説明

抗菌組成物およびその方法

ホスフェートと、シトレートと、シリケートとを含む、抗菌性水溶液が、本出願において提供される。食材における細菌汚染および細菌増殖を制御する方法が、本出願において提供される。金属物品上におけるシリケート凝集の形成を防止する方法が、本出願において提供され、かつ/または金属物品状におけるシリケート凝集の除去を促進する方法が、本出願において提供される。産業的抗菌プロセスにおけるホスフェートの使用を減少する方法が、本出願において提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスフェート、シトレートおよびシリケートを含む抗菌性水溶液に関する。本発明は、また、食材における細菌の混入および/または増殖を制御する方法、金属基材上のシリケートの凝集物の形成を予防する方法、および/または金属基材上のシリケートの除去を促進する方法、並びに環境保護の目的のために産業上の抗菌プロセスにおけるホスフェートの使用を低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌は、我々の環境、空気、土壌、岩、および水のどこにでも生息している。多くの細菌は病原性であり、ボツリヌス食中毒、大腸菌食中毒、コレラ、百日咳、ペスト、猩紅熱、ジフテリア、結核、腸チフス、炭疽などのような疾患を引き起こし得る。米国における食物媒介感染の程度は、1994年のCASTレポートで定量的に文書化され(Foodborne Pathogens:Risks and Consequences.Task Force Report No.122,Council for Agricultural Science and Technology,Washington D.C.)、過去数年間に広範囲に特徴付けられた(CDC.1988c.1997 Final FoodNet Surveillance report.U.S.Department of Health and Human Services,October,1998)。他の多くの細菌は、病原性ではないが、腐敗細菌であり、食材の貯蔵寿命および鮮度を低減させる原因である。
【0003】
適切な衛生手段がなければ、果物、野菜、および動物の肉などのヒト用の食材は、必然的に細菌によって汚染および分解される。例えば、いわゆる「袋詰めサラダ」製品は、その使用の便利さの結果として消費者から大いに受け入れられてきた。しかしそのような製品は、他の切片と接触している野菜の1つ以上の切片の表面での細菌による相互汚染の結果、細菌分解を受けやすい。同様に、動物を殺処分し、その死体を加工して、ヒトの消費用の食品を生産する。典型的には、そのような動物の加工は内臓摘出を含み、そのことは、動物の食用部分を細菌が汚染することがある。さらに、加工で用いられる衛生状態に応じて、更なる汚染の供給源が存在する。
【0004】
その上、家禽を典型的な初期段階処理技術である煮沸消毒器に通す時、家禽はその表面の大群の微生物を運び込む。微生物は煮沸消毒器の水中に移動し、そこからそのトリを取り去る時トリに再び付着し得る。加えて、家禽の糞が煮沸消毒器の水中に排出され得、それにより、その中の微生物の存在がさらに増加する。煮沸消毒したトリは次に機械式羽取り機で羽毛が除去されるが、これはしばしば皮膚表皮層を剥ぎ取るように設定される。これにより微生物はより容易に無毛のトリに結合することが可能になる。ウシの死体によっても同様に皮上の微生物が屠殺室に持ち込まれる。皮を乱暴に除去するので、微生物を含む残骸が空気中に漂い、無毛の死体上に付着し得る。残念なことに、無毛の家禽またはウシの死体から微生物を取り去ることは難しい。従って、これらの微生物を除去する方法が研究されてきた。
【0005】
食品用抗菌剤として機能する組成物を開発するために、広範な研究が食品衛生分野で行われてきた。例えば、特許文献1は、クエン酸で緩衝したクエン酸ナトリウムを、クエン酸ナトリウム含有量1〜7%、および好ましくは約1〜1.3%で食肉に導入して、食肉における細菌増殖を抑制する方法を教示している。
【0006】
特許文献2は、浸透圧衝撃ならびに/またはリゾチーム溶液および/もしくはナイシン溶液のうちのいずれかと組み合わせて、低濃度のアルカリ金属オルトホスフェート溶液で処理することを含む細菌汚染除去方法を教示している。この参考文献では、レタスの葉または鶏皮上のある種の細菌に対する低濃度のオルトリン酸三ナトリウムとリゾチームとの組合せ、および鶏皮上のある種の細菌に対する低濃度のオルトリン酸三ナトリウムとナイシンとの組合せを試験した。特許文献3は、約4%以上のトリアルカリ金属ホスフェート溶液で家禽死体を処理して、細菌汚染および/または細菌増殖を除去、低減、または遅延させる方法を開示している。しかし、この開示によれば、比較的望ましくない大量のホスフェートが、廃棄物流に排出され、最終的に環境中に投棄されることになる。ホスフェートは、湖および河川の主な汚染源であり、高ホスフェートレベルは、藻および水草の過剰な発生を支持する。
【0007】
ホスフェートの使用を最少にするかまたは望ましくは排除するために、特許文献4は、ホスフェート溶液をケイ酸アルカリ水溶液に換えた食品物質用の抗菌方法を教示している。しかし、シリケートは、「凝集物」して不溶性の形態になる傾向があり、金属、特に、シャックルおよび廃液受けなどの鉄をベースする金属の表面に非常に緊密に結着する。この凝集したシリケートは、一般に、「スケール」、白点、汚れ、またはゴム状残留物として生じる可能性があり、これらのいずれも除去が困難である。本開示のためには、これら各々は、一般にスケールと呼ばれる。スケールは、細菌/微生物が浸潤しやすい表面を提供する恐れがあるため、一般に望ましくないものとして認識されている。
【特許文献1】米国特許第5,436,017号明細書
【特許文献2】国際公開第97/23136号パンフレット
【特許文献3】米国特許第5,283,073号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0194475号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
有利なことに、本発明は、上記問題のうちの特定のものを減少させ得る、抗菌性水溶液を提供する。より特定すると、本発明は、食材中での細菌汚染を減少させ得、そして/または細菌の増殖を遅らせ得;制限された量のホスフェート化合物しか含有しない廃液流を取得し得;そして金属物品上のシリケート凝集物の形成を制限し得、そして/またはこのシリケート凝集物の除去を容易にし得る。
【0009】
(発明の簡単な説明)
本発明の1つの局面は、(A)式(I)
【0010】
【化2−1】

を有するホスフェート、(B)式(II)
【0011】
【化2−2】

を有するシトレート、および(C)式[(MO]・(SiO・(HO)を有するシリケートを含む、抗菌性水溶液を提供し、M、M、M、M、M、M、およびMは、互いに独立して、水素、ナトリウム、およびカリウムからなる群より選択され;x、y、およびzは、互いに独立して、0〜12の任意の数であり、そしてmは、1〜6の任意の数である。
【0012】
本発明の別の局面は、食材中の細菌汚染および/または細菌増殖を制御する方法を提供し、この方法は、この食材を、充分な量の上記抗菌性溶液と接触させる工程を包含する。
【0013】
本発明のなお別の局面は、金属基材上のシリケート凝集物の形成を妨げ、そして/またはこのシリケート凝集物の除去を容易にする方法を提供し、この方法は、この金属物品とともに、上に規定されたシリケート溶液を使用する工程を包含する。
【0014】
本発明のさらなる局面は、環境的な理由から、抗菌プロセスにおけるホスフェートの使用を減少させる方法を提供し、この方法は、上に規定された水溶液を、より高レベルのホスフェートを含有する溶液の代わりに使用する工程を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
一般に、本発明は、ホスフェートと、シトレートと、シリケートとを含む抗菌性水溶液;食材における細菌汚染および/または細菌増殖を制御する方法;ならびに金属基材上のシリケート凝集物の形成を妨げ、そして/またはこのシリケート凝集物の除去を容易にする方法に関する。
【0016】
本発明の抗菌性水溶液は、
(A)式(I)
【0017】
【化3】

を有するホスフェート、
(b)式(II)
【0018】
【化4】

を有するシトレート、および(C)式[(MO]・(SiO・(HO)を有するシリケートを含み、M、M、M、M、M、M、およびMは、互いに独立して、水素、ナトリウム、およびカリウムからなる群より選択され;x、y、およびzは、互いに独立して、0〜12の任意の数であり、そしてmは、1〜6の任意の数である。
【0019】
当業者に公知であるように、M、M、およびMが全て水素ではない場合、式(I)のホスフェートは、ホスフェートまたはオルトホスフェート(例えば、リン酸三ナトリウム、リン酸三ナトリウム十二水和物(NaPO・12HO)、リン酸三ナトリウム六水和物、リン酸三カリウムなど)と呼ばれる。M、M、およびMのうちの1つが水素である場合、式(I)のホスフェートは、例えば、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素ナトリウム七水和物、sec−リン酸ナトリウム(sec−sodium phosphate)、二塩基性リン酸ナトリウム、またはリン酸二ナトリウム、およびリン酸水素二カリウム、リン酸水素二カリウム三水和物、リン酸水素カリウム、リン酸水素カリウム三水和物、sec−リン酸カリウム、二塩基性リン酸カリウム、二塩基性リン酸カリウム三水和物、リン酸二カリウムなどと呼ばれ得る。M、M、およびMのうちの2つが水素である場合、式(I)のホスフェートは、例えば、リン酸二水素ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム二水和物、リン酸一ナトリウム、リン酸二水素カリウム、一塩基性リン酸カリウム、リン酸一カリウムなどと呼ばれ得る。M、M、およびMの3つ全てが水素である場合、式(I)のホスフェートは、リン酸またはオルトリン酸になる。本発明の好ましい実施形態において、M、M、およびMの全ては、ナトリウムであり、そしてx=12である。すなわち、リン酸三ナトリウム(TSP)十二水和物(NaPO・12HO)である。
【0020】
本発明のためには潜在的にさほど適切ではないが、他のリン含有塩またはリン含有酸が、単独でか、または式(I)のホスフェートと組み合わせて使用され得る。これらのリン含有塩またはリン含有酸は、例えば、メタホスフェート(MPO)、ホスファイト(MPO)、メタホスファイト(MPO)、ピロホスフェート(M)、ピロホスファイト(M)、ハイポホスファイト(MPO)、ペルオキシ(一)ホスフェート(MPO)、ハイポホスフェート(M)、これらの含水形態、およびこれらの混合物である。ここで、「M」の定義は、必要な変更を加えて、式(I)のホスフェートの定義と同様である。
【0021】
市販されている式(I)のホスフェートとしては、AvGardTM TSP十二水和物(Rhodia)が挙げられる。
【0022】
上記抗菌性溶液中の、式(I)のホスフェートの濃度は、約0.1重量%〜約4重量%の範囲であり得る。好ましくは、式(I)のホスフェートの濃度は、約0.5重量%〜約2重量%である。好ましい実施形態において、このホスフェートの濃度は、抗菌性水溶液中約1重量%である。式(I)のホスフェートの濃度は、無水形態の重量および抗菌性溶液の総重量に基づいて、計算される。式(I)のホスフェートの無水形態または含水形態のいずれかが、抗菌性溶液を形成するために使用され得るが、ただし、含水のあらゆる会合水の重量を補償するために、適切な調節がなされる。
【0023】
、M、およびMが水素ではない場合、式(II)のシトレートは、たとえば、クエン酸ナトリウム、三塩基性クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム塩、クエン酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム二水和物、三塩基性クエン酸ナトリウム二水和物、クエン酸三ナトリウム塩二水和物、クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸カリウム、クエン酸三カリウム、三塩基性クエン酸ナトリウム、クエン酸三カリウム塩、クエン酸カリウム一水和物、クエン酸三カリウム一水和物、三塩基性クエン酸カリウム一水和物、クエン酸三カリウム塩一水和物などと呼ばれ得る。M、M、およびMのうちの1つが水素である場合、式(II)のシトレートは、例えば、クエン酸二ナトリウム塩、クエン酸二ナトリウム塩セスキ水和物(1.5HO)、クエン酸水素ナトリウム、クエン酸水素ナトリウムセスキ水和物、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウムセスキ水和物、二塩基性クエン酸ナトリウム、二塩基性クエン酸ナトリウムセスキ水和物などと呼ばれ得る。M、M、およびMのうちの2つが水素である場合、式(II)のシトレートは、例えば、一塩基性クエン酸カリウム、クエン酸二水素カリウム、クエン酸一カリウム塩、一塩基性クエン酸ナトリウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸一ナトリウム塩などと呼ばれ得る。M、M、およびMの3つ全てが水素である場合、式(II)のシトレートは、クエン酸、クエン酸一水和物などになる。本発明の好ましい実施形態において、M、M、およびMは、全てナトリウムである。
【0024】
市販されている式(II)のシトレートとしては、Daniscoから入手可能な食物等級の化合物が挙げられる。
【0025】
上記抗菌性水溶液中の、式(II)のシトレートの濃度は、約0.1重量%〜約4重量%の範囲であり得る。好ましくは、式(II)のシトレートの濃度は、約0.5重量%から約2重量%である。好ましい実施形態において、このシトレートの濃度は、上記抗菌性溶液中約1重量%である。式(II)のシトレートの濃度は、無水形態の重量および抗菌性溶液の総重量に基づいて、計算される。式(II)のシトレートの無水形態または含水形態のいずれかが、抗菌性溶液を形成するために使用され得るが、ただし、含水のあらゆる会合水の重量を補償するために、適切な調節がなされる。
【0026】
本発明のために適切なシリケートは、無水であっても含水であってもよく、結晶性であっても非晶質であってもよい。シリケート化合物の好ましい例としては、二ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、二ケイ酸カリウム、メタケイ酸カリウムが挙げられるが、これらに限定されない。より好ましい例としては、無水メタケイ酸ナトリウム、無水メタケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム五水和物、メタケイ酸カリウム五水和物、メタケイ酸ナトリウム六水和物、メタケイ酸カリウム六水和物、メタケイ酸ナトリウム九水和物、メタケイ酸カリウム九水和物、およびこれらの混合物が挙げられる。好ましい実施形態において、このシリケートは、結晶性[NaO]・(SiO・(HO)であり、この式において、mは、0.5〜3.5の範囲(例えば、m=1)であり得;zは、好ましくは、このシリケート化合物の含水量を0%〜55%の範囲にするような数であり得る(例えば、zは、0〜9の範囲、例えば、0、5、6、または9であり得る)。
【0027】
市販されている式(II)のシリケートとしては、PQ Corporation,PAから入手可能な化合物;INEOS,ILから入手可能な化合物;およびOxidental Chemicals,TXから入手可能な化合物が挙げられる。
【0028】
本発明によれば、シリケートの濃度は、0.05重量%以上であり得、例えば、0.1重量%からこの抗菌性溶液中のシリケートの飽和までであり得る。好ましくは、このシリケートの濃度は、この抗菌性溶液中、約0.4重量%〜約15重量%である。より好ましくは、このシリケートの濃度は、この抗菌性溶液中、約2重量%〜約6重量%である。好ましい実施形態において、このシリケートの濃度は、この抗菌性溶液中、約4重量%である。シリケートの濃度は、無水シリケートの重量および抗菌性溶液の総重量に基づいて、計算される。シリケートの無水形態または含水形態のいずれかが、抗菌性溶液を形成するために使用され得るが、ただし、含水のあらゆる会合水の重量を補償するために適切な調節がなされる。
【0029】
例示的な好ましい実施形態において、上記抗菌性水溶液は、リン酸三ナトリウム(TSP)十二水和物(NaPO・12HO)、クエン酸ナトリウム、およびSMSを含む。
【0030】
本発明の抗菌性水溶液は、ホスフェートと、シトレートと、シリケートとを、水に溶解することによって、作製され得る。本発明については、溶媒としての水に対して、特定の限定が存在しない。例えば、費用の問題を考慮すると、この溶媒は、水道水であり得る。しかし、水道水は、少量の他の成分を含有し得ることが、理解されるべきであり、そしてこのように調製される抗菌性水溶液もまた、本発明の範囲内である。
【0031】
必要に応じて、本発明の抗菌性水溶液は、成分(D)をさらに含み得、この成分(D)は、カーボネート、水酸化物、塩化物、スルフェート、アンモニア、およびこれらの混合物からなる群より選択される。カーボネートの例としては、無水炭酸ナトリウムまたは含水炭酸ナトリウム、無水炭酸水素ナトリウムまたは含水炭酸水素ナトリウム、無水炭酸カリウムまたは含水炭酸カリウム、および無水炭酸水素カリウムまたは含水炭酸水素カリウムが挙げられる。水酸化物の例としては、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが挙げられる。塩化物の例としては、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムが挙げられる。スルフェートの例としては、硫酸ナトリウムおよび硫酸カリウムが挙げられる。好ましい成分(D)は、水酸化ナトリウムおよび炭酸ナトリウムから選択される。
【0032】
非常に好ましい実施形態において、成分(D)は、上記抗菌性溶液の総重量に基づいて、0.05重量%〜15重量%、好ましくは、0.2重量%〜7重量%、より好ましくは、0.4重量%〜2重量%の濃度を有する。
【0033】
上記抗菌性溶液において、ホスフェートと、シトレートと、シリケートと、任意の成分(D)と、他の少量の水道水微量成分との間に、酸−塩基平衡が存在する。好ましくは、最終抗菌性水溶液のpHは、約11〜14の範囲、好ましくは、約12〜13.5の範囲、より好ましくは、約12.75〜13.25の範囲を提供するように、制御される。
【0034】
食材における細菌汚染および/または細菌増殖を制御する際に使用される場合、本発明の抗菌性水溶液は、約0℃〜約85℃、より好ましくは、約0℃〜70℃、なおより好ましくは、約10℃〜約50℃、そしてなおさらに好ましくは、約20℃〜約40℃の温度であり得る。
【0035】
本発明の抗菌性水溶液による、細菌汚染および/または細菌増殖を制御する機構は、例えば、この溶液が、食材中に存在する細菌の外膜を溶解し得るか、その構造を破壊し得るか、または他の様式で破裂させ得ることであり得る。本明細書中で使用される場合、述語「細菌汚染および/または細菌増殖を制御する」とは、一般に、細菌汚染を減少させること、または細菌増殖を遅くすること、および細菌汚染を減少させることと細菌増殖を遅くすることとの両方をいう。
【0036】
必要に応じて、本発明の抗菌性水溶液は、他の抗菌処理と組み合わせられて、細菌汚染および/または細菌増殖を、目標値未満まで制御する効果を増大させ得る。他の抗菌処理は、例えば、物理的手段、抗菌性化学物質、および抗菌性生化学物質である。
【0037】
例示的な物理的手段としては、熱水(例えば、約160°F〜約180°Fの温度)で死体を洗浄すること;ならびに蒸気および減圧で死体を清浄化することなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
例示的な抗菌性化学物質としては、塩素;ホップ酸抽出物またはホップ樹脂;プロピオン酸菌代謝物;キトサン;第三級ブチルヒドロキノン(TBHQ);二酸化塩素;エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドなどの、滅菌ガス;四ギ酸アンモニウム(ammonium tetraformate);乳酸、酢酸、プロピオン酸、ソルビン酸、酒石酸、安息香酸、硝酸、アシルオキシアルケン酸などの、酸およびそれらの塩;ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
ビール製造において使用されるホップの苦味成分(特に、β酸)は、食品中の殺菌剤として有用であることが、ここで見出された。ホップ中に含まれる苦味酸のうちの、最も主要な群は、α−酸およびβ−酸であり、それぞれフムロンおよびルプロンともまた称される。両方が、ビールに苦味を与えるが、α−酸のほうがβ−酸より苦く、そしてほとんどの食品において使用するために、望ましくない。ホップ抽出物の製造業者は、α酸とβ酸とを、種々のクロマトグラフィー方法によって商業的に単離し、そしてこれらの2つの酸の画分を、液体二酸化炭素を超臨界条件下で使用して分離するための技術を開発した。この操作の副生成物は、約61重量%のβ酸を含み、その残りはホップ樹脂から本質的になる、生成物である。この副生成物は、マルトデキストリンまたは他の食品等級のキャリアで標準化され得、噴霧乾燥され得、そして抗菌食品成分として使用され得る。
【0040】
ホップに含まれるα−酸は、フムロン、コフムロンおよびアドフムロンとして一般的に公知であり、一方で、ホップに含まれるβ−酸は、ルプロン、コルプロンおよびアドルプロンとして一般的に公知である。抗菌特性が示された、ホップ酸またはホップ樹脂の化学修飾された誘導体(例えば、米国特許第5,455,038号に開示されるようなヘキサヒドロコルプロンおよびテトラヒドロイソフムロン)は、本発明に関連して使用するために、特に企図される。また、本発明に関連して使用するために特に企図されるとみなされるものは、ホップ酸の任意の適切な塩形態またはホップ樹脂の使用である。
【0041】
プロピオン酸菌代謝産物は、プロピオン酸菌(例えば、Propionibacterium shermanii、Propionibacterium freudenreichii、Propionibacterium pentosaceum、Propionibacterium thoenii、Propionibacterium arabinosum、Propionibacterium rubrum、Propionibacterium jensenii、Propionibacterium peterssonii、および関連の種(Malikら、Can.J.Microbiol.14:1185,1968において同定されるような))を、乳汁、チーズ乳清、またはブロス培地、あるいは他の適切な栄養混合物中で増殖させることによって、得られ得る。次いで、得られた増殖液は、グラム陰性細菌を阻害するために、食材に添加され得る。これらの代謝産物は、分離もしくは精製されても、混合物として使用されてもよい。粉末または液体の天然プロピオン酸菌代謝産物は、種々の食材に組み込まれて、これらの食材を、グラム陰性細菌の増殖および/または酵素活性による変敗を受けにくくする。
【0042】
市販のプロピオン酸菌代謝産物は、Rhodia Inc.から、MICROGARD(登録商標)の商標で得られ得る。MICROGARD(登録商標) MG 100は、低温殺菌された洗練されたスキムミルクであり、スキムミルク固形物で標準化され、そして噴霧乾燥されている。MICROGARD(登録商標) MG 200は、低温殺菌された洗練されたブドウ糖であり、マルトデキストリンで標準化され、そして噴霧乾燥されている。MICROGARD(登録商標) MG 250は、洗練されたブドウ糖製品の濃縮(凍結または液体)版である。番号によって同定されるプロピオン酸菌株は、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能である。他の培養物は、広く入手可能であるか、またはOregon State University,Corvallis,Oregから得られ得る。
【0043】
細菌汚染および/または細菌増殖を制御する際に有効な、任意の適切な抗菌生化学物質が、本発明において存在し得る。グラム陽性細菌に対する例示的な抗菌生化学物質としては、ランチビオティックス、リゾチーム、ペディオシン(pediocin)、およびラクチシン(lacticin)のクラスのバクテリオシンが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0044】
用語「ランチビオティックス」は、Schnellら(1988.Nature 333:276−278)によって、一群のバクテリオシン(アミノ酸であるランチオニンと、他の「非タンパク質」アミノ酸とを含む、ナイシンが挙げられる)を記載するために作り出された。これらのバクテリオシンに共通の特性は、Kellnerら(1988.Eur J.Biochem 177:53−59)によって概説されており、ここで、Kellnerらは、「多環式ポリペプチド抗生物質は、高含有量の不飽和アミノ酸(デヒドロアラニン、デヒドロブツリン(dehydrobutrine))およびチオエーテルアミノ酸(メソランチオニン(mesolanthionine)、(2S,3S,6R)−3−メチルランチオニン((2S,3S,6R)−3−methyllanthionine))を有する。さらに、リジノアラニン(lysionalanine)、3−ヒドロキシアスパラギン酸およびS−(2−アミノビニル)−D−シスチンが、いくつかのメンバーにおいて見出される。」と記載している。この群のメンバーとしては、ナイシン、スブチリン(subtilin)、pep 5、エピデルミン、ガリデルミン(gallidermin)、シンナマイシン(cinnamycin)、Ro09−0198、デュラマイシン(duramycin)およびアンコベニン(ancovenin)が挙げられる。これらのリボソーム的に合成されたペプチド抗生物質は、19個〜34個のアミノ酸を含み、そして種々の微生物(スタフィロコッカス(Staphlococcus)種、バチルス(Bacillus)種およびストレプトミセス(Streptomyces)種が挙げられる)によって産生される。非タンパク質アミノ酸のこれらの独特の組成に加えて、これらの物質は、それらの特異性に基づいて、他のポリペプチド抗生物質から区別され得る。一般にはバクテリオシン、そして具体的にはランチビオティックスは、非常に狭い活性スペクトルによって特徴付けられる。従って、数種のみの細菌しか、実用的な条件において、特定のバクテリオシンに対して感受性ではない。このことは、他の広いスペクトルのポリペプチド抗生物質(例えば、ほとんどの細菌に対して活性であるポリミキシンB1、ならびにJaynesらによって国際公開WO89/00194によって議論される、ほとんどの細菌、酵母および哺乳動物細胞に対してさえ活性である「溶解性ペプチド」)とは対照的である。
【0045】
ナイシンは、ときどき、約7000の分子量を有する二量体として存在する。ナイシンは、数種の異常なアミノ酸(β−メチルランチオニン、デヒドロアラニン、およびランチオニンが挙げられる)を、その合計34の個アミノ酸のうちに含む。酸溶液中での安定性に寄与する5個の異常なチオエーテル結合が、このペプチド中に存在する。ナイシンは、最も徹底的に特徴付けられたバクテリオシンのうちの1つであり、他のランチビオティックス(例えば、スブチリンおよびエピデルミン)と、顕著な構造の相同性および作用を共有する(Buchmanら、1988、J.Bio.Chem.263(31):16260−16266)。ナイシン、その物理特性および用途の最近の概説としては、「Bacteriocins of Lactic Acid Bacteria」、T.R.Klaenhammer,1988,Biochimie 70:337−349、「Nisin」、A.Hurst,1981.Avd.Appl.Microbiol.27:85−121、および米国特許第4,740,593号が挙げられる。ナイシンは、類似のアミノ酸組成およびいくらか制限された範囲の抗生物質活性を示す、密接に関連した数種の物質を説明する集合的な名称である。この現象は、E.Lipinskaによって、「Antibiotics and Antibiosis in Agriculture」(M.Woodbine編)、pp.103−130において議論されている。
【0046】
L.monocytogenesと戦うためのナイシンの使用は、M.Doyle;「Effect of Environmental and Processing Conditions on Listeria Monocytogenes」、Food Technology,1988,42(4):169−171によって報告された。この参考文献は、その生物の増殖の初期の阻害(約12時間にわたる)を記載し、そしてL.monocytogenesが、5.0程度の低いpHにおいて増殖し得、そしてアルカリ性pHに対して耐性であり、pH9.6において増殖する能力を有することを報告する。
【0047】
ナイシンは、Rhodia Inc.から、商標MICROGARD(登録商標) MG300で市販されており、そして精製された形態で、商標NovasinTMで市販されている。実際には、ランチビオティックスは、(処理のために使用される溶液の重量に基づいて)約1ppm〜約25ppmの活性成分(ナイシン)の量で、食品に添加される。
【0048】
リゾチームもまた、本発明の水溶液と協働して使用されて、細菌汚染および/または細菌増殖を制御する有効性を改善し得る。リゾチームが使用される場合、リゾチームは、食品に、(処理のために使用される溶液の重量に基づいて)約20ppm〜約500ppm、より好ましくは、約50ppm〜約100ppmの量で添加される。リゾチームはまた、Rhodiaから、商標NovaGARDTMで市販されている。リゾチーム(ムラミダーゼ;ムコペプチドN−アセチルムカモイルヒドロラーゼ(mucopeptide N−acetylmucamoylhydrolase);1,4−β−Nアセチルヘキソースアミノダーゼ、E.C.3.2.1.17)は、種々の供給源から単離された粘液溶液酵素であり、充分に特徴付けられた酵素である。1922年にW.Flemingによって最初に発見された、卵白リゾチームが、配列決定された最初のタンパク質であり、卵白リゾチームについて最初に、三次元構造が、X線結晶学を使用して提唱され、そして卵白リゾチームについて最初に、作用の詳細な機構が提唱された。グラム陽性細菌に対する卵白リゾチームの抗菌活性は、例えば、V.N.Procterらによって、CRC Crit.Reviews in Food Science and Nutrition,1988,26(4):359−395において、充分に文書で報告されている。卵白リゾチームの分子量は、約14,300〜14,600であり、等電点は、pH10.5〜10.7である。卵白リゾチームは、4つのジスルフィド架橋によって相互接続された、129個のアミノ酸からなる。類似の酵素が、他の供給源(Escherichia coliバクテリオファージT4およびヒト涙液のような種々の産生者が挙げられる)から単離され、そして特徴付けられている。わずかな差異(例えば、ヒトリゾチームは、130個のアミノ酸を有する)にもかかわらず、アセチルヘキソースアミンポリマーの加水分解の能力は、本質的に同じままである。従って、本発明の目的のためには、用語リゾチームとは、アセチルヘキソースアミンおよび関連するポリマーを加水分解する能力を有する、外膜分解酵素を包含することが意図される。
【0049】
リゾチームは、細菌および真菌を死滅させるか、または細菌および真菌の増殖を阻害することが公知であり、そして欧州において、チーズ中での変敗微生物であるClostridium tyrobutyrucumの増殖を制御するために使用されている。リゾチームはまた、他の種々の食物保存用途において使用することが提唱されており、Listeria Monocytogenesの増殖を阻害する(およびある場合には死滅させる)ことが、報告された(Hugheyら、1987、Appl.Environ.Microbiol 53:2165−2170)。
【0050】
細菌汚染および/または細菌増殖を制御することの有効性を改善するために、本発明の抗菌性水溶液はまた、ラクチシン、およびpediococcus細菌代謝産物(特に、ペディオシン)と協力して使用され得る。ラクチシンとペディオシンとの両方が、グラム陽性細菌に対して選択された活性を有するが、グラム陰性細菌に対しては選択された活性を有さないことが公知である化合物である。
【0051】
本発明の種々の実施形態において、食材中の広いスペクトルの細菌の汚染および/または増殖は、抗菌性水溶液(単独で、または他の抗菌処理と組み合わせて)によって、制御され得る。細菌としては、E.coli、サルモネラ、およびカンピロバクターなどの、グラム陰性細菌;Pseudomonus aeruginosa、アルカリゲネス、およびエルウィニア種などの、グラム陰性変敗細菌(gram negative spoliage bacteria);Listeria monocytogenes、Staphylococcus aureus、Bacillus cereus、Clostridium botulinum、Clostridium perfringens、Corynebacterium、Diplococcus、Mycobacterium、Streptococcus、およびStreptomycesなどの、グラム陽性病原体が挙げられ得る。サルモネラの例としては、Salmonella typhimurium、Salmonella choleraesuisおよびSalmonella enteriditisが挙げられる;E.coliの例としては、E.coli ATCC 25922、E.coli ATCC 8739およびE.coli O 157:H7 ATCC 43895などが挙げられる。
【0052】
食材中の細菌レベルは、例えば、標準化されたサンプル中の標準的な好気性プレート数(コロニー形成単位(CFU))によって、測定され得る。例えば、E.coli計数は、AOAC Official Method 991.14に従って、E.coli/大腸菌群計数プレート試験(PetrifilmTM(3M))によって、決定され得る。サルモネラ計数は、AOAC Official Method 990.13に従って、サンプルを、3工程のブロス濃縮を伴って、比色デオキシリボ核酸ハイブリダイゼーション試験(GENE−TRAKTM(Neogen Corporation))に供することによって、決定され得る。推定的な陽性の結果は、一般に、FDA−BAM(第8版改定A,1998)に従って確認され得る。結果は、((試験系列中の陽性結果の数)/(試験系列中のサンプルの総数)×100)として計算された、陽性の結果の百分率として報告される。
【0053】
本発明の抗菌性水溶液は、種々の食材を処理するために使用され得る。これらの食材は、食用の果実および野菜、食用の動物(例えば、鳥類、魚類、甲殻類、貝類、および哺乳動物など)である。食用果実および野菜の例としては、レタス、トマト、キュウリ、ニンジン、ホウレンソウ、ケール、フダンソウ、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、カボチャ、マメ、コショウ、リンゴ、オレンジ、セイヨウナシ、メロン、モモ、ブドウ、プラム、およびサクランボが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な鳥類としては、ニワトリ、シチメンチョウ、ガチョウ、食用雄鶏(capon)、ゲーム雌鳥(game hen)、ハト、アヒル、ホロホロチョウ、キジ、ウズラ、およびパートリッジが挙げられる。例示的な魚類としては、ナマズ、マス、サケ、ヒラメおよびカレイ(flounder)、マグロ、メカジキ、ならびにサメが挙げられる。例示的な甲殻類としては、イセエビ、エビ、クルマエビ、カニ、およびロブスターが挙げられる。例示的な貝類としては、二枚貝、ホタテガイ、カキ、ならびにイガイおよびイシガイ(mussel)が挙げられる。例示的な哺乳動物としては、ウシ、ブタ、ヒツジ、ラム、およびヤギが挙げられる。
【0054】
食材のために適切な添加剤は、当業者に周知であり、例えば、天然調味料または合成調味料、精油、香味料、色素または着色剤、ビタミン、ミネラル、栄養素、酵素、結合剤(ガーゴムおよびキサンタンガムなど)である。好ましい実施形態において、ガーゴムが、処理される食品の表面への抗菌剤の結合を補助するために使用される。
【0055】
本発明の好ましい実施形態において、抗菌性水溶液は、内臓を取り除いた動物の死体(動物の内部器官が除去されている)を処理するために使用される。内臓を取り除いた死体は、代表的に、骨、骨格筋および筋膜を含む。好ましい実施形態において、皮膚は、本発明の抗菌性水溶液での処理の前に、魚類または鳥類の内臓を取り除いた死体から除去される。別の好ましい実施形態において、皮膚は、本発明の抗菌性水溶液での処理の前に、哺乳動物の内臓を取り除いた死体から除去される。種々の実施形態において、本発明の方法は、死体の細菌汚染を目標値未満まで低下させるための、死体処理ラインの主要な工程として適切である。
【0056】
例えば、動物の死体は、食肉処理後に、冷蔵前または冷蔵中または冷蔵後のいずれかに、この死体を抗菌性水溶液に浸漬することによってか、または抗菌性水溶液をこの死体上に噴霧することによって、抗菌性水溶液と接触させられ得る。好ましい実施形態において、この動物の死体は、大気圧を1平方インチあたり2ポンド(2psig)より大きく超えるゲージ圧力、より好ましくは、2psig〜400psigのゲージ圧力で、抗菌性水溶液を、この死体の全てのアクセス可能な表面上に噴霧することによって、この抗菌性水溶液と接触させられる。別の好ましい実施形態において、鳥類の死体は、抗菌性水溶液を、この死体に、3psig〜40psigの圧力で噴霧することによって、この抗菌性水溶液と接触させられ得る。なお別の好ましい実施形態において、哺乳動物の死体は、この抗菌性水溶液を、この死体に、20psig〜150psigの圧力で噴霧することによって、この抗菌性水溶液と接触させられる。
【0057】
動物の死体は、約1秒間〜約5分間、より好ましくは、約5秒間〜約2分間、そしてなおより好ましくは、約15秒間〜約1分間、またはこれ以上に時間にわたって、抗菌性水溶液と接触させられ得る。好ましい接触時間とは、この抗菌性水溶液を死体と接触させるために使用される活性な適用プロセス(例えば、浸漬または噴霧)の持続時間をいう。例えば、動物の死体は、抗菌性水溶液の容器に、15秒間浸漬され得、この溶液から取り出され得、30秒間滴をたらされ得、そしてプラスチックバッグに入れられ得る。一旦適用されると、抗菌性水溶液は、この死体から即座にすすぎ落とされ得るか、あるいはこの死体上に残され得る。本発明に従って処理された動物の死体は、このような処理の直後に、通常の死体加工条件(例えば、水きりまたは冷蔵)に従って加工され得る。必要に応じて、抗菌性水溶液の残留物は、さらなる加工の前に、この死体からすすぎ落とされ得る。
【0058】
死体は、適切な量の酸性緩衝液(例えば、Butterfield緩衝液)をこの死体を収容するプラスチックバッグに添加し、次いで、この緩衝液のバッグ内でこの死体を振盪することによって、すすがれ得、この振盪の間に、あらゆる残留塩基性抗菌性溶液が、中和され得る。次いで、すすぎ液は、このバッグから除去され得、そしてこの死体の容器を輸送用容器内で氷水上に配置することによって、冷蔵され得る。
【0059】
本発明による抗菌処理は、食用の動物の死体の、単純かつ経済的な洗浄を可能にし、この死体の官能特性を実質的に損なうことなく、そしてより高い量のホスフェートを含む廃液流を発生させることなく、この死体の微生物汚染を減少させ、そして/またはこの死体上での微生物増殖を遅らせる。官能特性としては、外観、きめ、味、および匂いなどの感覚特性が挙げられる。
【0060】
別の重要な利点として、本発明は、金属物品上でのシリケート凝集物の形成を防ぎ、そして/またはこのシリケート凝集物の除去を容易にする方法を提供する。この方法は、上記抗菌性水溶液を、この金属物品と供に使用する工程を包含する。産業用の食品加工設備において、シリケート凝集物は、望ましくない「スケール」、白点、汚れ、または粘着性のあるゴム状残留物などとして公知である。金属物品は、食品加工設備における任意の金属工具または装置(例えば、かせ、かせの柄、たれ受け、キャビネット、床および昇降口設備など)であり得る。
【0061】
理論によって束縛されないが、シリケート凝集物は、例えば、産業設定において溶液をその元の強度まで再構築しながら連続的に再利用しながら、シリケートが食材(例えば、家禽の死体)に塗布される場合に、シリケートの変性によって形成されると考えられる。この適用から蓄積する全ての副生成物は、自然な加工パージによって支配される平衡濃度において、この溶液中に残る。メタケイ酸ナトリウム(SMS)のようなシリケートの溶液の変性は、沈殿物を生じさせ、この沈殿物が、金属物品の表面を覆い、そしてこの沈殿物が、シリケートを含む。やがて、例えば、1日の操作において、このシリケートは、シリカまたはポリシリカに変化し、これが、金属表面(例えば、鉄)に非常に硬く結合する。
【0062】
このシリケート凝集物を除去するために、通常の清浄剤が使用され得る。例示的な清浄剤としては、Rhodiaから入手可能なMirataine化合物のファミリー、およびUnisanから入手可能な化合物が挙げられる。
【0063】
有利なことに、本発明は、スケール形成が制限され、そして/またはスケール除去がより容易である、充分な抗菌活性を提供すると考えられる。
【0064】
有利なことに、シトレート化合物をホスフェート化合物およびシリケート化合物に添加することによって、改善された抗菌活性が提供され得ることが予測される。
【0065】
好ましい実施形態において、抗菌性水溶液は、回収および再利用される。好ましくは、回収された溶液は再利用の前に濾過されて、固形物を除去される。好ましくは、抗菌水溶液のそれぞれの量の1種以上の成分が、モニターされ、そして望ましい抗菌性水溶液が、適切な量のホスフェート、シトレート、シリケート、水、カーボネート、および/または水酸化物をこの溶液に添加することによって、再度調製される。
【実施例】
【0066】
以下の実施例は、本発明を説明することを補助するために提供される。これらの実施例は、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の範囲を限定することを意図されない。
【0067】
実験を、卓上規模とパイロットプラントレベルとの両方で実施した。各場合において、4%メタケイ酸ナトリウム(INEOS)、1%リン酸三ナトリウム十二(AvGard)、および1%クエン酸ナトリウム(Danisco)の抗菌性溶液を、水中で調製した。卓上規模の実験において、ニワトリの死体を、この溶液に、4時間〜16時間にわたって浸漬して、ブロスを得た。次いで、この得られたブロスを、2インチ×5インチのステンレス鋼片の表面に、16時間〜192時間にわたって散らした。ステンレス鋼片を、複数の日に曝露することなど反復ベースで評価し、そして通常、1日1回のベースで調査した。散らす工程を、このブロスを攪拌することによって達成した。より具体的には、ステンレス鋼片に隣接するプロペラの回転表面にブロスを分配する蠕動ポンプを使用して、ブロスを散らした。得られたステンレス鋼片を取り外して、即座にかまたは乾燥後のいずれかに、洗浄した。洗浄を、Mirataine JCHA、Mirataine H2 CHA、またはMirataine CBSを使用して実施した。評価したステンレス鋼を、目視検査に基づいて評価し、そしてスケール沈着物の可視量に従って、等級付けした。これらの結果は、上記抗菌性溶液を使用する、優れたスケール防止/除去(10点尺度において6〜10の間)を示し、一方で、代替のブロス溶液を使用する比較教示は、比較的低いスケール防止を示した。
【0068】
パイロットプラント実験を実施するために、上記溶液を、40ポンドのSMS、10ポンドのTSPおよび10ポンドのクエン酸ナトリウムを、940ポンドの水中で使用して調製した。このパイロットプラントを、代表的な死体処理手順に従って、本発明の溶液を使用して8時間のサイクルで運転した。このサイクル後、たれ受けおよびかせを洗浄し、そしてスケールの蓄積について目視評価した。設備を、二者択一的に、乾燥の前後両方に洗浄した。洗浄を、5% NaOH中1% Mirataine、または5% NaOH中1.5% Mirataineのうちの1つを使用して実施した。このプロセスを、数週間にわたって繰り返し、1週間あたり1回〜3回繰り返した。この実験は、かせからスケール残留物を水洗によって除去する能力、およびたれ受けからスケール残留物を水洗によって除去する能力、およびMirataineクレンザーを用いる改善されたスケール除去を示した。これらの結果を達成する能力は、数週間の評価にわたって示された。
【0069】
例示的な実施形態が、好ましい実施形態を参照して記載された。明らかに、上記詳細な説明を読み、そして理解することによって、他者は改変および変更に想到する。このような改変および変更が添付の特許請求の範囲またはその均等物の範囲内である限り、この例示的な実施形態は、このような改変および変更の全てを包含すると解釈されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌性水溶液であって、
(A)(I)の式
【化1−1】

を有するホスフェート、
(B)(II)の式
【化1−2】

を有するシトレート、および
(C)式[(MO]・(SiO・(HO)を有するシリケート、
を含み、
、M、M、M、M、M、およびMは、互いに独立して、水素、ナトリウム、およびカリウムからなる群より選択され;x、y、およびzは、互いに独立して、0〜12の任意の数であり;mは、1〜6の任意の数である、
抗菌性水溶液。
【請求項2】
、M、およびMが、すべてナトリウムである、請求項1に記載の抗菌性水溶液。
【請求項3】
前記ホスフェートが、リン酸三ナトリウム十二水和物(NaPO・12HO)、リン酸三ナトリウム六水和物、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1または2に記載の抗菌性水溶液。
【請求項4】
x=12である、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の抗菌性水溶液。
【請求項5】
前記ホスフェートが、前記溶液の総重量に基づいて約0.1%〜約4%の濃度を有する、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の抗菌性水溶液。
【請求項6】
前記ホスフェートが、前記溶液の総重量に基づいて約0.5%〜約2%の濃度を有する、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の抗菌性水溶液。
【請求項7】
、M、およびMが、すべてナトリウムである、請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の抗菌性水溶液。
【請求項8】
前記シトレートが、前記溶液の総重量に基づいて約0.1%〜約4%の濃度を有する、請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の抗菌性水溶液。
【請求項9】
前記シトレートが、前記溶液の総重量に基づいて約0.5%〜約2%の濃度を有する、請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載の抗菌性水溶液。
【請求項10】
前記シリケートが、二ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、二ケイ酸カリウム、メタケイ酸カリウム、およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1〜9のうちのいずれか1項に記載の抗菌性水溶液。
【請求項11】
前記シリケートが、無水メタケイ酸ナトリウム、無水メタケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム五水和物、メタケイ酸カリウム五水和物、メタケイ酸ナトリウム六水和物、メタケイ酸カリウム六水和物、メタケイ酸ナトリウム九水和物、メタケイ酸カリウム九水和物、およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1〜9のうちのいずれか1項に記載の抗菌性水溶液。
【請求項12】
前記シリケートが、結晶性[NaO]・(SiO・(HO)を含み、mは、0.5〜3.5の範囲内にあり、該シリケートの水含量は、0重量%〜55重量%の範囲内にある、請求項1〜9のうちのいずれか1項に記載の抗菌性水溶液。
【請求項13】
m=1である、請求項1〜12のうちのいずれか1項に記載の抗菌性水溶液。
【請求項14】
zが、0〜9の範囲内にある、請求項1〜13のうちのいずれか1項に記載の抗菌性水溶液。
【請求項15】
zが、0、5、6、または9である、請求項1〜14のうちのいずれか1項に記載の抗菌性水溶液。
【請求項16】
前記シリケートが、前記溶液の総重量に基づいて約0.4%〜約15%の濃度を有する、請求項1〜15のうちのいずれか1項に記載の抗菌性水溶液。
【請求項17】
前記シリケートが、前記溶液の総重量に基づいて約2%〜約6%の濃度を有する、請求項1〜16のうちのいずれか1項に記載の抗菌性水溶液。
【請求項18】
リン酸三ナトリウム(TSP)十二水和物(NaPO・12HO)、クエン酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム(SMS)を含む、請求項1〜17のうちのいずれか1項に記載の抗菌性水溶液。
【請求項19】
前記溶液の溶媒が、水道水である、請求項1〜18のうちのいずれか1項に記載の抗菌性水溶液。
【請求項20】
カーボネート、ヒドロキシド、クロリド、スルフェート、アンモニア、およびそれらの混合物からなる群より選択される成分(D)をさらに含む、請求項1〜19のうちのいずれか1項に記載の抗菌性水溶液。
【請求項21】
前記成分(D)は、無水炭酸ナトリウムまたは含水炭酸ナトリウム、無水炭酸水素ナトリウムまたは含水炭酸水素ナトリウム、無水炭酸カリウムまたは含水炭酸カリウム、無水炭酸水素カリウムまたは含水炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項20に記載の抗菌性水溶液。
【請求項22】
前記成分(D)が、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項21に記載の抗菌性水溶液。
【請求項23】
前記成分(D)が、前記溶液の総重量に基づいて0.2%〜7%の濃度を有する、請求項20〜22のうちのいずれか1項に記載の抗菌性水溶液。
【請求項24】
前記成分(D)が、前記溶液の総重量に基づいて0.4%〜2%の濃度を有する、請求項20〜23のうちのいずれか1項に記載の抗菌性水溶液。
【請求項25】
11〜14のpH値を有する、請求項1〜24のうちのいずれか1項に記載の抗菌性水溶液。
【請求項26】
12〜13.5のpH値を有する、請求項1〜25のうちのいずれか1項に記載の抗菌性水溶液。
【請求項27】
12.75〜13.25のpH値を有する、請求項1〜26のうちのいずれか1項に記載の抗菌性水溶液。
【請求項28】
食材における細菌汚染および/または細菌増殖を制御するための方法であって、
該食材を、請求項1〜27のうちのいずれか1項に記載の抗菌性溶液と接触させる工程;
を包含する、方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、
前記食材を、抗菌性化学物質で処理する工程;
をさらに包含し、
該抗菌性化学物質は、塩素;ホップ酸抽出物またはホップ樹脂;プロピオン酸菌代謝物;キトサン;第三級ブチルヒドロキノン(TBHQ);二酸化塩素;エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドなどの、滅菌ガス;四ギ酸アンモニウム;乳酸、酢酸、プロピオン酸、ソルビン酸、酒石酸、安息香酸、硝酸、アシルオキシアルケン酸などの、酸およびそれらの塩;ならびにそれらの混合物からなる群より選択される、方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、前記プロピオン酸菌代謝物は、
Propionibacterium shermanii、Propionibacterium freudenreichii、Propionibacterium pentosaceum、Propionibacterium thoenii、Propionibacterium arabinosum、Propionibacterium rubrum、Propionibacterium jensenii、およびPropionibacterium peterssoniiからなる群より選択されるプロピオン酸菌株を増殖させることによって得られる、方法。
【請求項31】
請求項28〜30のうちのいずれか1項に記載の方法であって、
前記食材を、抗菌性生化学物質で処理する工程;
をさらに包含する、方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、前記抗菌性生化学物質は、ランチビオティックス、リゾチーム、ペディオシン、ラクチシン、およびそれらの混合物からなる群より選択される、方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、前記ランチビオティックスは、ナイシン、スブチリン、pep 5、エピデルミン、ガリデルミン、シンナマイシン、Ro09−0198、デュラマイシン、アンコベニン、およびそれらの混合物からなる群より選択される、方法。
【請求項34】
請求項28〜33のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記細菌は、E.coli、サルモネラ、およびカンピロバクターなどの、グラム陰性細菌;Pseudomonus aeruginosa、アルカリゲネス、およびエルウィニア種などの、グラム陰性変敗細菌;Listeria monocytogenes、Staphylococcus aureus、Bacillus cereus、Clostridium botulinum、Clostridium perfringens、Corynebacterium、Diplococcus、Mycobacterium、Streptococcus、およびStreptomycesなどの、グラム陽性病原体;からなる群より選択される、方法。
【請求項35】
請求項28〜34のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記食材は、食用果実、野菜、または動物である、方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法であって、前記果実または野菜は、レタス、トマト、キュウリ、ニンジン、ホウレンソウ、ケール、フダンソウ、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、カボチャ、マメ、コショウ、リンゴ、オレンジ、セイヨウナシ、メロン、モモ、ブドウ、プラム、サクランボ、およびそれらの混合物からなる群より選択される、方法。
【請求項37】
請求項35に記載の方法であって、前記動物は、ニワトリ、シチメンチョウ、ガチョウ、食用雄鶏、ゲーム雌鳥、ハト、アヒル、ホロホロチョウ、キジ、ウズラ、およびパートリッジなどの、鳥類;ナマズ、マス、サケ、ヒラメ、カレイ、マグロ、メカジキ、およびサメなどの、魚類;イセエビ、エビ、クルマエビ、カニ、およびロブスターなどの、甲殻類;二枚貝、ホタテガイ、カキ、およびイガイ、イシガイなどの、貝類;ウシ、ブタ、ヒツジ、ラム、およびヤギなどの、哺乳動物;ならびにそれらの混合物からなる群より選択される、方法。
【請求項38】
請求項35または37に記載の方法であって、前記食材は、内臓を取り除いた動物の死体である、方法。
【請求項39】
請求項28〜38のうちのいずれか1項に記載の方法であって、
前記食材に対して添加物を添加する工程;
をさらに包含する、方法。
【請求項40】
請求項39に記載の方法であって、前記添加物は、天然調味料または合成調味料、精油、香味料、色素または着色剤、ビタミン、ミネラル、栄養素、酵素、ガーゴムおよびキサンタンガムなどの結合剤、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される、方法。
【請求項41】
金属物品上でのスケール凝集物の形成を防止することおよび/または金属物品上でのスケール凝集物の除去を促進することのための方法であって、
請求項1〜27のうちのいずれか1項において規定されるシリケート溶液を使用する工程;
を包含する、方法。
【請求項42】
請求項41に記載の方法であって、
前記スケールを界面活性剤で清浄化する工程;
をさらに包含する、方法。
【請求項43】
請求項41または42に記載の方法であって、前記金属物品は、かせ、かせの柄、たれ受け、キャビネット、床および昇降口設備から選択される、方法。
【請求項44】
請求項28〜43のうちのいずれか1項に記載の方法であって、
前記抗菌性水溶液を回収して再利用する工程;
をさらに包含する、方法。

【公表番号】特表2008−519821(P2008−519821A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540750(P2007−540750)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【国際出願番号】PCT/IB2005/003619
【国際公開番号】WO2006/051420
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(397060588)ダニスコ エイ/エス (67)
【Fターム(参考)】