説明

抗菌活性および抗ウイルス活性を有するトキシン関連抗体

酵母キラートキシンに特異的な抗体のイディオタイプ抗原決定基を認識する抗イディオタイプ抗体は殺菌活性を有する。これらの抗イディオタイプ抗体の断片(たとえばデカペプチド)、特にCDR残基を含む断片も殺菌活性を示し、5同じ配列を有するがD-アミノ酸から構成されるペプチド、またはアミノ酸置換を含むペプチドも同様に殺菌活性を示す。これらの殺菌性ポリペプチドのペプチド模倣体も提供する。抗ウイルス活性も見られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に引用した文書は全て、その全体が参照として組み込まれる。
【0002】
本発明は、殺菌剤および抗ウイルス剤、特に酵母キラートキシン由来の殺菌剤および抗ウイルス剤の分野のものである。
【背景技術】
【0003】
キラートキシン(KTs)は、同じ生態学的地位を求めて自然で競う、他の酵母または微生物を殺すことができる酵母によって分泌される蛋白質である[1]。このキラートキシンは、その広範な殺菌活性のために魅力的な治療ツールであるが、これらは宿主の生理学的環境では不安定であり、かつその抗原性および毒性のために実用的でない。その代わり、KTを模倣する抗イディオタイプ抗体の使用が有効であることが示されている。
【0004】
ピキアアノマラ(Pichia anomala)由来のキラートキシン(「PaKT」)は、カンジダアルビカンス(Candida albicans)、アスペルギルスフミガツス(Aspergillus fumigatus)、ニューモチステスカリニ(Pneumocystis carinii)、ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を含む病原体に対して広範な殺菌活性を有している[2、3、4]。この観察は、そのイディオタイプ(Id)が、抗イディオタイプ抗体(antiId)の産生を誘発できる[6、7、8]マウスの、PaKT中和モノクローナル抗体 (mAbKT4)[5]を生成することによって活用された。これらのantiIdは、活性PaKT領域の内部像を示し、それ自体で、感受性微生物のPaKT受容体(KTR)へ結合すること、PaKTの殺菌活性と重なる広範な殺菌活性を含む生物活性を発揮する(図1)。
【0005】
mAbKT4によるイディオタイプワクチンの接種によってこれらの抗体('KTIdAb)が誘発された実験動物は、C.アルビカンスによる粘膜的または全身的攻撃に対し保護されることが繰り返し示されている[7、8]。(多剤耐性株を含む)ヒト型結核菌、P.カリニ他など[4、9]、多様な微生物病原体によるKTIdAbに対するin vitroでの感受性証拠は十分示されている。
【0006】
PaKT受容体に対する抗体がPaKT活性を模倣することが、イディオタイプ理論(図1)によっても予想された。これは、動物およびヒトでのPaKT感受性微生物によって生じた実験的感染および自然感染の間に実証されている[10]。ヒト自然抗KTR抗体が、C.アルビカンス、M.ツベルクロシス(tuberuclosis)、およびP.カリニに対してin vitroの殺菌活性を有し、ヌードラットのP.カリニ感染を阻止し、ラット膣カンジダ症の実験モデルでin vivoでの受動的な移行に対して防御することが示されている[4、10、11]。
【0007】
こうした結果に基づき、さらに十分な量の標準的KTIdAbを得るために、ラットモノクローナルIgM(mAbKl0)およびマウス一本鎖Fv(scFvH6)殺菌性抗体が得られている[12、13]。これら2種の抗体は、以下の重要な病原微生物に対して強力なin vitro殺菌作用を有している。C.アルビカンス[12、13];C. クルセイ(krusei)および(フルコナゾール耐性株を含む)C.グラブラタ(glabrata);クリプトコックスネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、A.フミガツス[14]、ヒト型結核菌[4];黄色ブドウ球菌、エンテロコックスフェーカリス(Enterococcus faecalis)、E.ファシウム(E. faecium)、および(メチシリン、バンコマイシン、およびペニシリン耐性株を含む)肺炎連鎖球菌[15]、S.ミュータンス(mutans)、リーシュマニア大形(Leishmania major)、L.幼児(infantum)、ならびにアカンタモエバカステラーニ(Achantamoeba castellani)。さらに、ラット膣カンジダ症実験モデルでの経膣投与によって、これらの抗体は特異的な治療活性を示した[13]。加えて、K10は、噴霧投与により感染させたラットのカリニ肺炎[16]、およびT細胞枯渇骨髄を移植したマウスでは鼻腔滴下により生じたアスペルギルス症に対して治療効果があることが証明された[14]。
【0008】
ScFvH6の存在は、報告されているが、その製造方法のみならず、そのアミノ酸配列もこれまで開示されていない。
【特許文献1】EP127839号
【特許文献2】EP155476号
【特許文献3】WO89/046699号
【特許文献4】US5,693,506号
【特許文献5】US5,659,122号
【特許文献6】US5,608,143号
【特許文献7】米国特許第4,738,921号
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【特許文献11】米国特許第4,551,433号
【特許文献12】欧州特許出願第0267851号
【特許文献13】EPO-A-0219237号
【特許文献14】欧州特許出願第0324647号
【特許文献15】米国特許第4,336,336号
【特許文献16】欧州特許出願第0244042号
【特許文献17】欧州特許出願第0127328号
【特許文献18】欧州特許出願第0036259号
【特許文献19】欧州特許出願第0063953号
【特許文献20】国際公開第84/04541号
【特許文献21】欧州特許出願第0136829号
【特許文献22】欧州特許出願第0136907号
【特許文献23】米国特許第4,745,056号
【特許文献24】欧州特許出願第0284044号
【特許文献25】EPO-A-0329203号
【特許文献26】米国特許第4,876,197号
【特許文献27】米国特許第4,880,734号
【特許文献28】欧州特許出願第0164556号
【特許文献29】欧州特許出願第0196056号
【特許文献30】国際公開第88/024066号
【特許文献31】欧州特許出願第0012873号
【特許文献32】日本国特許公開第62,096,086号
【特許文献33】米国特許第4,588,684号
【特許文献34】欧州特許出願第0060057号
【特許文献35】米国特許第4,546,083号
【特許文献36】米国特許第4,870,008号
【特許文献37】欧州特許出願第0324274号
【特許文献38】国際公開第89/02463号
【特許文献39】米国特許第4,837,148号
【特許文献40】米国特許第4,929,555号
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【非特許文献125】Itoら、(1983年)、J.Bacteriol.、第153号、163頁
【非特許文献126】BeachおよびNurse(1981年)、Nature、第300号、706頁
【非特許文献127】Davidowら、(1985年)、Curr.Genet.、10:380471
【非特許文献128】Gaillardin、ら(1985年)Curr.Genet.、第10号、49頁
【非特許文献129】De Louvencourtら、(1983年)、J.Bacteriol.、第154号、1165頁
【非特許文献130】Davidowら、(1985年)、Curr.Genet.、第10号、39頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一層改良された抗菌および/または抗ウイルス化合物を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の抗体
本発明は、酵母キラートキシン特異的抗体のイディオタイプ抗原決定基を認識する抗イディオタイプ抗体を提供するが、但し抗イディオタイプ抗体はK10ラットモノクローナル抗体ではない。抗体は、殺菌活性を有する(たとえば酵母キラートキシン活性を保持する)、かつ/または抗ウイルス活性を有することが好ましい。
【0011】
本発明の抗イディオタイプ抗体を使用して、さらに次の抗イディオタイプ抗体(元のキラートキシンに関して抗抗抗イディオタイプ)を生成することができる。次いで、本発明の抗抗抗イディオタイプ抗体を使用して、さらに次の抗イディオタイプ抗体(元のキラートキシンに関して抗抗抗抗抗イディオタイプ)を生成することができる。したがって、抗イディオタイプ抗体の連続的な生成によってキラートキシンの殺菌活性を伝達することができ、これらの様々な生成も本発明の範囲内に含まれる。
【0012】
したがって、本発明は、本発明の抗イディオタイプ抗体のイディオタイプ抗原決定基を認識する抗体(すなわち抗抗抗イディオタイプ抗体を提供する)、そのような抗抗抗イディオタイプ抗体のイディオタイプ抗原決定基を認識する抗体(すなわち抗抗抗抗抗イディオタイプ抗体)などを提供する。したがって、一般に、本発明は、本発明の(抗)n-イディオタイプ抗体のイディオタイプ抗原決定基を認識する抗体であって、nが奇数(たとえば1、3、5、7、9など)である抗体を提供する。一般に、これらの抗体は、KT4などの抗トキシン抗体のイディオタイプ抗原決定基に結合し、殺菌活性および/または抗ウイルス活性を有することが好ましい。
【0013】
こうした(抗)n-イディオタイプ抗体を生成するために、本発明は、(抗)m-イディオタイプ抗体であって、mが偶数(たとえば2、4、6、8など)である抗体を提供する。一般に、これらの抗体はキラートキシンと結合する。
【0014】
用語「抗体」には、様々な天然および人工の抗体のいずれか、ならびに入手可能な抗体由来蛋白質が含まれる。すなわち、用語「抗体」には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fab断片、F(ab')2断片、Fv断片、一本鎖Fv(scFv)抗体、オリゴ抗体(oligobody)などが含まれる。
【0015】
ヒト免疫系との適合性を高めるために、ヒト抗体を使用することが好ましい。代替として、本発明の抗体は、非ヒト抗体のキメラ型またはヒト化型であってよい[たとえば参照17および18]。
【0016】
キメラ抗体では、非ヒト定常領域はヒト定常領域によって置換されているが、可変領域は非ヒトのままである。
【0017】
ヒト化抗体は、たとえば以下を含む様々な方法によって達成することができる:(1)追加の1個以上の非ヒト抗体由来のフレームワーク残基の転移(「ヒト型化」)を場合によっては伴う、非ヒト可変領域由来の相補性決定領域(CDR)をヒトフレームワーク上に移植すること(「CDR移植」)、(2)非ヒト可変領域全体を移植するが、表面残基を交換(「外装(veneering)」)することによって、ヒト様表面を用いて非ヒト可変領域全体を「覆う(cloaking)」こと。本発明では、ヒト化抗体には、CDR移植、ヒト型化、外装、および可変領域により得られた抗体が含まれる。[たとえば参照19〜25]。
【0018】
ヒト化抗体の定常領域は、ヒト免疫グロブリンに由来する。重鎖定常領域は、5個のアイソタイプα、δ、ε、γまたはμのいずれかから選択することができる。
【0019】
ヒト化抗体または完全ヒト抗体も、ヒト免疫グロブリンの座位を含むように設計した遺伝子組換え動物を使用して生成することができる。たとえば、参照26は、ヒトIg座位を有する遺伝子組換え動物を開示しており、その際その動物は、内在する重鎖および軽鎖座位の不活化のために機能的内在性免疫グロブリンを産生しない。参照27も、免疫原に対する免疫反応を保持することができる遺伝子組換え非霊長類哺乳動物宿主を開示しており、その場合、抗体は霊長類の定常領域および/または可変領域を有し、内在性免疫グロブリンをコードする座位は置換されまたは不活化されている。参照28は、改変抗体分子を形成するために定常または可変領域の全てまたは一部を置換するなど、哺乳動物の免疫グロブリンの座位を改変するためにCre/Lox系の使用を開示している。参照29は、不活化内在性Ig座位および機能性ヒトIg座位を有する非ヒト哺乳動物宿主を開示している。参照30は、マウスが内在性重鎖を欠き、1個以上の異種定常領域を含む外来性免疫グロブリン座位を発現する、遺伝子組換えマウスの生成方法を開示している。
【0020】
本発明の抗体には標識を含めてよい。、放射性標識または蛍光標識など、標識は直接検出することができる。あるいは、その産生物を検出することができる酵素(たとえば、ルシフェラーゼ、βーガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼなど)、あるいはビオチンと、アビジンまたはストレプトアビジンなどの結合相手など、標識は間接的に検出することができる。
【0021】
本発明の抗体は、固体支持体に結合させることができる。
【0022】
本発明の抗体は、どんな適当な手段(たとえば組換え発現によって)によっても生成することができる。
【0023】
本発明の好ましい抗体は単鎖Fv抗体である。これらは、当該出発モノクローナル抗体由来重鎖および軽鎖可変領域を接合することによって産生することができ、またはscFvライブラリーのスクリーニング(たとえばファージディスプレイ)によって同定することができる。参照31は、抗イディオタイプscFv抗体を産生するためのファージディスプレイ法を開示している。
【0024】
本発明の特に好ましいscFv抗体は、H6(配列番号1および2)およびH20(配列番号21および22)である。1個以上の(たとえば2、3、4、5または6個)のH6およびH20由来のCDRを含む抗体も好ましく、(a)1個以上の(たとえば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個の)フレームワーク残基が他のアミノ酸で置換されている、(b)リンカー配列(配列番号30)が別のリンカー配列で置換されている、(c)「E-tag」配列(配列番号59)が欠失しまたは置換されている、H6およびH20の誘導体も好ましい。H6またはH20、あるいは(a)から(c)の誘導体を含む、N末端またはC末端での融合蛋白質も有用である。H6CDRおよびH20CDRは、場合によって、1、2、3、または4個のアミノ酸置換を含んでも良い。
【0025】
本発明の他の好ましい抗体はヒト化抗体である。本発明の特に好ましいヒト化抗体は、H6、H20、またはK20由来の1個以上の(たとえば2、3、4、5または6)CDRを含む。
【0026】
ポリペプチドおよび抗体フラグメント
驚くべきことに、本発明の抗イディオタイプ抗体の可変領域の短い断片(たとえば10mer断片)は、抗体のKT様殺菌活性を保持できることが判明している。さらに驚くべきことに、これらの断片のL-アミノ酸は、殺菌活性を失わせることなくD-アミノ酸と置換することができ、断片中のアミノ酸は殺菌活性を失うことなく他のアミノ酸で置換することができる。さらに、断片は、抗ウイルス活性を保持することが判明している。
【0027】
したがって、本発明は、本発明の抗体の可変領域のアミノ酸配列に由来する少なくともx個のアミノ酸の断片である少なくとも1個のアミノ酸配列を含み、場合によっては前記x個のアミノ酸中のy個(1個または複数)のアミノ酸が異なる(1個以上の)アミノ酸によって置換されているポリペプチドを提供する。ポリペプチドは、殺菌活性および/または抗ウイルス活性を有することが好ましい。
【0028】
ポリペプチドは、250個以下のアミノ酸(たとえば225、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、95、90、80、70、60、50、45、40、35、30、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6個以下、またはせめて5個のアミノ酸)からなることが好ましい。ポリペプチドは、5個から90個のアミノ酸からなることが好ましい(たとえば、5個から80個、5個から70個、5個から60個のアミノ酸などからなる)。8個から25個のアミノ酸からなるポリペプチドが特に好ましい。
【0029】
ポリペプチドは、少なくとも3個のアミノ酸(たとえば、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、125、150、175個、または少なくとも200個のアミノ酸)からなることが好ましい。
【0030】
xの値は、少なくとも3個であることが好ましい(たとえば、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、125、150、175個、または少なくとも200個)。
【0031】
yの値は、xの値に依存してx未満となり、x-1、x-2、x-3、x-4、x-5、x-6、x-7、x-8、x-9、x-10、x-11、x-12、x-13、x-14、またはx-15でよい。好ましいyの値は、1、2、3、4、および5である。通常、y個のアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはYによって置換されている。y置換はそれぞれ、その他のものと同じまたは異なってよい。置換は、Gによることが好ましく、またはAによることがより好ましい[32、33]。置換するアミノ酸は、LまたはD-アミノ酸でよいが、その他のx個のアミノ酸全てが、単一の立体配置を共有(すなわち全てDまたは全てL)する場合、(もちろん、Gには立体異性体はないが)そのアミノ酸はその立体配置を有することが好ましい。
【0032】
この方式でのCによるSの除去が酸化耐性を向上させるなど、そのCを別のアミノ酸に置換するように、x個のアミノ酸断片にCが含まれる場合、yの値は、少なくとも1個であることが好ましい。
【0033】
少なくともx個のアミノ酸の断片は、抗体中のCDRに由来する少なくともz個のアミノ酸を含むことが好ましい。Zの値は、少なくとも1個(たとえば2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上)であることが好ましい。
【0034】
ポリペプチドは、1個を超える(たとえば2、3、4、5、6)アミノ酸配列を含むことができ、その各々のアミノ酸配列は少なくともx個のアミノ酸の断片(たとえば配列番号25)である。そのようなポリペプチドでは、各断片のxの値は同じまたは異なってよく、各x中のyの値は同じまたは異なってよく、各x内のzの値は同じまたは異なってよい。断片は、グリシンの豊富なリンカー配列(たとえば配列番号30)などのリンカーペプチドによって結合することができる。
【0035】
本発明は、式NH2-A-B-C-COOHのポリペプチドも提供し、式中、Aはa個のアミノ酸からなるポリペプチド配列であり、Cはc個のアミノ酸からなるポリペプチド配列であり、Bは先に定義したように、本発明の抗体の可変領域のアミノ酸配列に由来する少なくともx個のアミノ酸の断片であり、場合によっては前記x個のアミノ酸中のy個のアミノ酸が異なる(1個以上の)アミノ酸によって置換されているポリペプチド配列である。ポリペプチドは、殺菌活性および/または抗ウイルス活性を有することが好ましい。
【0036】
一般に、aの値は、少なくとも1(たとえば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500など)である。一般に、cの値は、少なくとも1(たとえば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500など)である。a+cの値は、少なくとも1(たとえば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500など)である。a+cの値は、多くても1000(たとえば多くても900、800、700、600、500、450、400、350、300、250、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2)であることが好ましい。
【0037】
典型的には、アミノ酸配列-A-は、本発明の抗体の可変領域中の配列-B-のN末端(たとえば配列番号2)であるa個のアミノ酸に対してm%未満の配列相同性を共有し、典型的には、アミノ酸配列-C-は、本発明の抗体の可変領域中の配列-B-のC末端(たとえばin配列番号2)であるc個のアミノ酸に対してn%未満の配列相同性を共有する。一般に、mおよびnの値は、共に60以下(たとえば50、40、30、20、10以下)である。mおよびnの値は、互いに同じまたは異なってよい。
【0038】
ポリペプチドには、酵母キラートキシンのミモトープ(mimotope)を含めてよい。
【0039】
ポリペプチドは、配列AA1-AA2-AA3-AA4-AA5-AA6-AA7-AA8-AA9-AA10を含むことが好ましく、式中AA1...AA10のそれぞれは、独立にD-またはL-アミノ酸であり、AA1はE、A、またはGであり、AA2はK、A、またはGであり、AA3はV、A、またはGであり、AA4はT、A、またはGであり、AA5はM、A、またはGであり、AA6はT、A、またはGであり、AA7はC、S、A、またはGであり、AA8はS、A、またはGであり、AA9はAまたはGであり、かつAA10はS、A、またはGであるが、但しAA1、AA2、AA3、AA4、AA5、AA6、AA7、AA8、AA9、およびAA10のうちのp個以下はAであり、AA1、AA2、AA3、AA4、AA5、AA6、AA7、AA8、AA9、およびAA10のうちのq個以下はGである。pの値は、1、2、3、または4であり、1または2であることが好ましい。qの値は、0、1、または2であり、0(すなわちグリシン残基を含まない)または1であることが好ましい。
【0040】
特に好ましいポリペプチドは、構成アミノ酸がD-および/またはL-立体配置の状態で、配列番号3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、20、23、24、25、26、27、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、および71のアミノ酸配列を含む、またはそれらからなる。配列番号3、4、23、27、および33が最も好ましい。
【0041】
参照では、これらのポリペプチド配列のいくつかのx、y、およびzの値は以下の通りである。
【0042】
【表1】

【0043】
抗イディオタイプ抗体(たとえばH6、H20、K20)の配列が、たとえば、PepScan法[34]の使用によって判明すると、次の殺菌性および/または抗ウイルス性断片を重複するペプチド断片のパネルのスクリーニングによって同定することができる。たとえば、本明細書の実施例に開示したin vitroアッセイを使用し、4mer、5mer、6mer、7mer、8mer、9mer、10mer、11mer、12mer、13merなどの重複する断片を殺菌力に関して難なく試験することができる。
【0044】
本発明のポリペプチドは、直鎖状、分枝状、または環状[35]でよいが、直鎖アミノ酸であることが好ましい。システイン残基が存在する場合、ジスルフィド架橋によって本発明のポリペプチドを他のポリペプチドに結合(特に、本発明の他のポリペプチドと結合してホモ二量体またはヘテロ二量体を形成)することができる。本発明のポリペプチドは、L-アミノ酸および/またはD-アミノ酸を含むことができる。哺乳動物プロテアーゼに対する耐性を付与するためには、D-アミノ酸を含めることが好ましい。
【0045】
ポリペプチドの生成
本発明のポリペプチドは、様々な手段によって生成することができる。
【0046】
好ましい生成方法にはin vitro化学合成[36、37]が含まれる。t-BocまたはFmoc[38]化学に基づく方法など、固相ペプチド合成が特に好ましい。酵素合成[39]も部分的にまたは完全に使用することができる。
【0047】
化学合成の代替法として生合成を使用することができ、たとえば、ポリペプチドは翻訳によって生成することができる。これは、in vitroまたはin vivoで実施することができる。一般に、生物学的方法は、L-アミノ酸に基づくポリペプチドの生成に限定されるが、翻訳機械(たとえば、アミノアシルtRNA分子)の操作を利用してD-アミノ酸(あるいはヨードチロシンまたはメチルフェニルアラニン、アジドホモアラニンなど、他の非天然アミノ酸)[40]を導入することができる。しかし、D-アミノ酸が本発明のポリペプチド中に含まれる場合には化学合成を使用することが好ましい。ポリペプチドの発現について以下にさらに詳しく説明する。
【0048】
ペプチド生合成を容易にするために、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする核酸を提供する。本発明は、本発明の抗体をコードする核酸も提供する。
【0049】
核酸は、DNAまたはRNA(またはそのハイブリッド)、あるいは改変した主鎖(たとえばホスホロチオ酸)またはペプチド核酸(PNA)を含む核酸など、それらの類似体でよい。核酸は、1本鎖(たとえばmRNA)または2本鎖でよく、本発明は、2本鎖核酸の個々の両方の鎖(たとえばアンチセンス、準備刺激またはプローブ目的)を含む。核酸は、直鎖状または環状でよい。核酸は標識することができる。核酸を固体支持体に結合させることができる。
【0050】
もちろん、本発明による核酸は、多くの方式で、たとえば、全体的にせよ部分的にせよ化学合成(たとえばDNAのホスホルアミダイト合成)、長い分子のヌクレアーゼ消化、短い分子のライゲーション、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーから、ポリメラーゼの使用などによって調製することができる。
【0051】
本発明は、本発明の核酸を含む(たとえばプラスミド)ベクター(たとえば発現ベクターおよびクローニングベクター)、ならびにそのようなベクターで形質転換した(原核生物または真核生物)宿主細胞を提供する。
【0052】
これらのベクターは、核酸免疫化に使用することもできる[たとえば参照41、42、43、44、45など]。ペプチドは、このようにin vivoで発現させることができ、治療抗体も同様に行うことができる。イディオタイプ抗原決定基(たとえばKT4イディオタイプ抗原決定基)を発現させて患者のin vivoで本発明の抗イディオタイプ抗体を誘発させることも可能である。
【0053】
本発明の核酸を含み、本発明のポリペプチドまたは抗体を発現する宿主細胞は、送達ビヒクル、たとえば、共生細菌[46]として使用することができる。これは、粘膜表面への送達に特に有用である。
【0054】
酵母キラートキシン
キラートキシンは、サッカロミセスセレビシエ[47]で最初に同定され、以来以下の他の属の酵母中で同定されている:ピキア属[P.アノマラ、P. クルイベリ(kluyveri)、P.ファリノサ(farinosa)など]、ハンゼニアスポラ(Hanseniaspora)属[H. ウバルム(uvarum)など]、ウィリオプシス(Williopsis)属[W.ムラキイ(mrakii)など]、カンジダ属[C.マルトーサ(maltosa)など]、デバリオミセス(Debaryomyces)属[D. ハンセニ(hansenii)など]、シュワンニオミセス(Schwanniomyces)属[S.オキシデンタリス(occidentalis)など]、クリプトコックス属[C.フミコラ(humicola)など]、トルロプシス(Torulopsis)属[T.グラブラタ(glabrata)など]、ウスチラゴ(Ustilago)属[黒穂菌(U.maydis)など]、チゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)属[Z.バイリ(bailii)など]、およびクルイベロミセス属[K.ラクティス(lactis)、およびK.ファフィ(phaffii)など]。
【0055】
これらの様々なトキシンのいずれかを本発明で使用することができる。トキシンは、(a)広範な殺菌活性を有するもの、および(b)ピキア由来のものが好ましい。トキシンは、ピキアアノマラ由来キラートキシン(「PaKT」)が特に好ましい。
【0056】
殺菌活性
本発明のポリペプチドまたは抗体は、殺菌活性を有することが好ましい。
【0057】
そのポリペプチドまたは抗体は、抗真菌活性および/または抗菌活性を有することが好ましい。抗菌活性は、グラム陰性またはグラム陽性細菌に対するものであってよい。
【0058】
そのポリペプチドまたは抗体は、グルカンを基にした細胞壁を有する微生物に対して活性であることがより好ましい。
【0059】
本発明のポリペプチドおよび抗体に感受性のある微生物には、細菌、真菌、および原生動物が含まれ、それだけには限らないが、以下のものが含まれる。C.アルビカンスなどのカンジダ種、C.ネオフォルマンスなどのクリプトコックス種、E.フェーカリスなどのエンテロコックス種;肺炎連鎖球菌、S.ミュータンス、S.アガラクチア、化膿連鎖球菌などの連鎖球菌種;L.大形やL.幼児などのリーシュマニア種、A.カステラーニなどのアカントアメーバ(Acanthamoeba)種、A.フミガツスなどのアスペルギルス種、P.カリニなどのニューモチステス種、ヒト型結核菌などのマイコバクテリウム種、緑膿菌などのシュードモナス種、黄色ブドウ球菌などのスタヒロコックス種、ネズミチフス菌(S. typhimurium)などのサルモネラ種、および大腸菌などのエシェリキア(Escherichia)種。
【0060】
抗ウイルス活性
本発明のポリペプチドまたは抗体は、抗ウイルス活性を有することが好ましい。
【0061】
そのポリペプチドまたは抗体は、ミクソウイルス(たとえばオルソミクソウイルス)やレトロウイルス(たとえばレンチウイルス)などのヒトウイルスに対する抗ウイルス活性を有することが好ましい。
【0062】
本発明のポリペプチドおよび抗体に感受性なウイルスには、それだけには限らないが、インフルエンザウイルス(AまたはB)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1、HIV-2、HIV-O)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、黄色発熱ウイルスなどが含まれる。
【0063】
薬物設計およびペプチド模倣体
本発明のポリペプチドは、それのみで有用な殺菌剤および抗ウイルス剤である。しかし、ポリペプチドを精製して、(一般的または特異的な)殺菌活性および/または抗ウイルス活性を改善し、またはバイオアベイラビリティ、毒性、代謝、薬物動態などの薬理学的に重要な特徴を改善することができる。したがって、ポリペプチドは、次の研究および精製のためのリード化合物として使用することができる。
【0064】
本発明のポリペプチドは、殺菌活性および/または抗ウイルス活性を有するペプチド模倣分子[たとえば参照48〜53]を設計するために使用することができる。これらのペプチド模倣分子は、通常、本発明のポリペプチドに関して等立体配置(isosteric)となるが、その1個以上のペプチド結合を欠いている。たとえば、重要なアミノ酸側鎖を保持したままペプチド主鎖を非ペプチド主鎖に置き換えることができる。
【0065】
ペプチド模倣分子には糖アミノ酸[54]を含めてよい。ペプトイドを使用することができる。
【0066】
ペプチド模倣分子の設計に役立てるために、KMペプチドについて薬理作用団(すなわち、活性を担う特異的特徴を表す、化学的特徴の組合せおよび3D制約)を定義することができる。薬理作用団は、表面利用可能特徴を含むことが好ましく、水素結合ドナーおよびアクセプタ、帯電/イオン化可能基、ならびに/または疎水性パッチを含むことがより好ましい。活性を付与する際に、その相対的な重要性に応じてこれらに軽重をつけてもよい[55]。
【0067】
薬理作用団は、(HypoGenまたはHipHopを含む)CATALYST[56]、CERIUS2などのソフトウェアを使用して定量し、または本発明のポリペプチドの既知の高次構造から手作業で構築することができる。CATALYSTなどのプログラムを利用し薬理作用団を使用して構造ライブラリーをスクリーニングすることができる。CLIXプログラム[57]を使用することもでき、このプログラムは、そのレセプターと相互作用する化学基と最大の空間的一致をもたらす構造データベース中の候補分子の向きを探す。
【0068】
結合する表面または薬理作用団を使用して官能基(たとえばプロトン、水酸基、アミン基、疎水基)または小分子断片に好都合な相互作用位置をマッピングすることができる。次いで、化合物を新規に設計することができ、その場合関連官能基は本発明のポリペプチドと実質上同じ空間的関係に位置する。
【0069】
正確な寸法および形状を備えた架橋断片、または好都合な向きで官能基を支持し、それによって本発明によるペプチド模倣化合物を得ることができるフレームワークを使用して、官能基を単一化合物に結合することができる。この方式での官能基の架橋は、おそらくQUANTAやSYBYLなどのソフトウェアを用いて手作業で行うことができるが、以下の手法など、自動または準自動の新規な設計手法も入手可能である。
-MCSS/HOOK[58、59、56]。これは、多数の官能基とデータベースから得た分子鋳型を結合する。
-LUDI[60、56]。これは、リガンドによって実行することが理想的であるはずの相互作用点をコンピュータで計算し、レセプターと相互に作用するその能力に基づいて結合部位に断片を配置し、次いで断片を結合してリガンドを生成する。
-MCDLNG[61]。これは、レセプター結合部位に、密集した一般原子の配列体を充填し、モンテカルロ手順を使用して原子型、位置、結合配置、およびその他の特性を無作為に変化させる。
-GROW[62]。これは、(手動でまたは自動的に配置された)初期「種子」断片に始まり、リガンドを外へ向けて成長させる。
-SPROUT[63]。結合ポケット(HIPPOモジュール)内の好都合な水素結合および疎水性領域を同定するためのモジュール、官能基を選択し、標的部位にその官能基を配置して構造を生成(EleFAnT)するための出発断片を形成するモジュール、出発断片上にスペーサ断片を成長させることによって結合ポケットの立体配置に関する制約を満たす骨格を生成し、次いで得られた部分骨格(SPIDeR)を結合するモジュール、ヘテロ原子を骨格に置換してレセプター部位(MARABOU)の静電特性と相補的な静電特性を有する分子を生成するモジュールを含むセット。ALLigaTORモジュールを使用し解をまとまりにして点数を付けることができる。
-CAVEAT[64]。これは、非環式分子を制約するための結合単位を設計する。
-LEAPFROG[65]。これは、小さな段階的な構造変化をつけ、新規な化合物の結合エネルギーを迅速に評価することによってリガンドを評価する。変化させた結合エネルギーに基づいて変化を保存または廃棄し、構造を進化させてレセプターとの相互作用エネルギーを増大させる。
-GROUPBUILD[66]。これは、共通の有機鋳型ライブラリー、およびリガンドとレセプター間の非結合相互作用の完全な実験力場の記述を使用して、化学的に妥当な構造を有し、レセプター結合部位に相補的な立体配置特性および静電特性を有するリガンドを構築する。
-RASSE[67]。
【0070】
こうした方法によって殺菌化合物が同定される。これらの化合物は、新規に設計することができ、既知の化合物であってよく、または既知の化合物をベースにすることができる。化合物は、それ自体使用可能な殺菌剤および/または抗ウイルス剤であってよく、または化合物は、結合親和性や他の薬理学的に重要な特徴(たとえばバイオアベイラビリティ、毒性、代謝、薬物動態など)を改善するために次の薬剤の改善に使用することができる原型(すなわちリード化合物)であってよい。
【0071】
したがって、本発明は以下のものを提供する。(i)これらの薬物設計法を使用して同定した化合物、(ii)薬剤として使用するためにこれらの薬物設計法を使用して同定した化合物、(iii)これらの薬物設計法を使用して同定した化合物の殺菌剤および/または抗ウイルスの製造における使用、および(iv)これらの薬物設計法を使用して同定した化合物の有効量を投与することを含む、微生物またはウイルス感染症の患者の治療方法。
【0072】
化合物は個別に使用可能であると共に、構造に基づく技術によりin silicoで同定したリガンドを使用して、「従来の」in vitroまたはin vivoスクリーニング法用の化合物ライブラリーを提案することもできる。殺菌活性および/または抗ウイルス活性をスクリーニングするために、リガンドの重要な薬剤モチーフを同定し、化合物ライブラリー(たとえばコンビナトリアルライブラリー)で模倣することができる。
【0073】
薬剤組成物
本発明は、(a)ポリペプチド、ペプチド模倣体、核酸、および/または本発明の抗体、ならびに(b)薬剤担体を含む薬剤組成物を提供する。
【0074】
構成成分(a)は、組成物の活性成分であり、これは治療有効量、すなわち患者中での微生物/ウイルスの増殖および/または生存を阻止するのに十分な量で存在し、微生物感染を除去するのに十分な量であることが好ましい。投与される患者に対する正確な有効量は、患者の体格や健康状態、感染の性質や程度、ならびに投与に選択した組成物または組成物の組合せによって決まる。有効量は、常法の実験によって決定することができ、臨床医の判断に任せられる。本発明では、一般に、有効量は、約0. 01mg/kg〜約5mg/kg、または約0. 01mg/kg〜約50mg/kgまたは約0. 05mg/kg〜約10mg/kgとなる。ポリペプチド、抗体、および核酸に基づく薬剤組成物は当技術分野で周知である。塩および/またはエステルの形態でポリペプチドを組成物に含めてよい。
【0075】
担体(b)は、それ自体が組成物を投与される患者に有害な抗体の産生を招くことなく、過度の毒性もなく投与することができるどんな物質でもよい。適当な担体は、蛋白質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、不活性ウイルス粒子など、大型の徐々に代謝される巨大分子でよい。そのような担体は、当業者に広く知られている。薬剤として許容される担体には、水、生理食塩水、グリセロール、エタノールなどの液体を含むことができる。湿潤剤や乳化剤、pH緩衝物質など、補助物質をそのようなビヒクルに含めてもよい。リポソームは適当な担体である。薬剤担体の詳細な考察には参照68が役に立つ。
【0076】
ウイルスおよび微生物感染症は、身体の様々な領域に作用するので、本発明の組成物は、様々な形態に調製することができる。たとえば、組成物は、溶液または懸濁液である注入可能医薬品として調製することができる。注入前の液体ビヒクルの溶液または懸濁液に適当な固形形態も調製することができる。局所投与用に、たとえば、軟膏、クリーム、または粉剤として組成物を調製することができる。経口投与用に、たとえば、錠剤またはカプセル剤、またはシロップとして(場合によっては矯味して)組成物を調製することができる。微粉末またはスプレーを使用して経肺投与用に、たとえば、吸入剤として組成物を調製することができる。座薬または腟坐薬として組成物を調製することができる。点鼻、点耳、または点眼投与用に、たとえば、滴剤、噴霧剤、または粉剤として[たとえば69]組成物を調製することができる。組成物は洗口剤に含めてよい。組成物は凍結乾燥することができる。
【0077】
薬剤組成物は、滅菌済みであることが好ましい。薬剤組成物は、発熱物質を含まないことが好ましい。薬剤組成物は、緩衝化たとえばpH6〜pH8で、一般にpH7付近が好ましい。
【0078】
本発明は、本発明の薬剤組成物を含む送達デバイスも提供する。デバイスは、たとえば、注射器または吸入剤であってよい。
【0079】
本発明の組成物は、既知の抗菌剤と併せて使用することができる。適当な抗菌剤には、それだけには限らないが、アゾール(たとえばフルコナゾール、イトラコナゾール)、ポリエン(たとえばアンフォテリシンB)、フルシトシン、スクアレンエポキシダーゼ阻害剤(たとえばテルビナフィン)[参照70も参照のこと]が含まれる。組成物は、既知の抗ウイルス剤、たとえば、HIVプロテアーゼ阻害剤、2',3'-ジデオキシヌクレオシド(たとえばDDC、DDI)、3'-アジド-2',3'-ジデオキシヌクレオシド(AZT)、3'-フルオロ-2',3'-ジデオキシヌクレオシド(FLT)、2',3'-ジデヒドロ-2',3'-ジデオキシヌクレオシド(たとえばD4C、D4T)、およびその炭素環式誘導体(たとえばcarbovir)、2'-フルオロ-アラ-2',3'-ジデオキシヌクレオシド、1,3-ジオキソラン誘導体(たとえば2',3'-ジデオキシル-3'-チアシチジン)、オキセタノシン類似体、およびその炭素環式誘導体(たとえばcyclobut-G)、9-(2-ホスホニルメトキシエチル)アデニン(PMEA)および9-(3-フルオロ-2-ホスホニルメトキシプロピル)アデニン(FPMPA)誘導体、テトラヒドロ-イミダゾ[4,5,1-jk][1,4]-ベンゾジアゼピン-2(1H)オン(TIBO)、1-[(2-ヒドロキシエトキシ)-メチル]-6-(フェニルチオ)チミン(HEPT)、ジピリド[3,2-b:2',3'-e]-[1,4]ジアゼピン-6-オン(ネビラピン)、ピリジン-2(1H)オン誘導体、3TCなどと併せて使用することもできる。
【0080】
医学的処置および使用
本発明は、薬剤として使用するための本発明の抗体、ポリペプチド、ペプチド模倣体、または核酸を提供する。本発明は、患者に本発明の薬剤組成物を投与することを含む、微生物および/またはウイルス感染患者の治療方法も提供する。本発明は、患者を治療するための薬剤の製造に、本発明の抗体、ポリペプチド、ペプチド模倣体、または核酸の使用も提供する。
【0081】
患者は、ヒトであることが好ましい。ヒトは、成人でよく、または小児が好ましい。ヒトは、免疫不全患者であってよい。
【0082】
これらの使用および方法は、以下の感染症の治療に特に有用である。C.アルビカンスなどのカンジダ種、C.ネオフォルマンスなどのクリプトコックス種、エンテロコックスフェーカリスなどのエンテロコックス種;肺炎連鎖球菌、S.ミュータンス、S.アガラクチア、化膿連鎖球菌などの連鎖球菌種、L.大形やL.幼児などのリーシュマニア種、A.カステラーニなどのアカントアメーバ種、A.フミガツスやA.フラブスなどのアスペルギルス種、P.カリニなどのニューモチステス種、ヒト型結核菌などのマイコバクテリウム種、緑膿菌などのシュードモナス種、黄色ブドウ球菌などのスタヒロコックス種、ネズミチフス菌などのサルモネラ種、C.イミチス(immitis)などのコクシジオイデス(Coccidioides)種、T.ベルコーサム(verrucosum)などの白癬菌種、B.デルマティディス(dermatidis)などのブラストミセス(Blastomyces)種、H.カプスラーツム(capsulatum)などのヒストプラスマ(Histoplasma)種、P.ブラジリエンシス(brasiliensis)などのパラコクシジオイデス(Paracoccidioides)種、P.インシジオスム(insidiosum)などのピシウム(Pythium)種、および大腸菌などのエシェリキア種。本発明は、感染症:インフルエンザウイルスやHIVの治療にも有用である。
【0083】
使用および方法は、以下を含む疾患の治療に特に有用であるが、但しそれだけには限らない:カンジダ症、アスペルギルス症、クリプトコッカス症、皮膚真菌症、スポロトリクム症(sporothrychosis)、および他の皮下真菌症、ブラストミケス症、ヒストプラスマ症、コクシジオイデス症、パラコクシジオイデス症、ニューモシストシス症(pneumocystosis)、鵞口瘡、結核、抗酸菌症、呼吸性感染症、猩紅熱、肺炎、膿痂疹、リウマチ熱、敗血症(sepsis)、敗血症(septicaemia)、皮膚および内臓リーシュマニア症、アカントアメーバ性角膜炎、角膜炎、嚢胞性線維症、腸チフス、胃腸炎、および溶血性尿毒症症候群、インフルエンザおよびエイズ。抗C.アルビカンス活性は、エイズ患者の感染症の治療に特に有用である。
【0084】
治療効果は、本発明の薬剤組成物の投与後に微生物/ウイルス感染をモニタリングすることによって試験することができる。
【0085】
一般に、本発明の組成物は患者に直接投与する。直接送達は、非経口(たとえば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、または組織の間質空間への)注射によって、または直腸、経口、経膣、局所、経皮、経眼、経鼻、経耳、または経肺投与によって実現することができる。注射または鼻腔内投与が好ましい。
【0086】
投与治療は、1回投与スケジュールでも、複数回投与スケジュールでもよい。
【0087】
本発明の薬剤組成物は、予防的に、たとえば、微生物への接触が予想され、かつ感染の確立が防止される状態の際に使用することもできる。たとえば、手術前に組成物を投与することができる。
【0088】
ポリペプチドの発現および他の一般的な技術
本発明の実施には、別段の指示がない限り、当技術分野の技術の範囲内の分子生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の従来技術を使用する。そのような技術は、たとえば、以下の文献に十分に説明されている。Sambrook、「Molecular Cloning; A Laboratory Manual」第2版(1989年)、「DNA Cloning」、第IおよびII巻(D. N Glover編、1985年)、「Oligonucleotide Synthesis」(M. J. Gait編、1984年)、「Nucleic Acid Hybridization」(B. D. HamesおよびS. J. Higgins編、1984年)、「Transcription and Translation」(B. D. HamesおよびS. J. Higgins編、1984年)、「Animal Cell Culture」(R. I. Freshney編、1986年)、「Immobilized Cells and Enzymes」(IRL Press、1986年)、B. Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning(1984年)、「the Methods in Enzymology series」(Academic Press、Inc. )、特に第154および155巻、「Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells」(J. H.MillerおよびM. P. Calos編、1987年、コールドスプリングハーバー研究所)、MayerおよびWalker編、(1987年)、「Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology」(Academic Press、英国ロンドン)、Scopes、(1987年)「Protein Purification:Principles and Practice」、第2版(Springer-Verlag、N. Y. )、および「Handbook of Experimental Immunology」、第I〜IV巻(WeirおよびBlackwell編、1986年)。
【0089】
ヌクレオチドおよびアミノ酸の標準的略語を本明細書に使用する:
ヌクレオチド:
A アデニン C シトシン G グアニン T チミン
U ウラシル
上記5個のコードの他に変性ヌクレオチドコード:
N いずれか(A/C/G/T) Rプリン(G/A) Y ピリミジン(T/C) K ケト(G/T)
M アミノ(A/C) S 強 (G/C) W 弱(A/T) B A以外(C/G/T)
D C以外(A/G/T) H G以外(A/C/T) V T以外(A/C/G)
アミノ酸
A アラニン C シスチン D アスパラギン酸塩 E グルタマート
F フェニルアラニン G グリシン H ヒスチジン I イソロイシン
K リジン L ロイシン M メチオニン N アスパラギン
P プロリン Q グルタミン R アルギニン S セリン
T トレオニン V バリン W トリプトファン Y チロシン
【0090】
本発明は、配列表に示したアミノ酸またはヌクレオチド配列のいずれか1つを含む、またはいずれか1つからなるポリペプチドまたは核酸を提供する。
【0091】
定義
用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」および「からなる(consisting)」を意味し、たとえば、Xを「含む(comprising)」組成物は、排他的にXからなってよく、またはX+Yなど、Xに追加されるものを含んでよい。
【0092】
Xを含む組成物は、組成物中のX+Y合計重量の少なくとも85%がXのとき、Yを「実質上含まない」。Xは、組成物中のX+Y合計重量の少なくとも約90%を構成する(comprises)ことが好ましく、少なくとも約95%がより好ましく、99重量%がさらに好ましい。
【0093】
用語「異種」は、自然では一緒に見出されることはない2個の生体成分をさす。成分は、宿主細胞、遺伝子、またはプロモーターなどの調節領域でよい。異種成分は、自然では一緒には見出されないが、遺伝子に対して異種のプロモーターを遺伝子に動作可能に結合した場合、一緒に機能することができる。別の例は、インフルエンザ配列がマウス宿主細胞に対して異種である場合である。さらに別の例は、自然では見出されない配列中の単一蛋白質中に組み立てられている、同じまたは異なる蛋白質由来の2個のエピトープのはずである。
【0094】
「複製起点」は、発現ベクターなどのポリヌクレオチドの複製を開始し調節するポリヌクレオチド配列である。複製起点は、それ自体の制御下で複製できるように細胞内でのポリヌクレオチドの複製自律的ユニットのように動作する。複製起点は、特定の宿主細胞中でベクターが複製するのに必要とされてよい。ある種の複製起点により、発現ベクターは、適切な蛋白質の存在下、細胞内で複製して高複製数にすることができる。起点の例は、酵母で有効な自律的複製配列、およびCOS-7細胞で有効なウイルスT抗原である。
【0095】
「突然変異体」配列は、自然の配列または開示されている配列とは配列相同性を有するが異なる、DNA、RNA、またはアミノ酸配列として定義される。特定の配列に応じて、自然の配列または開示されている配列と、突然変異体配列との配列相同性の程度は50%を超える(たとえば60%、70%、80%、90%、95%、99%以上、上記のSmith-Watermanアルゴリズムを使用し算出)ことが好ましい。本明細書では、本明細書でそのために核酸配列が準備される核酸分子または領域の「対立遺伝子変異体」は、別のまたは第2の単離物のゲノム中の本質的に同じ座位に生じ、かつたとえば突然変異や組換えによって生じた自然の変異体のために、類似するが同一ではない核酸配列を有する核酸分子または領域である。典型的には、コード領域対立遺伝子変異体は、それと比較する遺伝子がコードする蛋白質の活性に類似する活性を有する蛋白質をコードする。対立遺伝子変異体には、調節制御領域中のものなど、遺伝子の5'または3'非翻訳領域の改変体(たとえば米国特許第5,753,235号を参照のこと)も含めてよい。
【0096】
ポリペプチドの発現
ヌクレオチド配列は、たとえば、哺乳動物細胞、バキュロウイルス、植物、細菌、および酵母で使用される発現系など、様々な異なる発現系で発現させることができる。
【0097】
一般に、維持が適当などんな系またはベクターも核酸分子を増殖しまたは発現して、使用できる所望の宿主中でポリペプチドを産生する。適切なヌクレオチド配列は、周知のおよび常法の様々な術式、たとえば、Sambrookらに記載されるものなどのいずれかによって発現系に挿入することができる。一般に、コード遺伝子は、プロモーター、リボソーム結合部位(細菌発現用)、場合によっては、オペレータなどの制御要素の制御下に置くことができ、その結果所望のポリペプチドをコードするDNA配列は形質転換した宿主細胞中のRNAに転写される。
【0098】
適当な発現系の例には、たとえば、染色体系、エピソーム系、およびウイルス由来の系が含まれ、たとえば以下が含まれる。細菌プラスミド、バクテリオファージ、トランスポゾン、酵母エピゾーム、挿入要素、酵母染色体要素;バキュロウイルス、SV40などのパポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、偽狂犬病ウイルス、レトロウイルスなどのウイルス、またはそれらの組合わせに由来するベクター、コスミドやファージミドを含むプラスミドおよびバクテリオファージ遺伝子要素由来のベクターなど。プラスミド中に含め発現させることができる断片よりも大きい断片のDNAを送達するために、ヒト人工染色体(HAC)も利用することができる。
【0099】
特に適当な発現系には、組換えバクテリオファージ、プラスミド、またはコスミドDNA発現ベクターで形質転換した細菌;酵母発現ベクターで形質転換した酵母、ウイルス発現ベクター(たとえばバキュロウイルス)に感染させた昆虫細胞系、ウイルス発現ベクター(たとえば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV、タバコモザイクウイルス、TMV)で形質転換した植物細胞系、または細菌発現ベクター(たとえば、TiやpBR322プラスミド)で形質転換した植物細胞系、または動物細胞系などの微生物が含まれる。無細胞翻訳系を使用して本発明のポリペプチドを生成することもできる。
【0100】
本発明のポリペプチドをコードする核酸分子の宿主細胞への導入は、Davisら、「Basic Methods in Molecular Biology」(1986年)およびSambrookら(上掲)など、多くの標準実験マニュアルに記載されている方法によって達成することができる。特に適当な方法には以下が含まれる。リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、トランスベクション(transvection)、マイクロインジェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、電気穿孔法、形質導入、スクレープローディング(scrape loading)、遺伝子銃(ballistic)導入、または感染[上掲のSambrookら、1989年];「Current Protocols in Molecular Biology」、Ausubelら(編)、Greene Publishing Association and John Wiley Interscience、米国ニューヨーク州、1989年、1992年;Spector、Goldman、およびLeinwald、1998年)を参照のこと]。真核細胞では、系の必要性に応じて発現系は一過的(たとえばエピソーム性)でも永久的(染色体への組込み)でもよい。
【0101】
組換えポリペプチドを長期にわたり高収量で生成するためには安定した発現が好ましい。たとえば、当該ポリペプチドを安定して発現する細胞系は、同じベクターまたは別個のベクター上にウイルスの複製起点、および/または内在性発現要素、および選択マーカー遺伝子を含むことができる発現ベクターを使用し形質転換させることができる。ベクターの導入に続いて、選択培地に取り替える前に細胞を1〜2日間富栄養培地に放置して増殖させることができる。選択マーカーの目的は、選択に対する耐性を授けることであり、その存在によって導入した配列を首尾よく発現している細胞の増殖および回収が可能になる。安定して形質転換された細胞の耐性クローンは、細胞型に適した組織培養技術を使用し増殖させることができる。
【0102】
i. 哺乳動物系
哺乳動物発現系が、当技術分野で知られている。哺乳動物プロモーターは、哺乳動物RNAポリメラーゼを結合し、コード配列(たとえば構造遺伝子)のmRNAへの下流(3')転写を開始することができる任意のDNA配列である。プロモーターは、転写開始領域を有することになり、通常、コード配列の5'末端、および通常転写開始部位の25〜30塩基対(bp)上流に位置するTATAボックスの近位に置かれる。TATAボックスは、RNAポリメラーゼ11が正確な部位でRNA合成を開始するように指揮すると思われる。通常、哺乳動物プロモーターもTATAボックスの100〜200bp上流に位置する上流プロモーター要素を含む。上流プロモーター要素は、転写が開始される速度を決定し、いずれの向きにも作用することができる[Sambrookら、(1989年)「Expression of Cloned Genes in Mammalian Cells」、Molecular Cloning 実験マニュアル、第2版]。
【0103】
しばしば、哺乳動物ウイルス遺伝子は、高度に発現し、宿主の領域が広く、したがって哺乳動物ウイルス遺伝子をコードする配列は特に有用なプロモーター配列を提供する。例には、SV40初期プロモーター、マウス乳ガンウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター(全量MLP)、および単純ヘルペスウイルスプロモーターが含まれる。さらに、マウスメタロチテイオネイン(metallotheionein)遺伝子などの非ウイルス遺伝子由来の配列も有用なプロモーター配列を提供する。ホルモン応答細胞中でグルココルチコイドを用いてプロモーターを誘発できるかに応じて、発現は構成的でも調節した(誘導)ものでもよい。
【0104】
通常、上記のプロモーター要素と組合わせたエンハンサー要素(エンハンサー)の存在は発現レベルを増大させる。エンハンサーは、相同または異種プロモーターと結合させたとき、正常なRNA開始部位で合成を開始しながら転写を1000倍まで刺激することができる調節DNA配列である。エンハンサーは、転写開始部位の上流または下流に、正常な向きにまたは反対向きに、あるいはプロモーターから1000ヌクレオチドを超えて離れて配置されても活性である[Maniatisら、(1987年)、Science、第236号、1237頁、Albertsら、(1989年)「Molecular Biology of the Cell」第2版]。ウイルス由来のエンハンサー要素は、通常、それらの宿主の領域は一層広いので特に有用かもしれない。例には、SV40初期遺伝子エンハンサー[Dijkemaら、(1985年)、EMBO J. 第4号、761頁]、ラウス肉腫ウイルス末端反復配列(LTR)由来のエンハンサー/プロモーター[Gormanら、(1982b)PNAS USA、第79号、6777頁]、ヒトサイトメガロウイルス由来のエンハンサー/プロモーター[Boshartら、(1985年)、Cell、第41号、521頁]が含まれる。加えて、幾つかのエンハンサーは、調節することができ、ホルモンや金属イオンなどの誘導物質の存在下でのみ活性になる[Sassone-CorsiおよびBorelli、(1986年)、Trends Genet. 第2号、215頁;Maniatisら、(1987年)、Science、第236号、1237頁]。
【0105】
DNA分子は、哺乳動物細胞の細胞内で発現させることができる。プロモーター配列は、DNA分子と直接結合させることができ、その場合、組換え蛋白質のN末端第1アミノ酸は常にメチオニンであり、このメチオニンはATG開始コドンによってコードされている。必要に応じて、N末端は臭化シアンによるin vitro培養によって切断することができる。
【0106】
あるいは、哺乳動物細胞中で外来蛋白質の分泌をもたらすリーダー配列断片を含む融合蛋白質をコードするキメラDNA分子を作製することによって、外来蛋白質を細胞から増殖培地中へ分泌させることもできる。in vivoまたはin vitroで切断することができるプロセシング部位がリーダー断片と外来遺伝子の間にコードされていることが好ましい。通常、リーダー配列断片は、蛋白質の細胞からの分泌を指揮する、疎水性アミノ酸を含むシグナルペプチドをコードする。アデノウイルスの3部構成リーダーは、哺乳動物細胞中で外来蛋白質を分泌するリーダー配列の一例である。
【0107】
通常、哺乳動物細胞によって認識される転写停止配列およびポリアデニル化配列は、翻訳終止コドンの3'に位置する調節領域であり、したがってプロモーター要素と共にコード配列を側置する。成熟mRNAの3'末端は、部位特異的に転写後切断およびポリアデニル化によって形成する[Birnstielら、(1985年)、Cell、第41号、349頁、ProudfootおよびWhitelaw(1988年)、「Termination and 3' end processing of eukaryotic RNA」、Transcription and splicing(編B. D. HamesおよびD.M. Glover);Proudfoot(1989年)、Trends Biochem. Sci. 第14号、105頁]。これらの配列は、DNAがコードするポリペプチドに翻訳され得るmRNAの転写を指揮する。転写停止/ポリアデニル化シグナルの例には、SV40由来のものが含まれる[Sambrookら(1989年)「Expression of cloned genes in cultured mammalian cells」、Molecular Cloning実験マニュアル]。
【0108】
通常、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、および転写停止配列を含む上記の成分を発現構築体に組み立てる。望むならば、エンハンサー、機能性スプライスドナー部位およびアクセプタ部位を有するイントロン、およびリーダー配列も発現構築体に含めてよい。しばしば、発現構築体は、哺乳動物細胞や細菌など、宿主中で安定して維持することができる染色体外要素(たとえばプラスミド)などのレプリコン中に維持される。哺乳動物複製系には、複製するための処理因子を必要とする動物ウイルス由来のものが含まれる。たとえば、SV40[Gluzman(1981年)、Cell、第23号、175頁]やポリオーマウイルスなどのパポバウイルスの複製系を含むプラスミドは、適切なウイルスT抗原の存在下で複製して極めて高い複製数になる。哺乳動物レプリコンの別の例には、ウシ乳頭腫ウイルスおよびエプスタインバーウイルス由来のレプリコンが含まれる。加えて、レプリコンは、それによってそれを維持できるようにする、たとえば、哺乳動物細胞中では発現用の、原核生物宿主ではクローニングおよび増幅用の2個の複製系を含むことができる。そのような哺乳動物-細菌シャトルベクターの例にはpMT2[Kaufmanら、(1989年)、Mol. Cell. Biol. 、第9号、946頁]およびpHEBO[Shimizuら、(1986年)、Mol. Cell. Biol. 、第6号、1074頁]が含まれる。
【0109】
使用する形質転換手順は、形質転換すべき宿主に依存する。異種ポリヌクレオチドを哺乳動物細胞に導入する方法は当技術分野で知られており、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、電気穿孔法、リポソーム中への(1個以上の)ポリヌクレオチドのカプセル化、および核へのDNAの直接マイクロインジェクションが含まれる。
【0110】
発現用宿主として入手可能な哺乳動物細胞系統は当技術分野で知られており、米国基準菌株保存機構(ATCC)から入手することができる多くの不滅化細胞系を含み、それだけには限らないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLa、仔ハムスター腎(BHK)、サル腎臓(COS)、C127、3T3、BHK、HEK293、ボーズ(Bowes)メラノーマ細胞、およびヒト肝細胞癌(たとえば、HepG2)細胞、他の幾つかの細胞系が含まれる。
【0111】
ii.バキュロウイルス系
蛋白質をコードするポリヌクレオチドは、適当な昆虫発現ベクター中に挿入し、そのベクター内の制御要素に動作可能に結合することもできる。ベクター構築には、当技術分野で知られている技術を利用する。一般に、発現系成分は、異種遺伝子または発現すべき遺伝子を挿入するために、バキュロウイルスゲノム断片および好都合な制限部位断片を含むトランスファーベクター、通常、細菌プラスミド;トランスファーベクター中にバキュロウイルス特異的断片に相同する配列を含む野生型バキュロウイルス(これによりバキュロウイルスゲノム中への異種遺伝子の相同組換えが可能になる);および適切な昆虫宿主細胞および増殖培地を含む。
【0112】
その蛋白質をコードするDNA配列をトランスファーベクター中に挿入した後、ベクターおよび野生型ウイルスゲノムを昆虫宿主細胞中にトランスフェクトし、その細胞中でベクターおよびウイルスゲノムを再結合する。パッケージ化組換えウイルスが発現され、組換えプラークを同定し精製する。バキュロウイルス/昆虫細胞発現系用の材料および方法は、たとえばキット形でインビトロジェン社、米国カリフォルニア州サンディエゴから市販(「MaxBac」キット)されている。一般に、これらの技術は当業者に知られており、SummersおよびSmith、「Texas Agricultural Experiment Station Bulletin」第1555号(1987年)(以後「SummersおよびSmith」)に十分に記載されている。
【0113】
通常、その蛋白質をコードするDNA配列をバキュロウイルスゲノム中に挿入する前に、プロモーター、(望むならば)リーダー、当該コード配列、および転写停止配列を含む上記の成分を中間置換構築体(トランスファーベクター)に組み立てる。この構築体には、単一遺伝子および動作可能に結合された調節要素;その各遺伝子が、それ自体が保有する、動作可能に結合された調節要素の組を有する多数の遺伝子;または同じ組の調節要素によって調節された多数の遺伝子を含めてもよい。しばしば、中間置換構築体は、細菌などの宿主中で安定して維持することができる染色体外要素(たとえばプラスミド)などのレプリコン中に維持される。レプリコンは複製系を含み、したがってクローニングおよび増幅用に複製系が適当な宿主で維持されるようにする。
【0114】
AcNPV中に外来遺伝子を導入するため、現在最も一般的使用されるトランスファーベクターはpAc373である。当業者に知られている他の多くのベクターも設計されている。これらには、たとえば、ポリヘドリン(polyhedrin)開始コドンをATGからATTへ変換し、BamHIクローニング部位をATTから32塩基対下流に導入するpVL985が含まれる。LuckowおよびSummers、Virology、(1989年)第17号、31頁を参照のこと。
【0115】
通常、プラスミドは、ポリヘドリンポリアデニル化シグナル[Miller(1988年)、Ann. Rev. Microbiol. 第42号、177頁]、原核生物のアンピシリン耐性(amp)遺伝子、および大腸菌中で選択し増殖するための複製起点も含む。
通常、バキュロウイルストランスファーベクターは、バキュロウイルスプロモーターを含む。バキュロウイルスプロモーターは、バキュロウイルスRNAポリメラーゼを結合し、コード配列(たとえば構造遺伝子)のmRNAへの下流転写(5'から3'へ)を開始することができる任意のDNA配列である。プロモーターは、コード配列の5'末端の近位に通常配置される転写開始部位を含む。通常、この転写開始部位は、RNAポリメラーゼ結合部位および転写開始部位を含む。バキュロウイルストランスファーベクターは、存在するならば、通常、構造遺伝子の遠位にあるエンハンサーと称する第2領域を含むことができる。発現は、調節され、または構成的であってよい。
【0116】
ウイルス感染サイクルの後期に豊富に転写される構造遺伝子は、特に有用なプロモーター配列を提供する。例にはウイルスの多面体(polyhedron)蛋白質をコードする遺伝子に由来の配列が含まれる。Friesenら、(1986年)「The Regulation of Baculovirus Gene Expression」、The Molecular Biology of Baculoviruses(編Walter Doerfler)、EP127839号およびEP155476号、ならびにp10蛋白質をコードする遺伝子、Vlakら、(1988年)、J. Gen. Virol. 、第69号、765頁。
【0117】
適当なシグナル配列をコードするDNAは、バキュロウイルスポリヘドリン遺伝子など、分泌した昆虫蛋白質またはバキュロウイルス蛋白質の遺伝子から得ることができる[Carbonellら、(1988年)、Gene、第73号、409頁]。あるいは、哺乳動物細胞を翻訳後改変(シグナルペプチド切断、蛋白質分解切断、およびリン酸化など)するためのシグナルは昆虫細胞によって認識されると思われ、かつ分泌および核蓄積に必要なシグナルも無脊椎動物細胞と脊椎動物細胞の間に保存されると思われるので、ヒト□-インターフェロン[Maedaら、(1985年)、Nature、第315号、592頁]、ヒトガストリン放出ペプチド、[Lebacq-Verheydenら、(1988年)、Molec. Cell. Biol. 、第8号、3129頁]ヒトIL-2、[Smithら、(1985年)、ProC. Nat'lAcad. Sci. USA、第82号、8404頁]、マウスIL-3、[(Miyajimaら、(1987年)Gene、第58号、273頁]、およびヒトグルコセレブロシダーゼ[Martinら、(1988年)、DNA、第7号、99頁]をコードする遺伝子に由来するものなど、非昆虫起源のリーダーを使用して昆虫内で分泌することもできる。
【0118】
組換えポリペプチドまたはポリプロテインは、細胞内に発現させることができ、またはそれが適切な調節配列によって発現された場合は分泌され得る。通常、非融合外来蛋白質の良好な細胞内発現には異種遺伝子が必要とされ、この異種遺伝子は理想的にはATG開始シグナルの前に適当な翻訳開始シグナルを含む短いリーダー配列を含む。必要に応じてN末端のメチオニンは、臭化シアンを用いるin vitro培養によって成熟蛋白質から切断することができる。
【0119】
あるいは、自然には分泌されない組換えポリプロテインまたは蛋白質は、キメラDNA分子を作製することによって昆虫細胞から分泌させることができ、このキメラDNA分子は昆虫内で外来蛋白質の分泌をもたらすリーダー配列断片を含む融合蛋白質をコードする。通常、リーダー配列断片は、小胞体中へ蛋白質のトランスロケーションを指揮する疎水性アミノ酸を含むシグナルペプチドをコードする。
【0120】
蛋白質の発現産生物前駆体をコードするDNA配列および/または遺伝子を挿入後、昆虫細胞宿主は、トランスファーベクターの異種DNAおよび野生型バキュロウイルスのゲノムDNAを用いて、通常同時トランスフェクトによって、同時形質転換する。通常、構築体のプロモーターおよび転写停止配列には、バキュロウイルスゲノムの2〜5kb切片が含まれる。バキュロウイルスウイルス中の所望の部位に異種DNAを導入する方法は当技術分野で知られている。[SummersおよびSmithの上掲、Juら、(1987年)、Smithら、Mol. Cell. Biol. 、(1983年)、第3号、2156頁、およびLuckowおよびSummers(1989年)を参照のこと]。たとえば、挿入は、相同二重交差組換えによるポリヘドリン遺伝子などの遺伝子中へでよく、挿入は所望のバキュロウイルス遺伝子中に設計された制限酵素部位中へでもよい。Millerら、(1989年)、Bioessays、第4号、91頁。DNA配列は、発現ベクター中のポリヘドリン遺伝子の代わりにクローン化されたとき、ポリヘドリン特異的配列によって5'および3'に側置され、ポリヘドリンプロモーターの下流に配置される。
【0121】
新規に形成したバキュロウイルス発現ベクターを、続いて感染性組換えバキュロウイルス中にパッケージ化する。相同組換えは低頻度(約1%〜約5%)で生じ、よって同時トランスフェクション後に産生したウイルスの大部分は依然として野生型ウイルスである。したがって、組換えウイルスを同定するための方法が必要である。発現系の利点は、組換えウイルスを識別可能にする視覚的スクリーニングである。天然ウイルスによって産生したポリヘドリン蛋白質は、ウイルス感染後の後期に感染細胞の核中に非常に高濃度で産生される。蓄積したポリヘドリン蛋白質は閉塞体を形成し、この閉塞体には粒子も埋め込まれている。これらの閉塞体は、15□minの寸法までであり、高度に屈折力があり光学顕微鏡下で容易に視認できる明るく輝く外観をしている。組換えウイルスに感染した細胞は閉塞体を欠いている。組換えウイルスと野生型ウイルスを識別するためには、トランスフェクション上清を当業者に知られている術式によって昆虫細胞の単層上にプラークさせる。すなわち、閉塞体が存在する(野生型ウイルスを示す)か、しないか(組換えウイルスを示す)、プラークを光学顕微鏡下でスクリーニングする。「Current Protocols in MicroBiology」第2巻(Ausubelら編)、第16節8頁(Supp. 10. 1990)、SummersおよびSmithの上掲、Millerら、(1989年)。
【0122】
数種の昆虫細胞に感染させるための組換えバキュロウイルス発現ベクターが開発されている。たとえば、とりわけ、以下のためにの組換えバキュロウイルスが開発されている:ネッタイシマカ、ガマキンウワバ、カイコ、キイロショウジョウバエ、ヨトウガ、およびイラクサギンウワバ。[WO89/046699号、Carbonellら、(1985年)、J. Virol. 、第56号、153頁、Wright(1986年)、Nature、第321号、718頁、Smithら、(1983年)、Mol. Cell. Biol. 、第3号、2156頁、および一般に、Fraserら、(1989年)、In vitro Cell. Dev. Biol.、第25号、225頁]を参照のこと。
【0123】
バキュロウイルス/発現系中での異種ポリペプチドの直接発現および融合発現用の、細胞および細胞培養物は市販されており、一般に細胞培養技術は当業者に知られている。たとえば上掲のSummersおよびSmithを参照のこと。
【0124】
次いで、改変した昆虫宿主に存在する(1個以上の)プラスミドが、安定して維持されるようにする適切な栄養培地で改変した昆虫細胞を増殖することができる。発現産生遺伝子が誘導可能な制御下にある場合、宿主を増殖して高密度にし発現を誘導することができる。あるいは、発現が構成的な場合、産生物は培地中に継続的に発現され、当該産生物を除去し、かつ枯渇した栄養素を増強しながら栄養培地を継続的に循環させなければならない。産生物は、たとえば、HPLC、アフィニティクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー、電気泳動、密度勾配遠心、溶剤抽出などの技術によって精製することができる。同様に培地中に分泌され、または昆虫細胞の溶解から生じるどんな昆虫蛋白質も十分除去されるように、宿主の破片、たとえば、蛋白質、脂質、多糖類が少なくとも実質上皆無である産生物が得られるように、産生物は適宜必要に応じてさらに精製することができる。
【0125】
蛋白質を発現させるために、組換え蛋白質をコードする配列が発現されるような条件下で形質転換体由来の組換え宿主細胞を培養する。これらの条件は、選択した宿主細胞に応じて変化する。しかし、当技術分野で知られているものに基づき、当業者には条件は容易に確かめられる。
【0126】
iii. 植物系
当技術分野で知られている植物細胞培養物および植物遺伝子発現系全体は多い。植物細胞遺伝子発現系の例には、:US5,693,506号、US5,659,122号、およびUS5,608,143号などの特許に記載されているものが含まれる。植物細胞培養物中での遺伝子発現の別の例は、Zenk、Phytochemistry、第30号、3861〜3863頁(1991年)によって記載されている。植物蛋白質シグナルペプチドの説明は、上記の参照文献の他に以下に見出すことができる:Vaulcombeら、Mol. Gen. Genet. 、第209号、33〜40頁(1987年)、Chandlerら、Plant Molecular Biology、第3号、407〜418頁(1984年)、Rogers、J. Biol. Chem. 、第260号、3731〜3738頁(1985年)、Rothsteinら、Gene、第55号、353〜356頁(1987年)、Whittierら、「Nucleic Acids Research」、第15号、2515〜2535頁(1987年)、Wirselら、Molecular Microbiology、第3号、3〜14頁(1989年)、Yuら、Gene、第122号、247〜253頁(1992年)。植物ホルモン、ジベレリン酸による植物遺伝子発現の調節、およびジベレリン酸により誘発され分泌した酵素の説明は、R. L. JonesおよびJ.MacMillin、Gibberellins、Advanced Plant Physiology、Malcolm B. Wilkins編、1984年Pitman Publishing Limited、英国ロンドン、21〜52頁に見出すことができる。他の代謝性調節遺伝子を説明する参照文献:Sheen、Plant Cell、第2号、1027〜1038頁(1990年)、Maasら、EMBO J. 、第9号、3447〜3452頁(1990年)、BenkelおよびHickey、PNAS USA、第84号、1337〜1339頁(1987年)。
【0127】
通常、当技術分野で知られている技術を使用し、植物の操作のために設計した遺伝子調節要素を含む発現カセットに所望のポリヌクレオチド配列を挿入する。発現カセットの上流および下流にある、植物宿主での発現に適当な随伴配列(companion sequence)と共に発現カセットを所望の発現ベクターに挿入する。随伴配列は、プラスミドまたはウイルス起源であり、細菌などの元のクローニング宿主から所望の植物宿主へ、ベクターがDNAを移動できるようにベクターに必要な特性を提供するものである。基本的な細菌/植物ベクター構築体は、広範な宿主の原核生物複製起点、原核生物選択マーカー、およびアグロバクテリウム形質転換用には、アグロバクテリウムが媒介する植物染色体へ移入させるためのT DNA配列を提供することが好ましい。異種遺伝子が容易に検出できるものではない場合は、構築体は植物細胞が形質転換されているか否かを決定するのに適当な選択マーカー遺伝子も含むことが好ましい。たとえば、植物ファミリの構成要素に適当なマーカーの一般的概説は、WilminkおよびDons、1993年Plant Mol.Biol.、Reptr、11(2)、165〜185頁に見出される。
【0128】
異種配列の植物ゲノム中への組込みを可能にするのに適当な配列も推奨される。これらには、トランスポゾン配列や相同組換え用の配列、および異種発現カセットを植物ゲノム中へ無作為に挿入できるようにするTi配列が含まれるかもしれない。適当な原核生物選択マーカーは、アンピシリンやテトラサイクリンなど、抗生物質に対する耐性を含む。当技術分野で知られているような、追加の機能をコードする他のDNA配列もベクター中に存在してよい。
【0129】
(1個以上の)当該蛋白質を発現させるために、本発明の核酸分子を発現カセットに含めてよい。通常、発現カセットは1個にすぎないが、2個以上も実施可能である。異種蛋白質コード配列の他に、組換え発現カセットは、以下の要素を含む。プロモーター領域、植物5'非翻訳配列、構造遺伝子を備えるようになったか否かに依存する開始コドン、ならびに転写および翻訳停止配列。カセットの5'末端および3'末端にある特有の制限酵素部位は、既存のベクターへの挿入を容易にする。
【0130】
異種コード配列は、本発明に関係付けられるどんな蛋白質用でもよい。当該蛋白質をコードする配列は、蛋白質のプロセシングおよびトランスロケーションを適宜可能にするシグナルペプチドをコードし、通常、本発明の所望の蛋白質を膜へ結合させるであろう配列も欠いている。転写開始部位の大部分は、トランスロケーションをもたらすシグナルペプチドの使用により、発生中に発現され翻訳される遺伝子向けなので、当該蛋白質のトランスロケーションも行うことができる。このようにして、(1個以上の)当該蛋白質は細胞からトランスロケーションされ、その際当該蛋白質は発現し効率よく回収され得る。典型的には、種子中では、糊粉層または胚盤上皮層を横断して種子胚乳中へ分泌される。蛋白質は、蛋白質が産生された細胞から分泌されなくてもよいが、これによって組換え蛋白質の単離および精製が促進される。
【0131】
所望の遺伝子産物の最大の発現は真核生物細胞中であるので、クローン化遺伝子のどんな部分も、宿主のスプライコソーム機構(splicosome machinery)によってイントロンとして処理されることになる配列を含むかどうかを決定することが望ましい。含まれる場合は、「イントロン」領域の部位特異的変異導入を実施して、誤ったイントロンコードとして遺伝子メッセージの一部を失うことを防止することができる。ReedおよびManiatis、Cell、第41号、95〜105頁、1985年。
【0132】
マイクロピペットの使用によってベクターを植物細胞中に直接マイクロインジェクションし、組換えDNAを機械的に移すことができる。Crossway、Mol.Gen.Genel、第202号、179〜185頁、1985年。ポリエチレングリコールの使用によって遺伝物質を植物細胞中に転移させることもできる。Krensら、Nature、第296号、72〜74頁、1982年。核酸セグメントの別の導入方法は、核酸を有する小粒子による高速弾道貫通であり、この核酸は小さいビーズまたは粒子のマトリックス内または表面上にある。Kleinら、Nature、第327号、70〜73頁、1987年、ならびにKnudsenおよびMuller、1991年Planta、第185号、330〜336頁。これは、遺伝子組換えオオムギを作製するためのオオムギ胚乳のパーティクルガンを説明する。さらに別の導入方法は、プロトプラストと、ミニ細胞、細胞、リソソーム、他の融合可能な脂質表面化体のいずれかである、他の実体との融合のはずである。Fraleyら、PNAS USA、第79号、1859〜1863頁、1982年。
【0133】
ベクターは電気穿孔法によっても植物細胞中に導入することができる。(Frommら、PNAS USA、第82号、5824頁、1985年)。この技術では、遺伝子構築体を含むプラスミドの存在下で植物プロトプラストを電気穿孔する。高電場強度(high field strength)の電気刺激が生体膜を逆進的に浸透化させプラスミドの導入を可能にする。電気穿孔した植物プロトプラストは、細胞壁を再形成し、分割し、植物カルスを形成する。
【0134】
再生した植物全体を得るためにそれからプロトプラストを単離し培養することができる植物は全て、移入された遺伝子を含む完全な植物が回収されるように本発明によって形質転換することができる。事実上は、サトウキビ、糖ビート、綿、果実および他の樹木、マメ科植物、野菜の主要な種全てを含め、但しそれだけには限らない、植物全てが、培養細胞または組織から再生できることが知られている。幾つかの適当な植物には、たとえば、イチゴ属、ハス属、ウマゴヤシ属、イガマメ属、シャジクソウ属、トリゴネラ属、ササゲ属、ミカン属、アマ属、フウロソウ属、マニホット属、ニンジン属、シロイヌナズナ属、アブラナ属、ダイコン属、シロガラシ属、ベラドンナ属、トウラガシ属、チョウセンアサガオ属、ヒヨス属、トマト属、タバコ属、ソラヌム属、ペチュニア属、ジギタリス属、ハナハッカ属、キクニガナ属、ヒマワリ属、アキノノゲシ属、スズメノチャヒキ属、アスパラガス属、キンギョソウ属、ヘレロカリス(Hererocallis)属、ネメシア属、ペラルゴニューム属、キビ属、チカラシバ属、キンポウゲ属、セネキオ属、サルピグロッシス属、キュウリ属、ブロワアリア(Browaalia)属、ダイズ属、ドクムギ属、トウモロコシ属、コムギ属、モロコシ属、およびチョウセンアサガオ属に由来する種が含まれる。
【0135】
再生手段は、植物の種ごとに異なるが、一般に、異種遺伝子のコピーを含む形質転換したプロトプラストの懸濁液を最初に得る。カルス組織が形成され、カルスから新芽を誘発することができ、続いて根付かせる。あるいは、プロトプラスト懸濁液から胚形成を誘発することができる。これらの胚を自然胚として発芽させて植物を形成する。一般に、培地は、様々なアミノ酸、およびオーキシンやサイトカイニンなどのホルモンを含む。特に、コーンやアルファルファなどの種に対しては、培地にグルタミン酸およびプロリンを添加することも有利である。通常、新芽および根は同時に成長する。効率的な再生は、培地、遺伝子型、および培養の経過(history)に依存する。これらの3つの変数が制御されると、再生は十分に再現性および反復性に富む。
【0136】
幾つかの植物細胞培養系中で本発明の所望の蛋白質を分泌させることができ、または完全な植物から蛋白質を抽出することができる。本発明の所望の蛋白質が培地に分泌される場合、蛋白質を回収することができる。あるいは、胚および無胚半種子または他の植物細胞を機械的に破砕して細胞と組織の間のどんな分泌蛋白質も放出させることができる。混合物は、緩衝液に懸濁させて可溶性蛋白質を回収することができる。次いで、従来の蛋白質の単離精製法を使用して組換え蛋白質を精製する。時間、温度、pH、酸素、および容量のパラメータを常法によって調整して異種蛋白質の発現および回収を最適化する。
【0137】
iv.細菌系
細菌発現技術が、当技術分野で知られている。細菌プロモーターは、細菌RNAポリメラーゼを結合し、コード配列(たとえば構造遺伝子)のmRNAへの下流(3')転写を開始することができる任意のDNA配列である。プロモーターは、通常、コード配列の5'末端の近位に配置される転写開始部位を含む。通常、この転写開始部位は、RNAポリメラーゼ結合部位および転写開始部位を含む。細菌プロモーターは、オペレータと称する第2領域を含んでもよく、オペレータはRNA合成が開始される隣接のRNAポリメラーゼ結合部位に重なっていてよい。オペレータによって負の調節(誘導)転写が可能となる。遺伝子リプレッサー蛋白質がオペレータを結合することができ、それによって特異的遺伝子の転写が阻害されるからである。オペレータなどの負の調節要素の不在下で構成的発現は生じ得る。さらに、正の調節は、遺伝子アクチベータ蛋白質結合配列によって実現することができ、存在するならば、この結合配列は通常RNAポリメラーゼ結合配列に近位(5')する。遺伝子アクチベータ蛋白質の一例は、異化産物アクチベータ蛋白質(CAP)であり、この蛋白質は大腸菌のlacオペロンの転写の開始に役立つ[Raibaudら(1984年)、Annu.、Rev.Genet.、第18号、173頁]。したがって、調節発現は、正または負であってよく、それによって転写は強化されまたは弱められる。
【0138】
代謝経路酵素をコードする配列は、特に有用なプロモーター配列を提供する。例には、ガラクトース、ラクトース(lac)[Changら、(1977年)、Nature、第198号、1056頁]、マルトースなど、糖代謝酵素由来のプロモーター配列が含まれる。別の例には、トリプトファン(trp)などの生合成酵素由来のプロモーター配列[Goeddelら、(1980年)Nuc.Acids Res.、第8号、4057頁、Yelvertonら、(1981年)Nucl.Acids Res.、第9号、731頁、米国特許第4,738,921号、欧州特許出願第0036776号、および欧州特許出願第0121775号]が含まれる。g-ラクタマーゼ(bla)プロモーター系[Weissmann、(1981年)「The cloning ofinterferon and other mistakes.」、Interferon 3 (第1版Gresser)]、バクテリオファージラムダPL[Shimatakeら、(1981年)、Nature、第292号、128頁]、およびT5[米国特許第4,689,406号]プロモーター系も有用なプロモーター配列を提供する。
【0139】
さらに、自然には存在しない合成プロモーターも細菌プロモーターとして機能する。たとえば、細菌プロモーターまたはバクテリオファージプロモーターの転写活性化配列は、別の細菌プロモーターまたはバクテリオファージプロモーターのオペロン配列と結合することができ、合成ハイブリッドプロモーターを作製する[米国特許第4,551,433号]。たとえば、tacプロモーターは、trpプロモーター、およびlacリプレッサーによって調節されるlacオペロン配列で構成されるハイブリッドtrp-lacプロモーターである[Amannら、(1983年)Gene、第25号、167頁、deBoerら、(1983年)PNAS USA、第80号、21頁]。さらに、細菌プロモーターには、自然に存在する非細菌起源のプロモーターを含めてよく、このプロモーターは細菌RNAポリメラーゼを結合し転写を開始する能力を有する。自然に存在する非細菌起源のプロモーターは、相溶性のあるRNAポリメラーゼと結合させて原核生物中で幾つかの遺伝子を高濃度で発現することもできる。バクテリオファージT7RNAポリメラーゼ/プロモーター系は、結合プロモーター系の一例である[Studierら、(1986年)J.Mol.Biol.、第189号、113頁、Taborら、(1985年)、PNAS USA、第82号、1074頁]。さらに、ハイブリッドプロモーターは、バクテリオファージプロモーターおよび大腸菌オペレータ領域から構成されてよい(欧州特許出願第0267851号)。
【0140】
プロモーター配列を機能させることの他に、効率的リボソーム結合部位も原核生物中での外来遺伝子の発現に有用である。大腸菌では、リボソーム結合部位は、シャイン-ダルガノ(SD)配列と称し、開始コドン(ATG)および開始コドンの3〜11ヌクレオチド上流に位置する3〜9ヌクレオチド長の配列を含む[Shineら、(1975年)、Nature、第254号、34頁]。SD配列は、SD配列と16SrRNAの3'末端の間の塩基対を作成することによって、mRNAのリボソームへの結合を促進すると思われる[Steitzら、(1979年)「Genetic signals and nucleotide sequences in messenger RNA」、Biological Regulation and Development:Gene Expression (R.F.Goldberger編)]。弱いリボソーム結合部位を有する真核生物遺伝子および原核生物遺伝子を発現するためには、[Sambrookら、(1989年)「Expression of cloned genes in Escherichia coli」、Molecular Cloning 実験マニュアル。
【0141】
DNA分子は、細胞内に発現させることができる。プロモーター配列は、DNA分子と直接結合させることができ、その場合N末端の第1のアミノ酸は常にメチオニンであり、このメチオニンはATG開始コドンによってコードされる。必要に応じて、臭化シアンを用いるin vitro培養によって、または細菌のメチオニンN末端ペプチダーゼを用いるin vivoまたはin vitro培養(EPO-A-0219237号)によって、N末端のメチオニンを蛋白質から切断することができる。
【0142】
融合蛋白質は、発現を指揮するための代替物を提供する。通常、内在性細菌蛋白質のN末端部分または他の安定した蛋白質をコードするDNA配列を異種コード配列の5'末端に融合する。発現と同時に、この構築体は2個のアミノ酸配列の融合体を提供する。たとえば、バクテリオファージラムダ細胞遺伝子を外来遺伝子の5'末端で結合し細菌中で発現させることができる。得られた融合蛋白質は、外来遺伝子からバクテリオファージ蛋白質を切断するための処理酵素部位(因子Xa)を保持していることが好ましい[Nagaiら、(1984年)、Nature、第309号、810頁]。lacZ[Jiaら、(1987年)Gene、60号、197頁]、trpE[Allenら、(1987年)J.Biotechnol.第5号、93頁;Makoffら(1989年)J Gen.Microbiol.第135号、11頁]、およびChey[欧州特許出願第0324647号]遺伝子由来の配列を有する融合蛋白質も作製することができる。2個のアミノ酸配列の連結部のDNA配列は、切断可能な部位をコードしてもしなくてもよい。別の例は、ユビキチン融合蛋白質である。そのような融合蛋白質をユビキチン領域を用いて作製し、このユビキチン領域は外来蛋白質からユビキチンを切断するための処理酵素部位(たとえばユビキチン特異的処理プロテアーゼ)を保持することが好ましい。この方法によって、天然の外来蛋白質を単離することができる[Millerら、(1989年)Bio/Technology、第7号、698頁]。
【0143】
あるいは、外来蛋白質は、キメラDNA分子を作製することによって細胞から分泌させることもでき、このキメラDNA分子は細菌中で外来蛋白質の分泌をもたらすシグナルペプチド配列断片を含む融合蛋白質をコードする[米国特許第4,336,336号]。通常、シグナル配列断片は、細胞からの蛋白質の分泌を指揮する、疎水性アミノ酸を含むシグナルペプチドをコードする。蛋白質は、増殖培地(グラム陽性細菌)または細胞の内膜と外膜の間に位置する周辺質空間(グラム陰性細菌)に分泌される。in vivoまたはin vitroで切断することができるプロセシング部位がシグナルペプチド断片と外来遺伝子の間にコードされていることが好ましい。
【0144】
適当なシグナル配列をコードするDNAは、大腸菌外膜蛋白質遺伝子(ompA)[Masuiら、(1983年)、「Experimental Manipulation of Gene Expression」、Ghrayebら、(1984年)、EMBOJ、第3号、2437頁]および大腸菌アルカリフォスファターゼシグナル配列(phoA)[Okaら、(1985年)PNAS USA、第82号、7212頁]など、分泌した細菌蛋白質遺伝子から派生させることができる。別の例として、様々な桿菌株由来のアルファ-アミラーゼ遺伝子のシグナル配列を使用して枯草菌から異種蛋白質を分泌させることができる[Palvaら、(1982年)、PNAS USA、第79号、5582頁、欧州特許出願第0244042号]。
【0145】
通常、細菌によって認識される転写停止配列は、翻訳終止コドンの3'に位置する調節領域であり、したがってプロモーターと共にコード配列を側置する。DNAがコードするポリペプチドに翻訳され得るmRNAの転写をこれらの配列は指揮する。しばしば、転写停止配列は、転写の停止に役立つステムループ構造を形成することができる約50ヌクレオチドのDNA配列を含む。例には、大腸菌のtrp遺伝子などの強力なプロモーターを伴う遺伝子および他の生合成遺伝子由来の転写停止配列が含まれる。
【0146】
通常、プロモーター、(望むならば)シグナル配列、当該コード配列、および転写停止配列を含む上記の成分を発現構築体に組み入れる。しばしば、発現構築体は、細菌などの宿主中で安定して維持することができる染色体外要素(たとえばプラスミド)などのレプリコン中に維持される。レプリコンは、複製系を含み、それによって発現用にまたはクローニングおよび増幅用に、原核生物宿主中にレプリコンが維持されるようにする。さらに、レプリコンは、プラスミドの複製数が多くても少なくてもよい。一般に、高複製数プラスミドは、複製数が約5〜約200個、通常約10〜約150個である。高複製数プラスミドを含む宿主は、好ましくは少なくとも約10個、より好ましくは少なくとも約20個のプラスミドを含む。ベクターの作用および宿主上の外来蛋白質に応じて、高または低複製数ベクターを選択することができる。
【0147】
あるいは、組込みベクターによって発現構築体を細菌ゲノム中に組み込むことができる。通常、組込みベクターは、ベクターの組込みを可能にする細菌染色体に相同な少なくとも1個の配列を含む。組込みは、ベクター中の相同DNAと細菌染色体の間の組換えの結果生じると思われる。たとえば、様々な桿菌株由来のDNAで構築した組込みベクターを桿菌染色体中に組み込む(欧州特許出願第0127328号)。組込みベクターは、バクテリオファージまたはトランスポゾン配列から構成することもできる。
【0148】
通常、染色体外組込み発現構築体には、形質転換されている細菌株の選択を可能にする選択マーカーを含めることができる。選択マーカーは、細菌宿主中で発現させることができ、アンピシリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、カナマイシン(ネオマイシン)、テトラサイクリンなどの薬物に対して細菌を耐性にする遺伝子を含めることができる[Daviesら、(1978)、Annu.Rev.Microbiol.、第32号、469頁]。選択マーカーには、ヒスチジン、トリプトファン、ロイシン生合成経路中の遺伝子などの生合成遺伝子を含めてもよい。
【0149】
あるいは、上記の成分のいくつかを形質転換ベクターに組み入れることができる。通常、形質転換ベクターは、レプリコン中に維持され、または上記した組込みベクターに成長する選択マーカー(market)を含む。
【0150】
発現ベクターまたは形質転換ベクターは、染色体外レプリコンまたは組込みベクターであるが、形質転換用に多くの細菌に開発されている。たとえば、とりわけ、以下の細菌用の発現ベクターが開発されている:枯草菌[Palvaら、(1982年)PNAS USA、第79号、5582頁、欧州特許出願第0036259号、欧州特許出願第0063953号、および国際公開第84/04541号]、大腸菌[Shimatakeら、(1981年)、Nature、第292号、128頁、Amannら、(1985年)、Gene、第40号、183頁、Studierら、(1986年)、J.Mol.Biol.、第189号、113頁、欧州特許出願第0036776号、欧州特許出願第0136829号、および欧州特許出願第0136907号]、ストレプトコックスクレモリス(cremoris)[Powellら、(1988年)Appl.Environ.Microbiol.、第54号、655頁];ストレプトコックスリビダンス(lividans)[Powellら、(1988年)Appl.Environ.Microbiol.、第54号、655頁]、ストレプトミセスリビダンス(lividans)[米国特許第4,745,056号]。
【0151】
外来DNAを細菌宿主に導入する方法は当技術分野で周知であり、通常、CaCl2、または二価の陽イオンやDMSOなどの他の薬剤で処理した細菌の形質転換を含む。電気穿孔法によってDNAを細菌細胞に導入することもできる。通常、形質転換手順は、形質転換すべき菌種によって変化する。たとえば以下を参照のこと。[Massonら、(1989年)、FEMS Microbiol.Lett、第60号、273頁、Palvaら、(1982年)、PNAS USA、第79号、5582頁、欧州特許出願第0036259号、欧州特許出願第0063953号、国際公開第84/04541号、桿菌属]、[Millerら、(1988年)、PNAS USA、第85号、856頁、Wangら、(1990年)、J.Bacteriol.、第172号、949頁、カンピロバクター属]、[Cohenら、(1973年)、PNAS USA、第69号、2110頁、Dowerら、(1988年)、Nucleic Acids Res.、第16号、6127頁、Kushner、(1978)、「An improved method for transformation of Escherichia coli with ColEl-derived plasmids」、Genetic Engineering: Proceedings of International Symposium on Genetic Engineering、(H.W.BoyerおよびS.Nicosia編)、Mandelら、(1970年)J.Mol.Biol.、第53号、159頁、Taketo、(1988年)Biochim.Biophys.Acta、第949号、318頁;エシェリキア属]、[Chassyら、(1987年)、FEMS Microbiol.Lett.、第44号、173頁、ラクトバチルス属]、[Fiedlerら、(1988年)、Anal.Biochem.、第170号、38頁、シュードモナス属]、[Augustinら、(1990年)、FEMS Microbiol.Lett.、第66号、203頁、スタヒロコックス属]、[Baranyら、(1980年)J.Bacteriol.第144号、698頁、Harlander、(1987年)、「Transformation of Streptococcus lactis by electroporation」、Streptococcal Genetics (J.FerrettiおよびR.Curtiss III編)、Perryら、(1981年)、Infect.Immun.第32号、1295頁、Powellら、(1988年)、Appl.Environ.Microbiol.、第54号、655頁、Somkutiら、(1987年)、ProC.4th Evr.Cong.Biotechnology、第1号、412頁、ストレプトコックス属]。
【0152】
大腸菌での発現およびその最適化についての一般的な指針は、Baneyx(1999年)Curr.Opin.Biotech.、第10号、411〜421頁、ならびにHannigおよびMakrides、(1998年)、TIBTECH、第16号、54〜60頁に見出すことができる。
【0153】
v.酵母発現
酵母発現系も当技術分野の通常の技術者には知られている。酵母プロモーターは、酵母RNAポリメラーゼを結合し、コード配列(たとえば構造遺伝子)のmRNAへの下流(3')転写を開始することができる任意のDNA配列である。通常、プロモーターは、コード配列の5'末端の近位に配置される転写開始部位を有する。通常、この転写開始部位は、RNAポリメラーゼ結合部位(「TATABox」)および転写開始部位を含む。酵母プロモーターは、上流アクチベータ配列(UAS)と称する第2領域を含むことができ、含む場合は、通常、構造遺伝子の遠位に置かれる。UASによって調節(誘導)発現が可能になる。構成的発現は、UASの不在下で生じる。調節発現は、正または負であってよく、それによって転写は強化されまたは弱められる。
【0154】
酵母は、活性代謝経路を伴う発酵生物体であり、したがって、代謝経路中の酵素をコードする配列は特に有用なプロモーター配列を提供する。例には、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)(欧州特許出願第0284044号)、グルコース-6-リン酸異性化酵素、グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPまたはGAPDH)、ヘキソキナーセ、ホスホフルクトキナーゼ、3-ホスホグリセリン酸ムターゼ、エノラーゼ、グルコキナーゼ、およびピルビン酸キナーゼ(PyK)(EPO-A-0329203号)が含まれる。酸性フォスファターゼをコードする酵母PH05遺伝子も有用なプロモーター配列を提供する[Myanoharaら、(1983年)、PNAS USA、第80号、1頁]。
【0155】
さらに、自然では生じない合成プロモーターも酵母プロモーターとして機能する。たとえば、1個の酵母プロモーターのUAS配列は、別の酵母プロモーターの転写活性化領域と結合することができ、合成ハイブリッドプロモーターを作製する。そのようなハイブリッドプロモーターの例には、GAP転写活性化領域と関連づけらるADH調節配列が含まれる(米国特許第4,876,197号および同第4,880,734号)。ハイブリッドプロモーターの他の例には、ADH2、GAL4、GAL10、ORPH05遺伝子のいずれかの調節配列からなり、GAPやPyKなどの糖分解酵素遺伝子の転写活性化領域と組み合わせたプロモーターが(欧州特許出願第0164556号)が含まれる。さらに、酵母プロモーターには、自然に存在する非酵母起源のプロモーターを含めてもよく、このプロモーターは酵母RNAポリメラーゼを結合し転写を開始する能力を有する。そのようなプロモーターの例には、とりわけ、以下のものが含まれる[Cohenら、(1980)、PNAS USA、第77号、1078頁、Henikoffら(1981年)、Nature、第283号、835頁、Hollenbergら、(1981年)、Curr.Topics Microbiol.Immunol.、第96号、119頁、Hollenbergら、(1979)、「The Expression of Bacterial Antibiotic Resistance Genes in Yeast Saccharomyces cerevisiae」、Plasmids of Medical, Environmental and Commercial Importance (K.N.TimmisおよびA.Puhler編)、Mercerau-Puigalonら、(1980)、Gene、第11号、163頁、Panthierら、(1980)、Curr.Genet.、第2号、109頁]。
【0156】
DNA分子は、酵母細胞内に発現させることができる。プロモーター配列は、DNA分子と直接結合させることができ、その場合組換え蛋白質のN末端の第1のアミノ酸は、常にメチオニンであり、このメチオニンはATG開始コドンによってコードされている。必要に応じて、臭化シアンを用いるin vitro培養によって、N末端のメチオニンを蛋白質から切断することができる。
【0157】
融合蛋白質は、酵母発現系用に、ならびに哺乳動物系、バキュロウイルス系、および細菌発現系で代替物を提供する。通常、内在性酵母蛋白質のN末端部分または他の安定した蛋白質をコードするDNA配列を異種コード配列の5'末端に融合する。発現と同時に、この構築体は2個のアミノ酸配列の融合体を提供する。たとえば、酵母またはヒトスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)遺伝子を外来遺伝子の5'末端に結合し酵母中で発現させることができる。2個のアミノ酸配列の連結部のDNA配列は、切断可能な部位をコードしてもしなくてもよい。たとえば、欧州特許出願第0196056号を参照のこと。別の例は、ユビキチン融合蛋白質である。そのような融合蛋白質をユビキチン領域を用いて作製し、このユビキチン領域は外来蛋白質からユビキチンを切断するための処理酵素部位(たとえばユビキチン特異的処理プロテアーゼ)を保持することが好ましい。したがって、この方法によって天然の外来蛋白質を単離することができる(たとえば国際公開第88/024066号)。
【0158】
あるいは、外来蛋白質は、キメラDNA分子を作製することによって細胞から増殖培地へ分泌させることもでき、このキメラDNA分子は、酵母中で外来蛋白質の分泌をもたらすリーダー配列断片から構成される融合蛋白質をコードする。in vivoまたはin vitroで切断することができるプロセシング部位がリーダー断片と外来遺伝子の間にコードされていることが好ましい。通常、リーダー配列断片は、細胞からの蛋白質の分泌を指揮する、疎水性アミノ酸を含むシグナルペプチドをコードする。
【0159】
インベルターゼ遺伝子(欧州特許出願第0012873号、日本国特許公開第62,096,086号)やA因子遺伝子(米国特許第4,588,684号)など、分泌した酵母蛋白質用に適当なシグナル配列をコードするDNAを遺伝子から派生させることができる。あるいは、インターフェロンリーダーなどの非酵母起源のリーダーが存在し、これらのリーダーも酵母中で分泌をもたらす(欧州特許出願第0060057号)。
【0160】
分泌リーダーの好ましいクラスは、「pre」シグナル配列を含む酵母アルファ因子遺伝子断片、および「pro」領域を使用するクラスである。使用することができるアルファ因子断片型には、全長pre-proアルファ因子リーダー(約83aa残基)や切断アルファ因子リーダー(通常約25〜約50アミノ酸残基)が含まれる(米国特許第4,546,083号および同第4,870,008号、欧州特許出願第0324274号)。分泌をもたらすアルファ因子リーダー断片を使用する追加のリーダーには、第1酵母のpre配列を用いるが、第2酵母アルファ因子由来のpro領域は用いないで作製した、ハイブリッドアルファ因子リーダーが含まれる。(たとえば国際公開第89/02463号を参照のこと)
【0161】
通常、酵母によって認識される転写停止配列は、翻訳終止コドンの3'に位置する調節領域であり、したがってプロモーターと共にコード配列を側置する。DNAがコードするポリペプチドに翻訳され得るmRNAの転写をこれらの配列は指揮する。転写停止配列、および糖分解酵素をコードする配列など、他の酵母認識停止配列の例。
【0162】
通常、プロモーター、(望むならば)リーダー、当該コード配列、および転写停止配列を含むこれらの成分を発現構築体に組み入れる。しばしば、発現構築体は、酵母や細菌などの宿主中で安定して維持することができる染色体外要素(たとえばプラスミド)など、レプリコン中に維持される。レプリコンは、2個の複製系を含むことができ、それによって、たとえば、発現用に酵母中に、およびクローニングおよび増幅用に原核生物宿主中にレプリコンが維持されるようにする。そのような酵母-細菌シャトルベクターの例には、YEp24[Botsteinら、(1979)、Gene、第8号、17〜24頁]、pCl/1[Brakeら、(1984年)、PNAS USA、第81号、4642〜4646頁]、およびYRpl7[Stinchcombら、(1982年)、J.Mol.Biol.、第158号、157頁]が含まれる。さらに、レプリコンは、プラスミドの複製数が多くても少なくてもよい。一般に、高複製数プラスミドは複製数が約5〜約200個、通常約10〜約150個である。高複製数プラスミドを含む宿主は、少なくとも約10個、より好ましくは少なくとも約20個含む。ベクターの作用および宿主上の外来蛋白質に応じて、高または低複製数ベクターを選択することができる。たとえばBrakeら、上記を参照のこと。
【0163】
あるいは、組込みベクターによって発現構築体を酵母ゲノム中に組み込むことができる。通常、組込みベクターは、ベクターの組込みを可能にする酵母染色体に相同な少なくとも1個の配列を含み、かつ発現構築体に側置される2個の相同配列を含むことが好ましい。組込みは、ベクター中の相同DNAと酵母染色体の間の組換えの結果生じると思われる[Orr-Weaverら、(1983年)、Methods in Enzymol.、第101号、228〜245頁]。ベクターを組込みための適切な相同配列を選択することによって、組込みベクターを酵母中の特異的座位に向かわせることができる。Orr-Weaverら、上記を参照のこと。1個以上の発現構築体を組み込み、産生される組換え蛋白質の濃度に作用することができるかもしれない[Rineら、(1983年)、PNAS USA、第80号、6750頁]。ベクターに含まれた染色体の配列は、ベクター全体の組込みをもたらす単一セグメントとしてベクター中に生じることができ、または染色体中で隣接するセグメントに相同し、かつベクター中の発現構築体に側置される2個のセグメントとしてに生じることができ、この2個のセグメントは発現構築体のみを安定して組込みことができる。
【0164】
通常、染色体外組込み発現構築体には、形質転換されている酵母株の選択を可能にする選択マーカーを含めることができる。選択マーカーには、酵母宿主中で発現させることができる、ADE2、HIS4、LEU2、TRPI、ALG7などの生合成遺伝子、およびG418耐性遺伝子を含めることができ、これら2種の遺伝子は、それぞれ、酵母細胞にツニカマイシン(tunicamycin)およびG418に対する耐性を授ける。さらに、適当な選択マーカーは、酵母に金属などの有毒化合物の存在下で増殖する能力を付与することもできる。たとえば、CUPIの存在によって酵母は銅イオンの存在下で増殖できるようになる[Buttら(1987年)Microbiol.、Rev.、第51号、351頁]。
【0165】
あるいは、上記の成分のいくつかを形質転換ベクターに組み入れることができる。通常、そのようなベクターは、レプリコン中で維持される、または上記した組込みベクターに成長する選択マーカーを含む。発現ベクターおよび形質転換ベクターは、染色体外レプリコンまたは組込みベクターであるが、多くの酵母中への形質転換用に開発されている。たとえば、とりわけ、以下の酵母用の発現ベクターが開発されている:カンジダアルビカンス[Kurtz、ら(1986年)、Mol.Cell.Biol.、第6号、142頁]、カンジダマルトーサ[Kunze、ら(1985年)J.Basic Microbiol.第25号、141頁]。ハンゼヌラポリモルファ(polymorpha)[Gleeson、ら(1986年)J.Gen.Microbiol.、第132号、3459頁、Roggenkampら、(1986年)、Mol.Gen.Genet.、第202号、302頁]、クルイベロミセスフラギリス[Dasら、(1984年)J.Bacteriol.、第158号、1165頁]、クルイベロミセスラクティス[DeLouvencourtら、(1983年)J.Bacteriol.、第154号、737頁、Van den Bergら、(1990年)、Bio/Technology 8、135頁]、ピキアグイレリモンジイ[Kunzeら、(1985年)、J.Basic Microbiol.、第25号、141頁]、ピキアパストリス[Cregg、ら(1985年)、Mol.Cell.Biol.、第5号、3376頁;米国特許第4,837,148号および同第4,929,555号]、サッカロミセスセレビシエ[Hinnenら、(1978年)、PNAS USA、第75号、1929頁、Itoら、(1983年)、J.Bacteriol.、第153号、163頁]、スキゾサッカロミセスポンブ[BeachおよびNurse(1981年)、Nature、第300号、706頁]、およびヤロウィアリポリチカ[Davidowら、(1985年)、Curr.Genet.、10:380471、Gaillardin、ら(1985年)Curr.Genet.、第10号、49頁]。
【0166】
酵母宿主中に外来DNAを導入する方法は、当技術分野でよく知られており、通常、スフェロプラストの形質転換、またはアルカリ陽イオンで処理した無変化酵母細胞の形質転換を含む。通常、形質転換手順は、形質転換すべき酵母種によって変化する。たとえば以下を参照のこと:[Kurtzら(1986年)、Mol.Cell.Biol.、第6号、142頁、Kunzeら、(1985年)、J.Basic Microbiol.、第25号、141頁、カンジダ属];[Gleesonら、(1986年)、J.Gen.Microbiol.、第132号、3459頁、Roggenkampら、(1986年)、Mol.Gen.Genet.、第202号、302頁、ハンゼヌラ属]、[Dasら、(1984年)、J.Bacteriol.、第158号、1165頁、De Louvencourtら、(1983年)、J.Bacteriol.、第154号、1165頁、Van den Bergら、(1990年)、Bio/Technology 8、135頁、クルイベロミセス属];[Creggら、(1985年)、Mol.Cell.Biol.、第5号、3376頁、Kunzeら、(1985年)、J.Basic Microbiol.、第25号、141頁、米国特許第4,837,148号および同第4,929,555号;ピキア属]、[Hinnenら、(1978)、PNAS USA、第75号、1929頁、Itoら、(1983年)、J.Bacteriol.、第153号、163頁、サッカロミセス属]、[BeachおよびNurse、(1981年)、Nature、第300号、706頁、スキゾサッカロミセス属]、[Davidowら、(1985年)、Curr.Genet.、第10号、39頁、Gaillardinら、(1985年)、Curr.Genet.、第10号、49頁、ヤロウィア属]。
【0167】
配列表の簡単な説明
【0168】
【表2】

【発明を実施するための最良の形態】
【0169】
本発明を実施する方式
H6一本鎖Fv抗体
H6は、KT4モノクローナル抗体のイディオタイプ抗原決定基に対して誘発された一本鎖Fvである。この一本鎖Fvは、ピキアアノマラキラートキシン(PaKT)の活性を模倣する目的で誘発された抗イディオタイプ抗体である。
【0170】
ScFvH6の存在は、既に報告されている[たとえば参照13]が、その製造方法はこれまで開示されておらず、そのアミノ酸配列も開示されていない。今回、H6配列を開示する(配列番号1および2)。配列番号2中、アミノ酸107〜132(GT...IE)がリンカーであり、最後の13個のアミノ酸(GA...PR、配列番号59)は、scFvを作製するために使用された組換えファージ抗体系(Pharmacia Biotech(商標))によって挿入された「E-tag」である。
【0171】
H6中のCDRは以下の通りである。
【0172】
【表3】

【0173】
H6scFvは、以下を含む重要な病原微生物に対して強力なin vitro殺菌作用を有する:C.アルビカンス、C.クルセイおよびC.グラブラタ(フルコナゾール耐性株を含む)、クリプトコックスネオフォルマンス、A.フミガツス、ヒト型結核菌、黄色ブドウ球菌、エンテロコックスフェーカリス、E.ファエシウム(faecium)、および肺炎連鎖球菌(メチシリン耐性株、バンコマイシン耐性株、およびペニシリン耐性株を含む)、S.ミュータンス、リーシュマニア大形、L.幼児およびアカンタモエバ(Achantamoeba)カステラーニ。さらに、H6scFvは、ラット膣カンジダ症in vivoモデルで経膣投与により特異的な治療活性を示す。
【0174】
K20モノクローナル抗体およびscFv誘導体H20
K10は、KT4に対して誘発された抗イディオタイプラットモノクローナル抗体である。H6scFvと同様に、K10は、良好なin vitro殺菌活性を示す。さらに、K10は、噴霧投与により感染させたラットのカリニ肺炎[16]、および鼻腔滴下により生じたアスペルギルス症に対してT細胞枯渇骨髄を移植したマウスでのカリニ肺炎[14]に対して治療効果があることが示されている。
【0175】
マウスでK10に対して抗イディオタイプ抗体が誘発された(すなわちPaKTに関して抗抗抗イディオタイプ)。得られたハイブリドーマ産生抗体の1つは「K20」と呼ばれた。
【0176】
K20を従来のin vitroコロニー形成単位(CFU)アッセイで試験してキラー活性を評価した。PBS10μlに懸濁させた、約250個の生存可能なPaKT感受性増殖中のC.アルビカンスUP10細胞をK20 90μlに加えて最終濃度100μg/mlにし37℃で6時間培養した。それぞれの試薬で培養後、サブロー(Sabouraud)デキストロース寒天プレートの表面上に真菌細胞を分配しストリークした。その結果、この寒天プレートを30℃で培養し48時間後にそのコロニー形成単位(CFU)数えた。各実験を3通り実施した。不適切なmAbを対照として使用した。
【0177】
図2に示すように、K20は、K10よりも多少良好な抗カンジダ活性を示す。
【0178】
組換えファージ抗体系(Pharmacia Biotech(商標))を使用しK20をscFv抗体に転換した。ScFvは、「H20」と呼ばれ、その配列を配列番号21および22として示す。H20CDRは以下の通りである。
【0179】
【表4】

【0180】
H20をCFUアッセイで試験した(図3)。H20は、H6に匹敵する殺カンジダ活性を示す。
【0181】
H6活性断片
CDR配列を強調してH6の短いペプチド断片を合成した。
【0182】
MultiSynTech Syro自動ペプチド合成装置(Witten、ドイツ国)によって、HOBt活性化を伴うFmoc化学、および固体支持体としてRinkアミドMBHA樹脂を使用し固相合成法を実施した。ペプチドを樹脂から切り離し、エタンジチオール、水、トリイソブチルシラン、およびアニソール(93/2.5/2/1.5/1)を含むトリフルオロ酢酸で脱保護処理した。エチル酸エーテル(ethylic ether)によって沈殿後、ペプチドをVydacC18カラム(25cm×lcm)によって精製しアミノ酸分析および質量分析によって特徴付けた。
【0183】
以下のペプチドを合成した。
【0184】
【表5】

【0185】
これらのペプチドをCFUアッセイで試験しキラー活性を評価した。
【0186】
対照として、「スクランブル」ペプチド(配列番号13、「SP0」)を合成し、その場合KM0アミノ酸を並べ替えて全体ペプチド組成は同じであるが配列が異なるようにした。これをKM0およびKM4の対照として試験KMペプチドと同じ濃度で上記アッセイで使用した。KM2に関して、対照は配列番号28(「IP」または「不適切ペプチド」)であった。KM5に関しては、対照は配列番号31であった。
【0187】
KM0の結果は以下の通りであり、対照と比較して%増殖として表した。
【0188】
【表6】

【0189】
異なる濃度のKM0、KM2、KM4、およびKM5の結果を図4〜6に示す。
【0190】
したがって、KM0およびKM5は、極めて有効な抗カンジダペプチドである。KM2も有効でありKM4も適度に有効である。
【0191】
H6のCDRも単離形(配列番号60〜65)で調製し、殺菌活性についてC.アルビカンスのCFUアッセイで試験した。各CDRペプチドをスカラー(scalar)希釈で試験しIC50を確定した。アッセイを3通り実施し、logペプチド濃度に対するCFU数をプロットすることによって得られた曲線を、非線形回帰分析することによって各ペプチドのIC50を算出した。結果は以下の通りである。
【0192】
【表7】

【0193】
したがって、H6抗体のCDRは、有意な抗カンジダ活性を示し、重鎖(配列番号62)由来のCDR-3が最高活性を示す。
【0194】
したがって、たとえ、H6scFv断片が無変化抗体と同じ3次構造では保持されないと予想されても、H6scFv断片は殺菌剤の役割をすることができる。
【0195】
1個を超えるH6断片を含むポリペプチド
KM0はH6軽鎖CDRに由来し、KM2はH6重鎖CDRに由来する。デカペプチドのそれぞれがそれ自体で殺菌活性を有する2個のデカペプチドをグリシンの豊富な配列(配列番号30)によって結合しKM3(配列番号25)を得た。
【0196】
CFUアッセイでのIPと比較してKM3は殺カンジダ活性を示したが、これはKM0およびKM2単独よりも弱かった(図4)。
【0197】
KM0内の置換-システイン置換
酸化工程および重合工程を低減する目的でデカペプチドKM0中のシステイン残基をセリンで置換してKM1(配列番号23)を得た。KM1は、CFUアッセイでIP対照と比較してKM0に類似する活性(図7)を示した。したがって、システインをセリンと置換してもKM0の抗菌作用に明らかな変化はなかったが、酸化耐性が増大し、それによってin vivo半減期が延長された。
【0198】
配列番号48は、KM2のC→S置換形である。配列番号58は、KM4のC→S置換形である。
【0199】
KM0内の置換-アラニンスキャニング
個々の残基の機能的な殺菌活性貢献度を同定するためにデカペプチドKM0をアラニンスキャニング[32]によって分析した。10個の構成アミノ酸のそれぞれをA(既にAである残基9を除く)と交換し、in vitroCFUアッセイで活性を評価した。結果は以下の通りであり、値はSP0対照と比較した%増殖である。
【0200】
【表8】

【0201】
最も活性なポリペプチドは、配列番号4(「KM」)であり、その場合第1のアミノ酸Eは、Aによって置換されている。SP0対照および出発KM0デカペプチドに比べて、CをAによって置換した配列番号8も良好な活性を示す。対照と比較してこれらの2個のデカペプチドでのCFU減少は、3個の用量全てにおいて統計上有意であった(両側スチューデントtアッセイによるp<0.005)。
【0202】
KM0配列およびKM配列を基準として、スクランブルペプチド(SP0、配列番号13、SP、配列番号29)も合成した。これらの2個のスクランブルペプチドのいずれもin vitro殺カンジダ活性を示さなかった。
【0203】
KM2のアラニンスキャニングを配列番号40〜47に示す。
【0204】
KM5のアラニンスキャニングを配列番号49〜57に示す。
【0205】
KMのC末端平滑化(truncation)
配列番号4(「KM」)をC末端削減によって残基3個までに減少させて、SP対照と比べてin vitroでの殺カンジダ活性を保持する能力を確定した。スカラー希釈(100〜0.8g/ml)を試験してC.アルビカンス細胞を100%殺すことに相当する最低殺真菌剤濃度を確定した。KMおよびその平滑化誘導体もスカラー希釈で試験して50%阻害濃度(IC50)に相当するペプチド濃度(mol/l)を確定した。アッセイを3通り実施し、GraphPad Prism3.02ソフトウェアを使用しlogペプチド濃度に対するCFU数をプロットすることによって得られた曲線を、非線形回帰分析することによって各ペプチドのIC50を算出した。結果は以下の通りである。
【0206】
【表9】

【0207】
KMからのC末端セリンの削除に伴って殺カンジダ活性が約3桁減少する。しかし、3個のC末端残基の削除によって形成された七量体は、KMの活性よりもわずか1桁低い活性を示す。
【0208】
KMオリゴマー
CFUアッセイを使用し凍結乾燥後のキラーペプチドKMの安定性についての実験を実施した。KMは、凍結乾燥形では非常に安定していることが判明した。
【0209】
非還元条件で可溶化後、KM中の遊離システインは、ジスルフィド架橋の形成につながりKM二量体をもたらし得る。二量化SPペプチドと比較することによって二量体の殺カンジダ活性を評価した。ジスルフィド結合KM二量体は、殺カンジダ活性を保持している。さらに、この活性は異なる保存状態(4℃、室温、37℃)下で長期にわたって変化なく維持された。
【0210】
膣感染モデルでのKMのIn vivo活性
卵巣を切除したエストロゲン処理ラットの、首尾よく確立された膣C.アルビカンス感染実験モデル[71]を使用しKMを試験した。エストロゲン調整ラット(各1群につき5頭)を107細胞個のフルコナゾール感受性C.アルビカンス(SA-40)またはフルコナゾール耐性(AIDS68)C.アルビカンスにより膣内接種した。両カンジダ株は、本来ヒト膣感染から単離され、ローマ(イタリア国)のIstituto Superiore di Sanita (ISS)、細菌および医真菌学部内保存収蔵で維持された。攻撃後1、24、および48時間目に異なる用量(10、25、50および100μg)のKMを膣内投与し、毎日特別な目盛り付きループによって採取した膣液のCFU数によって膣C.アルビカンス負荷を定量した。膣粘物もPAS-van Gieson法によって染色した。膣内の菌糸の増殖の微視的減少に関してKM治療のどんな利益も評価した。負の対照は、無処理ラットおよびSP処理ラットであった。正の対照として、酵母攻撃後1、24および48時間目にラットにPBS(0.1ml)に溶かした50または100μg/mlのフルコナゾール(ファイザー社)を与えた。
【0211】
用量反応治療効果が、50および100μg用量で観察された。
【0212】
続く実験では、確立した3回用量投与スケジュールでKM50μgを使用して28日間にわたる真菌CFUクリアランスの加速性を定量した。ラット(1群につき5頭)に0日目に生理溶液0.1mlに溶かした107個の細胞を与え、初期腟内CFUのためにサンプリングした。攻撃後1、24、および48時間目に処理を施した。
【0213】
図8は、株SA-40での典型的な実験の結果を示す。各時点で(a)無処理またはSP処理ラットと、(b)KM処理またはフルコナゾール処理ラットの間の膣CFUカウントに統計上有意差(両側スチューデントt試験によりp<0.05)があった。無処理ラットとSP処理ラットの間に有意差はなく、KM処理ラットとフルコナゾール処理ラットの間にも有意差はなかった。
【0214】
KMは、ラット膣由来真菌の初期クリアランス速度を著しく促進(1〜5日間)し、攻撃から3週間以内に感染の実質的解決をももたらす(膣液のCFU/mlは103未満)。このとき無処理対照は、依然として膣液のカンジダCFU/mlが2〜4×104であった。SP投与によっては、真菌クリアランスにいかなる加速性も、感染分解能に対していかなる作用も得られなかった。KMの治療上の利益は、フルコナゾールのそれに事実上匹敵した。
【0215】
28日間にわたる試験株の結果は以下の通りであった。
【0216】
【表10】

【0217】
7、14、および28日目では、以下の相互間のCFU膣カウントの差は、統計上有意(p<0.05、両側スチューデントt試験)であった。
-群1と群2
-群1と群3
-群4と群6
-群1と群5
-群1と群6
-群5と群6
【0218】
以下の相互間では統計上の有意差はなかった。
-群2と群3
-群4と群5
【0219】
フルコナゾール100μgでの処理とは対照的に、KMはフルコナゾール耐性C.アルビカンス株によって生じたラット膣感染でも治療効果があった。
【0220】
全身感染モデルでのKMのIn vivo抗カンジダ活性
首尾よく確立された、C.アルビカンス感染急死全身性マウスモデル[72]を使用しKMを試験した。8頭のBalb/C雌マウス(重量18〜21g)群を静脈内経路によって5×LD50(107SA-40細胞)で攻撃した。0日目(すなわち真菌攻撃後1時間)から初め、24時間および48時間後の3日間KM 50μgを腹腔内投与した。対照は、無処理動物またはペプチドSP処理動物(KM処理と同じ用量および処理スケジュール)であった。次いで、死亡数および内臓浸潤を目的として60日間動物を追跡した。生存期間中央値(日間)の延長および全死亡数の減少の点に関してどんな有益な効果も確定した。死体解剖による評価では動物の死亡は真菌によることが示され、内臓評価ではC.アルビカンスによる浸潤が示された。
【0221】
並行実験では、KMの治癒効果に宿主順応性免疫が関与する必要があるかどうかを確認するために、免疫適格マウスの代わりにSCIDマウスを使用した。これらの実験には上記と同じ真菌攻撃負荷、KM処理およびSP処理スケジュール、ならびにC.アルビカンス誘発死亡終点を使用した。
【0222】
実験全てにおいて、延命および動物治癒(60日間)の点に関してKMは同様の有益な治療効果を発揮した。典型的な例として、図9は、5×LD50のC.アルビカンスで攻撃し、KM、フルコナゾール、またはSPのいずれかを50μg処理したSCIDマウス、あるいは無処理で放置したSCIDマウスのカプランマイヤー生存曲線を示す。KMは、生存期間中央値を無処理対照の1日から60日超まで延長したように見えた。さらに、無処理マウスまたはSP処理マウスでの8/8死亡に比べて、1/8のKM処理動物しか死亡しなかった。すべての場合において、腎臓の真菌負荷によって示されるように、死亡はC.アルビカンス攻撃に帰することができた。図9は、KMがフルコナゾールより優れていたことを示す。
【0223】
グルカンによるKM活性の遮断
上記のように、KMは抗カンジダ活性を示す。KMは、細胞表面β-グルカンと相互作用するKT抗体に離れて関係付けられるので、KM活性におけるグルカンの考えられる関与を調査した。
【0224】
C.アルビカンスの増殖中細胞へのKTmAbの結合を免疫蛍光法[12]によって評価した。KMは、KTの細胞への結合を完全に阻害したが、SPは阻害しなかった。
【0225】
次の実験では、異なる濃度(12.5μg/ml〜100μg/ml)のラミナリン(β-1,3-グルカン、Sigma社製)またはプスツラン(pustulan)(β-1、6-グルカン、Calbiochem社製)を含めた点以外は、先と同様にKM25μg/mlまたはSPを使用してCFUアッセイを実施した。結果は以下の通りである。
【0226】
【表11】

【0227】
したがって、KMの殺カンジダ活性は、ラミナリンによって強力に用量依存的に阻害されたがプスツランでは阻害されなかった。
【0228】
これらのデータは、殺カンジダKMデカペプチドは、真菌細胞壁上のKT-IdAbの結合部位を求めて競うことを示唆しており、受容体はβ-1-3グルカンを含むと思われる。
【0229】
抗A.カステラーニ活性
その抗カンジダ活性の他に、真核生物の自由生活土壌アメーバであるアカントアメーバカステラーニの栄養体(感染性形態)に対する活性について、KMペプチドおよびK20モノクローナル抗体を試験した。このアメーバは、脳脊髄炎、ならびに重篤な眼炎症および失明を招き得る角膜炎の原因である。
【0230】
A.カステラーニをPYG培地で、37℃または25℃で、SPペプチドまたはKMペプチドの存在下、1μg/ml、10μg/ml、または100μg/ml(または、対照としてペプチド不含)で増殖させた。6日間に及ぶ増殖に対する作用を栄養体数の点から図14に示す。図14Cおよび14Dに見られるように、スクランブルペプチドSPは、37℃または25℃で抗菌活性はないが、KM(図14Aおよび14B)は良好な抗菌活性を示す。
【0231】
図15は、SPと比較して25℃で評価した、A.カステラーニの細胞生存度に対するKM190μg/mlのin vitro活性を示す。図15Aは、共培養の6時間後の細胞生存度(p<0.05)の低下を示す。図15Bは、共培養6時間後(p<0.05)、それに続く新鮮PYG培地での18時間培養後の同様の低下を示す。
【0232】
図16には、KMについて記載した方法と同様の方法で37℃で6日間試験したモノクローナル抗イディオタイプ抗体K20の阻害作用を示す。作用は、ラットモノクローナルK10の作用と比較することができる(図17)。培養6日後、K20を使用したウェル当たり栄養体数は、25μg(2700:3100)および50μg(2800:3080)でK10を使用したときより低かった。
【0233】
KM活性範囲
KMは、強力な抗C.アルビカンスおよび抗A.カステラーニ活性を示す。KMは、カンジダ種多剤耐性株、およびヒト型結核菌、クリプトコックスネオフォルマンス(図10)、アスペルギルスフミガツスなど、疫学的視点から非常に重要である他の微生物に対して、さらに黄色ブドウ球菌メチシリン耐性株(図11)や肺炎連鎖球菌ペニシリン耐性株に対しても有効であることが判明した。
【0234】
驚くべきことに、KMは、インフルエンザAウイルスおよびHIV-1に対しても抗ウイルス活性があることが判明した。
【0235】
インフルエンザAウイルス
インフルエンザウイルスの複製に対するKMの効果をスクランブルペプチドSP対照と比較した。次の対照として維持培地単独での複製を試験した。
【0236】
異なる2株のA型インフルエンザウイルス(Ulster/73/H7N1トリ神経毒性、NWS/33/H1N1ヒト神経毒性)が、LLC-MK2(アカゲザルの腎臓)、MDCK(Madin Darbyイヌ腎臓)およびAGMK-37RC(アフリカミドリザル腎臓)細胞培地で効率よく複製することが予め実証されている。異なる細胞系のコンフルエントな単層は、予め暖めたPBS(pH7.4)中でウイルスに感染させた(moi=20pfu、正常in vivo感染より高い)。40分の吸着時間後、KMまたはSPを含む維持培地(MM)を細胞培養に加え、感染24、36、48、または72時間後、2,000×gで遠心分離して細胞残屑を除去した後、細胞上清上の3組の試料の赤血球凝集素(HA)滴定をすることによってウイルスタイターを定量した。
【0237】
Ulster/73によるLLC-MK2細胞感染24時間後にHAタイターについてのKMのおよびSP効果を図18に示す。50μg/ml以下で、KMおよびSPは、ウイルス増殖に対してほとんど、またはまったく効果がなかった。しかし、60μg/mlを超えると、KMペプチドはウイルス増殖と相互作用し80μg/mlで完全に妨害した。同様の効果が他のウイルスに対して、他の細胞系で、および他の時点でも見られた。したがって、KMは、用量に依存してウイルスの複製を抑制することができる。
【0238】
異なる組の実験では、KMまたはSPを含む新鮮MMを0時に細胞に加え、次いで24時間目に始めて72時間目に終了する12時間毎に同じペプチド/培地混合物で交換した。80μg/mlのKMは、試験した全時点でウイルス産生を完全に妨害することができた。SPを使用するウイルスタイターは、MMだけでの増殖により得られたタイターに類似した。
【0239】
インフルエンザウイルスの複製についてのKMの効果も血球吸着アッセイを使用し試験した。HAを複製中に合成しウイルスの出芽前に細胞膜中に挿入した。赤血球の感染細胞への血球吸着は、グリコシル化HAの組込みおよび細胞膜へのその正しい挿入と相関する。
【0240】
細胞培養は、感染させ、上記したように80μg/mlのKMまたはSPで処理し、48時間後に血球吸着アッセイを実施した。KMで処理した感染細胞でOD420nmの著しい減少が観察され、それらの細胞の原形質膜上のウイルスHA分子が著しく減少されることを証明した。KMもSPも赤血球(RBC)上のウイルス特異的受容体と相互作用しない。
【0241】
最後に、抗インフルエンザ活性についてのラミナリン(β-1,3-グルカン)の効果を定量した。先に示すように、ラミナリンは、KMの殺カンジダ活性と相互作用する。KMまたはSP(80μg/ml)をラミナリン(320μg/ml)と混合し、プレインキュベーションせずに、またはプレインキュベーション10分後、0時に混合物を感染細胞に加えた。KM/ラミナリンおよびSP/ラミナリンを使用し24時間後に同様のHAタイターを得た。これは、ラミナリンがKMの抗ウイルス活性を無効にしたことを示唆する。この効果は、プスツランでは見られなかった。
【0242】
HIV-1
HIV-1の複製についてのKMの効果をスクランブルペプチドSP対照と比較した。HIV-1は、外来性IL-2[73]の存在下、末梢血単核細胞(PBMC)培地で複製することができる。KM活性を試験するために、PBMC培養をHIV-1プロウイルス負荷が判明している急性感染相の患者から得た。
【0243】
50U/mlのrIL-2の存在下、48穴プレートに10%FCSを補充したRPMI1640培地での濃度106細胞/mlでPBMCを培養した。8日目に培地の半分を加えた。上清および細胞を回収し、それぞれHIV RNA含有量およびプロウイルス含有量を分析した。3〜4日毎に外来性rIL-2を加え、7日毎にKMペプチドまたはSPペプチドを加えた。HIV RNA分枝キット(b-DNA、Bayers(商標))を使用しHIV-1の発現を定量したのに対し、遺伝子検出用HIV-1gagEOAキット(ZeptoMetrix(商標))を使用しHIV-1プロウイルスの負荷を定量した。表現型の定量には、細胞をCD抗原を対象とするmAbsで染色した後、フローサイトメトリーによって分析した。
【0244】
PBMCを単離後、CD3Ag(CD4+=41%;CD8+=36%)の発現によって示されるように、HIV培養のPBMCの大部分はT-リンパ球であった。1次PBMC培養は全て、少なくとも20日間は依然として明らかに生存可能であった。培養7日後、外来性IL-2の存在下で全CD3+T細胞はCD25およびHLA-DR細胞表面活性化マーカーを発現した。
【0245】
1×および10×濃度のKMペプチド(1μgおよび10μg、それぞれ)の存在下、患者のcryo-保存PBMCから初代培養を確立した。対照として、同じ濃度のSPペプチドを使用した。他の対照培養(無処理細胞)には培地だけを与えた。
【0246】
PBMC培養の異なる時点でのHIV RNA産生の産生速度を図19に示す。培養は、培養5〜10日以内にウイルス複製の初期ピークを示し、次いでこのピークはHIV-1に誘発されたCD4+細胞損失と一致して減少した。これらのPBMC培地中でのHIV複製は、KM(<44%、平均値)の存在下でかなり低く、両濃度のKMはHIV RNA産生の濃度および産生速度について同様の効果を有した。
【0247】
SP処理細胞は、無処理対照と同じHIV RNAの産生濃度および産生速度を示した。
【0248】
KMおよびKM0のD-アミノ酸誘導体
同じアミノ酸残基であるが、D-ではなくL-高次構造(KM6およびKM7)のアミノ酸残基を使用しKM0およびKMを合成した。スクランブルペプチド対照SP0およびSPもD-アミノ酸を使用し合成した。
【0249】
KM6およびKM7それぞれは、CFUアッセイ(図12)で殺カンジダ活性を示した。活性は、L-アミノ酸ポリペプチドよりわずかに低かったが、このin vitro減少は、予想されたはずの半減期のin vivo増加を考慮していない。
【0250】
Glu→AlaおよびCys→Ser置換(配列番号33)を伴うD-アミノ酸ポリペプチドは有用である。
【0251】
毒性
KMの毒性をLLC-MK2アカゲザルのサル腎細胞を用いたin vitro培養によって評価した。10%ウシ胎仔血清、100U/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシンを補充したイーグル最少必須培地(MEM)中、5%CO2を含む加湿雰囲気中37℃で細胞を維持した。細胞を6-穴ディッシュにウェル当たり4×104細胞個で3通りプレートし24時間培養した。次いで、10%ウシ胎仔血清を含む培地中のペプチドの連続希釈(最終濃度0〜500μg/ml)を細胞に加え37℃で24時間培養した。続いて細胞をMTT(ウェル当たり50μg)で処理しさらに2時間培養した。ホルマザン染料をDMSOに可溶化した後、各ウェルの吸光度を550および620nmで測定した。ペプチドSPも試験した。
【0252】
細胞生存度をT/C%として示した。その場合Tは処理細胞の平均吸光度、およびCは対照の平均吸光度を表す(図20)。
【0253】
ペプチドは、500μg/mlでも毒性作用を示さなかった。
【0254】
H20内由来の当量ペプチド
H6およびH20配列の並びをCDRを太字にして以下に示す。
【0255】
【化1】

【0256】
H6ペプチドKM、KM0、KM1、KM2、KM4、およびKM5に対応するH20ペプチド配列を以下に示す。
【0257】
【表12】

【0258】
本発明は、例として記載されているにすぎず、依然として本発明の範囲および精神内でありながら修正を行うことができることは理解されよう。
(参考文献)


【図面の簡単な説明】
【0259】
【図1】ピキアアノマラキラートキシン(PaKT)、PaKT-中和化モノクローナル抗体(mAbKT4)、キラートキシン受容体(KTR)、ならびにPaKT様キラー抗体および誘導体キラーミモトープ(KM)の構造的および機能的関係を示す図である。
【図2】カンジダアルビカンスUP10Sに対して不適切なアイソタイプ適合mAb(全て100μg/ml用量)と比較した、MAbK10およびmAbK20のCFUアッセイによるin vitro殺菌活性を示す図である。
【図3】scFv抗体H6およびH20(100μg/ml用量)のin vitro殺菌活性を示す図である。
【図4】KM0対照およびIP対照(1mg/ml用量)と比較した、ペプチドKM2およびKM3のin vitro殺菌活性を示す図である。
【図5】KM4(0.5mg/ml用量)のin vitro殺菌活性を示す図である。
【図6】KM5(1mg/ml用量)のin vitro殺菌活性を示す図である。
【図7】KM1(1mg/ml用量)のin vitro殺菌活性を示す図である。
【図8】KMを膣内投与したラットでの膣カンジダ症のクリアランスを示す図である。
【図9】5 LD50のC.アルビカンスで攻撃し、KMで処理したSCIDマウスのカプランマイヤー生存曲線を示す図である。
【図10】C.ネオフォルマンスUP25に対するKM(25および10μg/ml用量)の殺菌活性を示す図である。
【図11】黄色ブドウ球菌a38に対するKM(500μg/mlおよび100μg/ml用量)の殺菌活性を示す図である。
【図12】20μg/ml用量でのKM0、KM6、KMおよびKM7のin vitro殺菌活性を示す図である。
【図13】H6scFv(配列番号2)内の特徴をを示す図である。
【図14】SPペプチド(14Cおよび14D)の作用と比較した、A.カステラーニ増殖に対するKMペプチド(14Aおよび14B)の作用を示す図である。増殖は、37℃(14Aおよび14C)または25℃(14Bおよび14D)であった。グラフは、ウェル当たり栄養体数を示す。
【図15】A.カステラーニ細胞生存度に対するKMペプチドの作用を示す図である。SPペプチドを100%として設定する。
【図16】A.カステラーニ増殖に対するK20mAbの作用を示す図である。
【図17】K10mAbの作用を示す図である。値は、ウェル当たり栄養体数である。培地のアメーバ増殖単独を×印で示す。抗体は、12.5μg/ml(◆)、25μg/ml(Δ)or50μg/ml(o)で使用した。
【図18】インフルエンザウイルス複製に対する、80μg/ml濃度までのKM(○)ペプチドおよびSP(×)ペプチドの作用を示す図である。値は、log2HAタイターである。
【図19】HIV-I複製に対するKMペプチド(○)およびSP(□)ペプチドの作用を示す図である。ペプチドを1μg/ml(閉鎖)、または10μg/ml(開放)で使用した。値は、15日間にわたる培養の複製数/mlである。
【図20A】細胞生存度をT/C%として示した図である。その場合Tは処理細胞の平均吸光度、およびCは対照の平均吸光度を表す。
【図20B】細胞生存度をT/C%として示した図である。その場合Tは処理細胞の平均吸光度、およびCは対照の平均吸光度を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗イディオタイプ抗体の可変領域のアミノ酸配列に由来する少なくともx個のアミノ酸の断片である、少なくとも1個のアミノ酸配列を含み、該抗イディオタイプ抗体は酵母キラートキシンに特異的な抗体のイディオタイプ抗原決定基を認識し、場合によっては前記x個のアミノ酸中のy個のアミノ酸は異なる(1個以上の)アミノ酸によって置換されており、xは少なくとも3であり、かつyは少なくとも1であるポリペプチド。
【請求項2】
少なくとも3個のアミノ酸からなる、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
多くても90個のアミノ酸からなる、請求項1または請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
8個から20個のアミノ酸からなる、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
10個のアミノ酸からなる、請求項4に記載のポリペプチド。
【請求項6】
xは少なくとも8である、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
xは10である、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記x個のアミノ酸中の少なくとも1個のアミノ酸が、異なる(1個以上の)アミノ酸によって置換されている、請求項1から7のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項9】
少なくともx個のアミノ酸の断片が、抗体中のCDR由来の少なくとも1個のアミノ酸を含むことが好ましい、請求項1から8のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項10】
L-アミノ酸および/またはD-アミノ酸を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項11】
配列AA1-AA2-AA3-AA4-AA5-AA6-AA7-AA8-AA9-AA10を含むポリペプチドであって、AA1...AA10のそれぞれは、独立にD-またはL-アミノ酸であり;AA1はE、A、またはGであり;AA2はK、A、またはGであり;AA3はV、A、またはGであり;AA4はT、A、またはGであり;AA5はM、A、またはGであり;AA6はT、A、またはGであり;AA7はC、S、A、またはGであり;AA8はS、A、またはGであり;AA9はAまたはGであり;かつAA10はS、A、またはGであるが;但しAA1、AA2、AA3、AA4、AA5、AA6、AA7、AA8、AA9、およびAA10のうちの4個以下がAであり;AA1、AA2、AA3、AA4、AA5、AA6、AA7、AA8、AA9およびAA10のうちの2個以下がGである、請求項1から10のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項12】
配列番号3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、20、23、24、25、26、27、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70および71のアミノ酸配列を含み、構成アミノ酸はD-および/またはL-立体配置である、請求項1から11のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項13】
配列番号3、4、23、27または33からなる、請求項12に記載のポリペプチド。
【請求項14】
配列番号4または配列番号33からなり、かつD-アミノ酸からなるポリペプチド。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載のポリペプチドと等立体配置である、殺菌性ペプチド模倣化合物。
【請求項16】
酵母キラートキシンに特異的な抗体のイディオタイプ抗原決定基を認識するが、但しK10ラットモノクローナル抗体ではない抗イディオタイプ抗体。
【請求項17】
請求項16に記載の抗体のイディオタイプ抗原決定基を認識する抗体。
【請求項18】
一本鎖Fv抗体である、請求項16または請求項17に記載の抗体。
【請求項19】
H6またはH20である、請求項18に記載の抗体。
【請求項20】
モノクローナル抗体である、請求項15または請求項16に記載の抗体。
【請求項21】
ヒト抗体またはヒト化抗体である、請求項20に記載の抗体。
【請求項22】
H6、H20、またはK20由来の1個以上のCDRを含む、請求項21に記載の抗体。
【請求項23】
トキシンが、P.アノマラ(anomala)由来のキラートキシンである、請求項16から22のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項24】
請求項16から23のいずれか一項に記載の抗体の可変領域のアミノ酸配列に由来する少なくともx個のアミノ酸の断片である、少なくとも1個のアミノ酸配列を含み、場合によっては前記x個のアミノ酸中のy個のアミノ酸が異なるアミノ酸によって置換されており、xは少なくとも3であり、かつyは少なくとも1であるポリペプチド。
【請求項25】
請求項1から14および24のいずれか一項に記載のポリペプチド、ならびに/または請求項16から23のいずれか一項に記載の抗体をコードする核酸。
【請求項26】
抗真菌活性および/または抗菌活性を有する、請求項16から23のいずれか一項に記載の抗体、または請求項1から14のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項27】
少なくとも1個のペプチド結合の化学合成を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載のポリペプチドの調製方法。
【請求項28】
ポリペプチドを、完全に化学合成する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
さらに、ポリペプチドを薬剤組成物に製剤する工程を含む、請求項27または請求項28に記載の方法。
【請求項30】
(a)請求項1から26のいずれか一項に記載の抗体、ポリペプチド、ペプチド模倣体、または核酸と(b)薬剤担体を含む薬剤組成物。
【請求項31】
滅菌されており、発熱物質を含まず、pH6からpH8で緩衝化されている、請求項30に記載の薬剤組成物。
【請求項32】
薬剤として使用するための請求項1から26のいずれか一項に記載の抗体、ポリペプチド、ペプチド模倣体、または核酸。
【請求項33】
患者に請求項30に記載の薬剤組成物を投与することを含む、微生物および/またはウイルス感染患者の治療方法。
【請求項34】
微生物感染および/またはウイルス感染治療用薬剤の製造における請求項1から26のいずれか一項に記載の抗体、ポリペプチド、ペプチド模倣体、または核酸の使用。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2006−506959(P2006−506959A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−503507(P2004−503507)
【出願日】平成15年5月9日(2003.5.9)
【国際出願番号】PCT/IB2003/002348
【国際公開番号】WO2003/095493
【国際公開日】平成15年11月20日(2003.11.20)
【出願人】(504414721)ユニバーシタ・デグリ・スタディ・ディ・シエナ (4)
【出願人】(504414732)
【出願人】(504414743)
【Fターム(参考)】