説明

抗菌組成物

抗菌剤源およびバイオフィルムを破壊する薬剤を含む、皮膚および創傷への使用に適する殺菌組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染の予防または治療のために、皮膚、創傷、切り傷、擦過傷または熱傷に適応することができる抗菌組成物に関する。特に、本発明は創傷および皮膚の炎症、ならびに創傷治癒の遅延を回避すると同時に効果的な抗菌活性を呈することができる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
抗生物質の濫用および関連する菌耐性の増加が創傷感染の治療における抗生物質の効力に影響を及ぼしており、効果的な抗生物質の代替が望まれている。
【0003】
局所性抗菌物質およびそれらを含有する製剤は、皮膚および創傷感染の機会を最小限にするために重要な役割を果たすことが長期にわたり認められてきた。殺菌剤は生体組織に使用するのに安全でありうる非選択的化学剤である。ヨウ素分子、イオン銀および酸化剤(例えば次亜塩素酸ナトリウムおよび二酸化塩素)は、広い範囲の微生物に対して有効な殺菌剤と認められている。しかしながら、このような薬剤に基づいて創傷に適用するための効果的な抗菌組成物を創ることにはいくつかの障害がある。一つの問題は、これらの殺菌剤は対象標的微生物以外の創傷にある有機物質と反応しがちであることである。これは、効果的であるために殺菌剤は治療組成物中に高濃度で含まれる必要があることを意味し、この結果、長期使用によって望ましくない副作用(例えば細胞毒性、過敏症反応、皮膚の染色および全身作用)が引き起こされうる。このような副作用は、“In vitro cytotoxity of silver: implication for clinical wound care”. Poon VK, Burd A. Burns. 2004 Mar;30(2):140-7, ”A review of iodine toxicity reports”. Pennington JA. J Am Diet Assoc. 1990 Nov;90(11):1571-81 および “Topical antimicrobial toxicity”. Lineaweaver W, Howard R, Soucy D, McMorris S, Freeman J, Crain C, Robertson J, Rumley T. Arch Surg. 1985 Mar;120(3):267-70. にさらに記載される。
【0004】
創傷はしばしば種々の微生物に侵され、感染を引き起こすことがある。バイオフィルム環境内に生きる微生物群が治癒の遅延および感染の一因となることが次第に認識されている。バイオフィルムはバクテリアが表面に付着するとそれらにより作り出されるエキソポリメリック物質から成り、これは免疫細胞および抗菌剤から微生物を保護するのに役立つ。抗菌剤(例えば抗生物質および殺菌剤)の効力はバイオフィルムマトリックスによって低下するため、バイオフィルムを破壊して内部の微生物を露出するためのストラテジーが、抗菌剤の活性レベルを増加させて、その結果、効果的な組成物を調製するために必要とされる該薬剤の濃度を減少するのに役立ちうる。
【0005】
ジ-ナトリウムまたはカルシウム ジ-ナトリウム塩として加えられたエチレンジアミン四酢酸(EDTA)は、局所性感染の治療または硬表面(カテーテルなど)の処置に使用されてきた。WO03/047341にEDTAの使用(例えば練り歯磨きの添加剤として)が記載されている。EDTAは水の硬度の影響を減らすための組成物としても使用され、また一般にキレート剤としても使用される。
【0006】
EDTAの他の抗菌剤との組みあわせが言及されている(例えばUS 5998488)。それは眼科用の溶液に抗菌性防腐剤と組み合わせて使用される。創傷の局所使用に適する製剤は提示されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題と課題を解決するための手段】
【0007】
従って、抗菌剤の利点を有するが副作用の可能性の低い組成物が求められている。驚くべきことに、我々はEDTAがバイオフィルムマトリックスの完全性を維持する金属イオン、カルシウムおよびマグネシウムをキレート化することによって、バイオフィルムを破壊できることを発見した。
【0008】
従って、本発明の第一の態様は、殺菌剤源およびバイオフィルムを破壊する薬剤(例えばEDTAなど)を含む、皮膚および創傷への使用に適する抗菌組成物を提供する。
【0009】
EDTAの存在によって、該殺菌剤の効果が高まり、殺菌剤の濃度を減らしてもなお効果的な殺菌を達成しうる。該殺菌剤の有効性が高まることで、該組成物におけるその濃度を減らすことができ、それにより、副作用の可能性も減る。
【0010】
本発明のこの態様は、殺菌剤を少なくとも50%少なく、より好ましくは50〜60%少なく、理想的には65〜85%少なく使用して、バクテリアの生体負荷(bioburden)を24時間内にホストにより制御できるレベルにまで減らすことができる組成物の調製を可能とする。ついで、これより該創傷は治癒が進み、該創傷が視覚的に改善することによって証明されることができる。
【0011】
我々はまた創傷で通常認められるpH条件下で効果がある、EDTAを含有する組成物を調製できることを発見した。
【0012】
従って、本発明の第2の態様は、pH4〜8にてEDTAのジ-、トリ-およびテトラ-塩基性塩を含む、創傷への使用に適する組成物を提供する。
【0013】
本発明の第一の態様に従った組成物は、殺菌剤、好ましくはヨウ素分子、イオン銀、クロルヘキシジン、もしくは塩酸、または酸化剤(例えば次亜塩素酸ナトリウム、二酸化塩素、過酸化水素またはペルオキシ酸塩)を含有する。該殺菌剤は、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%の濃度で組成物中に含まれる。ヨウ素は、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.1〜1.0重量%の濃度で組成物中に含まれる。好ましくは、該ヨウ素源はヨウ化物であり、該組成物は酸化剤および緩衝液をさらに含み、該酸化剤は使用時まで該ヨウ素と分かれて保持されている。ヨウ素が生理的に許容されかつ有効な率で生じるように、好ましくは、該緩衝液は該組成物のpHをpH4.5とpH6の間に維持することができる。ヨウ化物および該ヨウ化物と分かれて保持される酸化剤を含む組成物がEP1158859Bにさらに言及されている。
【0014】
ヨウ化物が存在する場合、組成物中の酸化剤の量はヨウ化物と化学量論的に適合するよう調整される。好ましくは、該酸化剤はヨウ素酸塩であり、ヨウ化物とのモル比が1:4〜1:10である。この方法において、組成物中に存在する該ヨウ化物は該酸化剤と完全に反応する。ヨウ化物およびヨウ素酸塩は、好ましくはナトリウム塩として存在するが、他の通常の対イオンで存在してもよい。
【0015】
殺菌剤がイオン銀である場合、それは好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜1.5%の濃度で組成物中に含まれる。
【0016】
該組成物のpHは、通常8より下であり、好ましくは4と8の間であり、より好ましくは4と6の間であり、最も好ましくは4.5と5.5の間である。所望のpHは、緩衝剤を該組成物に組み入れることによって達成されうる。含まれうる緩衝剤の例は、クエン酸/リン酸水素二ナトリウム、クエン酸/クエン酸ナトリウム、酢酸/酢酸ナトリウムである。該緩衝剤は、等張組成物となるために、好都合には、該組成物の約1〜20重量%、好ましくは約4〜6重量%、特に約5重量%の量で存在しうる。
【0017】
EDTAは、好ましくはEDTAのジ-、トリ-またはテトラ-塩基性塩として存在する。我々は、これらの塩は単独でまたは殺菌剤の存在下に、浮遊性またはプランクトン状およびバイオフィルム状の微生物を絶滅させるのに効果的であることを発見した。例えば我々は0.1〜40 w/v%濃度のEDTAが様々なプランクトン状およびバイオフィルム状の両方の微生物を殺すのに効果的であることを発見した。EDTAにより効果的に殺される微生物には、緑膿菌、セラチア・マルセセンス、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が挙げられる。
【0018】
EDTAは好ましくは本発明のどちらの態様の組成物にも該組成物の0.5〜10重量%、より好ましくは1〜3重量%の濃度で存在する。
【0019】
本発明の組成物は、湿った創傷治癒環境を維持して治癒を促進する、水性ゲルの形態であり得る。ゲルには、創傷に流れ込んで創傷床に密着して創傷全体に抗菌効果をもたらすという利点がある。好ましくは、該ゲルは、水平でないまたは水平でなくなる体の創傷部から流れ出さないよう十分に高い粘度を有する。好ましくは、該ゲルのpHは、創傷組織周辺のpHバランス変えないで、その結果、それを保護するように、約5.5で緩衝される。
【0020】
下記の実施例は、本発明を例証する。
【実施例1】
【0021】
ヨウ素に対するEDTAの影響
一組の水性ゲルを調製し、これらを使用時に密に混合する、ヨウ素およびEDTAを含有する組成物を調製した。下記処方の適当な水溶性部の全てを含む水溶液を調製し、その後、非イオン性セルロース増粘剤(viscosifier)(ヒドロキシエチルセルロース)/プロピレングリコールのスラリーを加えて、各ゲルを調製した。
【表1】


【表2】

【0022】
市販のカデキソマーヨウ素軟膏は0.9%ヨウ素を含有し、ポジティブコントロールとした。イントラサイトは無定形のヒドロゲルであり、0%ヨウ素を含有するためネガティブコントロールとした。
【0023】
方法
模擬創傷液(simulated wound fluid)(9ml)を17ml容セルウェルに加えた。黄色ブドウ球菌の培養液(1ml)を各ウェルに加え、106cfu/mlの最終培養液濃度を得た。本試験のコントロールは、カデキソマーヨウ素軟膏(2g)(ポジティブコントロール)およびヒドロゲル(ネガティブコントロール)を別々に各々3個のセルウェルに加えることを含んだ。ついで種々の濃度のEDTAを含むゲルAおよびB(1g)を別々のセルウェルに(3通に)加えた。ついで培養液とゲルを含む該セルウェルを35℃にて600 rpmで振盪した。4、24、48、72および96時間の時間間隔の後、試験サンプル(0.1ml)を各ウェルから取り、1% チオ硫酸ナトリウム含有MRD(マキシマムリカバリー希釈液)(9.9ml)に入れた。ついでサンプル(1ml)をトリプトンソイ寒天プレートに移し、48時間インキュベートした。ついで、バクテリア計数を記録した。
【0024】
結果
【表3−1】

【表3−2】

【表3−3】

【0025】
これらの結果を図1のグラフに示した。
これらの結果は、わずか0.5%EDTA(二ナトリウム塩として計算した)をヨウ素に添加することによって、ヨウ素(0.3%にて)の効力が、0.3%ヨウ素・EDTAなしのコントロールと比較して増強されることを示す。該結果から明らかに、EDTAはヨウ素の効果を24時間内に、0.9%ヨウ素(ポジティブコントロール)の効力と同一にまで増強する。
【実施例2】
【0026】
EDTA四ナトリウムによる阻害ゾーン
7つの抗生物質耐性微生物を使用して、寒天で生育するバクテリアおよび酵母を殺すEDTAの効力を評価した。この試験のために、ろ紙ディスクを0.1〜40%濃度範囲のEDTAに浸漬した。EDTAは、それを適当量の滅菌再蒸留水に溶解して調製した。ついで該フィルターを、微生物を播種したMuller Hinton寒天上に、35℃での24時間の試験の下に加えた。全微生物を2回試験した。
【表4】

【0027】
これらの結果から、「阻害ゾーン」は20〜43mm(ディスクの13mmを含む)の範囲であることが示される。ゾーンはEDTAの濃度の増加に伴ってより高くなり、EDTA単独で効果的な殺菌剤であることを示した。
【実施例3】
【0028】
EDTAによる阻害ゾーン
ポロキサマー F127 ヒドロゲル(Univar、Basildon、Essex、UK)は、ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンのジ-ブロックコポリマーで、熱可逆ゲル化性を示す。15℃より下でポロキサマーは液体であり、水と完全に混ざるが、15℃を超えた温度では堅いゲルに変化する。ポロキサマーはバクテリアがより臨床的に関係するバイオフィルム表現型を示すのを促進する。Gilbertらは、ポロキサマーヒドロゲル上で生育した緑膿菌細胞(バイオフィルム形態)が78と87kDa間の外膜タンパク質を発現することを特定し、これは標準栄養寒天で生育した細胞(‘プランクトン’)では明らかでない(Gilbert et al., 1998)。従って、ポロキサマーゲル培養は、バイオフィルム-増殖緑膿菌の特性の多くを模倣する(Gilbert et al., 1998)。これはポロキサマーヒドロゲルで生育した場合と栄養寒天で生育した場合とでは緑膿菌細胞の表現型に違いがあり、ポロキサマー生育細胞だけがバイオフィルム細胞に類似していること示す。Wirtanenの研究(1998)から、ポロキサマー中で生育したバクテリアは、バイオフィルム特性を有し、殺生物剤耐性の増進に関与することが認められた。Gilbertらはポロキサマーヒドロゲルで生育したバクテリアを殺生物剤に曝露して、バイオフィルムバクテリアに対する殺生物剤の抗菌効力を試験するための再現性ある方法を提供しうることを示唆した(Gilbert et al., 1998)。
【0029】
Gilbert P, Jones MV, Allison DG, Heys S, Maira T, Wood P. The use of poloxamer hydrogels for the assessment of biofilm susceptibility towards biocide treatments. Journal of Applied Microbiology 1998;85:985-990.
Wirtanen G, Salo S, Allison DG, Mattila-Sandholm T, Gilbert P. Performance evaluation of disinfectant formulations using poloxamer-hydrogel biofilm-constructs. Journal of Applied Microbiology 1998; 85:965-971.
【0030】
7つの抗生物質耐性微生物を、ポロキサマーゲルで生育するバクテリアおよび酵母(バイオフィルム状)を殺すEDTAの効力を評価するために使用した。本試験のために、ろ紙ディスクを濃度範囲0.1〜40%のEDTAに浸漬した。本試験において、ポロキサマーF127(ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンのジ-ブロックコポリマー)を、バクテリアがバイオフィルム表現型として生育することができ、‘現実世界’により適合する特性を発現することができる培地として使用した。ついで、微生物を播種したMuller Hinton寒天上に、35℃での24時間の試験の下、該フィルターを加えた。全プレートについて2通りで行った。
【表5】

【0031】
これらの結果により阻害ゾーンはポロキサマーの存在下では若干小さいことが示され、バイオフィルムとして生育するバクテリア/酵母が、それらの対応するプランクトンと比較して、EDTAに対して物理的により耐性があることが示される。C クルセイ(C kruzei)および緑膿菌は、ポロキサマーでゾーンがより大きく、例外であった。阻害ゾーンは、40%EDTAで試験した全ての生物において明白であった。10%および5%EDTAでは、セラチア・マルセセンスに対するゾーンはなかった。0.1%EDTAでは、試験したいずれの生物に対しても阻害ゾーンがないことが明白であり、EDTAがこの濃度では効果がないことを示す。
【実施例4】
【0032】
EDTAのテトラ、トリおよびジ塩基性塩による最小阻止濃度(MIC)および最小殺菌濃度(MBC)
方法: マイクロタイタープレートおよび吸光度測定ならびに目視検査を行い、種々の微生物についてのMICを得た(図2参照)。本試験に含まれるEDTAの濃度は、テトラ-Naとして40mg/ml pH 10.00、トリ-Naとして40mg/ml pH 6.84、ジ-Naとして40 mg/ml pH 5.50であった。各マイクロタイタープレートに、接種菌液(100μl)およびEDTAを加えた。ついで該プレートを35℃±3℃にて24時間インキュベートした。インキュベーションの後、全マイクロタイタープレートについて、増殖を目視で観察した。
結果は図2に示される。
【0033】
概して、記録した全MICは、試験したEDTAの塩の全てについて同等であった。これは両溶液のpHが同等であることを示唆する。従って、EDTAの活性は、マイクロタイタープレートに加えられた塩フォームによる影響を受けない。これらの結果により低濃度のEDTAがバクテリアに対して大変有効であることが示される。
【実施例5】
【0034】
銀含有創傷包帯材の抗菌効力に対するEDTAの影響
本試験に使用した抗菌包帯材は、Acticoat登録商標(Smith and Nephew)およびAQUACEL登録商標 Ag Hydrofiber登録商標(ConvaTec)であった。Acticoat登録商標はナノ結晶銀抗菌バリア包帯材であり、銀コート高密度ポリエチレンメッシュ(HDPE)の2層間に積層されたレーヨン/ポリエステル不織内部コアから成る。該層は超音波溶着で接着されている。AQUACEL登録商標 Agは、カルボキシメチルセルロースナトリウム Hydrofiber登録商標 およびイオン銀から構成される。AQUACEL登録商標 Ag の銀カチオンは、Hydrofiber登録商標 包帯材の個々の高吸収性アニオン性カルボキシメチルセルロース繊維に付着している。AQUACEL登録商標 Hydrofiber登録商標 包帯材(銀なし)もコントロールとして使用した。
【0035】
方法: 全ての包帯材(AQUACEL Hydrofiber [コントロール−銀なし]、AQUACEL Ag HydrofiberおよびActicoat(ナノ結晶包帯材)を20 mg/mlのテトラ-Na EDTAで水和した。全ての試験を緑膿菌に対して行い、Mueller Hinton寒天(MHA)およびポロキサマーゲル(Mueller Hintonブロス(MHB)を組み込んだ)上で試験した。これにはMH寒天プレートまたはポロキサマーゲルプレートを特定の分離株と共にインキュベートして、ついで、適当な水和(飽和点まで)創傷包帯材(AQUACELおよびAQUACEL Agについては360μl(MRD)、Acticoatについては150μl(滅菌蒸留水−使用説明書により))を加えることを伴った。ついで、該包帯材周囲のクリアランスのゾーン(増殖なし)を測定した後、該プレートを35℃±3℃にて24時間インキュベートした。阻害ゾーンを水平および垂直に(該包帯材サンプルを含めて)測定し、平均値を二重の結果セットから計算した。ついで平均包帯材サイズを平均阻害ゾーンから減じ、修正阻害ゾーン(CZOI)を測定した。CZOI試験は水和後に大きさが変わりうる銀包帯材によって生じたゾーンの形およびサイズにおける固有の変動を許容する。
【0036】
下表は、MH寒天およびポロキサマーゲル上の修正阻害ゾーン(CZOI)のサイズ(mm)を示す。
【表6】

【0037】
結論: EDTAをAQUACELに加えたとき、MHA上(非バイオフィルム状)に阻害ゾーンは認められなかった。しかしながら、EDTAまたは(マキシマムリカバリー希釈液)MRDを加えた、MHA(非バイオフィルムバクテリア)上のAQUACEL Ag周囲にZOIは認められ、銀の抗菌活性を示した。水での水和と比較して、EDTAを添加した後のActicoatの周囲により大きいZOIが認められた。ポロキサマーゲルの存在下では、MRDでAQUACEL Agを水和した後に、EDTAの使用による添加効果を示すEDTAと比べてCZOIの増加が認められた。全体として、該結果により、EDTAはバイオフィルム状(ポロキサマーゲル)で生育したバクテリアに対するイオン銀の影響を増強することが示された。全体として、これらの結果により、微生物がプランクトン状であるときAQUACEL単独では有効でないため、EDTA包帯材を用いることによって、それがプランクトンおよびバイオフィルム微生物の両方に対して有効であることが示唆される。
【0038】
下表はMH寒天およびポロキサマーゲル上の修正阻害ゾーンのサイズ(mm)を示す。
【表7】

【実施例6】
【0039】
ヨウ素を含む2成分ゲル、および実施例1に詳説されるようにEDTA(ジNa EDTA、トリNa EDTA およびテトラNa EDTA)を含有する2成分ゲルの最小阻止濃度(MIC)
本試験は、一連のEDTAフォームの活性へのpHの影響を示す。
【0040】
本試験のために、実施例1に詳説されるように2成分ゲルをHEC成分(ゲル)なしに調製した。従って、MICを算出するために液体組成物のみを用いて本試験を行った。TCG/EDTA溶液のpHは、約5.5であった。試験した生物は: 黄色ブドウ球菌、緑膿菌、大腸菌(繰り返し2回)およびC アルビカンスであった。

TCG溶液(A)
【表8】


TCG溶液(B)
【表9】

【0041】
TCG溶液およびEDTAと組み合わせたTCG溶液のMIC(括弧内の値はEDTA濃度(mg/ml)である)
【表10】

*(実施濃度は0.2%ヨウ素であった)
【0042】
結論
EDTA(ジ、トリおよびテトラNa)の存在下に、MICはかなり減少した。ヨウ素濃度として表されるMICはジ、トリ、およびテトラナトリウムEDTAの存在下では、より低かったことが認められる。
【0043】
EDTAが示す抗菌効果は濃度0.31mg/mlで達成される。EDTAのフォームが異なると、異なる抗菌効力を呈すると知られるにもかかわらず、3つの全ての生物についてヨウ素生成溶液(EDTAなし)と比較してMICを有意に減少することにおいて、全てのEDTAフォームは、一定のpH(本ケースでは5.5)では同等に有効であった。
【図面の簡単な説明】
【0044】
(原文に記載なし)
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌剤源およびバイオフィルムを破壊する薬剤を含むことを特徴とする、皮膚および創傷への使用に適する殺菌組成物。
【請求項2】
バイオフィルムを破壊する該薬剤がEDTAであることを特徴とする、請求項1に記載の殺菌組成物。
【請求項3】
該抗菌剤がヨウ素、イオン銀または酸化剤(例えば次亜塩素酸ナトリウムまたは二酸化塩素)の群から選択されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の皮膚および創傷への使用に適する殺菌組成物。
【請求項4】
pH4〜8にてEDTAのジ-、トリ-およびテトラ-塩基性塩を含むことを特徴とする、創傷への使用に適する組成物。
【請求項5】
該組成物のpHが4と8の間であることを特徴とする、請求項1〜3に記載の組成物。
【請求項6】
該組成物のpHが4.5と5.5の間であることを特徴とする、請求項1〜4に記載の組成物。
【請求項7】
形態がゲルである、上記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
該組成物がヨウ素を含むことを特徴とする、上記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
ヨウ素源、酸化剤および緩衝液を含む組成物であって、該ヨウ素は使用時まで該酸化剤と分かれて保持されていることを特徴とする、上記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
該組成物がヨウ素5μg/組成物g/時間〜ヨウ素1500μg/組成物g/時間を生じることができることを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
該組成物がイオン銀を含むことを特徴とする、請求項1〜6に記載の組成物。
【請求項12】
該組成物がイオン銀を0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜1.5重量%含むことを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
水溶液に四ナトリウム塩としてEDTAを加え、ついで該組成物のpHをpH4〜8に調整する工程を含むことを特徴とする、請求項4に記載の殺菌組成物の調製方法。
【請求項14】
慢性的創傷および熱傷の治療における使用のための薬物の製造における、抗菌剤およびバイオフィルムを破壊する薬剤を含む殺菌組成物の使用。
【請求項15】
バイオフィルムを破壊する薬剤がEDTAであることを特徴とする、請求項14に記載の殺菌組成物の使用。
【請求項16】
該抗菌剤がヨウ素、イオン銀または酸化剤(例えば次亜塩素酸ナトリウムまたは二酸化塩素)の群から選択されることを特徴とする、請求項14または請求項15に記載の殺菌組成物の使用。

【公表番号】特表2009−519312(P2009−519312A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545092(P2008−545092)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004691
【国際公開番号】WO2007/068938
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】