説明

抗菌薬耐性のバクテリアによって引き起こされる感染症を治療、軽減、寛解、又は予防するための組成物及び方法

組成物は、抗菌薬に対して耐性を有するいくつかのバクテリアによって引き起こされる感染症を治療、軽減、寛解、又は予防するための、式I〜VIIIを有するフルオロキノロンを含む。このような感染症を治療、軽減、寛解、又は予防する方法は、このような組成物を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌薬耐性のバクテリアによって引き起こされる感染症を治療、軽減、寛解、又は予防する組成物及び方法に関する。具体的には、本発明は、キノロンカルボン酸又はこれらの誘導体を含むこのような組成物、及びこれらの組成物の使用方法に関する。より具体的には、本発明は、フルオロキノロンカルボン酸又はこれらの誘導体を含むこのような組成物、及びこれらの組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
病原菌は、細菌性疾患の世界規模での復活によって示されているように、公衆衛生に対する深刻な脅威をもたらし続けている。いくつかの事例において、耳炎及び副鼻腔炎のような一般的な感染症に対する治療が、抗生物質に対する菌耐性の増大により、難しくなってきている。このような耐性は、以前に幅広く、そして概ね効果的に、治療及び予防のために抗生物質を使用したことに起因すると言える。抗生物質はまた不運にも、種々の病原菌の耐性菌株に対しても選択されている。公衆衛生に対する具体的な懸念は、現在備蓄されている抗菌薬中の数多くの抗生物質に対して耐性を有する菌株が発生し増殖することである。このような多抗生物質耐性(「MAR」)菌株は、グラム陽性菌の種、例えば黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、糞便腸球菌(Enterococcus fecalis)、及びエンテロコッカス・フェシウム菌(Enterococcus fecium)の抗生物質耐性菌株を含む。これらの菌株は、大腸菌(Escherichia coli)の抗生物質耐性グラム陰性菌株とともに、院内(院内感染)疾患、例えば敗血症、心内膜炎、並びに創傷及び尿路の感染症の最多病原因子である。S. aureusは現在、院内菌血症、皮膚又は創傷の感染症の最多原因である。別のグラム陽性菌である肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumonia)は、伝染性髄膜炎、菌血症、及び中耳炎を含むいくつかの重篤な、且つ生命を脅かす疾患をもたらす。S. pneumoniae感染だけに由来する年間死亡件数は、世界規模で見て3〜5百万人と推定される。最近では、「人喰い」連鎖球菌(streptococcus)A群菌株、例えば化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)による皮膚及び組織への高攻撃性感染の臨床報告が、懸念を強め、新しい又は改善された抗菌薬の必要性を高めている。
【0003】
4つの主要群、すなわちペニシリン、セファロスポリン、モノバクタム、及びカルバペネムを含み、バクテリア細胞壁合成、ひいては細胞分裂を阻害することにより働くBラクタム系抗菌薬が、細菌感染に対する最も一般的な治療薬である。しかしながら、これらの広汎な使用により、これらの薬物に対する菌耐性が増大している。
【0004】
βラクタム系薬物に対する菌耐性に対応して、バクテリア細胞の種々異なる成分をターゲットとする他の抗菌薬が開発されている。例えば、アミノグリコシド、マクロライド、テトラサイクリン、及びアンフェニコールは、細菌タンパク質合成の種々異なる相を阻害する。抗菌性グリコペプチド(例えばバンコマイシン及びサイクロセリン)は、グラム陽性菌細胞壁の主要構造成分であるペプチドグリカンの合成を阻害する。キノロンは、これらのDNAギラーゼ及び/又はトポイソメラーゼIVの阻害を介して、バクテリアDNA転写及び/又は複製をターゲットすることにより細胞分裂を妨害する。スルホンアミド及びジアミノピリミジンは、葉酸を合成するバクテリアの能力を妨害し、ひいては、所要ヌクレオシドであるチミン及びウリジンを合成するこれらバクテリアの能力を阻害する。J. N. Samaha-Kfoury他、Br. Med. J., Vol. 327, 1209 (2003)。
【0005】
新しい抗菌剤が適用されるのに伴って、自然淘汰のプロセスは、これらの新しい薬物の耐性を獲得するように突然変異したバクテリア菌株に有利になるように働き続ける。この問題において、グラム陽性菌である肺炎球菌、腸球菌、及びブドウ球菌に対する懸念ほど大きい懸念はない。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)はおそらく、その固有の毒性、生命を脅かす様々な一連の感染症を引き起こすその能力、そして種々異なる環境条件に適応するその能力のため、最も懸念される病原である。S. aureus菌血症による死亡率は、効果的な抗菌剤が利用できるにもかかわらず、ほぼ20〜40%のままである。S. aureusは今や、院内感染の原因全体の第一位であり、また、病院外の環境で治療される患者が多くなると、地域社会内でのS. aureusに対する懸念も強くなる。F. D. Lowy, J. Clin. Invest., Vol. 111, No. 9, 1265 (2003)。
【0006】
従って、一般的な従来技術の抗菌薬のうちのいくつかに対して耐性を有するバクテリアに対して効果的な、新規の抗菌薬及び改善された医薬組成物を開発することが引き続き必要である。また、少なくとも1種の抗菌薬に対して耐性を有するバクテリアによって引き起こされる感染症を治療、軽減、寛解、又は予防するための新規の、そしてより効果的な組成物及び方法を提供することも極めて望ましい。加えて、少なくとも1種の抗菌薬に対して耐性を有するグラム陽性菌のうちのいくつかによって引き起こされる感染症を治療、軽減、寛解、又は予防するための新規の、そしてより効果的な組成物及び方法を提供することも極めて望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
大まかに言えば、本発明は、少なくとも1種の従来技術の抗菌薬に対して耐性を有するバクテリアによって引き起こされる感染症を治療、軽減、寛解、又は予防する医薬組成物及びこのような組成物の使用方法を提供する。
【0008】
1つの態様において、このような組成物は、式I
【化1】

を有するフルオロキノロンの群のうちの少なくとも1つのメンバー、その塩、又はそのエステルを含み、
上記式中、R1は、水素、無置換型低級アルキル基、置換型低級アルキル基、シクロアルキル基、無置換型C5−C24アリール基、置換型C5−C24アリール基、無置換型C5−C24ヘテロアリール基、置換型C5−C24ヘテロアリール基、及び生体内で加水分解することができる基から成る群から選択され;R2は、水素、無置換型アミノ基、及び1つ又は2つの低級アルキル基で置換されたアミノ基から成る群から選択され;R3は、水素、無置換型低級アルキル基、置換型低級アルキル基、シクロアルキル基、無置換型低級アルコキシ基、置換型低級アルコキシ基、無置換型C5−C24アリール基、置換型C5−C24アリール基、無置換型C5−C24ヘテロアリール基、置換型C5−C24ヘテロアリール基、無置換型C5−C24アリールオキシ基、置換型C5−C24アリールオキシ基、無置換型C5−C24ヘテロアリールオキシ基、置換型C5−C24ヘテロアリールオキシ基、及び生体内で加水分解することができる基から成る群から選択され;Xは、ハロゲン原子から成る群から選択され;Yは、CH2、O、S、SO、SO2、及びNR4から成る群から選択され、R4は、水素、無置換型低級アルキル基、置換型低級アルキル基、及びシクロアルキル基から成る群から選択され;そしてZは、酸素原子及び2つの水素原子から成る群から選択される。
【0009】
さらに別の態様では、本発明の組成物は、式Iを有する化合物の単一の鏡像体を含む。
【0010】
さらに別の態様では、本発明の組成物は、式II
【化2】

を有するフルオロキノロンの群のうちの1つのメンバー、その塩、又はそのエステルを含み、
上記式中、R1、R3、X、Y、及びZは上に開示した意味を有する。
【0011】
さらに別の態様において、本発明は、少なくとも1種の従来技術の抗菌薬に対して耐性を有するバクテリアによって引き起こされる感染症を治療、軽減、寛解、又は予防する方法を提供する。この方法は、前記感染症を治療、軽減、寛解、又は予防するために前記感染症の部位に、式I又はIIを有するフルオロキノロンを含む組成物を投与することを含む。
【0012】
さらに別の態様において、少なくとも1種の従来技術の抗菌薬は、キノロンである。
【0013】
1つの実施態様の場合、この方法は、このような組成物を局所投与することを含む。別の実施態様の場合、この方法は、このような組成物を経口投与することを含む。
【0014】
下記詳細な説明及び特許請求の範囲から、本発明の他の特徴及び利点が明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書中に使用する「低級アルキル」又は「低級アルキル基」は、置換されていてもいなくてもよい、C1−C15の直鎖又は分枝状鎖の脂肪族飽和炭化水素一価基を意味する。基は、ハロゲン原子(F、Cl、Br又はI)で部分置換又は完全置換されていてよい。低級アルキル基の非限定的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、1−メチルエチル(イソプロピル)、n−ブチル、n−ペンチル、及び1,1−ジメチルエチル(t−ブチル)などが挙げられる。これを「Alk」と略すことがある。
【0016】
本明細書中に使用する「低級アルコキシ」又は「低級アルコキシ基」は、置換されていてもいなくてもよい、C1−C15の直鎖又は分枝状鎖の脂肪族飽和アルコキシ一価基を意味する。基は、ハロゲン原子(F、Cl、Br又はI)で部分置換又は完全置換されていてよい。低級アルコキシ基の非限定的な例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、1−メチルエトキシ(イソプロポキシ)、n−ブトキシ、n−ペントキシ、及びt−ブトキシなどが挙げられる。
【0017】
「シクロアルキル」又は「シクロアルキル基」という用語は、1つ又は2つ以上の縮合環又は架橋環を含んでいてよい、炭素原子及び水素原子だけから成る安定な脂肪族飽和3〜15員単環式又は多環式一価基、好ましくは3〜7員単環式環を意味する。シクロアルキル基の他の実施態様例は、7〜10員二環式環を含む。他に定めのない限り、シクロアルキル環は、結果として安定な構造をもたらす任意の炭素原子で結合されていてよく、また置換型の場合には、結果として安定な構造をもたらす任意の適当な炭素原子において置換されていてよい。シクロアルキル基の一例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、ノルボルニル、アダマンチル、テトラヒドロナフチル(テトラリン)、1−デカリニル、ビシクロ[2.2.2]オクタニル、1−メチルシクロプロピル、2−メチルシクロペンチル、2−メチルシクロオクチルなどが挙げられる。
【0018】
本明細書中に使用される「アリール」又は「アリール基」という用語は、芳香族炭素環式一価又は二価基を意味する。いくつかの実施態様の場合、アリール基は、5〜24という多数の炭素原子を有し、そして単一の環(例えばフェニル又はフェニレン)、複数の縮合環(例えばナフチル又はアントラニル)、又は複数の架橋環(例えばビフェニル)を有している。他に定めのない限り、アリール環は、結果として安定な構造をもたらす任意の炭素原子で結合されていてよく、また置換型の場合には、結果として安定な構造をもたらす任意の適当な炭素原子において置換されていてよい。アリール基の非限定的な例としては、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、インダニル、インデニル、及びビフェニルなどが挙げられる。これは「Ar」と略すことがある。
【0019】
「ヘテロアリール」又は「ヘテロアリール基」という用語は、1つ又は2つ以上の縮合環又は架橋環を含んでよい、安定な芳香族単環式又は多環式一価又は二価基を意味する。いくつかの実施態様の場合、ヘテロアリール基は5〜24員であり、好ましくは5〜7員単環式基又は7〜10員二環式基である。ヘテロアリール基は、独立して窒素、酸素、及び硫黄から選択された1〜4つのヘテロ原子を環内に有することができる。いずれの硫黄ヘテロ原子も任意に酸化されていてよく、また、いずれの窒素ヘテロ原子も任意に酸化又は四級化されていてよい。他に定めのない限り、ヘテロアリール環は、結果として安定な構造をもたらす任意の適当なヘテロ原子又は炭素原子で結合されていてよく、また置換型の場合には、結果として安定な構造をもたらす任意の適当なヘテロ原子又は炭素原子において置換されていてよい。ヘテロアリールの非限定的な例としては、フラニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリジニル、アザインドリジニル、インドリル、アザインドリル、ジアザインドリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロアザインドリル、イソインドリル、アザイソインドリル、ベンゾフラニル、フラノピリジニル、フラノピリミジニル、フラノピラジニル、フラノピリダジニル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロフラノピリジニル、ジヒドロフラノピリミジニル、ベンゾチエニル、チエノピリジニル、チエノピリミジニル、チエノピラジニル、チエノピリダジニル、ジヒドロベンゾチエニル、ジヒドロチエノピリジニル、ジヒドロチエノピリミジニル、インダゾリル、アザインダゾリル、ジアザインダゾリル、ベンズイミダゾリル、イミダゾピリジニル、ベンズチアゾリル、チアゾロピリジニル、チアゾロピリミジニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジニル、ベンゾオキサジノニル、オキサゾロピリジニル、オキサゾロピリミジニル、ベンズイソキサゾリル、プリニル、クロマニル、アザクロマニル、キノリジニル、キノリニル、ジヒドロキノリニル、テトラヒドロキノリニル、イソキノリニル、ジヒドロイソキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、シノリニル、アザシノリニル、フタラジニル、アザフタラジニル、キナゾリニル、アザキナゾリニル、キノキサリニル、アザキノキサリニル、ナフチリジニル、ジヒドロナフチリジニル、テトラヒドロナフチリジニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、及びフェノキサジニルなどが挙げられる。
【0020】
大まかに言えば、本発明は、少なくとも1種の従来技術の抗菌薬に対して耐性を有するバクテリアによって引き起こされる感染症を治療、軽減、寛解、又は予防する医薬組成物及び方法を提供する。
【0021】
一実施態様の場合、前記バクテリアはグラム陽性菌である。別の実施態様の場合、前記バクテリアはグラム陰性菌である。さらに別の実施態様の場合、前記バクテリアは嫌気性細菌である。
【0022】
1つの態様において、前記従来技術の抗菌薬は、ペニシリン群の薬物、バンコマイシン群の薬物、アミノグリコシド群の薬物、キノロン群の薬物、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0023】
別の態様において、前記従来技術の抗菌薬は、ペニシリン、アンピシリン、メチシリン、バンコマイシン、ゲンタマイシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン、これらの同等物、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0024】
さらに別の態様において、従来技術の抗菌薬に対して耐性を有する前記バクテリアは、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、ヘモフィラス・インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、淋菌(Nieisseria gonorrhoeae)、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0025】
さらに別の態様において、本発明の組成物は、式I
【化3】

を有するフルオロキノロンの群のうちの少なくとも1つのメンバー、その塩、又はそのエステルを含み、
上記式中、
1は、水素、無置換型低級アルキル基、置換型低級アルキル基、シクロアルキル基、無置換型C5−C24アリール基、置換型C5−C24アリール基、無置換型C5−C24ヘテロアリール基、置換型C5−C24ヘテロアリール基、及び生体内で加水分解することができる基から成る群から選択され;R2は、水素、無置換型アミノ基、及び1つ又は2つの低級アルキル基で置換されたアミノ基から成る群から選択され;R3は、水素、無置換型低級アルキル基、置換型低級アルキル基、シクロアルキル基、無置換型低級アルコキシ基、置換型低級アルコキシ基、無置換型C5−C24アリール基、置換型C5−C24アリール基、無置換型C5−C24ヘテロアリール基、置換型C5−C24ヘテロアリール基、無置換型C5−C24アリールオキシ基、置換型C5−C24アリールオキシ基、無置換型C5−C24ヘテロアリールオキシ基、置換型C5−C24ヘテロアリールオキシ基、及び生体内で加水分解することができる基から成る群から選択され;Xは、ハロゲン原子から成る群から選択され;Yは、CH2、O、S、SO、SO2、及びNR4から成る群から選択され、R4は、水素、無置換型低級アルキル基、置換型低級アルキル基、及びシクロアルキル基から成る群から選択され;そしてZは、酸素原子及び2つの水素原子から成る群から選択される。
【0026】
1つの態様において、R1は、水素、置換型及び無置換型のC1−C5(又はC1−C3)アルキル基、C3−C10(又はC3−C5)シクロアルキル基、置換型及び無置換型のC5−C14(又はC6−C14、又はC5−C10、又はC6−C10)アリール基、置換型及び無置換型のC5−C14(又はC6−C14、又はC5−C10、又はC6−C10)ヘテロアリール基、及び生体内で加水分解することができる基から成る群から選択される。一実施態様の場合、R1は、置換型及び無置換型のC1−C5(又はC1−C3)アルキル基から成る群から選択される。
【0027】
別の態様において、R2は、無置換型アミノ基、及び1つ又は2つのC1−C5(又はC1−C3)アルキル基で置換されたアミノ基から成る群から選択される。
【0028】
さらに別の態様において、R3は、水素、置換型及び無置換型のC1−C5(又はC1−C3)アルキル基、C3−C10(又はC3−C5)シクロアルキル基、置換型及び無置換型のC1−C5(又はC1−C3)アルコキシ基、置換型及び無置換型のC5−C14(又はC6−C14、又はC5−C10、又はC6−C10)アリール基、置換型及び無置換型のC5−C14(又はC6−C14、又はC5−C10、又はC6−C10)ヘテロアリール基、及び置換型及び無置換型のC5−C14(又はC6−C14、又はC5−C10、又はC6−C10)アリールオキシ基から成る群から選択される。一実施態様の場合、R3は、C3−C10(又はC3−C5)シクロアルキル基から成る群から選択される。
【0029】
さらに別の態様において、Xは、Cl、F、及びBrから成る群から選択される。一実施態様の場合、XはClである。別の実施態様の場合、XはFである。
【0030】
更なる態様において、YはCH2である。さらに別の態様において、Zは2つの水素原子を含む。
【0031】
さらに別の態様において、YはNHであり、ZはOであり、そしてXはClである。
【0032】
さらに別の態様において、本発明の組成物はさらに、医薬的に許容し得るキャリアを含む。
【0033】
式Iを有する化合物群のいくつかの非限定的なメンバーを表1に示す。表1に挙げていない群の他の化合物も、選ばれる状況において適している。
【表1】

【0034】
一実施態様の場合、本発明の組成物中に含まれるフルオロキノロンカルボン酸は、式IIIを有している。
【化4】

【0035】
別の実施態様の場合、本発明の組成物中に含まれるフルオロキノロンカルボン酸は、式IV、V、又はVIを有している。
【化5】

【0036】
別の実施態様の場合、本発明の組成物中に含まれるフルオロキノロンカルボン酸は、式VII又はVIIIを有している。
【化6】

【0037】
さらに別の態様において、本発明の組成物は、式I、II、又はIIIを有する化合物のうちの1つの化合物の鏡像体を含む。
【0038】
さらに別の態様において、本発明の組成物は、式I、II、又はIIIを有する化合物のうちの1つの化合物の鏡像体の混合物を含む。
【0039】
ここに開示されたフルオロキノロン化合物は、少なくとも1種の従来技術の抗菌薬に対して耐性を有するバクテリアによって引き起こされる感染症を治療、軽減、寛解、又は予防するための、局所、経口、又は全身投与用の医薬組成物になるように製剤することができる。このような組成物は、式I、II、III、IV、V、VI、VII、又はVIIIを有するフルオロキノロン化合物と、製薬分野の当業者によって判断できるような、投与のための医薬的に許容し得るキャリアとを含む。例えば、当業者に知られた種々の医薬的に許容し得るキャリアを使用することにより、溶液、懸濁液、分散体、軟膏、ゲル、カプセル、又は錠剤を製剤することができる。式I、II、III、IV、V、VI、VII、又はVIIIを有するフルオロキノロン化合物は、例えば上に開示されたバクテリアを含むバクテリアによって引き起こされる、耳、眼、又は上気道の一部の感染症を治療、軽減、寛解、又は予防するのに特に適している。一実施態様の場合、このようなフルオロキノロンは、溶剤、軟膏、懸濁液、分散体、又はゲルになるように製剤される。
【0040】
一実施態様の場合、本発明の局所投与用組成物は、水溶液又は懸濁液を含む。典型的には、精製水又は脱イオン水が使用される。組成物のpHは、生理学的に許容し得る任意のpH調節用の酸、塩基、又は緩衝剤を添加することにより、約3〜約8.5(或いは、約4〜約7.5、又は約4〜約6.5、又は約5〜約6.5)の範囲内に調節される。酸の例は、酢酸、ホウ酸、クエン酸、乳酸、リン酸、及び塩酸などを含み、そして塩基の例は、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、トロメタミン、及びTHAM(トリスヒドロキシメチルアミノ−メタン)などを含む。塩及び緩衝剤は、クエン酸塩/デキストロース、重炭酸ナトリウム、塩化アンモニウム、上述の酸及び塩基の混合物を含む。pH緩衝剤を組成物中に導入することにより、安定なpHを維持し、そして使用者による製品トレランスを改善する。いくつかの実施態様の場合、pHは約4〜約7.5の範囲内である。種々のpHのための生物学的緩衝剤を、例えばSigma-Aldrichから入手することができる。本発明の組成物は、約5〜約100,000センチポアズ(cp)又はmPa.s(或いは、約10〜約50,000、又は約10〜約20,000、又は約10〜約10,000、又は約10〜約1,000、又は約100〜約10,000、又は約100〜約20,000、又は約100〜約50,000、又は約500〜約10,000、又は約500〜約20,000cp)の粘度を有することができる。
【0041】
別の実施態様の場合、本発明の局所投与用組成物は、軟膏、エマルジョン、又はクリーム(例えば水中油エマルジョン)、又はゲルを含む。
【0042】
軟膏は一般に、(1)油性基剤;すなわち固定油又は炭化水素から成る基剤、例えば白色ワセリン又は鉱物油、又は(2)吸収性基剤;すなわち、水を吸収することができる無水物質から成る基剤、例えば無水ラノリンを使用して調製される。通常、油性基剤にせよ吸収性基剤にせよ基剤の形成に続いて、活性成分(化合物)を、所期濃度を提供する量まで添加する。
【0043】
クリームは、油/水エマルジョンである。クリームは、典型的には固定油、及び炭化水素など、例えばワックス、ワセリン、及び鉱物油などを含む油相(内相)と、水及び任意の水溶性物質、例えば添加塩を含む水相(連続相)とから成る。2つの相は、乳化剤、例えば界面活性剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)、親水性コロイド(例えばアカシアコロイド粘土、及びビーガム(veegum)など)を使用することにより安定化される。エマルジョンが形成されたら、活性成分(化合物)を通常、所期濃度に達するように所定の量で添加する。
【0044】
ゲルは、油性基剤、水、又はエマルジョン−懸濁液基剤から選択された基剤を含む。この基剤に、基剤中にマトリックスを形成するゲル化剤を添加し、その粘度を高める。ゲル化剤の例は、ヒドロキシプロピルセルロース、及びアクリル酸ポリマーなどである。通常、ゲル化剤の添加に先立つ時点で所期濃度で製剤に活性成分(化合物)を添加する。
【0045】
本発明の製剤中に組み込まれる、本明細書中に開示されたフルオロキノロン化合物、その塩、又はそのエステルの量は、それほど重要ではないが、その濃度は、製剤が、所期の化合物量を所期治療部位に送達することになる量で、素早く組織患部に適用されるのを可能にするのに十分な、そして所望の治療効果を提供するのに十分な範囲内にあるべきである。本発明のいくつかの実施態様において、組成物は、約0.0001質量%〜10質量%(或いは約0.001質量%〜5質量%、又は約0.01質量%〜5質量%、又は約0.01質量%〜2質量%、又は約0.01質量%〜1質量%、又は約0.01質量%〜0.7質量%、又は約0.01質量%〜0.5質量%)の濃度で、フルオロキノロン、その塩、又はそのエステルを含む。
【0046】
さらに、本発明の局所投与用組成物は、下記のもの、すなわち保存剤、界面活性剤、付加的な薬剤を含むアジュバント、抗酸化剤、等張性調整剤、及び粘度調整剤など、のうちの1種又は2種以上を含有することができる。
【0047】
単回又は複数回投与のための容器内に製品を小分けするときに、製品の微生物汚染を回避するために保存剤を使用することができ、これらの保存剤は、第四アンモニウム誘導体(塩化ベンザルコニウム、塩化ベンジルアンモニウム、臭化セチルメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム)、塩化ベンズエトニウム、有機水銀化合物(チメロサール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀)、メチル及びプロピルp−ヒドロキシ−ベンゾエート、ベータフェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、フェノキシエタノール、及びこれらの混合物を含むこともできる。これらの化合物は、選択された保存剤に応じて、典型的には約0.005質量%〜約5質量%の効果的な濃度で使用される。使用される保存剤の量は、溶液が物理的に安定である、すなわち沈殿物が形成されず、また抗菌効果を有するのに十分であるべきである。
【0048】
本発明の組成物の、式I、II、III、IV、V、VI、VII、又はVIIIを有するフルオロキノロンを含む成分の溶解度は、組成物中の界面活性剤又はその他の適切な共溶剤、又はシクロデキストリンのような溶解度向上剤、例えばα−、β−、及びγ−シクロデキストリンのヒドロキシプロピル、ヒドロキシエチル、グルコシル、マルトシル及びマルトトリオシル誘導体によって高めることができる。一実施態様の場合、組成物は、0.1%〜20%のヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン;或いは1%〜15%(又は2%〜10%)ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含む。共溶剤は、ポリソルベート(例えばポリソルベート20、60、及び80)、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン界面活性剤(例えばPluronic(登録商標) F68, F84, F127, 及びP103)、シクロデキストリン、脂肪酸トリグリセリド、グリセロール、ポリエチレングリコール、他の溶解度向上剤、例えばオクトキシノール40及びチロキサポール、又は当業者に知られている他の物質、及びこれらの混合物を含む。使用される溶解度向上剤の量は、組成物中のフルオロキノロンの量に依存することなり、フルオロキノロンの量が多ければ多いほど溶解度向上剤の量も多くなる。典型的には、溶解度向上剤は、成分に応じて、0.01質量%〜20質量%(或いは0.1質量%〜5質量%、又は0.1質量%〜2質量%)のレベルで採用される。
【0049】
粘度向上剤の使用により、単純な水溶液の粘度よりも高い粘度を有する本発明の組成物を提供することは、標的組織による活性化合物の吸収を高めるために、又は、耳内の保持時間を長くするために望ましい。このような粘度向上剤は、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、又は当業者に知られているその他の薬剤を含む。このような物質は典型的には、0.01質量%〜10質量%(或いは0.1質量%〜5質量%、又は0.1質量%〜2質量%)のレベルで採用される。
【0050】
好適な界面活性剤は、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、及びプロピレングリコールを含む。他の界面活性剤は、ポリソルベート{例えばTween(登録商標)80、Tween(登録商標)60、Tween(登録商標)20の商品名で一般に知られているポリソルベート80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート)、ポリソルベート20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)}、ポロキサマー(エチレンオキシド及びポリピレンオキシドの合成ブロックポリマー、例えばPluronic(登録商標)の商品名で一般に知られているもの;例えばPluronic(登録商標)F127又はPluronic(登録商標)F108)、又はポロキサミン(エチレンジアミンに結合されたエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの合成ブロックポリマー、例えばTetronic(登録商標)の商品名で一般に知られているもの;例えばTetronic(登録商標)1508又はTetronic(登録商標)908など)、他の非イオン性界面活性剤、例えばBrij(登録商標)、Myrj(登録商標)、及び炭素原子数約12以上の炭素鎖を有する(例えば炭素原子数約12〜約24)長鎖脂肪アルコール(すなわちオレイルアルコール、ステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、ドコサヘキサノイルアルコールなど)である。界面活性剤は、局所用製剤が、狭い通路の表面上に広がるのを助ける。
【0051】
感染に続いて炎症が生じることがしばしばある。従って、別の態様において、本発明の組成物はさらに、抗炎症薬を含む。抗炎症薬は、周知のグルココルチコステロイド、及び非ステロイド性抗炎症薬(「NSAID」)を含む。
【0052】
グルココルチコステロイドの非限定的な例は、21−アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾン、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコルト、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドネート、エノキソロン、フルアザコルト、フルクロロニド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロメトロン、フルペロロンアセテート、フルプレドニデンアセテート、フルプレドニゾロン、フルランドレノリド、フルチカゾンプロピオネート、フォルモコルタル、ハルシノニド、ハロベタゾールプロピオネート、ハロメタゾン、ハロプレドンアセテート、ヒドロコルタルネート、ヒドロコルチゾン、ロテプレドノールエタボネート、マジプレドン、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、モメタゾンフロエート、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾロン25−ジエチルアミノ−アセテート、プレドニゾロンナトリウムホスフェート、プレドニゾン、プレドニバル、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド、トリアムシノロンヘキサアセトニド、これらの生理学的に許容し得る塩、これらの組み合わせ、及び混合物である。
【0053】
一実施態様の場合、耳に使用するための好ましいグルココルチコイドは、デキサメタゾン、ロテプレドノール、リメキソロン、プレドニゾロン、フルオロメトロン、ヒドロコルチゾン、及びこれらの誘導体を含む。別の実施態様の場合、鼻に使用するための好ましいグルココルチコイドは、モメタゾン、フルチカゾン、ベクロメタゾン、フルニソリド、トリアムシノロン、ブデソニド、及びこれらの誘導体を含む。
【0054】
NSAIDSの非限定的な例は、アミノアリールカルボン酸誘導体(例えばエンフェナム酸、エトフェナメート、フルフェナム酸、イソニキシン、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸、タルニフルメート、テロフェナメート、トルフェナム酸)、アリール酢酸誘導体(例えばアセクロフェナク、アセメタシン、アルクロフェナク、アンフェナク、アムトルメチングアシル、ブロムフェナク、ブフェキサマク、シンメタシン、クロピラク、ジクロフェナクナトリウム、エトドラク、フェルビナク、フェンクロジン酸、フェンチアザク、グルカメタシン、イブフェナク、インドメタシン、イソフェゾラク、イソキセパク、ロナゾラク、メチアジン酸、モフェゾラク、オキサメタシン、ピラゾラク、プログルメタシン、スリンダク、チアラミド、トルメチン、トロペシン、ゾメピラク)、アリール酪酸誘導体(例えばブマジゾン、ブチブフェン、フェンブフェン、キセンブシン)、アリールカルボン酸(例えばクリダナク、ケトロラク、チノリジン)、アリールプロピオン酸誘導体(例えばアルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ベルモプロフェン、ブクロキシン酸、カルプロフェン、フェノプロフェン、フルノキサプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、イブプロキサム、インドプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピケトプロレン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、プロチジン酸、スプロフェン、チアプロフェン酸、キシモプロフェン、ザルトプロフェン)、ピラゾール(例えばジフェナミゾール、エピリゾール)、ピラゾロン(例えばアパゾン、ベンズピペリロン、フェプラゾン、モフェブタゾン、モラゾン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、ピペブゾン、プロピフェナゾン、ラミフェナゾン、スクシブゾン、チアゾリノブタゾン)、サリチル酸誘導体(例えばアセトアミノサロール、アスピリン、ベノリレート、ブロモサリゲニン、カルシウムアセチルサリチレート、ジフルニサル、エテルサレート、フェンドサル、ゲンチシン酸、グリコールサリチレート、イミダゾールサリチレート、リシンアセチルサリチレート、メサラミン、モルホリンサリチレート、1−ナフチルサリチレート、オルサラジン、パルサルミド、フェニルアセチルサリチレート、フェニルサリチレート、サラセタミド、サリチルアミドo−酢酸、サリチル硫酸、サルサレート、スルファサラジン)、チアジンカルボキサミド(例えばアンピロキシカム、ドロキシカム、イソキシカム、ロルノキシカム、ピロキシカム、テノキシカム)、ε−アセトアミドカプロン酸、S−(5’−アデノシル)−L−メチオニン、3−アミノ−4−ヒドロキシ酪酸、アミキセトリン、ベンダザク、ベンジダミン、α−ビサボロール、ブコローム、ジフェンピラミド、ジタゾール、エモルファゾン、フェプラジノール、グアイアズレン、ナブメトン、ニメスリド、オキサセプロール、パラニリン、ペリソキサール、プロクアゾン、スーパーオキシドジスムターゼ、テニダプ、ジレウトン、これらの生理学的に許容し得る塩、これらの組み合わせ、及び混合物である。一実施態様の場合、NSAIDは、ジクロフェナク、フルビプロフェン、又はケトロラクである。
【0055】
他の非ステロイド性抗炎症薬は、シクロオキシゲナーゼII型選択的インヒビター、例えばセレコキシブ、及びエトドラク;PAF(血小板活性化因子)アンタゴニスト、例えばアパファント、ベパファント、ミノパファント、ヌパファント、及びモジパファント;PDE(ホスホジエステラーゼ)IVインヒビター、例えばアリフロ、トルバフィリン、ロリプラム、フィラミナスト、ピクラミラスト、シパムフィリン、及びロフルミラスト;サイトカイン産生のインヒビター、例えばNF−κB転写因子のインヒビター;又は当業者に知られているその他の抗炎症薬を含む。一実施態様の場合、非ステロイド性抗炎症薬はセレコキシブである。
【0056】
本発明の組成物中に含有される抗炎症薬の濃度は、選択された物質及び治療される炎症のタイプに応じて変化する。濃度は、ターゲット組織への本発明の組成物の投与に続いて、ターゲット組織内の炎症を軽減、治療、又は予防するのに十分なものになる。このような濃度は典型的には、約0.0001〜約3質量%(或いは、約0.01〜約2質量%、又は約0.05〜約1質量%、又は約0.01〜約0.5質量%)である。
【0057】
1つの態様において、耳の感染症事例から分離された病原菌は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyrogenes)、糞便連鎖球菌(Streptococcus faecalis)、ヘモフィルス・インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、モラクセラ・カタラリス菌(Moraxella catarahalis)、大腸菌(Escherichia coli)、プロテウス(Proteus)種、クレブシエラ(Klebsiella)種、及び腸球菌(Enterococcus)種を含む。分離株に由来するこれらの種のうちのいくつかは、数多くの抗菌薬に対して耐性であることが見いだされている。例えば急性中耳炎の小児の中耳液中の抗菌薬耐性の病原体に関する発表済の研究が示したところでは、ペニシリンに対して、S. pneumoniaeの30パーセントが中程度又は完全に耐性であり、また8パーセントが完全耐性であり、アモキシシリン又はアモキシシリン−クラブラン酸に対して、分離株の10パーセントが耐性であった。M. R. Jacob他、Antimicrobial Agents and Chemotherapy, Vol. 42, No. 3, 589 (1998)。同じ研究から、H. influenzae分離株の30パーセントがβ−ラクタマーゼを産生し、ひいては、ペニシリンに対して耐性を有すると予期されることが判った。
【0058】
上気道感染症の事例から分離された病原菌は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyrogenes)、ヘモフィルス・インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)種、及びバクテロイデス(Bacteroides)種を含む。
【0059】
小児における侵襲性肺炎球菌感染症の3年間の調査研究(1993-1996)では、ペニシリン又はセフトリアキソンに対して非感受性のS. Pneumoniae分離株の比率が毎年増え、最終研究年度にはそれぞれ21%及び9.3%に達した。S. L. Kaplan他、Pediatrics, Vol. 102, No. 3, 538 (1998)。アジア太平洋地域の地域感染型肺炎事例の検討も、ペニシリン、セファロスポリン、及びエリスロマイシンに対するS. Pneumoniaeの耐性の増大を明らかにした。F. J. Martinez著、“Infectious Diseases InfoAlert-a Desk-top Reference on Infectious Disease Control”(2003年、Biomedis International, Ltd.発行)。
【0060】
式IV及びVIを有する化合物、並びに従来技術のフルオロキノロン抗菌薬ノルフロキサシン(NFLX)、オフロキサシン(OFLX)、及びシプロフロキサシン(CPLX)を、OFLX、ゲンタマイシン(GM)、ペニシリンG(PCG)、又はアンピシリン(APC)に対して耐性を有するいくつかのバクテリアに対してin vitroで試験した。この試験では、薬物のMIC90がそれぞれ8、16、2、又は4μg/ml以上であるときに、バクテリアはOFLX、GM、PCG、又はAPCに対して耐性を有するとされる。結果を表2に示す。式IV及びVIを有する化合物は、特にOFLX耐性S. aureusに対して、MIC90値によって示されるようにNFLX、OFLX、及びCPLXよりも概ね効果的である。この試験に対するMIC90値は、米国臨床研究所規格委員会(the National Committee for Clinical Laboratory Standards:NCCLS)に従って寒天平板希釈法によって測定した。
【表2】

【表3】

【表4】

【0061】
第2の試験では、式IV及びVを有する化合物、これらのラセミ混合物、並びにOFLXを、メチシリン又はペニシリンに対して耐性を有するS. aureus菌株に対して、in vitroで試験した。試験は、日本化学療法学会(Japanese Society of Chemotherapy)のガイドライン(1993)に従って行った。この試験の結果を表3に示す。式IV及びVを有する化合物、並びにこれらのラセミ混合物はこれらの耐性菌株に対して、より低いMIC90値によって示されるように、OFLXよりも効果的である。
【表5】

【0062】
第3の試験において、式IVを有する化合物、ガチフロキサシン(GTFX)及びモキシフロキサシン(MOFX)を、1種又は2種以上の抗菌薬アンピシリン、メチシリン、ペニシリン、バンコマイシン、シプロフロキサン、及びレボフロキシンに対して耐性又は中程度の耐性を有するH. influenzae、S. aureus、S. epidermidis、S. pneumoniae菌株のうちのいくつかの菌株に対してin vitroで試験した。MIC90値は、臨床・実験規格協会(the Clinical and Laboratory Standards Institute)の承認済規格(Approved Standard)M7−A7(2006)に概説された液体微量希釈法に従って測定した。この試験の結果を表4に示す。式IVを有する化合物は、これらの耐性菌株に対して、より低いMIC90値によって示されるように、GTFX又はMOFXよりも効果的である。
【表6】

【表7】

【0063】
第4の試験において、式IVを有する化合物の抗菌活性を、いくつかのメチシリン耐性S. aureus菌株に対して試験し、市販の3種の抗生物質:ナディフロキサシン(NDFX)、オフロキサシン(OFLX)、及びスパルフロキサシン(SPFX)の抗菌活性と比較した。結果をMIC90値として表5に示す。
【表8】

【0064】
第5の試験において、式IVを有する化合物の抗菌活性を、いくつかの眼科用抗生物質耐性臨床細菌分離株に対して試験し、そしてノルフロキサシン(NRFX)、OFLX、及びCPLXの抗菌活性と比較した。上述のように、これらの菌株のほとんどは、耳及び上気道の感染症にも関連する。結果をMIC90値として表6に示す。
【表9】

【0065】
これらの結果は、耳及び上気道の感染症の事例において見いだされたいくつかの抗生物質耐性菌株に対して、式IVを有する化合物が、NDFX、OFLX、又はCPLXよりも効果的であることを示している。このように、本発明の組成物は、抗生物質耐性菌と闘うための新規の手段を提供することができる。例えば、本発明の組成物は、外耳炎及び中耳炎を含む耳の感染症、並びに副鼻腔炎、鼻咽頭炎、及び口腔咽頭炎を含む上気道の感染症を治療、軽減、寛解、又は予防するために有用である。
【0066】
第6の試験において、式IVを有する化合物の抗菌活性を、いくつかのS. aureus及びS. pneumoniae臨床分離株に対して試験し、CPLX、GTFX、レボフロキシン(LVFX)、MOFX、及びOFLXの抗菌活性と比較した。結果を表7に示す。式IVを有する化合物はこれらのバクテリアに対して、試験された従来技術のフルオロキノロンよりも効果的である。これらのバクテリア分離株のうちのいくつかは、高いMIC90値によって示されているように、試験された従来技術のフルオロキノロンのうちのいくつかに対して耐性である。
【表10】

【0067】
感染症を治療、軽減、寛解、又は予防する本発明の非限定的な組成物、及びこのような組成物の製造方法をさらに詳しく説明するために、以下の例を挙げる。
【0068】
例1:抗菌溶液
【表11】

【0069】
攪拌機構を備えた滅菌済のステンレス鋼被覆容器内のリン酸バッファーに、50〜60℃の温度で、適宜の比率の(上記表に示す)Pluronic(登録商標)F127を添加する。得られた緩衝溶液を61〜75℃まで加熱する。約66℃の温度で、3〜10分間混ぜながら、適量のBAKを緩衝溶液に添加する。75℃の温度で、混合を続けながら3〜5分間にわたって容器の内容物に、式IVを有する適量の化合物を添加する。次いで、さらに5分間にわたって75℃で混合を続けながら、EDTA及びNaClを混合物に添加する。得られた混合物を25〜30℃まで冷却する。最終組成物を適宜の容器内に詰める。
【0070】
例2:抗菌溶液
例1と同様の手順を用いてこの溶液を生成する。
【表12】

【0071】
例3:抗菌・抗炎症溶液
例1と同様の手順を用いて、下記組成を有するこの溶液を生成する。
【表13】

【0072】
例4:抗菌・抗炎症溶液
例1と同様の手順を用いて、下記組成を有するこの溶液を生成する。
【表14】

【0073】
例5:抗菌・抗炎症懸濁液
例1と同様の手順を用いて、下記組成を有するこの溶液を生成する。
【表15】

【0074】
例6:抗菌・抗炎症エマルジョン
例1の手順に変更を加えて、下記表に示した組成を有するこのエマルジョンを生成する。
【0075】
攪拌機構を備えた第1の滅菌済ステンレス鋼被覆容器内の水に、ポリソルベート60(Tween(登録商標)60)を、下記表に示された比率に相当する量で、50〜60℃の温度で添加する。得られた水溶液を61〜75℃まで加熱する。約66℃の温度で、3〜10分間混ぜながら、ベンジルアルコール(保存剤)を水溶液に添加する。同様に攪拌機構を備えた第2の滅菌済容器内のMygliol油に、75℃の温度で、式IVを有する適量の化合物及びロテプレドノールエタボネートを、攪拌を続けながら3〜5分間にわたって添加する。油混合物にソルビタンモノステアレート及びセチルステアリルアルコールを添加する。得られた油混合物を62℃〜75℃の温度まで加熱する。次いで、この油混合物を第1の容器内の水溶液に、3〜5分間にわたって66℃の温度で、強力に混ぜながら添加する。硫酸ナトリウム及び硫酸及び/又は水酸化ナトリウムを混合物に添加することにより、pHを5.5に調節する。得られた組成物を35℃〜45℃まで冷却し、そして高剪断乳化剤と混合するか、又はホモジナイザーに通すことにより均質化する。組成物をさらに25℃〜30℃まで冷却する。最終組成物を適宜の容器内に詰める。
【表16】

【0076】
典型的には、エマルジョン中で使用される油は、非刺激性エモリエント油である。その一例としては、鉱物油、植物油、及び既知の組成を有する改質植物油が挙げられる。油のより具体的な例としては、落花生油、ゴマ油、綿実油、及び中鎖(C6−C12)トリグリセリド(例えばHuls America Inc.から入手可能なMiglyol Neutral Oils 810, 812, 818, 829, 840など)から成る群から選択することができる。採用される典型的な乳化剤は、ソルビタンモノステアレート及びポリソルベートから成る群から選択することができる。好ましくは、乳化剤は非イオン性である。乳化剤は、組成物の1.5〜6.5質量%、好ましくは組成物の3〜5質量%の量で採用することができる。エマルジョンの疎水性相は、組成物の15〜25質量%、好ましくは組成物の18〜22質量%の量であることが可能である。
【0077】
例7:抗菌エマルジョン
例6と同様の手順を用いて、下記組成を有するこのエマルジョンを生成する。
【表17】

【0078】
例8:抗菌軟膏
例1と同様の手順を用いて、下記組成を有するこの溶液を生成する。
【表18】

【0079】
例9:抗菌軟膏
例1と同様の手順を用いて、下記組成を有するこの溶液を生成する。
【表19】

【0080】
例10:抗菌錠剤
下記表に示された成分をブレンダー、例えばリボン・ブレンダー内で一緒にブレンドする。粉末混合技術分野の当業者に良く知られている他のタイプのブレンダーを使用することもできる。この混合物を、医薬錠剤を製造するのに適した条件で、錠剤形成プレスに通す。
【表20】

【0081】
本発明はまた、従来技術の抗菌薬に対して耐性を有するバクテリアによって引き起こされる感染症を治療、軽減、寛解、又は予防する方法を提供する。この方法は、式I、II、III、IV、V、VI、VII、又はVIIIを有するフルオロキノロン、その塩、そのエステル、及びこれらの組み合わせから成る群から選択された化合物を含む組成物を患者に投与することを含む。
【0082】
1つの態様において、前記化合物は、約0.0001質量%〜10質量%(或いは約0.001質量%〜5質量%、又は約0.01質量%〜5質量%、又は約0.01質量%〜2質量%、又は約0.01質量%〜1質量%、又は約0.01質量%〜0.7質量%、又は約0.01質量%〜0.5質量%)の範囲で組成物中に存在する。
【0083】
別の態様において、この方法はさらに:(a)前記バクテリアを含む試料を患者から得;(b)バクテリアが少なくとも1種の従来技術の抗菌薬に対して耐性を有することを確認し;そして(c)式I、II、III、IV、V、VI、VII、又はVIIIを有するフルオロキノロン、その塩、そのエステル、及びこれらの組み合わせから成る群から選択された化合物を含む組成物を前記患者に投与する、ことを含む。
【0084】
別の態様において、本発明の組成物は、従来技術の抗菌薬のMIC90値が1μg/ml以上であるバクテリアの成長を阻止するか、又はその生存に悪影響を及ぼすために効果的に使用することができる。
【0085】
別の態様において、本発明の組成物は、従来技術の抗菌薬のMIC90値が約1〜128μg/mlであるバクテリアの成長を阻止するか、又はその生存に悪影響を及ぼすために効果的に使用することができる。
【0086】
一実施態様の場合、本発明は、従来技術の抗菌薬に対して耐性を有するバクテリアによって引き起こされる、眼、耳、又は呼吸器系の感染症を治療、軽減、寛解、又は予防する方法を提供する。1つの態様において、この方法は、感染症の兆候を有するか又は感染のリスクが示される患者の眼、外耳道、鼻腔、又は喉の奥に、本発明の組成物を1滴又は2滴以上投与することを含む。本発明の組成物は、スプレー剤として製剤することもでき、このスプレー剤は、上記患者の耳腔又は鼻腔内に投与することができる。
【0087】
本発明の具体的な実施態様を上に説明してきたが、当業者には言うまでもなく、添付の特許請求の範囲に定義するように、本発明の思想及び範囲を逸脱することなしに、多くの同等形、改変形、置換形、及び変更形を作ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の感染症を治療、軽減、寛解、又は予防する組成物であって、該組成物が、式I
【化1】

を有するフルオロキノロン、その塩、又はそのエステルを含み、該フルオロキノロン、その塩、又はそのエステルが、前記感染症を治療、軽減、寛解、又は予防するのに有効な量で存在し、
上記式中、R1は、水素、無置換型低級アルキル基、置換型低級アルキル基、シクロアルキル基、無置換型C5−C24アリール基、置換型C5−C24アリール基、無置換型C5−C24ヘテロアリール基、置換型C5−C24ヘテロアリール基、及び生体内で加水分解することができる基から成る群から選択され;R2は、水素、無置換型アミノ基、及び1つ又は2つの低級アルキル基で置換されたアミノ基から成る群から選択され;R3は、水素、無置換型低級アルキル基、置換型低級アルキル基、シクロアルキル基、無置換型低級アルコキシ基、置換型低級アルコキシ基、無置換型C5−C24アリール基、置換型C5−C24アリール基、無置換型C5−C24ヘテロアリール基、置換型C5−C24ヘテロアリール基、無置換型C5−C24アリールオキシ基、置換型C5−C24アリールオキシ基、無置換型C5−C24ヘテロアリールオキシ基、置換型C5−C24ヘテロアリールオキシ基、及び生体内で加水分解することができる基から成る群から選択され;Xは、ハロゲン原子から成る群から選択され;Yは、CH2、O、S、SO、SO2、及びNR4から成る群から選択され、R4は、水素、無置換型低級アルキル基、置換型低級アルキル基、及びシクロアルキル基から成る群から選択され;そしてZは、酸素原子及び2つの水素原子から成る群から選択され;そして前記感染症は、少なくとも1種の抗菌薬に対して耐性を有するバクテリアによって引き起こされ、そして該組成物は、前記バクテリアの成長又は生存を阻害することができる、
患者の感染症を治療、軽減、寛解、又は予防する組成物。
【請求項2】
1は、水素、置換型及び無置換型のC1−C5アルキル基、C3−C10シクロアルキル基、置換型及び無置換型のC6−C14アリール基、置換型及び無置換型のC5−C14ヘテロアリール基、及び生体内で加水分解することができる基から成る群から選択され;R2は、無置換型アミノ基、及び1つ又は2つのC1−C5アルキル基で置換されたアミノ基から成る群から選択され;R3は、水素、置換型及び無置換型のC1−C5アルキル基、C3−C10シクロアルキル基、置換型及び無置換型のC1−C5アルコキシ基、置換型及び無置換型のC5−C14アリール基、置換型及び無置換型のC5−C14ヘテロアリール基、及び置換型及び無置換型のC5−C14アリールオキシ基から成る群から選択され;Xは、Cl、F、及びBrから成る群から選択される、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1は、水素、置換型及び無置換型のC1−C5アルキル基、及び生体内で加水分解することができる基から成る群から選択され;R2は、無置換型アミノ基、及び1つ又は2つのC1−C5アルキル基で置換されたアミノ基から成る群から選択され;R3は、C3−C10シクロアルキル基から成る群から選択され;Xは、Cl及びFから成る群から選択され;Yは水素を含み;そしてZは2つの水素原子を含む、
請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
該フルオロキノロン、その塩、又はそのエステルが、0.0001〜10質量%の量で存在している、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
該フルオロキノロン、その塩、又はそのエステルが、0.01〜5質量%の量で存在している、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
該フルオロキノロン、その塩、又はそのエステルが、0.01〜1質量%の量で存在している、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
さらに抗炎症薬を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記抗炎症薬が、グルココルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、サイトカイン産生阻害薬、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
該フルオロキノロンが式IVを有している、請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
該フルオロキノロンが式IVを有している、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
該フルオロキノロンが式VIを有している、請求項4に記載の組成物。
【請求項12】
該フルオロキノロンが式V、VII、又はVIIIを有している、請求項4に記載の組成物。
【請求項13】
式Iを有するフルオロキノロンの単一の鏡像体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1種の抗菌薬が、ペニシリン群の薬物、バンコマイシン群の薬物、アミノグリコシド群の薬物、キノロン群の薬物、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項15】
前記バクテリアがグラム陽性菌である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記バクテリアがグラム陰性菌である、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記バクテリアが嫌気性細菌である、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1種の抗菌薬が、式I、II、III、IV、V、VI、VII及びVIIIを有する化合物以外のキノロンを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項19】
感染症を治療、軽減、寛解、又は予防する方法であって、該方法が、これを必要とする患者に、式I
【化2】

を有するフルオロキノロン、その塩、又はそのエステルを含む組成物を投与することを含み、該フルオロキノロンは、前記感染症を治療、軽減、寛解、又は予防するのに有効な量で存在し、
上記式中、R1は、水素、無置換型低級アルキル基、置換型低級アルキル基、シクロアルキル基、無置換型C5−C24アリール基、置換型C5−C24アリール基、無置換型C5−C24ヘテロアリール基、置換型C5−C24ヘテロアリール基、及び生体内で加水分解することができる基から成る群から選択され;R2は、水素、無置換型アミノ基、及び1つ又は2つの低級アルキル基で置換されたアミノ基から成る群から選択され;R3は、水素、無置換型低級アルキル基、置換型低級アルキル基、シクロアルキル基、無置換型低級アルコキシ基、置換型低級アルコキシ基、無置換型C5−C24アリール基、置換型C5−C24アリール基、無置換型C5−C24ヘテロアリール基、置換型C5−C24ヘテロアリール基、無置換型C5−C24アリールオキシ基、置換型C5−C24アリールオキシ基、無置換型C5−C24ヘテロアリールオキシ基、置換型C5−C24ヘテロアリールオキシ基、及び生体内で加水分解することができる基から成る群から選択され;Xは、ハロゲン原子から成る群から選択され;Yは、CH2、O、S、SO、SO2、及びNR4から成る群から選択され、R4は、水素、無置換型低級アルキル基、置換型低級アルキル基、及びシクロアルキル基から成る群から選択され;そしてZは、酸素原子及び2つの水素原子から成る群から選択され;そして該感染症は、少なくとも1種の抗菌薬に対して耐性を有するバクテリアによって引き起こされ、そして該組成物は、前記バクテリアの成長又は生存を阻害することができる、
感染症を治療、軽減、寛解、又は予防する方法。
【請求項20】
該組成物が、局所投与、経口投与、又は全身投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
該組成物が局所投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
該フルオロキノロンが式IVを有している、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
該フルオロキノロンが式VIを有している、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
該フルオロキノロンが式V、VII、又はVIIIを有している、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1種の抗菌薬が、ペニシリン群の薬物、バンコマイシン群の薬物、アミノグリコシド群の薬物、キノロン群の薬物、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記バクテリアがグラム陽性菌である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記バクテリアがグラム陰性菌である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記バクテリアが嫌気性細菌である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも1種の抗菌薬が、ペニシリン、アンピシリン、メチシリン、バンコマイシン、ゲンタマイシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン、これらの同等物、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
該感染症が、眼、耳、呼吸器系、又はこれらの組み合わせの感染症である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記バクテリアが、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、ヘモフィラス・インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、淋菌(Nieisseria gonorrhoeae)、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項32】
さらに、投与ステップの前に、感染部位の試料が、抗菌薬に対して耐性を有するバクテリアを含有することを確認することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項33】
感染症を治療、軽減、寛解、又は予防する方法であって、該方法が、これを必要とする患者に、式IIIを有するフルオロキノロン、その塩、又はそのエステルを含む組成物を投与することを含み、前記感染症は、抗菌薬に対して耐性を有するバクテリアによって引き起こされ、そして前記感染症が、眼、耳、又は呼吸器系の一部の感染症である、感染症を治療、軽減、寛解、又は予防する方法。
【請求項34】
該組成物が、局所投与、経口投与、又は全身投与される、請求項33に記載の方法。

【公表番号】特表2010−522192(P2010−522192A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554699(P2009−554699)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/057427
【国際公開番号】WO2008/115951
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(506076640)ボーシュ アンド ローム インコーポレイティド (99)
【Fターム(参考)】