説明

抗菌積層構造体

本発明は抗菌層を含み、任意で接着層を含む抗菌積層構造体を作成し使用する方法を含む。本発明は医療用具、医用器具、個人または患者、もしくは例えば抗菌積層構造体を付与することを含む治療領域抗菌物と接してもよい表面を作成する方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年11月24日に出願された米国特許仮出願第61/117,275号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は抗菌積層構造体に関し、特に抗菌積層構造体を作成するための方法および組成物、並びに表面を抗菌性にするための、かかる積層物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
衛生学において厳密性が増加しているのと相まって、新規かつより強力な抗生物質の研究開発が継続しているにもかかわらず、院内感染の発生は増加している。多くの院内感染は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)およびバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)抗バクテリア生耐性株などを含み、処理コストの追加および患者死亡者数の追加を引き起こす危険性がある。多くの院内感染は、患者の管理と治療において使われる医療用具から生じる。
【0004】
医療器具産業は、日和見菌による器具の定着および感染経路を減らすための方法を活発に追求していた。医療器具は一般に生体適合性材料から作成されるが、生体適合性材料の使用による好ましくない副産物はそれらの材料が微生物の定着および成長において、非常に適合性のある環境でもあるということである。菌は菌の臨界質量を達成するために医療器具の表面に定着し、医療器具と関連する患者の感染を誘発する。これらの器具は頻繁に移植されるか内在し、菌による定着は器具や患者に問題を起こし、器具の使用や治療措置に変更をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
器具メーカーは、医療器具に抗菌的な観点を与える方策を模索してきた。創傷ケア製品における抗菌物質としての銀の広範囲にわたる使用は、創傷被覆材の材料と銀を連結するための端的な方法が見出されたという事実に、大部分は起因するものである。これは、多くの他のタイプの医療器具を作成する際に使用する多種多様な材料では可能ではなかった。銀ナノ粒子の水性浸漬塗布プロセスであるSilvaGard(AcryMed社)のような技術は、多くの完成した医療器具に好適であり得る。抗菌効果を与えるための他の戦略は、器具を作成するために用いる材料に銀を直接取込むことを含む。その性質において親水性であるか非常に多孔性であるが金属またはポリマー材料から作成される器具には好適ではない材料にとって、これは有用であり得る。浸漬または材料への取込みによる抗菌剤の付与は、抗菌性材料を、ロールまたはシート貯蔵の形で製造され、材料から切断されて医療器具成分の前駆体として供され得るようにするための実行可能な解決策ではない。たとえば、ロール材料への巻き込み、気泡または当初からシート貯蔵状態で作成された紙製品は、製造コストやそれを使えなくしている基材に対する変更といった要因のために、抗菌性材料を受け入れにくく、浸漬されないか取込めない。その上、この種の方法は、医療器具の部分、成分または特定の表面を容易に抗菌性にできない。必要なのは、医療器具表面のような表面を抗菌性にする好適な方法である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、抗菌積層構造体、積層構造体を作成する方法、医療器具、治療域、患者の接触表面および材料を抗菌性にするために積層構造体を使用する方法、抗菌剤を含む組成物または積層構造体を作成する際に使用する薬剤および組成物を作成する方法を含む。本明細書において抗菌性は、微生物の汚染微生物数、定着または微生物器官の付着の縮減もしくは阻害を意味する。表面を抗菌性にするための方法は、抗菌積層構構造体を表面に付与することを含む。
【0007】
本発明の1つの態様は、抗菌層を含む構造体を含む。抗菌層は、銀または他の活性剤のような1つ以上の抗菌剤を含む。構造体はさらに第2層を含んでも良い。第2層は、接着剤または他の付着組成物、あるいは構造体に必要な他の化合物を含んでもよい。抗菌層および第2層が接触すると、積層構造体を形成する。例えば、抗菌積層構造体は2層を含むシートまたは連続するロール、抗菌層および接着剤を含む第2層を含み、このうち1層は抗菌剤を含み、抗菌層の1つの表面は接着剤を含む第2層の表層全部と実質的に接している。使用時に接着層は抗菌層の表面に接して抗菌層を表面に固定するので、抗菌層は最外部となる。
【0008】
積層構造体の使用例は、少なくとも抗菌層および接着層を含む積層体を壁紙のような方式で付与することである。例えば、接着層に接している剥離ライナーを除去して接着剤を露出させて気泡体のシートのような材料の上にニップロールがけをして表面と接触せしめ、抗菌層が気泡のシートである材料の最外部表面とすることである。剥離ライナーは抗菌層の外部表面に付着してもよく、周囲に対する露出を防ぎ抗菌層を防護できる。付着した積層構造体の気泡はシア切断またはダイスタンプ法によって望ましい形状に切断されてもよく、抗菌層を覆っている剥離ライナーはその場所に残っていてもよく、除去してもよい。このように指向した接着層は抗菌層を気泡層の表面に結合せしめ、積層構造体の付与を受けた側の抗菌剤を予め作成した気泡層とする。
【0009】
抗菌積層構造体は1つ以上の抗菌層および/または1つ以上の接着層のような第2層を含んでいてもよく、または抗菌物質もしくは接着層のような第2層の1つだけを含んでいてもよい。積層構造体は、汚染微生物数または微生物阻害の縮減が望まれるどの表面に付与されてもよい。
【0010】
抗菌積層構造体をシートまたは連続性のロールとして作成する方法は、抗菌性組成物を第1剥離ライナーのような構造体要素の表面に塗布すること、任意で塗布物を乾燥させること、および抗菌層を形成することを含む。接着剤組成物を含む第2層は第2剥離ライナーの表面のような第2構造体要素に付与され、オプションとして乾燥して接着層を形成する。抗菌層の外部表面は、2つの外部表面上の剥離ライナーと共に抗菌層および接着層を有する接着層形の抗菌積層構造体に配置される。
【0011】
抗菌積層構造体を作成する方法の例は、抗菌層を形成する第1剥離ライナーのような構造体要素の1つの表面上に抗菌性組成物を塗布すること、任意で乾燥すること、構造体要素に接している表面の反対側の抗菌層の表面上に直接接着剤組成物を塗布することを含む。第2塗布物は任意で乾燥され、積層構造体が形成される。剥離ライナーのような第2構造体要素は接着層の外部表面に付与してもよい。
本発明の抗菌積層構造体は、どの表面にでもその表面に積層体を付与することによって接着層と接着させてその表面に抗菌性の態様を提供可能である。表面抗菌構造体の作成方法は、積層体の接着層の外部表面を表面と接触せしめ、その表面の最外層として抗菌層を提供することを含む。この方法は、1つ以上の表面から構造体要素を除去することをさらに含んでもよい。
【0012】
抗菌層は、抗菌性組成物を含んでもよい。抗菌性組成物には、1つ以上の抗菌剤、1つ以上の溶剤、バインダー、任意で可塑剤、そして任意で他の添加剤が含まれ得る。組成物における抗菌剤の量は、要求される抗菌効果の持続時間に依存し得る。接着層には、1つ以上の接着剤、1つ以上の溶剤および任意で一般に良好なフィルム形成能を持つバインダーのような組成物を含む接着剤組成物が含まれ得る。抗菌性組成物および接着剤組成物の作成方法もまた、本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の積層構造体例を示す図である。
【図2】図2Aおよび図2Bは、本発明の積層構造体例およびその表面への付着物を示す図である。
【図3】本発明の積層構造体例を示す図である。
【図4】図4Aおよび図4Bは、本発明の代表的な積層構造体およびその表面への付着物を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、抗菌層を含む抗菌積層構造体;積層構造体を作成する方法;医療器具、治療域、患者接触面および物質を抗菌性とするために積層構造体を使用する方法;抗菌層、接着剤組成物を作成するための1つ以上の抗菌剤を含む抗菌性組成物、および抗菌性組成物を作成する方法を含む。本明細書で使用されるとき、抗菌性は微生物の汚染微生物数、定着または微生物器官の付着の縮減もしくは阻害を意味する。本発明のための使用は、表面または部位を抗菌性とすることを含む。人間または動物への医療器具の挿入のための部位は、微生物の入口としての理想であって、バクテリアまたは他の微生物によってしばしば定着を受ける。本発明はかかる部位での微生物の成長を減らすかまたは部位を有害な微生物の成長から比較的無害に維持するのに役立つ。
【0015】
本発明において使用できる抗菌剤は銀である。銀は、抗菌剤として役立つべく創傷ケア製品および他の医療器具に組み入れられた。銀は0.1ppmのような非常に小量のバクテリアおよび菌に対して大いに活性であるので、好適に選び得る広域スペクトル抗菌物質として出現し、低濃度での組織細胞に対して非毒性である。銀の作用のメカニズムは十分に理解されていないものの、Agイオンもしくは他の帯電形態の抗菌物質としてのみ活性であると信じられている。銀は生物学的器官で見つけられる多くの化合物の求核基と反応するオキシダントとして作用すると考えられている。イオン銀の酸化効果と結合した強連結特性は、結合配位子の正常な生物学的機能を破損させ得ることを意味する。微生物の株による銀耐性の開発リスクは低い。さらに、銀は他の抗菌性重金属とは異なり、ユーザの接触過敏症とはあまり関連しない。
【0016】
抗菌性組成物の例および銀を含む層が本明細書において教示されているものの、本発明では他の抗菌剤についても考慮する。銀を含むがこれに限らず、抗菌性組成物は基材の製造の間のポリマーマトリックス気泡のような基材に直接に組み入れてもよい。抗菌性組成物は織布材料または不織布材料、カルボキシメチルセルロースのようなポリマー材料のような基材に吸着または吸収されてもよく、もしくは抗菌性組成物は基材にメッキ、電気メッキ、スプレー塗布、スパッター塗布されてもよい。抗菌性組成物および基材は予め作成された抗菌層と考えてもよく、積層構造体で使用してもよい。
【0017】
本発明の1つの態様は、抗菌層を含む構造体を含む。抗菌層は、少なくとも銀または他の活性剤のような抗菌剤を含む。構造体はさらに第2層を含んでも良い。第2層は、接着剤または他の付着組成物を含んでもよい。抗菌層および第2層が接触すると、積層体構造体を形成する。
【0018】
抗菌層および第2層は接していてもよく、その結果抗菌層の一方の全表面が実質的に第2層の一方の全表面に実質的に接していることになる。例えば、積層体は接着性の外部表面および抗菌性の外部表面を有するフィルム、シート、連続フィルムまたはシートロール形状であってもよい。あるいは、抗菌層の一方の側は、第2層の一方の側の全部または一部だけに実質的に接していてもよい。積層構造体の単層または複数層のかかる配列は、積層体の用途によって当業者の熟練の範囲内で決定される。本発明によって考慮される積層構造体の例を図1に示す。積層構造体は、一対の剥離ライナーに挟まれる抗菌層および接着層を含む。
【0019】
積層体は、抗菌層の1層と、接着層のような第2層の1層とを含んでもよい。積層体は、同一の抗菌層の有無を問わない複数の抗菌層を含んでもよく、1つ以上の接着層の有無を問わない1つ以上の第2層を含んでもよい。例えば、積層体は最外層の1つの全表面に接している接着層を有する複数の抗菌層を含む。接着層は、積層体の表面に周囲にさらされる最外抗菌層を付着させるために用いる。最外抗菌層は露出されていて、その1つ以上の抗菌剤を放出する。使用と時間超過で抗菌活性が減少するので、最外抗菌層は除去されて次の抗菌層が露出され、その部位に更新された抗菌活性を提供する。1つ以上の抗菌層は、1つ以上の第2層で代替してもよい。1つ以上の層は、ライナーのような層間の構造体要素を有してもよい。あるいは、抗菌性組成物は接着剤と混ぜ合せてもよく、積層体は抗菌性組成物および接着剤組成物を含む1層と、任意で剥離ライナーのような1つ以上の構造体要素を含んでもよい。
【0020】
本発明の積層構造体は、抗菌層を含む。抗菌層は、抗菌層作成において除去され、減らされ、あるいは加えられるもの、構造体要素に付与された抗菌性組成物を乾燥させて抗菌性組成物からの1つ以上の溶剤の一部または全部を除去することを除いて、抗菌性組成物から作成され、抗菌層が抗菌性組成物の成分を含むことを意味するべく意図している。例えば、抗菌性組成物は剥離ライナーのような構造体要素に付与され、抗菌性組成物の1つ以上の溶剤または他の液体の一部または全ては加熱や乾燥によって除去され、抗菌性組成物の残留成分を含む抗菌層を形成する。本明細書で使用しているとおり、用語の抗菌性組成物および抗菌層は互換可能できて、それらの意味と用途は明細書記載に照らして明白である。抗菌性組成物は、1つ以上の抗菌剤を含む。抗菌性組成物は、1つ以上の抗菌剤のための溶剤、フィルム形成剤のための溶剤、フィルム形成剤、バインダー、可塑剤のような他の成分を含んでもよく、または抗菌性組成物を作成する際に使用する他の成分を含んでもよい。
【0021】
抗菌性組成物は、本明細書もしくは他の文献に記載されているような抗菌剤、および接着剤組成物を含んでもよい。たとえば、抗菌性組成物にAeroset 1920−Z52(Ashland Chemical社)のような接着剤を添加してもよい。抗菌性組成物には接着性が有っても無くてもよい。抗菌性組成物は、少なくとも1つの抗菌剤、フィルム形成を可能にする薬剤もしくは組成物であるバインダー、抗菌層に弾性および可撓性を提供する薬剤または組成物である可塑剤を含む。
【0022】
本明細書において抗菌性は、微生物の汚染微生物数、定着または微生物器官の付着の縮減もしくは阻害を意味する。抗菌剤は抗菌性の化合物、分子および化学元素を含み、
抗生剤、防腐剤または他の抗菌性化合物、銀、銀塩、銀ナノ粒子、イオン銀、1つ以上の銀化合物の組み合わせ、亜鉛、銅、金、プラチナのような他の金属、そして、それらの塩または複合体、たとえば、ウンデシレン酸亜鉛、第4級アンモニウム塩、イソニアジド、エタンブトール、ピラジナムニド、ストレプトマイシン、クロファジミン、リファブチン、フルオロキノロン、オフロキサシン、スパルフロキサシン、リファンピン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ダプソン、テトラサイクリン、エリスロマイシン、シプロフロキサシン、ドキシサイクリン、アンピシリン、アンホテリシンB、ケトコナゾール、フルコナゾール、ピリメタミン、スルファジアジン、クリンダマイシン、リンコマイシン、ペンタミジン、アトバコン、パロモマイシン、ジクラズリル、アシクロビル、トリフルオロウリジン、フォスカーネット、ペニシリン、ゲンタマイシン、ガンシクロビル、イトロコナゾール、ミコナゾール、ピリチオン亜鉛、クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニド、ポリヘキサメチレンビグアニド、トリクロサン、沃素、沃素−ポリビニルピロリドン合成物、過酸化尿素合成物、ベンザルコニウム塩、Onyxide(Stepan Chemical社)のようなサッカリン酸に基づく第4級アンモニウム化合物、ウコン抽出エキス、他の天然消毒剤化合物またはこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない。本発明の利用に好適な抗菌剤の例は、溶解可能または微粒子として分散可能で、不活性支持体上もしくは不活性支持体内に存在できる薬剤である。高分子抗菌性組成物もまた本発明に含まれる。例えば、抗菌性部分は高分子化合物の部分であってもよい。かかる高分子化合物に基づく抗菌物質の例は、米国特許第5,149,524号、同第5,354,862号、および同第5,508,417号に開示され、全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明において使用できる銅および亜鉛化合物は、Merck Index第11版(1989)に掲載され、当業者に既知である。
【0023】
銀含有組成物および方法は、例示的な目的のために本明細書において開示され、本発明を限定することを意図するものではない。たとえば、サッカリン酸銀(AgSacc)は抗菌剤として教示されているが、他の抗菌剤または抗菌剤の組み合わせも本発明の権利範囲から外れることなく使用できる。たとえば、抗菌性組成物は速効性の抗菌剤を含んでもよく、例えば抗菌層にはグルコン酸クロロヘキシジン(CHG)のみ、または、CHGとAgSaccのような長期間の抗菌剤とを含んでもよい。本発明の方法および組成物は、銀および/または他の抗菌剤を含む積層構造体を含む。本発明の抗菌機能は、単一の抗菌剤または抗菌剤の組み合わせによって提供されてもよい。銀化合物が抗菌剤の1つであってもよい。本発明の積層構造体において使用できる抗菌剤の例は米国特許第6,605,751号、国際出願PCT/US2005/027261号および同PCT/US2005/027260号において教示され、それぞれは全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0024】
抗菌性組成物は、任意で他の添加剤を含んでもよい。たとえば、層を着色するために着色剤を加えてもよい。着色剤は、合成でも天然でもよい。好適な着色剤は、FDAによって承認されている食用染料である。抗菌性組成物には蛍光化合物を添加してもよい。チタニアのような充填剤、天然または合成的粘土(たとえばLaponite(登録商標))および化粧品産業において色の陰影を提供するために使われる公知の他の充填剤を加えてもよい。抗菌性組成物には、グリセロール、尿素、グリコール、PEG、ポリエチレングリコールおよびより高い分子量の類似体のような湿潤剤が含まれてもよい。米国特許第6,605,751号にて開示された可塑剤、水中グリセロール、プロピレングリコールおよびブタノールを抗菌性組成物に取り入れてもよい。歯科産業において使用される低分子量ポリアミド樹脂もまた、可塑剤として役立ち得る。
【0025】
可溶の銀塩と陰イオンとを組み合わせて弱可溶の銀塩化合物を形成する好適な化学量論の使用により抗菌性組成物中のその位置で銀塩のような抗菌性化合物を形成できる。あるいは、弱可溶の銀化合物は別に調製されてもよく、次いで他の成分と混ぜ合せて抗菌性組成物を形成してもよい。抗菌性組成物においては、水性のもしくは非水性の銀ナノ粒子組成物が他の銀化合物または抗菌剤と共に使用されてもよく、これは米国特許出願公開第S2007/000360号に開示の通りであり、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
本発明は抗菌性組成物を含み、銀のような1つ以上の抗菌剤の濃度範囲が積層構造体の抗菌層用に使用される。例えば、使い切り使用の器具または使い捨て可能な器具用では抗菌層中の1つ以上の抗菌剤の高濃度は必要でなく、一方3日から7日間使用する点滴アクセス器具の長期間使用では抗菌層中の抗菌剤の量は増加量を必要とし得る。たとえば、積層構造体中の銀含有量は、0.1ppm〜100,000ppm、0.1ppm〜75,000ppm、0.1ppm〜50,000ppm、0.1ppm〜25,000ppm、0.1ppm〜10,000ppm、0.1ppm〜5000ppm、0.1ppm〜1000ppm、0.1ppm〜500ppm、0.1ppm〜250ppm、0.1ppm〜100ppm、100ppm〜100,000ppm、500ppm〜100,000ppm、800ppm〜100,000ppm、1,000ppm〜100,000ppm、5,000ppm〜100,000ppm、10,000ppm〜100,000ppm、20,000ppm〜100,000ppm、30,000ppm〜100,000ppm、40,000ppm〜100,000ppmの範囲にわたり得る。他の抗菌剤の量は上記と同様に0.1ppm〜50,000ppmの範囲にわたり得る。抗菌性の効力を提供して生体適合性を維持し、周囲の領域または患者をいらつかせたり汚したりしない付加積層構造体を有する医療器具は、本発明によって考慮される。
【0027】
抗菌性組成物はさらに分散媒を含んでもよく、分散媒は抗菌剤用の溶剤で有っても無くてもよい。抗菌性組成物は、単一の分散媒または分散媒の混合物でできていてもよい。分散媒の例には水、低級アルキルアルコール(C1〜C8)、分岐状アルキルアルコール(C1〜C8)、アセトンおよび高級ケトン(MEK)、単一置換グリコールエーテル、アセテート、低級アルキルアルコール(C1〜C8)のラクタートまたはホルマート、テトラヒドロフラン(THF)、NMPおよびアセトニトリルを含むが、これらに限定されるものではない。
【0028】
抗菌性組成物は、化合物の単一化合物または混合物であってもよいバインダーを含んでもよい。本明細書において使用するバインダーは、フィルム形成を可能にする化合物、分子または組成物である。バインダーは天然または合成の高分子化合物であってもよく、分散媒に可溶であってもよく、抗菌剤に関して不活性であってもよい。バインダーは、低Tg(ガラス転移点温度)の高分子化合物または樹脂であってもよい。バインダーの例にはセルロースエーテル誘導体(Cl〜C3アルキル基を有するヒドロキシルアルキルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース)、プロピレンアルギナート、ポリビニルアルコール、PVP(ポリビニルピロリドン)、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリラクタートおよびこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されるものではない。バインダーは良好なフィルム形成特性を有する。バインダーはまた、フィルム形成組成物またはポリマーと称してもよい。可撓性で、弾性(対長手方向力または屈曲力)が有り、高強度のフィルムを生成するポリマーは、本発明によって考慮される。非水性溶剤の幾つかの記載例が開示されているが、これは本発明を限定して解釈されるものではない。抗菌性組成物も接着剤組成物も共に完全に水系組成物であってもよい。
【0029】
本発明の抗菌性組成物の例は、抗菌剤およびバインダーを含む。蛍光化合物および/または可塑剤のような添加剤を組成物に添加してもよい。
【0030】
抗菌性組成物は、ライナーまたは織布もしくは不織布のような構造体要素へのスロット塗布またはパターン塗布の容易さのために粘性を有してもよい。たとえば、ライナーについては、抗菌性組成物の分散媒は剥離ライナーを濡らすのを助け、分散媒が非水性である場合には分散媒は少量の水を含んでもよい。抗菌層形成のために構造体要素、第2層または他の抗菌層に付与された抗菌性組成物から1つ以上の溶剤または液体の幾つかまたは全てを除去する方法は、産業において公知である。炉、マイクロ波照射、およびIR(赤外線)ランプにおける加熱は、溶剤を除去するための公知技術の方法である。自然乾燥もまた、本発明によって考慮される。
【0031】
抗菌性組成物の成分は、抗菌性組成物から作成される抗菌層の本来の性質に貢献してもよい。たとえば、抗菌層は柔軟で、直線方向である程度の弾性があり、曲げの力の下で破断することなく伸張し得る。抗菌層は、水分または空気に浸透性があり、もしくは水分または空気に浸透性がなく、あるいは非常に高湿度または空気透過性を有してもよい。抗菌層の抗菌剤は、光誘発性変色または熱誘発性変色に抵抗する薬剤であってもよい。本発明の態様は抗菌剤を含んでもよく、抗菌層に組み入れられる場合に蒸気滅菌、酸化エチレンまたはガンマ照射のような既知の殺菌方法によって影響を受けない。
【0032】
本発明の積層構造体は第2層を含んでもよい。第2層の一例は接着層である。第2層の他の例は、表面に抗菌層を接着させるか一時的に接触するための成分であり、両面テープ、裏粘着性のテープまたは静電的接着機能を提供する材料を含むがこれらに限定されない。接着層は、接着層作成において除去され、減らされ、あるいは加えられるもの、構造体要素に付与された接着性組成物を乾燥させて接着性組成物からの1つ以上の溶剤の一部または全部を除去することを除いて、接着性組成物から作成され、接着層が接着性組成物の成分を含むことを意味するべく意図している。
【0033】
例えば、接着性組成物は剥離ライナーのような構造体要素に付与され、接着性組成物の1つ以上の溶剤または他の液体の一部または全ては加熱や乾燥によって除去され、接着性組成物の残留成分を含む接着層を形成する。本明細書で使用しているとおり、用語の接着性組成物および接着層は互換可能で、それらの意味と用途は明細書記載に照らして明白である。
接着剤組成物は、接着剤および溶解剤を含んでもよい。
【0034】
積層構造体の接着層は、感圧接着剤、永続性接着剤、経時硬化性接着剤、紫外線または可視光のような電磁エネルギーで硬化する光活性化接着剤または熱活性化接着剤のような接着剤のどのタイプを含んでもよい。積層構造体の接着層において使用できる様々な形の接着剤は、従来技術において塗布および包装産業に熟練した当業者にとって公知である。本発明の積層構造体の例は、接着層として感圧接着剤を含む。接着剤組成物は、接着剤の1つ以上のタイプを含んでもよい。
【0035】
抗菌層および接着層が分離した層である場合、例えば抗菌層の性能を損なうかまたは変更することのないよう、接着層が抗菌層と相互に作用しないことが考慮される。相互作用によって、接着層が抗菌剤の機能を変更する変色または相反的な化学反応を起こさないこと、もしくは抗菌剤層中に拡散して抗菌層内で接着性の態様を提供させないことが意味される。たとえば、隣接の接着層において使用する溶剤に溶解しない抗菌層のバインダーポリマーを使用することは、2層間の相互作用を防ぎ得る。積層構造体が分離した接着層および分離した抗菌層を含む場合、抗菌層への接着剤の泳動も、接着層への抗菌剤の移動も無いことが意図される。2層は、たとえばそれぞれの層において使用するバインダーおよび/またはそれぞれの層において使用する溶剤によって、各々から分割される。
【0036】
接着層において使用する接着剤は感圧接着剤を含み、感圧接着剤は当業者にとって公知である。感圧接着剤は、ポリウレタン、シリコーンポリマーまたは他の合成ポリマー系材料から作成され、架橋性でも非架橋性でもよい。接着剤は天然ポリマー、例えばカゼイン、であってもよい。本発明は、生体適合性があり、抗菌剤に対して不活性である接着剤を考慮する。たとえば、本発明において有効な接着剤は、National Starch社によってDUROTAK(登録商標)ブランドとして商業上販売されているアクリル系接着剤;米国特許第5508038号において開示され、全体が参照により本明細書に組み込まれるポリイソブチレン;Ashland Chemical社からAroset(登録商標)ブランド接着剤として商業上販売されているポリアクリレート系接着剤;スチレン系感圧接着剤、およびBIO−PSA(登録商標)ブランドシリコーン系感圧接着剤(Dow Chemical社)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0037】
接着剤組成物は、任意で添加剤を含んでもよい。たとえば、層を着色するために着色剤を加えてもよい。着色剤は、合成でも天然でもよい。好適な着色剤は、FDAによって承認されている食用染料である。接着剤組成物には蛍光化合物を添加してもよい。
チタニアのような充填剤、天然または合成的粘土(たとえばLaponite(登録商標))および化粧品産業において色の陰影を提供するために使われる公知の他の充填剤を加えてもよい。接着剤組成物には、グリセロール、尿素、グリコール(PEG、ポリエチレングリコールおよび高分子量の類似体)のような湿潤剤もさらに含まれてもよい。米国特許第6,605,751号にて開示された可塑剤、水中グリセロール、プロピレングリコールおよびブタノールを接着剤組成物に取り入れてもよい。歯科産業において使用される低分子量ポリアミド樹脂もまた、可塑剤として役立ち得る。
【0038】
接着層形成のために構造体要素または抗菌層もしくは他の接着層あるいは第2層に付与された接着性組成物から溶剤を除去する方法は、産業において公知である。炉、マイクロ波照射、および赤外線ランプの加熱は、溶剤を除去するための公知技術の方法である。自然乾燥もまた、本発明によって考慮される。
【0039】
本発明の態様は、単層積層構造体を形成するために抗菌層および第2層の組み合わせからできた組合せ積層構造体を含む。たとえば、抗菌性組成物および接着剤組成物を組み合わせて混合し、例えば接着性を有する抗菌性および接着剤層を組み合わせた剥離ライナーを形成する構造体要素に付与される。組み合わせた抗菌および接着層は、処理を受けて1つ以上の溶剤の幾つかまたは全てを除去してもよい。第2剥離ライナーは、積層体の第1剥離ライナーの反対側に付与してもよい。
【0040】
本発明の積層構造体は、構造体要素を含んでもよい。構造体要素は、その上に抗菌層または接着層が形成される構造体であってもよい。構造体要素は、一方または両方の層を周囲への露出から防護するのに役立ち得る。構造体要素は抗菌層が織布または不織布材料上に形成される場合に積層構造体の永久的な成分であってもよく、または、構造体要素は剥離ライナーのような除去可能な要素であってもよい。
【0041】
構造体要素は、抗菌層に対しておよび/または接着層に対して不活性であってもよい。ライナーのような構造体要素は、紙、プラスチックポリマーまたは紙とプラスチックとの複合材であってもよい。シリコーン系のライナーは、公知技術である。たとえば、3M ScotchPak(登録商標)ブランドのライナーが使用できる。たとえば、セラミック酸化被膜(AlOx)を含んでもよく熱シール可能なポリオレフィン層を有するポリエステル(PET)ベースフィルムは、構造体要素またはライナーとしての使用が考慮される。紙系およびプラスチック系ライナーの使用は共に本発明によって考慮される。紙系ライナーおよびプラスチックライナーは、様々な重量(#数)、色、厚さを伴う。ライナーは、剥離比または特性の程度を変化させるシリコーン剥離材料または他の剥離材料で塗布されてもよい。紙/プラスチック複合ライナーのタイプもまた使われてもよく、従来技術において周知である。錫は一般に安全と認められる(GRAS)と考えられていないので、シリコーン剥離塗布が錫系硬化化学から誘導されないライナーが考慮される。さらに、ライナー上の剥離塗布はシリコーンに限定されない。フルオロシリコーンまたはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなその他の材料もまた好適であり得る。たとえば、ライナーの厚さは0.5ミル〜10ミル以上まで変動し得る。剥離塗布を伴わないライナーを使用してもよく、積層構造体における所望の剥離性能も達成できる。ライナー材料の選択は、剥離比とライナー除去するために必要な力に基づき、または、ダイ打抜きもしくはスタンピング動作を使用する能力のような下流の製造要件のニーズに基づき得る。
【0042】
本発明の一態様は、少なくとも2つのライナーを有する積層構造体の1層からのライナーの差動剥離を含む。差動剥離によって、特定の引き剥がし力の下で或るライナーは剥離し、他のライナーは剥離しないことを意味する。物理的学術用語において、差動剥離は構造体の一方の側から1つのライナーを剥離または引き剥がすのに必要な力が、構造体の反対の側から第2ライナーを剥離または引き剥がすのに必要な力とは異なることを意味する。図1のように、抗菌層が抗菌側と反対側、即ち接着側、を有する積層構造体を形成する接着層と密接に接している積層構造体の例において、接着層と接しているライナーにとって、ライナーを除去するのに必要な力が抗菌層と接しているライナーを除去するのに必要な力以下であることが望ましい。この差動力の態様は、ライナーのうちの1つが1層と接触したまま残り、第2ライナーが除去される機械化動作において有用である。
【0043】
複数態様において、F接着=F抗菌。複数態様において、F接着<F抗菌、式中、F接着は接着剤側のライナーを除去するのに必要な引き剥がし力であり、F抗菌は抗菌層と接しているライナーを除去するのに必要な力である。複数態様において、F抗菌は少なくとも1.5倍>F接着、F抗菌は少なくとも5倍>F接着、F抗菌は少なくとも10倍>F接着である。一般的に、この不等式は積層構造体のために作成時から表面へ付与される時間まで維持され、すなわち比(F抗菌/F接着)が積層体の寿命を通じてもしくは表面に付与されるまで変動してはならない。この力の相違を達成するために、ライナーには代表的に異なる剥離剤か差動剥離を提供する材料を塗布してもよい。ライナーは、少なくとも2つのライナー間の差動剥離比を達成すべく、異なった剥離比を有する材料で作成したものの中から選択してもよい。これは表面に積層体を付与する動作を援助し、その結果、動作は最初に接着層を露出し、次いで抗菌性とすべき表面に接着層を接合し、その後に抗菌側をおおっているライナーを除去することが可能となる。
【0044】
本発明は、積層構造体を作成する方法を含む。積層構造体を作成する方法は(i)少なくとも1つの抗菌剤、例えば銀サッカリン酸(AgSacc)、液状分散媒および可溶なバインダーを含む抗菌性組成物を防護用剥離ライナー、即ちライナー1のような構造体要素に付与してライナーの実質的に全部分あるいは一部に塗布層を形成すること、(ii)抗菌性組成物を乾燥させて液体を除去し、抗菌層を形成すること、(iii)乾燥した抗菌層に第2層を付与して塗布層を形成すること、第2層は接着剤、たとえば感圧接着剤(PSA)を含む接着剤組成物、溶剤および任意で着色剤のような他の添加剤を含む、(iv)接着剤組成物を乾燥させて過剰の溶剤を除去し、接着層を形成すること、および、(v)防護用剥離ライナー、即ちライナー2で接着層を覆うこと、を含む。感圧接着剤は圧力だけの付与の下で表面に結合する接着剤であって、熱、光または溶剤による活性化を必要としない。積層構造体は、まず接着層または抗菌層が形成され、他の層が2番目に形成されて特定の順序なしで製造されてもよい。
【0045】
積層構造体は、便宜的に寸法決めされて個々のユニットに提供される単位体として提供されてもよく、または、連続的な材料がロールとして提供され、どの基材もしくは表面にも抗菌性の態様を提供することが必要な場合に使われてもよい。本発明は、まず接着層が形成され、そこに抗菌層が加えられる、あるいは、抗菌層がまず形成され、そこに接着剤が添加されると言う様な層形成で特定の順序なしを考慮する。
【0046】
本発明の積層構造体を作成する方法は(i)少なくとも1つの抗菌剤、例えば銀サッカリン酸(AgSacc)および可溶なバインダーを含む抗菌性組成物を防護用剥離ライナー、即ちライナー1のような構造体要素に付与してライナーの実質的に全部分あるいは一部に塗布層を形成すること、(ii)抗菌性組成物を乾燥させて抗菌層を形成すること、(iii)防護用剥離ライナー、即ちライナー2のような第2構造体要素に、接着剤、たとえば感圧接着剤、および任意で着色剤のような他の添加剤を含む接着剤組成物を付与してライナーの一方の側の表面の実質的に全部分あるいは一部に塗布層を形成すること、(iv)接着剤組成物を乾燥させて接着層を形成すること、および(v)抗菌層の外部表面、ライナーの反対側の表面、を接着層の外部表面、ライナーの反対側の表面、に接触させて積層構造体を形成すること、を含む。前記2表面は、圧力を発揮するためにニップローラを使用して接触させてもよく、積層構造体を形成し得る。積層構造体の作成方法は、使用する製造設備のタイプおよび積層構造体の用途に従って選択され得る。
【0047】
本発明の一態様は、連続的ロール積層構造体を作成する際の単一の構造体要素を使用することを含む。たとえば、1つのライナーだけを使用する。任意で、単一のライナーを使用する際、ライナーの2つの表面自体は異なった剥離特性を有する。ライナーの1つの表面上に抗菌性組成物が付与され、抗菌層が形成される。この表面から抗菌層を剥離するのに必要な力はF抗菌である。接着剤組成物は抗菌層上に付与され、接着層が形成され、積層構造体が作成される。積層構造体は、次いで巻き取られて連続的なロールとなる。ロール内では、接着層はライナーの側面と接して、抗菌性組成物で塗布されていない。ライナーから接着剤を剥離するのに必要な力はF接着であり、この力は遥かにF抗菌未満である。その結果、積層構造体を使用する準備が整うと、まず最初にライナーを引き剥がして接着性の側面を露出する。露出した接着性の側面は、どの表面にも付与できる。それが付与されたあと、ライナー材料は次いで引き剥がされて今度は表面の外側にある抗菌性の側面を露出する。ライナーが構造体から確実に剥離可能となるために、比率F抗菌/F接着が1を超えることが考慮される。かかるライナーは、テープ産業の当業者に既知である。
【0048】
本発明の積層構造体作成方法は、1層および任意で1つまたは2つの構造体要素を有する積層構造体を作成することを含む。たとえば、抗菌層は剥離ライナーのような1つの構造体要素上に形成できて、第2剥離ライナーのような第2構造体要素は抗菌層表面に付与できる。2つのライナー材料はこれらの間に抗菌層を挟む。剥離ライナーは、同一または異なる剥離特性を有してもよい。異なる剥離特性は、剥離ライナーに見つかる剥離塗布物のタイプによって決まり、あるいはライナーの一方または両方の上の剥離塗布物の欠如によって決まってもよい。剥離ライナーの差動剥離は、複数ライナーが同じ抗菌層と接している場合であっても1つのライナーが他と比較して非常に小さな力を要求する方式で剥離してもよい。
【0049】
たとえば、かかる積層構造体を作成する際に、抗菌性組成物は剥離ライナーの1つの表面に付与され、抗菌層が形成され、第2剥離ライナーは抗菌層の外部表面に付与され、例えば保管のためのコア上に構造体をロールにするか巻き上げる前に第2剥離ライナーと共に抗菌層を一対のニップローラの間に通過せしめて第2剥離ライナーを付与する。ライナーのうちの1つを他のライナーの除去の前に除去するニーズがある場合、ライナーは有色であってもよいかまたは指示を印刷してもよい。
【0050】
使用に際して、抗菌層だけの積層構造体は、表面に付与されてもよく、表面または患者に材料を安定させるためのテープ、ガーゼまたは他の周知の方法によってその場所に保持される。たとえば、1つのライナーが除去され、抗菌層は両面テープの一方と接してプの他の側は表面と接してその表面に接着し、抗菌層上のライナーは周囲に抗菌層を露出するために除去される。使用に際して、抗菌層と接しているライナーを除去する場合に、その層のどの部分もライナー材料と結合する必要はなく、抗菌性表面にギャップを残すことは考慮される。これはまた、接着層にとっても真実であるが、接着剤のギャップは抗菌物質共存系または機能のギャップほど構造体の使用に有害であってはならない。均一表面が抗菌層によって提供されることを確実にする1つの方法は、着色剤または蛍光色素を抗菌層に添加することである。蛍光色素は通常人間に見えないので、表面に付与されるときにも見えない。しかしながら、紫外線照射の下で蛍光性化合物は蛍光を発生する。抗菌層のどの欠損域も、暗領域として検出される。
【0051】
図2Aおよび2Bを参照して、抗菌性の気泡クッションを有するHuber針点滴アクセス器具の構造が示されている。積層構造体のライナー2は積層体の接着層を露出するために除去できて、それは次いでEVA気泡クッションに付与される。ライナー1は後の時間に除去してもよく、抗菌層を露出して、気泡クッションの1つの表面に抗菌態様を提供する。気泡体の他の表面は積層構造体の接着層の付与によって同様に処理されてもよく、その表面に抗菌態様を提供し、あるいは気泡体表面が接着剤だけの層を備えて他の表面に気泡体を固着させてもよい。接着剤だけの構造体は、感圧接着剤、PSA、溶剤および任意で着色剤のような他の添加剤を含むライナーに塗布物を付与して接着層を形成することによって作成してもよい。図2Aは、接着層上のライナーの除去を示す。図2Bは、気泡および接着剤だけの構造体の反対側の表面に取り付けられた抗菌積層構造体を示す。
【0052】
クッション器具を有するHuber針の場合には、ライナー3は接着剤だけの層から除去され、気泡構造体は針器具に取り付けられるクッションまたはパッドを提供する。抗菌層を覆っている剥離ライナーは、例えば患者の身体に器具を取り付ける時に抗菌層を役立たせる前に除去され、気泡体は針と患者の皮膚との間に提供される。任意で、剥離ライナーは器具を包装する前に除去してもよく、次いで好適に殺菌してもよい。積層構造体によってあってもよい数個の剥離ライナー間の混同を防ぐために、抗菌層の剥離ライナーは着色、成形、書込みまたは何らかの方法で接着層に使用するライナーと異なるようにしてもよい。
【0053】
包装形態では、気泡に付着した抗菌層を有するHuber針点滴アクセス器具は、通常は抗菌積層構造体のない器具と区別することは困難である。この欠点を克服するために、本発明は積層構造体に彩色または着色剤を施した抗菌層のような1つ以上の層を提供する。あるいは、彩色または着色剤は、抗菌層の代わりに接着層に添加される添加剤であってもよく、または積層構造体の全層に添加されてもよい。
【0054】
積層構造体を作成する方法は、抗菌性組成物を織布または不織布材料のような繊維である構造体要素に付与することを含む。抗菌性組成物は浸漬や噴霧のどの方法によって繊維に付与してもよく、繊維は抗菌性組成物によって含浸させてもよく、抗菌性組成物で塗布してもよく、繊維の全部または一部は抗菌性組成物によって接触されてもよい。あるいは、繊維または構造体支持体に抗菌性を付加してもよい。繊維は抗菌剤、即ちたとえば本明細書において一覧を示すものの1つ、他の抗菌性化合物、要素または分子によって接触されてもよいが、本発明の抗菌性組成物によって接触されることはない。抗菌態様は、構造体要素の一方の側に抗菌層を付与し、反対側に接着層を付与して、織布または不織布材料の構造体要素に提供されてもよい。
【0055】
積層構造体を作成する方法は、抗菌性組成物を織布または不織布繊維である構造体要素に付与して繊維を抗菌剤によって含浸させることを含む。繊維は、抗菌性組成物で浸漬または吹き付けされて含浸させ、次いで防護のために1表面上のライナーと接触させてもよい。接着層は、直接付与してもよく、あるいは繊維抗菌層をライナーのような構造体要素に提供される接着層と接触することによって提供され、積層構造体を完成させてもよい。積層構造体は、抗菌層の両方の外部表面が剥離ライナーによって覆われる繊維構造体要素に付与される抗菌層を含んでもよい。
【0056】
本発明の一態様は、積層構造体がダイ切断を受けていかなる形状にも寸法にも為し得るということである。これは、寸法決めされる積層構造体が抗菌化されることを目的とするいかなる表面にも合致させる。これは、材料の有効利用を許可し、廃棄物を減らして、積層構造体に競争優位を与える。積層構造体は、コア上に巻き取られ、標準寸法で入手可能な固定次元の連続的シートロールの形で作成できる。積層構造体はいずれの寸法ででも販売され、ヘルスケアプロバイダのようなユーザによって容易に切断される単一の個々のシートで供給できる。
【0057】
意図した用途に従い、積層構造体は確かな特性を備えていることができる。たとえば、連続的なロール形の積層体は、構造体層の破壊または開口のない均一積層体であってもよく、一度付与された連続的な抗菌性表面を提供する。非連続的抗菌層も作成可能であり、たとえば構造体要素上の抗菌層および/または接着層にグラビアまたはスクリーン印刷法で穿孔を作り出し、流体または他の媒体が形成された積層構造体の開口を通して自由に動くことができる。穿孔は小さくてもよく(径1mm以下)、大きくてもよく(>20mm)、またはこれらの間のいずれの範囲でもよく、最終用途に依存する。穿孔は、いかなる形状でもよく、例えば円形、四角形、多角形、細孔、ランダム形状であってもよい。
【0058】
抗菌層および/または接着層は、連続性の層が形成されるべく付与してもよく、あるいは抗菌層および/または接着剤がドットパターンのようなパターン状に形成されてもよい。本発明の積層構造体の作成方法は、抗菌層をオープンパターンまたはシルクスクリーンパターンで構造体要素上に形成すること、次いで接着層を上塗りして構造体要素上で抗菌層が見つかる場所にのみ接着層を形成することを含む。この積層構造体が連続気泡ポリウレタンフォームのような基材の表面へ移されるときに、抗菌積層構造体は非連続的であって、流体はたとえばオープン領域を通過して気泡に至る。図1〜4に示されている積層構造体において、積層体は連続的でもよいし、または穿孔されていてもよい。
【0059】
積層構造体は、無制限の表面タイプ、たとえば、金属または合金、セラミック、高分子繊維、プラスチック、ガラス、気泡体またはこれらの組み合わせに付与できる。表面外形は、平面、球状、円筒状または外形組み合わせの他のいかなるタイプでもありえる。たとえば、抗菌積層構造体は医療器具、人間または動物の治療において使用する材料の表層に付与されてもよく、または、微生物の成長の汚染微生物数または阻害の縮減が有利である処理領域に付与され、例えば手術室、検査室、病室、手術用ドレープまたはカーテン、シャワーカーテン、病院のドア上のハンドルバー、トイレのフラッシュハンドル、バスルーム紙タオルディスペンサの回転ノブ、便座、ドアノブ、車輪付き担架、幼児用寝台、ベッド、鼻の挿入具、歯科補綴具、歩行器、老人用杖、病院ベッドおよび補助装置、医用または病院職員によって接触されるマットレスまたは他の表面、設備、エレベータ上の押しボタン、バスルーム乾燥機または患者(IDタッグ)に付与される。非医療用途は、カビ生えを防ぐために暖房、換気、および空調導管または配管(HVAC)を内張りすることを含んでもよい。ここで提供される積層構造体の最終用途の様々な例は、図示する目的だけのためであって、限定として解釈されてはならない。たとえば、物品の表面に対する積層構造体の付与は、下面に接着剤を結合するための圧力の下で実行される。表面が予め接着を妨げ得る汚れや残渣を除去するために通常確実に掃除すること以外に特殊な努力または手順は必要ではない。
【0060】
表面を抗菌性にする方法は、(a)積層構造体を提供すること、および、(b)積層構造体を表面に付着せしめて抗菌層を最外部とすること、を含む。積層構造体は作成可能で、気泡体のような表面に付与する準備ができるまで保管できる。
【0061】
本発明の器具は抗菌積層構造体−気泡体を含んでもよく、図1Aに示されるような積層構造体から、ライナー2を除去して接着層を露出することによって作成できる。接着層は吸収性の気泡体に接触し、次いで抗菌層はライナー1を除去することによって露出される。気泡体を担持している抗菌積層構造体は、創傷に抗菌剤を提供する創傷ケア包帯を作り出するためにTegaderm(登録商標)のような織布層を有する気泡体を覆うような他の層を含んでもよく、浸出性を吸収し、新しく形成された皮膚に付着されない。
【0062】
図4Aは、接着層を露出するライナーの除去を示す。図4Bでは、粘着性の側面が気泡体表面と接して抗菌性積層物を気泡体上へ転送する。気泡体はロールまたはシートの形態でありえる。気泡体は寸法に切断され、接着剤を介して器具に付着し、緩衝作用を提供する。
【0063】
表面は抗菌剤を使い果たした積層構造体を単純に除去して、新しい積層構造体を再び付与することによって代わりに複数回抗菌性を呈示することができ、代替的に、使い果たしたものの上に新しい積層構造体を付与できる。たとえば、感圧接着剤が接着層において使用されるときに、除去は可能で有り得る。接着剤は溶剤によって除去可能で、穏やかな熱の付与に続く摩滅動作によっても除去可能である。この態様は、抗菌剤が基材に合成する他の抗菌性製品(例えば設備上の押しボタン)より上の利点を提供し、表面の抗菌物質が一度使い果たされると、製品は廃棄されなければならないかまたはもはや抗菌性であるとみなされず、その器具の使用原価および機能性の損失が加えられる。
【0064】
抗菌特性を提供するために組み入れられる抗菌物質を有してもよい器具の例には、連続気泡または独立気泡を含む器具が含まれる。合成気泡を作成するポリマーのタイプは、様々な異なる特性を有する完成品に導く。たとえば、ポリウレタンポリマーは高流体吸収能力を有する連続気泡を形成する。流体は、接触すると直ちに気泡体マトリックスの本体に入りこめる。銀のような抗菌剤は、発泡ステップの前に直接に銀剤をポリマー混合物に混ぜ入れることによってかかる気泡に組み入れられることができる。銀は、気泡の製造の間にマトリックス全体にわたって沈澱する。流体の吸収が器具仕様の機能上の判定基準である場合、かかる気泡が使用されてもよい。エチレンビニルアセテート(EVA)ポリマーは独立気泡を生成するために使用出来る。EVA気泡は流体を吸収せず、水性流体で濡れ難い。EVA気泡は、流体の吸収が機能性目的でない分野において使われてもよい。たとえば、EVA気泡は連続的な血管のポートアクセスのために使用されるHuber針と連動して連続的な消耗器具と患者の皮膚との間のクッションとして使われてもよい。EVA気泡体はより快適で、ポリウレタン(PU)フォームよりも良く殺菌工程に耐える。EVA気泡体の使用の限界は、抗菌物質がマトリックスに閉じ込められて接触点の周りで汚染微生物数を制御するために利用できないので、抗菌物質をポリマーマトリックスに混ぜ入れることの実際的価値がほとんど無いということである。
【0065】
Huber針の使用において、患者の皮膚が針によって破られて、針は内在している経皮デバイスとしてその場所に残される。Huber針の使用の長く続く期間と、良好な衛生学実務の利用にもかかわらず、穿刺路に沿って始まっている感染の持続性のリスクが存在する。追加合併症は皮膚バクテリアによるEVAクッションの潜在的な定着であり、アクセスのポータルで微生物の汚染微生物数を増やす。感染リスクを少なくするために、独立気泡のような水分吸収性が乏しい気泡が要求される。したがって、低水分吸収に加えて抗菌特性を有する、かかる気泡へのニーズがある。積層構造体は、かかる気泡に抗菌態様を提供することができる。
【0066】
抗菌機能性を水分非吸収気泡に付与する1つの方法は、気泡の表面上に抗菌性銀剤の塗布物を直接に添加することを含む。EVA重合体から作成された、かかる気泡は器具が患者の腕または脚と接している間に圧力の効果を軽減するのを助けるためにHuber針器具のクッション要素として使われる。1例において、抗菌剤、即ち銀サッカリン酸(この後AgSaccと称する)、は気泡材料上の層としてMeyerロッド ドローダウン技術を使用して直接に付与された。抗菌性組成物の気泡体マトリックスに対する付与が管理された実験室条件の下で合理的に直接に機能したにもかかわらず、器具に抗菌態様を提供する気泡のような代替法はフルスケール製造の要望であり得る。抗菌剤の直接塗布に対する限界は、EVA気泡シートのような材料の一様でない表面上の抗菌性塗布の不均一性;塗布と基材間の接着力または結合力;溶剤を除去する際の溶剤に関連した態様と溶剤蒸気の制御に関連した態様、および、保管および処理の間、損傷を防ぐために付与して抗菌層上の防護のライナーを保持する困難を含む。これらの課題は、例えばEVA気泡クッション表面へ抗菌積層構造体を付与することによって解決できる。気泡または器具に抗菌態様を提供する方法は、例えば気泡体基材表面に積層構造体を付着せしめることを含む。
【0067】
本発明は、医用および非医用器具の表面および他の表面を抗菌性とするために抗菌積層構造体の付与および使用を含む。本発明によって考慮される医療器具は、抗菌積層構造体を有する圧縮成形されたポリエチレンフォームを表面に付与して含む抗菌性の鼻への挿入具を含む。鼻腔への挿入の前に抗菌層上の剥離ライナーは除去され、器具は鼻の内部に嵌入される。かかる器具は抗菌耐性のStaphylococcus aureus(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA))の共存性を低下せしめるために、例えば病院での患者に使われてもよい。本発明の積層構造体は、壁紙として壁の表面に付与してもよい。かかる壁紙は、病院の手術室やICU室において使用してもよい。抗菌性パッドのまわりに接着性部分を含む包帯もまた、本発明によって考慮される。気泡の使用を含む大部分の医療器具または応用は、本発明の積層構造体を用いて抗菌性とされ得る。たとえば、積層構造体は3M(登録商標)の製品気泡テープ、例えば3M 970系列、によって抗菌機能を付加してできた、異なるポリマータイプに基づく気泡テープに用いてもよい。
【0068】
本明細書並びに添付した特許請求の範囲おいて使用する、単数形の「a」、「an」および「the」は文脈が明白に他を記述しない限り複数の指示対象を含む。
【0069】
本明細書において含まれる全ての特許、特許出願および参照文献は、具体的には全体において本明細書において引用したものとする。
【0070】
もちろん、前述の記載が本発明の好適な実施形態だけに関すること、および多数の改善または変更が本発明の精神および権利範囲から逸脱することなく為しえることはよく理解されるべきである。
【0071】
本発明は下記の実施例によってさらに説明され、それはいかなる形であれ限定をその権利範囲に課すこととして解釈されるものではない。これに反して、方策が様々な他の実施形態、改質およびその均等物を有してもよいと明白に理解されることになっている、本明細書において記述を読みとった後に、それは本発明の精神および/または添付の特許請求項の権利範囲から逸脱することなく、それら自身を当業者に提案することができる。
【実施例】
【0072】
実施例1
銀積層構造体の調製および気泡体に対する付与
サッカリン酸銀スラリーの調製:円錐状の50mLポリプロピレン管(Falconブランド)2本にて、サッカリン酸ナトリウム(15mL、0.125M)および硝酸銀(15mL、0.1M)を混合してサッカリン酸銀沈殿物を形成した。2本のポリプロピレン管を撹拌混合し、次いで10分間6000rpmで遠心分離した。上澄み液をデカンテーションし、廃棄した。次いで脱イオン水をそれぞれの管に添加し、それから再び撹拌混合した。それぞれの管のスラリーをかき混ぜて単一の管に収め、内容物を前の通りに遠心分離した。上澄み液をデカンテーションし、固形物を脱イオン水によってもう一度洗浄した。最終的な洗浄済み上澄み液をデカンテーションした後に、サッカリン酸銀固形物の沈殿物が残った。この固形物に2mLのエチルセルロース溶液(Dow Chemical社、Midland、MI、Ethocel Standard 10 Premium grade、3% w/v)を添加し、全内容物を撹拌混合して均一な粘性不透明白色スラリーを得た。
【0073】
ライナー上へのサッカリン酸銀層の調製:粘性スラリーは、裏紙(40#漂泊クラフト紙、厚さ2.5ミル、LLT Bar Code&Label社製,Stow,OH)を有するシリコーン系の剥離ライナー、幅約4インチ、長さ約6インチ、にMeyerロッド#10の助力で塗布した。スラリーの第1塗布物が乾燥した後、塗布重量を増やすために第2塗布物を付与した。合計4つの塗布物が付与され、次いでライナーを光から防護しながら空気乾燥し続けた。
【0074】
接着剤調製および塗布:20mL容量のドラムバイアル瓶に、接着剤流体(D380−2819、Intellicoat Technologies、英国)を2gまで移した。接着剤を希釈するために、エチルアセテート(2mL)を添加した。バイアル瓶の内容物を混合して均質とし、次いで接着剤組成物をサッカリン酸銀層の乾燥した層上にドローダウン塗布法(Meyerロッド#10)を使用して塗布した。溶剤含有量を減少させるために接着剤塗布物を乾燥し、材料の粘着度を増やすことができた。乾燥を加速するために、接着層を簡潔に加熱した。
この段階で、接着層と互換性がある他の剥離ライナーを接着層に付与してもよく、銀積層構造体は後の使用のために保管してもよい。
【0075】
銀積層構造体で抗菌性とした気泡層の調製:積層構造体(紙ライナー+サッカリン酸銀層+接着層+ライナー)の小片を(1インチ×2インチ)寸法に切断し、接着剤と接触する剥離ライナーを除去した。接着層を同じサイズのEVA気泡層と接触させた(タイプ#2EVA、Rubberlite Industries、Huntington、WVA)。これによりサッカリン酸銀層を剥離ライナーでまだ覆っている銀積層構造体つきの抗菌性気泡が形成された。空気の巻き込み防止を確実にするため、ガラス製の試験管をニップローラとして作動するよう、積層物上で転がした。AgSacc層を覆っていた剥離ライナーは困難無く引き剥がされ、サッカリン酸銀層を露出した。前記の層はいかなる接着性も呈さず、接着剤がスラリー塗布物を経て漏出しなかったことを示した。
【0076】
抗菌検査:阻害アッセイの帯域において、サッカリン酸銀気泡体はMRSAに対抗する8mm径円板を広く囲んでいる2mm幅の阻害帯域を示した。未処置の気泡円板は帯域を示さなかった。銀フィルム積層物で作成される気泡構造体が抗菌性であることが判明した。
【0077】
実施例2
サッカリン酸銀層付きライナーの銀含有量の判定
銀抗菌層(接着剤無し)を塗布したライナーの幾つかの小片を、実施例1で作成された大片から切り取った。未塗布ライナーの幾つかの異なる寸法の小片を用いて、ライナーの重量とその面積との間の相関を以下のように確立した。ライナーの重量=0.0073×(面積)+0.0024
【0078】
銀を塗布した小片の寸法から、それらのライナーの重量は上記の相関の補助によって推定された。個々の小片は銀を剥ぎ落して銀含有量をFAAS結果からppm単位で算出し、銀充填量は〜143±12.1μg/cmと推定された。
サッカリン酸銀塗布物の一様性は、3つの異なる塗布サンプルを調製し、FAASによって銀を分析することによって判定した。結果は、銀の充填量がそれぞれ157、161および152μ g/cmの値であることを示した。これらの値は非常に接近しており塗布工程が整合していることを示している。
【0079】
実施例3
銀積層構造体付き気泡構造体の長期間抗菌効力
実施例1で作成した積層構造体を使用してEVA気泡体を抗菌性とし、阻害アッセイの直列転送帯域の長期間抗菌効力を検査した。簡潔に記載すると、24時間ZOIアッセイからのサンプルは、バクテリアの新しい芝生を塗布した第2シャーレへ移されて、前の通り37℃にて24時間培養した。透明帯域がもはや見られなくなるまで、直列転送ステップは継続された。この方法によって、検査終了前に少なくとも10日の持続時間が観察された。この例では、〜190μg/cmの銀充填気泡体の抗菌活動は少なくとも10日間観察された。
【0080】
実施例4
銀積層構造体付き抗菌性気泡体上のETO殺菌の効果
銀積層構造体で抗菌性とした寸法〜1インチ×2インチの気泡体を実施例1での記載の通りに調製した。サッカリン酸銀層を露出したサンプルをETO浸透嚢に包装し、ローカル設備でのETO殺菌用に送り出した。ETO殺菌の後、変色は無かった。
【0081】
実施例5
銀積層構造体付き気泡体の調製(方法2)
実施例1と同様に、サッカリン酸ナトリウム(0.125M)および硝酸銀(0.1M)のそれぞれ15mLを混合することによってサッカリン酸銀スラリーを調製した。スラリー入りの管を数分間撹拌混合し、次いで遠心分離した。上澄み液をデカンテーションし、中間に遠心分離ステップを交えて固形物をエタノールで3回すすいだ。最終的なエタノールすすぎの後、(残渣エタノールの量〜2.5g/g)、エタノール(12%w/v)中の2gエチルセルロース溶液を湿潤固形物に加え、スラリーを再び撹拌混合した。
【0082】
シリコーン剥離紙ライナー片にサッカリン酸銀スラリー塗布をし、周囲の空気内で〜1時間乾燥した。サッカリン酸銀層を塗布乾燥したライナーの1片を、両面テープ(〜1インチ幅、Fralock Industries社、Canoga Park、CAからの3M 9415、)の露出した接着性の側に対して一様に圧接した。この時点で、銀積層構造体は更なる使用の準備ができるまで保管できる。本実施例では、両面テープの剥離ライナーは除去されて第2接着層が露出した。露出した層は、EVA気泡シート(厚さ〜3/16インチ、独立気泡型)の1表面に対して圧接され、銀積層構造体を気泡体に結び付け、抗菌性気泡体を形成した。抗菌性検査のため、サッカリン酸銀塗布物を覆っていたシリコーン剥離ライナーを除去した。
抗菌性検査(ZOIアッセイ)において、抗菌性気泡体はサンプルを囲む幅〜4mmの透明帯域を有するMRSAに対して効果的であることが判明した。
【0083】
実施例6
サッカリン酸銀含浸繊維で作成した抗菌性気泡体
サッカリン酸銀固形物を実施例5に記載されていると同様に作成した。エチルセルロース溶液を加える代わりに、エタノール(10mL)をスラリーに添加した。希釈したスラリーを6インチ径シャーレに移送した。ポリエチレン織物の3インチx3インチ片を30秒間スラリーに浸し、吸い取って過剰液体を除去し、炉で55℃にて30分間乾燥した。サッカリン酸銀含浸繊維の片(〜1インチ×2インチ)を切断し、両面テープの1側の露出した接着層に対して圧接した。次いで、テープの接着性の側を露出し、同じ寸法のEVA気泡体に対して圧接した。繊維にきつく結合しているサッカリン酸銀粒子のせいで、銀塩の摩擦落下は無かった。抗菌性検査において、織られたサッカリン酸銀含浸繊維を有する抗菌性気泡体が、〜6mmの阻止帯域幅を有するMRSAに対して抗菌性であることが判明した。ETOによる殺菌は、不透明白色のままであった銀含浸繊維の色に影響を及ぼさなかった。
【0084】
実施例7
銀積層構造体の調製および気泡体に対する付与
以下の組成を有するサッカリン酸銀スラリーを実施例1に記載した方法で調製した。
サッカリン酸銀 12.3%w/w
エチルセルロース 8.7%
エタノール 79.0%
スラリーをシリコーン処理のないアクリル樹脂ライナーに塗布して抗菌層を形成し、接着剤(実施例1と同一だが希釈無し)をドローダウン技術を利用してシリコーンライナーに塗布し、接着層を形成した。両方の塗布物を乾燥して層形成後に、抗菌層の露出した表面を接着層の露出した表面と接触せしめた結果、ライナーが積層体の外側となった。EVA気泡体に対して、接着層を気泡体に接触させながら銀積層構造体を付与した。剥離ライナーは意図の通りに機能し、接着層上の剥離ライナーは気泡体と接合し、サッカリン酸銀層を覆っている剥離ライナーが円滑に引き剥がされるときに、正しく剥離することを意味した。サッカリン酸銀層は、非粘着性感覚であった。
【0085】
実施例8
銀積層構造体の調製および気泡体に対する付与
組成物を含むサッカリン酸銀をこの実施例のために改質した。改質組成は以下の通りであった。
サッカリン酸銀 12.5%w/w
エチルセルロース 7.0%
エタノール 80.5%
サッカリン酸銀組成物100gに接着剤(National Starch社からのDurotak 387−2051)2.5gを直接加えて混ぜ合わせた。接着剤の少量を有する改質銀含有組成物をアクリル型非シリコーンライナー上に塗布し、乾燥して抗菌層を形成した。シリコーン型ライナー上にドローダウン方法によって接着剤の塗布物を付与し、乾燥して接着層を形成した。抗菌層の露出した表面は接着層の露出した表面と接触し、その結果ライナーが積層体の外側となった。抗菌性気泡体は、実施例7にて説明した通り、EVA気泡から作成された。剥離ライナーは意図の通りに機能した。サッカリン酸銀塗布物側は、辛うじて粘着性感覚であった。
【0086】
実施例9
実施例8の銀積層構造体の改質において、接着層はサッカリン酸銀層上に直接付与され、次いでシリコーンライナーが付与された。銀積層構造体を気泡に付着させることによって抗菌性気泡体を作成した。もう一度、サッカリン酸銀層は、辛うじて粘着性感覚であった。
【0087】
実施例10
実施例8の銀積層構造体のETOおよび耐光性
〜2インチ×1インチ抗菌性気泡体を実施例8に従って作成し、ローカル設備にてETOによって殺菌した。ETO殺菌の後、変色は無かった。他の抗菌性気泡体は〜1.5フィート離れたところの60Wの白熱ランプからの光に1週間連続的に曝された。辛うじて識別できる黄色への変色が観察された。しかしながら、変色は全ての表面を通じて一様で美学的に受け入れられた。
【0088】
実施例11
銀−CHG積層構造体
ドラムバイアル瓶中の実施例8と同様のAgSaccスラリー10gに接着剤(Durotak 387−2051、(National Starch))0.25gを添加し、引き続きのグルコン酸クロルヘキシジン(CHG)(Spectrum Chemicals社、Gardena(CA))20%溶液0.05mLを添加した。前記内容物を渦巻きミキサーで良く混合した。Meyerロッド#10を使用して、スラリーは紙系シリコーン剥離ライナーの小片(3インチ×1インチ)に付与され、乾燥して抗菌層を形成できた。前記抗菌層上に接着剤(Intellicoat Technologies D380−2091)の塗布物が付与され、溶剤が脱出して接着層が形成された。EVA気泡片が接着層に圧接された。ライナーが除去され抗菌層が露出した。MRSAに対するZOIアッセイにおいて、抗菌性気泡体が抗菌性であることが判明し、実施例8の構造体より僅かに大きな透明帯域を示して銀およびCHG間の協力作用を示唆した。
【0089】
実施例12
EVA気泡体上へのサッカリン酸銀の直接塗布
50mL容量のポリプロピレン円錐底管に、サッカリン酸ナトリウム水溶液(20mL、0.125M)をピペットで移し、続いて硝酸銀水溶液(20mL、0.1M)を撹拌混合しながら加え、サッカリン酸銀の乳白色懸濁液を生成した。懸濁液を3回遠心分離した。各遠心分離の後、上澄み液をデカンテーションし、脱イオン水(10mL)を固形物に添加して撹拌混合した。3度目の遠心分離およびデカンテーションの後に、水およびサッカリン酸銀により〜2:1の重量比で湿潤固形物を構成した。少量の脱イオン水(2mL)を湿潤固形物に添加し、乳白色ペーストを生成した。移送ピペットの助けを借りて、ペーストをEVA気泡体(タイプ#2EVA、Rubberlite Industries社、Huntington、WVa)の寸法1インチ×4インチ片の1縁(短い方)上に展延した。Meyerロッド#10を使用して、ペーストを気泡体上に展延してペースト材料の薄い湿潤フィルムを形成した。気泡体は、5分間空気乾燥され、次いで55℃に設定した炉へ移されてさらに75分間乾燥された。顕微鏡検査の下で、サッカリン酸銀固形物が一様に気泡体上に塗布されたことが分かった。
しかしながら、サンプルを取り扱う際に、サッカリン酸銀の幾らかの摩擦落下が観察された。
【0090】
抗菌活性に対する検査
サッカリン酸銀塗布気泡体は、規定の阻害帯域(ZOI)アッセイによって抗菌特性を検査された。簡潔に記載すると、円板(〜1cm径)を気泡体片から切り取って、ミュラーヒントン寒天(MHA)培地上に黄色ブドウ球菌の新たな夜通しの培養を新しい芝生に配置した。未処置の気泡円板とSilvaSorbシート水和円板とを、負の制御と正の制御とにそれぞれ使用した。MHA培地を37℃にて一晩培養し、各サンプル円板を囲んでいる透明帯域を測定し、記録した。塗布気泡の剥離特性を推定するために、同一サンプルを一貫移送検査の対象とした。日1の後のZOIアッセイからの円板は、バクテリアの新しい芝生で覆われている他のMHA培地へ移送された。培地は前の通りに培養され、銀を運んでいるサンプルを囲んでいる透明帯域がもはや観察されなくなるまで、毎日手順を繰り返した。気泡が有効であった持続時間として、サンプル円板の一貫移送の日数が記録された。
銀気泡サンプルは、ZOIアッセイの黄色ブドウ球菌に対して透明帯域を示し、抗菌活性を明白に示唆した。一貫移送検査において、抗菌効力を3日間観察した。
【0091】
変色に対する耐性検査
上記調製のサッカリン酸銀塗布気泡体の1インチ×1インチ気泡片を作業台に載置し、24時間周囲作業光に曝して変色を精査した。気泡片は、薄灰色の痕跡だけの色で変色を殆ど示さなかった。
【0092】
ETO殺菌効果の検査
他の気泡片(1インチ×1インチ)を水分浸透紙嚢に封入し、Portland、OR地域のローカル設備でのETO殺菌用に送出した。サンプルは精査され、未処置の気泡片と比較された。ETO処理の後、銀処理気泡と未処置の気泡との色の相違は実用的には認められなかった。図5を参照のこと。多くの銀含有器具がETO殺菌の間に銀塩が還元して生来の銀になるせいで迅速に変色することを考慮すると、この結果は極めて注目に値する。
【0093】
実施例13
EVA気泡体上へのサッカリン酸銀の直接塗布
50mL容量のポリプロピレン円錐底管に、Tween 20溶液(15mL、16.7gm/l)およびサッカリン酸ナトリウム溶液(15mL、0.125M)を逐次ピペットで移し、続いて硝酸銀水溶液(15mL、0.1M)を撹拌混合しながら加え、サッカリン酸銀の乳白色懸濁液を生成した。懸濁液を3回遠心分離した。各遠心分離の後、上澄み液をデカンテーションし、脱イオン水(10mL)を固形物に添加して撹拌混合した。3度目の遠心分離の後に、水およびサッカリン酸銀により〜2:1の重量比で湿潤固形物を構成した。少量の脱イオン水(2mL)を湿潤固形物に添加し、乳白色ペーストを生成した。
牛乳状ペーストを、実施例12にて記載したように、気泡片(2インチ×8インチ)上に塗布した。寸法1インチ×1インチの幾つかの気泡片を気泡体から切り取って、包装してETOで殺菌した。殺菌されたサンプルにおいて変色は観察されなかった。実施例12のように、活性銀化合物の幾らかの摩擦落下が観察された。
【0094】
皮膚染色検査
実施例13からの殺菌された気泡片を検査に使用した。サッカリン酸銀塗布気泡片を人間の皮膚で検査した。4人の被験者を利用し、1日当たり1人を露出時間で検査し、2場所を各被検者について検査した。2か所の場所で、各々の前腕または背中に0.5インチ×0.5インチ平方の銀塗布気泡四角片を付与し、皮膚には銀塗布物を接触させ、未処置の気泡片(コントロール)も接触させた。皮膚上の各測定用サンプルは、Smith&Nephew社からのOpsite(登録商標)Flexigrid(登録商標)薄膜包帯の補助で適所に添付された。予め定められた方法で、サンプルは被検者の皮膚から除去され、サンプルの下の領域は銀による染色がないかを精査された。日1、日2、日3および日7が観察されたあと、サッカリン酸銀塗布気泡体に起因する染色はいかなる被検者にも見られなかった。
【0095】
抗菌活性検査
それらが殺菌されなかったこと以外は実施例12に記載された方法によって気泡体サンプルを調製した。この抗菌活性検査は、本質的には一貫移送ZOIアッセイであったが改質した検査であった。このアッセイ用のサンプルは、中央に8mmの穴を有する1インチ×1インチ平方の四角形であった。この方法でサンプルを調製するための正当性は、Huber針器具に存在する気泡要素を模倣することであった。サンプルは、MHA培地の中央で相交わる直角で2列のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(ATCC 33591)の縞がついているMHA培地に敷設された。寒天表面に接している塗布物側面を有するサンプルは穴の中心と縞の交差点が一致するように敷設された。塗布サンプルは3つ組で使用され、1つの未処置気泡サンプルは負の制御として役立った。SilvaSorb半球状円板は、正の制御としての1条のバクテリアに敷設した。培地は37℃にて24時間培養された。処置サンプル上の銀の存在のために、穴の内部では細菌の成長は見られなかった。しかしながら、未処置のコントロールの穴の内部では、成長を示した。翌日、サンプルは前と同様に作成された第2MHA培地へ移されて、前の通りに培養した。処理されたサンプルが穴の内部で細菌性の成長を示し始めるまで、手順は毎日繰り返された。最終結果は、処理されたサンプルに起因する抗菌活性が10日続いたことを示した。
【0096】
実施例14
硝酸銀溶液(0.1M)の総量が80mLであったことと、最終的な水洗いの後、エタノールすすぎを試みたことを除いて、実施例1に記載した手順によってサッカリン酸銀スラリーを調製した。上澄み液のエタノールをデカンテーションし、銀塩の湿潤ケーク(固形分〜50%w/w)を取り置いた。
ドラムバイアル瓶(〜22mL容量)内で、1.13gのエチルセルロース(Ethocel Std 100、Dow Chemical社)をエチルアセテートに溶解し、13.2gの透明粘性水溶液を生成した。この溶液に、1.8gのサッカリン酸銀湿潤ケークを加え、撹拌混合して一様な白色粘性スラリーを得た。このスラリーに、2.14gの粘性水溶液(Aeroset 1920−Z52(Ashland Chemical社))を添加し、軽度な粘着性を有する銀抗菌組成物を得た。
【0097】
類似のドラムバイアル瓶内で、エチルアセテート中10gの20%w/wアクリルポリマー(Avalure AC315(Lubrizol社))溶液および5gの接着剤溶液(Aeroset 1920−Z52(Ashland Chemical社))を混合して接着剤組成物を調製した。シリコーン剥離紙ライナー(#40クラフト紙、LLT Bar Code&Label,Stow,OHからの厚さ2.5ミル)のいくつかのストリップ(1インチ×4インチ)上に第1接着剤組成物塗布物をMeyerロッド#20を使用して付与し、高温度設定の家庭用ヘアドライヤで30秒間乾燥した。第2接着剤組成物塗布物を接着層上に同様に付与し、炉内で85℃にて3分間乾燥した。ポリ塗布褐色紙ライナー(#72 RF−7000−33、Rayven社、St.Paul、MN)製の数片の同一寸法のライナー上に、上記サッカリン酸銀抗菌性組成物をMeyerロッド#20を使用して塗布し、抗菌性組成物を85℃にて1分間乾燥して抗菌層を形成した。
【0098】
接着層およびサッカリン酸銀抗菌層をそれぞれ有する2枚のライナーストリップは整列配置されて、次いでのし棒の補助でそれを数回転がすことによって一緒に(ライナーを外側にして)圧接された。積層構造体は完成した。差動剥離を示すために、接着性側面上のライナーは、ストリップの角を掴むことによって容易に引き剥がされた(正しい差動剥離用に、接着層または下面の銀塗布が積層から部分的に離れることなく、ライナーだけが外れなければならない点に注意する)。露出した接着性側面は同様に寸法設定されたEVA気泡ストリップに対して圧接され、圧力はのし棒を数回動かすことによって動作した。褐色の紙ライナーは、角を掴まれて、EVA気泡体に結合された無損傷のサッカリン酸銀フィルムを残して直ちに剥離した(銀フィルムの部分が離される気泡体側に接着しない場合だけ、剥離が成功したとみなされる点に注意する)。両方のライナーが銀フィルムに障害を生じさせずに正常に、かつ正しく剥離するので、積層構造体の差動剥離機能を示すのに成功した。
【0099】
実施例15
積層構造体の経時効果
炉温度を同一として第2接着層の乾燥時間がそれぞれ6分間、3分間であったこと以外には実施例14の記載の通りにサッカリン酸銀抗菌性組成物および接着剤組成物を作成した。3片の積層ストリップを作成してEVA気泡体に付与し、ライナーの一貫した差動剥離が毎時示された。第4積層ストリップを8日間40℃にて炉内で経時し差動剥離を検査した。最新作成の積層体のように、経時のストリップは差動剥離に関しては期待通りの特性を示し、一方に銀フィルムが接合したEVA気泡ストリップが得られた。平均して、本実施例で作成された気泡ストリップ上の全ての銀フィルムは表面で僅かな粘着性を提示した。
【0100】
実施例16
銀抗菌層および接着層の接着剤の量を変化させ、粘着性の水準を変更した。
以下の溶液を調製した:
溶液A:1.13gのエチルセルロース(Ethocel Std 100、Dow Chemicalをエチルアセテートに溶解し、13.2gの透明粘性溶液を生成した。この溶液に、1.8gのサッカリン酸銀湿潤ケークを加え、撹拌混合して一様な白色粘性スラリーを得た。
溶液B:溶剤重合体の適当量を溶解してエチルアセテート中15gの20%w/wアクリル重合体(Avalure AC315、Lubrizol社)溶液を調製した。
溶液C:接着剤水溶液(Aeroset 1920−Z52)
以下の抗菌性組成物および接着剤組成物を調製した(重量部比率):
【表1】

【0101】
本実施例では実施例14と同じライナーを使用した。付与、乾燥条件およびEVA気泡体ストリップの構造体は、実施例15と同様であった。差動剥離の観察および気泡体上の銀フィルムの感覚が記録され、下表に記入する。
【表2】

【0102】
実施例17
銀抗菌性組成物Ag−3(実施例16参照)を調製し、溶液BおよびCを3.5/1および4.0/1の比率で有する2つの接着剤組成物(それぞれAd−4およびAd−5)を調製した。接着剤組成物は、Meyerロッド#20の補助により#40CKライナー(TaylorMade Labels社)上に塗布され、銀抗菌性組成物は、Meyerロッド#20を使用して褐色にポリ塗布された#72剥離ライナー上に塗布した。乾燥は、85℃にて実行された。銀フィルム付きのEVA気泡体ストリップを生成することによって積層構造体の差動剥離について精査した。EVA気泡体への積層接合は、積層体上を手の圧力の下で試験管を転がすことによって動作する圧力の下にあったことに留意。結果は、下記にて要約される。
【表3】

【0103】
実施例18
高い乾燥温度にて、広いフォーマットで作成された積層構造体
積層物は、Meyerロッド#40を使用して銀抗菌性組成物Ag−3(実施例16参照)を付与し、そしてMeyerロッド#20を使用して接着剤組成物Ad−4(実施例17参照)を付与することによって作成した。実施例17と同じライナーが銀塗布用に使用したが、この実施例での接着剤用ライナーは、#42CK剥離ライナーであった(僅かに重く、同じベンダーから供給される以外は#40CKと同一)。乾燥温度は100〜105℃に増加され、全てのトルエンを確実に層から除去した。層の幅は増加し(3サンプルでそれぞれ1インチ、2インチ、3インチ幅、長さは〜4インチ)、生産スケールでの全域拡大にもかかわらず差動剥離が依然として正しく発生することを観察するためには幅はさらに広くてもよい。さらに、当初の試験管ロール押圧の後に絞り器(工作場ぼろを絞る際に使用)に通すことによって積層体−気泡体ストリップ構造体に圧力を装荷した。
結果を下記に作表する。
【表4】

接着剤乾燥が132℃にて試みられた以外は追加の少数の積層構造体が作成された点に注意すること。高温露出の結果として接着層はその粘着性を失うようで、銀塗布物と良く接合しなかった、したがって良好な積層構造体は形成されなかった。
【0104】
実施例19
ブロッキング耐性用テスト銀塗布
銀積層構造体の大規模生産において、巻き取られるライナー材料の一方の側に銀抗菌性組成物を付与する。ロール形態において銀抗菌層が不注意にライナーの背面から離れてしまうことは重大である。
寸法3インチ×3インチ平方の褐色紙ライナー(#72重合体塗布RF−7000−33(Rayven Inc))(サンプル数:6)上にMeyerロッド#40の補助で銀抗菌性組成物(Ag−3、実施例16を参照)を付与した。各々の紙ライナー片を100〜105℃にて乾燥し、室温まで冷却した。サンプル片を各々の上に積み重ね、積み重ねたものを、例えばシャーレまたはガラス板のような平らな表面に載置して炉内で約1kgの重量の下で10分間32〜38℃にて保った。積み重ねたものを除去して、各片が他から分離したままであるか、すなわち重量で粘着していないかを精査した。各片は、積み重ねからすぐに離れた。したがって、銀塗布物は好適なブロック耐性を呈した。
【0105】
実施例20
接着剤組成物Ad−1およびAd−2(実施例16を参照)に他の接着剤(Aroset S390、Ashland Chemical社)を使用して、この実施例での積層構造体サンプルを作成した。古い接着剤(Aroset 1920−Z52)を使用して銀抗菌性組成物Ag−3(実施例16参照)をさらに作成した。それぞれのライナー、塗布物のための乾燥条件およびEVA気泡体に対する積層条件は、実施例18において使用したそれらとして同一であった。差動剥離検査の結果は、下記に作表する。
【表5】

【0106】
実施例21
積層構造体
エチルアセテート(〜8.56%w/w)中のエチルセルロース(Ethocel Std 100、Dow Chemical社)原液、および、エチルアセテート(20%w/w)中のAvalure AC315を、軽度な加温の下でそれぞれの固形物を溶剤に溶かすことによって調製した。硝酸銀溶液(46mL、0.15M)をサッカリン酸ナトリウム溶液(70mL、0.125M)に混入することによって銀塩を沈殿させサッカリン酸銀の湿潤ケークを調製し、沈殿物をまず脱イオン水ですすぎ、次いでエタノールですすいだ。エタノールを捨てた後に、湿潤ケーク(ほぼ2gm)が得られた(〜50%w/w固形物)。
この湿潤ケークに、14.1gmエチルセルロース溶液を加え、撹拌混合して均質とし、サッカリン酸銀スラリーを生成した。この銀スラリーおよびAroset S390接着剤を4/1比で混合して銀塗布溶液を作成した。6/1および7.5/1 w/w比率を使用して追加の銀塗布溶液を作成した。分離したドラムバイアル瓶において、Avalure AC315溶液およびAroset S390接着剤を2/1比率で混合した。
【0107】
Meyerロッド#40および#20を使用して、実施例18と同じライナー対の上に銀抗菌層および接着層を形成し、幅1インチ、長さ4インチの積層構造体を調製した。積層塗布に使用される圧力付与方法は実施例18と同様であった。差動剥離は定性的に精査され、EVA気泡体ストリップ上の銀フィルムの品質が評価された。
結果を下記に作表する。
【表6】

3インチ幅の追加のEVA気泡ストリップは上記の銀塗布液(7.5/1)と接着剤塗布液(2/1)を使用しての作成に留意。増加幅は両ライナーを即引き剥がして差動剥離に影響なし。
【0108】
実施例22
接着剤側に異なるライナーを有する積層構造体
本実施例では実施例21からの銀塗布溶液(7.5/1)および接着剤塗布溶液(2/1)を再利用した。実施例21に記載と同一の各Meyerロッドを塗布物形成に使用し、積層構造体形成のための同一乾燥条件および加圧条件を採用した。しかしながら、接着剤塗布は2枚のフィルムライナー−それぞれシリコーン剥離ライナーを有する#38シリコーンライナーおよびLoparexフィルムライナー上に形成した。作成した積層物はEVA気泡ストリップ(〜1インチ×4インチ)に付与されて、差動剥離の検査を受けた。得られた結果を以下に作表する。
【表7】

【0109】
実施例23
銀塗布物中のEthocelをAvalure AC315と交換した積層構造体
EthocelもAvalure AC315も良好なフィルム形成特性を有するものの、Ethocelフィルムは幾分脆性が高い。本実施例では、銀塗布物中のEthocelをAvalure AC315と交換して作成した積層構造体の結果を示す。銀抗菌性組成物:硝酸銀溶液(23mL、0.15M)およびサッカリン酸ナトリウム溶液(35mL、0.125M)をサッカリン酸銀沈殿物と混合した。沈殿物をそれぞれ脱イオン水およびエタノールですすいだ。得られた湿潤ケークをエチルアセテート(20%w/w、14g)中のAvalure AC315溶液と混合し、撹拌混合して均質にした。上記銀スラリーおよびAroset S390接着剤溶液を9.5/0.5比率で混合して銀塗布液を得た。Meyerロッド#40を用いて、同じくポリ塗布された(#72)褐色の紙ライナー上に抗菌性組成物を塗布した。接着剤組成物:エチルアセテート(20%w/w)中のAvalure AC315溶液およびAroset S390接着剤を2/1比率で均質に混合した。#38シリコーン剥離紙上に塗布物を付与するためにMeyerロッド#20を用いた。積層物は寸法が1インチ×4インチであり、実施例22と同じ圧力条件の下でEVA気泡体に付与された。乾燥温度は105〜110℃であった。
【表8】

【0110】
実施例24
積層構造体の経時効果
実施例23にて作成した幾つかの銀積層構造体(幅1インチ、長さ4インチ)(接着剤および銀層の乾燥時間はそれぞれ3分と2分)を炉に入れて40℃にて最高14日間経時変化をシミュレートした。検査の目的は、差動剥離が促進経時の後においても積層体において維持されるかどうかを確認することであった。
経時期間(7日もしくは14日)の終わりに、接着剤面上のライナーを引き剥がして積層物ストリップはEVA気泡体に接合した。実施例23と同様の条件下で圧力を付与した後に、褐色の紙ライナーを引き剥がして銀フィルムを露出した。経時期間とは無関係に、積層構造体は意図通りの特性を示し、すなわち気泡体に直ちに、そして均一に結合され、正しく円滑な差動剥離を呈した。したがって、銀および接着剤塗布においてAvalure AC315に基づく積層構造体は、大規模器具生産用の要求である合理的貯蔵安定性を呈示した。
【0111】
実施例25
銀抗菌層のブロッキングに対する耐性
実施例23に記載されている手順に従って使用する原材料の成分増加と共に12パーセントw/wサッカリン酸銀からなる銀塗布スラリー600g、エチルアセテート中の20%w/w Avalure AC315を調製した。生成物をS390接着剤と9.5/0.5の比率で混合し、銀塗布溶液を得た。
褐色の紙ライナー(#72、RF−7000−33、Rayven社、St.Paul、MN)の6枚のストリップ(3インチ×4.5インチ)にMeyerロッド#40を使用して銀塗布溶液を塗布した。これらを105〜110℃にて乾燥させた後に、室温まで冷却して大量に積み上げ、平らな表面(シャーレ)に載置して1kgの重量(1リットルの水で満たされたNalgene瓶)の下で炉の中で40℃にて一晩静置した。
その後に、積み上げたストリップを除去し、温度冷却され、個々のストリップが正常に除去し得たかどうか精査した。積み上げたストリップから各ストリップがサンプル間の接着の徴候なしで外されたことを観察した。明らかに、上記が銀塗布によってブロッキングに優れた耐性を所有することと、積層構造体の大規模生産のために必要とされることを示した。
【0112】
実施例26
濡れ拭き取り条件下の銀抗菌層の耐久性
明細書の記載の通り、様々な表面を抗菌性とするために銀フィルム積層物を使用できる。しかし、耐久性がある抗菌の効果を有することはまた、重要である。本実施例は、銀抗菌層を塗布したガラススライドに対して実施した濡れ拭き取り検査および多数の濡れ拭き取りの後に提示される強い抗菌効力について説明する。
実施例25(検査終了後)からの銀抗菌層褐色ライナーサンプルのうちの1つを、接着剤(実施例24と同一の接着剤処方、塗布、乾燥および積層条件)で積層した。このように得られた積層物を、EVA気泡体の代わりに清潔なガラススライド(幅1インチ、長さ3インチ、Fisher Scientific製)と接合した。褐色ライナーを除去して銀抗菌層を露出した。
ガラスに接合した銀抗菌層の濡れ拭き取り検査は以下のように実施された:セッケン溶液は、1滴の皿用洗剤(Dove(登録商標)皿洗い洗剤)を25mLの脱イオン水に溶かして調製された。洗い水で濡らした紙シート(Kim−wipeブランド、Kimberly−Clark製)は銀フィルムを拭くために使用し、続いて水で濡らした紙シートで拭き取った。銀抗菌層は、空気によって乾燥した。これらのステップで1つの拭き取り周期を完了した。10拭き取り周期を毎日実施した。毎日拭き取り検査の後、銀抗菌層を接合脱落や変色の徴候について精査した。拭き取り部分の後の検査の期間にわたり、ガラススライドを日常の実験室露光下で作業台の上に置いた。全部で、20日に亘る200拭き取り周期が実施された。20日目の終わりに、共通の微生物の石板に対する阻害帯域(ZOI)アッセイによって銀フィルムの抗菌効力を検査した。結果は銀抗菌層からの潜在的活性を示唆し、イオン銀が依然として抗菌層表面から剥離していたことを暗示している。
【0113】
実施例27
抗菌物層構造体付きの器具プロトタイプの構造体
本実施例では実施例25からの幾つかの銀抗菌層褐色紙ライナーストリップ(3インチ×4.5インチ)を使用した。必要に応じて、ライナーストリップは下記のような器具プロトタイプ作成のために切断されて薄いストリップまたは円形とされた。

器具1:抗菌ハンドルバー
この発想は、長続きする防護を提供できるハンドルバー表面上に抗菌性バリヤーを持たせることである。このケースでは、ハンドルバーをシミュレートするためにガラス製の試験管を用いた。予め形成した抗菌層の幅1インチのストリップを切断し、1インチ幅の両面接着テープ(3M、Type 9415)の接着剤面の露出側に対して圧接した。次に、第2接着側はライナーを引き剥がすことによって露出した。テープの露出した面を管の表面に対して圧接し、テープを巻きつけて弦巻パターンを作り出した。最後に、褐色の紙ライナーを除去して、両面テープによってガラス製の試験管表面に現在接合した銀抗菌層を露出させた。

器具2:抗菌ハンドルバー
実施例25からの褐色ライナーサンプルのうちの1つを、接着剤層(実施例24と同一の接着剤処方、塗布、乾燥および積層条件)と積層した。積層構造体を切断して幅1インチの薄いストリップとした。#42CK紙ライナーを除去して接着剤側を露出した。接着剤側は注意深くガラス製の試験管表面に対して圧接し、弦巻きパターンで巻き付けた。褐色の紙ライナーを除去して銀フィルムを露出させた。

器具3:点滴アクセス器具用の抗菌性保護器具
この器具は、点滴アクセス器具と関連する感染リスクに対する防護を提案し、最も単純なものは、点滴器具である。3インチ×4.5インチの寸法の抗菌積層構造体から1インチ径の円形を切り出した。接着層を露出して予め作成した1インチ径の抗菌性銀気泡体(AcryMed社から)に圧接した。褐色の紙ライナーを除去して銀抗菌層を露出させた。
小さい穴を円形の器具の中央にせん孔し、細片を円の外側の縁から切り取って内側の穴に入れ器具プロトタイプ構造体を完成した。器具の改質は、両面テープの1つの接着性の側に対して銀塗布褐色ライナーを圧接し、第2接着性側を露出して、抗菌剤を含んでも含まなくてもよい気泡体(同一寸法、同一形状の)にそれを接合することである。
【0114】
実施例28
CHG含有積層構造体
ドラムバイアル瓶内のエチルアセテート(20%w/w)中Avalure AC315高分子材料溶液の4gmに1gmのグルコン酸クロルヘキシジン(CHG)(Spectrum Chemical社、20%エタノール溶液)を添加し、撹拌混合して均質にした。Meyerロッド#40を使用して抗菌性組成物を褐色の紙ライナー(実施例25)上に塗布し、105〜110℃にて3分間乾燥した。Meyerロッド#20の補助で#42 CK上で同様に接着性組成物(実施例23参照)を塗布し、105〜110℃にて2分間乾燥して紙ライナーを得た。2枚のライナーを共に圧接することによって積層物が造成された。接着層を露出させ、EVA気泡体片を積層して抗菌層を担持するCHGを有する気泡体を得た。
ZOIアッセイにおいて、気泡体円板(8mm径)はMRSAおよび緑膿菌に対する良好な抗菌活性を示した。しかしながら、順次転送アッセイにおいて、1日後には抗菌活性は判明しなかった。フィルムからのCHGの拡散を遅くすることによってCHG剥離を拡張する微小球の被包、捕捉のような方法がある。
【0115】
実施例29
抗菌層における銀分布の一様性
検査の目的は、組成物および塗布方法(Meyerロッドによる)によって1インチ×4.5インチのライナーストリップに一様に銀を沈着できることを示すことである。
2枚の褐色の紙ライナーストリップ(1インチ×4.5インチ)にMeyerロッド#40を使用して銀抗菌性組成物を塗布し、抗菌層を110℃にて2分間乾燥した。銀抗菌層ライナーを切断して、1cm×1cm、1cm×2cm、1cm×3cmおよび1cm×4cmの寸法の2セットの小片を得た。ライナーから銀を取り除き、Varian 220FS原子吸光分光器によって銀を分析した。銀分析の結果を下記に作表する。
【表9】

データは銀の一様分布を示し、銀抗菌性組成物調製ならびにプロトタイプ用の塗布方法が強固であることを示す。
【0116】
実施例30
抗菌性組成物における銀量の変動
本実施例では、Meyerロッドを変えて褐色の紙ライナーに沈着させる銀抗菌性組成物の湿潤塗布厚みを変化させた。例えば10、20、30などの異なる数を有するロッドを選択することによって、湿潤塗布厚みを調節した。
採用した銀抗菌性組成物(接着剤S390混入)は、実施例25で使用したものと同じ600gバッチからであった。溶液は、5本の異なるMeyerロッド・タイプー#10、#20、#30、#40および#50を使用して3インチ×4.5インチの寸法の褐色の紙ライナー片上に塗布され、炉内で110℃にて2分間乾燥して抗菌層を形成した。作成したライナーサンプルは1インチ×1インチ片に切断され、FAASによる銀分析(n=4)を受けた。銀分析の結果を下表に記入する。
【表10】

ロッド番号が比例した湿潤(または乾燥)厚みと一致するので、ロッド番号および銀含有量値は線形関係を反映している。このように、銀量は単純に塗布された銀塗布溶液の湿潤厚みを変化させることによって変化できる。
【0117】
実施例31
抗菌性組成物の銀含有量を変化させることによる銀量の変動
銀抗菌性組成物の銀サッカリン酸の量を変化させることによって、1.5%、3.0%、4.5%、6.0%、7.5%および9.0%の銀サッカリン酸含有量を有するサンプル溶液を調製した。調製される全ての溶液において、Avalure AC315に対する銀塩の重量比を一定に保ち、抗菌性組成物中の接着剤の百分率は5%w/wに保時した。
Meyerロッド#40の補助でサンプル抗菌性組成物を褐色の紙ライナー(2インチ×4.5インチ)上に塗布し、塗布物を110℃にて2分間乾燥した。各ライナーサンプルは、4枚の1インチ×1インチ平方の小片に切断されて銀分析を受けた。銀濃度を変化させた抗菌物質組成物から作成される抗菌層の銀含有量値は、下記に表示される。
【表11】

【0118】
実施例32
MEKから作られた組成物を使用して作成される構造体
ドラムバイアル瓶に、湿潤サッカリン酸銀(1.64g、湿潤ケーク中72%w/w固形物)を添加し、続いてメチルエチルケトン(MEK)溶液中で作成された20%w/wのAvalure AC315ポリマー溶液(17.36g)が加えられた。2種類の原材料を混合して均質とした。この混合物に、接着剤S390(1g)を添加し、再び完全に混合して抗菌性組成物を形成した。
メチルエチルケトン(MEK)溶剤中で作成された20%w/wのAvalure AC315ポリマー溶液と接着剤S390とを2:1の重量比で混合して接着剤組成物を作成した。
Meyerロッド#40および#20をそれぞれ使用して銀抗菌性組成物および接着剤組成物を、褐色の紙および#42CK紙ライナー上に塗布した。
110℃にて3分間(接着剤組成物)および2分間(銀抗菌物質組成物)それぞれ乾燥して接着層および抗菌層を形成し、実施例23のサンプル同様に積層した。積層構造体は優れた差動剥離を示し、ZOIアッセイではMRSAに対して強い抗菌活性を呈示した。
したがって、MEKを使用して作成された積層構造体は、エチルアセテートで作成された物と同様な挙動を示した。
【0119】
実施例33
識別改良用色調を有する積層構造体
下地のEVA気泡体は白色であり、気泡体に接合した銀抗菌層は必ずしも明白に識別されない。銀抗菌層付きのEVA気泡体を区別するために、接着性側に少量の着色剤を添加して積層構造体に色調を提供する準備をした。Avalure AC315接着層は透明なので、色調は透けて見える。
色調を有する積層構造体は、次のように調製された:ほぼ5mgのメチレンブルー染料をMEK中2gの20%w/w Avalure AC315ポリマー溶液に溶解した(試験管の底に少量の結晶が見られたので全染料が溶解したのではない点に注意)。この染料−ポリマー溶液に接着剤S390溶液(1g)を加え、全混合物を撹拌混合して一様とした。
Meyerロッド#20を使用して、メチレンブルーを有する接着性溶液を#42 CK紙ライナー(1インチ×4.5インチ)上に塗布し、110℃にて3分間乾燥した。接着性の側を実施例25から褐色の紙ライナー(1インチ×4.5インチ)上の銀抗菌層に積層した。積層物はEVA気泡ストリップに接合され、褐色ライナーを除去して銀抗菌層を露出した。青色色調が銀フィルムを通して見られた。
【0120】
実施例34
積層構造体の変色耐性検査
銀サッカリン酸の量が6%w/wであった以外は実施例25のスラリー組成物同様に銀サッカリン酸スラリーを作成した。スラリーの19部をS390接着剤溶液の1部と混合し、およそ45kgの銀抗菌性組成物を得た。銀抗菌性組成物を褐色の紙ライナー(以前の実施例と同様)上に試験塗布機で付与し、その結果、乾燥後〜25マイクロメートル厚のフィルムを得た。幾つかの銀抗菌層褐色の紙ライナー片は寸法が1インチ×1.5インチであり、#42 CKライナー紙片に塗布された接着性塗布物と接合し、積層構造体サンプルを作成した。これらのサンプルをEVA気泡体片に付着し、銀抗菌層を有する気泡体を得た。サンプルは、次のように調製された:銀抗菌層ストリップを有する7つの気泡体を赤色のプラスチック包装フィルム(厚さ〜1ないし1.5ミルのアセテート贈り物用包装紙)で包み、包装部分がストリップ面積の半分を覆った。同様に、銀抗菌層ストリップを有する7つの気泡体をポリエチレンの青色の包装フィルムで包んだ。
【0121】
変色耐性検査を以下のように実行した:
1.部分的に赤色および青色のライナーで覆われ、銀抗菌層を有する1つの気泡体を、検査を通じて光から分離した机の引き出しに保管した(コントロールサンプル)。
2.部分的に赤色および青色のライナーで覆われ、銀抗菌層を有する3つの気泡体を、机上白熱ランプ(60W)電気スタンドの〜1フィート下に置き、少なくとも30日の期間、いかなる変化も毎週記録した。
3.銀抗菌層ストリップ(各種3枚)を有する気泡体の最終セットを合計45時間直接太陽光に曝し(実際の太陽光露光)、検査持続時間の終わりに変化を記録した。
検査結果を下記に要約する:
a.机上電気スタンドの光に曝したどのサンプル(3枚中3枚)にも変色は観察されなかった。赤色および青色の着色フィルムの下の領域は、露光領域からの相違が無かった。積層構造体の銀抗菌層はオフィス光条件に対して優れた変色耐性がある。この特性は、銀抗菌層含有積層構造体を有する器具の包装用に透明フィルム包装が利用し得ることを示唆している。
b.直接太陽光に曝したどのサンプル(3枚中3枚)にも変色は観察されなかった。
露光領域ならびに赤色および青色の着色フィルムに覆われた領域は同じに見えた。したがって、本発明の銀フィルム積層構造体もまた直射日光に対して優れた短期耐性を所有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの抗菌剤とバインダーとを含む少なくとも1つの抗菌層、および第2層を含む積層構造体。
【請求項2】
前記抗菌層が、前記第2層の一方の全表面に実質的に接している、請求項1に記載の積層構造体。
【請求項3】
前記抗菌層が、抗生剤、防腐剤、銀、銀塩、銀ナノ粒子、イオン銀、1つ以上の銀化合物の組み合わせ、亜鉛、銅、金、およびこれらの塩、第4級アンモニウム塩、イソニアジド、エタンブトール、ピラジナムニド、ストレプトマイシン、クロファジミン、リファブチン、フルオロキノロン、オフロキサシン、スパルフロキサシン、リファンピン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ダプソン、テトラサイクリン、エリスロマイシン、シプロフロキサシン、ドキシサイクリン、アンピシリン、アンホテリシンB、ケトコナゾール、フルコナゾール、ピリメタミン、スルファジアジン、クリンダマイシン、リンコマイシン、ペンタミジン、アトバコン、パロモマイシン、ジクラズリル、アシクロビル、トリフルオロウリジン、フォスカーネット、ペニシリン、ゲンタマイシン、ガンシクロビル、イトロコナゾール、ミコナゾール、ピリチオン亜鉛、クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニド、ポリヘキサメチレンビグアニド、トリクロサン、沃素、沃素−ポリビニルピロリドン合成物、過酸化尿素合成物、ベンザルコニウム塩、ウコン抽出エキス、天然消毒剤化合物またはこれらの組み合わせを含む少なくとも1つの抗菌剤を含む、請求項1に記載の積層構造体。
【請求項4】
前記抗菌層がさらに1つ以上の添加剤を含む、請求項1に記載の積層構造体。
【請求項5】
添加剤が着色剤、食用染料、1種類以上の蛍光性化合物、充填剤、チタニア、天然または合成粘土、湿潤剤、グリセロール、尿素、グリコール、ポリエチレングリコールまたは可塑剤を含む、請求項4に記載の積層構造体。
【請求項6】
前記第2層が接着層を含む、請求項1に記載の積層構造体。
【請求項7】
前記接着層が感圧接着剤、永続性接着剤、光活性化接着剤または熱活性化接着剤、天然ポリマー接着剤または合成ポリマー接着剤、架橋性ポリマー接着剤または非架橋性ポリマー接着剤を含む、請求項6に記載の積層構造体。
【請求項8】
前記接着性ポリマーがポリウレタン、シリコーン、カゼイン、アクリル樹脂、ポリイソブチレン、ポリアクリラートまたはスチレンである、請求項7に記載の積層構造体。
【請求項9】
少なくとも1つの構造体要素をさらに含む、請求項1に記載の積層構造体。
【請求項10】
前記構造体要素が抗菌層を形成したマトリックス材料である、請求項9に記載の積層構造体。
【請求項11】
前記マトリックス材料が織布または不織布材料である、請求項10に記載の積層構造体。
【請求項12】
前記構造体要素がライナーである、請求項9に記載の積層構造体。
【請求項13】
それぞれがライナーである2つの構造体要素がある、請求項9に記載の積層構造体。
【請求項14】
前記2つのライナーが同一材料である、請求項13に記載の積層構造体。
【請求項15】
前記2つのライナーが異なる材料である、請求項13に記載の積層構造体。
【請求項16】
抗菌層が1つのライナーに接し、接着層が第2ライナーに接している、請求項13に記載の積層構造体。
【請求項17】
前記積層構造体が抗菌層と第2層とを組み合わせて有する組合せ積層構造体である、請求項1に記載の積層構造体。
【請求項18】
前記抗菌層が抗菌性組成物から作成されている、請求項1に記載の積層構造体。
【請求項19】
前記抗菌性組成物が抗菌性化合物、バインダーおよび1つ以上の溶剤を含む、請求項18に記載の積層構造体。
【請求項20】
1つ以上の溶剤の少なくとも一部が除去されて抗菌層が形成される、請求項19に記載の積層構造体。
【請求項21】
溶剤除去用に空気乾燥、加熱、マイクロ波照射または赤外線照射が使用される、請求項20に記載の積層構造体。
【請求項22】
a. 構造体要素に抗菌組成物を付与して構造体要素上に塗布物覆を形成すること;
b. 抗菌性組成物から1つ以上の溶剤の少なくとも一部を除去して抗菌層を形成すること;
c. 抗菌層の外部表面に接着剤組成物を付与すること;
d. 接着剤組成物から1つ以上の溶剤の少なくとも一部を除去して接着層を形成すること;および
e. 任意で、第2構造体要素を加えて接着剤層を覆うこと、
を含む積層構造体の作成方法。
【請求項23】
前記抗菌層が、抗生剤、防腐剤、銀、銀塩、銀ナノ粒子、イオン銀、1つ以上の銀化合物の組み合わせ、亜鉛、銅、金、およびこれらの塩、第4級アンモニウム塩、イソニアジド、エタンブトール、ピラジナムニド、ストレプトマイシン、クロファジミン、リファブチン、フルオロキノロン、オフロキサシン、スパルフロキサシン、リファンピン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ダプソン、テトラサイクリン)エリスロマイシン、シプロフロキサシン、ドキシサイクリン、アンピシリン、アンホテリシンB、ケトコナゾール、フルコナゾール、ピリメタミン、スルファジアジン、クリンダマイシン、リンコマイシン、ペンタミジン、アトバコン、パロモマイシン、ジクラズリル、アシクロビル、トリフルオロウリジン、フォスカーネット、ペニシリン、ゲンタマイシン、ガンシクロビル、イトロコナゾール、ミコナゾール、ピリチオン亜鉛、クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニド、ポリヘキサメチレンビグアニド、トリクロサン、沃素、沃素−ポリビニルピロリドン合成物、過酸化尿素合成物、ベンザルコニウム塩、ウコン抽出エキス、天然消毒剤化合物またはこれらの組み合わせを含む少なくとも1つの抗菌剤を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記抗菌層がさらに1つ以上の添加剤を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
添加剤が着色剤、食用染料、1種類以上の蛍光性化合物、充填剤、チタニア、天然または合成粘土、湿潤剤、グリセロール、尿素、グリコール、ポリエチレングリコールまたは可塑剤を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記接着層が感圧接着剤、永続性接着剤、光活性化接着剤または熱活性化接着剤、天然ポリマー接着剤または合成ポリマー接着剤、架橋性ポリマー接着剤または非架橋性ポリマー接着剤を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記接着性ポリマーがポリウレタン、シリコーン、カゼイン、アクリル樹脂、ポリイソブチレン、ポリアクリラートまたはスチレンである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
1つ以上の溶剤の少なくとも一部が除去されて抗菌層が形成される、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
溶剤除去用に空気乾燥、加熱、マイクロ波照射または赤外線照射が使用される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
1つ以上の溶剤の少なくとも一部が除去されて接着層が形成される、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
溶剤除去用に空気乾燥、加熱、マイクロ波照射または赤外線照射が使用される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
第1構造体要素が剥離ライナーである、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
前記第2構造体要素が剥離ライナーである、請求項22に記載の方法。
【請求項34】
形成される積層構造体が個別シートの形である請求項22に記載の方法。
【請求項35】
形成される積層構造体が連続したシートロールの形である請求項22に記載の方法。
【請求項36】
形成される積層構造体が、
a. サッカリン酸銀を含む抗菌性組成物を剥離ライナーに付与してライナー上に塗布物を形成すること;
b. 前記抗菌性組成物から1つ以上の溶剤の少なくとも一部を加熱により除去して抗菌層を形成すること;
c. 前記抗菌層の外部表面に感圧接着剤を含む接着剤組成物を付与すること;
d. 前記抗菌性組成物から1つ以上の溶剤の少なくとも一部を加熱により除去して接着層を形成すること;および
e. 第2ライナーを加えて前記接着層を覆うこと、
を含む請求項22に記載の方法。
【請求項37】
請求項1に記載の積層構造体を含む物品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2012−509791(P2012−509791A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537718(P2011−537718)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/065764
【国際公開番号】WO2010/060094
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(310007106)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】