説明

抗糖尿病剤としてのチアジアゾール誘導体

タンパク質チロシンホスファターゼ類(PTPases)の阻害剤であり、故に、PTPase活性が仲介する状態に用いられ得る、新規化合物。本発明の化合物または、ホスホチロシン結合領域、例えばSH2ドメインにより特徴付けられる他の酵素の阻害剤としても用いられ得る。従って、本発明の化合物は、肥満と関連するインスリン抵抗性、グルコース不耐性、真性糖尿病、高血圧および大および小血管の虚血性疾患、高脂血症を含む2型糖尿病に付随する状態、高トリグリセリド血症、アテローム性動脈硬化症、血管再狭窄、過敏性腸症候群、膵炎、脂肪細胞腫瘍および脂肪肉腫のような癌腫、異脂肪血症、およびインスリン抵抗性が示される他の障害の予防および/または処置に用いられ得る。加えて、本発明の化合物はまた癌、骨粗鬆症、神経変性および感染症、および炎症および免疫系が関与する疾患の処置および/または予防に用いられ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チアジアゾリジノン誘導体、係る化合物を含む医薬組成物、その製造方法およびかかる化合物を用いるタンパク質チロシンホスファターゼ類が仲介する状態の処置方法に関する。
【発明の概要】
【0002】
従って、本発明は、次の化合物:
【化1】

またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0003】
本発明の化合物は、タンパク質チロシンホスファターゼ類(PTPases)の阻害剤であり;特に、本発明の化合物はPTPase−1B(PTP−1B)およびT細胞PTPase(TC PTP)を阻害し、故に、PTPase活性が仲介する状態の処置に用い得る。従って、本発明の化合物はインスリン抵抗性、グルコース不耐性、肥満、真性糖尿病、高血圧および大および小血管の虚血性疾患、異脂肪血症、例えば、高脂血症および高トリグリセリド血症を含む、2型糖尿病に付随する状態、アテローム性動脈硬化症、血管再狭窄、過敏性腸症候群、膵炎、脂肪細胞腫瘍および脂肪肉腫のような癌腫、異脂肪血症、およびインスリン抵抗性が示される他の障害の処置に用い得る。加えて、本発明の化合物は癌、骨粗鬆症、神経変性および感染症、ならびに炎症および免疫系が関与する疾患の処置に用い得る。
【0004】
本発明の化合物は、また、インスリン抵抗性、グルコース不耐性、2型糖尿病、腎臓機能不全(糖尿病性および非糖尿病性)、糖尿病性腎症、糸球体腎炎、糸球体硬化症、原発性腎臓疾患のタンパク質尿、糖尿病性網膜症、肥満、急性および慢性鬱血性心不全を含む全てのタイプの心不全、左室機能不全および肥大型心筋症、糖尿病性心筋症、上室性および心室性不整脈、心房細動および心房粗動、高血圧、原発性および二次性肺高血圧、腎臓血管高血圧、異脂肪血症、アテローム性動脈硬化症、大および小血管の虚血性疾患、狭心症(不安定型であれ安定型であれ)、心筋梗塞およびその続発症、虚血/再潅流傷害、血管再狭窄を含む有害な血管リモデリング、偏頭痛、末梢血管疾患およびレイノー病を含む他の血管障害、過敏性腸症候群、膵炎、癌、骨粗鬆症、多発性硬化症、卒中、脊髄傷害、アルツハイマー、パーキンソンならびにハンチントンおよび脊髄小脳失調症のようなポリグルタミン障害のような神経変性疾患、感染症、および炎症および免疫系が関与する疾患および筋変性が関与する疾患の処置にも用い得る。
【0005】
本発明の化合物を説明するために使用する種々の用語の定義を下に記載する。これらの定義は、それらが本明細書を通して使用されている限り、個々にまたは大きな群の一部として個々に具体例において限定されていない限り、適用される。一般に、アルキル基が構造の一部として記載されているとき、所望により置換されていてよいアルキルも意図される。
【0006】
本発明の化合物のいずれかの薬学的に許容される塩は、塩基と形成される塩、すなわちカチオン性塩、例えばアルカリおよびアルカリ土類金属塩、例えばナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ならびにアンモニウム塩、例えばアンモニウム、トリメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、およびトリス(ヒドロキシメチル)−メチルアンモニウム塩、およびアミノ酸との塩を意味する。
【0007】
上記の通り、本発明は、1,1−ジオキソ−1,2,5−チアジアゾリジン−3−オン誘導体、それを含む医薬組成物、かかる化合物の製造方法および治療的有効量の本発明の化合物、またはその医薬組成物を投与することによる、PTPase活性、特に、PTP−1BおよびTC PTP活性が関与する状態の処置および/または予防方法を提供する。
【0008】
本発明の特定の態様は:
5−(3−ヒドロキシ−7−メトキシナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−[1,2,5]チアジアゾリジン−3−オン;
5−(3−ヒドロキシ−7−メトキシナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−[1,2,5]チアジアゾリジン−3−オンカリウム塩;
5−(3−ヒドロキシ−7−プロポキシナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−[1,2,5]チアジアゾリジン−3−オン;
5−(3−ヒドロキシ−7−プロポキシナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−[1,2,5]チアジアゾリジン−3−オンカリウム塩;
5−(3−ヒドロキシナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−[1,2,5]チアジアゾリジン−3−オン;
5−(3−ヒドロキシナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−[1,2,5]チアジアゾリジン−3−オンカリウム塩;
5−(3−ヒドロキシ−7−メチル−ナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−1,2,5−チアジアゾリジン−3−オン;および
5−(3−ヒドロキシ−7−メチル−ナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−1,2,5−チアジアゾリジン−3−オンカリウム塩
である。
【0009】
本発明の化合物は、次のスキーム1における一般的方法を使用して製造できる。
【化2】

式中、Rは水素、C1−4アルキル、またはC1−4アルコキシである。
【0010】
1−4アルキルはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチルまたはt−ブチルとして定義される。
1−4アルコキシはCHO−、CHCHO−、CHCHCHO−、(CH)CHO−、CHCHCHCHO−、(CH)CHCHO−、CHCHCH(CH)O−、または(CH)CO−として定義される。
【0011】
化合物1をカルボン酸から保護されたアミン化合物2に変換する。トリフルオロ酢酸(TFA)を使用して、このアミノ保護基を除去する。化合物3のアミノ基を適当なα−ブロモエステルでアルキル化する。クロロスルホニルイソシアネートと適当なアルコールをMeCN、DCMまたはTHFのような有機溶媒中で反応させることにより、化合物4を化合物5に変換する。
【0012】
TFAを使用して、化合物5からアミノ保護基を除去する。化合物6を、塩基存在下で化合物7に環化する。ヒドロキシル保護基を水素化により除去して、化合物8を得る。
【0013】
上記の反応は、標準方法に従い、各々希釈剤、好ましくは試薬に対して不活性であり、その溶媒である希釈剤、触媒、縮合剤または該他の試薬の存在下または非存在下および/または不活性雰囲気中、低温、室温または高温(好ましくは使用する溶媒の沸点またはその付近)で、および大気圧または超大気圧で行う。好ましい溶媒、触媒および反応条件は、添付の説明的実施例に明示する。
【0014】
本発明は、さらに、任意の段階で得られる中間体産物を出発物質として使用して残りの段階を行うか、または出発物質が反応条件下インサイチュで形成される、本方法の任意の変法を含む。
【0015】
本発明の化合物および中間体はまた一般的にそれ自体既知の方法に従って互いに変換できる。
本発明はまた全ての新規出発物質、中間体およびそれらの製造方法にも関する。
最後に、本発明の化合物は、遊離形で、またはそのプロドラッグ誘導体として得る。
【0016】
特に、1,1−ジオキソ−1,2,5−チアジアゾリジン−3−オン部分のNH基を、薬学的に許容される塩基で塩に変換し得る。塩は、有利にはエーテルまたはアルコール溶媒、例えば低級アルカノールの存在下で、慣用法を使用して形成してよい。後者の溶液から、エーテル類、例えばジエチルエーテルにより塩が沈殿し得る。得られる塩を、酸での処理により遊離化合物に変換し得る。これらまたは他の塩は、得られた化合物の精製にも使用できる。
【0017】
全ての本発明の化合物のプロドラッグ誘導体は、投与後にある化学的または生理学的過程を経てインビボで親化合物を放出し、該化合物の誘導体であり、例えば、プロドラッグは、生理学的pHにすることによりまたは酵素作用を介して親化合物に変換される。例示的プロドラッグ誘導体は、フェノールのO−アシル誘導体であり、ここで、アシルは本明細書に定義の意味を有する。好ましいのは、生理学的条件下での加水分解により親フェノールに変換可能な薬学的に許容されるエステル誘導体である。
【0018】
遊離化合物、プロドラッグ誘導体および塩の形の化合物の密接な関係の観点から、この文脈内で化合物が記載されているときは全て、その状況下で可能であるか適当である限り、プロドラッグ誘導体および対応する塩も意図される。
その塩を含む本化合物はまた、それらの水和物の形で、またはその結晶化に使用した他の溶媒を含んで得ることができる。
【0019】
上記の通り、本発明の化合物はPTPasesの阻害剤であり、故に、PTPasesが仲介する状態の処置に用い得る。従って、本発明の化合物は、インスリン抵抗性、グルコース不耐性、肥満、真性糖尿病、高血圧および大および小血管の虚血性疾患、異脂肪血症、例えば、高脂血症および高トリグリセリド血症を含む、2型糖尿病に付随する状態、アテローム性動脈硬化症、血管再狭窄、過敏性腸症候群、膵炎、脂肪細胞腫瘍および脂肪肉腫のような癌腫、異脂肪血症、およびインスリン抵抗性が示される他の障害の処置に用い得る。加えて、本発明の化合物は、癌、骨粗鬆症、神経変性および感染症、および炎症および免疫系が関与する疾患の処置に用い得る。
【0020】
従って、本発明の化合物は、インスリン抵抗性、グルコース不耐性、2型糖尿病、腎臓機能不全(糖尿病性および非糖尿病性)、糖尿病性腎症、糸球体腎炎、糸球体硬化症、原発性腎臓疾患のタンパク質尿、糖尿病性網膜症、肥満、急性および慢性鬱血性心不全を含む全てのタイプの心不全、左室機能不全および肥大型心筋症、糖尿病性心筋症、上室性および心室性不整脈、心房細動および心房粗動、高血圧、原発性および二次性肺高血圧、腎臓血管高血圧、異脂肪血症、アテローム性動脈硬化症、大および小血管の虚血性疾患、狭心症(不安定型であれ安定型であれ)、心筋梗塞およびその続発症、虚血/再潅流傷害、血管再狭窄を含む有害な血管リモデリング、偏頭痛、末梢血管疾患およびレイノー病を含む他の血管障害、過敏性腸症候群、膵炎、癌、骨粗鬆症、多発性硬化症、卒中、脊髄傷害、アルツハイマー、パーキンソンならびにハンチントンおよび脊髄小脳失調症のようなポリグルタミン障害のような神経変性疾患、感染症、および炎症および免疫系が関与する疾患および筋変性が関与する疾患の処置に用い得る。
【0021】
本発明は、さらに、治療的有効量の本発明の薬理学的に活性な化合物を単独で、または1種以上の薬学的に許容される担体と組み合わせて含む、医薬組成物を提供する。
【0022】
本発明の医薬組成物は、PTPase活性が仲介する状態、特に、PTP−1BおよびTC PTP活性の処置のために、ヒトを含む、哺乳動物への、経腸投与、例えば経口または直腸投与;経皮および非経腸投与に適するものである。かかる状態は、例えばインスリン抵抗性、グルコース不耐性、肥満、真性糖尿病、高血圧および大および小血管の虚血性疾患、異脂肪血症、例えば、高脂血症および高トリグリセリド血症を含む、2型糖尿病に付随する状態、アテローム性動脈硬化症、血管再狭窄、過敏性腸症候群、膵炎、脂肪細胞腫瘍および脂肪肉腫のような癌腫、異脂肪血症、およびインスリン抵抗性が示される他の障害を含む。加えて、本発明の化合物は、癌、骨粗鬆症、神経変性および感染症、および炎症および免疫系が関与する疾患の処置に用い得る。
【0023】
故に、薬理学的に活性な本発明の化合物は、その有効量を、経腸または非経腸投与に適する賦形剤または担体と共に、または混合されて含む医薬組成物の製造に用い得る。好ましいのは、活性成分を:
a) 希釈剤、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシン;
b) 平滑剤、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸、そのマグネシウムまたはカルシウム塩および/またはポリエチレングリコール;錠剤についてはまた
c) 結合剤、例えば、ケイ酸アルミニウム・マグネシウム、デンプンペースト、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよびまたはポリビニルピロリドン;必要であれば
d) 崩壊剤、例えば、デンプン、寒天、アルギン酸またはそのナトリウム塩、または起沸性混合物;および/または
e) 吸収剤、着色剤、香味剤および甘味剤
と共に含む、錠剤およびゼラチンカプセル剤である。注射可能組成物は、好ましくは水性等張溶液または懸濁液であり、そして坐薬は、有利に脂肪エマルジョンまたは懸濁液から製造する。
【0024】
該組成物は滅菌してよくおよび/またはアジュバント、例えば防腐剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、溶解促進剤、浸透圧調整用塩および/または緩衝剤を含んでよい。加えて、それらは他の治療的に価値ある物質を含んでもよい。該組成物は、各々慣用の混合、造粒またはコーティング法により製造し、そして約0.1−75%、好ましくは約1−50%の活性成分を含む。
【0025】
経皮適用に適当な製剤は、治療的有効量の本発明の化合物と担体を含む。有利な担体は、宿主の皮膚通過を補助するための吸収性の薬理学的に許容される溶媒である。特徴的に、経皮デバイスは、裏打ち部材、化合物を所望により担体と共に含む貯蔵部、所望により、該化合物を皮膚の皮膚に制御されかつ予定された速度で長時間にわたり送達するための速度制御バリア、および該デバイスを皮膚に固定するための手段を含む、バンデージの形である。
【0026】
従って、本発明は、PTPasesが仲介する状態、好ましくは、インスリン抵抗性、グルコース不耐性、肥満、真性糖尿病、高血圧および大および小血管の虚血性疾患、異脂肪血症、例えば、高脂血症および高トリグリセリド血症を含む、2型糖尿病に付随する状態、アテローム性動脈硬化症、血管再狭窄、過敏性腸症候群、膵炎、脂肪細胞腫瘍および脂肪肉腫のような癌腫、異脂肪血症、およびインスリン抵抗性が示される他の障害の処置のための、上記医薬組成物が提供される。加えて、本発明の化合物は癌、骨粗鬆症、神経変性および感染症、および炎症および免疫系が関与する疾患の処置に用い得る。
【0027】
従って、本発明は、PTPasesが仲介する状態、好ましくは、インスリン抵抗性、グルコース不耐性、2型糖尿病、腎臓機能不全(糖尿病性および非糖尿病性)、糖尿病性腎症、糸球体腎炎、糸球体硬化症、原発性腎臓疾患のタンパク質尿、糖尿病性網膜症、肥満、急性および慢性鬱血性心不全を含む全てのタイプの心不全、左室機能不全および肥大型心筋症、糖尿病性心筋症、上室性および心室性不整脈、心房細動および心房粗動、高血圧、原発性および二次性肺高血圧、腎臓血管高血圧、異脂肪血症、アテローム性動脈硬化症、大および小血管の虚血性疾患、狭心症(不安定型であれ安定型であれ)、心筋梗塞およびその続発症、虚血/再潅流傷害、血管再狭窄を含む有害な血管リモデリング、偏頭痛、末梢血管疾患およびレイノー病を含む他の血管障害、過敏性腸症候群、膵炎、癌、骨粗鬆症、多発性硬化症、卒中、脊髄傷害、アルツハイマー、パーキンソンならびにハンチントンおよび脊髄小脳失調症のようなポリグルタミン障害のような神経変性疾患、感染症、および炎症および免疫系が関与する疾患および筋変性が関与する疾患の処置のための、上記医薬組成物を提供する。
【0028】
本医薬組成物は、治療的有効量の上記で定義の本発明の化合物を、単独で、または他の価値ある治療剤と組み合わせて、例えば、各々当分野で報告されている有効な治療的投与量で含み得る。かかる治療剤は:
a) 抗糖尿病剤、例えばインスリン、インスリン誘導体および模倣剤;インスリン分泌促進物質、例えばスルホニルウレア類、例えば、グリピジド、グリブリドおよびアマリール;インスリン分泌性スルホニルウレア受容体リガンド、例えばメグリチナイド、例えば、ナテグリニドおよびレパグリニド;チアゾリドン誘導体、例えばグリタゾン類、例えば、ピオグリタゾンおよびロシグリタゾン;グルコキナーゼアクティベーター;GSK3(グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3)阻害剤、例えばSB−517955、SB−4195052、SB−216763、NN−57−05441およびNN−57−05445;RXRリガンド、例えばGW−0791およびAGN−194204;ナトリウム依存性グルコース共輸送体阻害剤、例えばT−1095;グリコーゲンホスホリラーゼA阻害剤、例えばBAY R3401;ビグアナイド類、例えばメトホルミン;アルファ−グルコシダーゼ阻害剤、例えばアカルボース;GLP−1(グルカゴン様ペプチド−1)、GLP−1類似体、例えばエキセンジン−4およびGLP−1模倣剤;PPAR(ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体)のモジュレーター、例えば、非グリタゾン型PPARγアゴニスト、例えばN−(2−ベンゾイルフェニル)−L−チロシン類似体、例えばGI−262570、およびJTT501;DPPIV(ジペプチジルペプチダーゼIV)阻害剤、例えばLAF237、MK−0431、サクサグリプチンおよびGSK23A;SCD−1(ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1)阻害剤;DGAT1およびDGAT2(ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ1および2)阻害剤;ACC2(アセチルCoAカルボキシラーゼ2)阻害剤;およびAGE(糖化最終産物)の破壊剤;
b) 抗脂質異常症剤、例えば3−ヒドロキシ−3−メチル−グルタリルコエンザイムA(HMG−CoA)レダクターゼ阻害剤、例えば、ロバスタチン、ピタバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、メバスタチン、ベロスタチン(velostatin)、フルバスタチン、ダルバスタチン(dalvastatin)、アトルバスタチン、ロスバスタチンおよびリバスタチン(rivastatin);HDL増加剤化合物、例えばコレステロールエステルトランスファータンパク質(CETP)阻害剤、例えば、JTT705;Apo−A1類似体および模倣剤;スクアレンシンターゼ阻害剤;FXR(ファルネソイドX受容体)およびLXR(肝臓X受容体)リガンド;コレスチラミン;フィブラート;ニコチン酸;およびアスピリン;
c) 抗肥満剤、例えばフェンテルミン、レプチン、ブロモクリプチン、デキサンフェタミン、アンフェタミン、フェンフルラミン、デキスフェンフルラミン、シブトラミン、オーリスタット、デキスフェンフルラミン、マジンドール、フェンテルミン、フェンジメトラジン、ジエチルプロピオン、フルオキセチン、ブプロピオン、トピラメート、ジエチルプロピオン、ベンズフェタミン、フェニルプロパノールアミン、エコピパム(ecopipam)、エフェドリン、およびシュードエフェドリン;コレステロール吸収モジュレーター、例えばZETIA(登録商標)およびKT6−971;およびカンナビノイド受容体アンタゴニスト、例えばリモナバン;および
d) 抗高血圧剤、例えば、ループ利尿剤、例えばエタクリン酸、フロセミドおよびトルセミド;アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、例えばベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリノドプリル(perinodopril)、キナプリル、ラミプリルおよびトランドラプリル;Na−K−ATPase膜ポンプの阻害剤、例えばジゴキシン;中性エンドペプチダーゼ(NEP)阻害剤;ACE/NEP阻害剤、例えばオマパトリラート、サムパトリラート(sampatrilat)およびファシドトリル;アンギオテンシンIIアンタゴニスト、例えばカンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、テルミサルタンおよびバルサルタン、特にバルサルタン;レニン阻害剤、例えばジテキレン(ditekiren)、ザンキレン(ザンキレン)、テルラキレン(terlakiren)、アリスキレン、RO 66−1132およびRO−66−1168;β−アドレナリン受容体ブロッカー、例えばアセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、メトプロロール、ナドロール、プロプラノロール、ソタロールおよびチモロール;変力剤、例えばジゴキシン、ドブタミンおよびミルリノン;カルシウムチャネルブロッカー、例えばアムロジピン、ベプリジル、ジルチアゼム、フェロジピン、ニカルジピン、ニモジピン、ニフェジピン、ニソルジピンおよびベラパミル;アルドステロン受容体アンタゴニスト、例えばエプレレノン;およびアルドステロンシンターゼ阻害剤、例えばアナストロゾール(anastrazole)およびファドロゾール
を含む。
【0029】
他の具体的抗糖尿病性化合物は、引用により本明細書に包含させるPatel Mona in Expert Opin Investig Drugs, 2003, 12(4), 623-633の図1〜7に記載されている。本発明の化合物を、他の成分ど同時に、前にまたは後に、別々に、同じまたは異なる投与経路でまたは同じ医薬製剤で投与してよい。
【0030】
コード番号、一般名または商品名により同定した治療剤の構造は、標準概論“The Merck Index”の現行版またはデータベース、例えば、Patents International(例えばIMS World Publications)から取り得る。それらの対応する内容は、引用により本明細書に包含させる。
【0031】
従って、本発明は、治療的有効量の本発明の化合物と、好ましくは抗糖尿病剤、脂質低下剤、抗肥満剤または抗高血圧剤、最も好ましくは上記の抗糖尿病剤または抗肥満剤から選択される治療的有効量の他の治療剤を組み合わせて含む、医薬組成物を提供する。
【0032】
本発明は、さらに、医薬として使用するためにここに説明した医薬組成物に関する。
【0033】
本発明は、さらに、PTPase活性、特に、PTP−1BおよびTC PTP活性が仲介する状態の処置用医薬の製造のための、上記の医薬組成物または組み合わせの使用に関する。かかる状態は、インスリン抵抗性、グルコース不耐性、肥満、真性糖尿病、高血圧および大および小血管の虚血性疾患、異脂肪血症、例えば、高脂血症および高トリグリセリド血症を含む、2型糖尿病に付随する状態、アテローム性動脈硬化症、血管再狭窄、過敏性腸症候群、膵炎、脂肪細胞腫瘍および脂肪肉腫のような癌腫、異脂肪血症、およびインスリン抵抗性が示される他の障害を含む。加えて、本発明の化合物は、癌、骨粗鬆症、神経変性および感染症、および炎症および免疫系が関与する疾患の処置に用い得る。かかる状態はまたインスリン抵抗性、グルコース不耐性、2型糖尿病、腎臓機能不全(糖尿病性および非糖尿病性)、糖尿病性腎症、糸球体腎炎、糸球体硬化症、原発性腎臓疾患のタンパク質尿、糖尿病性網膜症、肥満、急性および慢性鬱血性心不全を含む全てのタイプの心不全、左室機能不全および肥大型心筋症、糖尿病性心筋症、上室性および心室性不整脈、心房細動および心房粗動、高血圧、原発性および二次性肺高血圧、腎臓血管高血圧、異脂肪血症、アテローム性動脈硬化症、大および小血管の虚血性疾患、狭心症(不安定型であれ安定型であれ)、心筋梗塞およびその続発症、虚血/再潅流傷害、血管再狭窄を含む有害な血管リモデリング、偏頭痛、末梢血管疾患およびレイノー病を含む他の血管障害、過敏性腸症候群、膵炎、癌、骨粗鬆症、多発性硬化症、卒中、脊髄傷害、アルツハイマー、パーキンソンならびにハンチントンおよび脊髄小脳失調症のようなポリグルタミン障害のような神経変性疾患、感染症、および炎症および免疫系が関与する疾患および筋変性が関与する疾患を含む。
【0034】
故に、本発明はまた、医薬として使用するための本発明の化合物、PTPase活性、特に、PTP−1BおよびTC PTP活性が仲介する状態の処置用医薬組成物の製造のための本発明の化合物の使用、および本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含む、PTPase活性、特に、PTP−1BおよびTC PTP活性が仲介する状態に使用するための医薬組成物に関する。
【0035】
本発明は、さらに、治療的有効量の本発明の化合物を投与することを含む、PTPase活性、特に、PTP−1BおよびTC PTP活性が仲介する状態の処置方法を提供する。
【0036】
約50〜70kgの哺乳動物用の単位投与量は、約1mg〜1000mg、有利には約5mg〜500mgの活性成分を含み得る。式Iの化合物の治療的有効投与量は、温血動物(哺乳動物)種、体重、年齢および個々の状態、投与形態、および含まれる化合物による。
【0037】
前記によって、本発明はまた、好ましくは抗糖尿病剤、脂質低下剤、抗肥満剤または抗高血圧剤から選択される少なくとも1種の他の治療剤を含む少なくとも1個の医薬組成物と同時にまたは連続して使用すべき、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む、例えば、ここに定義のいずれかの方法に使用するための、治療的組み合わせ、例えば、キット、複数パーツのキットも提供する。本キットは、その投与についての指示書を含んでよい。
【0038】
同様に、本発明は:(i)本発明の医薬組成物;および(ii)抗糖尿病性、脂質低下剤、抗肥満剤、抗高血圧剤、またはその薬学的に許容される塩から選択される化合物を含む医薬組成物を、成分(i)〜(ii)の2個の別々の単位の形で含む、複数パーツのキットを提供する。
【0039】
同様に、本発明は、治療的有効量の本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、および第二医薬物質を、例えば、同時にまたは連続して、共投与することを含む、上記で定義の方法を提供し、該第二医薬物質は、例えば、上記の抗糖尿病性、脂質低下剤、抗肥満剤または抗高血圧剤である。
【0040】
好ましくは、本発明の化合物を、それを必要とする哺乳動物に投与する。
好ましくは、本発明の化合物を、PTPase活性、特に、PTP−1BおよびTC PTP活性の調節に応答する疾患の処置用に使用する。
【0041】
好ましくは、PTPase活性、特に、PTP−1BおよびTC PTP活性と関連する疾患は、インスリン抵抗性、グルコース不耐性、2型糖尿病、腎臓機能不全(糖尿病性および非糖尿病性)、糖尿病性腎症、糸球体腎炎、糸球体硬化症、原発性腎臓疾患のタンパク質尿、糖尿病性網膜症、肥満、急性および慢性鬱血性心不全を含む全てのタイプの心不全、左室機能不全および肥大型心筋症、糖尿病性心筋症、上室性および心室性不整脈、心房細動および心房粗動、高血圧、原発性および二次性肺高血圧、腎臓血管高血圧、異脂肪血症、アテローム性動脈硬化症、大および小血管の虚血性疾患、狭心症(不安定型であれ安定型であれ)、心筋梗塞およびその続発症、虚血/再潅流傷害、血管再狭窄を含む有害な血管リモデリング、偏頭痛、末梢血管疾患およびレイノー病を含む他の血管障害、過敏性腸症候群、膵炎、癌、骨粗鬆症、多発性硬化症、卒中、脊髄傷害、アルツハイマー、パーキンソンならびにハンチントンおよび脊髄小脳失調症のようなポリグルタミン障害のような神経変性疾患、感染症、および炎症および免疫系が関与する疾患および筋変性が関与する疾患から選択される。
【0042】
好ましくは、PTPase活性、特に、PTP−1BおよびTC PTP活性と関連する疾患は、インスリン抵抗性、グルコース不耐性、肥満、真性糖尿病、高血圧および大および小血管の虚血性疾患、異脂肪血症、例えば、高脂血症および高トリグリセリド血症を含む、2型糖尿病に付随する状態、アテローム性動脈硬化症、血管再狭窄、過敏性腸症候群、膵炎、脂肪細胞腫瘍および脂肪肉腫のような癌腫、異脂肪血症、およびインスリン抵抗性が示される他の障害から選択される。加えて、本発明の化合物は、癌、骨粗鬆症、神経変性および感染症、および炎症および免疫系が関与する疾患の処置に用い得る。
【0043】
最後に、本発明は、本発明の化合物を治療的有効量の抗糖尿病剤、脂質低下剤、抗肥満剤または抗高血圧剤と組み合わせて投与することを含む、方法または使用を提供する。
【0044】
最終的に、本発明は、ここに記載の医薬組成物の形の本発明の化合物を投与することを含む、方法または使用を提供する。
【0045】
明細書および特許請求の範囲を通して、用語“処置”は、関連分野の当業者には既知の処置の種々の形態またはモードの全てを包含し、そして特に、予防的、治癒的、進行遅延的および対症療法的治療を含む。
【0046】
上記の特性は、有利には哺乳動物、例えば、マウス、ラット、イヌ、サルまたは単離臓器、組織およびその調製物を使用した、インビトロおよびインビボ試験により証明可能である。該化合物を、インビトロで溶液、例えば好ましくは水性溶液の形で、およびインビボで、経腸的、非経腸的、有利に静脈内に、例えば懸濁液または水性溶液として適用できる。インビトロの投与量は約1μM〜1nM濃度、好ましくは10nM〜200nMである。インビボでの治療的有効量は投与経路により変わり得て、約1〜500mg/kg、好ましくは約1〜100mg/kgである。
【0047】
本発明の化合物の活性は、次の方法により、または、文献(例えばPeters G. et al. J. Biol. Chem, 2000, 275, 18201-09)によく記載されている方法に従い評価し得る。
【0048】
例えば、PTP−1B阻害活性をインビトロで次の通り測定し得る:
種々の薬剤の存在下のヒトPTP−1B(hPTP−1B)活性の評価を、96ウェルマイクロタイタープレート形式を使用した、ホスホペプチド基質から放出される無機ホスフェートの量を測定することにより決定し得る。本アッセイ(100μL)を、50mM トリス(pH7.5)、50mM NaCl、3mM DTTから成るアッセイ緩衝液中、環境温度で行う。本アッセイは、典型的に0.4%ジメチルスルホキシド(DMSO)の存在下で行う。しかしながら、ある種のほとんど溶解しない化合物では10%もの高濃度を使用する。典型的反応を、0.4ピコモルのhPTP−1B(アミノ酸1−411)を、アッセイ緩衝液、3ナノモルの合成ホスホペプチド基質(GNGDpYMPMSPKS)、および試験化合物を含むウェルに添加することにより開始する。10分後、180μL マラカイトグリーン試薬(0.88mM マラカイトグリーン、8.2mM モリブデン酸アンモニウム、水性1N HCl、および0.01%Triton X−100)を添加して反応を停止させる。酵素反応の産物である無機ホスフェートを、15分後、マラカイト試薬との複合体化に由来する緑色として定量し、Molecular Devices(Sunnyvale, CA)SpectraMAX Plus分光光度計を使用してA620として測定する。試験化合物を100%DMSO(Sigma, D-8779)により可溶化し、DMSOで希釈する。活性を、非阻害hPTP−1B[1−411]の活性から酸不活性化hPTP−1B[1−411]のチューブの活性を引いて得られる吸光度の正味の変化として定義する。
【0049】
hPTP−1B[1−411]を、ヒト海馬cDNAライブラリー(Clonetech)からPCRによりクローン化し、pET 19−bベクター(Novagen)のNco1制限部位に挿入する。大腸菌株BL21(DE3)をこのクローンで形質転換し、20%グリセロール中、−80℃で貯蔵溶液として貯蔵する。酵素産生のために、保存培養をLb/Ampに接種し、37℃で増殖させる。PTP−1Bの発現を、該培養がOD600=0.6に到着した後に1mM IPTGでの導入により開始させる。4時間後、細菌ペレットを遠心分離により採取する。細胞を70mL溶解緩衝液(50mM Tris、100mM NaCl、5mM DTT、0.1%Triton X−100、pH7.6)に再懸濁し、氷上で30分間インキュベートし、その後超音波処理する(最大出力で4×10秒間バースト)。このライセートを100,000×gで60分間遠心分離し、上清を緩衝液交換し、カチオン交換POROS 20SPカラム、続いてアニオン交換Source 30Q(Pharmacia)カラムにより、直線状NaCl勾配溶出を使用して精製する。酵素を溜め、1mg/mLに調節し、−80℃で凍結させる。
【0050】
あるいは、種々の薬剤の存在下のヒトPTP−1B活性の評価を、既知競合基質の加水分解産物の測定により決定し得る。例えば、基質パラ−ニトロフェニルホスフェート(pNPP)の開裂は黄色に着色したパラ−ニトロフェノール(pNP)の遊離をもたらし、これは、分光光度計を使用してリアルタイムでモニターできる。同様に、蛍光性基質6,8−ジフルオロ−4−メチルウンベリフェリルホスフェートアンモニウム塩(DiFMUP)の加水分解は、蛍光DiFMUの遊離をもたらし、これは、蛍光リーダーで連続モードで容易に追跡できる(Anal. Biochem. 273, 41, 1999; Anal. Biochem. 338, 32, 2005):
【0051】
pNPPアッセイ
化合物を1nM 組み換えヒトPTP−1B[1−298]またはPTP−1B[1−322]と緩衝液(50mM Hepes、pH7.0、50mM KCl、1mM EDTA、3mM DTT、0.05%NP−40)で5分間、室温でインキュベートした。反応をpNPP(2mM 最終濃度)の添加により開始させ、120分間、室温で進行させる。反応を5N NaOHで停止させる。405nmの吸光度を、何らかの標準的384ウェルプレートリーダーを使用して測定する。
【0052】
DiFMUPアッセイ
化合物を1nM 組み換えヒトPTP−1B[1−298]またはPTP−1B[1−322]と緩衝液(50mM Hepes、pH7.0、50mM KCl、1mM EDTA、3mM DTT、0.05%NP−40(または0.001%BSA)中で、5分間、室温でインキュベートする。反応をDiFMUP(6μM最終濃度)の添加により開始させ、355nm励起および460nm放出波長で蛍光プレートリーダー上で動力学的に進行させる。15分間にわたる反応速度を使用して阻害を計算する。
【0053】
PTP−1B[1−298]を、pET19bベクターs(Novagen)を使用して構築させたプラスミドを含む大腸菌BL21(DE3)で発現させる。この細菌を、“オンデマンド”流加(Fed-batch)方法を使用して最小培地で増殖させる。典型的に、5.5リットル醗酵を流加モードで開始させ、一夜、世話をせずに37℃で増殖させる。光学密度が20〜24OD600で変わり、培養物を30℃で0.5mMの最終濃度までのIPTGで誘発させる。本細菌細胞を8時間後に採取し、200−350gm(湿重量)を産生させる。本細胞をペレットとして凍結させ、使用まで−80℃で貯蔵する。全工程を、特記しない限り4℃で行う。細胞(〜15g)を37℃で短く融解し、1錠のComplete(無EDTA)プロテアーゼカクテル(Boehringer Mannheim)、100μM PMSFおよび100μg/mL DNase Iを含む50mM Tris−HCl、150mM NaCl、5mM DTT、pH8.0を含む50mLの溶解緩衝液に再懸濁させる。本細胞をVirsonic 60(Virtus)を使用した超音波処理(4×10秒間バースト、最大出力)により溶解させる。本ペレットを35,000×gで回収し、Polytronを使用して25mLの溶解緩衝液に再懸濁し、前記の通り回収する。2個の上清を合わせ、30分間、100,000×gで遠心分離する。可溶性ライセートを、この段階で−80℃で貯蔵してよく、またはさらなる精製のために使用してよい。10kD MWCO膜を使用するダイアフィルトレーションを、カチオン交換クロマトグラフィー前に、タンパク質を交換し、NaCl濃度を低下させる緩衝液に対して使用する。ダイアフィルトレーション緩衝液は、50mM MES、75mM NaCl、5mM DTT、pH6.5を含んだ。次いで可溶性上清をカチオン交換緩衝液(50mM MESおよび75mM NaCl、pH6.5)で平衡化したPOROS 20 SP(1×10cm)カラムに、20mL/分の速度で載せる。分析カラム(4.6×100mm)を、流速を10mL/分に減速する以外同様の方法で流す。タンパク質を、直線状塩勾配(25CVで75−500mM NaCl)を使用してカラムから溶出させる。SDS−PAGE分析に従いPTP−1B[1−298]含有フラクションを同定し、貯留する。最終精製をSephacryl S-100 HR(Pharmacia)を使用して行う。本カラム(2.6×35cm)を50mM HEPES、100mM NaCl、3mM DTT、pH7.5で平衡化し、2mL/分の流速で流す。最終タンパク質を溜め、MWCO 10,000と共にUltrafree-15 concentrator(Millipore)を使用して、〜5mg/mLに濃縮する。この濃縮タンパク質を使用するまで−80℃で貯蔵する。
【0054】
酵素の活性部位への競合的結合を、次の通り決定し得る:
リガンド結合を、化合物(1−2mM)を添加して、または添加せずに250μLの0.15mM PTP−1B[1−298]H−15N HSQCスペクトルを獲得することにより検出する。結合を、二次元HSQCスペクトルにおける15N標識タンパク質への化合物の添加による15N−またはH−アミド化学シフト変化の観察により決定する。15Nスペクトル編集のため、リガンドからのシグナルは観察されず、タンパク質シグナルのみである。故に、結合を高化合物濃度で検出できる。既知の結合部位結合剤で見られる化学シフト変化のパターンと類似の変化をもたらす化合物を陽性と見なす。
【0055】
全タンパク質を、pET19bベクター(Novagen)を使用して構築したプラスミドを含む大腸菌BL21(DE3)で発現させる。均一に15N標識したPTP−1B1−298を、15N標識塩化アンモニウムを含む最小培地上で細菌を増殖させることにより産生する。全精製工程を4℃で行う。細胞(〜15g)を37℃で短く融解し、1錠のComplete(無EDTA)プロテアーゼカクテル(Boehringer Mannheim)、100μM PMSFおよび100μg/mL DNase Iを含む50mM Tris−HCl、150mM NaCl、5mM DTT、pH8.0を含む50mLの溶解緩衝液に再懸濁する。本細胞を超音波処理により溶解する。ペレットを35,000×gで回収し、Polytronを使用して25mLの溶解緩衝液に再懸濁し、前記の通り回収する。2個の上清を合わせ、30分間、100,000×gで遠心分離する。10kD MWCO膜を使用するダイアフィルトレーションを、カチオン交換クロマトグラフィー前に、タンパク質を交換し、NaCl濃度を低下させる緩衝液に対して使用する。ダイアフィルトレーション緩衝液は、50mM MES、75mM NaCl、5mM DTT、pH6.5を含んだ。次いで可溶性上清をカチオン交換緩衝液(50mM MESおよび75mM NaCl、pH6.5)で平衡化したPOROS 20 SP(1×10cm)カラム、20mL/分の速度で載せる。タンパク質を、直線状塩勾配(25CVで75−500mM NaCl)を使用してカラムから溶出させる。SDS−PAGE分析に従いPTP−1B含有フラクションを同定し、貯留する。最終精製を。PTP−1B1−298を、さらにPOROS 20 HQカラム(1×10cm)を使用したアニオン交換クロマトグラフィーで精製する。カチオン交換クロマトグラフィーからのプールを濃縮し、75mM NaClおよび5mM DTT含有50mM Tris−HCl、pH7.5に緩衝液交換する。タンパク質を20mL/分でカラムに載せ、直線状NaCl勾配(25CVで75−500mM)を使用して輸出させる。最終精製をSephacryl S-100 HR(Pharmacia)(50mM HEPES、100mM NaCl、3mM DTT、pH7.5)を使用して行う。NMRサンプルは、NaCl(50mM)、DL−1、4−ジチオスレイトール−d10(5mM)およびナトリウムアジド(0.02%)を含む10%DO/90%HO Bis−Tris−d19緩衝液(50mM、pH=6.5)溶液中の、均一に15N標識されたPTP−1B1−298(0.15mM)および阻害剤(1−2mM)から成る。
【0056】
H−15N HSQC NMRスペクトルを、20℃で、Bruker DRX500またはDMX600 NMR分光計で記録する。全てのNMR実験で、パルス磁場勾配を適用させて、溶媒シグナルを抑制させる。間接的に検出した次元の直角位相検出を、States-TPPI法を使用して達成する。データをBrukerをSilicon Graphicsコンピューター上で、ソフトウェアを使用して処理し、NMRCompassソフトウェア(MSI)を使用して分析する。
【0057】
インビボでのグルコースおよびインスリン低下活性を次の通り評価し得る:
11週齢の成熟雄C57BL ob/obマウス(Jackson Lab, Bar Harbor, ME)を、1ケージあたり6匹で逆光サイクル室(午後6:00から午前6:00まで点灯)で飼育し、Purina齧歯類餌および水への接近は自由とする。1日目に、尾血液サンプルを午前8:00に採り、血漿グルコース濃度を決定する。この動物を、無作為に対照および化合物群に割り振る。各グループの血漿グルコース値の平均は適合させる。次いで動物に媒体(0.5%カルボキシメチル−セルロースと0.2%Tween−80)または媒体中の化合物(30mg/kg)を経口投与する。マウスに1日1回合計3日間投与する。4日目に、基底血液サンプルを採る。血漿サンプルを、YSI2700 Dual Channel Biochemistry Analyzer(Yellow Springs Instrument Co., Yellow Springs, OH)を使用してグルコース濃度について分析し、そしてインスリン濃度についてELISAアッセイを使用して分析する。
【0058】
本発明は、1個以上の原子が同じ原子番号を有するが、原子質量または質量数が通常天然で見られる原子質量または質量数と異なる原子で置換されている、全ての薬学的に許容される同位体標識された式(I)の化合物も含む。
【0059】
本発明の化合物に包含するのに適当な同位体の例は、水素の同位体、例えばHおよびH、炭素の同位体、例えば11C、13Cおよび14C、塩素の同位体、例えば36Cl、フッ素の同位体、例えば18F、ヨウ素の同位体、例えば123Iおよび125I、窒素の同位体、例えば13Nおよび15N、酸素の同位体、例えば15O、17Oおよび18O、リンの同位体、例えば32P、および硫黄の同位体、例えば35Sを含む。
【0060】
重水素、すなわちHのようなより重い同位体への置換は、大きな代謝安定性に起因するある種の治療的利点、例えば、増加したインビボ半減期または低下した必要量を提供し得て、それ故に、ある状況で好ましいことがあるかもしれない。
【0061】
同位体標識された式(I)の化合物は、一般に、当業者に既知の慣用の技術により、または、添付の実施例および製造の章に記載の方法に準じた方法により、以前に使用されていた非標識試薬の代わりに適当に同位体標識された試薬を使用して製造できる。
【0062】
次の実施例は本発明を説明することを意図し、それに限定すると解釈してはならない。温度は摂氏度(℃)で示す。特記しない限り、全ての蒸発は減圧下、好ましくは約15〜100mmHg(=20−133mbar)で行う。最終生成物、中間体および出発物質の構造は、標準分析法、例えば微量分析、融点(mp)および分光特徴付け(例えばMS、IR、NMR)により確認する。一般に、使用する略語は当分野で一般的なものである。
【実施例】
【0063】
実施例1
5−(3−ヒドロキシ−7−メトキシナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−[1,2,5]チアジアゾリジン−3−オンカリウム塩
【化3】

工程1
3−ベンジルオキシ−7−メトキシナフタレン−2−カルボン酸ベンジルエステル
5.0g(21.7mmol)の3−ヒドロキシ−7−メトキシナフタレン−2−カルボン酸、9.29g(54.3mmol)の臭化ベンジル、および9.01g(65.2mmol)の炭酸カリウムの25mLのDMF中の混合物を60℃で24時間撹拌する。室温に冷却後、混合物を水に注ぎ、EtOAcで抽出する。有機相を3回水および1回飽和NaClで洗浄する。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下除去する。残存固体を塩化メチレン/エタノールから結晶化させて、表題化合物を黄褐色固体として得る、mp 96−98°。H-NMR(CDCl3): δ 8.25(s, 1H), 7.61(d, J=8.83 Hz, 1H), 7.49(d, J=7.35 Hz, 2H), 7.46 - 7.30(m, 7H), 7.24(d, J=5.88 Hz, 2H), 7.18(dd, J=9.20および2.58 Hz, 1H), 7.12(m, 1H), 5.40(s, 2H), 5.23(s, 2H), 3.89(s, 3H)。C2622の分析計算値:C、78.38;H、5.57。実測値:C、78.28;H、5.56。
【0064】
工程2
3−ベンジルオキシ−7−メトキシナフタレン−2−カルボン酸
100mLのエタノール中6.07g(20mmol)の3−ベンジルオキシ−7−メトキシナフタレン−2−カルボン酸ベンジルエステルの懸濁液に、24mLの1.0N NaOH(1.2当量)を添加し、混合物を60℃で4時間、および室温で16時間撹拌する。溶媒を減圧下除去し、残存固体を50mLの水に溶解する。溶液をエーテルで洗浄し、水性相を2N HClで酸性化する。得られる沈殿を濾過し、水で洗浄し、乾燥させて、表題化合物を薄黄色固体として得る、mp 177−179°。1H-NMR(CDCl3): δ 11.01(s, broad, 1H), 8.70(s, 1H), 7.67(d, J=8.82 Hz, 1H), 7.53 - 7.41(m, 5H), 7.37(s, 1H), 7.27(dd, J=8.83および2.57 Hz, 1H), 7.20(m, 1H), 5.36(s, 2H), 3.92(s, 3H)。C1916の分析計算値:C、74.01;H、5.23。実測値:C、73.71;H、5.46。
【0065】
工程3
(3−ベンジルオキシ−7−メトキシナフタレン−2−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル
40mLの無水t−BuOH+40mLの無水トルエン中の4.6g(14.9mmol)の3−ベンジルオキシ−7−メトキシナフタレン−2−カルボン酸の懸濁液に、2.3g(22mmol)のトリエチルアミンを添加する。得られる溶液に5.34g(19.4mmol)のDPPAを添加し、混合物を室温で5分間、次いで100℃で18時間で撹拌する。混合物を室温に冷却し、次いで水に注ぐ。混合物をEtOAcで抽出し、有機相を飽和NaClで洗浄する。溶媒を減圧下除去し、残渣をヘキサン/酢酸エチル(85:15)を使用するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して表題化合物を油状物として溶出させ、それはゆっくり蝋状固体となる。1H-NMR(CDCl3): δ 8.48(s, 1H), 7.50(d, J=8.82 Hz, 1H), 7.48 - 7.31(m, 7H), 7.10(s, 1H), 6.99(dd, J=8.82および2.57 Hz, 1H), 5.17(s, 2H), 3.84(s, 3H), 1.54(s, 9H)。
【0066】
工程4
3−ベンジルオキシ−7−メトキシナフタレン−2−イルアミン
50mLのTFA/塩化メチレン(1:1)中4.99g(13.1mmol)の(3−ベンジルオキシ−7−メトキシナフタレン−2−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステルの溶液を、室温で30分間撹拌する。溶媒を減圧下除去するおよび10%水性重炭酸ナトリウムを残渣に添加する。混合物をEtOAcで抽出し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ。溶媒を減圧下除去し、残渣を塩化メチレンを使用するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して表題化合物を溶出させ、それをエタノールから結晶化して、白色固体を得る、mp 149−151°。1H-NMR(CDCl3): δ 7.54 - 7.32(m, 6H), 7.09(s, 1H), 6.92(d, J=9.20 Hz, 2H), 6.89(dd, J=8.82および2.57 Hz, 1H), 5.18(s, 2H), 4.11(s, broad, 2H), 3.87(s, 3H)。
【0067】
工程5
(3−ベンジルオキシ−7−メトキシナフタレン−2−イルアミノ)−酢酸メチルエステル
20mLのDMF中の2.76g(9.88mmol)の3−ベンジルオキシ−7−メトキシナフタレン−2−イルアミンおよび2.73g(19.8mmol)の炭酸カリウムの混合物に2.26g(14.8mmol)のブロモ酢酸メチルを添加する。混合物を60℃で2時間、次いで室温で16時間撹拌する。混合物を水に注ぎ、EtOAcで抽出する。有機相を水(3x)、飽和NaCl(1x)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒を減圧下除去し、残渣をエタノールから結晶化させて、表題化合物を灰白色固体として得る、mp 129−131°;1H-NMR(CDCl3): δ 7.50(s, broad, 2H), 7.49(d, J=8.46 Hz, 1H), 7.45 - 7.33(m, 3H), 7.07(s, 1H), 6.97(d, J=2.20 Hz, 1H), 6.89(dd, J=8.82および2.57 Hz, 1H), 6.62(s, 1H), 5.20(s, 3H), 4.05(s, 2H), 3.88(s, 3H), 3.80(s, 3H)。MS(M+1):352。C2121NOの分析計算値:C、71.78;H、6.02;N、3.99。実測値:C、71.61;H、5.86;N、3.91。
【0068】
工程6
N−(t−ブトキシカルボニルスルファモイル)−N−(3−ベンジルオキシ−7−メトキシナフチル)グリシンメチルエステル
25mLの塩化メチレン中の1.24g(8.77mmol)のクロロスルホニルイソシアネートの溶液に、3mL塩化メチレン中649mg(8.76mmol)のt−ブタノールの溶液を滴下する。溶液を室温で30分間撹拌し、次いで25mL塩化メチレン中2.2g(6.26mmol)の(3−ベンジルオキシ−7−メトキシナフタレン−2−イルアミノ)−酢酸メチルエステルおよび1.27g(12.6mmol)のトリエチルアミンを滴下する。混合物を室温で90分間撹拌し、次いで水で洗浄する。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下除去する。残存油状物をヘキサン/酢酸エチル(70:30)を使用するフラッシュクロマトグラフィーで精製して、表題化合物を油状物として溶出させる。H-NMR(CDCl3): δ 8.10(s, 1H), 7.68(s, broad, 1H), 7.54(d, J=9.80 Hz, 1H), 7.49 - 7.29(m, 5H), 7.17(s, 1H), 7.14 - 7.08(m, 2H), 5.23(s, 2H), 4.63(s, 2H), 3.86(s, 3H), 3.68(s, 3H), 1.41(s, 9H)。MS(M−1):529。
【0069】
工程7
N−スルファモイル−N−(3−ベンジルオキシ−7−メトキシナフチル)グリシンメチルエステル
40mL トリフルオロ酢酸/塩化メチレン(1:1)中の3.1g(5.85mmol)のN−(t−ブトキシカルボニルスルファモイル)−N−(3−ベンジルオキシ−7−メトキシナフチル)グリシンメチルエステル溶液を、室温で30分間撹拌する。溶媒を減圧下除去する。塩化メチレンを残渣に添加し、次いで減圧下除去(4x)して、油状固体を得て、それをエーテルで磨砕(16時間)して、表題化合物を固体として得る、mp 137−139°;1H-NMR(CDCl3): δ 8.01(s, 1H), 7.58(d, J=8.83 Hz, 1H), 7.51 - 7.32(m 5H), 7.23 - 7.05(m, 3H), 5.17(s, broad, 2H), 5.15(s, 2H), 4.39(s, 2H), 3.85(s, 3H), 3.67(s, 3H)。MS(M+1):431。C2122Sの分析計算値:C、58.59;H、5.15;N、6.51。実測値:C、58.53;H、5.05;N、6.62。
【0070】
工程8
5−(3−ベンジルオキシ−7−メトキシナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−[1,2,5]チアジアゾリジン−3−オンカリウム塩
5mLのTHF中の1.89g(4.39mmol)のN−スルファモイル−N−(3−ベンジルオキシ−7−メトキシナフチル)グリシンメチルエステルの溶液に、4.4mLのカリウムt−ブトキシドの1.0M THF溶液を滴下する。混合物を室温で18時間撹拌する。得られる濃い沈殿を濾過し、少量のTHFで洗浄する。固体を減圧下乾燥させて、表題化合物を得る、mp 182−198°。
【0071】
工程9
5−(3−ヒドロキシ−7−メトキシナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−[1,2,5]チアジアゾリジン−3−オンカリウム塩
150mLの水中の1.75g(4.01mmol)の5−(3−ベンジルオキシ−7−メトキシナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−[1,2,5]チアジアゾリジン−3−オンカリウム塩を、50psiで、500mgの10%Pd/C上、24時間水素化する。触媒を濾過し、水性濾液を酢酸エチルで洗浄する。水性相を凍結乾燥させて、表題化合物をベージュ色無定形固体として得る、mp 260−265°。1H-NMR(DMSO-d6) δ 7.90(s, 1H), 7.54(d, J=9.04 Hz, 1H), 7.14(s, 1H), 7.12(d, J=2.64 Hz, 1H), 6.98(dd, J=9.04および2.64 Hz, 1H), 4.20(s, 2H), 3.81(s, 3H)。MS(M−1):307。
【0072】
実施例2
5−(3−ヒドロキシ−7−プロポキシナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−[1,2,5]チアジアゾリジン−3−オンカリウム塩
【化4】

工程1
3−ヒドロキシ−7−プロポキシナフタレン−2−カルボン酸プロピルエステル
DMA(30mL)中の1.6g(29.6mmol)のナトリウムメトキシドの懸濁液に、3.0g(14.7mmol)の3,7−ジヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸を添加する。混合物を室温で1時間撹拌し、次いで5.05g(29.7mmol)のプロピルアイオダイドを添加し、撹拌を48時間続ける。混合物を水に注ぎ、2N HClで酸性化する。混合物を酢酸エチルで抽出し、有機相を水(3x)および塩水(1x)で洗浄する。溶液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下除去する。残存油状物を塩化メチレンを使用するフラッシュクロマトグラフィーで精製して表題化合物を溶出させ、それを黄色油状物として単離する。MS(M−1):287。
【0073】
工程2
3−ベンジルオキシ−7−プロポキシナフタレン−2−カルボン酸プロピルエステル
DMF(15mL)中の1.5g(5.21mmol)の3−ヒドロキシ−7−プロポキシナフタレン−2−カルボン酸プロピルエステルおよび1.08g(7.81mmol)の炭酸カリウムの混合物に、0.98g(5.73mmol)の臭化ベンジルを添加する。混合物を室温で48時間撹拌し、次いで水に注ぐ。混合物を酢酸エチルで抽出し、有機相を水(3x)および塩水(1x)で洗浄する。溶液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下除去する。残存油状物を塩化メチレンを使用するフラッシュクロマトグラフィーで精製して表題化合物を溶出させ、それを黄色油状物として単離する。
【0074】
工程3
3−ベンジルオキシ−7−プロポキシナフタレン−2−カルボン酸
EtOH(15mL)中の680mg(1.8mmol)の3−ベンジルオキシ−7−プロポキシナフタレン−2−カルボン酸プロピルエステルの溶液に、2.0mLの1.0N NaOHを添加し、次いで混合物を60℃で3時間撹拌する。溶媒を減圧下除去し、残存固体を水に溶解する。溶液をMTBEで洗浄し、水性相を1N HClで酸性化する。得られる沈殿を濾過し、水で洗浄し、減圧下乾燥させて、表題化合物を白色固体として得る、mp 125−128°。MS(M−1):335。
【0075】
5−(3−ヒドロキシ−7−プロポキシナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−[1,2,5]チアジアゾリジン−3−オンカリウム塩
表題化合物を、3−ベンジルオキシ−7−プロポキシナフタレン−2−カルボン酸から、実施例LBR509(工程3−9)に準じて製造する、mp 250−255°。
1H-NMR(DMSO-d6) δ 7.88(s, 1H), 7.54(d, J=9.04 Hz, 1H), 7.13(s, 1H), 7.12(d, J=2.64 Hz, 1H), 6.98(dd, J=9.04および2.64 Hz, 1H), 4.19(s, 2H), 3.98(t, 2H), 1.75(m, 2H), 1.00(t, 3H)。MS(M−1):335。
【0076】
実施例3
5−(3−ヒドロキシナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−[1,2,5]チアジアゾリジン−3−オンカリウム塩
【化5】

工程1
N−(3−ヒドロキシナフタレン−2−イル)−アセトアミド
13.8g(86.8mmol)の3−アミノナフタレン−2−オール、飽和重炭酸ナトリウム(150mL)およびエーテル(150mL)の急速に撹拌している混合物に、0−5℃で、アセチルクロライド(15.8mL)を滴下し、混合物を室温で3時間撹拌する。全ての不溶性物質を濾過し、水性相を酸性化する。混合物をEtOAcで抽出し、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させる。溶媒を減圧下除去して、表題化合物を得る。
【0077】
工程2
N−(3−ベンジルオキシナフタレン−2−イル)−アセトアミド
アセトン(150mL)中の8.8g(43.8mmol)のN−(3−ヒドロキシナフタレン−2−イル)−アセトアミドおよび9.5g(68.7mmol)の炭酸カリウムの混合物に11.5g(67.3mmol)の臭化ベンジルを添加し、混合物を4時間還流する。溶媒を減圧下除去し、水を残渣に添加する。混合物をEtOAcで抽出し、有機相を塩水で洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥させる。溶媒を減圧下除去し、残存固体をエーテル/ヘキサン(1:2)で磨砕して、表題化合物を得る。
【0078】
工程3
3−ベンジルオキシナフタレン−2−イルアミン
EtOH(75mL)中の7.1g(24.4mmol)のN−(3−ベンジルオキシナフタレン−2−イル)−アセトアミドに、水(10mL)中のKOHの溶液を添加し、混合物を18時間還流する。冷却したら、黄褐色沈殿が形成される。固体を濾過し、EtOHで洗浄して、表題化合物を得る。
【0079】
5−(3−ヒドロキシナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−[1,2,5]チアジアゾリジン−3−オンカリウム塩
表題化合物を、3−ベンジルオキシナフタレン−2−イルアミンから、実施例LBR509(工程5−9)に準じて、ブロモ酢酸メチルの変わりにブロモ酢酸エチルを使用して製造する。1H-NMR(DMSO-d6) δ 7.73(s, 1H), 7.43(d, J=8.08 Hz, 1H), 7.35(d, J=8.08 Hz, 1H), 7.06(t, J=7.33 Hz, 1H), 6.96(t, J=7.20 Hz, 1H), 6.89(s, broad, 1H), 4.06(s, 2H)。MS(M−1):277。
【0080】
実施例4
【化6】

1. (3−ベンジルオキシ−7−ブロモナフタレン−2−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル
(3−ベンジルオキシ−7−ブロモナフタレン−2−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステルを、実施例1、工程1−3に準じて製造する。
【0081】
2. [(3−ベンジルオキシ−7−ブロモナフタレン−2−イル)−tert−ブトキシカルボニル(carbony)−アミノ]−酢酸メチルエステル
DMF(300mL)中の(3−ベンジルオキシ−ブロモナフタレン−2−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(38.65g、90.2mmol)の溶液に、0℃でNaH(3.79g、99.3mmol)を添加する。溶液にブロモ酢酸メチル(10.3mL、108.2mmol)を添加する。混合物を10分間撹拌し、次いで1N HClでクエンチする。溶液をEtOAcで抽出し、1N HCl(3x)および飽和NaClで洗浄する。有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮する。残渣をEtOAcから再結晶して、[(3−ベンジルオキシ−7−ブロモナフタレン−2−イル)−tert−ブトキシカルボニル(carbony)−アミノ]−酢酸メチルエステルを得る。
【0082】
3. (3−ベンジルオキシ−7−ブロモナフタレン−2−イルアミノ)−酢酸メチルエステル
(3−ベンジルオキシ−7−ブロモナフタレン−2−イルアミノ)−酢酸メチルエステルを実施例1、工程2−5に準じて製造する。
【0083】
4. 5−(3−ベンジルオキシ−7−ブロモナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−1,2,5−チアジアゾリジン−3−オン
5−(3−ベンジルオキシ−7−ブロモナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−1,2,5−チアジアゾリジン−3−オンを、実施例1、工程6−8に準じて製造する。
【0084】
5. 5−(3−ベンジルオキシ−7−メチル−ナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−1,2,5−チアジアゾリジン−3−オン
5−(3−ベンジルオキシ−7−ブロモナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−1,2,5−チアジアゾリジン−3−オン(4.47g、10mmol)、メチルボロン酸(1.19g、20mmol)、酢酸パラジウム(78mg、0.347mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2',6'−ジメトキシビフェニル、炭酸ナトリウム(30mLの2N、60mmoL)、テトラヒドロフラン(100mL)、およびジメトキシエタン(100mL)を80℃で3日間加熱する。混合物を濃縮し、水とジエチルエーテルの間で抽出する。有機層を1:1水:飽和重炭酸ナトリウムで洗浄する。合わせた水性層を酸性化し、2回酢酸エチルで抽出する。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、直接次工程に使用する。
【0085】
6. 5−(3−ヒドロキシ−7−メチル−ナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−1,2,5−チアジアゾリジン−3−オンカリウム塩
先の反応からの300mL 酢酸エチル中の5−(3−ベンジルオキシ−7−メチル−ナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−1,2,5−チアジアゾリジン−3−オンの溶液を、50mL EtOH中Pd(OH)/C(0.7g)の懸濁液に添加する。得られる懸濁液をH下で2日間撹拌する。Celite(2g)を添加し、懸濁液をCelite(2g)のパッドを通して濾過し、濃縮する。残渣をBiotage 40+MカートリッジのC18クロマトグラフィーで、40ml/分で0−25%アセトニトリル/水の勾配を用いて、精製する。溶媒を除去して遊離形の表題化合物(1.04g、3.56mmol)を得て、それを重炭酸カリウム(7.12mLの0.5M、3.56mmol)で処理し、濃縮して、表題化合物を得る。1H-NMR(MeOD-d3) δ 8.45(s, 1H), 8.09(d, J=Hz, 1H), 7.78(d, J=Hz, 1H), 7.72(s, 1H), 5.01(s, 2H), 2.99(s, 3H)。MS(M−1):291。
【0086】
結果
化合物の阻害活性(IC50値)は、5nM〜300nMであることが判明した。IC50値は、記載のアッセイを使用して決定した。
【0087】
均等物
当業者は、ここに具体的に記載の方法に対する多くの均等物を認識し、または、日常的以上の実験を行うことなく確認することができるであろう。かかる均等物は本発明の範囲内であると意図され、添付の特許請求の範囲により包含される。特許、出願および他の刊行物の適当な成分、工程、および方法を、本発明およびその態様のために選択してよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5−(3−ヒドロキシ−7−メトキシナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−[1,2,5]チアジアゾリジン−3−オン;
5−(3−ヒドロキシ−7−プロポキシナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−[1,2,5]チアジアゾリジン−3−オン;
5−(3−ヒドロキシナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−[1,2,5]チアジアゾリジン−3−オン;および
5−(3−ヒドロキシ−7−メチル−ナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−1,2,5−チアジアゾリジン−3−オン;
から成る群から選択される化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
5−(3−ヒドロキシ−7−メトキシナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−[1,2,5]チアジアゾリジン−3−オンカリウム塩;
5−(3−ヒドロキシ−7−プロポキシナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−[1,2,5]チアジアゾリジン−3−オンカリウム塩;
5−(3−ヒドロキシナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−[1,2,5]チアジアゾリジン−3−オンカリウム塩;および
5−(3−ヒドロキシ−7−メチル−ナフタレン−2−イル)−1,1−ジオキソ−1,2,5−チアジアゾリジン−3−オンカリウム塩
から成る群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
処置を必要とする哺乳動物に治療的有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む、PTPase活性の阻害方法。
【請求項4】
処置を必要とする哺乳動物に治療的有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む、PTPase活性が仲介する状態の処置方法。
【請求項5】
治療的有効量の該化合物と抗糖尿病剤、脂質低下剤、抗肥満剤または抗高血圧剤の組み合わせを投与することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
処置を必要とする哺乳動物に治療的有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む、哺乳動物におけるPTP−1B活性が仲介する状態の処置方法。
【請求項7】
処置を必要とする哺乳動物に治療的有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む、哺乳動物におけるグルコース濃度の調節方法。
【請求項8】
処置を必要とする哺乳動物に治療的有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む、インスリン抵抗性、グルコース不耐性、2型糖尿病、腎臓機能不全(糖尿病性および非糖尿病性)、糖尿病性腎症、糸球体腎炎、糸球体硬化症、原発性腎臓疾患のタンパク質尿、糖尿病性網膜症、肥満、急性および慢性鬱血性心不全を含む全てのタイプの心不全、左室機能不全および肥大型心筋症、糖尿病性心筋症、上室性および心室性不整脈、心房細動および心房粗動、高血圧、原発性および二次性肺高血圧、腎臓血管高血圧、異脂肪血症、アテローム性動脈硬化症、大および小血管の虚血性疾患、狭心症(不安定型であれ安定型であれ)、心筋梗塞およびその続発症、虚血/再潅流傷害、血管再狭窄を含む有害な血管リモデリング、偏頭痛、末梢血管疾患およびレイノー病を含む他の血管障害、過敏性腸症候群、膵炎、癌、骨粗鬆症、多発性硬化症、卒中、脊髄傷害、アルツハイマー、パーキンソンならびにハンチントンおよび脊髄小脳失調症のようなポリグルタミン障害のような神経変性疾患、感染症、および炎症および免疫系が関与する疾患および筋変性が関与する疾患の処置方法。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物と1種以上の薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項10】
さらに少なくとも1種のさらなる抗糖尿病剤、脂質低下剤、抗肥満剤または抗高血圧剤を含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
PTPase活性が仲介する状態の処置用医薬の製造のための、請求項9または10に記載の医薬組成物の使用。
【請求項12】
PTPase活性が仲介する状態の処置用医薬組成物の製造のための、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項13】
PTPase活性が仲介する状態がインスリン抵抗性、グルコース不耐性、2型糖尿病、腎臓機能不全(糖尿病性および非糖尿病性)、糖尿病性腎症、糸球体腎炎、糸球体硬化症、原発性腎臓疾患のタンパク質尿、糖尿病性網膜症、肥満、急性および慢性鬱血性心不全を含む全てのタイプの心不全、左室機能不全および肥大型心筋症、糖尿病性心筋症、上室性および心室性不整脈、心房細動および心房粗動、高血圧、原発性および二次性肺高血圧、腎臓血管高血圧、異脂肪血症、アテローム性動脈硬化症、大および小血管の虚血性疾患、狭心症(不安定型であれ安定型であれ)、心筋梗塞およびその続発症、虚血/再潅流傷害、血管再狭窄を含む有害な血管リモデリング、偏頭痛、末梢血管疾患およびレイノー病を含む他の血管障害、過敏性腸症候群、膵炎、癌、骨粗鬆症、多発性硬化症、卒中、脊髄傷害、アルツハイマー、パーキンソンならびにハンチントンおよび脊髄小脳失調症のようなポリグルタミン障害のような神経変性疾患、感染症、および炎症および免疫系が関与する疾患および筋変性が関与する疾患から選択される、請求項11または12に記載の使用。
【請求項14】
医薬として使用するための、請求項1に記載の化合物。

【公表番号】特表2010−529075(P2010−529075A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510761(P2010−510761)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056807
【国際公開番号】WO2008/148744
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】