説明

抗菌減速機

【課題】大腸菌・黄色ブドウ球菌・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)等の菌の発生を抑えることができる抗菌減速機を提供すること。
【解決手段】抗菌減速機10は、ケース20と、ケース20内に収納された減速機構とからなり、モータ50に連結されている。抗菌減速機10のケース20表面には、抗菌剤入りの塗料による塗装が施されている。ケース20表面に抗菌剤入りの塗装を施すことで、大腸菌・黄色ブドウ球菌・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)等の菌の発生を抑えることができ、また、銀系抗菌剤を用いることで、塗料の経年変化を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに連結される入力軸からの回転数をこれより低い回転数に減速して出力軸に伝達する減速機に関し、特に、抗菌性が付与された減速機に関する。
【背景技術】
【0002】
動力伝動装置の主要機器である減速機は、一般産業機械のあらゆる分野に使用されており、化学、繊維、電力、鉄鋼、自動車、半導体等の電子部品産業はもとより、最近では、エネルギー・環境関連機械や食品機械、家庭用昇降機、生ゴミ処理機、医療・福祉機器などにも使用されている。
【0003】
例えば、図5に示すような、電動モータ110、減速機120、伝動軸130、リクライニング操作軸140等で構成されている電動式リクライニング機構を設けた形式の電動式医療ベッドがある(例えば、特許文献1。)。
減速機120は、ウォーム122と、ウォーム122に噛合するウォームホイール124で構成され、電動モータ110の回転軸にウォーム122が取付けられている。
電動モータ110を始動させると、電動モータ110の回転力は、ウォーム122、ウォームホイール124、出力軸126、伝動軸130を介して、リクライニング操作軸140に伝達され、かくして、ベッドのリクライニングが行われる。
【0004】
従来、医療ベッドは、クランクハンドルを手で回してリクライニング作業を行わなければならず、かなりの重労働であり、病院内において多数の医療ベッドが設置されているときには、医療行為以外の労働を頻繁に看護婦又は家庭内の介護者に強いることになるという問題点を有していたが、このように、減速機及びモータを取付けることにより、看護婦又は介護者を重労働のリクライニング作業から解放することが可能となった。
【特許文献1】国際公開WO97/015263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、医療・福祉の分野においては、衛生面に配慮が払われており、例えば、医療ベッドの場合、ベッド本体から手すりまで銀系抗菌剤を含む塗料を施したり、使用前に、ホルムアルデヒドガス滅菌を24時間行ったり、簡単な方法として、1〜2%クレゾール石けん液、70%エタノール水溶液で拭くことが行われている。
【0006】
しかし、医療・福祉機器に用いられる減速機そのものに対しては、抗菌・滅菌に対する配慮が全くなされていなかった。
特に、減速機のケース表面の塗装が、アクリルラッカー塗装、エポキシ塗装、ウレタン塗装、塩化ゴム塗装が一般になされているが、抗菌に対しての効力は低く、医療機器に施す塗料として適切なものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ケースと、該ケース内に収納された減速機構とからなる減速機であって、前記ケース表面に抗菌剤入りの塗装が施されていることを特徴とする抗菌塗装減速機によって、前記の課題を解決した。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、減速機のケース表面に抗菌剤入りの塗装が施されているので、減速機における大腸菌・黄色ブドウ球菌・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)等の菌の発生を抑えることができる。
また、銀系抗菌剤を用いることで、経年変化を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の抗菌減速機の実施形態を、図1及び図2に示す。
本発明の抗菌減速機10は、図1に示すように、ケース20と、ケース20内に収納された平行軸減速機構とからなる。
図2に示すように、抗菌減速機10の平行軸減速機構は2段の歯車列からなり、モータ50からの入力軸52の先端に設けた入力段ピニオン54と、中間軸30に設けた中間段ギヤ32、及び中間軸30に設けた中間段ピニオン34と、出力軸40に設けた出力段ギヤ42とにより構成されている。
【0010】
モータ50の入力軸52が回転すると、入力軸52の先端の入力段ピニオン54から中間軸30の中間段ギヤ32に回転が減速されて伝わり、中間軸30の中間段ピニオン34から出力軸40の出力段ギヤ42に回転がさらに減速されて伝わる。かくして、モータ50の入力軸52の回転は減速されて出力軸40に伝達され、出力軸40は所定のトルクで回転する。
【0011】
この抗菌減速機10のケース20表面には、抗菌剤入りの塗料による塗装が施されている。
このように、ケース20表面に抗菌剤入りの塗装を施すことで、大腸菌・黄色ブドウ球菌・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)等の菌の発生を抑えることができ、また、銀系抗菌剤を用いることで、塗料の経年変化を防ぐことができる。
【0012】
ここで、抗菌剤入りの塗装を施すことについては、当業者に周知であるので詳細な説明は省略するが、例えば、特開平10−156281号公報に開示されているような、スパッタリング法で銀合金の被覆層を形成した四フッ化エチレン樹脂粒子を0.5〜20重量%の割合で混合した四フッ化エチレン樹脂3〜7重量部と芳香族ヒドロキシル基をもつ熱可塑性ポリエーテルサルフォン樹脂7〜5重量部の組成をもつ塗料を利用することができる。
【0013】
抗菌減速機10は、取付け用の脚を有する脚型式の減速機であって、しかも比較的小容量、例えば、35w〜0.4kw程度のモータ50を一体に組込んだ小型のギヤモータになっている。なお、モータ50を具えない、減速機構のみの実施形態(図示せず。)や、脚の替わりに、フランジによって取付けるフランジ型式とすることもできる。
【0014】
本発明の抗菌減速機のさらなる実施形態を、図3及び図4に示す。
本発明の抗菌減速機12は、図3に示すように、ケース22と、ケース22内に収納された直交軸減速機構からなる。
図4に示すように、抗菌減速機12の直交軸減速機構は、モータ51からの入力軸56の先端に設けた入力直交ギヤ58と、中間軸31に設けた中間直交ギヤ36、及び中間軸31に設けた中間段ギヤ38と、出力軸41に設けた出力段ギヤ44とにより構成されている。
【0015】
モータ51の入力軸56が回転すると、モータ51の入力軸56の先端の入力直交ギヤ58から中間軸31の中間直交ギヤ36に、回転方向が直交方向に変換されて回転が伝達され、さらに、中間軸31の中間段ギヤ38から出力軸41の出力段ギヤ44に回転が減速されて伝わる。かくして、モータ51からの入力軸56の回転は、回転方向が直交方向に変換され、減速されて出力軸41に伝達され、出力軸41は所定のトルクで回転する。
【0016】
第1の実施形態の抗菌減速機10と同様、第2の実施形態の抗菌減速機12のケース22表面には、抗菌剤入りの塗料による塗装が施されている。かくして、減速機における、大腸菌・黄色ブドウ球菌・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)等の菌の発生を抑えることができ、また、銀系抗菌剤を用いることで、塗料の経年変化を防ぐことができる。
【0017】
なお、これまで、本発明の抗菌減速機に用いられる減速機構として、2種類の減速機構を説明したが、これら2種類の減速機構は本発明の好適な実施形態を示したものにすぎず、本発明は、これらの減速機構に限定されるものでないことは勿論である。
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、減速機のケース表面に抗菌剤入りの塗装が施されているので、減速機における大腸菌・黄色ブドウ球菌・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)等の菌の発生を抑えることができ、また、銀系抗菌剤を用いることで、経年変化を防ぐことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態の抗菌減速機の側面図。
【図2】本発明の第1の実施形態の抗菌減速機の断面図。
【図3】本発明の第2の実施形態の抗菌減速機の側面図。
【図4】本発明の第2の実施形態の抗菌減速機の断面図。
【図5】従来の電動式リクライニング機構の説明図。
【符号の説明】
【0020】
10,12:減速機
20,22:ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、該ケース内に収納された減速機構とからなる減速機であって、
前記ケース表面に抗菌剤入りの塗装が施されていることを特徴とする、
抗菌減速機。
【請求項2】
前記抗菌剤が銀系抗菌剤である、請求項1の抗菌減速機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−22876(P2006−22876A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200736(P2004−200736)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000150800)株式会社ツバキエマソン (102)
【Fターム(参考)】