抗腫瘍活性を示すオリゴ糖組成物
【課題】 寒天多糖の分析方法及び分画方法、寒天又は寒天分画物中の多糖のオリゴ糖化方法、及び寒天由来の抗腫瘍活性を有するオリゴ糖組成物の提供。
【解決手段】 (1)セルロースアセテート膜又は濾紙で、寒天又はその分画物が溶解状態を保つ温度にて電気泳動を行う寒天多糖の分析方法、(2)寒天の水性溶液を寒天が溶解状態を保つ温度にて陰イオン交換樹脂に通し、陰イオン交換樹脂を寒天が溶解状態を保つ温度に保持して、水、続いて無機塩水溶液を使用してその無機塩濃度を高めながら溶出を行う寒天多糖の分画方法、(3)寒天又はその分画物の水溶液を酸の規定度が0.001〜0.2Nの水溶液とし、温度を60〜105℃に保持して多糖類の加水分解を行う寒天又はその分画物中の多糖のオリゴ糖化方法、及び(4)上記分画方法で分画した特定の寒天の画分を上記オリゴ糖化方法で加水分解して得られる抗腫瘍活性を示すオリゴ糖組成物。
【解決手段】 (1)セルロースアセテート膜又は濾紙で、寒天又はその分画物が溶解状態を保つ温度にて電気泳動を行う寒天多糖の分析方法、(2)寒天の水性溶液を寒天が溶解状態を保つ温度にて陰イオン交換樹脂に通し、陰イオン交換樹脂を寒天が溶解状態を保つ温度に保持して、水、続いて無機塩水溶液を使用してその無機塩濃度を高めながら溶出を行う寒天多糖の分画方法、(3)寒天又はその分画物の水溶液を酸の規定度が0.001〜0.2Nの水溶液とし、温度を60〜105℃に保持して多糖類の加水分解を行う寒天又はその分画物中の多糖のオリゴ糖化方法、及び(4)上記分画方法で分画した特定の寒天の画分を上記オリゴ糖化方法で加水分解して得られる抗腫瘍活性を示すオリゴ糖組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寒天多糖の分析方法、寒天多糖の分画方法、寒天又はその分画物中の多糖のオリゴ糖化方法、及び寒天由来の抗腫瘍活性を有するオリゴ糖組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本では食生活の欧米化に伴い、生活習慣病が増加しており、その要因の一つとして食物繊維摂取量の減少が考えられている。食物繊維は消化吸収されず、従来は非栄養素であるとされていたが、排便を円滑にし、有害物質を吸着・排除する効果があることなどから、第六の栄養素であるとして見直されてきている。そこで、食物繊維を豊富に含む海藻が注目されるようになった。海藻には、ビタミン、タンパク質、ミネラルなども豊富に含有されており、健康食品として話題になっている。
【0003】
ところで、海藻の多糖類は、セルロースなどの藻体の骨格を作る骨格多糖類、デンプンやラミナランなどの光合成産物である貯蔵多糖類、及びアルギン酸などの細胞間を充填する粘質多糖類の3種類に分類される。粘質多糖類には、抗腫瘍活性、血圧降下作用、コレステロール低下作用、抗酸化作用ならびに抗血液凝固作用などの生物活性を有するものが多数報告されている。
【0004】
海藻類の中で、紅藻は、寒天に加工されて古くから利用されてきた。寒天は、和菓子等の食品における利用を初めとして、工業用、医療用、化粧品用及び試薬用(細菌培地、組織培養)等、様々な用途で使用されている。そして、近年になり、寒天の様々な生理機能が明らかとされ、よって、寒天に対する健康を促進する食品としての期待が高まっている。
【0005】
寒天の原料は紅藻で、主としてテングサ属(Gelidium)、オゴノリ属(Gracilaria)、オバクサ属(Pterocladia)、イタニグサ属(Ahnfeltia)等に属する紅藻類が利用されている。天草の主産地は日本、モロッコ、チリ、韓国、スペイン等であり、オゴノリの主産地はチリ、南アフリカ、アルゼンチン、日本等である。このように、寒天の原料及び産地は種々様々であるが、そのような原料や産地の相違よる成分組成、物性、構成糖、硫酸基含量や生物活性の相違等は、明らかとされていない。特にその構成多糖に関しては、寒天が常温で固化するため、これまでは分析や分画が為されてこなかった。わずかに、非特許文献1に、寒天の精製方法と、寒天の主成分の一つであるアガロースが、D−ガラクトース残基と3,6−アンヒドロ−L−ガラクトース残基が交互にくる線状多糖からなることが記載されているのみである。
【0006】
一方、1970年代から種々のオリゴ糖が開発され、それらの機能、具体的には、非う触性、腸内菌叢改善作用、ミネラル吸収促進作用、免疫賦活作用等の生理機能や生体調節機能に関する研究が活発になされてきている。また、世界保健機構(WHO)によれば、2005年、世界の死亡者の13%は、悪性腫瘍による死亡である。日本でも、1981年からは悪性腫瘍が死因のトップとなっており、2006年度における死因の3割が悪性腫瘍である。このような状況下、世界中において、抗腫瘍活性を有する物質の探索が行われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Stellan Hjerten,J.Chromatogr., 61(1971)pp.73−80
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、多糖を多く含有する寒天に着目した。そして、寒天多糖からも、様々な生理機能や生体調節機能を有するオリゴ糖を得ることが可能であると考えた。しかし、そのような研究を行うためには、先ず、寒天の物理的・化学的特性を明らかにし、また寒天に含まれる有用成分の生理機能等を明らかにする必要があると考え、そのためには、寒天多糖の分析、分画方法を確立する必要があると考えた。
【0009】
本発明の目的は、寒天多糖の分析方法を提供することにある。また、本発明の目的は、寒天多糖の分画方法を提供することにある。さらに、本発明の目的は、寒天又は寒天分画物中の多糖のオリゴ糖化方法を提供することにある。そして、本発明の目的は、寒天由来の抗腫瘍活性を有するオリゴ糖組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、寒天多糖の分析方法及び分画方法を開発すべく、鋭意検討した。その結果、本発明をなすに至った。
【0011】
即ち本発明は、セルロースアセテート膜又は濾紙で、寒天又は寒天の分画物の水性溶液を電気泳動することからなる寒天多糖の分析方法であって、寒天又は寒天の分画物が溶解状態を保つ温度にて電気泳動を行うことを特徴とする寒天多糖の分析方法に関する。
【0012】
本発明は、セルロースアセテート膜又は濾紙を用い、寒天又は寒天の分画物の水性溶液を寒天が溶解状態を保つ温度にて電気泳動を行い、泳動後に検出されたスポットの位置及び数から、寒天の産地及び/又は原料海藻の種類を特定することを特徴とする、寒天の産地及び/又は原料海藻の種類を特定する方法にも関する。
【0013】
本発明は、寒天の水性溶液を、寒天が溶解状態を保つ温度にて陰イオン交換樹脂に通し、その後、陰イオン交換樹脂を寒天が溶解状態を保つ温度に保持したままで、水、続いて無機塩水溶液を使用してその無機塩濃度を高めながら寒天多糖の溶出を行うことを特徴とする寒天多糖の分画方法に関する。
【0014】
また、本発明者らは、寒天又は寒天分画物中の多糖のオリゴ糖化方法を開発すべく、鋭意検討した。その結果、本発明をなすに至った。
【0015】
即ち本発明は、寒天又は寒天の分画物の水溶液を、酸の規定度が0.001N〜0.2Nの水溶液とし、温度を60℃〜105℃に保持して多糖類の加水分解を行うことを特徴とする寒天又は寒天分画物中の多糖のオリゴ糖化方法に関する。
【0016】
さらに、本発明者らは、寒天由来のオリゴ糖組成物の生理活性について検討し、寒天からの特定の分画物中の多糖類を加水分解してなるオリゴ糖組成物が、抗腫瘍活性を示すことを見いだし、本発明を完成させた。
【0017】
即ち本発明は、寒天の水性溶液を、寒天が溶解状態を保つ温度にて陰イオン交換樹脂に通し、その後、陰イオン交換樹脂を寒天が溶解状態を保つ温度に保持したままで、水、続いて無機塩水溶液を使用してその無機塩濃度を高めながら寒天多糖の溶出を行い、0.2〜0.3Mの無機塩濃度にて溶出した試料を集め、その試料を温度60℃〜105℃にて加水分解して得られる、抗腫瘍活性を示すオリゴ糖組成物に関する。
【0018】
また、本発明は、寒天の水性溶液を、寒天が溶解状態を保つ温度にて陰イオン交換樹脂に通し、その後、陰イオン交換樹脂を寒天が溶解状態を保つ温度に保持したままで、水、続いて無機塩水溶液を使用してその無機塩濃度を高めながら寒天多糖の溶出を行い、0.7〜0.8Mの無機塩濃度にて溶出した試料を集め、その試料を温度60℃〜105℃にて加水分解して得られる、抗腫瘍活性を示すオリゴ糖組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、寒天の室温におけるセルロースアセテート膜電気泳動の結果を示す。
【図2】図2は、寒天の60℃におけるセルロースアセテート膜電気泳動の結果を示す。
【図3】図3は、寒天全糖及びその分画物の60℃におけるセルロースアセテート膜電気泳動の結果を示す。
【図4】図4は、寒天全糖及びその分画物のゲルの平均最大荷重を示すグラフである。
【図5】図5は、寒天全糖及びその分画物のゲルの最大荷重を示すチャートである。
【図6】図6は、傾けたエッペンドルフ内での寒天全糖及びその分画物のゲルの状態を示す写真である。
【図7】図7は、寒天全糖及びその分画物のゲルの見かけ粘度を示すグラフである。
【図8】図8は、寒天全糖のガスクロマトグラムである。
【図9】図9は、0.25M塩化ナトリウム水溶液で溶出された寒天分画物のガスクロマトグラムである。
【図10】図10は、0.75M塩化ナトリウム水溶液で溶出された寒天分画物のガスクロマトグラムである。
【図11】図11は、寒天全糖のマススペクトル(保持時間35.5分)である。
【図12】図12は、寒天全糖のマススペクトル(保持時間35.8分)である。
【図13】図13は、寒天全糖のマススペクトル(保持時間37.3分)である。
【図14】図14は、寒天全糖の加水分解物(オリゴ糖化物)の薄層クロマトグラムである。
【図15】図15は、分子量検量線を示す。
【図16】図16は、寒天全糖の各加水分解条件におけるオリゴ糖のHPLCクロマトグラムである。
【図17】図17は、寒天全糖由来オリゴ糖のHPLCクロマトグラムである。
【図18】図18は、蒸留水で溶出された寒天分画物(非吸着画分)由来オリゴ糖のHPLCクロマトグラムである。
【図19】図19は、0.25M塩化ナトリウム水溶液で溶出された寒天分画物由来オリゴ糖のHPLCクロマトグラムである。
【図20】図20は、0.5M塩化ナトリウム水溶液で溶出された寒天分画物由来オリゴ糖のHPLCクロマトグラムである。
【図21】図21は、0.75M塩化ナトリウム水溶液で溶出された寒天分画物由来オリゴ糖のHPLCクロマトグラムである。
【図22】図22は、Sarcoma−180細胞を用いた場合の、コントロールの細胞数に対する、寒天を加えた系(寒天濃度は50μg/ml又は100μg/ml)における細胞数の相対値を示すグラフである。
【図23】図23は、HL−60細胞を用いた場合の、コントロールの細胞数に対する、寒天を加えた系(寒天濃度は50μg/ml又は100μg/ml)における細胞数の相対値を示すグラフである。
【図24】図24は、KMST6細胞を用いた場合の、コントロールの細胞数に対する、寒天を加えた系(寒天濃度は50μg/ml又は100μg/ml)における細胞数の相対値を示すグラフである。
【図25】図25は、KMST6細胞を用いた場合の、コントロールと寒天を加えた系(寒天濃度は50μg/ml)におけるLDH活性を示すグラフである。
【図26】図26は、KMST6細胞を用いた場合の、コントロールと寒天を加えた系(寒天濃度は100μg/ml)におけるLDH活性を示すグラフである。
【図27】図27は、HL60細胞を用いた場合の、コントロールと寒天を加えた系(寒天濃度は50μg/ml)におけるLDH活性を示すグラフである。
【図28】図28は、HL60細胞を用いた場合の、コントロールと寒天を加えた系(寒天濃度は100μg/ml)におけるLDH活性を示すグラフである。
【図29】図29は、Sarcoma180細胞を用いた場合の、コントロールと寒天を加えた系(寒天濃度は50μg/ml)におけるLDH活性を示すグラフである。
【図30】図30は、Sarcoma180細胞を用いた場合の、コントロールと寒天を加えた系(寒天濃度は100μg/ml)におけるLDH活性を示すグラフである。
【図31】図31は、Sarcoma180細胞を用いた場合の、コントロールの細胞数に対する、寒天全糖又はその分画物由来のオリゴ糖を加えた系(濃度は50μg/ml)における細胞数の相対値を示すグラフである。
【図32】図32は、Sarcoma180細胞を用いた場合の、コントロールの細胞数に対する、寒天全糖又はその分画物由来のオリゴ糖を加えた系(濃度は100μg/ml)における細胞数の相対値を示すグラフである。
【図33】図33は、腫瘍細胞を移植したマウスに寒天全糖又はその分画物由来のオリゴ糖を投与(100μg/kg又は500μg/kg)した場合における、マウス生存数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明を実施するための形態に基づき、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明の寒天多糖の分析方法は、セルロースアセテート膜又は濾紙を用いた電気泳動によって行う。電気泳動に使用するセルロースアセテート膜や濾紙は市販されているので、それらを用いればよい。
【0022】
本発明に係る寒天多糖の分析方法の特徴は、セルロースアセテート膜又は濾紙に寒天又は寒天の分画物の水性溶液をスポットした後、寒天又は寒天の分画物が溶解状態を保つ温度にて電気泳動を行う点にある。ここで、スポットする水性溶液における寒天又は寒天の分画物(固形分)の濃度は特に限定されないが、例えば0.1〜3.0%程度である。また、水性溶液は、好ましくは水溶液である。
【0023】
寒天は、その産地や原料海藻の種類によって溶解温度が異なる。従って、寒天又は寒天の分画物が溶解状態を保つ温度は一概には決められないが、例えば40℃〜70℃である。寒天又は寒天の分画物が溶解状態にある温度では、その構成成分である多糖類がランダム状態を維持するので、電気泳動が可能である。
【0024】
寒天は、その産地や原料海藻の種類によって構成多糖類も相違する。そこで、上記の方法で電気泳動を行えば、泳動スポットの位置や数の相違から、寒天の産地及び/又は原料海藻の種類を特定することができる。
【0025】
本発明の寒天多糖の分画方法では、寒天の水性溶液を、寒天が溶解状態を保つ温度にて陰イオン交換樹脂に通し、その後、陰イオン交換樹脂を寒天が溶解状態を保つ温度に保持したままで、水、続いて無機塩水溶液を使用してその無機塩濃度を高めながら溶出を行う。この際、分画はバッチ法でもカラムクロマト法でもかまわない。
【0026】
イオン交換樹脂に寒天を付与した後の溶出は、先ず、水で行う。このとき、非吸着物が流出してくるので、それを「非吸着画分」という。その後、無機塩水溶液を使用して、イオン交換樹脂に保持された成分を溶出させる。
【0027】
無機塩水溶液での溶出にあたり、使用する無機塩の種類は特に限定されないが、塩化ナトリウムが好ましい。無機塩濃度も特に限定されないが、例えば0.1M〜3.0Mの範囲内において、適当な範囲を選択することが好ましく、0.2M〜2.0Mの範囲内で無機塩濃度を変化させていくことがより好ましい。
【0028】
溶出された試料は、透析等によって脱塩することが好ましい。また、溶出された試料や透析後の試料は、凍結乾燥等の方法によって粉体化されてもよい。
【0029】
本発明は、多糖類のオリゴ糖化方法にも関する。本発明では、寒天又は寒天の分画物の水溶液を、酸の規定度が0.001N〜0.2Nの水溶液とし、温度を60℃〜105℃に保持して多糖類の加水分解を行うことにより、オリゴ糖を得る。酸の規定度が0.001N〜0.2Nの水溶液を調製するために、通常は、寒天又は寒天の分画物の水溶液に酸を添加するか、寒天又は寒天の分画物を酸の水溶液に溶解させる。
【0030】
使用する酸の例としては、塩酸、硫酸等の強酸や、酢酸などが挙げられ、強酸が好ましく、塩酸がさらに好ましい。加水分解の際、寒天又は寒天の分画物含有水溶液における酸の規定度は0.001N〜0.2Nであり、0.005N〜0.1Nが好ましく、0.02N〜0.05Nがさらに好ましい。また、温度は60℃〜105℃であり、80℃〜105℃が好ましく、90℃〜100℃がさらに好ましい。
【0031】
加水分解に要する時間は特に限定されないが、10〜120分間程度が好ましく、15〜60分間程度がさらに好ましい。
【0032】
本発明は、抗腫瘍活性を示すオリゴ糖組成物にも関する。「オリゴ糖組成物」とは、オリゴ糖一種以上と他の成分とを含有するか、オリゴ糖を二種以上含有するものを指す。抗腫瘍活性を示すオリゴ糖組成物には二種類あり、その一つは、上記の本発明に係る寒天多糖の分画方法で、0.2〜0.3Mの無機塩濃度にて溶出した試料を集め、その試料を温度60℃〜105℃にて加水分解することによって得られ、他方は、上記の本発明に係る寒天多糖の分画方法で、0.7〜0.8Mの無機塩濃度にて溶出した試料を集め、その試料を温度60℃〜105℃にて加水分解することによって得られる。これを凍結乾燥等の方法で粉体化してもよい。
【0033】
「0.2〜0.3Mの無機塩濃度での溶出」や、「0.7〜0.8Mの無機塩濃度での溶出」を行うに際し、無機塩濃度は、段階的に変化させてもよく、また、グラディエントで変化させてもよい。また、加水分解は、0.001N〜0.2Nの酸(好ましくは強酸)の存在下に行うことが好ましく、その時間は、10〜120分間程度である。
【0034】
本発明に係る抗腫瘍活性を示すオリゴ糖組成物を得るための最もよい条件は、次の通りである。
(1)約60℃に温めておいた陰イオン交換樹脂に、90〜100℃に加熱しておいた寒天水溶液(濃度:1〜100mg/ml程度)を加える。
(2)順に、蒸留水、0.25M、0.5M、0.75M、1.0M、1.25M及び1.5Mの塩化ナトリウム水溶液で、バッチ法により溶出する。
(3)各溶出液を透析に供して脱塩し、その後、凍結乾燥する。
(4)凍結乾燥品の水溶液(濃度:0.1〜1.0%程度)に塩酸を加え、0.01〜0.1Nとする。90〜100℃で、15〜60分間加水分解を行う。
(5)公知の方法により、精製を行う。
【0035】
本発明に係る分画法において、0.25M塩化ナトリウム水溶液で溶出される画分に含有される多糖類と0.75M塩化ナトリウム水溶液で溶出される画分に含有される多糖類は、いずれも、その構成糖として3,6−アンヒドロガラクトースとガラクトースとを含有する。従って、これらの画分に含有される多糖を加水分解してなるオリゴ糖も、その構成糖として3,6−アンヒドロガラクトースとガラクトースとを含有すると考えられる。しかし、同定されていない物質も含有している。
【0036】
また、オリゴ糖の分子量は、0.2〜0.3Mの無機塩濃度にて溶出した試料の加水分解物では約750(単一)であり、一方、0.7〜0.8Mの無機塩濃度にて溶出した試料の加水分解物では、約1600と約12,000(二種類)であった。
【0037】
本発明に係る抗腫瘍活性を示すオリゴ糖組成物二種は、実施例5に示すように、マウスにおいて抗腫瘍活性を示した。これらの組成物を用いた薬剤の剤型は限定されないが、注射剤、経口剤等に加工することができる。また、その投与量も、特に限定されない。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0039】
[実施例1]電気泳動による寒天多糖分析方法の検討
(1)材料
寒天XR−239
寒天XR−240
寒天XR−241
これらの寒天は、伊那食品工業株式会社より分与していただいた。また、これらの寒天の種類、産地及び基本物性は、表1に示すとおりであった。
【0040】
【表1】
【0041】
(3)セルロースアセテート膜電気泳動
(3−1)方法
電解液として0.4mol/l酢酸ナトリウム水溶液を用い、5mg/ml寒天水溶液を幅1cmの帯状にスポットした。比較対照として、スサビノリ由来ポルフィラン(伊那食品工業株式会社;細胞壁を構成する水溶性食物繊維)、フクロフノリ由来フノラン(伊那食品工業株式会社;食物繊維)、κ−カラギーナン(SIGMA;直鎖含硫黄多糖類)、アルギン酸(和光純薬工業株式会社;多糖類の食物繊維)、フコイダン(理研ビタミン株式会社;硫酸多糖類)の各々1mg/ml水溶液を用いた。泳動は、室温と60℃インキュベーター内の二条件で、1mA/cmで120分間行った。
【0042】
(3−2)結果
室温での泳動結果を図1に、60℃での泳動結果を図2に示す。
【0043】
室温での泳動では、寒天3種のうち、寒天239で不明瞭なスポットが検出されたのみであり、他の2種ではスポットは検出されなかった。ノリの繊維であるポルフィランからも、スポットは検出されなかった。フノリから得られるフノラン、スギノリやツノマタなど紅藻から得られるκ−カラギーナン並びに褐藻から得られるアルギン酸は、泳動方向に広いピークを示した。同じく褐藻から得られるフコイダンは、明瞭なスポットを示した。
【0044】
60℃での泳動では、寒天239が、室温における泳動に比べてより明瞭なスポットを示した。寒天240、寒天241及びノリ抽出物においても、スポットが検出された。フノラン及びκ−カラギーナンは、室温泳動時と同様に、泳動方向に広いピークを示した。
【0045】
室温条件下で泳動バンドが検出できない理由として、寒天がゲル化して泳動されなかったことが考えられる。唯一バンドが検出できたXR−239は、凝固点が45℃(伊那食品工業株式会社による)であり、室温では全成分が溶解しているとは考えられない。よって、一部の成分のみが泳動されたことが示唆される。この一部の成分の凝固点は、室温よりも低い可能性がある。
【0046】
一方、加温(60℃)条件下では、泳動が可能であった。また、そのバンドはすべて陽極側に泳動していたことから、構成糖が酸性糖であることが分かった。泳動スポットは、XR−239では1本、XR−240では2本、XR−241では3本が確認でき、しかもそれぞれ泳動距離が異なっていた。
【0047】
以上の結果より、加温電気泳動法により、原料や産地の異なる寒天が、その構成成分においても異なることが明らかとなった。また、この方法により、寒天の産地や原料海藻の特定が可能になると考えられた。
【0048】
[実施例2]寒天多糖の分画方法の検討
(1)材料
寒天XR−241
【0049】
(2)陰イオン交換樹脂を用いた寒天多糖の分画
陰イオン交換樹脂として、TOYOPEARL DEAE−650Mを用いた。60℃に温めておいた約40mlの陰イオン交換樹脂に、95℃に加熱しておいた寒天XR−241水溶液(濃度:25mg/ml)2mlを加え、陰イオン交換樹脂を約60℃に保ちながら、順に、蒸留水、0.25M、0.5M、0.75M、1.0M、1.25M及び1.5Mの塩化ナトリウム水溶液(各150ml)でバッチ法により溶出した。各溶出液は、4℃にて3日間透析し、その後、ナス型フラスコを用いて凍結乾燥した。
【0050】
(3)セルロースアセテート膜電気泳動
(2)で得られた分画物を、セルロースアセテート膜電気泳動に供した。電解液として0.4mol/l酢酸ナトリウム水溶液を用い、5mg/ml寒天分画物凍結乾燥品の水溶液を幅1cmの帯状にスポットした。泳動は1mA/cmで2時間半行った。泳動の間、常に60℃に加熱した。
【0051】
(4)結果
泳動結果を図3に示す。
【0052】
蒸留水で溶出した画分(以下、「非吸着画分」という)、0.25M塩化ナトリウム水溶液で溶出した画分(以下、「0.25N画分」という)、0.5M塩化ナトリウム水溶液で溶出した画分(以下、「0.5N画分」という)、及び0.75M塩化ナトリウム水溶液で溶出した画分(以下、「0.75N画分」という)においては一本の、1.0M塩化ナトリウム水溶液で溶出した画分(以下、「1.0N画分」という)においては二本の明瞭なスポットが検出された。全糖では上下に広いピークが検出されており、この広いピークが、非吸着画分から1.0N画分において分離されたことがわかる。分画時に用いた塩化ナトリウムの濃度が高くなるにつれて、泳動距離も長くなった。1.25M塩化ナトリウム水溶液で溶出した画分(以下、「1.25N画分」という)及び1.5M塩化ナトリウム水溶液で溶出した画分(以下、「1.5N画分」という)では、スポットを検出できなかった。
【0053】
[実施例3]分画物の物理的、化学的性状の検討
(1)ゲルの固さの測定
(1−1)クリープメータによる測定
(1−1−1)方法
寒天全糖、0.25N画分、0.5N画分、0.75N画分及び非吸着画分の凍結乾燥品の1%水溶液を、沸騰水浴させて溶解させることによって調製し、充分に撹拌した後に冷蔵し、ゲル化させた。室温(約20℃)に戻してから、クリープメータ(株式会社山電)を用いて物性を測定した。クリープメータの測定条件は、表2に示すとおりであった。ゲルの固さの指標として最大荷重を採用した。
【0054】
【表2】
【0055】
(1−1−2)結果
結果を図4に示す。平均最大荷重は、全糖が最も高く、0.25N画分、0.5N画分、0.75N画分の順で低くなっていった。非吸着画分は、ゲル化能が著しく低いため、クリープメータでは測定不可能であった。
【0056】
(1−2)破断曲線の測定
(1−2−1)方法
寒天全糖、0.25N画分、0.5N画分、0.75N画分及び非吸着画分の凍結乾燥品の1%水溶液を、沸騰水浴させて溶解させることによって調製し、充分に撹拌した後に冷蔵し、ゲル化させた。室温(約20℃)に戻してから、クリープメータを用いてゲルの硬さを測定した。ゲルの硬さの測定条件は、容器として内径8mmのエッペンドルフを用いたこと以外は、表2に示すものと同様であった。ゲルの固さの指標として最大荷重を採用し、測定時間の経過による最大荷重の変化をチャートに記載した。なお、寒天全糖、0.25N画分、0.5N画分については、各々三試料について測定を行った。
【0057】
(1−2−2)結果
結果を図5に示す。全糖で最も破断曲線が高い位置となり、0.25N画分、0.5N画分の順で低くなった。0.75N画分及び非吸着画分は、ともにゲル化能が弱く、破断曲線のみでは両者の比較はできなかった。
【0058】
(1−3)エッペンドルフ内でのゲルの状態の観察
(1−3−1)方法
視覚的にゲルの固さを表現するため、1.5ml容量のエッペンドルフ内で、寒天全糖、0.25N画分、0.5N画分、0.75N画分及び非吸着画分の凍結乾燥品の0.5%水溶液を、上記と同様の方法で調製した。これを冷蔵してゲル化させ、室温に戻し、真横に倒した時の様子を観察した。
【0059】
(1−3−2)結果
結果を図6に示す。全糖がゲル化能が最も高く、0.25N画分、0.5N画分の順にゲル化能が低下した。0.75N画分及び非吸着画分は、ゲル化能が著しく低かった。
【0060】
(1−4)回転粘度形による粘度の測定
(1−4−1)方法
EMD回転粘度計(Tokimec社)によって、粘度を測定した。測定条件は、次の通りであった。
(測定条件)
温度: 20℃
画分の凍結乾燥品の濃度: 0.5%
回転速度: 50rpm
コーンの種類: 1°、34´
【0061】
寒天ゲルは非ニュートン流体であるため、結果は見かけ粘度(μ)で表した。見かけ粘度は次の公式により求めた。
見かけ粘度(μ)=Kn・θ(mPa・s)
Kn: 換算乗数(Tokimec EMD型、50rpmでは2.56)
θ:目盛指度
【0062】
(1−4−2)結果
結果を図7に示す。全糖、0.25N画分、0.5N画分、0.75N画分の順に粘度が高かった。また、クリープメータではゲルの硬さを測定することができなかった非吸着画分も、測定が可能であった。
【0063】
(2)硫酸基濃度の測定
(2−1)方法
硫酸基濃度はドッジソン法を用いて測定した。寒天全糖又は各画分の凍結乾燥品の水溶液(1mg/ml)1mlに、等量の8Mトリフルオロ酢酸(TFA)を加え、100℃にて3時間、加水分解した。その後、減圧乾固し、残渣を蒸留水1mlに溶解させた。このように調製した水溶液0.2mlを試験管に取り、4%(w/v)トリクロロ酢酸(TCA)水溶液3.8mlと塩化バリウム−ゼラチン水溶液(塩化バリウム:特級ゼラチン:水=1g:1g:200ml)1mlとを加えた。20分間室温で放置した後、吸光度(360nm)を測定した。スタンダードには硫酸を用いた。
【0064】
(2−2)結果
結果を表3に示す。硫酸基濃度は、0.5N画分が最も高く、次いで全糖であり、それ以降は非吸着画分、0.25N画分の順で低くなり、0.75N画分が最も低かった。分画時のNaCl濃度と硫酸基濃度に比例関係はなかったものの、画分により大きな差があることが明らかになった。
【0065】
【表3】
【0066】
(3)ガスクロマトグラフ法、ガスクロマトグラフ−マススペクトル法による構成糖の検討
(3−1)方法
寒天の構成糖を調べるために、ガスクロマトグラフ法(GLC)を採用した。スタンダードとして、グルコース、ガラクトース、フルクトースを用いた。
【0067】
寒天全糖又は各画分の凍結乾燥品1mgに10%塩酸−メタノールを1ml添加した。その後、100℃で16時間加熱することにより、多糖を完全に分解した。窒素ガス通気で乾固した後、水を加えて糖の10%水溶液を調製した。含水糖試料用トリメチルシリル化剤ピリジン溶液(TMS−PZ)試薬(東京化成工業株式会社)500μlに糖の10%水溶液5μlを加え、30秒間振り混ぜた。その後、ウォーターバスを用い、60℃にて15分間の温浴をし、TMS誘導体とした。このように調製された混合液1μlを、GLC分析に供した。GLCの条件は、次の通りであった。また、マススペクトルも測定した。
【0068】
(条件)
カラム: DB17(0.25mm×30m)
カラム温度: 150〜250℃(昇温速度:2℃/分)
インジェクション温度: 230℃
キャリアガス: N2(1ml/分)
検出: 水素炎イオン検出器(FID)
【0069】
(3−2)結果
寒天全糖を用いた場合のガスクロマトグラムを図8に、0.25N画分を用いた場合のガスクロマトグラムを図9に、0.75N画分を用いた場合のガスクロマトグラムを図10に示した。また、寒天全糖を用いた場合のマススペクトルを図11乃至図13に示した。各サンプルの構成多糖は、次の通りであった。
【0070】
(寒天全糖)
ガスクロマトグラム(図8)とマススペクトルの結果(図11乃至図13)と照らし合わせた結果、ピーク1とピーク3は3,6−アンヒドロガラクトース、ピーク2とピーク4はガラクトースであると推定された。ピーク5は同定することができなかった。
【0071】
(0.25N画分)
ガスクロマトグラム(図9)とマススペクトルの結果(図11乃至図13)と照らし合わせた結果、ピーク6とピーク9は3,6−アンヒドロガラクトース、ピーク8とピーク10はガラクトースであると推定された。ピーク7は図8には出現しなかったピークであり、未同定である。また、ピーク11は、保持時間が同一であるので、ピーク5(図8)と同一の物質である。
【0072】
(0.75N画分)
ガスクロマトグラム(図10)とマススペクトルの結果(図11乃至図13)と照らし合わせた結果、ピーク14は3,6−アンヒドロガラクトース、ピーク13とピーク15はガラクトースであると推定された。ピーク12は、保持時間が同一であるので、ピーク7(図9)と同一の物質である。また、ピーク16は、保持時間が同一であるので、ピーク5(図8)及びピーク11(図9)と同一の物質である。図8及び図9と比較して、ピーク16が相対的に大きなピークであることが、このガスクロマトグラムの最大の特徴である。
【0073】
なお、図11は、保持時間35.5分で、ガラクトースのスペクトルである。ガスクロマトグラムにおけるピーク2、4、8、10、13及び15は、すべてこのスペクトルとほぼ同様の結果を示した。
【0074】
図12は、保持時間35.8分で、3,6−アンヒドロガラクトースのスペクトルであると考えられる。ガスクロマトグラムにおけるピーク1、3、6、9及び14は、すべてこのスペクトルとほぼ同様の結果を示した。
【0075】
図13は、保持時間37.3分であるが、この物質は未同定である。ガスクロマトグラムにおけるピーク5、11及び16は、すべてこのスペクトルと同様の結果を示した。この物質は、図10の0.75N画分のガスクロマトグラムにおいて、相対的に大きなピークを示した物質であり、今後の構造解析が待たれる。
【0076】
[実施例4]寒天多糖のオリゴ糖化の検討
(1)薄層クロマトグラフィーによる検討
(1−1)方法
寒天全糖のオリゴ糖化を試みた。寒天全糖5mgに、塩酸水溶液(0.05M(=0.05N)又は0.1M(=0.1N))もしくは酢酸水溶液(0.05M(=0.05N)又は0.1M(=0.1N))8mlを加え、37℃のインキュベーター内で5時間、加水分解を行い、その後、減圧乾固させた。これを少量の水に溶解した後、薄層クロマトグラフィー(TLC)に供した。TLCにはシリカゲル60F254シートを用い、展開溶媒には酢酸エチル:酢酸:水 (2:1:1(容量比))を用いた。比較対照には、ガラクトースを用いた。検出は、濃硫酸を噴霧し、120℃に加熱して行った。
【0077】
(1−2)結果
結果を図14に示す。0.05M塩酸水溶液で加水分解されたものと、0.1M塩酸水溶液で加水分解されたものとを比較すると、いずれもガラクトースのスポットが明確であるから、塩酸の場合には0.05Mで十分に加水分解が行われたことがわかる。一方、酢酸による加水分解では、スポットが著しく不明確であることから、濃度が0.1Mでも、加水分解は十分には行われなかったことがわかる。
【0078】
(2)高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)による検討
(2−1)各加水分解条件における寒天全糖由来オリゴ糖の分子量の推定
(1)のTLCの結果を踏まえ、加水分解に用いる塩酸の濃度、加水分解時の温度及び時間の最適条件を検討するために、HPLCを用いて得られたオリゴ糖の分子量を推定した。
【0079】
(2−1−1)方法
予め加熱溶解した0.25%寒天水溶液を、以下の各加水分解条件においてオリゴ糖化し、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)モードのHPLCに供した。HPLCの条件は、表4に記載の通りである。なお、カラムはTSK−gel G3000SWXL(東ソー株式会社製;φ7.8mm×30cm)を用い、移動相は0.01NのTFAであり、流速は1ml/分、検出にはラジオアイソトープを使用した。また、分子量標準物質として、市販のプルランシリーズ Shodex STANDARD P−82、ラクトース(関東化学製)、ガラクトース(SIGMA製)を用いた。これらの分子量は、表5に示した。
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】
【0082】
(2−1−2)結果
得られた分子量検量線を、図15に示す。図15では、ラクトースの溶出量に対する相対値を用いた。近似曲線は三次曲線となった。
【0083】
検討条件(1)、(4)及び(7)におけるHPLCのクロマトグラムを図16に示す。(1)の加水分解条件では、加水分解が不十分のため、上下に広いピークが現れた。(4)の加水分解条件では、塩酸の濃度が高くなったことにより分解が進み、二つのピークが現れた。(7)の加水分解条件では、(4)の二つのピークとそれぞれほぼ同一の保持時間にピークが現れたが、前半に現れるピークの、後半のピークに対する相対的大きさが異なっていた。
【0084】
(2−2)寒天分画物由来オリゴ糖の分子量推定
(2−2−1)方法
予め加熱溶解した寒天全糖又は各画分の凍結乾燥品の0.25%水溶液であって塩酸濃度が0.025Nのものを、100℃に20分間保持して多糖を加水分解し、オリゴ糖を得た。得られたサンプルをGPCモードのHPLCに供した。HPLCの実施に使用したカラムはTSK−gel G3000SWXL(東ソー株式会社製;φ7.8mm×30cm)であり、移動相は0.01NのTFAであり、流速は1ml/分、検出にはラジオアイソトープを使用した。また、カラムは温度27℃であった。
【0085】
(2−2−2)結果
オリゴ糖の原料と、得られたオリゴ糖それぞれの分子量、糖数(グルコース換算)を表6に示す。画分により、オリゴ糖の分子量に大きく差があることがわかる。また、寒天全糖由来オリゴ糖のHPLCクロマトグラムを図17に、非吸着画分由来オリゴ糖のHPLCクロマトグラムを図18に、0.25N画分由来オリゴ糖のHPLCクロマトグラムを図19に、0.5N画分由来オリゴ糖のHPLCクロマトグラムを図20に、そして0.75N画分由来オリゴ糖のHPLCクロマトグラムを図21に示す。
【0086】
全糖由来オリゴ糖と0.25N画分由来オリゴ糖は、分子量が一種類であり、非吸着画分由来オリゴ糖、0.5N画分由来オリゴ糖及び0.75N画分由来オリゴ糖は、それぞれ図18、図20及び図21においてピークが二つに分かれたことから明らかなように、二種類の分子量を有する。
【0087】
【表6】
【0088】
[実施例5]抗腫瘍活性の測定
(1)in vitroでの抗腫瘍活性の測定
(1−1)寒天多糖の抗腫瘍活性
(1−1−1)方法
実施例1で使用した寒天X−241のPBS溶液(寒天濃度:1mg/ml)を調製した。48穴プレートを用い、Sarcoma−180(マウス腹水腫由来)、HL60(ヒト白血病由来)及びKMST−6(胎児線維芽細胞由来)の各細胞を、1×105cells/mlの割合で各ウェルに浮遊させ、ここに、寒天としての最終濃度が50μg/ml又は100μg/mlになるように、寒天のPBS溶液を加えた。コントロール用には、同量のPBSを加えた。37℃、5%CO2の条件で、インキュベーター内で培養した。培養開始から、24時間、48時間、72時間後に、細胞を含む培養液を採取し、それに0.5%トリパンブルー水溶液を加え、染色されなかった生細胞数を、血球計算板を用いて計測した。また、Cyto Tox 96 Non−Radioactive Cytotoxity Assayキット(Promega社製)を用いて、LDH活性を指標として細胞毒性を評価した。
【0089】
(1−1−2)結果
(直接細胞障害活性)
コントロールの細胞数に対する、寒天を加えた系における細胞数の相対値を、図22乃至図24に示す。なお、図22はSarcoma−180、図23はHL60、そして図24はKMST−6を使用した実験結果である。いずれの細胞を使用した場合も、また、寒天X−241の濃度が50μg/mlの場合も100μg/mlの場合も、細胞は障害されなかった。
【0090】
(LDH活性)
コントロール及び寒天添加時のLDH活性を、図25乃至図30に示す。なお、図25及び図26はKMST−6、図27及び図28はHL60、そして図29及び図30はSarcoma−180を使用した実験結果である。いずれの細胞を使用した場合も、また、寒天X−241の濃度が50μg/mlの場合も100μg/mlの場合も、LDH活性はコントロールと差がなかった。
【0091】
(1−2)寒天多糖由来オリゴ糖の細胞毒性
実施例2(2)で分画し、凍結乾燥したものを、加水分解によってオリゴ糖化した。そのオリゴ糖化したサンプルを用いて、in vitroで細胞毒性を調べた。
【0092】
(1−2−1)方法
寒天全糖又は各画分の凍結乾燥品3mgに5mlの蒸留水を加え、充分に加熱溶解した。その後、最終濃度が0.025M(=0.025N)となるように塩酸を加え、100℃で20分間加水分解した。加水分解後のサンプルを遠心エバポレーターにかけ、乾固させ、蒸留水を加え、再び乾固させて塩酸を十分に除去した。乾固したサンプルをPBS3mlに溶解し、1mg/ml濃度のオリゴ糖PBS溶液とした。
【0093】
オリゴ糖PBS溶液を、0.2μmのシリンジ・フィルターを用いてろ過滅菌した。この滅菌後の溶液を、オリゴ糖の最終濃度が50μl/ml又は100μl/mlとなるように、細胞懸濁液(5×104cells/ml)に加え、(1−1)と同様の方法で、オリゴ糖が細胞増殖に与える影響について検討した。なお、用いた細胞はSarcoma180であった。コントロール用には、同量のPBSを加えた。また、試験区は表7に示すとおりであった。
【0094】
【表7】
【0095】
(1−2−2)結果
コントロールの血球数に対する、寒天全糖由来オリゴ糖又は寒天分画物由来オリゴ糖を加えた系における血球数の相対値を、図31及び図32に示す。なお、図31は、オリゴ糖の最終濃度が50μl/mlの場合の、図32は、オリゴ糖の最終濃度が100μl/mlの場合の実験結果である。いずれの場合も、細胞は障害されなかった。
【0096】
(2)in vivoでの抗腫瘍活性の測定
実施例2(2)で分画し、凍結乾燥したものを、加水分解によってオリゴ糖化した。そのオリゴ糖化したサンプルを用いて、in vivoで抗腫瘍活性を調べた。
【0097】
(2−1)方法
(2−1−1)投与サンプルの調製
寒天全糖又は各画分の凍結乾燥品に糖濃度が0.25%になるよう蒸留水を加え、充分に加熱溶解した。その後、最終濃度が0.025M(=0.025N)となるように塩酸を加え、100℃で20分間加水分解した。加水分解後のサンプルを遠心エバポレーターにかけ、乾固させ、蒸留水を加え、再び乾固させて塩酸を十分に除去した。乾固したサンプルを滅菌生理食塩水(NaCl濃度:0.9%(w/v))に溶解し、0.1mg/ml濃度のオリゴ糖の生理食塩水溶液とした。
【0098】
オリゴ糖の生理食塩水溶液を、0.2μmのシリンジ・フィルターを用いてろ過滅菌し、その後、凍結保存した。
【0099】
(2−1−2)マウスへの投与実験方法
Std:ddy系マウス(6週齢、♂、平均体重28g)(日本エスエルシー社より購入)を使用した。1週間予備飼育した後、1日目に、予め別のマウス腹腔内で培養しておいたSarcoma180細胞を滅菌生理食塩水に懸濁させた状態で、1匹あたり1×106個腹腔内に投与した。コントロール1のマウスには、Sarcoma180細胞を投与しなかった。
【0100】
2日目からの10日間は、試験区のマウスには、毎日、オリゴ糖の生理食塩水溶液を腹腔内投与した。また、コントロール1及びコントロール2のマウスには、同量の生理食塩水溶液を投与した。1回あたりの投与量は、全て0.1mlとした。1試験区あたりのマウスは7匹とし、各試験区は表8に示すとおりであった。
【0101】
【表8】
【0102】
投与開始から、体重と生存数を測定した。動物福祉の観点から、マウスを死亡したと見なす際に、当研究室で定めている人道的エンドポイントを判断基準として用いた。すなわち、(1)真上から測定した胸部の体幅に対する腹部の体幅が200%を超えるとき、及び(2)対照1のマウスの平均体重に対し、体重が150%を超えるときの2点である。
【0103】
(2−2)結果
各試験区のマウス生存数を表9及び図33に示す。0.25N画分由来オリゴ糖を100μg/kgで投与した群と、0.75N画分由来オリゴ糖を100μg/kgで投与した群で、最も生存率(71.4%)が高かった。これらに次ぐ生存率(42.9%)を示したのは、非吸着画分由来オリゴ糖を100μg/kgで投与した群と、0.5N画分由来オリゴ糖を500μg/kgで投与した群と、全糖由来オリゴ糖を500μg/kgで投与した群であった。
【0104】
【表9】
【0105】
以上のように、0.25N画分由来オリゴ糖を100μg/kgで投与した群と0.75N画分由来オリゴ糖を100μg/kgで投与した群で、抗腫瘍活性が認められた。しかし、これらの画分由来オリゴ糖を初めとして、寒天多糖由来のオリゴ糖は、(1−2)に示したように、直接細胞を攻撃しない。従って、0.25N画分由来オリゴ糖と0.75N画分由来オリゴ糖は、免疫システムを賦活することにより、結果的に腫瘍を抑制したのではないかと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明に係る寒天多糖類の分析方法や分画方法は、寒天の分類や分離精製に利用できる。また、本発明は、寒天多糖由来のオリゴ糖を、寒天全糖又はその分画物から得ることを可能にする。さらに、本発明は、抗腫瘍活性を示す組成物の調製に利用できる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、寒天多糖の分析方法、寒天多糖の分画方法、寒天又はその分画物中の多糖のオリゴ糖化方法、及び寒天由来の抗腫瘍活性を有するオリゴ糖組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本では食生活の欧米化に伴い、生活習慣病が増加しており、その要因の一つとして食物繊維摂取量の減少が考えられている。食物繊維は消化吸収されず、従来は非栄養素であるとされていたが、排便を円滑にし、有害物質を吸着・排除する効果があることなどから、第六の栄養素であるとして見直されてきている。そこで、食物繊維を豊富に含む海藻が注目されるようになった。海藻には、ビタミン、タンパク質、ミネラルなども豊富に含有されており、健康食品として話題になっている。
【0003】
ところで、海藻の多糖類は、セルロースなどの藻体の骨格を作る骨格多糖類、デンプンやラミナランなどの光合成産物である貯蔵多糖類、及びアルギン酸などの細胞間を充填する粘質多糖類の3種類に分類される。粘質多糖類には、抗腫瘍活性、血圧降下作用、コレステロール低下作用、抗酸化作用ならびに抗血液凝固作用などの生物活性を有するものが多数報告されている。
【0004】
海藻類の中で、紅藻は、寒天に加工されて古くから利用されてきた。寒天は、和菓子等の食品における利用を初めとして、工業用、医療用、化粧品用及び試薬用(細菌培地、組織培養)等、様々な用途で使用されている。そして、近年になり、寒天の様々な生理機能が明らかとされ、よって、寒天に対する健康を促進する食品としての期待が高まっている。
【0005】
寒天の原料は紅藻で、主としてテングサ属(Gelidium)、オゴノリ属(Gracilaria)、オバクサ属(Pterocladia)、イタニグサ属(Ahnfeltia)等に属する紅藻類が利用されている。天草の主産地は日本、モロッコ、チリ、韓国、スペイン等であり、オゴノリの主産地はチリ、南アフリカ、アルゼンチン、日本等である。このように、寒天の原料及び産地は種々様々であるが、そのような原料や産地の相違よる成分組成、物性、構成糖、硫酸基含量や生物活性の相違等は、明らかとされていない。特にその構成多糖に関しては、寒天が常温で固化するため、これまでは分析や分画が為されてこなかった。わずかに、非特許文献1に、寒天の精製方法と、寒天の主成分の一つであるアガロースが、D−ガラクトース残基と3,6−アンヒドロ−L−ガラクトース残基が交互にくる線状多糖からなることが記載されているのみである。
【0006】
一方、1970年代から種々のオリゴ糖が開発され、それらの機能、具体的には、非う触性、腸内菌叢改善作用、ミネラル吸収促進作用、免疫賦活作用等の生理機能や生体調節機能に関する研究が活発になされてきている。また、世界保健機構(WHO)によれば、2005年、世界の死亡者の13%は、悪性腫瘍による死亡である。日本でも、1981年からは悪性腫瘍が死因のトップとなっており、2006年度における死因の3割が悪性腫瘍である。このような状況下、世界中において、抗腫瘍活性を有する物質の探索が行われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Stellan Hjerten,J.Chromatogr., 61(1971)pp.73−80
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、多糖を多く含有する寒天に着目した。そして、寒天多糖からも、様々な生理機能や生体調節機能を有するオリゴ糖を得ることが可能であると考えた。しかし、そのような研究を行うためには、先ず、寒天の物理的・化学的特性を明らかにし、また寒天に含まれる有用成分の生理機能等を明らかにする必要があると考え、そのためには、寒天多糖の分析、分画方法を確立する必要があると考えた。
【0009】
本発明の目的は、寒天多糖の分析方法を提供することにある。また、本発明の目的は、寒天多糖の分画方法を提供することにある。さらに、本発明の目的は、寒天又は寒天分画物中の多糖のオリゴ糖化方法を提供することにある。そして、本発明の目的は、寒天由来の抗腫瘍活性を有するオリゴ糖組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、寒天多糖の分析方法及び分画方法を開発すべく、鋭意検討した。その結果、本発明をなすに至った。
【0011】
即ち本発明は、セルロースアセテート膜又は濾紙で、寒天又は寒天の分画物の水性溶液を電気泳動することからなる寒天多糖の分析方法であって、寒天又は寒天の分画物が溶解状態を保つ温度にて電気泳動を行うことを特徴とする寒天多糖の分析方法に関する。
【0012】
本発明は、セルロースアセテート膜又は濾紙を用い、寒天又は寒天の分画物の水性溶液を寒天が溶解状態を保つ温度にて電気泳動を行い、泳動後に検出されたスポットの位置及び数から、寒天の産地及び/又は原料海藻の種類を特定することを特徴とする、寒天の産地及び/又は原料海藻の種類を特定する方法にも関する。
【0013】
本発明は、寒天の水性溶液を、寒天が溶解状態を保つ温度にて陰イオン交換樹脂に通し、その後、陰イオン交換樹脂を寒天が溶解状態を保つ温度に保持したままで、水、続いて無機塩水溶液を使用してその無機塩濃度を高めながら寒天多糖の溶出を行うことを特徴とする寒天多糖の分画方法に関する。
【0014】
また、本発明者らは、寒天又は寒天分画物中の多糖のオリゴ糖化方法を開発すべく、鋭意検討した。その結果、本発明をなすに至った。
【0015】
即ち本発明は、寒天又は寒天の分画物の水溶液を、酸の規定度が0.001N〜0.2Nの水溶液とし、温度を60℃〜105℃に保持して多糖類の加水分解を行うことを特徴とする寒天又は寒天分画物中の多糖のオリゴ糖化方法に関する。
【0016】
さらに、本発明者らは、寒天由来のオリゴ糖組成物の生理活性について検討し、寒天からの特定の分画物中の多糖類を加水分解してなるオリゴ糖組成物が、抗腫瘍活性を示すことを見いだし、本発明を完成させた。
【0017】
即ち本発明は、寒天の水性溶液を、寒天が溶解状態を保つ温度にて陰イオン交換樹脂に通し、その後、陰イオン交換樹脂を寒天が溶解状態を保つ温度に保持したままで、水、続いて無機塩水溶液を使用してその無機塩濃度を高めながら寒天多糖の溶出を行い、0.2〜0.3Mの無機塩濃度にて溶出した試料を集め、その試料を温度60℃〜105℃にて加水分解して得られる、抗腫瘍活性を示すオリゴ糖組成物に関する。
【0018】
また、本発明は、寒天の水性溶液を、寒天が溶解状態を保つ温度にて陰イオン交換樹脂に通し、その後、陰イオン交換樹脂を寒天が溶解状態を保つ温度に保持したままで、水、続いて無機塩水溶液を使用してその無機塩濃度を高めながら寒天多糖の溶出を行い、0.7〜0.8Mの無機塩濃度にて溶出した試料を集め、その試料を温度60℃〜105℃にて加水分解して得られる、抗腫瘍活性を示すオリゴ糖組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、寒天の室温におけるセルロースアセテート膜電気泳動の結果を示す。
【図2】図2は、寒天の60℃におけるセルロースアセテート膜電気泳動の結果を示す。
【図3】図3は、寒天全糖及びその分画物の60℃におけるセルロースアセテート膜電気泳動の結果を示す。
【図4】図4は、寒天全糖及びその分画物のゲルの平均最大荷重を示すグラフである。
【図5】図5は、寒天全糖及びその分画物のゲルの最大荷重を示すチャートである。
【図6】図6は、傾けたエッペンドルフ内での寒天全糖及びその分画物のゲルの状態を示す写真である。
【図7】図7は、寒天全糖及びその分画物のゲルの見かけ粘度を示すグラフである。
【図8】図8は、寒天全糖のガスクロマトグラムである。
【図9】図9は、0.25M塩化ナトリウム水溶液で溶出された寒天分画物のガスクロマトグラムである。
【図10】図10は、0.75M塩化ナトリウム水溶液で溶出された寒天分画物のガスクロマトグラムである。
【図11】図11は、寒天全糖のマススペクトル(保持時間35.5分)である。
【図12】図12は、寒天全糖のマススペクトル(保持時間35.8分)である。
【図13】図13は、寒天全糖のマススペクトル(保持時間37.3分)である。
【図14】図14は、寒天全糖の加水分解物(オリゴ糖化物)の薄層クロマトグラムである。
【図15】図15は、分子量検量線を示す。
【図16】図16は、寒天全糖の各加水分解条件におけるオリゴ糖のHPLCクロマトグラムである。
【図17】図17は、寒天全糖由来オリゴ糖のHPLCクロマトグラムである。
【図18】図18は、蒸留水で溶出された寒天分画物(非吸着画分)由来オリゴ糖のHPLCクロマトグラムである。
【図19】図19は、0.25M塩化ナトリウム水溶液で溶出された寒天分画物由来オリゴ糖のHPLCクロマトグラムである。
【図20】図20は、0.5M塩化ナトリウム水溶液で溶出された寒天分画物由来オリゴ糖のHPLCクロマトグラムである。
【図21】図21は、0.75M塩化ナトリウム水溶液で溶出された寒天分画物由来オリゴ糖のHPLCクロマトグラムである。
【図22】図22は、Sarcoma−180細胞を用いた場合の、コントロールの細胞数に対する、寒天を加えた系(寒天濃度は50μg/ml又は100μg/ml)における細胞数の相対値を示すグラフである。
【図23】図23は、HL−60細胞を用いた場合の、コントロールの細胞数に対する、寒天を加えた系(寒天濃度は50μg/ml又は100μg/ml)における細胞数の相対値を示すグラフである。
【図24】図24は、KMST6細胞を用いた場合の、コントロールの細胞数に対する、寒天を加えた系(寒天濃度は50μg/ml又は100μg/ml)における細胞数の相対値を示すグラフである。
【図25】図25は、KMST6細胞を用いた場合の、コントロールと寒天を加えた系(寒天濃度は50μg/ml)におけるLDH活性を示すグラフである。
【図26】図26は、KMST6細胞を用いた場合の、コントロールと寒天を加えた系(寒天濃度は100μg/ml)におけるLDH活性を示すグラフである。
【図27】図27は、HL60細胞を用いた場合の、コントロールと寒天を加えた系(寒天濃度は50μg/ml)におけるLDH活性を示すグラフである。
【図28】図28は、HL60細胞を用いた場合の、コントロールと寒天を加えた系(寒天濃度は100μg/ml)におけるLDH活性を示すグラフである。
【図29】図29は、Sarcoma180細胞を用いた場合の、コントロールと寒天を加えた系(寒天濃度は50μg/ml)におけるLDH活性を示すグラフである。
【図30】図30は、Sarcoma180細胞を用いた場合の、コントロールと寒天を加えた系(寒天濃度は100μg/ml)におけるLDH活性を示すグラフである。
【図31】図31は、Sarcoma180細胞を用いた場合の、コントロールの細胞数に対する、寒天全糖又はその分画物由来のオリゴ糖を加えた系(濃度は50μg/ml)における細胞数の相対値を示すグラフである。
【図32】図32は、Sarcoma180細胞を用いた場合の、コントロールの細胞数に対する、寒天全糖又はその分画物由来のオリゴ糖を加えた系(濃度は100μg/ml)における細胞数の相対値を示すグラフである。
【図33】図33は、腫瘍細胞を移植したマウスに寒天全糖又はその分画物由来のオリゴ糖を投与(100μg/kg又は500μg/kg)した場合における、マウス生存数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明を実施するための形態に基づき、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明の寒天多糖の分析方法は、セルロースアセテート膜又は濾紙を用いた電気泳動によって行う。電気泳動に使用するセルロースアセテート膜や濾紙は市販されているので、それらを用いればよい。
【0022】
本発明に係る寒天多糖の分析方法の特徴は、セルロースアセテート膜又は濾紙に寒天又は寒天の分画物の水性溶液をスポットした後、寒天又は寒天の分画物が溶解状態を保つ温度にて電気泳動を行う点にある。ここで、スポットする水性溶液における寒天又は寒天の分画物(固形分)の濃度は特に限定されないが、例えば0.1〜3.0%程度である。また、水性溶液は、好ましくは水溶液である。
【0023】
寒天は、その産地や原料海藻の種類によって溶解温度が異なる。従って、寒天又は寒天の分画物が溶解状態を保つ温度は一概には決められないが、例えば40℃〜70℃である。寒天又は寒天の分画物が溶解状態にある温度では、その構成成分である多糖類がランダム状態を維持するので、電気泳動が可能である。
【0024】
寒天は、その産地や原料海藻の種類によって構成多糖類も相違する。そこで、上記の方法で電気泳動を行えば、泳動スポットの位置や数の相違から、寒天の産地及び/又は原料海藻の種類を特定することができる。
【0025】
本発明の寒天多糖の分画方法では、寒天の水性溶液を、寒天が溶解状態を保つ温度にて陰イオン交換樹脂に通し、その後、陰イオン交換樹脂を寒天が溶解状態を保つ温度に保持したままで、水、続いて無機塩水溶液を使用してその無機塩濃度を高めながら溶出を行う。この際、分画はバッチ法でもカラムクロマト法でもかまわない。
【0026】
イオン交換樹脂に寒天を付与した後の溶出は、先ず、水で行う。このとき、非吸着物が流出してくるので、それを「非吸着画分」という。その後、無機塩水溶液を使用して、イオン交換樹脂に保持された成分を溶出させる。
【0027】
無機塩水溶液での溶出にあたり、使用する無機塩の種類は特に限定されないが、塩化ナトリウムが好ましい。無機塩濃度も特に限定されないが、例えば0.1M〜3.0Mの範囲内において、適当な範囲を選択することが好ましく、0.2M〜2.0Mの範囲内で無機塩濃度を変化させていくことがより好ましい。
【0028】
溶出された試料は、透析等によって脱塩することが好ましい。また、溶出された試料や透析後の試料は、凍結乾燥等の方法によって粉体化されてもよい。
【0029】
本発明は、多糖類のオリゴ糖化方法にも関する。本発明では、寒天又は寒天の分画物の水溶液を、酸の規定度が0.001N〜0.2Nの水溶液とし、温度を60℃〜105℃に保持して多糖類の加水分解を行うことにより、オリゴ糖を得る。酸の規定度が0.001N〜0.2Nの水溶液を調製するために、通常は、寒天又は寒天の分画物の水溶液に酸を添加するか、寒天又は寒天の分画物を酸の水溶液に溶解させる。
【0030】
使用する酸の例としては、塩酸、硫酸等の強酸や、酢酸などが挙げられ、強酸が好ましく、塩酸がさらに好ましい。加水分解の際、寒天又は寒天の分画物含有水溶液における酸の規定度は0.001N〜0.2Nであり、0.005N〜0.1Nが好ましく、0.02N〜0.05Nがさらに好ましい。また、温度は60℃〜105℃であり、80℃〜105℃が好ましく、90℃〜100℃がさらに好ましい。
【0031】
加水分解に要する時間は特に限定されないが、10〜120分間程度が好ましく、15〜60分間程度がさらに好ましい。
【0032】
本発明は、抗腫瘍活性を示すオリゴ糖組成物にも関する。「オリゴ糖組成物」とは、オリゴ糖一種以上と他の成分とを含有するか、オリゴ糖を二種以上含有するものを指す。抗腫瘍活性を示すオリゴ糖組成物には二種類あり、その一つは、上記の本発明に係る寒天多糖の分画方法で、0.2〜0.3Mの無機塩濃度にて溶出した試料を集め、その試料を温度60℃〜105℃にて加水分解することによって得られ、他方は、上記の本発明に係る寒天多糖の分画方法で、0.7〜0.8Mの無機塩濃度にて溶出した試料を集め、その試料を温度60℃〜105℃にて加水分解することによって得られる。これを凍結乾燥等の方法で粉体化してもよい。
【0033】
「0.2〜0.3Mの無機塩濃度での溶出」や、「0.7〜0.8Mの無機塩濃度での溶出」を行うに際し、無機塩濃度は、段階的に変化させてもよく、また、グラディエントで変化させてもよい。また、加水分解は、0.001N〜0.2Nの酸(好ましくは強酸)の存在下に行うことが好ましく、その時間は、10〜120分間程度である。
【0034】
本発明に係る抗腫瘍活性を示すオリゴ糖組成物を得るための最もよい条件は、次の通りである。
(1)約60℃に温めておいた陰イオン交換樹脂に、90〜100℃に加熱しておいた寒天水溶液(濃度:1〜100mg/ml程度)を加える。
(2)順に、蒸留水、0.25M、0.5M、0.75M、1.0M、1.25M及び1.5Mの塩化ナトリウム水溶液で、バッチ法により溶出する。
(3)各溶出液を透析に供して脱塩し、その後、凍結乾燥する。
(4)凍結乾燥品の水溶液(濃度:0.1〜1.0%程度)に塩酸を加え、0.01〜0.1Nとする。90〜100℃で、15〜60分間加水分解を行う。
(5)公知の方法により、精製を行う。
【0035】
本発明に係る分画法において、0.25M塩化ナトリウム水溶液で溶出される画分に含有される多糖類と0.75M塩化ナトリウム水溶液で溶出される画分に含有される多糖類は、いずれも、その構成糖として3,6−アンヒドロガラクトースとガラクトースとを含有する。従って、これらの画分に含有される多糖を加水分解してなるオリゴ糖も、その構成糖として3,6−アンヒドロガラクトースとガラクトースとを含有すると考えられる。しかし、同定されていない物質も含有している。
【0036】
また、オリゴ糖の分子量は、0.2〜0.3Mの無機塩濃度にて溶出した試料の加水分解物では約750(単一)であり、一方、0.7〜0.8Mの無機塩濃度にて溶出した試料の加水分解物では、約1600と約12,000(二種類)であった。
【0037】
本発明に係る抗腫瘍活性を示すオリゴ糖組成物二種は、実施例5に示すように、マウスにおいて抗腫瘍活性を示した。これらの組成物を用いた薬剤の剤型は限定されないが、注射剤、経口剤等に加工することができる。また、その投与量も、特に限定されない。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0039】
[実施例1]電気泳動による寒天多糖分析方法の検討
(1)材料
寒天XR−239
寒天XR−240
寒天XR−241
これらの寒天は、伊那食品工業株式会社より分与していただいた。また、これらの寒天の種類、産地及び基本物性は、表1に示すとおりであった。
【0040】
【表1】
【0041】
(3)セルロースアセテート膜電気泳動
(3−1)方法
電解液として0.4mol/l酢酸ナトリウム水溶液を用い、5mg/ml寒天水溶液を幅1cmの帯状にスポットした。比較対照として、スサビノリ由来ポルフィラン(伊那食品工業株式会社;細胞壁を構成する水溶性食物繊維)、フクロフノリ由来フノラン(伊那食品工業株式会社;食物繊維)、κ−カラギーナン(SIGMA;直鎖含硫黄多糖類)、アルギン酸(和光純薬工業株式会社;多糖類の食物繊維)、フコイダン(理研ビタミン株式会社;硫酸多糖類)の各々1mg/ml水溶液を用いた。泳動は、室温と60℃インキュベーター内の二条件で、1mA/cmで120分間行った。
【0042】
(3−2)結果
室温での泳動結果を図1に、60℃での泳動結果を図2に示す。
【0043】
室温での泳動では、寒天3種のうち、寒天239で不明瞭なスポットが検出されたのみであり、他の2種ではスポットは検出されなかった。ノリの繊維であるポルフィランからも、スポットは検出されなかった。フノリから得られるフノラン、スギノリやツノマタなど紅藻から得られるκ−カラギーナン並びに褐藻から得られるアルギン酸は、泳動方向に広いピークを示した。同じく褐藻から得られるフコイダンは、明瞭なスポットを示した。
【0044】
60℃での泳動では、寒天239が、室温における泳動に比べてより明瞭なスポットを示した。寒天240、寒天241及びノリ抽出物においても、スポットが検出された。フノラン及びκ−カラギーナンは、室温泳動時と同様に、泳動方向に広いピークを示した。
【0045】
室温条件下で泳動バンドが検出できない理由として、寒天がゲル化して泳動されなかったことが考えられる。唯一バンドが検出できたXR−239は、凝固点が45℃(伊那食品工業株式会社による)であり、室温では全成分が溶解しているとは考えられない。よって、一部の成分のみが泳動されたことが示唆される。この一部の成分の凝固点は、室温よりも低い可能性がある。
【0046】
一方、加温(60℃)条件下では、泳動が可能であった。また、そのバンドはすべて陽極側に泳動していたことから、構成糖が酸性糖であることが分かった。泳動スポットは、XR−239では1本、XR−240では2本、XR−241では3本が確認でき、しかもそれぞれ泳動距離が異なっていた。
【0047】
以上の結果より、加温電気泳動法により、原料や産地の異なる寒天が、その構成成分においても異なることが明らかとなった。また、この方法により、寒天の産地や原料海藻の特定が可能になると考えられた。
【0048】
[実施例2]寒天多糖の分画方法の検討
(1)材料
寒天XR−241
【0049】
(2)陰イオン交換樹脂を用いた寒天多糖の分画
陰イオン交換樹脂として、TOYOPEARL DEAE−650Mを用いた。60℃に温めておいた約40mlの陰イオン交換樹脂に、95℃に加熱しておいた寒天XR−241水溶液(濃度:25mg/ml)2mlを加え、陰イオン交換樹脂を約60℃に保ちながら、順に、蒸留水、0.25M、0.5M、0.75M、1.0M、1.25M及び1.5Mの塩化ナトリウム水溶液(各150ml)でバッチ法により溶出した。各溶出液は、4℃にて3日間透析し、その後、ナス型フラスコを用いて凍結乾燥した。
【0050】
(3)セルロースアセテート膜電気泳動
(2)で得られた分画物を、セルロースアセテート膜電気泳動に供した。電解液として0.4mol/l酢酸ナトリウム水溶液を用い、5mg/ml寒天分画物凍結乾燥品の水溶液を幅1cmの帯状にスポットした。泳動は1mA/cmで2時間半行った。泳動の間、常に60℃に加熱した。
【0051】
(4)結果
泳動結果を図3に示す。
【0052】
蒸留水で溶出した画分(以下、「非吸着画分」という)、0.25M塩化ナトリウム水溶液で溶出した画分(以下、「0.25N画分」という)、0.5M塩化ナトリウム水溶液で溶出した画分(以下、「0.5N画分」という)、及び0.75M塩化ナトリウム水溶液で溶出した画分(以下、「0.75N画分」という)においては一本の、1.0M塩化ナトリウム水溶液で溶出した画分(以下、「1.0N画分」という)においては二本の明瞭なスポットが検出された。全糖では上下に広いピークが検出されており、この広いピークが、非吸着画分から1.0N画分において分離されたことがわかる。分画時に用いた塩化ナトリウムの濃度が高くなるにつれて、泳動距離も長くなった。1.25M塩化ナトリウム水溶液で溶出した画分(以下、「1.25N画分」という)及び1.5M塩化ナトリウム水溶液で溶出した画分(以下、「1.5N画分」という)では、スポットを検出できなかった。
【0053】
[実施例3]分画物の物理的、化学的性状の検討
(1)ゲルの固さの測定
(1−1)クリープメータによる測定
(1−1−1)方法
寒天全糖、0.25N画分、0.5N画分、0.75N画分及び非吸着画分の凍結乾燥品の1%水溶液を、沸騰水浴させて溶解させることによって調製し、充分に撹拌した後に冷蔵し、ゲル化させた。室温(約20℃)に戻してから、クリープメータ(株式会社山電)を用いて物性を測定した。クリープメータの測定条件は、表2に示すとおりであった。ゲルの固さの指標として最大荷重を採用した。
【0054】
【表2】
【0055】
(1−1−2)結果
結果を図4に示す。平均最大荷重は、全糖が最も高く、0.25N画分、0.5N画分、0.75N画分の順で低くなっていった。非吸着画分は、ゲル化能が著しく低いため、クリープメータでは測定不可能であった。
【0056】
(1−2)破断曲線の測定
(1−2−1)方法
寒天全糖、0.25N画分、0.5N画分、0.75N画分及び非吸着画分の凍結乾燥品の1%水溶液を、沸騰水浴させて溶解させることによって調製し、充分に撹拌した後に冷蔵し、ゲル化させた。室温(約20℃)に戻してから、クリープメータを用いてゲルの硬さを測定した。ゲルの硬さの測定条件は、容器として内径8mmのエッペンドルフを用いたこと以外は、表2に示すものと同様であった。ゲルの固さの指標として最大荷重を採用し、測定時間の経過による最大荷重の変化をチャートに記載した。なお、寒天全糖、0.25N画分、0.5N画分については、各々三試料について測定を行った。
【0057】
(1−2−2)結果
結果を図5に示す。全糖で最も破断曲線が高い位置となり、0.25N画分、0.5N画分の順で低くなった。0.75N画分及び非吸着画分は、ともにゲル化能が弱く、破断曲線のみでは両者の比較はできなかった。
【0058】
(1−3)エッペンドルフ内でのゲルの状態の観察
(1−3−1)方法
視覚的にゲルの固さを表現するため、1.5ml容量のエッペンドルフ内で、寒天全糖、0.25N画分、0.5N画分、0.75N画分及び非吸着画分の凍結乾燥品の0.5%水溶液を、上記と同様の方法で調製した。これを冷蔵してゲル化させ、室温に戻し、真横に倒した時の様子を観察した。
【0059】
(1−3−2)結果
結果を図6に示す。全糖がゲル化能が最も高く、0.25N画分、0.5N画分の順にゲル化能が低下した。0.75N画分及び非吸着画分は、ゲル化能が著しく低かった。
【0060】
(1−4)回転粘度形による粘度の測定
(1−4−1)方法
EMD回転粘度計(Tokimec社)によって、粘度を測定した。測定条件は、次の通りであった。
(測定条件)
温度: 20℃
画分の凍結乾燥品の濃度: 0.5%
回転速度: 50rpm
コーンの種類: 1°、34´
【0061】
寒天ゲルは非ニュートン流体であるため、結果は見かけ粘度(μ)で表した。見かけ粘度は次の公式により求めた。
見かけ粘度(μ)=Kn・θ(mPa・s)
Kn: 換算乗数(Tokimec EMD型、50rpmでは2.56)
θ:目盛指度
【0062】
(1−4−2)結果
結果を図7に示す。全糖、0.25N画分、0.5N画分、0.75N画分の順に粘度が高かった。また、クリープメータではゲルの硬さを測定することができなかった非吸着画分も、測定が可能であった。
【0063】
(2)硫酸基濃度の測定
(2−1)方法
硫酸基濃度はドッジソン法を用いて測定した。寒天全糖又は各画分の凍結乾燥品の水溶液(1mg/ml)1mlに、等量の8Mトリフルオロ酢酸(TFA)を加え、100℃にて3時間、加水分解した。その後、減圧乾固し、残渣を蒸留水1mlに溶解させた。このように調製した水溶液0.2mlを試験管に取り、4%(w/v)トリクロロ酢酸(TCA)水溶液3.8mlと塩化バリウム−ゼラチン水溶液(塩化バリウム:特級ゼラチン:水=1g:1g:200ml)1mlとを加えた。20分間室温で放置した後、吸光度(360nm)を測定した。スタンダードには硫酸を用いた。
【0064】
(2−2)結果
結果を表3に示す。硫酸基濃度は、0.5N画分が最も高く、次いで全糖であり、それ以降は非吸着画分、0.25N画分の順で低くなり、0.75N画分が最も低かった。分画時のNaCl濃度と硫酸基濃度に比例関係はなかったものの、画分により大きな差があることが明らかになった。
【0065】
【表3】
【0066】
(3)ガスクロマトグラフ法、ガスクロマトグラフ−マススペクトル法による構成糖の検討
(3−1)方法
寒天の構成糖を調べるために、ガスクロマトグラフ法(GLC)を採用した。スタンダードとして、グルコース、ガラクトース、フルクトースを用いた。
【0067】
寒天全糖又は各画分の凍結乾燥品1mgに10%塩酸−メタノールを1ml添加した。その後、100℃で16時間加熱することにより、多糖を完全に分解した。窒素ガス通気で乾固した後、水を加えて糖の10%水溶液を調製した。含水糖試料用トリメチルシリル化剤ピリジン溶液(TMS−PZ)試薬(東京化成工業株式会社)500μlに糖の10%水溶液5μlを加え、30秒間振り混ぜた。その後、ウォーターバスを用い、60℃にて15分間の温浴をし、TMS誘導体とした。このように調製された混合液1μlを、GLC分析に供した。GLCの条件は、次の通りであった。また、マススペクトルも測定した。
【0068】
(条件)
カラム: DB17(0.25mm×30m)
カラム温度: 150〜250℃(昇温速度:2℃/分)
インジェクション温度: 230℃
キャリアガス: N2(1ml/分)
検出: 水素炎イオン検出器(FID)
【0069】
(3−2)結果
寒天全糖を用いた場合のガスクロマトグラムを図8に、0.25N画分を用いた場合のガスクロマトグラムを図9に、0.75N画分を用いた場合のガスクロマトグラムを図10に示した。また、寒天全糖を用いた場合のマススペクトルを図11乃至図13に示した。各サンプルの構成多糖は、次の通りであった。
【0070】
(寒天全糖)
ガスクロマトグラム(図8)とマススペクトルの結果(図11乃至図13)と照らし合わせた結果、ピーク1とピーク3は3,6−アンヒドロガラクトース、ピーク2とピーク4はガラクトースであると推定された。ピーク5は同定することができなかった。
【0071】
(0.25N画分)
ガスクロマトグラム(図9)とマススペクトルの結果(図11乃至図13)と照らし合わせた結果、ピーク6とピーク9は3,6−アンヒドロガラクトース、ピーク8とピーク10はガラクトースであると推定された。ピーク7は図8には出現しなかったピークであり、未同定である。また、ピーク11は、保持時間が同一であるので、ピーク5(図8)と同一の物質である。
【0072】
(0.75N画分)
ガスクロマトグラム(図10)とマススペクトルの結果(図11乃至図13)と照らし合わせた結果、ピーク14は3,6−アンヒドロガラクトース、ピーク13とピーク15はガラクトースであると推定された。ピーク12は、保持時間が同一であるので、ピーク7(図9)と同一の物質である。また、ピーク16は、保持時間が同一であるので、ピーク5(図8)及びピーク11(図9)と同一の物質である。図8及び図9と比較して、ピーク16が相対的に大きなピークであることが、このガスクロマトグラムの最大の特徴である。
【0073】
なお、図11は、保持時間35.5分で、ガラクトースのスペクトルである。ガスクロマトグラムにおけるピーク2、4、8、10、13及び15は、すべてこのスペクトルとほぼ同様の結果を示した。
【0074】
図12は、保持時間35.8分で、3,6−アンヒドロガラクトースのスペクトルであると考えられる。ガスクロマトグラムにおけるピーク1、3、6、9及び14は、すべてこのスペクトルとほぼ同様の結果を示した。
【0075】
図13は、保持時間37.3分であるが、この物質は未同定である。ガスクロマトグラムにおけるピーク5、11及び16は、すべてこのスペクトルと同様の結果を示した。この物質は、図10の0.75N画分のガスクロマトグラムにおいて、相対的に大きなピークを示した物質であり、今後の構造解析が待たれる。
【0076】
[実施例4]寒天多糖のオリゴ糖化の検討
(1)薄層クロマトグラフィーによる検討
(1−1)方法
寒天全糖のオリゴ糖化を試みた。寒天全糖5mgに、塩酸水溶液(0.05M(=0.05N)又は0.1M(=0.1N))もしくは酢酸水溶液(0.05M(=0.05N)又は0.1M(=0.1N))8mlを加え、37℃のインキュベーター内で5時間、加水分解を行い、その後、減圧乾固させた。これを少量の水に溶解した後、薄層クロマトグラフィー(TLC)に供した。TLCにはシリカゲル60F254シートを用い、展開溶媒には酢酸エチル:酢酸:水 (2:1:1(容量比))を用いた。比較対照には、ガラクトースを用いた。検出は、濃硫酸を噴霧し、120℃に加熱して行った。
【0077】
(1−2)結果
結果を図14に示す。0.05M塩酸水溶液で加水分解されたものと、0.1M塩酸水溶液で加水分解されたものとを比較すると、いずれもガラクトースのスポットが明確であるから、塩酸の場合には0.05Mで十分に加水分解が行われたことがわかる。一方、酢酸による加水分解では、スポットが著しく不明確であることから、濃度が0.1Mでも、加水分解は十分には行われなかったことがわかる。
【0078】
(2)高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)による検討
(2−1)各加水分解条件における寒天全糖由来オリゴ糖の分子量の推定
(1)のTLCの結果を踏まえ、加水分解に用いる塩酸の濃度、加水分解時の温度及び時間の最適条件を検討するために、HPLCを用いて得られたオリゴ糖の分子量を推定した。
【0079】
(2−1−1)方法
予め加熱溶解した0.25%寒天水溶液を、以下の各加水分解条件においてオリゴ糖化し、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)モードのHPLCに供した。HPLCの条件は、表4に記載の通りである。なお、カラムはTSK−gel G3000SWXL(東ソー株式会社製;φ7.8mm×30cm)を用い、移動相は0.01NのTFAであり、流速は1ml/分、検出にはラジオアイソトープを使用した。また、分子量標準物質として、市販のプルランシリーズ Shodex STANDARD P−82、ラクトース(関東化学製)、ガラクトース(SIGMA製)を用いた。これらの分子量は、表5に示した。
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】
【0082】
(2−1−2)結果
得られた分子量検量線を、図15に示す。図15では、ラクトースの溶出量に対する相対値を用いた。近似曲線は三次曲線となった。
【0083】
検討条件(1)、(4)及び(7)におけるHPLCのクロマトグラムを図16に示す。(1)の加水分解条件では、加水分解が不十分のため、上下に広いピークが現れた。(4)の加水分解条件では、塩酸の濃度が高くなったことにより分解が進み、二つのピークが現れた。(7)の加水分解条件では、(4)の二つのピークとそれぞれほぼ同一の保持時間にピークが現れたが、前半に現れるピークの、後半のピークに対する相対的大きさが異なっていた。
【0084】
(2−2)寒天分画物由来オリゴ糖の分子量推定
(2−2−1)方法
予め加熱溶解した寒天全糖又は各画分の凍結乾燥品の0.25%水溶液であって塩酸濃度が0.025Nのものを、100℃に20分間保持して多糖を加水分解し、オリゴ糖を得た。得られたサンプルをGPCモードのHPLCに供した。HPLCの実施に使用したカラムはTSK−gel G3000SWXL(東ソー株式会社製;φ7.8mm×30cm)であり、移動相は0.01NのTFAであり、流速は1ml/分、検出にはラジオアイソトープを使用した。また、カラムは温度27℃であった。
【0085】
(2−2−2)結果
オリゴ糖の原料と、得られたオリゴ糖それぞれの分子量、糖数(グルコース換算)を表6に示す。画分により、オリゴ糖の分子量に大きく差があることがわかる。また、寒天全糖由来オリゴ糖のHPLCクロマトグラムを図17に、非吸着画分由来オリゴ糖のHPLCクロマトグラムを図18に、0.25N画分由来オリゴ糖のHPLCクロマトグラムを図19に、0.5N画分由来オリゴ糖のHPLCクロマトグラムを図20に、そして0.75N画分由来オリゴ糖のHPLCクロマトグラムを図21に示す。
【0086】
全糖由来オリゴ糖と0.25N画分由来オリゴ糖は、分子量が一種類であり、非吸着画分由来オリゴ糖、0.5N画分由来オリゴ糖及び0.75N画分由来オリゴ糖は、それぞれ図18、図20及び図21においてピークが二つに分かれたことから明らかなように、二種類の分子量を有する。
【0087】
【表6】
【0088】
[実施例5]抗腫瘍活性の測定
(1)in vitroでの抗腫瘍活性の測定
(1−1)寒天多糖の抗腫瘍活性
(1−1−1)方法
実施例1で使用した寒天X−241のPBS溶液(寒天濃度:1mg/ml)を調製した。48穴プレートを用い、Sarcoma−180(マウス腹水腫由来)、HL60(ヒト白血病由来)及びKMST−6(胎児線維芽細胞由来)の各細胞を、1×105cells/mlの割合で各ウェルに浮遊させ、ここに、寒天としての最終濃度が50μg/ml又は100μg/mlになるように、寒天のPBS溶液を加えた。コントロール用には、同量のPBSを加えた。37℃、5%CO2の条件で、インキュベーター内で培養した。培養開始から、24時間、48時間、72時間後に、細胞を含む培養液を採取し、それに0.5%トリパンブルー水溶液を加え、染色されなかった生細胞数を、血球計算板を用いて計測した。また、Cyto Tox 96 Non−Radioactive Cytotoxity Assayキット(Promega社製)を用いて、LDH活性を指標として細胞毒性を評価した。
【0089】
(1−1−2)結果
(直接細胞障害活性)
コントロールの細胞数に対する、寒天を加えた系における細胞数の相対値を、図22乃至図24に示す。なお、図22はSarcoma−180、図23はHL60、そして図24はKMST−6を使用した実験結果である。いずれの細胞を使用した場合も、また、寒天X−241の濃度が50μg/mlの場合も100μg/mlの場合も、細胞は障害されなかった。
【0090】
(LDH活性)
コントロール及び寒天添加時のLDH活性を、図25乃至図30に示す。なお、図25及び図26はKMST−6、図27及び図28はHL60、そして図29及び図30はSarcoma−180を使用した実験結果である。いずれの細胞を使用した場合も、また、寒天X−241の濃度が50μg/mlの場合も100μg/mlの場合も、LDH活性はコントロールと差がなかった。
【0091】
(1−2)寒天多糖由来オリゴ糖の細胞毒性
実施例2(2)で分画し、凍結乾燥したものを、加水分解によってオリゴ糖化した。そのオリゴ糖化したサンプルを用いて、in vitroで細胞毒性を調べた。
【0092】
(1−2−1)方法
寒天全糖又は各画分の凍結乾燥品3mgに5mlの蒸留水を加え、充分に加熱溶解した。その後、最終濃度が0.025M(=0.025N)となるように塩酸を加え、100℃で20分間加水分解した。加水分解後のサンプルを遠心エバポレーターにかけ、乾固させ、蒸留水を加え、再び乾固させて塩酸を十分に除去した。乾固したサンプルをPBS3mlに溶解し、1mg/ml濃度のオリゴ糖PBS溶液とした。
【0093】
オリゴ糖PBS溶液を、0.2μmのシリンジ・フィルターを用いてろ過滅菌した。この滅菌後の溶液を、オリゴ糖の最終濃度が50μl/ml又は100μl/mlとなるように、細胞懸濁液(5×104cells/ml)に加え、(1−1)と同様の方法で、オリゴ糖が細胞増殖に与える影響について検討した。なお、用いた細胞はSarcoma180であった。コントロール用には、同量のPBSを加えた。また、試験区は表7に示すとおりであった。
【0094】
【表7】
【0095】
(1−2−2)結果
コントロールの血球数に対する、寒天全糖由来オリゴ糖又は寒天分画物由来オリゴ糖を加えた系における血球数の相対値を、図31及び図32に示す。なお、図31は、オリゴ糖の最終濃度が50μl/mlの場合の、図32は、オリゴ糖の最終濃度が100μl/mlの場合の実験結果である。いずれの場合も、細胞は障害されなかった。
【0096】
(2)in vivoでの抗腫瘍活性の測定
実施例2(2)で分画し、凍結乾燥したものを、加水分解によってオリゴ糖化した。そのオリゴ糖化したサンプルを用いて、in vivoで抗腫瘍活性を調べた。
【0097】
(2−1)方法
(2−1−1)投与サンプルの調製
寒天全糖又は各画分の凍結乾燥品に糖濃度が0.25%になるよう蒸留水を加え、充分に加熱溶解した。その後、最終濃度が0.025M(=0.025N)となるように塩酸を加え、100℃で20分間加水分解した。加水分解後のサンプルを遠心エバポレーターにかけ、乾固させ、蒸留水を加え、再び乾固させて塩酸を十分に除去した。乾固したサンプルを滅菌生理食塩水(NaCl濃度:0.9%(w/v))に溶解し、0.1mg/ml濃度のオリゴ糖の生理食塩水溶液とした。
【0098】
オリゴ糖の生理食塩水溶液を、0.2μmのシリンジ・フィルターを用いてろ過滅菌し、その後、凍結保存した。
【0099】
(2−1−2)マウスへの投与実験方法
Std:ddy系マウス(6週齢、♂、平均体重28g)(日本エスエルシー社より購入)を使用した。1週間予備飼育した後、1日目に、予め別のマウス腹腔内で培養しておいたSarcoma180細胞を滅菌生理食塩水に懸濁させた状態で、1匹あたり1×106個腹腔内に投与した。コントロール1のマウスには、Sarcoma180細胞を投与しなかった。
【0100】
2日目からの10日間は、試験区のマウスには、毎日、オリゴ糖の生理食塩水溶液を腹腔内投与した。また、コントロール1及びコントロール2のマウスには、同量の生理食塩水溶液を投与した。1回あたりの投与量は、全て0.1mlとした。1試験区あたりのマウスは7匹とし、各試験区は表8に示すとおりであった。
【0101】
【表8】
【0102】
投与開始から、体重と生存数を測定した。動物福祉の観点から、マウスを死亡したと見なす際に、当研究室で定めている人道的エンドポイントを判断基準として用いた。すなわち、(1)真上から測定した胸部の体幅に対する腹部の体幅が200%を超えるとき、及び(2)対照1のマウスの平均体重に対し、体重が150%を超えるときの2点である。
【0103】
(2−2)結果
各試験区のマウス生存数を表9及び図33に示す。0.25N画分由来オリゴ糖を100μg/kgで投与した群と、0.75N画分由来オリゴ糖を100μg/kgで投与した群で、最も生存率(71.4%)が高かった。これらに次ぐ生存率(42.9%)を示したのは、非吸着画分由来オリゴ糖を100μg/kgで投与した群と、0.5N画分由来オリゴ糖を500μg/kgで投与した群と、全糖由来オリゴ糖を500μg/kgで投与した群であった。
【0104】
【表9】
【0105】
以上のように、0.25N画分由来オリゴ糖を100μg/kgで投与した群と0.75N画分由来オリゴ糖を100μg/kgで投与した群で、抗腫瘍活性が認められた。しかし、これらの画分由来オリゴ糖を初めとして、寒天多糖由来のオリゴ糖は、(1−2)に示したように、直接細胞を攻撃しない。従って、0.25N画分由来オリゴ糖と0.75N画分由来オリゴ糖は、免疫システムを賦活することにより、結果的に腫瘍を抑制したのではないかと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明に係る寒天多糖類の分析方法や分画方法は、寒天の分類や分離精製に利用できる。また、本発明は、寒天多糖由来のオリゴ糖を、寒天全糖又はその分画物から得ることを可能にする。さらに、本発明は、抗腫瘍活性を示す組成物の調製に利用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースアセテート膜又は濾紙で、寒天又は寒天の分画物の水性溶液を電気泳動することからなる寒天多糖の分析方法であって、寒天又は寒天の分画物が溶解状態を保つ温度にて電気泳動を行うことを特徴とする寒天多糖の分析方法。
【請求項2】
寒天又は寒天の分画物が溶解状態を保つ温度が40℃〜70℃である、請求項1に記載の寒天多糖の分析方法。
【請求項3】
寒天の水性溶液を、寒天が溶解状態を保つ温度にて陰イオン交換樹脂に通し、その後、陰イオン交換樹脂を寒天が溶解状態を保つ温度に保持したままで、水、続いて無機塩水溶液を使用してその無機塩濃度を高めながら寒天多糖の溶出を行うことを特徴とする寒天多糖の分画方法。
【請求項4】
寒天又は寒天の分画物の水溶液を、酸の規定度が0.001N〜0.2Nの水溶液とし、温度を60℃〜105℃に保持して多糖類の加水分解を行うことを特徴とする寒天又は寒天分画物中の多糖のオリゴ糖化方法。
【請求項5】
寒天の水性溶液を、寒天が溶解状態を保つ温度にて陰イオン交換樹脂に通し、その後、陰イオン交換樹脂を寒天が溶解状態を保つ温度に保持したままで、水、続いて無機塩水溶液を使用してその無機塩濃度を高めながら寒天多糖の溶出を行い、0.2〜0.3Mの無機塩濃度にて溶出した試料を集め、その試料を温度60℃〜105℃にて加水分解して得られる、抗腫瘍活性を示すオリゴ糖組成物。
【請求項6】
寒天の水性溶液を、寒天が溶解状態を保つ温度にて陰イオン交換樹脂に通し、その後、陰イオン交換樹脂を寒天が溶解状態を保つ温度に保持したままで、水、続いて無機塩水溶液を使用してその無機塩濃度を高めながら寒天多糖の溶出を行い、0.7〜0.8Mの無機塩濃度にて溶出した試料を集め、その試料を温度60℃〜105℃にて加水分解して得られる、抗腫瘍活性を示すオリゴ糖組成物。
【請求項7】
無機塩濃度を段階的に高める、請求項5又は6に記載の抗腫瘍活性を示すオリゴ糖組成物。
【請求項8】
加水分解を、強酸を使用して酸の規定度を0.001N〜0.2Nとして行う、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の抗腫瘍活性を示すオリゴ糖組成物。
【請求項1】
セルロースアセテート膜又は濾紙で、寒天又は寒天の分画物の水性溶液を電気泳動することからなる寒天多糖の分析方法であって、寒天又は寒天の分画物が溶解状態を保つ温度にて電気泳動を行うことを特徴とする寒天多糖の分析方法。
【請求項2】
寒天又は寒天の分画物が溶解状態を保つ温度が40℃〜70℃である、請求項1に記載の寒天多糖の分析方法。
【請求項3】
寒天の水性溶液を、寒天が溶解状態を保つ温度にて陰イオン交換樹脂に通し、その後、陰イオン交換樹脂を寒天が溶解状態を保つ温度に保持したままで、水、続いて無機塩水溶液を使用してその無機塩濃度を高めながら寒天多糖の溶出を行うことを特徴とする寒天多糖の分画方法。
【請求項4】
寒天又は寒天の分画物の水溶液を、酸の規定度が0.001N〜0.2Nの水溶液とし、温度を60℃〜105℃に保持して多糖類の加水分解を行うことを特徴とする寒天又は寒天分画物中の多糖のオリゴ糖化方法。
【請求項5】
寒天の水性溶液を、寒天が溶解状態を保つ温度にて陰イオン交換樹脂に通し、その後、陰イオン交換樹脂を寒天が溶解状態を保つ温度に保持したままで、水、続いて無機塩水溶液を使用してその無機塩濃度を高めながら寒天多糖の溶出を行い、0.2〜0.3Mの無機塩濃度にて溶出した試料を集め、その試料を温度60℃〜105℃にて加水分解して得られる、抗腫瘍活性を示すオリゴ糖組成物。
【請求項6】
寒天の水性溶液を、寒天が溶解状態を保つ温度にて陰イオン交換樹脂に通し、その後、陰イオン交換樹脂を寒天が溶解状態を保つ温度に保持したままで、水、続いて無機塩水溶液を使用してその無機塩濃度を高めながら寒天多糖の溶出を行い、0.7〜0.8Mの無機塩濃度にて溶出した試料を集め、その試料を温度60℃〜105℃にて加水分解して得られる、抗腫瘍活性を示すオリゴ糖組成物。
【請求項7】
無機塩濃度を段階的に高める、請求項5又は6に記載の抗腫瘍活性を示すオリゴ糖組成物。
【請求項8】
加水分解を、強酸を使用して酸の規定度を0.001N〜0.2Nとして行う、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の抗腫瘍活性を示すオリゴ糖組成物。
【図4】
【図7】
【図15】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図33】
【図7】
【図15】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
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【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図33】
【公開番号】特開2010−230336(P2010−230336A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75376(P2009−75376)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】
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