説明

抗菌コーティング

織物材料、医療デバイス、包装材料などに使用される抗菌コーティングが提供される。この抗菌コーティングはハロゲン化フラノンを含む。一局面において、本発明は、ハロゲン化フラノンと組み合わせてフィルム形成ポリマーを含むコーティングを有する物品を提供する。このようなコーティングを有し得る物品には、医療デバイス、包装材料および織物材料が含まれる。実施形態として、コーティングはまた、脂肪酸、脂肪酸塩、および/または脂肪酸エステル塩のような1種または複数の脂肪酸成分も含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2006年5月15日に出願された米国仮特許出願第60/800,387号(この全体の開示は、参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
本開示は、織物材料、医療デバイス、包装材料などに使用されるのに適する抗菌コーティングに関する。
【0003】
織物材料での抗菌剤の使用は知られている。例えば、特許文献1を参照。抗菌剤はまた、縫合糸のような医療デバイスおよび/または縫合糸を入れるパッケージ内またはそれらの表面にも使用されている。しかし、いくつかの医療デバイスは、十分な期間、有効なレベルの抗菌活性を有し得ない。さらに、特許文献2および特許文献3から明らかであるように、医療デバイス上の抗菌剤は、望ましくないことに、それらのパッケージに移行し得るので、生体内への縫合糸または他の医療デバイスの移植に際して所望の抗菌作用を得るために、より高レベルの抗菌剤の使用を必要とする。
【0004】
このため、向上した抗菌効力を保持し得る医療デバイス、包装材料および織物材料が求められている。物品からの抗菌剤の最低量の損失、および/または、包装材料などへの抗菌剤の最低量の移行などにより、微生物に対する長期間の保護が付与される、医療デバイス、包装材料または織物材料に抗菌剤を組み入れるかまたは塗布する、容易かつ安価な方法もまた求められている。このようにして、所望の抗菌作用を達成するために、より少量の抗菌剤が使用され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0204916号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0068293号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0068294号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、ハロゲン化フラノンと組み合わせてフィルム形成ポリマーを含むコーティングを有する物品を提供する。このようなコーティングを有し得る物品には、医療デバイス、包装材料および織物材料が含まれる。実施形態として、コーティングはまた、脂肪酸、脂肪酸塩、および/または脂肪酸エステル塩のような1種または複数の脂肪酸成分も含み得る。
【0007】
他の実施形態として、本開示は、ハロゲン化フラノン、グリコリド/カプロラクトンのコポリマー、および脂肪酸成分(例えば、脂肪酸、脂肪酸塩、および/または脂肪酸エステル塩)を含む抗菌組成物を提供する。
【0008】
抗菌性を有する縫合糸もまた提供される。実施形態として、このような縫合糸は、細長い構造、およびその細長い構造に配置されたコーティング材料を有し、このコーティングはフィルム形成ポリマーおよびハロゲン化フラノンを含む。実施形態として、コーティングはまた、脂肪酸、脂肪酸塩、および/または脂肪酸エステル塩のような脂肪酸成分も含み得る。
【0009】
創傷を閉じる方法もまた提供される。実施形態として、創傷を閉じる方法は、ハロゲン化フラノンと組み合わせてフィルム形成ポリマーを含むコーティングを縫合糸の少なくとも一部に有する縫合糸を提供すること、針付き縫合糸を製造するために、この縫合糸を針に取り付けること、および、創傷閉鎖を生じるように、組織を通してこの針付き縫合糸を移動すること、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本開示による針付き縫合糸を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
本開示は、織物材料、医療デバイス、包装材料などに適するコーティングを提供する。このコーティングは、ハロゲン化フラノンと組み合わせてポリマーを含む。実施形態として、脂肪酸、脂肪酸塩および/または脂肪酸エステル塩がコーティングに添加され得る。
【0012】
コーティングとして使用されるのに適する任意のポリマーが、本発明によって使用され得る。ポリマーは生体吸収性または非吸収性であり得る。実施形態として、生体吸収性フィルム形成ポリマーが、本開示のコーティングに使用され得る。コーティングに使用され得るフィルム形成ポリマーは当業者の知識の範囲内にあり、これらには、例えば、グリコリド、ラクチド、グリコール酸、乳酸、カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、ジオキサノン、ジオキセパノン(dioxepanone)などが含まれるモノマーから誘導される連鎖を含むもの、およびこれらのホモポリマー、コポリマー、ならびにこれらの組合せが含まれる。
【0013】
実施形態として、フィルム形成ポリマーは、米国特許第5716376号(この開示全体は参考として本明細書に援用される)に記載のカプロラクトン含有コポリマーを含み得る。このようなカプロラクトン含有コポリマーは、主たる量のイプシロン−カプロラクトンと、少量の少なくとも1種の他の共重合性モノマーまたはこのようなモノマーの混合物とを、ヒドロキシル官能性開始剤(例えば、多価アルコール開始剤)の存在下で重合することによって得ることができる。
【0014】
イプシロン−カプロラクトンと共重合し得るモノマーには、アルキレンカーボネート、例えば、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ジメチルトリメチレンカーボネート;ジオキサノン;ジオキセパノン;吸収性環状アミド;クラウンエーテルから誘導される吸収性環状エーテル−エステル;アルファヒドロキシ酸(例えば、グリコール酸および乳酸)およびベータヒドロキシ酸(例えば、ベータヒドロキシ酪酸およびガンマヒドロキシ吉草酸)を含めて、エステル化できるヒドロキシ酸;ポリアルキルエーテル(例えば、ポリエチレングリコール)、ならびにこれらの組合せが含まれる。実施形態として、グリコリドが、イプシロン−カプロラクトンと共にコモノマーとしてフィルム形成ポリマーに使用され得る。
【0015】
フィルム形成ポリマーを調製するのに使用され得る適切な多価アルコール開始剤には、グリセロール、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エリトリトール、トレイトール、ペンタエリトリトール、リビトール、アラビニトール、キシリトール、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、ジペンタエリトリトール、アリトール、ズルシトール、グルシトール、アルトリトール、イジトール、ソルビトール、マンニトール、イノシトールなどが含まれる;いくつかの実施形態では、マンニトールが用いられる。
【0016】
多価アルコール開始剤は少量で、実施形態として、全モノマー混合物の約0.01から約5重量パーセント、他の実施形態として、全モノマー混合物の約0.1から約3重量パーセントで使用され得る。
【0017】
使用される場合、フィルム形成コポリマーは、約70から約98重量パーセントのイプシロン−カプロラクトン由来単位を、実施形態として、約80から約95重量パーセントのイプシロン−カプロラクトン由来単位を含み、コポリマーの残りの部分は他の(複数の)共重合性モノマー(例えば、グリコリド)に由来し得る。
【0018】
本開示のコーティングはまた、ハロゲン化フラノンも含む。ハロゲン化フラノンは集団感知(quorum sensing)の阻害剤として知られている。集団感知(細菌のシグナル伝達としても知られている)は、多くの細菌における遺伝子制御の一般的メカニズムとして認められており、それは、細菌が一致して、生物発光、遊走(swarming)、バイオフィルム形成、タンパク質分解酵素の産出、抗生物質の合成、遺伝子受容能(genetic competence)の発現、プラスミド接合伝達、および強奪(spoliation)のような活動を行なえるようにする。集団感知は、グラム陽性菌(例えば、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、Salmonella enteritidis、表皮ブドウ球菌、枯草菌など)、およびグラム陰性菌(例えば、緑膿菌、大腸菌、Aeromonas hydrophilaなど)の両方によって用いられる普遍的な調節メカニズムである。
【0019】
したがって、集団感知阻害剤、例えば、本明細書に記載のハロゲン化フラノンは、微生物の生育および増殖を阻害することによって抗菌剤として作用し得る。実施形態として、集団感知阻害剤は、遊走運動性およびバイオフィルム形成(これらのいずれも、しばしば、感染症の病理生理学の根底にある)を阻害し得る。こうして、遊走およびバイフィルム形成の阻害は、細菌のコロニー(bacterial burden)を減らし、したがってまた感染および疾患の進展を防止し得る。
【0020】
ハロゲン化フラノンはまた、集団感知を阻止し、哺乳動物の細胞にとって毒性のない総数に細菌の成長を抑制し得る。それらの作用メカニズムを考えれば、ハロゲン化フラノンの抗病原性は、広いスペクトルの感染媒体に対して有効であり、上記のものを含めてグラム陽性およびグラム陰性細菌の両方のコロニー形成を減らす、および/または妨げることが可能であり得る。
【0021】
さらに、病原菌を殺し、また抗菌剤耐性を誘発する危険を有する抗生物質および殺菌(antiseptic)化合物と異なり、ハロゲン化フラノンはこのような進化圧を及ぼさない。したがって、ハロゲン化フラノンを含む本開示の組成物でコーティングされた物品での抗菌剤耐性は問題ではない。
【0022】
本開示のコーティングに使用されるのに適するハロゲン化フラノンには、例えば、次式の化合物が含まれる。
【0023】
【化1】

式中、R、R、およびRは、独立に、または全てが、H、またはハロゲンであり;
【0024】
【化2】

は2重結合を表し;また
は、H、ハロゲン、ホルミル、カルボキシル、シアノ、エステル、アミド、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアリールアルキルのような部分であり、これらの部分は、任意選択で、1つもしくは複数の置換基により置換されていても、および/または、1個もしくは複数のヘテロ原子が介在していてもよく、および/または、直鎖、分岐鎖、疎水性、親水性または親フッ素性であってよいが、
但し、R、R、R、およびRの少なくとも1つはハロゲンである。任意のハロゲンが用いられ得る;実施形態として、R、R、R、およびRの少なくとも1つは臭素である。
【0025】
本明細書では、置換されたフラノンまたは置換された部分には、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、ハロアルキル、ハロアルキニル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルケニルオキシ、ハロアルコキシ、ハロアルケニルオキシ、ニトロ、アミノ、ニトロアルキル、ニトロアルケニル、ニトロアルキニル、ニトロヘテロシクリル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルケニルアミン、アルキニルアミノ、アシル、アルケンアシル(alkenacyl)、アルキニルアシル、アシルアミノ、ジアシルアミノ、アシルオキシ、アルキルスルホニルオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロアミノ、ハロヘテロシクリル、アルキルスルフェニル、カルボアルコキシ、アルキルチオ、アシルチオ、および/または、リン含有基(例えば、ホスホノおよびホスフィニル)のような基を有するものが含まれる。
【0026】
本明細書では、「アルキル」は、単独か、または「ハロアルキル」または「アルキルチオ」のような複合語かのいずれかで用いられ、直鎖または分岐C1〜6アルキル基を含む。例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルなどが含まれる。
【0027】
本明細書では、「アルコキシ」は、直鎖または分岐アルコキシを、実施形態として、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロピルオキシ、およびブトキシの異性体のようなC1〜10アルコキシを含む。
【0028】
本明細書では、「アルケニル」は、エチレン性モノ−もしくはポリ−不飽和アルキルまたはシクロアルキル基(すでに定義された)を含めて、直鎖、分岐、または単環−もしくは多環アルケンから形成される基を、実施形態としてC2〜10アルケニルを含む。アルケニルの例には、ビニル、アリル、1−メチルビニル、ブテニル、イソ−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ペンテニル、シクロペンテニル、1−メチル−シクロペンテニル、1−ヘキセニル、3−ヘキセニル、シクロヘキセニル、1−ヘプテニル、3−ヘプテニル、1−オクテニル、シクロオクテニル、1−ノネニル、2−ノネニル、3−ノネニル、1−デセニル、3−デセニル、1,3−ブタジエニル、1,4−ペンタジエニル、1,3−シクロペンタジエニル、1,3−ヘキサジエニル、1,4−ヘキサジエニル、1,3−シクロヘキサジエニル、1,4−シクロヘキサジエニル、1,3−シクロヘプタジエニル、1,3,5−シクロヘプタトリエニル、または、1,3,5,7−シクロオクタテトラエニルが含まれる。
【0029】
本明細書では、「ハロゲン」および/または「ハロゲン化」は、フッ素、塩素、臭素および/またはヨウ素を含む。
【0030】
本明細書では、「ヘテロ原子」は、O、Nおよび/またはSを含む。
【0031】
本明細書では、単独か、または「アシルオキシ」、「アシルチオ」、「アシルアミノ」もしくは「ジアシルアミノ」のような複合語かのいずれかで用いられる「アシル」は、カルバモイル、脂肪族アシル基および複素環を含むアシル基(複素環式アシルと呼ぶことができる)を、実施形態としてC1〜10アシルを含む。アシルの例には、カルバモイル;直鎖もしくは分岐アルカノイル、例えば、ホルミル、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、2−メチルプロパノイル、ペンタノイル、2,2−ジメチルプロパノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル;アルコキシカルボニル、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、t−ペンチルオキシカルボニルもしくはヘプチルオキシカルボニル;シクロアルキルカルボニル、例えば、シクロプロピルカルボニル、シクロブチルカルボニル、シクロペンチルカルボニルもしくはシクロヘキシルカルボニル;アルキルスルホニル、例えば、メチルスルホニルもしくはエチルスルホニル;アルコキシスルホニル、例えば、メトキシスルホニルもしくはエトキシスルホニル;ヘテロシクリルカルボニル;ヘテロシクリルアルカノイル、例えば、ピロリジニルアセチル、ピロリジニルプロパノイル、ピロリジニルブタノイル、ピロリジニルペンタノイル、ピロリジニルヘキサノイルもしくはチアゾリジニルアセチル;ヘテロシクリルアルケノイル、例えば、ヘテロシクリルプロペノイル、ヘテロシクリルブテノイル、ヘテロシクリルペンテノイルもしくはヘテロシクリルヘキセノイル;または、ヘテロシクリルグリオキシロイル、例えば、チアゾリジニルグリオキシロイルもしくはピロリジニルグリオキシロイルが含まれる。
【0032】
本明細書では、「親フッ素性」は、パーフルオロアルカンおよびパーフルオロアルカンポリマーに対して非常に吸引性の相互作用の特定の基、例えば、C〜C10の鎖長の高度にフッ素化されたアルキル基を含む。
【0033】
実施形態として、本開示のコーティングに使用され得る具体的なハロゲン化フラノンには、例えば、次の臭素化フラノンが含まれる。
【0034】
【化3】

4−ブロモ−5−(ブロモメチレン)−2(5H)−フラノンとしても知られている;
【0035】
【化4】

(5Z)−4−ブロモ−5−(ブロモメチレン)−3−ブチル−2(5H)−フラノンとしても知られている;
【0036】
【化5】

5−(ジブロモメチレン)−3−ブチル−2(5H)−フラノンとしても知られている;
【0037】
【化6】

5−(ジブロモメチレン)−2(5H)−フラノンとしても知られている;
【0038】
【化7】

3−(1’−ブロモブチル)−5−(ジブロモメチレン)−2(5H)−フラノンとしても知られている;
【0039】
【化8】

(5Z)−5−(ブロモメチレン)−3−ブチル−2(5H)−フラノンとしても知られている;
【0040】
【化9】

3−(1’−ブロモヘキシル)−5−(ジブロモメチレン)−2(5H)−フラノンとしても知られている;および
【0041】
【化10】

1−(5−(ジブロモメチレン)−2−オキソ−2,5−ジヒドロキシフラン−3−イル)ブチルアクリレートとしても知られている。
【0042】
実施形態として、前記ハロゲン化フラノンの組合せもまた、上の式(I)によって包含されるさらなるハロゲン化フラノンと任意選択で組み合わされて、本開示のコーティングに使用され得る。
【0043】
任意の適切な量のハロゲン化フラノンが本開示のコーティングに使用され得る。上記のように、それらの優れた抗菌活性に起因して、ハロゲン化フラノンは、低レベルの投薬量で用いることができ、その投薬量で、コーティングが適用される物品に抗菌性を付与できる。実施形態として、本開示のコーティングに存在するハロゲン化フラノンの量は、約5ppm(parts per million)から約1000ppm、実施形態として、約20ppmから約800ppm、他の実施形態として、約100ppmから約600ppmであり得る。抗菌コーティングにおけるハロゲン化フラノンの正確な量は、かなりの数の要因(例えば、使用される特定のフラノン、接触される物品の組成、およびコーティング材料に用いられるポリマーの選択)に応じて決まるであろう。
【0044】
いくつかの実施形態において、本開示のコーティング組成物はまた、脂肪酸、脂肪酸塩、または脂肪酸エステル塩のような脂肪酸成分も含み得る。適切な脂肪酸は飽和または不飽和であってよく、これらには、約12個を超える炭素原子を有する高級脂肪酸が含まれる。適切な飽和脂肪酸には、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸およびラウリン酸が含まれる。適切な不飽和脂肪酸には、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が含まれる。さらに、脂肪酸のエステル、例えば、ソルビタントリステアレートまたは水素添加ヒマシ油が使用され得る。
【0045】
適切な脂肪酸塩には、C以上の脂肪酸(実施形態として、約12から約22個の炭素原子を有するもの)の多価金属イオン塩、およびこれらの混合物が含まれる。ステアリン酸、パルミチン酸およびオレイン酸のカルシウム、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、および亜鉛の塩を含めて、脂肪酸塩は、本開示のいくつかの実施形態において有用であり得る。いくつかの有用な塩には、市販の「食品グレード」のステアリン酸カルシウムが含まれ、これは、約3分の1のC16および3分の2のC18脂肪酸の混合物を、少量のC14およびC22脂肪酸と共に含む。
【0046】
本開示の生物活性コーティングに含まれ得る適切な脂肪酸エステル塩には、ステアロイル乳酸のカルシウム、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、または亜鉛の塩;パルミチル乳酸のカルシウム、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、または亜鉛の塩;および/あるいは、オレイル乳酸のカルシウム、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、または亜鉛の塩が含まれる。実施形態として、ステアロイル−2−乳酸カルシウム(例えば、VERVの商用名でAmerican Ingredients Co.(カンザスシティー、ミズーリ州)から市販されているステアロイル−2−乳酸カルシウム)が使用され得る。使用され得る他の脂肪酸エステル塩には、ステアロイル乳酸リチウム、ステアロイル乳酸カリウム、ステアロイル乳酸ルビジウム、ステアロイル乳酸セシウム、ステアロイル乳酸フランシウム、パルミチル乳酸ナトリウム、パルミチル乳酸リチウム、パルミチル乳酸カリウム、パルミチル乳酸ルビジウム、パルミチル乳酸セシウム、パルミチル乳酸フランシウム、オレイル乳酸ナトリウム、オレイル乳酸リチウム、オレイル乳酸カリウム、オレイル乳酸ルビジウム、オレイル乳酸セシウム、およびオレイル乳酸フランシウムが含まれる。
【0047】
用いられる場合、脂肪酸成分の量は、全コーティング組成物の約5重量パーセントから約60重量パーセントであり得る。実施形態として、脂肪酸成分は、全コーティング組成物の約15重量パーセントから約55重量パーセントの量で存在し得る。
【0048】
一実施形態として、フィルム形成ポリマー(例えば、前記のカプロラクトン/グリコリドのコポリマー)は、コーティングの約45から約60重量パーセントの量で存在し得、脂肪酸成分(例えば、脂肪酸塩または脂肪酸エステル塩)は、コーティングの約40から約55重量パーセントの量で存在し得る。実施形態として、フィルム形成ポリマー(例えば、前記のカプロラクトン/グリコリドのコポリマー)は、コーティングの約50から約55重量パーセントの量で存在し得、脂肪酸成分は、コーティングの約45から約50重量パーセントの量で存在し得る。
【0049】
本開示の抗菌コーティングを調製することは、比較的簡単な手順であり得る。例えば、所望の量のフィルム形成ポリマーおよびハロゲン化フラノンが、脂肪酸成分と任意選択で組み合わされて、容器に入れられ、十分に混合されて、成分が一体化され得る。実施形態として、ハロゲン化フラノンが、得られるコーティング中に、約5ppmから約1000ppm、実施形態として、約20ppmから約800ppm、他の実施形態として、約100ppmから約600ppmの量で存在するように、ハロゲン化フラノンが、さらなる添加剤なしに、フィルム形成ポリマーに添加され得る。
【0050】
一実施形態として、抗菌コーティングは、グリコリドとカプロラクトンのコポリマーを、ステアロイル乳酸カルシウムと、約52/48の重量比で混合し、塩化メチレン、エタノール、およびヘキサンを混合しながら加え、次いで、得られるコーティング中にハロゲン化フラノンが約5ppmから約1000ppm、実施形態として、約20ppmから約800ppm、他の実施形態として、約100ppmから約600ppmの量で存在し得るように、少なくとも1種のハロゲン化フラノンを加えることによって生成される懸濁液であり得る。
【0051】
他の実施形態として、本開示のコーティングは、溶液として塗布することができ、溶媒は蒸発させてコーティング成分(実施形態では、フィルム形成ポリマーとハロゲン化フラノン)が残される。溶液を生成するのに使用され得る適切な溶媒には、選択されたコーティング組成物に適する任意の溶媒または溶媒の組合せが含まれる。適切であるには、溶媒は、(1)コーティング成分と混和性であり、また(2)コーティングされる物品(例えば、縫合糸)を形成するのに使用されるどの材料の元の状態にも認められる影響を及ぼしてはならない。適切な溶媒のいくつかの例には、アルコール、ケトン、エーテル、アルデヒド、アセトニトリル、酢酸、塩化メチレン、クロロホルムおよび水が含まれる。実施形態として、塩化メチレンが溶媒として使用され得る。
【0052】
本開示のコーティング溶液を調製することはまた比較的簡単な手順であり、ブレンド、混合などによって達成できる。一実施形態として、フィルム形成ポリマー、ハロゲン化フラノンおよび塩化メチレンがコーティング溶液を生成するために用いられる場合、所望の量のフィルム形成ポリマーおよびハロゲン化フラノンが容器に入れられ、その後、所望の量の塩化メチレンが添加されればよい。次いで、2つの成分は十分に混合されて、成分は一体化され得る。実施形態として、ステアロイル乳酸カルシウムを含めて、前記脂肪酸成分はコーティング溶液に含めることができる。
【0053】
知られている任意の技法が、物品に、例えば溶液または懸濁液として、コーティングを付けるために用いられ得る。適切な技法には、ディッピング、スプレー、ワイピング(wiping)、ブラッシング(brushing)が含まれる。次いで、コーティング溶液または懸濁液により濡れた物品は、溶媒を蒸発させ、追い出すのに十分な時間と温度、乾燥オーブン中を通されるか、またはそこに保たれ得る。
【0054】
本開示のコーティングによりコーティングされる物品は、細菌に対する耐性の向上を必要とする任意の材料で形成されていてよい。このような物品には、これらに限らないが、織物材料、包装材料、医療デバイスなどが含まれる。
【0055】
本開示のコーティングによりコーティングされ得る織物材料には、天然繊維、合成繊維、天然繊維のブレンド、合成繊維のブレンド、および天然繊維と合成繊維のブレンドで製造されたものが含まれる。織物材料を形成するのに使用される適切な材料には、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ハロゲン化ポリマー、ポリエステル/ポリエーテル、ポリウレタン、これらのホモポリマー、これらのコポリマー、およびこれらの組合せが含まれる。適切な材料の具体例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6、およびナイロン6,6が含まれる。
【0056】
本開示のコーティングによりコーティングされ得る包装材料には、医療デバイス、医薬、織物材料、消費財、食品などのような製品の包装が含まれる。包装材料は、当業者の知識の範囲内の任意の適切な材料で生成され得る。
【0057】
本開示のコーティングによりコーティングされ得る医療デバイスには、これらに限らないが、縫合糸、ステープル、メッシュ、パッチ、三角巾、ステント、グラフト、クリップ、ピン、ネジ、リベット、鋲(tack)、骨プレート、薬物送達デバイス、創傷包帯、織布デバイス、不織布デバイス、編組デバイス(braided device)、癒着防止材(adhesion barrier)、組織スカフォールド(tissue scaffold)、および他のインプラントが含まれる。
【0058】
医療デバイスは、その医療デバイスの意図する用途に適する物理的性質を有する任意の材料で形成され得る。こうして、医療デバイスは、吸収性材料、非吸収性材料、およびこれらの組合せで形成され得る。医療デバイスを形成するために使用され得る適切な吸収性材料には、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、ジオキサノン、グリコール酸、乳酸、グリコリド、ラクチド、これらのホモポリマー、これらのコポリマー、およびこれらの組合せが含まれる。医療デバイスを形成するために使用され得る適切な非吸収性材料には、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリプロピレンのコポリマー、およびポリエチレンとポリプロピレンのブレンドが含まれる。
【0059】
一実施形態として、本開示に従って処理される医療デバイスは縫合糸であり得る。本開示による縫合糸は、モノフィラメントでもマルチフィラメントでもよく、生体吸収性および生体非吸収性材料の両方を含めて、通常の任意の材料、例えば、手術用ガット、絹、綿、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン)、ポリアミド、ポリグリコール酸、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレートおよびグリコリド−ラクチドのコポリマー)などで製造されていてよい。
【0060】
一実施形態として、縫合糸は、ポリオレフィンで製造され得る。適切なポリオレフィンには、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンのコポリマー、ポリエチレンとポリプロピレンのブレンドが含まれる。いくつかの実施形態では、ポリプロピレンが縫合糸を形成するために使用され得る。ポリプロピレンは、アイソタクチックポリプロピレン、あるいはアイソタクチックおよびシンジオタクチックまたはアタクチックポリプロピレンの混合物であり得る。
【0061】
別の実施形態として、縫合糸は、吸収性の合成ポリマー、例えば、グリコリド、ラクチド、カプロラクトン、アルキレンカーボネート(すなわち、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネートなど)、ジオキサノンから製造されるもの、およびこれらのコポリマー、ならびにこれらの組合せから製造され得る。使用され得る組合せの1つは、グリコリドおよびラクチド系ポリエステル(グリコリドおよびラクチドのコポリマーが含まれる)を含む。
【0062】
上記のように、縫合糸は、モノフィラメントまたはマルチフィラメントであり得る。縫合糸がモノフィラメントである場合、このような縫合糸の製造方法は当業者の知識の範囲内にある。このような方法は、縫合糸材料、例えば、ポリオレフィン樹脂を形成する工程、ならびにその樹脂を押し出し、引き抜き、焼きなまし(annealing)てモノフィラメントを形成する工程を含む。
【0063】
縫合糸が複数のフィラメントで製造される場合、縫合糸は、例えば、編組、織り(weaving)、または編み(knitting)のような当業者の知識の範囲内のどのような技法を用いて製造されてもよい。フィラメントはまた不織縫合糸を製造するために結合一体化されてもよい。フィラメント自体は、縫合糸形成過程の一部としてヤーンを形成するために、引き抜かれ、配向(orient)され、縮らされ、撚り合わされ、混繊されるか、または空気交絡され得る。
【0064】
実施形態として、本開示のマルチフィラメント縫合糸は編組によって製造できる。編組は、当業者の知識の範囲内のどのような方法によって行なわれてもよい。例えば、縫合糸および他の医療デバイスの編組構成は、米国特許第5019093号、米国特許第5059213号、米国特許第5133738号、米国特許第5181923号、米国特許第5226912号、米国特許第5261886号、米国特許第5306289号、米国特許第5318575号、米国特許第5370031号、米国特許第5383387号、米国特許第5662682号、米国特許第5667528号、および米国特許第6203564号に記載されており、これらの各々の開示全体は、参照を通して本明細書に組み込まれる。
【0065】
一旦、縫合糸が構成されると、それは、当業者の知識の範囲内のどのような手段によって滅菌されてもよい。
【0066】
いくつかの場合において、管状編組、またはシース(sheath)が、編組機の中央を通して供給されるコア構造体の回りに構成されてもよい。知られている管状編組縫合糸は、コアを有するものを含めて、例えば、米国特許第3187752号、米国特許第3565077号、米国特許第4014973号、米国特許第4043344号、および米国特許第4047533号に開示されている。
【0067】
織物材料は、個々の繊維および多繊維で製造されたファブリックを含めて、同様に形成および/またはコーティングされ得る。
【0068】
本開示のコーティングによりコーティングされた縫合糸は抗菌性を有するであろう。実施形態として、本開示の縫合糸は細長い構造を有し、少なくとも1本のポリマーフィラメントで、実施形態として、複数のフィラメントで形成され得る。フィラメントは、生理学的条件下で吸収性であるポリマー材料で形成することができ、本開示のコーティングはそれらの上に配置され得る。
【0069】
実施形態として、本開示による縫合糸は、針付き縫合糸を製造するために、当業者の知識の範囲内のどのような手術針に取り付けられてもよい。このような針付き縫合糸は図に示されており、縫合糸101が針100に取り付けられている。創傷は、創傷閉鎖を生じるように、組織を通して針付き縫合糸を移動することによって縫合され得る。次いで、針は縫合糸から取り除かれ、縫合糸は結ぶことができる。縫合糸は組織に留まり、その抗菌性のおかげで、この組織の汚染および感染を防止する助けとなり得るので、創傷の治癒を促進し、感染を最少化する。縫合糸コーティングはまた、有利には、組織を通して縫合糸を移動させる、外科医の能力も向上させ、彼/彼女が縫合糸を結ぶことができる容易さおよび安全性を増大させる。
【0070】
本開示による医療デバイスおよび包装材料は、当業者の知識の範囲内の技法に従って滅菌できる。
【0071】
本開示のコーティングは、本明細書に記載のハロゲン化フラノンを含めて、物品の処理、取扱い、および保管の間、物品の表面に付いたままである。このため、物品から任意のパッケージへの、任意のパッケージから任意の物品、環境などへのハロゲン化フラノンの損失または移行は最少化される。
【0072】
望まれる場合、本開示のコーティング組成物は、さらなる成分、例えば、染料、抗菌剤、成長因子、抗炎症剤などを任意選択で含み得る。本開示では、「抗菌剤」という用語は、抗生物質、殺菌剤、消毒薬(disinfectant)およびこれらの組合せを含む。実施形態として、抗菌剤は、殺菌剤、例えば、トリクロサンであり得る。
【0073】
コーティングに使用され得る抗生物質の種類には、ミノサイクリンのようなテトラサイクリン;リファンピンのようなリファマイシン類;エリスロマイシンのようなマクロライド;ナフシリンのようなペニシリン類;セファゾリンのようなセファロスポリン類;イミペネムおよびアズトレオナムのようなベータ−ラクタム抗生物質;ゲンタマイシンおよびトブラマイシン(TOBRAMYCIN(登録商標))のようなアミノグリコシド;クロラムフェニコール;スルファメトキサゾールのようなスルホンアミド;バンコマイシンのようなグリコペプチド;シプロフロキサシンのようなキノロン;フシジン酸;トリメトプリム;メトロニダゾール;クリンダマイシン;ムピロシン;アンホテリシンBのようなポリエン;フルコナゾールのようなアゾール;ならびに、スルバクタムのようなベータ−ラクタム阻害剤が含まれる。
【0074】
他の実施形態として、イオン性フラノンの銀塩を含めて、銀塩が、それらの抗菌性のために添加され得る。
【0075】
コーティングに使用され得る殺菌剤および消毒薬の例には、ヘキサクロロフェン;クロルヘキシジンおよびシクロヘキシジンのような陽イオンビグアニド;ヨウ素、およびポビドン−ヨウ素のようなヨードフォア(iodophore);PCMX(すなわち、p−クロロ−m−キシレノール)およびトリクロサン(すなわち、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテル)のようなハロ−置換フェノール化合物;ニトロフラントインおよびニトロフラゾンのようなフラン医用製剤;メテナミン;グルタルアルデヒドおよびホルムアルデヒドのようなアルデヒド;ならびにアルコールが含まれる。いくつかの実施形態では、抗菌剤の少なくとも1種は、殺菌剤、例えばトリクロサンであり得る。
【0076】
本開示の抗菌コーティングは、様々な任意選択の成分、例えば、安定剤、増粘剤、着色剤などを含み得る。任意選択の成分は、抗菌コーティングの全重量の約10%までを占め得る。
【0077】
本開示のコーティングでは、少量のハロゲン化フラノンが必要とされるため、既存の配合および製造プロセスは、本明細書に記載のコーティングを製造するために、最低限の変更のみを必要とする。配合および製造のこの容易は、既存のコーティング材料に他の抗菌剤を加えることに比べて、本開示のコーティングを調製するために必要とされる時間とコストの両方を低減し得る。
【0078】
上の説明は多くの細目を含むが、これらの細目は本明細書における開示の範囲への限定としてでなく、それらの特に有用な実施形態の単なる例示として解釈されるべきである。当業者は、本明細書に添付の特許請求の範囲によって定められる、開示の範囲および精神の範囲内の他の多くの可能性を予見するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化フラノンと組み合わせてフィルム形成ポリマーを含むコーティングを有する物品であって、医療デバイス、包装材料および織物材料からなる群から選択される、物品。
【請求項2】
前記フィルム形成ポリマーが、グリコリド、ラクチド、カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、ジオキサノン、ジオキセパノンからなる群から選択される1種または複数のモノマーから誘導される連鎖、これらのホモポリマー、これらのコポリマー、およびこれらの組合せを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記フィルム形成ポリマーが、グリコリド/カプロラクトンのコポリマーを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記ハロゲン化フラノンが、次式の化合物
【化11】

[式中、R、R、およびRは、独立に、または全てが、H、またはハロゲンであり;
【化12】

は2重結合を表し;また
は、H、ハロゲン、ホルミル、カルボキシル、シアノ、エステル、アミド、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアリールアルキルからなる群から選択される部分であり、これらの部分は、任意選択で、1つもしくは複数の置換基により置換されていても、または、1個もしくは複数のヘテロ原子が介在していてもよく、
、R、R、およびRの少なくとも1つはハロゲンである]
を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記ハロゲン化フラノンが、
【化13】

【化14】

およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記ハロゲン化フラノンが、前記コーティング中に、約5ppmから約1000ppmの量で存在する、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記コーティングが、脂肪酸、脂肪酸塩および脂肪酸エステル塩からなる群から選択される1種または複数の脂肪酸成分をさらに含む、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記脂肪酸成分が、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸マグネシウム、ステアロイル乳酸アルミニウム、ステアロイル乳酸バリウム、ステアロイル乳酸亜鉛、パルミチル乳酸カルシウム、パルミチル乳酸マグネシウム、パルミチル乳酸アルミニウム、パルミチル乳酸バリウム、またはパルミチル乳酸亜鉛、オレイル乳酸カルシウム、オレイル乳酸マグネシウム、オレイル乳酸アルミニウム、オレイル乳酸バリウム、およびオレイル乳酸亜鉛からなる群から選択される脂肪酸エステル塩を含む、請求項7に記載の物品。
【請求項9】
前記織物材料が、天然繊維、合成繊維、天然繊維のブレンド、合成繊維のブレンド、および天然繊維と合成繊維のブレンドからなる群から選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
前記織物材料が、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ハロゲン化ポリマー、ポリエステル/ポリエーテル、ポリウレタン、これらのホモポリマー、これらのコポリマー、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項9に記載の物品。
【請求項11】
前記包装材料が、医療デバイス、医薬、織物材料、消費財および食品からなる群から選択される製品のためのものである、請求項1に記載の物品。
【請求項12】
前記医療デバイスが、縫合糸、ステープル、メッシュ、パッチ、三角巾、ステント、グラフト、クリップ、ピン、ネジ、リベット、鋲、骨プレート、薬物送達デバイス、創傷包帯、織布デバイス、不織布デバイス、編組デバイス、癒着防止材、組織スカフォールドからなる群から選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項13】
前記コーティングが、抗生物質、殺菌剤、消毒薬およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の抗菌剤をさらに含む、請求項1に記載の物品。
【請求項14】
ハロゲン化フラノン;
グリコリド/カプロラクトンのコポリマー;および
脂肪酸、脂肪酸塩および脂肪酸エステル塩からなる群から選択される脂肪酸成分
を含む抗菌組成物。
【請求項15】
細長い構造、および、該細長い構造の少なくとも一部に配置されたコーティング材料を含む縫合糸であって、該コーティングが
フィルム形成ポリマー;および
ハロゲン化フラノン
を含む、縫合糸。
【請求項16】
前記フィルム形成ポリマーが、グリコリド、ラクチド、カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、ジオキサノン、ジオキセパノンからなる群から選択される1種または複数のモノマーから誘導される連鎖、これらのホモポリマー、これらのコポリマー、およびこれらの組合せを含む、請求項15に記載の縫合糸。
【請求項17】
前記ハロゲン化フラノンが、次式の化合物
【化15】

[式中、R、R、およびRは、独立に、または全てが、H、またはハロゲンであり;
【化16】

は2重結合を表し;また
は、H、ハロゲン、ホルミル、カルボキシル、シアノ、エステル、アミド、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアリールアルキルからなる群から選択される部分であり、これらの部分は、任意選択で、1つもしくは複数の置換基により置換されていても、または、1個もしくは複数のヘテロ原子が介在していてもよく、
、R、R、およびRの少なくとも1つはハロゲンである]
を含む、請求項15に記載の縫合糸。
【請求項18】
前記コーティングが、脂肪酸、脂肪酸塩および脂肪酸エステル塩からなる群から選択される脂肪酸成分をさらに含み、前記フィルム形成ポリマーがグリコリド/カプロラクトンのコポリマーを含む、請求項15に記載の縫合糸。
【請求項19】
前記脂肪酸エステル塩が、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸マグネシウム、ステアロイル乳酸アルミニウム、ステアロイル乳酸バリウム、ステアロイル乳酸亜鉛、パルミチル乳酸カルシウム、パルミチル乳酸マグネシウム、パルミチル乳酸アルミニウム、パルミチル乳酸バリウム、パルミチル乳酸亜鉛、オレイル乳酸カルシウム、オレイル乳酸マグネシウム、オレイル乳酸アルミニウム、オレイル乳酸バリウム、およびオレイル乳酸亜鉛からなる群から選択される、請求項18に記載の縫合糸。
【請求項20】
創傷を閉じる方法であって、該方法は、
針付き縫合糸を製造するために、請求項15に記載の縫合糸を針に取り付けること;および
創傷閉鎖を生じるように、組織を通して該針付き縫合糸を移動すること
を含む、方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−540876(P2009−540876A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511034(P2009−511034)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/011645
【国際公開番号】WO2007/133782
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】