説明

抗菌活性を有する新規分類のテルペン由来化合物、それを含む組成物およびその使用

本願は、テルペンに由来し、抗菌活性を有し、式(I)または(II)で表される新規分類の化合物に関する:
【化1】


式中、AはNR1、O、S、CR2R3またはR-(CH2)n-R’から選択され、RおよびR’は、相互に独立して、NH、O、SまたはCH2であり、R1、R2およびR3は置換基であり、nは1以上、特に2である。
本発明は、個々に使用される式(I)または式(II)の両方の化合物、該2つの化合物の混合物、および主に治療のための、少なくとも1の前記化合物もしくは前記混合物を含んでなる組成物に関する。特定の実施形態によると、個々に使用される(I)または(II)の化合物、両化合物の混合物、および本発明の組成物は、難しいCに関連する消化性の感染症の治療において使用される。ある特定の実施形態において、式(I)の化合物は、細菌により産生される化合物であるマルガウシンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、以下の式(I)または(II)で表され、テルペンに由来し、抗菌活性を有する新規分類の化合物に関する:
【化1】

【0002】
式中において、Aは、NR1、O、S、CR2R3およびR-(CH2)n-R’から選択され、RおよびR’は、相互に独立して、NH、O、SまたはCH2であり、R1、R2、R3は置換基であり、nは1以上であり、特に2である。
【背景技術】
【0003】
医薬の分野において、抗生物質によりもたらされる進歩には疑問を投げかける。そのような抗生物質に耐性を有する病原菌の存在および増殖があるためである。最も抗生物質を使用する国の1つであるフランスでは、多くの抗生物質耐性細菌が確認されてきた。これら2つの事象の間の原因と結果の関係は、明らかに見えるが、厳密には示されていない。最も重要な例には、最も耐性の細菌の1つであるブドウ球菌(例えばメチリシン耐性黄色ブドウ球菌)ならびにペニシリン耐性肺炎連鎖球菌、バンコマイシン耐性腸球菌、多剤耐性サルモネラ菌および多耐性の結核桿菌(tuberculosis bacillae)が含まれる。
【0004】
さらに、腸内フローラにおける不均衡は、感染と闘うための抗菌治療(antibiotherapy)に続いて生じ得る。そのような不均衡自体は、消化性の感染(下痢)、特にクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)に関連する消化性の感染(ICDまたはクロストリジウム・ディフィシルに関連する疾患に対するCDAD)を引き起こす。クロストリジウム・ディフィシルは、成人における院内感染の下痢の主要な原因であるグラム陽性嫌気性桿菌であり(抗生物質投与後の下痢の場合には約15%〜25%、偽膜性大腸炎の場合には95%以上)(Hurley et al. Arch. Intern. Med 2002; 162: 2177-84)、自然に、臨床で使用される抗生物質のほとんどに対して部分的に耐性である。メトロニダゾールまたはバンコマイシンに基づく経口的な治療は、最初に使用される。患者の再発の25%の場合、治療は長期にわたり、費用がかかる。ちょうどアメリカ合衆国において、抗菌治療の結果として生じる下痢の症例は、1987年〜1998年の間に、10000患者/日当り12.2例、または1000の入院患者当り7〜8例である(http://www.cdc.gov/ncidod/dhqp/pdf/infDis/Cdiff_CCJM02_06.pdf)。フランスおよびヨーロッパでは、最も病原性の高い株がこれらの領域に広がっているため、クロストリジウム・ディフィシルによるこの感染にますます敏感になっている。高い病原性の株により引き起こされるクロストリジウム・ディフィシルの流行は、2006年3月にフランスで起こった(情報源:Institut Francais de Veille Sanitaire; Euro Surveill. 2006 11: E060914.1)。この型の感染症に感染した人々は、0.6%〜1%のケースで死亡した。これらの数値が上昇し、アメリカ合衆国は、患者当り3669〜7234ドルのオーダーのコストを見積もった。
【0005】
さらに、最近の相対的に少数の医用材料は、抗菌剤で保護されている。抗菌剤を含浸させたカテーテルは、最もデータが存在する医療装置である。本質的に、分子の2つの組み合わせがある:クロルヘキシジンとスルファジアジン銀またはミノサイクリンとリファンピシン。初めの2つのインビボでの効力は、議論の余地があり、時間的に制限がある(<10日)と報告されている。さらに、そのような分子で保護されたカテーテルの使用に関連したアナフィラキシーの例が述べられている(Terazawa et al. Anesthesiology, 1998 Nov; 89(5): 1296-8; Kluger Anaesth Intensive Care, 2003 Dec; 31(6): 697-8; Stephens et al. Br J Anaesth, 2001 Aug; 87(2):306-8)。カテーテルの外面のみならず内面(またはルーメン)にもクロルヘキシジンおよびスルファジアジン銀を含浸させた新世代のカテーテルは、コロニー形成を減少させることが示されている(Rupp ME et al, Ann Intern Med. 2005 Oct 18; 143(8): 570-80)。しかしながら、研究では、敗血症の場合における有意な減少を示すことができなかった。ミノサイクリンおよびリファンピシンで処理されたカテーテルは、より効果的であるように思われるが、予防の目的のための繰り返しの使用により耐性菌の出現を必ず引き起こし、結果として治療段階において使用できなくなるというリスクにより、その使用は制限される。この最後の点は、リファンピシンが人工補綴物の感染症において有効である稀な全身性の抗生物質であるため、なおいっそおう心配である。
【0006】
1億5千万より多い静脈カテーテルが、アメリカ合衆国の病院およびクリニックにおいて毎年挿入されている、すなわち、500万の中心静脈カテーテルである。この同じ国において、80000のステントが毎年使用されている。2004年のカテーテルおよびステントに対する市場は、130億1千万ドルであり、1年当り12.3%増加している(http://www.marketresearch.com)。この進歩は、薬剤の7%より早い(http://www.interphanna.ch/fr/1926.asp)。2009年には、市場は約230億ドルに達するであろうと推定されている。リスクを低下させることができる医療機器に対する大きな要求があることにも留意するべきである。再狭窄のリスクを低下させるタクロリムスで処理されたステントの使用は、通常のカテーテルよりも早く増加している。感染を制限する分子で処理されたステントは、好機を見出されるべきである。静脈移植の市場は、1年当り5億ドルのオーダーである(北アメリカを除く)(http://www.alpha-research.com/coinoanv.html)。これらのデータは、最近の調査においてまとめられている(Raad et al, Arch Intern Med 2002, 162, 871-879):
・リファンピシンは、単独で、またはミノサイクリンと組み合わせて、医療機器の処理のためにしばしば使用される。リファンピシンは、増殖の遅い細菌、特にカテーテル、ステントおよび静脈移植の感染症の最も頻繁な原因であるコアグラーゼ陰性ブドウ球菌において活性を有する珍しい抗菌剤の1つであるため、これら2つの分子の組み合わせは効果的な方法である。多施設治験において、それらは感染のリスクを80%低下させ、それらの使用は、850のカテーテル、中心静脈カテーテルを使用することにより、病院としては500000ドルの節約になるはずだと見積もっている。しかしながら、そのようなカテーテルの使用は、予防治療と関連して、リファンピシン耐性菌を選択することに対する懸念により遅れている;
・広範な抗菌スペクトルを有する銀塩も、医療機器の処理のために使用されている。この処理については、種々の研究において述べられており、10日未満の挿入で、カテーテルのコロニー形成を防止することにおいて、効果がないかまたは相対的に効果があるとされている。それらは、より長い期間挿入されるカテーテルにおいて効力がない。コラーゲンは、銀塩をキレートし、それらの活性を阻害するように思われる。さらに、それらは過敏反応の原因でもある;
・クロルヘキシジン−スルファジアジン銀の組み合わせ:この組み合わせを用いたカテーテルの処理は、非常に効果的であるとは思われず、それらの長期間の必要性については熱く議論されている。
【発明の概要】
【0007】
本願は、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、炭疽菌およびクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)のような細菌に対して、抗菌活性、特に広範なグラム陽性スペクトルを伴う抗菌活性を有する新規分類の化合物に関する。この分類の化合物は、低い分子量を有し、インビトロおよびインビボで毒性がなく、既知の耐性と交差反応しない。好ましくは、この分類の抗菌化合物には、細菌株に由来する培養上清から単離され得るマルガウシンが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、マルガウシンの化学式である。
【発明の詳細な説明】
【0009】
本発明は、次式(I)または(II)の化合物に関する:
【化2】

【0010】
式中、AはNR1、O、S、CR2R3およびR-(CH2)n-R’から選択され、RおよびR’は、相互に独立して、NH、O、SまたはCH2であり、R1、R2、およびR3は置換基であり、nは1以上であり、特に2である。
【0011】
本明細書に記載されている式(I)および(II)は、以下の位置に置換基を有する式を包含する:
・Aを構成する原子上(例えば、R1、R2およびR3);および/または
・位置1および/または3および/または5(最後の位置)における炭素上(例えば、X1、X’1、X2、X3またはX’3)。
【化3】

【0012】
本発明のある特定の実施形態において、Aは、NH、O、S、CH2およびR-(CH2)n-R’から選択され、RおよびR’は、相互に独立して、NH、O、SまたはCH2であり、n=2である。
ある特定の実施形態において、上記式において、1位の炭素はCH2であり、3位の炭素はCHであり、最後の位置の炭素はCH3である。
【0013】
本発明は、次式(I)または(II)を有する化合物に関する:
【化4】

【0014】
式中、Aは、NH、O、S、CH2およびR-(CH2)2-R’から選択され、RおよびR’は、相互に独立して、NH、O、SまたはCH2である。
【0015】
ある特定の実施形態において、本発明は、それ自体、Schank et al (Chemistry of free cyclic vicinal tricarbonyl compounds (“1,2,3-triones”). Part 2. Redox reactions of 1 ,2,3-triones with ene-1 ,2-diols (“reductones”), 2-alkoxy-en-1-ols, ene-1,2-diamines, and related species. Helvetica Chimica Acta (2002), 85(5), 1295-1326) に記載されている方法により化学的に合成される混合物を想定していない、すなわち、本発明は、次式(III)および(IV)の化合物の混合物には関しない:
【化5】

【0016】
1位の炭素はCH2であり、3位の炭素はCHであり、最後の位置の炭素はCH3であり、Schank et al.により述べられた条件下で合成される。対照的に、本発明は、以下の実施例に示す方法を用いて細菌およびその混合物により産生される化合物に関し、生成の態様に関わらず(特に、合成または微生物による)、前記化合物または本願明細書に記載されている混合物の組成物または適用における前記化合物および混合物、特にマルガウシンの使用に関する。
【0017】
さらに、本発明は、式(I)または(II)の化合物に関する:
【化6】

【0018】
式中、Aは、NR1、O、S、CR2R3およびR-(CH2)n-R’から選択され、RおよびR’は、相互に独立して、N、O、SまたはCであり、R1、R2、およびR3は置換基であり、nは1以上であり、特に2である。好ましくは、Aは、NH、O、S、CH2およびR-(CH2)2-R’から選択され、RおよびR’は、相互に独立して、NH、O、SまたはCH2である。
【0019】
Aを構成する原子上の置換基の存在または非存在ならびに1および/または3および/または5位における炭素上の置換基の存在または非存在に関する特定の形態は、独立して結合されてよい。
【0020】
「本発明の化合物」という表現は、式(I)の化合物および式(II)の化合物の両方を包含し、すなわち、調製方法に関わらず、個々に扱われる。ある特定の実施形態において、本発明は、本願明細書中に記載されている式(I)の化合物、特に微生物により産生される式(I)の化合物、およびその使用に関する。
【0021】
本発明は、Schankらによる方法を用いた化学合成により得られる混合物を除き、化合物(I)および(II)の比率に関わらず、これら2つの異性化合物の混合物にも関する。該混合物は、形態(I)および(II)のそれぞれの抗菌活性が均等でなくても、これら2つの形態を含んでよい。ある特定の実施形態において、前記混合物は、形態(I)および(II)を含んでなり、任意に、1つの形態のみが抗菌活性を有する。本発明の混合物の特定の実施形態において、形態(I)は抗菌活性を有する。
【0022】
本発明は、式(I)または(II)の化合物を調製するための方法、特に、(a)細菌株を培養することと、(b)特に精製により、培養上清から式(I)または(II)の化合物を回収することを含んでなるマルガウシンの調製方法にも関する。
【0023】
特定の実施形態において、本発明の方法に関して使用される細菌株は、JPL84またはJPL86株であり、産生する化合物は、式(I)の化合物である。
【0024】
「培養する」という用語は、細菌株、特にJPL84株、または本明細書において定義されているような誘導株を、その生存または増殖を可能にする培養条件下に維持することを意味する。ある特定の実施形態において、培養は、式(I)もしくは(II)またはそれらの混合物の産生を伴うか、またはその産生を助長する。「培養する」という用語は、同じ意味の「発酵する」と互換可能に使用されてよい。
【0025】
いずれの液体栄養培地も、与えられた細菌株、JPL84または誘導株を培養するのに適し、前記培地には、炭素源、窒素源および無機塩が含まれる。1つの実施形態において、酵母抽出物に基づく寒天培地であるCYE培地(casitone酵母抽出物)が好ましく、その組成は、例えば、ペプトン10 g/l、酵母抽出物1 g/lおよびCaCl2 1 g/lである。
【0026】
当業者に既知の他の培養条件は、修飾されてよく、例えば、温度、培養の撹拌の存在または非存在、および培養の曝気の存在または非存在である。ある特定の実施形態において、細菌株、特にJPL84株または誘導株は、0℃〜45℃の範囲、好ましくは20〜37℃の範囲、より好ましくは28℃の温度で、撹拌および曝気を伴って培養される(好気培養)。
【0027】
上記条件下において、好ましい培養期間は、望ましい抗生剤の産生が最適化または最大化される時間に依存して、この培養期間は、培養が開始される時間に関連して計算される。それ故、前記培養期間は約15〜24時間であり、好ましくは18〜20時間の範囲である。
【0028】
「精製」という用語は、培養上清の他の成分から望ましい抗生剤を単離することができるいずれかの技術を意味する。非限定的な実施例によると、溶媒抽出、沈殿、逆相クロマトグラフィー(HPLC)、イオン交換クロマトグラフィー等、またはこれらの技術の2以上の組み合わせが利用されてよい。
【0029】
本発明の方法は、培養ステップ(a)と精製ステップ(b)との間に任意のステップを含んでもよく、例えば遠心分離により、培養上清から細胞または他の細胞性細片を分離することからなる。
【0030】
任意に、精製された抗生剤は、その後、有機酸または無機酸との標準反応により、薬学的に許容可能な無毒の塩を含む塩(塩形態)に変換されてよい。これらの塩は、特にAとNが等しい場合に得られる。
【0031】
さらに、精製された抗生剤またはその塩は、凍結乾燥により、無水形態で得られてよい。
【0032】
本発明は、本明細書に記載されている細菌を培養することを含む方法により得られる、上述した式(I)または(II)の化合物またはそれらの混合物も想定している。
【0033】
上述した式(I)および(II)の異性体の混合物は、例えば、Schankらによる出版物(Chemistry of free cyclic vicinal tricarbonyl compounds (“1 ,2,3-triones”). Part 2. Redox reactions of 1,2,3-triones with ene-1,2-diols (“reductones”), 2-alkoxy-en-1-ols, ene-1,2-diamines, and related species. Helvetica Chimica Acta (2002), 85(5), 1295-1326)において開示されているような化学的合成により得ることもできる。この合成により、結果として混合物が生成され、そこから式(I)または(II)の化合物の1つが単離される。
【0034】
本発明の化合物が上述したような細菌の培養方法により得られる場合、微量のその細菌性の産物を保存し、そのそれぞれのC12/C13比に違いが見られることにより、化学合成により産生された同じ化合物と区別することができる。化学的に合成された式(I)の化合物または式(II)の化合物は、細菌的な方法により得られた式(I)の化合物または式(II)の化合物とは異なったC12/C13比を有し、特に、本明細書において挙げられている細菌から得られる式(I)の化合物または式(II)の化合物とは異なる。特定の実施形態において、化学的に合成されたマルガウシンは、細菌的な方法により得られたマルガウシンとは異なるC12/C13比を有し、特に、本明細書において挙げられている細菌から得られるマルガウシンとは異なる。
【0035】
少なくとも1の上述した式(I)または(II)の化合物を含んでなる組成物は、Schankらにより公開された方法を用いた化学合成により得られた場合の式(I)および(II)の化合物の混合物を除いて、本発明の範囲に含まれる。
【0036】
特定の実施形態において、本発明による組成物は、上述した細菌を用いた産生方法により得られる式(I)または(II)の少なくとも1の化合物、特に、株JPL84から得られる少なくとも1の式(I)の化合物を含んでなる。
【0037】
さらに、本発明は、少なくとも1のトランスポーターおよび/または媒体、ならびに式(I)または(II)の化合物を含んでなる組成物に関する:
【化7】

【0038】
式中、Aは、NR1、O、S、CR2R3およびR-(CH2)n-R’から選択され、RおよびR’は、相互に独立して、NH、O、SまたはCH2であり、R1、R2、およびR3は置換基であり、nは1以上であり、特に2である。特定の実施形態において、前記組成物は、少なくとも1の媒体および少なくとも式(I)の化合物、特にマルガウシン(式IIIの化合物)を含んでなる。この組成物において、前記化合物は、化学合成または細菌の培養を含んでなる方法により得られる。
【0039】
「媒体」と言う用語は、抗菌剤を組成物中に配合することを可能にするいずれかの物質を意味する。1つの好ましい実施形態において、前記媒体は、生理学的に許容可能な物質または物質の組み合わせであり、生物(例えば、ヒトでない哺乳動物、好ましくはヒト)と接触する組成物の使用に適しており、好ましくは毒性がない。そのような生理学的に許容可能な媒体の例は、水、生理食塩水、水と混和する溶媒、糖、結合剤、賦形剤、色素、植物油もしくは鉱油、水溶性ポリマー、表面活性剤、増粘剤もしくはゲル化剤、化粧用の薬剤、保存剤、アルカリ化剤もしくは酸化剤等である。本発明の特定の組成物は、医薬組成物であり、すなわち、それらは、治療または予防の目的で、生物に投与または適用するために構築される。これらの医薬組成物は、局所または全身の投与、特に注射による投与のための薬学的に許容可能な媒体を含み、摂取により生物に接触して適用され、固体の形態、ゲルの形態、液体の形態またはエアロゾルの形態で使用される。あるいは、本発明の組成物は、上述した生物と接触する物質に適用される。特定の実施形態において、前記組成物は、薬学的に許容可能な媒体およびマルガウシンを含んでなる。
【0040】
本発明は、本明細書で定義されている少なくとも1の式(I)または(II)の化合物を、適切な場合には、本明細書で定義されているトランスポーターおよび/または媒体と共に含んでなり、さらに、異なり、微生物に対して活性を有する少なくとも1の第2の分子を含んでなる組成物にも関する。「活性分子」という表現は、化学的または生物学的な化合物、特に低分子量の化合物、例えば、微生物の活性を破壊し、中和し、または増殖を阻害する能力を有するペプチドを意味する。この活性分子は、例えば、抗生剤または殺菌剤であってよい。前記活性分子は、好ましくは、グラム陰性菌に対して活性を有する化合物および/または殺真菌性の化合物および/または以下の表3に挙げる化合物または以下の化合物:銀塩、ミノサイクリン、クロルヘキシジン、スルファジアジン、リファンピシン等から選択される。
【0041】
特定の実施形態において、本発明の化合物が単独もしくは混合物として、または本発明の組成物がクロストリジウム・ディフィシルに関する消化性の感染症を治療するために使用される場合、それを、例えば表6に挙げるような他の抗生剤と組み合わせて投与する必要はない。ICDの治療において、本発明の化合物は、いずれにしても腸内フローラを乱すことなく、クロストリジウム・ディフィシルに対して殺菌活性を有し;他の抗生剤と共に投与することは、腸内フローラを保存することに関して、本発明の化合物の驚くべき効果を相殺し得る。 もう1つの実施形態において、本発明の組成物は、少なくとも2の上述した式(I)または(II)の化合物を含んでなるが、それらの構造、すなわちそれらの原子組成または種々の置換基の位置は相互に異なる。例として、前記組成物は、元素Aの性質、元素A上に位置する置換基および/または1位、3位および/または5位の置換基において異なる少なくとも2の式(I)の化合物を含んでなる。本発明の他の組成物は、元素Aの性質、元素A上に位置する置換基および/または1位、3位および/または5位の置換基において異なる、少なくとも2の式(II)の化合物を含んでなる。
【0042】
本発明は、少なくとも1の式(I)の化合物および式(II)の化合物を含んでなる組成物も想定しており、ここで、Aは前記2つの化合物で同一であり、NH、S、CH2およびR-(CH2)2-R’から選択され、RおよびR’は、相互に独立して、NH、O、SまたはCH2である、すなわち、二重結合の位置に関して同じ化合物の2つの異性体を含んでなる。
【0043】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、媒体またはトランスポーターも含んでなる。
【0044】
本発明は、式(I)または(II)の化合物を、個々に用いて、または上述した混合物もしくは組成物として、薬剤として、特に抗生剤(微生物を殺し、または増殖を阻害する)および/または殺菌剤(細菌を殺し、または増殖を阻害する)として使用することにも関する。
【0045】
特定の実施形態において、個々に用いられる、または本発明の混合物もしくは組成物として使用される式(I)または(II)の化合物は、グラム陽性菌(グラム染色)または脂質を含むいくつかの層で構成される薄い壁を有する細菌に対して殺菌活性を有する、すなわち、前記化合物は、前記細菌を殺し、またはそれらの増殖を阻害する。
【0046】
特定の実施形態において、個々に用いられる、または本発明の混合物または組成物として使用される式(I)または(II)の化合物は、クロストリジウム属の細菌により引き起こされる感染を治療するために使用される。さらに、個々に用いられる、または本発明の混合物または組成物として使用される式(I)または(II)の化合物は、クロストリジウム・ディフィシルにより引き起こされる感染症、好ましくはクロストリジウム・ディフィシルに関連する消化性の感染症(ICD)、例えば、単純な下痢、抗生物質投与後の下痢、または偽膜性大腸炎(PMC)を治療するために使用される。好ましくは、薬剤としての使用は、式(I)または式(III)の化合物に関する。
【0047】
本発明は、本発明の化合物、混合物または組成物に関し、特に、薬剤、好ましくは抗菌剤もしくは殺菌剤として使用するための、マルガウシンまたはそれを含んでなる組成物に関する。
【0048】
その治療における使用または治療方法において(少なくとも1の式(I)または(II)の化合物を、個々に、または本発明の混合物もしくは組成物として生物に投与することを含む)、前記化合物、それを含んでなる混合物もしくは組成物は、固体の形態(カシェ剤、散剤、小ゲル(gelule)、ピル、坐剤、急速放出錠剤、胃耐性錠剤、遅延放出錠剤)、ゼラチン状の形態(ゲル、ポマード、クリーム、小卵(ovule))、液体形態(シロップ、注射用液、目薬)またはエアロゾル形態(スプレー、蒸気、ガス)であってよい。その薬剤の形態に依存して、本発明の化合物、混合物または組成物は、経口で、経口腔粘膜で、鼻に、眼に、耳に(耳の中に)、膣に、直腸に、非経口的に(静脈内、筋肉内、もしくは皮下)、経皮的に(transcutaneously, transdermallyもしくはpercutaneously)または皮膚性に投与されてよい。個々に、または本発明の混合物もしくは組成物として使用される式(I)または(II)の化合物の殺菌活性を腸内で促進することができる1つの投与形態または薬剤形態は、本発明の特定の実施形態を構成する。
【0049】
投与量は、他の抗生剤または抗生剤の組み合わせについて通常使用される量である。指標によると、患者の年齢または体重、感染症の重篤度または段階、1日の投与回数または投与形態に依存して、30 mg/kg/日〜100 mg/kg/日の量で投与されてよく;主に成人においては、1g/日〜10g/日が通常である。
【0050】
本発明は、細菌感染、特に今日まで投与されてきた抗生剤に耐性のある疾患の治療または予防治療において、細菌感染との闘いにおいて使用するための組成物の製造のために、個々に、または混合物として、式(I)または(II)の化合物を使用することにも関する。
【0051】
「耐性疾患」という表現は、その由来が完全に、または部分的に細菌性であるいずれかの感染症を意味する。特に、本明細書において使用される「耐性疾患」という表現は、単独で使用されても、本発明の他の化合物もしくは他の活性分子と組み合わせて使用されても、少なくとも1の原因病原体が本発明の抗菌化合物に感受性である感染を包含する。引用される例は、多耐性の疾患(いくつかの分類の抗生剤に耐性)またはグラム陽性菌により引き起こされる全ての感染症である。
【0052】
「治療」という用語は、少なくとも1の本発明の化合物または本発明の組成物を用いて得られる治療的な効果(微生物の死滅)、ならびに患者において(微生物の存在に関連して)見られる症状の改善または患者の状態の改善の両方を包含する。「治療」という用語は、感染の結果として生じる症状のような、1次的または2次的な感染点に適用可能である。
【0053】
本発明の化合物、混合物および組成物は、特に院内感染の治療において使用される。
【0054】
「予防」という用語は、予防の目的で、少なくとも1の本発明の化合物、混合物または組成物を使用することを意味し、すなわち、感染もしくは感染の疑いの後の症状の発現を予防すること、微生物またはその帰結による感染症、特に、細菌、特にグラム陽性菌による感染、特にクロストリジウム・ディフィシルに関連する消化性の感染症のようなクロストリジウム属の細菌による感染症を予防することに向けられている。
【0055】
本発明の化合物、混合物または組成物は、上述した薬剤形態および投与形態を使用する治療および予防において使用される。特定の実施形態において、使用される化合物は、マルガウシンまたは少なくともマルガウシンを含んでなる本明細書において定義されているいずれかの組成物である。
【0056】
本発明は、化粧品、食品または家畜への適用(家畜、家禽、ブタ、ヒツジ、ウシもしくはペット)における本発明の化合物、混合物または組成物の使用にも関する。
【0057】
単独で、または本発明の混合物もしくは組成物として使用される本発明の式(I)または(II)の化合物は、特に、クロストリジウム属の細菌、特に毒素産生性の形態、例えば、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、破傷風菌(Clostridium tetani)、ノーヴィ菌(Clostridium novyi)、ヒストリチクス菌(Clostridium histolyticum)、酪酸菌(Clostridium butyricum)、悪性水腫菌(Clostridium septicum)、クロストリジウム・ソルデリー(Clostridium sordellii)、クロストリジウム・ラモーザム(Clostridium ramosum)、クロストリジウム・ビフェルメンタンス(Clostridium bifermentans)、クロストリジウム・パラパーフリンジェンス(Clostridium paraperfringens)、死体菌(Clostridium cadaveris)、クロストリジウム・クロストリジフォルメ(Clostridium clostridiiforme)、クロストリジウム・イノキュウム(Clostridium innocuum)、クロストリジウム・リモーザム(Clostridium limosum)、クロストリジウム・パラプトリフィカム(Clostridium paraputrificum)、スポロゲネス菌(Clostridium sporogenes)、クロストリジウム・サブテルミナレ(Clostridium subterminale)、クロストリジウム・テルチウム(Clostridium tertium)、クロストリジウム・バラティ(Clostridium baratii)、クロストリジウム・アルゲンチネンス(Clostridium argentinense)、ショーボー菌(Clostridium chauvoei)、溶血クロストリジウム(Clostridium haemolyticum)またはクロストリジウム spp.に対して有効である。クロストリジウム・ディフィシル菌に関して、本発明は、伝染性の株PCR-リボタイプ027のようなクロストリジウム・ディフィシルの毒素産生性形態により引き起こされる感染症の治療も想定している。一方で、クロストリジウム・ディフィシル(0.05μg/mlのオーダーのMIC)のようなクロストリジウム属の細菌における特に効果的な作用のため、他方では、腸内フローラの他の細菌と比較してクロストリジウム属の細菌に対するより優れた活性(30倍以上の活性)のため、単独で、または本発明の混合物もしくは組成物として使用される本発明の式(I)または(II)の化合物、および特にマルガウシン(III)は、種々の腸内細菌集団(微生物フローラ)間の平衡を修復することにおいて有用である。本発明は、単独で、または本発明の混合物もしくは組成物として使用される本発明の式(I)または(II)の化合物、特にマルガウシン(III)を、クロストリジウム属の細菌による感染症、特にICDのようなクロストリジウム・ディフィシルによる感染症を治療するために使用することも想定している。1つの実施形態において、個々に、または本発明の混合物もしくは組成物として使用される本発明の式(I)または(II)の化合物は、IDSの継続的な抗菌治療に使用される。好ましい実施形態において、この化合物は、マルガウシンまたはマルガウシンを含んでなる組成物である(式(III)の化合物)。
【0058】
本発明において特に想定される治療方法および予防用法は、クロストリジウム・ディフィシルにより引き起こされる感染症に罹患している患者、特に、(a)ICDに罹患している患者;(b)重篤なICDに罹患している患者、(c)ICDの再発に罹患している患者を対象とし、前記再発は、クロストリジウム・ディフィシルの株が前の発症のものと同じであっても異なっても、前の発症から8週以内に現れるICDの新しい発症により特徴付けられる。前記治療方法および予防方法は、院内のICD(入院患者または4週間未満前に病院を去った非入院患者)およびコミューンのICDの両方に対して適用可能である。特に、これらの方法は、病院、老人ホームもしくは医療−社会(medico-social)施設の患者、ICDに関するリスクファクターを有する全ての患者、すなわち抗菌治療を受けている患者(90%より多いケース)、65歳以上の患者、重篤なサブジェイセント(subjacent)疾患の患者、鼻腹胃挿管を受けた患者、抗潰瘍剤を受けた患者および長期入院の患者に向けられている。
【0059】
本発明は、医療機器(または医用材料)を含む装置の含浸のための、個々に、または上述した混合物もしくは組成物として使用される式(I)または(II)の化合物の使用にも関する。「含浸」という用語は、少なくとも1の本発明の化合物、混合物または組成物の適用を意味し、装置にそれを浸透させる(深くまたは表面に)ことを意味する。本発明は、本発明の化合物(個々に、混合物または組成物として)を浸透させた装置にも関する。特定の実施形態において、前記装置は医療装置であり、すなわち医学的な使用のための装置であり、その非限定的な例は、カテーテル、包帯、骨接合剤、大脳シャント、心臓弁等である。医用のための好ましい装置は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロリド、ポリカーボネート、ポリウレタン、アクリレートもしくはメタクリレートまたはポリアミド、または製織により得られる材料のような重合材料から作られる装置である。ある特定の実施形態において、これらの装置は生体適合性である。
【0060】
もう1つの実施形態において、前記含浸させた装置は、包帯のように、家庭的または工業的な使用のための布である。
【0061】
本発明は、少なくとも1の本発明の式(I)または(II)の化合物を産生する能力を有する細菌株にも関する。特定の実施形態において、前記株は、以下のセクションA(方法および装置)で開示されている発酵条件下で本発明の化合物を産生する。これらの株は、個々に、または混合物として、式(I)または(II)の化合物、特にマルガウシンを産生し得る。例えば、そのような株は、受付番号CNCM I-3669で9月15日にTreaty of Budapest at the C.N.C.M. (Collection Nationale de Cultures de Microorganismes; Institut Pasteur; 25, rue du Docteur Roux; 75724 Paris Cedex 15; France)に寄託されたJPL84である。1つの実施形態において、先行する実施形態と組み合わせて、または組み合わせないで、前記細菌株はバチルス株である。
【0062】
本発明は、上述した株に由来する株、特にJPL84株またはJPL86株に由来するいずれかの株にも関し、それらは、式(I)または(II)の化合物を産生する能力を有し、特に、マルガウシンを産生する能力を有する。「誘導体」という用語は、天然の状態においては見出されず、遺伝子型を修飾することにより天然株から得られる株、特に、本発明の式(I)または(II)の化合物を産生し続ける組み換え(組み換え株)により得られる株を意味する。特定の実施形態において、前記組み換え株は、天然株よりも本発明の化合物を多量に産生する。遺伝の修飾は、特に、酵素の修飾および本発明の化合物の産生および分泌に関する他のタンパク質からなる。
【0063】
本発明は、生物学的なサンプルまたは表面の細菌プロフィールを調節するための方法にも関し、該方法は、細菌プロフィールを調節することができる条件下で、前記生物学的なサンプルまたは前記表面を、個々に、または混合物もしくは組成物として使用される少なくとも1の式(I)または(II)の化合物と接触させることを含んでなり;前記方法は、調節を確立するための第2のステップを含んでもよい。
【0064】
本発明に関して、「細菌プロフィールを調節する」という表現は、本発明の化合物または組成物との接触の前後の間の、生物学的なサンプルまたは表面に存在する種々の細菌株の比を修飾することを意味する。
【0065】
本発明の方法は、医療サービス(例えば病院の環境)における対象物の表面のような種々の対象物の表面を処理するのに適している。
【0066】
前記生物学的なサンプルまたは表面が本発明の化合物に対して感受性である細菌のみを含む場合、または生物学的なサンプルまたは表面に含まれる株が本発明の組成物に対して感受性である場合、「細菌プロフィールを調節する」という表現は、細菌活性を中和すること、特に全ての細菌を死滅させること、すなわち細菌プロフィールを除去することを包含する。
【0067】
対照的に、サンプルまたは表面が本発明の化合物または組成物に対して耐性またはほとんど感受性のない株および同じ化合物に対して感受性の株を含んでなる場合、「細菌プロフィールを調節する」という表現は、本発明の化合物に耐性の株とより感受性の株との間の比の調節を同期させることを意味する。例えば、本発明の化合物の添加は、グラム陽性菌を減少させ、グラム陽性/グラム陰性の株の比を調節する。
【実施例】
【0068】
方法および装置
JPL84株
次式(III)の化合物であるマルガウシンは、フランスのAgout regionにおける排泄物から2005年に単離された株、JPL84株により産生される:
【化8】

【0069】
式中において、1位の炭素はCH2であり、3位の炭素はCHであり、末端の炭素はCH3である。この株は、2006年9月15日にC. N. C. M. (Collection Nationale de Cultures de Microorganismes; Institut Pasteur, Paris, France)に寄託され、受付番号はCNCM I-3669である。RNA 16Sをコードする遺伝子のシークエンシングが行われ; the JPL84株はバチルスsp.の株であった。前記株は、1 lの水中における10gのカジトン(casitone)、1gの酵母抽出物、1gの CaCl2 およびアガロースゲルを含む斜位のCYE培地アガーゲル(CYEアガー)において、4℃に維持された。
【0070】
発酵または培養
この株の発酵は、10 g/lのペプトン、1 g/lの酵母抽出物および1 g/lのCaCl2を含むCYE培地において行った。マルガウシンを産生するために、発酵は、10 lの上述したCYE培地中で、28℃で撹拌および曝気しながら行った。14時間の発酵後にマルガウシンは産生され始め、18〜20時間でピークに達した。抗菌剤の産生は、モニターされ、黄色ブドウ球菌に対するアガーゲルにおける拡散試験(CIP 76.25)および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量された。
【0071】
精製
分子は、逆相クロマトグラフィーにより精製した:アセトニトリル(10% v/v) ならびに固定ビーズ (Amberlite XAD-16) を培養液に加えた。12時間撹拌しながら4℃に維持した。XAD-16ビーズが培養液から分離され、水および水/メタノール混合物(50/50) で洗浄し、メタノール (100%)で溶出した。この溶出物を減圧蒸留により濃縮した。最後に、マルガウシンを、H2O/0.1% TFA 直線勾配および20%〜80%のアセトニトリル/0.1% TFAのアセトニトリル/0.1% TFAを用いて、C18分離カラムにおいて、流速10 ml/minで30分、逆相HPLCにより精製した。凍結乾燥の後、30mgのマルガウシンを10Lの培養液から得た。
【0072】
構造の決定
分子式は、分光学的な技術の組み合わせにより決定された:1次元および2次元のNMRおよび質量分析法。
【0073】
13C, DEPT, 1H, COSY, HMQCおよびHMBC分析は、1H について300 MHz および13C について75 MHz で動作する直接的な5 mm QNP プローブを備えたBruker Advance DPX-300を有するCD3OD媒質中において行われ、表1に示されている。
【0074】
生物学的特性
a.最小阻止濃度(MIC)の決定および多耐性細菌における試験
最小阻止濃度(MIC)は、CLSI/NCCLS スタンダード (National Committee for Clinical Laboratory Standards (2003))に従って、ミュラー・ヒントンブロス(MHB)中における微量希釈により、参照株に対して評価された。希釈抗菌感受性についての方法は、好気的に増殖する細菌に対して試験する−第6版: Approved standard M07-A6. NCCLS, Villanova, PA, USA。
【0075】
MICは、37℃で18時間培養した後、細菌株の全ての目に見える培養が阻害されるマルガウシンの最低濃度として決定される。
マルガウシンの抗菌活性は、表2および3に示す。
【0076】
b.マルガウシンのインビトロ毒性の評価
マルガウシンのインビトロ毒性は、乳癌細胞株(MCF7)において測定され; 簡単に言うと、96ウェル培養皿(dist)は、10%胎児ウシ血清を含むRPMI培地において、MCF7 細胞 (ATCC HTB-22(商標), 約10000 細胞/ウェル)と共に培養された(t=0)。t+1 (培養の開始に対して)において、試験分子が加えられた。t+2において、Heeg K et al (J Immunol Methods 1985, March 18; 77(2): 237-46)に従ってMTT (3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド) を組み込むことにより、細胞毒性が測定された。細胞毒性の結果は、表4に示す。
【0077】
c.マルガウシンのインビボ毒性の評価
3匹の雌の25gのOF1マウスに、腹腔内投与により、10%メタノールおよび90% H2O中の 12.5 mg/ml のマルガウシンの溶液200μlを投与した(すなわち100 mg/kgの用量)。マウスの生存は、T24、T48、T72およびT96 (時間)において行った。
【0078】
d.細菌感染症におけるマルガウシンのインビトロでの効果の測定
分子は、細菌の腹腔内投与によりOF1マウスを感染させた後、黄色ブドウ球菌による敗血症のモデルにおいて試験した。
【0079】
全部で11匹の雌の25 g OF1マウス(Charles River)について、時間T0において、3匹のマウスは、LB + 5% ムシン(mucine)200μlの腹腔内投与を受け(飼育状態をモニタリング)、8匹のマウスは、LB培地 + 5% ムシン中の黄色ブドウ球菌Smith (108 CFU/ml)の細菌懸濁液200μlの腹腔内投与を受けた(感染マウス)。
【0080】
8匹の感染マウスは、2のバッチに分けられた:t+3時間において、5匹のマウスは、10%メタノールおよび90% H2O中のマルガウシンの溶液12.5 mg/ml (すなわち100 mg/kgの用量)を投与され、残りの3匹のマウスは、マルガウシンの投与を受けなかった(感染モニタリング)。
マウスの生存は、24および48時間にチェックされた。
【0081】
B.結果
構造
構造分析は、マルガウシンの実験式がC12H18O3であることを示した。
ESI-MS分析は、マルガウシンについて210Daの分子量を与えた。
【0082】
13C NMRは5のシグナルを示し(40.4, 71.6, 95.6, 105.0および170.2)、1H NMRは2つの群のシグナルを示した (表1):
13Cスペクトル上の目に見える共鳴を有する炭素に結合したプロトンに対応する3 1Hシグナル ( 2.66, 3.63および5.81 ppm)を伴う第1の群、全てのシグナルはシングレットである;
13Cスペクトル上の目に見えない共鳴を有する炭素に結合した、前記第1の群とほぼ同一の化学シフトを有する21Hシグナルを伴う第2の群。それらは、マルガウシンのアルコール形態に対応する。
【0083】
3.63ppmにおける保護されていないメチレン基は、酸素原子およびα位におけるカルボニル基の存在に起因する。
【0084】
プロトンはα位から四級炭素またはヘテロ原子に存在するため、COSYスペクトルは、いずれの相関関係も示さなかった。
【0085】
2つの四級炭素(170.2 および105 ppm)、メチン (95.6 ppm)、メチレン (71.6 ppm) および2つの均等なメチル基 (40.4 ppm)の存在は、DEPTスペクトルから推測される(表1)。
【0086】
13C-1H結合を介してこれらの炭素に結合したプロトンの帰属は、HMQCスペクトルを用いて得られた。マルガウシンの構造は、HMBCスペクトルおよび連結ピーク(linked peak)C1/H3、C2/H3およびC2/H5とのその長い距離のスカラー相互作用により確認された。
【表1】

【0087】
NMRデータと質量情報との組み合わせは、分子が対称的であることを示す。m/z=211の分子イオンにおいて行われたMS/MS実験は、図1に示された構造と完全に一致する一連のフラグメントを産生した(得られたイオン:193, 175, 169, 165, 153, 151, 147, 141, 133, 129, 123, 119, 111 , 109, 105, 95, 93, 91, 85, 83, 81, 79, 71, 69, 67, 65, 57, 55, 43)。UV吸収スペクトルは、2つの極大λmax:269および330を示した。
【0088】
マルガウシンの構造は、図1に示し、1,1’-オキシビス[4-メチルペント-3-エン-2-オン]と命名される。
【0089】
最小阻止濃度(MIC)
種々のグラム陽性またはグラム陰性菌ならびに酵母に対するマルガウシンのMICを測定し、表2に示した。
【0090】
マルガウシンは、グラム陽性菌に対してのみ活性があるが、グラム陰性菌に対する抗菌活性もカンジダ・アルビカンス(酵母)に対する抗真菌活性も有さない。非常に重要なことには、本実験は、大腸菌toIC株(グラム陰性菌)がマルガウシンに対して感受性であることを示している。このtoIC株は、流出ポンプ系に関して不完全であり、グラム陰性菌に対するマルガウシンの不活性の原因は、細菌壁(グラム陰性菌については脂質層を含むいくつかの層で構成され、グラム陽性菌についてはムレインの単一の薄い層で構成される)の透過の問題に関係すると仮定され得ることを意味する。さらに、表2は、分子がグラム陽性菌に対して、3.125μg/mlの低い濃度、クロストリジウム・ディフィシルに対しては0.05μg/mlで有効であることを示す。
【表2】

【0091】
最後に、マルガウシンが黄色ブドウ球菌の種々の株(H1, H3, H4, H7, H9, H16およびH18)のような多耐性のグラム陽性菌に対しても活性を有することを示した(表3)。
【表3】

【0092】
(R:関係する抗菌剤に耐性の株;S:関係する抗菌剤に感受性の株;L:関係する抗菌剤に中間の耐性を有する株;−:試験せず;*:上述した方法で測定したMIC)。
【0093】
交差耐性は、商業的な抗菌剤について観察されなかった;さらに、ランダム変異の後でも、突発性の耐性株は単離されなかった。
【0094】
インビトロおよびインビボでの毒性
グラム陽性菌と闘うためのインビボでのマルガウシンの使用を想定する前に、毒性試験がインビトロ(細胞培養)およびインビボ(動物)において行われた。
【0095】
最初に、表4に示すように、1〜100mg/mlの濃度のマルガウシンで処理したMCF7細胞の細胞培養において細胞毒性がないことが測定された。実際に、マルガウシンで処理された培養における細胞の数は、対照培養(抗菌剤なし)の場合と同じであった。
【表4】

【0096】
さらに、100mg/kgの用量で動物にマルガウシンを投与した場合、3匹のマウスで毒性が生じず、96時間後も生きていた。それ故、これらの結果は、マルガウシンがインビトロで無害であることを示す。
【0097】
結果として、マルガウシンは、100mg/kgの濃度では、インビトロおよびインビボの両方で真核細胞に対して毒性がない。
【0098】
インビボでの効果
最後に、インビボでのマルガウシンの効果を、黄色ブドウ球菌を伴う敗血症のマウスモデルにおいて評価した。その結果を表5にまとめる。
【表5】

【0099】
(−:なし;+:あり)
これらの結果は、黄色ブドウ球菌による感染症は、抗菌剤を投与されないマウスの100%で致死的であることを示す。対照的に、100mg/kgのマルガウシンを投与された5匹のマウスのうち3匹は生存した。
【0100】
結論として、これらの結果は、一方でインビトロMIC試験を示し、他方でマルガウシンがブドウ球菌のようなグラム陽性菌に対してインビボで抗菌活性を有することを示す。
【0101】
クロストリジウム・ディフィシルに対するいくつかの分子のMICの比較
以下の表6は、現在使用されている、または臨床試験中である(第III相)他の分子のクロストリジウム・ディフィシルに対して測定された最小阻止濃度(μg/ml)を示す。
【表6】

【0102】
クロストリジウム・ディフィシルの感染におけるマルガウシンのインビトロ効果
前記分子は、大腸炎を誘発するためにクリンダマイシン(体重当り10 mg/kg)を皮下注射した後、クリストリジウム・ディフィシルによる感染のモデル(体重60g〜80gのゴールデンシリアンハムスター(20動物のバッチ))において試験された。クリンダマイシンの投与と同時に、または投与してから24時間後に、ハムスターは、クロストリジウム・ディフィシルの病原性臨床株を経口的に接種された(動物当り105株)。あるいは、前記クロストリジウム・ディフィシルの病原性株は、株ATCC 43255であった。
【0103】
クロストリジウム・ディフィシルの接種の1時間後、ハムスターは、胃管栄養法によりマルガウシンで処理された(体重当り10〜200 mg/kg)。この処理は、1日1回同じ量のマルガウシンで3日間繰り返された。
【0104】
対照は、同じ条件下で使用された:20動物のバッチは、クリストリジウム・ディフィシルによる感染はなく、および/またはマルガウシンにより処理されない。
前記実験は、現在進行中である:動物は30日間観察され、瀕死の動物がカウントされ、屠殺される。
【0105】
結論
新規化合物であるマルガウシンは、抗菌活性を有し、細菌株により産生されることが確認された。この化合物は、構造的に特徴付けられ、低分子量である。さらに、マルガウシンは、広範なグラム陽性スペクトルを有し、無毒であり、動物感染モデルにおいて有効であり、いずれの既知の耐性とも交差しない。類似の構造を有し、抗菌活性を有する他の化合物も、本明細書中で示されており、抗生剤としての適用に対するこの群の化合物の重要性を示している。
【0106】
クロストリジウム・ディフィシルのようなクロストリジウム属の細菌における低濃度(0.05μg/mlオーダーのMIC)での特に効果的な活性のため、本発明の化合物または組成物、特にマルガウシンは、クロストリジウム・ディフィシルに関する消化性の感染、特に抗菌治療に続くクロストリジウム・ディフィシルによる腸管の感染症に対して高い治療ポテンシャルを示す。さらに、市販の抗生剤と比較して、本発明の化合物または組成物は、腸内フローラの他の細菌の30倍以上の活性をクロストリジウム・ディフィシル菌に対して示す。これらの結果は、本発明の化合物または組成物を、市販の抗生剤と比較してクロストリジウム・ディフィシルによる感染の治療において選択される抗生剤とする。
【0107】
比較を目的として、クロストリジウム・ディフィシルによる感染症を治療するために現在使用されている分子を以下に示す:
(a)バンコマイシンは、最も重篤なケースを治療するために使用される(クロストリジウム・ディフィシルに対して1μg/mlのオーダーのMIC):しかしながら、バンコマイシンは、他の最も重篤な細菌性の感染症、特にスタフィロコッカスによる感染症の治療に既に使用されており、多くの耐性株の出現を導く;耐性の拡大および新規の耐性株の出現を避けるために、その使用は、医療コミュニティによりできるだけ制限されている;
(b)メトロニダゾールは、第1選択薬として使用されるが、25%の患者に対して不活性であり、頻繁な再発が記録されている(25%のケース);さらに、メトロニダゾールはバンコマイシンよりも安価であるが、多くの副作用を伴う。
【0108】
現在臨床試験中の他の分子も、本発明の化合物と比較されている:
(a)ニタゾキサニド(第III相、Romark Laboratories LC)、作用がメトロニダゾールに類似している分子;しかしながら、この分子は、妊娠中または授乳中の女性には奨められない;
(b)リファキシミン(キシファキサン)(第III相、Salix Pharmaceuticals)、リファンピシンに由来する分子;その最小阻止濃度(MIC)は、クロストリジウム・ディフィシルについて0.08〜0.2μg/mlのオーダーであり、この分子は、多くの自然発生の耐性を生じる;
(c)リピアルマイシン(OPT-80)(第III相、Optimer Pharmaceuticals)、最小阻止濃度(MIC)は、クロストリジウム・ディフィシルに対して0.06〜0.2μg/mlである(Antimicrob Agents Chemother, 2004 Dec; 48(12); 4898-902)。
【0109】
結論として、本発明の化合物またはそれを含んでなる組成物、特にマルガウシンは、クロストリジウム・ディフィシル(ICD)に関連する消化性の感染症の治療において、既に市販されている、または現在臨床試験中の治療的な分子に対する魅力的な代替の提案を構成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I)または(II)の化合物:
【化1】

式中、AはNR1、S、CR2R3およびR-(CH2)n-R’から選択され、RおよびR’は、相互に独立して、NH、O、SまたはCH2であり、R1、R2およびR3は置換基であり、nは1以上、特に2である。
【請求項2】
請求項1に記載の式(I)または(II)の化合物であって、Aは、NH、S、CH2およびR-(CH2)2-R’から選択され、RおよびR’は、相互に独立して、NH、O、SまたはCH2である化合物。
【請求項3】
次式(I)または(II)の化合物を調製する方法であって、
a)細菌株を培養する工程と;
b)培養上清から式(I)または(II)の化合物を精製する工程と
を含んでなる方法:
【化2】

式中、Aは、NH、S、O、CH2およびR-(CH2)2-R’から選択され、RおよびR’は、相互に独立して、NH、O、SまたはCH2である。
【請求項4】
請求項3に記載の調製方法であって、前記細菌株は、2006年9月15日にCNCMに寄託され、受付番号CNCM I-3669のJPL84である方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の調製方法であって、産生される化合物は
【化3】

である方法。
【請求項6】
次式(I)または(II)の化合物であって、
【化4】

式中、Aは、NH、S、O、CH2およびR-(CH2)2-R’から選択され、RおよびRは、相互に独立して、NH、O、SまたはCH2である
a)細菌株を培養する工程と;
b)培養上清から式(I)または(II)の化合物を精製する工程
とを含んでなる方法により得られる化合物。
【請求項7】
請求項6に記載の化合物であって、前記細菌株は、2006年9月15日にCNCMに寄託され、受付番号CNCM I-3669のJPL84である方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の化合物であって、次式で表される化合物。
【化5】

【請求項9】
請求項8に記載の化合物であって、1位の炭素はCH2であり、3位の炭素はCHであり、最後の位置の炭素はCH3であることを特徴とする化合物。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1項に記載の化合物であって、化学的に製造された同一の化合物とは異なるC12/C13比を有する化合物。
【請求項11】
以下を含んでなる組成物:
a)次式(I)もしくは(II)の化合物または該化合物の混合物;
【化6】

式中、Aは、NH、S、O、CH2およびR-(CH2)2-R’から選択され、RおよびR’は、相互に独立して、NH、O、SまたはCH2である
および
b)少なくとも1の薬学的に許容可能な媒体。
【請求項12】
以下を含んでなる組成物:
a)次式(I)もしくは(II)の化合物または該化合物の混合物;
【化7】

式中、Aは、NH、S、O、CH2およびR-(CH2)2-R’から選択され、RおよびR’は、相互に独立して、NH、O、SまたはCH2である
ならびに
b)微生物に対して活性を有する少なくとも1の第2の分子、および任意に、薬学的に許容可能な媒体。
【請求項13】
請求項12に記載の組成物であって、前記微生物に対して活性を有する少なくとも1の第2の分子は抗生剤であることを特徴とする組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の組成物であって、式(I)の化合物および式(II)の化合物を含んでなることを特徴とする組成物:ここで、Aは、前記2つの化合物において同一であり、NH、S、CH2およびR-(CH2)2-R’から選択され、RおよびR’は、相互に独立して、NH、O、SまたはCH2である組成物。
【請求項15】
薬物としての使用のための、式(I)または(II)の化合物:
【化8】

式中、Aは、NH、O、S、CH2およびR-(CH2)2-R’から選択され、RおよびR’は、相互に独立して、NH、O、SまたはCH2である。
【請求項16】
抗生剤または殺菌剤としての使用のための、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
細菌、好ましくはグラム陽性菌の感染症の治療または予防における使用のための、請求項15に記載の化合物。
【請求項18】
クロストリジウム・ディフィシルに関連する消化性の感染症のような、クロストリジウム属に由来する細菌による感染症の治療または予防において使用するための、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
抗生剤治療に続くクロストリジウム・ディフィシルに関連する消化性の感染症の治療または予防において使用するための、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
腸内細菌フローラの平衡の修復において使用するための、請求項17または18に記載の化合物。
【請求項21】
薬剤としての使用のための、請求項11〜14のいずれか1項に記載の組成物から選択される組成物または次式(I)もしくは(II)の化合物を含んでなる組成物:
【化9】

式中、Aは、NH、S、O、CH2およびR-(CH2)2-R’から選択され、RおよびR’は、相互に独立して、NH、O、SもしくはCH2である。
【請求項22】
抗生剤または殺菌剤としての使用のための、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
細菌性の感染症、好ましくはグラム陽性菌感染症の治療または予防における使用のための、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
クロストリジウム・ディフィシルに関連する消化性の感染症のような、クロストリジウム属に由来する細菌による感染症の治療または予防において使用するための、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
抗生剤治療に続くクロストリジウム・ディフィシルに関連する消化性の感染症の治療または予防において使用するための、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
腸内細菌フローラの平衡の修復において使用するための、請求項23または24に記載の組成物。
【請求項27】
細菌性の感染症の闘病において使用する組成物を製造するための、請求項15に記載の式(I)または(II)の化合物の使用。
【請求項28】
医療機器の含浸のための、請求項15に記載の式(I)または(II)の化合物の使用。
【請求項29】
医療機器の含浸のための、請求項11〜14のいずれか1項に記載の組成物から選択される組成物、または次式(I)もしくは(II)の化合物を含んでなる組成物の使用:
【化10】

式中、Aは、NH、S、O、CH2およびR-(CH2)2-R’から選択され、RおよびR’は、相互に独立して、NH、O、SもしくはCH2である。
【請求項30】
次式(I)または(II)の化合物を含浸させた医療機器:
【化11】

式中、Aは、NH、S、O、CH2およびR-(CH2)2-R’から選択され、RおよびR’は、相互に独立して、NH、O、SもしくはCH2である。
【請求項31】
請求項11〜14のいずれか1項に記載の組成物または次式(I)もしくは(II)の化合物を含んでなる組成物を含浸させた医療機器:
【化12】

式中、Aは、NH、S、O、CH2およびR-(CH2)2-R’から選択され、RおよびR’は、相互に独立して、NH、O、SもしくはCH2である。
【請求項32】
カテーテル、包帯、骨接合剤、大脳シャントまたは心臓弁である、請求項30または31に記載の機器。
【請求項33】
次式(I)または(II)の化合物を産生することができる細菌株:
【化13】

式中、Aは、NH、S、O、CH2およびR-(CH2)2-R’から選択され、RおよびR’は、相互に独立して、NH、O、SもしくはCH2である。
【請求項34】
2006年9月15日にCNCMに寄託され、受付番号CNCM I-3669のJPL84である、請求項33に記載の細菌株。
【請求項35】
請求項33または34に記載の細菌株に由来する株であって、式(I)または(II)の化合物を産生する能力を有することを特徴とする株。
【請求項36】
請求項35に記載の株であって、次式の化合物を産生する能力を有することを特徴とする株:
【化14】

式中、Aは、NH、S、O、CH2およびR-(CH2)2-R’から選択され、RおよびR’は、相互に独立して、NH、O、SまたはCH2であり、1位の炭素はCH2であり、3位の炭素はCHであり、最後の位置の炭素はCH3である。
【請求項37】
生物学的なサンプルまたは表面の細菌プロフィールを修飾する方法であって、前記サンプルまたは前記表面を請求項15に記載の少なくとも1の式(I)もしくは(II)の化合物、請求項11〜14のいずれか1項に記載の組成物または式(I)もしくは(II)の化合物を含んでなる組成物と接触させることを含む方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−504310(P2010−504310A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528755(P2009−528755)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【国際出願番号】PCT/FR2007/001544
【国際公開番号】WO2008/037880
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(500174661)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・レシェルシュ・サイエンティフィーク−セ・エン・エール・エス− (54)
【出願人】(509079651)ユニベルシテ・ドゥ・プロバンス−エクス・マルセイユ 1 (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE PROVENCE−AIX MARSEILLE 1
【住所又は居所原語表記】3, Place Victor Hugo,13003 MARSEILLE, France
【出願人】(509079662)ユニベルシテ・ポール・セザンヌ−エクス・マルセイユ 3 (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PAUL CEZANNE−AIX MARSEILLE 3
【住所又は居所原語表記】3, Avenue Robert Schumann, 13100 AIX EN PROVENCE, France
【Fターム(参考)】