロシクリル、(R11)mで置換されたR4‐ヘテロシクリル、R4‐縮合ヘテロシクリル、(R11)mで置換されたR4‐縮合ヘテロシクリル、R4‐C1‐C6アルキルオキシ、(R11)mで置換されたR4‐C1‐C6アルキルオキシ、R4‐C3‐C6シクロアルキルオキシ、(R11)mで置換されたR4‐C3‐C6シクロアルキルオキシ、C1‐C6アルコキシ‐R5‐アリールオキシ、(R11)mで置換されたC1‐C6アルコキシ‐R5‐アリールオキシ、C1‐C6アルコキシ‐ヘテロ‐シクリルオキシ、(R11)mで置換されたC1‐C6アルコキシ‐ヘテロシクリルオキシ、C1‐C6アルコキシ縮合ヘテロシクリルオキシ、(R11)mで置換されたC1‐C6アルコキシ縮合ヘテロシクリルオキシ、N‐モノ(C1‐C6)アルキルアミノ、(R11)mで置換されたN‐モノ(C1‐C6)アルキルアミノ、N,N‐ジ(C1‐C6)アルキルアミノ、(R11)mで置換されたN,N‐ジ(C1‐C6)アルキルアミノ、ホルムアミド、アミド、アセトアミド、C1‐C6アルコキシアミノ、ヒドラジノ、トリフルオロメトキシ、C2‐C6アルケニル、(R11)mで置換されたC2‐C6アルケニル、C2‐C6アルキニル、(R11)mで置換されたC2‐C6アルキニルからなる群より選択される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
式Iの化合物およびその薬学的に許容される塩は、化学的に関連する化合物に適用できることが知られている任意の方法によって調製されてもよい。一般的に活性化合物は、前身である置換された4H‐キナゾリン‐4‐オンに由来する、適切な置換された4‐ハロキナゾリン化合物より産生されてもよい。本発明の活性化合物は、下記の合成スキームIに従って調製される。

R1、R2、R3、およびWは上記定義のとおりである。
ここで、Xはハロゲンまたはスルホニル脱離基である。
ここで、Yはハロゲンまたはスルホニル脱離基である。
【0027】
式Iの様々な化合物は下記のように調製される。
【0028】
(a)式Aの化合物を、ハロゲン化チオニル、三ハロゲン化リン、五ハロゲン化リン、三ハロゲン化ホスホリル等のハロゲン化剤で処理することにより式Bの4‐ハロ置換キナゾリン誘導体を得、式中、R1、W、およびnは上記定義のとおりである。この反応は、無溶媒で適切に行うこともできるし、塩化メチレン、二塩化エチレン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、等の溶媒を用いて実施してもよい。反応の温度は、25℃から150℃の間に保持され、ハロゲン化剤の還流温度であることが好ましい。

【0029】
(b)式Bの化合物を、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、または直鎖または分岐C1‐C6アルケン等の適した溶媒中、トリアルキルアミン(NR3)(ここで、R3は上記定義のとおり)にて処理することにより、置換された四級キナゾリニル‐4‐トリアルキルアミンハロゲン化物塩を得る。反応の温度は、25℃から150℃の間に保持され、室温条件が好ましい。

【0030】
(c)式Cの化合物を、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、または直鎖もしくは分岐C1‐C6アルケン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ホルムアミド、等の適した溶媒中、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム、シアン化銅、シアン化トリアルキルシリル、等のシアン化剤にて処理することにより、式Dの置換された4‐アミノキナゾリンを得、ここでR1およびnは上記定義のとおりである。反応の温度は、25℃から150℃の間に保持され、100℃〜125℃が好ましい。

【0031】
(d)式Dの化合物を、アジ化ナトリウム、トリアルキルシリルアジド、等のアジ化剤で処理することにより、式Eの化合物を得、ここでR1およびnは上記定義のとおりである。

【0032】
望ましくは、反応を、適した溶媒または希釈剤の存在下で実施し、その例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、等のアルカノール、酢酸エチル等のエステル溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、または四塩化炭素、等のハロゲン化溶媒、テトラヒドロフラン、1,4‐ジオキサン、等のエーテル溶媒、トルエン等の芳香族炭化水素溶媒、またはN,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド、N‐メチルピロリジン‐2‐オン、またはジメチルスルホキシド、等の双極性非プロトン溶媒が挙げられる。
【0033】
上記反応は、例えば10〜150℃の範囲内の温度で好都合に実施され、50〜120℃の範囲内が好ましい。
【0034】
(e)式Eの化合物を、アルカリ金属炭酸塩、水酸化物、金属水素化物、金属アルコキシド、テトラアルキルグアニジン、アルキルリチウム、LDA、等の塩基を用いて、式F(YおよびR2は上記定義のとおり)のアルキル化剤で処理する。使用される溶媒は、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、トルエン、等である。上記反応は、例えば10〜150℃の範囲内の温度で好都合に実施され、20〜80℃の範囲内が好ましい。

【0035】
(f)式G(およびその異性体G1)の化合物の混合物を、適した溶媒からの再結晶化、または調整用クロマトグラフィーにより精製し、必要とされる1H‐テトラゾリル誘導体を得る。

【0036】
酸素結合による6,7位の置換を有する式Iの化合物、およびその薬学的に許容される塩は、化学的に関連する化合物に適用できることが既知の任意の方法により調製されてもよい。一般的に活性化合物は、前身である置換された4H‐キナゾリン‐4‐オンに由来する、適切な置換された4‐クロロ‐6,7‐Oで保護されたキナゾリン化合物より産生されてもよい。式Iの活性化合物は、下記の合成スキームIIに従って調整される。

式中、R4およびR5は上記定義のとおりであり、Yはアシル、ベンジル、ベンゾイル、シリル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アラルキルスルホニル、等の適した保護基であり;Zはハロまたは適したスルホン含有脱離基である。
【0037】
O‐アルキル化の工程で使用される塩基は、アルカリ炭酸塩、水酸化アルカリ、金属アルコキシド、アルカリ水素化物、アルキルリチウム、テトラメチルグアニジン、等より選択される。
【0038】
(a)式H(または式H1のその互変異性体)の化合物を、ハロゲン化チオニル、三ハロゲン化リン、五ハロゲン化リン、三ハロゲン化ホスホリル等のハロゲン化剤で処理することにより式Bの4‐ハロ置換キナゾリン誘導体を得、式中、R4およびXは上記定義のとおりである。この反応は、無溶媒で適切に行うこともできるし、塩化メチレン、二塩化エチレン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、等の溶媒を用いて実施してもよい。反応の温度は、25℃〜150℃の間に保持され、ハロゲン化剤の還流温度であることが好ましい。

【0039】
(b)式Iの化合物を、トリアルキルアミン(NR3、式中、R3は上記定義のとおり)にて処理する。反応をトルエン、キシレン、シクロヘキサン、または直鎖または分岐C1‐C6アルケン等の適した溶媒中で実施することにより、置換されたキナゾリン‐4‐イル‐四級トリアルキルアミンハロゲン化物塩を得る。反応の温度は、25℃から150℃の間に保持され、室温条件下が好ましい。

【0040】
(c)式Jの化合物を、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、または直鎖もしくは分岐C1‐C6アルケン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ホルムアミド、等の適した溶媒中、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム、シアン化銅、シアン化トリアルキルシリル、等のシアン化剤にて処理することにより、式Kの置換された4‐シアノキナゾリンを得、ここでR3、R4、およびXは上記定義のとおりである。反応の温度は、25℃から150℃の間に保持され、100℃〜125℃が好ましい。

【0041】
(d)下記の形式の化合物を、アジ化ナトリウム、アジ化カリウム、トリアルキルシリルアジド、等のアジ化剤で処理する。

【0042】
好ましくは、反応を、適した溶媒または希釈剤の存在下で実施し、その例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、等のアルカノール、または酢酸エチル等のエステル、塩化メチレン、クロロホルム、もしくは四塩化炭素、等のハロゲン化溶媒、テトラヒドロフラン、もしくは1,4‐ジオキサン、等のエーテル溶媒、トルエン等の芳香族炭化水素溶媒、またはN,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド、N‐メチルピロリジン‐2‐オン、またはジメチルスルホキシド、等の双極性非プロトン溶媒が挙げられる。
【0043】
上記反応は、例えば10〜150℃の範囲内の温度で好都合に実施され、50〜120℃の範囲内が好ましい。
【0044】
(e)式Lの化合物を、アルカリ金属炭酸塩、水酸化物、水素化物、テトラアルキルグアニジン、アルキルリチウム、LDA、等の塩基を用いて、式F(YおよびR2は上記定義のとおり)の化合物をアルキル化剤で処理する。使用される溶媒は、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、トルエン、等である。上記反応は、例えば10〜150℃の範囲内の温度で好都合に実施され、20〜80℃の範囲内が好ましい。

【0045】
(f)式M(およびその異性体M1)の化合物の混合物を、適した溶媒からの再結晶化、または調整用クロマトグラフィーにより精製し、式Nの1H‐テトラゾリル誘導体を得る。

【0046】
(g)アルカリ金属炭酸塩、水酸化物、金属水素化物、テトラアルキルグアニジン、アルキルリチウム、LDA、等の塩基を用いた、式Nの化合物と式R5Z(式中、ZおよびR5は上記定義のとおり)のアルキル化剤の反応。使用される溶媒は、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、トルエン、等である。上記反応は、例えば10〜150℃の範囲内の温度で好都合に実施され、20〜80℃の範囲内が好ましい。

【0047】
また、当然のことながら、式Iの特定のキナゾリン誘導体は、例えば水和形態などの溶媒和した形態と溶媒和していない形態のどちらでも存在できる。当然のことながら、本発明は、抗増殖活性を持つ、その様なすべての溶媒和した形態を含む。
【0048】
本発明のキナゾリン誘導体の適した薬学的に許容される塩としては、例えば、十分に塩基性の本発明のキナゾリン誘導体の一または二酸付加塩であり、その例としては、塩酸、臭酸、硫酸、リン酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、マレイン酸、酒石酸、フマル酸、メタンスルホン酸、または4‐トルエンスルホン酸、等の無機酸または有機酸との酸付加塩が挙げられる。
【0049】
本発明は、特に、式IVからVIIの6,7‐ジメトキシ置換4‐(テトラゾール‐5‐イル)キナゾリン誘導体からなる群より選択される、式Iの新規中間体化合物に関する。

i)6,7‐ジメトキシキナゾリン誘導体

ii)6,7‐ジエトキシキナゾリン誘導体

iii)6,7‐ジ‐n‐プロポキシキナゾリン誘導体

iv)式VIIIから式XIの6,7‐ジエトキシ置換4‐(テトラゾール‐5‐イル)キナゾリン誘導体

v)式XIIから式XVの6,7‐ジ‐n‐プロポキシ置換4‐(テトラゾール‐5‐イル)キナゾリン誘導体

【0050】
式Iの特定の化合物が、不斉炭素原子を含む一つまたは複数の置換基によって光学活性体またはラセミ体で存在しうる限りにおいて、本発明が、抗増殖活性を有する任意のこのような光学活性体またはラセミ体を包含するということは理解されるはずである。光学活性体の合成は、当該技術分野において周知の有機化学の標準的な手法により、例えば、光学活性出発物質からの合成により、またはラセミ体の分割により行うことができる。
【0051】
インビトロ研究
MTT増殖アッセイ
1983年にMosmannにより初めて記述されたMTT[3‐(4,5‐ジメチルチアゾール‐2‐イル)‐2,5‐ジフェニルテトラゾリウムブロミド]アッセイは、生細胞由来ミトコンドリア脱水素酵素の能力、即ち淡黄色のMTTのテトラゾリウム環を切断することにより、おおむね細胞膜不透過性の濃青色のホルマザン結晶を形成し、その結果それが健康な細胞内に蓄積されることに基づくものである。界面活性剤を添加して細胞を溶解させると、その結果、結晶は遊離され溶解する。生存細胞数は、作り出されたホルマザン生成物のレベルに正比例する。次に、色は簡単な比色分析アッセイを用いて定量できる。このアッセイは、A549およびH1299細胞内で、0〜1000ng/mlの濃度のエルロチニブおよびその誘導体を用いて行われた。プロトコールは、ATCCおよび製造者の使用説明書(カタログ番号30-1010K)に基づくものであった。
【0052】
ウエスタンブロット解析
MTT増殖アッセイより決定された理想的な薬剤の濃度を用いて、適切な培養液中で1×106個のA549またはH1299細胞を72時間にわたって処理し、次にその細胞可溶化物を抽出し、還元条件下の10%SDS-PAGEゲルで分画した。ゲルを前処理したナイロン膜(Bio-Rad)にブロットし、EGFR、PI3K、およびAKTを免疫プローブした。
【0053】
マトリゲル浸潤アッセイ
様々な濃度(MTTアッセイにより決定)のNRC化合物存在下における、A549またはH1299細胞のインビトロ浸潤性を、改良型Boydenチャンバーアッセイを用いて評価した。これらの化合物で細胞を48時間処理した。1×106個の細胞を600μlの0.2%BSA添加無血清培地に懸濁し、マトリゲル(0.7mg/ml)を塗布したトランスウェルチャンバー(Corning Costar Fischer Scientific、カタログ番号07-200-158、ペンシルバニア州、ピッツバーグ)の上側に設置した。チャンバーの下側を200μlの血清培地で満たし、24時間細胞を遊走させた。培養後細胞を固定し、Hema-3で染色し、上述と同様に定量した(Mohanam, et al. 1993)。遊走した細胞を浸潤率として定量した。
【0054】
インビトロ血管新生アッセイ
エルロチニブおよびその誘導体の抗血管新生特性を決定するために、理想的な濃度の薬剤を使用し、上記の通りA549細胞を72時間にわたって処理し、その後、完全培地を無血清培地に交換し、12時間培養した。この無血清培地を馴化培地と呼び、これを標準プロトコールに従って80%コンフルエントの状態に増殖したHMEC細胞の血管新生誘導に用いた。
【0055】
ウエスタンブロット解析
上記と同様に、MTT増殖アッセイより決定された理想的な薬剤の濃度を用いて、適切な培養液中で1×106個のA549またはH1299細胞を72時間にわたって処理し、その後、ウエスタンブロットを行った。A549細胞を用いた場合、上記化合物は用量依存的なEGFR発現量の低下を引き起こした。H1299細胞も、上記化合物で処理した場合、同様のEGFR発現量の低下を見せたが、A459細胞と比較して反応が弱かった。
【0056】
マトリゲル浸潤アッセイ
マトリゲル浸潤を、材料と方法に記載のとおり実施した。A549細胞を用いた場合、対照化合物であるエルロチニブは、100から800ng/mlの濃度依存的に、浸潤性を低下させた。上記化合物は、エルロチニブと同様の浸潤の遅延を、1/10の濃度(10〜80ng/ml)で引き起こした。H1299細胞を用いた場合も同様の浸潤遅延パターンが観察された。
【0057】
インビボ研究:
上記化合物のヌードマウスにおける皮下肺腫瘍に対する効果
【0058】
方法
2×106個のA549細胞をヌードマウスの右後肢、脇腹に移植した。腫瘍が認められたら(>2mm)、エルロチニブおよび上記化合物をエルロチニブの1/10の用量で、マウスに経口治療または経腹膜的治療を施した。文献検索の結果、100mg/kgのエルロチニブがベースライン用量として特定されていた。上記の化合物は、エルロチニブと同様の腫瘍増殖の遅延を1/10の濃度(10〜80ng/ml)で引き起こした。
【0059】
本発明の利点:
1.上記新規化合物は、ゲフィチニブやエルロチニブ等の非小細胞肺癌の既存の標準的治療法よりも優れ、肺癌治療において潜在的に有用である。
2.上記新規化合物は、膵臓癌など、その他の領域においても作用し、膵臓癌治療において潜在的に有用である。
3.上記新規化合物は、咽喉癌、口腔癌など、その他の領域においても作用し、咽喉癌および口腔癌の治療において潜在的に有用である。
【0060】
以下、具体的な実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【実施例】
【0061】
実験手順
実施例1:
1a)4‐クロロ‐6,7‐ジメトキシ‐キナゾリンの調製

攪拌機、温度計ソケット、および二面還流冷却器を取り付けた2.0Lの四口丸底フラスコに、720.0g(6.05mol)の塩化チオニルと50.0g(0.243mol)の6,7‐ジメトキシ‐3H‐キナゾリン‐4‐オンを入れた。反応物の温度を還流温度(78〜80℃)まで上昇させた。還流温度で20.0mlのジメチルホルムアミドをゆっくりと加えた。攪拌しながら、全体の温度を還流温度に7〜8時間保持した。減圧下、70℃未満で、塩化チオニルを完全に留去した。窒素雰囲気下、全体の温度を40℃から45℃まで冷まし、攪拌しながら1000.0mlのヘキサンを加えた。全体の温度を40℃から45℃に30〜45分間保持した。全体の温度を25〜30℃に冷ました。窒素雰囲気下、全体の温度を45〜60分間、25〜30℃に保持した。窒素雰囲気下、固体を濾過した。固体は250.0mlのヘキサンで洗浄した。化合物は、乾燥減量が0.50%w/w以下となるまで、30〜35℃で、五酸化リンが入った真空トレイ乾燥機内で乾燥させた。黄色生成物を52.50g(理論による収率96.33%)を得た。
融解範囲 214-220℃
HPLC純度 96.5%
スペクトルデータ

【0062】
1b)6,7‐ジメトキシ‐4‐キナゾリニル)‐トリメチルアンモニウムクロリドの調製

実験手順:攪拌機、温度計ソケット、および冷却器を取り付けた10.0Lの四口丸底フラスコに、6.50Lのトリメチルアミンのトルエン溶液を入れた。全体の温度を15〜20℃まで冷却した。15〜20℃で攪拌しながら、50.0g(0.22mol)の4‐クロロ‐6,7‐ジメトキシ‐キナゾリンを加えた。15〜20℃で60〜90分間全体を攪拌した。不溶性の化合物を濾過し、濾液を10.0L四口丸底フラスコに回収した。フラスコに栓をした。溶液を25〜35℃で7日間攪拌せずに保存した。固体を濾過し、その固体を窒素雰囲気下100.0mlのトルエンで洗浄した。化合物は、乾燥減量が1.0%w/w以下となるまで、30〜35℃で、五酸化リンが入った真空トレイ乾燥機内で乾燥させた。淡黄色生成物を38.80g(理論による収率61.45%)を得た。
融解範囲 218-224℃
HPLC純度 94.8%
スペクトルデータ

【0063】
1c)4‐シアノ‐6,7‐ジメトキシ‐キナゾリンの調製

実験手順:攪拌機、温度計ソケット、冷却器、およびディーン-スターク装置を備えた3.0Lの四口丸底フラスコに、1800.0mlのトルエンおよび37.0g(0.13mol)の6,7‐ジメトキシ‐4‐キナゾリニル)‐トリメチルアンモニウムクロリドを入れた。共沸条件下、全体の温度を還流温度まで上昇させた。理論量の水が分離するまで、全体の温度を還流温度に保持した。水の分離が完了した後、400.0mlのトルエンを蒸留した。全体の温度を95〜100℃まで冷ました。95〜100℃で46.0g(0.78mol)のアセトアミドを加えた。全体の温度を95〜100℃に20〜30分間保持した。19.80g(0.40mol)のシアン化ナトリウムを95〜100℃で加えた。全体の温度を95〜100℃に20〜30分間保持した。共沸条件下、反応物の温度を還流温度まで上昇させた。共沸により水の分離が完了するまで、全体の温度を還流温度に保持した。水の分離が完了した後、全体の温度を95〜100℃まで冷ました。窒素雰囲気下、全体の温度を90〜95℃に6〜7時間保持した。全体の温度を25〜30℃まで冷ました。200.0mlのDM水を加えた。全体を20〜30分攪拌し、15〜20分間にわたって沈殿させた。上部の有機層を分離し、別に取っておいた。水層は、抽出用フラスコに加えた。化合物を3×300mlのトルエンで抽出した。全有機層を合わせて、三角フラスコに入れた。50gの硫酸ナトリウムにて有機層を乾燥させた。10.0gの活性炭素を加えた。全体の温度を50〜55℃に上昇させた。全体の温度を50〜55℃に30〜45分間保持した。hyflowベッドに通して硫酸ナトリウムおよび炭素を濾過し、250.0mlのトルエンで硫酸ナトリウムおよび炭素を洗浄した。濾液をフラスコに入れ、全体の温度が65℃を超えない高真空下で、トルエンを完全に留去した。全体の温度を25〜30℃に冷ました。100.0mlのイソプロピルエーテルを加えた。全体を25〜30℃で45〜60分間攪拌した。固体を濾過し、その固体を25.0mlのイソプロピルエーテルで洗浄した。化合物を50〜55℃で乾燥させた。淡黄色生成物を22.40g(理論による収率79.85%)得た。
融解範囲 218.1℃-219.2℃
HPLC純度 96.5%
スペクトルデータ

【0064】
1d)6,7‐ジメトキシ‐4‐(1H‐テトラゾール‐5‐イル)キナゾリンの調製

実験手順:攪拌機、温度計ソケット、および冷却器を取り付けた1.0Lの四口丸底フラスコに、窒素雰囲気下、400.0mlのジメチルホルムアミドおよび20.0g(0.09mol)の4‐シアノ‐6,7‐ジメトキシ‐キナゾリンを入れた。6.80g(0.10mol)のアジ化ナトリウムおよび5.50g(0.10mol)の塩化アンモニウムを25〜35℃で加えた。全体を25〜35℃で15〜20分間攪拌した。全体を25〜35℃で15〜20分間攪拌した。反応物の温度を110〜115℃まで上昇させた。全体の温度を110〜115℃に8〜9時間保持した。無機固体を110〜115℃で濾過し、濾液を三角フラスコ中に回収した。濾液を25〜30℃まで冷ました。攪拌機、温度計ソケット、および添加フラスコを取り付けた5.0Lの四口丸底フラスコに、4000.0mlの酢酸エチルを入れた。反応物のジメチルホルムアミド溶液を酢酸エチル溶液に攪拌しながら加えた。全体の温度を25〜30℃に60〜90分間保持した。全体の温度を0〜5℃まで冷却した。全体の温度を0〜5℃に150〜180分間保持した。固体を濾過し、その固体を100.0mlの酢酸エチルで洗浄した。化合物を真空下25〜30℃で乾燥させた。生成物を14.20g(理論による収率59.16%)得た。
融解範囲 207.2℃
HPLC純度 98.6%
スペクトルデータ

【0065】
I.6,7‐ジメトキシ‐4‐(1‐(3‐ニトロベンジル)‐1H‐テトラゾール‐5‐イル)キナゾリン(化合物IV)の調製

実験手順:攪拌機、温度計ソケット、冷却器、および添加フラスコを取り付けた500mlの四口丸底フラスコに、穏やかな窒素雰囲気下、150.0mlのN,N‐ジメチルアセトアミドおよび10.0g(0.038mol)の6,7‐ジメトキシ‐4‐(1H‐テトラゾール‐5‐イル)キナゾリンを入れた。6.0g(0.06mol)のトリエチルアミンを25〜30℃で加えた。全体を25〜30℃で15〜20分間攪拌した。反応物の温度を50〜55℃まで上昇させた。全体の温度を50〜55℃に15〜20分間保持した。3‐ニトロベンジルクロリド溶液{4.50g(0.026mol)の3‐ニトロベンジルクロリドを37.50mlのN,N‐ジメチルアセトアミドに溶解}を50〜55℃で、30〜45分間にわたり、ゆっくりと加えた。全体の温度を50〜55℃に15〜20分間保持した。全体の温度を80〜85℃に昇温させた。7〜8時間、全体の温度を80〜85℃に保持した。全体の温度を25〜30℃まで冷ました。攪拌機、温度計ソケット、冷却器、および添加フラスコを取り付けた3.0Lの四口丸底フラスコに、25〜30℃で、1875.0mlのメタノールを入れた。反応物のジメチルアセトアミド溶液を、攪拌しながら、25〜30℃で、60〜90分間にわたりメタノール溶液に加えた。全体の温度を25〜30℃に60〜90分間保持した。全体の温度を0〜5℃に冷却した。全体の温度を0〜5℃に150〜180分間保持した。固体を濾過し、その固体を50.0mlのメタノールで洗浄した。化合物を25〜30℃で乾燥させた。11.80g(理論による収率77.6%)の乾燥した化合物Iを得た。
融解範囲 221.2℃‐222.2℃
HPLC純度 97.24%
スペクトルデータ

【0066】
実施例2:
2. 6,7‐ジメトキシ‐4‐(1‐(3‐アミノベンジル)‐1H‐テトラゾール‐5‐イル)キナゾリン(化合物V)の調製

実験手順:1.0Lのケトル式水素化装置に、25〜30℃で、400.0mlのジメチルホルムアミドおよび10.0g(0.025mol)の6,7‐ジメトキシ‐4‐(1‐(3‐ニトロベンジル)‐1H‐テトラゾール‐5‐イル)キナゾリンの懸濁液を入れた。窒素雰囲気下、5.0gの5%パラジウム炭素(水分含有量50%)を加えた。水素添加は、35〜40psiで振動させながら、25〜30℃で実施した。水素ガスの取り込みが停止するまで水素ガスの圧力(35〜40psi)を保持した。窒素雰囲気下、hyflowベッドに通して触媒を濾過した。窒素雰囲気下、触媒を50.0mlのジメチルホルムアミドで洗浄した。一口丸底フラスコに濾液を回収し、ジメチルホルムアミドを高真空下、60℃未満で、完全に留去した。全体の温度を25〜30℃に冷まし、真空を解除し、50.0mlのヘキサンを加え、全体を25〜30℃で45〜60分間攪拌した。固体を濾過し、25.0mlのヘキサンで洗浄した。化合物を25〜30℃で乾燥させた。8.40gの粗生成物を得た。粗生成物は、カラムクロマトグラフィーにより精製し、移動相として酢酸エチルおよびヘキサンの混合物を使用したシリカカラムを利用した。5.20g(理論による収率56.3%)の生成物を得、そのHPLC純度は99.3%であった。
スペクトルデータ

【0067】
II.HCl:6,7‐ジメトキシ‐4‐(1‐(3‐アミノベンジル)‐1H‐テトラゾール‐5‐イル)キナゾリン塩酸塩

実験手順:攪拌機、温度計ソケット、および冷却器を取り付けた500mlの四口丸底フラスコに、25〜30℃で200.0mlの塩化メチレンおよび5.0g(0.013mol)の6,7‐ジメトキシ‐4‐(1‐(3‐アミノベンジル)‐1H‐テトラゾール‐5‐イル)キナゾリンを入れた。全体を15分間攪拌した。完全に溶解した後、6.0gのIPA HClを加えた。全体を1時間攪拌した。残存する全体の体積が30.0mlとなるように塩化メチレンを留去した。200mlのヘキサンを加えた。全体を1時間攪拌した。固体を濾過し、その固体を30.0mlのヘキサンで洗浄した。化合物を55〜60℃で乾燥させた。淡黄色の乾燥した化合物4.80g(理論による収率87.2%)を得た。融解範囲:234.8‐236.3℃。生成物の純度:HPLCより99.5%。
スペクトルデータ

【0068】
実施例3:
6,7‐ジメトキシ‐4‐[1‐(1‐メチル‐1H‐イミダゾール‐2‐イルメチル)‐1H‐テトラゾール‐5‐イル]キナゾリン(式VI)の調製

実験手順:攪拌機、温度計ソケット、冷却器、および添加フラスコを取り付けた250mlの四口丸底フラスコに、穏やかな窒素雰囲気下、50.0mlのN,N‐ジメチルアセトアミドおよび5.0g(0.019mol)の6,7‐ジメトキシ‐4‐(1H‐テトラゾール‐5‐イル)キナゾリンを入れた。3.80g(0.038mol)のトリエチルアミンを25〜30℃で加えた。全体を25〜30℃で15〜20分間攪拌した。反応物の温度を50〜55℃まで上昇させた。全体の温度を50〜55℃に15〜20分間保持した。2‐クロロメチル‐1‐メチルイミダゾール溶液[2.50g(0.019mol)の2‐クロロメチル‐1‐メチルイミダゾールを25.0mlのN,N‐ジメチルアセトアミドに溶解]を50〜55℃で、30〜45分間にわたり、ゆっくりと加えた。全体の温度を50〜55℃に15〜20分間保持した。全体の温度を80〜85℃に昇温させた。全体の温度を80〜85℃に7〜8時間保持した。N,N‐ジメチルアセトアミドを減圧下で完全に留去した。粗生成物は、ヘキサンと酢酸エチルを使用してカラムクロマトグラフィーにより精製した。純粋な化合物として2.40g(理論による収率35.2%)を得た。
スペクトルデータ 質量:353[M+1]、352.0[M]
【0069】
実施例4:
6,7‐ジメトキシ‐4‐[1‐(ピリジン‐2‐イルメチル)‐1H‐テトラゾール‐5‐イル]キナゾリンの調製

実験手順:攪拌機、温度計ソケット、冷却器、および添加フラスコを取り付けた250mlの四口丸底フラスコに、穏やかな窒素雰囲気下、50.0mlのN,N‐ジメチルアセトアミドおよび5.0g(0.019mol)の6,7‐ジメトキシ‐4‐(1H‐テトラゾール‐5‐イル)キナゾリンを入れた。3.80g(0.038mol)のトリエチルアミンを25〜30℃で加えた。全体を15〜20分間25〜30℃で攪拌した。反応物の温度を50〜55℃まで上昇させた。全体の温度を50〜55℃に15〜20分間保持した。2‐クロロメチルピリジン塩酸塩溶液[3.20g(0.019mol)の2‐クロロメチルピリジン塩酸塩を25.0mlのN,N‐ジメチルアセトアミドに溶解]を50〜55℃で、30〜45分間にわたり、ゆっくりと加えた。全体の温度を50〜55℃に15〜20分間保持した。全体の温度を80〜85℃に昇温させた。全体の温度を80〜85℃に7〜8時間保持した。N,N‐ジメチルアセトアミドを減圧下で完全に留去した。粗生成物は、ヘキサンと酢酸エチルを使用してカラムクロマトグラフィーにより精製した。純粋な化合物として1.90g(理論による収率28.0%)を得た。
スペクトルデータ:質量:350[M+1]、349.0[M]
【0070】
実施例5〜8:
類似する化合物である、キナゾリン化合物VIIIからXIの3,4‐ジエトキシ誘導体およびその中間体VIIIaからVIIIdは、実施例1aから1dおよびIVからVIIに記載の手順に従って調整される。
【0071】
i)化合物VIIIaからVIIIdの質量スペクトル特性

【0072】
ii)化合物VIIIからXIの質量スペクトル特性

【0073】
実施例9から12:
類似する化合物である、キナゾリン化合物XIIからXVの3,4‐ジプロポキシ誘導体およびその中間体XIIaからXIIdは、実施例1aから1dおよびIVからVIIに記載の手順に従って調整される。
【0074】
iii)化合物XIIaからXIIdの質量スペクトル特性

【0075】
iv)化合物XIIからXVの質量スペクトル特性


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの4‐(テトラゾール‐5‐イル)‐キナゾリン誘導体:

式中、
nは1、2、または3であり;
Wは単結合、‐O‐、‐S‐、‐COR6、‐NH‐、‐SO‐、SO2‐、‐NR6CO‐、‐CONR6‐、‐SO2NR7‐、‐NR7SO2‐、または‐NR8‐(式中、R6、R7、およびR8はそれぞれ独立して、水素、C1‐C6アルキル、C3‐C6シクロアルキル、C2‐C5アルケニル、C2‐C5アルキニルを表す)より選択され;
または、R1はそれぞれR9であり、R9は独立して分岐C1‐C6アルキル、分岐C2‐C6アルケニル、または分岐C2‐C6アルキニルより選択され;
または、R1はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ヒドロキシルアミノ、カルボキシ、ニトロ、グアニジノ、ウレイド、シアノ、トリフルオロメチル、アジドからなる群より選択され;
または、R1はそれぞれ独立して、C1‐C6アルキル、C3‐C6シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、R3置換アリール、R3置換ヘテロシクリル、アリールC1‐C6アルコキシ、C3‐C6シクロアルコキシ、(C1‐C6)アルカノイルオキシ、R5‐アリールオキシ、C1‐C6アルコキシC1‐C6アルキルオキシ、C1‐C6アルコキシ‐C3‐C6シクロアルキルオキシ、C1‐C6アルコキシ‐R5‐アリールオキシ、C1‐C6アルコキシ‐ヘテロシクリルオキシ、C1‐C6アルコキシ‐縮合ヘテロシクリルオキシ、N‐モノ(C1‐C6)アルキルアミノ、N,N‐ジ(C1‐C6)アルキルアミノ、ホルムアミド、アミド、アセトアミド、C1‐C6‐アルコキシアミノ、ヒドラジノ、トリフルオロメトキシ、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、縮合アリール、縮合ヘテロアリール、および縮合ヘテロシクリルからなる群より選択され;ここでR3は、C1‐C6アルキル、C3‐C6シクロアルキル、アリール、およびアラルキルより選択され;R5は、独立して水素またはR4であり;かつ、ここで、R4は、C1-C4アルキルであり;
または、R1はそれぞれ独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ヒドロキシルアミノ、カルボキシ、ニトロ、グアニジノ、ウレイド、シアノ、トルフルオロメチル、アジドで置換されたR9より選択され;ここで、R9は、R4、‐OR5、‐NR5R5、‐C(O)R6、‐NHOR4、‐OC(O)R5、P、および‐QR4からなる群より選択され;R6はR3、‐OR5、または‐NR5R5であり;Pは、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジノ、4‐R3‐ピペラジン‐1‐イル、イミダゾール‐1‐イル、4‐ピリドン‐1‐イル、‐(C1‐C4アルキレン)(CO2H)、フェノキシ、フェニル、フェニルスルホニル、C2‐C4アルケニル、および‐(C1‐C4アルキレン)C(O)NR5R5より選択され;かつ、QはS、SO、またはSO2であり;
または、R1はそれぞれ独立して、フタルイミド‐(C1‐C4)‐アルキルスホニルアミノ、ベンズアミド、ベンゼンスルホニルアミノ、3‐フェニルウレイド、2‐オキソピロリジン‐1‐イル、2,5‐ジオキソピロリジン‐1‐イル、およびR4‐(C2‐C4)-アルカノイルアミノより選択され、かつここで前記‐NHSO2 R4、フタルイミド‐(C1-C4)‐アルキルスルホニルアミノ、ベンズアミド、ベンゼンスルホニルアミノ、3‐フェニルウレイド、2‐オキソピロリジン‐1‐イル、2,5‐ジオキソピロリジン‐1‐イル、およびR4‐(C2‐C4)‐アルカノイルアミノR1基は、独立して、ハロ、C1-C4アルキル、シアノ、メタンスルホニル、およびC1-C4アルコキシより選択される、一つまたは二つの置換基で置換されていてもよく;
R2は、水素、またはC1‐C6アルキル、C3‐C6シクロアルキル、(C1‐C6)カルボニルオキシアルキル、R4‐アリール、(R11)mで置換されたR4‐アリールからなる群より選択され、ここで、m=1、2、または3であり、かつR11は独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロキシルアミノ、カルボキシ、ニトロ、グアニジノ、ウレイド、シアノ、トリフルオロメチル、アジド、またはR3(上記定義と同じ)、R4‐縮合アリール、(R10)mで置換されたR4‐縮合アリール、R4‐ヘテロシクリル、(R11)mで置換されたR4‐ヘテロシクリル、R4‐縮合ヘテロシクリル、(R11)mで置換されたR4‐縮合ヘテロシクリル、R4‐C1‐C6アルキルオキシ、(R11)mで置換されたR4‐C1‐C6アルキルオキシ、R4‐C3‐C6シクロアルキルオキシ、(R11)mで置換されたR4‐C3‐C6シクロアルキルオキシ、C1‐C6アルコキシ‐R5‐アリールオキシ、(R11)mで置換されたC1‐C6アルコキシ‐R5‐アリールオキシ、C1‐C6アルコキシ‐ヘテロ‐シクリルオキシ、(R11)mで置換されたC1‐C6アルコキシ‐ヘテロシクリルオキシ、C1‐C6アルコキシ縮合ヘテロシクリルオキシ、(R11)mで置換されたC1‐C6アルコキシ縮合ヘテロシクリルオキシ、N‐モノ(C1‐C6)アルキルアミノ、(R11)mで置換されたN‐モノ(C1‐C6)アルキルアミノ、N,N‐ジ(C1‐C6)アルキルアミノ、(R11)mで置換されたN,N‐ジ(C1‐C6)アルキルアミノ、ホルムアミド、アミド、アセトアミド、C1‐C6アルコキシアミノ、ヒドラジノ、トリフルオロメトキシ、C2‐C6アルケニル、(R11)mで置換されたC2‐C6アルケニル、C2‐C6アルキニル、(R11)mで置換されたC2‐C6アルキニルからなる群より選択される。
【請求項2】
下記より選択される、請求項1記載の式Iの4‐(テトラゾール‐5‐イル)‐キナゾリン誘導体:
a)6,7‐ジメトキシ‐4‐(1‐(3‐ニトロベンジル)‐1H‐テトラゾール‐5‐イル)キナゾリン
b)3‐((5‐(6,7‐ジメトキシキナゾリン‐4‐イル)‐1H‐テトラゾール‐1‐イル)メチル)アニリン
c)6,7‐ジメトキシ‐4‐(1‐((1‐メチル‐1H‐イミダゾール‐2‐イル)メチル)‐1H‐テトラゾール‐5‐イル)キナゾリン
d)6,7‐ジメトキシ‐4‐(1‐(ピリジン‐2‐イルメチル)‐1H‐テトラゾール‐5‐イル)キナゾリン
e)6,7‐ジエトキシ‐4‐(1H‐テトラゾール‐5‐イル)キナゾリン
f)6,7‐ジエトキシ‐4‐(1‐(3‐ニトロベンジル)‐1H‐テトラゾール‐5‐イル)キナゾリン
g)3‐((5‐(6,7‐ジエトキシキナゾリン‐4‐イル)‐1H‐テトラゾール‐1‐イル)メチル)アニリン
h)6,7‐ジエトキシ‐4‐(1‐((1‐メチル‐1H‐イミダゾール‐2‐イル)メチル)‐1H‐テトラゾール‐5‐イル)キナゾリン
i)6,7‐ジエトキシ‐4‐(1‐(ピリジン‐2‐イルメチル)‐1H‐テトラゾール‐5‐イル)キナゾリン
j)6,7‐ジプロポキシ‐4‐(1H‐テトラゾール‐5‐イル)キナゾリン
k)6,7‐ジ‐n‐プロポキシ‐4‐(1‐(3‐ニトロベンジル)‐1H‐テトラゾール‐5‐イル)キナゾリン
l)3‐((5‐(6,7‐ジ‐n‐プロポキシキナゾリン‐4‐イル)‐1H‐テトラゾール‐1‐イル)メチル)アニリン
m)4‐(1‐((1‐メチル‐1H‐イミダゾール‐2‐イル)メチル)‐1H‐テトラゾール‐5‐イル)6,7‐ジ‐n‐プロポキシキナゾリン
n)6,7‐ジ‐n‐プロポキシ‐4‐(1‐(ピリジン‐2‐イルメチル)‐1H‐テトラゾール‐5‐イル)キナゾリン。
【請求項3】
請求項1記載の式Iの4‐(テトラゾール‐5‐イル)‐キナゾリン誘導体、またはその塩:

式中、n、W、R1、およびR2は上記定義のとおり、
を調製する方法であって、
(a)式Aの化合物:

式中、n、W、およびR1は上記定義のとおり、
を、ハロゲン化チオニル、三ハロゲン化リン、五ハロゲン化リン、三ハロゲン化ホスホリル等のハロゲン化剤で処理することにより式Bの4‐ハロ置換キナゾリン誘導体:

式中、n、W、R1、およびXは上記定義のとおり、
を得る段階;
(b)式Bの化合物を、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、または直鎖または分岐C1‐C6アルケン等の適した溶媒中、トリアルキルアミン(NR3)にて処理することにより、式Cの置換された四級キナゾリニル‐4‐トリアルキルアミンハロゲン化物塩:

式中、n、W、R1、R3、およびXは上記定義のとおり
を得る段階;
(c)式Cの化合物を、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、直鎖または分岐C1‐C6アルケン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ホルムアミド、等の適した溶媒中、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム、シアン化銅、シアン化トリアルキルシリル、等のシアン化剤にて処理することにより、式Dの置換された4‐アミノキナゾリン:

式中、n、W、R1は上記定義のとおり、
を得る段階;
(d)式Dの化合物を、アジ化ナトリウム、トリアルキルシリルアジド、等のアジ化剤で処理することにより、式Eの化合物:

式中、n、W、R1は上記定義のとおり、
を得る段階;
(e)式Eの化合物を、アルカリ金属炭酸塩、水酸化物、金属水素化物、金属アルコキシド、テトラアルキルグアニジン、アルキルリチウム、LDA、等の塩基を用いて、式Fのアルキル化剤:

式中、YおよびR2は上記定義のとおり、
で処理することにより、式GおよびG1の化合物:

式中、n、W、R1、およびR2は上記定義のとおり、
の混合物を得る段階;
(f)式Gおよびその異性体G1の化合物混合物を、適した溶媒から再結晶化、または調整用クロマトグラフィーにより精製し、式Gの必要とされる化合物:

を得る段階、
を含む方法。
【請求項4】
請求項3記載の式Iの4‐(テトラゾール‐5‐イル)‐キナゾリン誘導体の中間体である、式Bの化合物:
a)4‐クロロ‐6,7‐ジエトキシ‐キナゾリン
b)4‐クロロ‐6,7‐ジプロポキシ‐キナゾリン。
【請求項5】
請求項3記載の式Iの4‐(テトラゾール‐5‐イル)‐キナゾリン誘導体の中間体である、式Cの化合物:
a)6,7‐ジメトキシ‐4‐キナゾリニル‐トリメチルアンモニウムクロリド
b)6,7‐ジエトキシ‐4‐キナゾリニル‐トリメチルアンモニウムクロリド
c)6,7‐ジプロポキシ‐4‐キナゾリニル‐トリメチルアンモニウムクロリド。
【請求項6】
請求項3記載の式Iの4‐(テトラゾール‐5‐イル)‐キナゾリン誘導体の中間体である、式Dの化合物:
a)4‐シアノ‐6,7‐ジエトキシ‐キナゾリン
b)4‐シアノ‐6,7‐ジプロポキシ‐キナゾリン。
【請求項7】
式Dの化合物、請求項6記載の式Iの4‐(テトラゾール‐5‐イル)‐キナゾリン誘導体の中間体、またはその塩を調製する方法であって、
(a)式Aの化合物を、ハロゲン化チオニル、三ハロゲン化リン、五ハロゲン化リン、三ハロゲン化ホスホリル等のハロゲン化剤で処理することにより式Bの4‐ハロ置換キナゾリン誘導体を得る段階であって、

式中、R1およびnは上記定義のとおりである、段階;
(b)式Bの化合物を、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、または直鎖または分岐C1‐C6アルケン等の適した溶媒中、R3が直鎖または分岐C1‐C6アルキル鎖であるトリアルキルアミン(NR3)にて処理することにより、置換された四級キナゾリニル‐4‐トリアルキルアミンハロゲン化物塩を得る段階


(c)式Cの化合物を、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、または直鎖または分岐C1‐C6アルケン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ホルムアミド、等の適した溶媒中、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム、シアン化銅、シアン化トリアルキルシリル、等のシアン化剤にて処理することにより、式Dの置換された4‐アミノキナゾリンを得る段階であって、

式中、R1およびnは上記定義のとおりである、段階;
(d)式Dの化合物を、アジ化ナトリウム、トリアルキルシリルアジド、等のアジ化剤で処理することにより、式Eの化合物を得る段階であって、

式中、R1およびnは上記定義のとおりである、段階、
を含む方法。
【請求項8】
請求項1記載の式IVの6,7‐ジメトキシ‐4‐(1‐(3‐ニトロベンジル)‐1H‐テトラゾール‐5‐イル)キナゾリン、またはその塩:

を調製する方法であって、
(a)6,7‐ジメトキシ‐4H‐キナゾロン:

を、ハロゲン化チオニル、三ハロゲン化リン、五ハロゲン化リン、三ハロゲン化ホスホリル等のハロゲン化剤で処理することにより式IVaの4‐ハロ置換キナゾリン誘導体:

を得る段階;
(b)式IVaの化合物を、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、または直鎖または分岐C1‐C6アルケン等の適した溶媒中、トリアルキルアミン(NR3)にて処理することにより、式IVbの置換された四級キナゾリニル‐4‐トリアルキルアミンハロゲン化物塩:

を得る段階;
(c)式IVbの化合物を、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、直鎖または分岐C1‐C6アルケン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ホルムアミド、等の適した溶媒中、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム、シアン化銅、シアン化トリアルキルシリル、等のシアン化剤にて処理することにより、式IVCの置換された4‐アミノキナゾリン:

を得る段階;
(d)式IVCの化合物を、アジ化ナトリウム、トリアルキルシリルアジド、等のアジ化剤で処理することにより、式IVdの化合物:

を得る段階;および
(e)式IVdの化合物を、アルカリ金属炭酸塩、水酸化物、金属水素化物、金属アルコキシド、テトラアルキルグアニジン、アルキルリチウム、LDA、等の塩基を用いて、3‐ニトロベンジルクロライドで処理することにより、1H‐テトラゾリルおよび2‐Hテトラゾリル異性体の混合物を得、これを精製して式IVの化合物:

を得る段階、
を含む方法。
【請求項9】
式Vの6,7‐ジメトキシ‐4‐(1‐(3‐アミノベンジル)‐1H‐テトラゾール‐5‐イル)キナゾリン:

を調製する方法であって、パラジウム炭素やラネーニッケルを用いた接触水素化、または移動水素化により式IVの化合物:

を還元する段階を含む方法。
【請求項10】
6,7‐ジメトキシ‐4‐(1‐(3‐アミノベンジル)‐1H‐テトラゾール‐5‐イル)キナゾリン塩酸塩(式V.HCl):

を調製する方法であって、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、アセトニトリル、塩化メチレン、アセトン、またはこれら溶媒の混合物、等の適した溶媒中、一般的な方法により、式Vの化合物を塩酸で処理する段階を含む方法。
【請求項11】
6,7‐ジメトキシ‐4‐[1‐(1‐メチル‐1H‐イミダゾール‐2‐イルメチル)‐1H‐テトラゾール‐5‐イル]キナゾリン(化合物VI)を調製する方法であって、アルカリ金属炭酸塩、水酸化物、金属水素化物、金属アルコキシド、テトラアルキルグアニジン、アルキルリチウム、LDA、等の塩基を用いて、式IVdの化合物:

を2‐クロロメチル‐N‐メチルイミダゾールで処理することにより、1H‐テトラゾリルおよび2‐Hテトラゾリル異性体の混合物を得、これを精製して式IVの化合物:

を得る段階を含む方法。
【請求項12】
6,7‐ジメトキシ‐4‐[1‐(ピリジン‐2‐イルメチル)‐1H‐テトラゾール‐5‐イル]キナゾリン(化合物VII)を調製する方法であって、アルカリ金属炭酸塩、水酸化物、金属水素化物、金属アルコキシド、テトラアルキルグアニジン、アルキルリチウム、LDA、等の塩基を用いて、式IVdの化合物:

を2‐クロロメチルピリジン塩酸塩で処理することにより、1H‐テトラゾリルおよび2‐Hテトラゾリル異性体の混合物を得、これを精製して式VIIの化合物:

を得る段階を含む方法。
【請求項13】
哺乳動物における過剰増殖性疾患を処置するための薬学的組成物であって、治療効果のある量の請求項1記載の化合物および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物。
【請求項14】
哺乳動物における過剰増殖性疾患を処置する方法であって、治療効果のある量の請求項1記載の化合物を該哺乳動物に投与する段階を含む方法。
【請求項15】
前記過剰増殖性疾患が癌である、請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記癌が肺、扁平上皮細胞、膀胱、胃、膵臓、乳、頭部、頸部、食道、脳、婦人科、または甲状腺の癌である、請求項13記載の方法。
【請求項17】
前記過剰増殖性疾患が非癌性である、請求項12記載の方法。

【公表番号】特表2011−502141(P2011−502141A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531646(P2010−531646)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【国際出願番号】PCT/IN2008/000708
【国際公開番号】WO2009/057139
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(502115888)ナトコ ファーマ リミテッド (4)
【Fターム(参考)】