説明

抗腫瘍活性化合物

【課題】
本発明は、抗腫瘍活性を有する下記一般式(I)により表される4−ピペリドン誘導体に関する。
【化1】


【解決手段】本発明は一般式(1)で表される4−ピペリドン誘導体及びその酸付加塩に関し、該化合物の合成方法及び抗腫瘍活性を開示する。種々の化合物は、マイクロモル以下の IC50及びCC50を所持し、結腸癌及び白血病性細胞に対し選択的毒性を有する。さらに、多くの化合物は多剤耐性を反転し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗腫瘍活性を有する4−ピペリドン誘導体及びそのその癌治療における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのα,β−不飽和ケトンは細胞毒性及び抗癌作用を示し(Dimmock等、Curr.Med.Chem.、1999年、6巻、1125−1149頁;Dimmock等、J.Med.Chem.,1999年、42巻、1358−1366頁)、そして、核酸中の水酸基及びアミノ基とほとんど又は全く親和性を持たずに、細胞チオールと相互作用すると考えられている(Mutus等、Anal.Biochem.,1989年、177巻、237−243頁;Baluja等、Chem.Ind.,1964年、2053−2054頁)。この特性は、特定の抗腫瘍薬において存在する遺伝毒性の特性を失った細胞毒性としてこれらの化合物を開発する可能性を提供する(Bevenuto等、J.Pharm.Sci.、1993年、82巻、988−991頁)。このような化合物のマンニッヒ塩基の形が検討されてきた。例えば、幾つかの共役エノンのマンニッヒ塩基は、チオレーション及びアルキレーションの速度(Dimocl等、Can J.Chem 1980年、58巻、984−991頁)、そして細胞毒性(Dimmock等、J.Pharm.Sci.、1975年、64巻、241−249頁)の両方の有意な増加を引き起こすことが示された。しかしながら、下記に示す一般式(A)の共役アリリデンケトンのような化合物は、マウスに対し毒性を有する。
【0003】
【化1】

1=R2=水素原子、Cl、NO2、N(CH32、アルコキシ基又はアルキル基;
3=水素原子又はアルキル基
上記に示した、関連した一般式(B)の環状類似体が、一般式(A)の化合物の毒性を減少させるために製造された。
【0004】
化合物B1(一般式BにおいてR1=R2=H)はジエノンの環状マンニッヒ塩基であり、そしてマウスリンパ性白血病P388/MRI細胞株について細胞毒性活性を有し、かつ合成DNA、poly(d(AT))、と結合する;さらに驚くべきことに、240mg/kg/日量の5日連続投与はマウスにおける死を誘発しなかった(Dimmock等、Drug Des Delivery、1990年、6巻、183−194頁)。
【0005】
化合物B1の種々のN−置換誘導体が合成され、検討された:化合物B1のN−3−カルボキシ−2−プロペノイル誘導体が、P388/MRI細胞に対して評価された(Dimmock等、Drug Des.Deliv.,1990年、6巻、183−194頁)。化合物B1の、N−アシル誘導体(Dimmock等、Drug Des Discovery、1992年、10巻、291−299頁)、N−アミド誘導体、及びN−カ
ルバメート誘導体(Dimmock等、Drug.Des.Discovery、1994年、12巻、19−28頁)を、マウスL1210細胞及び、一連のヒト腫瘍細胞に対してスクリーニングが行われた。
化合物B1の、N−アクリロイルアミド(Dimock等、J.Med.Chem.、2001年、44巻、586−593頁)、N−アミド誘導体(下記一般式Cに示す)(Dimmock等、Eur J.Med.Chem.、2002年、37巻、961−972頁)、及びN−マレアモイル誘導体(Dimmock等、J.Enz.Inhib.Med.Chem.,2003年、18巻、325−332頁)が、マウスP388及びL1210細胞株、ヒトMolt 4/C8及びCEM Tリンパ球に対し評価された。
【0006】
【化2】

一般式Cの化合物はヒトN−ミリストイルトランスフェラーゼ及びfynキナーゼを阻害することが示された。
【特許文献1】Dimmock等、Curr.Med.Chem.、1999年、6巻、1125−1149頁
【特許文献2】Dimmock等、J.Med.Chem.,1999年、42巻、1358−1366頁
【特許文献3】Mutus等、Anal.Biochem.,1989年、177巻、237−243頁
【特許文献4】Baluja等、Chem.Ind.,1964年、2053−2054頁
【特許文献5】Bevenuto等、J.Pharm.Sci.、1993年、82巻、988−991頁
【特許文献6】Dimocl等、Can J.Chem 1980年、58巻、984−991頁
【特許文献7】Dimmock等、J.Pharm.Sci.、1975年、64巻、241−249頁
【特許文献8】Dimmock等、Drug Des Delivery、1990年、6巻、183−194頁
【特許文献9】Dimmock等、Drug Des Discovery、1992年、10巻、291−299頁
【特許文献10】Dimmock等、Drug.Des.Discovery、1994年、12巻、19−28頁
【特許文献11】Dimock等、J.Med.Chem.、2001年、44巻、586−593頁
【特許文献12】Dimmock等、Eur J.Med.Chem.、2002年、37巻、961−972頁
【特許文献13】Dimmock等、J.Enz.Inhib.Med.Chem.,2003年、18巻、325−332頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ヒトの癌のほぼ50パーセントは、完全に化学療法に抵抗性があるか、または一時的のみの効果であり、その後それらの癌細胞は一般的に用いられている抗癌薬では最早影響を受けない。この現象は多剤耐性(MDR)と呼ばれ、そしてある種の腫瘍タイプでは本質的に発現され、その他のものでは化学療法治療に曝露された後にMDRを獲得する。細胞のMDRを抑制又は排除する治療能力は、それゆえに重要な考慮すべき事項である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
1つの実施態様において、本発明は、現在入手可能な抗癌剤と構造的に相違する新規の抗腫瘍性の化合物を提供する。この構造的多様性は、抗腫瘍性のアルキル化剤を含む現在の薬剤に交差耐性のない化合物を提供し得る。この新規化合物の合成を、腫瘍細胞株に対する細胞毒性(IC50及びCC50)アッセイにおけるそれ等の活性を証明する実験とともに、ここに開示する。化合物はまた、MDR(多剤耐性)の反転において有用である。
【0009】
したがって、1つの実施態様において、本発明は、構造一般式(I)により表される4
−ピペリドン化合物:
【化3】

ここで、
1及びR2はそれぞれ独立してアルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、
3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はカルボキレートエステル基を表し;
m及びtはそれぞれ独立して0乃至3の整数であり;
Aは水素原子又はA'を表し、ここで、A'は
【化4】

を表し、
ここで、
nは0乃至4の整数を表し、そして、ベンゼン環上の置換基の数を表し;
oは0乃至4の整数を表し;
Xは(CH2r、CO,COO,SO,SO2又はOを表し、ここでrは0乃至4の
整数を表し;
YはO,S,NH,N(アルキル)、N(アリール)、又は(CH2sを表し、ここでsは0乃至4の整数を表し;Zは水素原子、N(アルキル)2、NH(アルキル)、N
(アリール)2、NH(アリール)、アルキル基、置換されたアルキル基、+N(アルキ
ル)3、又は
【化5】

を表し、ここで、BはO,S,(CH2q、NH、N−アルキル、又はN−アリール、を表し、そしてp及びqはそれぞれ独立して0乃至4の整数を表し;又はその医薬品として
許容できる塩であるが、ただし、化合物1a、1b、及び1cの遊離塩基及び塩酸塩は除外されるものを提供する。
【0010】
その他の実施態様において、本発明は、
一般式(IV)の化合物を、
【化6】

一般式T−A'(V)の化合物と共に塩基の存在下に反応させる工程からなり;
ここで、Tはハロゲン原子を表し、そして、A'は
【化7】

を表すところの、本発明の化合物を合成する方法を提供する。
【0011】
一般式(I)及び一般式(IV)は、それぞれ、同じでも異なっていてもよい、2つの置換基R3を含み、そしてこの明細書に定義されている通りである。一般式(I)及び一
般式(IV)は、それぞれ、同じでも異なっていてもよい2つの置換基R4を含み、そし
てこの明細書に定義されている通りである。
【0012】
その他の実施態様において、本発明は、癌治療及び多剤耐性を反転させる用途の化合物及びその医薬品としての組成物の使用を提供する。
【0013】
図面の簡単な説明
図1は、本発明の幾つかの化合物の合成の略図である。
【0014】
発明の詳細な説明
化学
本発明の化合物は一般式(I)の化合物を含む。
【0015】
好ましくは、アルキル基又はアルコキシ基は、置換又は非置換、分枝又は非分枝の炭素原子数1乃至7、好ましくは炭素原子数1乃至5を表す。好ましいアルキル基はメチル基又はエチル基を表す。好ましいアルコキシ基はメトキシ基又はエトキシ基を表す。可能な置換基は当業者に知られ、そしてハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、フェニル基及び/又はニトロ基を表す。ハロゲン原子はフッ素、塩素、臭素、又はヨウ素であり得、そして好ましくはフッ素又は塩素であり得る。
【0016】
好ましくは、R1及びR2は、同じでも異なっていても良い置換又は非置換、分枝又は非分枝のアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、ここで、アルキル基は好ましくは上記に定義したものを表す。アリール基は好ましくは置換又は非置換のフェニル環であり、その置換は好ましくは独立してフェニル環の2,3,4位、又は3,4;2,4;2,3;2,5;、2,6;3,5;3,6;4,6;3,4,5;2,4,6;又は2,3,4位における組み合わせにおいて位置する。置換基は、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、フェニル基、ニトロ基、及びホスホネート基を含み得る。ホスホネート基は、−P(O)(OH)2,−P(O)(OH)(O−アルキル)、−P(O)(
O−アルキル)2、−P(O)(OH)(O−アリール)、−P(O)(O−アリール)2を含む。好ましい置換基は、4−フルオロ、4−クロロ、4−メトキシ、4−ニトロ、4−メチル、3,4−ジメトキシ、3,4−ジクロロ、3,4,5−トリメトキシ、及び2,4,6−トリメトキシである。R1及びR2は願わくばフェニル、4−クロロフェニル、4−ニトロフェニル、及び/又は4−メチルフェニルの何れか1つであり得る。ヘテロアリール基は、好ましくは2,3,又は4−ピリジル、2−チエニル又は2−フリルである。m及びtの両方は独立して0ないし3から選ばれる如何なる整数でもあり得る。1つの実施態様において、m及びtは、共に0である。
【0017】
3又はR4は独立して、水素原子、アルキル基又はカルボキレートエステル基であり得る。それぞれのR3は同じでも異なっていてもよい。それぞれのR4は同じでも異なっていてもよい。アルキル基は好ましくは上記に定義したものを表す。カルボキシレートエステル基は、アルキルカルボキシレート基を含み、そして好ましくは、メチル又はエチルカルボキシレート基である。1つの実施態様において、R3及びR4は共に水素原子である。
【0018】
ここに言及した化合物:一般式(I)中、Aが水素原子、R3=R4=水素原子、そして、m及びtは0である場合;R1=R2=フェニル基(1a);R1=R2=4−クロロフェニル基(1b);及びR1=R2=4−ニトロフェニル基(1c)である。
【0019】
本発明の化合物は、以下を含むが、それらに限定されるものではない:
i)一般式(I)中、A=水素原子、R3=R4=水素原子、そして、m及びtは0である場合:R1=R2=4−メチルフェニル基(1d)
(ii)一般式(I)中、AがA‘であり、そしてY(CH20Zがベンゼン環の4−位に位置し、そして、R3=水素原子、R4=水素原子、X=CO;m及びt=0;n=1、Y=0;o=2である場合:
1=R2=フェニル;Z=N(CH32(3a)
1=R2=4−クロロフェニル;Z=N(CH32(3b)
1=R2=4−ニトロフェニル;Z=N(CH32(3c)
1=R2=4−メチルフェニル;Z=N(CH32(3d)
1=R2=フェニル;Z=N(C252(4a)
1=R2=4−クロロフェニル;Z=N(C252(4b)
1=R2=4−ニトロフェニル;Z=N(C252(4c)
1=R2=4−メチルフェニル;Z=N(C252(4d)
1=R2=フェニル;Z=1−ピペリジル(5a)
1=R2=4−クロロフェニル;Z=1−ピペリジル(5b)
1=R2=4−ニトロフェニル;Z=1−ピペリジル(5c)
1=R2=4−メチルフェニル;Z=1−ピペリジル(5d)
1=R2=フェニル;Z=4−モルフォリニル(6a)
1=R2=4−クロロフェニル;Z=4−モルフォリニル(6b)
1=R2=4−ニトロフェニル;Z=4−モルフォリニル(6c)
1=R2=4−メチルフェニル;Z=4−モルフォリニル(6d)
1=R2=フェニル;Z=+N(CH3)(C252I-(7a)
1=R2=4−クロロフェニル;Z=+N(CH3)(C252I-(7b)
1=R2=4−ニトロフェニル;Z=+N(CH3)(C252I-(7c)
1=R2=4−メチルフェニル;Z=+N(CH3)(C252I-(7d)
(iii)一般式(I)中A=水素原子、R3=R4=水素原子、そして、m及びtは0である場合:
1=R2=2−チエニル基(8d)
(iv)一般式(I)中、AがA‘であり、そしてY(CH20Zがベンゼン環の4−位に位置し、そして、R3=R4=水素原子、X=CO;m及びt=0;n=1;Y=O;o=2である場合:
1=R2=2−チエニル;Z=N(C252(9a)
(v)一般式(I)中、AがA‘であり、そしてY(CH20Z=水素原子、そしてm及びt=0である場合:
1=R2=フェニル;及びR3=R4=水素原子、X=CO;n=1(2a)
(vi)一般式(I)中、AがA‘であり、そしてY(CH20Zがベンゼン環の4−位に位置し、そしてR3=R4=水素原子、X=CO;n=1;Y=O;o=0、そして、m及びtが0である場合:
1=R2=フェニル;Z=CH3(2b)
【0020】
一般式(I)の化合物はその酸付加塩を含む。“酸付加塩”というのは、これは、シュウ酸塩のような単離、精製、及び保存のために形成され得る任意の塩、及び塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、及びクエン酸塩のような宿主へ化合物を投与する目的での医薬品として許容できる塩を意味する。
【0021】
合成
一般式(I)の化合物は、以下の反応工程により合成し得る:
【化8】

ここで、AはA‘を表し、この意味は前記に論じられたものと同様のものを表す。Tはハロゲン原子を表し、前記において論じられたものと同様のものを有する。
【0022】
一般式(I)の化合物は、一般式(IV)の化合物を一般式(V)の化合物と共に不活性溶媒中で塩基の存在下反応させることにより得られ得る。用いられる塩基は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムのような無機塩基又はピペリジン、ピロリジン、モルフォリン等のような二級アミン、又はトリエチルアミンのような三級アミンであり得、水素化ナトリウム等のような金属水素化物等が1−5当量の量で用いられ得る。溶媒は、例えば、極性非プロトン性溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、アセトニトリル)又はハロゲン化炭化水素(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン)であり得、その溶媒は単独で用いても、併用して用いてもよい。反応は、−10℃乃至反応において採用された溶媒の沸点の温度において行われ、そして0.5乃至24時以内に完了する。
【0023】
出発化合物(IV)は、文献の手順(Dimmock等、J.Med.Chem.、2001年、44巻、586−593頁)により合成し得る。一般式(IV)中の置換基は、一般式(I)の化合物で言及したものの任意のものであり得る。出発化合物(V)は文献中に記載された方法(Jones等、J.Med.Chem,1984年、27巻、1057−1066頁)により合成し得る。
【0024】
上記の工程中の中間体及び所望の化合物は、有機合成化学において用いられる慣用の精製方法、例えば、ろ過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、再結晶化及び様々な種類のクロマトグラフィーにより単離及び精製し得る。中間体はまた、単離せずに引き続く反応に用いられ得る。
【0025】
本発明の酸付加塩は、塩基化合物を、水性溶媒媒体又はメタノール又はエタノールのような好適な有機溶媒中の実質的に当量の選択された無機又は有機酸を用いて処理することにより容易に合成し得る。注意深い溶媒の留去の後、所望の固体塩を得る。
【0026】
本発明の塩基化合物の医薬品として許容できる酸付加塩を合成するために用いられる酸
は、無毒性の酸付加塩を形成する酸であり、即ち、医薬品として許容できるアニオンを含む塩であり、例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩又は重硫酸塩、リン酸塩又は過リン酸塩(acid phosphate)、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩又は酸性クエン酸塩、酒石酸塩又は酸性酒石酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、サッカラート、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩及びパモエート[即ち、1,1'−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート)]塩であり得る。
【0027】
化合物(I)の四級塩が所望される場合、遊離塩基の形にある化合物(I)は、好適な溶媒中に溶解され、次いで、ハロゲン化アルキルの添加により塩を形成する。反応は0℃ないし反応に採用された溶媒の沸点までの温度において行われ、そして反応は0.5ないし24時間で完了する。
【0028】
化合物(I)及びその酸付加塩は水又は種々の溶媒の付加化合物の形であり得、これらもまた、本発明の範疇である。
【0029】
生物学的活性
本発明の化合物は、癌治療、特に結腸癌及び白血病に用いられ得る。さらに、本化合物は、抗多剤耐性の特性を示す。
【0030】
本発明の化合物(化合物1−7)を、ヒトMolt 4/C8及びCEM Tリンパ球を用い処理することによりトランスフェクトしたヒト細胞についてのその細胞毒性を評価した。
さらに、それらを、マウスL1210細胞の増殖を阻害する能力、即ち多くの臨床的に有用な抗癌剤の能力を評価した。結果を、表1にIC50(マイクロモル)として示す。IC50(マイクロモル)は、細胞の増殖を50%まで抑制するために必要な化合物の濃度を示す。結果は化合物10及びメルファランと比較する。メルファランは、細胞構成要素をアルキル化することによりその効果を発揮する抗がん剤である。ほとんど全ての場合において、本発明の化合物は、Molt 4/C8及びCEMアッセイの両方においてメルファランより強力であった。
【0031】
本発明の多くの化合物を、さらに種々のヒト悪性細胞株について評価した。9の異なる腫瘍性疾患、即ち、白血病、黒色腫、非小細胞肺癌、結腸癌、中枢神経系癌、卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌及び乳癌からの平均して49細胞株を用いた。細胞株の大部分に対し、試験した化合物は、表2に示すようにメルファランのものより低値の平均IC50値を有していた。例えば、6b及び6dは、それぞれメルファランの48倍及び38倍以上の有効性を有していた。特に、それらのIC50は結腸及び白血病性腫瘍について低値であった。
【0032】
新規の抗腫瘍性剤の大切な特徴は、対応する正常組織よりも悪性腫瘍細胞に対しより高い毒性を示すことである。細胞株についての細胞毒性の違いは、化合物が、一般的な殺生物剤とは対照的に、選択的な毒性を示しており;そのような選択性は、関連非悪性細胞についてよりも腫瘍細胞の選択的な致死を生み出すことなのかもしれない。したがって、各々の化合物の選択的指標(SI)値は、化合物に対して最も感受性の高い細胞株と最も感受性の低い細胞株との間のIC50値の比として計算した(これもまた表2に示す)。アミド類3b、4a、6a、6b、6d及び7dは、メルファランよりも、より選択的であり、特に4a、6b及び6dがより選択的であった。
【0033】
平均IC50グラフを、既に記載(M.R.Grever、S.A. Schepartsz,B.A.Chabner,Semin.Oncol.19巻(1992年)622−638頁)されているように計算した。平均グラフの再検討は、一般的に、化合物のIC50値は、その他の細胞株よりも、結腸及び白血病性腫瘍について、低値であることを明ら
かにした。結腸及び白血病性細胞株の多くのIC50値は全ての細胞株の値よりも低値であったので、これらの悪性腫瘍群への選択的毒性は、表2において明らかである。結腸癌に対する効果的な薬剤は、5−フルオロウラシルである。表2のデータは、表2に示した6種の結腸癌細胞株についての、本検討において合成した化合物のIC50値は、67%のケースにおいて、5−フルオロウラシルのものよりも低値であること示している。メルファランは、併用化学療法として慢性白血病の治療に用いられており、そして、K−562、PRMI−8226.HL−60(TB)及びSR細胞株に対し行われた比較対照の80%において、シリーズ1,3−7中の化合物はメラルファンよりも低いIC50値を有していた。一連の約49種のヒト腫瘍細胞株に対しての代表化合物の評価から得られる一般的な結論は、それらの有効性は、実質的に一定の臨床的に用いられる薬剤よりも大きいこと、また、それらが結腸癌及び白血病細胞について特に毒性を有することである。
【0034】
さらに、化合物をヒト扁平上皮癌(HSC−2及びHSC−4)及びヒト前骨髄球性白血病腫瘍(HL−60)について評価し、及び正常細胞、即ち、ヒト歯肉線維芽細胞(HGF)、ヒト髄質細胞(HPC)及びヒト歯周靭帯線維芽細胞(HPLF)と比較した。これらの3種類の細胞株のCC50値もまた表3に示した。CC50(マイクロモル)は、細胞の50%を致死させるのに必要な化合物の濃度を示す。これらのデータを表3に示す。化合物のほとんどはCC50値が10μモル以下であり、そして3c、4c、5c、及び6cの平均CC50値は、マイクロモル以下である。さらにまた、シリーズ1及び3乃至7の化合物のほとんど全ては、確立された抗癌剤のメルファランよりも、より低い平均CC50値を有する。
【0035】
化合物の更なる評価を、これらが多剤耐性(MDR)を反転する能力を有するか及び/又は悪性細胞への選択的毒性を示すかについて決定するために行った。シリーズ1及び3−7の化合物の全てを、マウスL−5178リンパ腫細胞を用いて、それらのMDRの反転能力を試験した。MDR反転を測定するためのアッセイは、ヒトMDR1遺伝子トランスフェクションされたマウスL−5178リンパ腫細胞を用いた。ローダミン123の濃度を、処理及び未処理のトランスフェクト細胞及び親細胞で測定し、蛍光強度の比を蛍光活性比(FAR)値とする。MDRは、細胞からの化合物の流出の増加にとりわけ依存しているため、1以上のFAR値は、MDRの反転が生じたことを示す。結果をまた表3に示す。シリーズ3−6の化合物の全てにおいてMDR反転を示した。非常に大きなFAR値が、4μg/mLの濃度を用いた化合物の多くにおいて得られた。対照薬剤ベラパミル(verapamil)10μg/mLの濃度と比較して、本発明の化合物のFAR値は、ベラパミルのものの8乃至32倍の範囲であった。
【0036】
MDRを反転させ、及び抗腫瘍効果を示す化合物は双峰分布として分類される。それらは、これらの効果の1つのみを有するそれらの化合物よりも優れている。本発明の化合物は、抗腫瘍薬剤、MDR反転、又は両方の効能の何れにも用いられ得る。
【0037】
投与
本発明の組成物は、1以上の医薬品として許容できる担体を用い、慣用の方法により処方され得る。したがって、本発明の活性化合物は、経口、口腔内、鼻腔内、非経口(例えば、静脈内、筋肉内又は皮下)、局所又は直腸投与又は好適な吸入又は吹送による投与の形態に形成し得る。
【0038】
経口投与のためには、医薬品組成物は、医薬品として許容できる賦形剤例えば、結合剤(例えば、アルファ化したとうもろこしデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、マイクロクリスタリンセルロース又はリン酸カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン、又はデンプングリコール酸ナトリウ
ム);又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)等と共に慣用の方法により製造されたタブレット(錠剤)又はカプセルの形をとり得る。タブレットは、当業者に良く知られている方法によりコートされ得る。経口投与のための液体剤形は、例えば、溶液、シロップ又は懸濁液の剤形を取り得、又はこれらは、使用前に水又はその他の好適な媒体と共に形成するための乾燥製品として提供し得る。そのような液体製品は、医薬品として許容できる添加物、例えば、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、メチルセルロース又は硬化食用脂);乳化剤(例えばレシチン又はアラビアゴム);非水溶性媒体(例えば、アーモンド油、油状エステル又はエチルアルコール);及び防腐剤(例えば、メチル又はプロピル p−ヒドロキシ安息香酸塩又はソルビン酸)のようなものと共に慣用の方法により、製造し得る。
【0039】
口腔投与のためには、組成物は、慣用の方法により形成されたタブレット又はトローチの形をとり得る。
【0040】
本発明の化合物はまた、当業者に良く知られている方法による持続投与のために処方され得る。そのような剤形は、米国特許第3,538,214号明細書、米国特許第4,060,598号明細書、米国特許第4,173,626号明細書、米国特許第3,119,742号明細書及び米国特許第3,492,397号明細書に見られ、これらは本明細書に全て参照としてここに取り込まれる。
【0041】
本発明の化合物は、慣用のカテーテル技術を用いること又は注入を含む注射による非経口投与のために処方され得る。注射のための剤形は投薬形態単位で、例えば、アンプル中又は複数回投与用容器中に添加した防腐剤とともに供し得る。組成物は、油状又は水溶性媒体中の懸濁液、溶液又は乳剤として形成し得、及び懸濁化、安定化及び/又は分散化剤のような配合剤を含有し得る。或いは、活性成分は、使用前に好適な媒体、例えば、滅菌化発熱物質フリーの水を用いて再形成するための粉末形態中に存在し得る。
【0042】
本発明の化合物はまた、例えば、ココアバター又はその他のグリセリドの慣用基薬を含む坐薬を含むもののような坐薬又は停留浣腸剤のような直腸内投与組成物として処方し得る。
【0043】
鼻腔内投与又は吸入による投与のために、本発明の活性化合物は、溶液、乾燥粉末剤形、又は患者により押し出す又はポンピングされるポンプ噴霧容器からの懸濁液、又は好適な推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、ヘプタフルオロアルカン、二酸化炭素又はその他の好適なガスを用い、加圧容器又はネブライザーからのエアロゾルスプレーとして好適に送達される。加圧されたエアロゾルの場合においては、用量単位は、計算された量を送達するためのバルブを提供することにより決定し得る。加圧された容器又はネブライザーは、活性化合物の溶液又は懸濁液を含み得る。吸入又は吹送に用いるためのカプセル及びカートリッジ(例えば、ゼラチンで製造されたもの)は、本発明の化合物、及びラクトース又はスターチのような好適な粉末基剤の粉末混合物を含有するよう処方され得る。
【0044】
医薬品として許容できるその塩類及び溶媒和物類を含む本発明の化合物は、単独で使用され得るが、一般的に、化合物(活性成分)が医薬品として許容できる補助剤、希釈剤又は担体と併せたものである医薬品組成物の形で投与されるであろう。投与経路に依存して、医薬品組成物は、全て、全組成に基づく質量パーセントにより、好ましくは0.05乃至99%w(質量パーセント)、より好ましくは0.10乃至70%wの活性成分を含有し、そして、1乃至99.95%w、より好ましくは30乃至99.90%wの医薬品として許容できる補助剤、希釈剤又は担体を含有するであろう。
【実施例】
【0045】
合成
一連の1乃至7の化合物の製造において採用した合成化学経路を図1に概説した。シリーズ1中の化合物を、種々のアリールアルデヒド及び4−ピペリドンとの間の酸触媒された縮合により合成した。異なるアロイルクロリドを用いた1aの反応は、2a、bの単離に至った。4−ヒドロキシ安息香酸メチルと2−ジメチルアミノエチル塩酸塩とのアルキル化反応は、対応するエーテルを生じ、その加水分解により塩酸塩として単離された4−(2−ジメチルアミノエチルオキシ)安息香酸を合成した。この化合物を、それぞれ3a−dの生成をもたらす1a−dを用いて縮合して、対応する酸クロリドへ変換した。同様の合成経路を、2−ジメチルアミノエチル塩酸塩の代わりに、関連するN−(2−クロロエチル)アミンの塩酸塩を用いて4a−d、5a−d及び6a−dの生成に至った。
ヨウ化メチルを用い4a−dより派生した遊離塩基の反応は、対応する4級アンモニウム塩7a−dを生じた。さらに、シリーズ4中の化合物に構造的に関連する、4−(2−ジエチルアミノエトキシ)安息香酸10の合成を行った。
【0046】
図1において、シリーズ1、3乃至7中の置換基Rは以下の通りである:a=R=水素原子;b:R=塩素原子;c:R=NO2;d:R=CH3。シリーズ2中のY(CH2)oZ部分の性質は、a:Y(CH2oZ=水素原子;b:Y(CH2oZ=OCH3であ
る。以下の試薬を合成経路中において用いた、即ち、i=HCl/CH3COOH;ii
=ClCOC64Y(CH2oZ;iii=ClCH2CH2ZHCl/K2CO3;iv=NaOH/HCl;v=SOCl2;vi=1a−d;vii=CH3I/K2CO3
【0047】
融点は校正しない。元素分析(C,H,N)は1d及び2乃至7において、アルベルタ大学、化学部、微量分析研究室において実施し、そして計算値の0.4%の範囲内であった。化合物3b−d、4a、5a、d、6a、c、d及び7a、dは半水化物として単離され、7bは一水和物として、そして5cは1.5モルの水の結晶として得た。シリーズ1−10の全ての化合物の1H−NMRスペクトル(500MHz)及び代表的な化合物
13C−NMRスペクトル(125MHz)を、Bruker AM 500FT NMR機を用いて重水中で測定した。
【0048】
1a−dの合成:化合物1a−dを文献的方法により合成した(Journal of
Medicinal Chemistry 44巻、586頁(2001年))。一般的に、適切なアリールアルデヒド(36.71mmol)を酢酸(35mL)中の4−ピペリドン塩酸塩一水和物(13.03mmol)の懸濁液に加えた。この混合溶液を乾燥塩化水素を透明な溶液が得られる時間である0.5時間の間通した。室温で24時間攪拌した後、沈殿物を集め、そしてアセトン(25mL)中の飽和炭酸カリウム溶液(25w/v%、25mL)の混合水溶液中へ添加した;得られた混合物を0.5時間攪拌した。遊離塩基を集め、水(50mL)で洗浄し、そして乾燥した。化合物を再結晶した。1dはクロロホルム−エタノールより再結晶化し目的物を得た。
【0049】
3,5−ビス(4−メチルフェニルメチレン)−4−ピペリドン(1d).M.p.180−181℃。収率:79%。1H−NMR(CDCl3):2.40(s,6H),4.16(s,4H),7.24(d,2H,J=7.75Hz),7.31(d,2H,J=7.85Hz),7.80(s,2H).観測値C,82.87;H,6.94;N,4.60%.分析値(C2621NO2)はC,83.13;H,6.98;N 4.62%
を必要とする。
【0050】
2a,bの合成のための一般的な方法:アロイルクロリド(0.015mol)の1,2−ジクロロエタン(50mL)溶液を、1a(0.01mol)及びトリエチルアミン(0.03mol)の1,2−ジクロロエタンン(30mL)の溶液へ5〜6℃において0
.5時間以上かけて添加した。室温で6時間攪拌した後、溶媒を減圧留去した。炭酸カリウム(10w/v%、50mL)水溶液を残渣に加え、そして生じたスラリーを室温で4時間攪拌した。沈殿物を集め、水で洗浄し、そして乾燥した。生成物は、クロロホルム−メタノールから再結晶化によって精製した。
【0051】
1−ベンゾイル−3,5−ビス(フェニルメチレン)−4−ピペリドン(2a)。
融点165−166℃。収率:85%。1H−NMR(CDCl3):4.72(bs,2H),5.04(bs,2H),7.06(t,2H),7.22(d,4H),7.38(bs,9H),7.92(s,2H).観測値C,82.02;H,5.49;N,3.56%.分析値(C2621NO2)はC,82.30;H,5.58;N 3.69
%を必要とする。
【0052】
1−(4−メトキシベンゾイル)−3,5−ビス(フェニルメチレン)−4−ピペリドン(2b)。融点177−178℃。収率:72%。1H−NMR(CDCl3)3.70(s,3H),4.87(bs,4H),6.51(d,2H,J=10.62Hz),7.17(d,2H,J=10.69Hz),7.40(bs,10H),10.07(s,2H).観測値C,79.19;H,5.72;N,3.25%.分析値(C2733NO3)はC,79.19;H,5.66;N 3.42%を必要とする。
【0053】
シリーズ3−6の合成の一般的な手順:シリーズ3−6の化合物の合成に用いた一般的な方法を4aの合成により例示した。10の混合物(下記参照)(4.10g、0.015mole)、塩化チオニル(23.10g、2mol)及びジメチルホルムアミド(0.01mL)を3時間還流し加熱した。減圧下留去により相当する酸クロリドの単離に至り、これを1,2−ジクロロエタン(50mL)に溶解し、そして1a(2.75g、0.01mol)及びトリエチルアミン(3.03g、0.03mol)の1,2−ジクロロエタン(30mL)の溶液に5−6℃において0.5時間かけて加えた。室温で6時間攪拌した後、溶媒を減圧下留去した。得られた固体を炭酸カリウム(10w/v%、50mL)の水溶液に懸濁させ、そして室温で4時間攪拌した。沈殿物を集め、水で洗浄し、乾燥して1−[4−(2−ジエチルアミノエチルオキシ)フェニルカルボニル]−3,5−ビス(フェニルメチレン)−4−ピペリドン、即ち対応する4aの遊離塩基を得た。塩酸塩は、この遊離塩基をイソプロパノール及びクロロホルム(3:2、50mL)の混合液中に溶解し、そして活性炭(0.5g)の添加後、混合物を室温で1時間攪拌して合成した。溶液を乾燥塩化水素ガスで酸性にし、そしてその混合液を室温で1時間攪拌した。溶媒を減圧下留去し、粘着性の油状物を得て、そこにアセトン(50mL)を加え、そして混合物を0.5時間還流下加熱した。室温まで冷却し、沈殿を集め、そしてアセトンから再結晶化し4aを得た。類似体の4b−dは、イソプロパノールを4b及び4cの再結晶化溶媒として用いたことを除いて、同様の手順で合成した。シリーズ3、5及び6は同様の方法で、4−ヒドロキシ安息香酸メチル及び適当な2−クロロ−N−置換のエチルアミン塩酸塩より得た。3a−d、5a,b,及び6a−dの再結晶化に用いた溶媒はイソプロパノールであった。ジエチルエーテル−メタノールを5cの精製に用い、一方、5dはアセトンより再結晶化した。
【0054】
[4−(2−ジメチルアミノエトキシ)フェニルカルボニル]−3,5−ビス(フェニルメチレン)−4−ピペリドン塩酸塩(3a).融点244−245℃.収率:76%。1
H−NMR(DMSO−d6):2.83(s,6H),3.46(t,2H),4.2
2(t,2H),4.80(bs,4H),6.55(d,2H,J=10.55Hz),7.08(d,2H,J=10.65Hz),7.37(bs,10H),7.76(s,2H),11.08(bs,1H).観測値C,71.80;H,5.90;N,5.50%,分析値(C3031ClN23)はC,71.63;H,6.21;N 5.57%を必要とする。
【0055】
3,5−ビス(4−クロロフェニルメチレン)−1−[4−(2−ジメチルアミノエトキシ)フェニル−カルボニル]−4−ピペリドン塩酸塩半水和物(3b)。融点250−251℃.収率:71%.1H−NMR(DMSO−d6):2.92(s,6H),3.47(t,2H),4.22(t,2H),4.81(bs,4H),6.58(d,2H,J=7.61Hz),7.14(d,2H,J=7.65Hz),7.39(m,8H),7.82(d,2H,J=10.75Hz),12.84(bs,1H).観測値C,62.45;H,5.15;N,4.86%.分析値(C3029Cl323.0.5
2O)はC,62.02;H,5.03;N 4.82%を必要とする。
【0056】
1−[4−(2−ジメチルアミノエトキシ)フェニルカルボニル]−3,5−ビス(4−ニトロフェニルメチレン)4−ピペリドン塩酸塩半水和物(3c).
融点215−217℃.収率:62%.1H−NMR(DMSO−d6):2.78(s,6H),3.42(t,2H),4.21(t,2H),4.85(bs,4H),6.70(d,2H,J=10.28Hz),7.15(d,2H,J=10.25Hz),7.72(m,4H),7.82(s,2H),10.27(bs,4H),11.08(bs,1H).観測値C,59.45;H,4.93;N,9.08%.分析値(C3029ClN47.0.5H2O)はC,59.85;H,4.85;N 9.30%を必
要とする。
【0057】
1−[4−(2−ジエチルアミノエトキシ)フェニルカルボニル]−3,5−ビス(4−メチルフェニル−メチレン)−4−ピペリドン塩酸塩半水和物(3d).融点224−226℃.収率:64%.1H−NMR(CDCl3):2.40(s,6H),2.90(t,2H),3.43(t,2H),4.42(t,2H),4.87(bs,4H),6.58(d,2H,J=10.10Hz),7.23(m,10H),7.88(s,2H),13.08(brs,1H).観測値C,71.38;H,6.75;N,5.21%.分析値(C3235ClN23.0.5H2O)はC,71.16;H,6.53
;N 5.18%を必要とする。
【0058】
1−[4−(2−ジエチルアミノエトキシ)フェニルカルボニル]−3,5−ビス(フェニルメチレン)−4−ピペリドン塩酸塩半水和物(4a).融点184−185℃.収率:72%.1H−NMR(CDCl3):1.45(t,6H,2xCH3),3.22(
m,4H,2xNC2CH3),3.40(t,2H,OCH22N),4.41(t,2H,OC2CH2N),4.85(bs,4H,2x ピペリジルのNC2),6
.50(d,2H,アリールのH,J=10.1Hz),7.17(d,2H,アリールのH,J=9.05Hz),7.44(bs,10H,アリールのH),7.92(s,2H,=CH),12.70(s,1H,NH).13C−NMR(CDCl3):187
.41(O),170.14(−O−N−),158.77,134.88,132.21,130.77,130.08,129.70,129.25,127.99,114.19,63.05(O2),50.95(OCH22−N),47.39
(N2),10.89(3).観測値C,71.22;H,6.41;N,4.79%.分析値(C3235ClN23.0.5H2O)はC,71.16;H,6.71;
N 5.18%を必要とする。
【0059】
3,5−ビス(4−クロロフェニルメチレン)−1−[4−(2−ジエチルアミノエトキシ)フェニル−カルボニル]−4−ピペリドン塩酸塩(4b)。融点210−211℃.収率:68%.1H−NMR(CDCl3):1.45(t,6H),3.22(bs,4H),3.41(t,2H),4.45(t,2H),4.81(bs,4H),6.57(d,2H,J=10.34Hz),7.17(d,2H,J=10.30Hz),7.31(m,4H),7.41(d,2H,J=6.54Hz),7.84(s,2H)
,12.70(bs,1H).観測値C,64.28;H,5.26;N,4.98%.分析値(C3233Cl32O)はC,64.06;H,5.54;N 4.67%を必要とする。
【0060】
1−[4−(2−ジエチルアミノエトキシ)フェニルカルボニル]−3,5−ビス(4−ニトロフェニルメチレン)−4−ピペリドン塩酸塩(4c).融点197−198℃.収率:61%.1H−NMR(CDCl3):1.46(t,6H),3.19(bs,2H),3.26(bs,2H),4.45(t,2H),4.45(t,2H),4.82(bs,4H),6.60(d,2H,J=10.25Hz),7.14(d,2H,J=10.25Hz),7.51(bs,4H),7.89(s,2H),10.26(d,2H,J=6.35Hz),12.57(bs,1H).観測値C,62.06;H,5.38;N,9.19%.分析値(C3235ClN47)はC,61.88;H,5.36;N 9.02%を必要とする。
【0061】
1−[4−(2−ジエチルアミノエトキシ)フェニルカルボニル]−3,5−ビス(4−メチルフェニルメチレン)−4−ピペリドン塩酸塩(4d).融点204−205℃.収率:62%.1H−NMR(CDCl3):1.45(t,6H),2.40(s,6H),3.22(m,4H),3.40(t,2H),4.46(t,2H),4.87(bs,4H),6.57(d,2H,J=10.53Hz),7.23(d,2H,J=10.37Hz),7.32(m,4H),7.88(s,2H),12.62(bs,1H).観測値C73.34;H,6.86;N,5.36%.分析値(C3439ClN2
3)はC,73.04;H,7.03;N 5.01%を必要とする。
【0062】
1−[4−{2−(1−ピペリジニル)エトキシ}フェニルカルボニル]−3,5−ビス(4−メチルフェニルメチレン)−4−ピペリドン塩酸塩半水和物(5a).融点214−215℃.収率:52%.1H−NMR(CDCl3):1.43(t,1H),1.88(t,3H),2.28(q,2H),2.76(t,2H),3.34(bs,2H),3.60(t,2H),4.44(bs,2H),4.86(bs,4H),6.50(d,2H,J=7.75Hz),7.16(d,2H,J=7.2Hz),7.38(bs,10H),7.90(s,2H),12.61(bs,1H).観測値C71.48;H,6.38;N,5.04%.分析値(C3335ClN23・0.5H2O)は
C,71.79;H,6.38;N 5.07%を必要とする。
【0063】
3,5−ビス(4−クロロフェニルメチレン)−1−[4−{2−(1−ピペリジニル)エトキシ}フェニルカルボニル]−4−ピペリドン塩酸塩(5b)。融点257−258℃.収率:75%.1H−NMR(CDCl3):1.44(q,1H),1.92(t,3H),2.32(q,2H),2.80(q,2H),3.38(bs,2H),3.63(d,2H,J=10.23Hz),4.54(bs,2H),4.80(bs,4H),6.57(d,2H,J=7.84Hz),7.17(d,2H,J=7.99Hz),7.34(m,8H),7.90(s,2H)12.68(bs,1H).観測値C,64.35;H,5.39;N,4.45%.分析値(C3333Cl323)はC
,64.77;H,5.44;N 4.58%を必要とする。
【0064】
3,5−ビス(4−ニトロフェニルメチレン)−1−[4−{2−(ピペリジニル)エトキシ}フェニルカルボニル]−4−ピペリドン塩酸塩1.5水和物(5c)。融点224
−226℃.収率:64%.1H−NMR(DMSO−d6):1.42(t,1H),1.81(t,3H),2.04(q,2H),2.86(q,2H),3.36(d,2H),3.48(m,2H),4.32(bs,2H),4.75(bs,4H),6.56(d,2H,J=10.25Hz),7.07(d,2H,J=10.10Hz),7.60(m,4H),7.78(s,2H)10.16(bs,4H),11.53(s,
1H).観測値C,71.38;H,6.75;N,5.21%.分析値(C3235Cl
23・1.5H2O)はC,71.16;H,6.53;N 5.18%を必要とする

【0065】
3,5−ビス(4−メチルフェニルメチレン)−1−「4−{2−(1−ピペリジニル)エトキシ}フェニルカルボニル」−4−ピペリドン塩酸塩半水和物(5d)。融点105℃(分解).収率:65%.1H−NMR(CDCl3):1.42(q,1H),1.89(t,3H),2.22(q,2H),2.80(bs,2H),3.40(bs,2H),3.65(d,2H,J=9.56Hz),4.48(bs,2H),4.88(bs,4H),5.44(bs,2H)6.56(d,2H,J=7.91Hz),7.23(m,10H),7.99(s,2H),11.88(bs,1H).観測値C,71
.38;H,6.75;N,5.21%.分析値(C3235ClN23・0.5H2O)
はC,71.16;H,6.53;N 5.18%を必要とする。
【0066】
1−[4−{2−(4−モルフォリニル)エトキシ}フェニルカルボニル]−3,5−ビス(フェニルメチレン)−4−ピペリドン塩酸塩半水和物(6a).融点208−209℃.収率:73%.1H−NMR(CDCl3):3.05(q,2H),3.40(bs,2H),3.53(d,2H,J=12.02Hz),4.02(dd,2H),4.30(t,2H),4.47(bs,2H),4.86(bs,4H),6.51(d,2H,J=10.56Hz),7.19(d,2H,J=10.50Hz),7.44(bs,10H),7.92(s,2H),13.69(bs,1H).観測値C69.54;H,5.95;N,4.96%.分析値(C3233ClN24.0.5H2O)はC
,69.36;H,6.00;N 5.05%を必要とする。
【0067】
3,5−ビス(4−クロロフェニルメチレン)−1−「4−{2−(4−モルフォリニル)エトキシ}フェニルカルボニル」−4−ピペリドン塩酸塩(6b)。融点240−241℃.収率:74%.1H−NMR(CDCl3):3.06(bs,2H),3.40(bs,2H),3.55(t,2H),4.04(d,2H,J=11.97Hz),4.29(t,2H),4.30(t,2H),4.50(bs,2H),4.81(bs,4H)6.59(d,2H,J=7.30Hz),7.14(d,2H,J=7.47Hz),7.51(m,4H),7.90(s,2H),10.26(bs,4H),13.59(s,1H).観測値C,62.39;H,4.94;N,4.47%.分析値
(C3231Cl324)はC,62.60;H,5.09;N 4.56%を必要とす
る。
【0068】
1−[4−{2−(4−モルフォリニル)エトキシ}フェニルカルボニル]−3,5−ビス(4−ニトロフェニルメチレン)−4−ピペリドン塩酸塩半水和物(6c).融点224−226℃.収率:64%.1H−NMR(CDCl3):3.05(q,2H),3.40(bs,2H),3.53(d,2H,J=12.02Hz),4.02(dd,2H),4.30(t,2H),4.47(bs,2H),4.86(bs,4H),6.51(d,2H,J=10.56Hz),7.19(d,2H,J=10.50Hz),7.44(bs,10H),7.92(s,2H),13.59(bs,1H).観測値C59.52;H,4.72;N,10.51%.分析値(C3231ClN48.0.5H2O)はC,59.67;H,4.85;N 10.69%を必要とする。
【0069】
3,5−ビス(4−メチルフェニルメチレン)−1−[4−{2−(4−モルフォリニル)エトキシ}フェニルカルボニル]−4−ピペリドン塩酸塩半水和物(6d)。融点235−236℃.収率:66%.1H−NMR(CDCl3):2.40(s,3H),3.03(m,2H),3.40(bs,2H),3.54(d,2H,J=11.98Hz),4.02(dd,2H),4.29(t,2H),4.50(bs,2H),4.87
(s,4H)6.58(d,2H,J=10.63Hz),7.24(m,10H),7.88(s,2H),13.68(bs,1H).観測値C,70.39;H,6.69
;N,4.79%.分析値(C3437ClN24・0.5H2O)はC,70.15;H
,6.57;N 4.81%を必要とする。
【0070】
7a−dの合成の一般的な手順:活性炭(0.5g)を4a(上記参照)(4.95g、0.01mol)の遊離塩基のアセトン(25mL)溶液へ加え、そしてこの混合物を室温で1時間攪拌した。懸濁液をセライトろ過し、そしてセライトベッドをアセトン(10mL)で洗浄した。合わせたろ液へヨウ化メチル(2.13g、0.015mol)を加え、そしてこの混合物を室温で4−5時間攪拌した。生じた沈殿を集め、乾燥しそしてジエチルエーテル/メタノールより再結晶化し所望の化合物を得た。
【0071】
1−[4−(2−ジエチルアミノエトキシ)フェニルカルボニル]−3,5−ビス(フェニルメチレン)−4−ピペリドン メチオダイド(7a).融点161−162℃.収率:85%.1H−NMR(CDCl3):1.45(t,6H,2xCH3),3.34(
s,3H,N−CH3),3.70(m,4H,2x NC2CH3),4.17(bs
,2H,OCH22N),4.39(bs,2H,OC2CH2N),4.86(bs,4H,ピペリジルのH),6.56(d,2H,アリールのH,J=10.58Hz),7.19(d,2H,アリールのH,J=10.03Hz),7.39(bs,12H,アリールのH),7.91(s,2H,オレフィンのH).観測値C61.11;H,5.64;N,4.23%.分析値(C3337IN23・0.5H2O)はC,61.3
9;H,5.77;N 4.33%を必要とする。
【0072】
3,5−ビス(4−クロロフェニルメチレン)−1−[4−(ジエチルアミノエトキシ)フェニルカルボニル]−4−ピペリドン メチオダイド(7b)。融点220−223℃.収率:69%.1H−NMR(DMSO−d6):1.32(t,6H),3.07(d,3H,J=7.99Hz),3.45(t,4H),3.74(t,2H),4.30(bs,1H),4.39(bs,1H),4.61(bs,4H)6.60(d,1H,J=10.22Hz),7.11(d,1H,J=10.35Hz),7.23(d,1H,J=10.36Hz),7.71(bs,1H),7.89(s,2H).観測値C
,54.44;H,4.79;N,3.75%.分析値(C3335IN23・0.5H2
O)はC,54.78;H,4.87;N 3.92%を必要とする。
【0073】
1−[4−(2−ジエチルアミノエトキシ)フェニルカルボニル]−3,5−ビス(4−ニトロフェニルメチレン)−4−ピペリドン メチオダイド(7c).融点193−195℃(分解).収率:74%.1H−NMR(DMSO−d6):1.24(t,6H),3.00(s,3H),3.38(q,4H),3.64(t,2H),4.27(t,2H),4.40(bs,4H),6.70(d,2H,J=10.41Hz),7.16(d,2H,アリールのH,J=10.39Hz),7.74(bs,4H),7.83(s,2H),10.27(bs,4H).観測値C54.41;H,4.71;N,7.60%.分析値(C3335IN47)はC,54.55;H,4.86;N 7.71%を必要とする。
【0074】
1−[4−(2−ジエチルアミノエトキシ)フェニルカルボニル]−3,5−ビス(4−メチルフェニルメチレン)−4−ピペリドン メチオダイド(7d).融点212−213℃.収率:72%.1H−NMR(DMSO−d6):1.24(t,6H),2.34(s,6H),3.01(s,3H),3.39(q,4H),3.68(t,2H),4.33(t,2H),4.87(bs,4H),6.75(d,2H,J=10.34Hz),7.22(d,2H,J=10.30Hz),7.28(m,8H),7.72(s,2H).観測値C62.65;H,6.25;N,4.10%.分析値(C3541
IN23.0.5H2O)はC,62.40;H,6.13;N 4.15%を必要とす
る。
【0075】
8aの合成:3,5−ビス(チオフェン−2−イルメチレン)−ピペリジン−4−オン 塩酸塩(8a):8aを1dと同様な方法で合成した。4−ピペリドン塩酸塩と2−チオフェン−カルボキシアルデヒドを用いた反応で8aを得た。融点297℃(分解)、収率:72%.δ(DMSO−d6):4.45(brs,4H,2xNCH2),7.32(t,2H,2x C3−H),7.70(s,2H,2x =CH−イリデンプロトン)
,7.94−8.05(d,4H,2x C2−H及び2xC4−H).観測値C,55.36%;H,4.30%;N,4.19%。分析値(C1514ClNOS2)は55.6
3%;H,4.36%;N4.32%を必要とする。
【0076】
9aの合成:1[4−(2−ジエチルアミノ−エトキシ)フェニルカルボニル]−3,5−ビス(チオフェン−2−イルメチレン)−ピペリジン−4−オン塩酸塩一水和物(9a):化合物4aで述べた上記手順に従い、3,5−ビス(チオフェン−2−イルメチレン)−ピペリジン−4−オンとV塩酸塩(X=CO,T=OH,Y=0,o=2,Z=N(C252)(0.015mol)の反応で9aを得た。融点193−194℃、収率8
2%,δ(CDCl3):1.44−1.47(t,6H,2x CH3),3.17−3.31(m,4H,2x NCH2),3.56(brs,2H,NCH2),4.53(t,2H,OCH2),4.93(brs,4H,2x NCH2),6.75−6.77(d,2H,C2−H及びC6−H),7.18−7.19(t,2H,2x C3'−H),7.38−7.40(d,4H,C3−H,C5−H及び2x C4'−H),7.66−7.67(d,2H,C2'−H),12.67(s,1H,NH).観測値C59.90%,H 5.76%,N 4.81%.分析値(C2831ClN232・H2O)はC 59.92%,H5.56%,N 4.99%を必要とする。
【0077】
10の合成:4−ヒドロキシ安息香酸メチル(15.21g、0.1mol)、無水炭酸カリウム(34.55g、0.25mol)、2−クロロ−N,N−ジエチルアミン塩酸塩(25.81g、0.15mol)、ヨウ化カリウム(0.166g、0.001mol)及びアセトン(75mL)を還流しながら10−9時間加熱した。冷却し、固体をろ過により除去し、そして溶媒を蒸散した。残渣をトルエン(75mL)に溶解しそして溶液を水酸化ナトリウム溶液(2%w/v、30mL)、そして脱イオン水(2x30mL)で洗浄した。溶媒を除去し、油状物として得た4−(2−ジエチルアミノエチルオキシ)安息香酸メチルをエタノール(50mL)に溶解し、そして水酸化ナトリウム溶液(10.0g,0.2mol)の水(50mL)溶液に加えた。この混合物を還流しながら2時間加熱した。エタノールを減圧下留去し、そして水溶液を5−6℃において塩酸(12N)を用い酸性にした。固体を集め、水(まえもって5−6℃に冷却したもの)を用いて粉砕し、ろ過し、そして55−60℃において減圧下乾燥し、そして水を用いて再結晶化し10を得た。
【0078】
4−(2−ジメチルアミノエトキシ)安息香酸塩酸塩(10).融点170−172℃,[文献[22],融点171−174℃]。収率:73%.1H−NMR(D2O):1.17−1.20(t,6H,2xCH3),3.13−3.24(m,4H,2xCH2),3.47−3.48(t,2H,OCH22N),4.26−4.28(t,2H,OC2CH2N),6.89−6.91(d,2H,アリール−H),7.80−7.82(d,2H,アリール−H).
【0079】
生物学的活性
Molt4/C8、CEM,及びL1210細胞に対する細胞毒性の評価:シリーズ1ないし7の全ての化合物は、ヒトMolt 4/C8及びCEM T−リンパ球並びにマウ
スL1210細胞に対する評価を行った。さらに、化合物10はこれらのアッセイに含めた。これらのデータを表1に示す。一連の種々ヒト腫瘍細胞株について種々の化合物の細胞障害能を表2に示す。
【0080】
シリーズ1乃至7及び10の化合物及びメルファランは、文献の方法(J Balzarini,E.De Clercq、M.P.Mertes,D.Shugar,P.F.Torrence,Biochem.Pharmacol.31巻(1982年)3673−3682頁)によりMolt 4/C8、CEM及びL1210細胞に対する評価を行った。これらのアッセイにおいて、少なくとも3種の濃度の化合物を、腫瘍細胞と共に37℃において48時間インキュベートし、この時間の後の増殖阻害を測定した。
【0081】
選択された4−ピペリドンを、文献の方法(M.R.Boyd, K.D.Paull、Drug.Dev Res.、34巻(1995年)91−109頁)を用いて、一連の49(38−59)のヒト腫瘍細胞株ついて抗腫瘍活性を評価した。さらに、5−フルオロウラシル及びメルファランの両方を57細胞株について評価した。このアッセイにおいて、化合物群は、1a、4a(10-8M乃至10-4M)、5−フルオロウラシル(10-6.8M乃至10-2.6M)及びメルファラン(10-7.6M乃至10-3.6M)を除き、10-10.3M乃至10-4.3Mの10倍希釈列において5種類の濃度を用いて48時間インキュベ
ートした。1a、3b、3d、5d、7d及びメルファランについて計算した平均図中点(MG MID)はIC50を表した。MG MIDは約50種類の腫瘍細胞株に対する化合物の活性の平均値を表す。以下の場合において、IC50の計算値が得られなかった、全細胞株数に対する細胞株の数は以下の通りであった[最大又は最小濃度(molar)は括弧内]、即ち、4a:2/53(<10-10)、5b:2/50(<10-4.3)、6a
:3/48(>10-4.3)、6b:11/38(<10-10.3)、6d:3/44(<1
-10.3)、7a:36/52(>10-4.3)及び5−フルオロウラシル:3/57(>
10-2.6)。
【0082】
シリーズ3乃至7における化合物の活性の順位:最初の検討は、アリリデン アリール環に同様の置換基を有するシリーズ3乃至7の化合物のIC50値を比較することを含む。Molt4/C8、CEM及びL1210細胞株のそれぞれにおける化合物のスコアは以下のようにして得た。最も高い活性を有する化合物は5の値を充て、次ぎに最も低いIC50の値をもつ化合物に4等の値を充て、そしてそれ以降も同様に続ける;最も低い活性を有するアミドは1の値を充てた。それぞれのIC50値の標準偏差を考慮した。等位の化合物に得られるスコアを当分し、そして全15ポイントを、それぞれの比較のために付与した。第二の分析は、三種の細胞株中でアリリデンアリール環中の最適な置換基パターンを見出すために策定した。このようにして、シリーズ3乃至7のそれぞれにおいて、最も活性のある化合物は4の値を与え、二番目に活性のある類似体は3等を付与し、そしてそれ以降も同様にした。合計10ポイントをそれぞれの比較のために用いた。標準偏差を考慮し、そして同様の活性を有する化合物のスコアを当分した。
【0083】
MDR−反転特性の測定:化合物の多剤耐性(MDR)を反転させる活性の評価に用いた手順は既に記載されている(Kawase、M.,Sakagami,H.,Motohashi、N.,Hauer,H.,Chatterjee,S.S.;Spengler,G.,Vigyikanne,A.V.;Molnar,A.;Molnar,J.,In Vivo、2005年、19巻、705−712頁)。簡潔にいうと、L−5178MDR及び親細胞の両方を、熱活性化ウマ血清(10%)、L−グルタミン及び抗生物質を含有するMcCoy‘s 5A培地で育成した。ジメチルスルホキシド中の試験化合物(2mg/mL、10μL)の溶液を、細胞懸濁液の等分液に添加し、そして室温で10分間インキュベートした。そしてジメチルスルホキシド中のローダミン123の10μL溶液を、最終濃度が5.2μMと成るように加え、そして細胞をさらに37℃におい
て20分間インキュベートした。細胞を二度洗浄し、そしてPBS(pH7.4)中に再懸濁させ、その後、細胞の蛍光をBeckton Dickinson FACScan装置を用い測定した。細胞の蛍光発光を処理MDR細胞(F1)、未処理MDR細胞(F2)、処理親細胞(F3)について測定し、そしてFAR値を以下の数式から得た;即ち(F1/F2)/(F3/F4)。
【0084】
種々の細胞株についての細胞毒性の評価:HSC−2、HSE−4、HGF、HPC、HL−60及びHPLF細胞について、シリーズ1及び3乃至7に於ける化合物のCC50(細胞毒性量(cytotoxity dose))値をMTTアッセイが関与する文献的方法を用いて測定した(Kawase、M.,Sakagami,H.,Motohashi、N.,Hauer,H.,Chatterjee,S.S.;Spengler,G.,Vigyikanne,A.V.;Molnar,A.;Molnar,J.,In Vivo、2005年、19巻、705−712頁、及びTakeuchi、R.,Hoshijima,H.;Onuki,N.,Nagasaka,H.;Chowdhury、S.A.;Kawase、M.,Sakagami,H.,Anticancer Res.,2005年、25巻、4037−4042頁)(MTTアッセイは、細胞増殖(細胞の成長)を測定する研究室検査である。MTTは、3−(4,5−ジメチルチアゾル−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラアゾリウム ブロマイド)を表す。)細胞は、化合物の種々の濃度を用いて未処理の細胞と共に、24時間インキュベートし、そして540nmにおける吸光度を測定した。HL−60アッセイの場合において、トリパンブルー色素排除法を更に行い、そして細胞の生存率を血球計を用いて測定した。CC50値は用量反応曲線から得た(Sakagami、T.,Satoh,K.,Ohata,H.,Takahashi、H.、Yoshida、H.,Iida,M.,Kuribayashi、N.,Sakagami,T.,Momose,K.,Takeda、M.,Anticancer Res.,1996年16巻2635−2644頁)。これらの細胞毒性試験において用いた細胞の培養における一般的な方法は既に記載されている(Kawase、M.,Sakagami,H.,Motohashi、N.,Hauer,H.,Chatterjee,S.S.;Spengler,G.,Vigyikanne,A.V.;Molnar,A.;Molnar,J.,In Vivo、2005年、19巻、705−712頁、及びTakeuchi、R.,Hoshijima,H.;Onuki,N.,Nagasaka,H.;Chowdhury、S.A.;Kawase、M.,Sakagami,H.,Anticancer Res.,2005年、25巻4037−4042頁)。簡潔にいうと、悪性細胞は、日本の昭和大学のNagumo教授より入手した。HGF、HPC及びHPLF細胞は、日本の明海大学倫理委員会(No.0206)のガイドラインによりインフォームドコンセントを得た後に、ヒトの歯周組織より調製した。正常細胞は寿命が短いため、3−7population doubling timeにおける細胞を用いた。HL−60腫瘍を除き、細胞は、熱不活性化FBS(10%)を含有するDMEM中で37℃において加湿二酸化炭素雰囲気下で培養し、また、トリプシン処理により継代培養した。HL−60細胞は、RPMI 1640培地を用いた以外は同様の方法で培養した。
【0085】
ここに言及された全ての参考文献は参照として取り込まれる。
【0086】
表1.ヒトMolt4/C8及びCEM T−リンパ球及びマウスL1210細胞に対してのシリーズ1乃至7及び10の化合物の活性a
【表1】

a バックグラウンド陰影はIC50値として表される活性を示す、即ち、黒(<1μM),暗灰色(1−10μM),灰色(11−99μM)、及び明灰色(>100μM)。
【0087】
表2.ヒト腫瘍細胞株に対しての代表的な化合物の細胞毒性。
【表2】

a SIの文字は選択指数を表す、即ち、化合物の最小及び最大の感受性細胞のIC50値の比である。
b 1aの塩酸塩をこのアッセイにおいて用いた。
【0088】
表3.シリーズ1及び3乃至7の化合物のMDR−反転特性及び細胞毒性。
【表3】

a 蛍光活性比(FAR)値は、処理及び未処理マウスL−5178細胞でのローダミ
ン123の蛍光強度の比を表す。対照薬物のベラパミルは、10μg/mLの濃度を用いた場合のFAD値が5.61であった。
b CC50値は、細胞の50%を殺す化合物の濃度を表し、そして2つの独立した測定
の平均値を表す。
c これらの値は、HSC−2,HSC−4及びHL−60悪性細胞のCC50値の平均
値を表す。
d SIの文字は、HSC−2、HSC−4及びHL−60腫瘍の平均CC50値により
HGF、HPC及びHPLF細胞の平均CC50値を割ることにより算出した選択指数を表す。
e 3dの40μg/mLの濃度は、細胞に対し毒性を持つものであった。
【図面の簡単な説明】
【0089】
図面の簡単な説明
図1は、本発明の幾つかの化合物の合成の略図である。

【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造一般式(I)により表される4−ピペリドン化合物:
【化1】

ここで、
1及びR2はそれぞれ独立してアルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し;
3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はカルボキレートエステル基を表すが、
ここで、それぞれのR3及びそれぞれのR4は、同じでも異なっていても良く;
m及びtはそれぞれ独立して0乃至3の整数を表し;
Aは水素原子又は
【化2】

を表し、
ここで、
nは0乃至4の整数を表し、そして、ベンゼン環上のY(CH2oZ置換基の数を表し;
oは0乃至4の整数を表し;
Xは(CH2r、CO,COO,SO,SO2又はOを表すが、ここでrは0乃至4
の整数を表し;
YはO,S,NH,N(アルキル)、N(アリール)、又は(CH2sを表すが、ここで、sは0乃至4の整数を表し;
Zは水素原子、N(アルキル)2、NH(アルキル)、N(アリール)2、NH(アリール)、アルキル基、置換されたアルキル基、+N(アルキル)3、又は
【化3】

を表し、
ここで、BはO,S,(CH2q、NH、N−アルキル、又はN−アリール、そしてp及びqはそれぞれ独立して0乃至4の整数を表す、4−ピペリドン化合物
又はその医薬品として許容できる塩であるが、
ただし、A=水素原子又はH・HCl、R3及びR4=水素原子、そしてm及びtが0の
とき、R1及びR2は両方ともフェニル基でなく、両方とも4−クロロフェニル基でなく、又は両方とも4-ニトロフェニル基でもない。
【請求項2】
Aが水素原子を表し、m及びtが0であり、そしてR3及びR4が水素原子である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aが下記式
【化4】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Y(CH2oZがベンゼン環の2,3又は4位に位置するものである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
Y(CH2oZがベンゼン環の4位に位置するものである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
3及びR4が水素原子である、請求項3乃至5の何れかに記載の化合物。
【請求項7】
m及びtが0である、請求項3乃至6の何れか1項に記載の化合物。
【請求項8】
Y(CH2oZがベンゼン環の4位に位置するものであり、R3及びR4が水素原子であり、XがCOであり、m及びtが0であり、nが1であり、YがOであり、そしてoが2である、請求項3に記載の化合物。
【請求項9】
Y(CH2oZがベンゼン環の4位に位置するものであり、R3及びR4が水素原子であり、XがCOであり、m及びtが0であり、nが1であり、YがOであり、そしてoが0である、請求項3に記載の化合物。
【請求項10】
Y(CH2oZが水素原子であり、m及びtが0であり、そしてR3及びR4がそれぞれ水素原子である、請求項3に記載の化合物。
【請求項11】
一般式(IV)の化合物を、
【化5】

一般式T−A'(V)と共に、塩基の存在下、反応させる工程を含有し;
ここで、Tはハロゲン原子を表し、そして3A'は
【化6】

を表す、請求項3に記載の化合物を合成する方法。
【請求項12】
溶媒が極性非プロトン性溶媒又はハロゲン化炭化水素系溶媒である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
極性非プロトン性溶媒がテトラヒドロフラン又はアセトニトリルである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ハロゲン化炭化水素系溶媒がクロロホルム、ジクロロメタン、又は1,2−ジクロロエタンである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
医薬品として許容できる希釈剤又は担体と共に有する、請求項1乃至10の何れか1項に記載の化合物を含む医薬品組成物。
【請求項16】
癌治療用途である、請求項15に記載の医薬品組成物。
【請求項17】
その患者が必要とする、請求項1乃至10の何れか1項に記載の化合物の治療上有効量を投与することを含む癌治療方法。
【請求項18】
癌が、結腸癌又は白血病である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
多剤耐性を反転させる用途である、請求項15に記載の医薬品組成物。
【請求項20】
その患者が必要とする、請求項1ないし10の何れか1項に記載の化合物の治療上有効量
を投与することを含む多剤耐性を反転させる方法。



【公表番号】特表2009−516656(P2009−516656A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540418(P2008−540418)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【国際出願番号】PCT/CA2006/001908
【国際公開番号】WO2007/059613
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(508144233)ユニバーシティ オブ サスカチュワン (1)
【Fターム(参考)】