説明

抗血栓性ナノ粒子

本発明は、抗血栓性ナノ粒子を含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、米国立衛生研究所により認められた承認番号HL−073646として政府助成により為された。政府は本発明のある一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、抗血栓性ナノ粒子を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
頸動脈または冠状動脈の閉塞の原因となる血液の凝血塊の高度に局部的な形成に起因する急性の卒中または心臓発作から毎年何百万人もの人が死亡するか、または障害を負う。疾患の前駆症候または兆候が、急性事象のリスクを示す場合には、様々な抗凝固剤および抗血小板物質のカクテルを、経口および静脈注射の両方により投与して、凝血塊の進行を防止する。しかし、積極的な処置レジメンを用いたとしても、血栓形成は、それでもやはり予測不可能に進行し得る。さらに、深刻または致命的な出血問題は、現在使用している全身的に活性な抗凝固剤により生じ得る。従って、当分野において、より安全かつ有効な抗血栓剤を開発する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の要旨
発明の一態様は、抗血栓性ナノ粒子を含む。概して言えば、該抗血栓性ナノ粒子は、該ナノ粒子を対象に投与した後に該ナノ粒子の外側に実質的に保持される少なくとも一つの高親和性凝固阻害剤を含んでおり、該対象の血漿の凝固時間を実質的に変更させないが抗血栓薬であるようなものである。
【0005】
本発明の別の態様は、抗血栓性ナノ粒子を含む。典型的には、該ナノ粒子の半減期は、対象において約2〜約4時間の間であり、該ナノ粒子の外側は、該ナノ粒子を対象に投与した後に該ナノ粒子の外側に実質的に保持される少なくとも一つの高親和性凝固阻害剤を含む。さらに、該ナノ粒子の二次反応速度定数は、該高親和性凝固阻害剤自体の二次反応速度定数よりも大きい。
【0006】
本発明のさらなる別の態様は、組成物を含む。該組成物は、典型的には、複数の血小板、フィブリン、および少なくとも一つのナノ粒子を含んでおり、ここで該ナノ粒子の外側は、該ナノ粒子のイン・ビボ投与後に該ナノ粒子の外側に実質的に保持される少なくとも一つの高親和性凝固阻害剤を含んでいる。
【0007】
本発明のさらなる別の態様は、対象における血栓形成を低下させる方法を含む。該方法は、一般的に、ナノ粒子を対象に投与することを含む。該ナノ粒子の半減期は、通常、該対象において約2〜約4時間の間であり、該ナノ粒子の外側は、該ナノ粒子を対象に投与した後に該ナノ粒子の外側に実質的に保持される少なくとも一つの高親和性凝固阻害剤を含んでおり、該ナノ粒子の二次反応速度定数は、該高親和性凝固阻害剤自体の二次反応速度定数よりも大きい。
【0008】
本発明のさらなる態様は、対象における血栓形成を防止する方法を包含する。該方法は、一般的に、ナノ粒子を対象に投与することを含む。該ナノ粒子の半減期は、通常、該対象において約2〜約4時間の間であり、該ナノ粒子の外側は、該ナノ粒子を対象に投与した後に該ナノ粒子の外側に実質的に保持される少なくとも一つの高親和性凝固阻害剤を含んでおり、該ナノ粒子の二次反応速度定数は、高親和性凝固阻害剤自体の二次反応速度定数よりも大きい。
【0009】
さらに別の態様は、対象における血栓の画像化方法を含む。該方法は、典型的には、ナノ粒子を対象に投与することを含む。該ナノ粒子の半減期は、対象における約2〜約4時間の間であり、該ナノ粒子の外側は、該ナノ粒子を対象に投与した後に、該ナノ粒子の外側に実質的に保持される少なくとも一つの高親和性凝固阻害剤を含んでおり、該ナノ粒子の二次反応速度定数は、該高親和性凝固阻害剤自体の二次反応速度定数よりも大きい。
【0010】
本発明の他の態様および相互作用を下記により詳細に説明する。
【0011】
(カラー写真についての言及)
本願は、少なくとも一つのカラー写真を含む。カラー写真を含む本特許出願公開の複写物は、依頼および必要な費用を支払うことにより事務局により提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、PPACK-官能化PFC−コアのナノ粒子の図を表す(A)。大部分のリン脂質単層は、卵のレシチンL−a−ホスファチジルエタノールアミン層を含む。1%の脂質膜は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[カルボキシ(ポリエチレングリコール)-2000]であり、粒子合成後にPPACKにより官能化される(B)。該脂質膜中の1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N−[カルボキシ(ポリエチレン グリコール)-2000]へのPPACKの添加前後の粒子サイズ(C)を測定した。PPACKの添加は、158.0±2.4 nmの平均流体力学的粒子直径を有意に変化しなかった(上部パネル)。カルボキシ末端脂質と正電荷を帯びたPPACKの連結に応じて、該粒子のゼータ電位は、官能化後に−35±1.57mVから−22.3±1.57mVに上昇した(D)。
【図2】図2は、ナノ粒子上に担持しているPPACKを示すグラフを表す。〜13650のPPACK/粒子の添加を、HPLC定量により検証した。選択された方法についてのPPACK溶出時間を、様々な濃度の純粋なPPACKの7つのサンプルにて同定し、標準曲線を作成した。PPACKと粒子のカップリング直後に、該粒子を沈殿させ、該上清中のPPACKを、同じ方法で定量した(赤色)。遊離PPACKおよびEDCIカップリング剤を透析により除去し、該単離粒子を、4℃で一週間貯蔵した後に完全に同じように沈殿させて、該粒子に結合せず依然残存しているPPACKの定量を行う(青色)。
【図3】図3は、抗血栓性ナノ粒子の活性を示すグラフを表す。PPACKは、Chromozym THに対する濃度依存性のトロンビン活性の阻害を引き起こし、10倍過剰のPPACKを超えると有意なトロンビン活性が見られない。PPACK-ナノ粒子について、PPACK濃度に対するトロンビン活性の依存性は、遊離のPPACKに対するものと同一であり、そのため、個々の遊離のPPACKあたりのアンチトロンビン活性(A)よりも粒子あたりのアンチトロンビン活性が高いことを示す。トロンビン-PPACKおよびトロンビン-PPACKナノ粒子相互作用の反応速度試験から、ナノ粒子上に留置後にトロンビンに対するPPACK活性についての変化がないことが示された(b)。0.93nM トロンビンおよび5nM PPACK(0.0003nM PPACK-ナノ粒子)に対して、PPACKは、3.65x10−1−1の二次反応速度定数(K/K)を示し、PPACK-ナノ粒子は、6.10x1012−1−1の二次反応速度定数(該粒子上のPPACKに対して4.47x10−1−1に対応する)を示した。
【図4】図4は、Chromozym THに対するプラスミン活性の評価により試験した場合に、プラスミンに対するPPACKおよびPPACK-ナノ粒子活性のグラフを表す。1000倍過剰のPPACKにより、プラスミン活性の85%の抑制をもたらした(赤色)。PPACKのナノ粒子への連結(青色)により、プラスミンに対してさらなる非特異的活性を生じなかった。
【図5】図5は、グラフを示す。光化学的損傷を使用して、血流をモニターしながらマウスの頸動脈の血栓閉塞を誘導した。PPACK(赤色)、ヘパリン(黒色)、またはPPACK-ナノ粒子(青色)により処置した動物についての代表的な血流経時変化を表す。PPACK-ナノ粒子またはヘパリンの存在下では、安定な血栓の形成は、顕著に遅延されたが、遊離のPPACKは、閉塞を完了させる確実なアプローチを提供する。
【図6】図6は、光化学的血栓性損傷実験において各々試験した処置条件に対する閉塞時間の平均±標準偏差を示すグラフを表す。PPACK(n=7)または非官能化ナノ粒子(n=7)による処置は、閉塞時間を遅延させなかった。PPACK-ナノ粒子処置は、PPACK処置(p=0.0006)または非処置マウス(n=7)よりも二倍以上の閉塞時間であった。また、PPACK-ナノ粒子処置は、ヘパリン処置と比較して閉塞時間を延長させた(p=.001、n=4)(A)。血流において、全身の凝固時間は、PPACKナノ粒子は、APTTを非常に短時間遅延させたが、最初の注射後20分間を過ぎてコントロール値に近づく(B)。
【図7】図7は、グラフを表す。出血時間を、PPACKナノ粒子(1ml/kg)の尾部血管ボーラス後の選択時間での遠位尾部損傷により測定した。全ての記載データは、n=1である。
【図8】図8は、PPACKナノ粒子で処置したマウスから摘出した閉塞動脈を表す。コントロールナノ粒子(n=3)またはPPACKナノ粒子(n=3)による処置を受けたマウスにおいて、両方の頸動脈を、右側頸動脈において閉塞血栓の誘導後に摘出した。11.7Tでの19F MRIは、動脈中の閉塞凝血塊を表すHイメージおよびPPACKナノ粒子からの19Fシグナルの重ね合わせ(coregistration)を示した(A)。19F MRSを使用して、2つの試験したナノ粒子処置について、損傷した右側頸動脈(RA)および無傷左側頸動脈(LA)中のナノ粒子の保持を定量した。保持粒子±標準誤差を(B)に示す。
【図9】図9は、顕微鏡写真を示す。TEMを用いて、PPACKナノ粒子またはコントロールナノ粒子の処置期間に形成した摘出凝血塊の微細構造を特徴分析した。PPACK-ナノ粒子の存在下で形成した凝血塊は、脱顆粒の兆候がほとんど無い血小板を緩く結合していた(A)。近接結合、脱顆粒、および血小板の相互嵌合は、コントロールナノ粒子の存在下で形成した凝血塊において顕著であった(B)。
【図10】図10は、顕微鏡写真を示す。PPACKナノ粒子(A)またはコントロールナノ粒子(B)を用いる処置を行った凝血塊のCarstair染色は、各処置により形成した凝血塊の性質を試験するために役立つ。PPACKナノ粒子の存在下で形成した凝血塊は、血小板の僅かな染色(sparse staining)(中心領域に青色)および大量の単離フィブリン(中心領域に桃色)を示した(A)。コントロールナノ粒子の処置では、血小板の染色は顕著であった(B)。
【図11】図11はプロットを示す。Carstair染色した血栓において血小板染色により占有された領域をNIH Image Jで評価した。コントロールナノ粒子により処置した3つの動脈に対して、血小板染色は、血栓領域の7.28%±2.87%を占めた。PPACKナノ粒子により処置した3つの動脈に対して、血小板染色は、血栓領域の1.66%±0.18%を占める。
【図12】図12は、トロンビンに対するビバリルジン(Bivalirudin)阻害部位の分子モデルを表す。
【図13】図13は、2つのプロットを表す。ナノ粒子へのビバリルジンの添加前後の該粒子サイズを測定した。ビバリルジンの添加により、平均流体力学的粒子直径(上部パネル)は有意に変化しなかった。ビバリルジンのカルボキシ末端脂質への結合に応じる、該粒子の官能化後のゼータ電位。
【図14】図14は、抗血栓性ナノ粒子の活性を示すグラフを表す。
【図15】図15は、光化学的損傷血栓実験において試験した各処置条件について平均±標準偏差閉塞時間を示すグラフを表す。
【図16】図16は、動脈中に保持されるナノ粒子の量を示すグラフを表す。19F MRSを使用して、3つの試験したナノ粒子処置に対して、損傷した右頸動脈(RA)および無傷左側頸動脈(LA)中のナノ粒子の保持を定量した。保持された粒子±標準誤差をこのグラフに表す。
【図17】図17は、凝血塊の表面積あたりのナノ粒子の量を示すグラフを表す。ヒトフィブリン凝血塊を、先に記載されたようなトロンビンおよび500mM CaClを用いるクエン酸血血漿の活性化により形成した(Morawski AM et al (2004) 52: 1255-1262.)。トロンビン標的化粒子について、凝血塊を、洗浄および定量的19F分光法の前に、37℃で2時間、1:15希釈のエマルジョンと共に回転式プラットフォーム振盪器上でインキュベートした。フィブリン標的化のために、凝血塊を、トロンビン標的化と同様に、37℃でアビジン-官能化ナノ粒子とのインキュベーションの前に、4℃で12時間ビオチン化1H10抗体(125ug)と共にインキュベートした。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の詳細な説明
本発明は、抗血栓性ナノ粒子を提供する。重要なことには、単に抗血栓薬を担持(payload)するための送達ビヒクルとして機能する該ナノ粒子とは異なり、該ナノ粒子は、それ自体抗血栓薬の不可欠な要素である。本発明は、本発明の抗血栓性ナノ粒子を用いて、対象における血栓形成を予防または低下させる方法をさらに提供する。
【0014】
I.抗血栓性ナノ粒子
本発明の一態様は、抗血栓性ナノ粒子を含む。概して言えば、本発明の抗血栓性ナノ粒子は、ナノ粒子構造および高親和性凝固阻害剤を含む。一実施態様において、抗血栓性ナノ粒子は、抗凝固活性を有し得る。別の実施態様において、抗血栓性ナノ粒子は、抗血小板物質活性を有し得る。ある実施形態において、抗血栓性ナノ粒子は、抗凝固活性および抗血小板物質活性の双方を有し得る。本明細書において使用されるとおり、「抗凝固活性」は、フィブリンに基づく凝固を低下させる能力をいう。一実施態様において、本明細書において使用されるとおり「抗血小板活性」は、結晶板の活性化を低下させる能力を意味する。別の実施態様において、「抗血小板活性」は、血栓中の血小板密度を低下させる能力である。さらなる他の実施形態において、「抗血小板活性」は、血小板の活性化を低下させること、および血栓中の血小板密度を低下させることの双方を意味する。
【0015】
抗凝固剤および抗血小板物質の活性を測定する方法は、当分野において既知である。一実施態様において、以下の実施例に記述した方法を使用してもよい。特定の実施形態において、本発明のナノ粒子は、PAR阻害剤であってもよい。
【0016】
有利には、本発明のナノ粒子は、対象において活性な血栓形成の部位で抗血栓性であるが、対象の血漿の凝固時間を実質的には変化させない。この点に関して、「実質的に」とは、該ナノ粒子を対象に静脈内投与後の約20分間以内で、抗血栓薬アッセイ、例えばAPTTアッセイにより測定される場合に、対象の凝固時間が非処理血漿サンプル中の凝固時間とほぼ同じであることを意味する。
【0017】
特定の実施形態において、単回の静脈内のボーラス後の抗血栓性ナノ粒子の半減期は、約2時間〜約4時間の間である。本明細書において使用されるとおり、「半減期」は、ナノ粒子の排除速度を示す。別の実施態様において、該半減期は、約2.5時間〜約3.5時間である。別の他の実施態様において、該半減期は、約2.75時間から約3.25時間の間である。さらなる他の実施形態において、該半減期は約3時間である。例示的な実施形態において、本発明のナノ粒子は、対象の血漿の凝固時間を実質的に変化させず、そして単回の静脈内のボーラス後の約2時間〜約4時間の間の半減期を有する。
【0018】
概して言うと、本発明のナノ粒子は、高親和性凝固阻害剤自体の速度定数よりもより望ましい速度定数を有しうる。例えば、高親和性凝固阻害剤を含む本発明のナノ粒子は、高親和性凝固阻害剤自体の反応速度定数よりも大きい二次反応速度定数を有し得る。速度定数の計算方法は、当分野ではよく知られている。さらなる詳細については、実施例を参照されたい。例示的な実施態様において、本発明のナノ粒子は、対象の血漿の凝固時間を実質的に変化させず、約2時間〜約4時間の間の半減期を有し、高親和性凝固阻害剤自体よりも大きい二次反応速度定数を有する。
【0019】
上記のとおり、上記実施形態の各々において、本発明のナノ粒子は、ナノ粒子構造および高親和性凝固阻害剤を含む。下記にこれら各々をより詳細に検討する。
【0020】
(a)ナノ粒子構造
本明細書において使用されるとおり、「ナノ粒子」は、典型的には、該構造の最大寸法で約5nMから400nMの間であるナノ構造をいうために使用される。本発明のナノ粒子は、球体であってよいが、球体である必要はない。該ナノ粒子の形態に拘わらず、該ナノ粒子の外側は、少なくとも一つの高親和性凝固阻害剤を含むことができなければならない。
【0021】
本発明の抗血栓性組成物を含むナノ粒子は、典型的には、最大寸法で約5nm〜400nmの間であり得るが、いくつかの例においては、最大寸法は、さらに大きいか、またはさらに小さくてもよい。別の実施態様において、組成物中の複数のナノ粒子の平均サイズは、典型的には、最大寸法で約5nm〜400nmであり得る。一実施態様において、本発明のナノ粒子の最大寸法は、約100nm〜約300nmであり得る。別の実施態様において、ナノ粒子の最大寸法は、約5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、または300nmであってもよい。
【0022】
特定の実施形態において、本発明のナノ粒子は、パーフルオロカーボンナノ粒子であり得る。かかるナノ粒子は、当分野ではよく知られている。例えば、米国特許第5,690,907号;同5,780,010号;同5,989,520号および同5,958,371号であり、これらの全ては出典明示により本明細書に組み込まれる。
【0023】
有用なパーフルオロカーボンエマルジョンは、米国特許第4,927,623号、同5,077,036号、同5,114,703号、同5,171,755号、同5,304,325号、同5,350,571号、5,393,524号および同5,403,575号に開示されており、該パーフルオロカーボン化合物が、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタン、パーフルオロジクロロオクタン、パーフルオロ-n-オクチルブロミド、パーフルオロヘプタン、パーフルオロデカン、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロモルホリン、パーフルオロトリプロピルアミン、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロジメチルシクロヘキサン、パーフルオロトリメチルシクロヘキサン、パーフルオロジシクロヘキシルエーテル、パーフルオロ-n-ブチルテトラヒドロフラン、ならびにこれらの化合物と構造的に類似しており、かつ部分的または完全にハロゲン化されたか(少なくともいくつかのフッ素置換基を含む)または部分的または完全にパーフルオロ化された(パーフルオロアルキル化エーテル、ポリエーテルまたはクラウンエーテルを含む)化合物であるものを含む。いくつかの実施形態において、パーフルオロカーボン化合物は、パーフルオロ-n-オクチルブロミドである。別の実施形態において、該パーフルオロカーボン化合物は、パーフルオロアルキル化クラウンエーテルであってもよい。
【0024】
該ナノ粒子上に外側被覆を形成するために脂質/界面活性剤を含む該被覆は、天然または合成のリン脂質、脂肪酸、コレステロール、リゾ脂質、スフィンゴミエリンなどを包含してもよく、例えばポリエチレングリコールを連結させた脂質も含む。多様な市販のアニオン性、カチオン性、および非イオン性の界面活性剤を用いてもよく、例えば、ツィーン(Tweens)、スパン(Spans)、トライトン(Tritons)なども含む。いくつかの界面活性剤は、それ自体フッ素化され、例えば、パーフルオロ化アルカン酸、例えば、パーフルオロヘキサン酸およびパーフルオロオクタン酸、パーフルオロ化アルキルスルホンアミド、アルキレン4級アンモニウム塩などを含む。さらに、パーフルオロ化アルコールリン酸塩エステルを用いることができる。
カチオン性脂質は、DOTMA、N−[1-(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N−トリメチル塩化アンモニウム;DOTAP,1,2-ジオレオイルオキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン;DOTB、1,2-ジオレオイル-3-(4'-トリメチル-アンモニオ)ブタノイル-sn-グリセロール、1,2-ジアシル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン;1,2-ジアシル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン;1,2-ジアシル-sn-グリセロール-3-エチルホスホコリン;および3β-[N',N'−ジメチルアミノエタン)-カルバモール]コレステロール-HCIを用いてもよい。
【0025】
パーフルオロカーボンナノ粒子は、典型的には、コアを形成するフルオロカーボン脂質およびエマルジョンを形成させるために水性媒体中の懸濁液中で外層を形成する脂質/界面活性剤混合物を、高圧乳化(microfluidizing)して形成される。超音波処理または他の技術は、水媒体において脂質/界面活性剤の懸濁液を得るために必要としてもよい。また、外層の成分を、イメージング剤または放射性核種と結合させてもよい。
【0026】
他のナノ粒子構造に加えてパーフルオロカーボンナノ粒子を本発明に使用できる。一実施態様において、該ナノ粒子構造は、脂質頭部基を含む。例えば、ナノ粒子構造はリポソームであってもよい。さらに、非限定的な例として、PCT出願番号PCT/US2008/079404およびPCT/US2008/079414に記載されたナノ粒子を使用してもよい。さらに、特定の実施形態において、コロイド物質を、本発明のナノ粒子として使用できる。他のナノ粒子構造の非限定的例は、デンドリマー、ブロックジ/トリコポリマーを含んでも良い。ある実施形態において、細胞または細胞の部分を該ナノ粒子構造として使用してもよい。例えば、特定の実施形態において、赤血球細胞または血小板を、ナノ粒子構造として使用してもよい。
【0027】
(b)高親和性凝固阻害剤
通常、該ナノ粒子の外側は、少なくとも一つの高親和性凝固阻害剤を含む。本明細書において使用されるとおり、「外側(exterior)」とは、ナノ粒子を対象に投与した場合に血液の血漿と接触する該ナノ粒子の表面をいう。概して言えば、高親和性凝固阻害剤は、該ナノ粒子を該対象にイン・ビボ投与した後に、該ナノ粒子の外側に実質的に保持される。つまり、該高親和性凝固阻害剤は、該ナノ粒子を該対象にイン・ビボ投与した後に、該ナノ粒子の外側から実質的に放出されない。高親和性凝固阻害剤は、高親和性凝固阻害剤をナノ粒子の脂質膜に組み込むか、またはペプチドなどの連結分子を介して該ナノ粒子に該高親和性凝固阻害剤を結合することを含む当業者には既知の任意手段により該ナノ粒子に結合され得る。
【0028】
高親和性凝固阻害剤は、典型的には、凝固カスケードに関与する生体分子に高親和性にて結合する。本明細書において使用されるとおり、「高親和性」とは、凝固阻害剤が凝固カスケードにおける生体分子に結合すると、該生体分子が生理学的条件下で該凝固阻害剤から実質的に放出されないことを意味する。殆どの高親和性凝固阻害剤は、1ナノモル範囲またはそれ以下のKdを有する。ある実施形態において、高親和性凝固阻害剤は、凝固カスケードに関与する生体分子と共有結合を形成する。しかし、他の実施形態において、高親和性凝固阻害剤は、凝固カスケードに関与する生体分子と共有結合を形成しない。ある実施形態において、高親和性凝固阻害剤は、生体分子を不活性にさせることにより、凝固カスケードを阻害する。特定の実施形態において、抗血栓性ナノ粒子の高親和性凝固阻害剤は、生体分子に結合および封鎖して、該生体分子を該凝固カスケードから排除して、カスケードを阻害する。メカニズムに拘わらず、高親和性凝固阻害剤は、新規血栓の形成を妨害するか、または存在している血栓の成長を妨害する。
【0029】
抗血栓性ナノ粒子は、1以上の異なるタイプの高親和性凝固阻害剤を含み得る。例えば、ナノ粒子は、1、2、3、4、5、6、7または7以上の異なるタイプの高親和性凝固阻害剤を含み得る。概して言えば、様々な異なるタイプの高親和性凝固阻害剤の各々は、本発明のナノ粒子が、典型的には、全部で3000〜20000コピーの高親和性阻害剤を含む。一実施態様において、抗血栓性ナノ粒子は、約5000〜約18000コピーの高親和性阻害剤を含む。別の実施態様において、ナノ粒子は、約8000〜約15000コピーの高親和性阻害剤を含み得る。さらなる他の実施形態において、ナノ粒子は、約10000コピー〜約15000コピーの高親和性阻害剤を含み得る。ある実施形態において、ナノ粒子は、約10000、約10500、約11000、約11500、約12000、約12500、約13000、約13500、約14000、約14500、または約15000コピーの高親和性阻害剤を含み得る。
【0030】
上記のとおりに、高親和性凝固阻害剤は、凝固カスケードに関与する生体分子と結合して、凝固カスケードを阻害する。ある実施形態において、高親和性凝固阻害剤は、トロンビンに結合できる。トロンビンに結合する高親和性凝固阻害剤は、天然阻害剤であっても、不可逆的阻害剤、可逆的共有結合性の阻害剤、または可逆的非共有結合性の阻害剤であってもよい。高親和性天然阻害剤の非限定的な例は、ヒルジン(Hirudin)(IC50、3pM)である。可逆的阻害剤の非限定的な例は、ビバリルジンである。不可逆的阻害剤の非限定的な例は、PPACKであり、活性部位ヒスチジンのアルキル化またはアシル化により、および/または該活性部位セリンとの反応によるアシル酵素複合体の形成によりトロンビンと相互作用する。概して言えば、可逆的共有結合性のトロンビン阻害剤は、触媒性セリンの水酸基(例えば、Efegatran Ki 1.2nM)と結合する。可逆的非共有結合性の阻害剤の非限定的な例は、N−a−トシルアルギニンメチルエステル(例えば、Argatroban Ki 19nM)、トリペプチド阻害(例えば、Inogatran Ki 15nM)、ピリジノン/ピラジンアセトアミド阻害剤(例えば、L-375,378 Ki 0.8 nM)、ベンゼン/ベンゾチオフェン置換派生阻害剤(例えば、L-636,619 Ki 7μM)、および配座的に歪んだ(strained)阻害剤(例えば、配座的に歪んだ二環式ピリドン Ki〜2nM)から得られる阻害剤を含んでもよい。例示的な実施形態において、高親和性凝固阻害剤は、PPACKである。他の例示実施態様において、ナノ粒子は、PPACKを少なくとも一つの他の高親和性凝固阻害剤と共に含む。さらなる他の例示的な実施態様において、ナノ粒子は、PPACKおよびビバリルジンを含む。
【0031】
別の実施形態において、高親和性凝固阻害剤は表Aに示した分子に結合する。
【表1】

【0032】
高親和性凝固阻害剤は、該高親和性阻害剤が実質的にナノ粒子の外側に保持されており、かつナノ粒子の外側に組み込まれてから実質的に活性である限り、当業者には既知の方法を用いて該ナノ粒子の外側に組み込まれ得る。これに関して、「実質的に活性」とは、ナノ粒子の外側に組み込まれてから、少なくとも約85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%のその活性を有する高親和性凝固阻害剤をいう。一実施態様において、高親和性凝固阻害剤は、下記実施例に記載されたとおりに組み込まれてもよい。別の実施態様において、高親和性凝固阻害剤は、PCT/US2009/041000に記載されたリンカーを用いてナノ粒子の外側に組み込まれてもよい。
【0033】
ある実施形態において、本発明のナノ粒子は、それ自体ではイン・ビボで使用するのに望ましくない安全性プロファイルを有する高親和性凝固阻害剤を含み得る。この理由は、一部分において、該ナノ粒子の薬物動体および薬力学特性が、高親和性凝固阻害剤自体の特性とは異なり得るためである。
【0034】
(c)イメージング剤
本発明のナノ粒子はまた、イメージング剤を含んでもよい。例えば、該ナノ粒子は、顕微鏡検査法、例えば、蛍光顕微鏡検査法、共焦点顕微鏡検査法、または電子顕微鏡検査法、磁気共鳴画像、断層撮影法、例えばγ(SPECT/CT、プラナー)およびポジトロン断層法(PET/CT)、ラジオグラフィー、または超音波などに使用され得る画像/トラッキング剤を含んでもよい。画像/トラッキング剤は、イン・サイチュ、イン・ビボ、エキソ・ビボ、およびイン・ビトロで検出し得る。顕微鏡検査法の画像/トラッキング剤は、当業者には良く知られており、蛍光分子、例えば、FITC、ローダミン、およびAlexafluor シアン染料を含んでもよい。同様に、磁気共鳴映像法分子、ラジオグラフィー造影剤、近赤外(NIR)および光音響分子は、当業者には良く知られており、適切な造影剤が、当業者により該粒子の該組成物や該粒子の目的とする用途を考慮した後に選択される。特定の実施形態において、該ナノ粒子は、核イメージング法、例えば、PET、SPECTおよび関連方法により検出される放射性金属に対するキレート剤を含んでも良い。
【0035】
(d)他の成分
本発明のナノ粒子は、他の成分、例えば、1以上の抗血小板剤、糖タンパク質阻害剤、線溶剤、血栓溶解剤、抗体、または小分子薬剤をさらに含んでも良い。非限定的な例は、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、または組織プラスミノーゲンを含んでも良い。
【0036】
II.方法
本発明のナノ粒子を、対象における血栓形成を予防および/または低下させるために対象に投与できる。一実施態様において、本発明のナノ粒子を、対象における血栓形成を予防するために対象に投与できる。別の実施態様において、本発明のナノ粒子を、対象における血栓形成を低下させるために対象に投与できる。他の実施態様において、本発明のナノ粒子を用いて、凝血塊が血管を閉塞させるのに要する時間を延長させることができる。
【0037】
本発明のナノ粒子を、対象に投与して、急性および急性でない両方の状況において血栓形成を予防および/または低下させることができる。例えば、非限定的な例として、抗血栓性ナノ粒子を、虚血および深部静脈血栓の緊急状態時において対象に投与できる。また、ナノ粒子を、後記の非限定的な緊急時でない状態においても対象に投与できる:ステント、血管形成術、留置ライン、人工心臓弁、シャント、または血管系における他の人工装具。
【0038】
上記実施形態の各々において、ナノ粒子を対象に投与した。概して言えば、本発明のナノ粒子を静脈内投与した。また、ナノ粒子を、経口的に、筋肉内的に、皮内的に、腹腔内に、リンパ管内に、経皮的に、または外科的かき傷、皮下注射または他の非経口の経路により投与してもよい。
【0039】
上記実施形態の各々において、本発明のナノ粒子は、医薬上許容し得るビヒクルまたは担体と組合せてもよい。例えば、実施形態において、これらの組成物を注射により投与する場合(例えば、腹腔内に、静脈注射により、皮下に、筋肉内的に)に、該組成物を、医薬上許容し得るビヒクル、例えば、生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液などと組み合されるのが好ましい。
【0040】
当業者は、対象に投与したナノ粒子の量を、幾つかのファクター、例えば、対象の大きさ、対象の健康状態、ナノ粒子の所望の用途および/またはナノ粒子タイプに依存して変更できることは認識するであろう。一実施態様において、投与したナノ粒子の量は、約0.25μm/kg〜約3μm/kgの間である。別の実施態様において、投与したナノ粒子の量は、約0.5μm/kg〜約1.5μm/kgの間である。別の他の実施態様において、投与したナノ粒子の量は、約1μm/kgである。さらなる他の実施形態において、投与したナノ粒子の量は、約0.3g/kg〜約0.4g/kgである。
【0041】
一般的には、本発明のナノ粒子は、対象における血栓形成を予防よび/または低下させるために必要な頻度で対象に投与され得る。一実施態様において、ナノ粒子を、1時間毎に、2時間毎、3時間毎、4時間毎、5時間毎、6時間毎、7時間毎、8時間毎、9時間毎、10時間毎、11時間毎、12時間毎、13時間毎、14時間毎、15時間毎、16時間毎、17時間毎、18時間毎、19時間毎、20時間毎、21時間毎、22時間毎、23時間毎、または24時間毎に投与してもよい。別の実施態様において、ナノ粒子を、1日に1回投与してもよい。他の実施態様において、ナノ粒子を、2日、3日、4日、5日、6日、または7日投与してもよい。
【0042】
好適な対象は、齧歯類、愛玩動物、家畜、非ヒト霊長類、およびヒトを含み得る。齧歯類の非限定的例は、マウス、ラット、ハムスター、アレチネズミ、およびモルモットを含み得る。愛玩動物の非限定的例は、ネコ、イヌ、ウサギ、ハリネズミ、およびフェレットを含み得る。家畜の非限定的例は、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ラマ、アルパカ、および畜牛を含み得る。非ヒト霊長類の非限定的例は、オマキザル、チンパンジー、キツネザル、マカクザル、マーモセット、タマリン、クモザル、リスザル、およびベルベット・モンキーを含み得る。
【0043】
上記実施形態の各々において、また本発明のナノ粒子を使用して、本発明の1以上のナノ粒子を含む血栓を画像化できる。特に、本発明のナノ粒子はイメージング剤を含むことができるので、該粒子を、蛍光顕微鏡検査法、共焦点顕微鏡検査法、または電子顕微鏡検査法、磁気共鳴画像、断層撮影法、例えば、γ(SPECT/CT、プラナー)およびポジトロン断層法(PET/CT)、ラジオグラフィー、または超音波により検出できる。
【0044】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を提示するためにふくまれる。当業者は、発明者により見出された代表的な技術に従う実施例に開示されたこの技術が、発明の実施において十分機能することを認識するであろう。しかし、本発明の開示から、当業者は、多くの変更が、本発明の精神おおよび範囲から逸脱せずに開示された特定の実施形態において行われ、同様または類似の結果を得ることができることは認識するであろう。従って、後記または添付の図面に示された全ての事象は、例示として解釈されるべきであり、限定を意味するものではない。
【実施例】
【0045】
実施例
以下の実施例は、本発明の様々な反復 (iteration)を説明するものである。
【0046】
実施例1−3についての導入部
心臓脈管疾患の場合において、毎年何百万という患者が直面する最も頻度が高くかつ高価な医療緊急事態とは、心臓発作および卒中をもたらす冠動脈および頸動脈中の局所血栓の急性発症である。様々な抗凝固剤および抗血小板物質剤による積極的な処置を用いたとしても[1-5]、血栓形成は予測不可能に進行し得る[6,7]。逆に、重篤な出血問題は、全身的に活性な抗凝固剤[8]の血流アレイ(current array)の使用によりおこり得る。さらに、断続血栓症(stuttering thrombosis)および微小塞栓術は、血流処置法[9]を用いた結果の評価に有効であり得る。より安全かつ有効な抗凝固剤の開発および凝血塊化の追跡は依然として課題であり、心臓発作および卒中をもたらす血栓症になりやすい条件の研究を積極的に追求する[1、3、5、10-14]。
【0047】
セリンプロテアーゼトロンビンは、凝固の際の律速ファクターとして中心的な役割を有する。その一次凝固促進剤の役割では、トロンビンは、可溶性フィブリノーゲンを凝血塊形成の際に蓄積する不溶性フィブリンに変換する[4、15、および16]。さらに、それは、Gタンパク質共役プロテアーゼ活性レセプター(PAR)の解裂により血小板の活性化に寄与し[4、15、17-21]、ファクターV、VIII、およびXIの活性化を通じて凝固カスケードにおける上流において働く[22]。活性トロンビンの増加レベルは、血管損傷の部位周辺で持続する[23]。アテローム性動脈硬化症において、トロンビンは、プラークの発生に関連しており、破壊に対して感受性がある[17、24、および25]。
【0048】
従って、トロンビン阻害は、長い間、新規抗凝固剤開発のための標的であった。特に、直接トロンビン阻害剤は、高い特異性および有効性を有する急性処置のために設計されてきた[2-4]。D−フェニルアラニル-L−プロリル-L−アルギニル-クロロメチルケトン(PPACK)は、最初の直接トロンビン阻害剤の中の一つであった不可逆性の共有結合阻害剤である。PPACK-トロンビン複合体は、安定構造として十分特徴づけられている[2、4、15、16、および26]。さらに、該分子は、マウスにおいて50mg/kgよりも高いLD50を有し、長期間の毒性を有さない[2、27]という優れたイン・ビボでの安全性プロファイルを有する。にもかかわらず、PPACKの治療的用途は、その急速なクリアランス(7分の分布および2.9分の排出半減期)を理由に最初にあきらめられていた。
【0049】
従来のイン・ビボの全身性抗凝固剤を超える、本明細書において報告したパーフルオロカーボン(PFC)ナノ粒子を基にした抗血栓剤およびその利点は、実際の血栓症モデルにおいて実証される。この記載した粒子の見込みは2倍である。まず、研究者らは、薬物動態または薬力学を考慮して却下されてきた強力な阻害剤、例えばPPACKの使用を再検討できる。各粒子は、10000以上共有結合したPPACK分子をその表面上に恒久的に担持する。PPACK自体は、血液から迅速に排除されるが、PFCナノ粒子はPPACK自体により提供されるよりも、より強力であることを証明した長期の治療効果を可能にする十分に確立された薬物動態を有する(〜3時間の排除半減期)[28、29]。次に、該粒子は、血栓部位で特異的に結合して、損傷部位で該粒子の衝突にフォーカスし、全身的な影響を最小にする。トロンビン結合特異性および粒子コアにより得られる磁気共鳴造影から、抗トロンビンにより官能化された粒子は、19F MRIにおける血栓閉塞の可視化を可能にする。ナノ粒子は一般的な抗凝固剤を担持させるために以前に用いられていたが[30]、該ナノ粒子自体が血栓症の診断および処置において重要な役割を担うという総合的な抗血栓剤としてイン・ビボで概念化または提示されてきたものはない[10、26]。
【0050】
実施例1−3のための材料および方法
ナノ粒子合成
パーフルオロカーボンナノ粒子を、先の研究にて記述されたとおりに製造した[36]。該エマルジョンは、20%(vol/vol)のパーフルオロ15-クラウン-5−エーテル(Exfluor Research Corp.)、2%(wt/vol)の界面活性剤混合物、1.7%(wt/vol)グリセリン、および均衡をとるための水を含有する。クロロホルム:メタノール(3:1)中に98.5 mole% ホスファチジルエタノールアミン(Avanti Polar Lipids)および1.5 mole% 1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[カルボキシ(ポリエチレングリコール)-2000] (Avanti Polar Lipids)または98 mole% 卵黄のホスファチジルコリン(Avanti Polar Lipids)および2 mole% ホスファチジルエタノールアミン(Avanti Polar Lipids)を含む該界面活性剤を、真空下で乾燥させて、脂質膜を形成させた。該界面活性剤の成分を、クラウンエーテルおよび蒸留脱イオン水と併せて、4分間、20000psi(Microfluidics Inc)にて乳化させた。粒子サイズを、レーザー光散乱サブミクロン粒子分析器(Brookhaven Instruments)を用いて合成直後に測定した。
【0051】
PPACKを用いて1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン−N−[カルボキシ(ポリエチレングリコール)-2000]を含有する粒子を官能化するために、アミン-カルボキシルカップリングを用いて、PPACKのN末端を合成粒子上の露出(bare)カルボキシル基と結合させる。1mlのエマルジョンとPPACK(12.5 mg)を1時間混合した後、EDCI 1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド メチオジド(2 mg)を、カップリングのために終夜添加した。過剰なPPACKおよびEDCIを透析(MWCO 3000-5000)により除去した。粒子サイズを、上記のとおりPPACKの結合前後に評価した。PPACKカップリングの程度を、Cleanascite脂質吸着剤(Agilent Technologies)を用いるナノ粒子の遠心分離後にカップリングしなかったPPACKの逆相HPLC定量により決定した。1mL/分の流速で9.9% アセトニトリル、0.089% トリフルオロ酢酸、および90.011% 水を用いるアイソクラチック法を用いて、PPACKの溶出がC18カラムに投入後22分に達成された。PPACKを、フェニルアラニン吸光度(258 nm)により検出した。流体力学的直径寸法を考慮して、PPACKカップリング(Brookhaven Instruments)のさらなる評価のために、ゼータ電位測定を用いた。
【0052】
トロンビン阻害実験
トシル-Gly−Pro−Arg−4-ニトロアニリドアセテート(Chromozym TH, Roche Applied Science)を用いて、先に記述した方法[31]に従って、トロンビンおよびプラスミンのPPACK阻害をアッセイした。12nM トロンビン(100 μL)を、PPACKまたはPPACKナノ粒子の選択された量または過剰な露出ナノ粒子と共に1分室温でインキュベートした。トロンビン基質のトシル-Gly−Pro−Arg−4−ニトロアニリドアセテート[500 μL(100 μM)]を添加して、PPACK-トロンビンの相互作用を停止させる。先の研究に従って、基質に対するトロンビン活性を405nmで吸光度を測定した。405nmの吸光度の変化の割合を、Chromozym THを解裂するのに利用できる阻害されなかったトロンビンの量の指標とした。
【0053】
追加実験において、Chromozym THを使用して、PPACK-トロンビン相互作用の反応速度を決定した。0.92nM トロンビンを、100μM Chromozym TH(500 μL)の導入前に、室温で5nM PPACKまたは0.3 pM PPACKナノ粒子と共に、様々な時間インキュベートした。トロンビン活性を上記のとおり測定した。Kettner および Shaw の研究[26]に従って、阻害の反応速度を特徴分析した。該アッセイにより、トロンビン不活性化(kapp)についての見かけの偽一次反応速度定数を得た。式(1)の阻害をモデル化して、PPACK-トロンビン相互作用およびPPACKナノ粒子-トロンビン相互作用についての二次反応速度定数(k/K)の目算を式(2)により得た。最良の凝一次反応を得るために、トロンビン希釈は、Chromozym THアッセイの感度によって設定された制限のなかで最大とされた。
【表2】

【0054】
Chromozym THも使用して、プラスミンに対するPPACKおよびPPACKナノ粒子活性を測定した。120nM プラスミンを、選択された量のPPACKおよびPPACKナノ粒子と共に3分間室温でインキュベートした。1000倍過剰(138 μM)のPPACK(遊離またはナノ粒子上の)を用いて、Chromozym THに対するプラスミン活性について測定可能な効果を作成する。PPACKおよびPPACKのナノ粒子と共にインキュベーションした後に活性を比較した。
【0055】
イン・ビボでの抗血栓性効果
以前の研究において記述したとおり[31、32]、10−12週齢の雄のC57BL/6マウス(体重25−30g)を、頸動脈を光化学的に損傷させた。ペントバルビタールナトリウムによる麻酔後、該マウスを、正中部頚部切断による右側総頸動脈の単離のために解剖顕微鏡下に固定した。超音波血流プローブ(model 0.5 VB Transonic Systems, Ithaca, NY)を動脈に適用して、各実験期間中の血流を測定した。1.5mW 540nm HeNe レーザー(Melles Griot, Carlsbad, CA)を、6cmの距離で動脈に焦点を合わせた。ヘパリン(0.125 mg/kg, n=4)、PPACK(12.5 mg/kg, n=7)、PPACKナノ粒子(1 mL/kg, n=7)、または非官能化ナノ粒子(1 mL/kg, n=7)を、PBSに溶解させた光感受性ローズベンガル染料(50 mg/kg; Fisher Scientific, Fair Lawn, NJ)の尾血管注射による動脈血栓誘導前の10分間、ボーラスとして尾血管に投与した。別のコントロール実験では(n=4)、該処置はローズベンガル染料の注射の前に行わない。頸動脈の閉塞を注目して、実験をゼロフローの安定な(>5分間)保持により停止させた。
【0056】
閉塞した動脈を取り出して、保存した。走査電子顕微鏡検査法のために、動脈を4℃で2%のグルタルアルデヒドおよび0.1mM カコジル酸ナトリウムに固定した。固定した組織を、四酸化オスミウム、タンニン酸、および酢酸ウラニルを用いて染色した。次いで、組織を、脱水してPolyBed 812 (Polysciences)に埋包した。半分の薄さの試験片を、Toluidine Blueで染色して、閉塞性擬血塊の存在について光学顕微鏡下で評価した。血栓を含有すると同定された動脈部分を、走査電子顕微鏡検査法のために連続的に薄く切った。薄層試験片を、酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛を用いて対比染色した。サンプルを、Zeiss 902 電子顕微鏡により試験し、画像をKodak EMフィルムにより記録した。
【0057】
Carstair染色のために、動脈を3日間10%の緩衝ホルマリン中で保存した。アルコールおよびキシレンによる処理の後、動脈を、パラフィン埋包して、5ミクロンの厚さに薄片化した。水和した試験片を、5%硫酸第二鉄アンモニウム(ferric alum)、メイヤーズヘマトキシリン、ピクリン酸オレンジ G 溶液、ポンソーフクシン溶液、1% リンタングステン酸、およびアニリンブルーにより処理して、フィブリン、血小板、コラーゲン、筋肉、および赤血球細胞を染色した。画像を、Image Jを用いて血小板について分析した。
【0058】
別のマウスにおいて、左心室の描画(draws)により得た血液についてのAPTTを用いて、該粒子の全身効果を決定した。クエン酸塩抗凝固血を、PPACKナノ粒子のボーラス注射後10、20、40、70、110、または150分、あるいはコントロール粒子または生理食塩水の注射後10分に得た。血漿を、塩化カルシウムによる活性化および凝固時間の機器測定3分前にAPTT試薬(Beckman-Coulter/lnstrumentation Laboratory)と併せた。
【0059】
イメージングおよびナノ粒子抗血栓剤の定量
6匹のマウスからの左側(作用されない)および右側(注射済)の動脈を、磁気共鳴映像法および分光法による分析のために保存した。これらのマウス3匹にPPACKナノ粒子を投与し、3匹のマウスに血栓症誘導前にブランクのナノ粒子を投与した。動脈を摘出し、生理食塩水により洗浄し、上記のような固定処理の浸漬前に残留血液を除いた。イメージングおよび分光法を、Varian 11.7T MR systemの特注の1回巻きのソレノイド型コイルを用いて実施した。動脈中のナノ粒子およびパーフルオロオクチルブロミドの標準物からの19Fシグナルを、スピンエコー分光法(3s パルス反復時間(TR)、2ms エコー時間(TE)、256のシグナル平均(NT)、13.25分の収集時間)により評価した。19Fのスピンエコーイメージ(1.3 s TR、12 ms TE、512 シグナル平均、32位相エンコーディングステップ、64周波数エンコードステップ、9mmx6mmx1 mm 視野)を得て、摘出した動脈内のナノ粒子結合を描画した。1H スピンエコーイメージ(1.5 s TR, 20 ms TE、4シグナル平均、128位相エンコードステップ、256周波数エンコードステップ、9mmx6mmx1 mm 視野、50.2mmスライス)により、動脈の解剖学的イメージとフッ素イメージの重ね合わせが可能である。
【0060】
実施例1.ナノ粒子合成
PFCナノ粒子を、カルボキシ末端PEGキャップ化脂質(図1A、1B)を含めて合成した。EDCIカップリングにより、アミド結合を、PPACKのN末端および該粒子表面上の露出カルボキシルの間に形成させた。PPACKの連結後に、ナノ粒子を、安定性の評価のために試験した。前駆体のナノ粒子は、レーザー散乱により158.0 ± 2.4 nmの流体力学的直径を有することが判った。PPACKナノ粒子は、160.5 0 ± 2.6 nmの測定可能な直径を示した(図1C)。
【0061】
PPACKカッップリング後に、該粒子の脂質表面の組成における変化が、ゼータ電位の測定により明らかとなった。PPACKカップリングの前に、該粒子は、-35.0 ± 1 .57 mVのゼータ電位を示した。PPACK添加後に、ゼータ電位は、-22.3±1.57 mVに上昇し、PPACKアルギニンは非官能化ナノエマルジョンの負のゼータ電位を低下させること以外は一致する(図1D)。
【0062】
粒子に結合しなかったPPACKを除去するための透析前ではあるが合成後に、エマルジョン中の残存非連結PPACKを、逆相液体クロマトグラフィーにより定量した。透析を行わないPPACKナノ粒子については、HPLC分析により、およそ13650のPPACKが各粒子に結合したことが示された。また、HPLCは、透析および4℃で一週間貯蔵後の該粒子と会合しなかったPPACKの量を決定したが、PPACKナノ粒子形成に関する良好な安定性を示す(図2)。
【0063】
実施例2.トロンビン阻害の反応速度および特異性
トロンビンのPPACKおよびPPACKナノ粒子阻害を、発色基質であるChromozym THに対するトロンビン活性を測定して評価した。PPACKナノ粒子または遊離PPACKいずれかとの1分間インキュベーションの後に、該基質に対するトロンビン活性は、阻害剤濃度の増加に従って単調に低下した(図3A)。該ナノ粒子に対するPPACKは、0.033 nM−1のデコイ定数を示し、遊離PPACKは0.026 nM−1のデコイ定数を示し、粒子に連結後のPPACK活性の低下がないことを示す。完全なトロンビン活性阻害は、15.5pM 粒子濃度で達成され、これは各粒子につきおよそ1000個のトロンビンの失活に対応する。
【0064】
また、Chromozym THアッセイによっても、KettnerおよびShaw(図3B)のモデルに従って、トロンビンのPPACKおよびPPACKナノ粒子阻害の反応速度を規定した。遊離PPACKについて、偽一次反応速度定数であるkaapを1.824 分−1として測定した。遊離PPACKについての二次反応速度定数を、kaap/[PPACK]=3.65x10M−1−1(KettnerおよびShawが元々、1.20x109M−1−1の定数を見出したこととは異なる[26])として概算した。該ナノ粒子に対するPPACKは、1.848 分−1のkaapを示し、4.47x10 M−1−1の二次反応速度定数を示す。阻害剤自体として見なされるPPACKナノ粒子は、6.10x1012M−1−1の二次反応速度定数を示した。即ち、血栓損傷の部位でのPPACKナノ粒子は、血栓形成の阻害において遊離PPACKよりも動力学的利点を有する。さらに、PPACK-トロンビン相互作用の反応速度は、ナノ粒子に結合したPPACKにて有意な変化を示さなかった。PPACKを用いなければ、該ナノ粒子は、トロンビン活性に対する効果を示さなかった。
【0065】
Chromozym THを使用して、PPACKおよびPPACKナノ粒子に対するプラスミン活性の応答を試験する(図4)。Chromozym THに対する80%よりも大きいプラスミン活性の阻害を、遊離PPACKおよび粒子結合阻害剤の両方について138μM PPACKにて達成した。PPACKとナノ粒子の連結は、プラスミンよりもトロンビンに対するその特異性を損なわない阻害剤に対するN末端修飾となる。
【0066】
実施例3.イン・ビボでの抗血栓効果
イン・ビボでのPPACKナノ粒子の効果に関する臨床試験において、頸動脈の血栓閉塞を、C57BL/6マウスにおいて誘導した。頸動脈の血流は、閉塞が進行につれて徐々に減弱した(図5)。閉塞までの時間は、フィブリンおよび血小板沈着についての有効性を示した。生理食塩水、ヘパリン、非官能化ナノ粒子、PPACK、またはPPACKナノ粒子を、ローズベンガル染料の注入を介したレーザー損傷を誘導する前の10分間に投与した(図6A)。生理食塩水の偽処置により、頸動脈閉塞は、染料注入後70±17分間で起こった。コントロールナノ粒子のボーラスの後に、閉塞は66±14分間で起こった。また、PPACK単独では、イン・ビトロのトロンビン阻害剤としてのその有効性にも拘わらず、イン・ビボでの血栓形成についての明白な効果を発揮せず、71±19分間の平均閉塞時間となる。PPACKに対する抗血栓薬効果の非存在は、N末端の保護がないPPACKの2.9分の報告されたクリアランス半減期の期待値および既知のイン・ビボ不安定性と一致する。
【0067】
しかし、ヘパリンは、抗血栓薬効果を十分特徴分析されており、急性血栓形成の媒介のための抗凝固剤としての標準的な選択である。ローズベンガル血栓症モデルを用いる先の臨床試験により、0.125mg/kg 動物の体重の投薬ではヘパリンについて97±18分間という閉塞時間を得た[31]。ここで、閉塞は102±13分間で起こった(図6A)。
【0068】
PPACKナノエマルジョンの1ml/kg用量により処置したマウスでは、145±13分間に二倍以上の閉塞時間であった(図6A)。ヘパリンの高用量と比較して、PPACKナノ粒子が、確立された抗凝固剤を上回った(p<0.001)。同様に、PPACKナノ粒子(p<0.001)およびヘパリン(p<0.05)の両方は、PPACK処置よりも頸動脈の閉塞までの時間を延長させた。
【0069】
コントロールナノ粒子による処置に対する活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)は、生理食塩水処置に対するAPTTとは有意な違いはなかった。PPACKナノ粒子の注射10分後、凝固時間は有意に延びた。しかし、注射20分後に採血した血液は、ほぼコントロールAPTTの値に一致した。その後の血流は、コントロール値とは有意には違わないAPTTを提供し(図6B)、長期の治療効果にもかかわらずPPACK粒子の全身効果に関する迅速な減少を示す。同様の経時変化は、尾血管のボーラス(図7)としてPPACKナノ粒子を投与した後の尾部内の出血時間の予備的測定において明らかであった。
【0070】
19F磁気共鳴映像法および分光法を使用して、PFCナノ粒子の保持を理由とする選択された動脈に存在するパーフルオロ 15-クラウン-5-エーテル(CE)NMRシグナルを評価した。図8Aは、PPACKナノ粒子で処置したマウスから摘出した閉塞動脈を表す。左側のパネルにおいて、プロトンMRIは、中心に濃い凝血塊を有する動脈の0.2mmの横断面を示す。右側パネルにおける偽色19F 1mm 投影像は、動脈内のナノ粒子含量を表す。この2つの画像の重ね合わせは、凝血塊を有する該粒子の強い共局在化を示しており、それらが凝血塊形成を阻害するよう働くPPACKナノ粒子を追跡する可能性を示唆する。
【0071】
定量的な19F分光法を用いて、6匹のマウス由来の凝血塊中にナノ粒子の取り込みを定量する(図8B)。PPACKナノ粒子で処置したマウスにおいて、損傷した動脈は、0.31±0.14 fmolを保持しており、損傷していない動脈は、0.04±0.01fmol ナノ粒子を保持した。コントロールナノ粒子で処理したマウスにおいて、損傷した動脈は、0.07±0.03 fmolを保持しており、損傷していない動脈は0.03±0.02 fmolを保持した。
【0072】
PPACKナノ粒子が血栓形成を防止するというこのメカニズムをさらに解明するために、TEMを使用して、完全に形成した血栓の微細構造を試験した。PPACKナノ粒子の処置後に形成した凝血塊において、殆ど脱顆粒していない血小板を観察した。さらに、かかる凝血塊中の血小板は、互いに緩く会合しており、十分形成した血小板凝集物における濃いパッキング事象の兆候がないことを示す。その代わりに、フィブリンゲルが、凝血塊微細構造を占めることが判った(図9A)。コントロールナノ粒子処置を行った凝血塊のTEM画像では、血小板の密接な会合および相互嵌合が明白であった。同様に、脱顆粒した血小板はこれらの血栓に多く含まれる(図9B)。
【0073】
Carstair染色を使用して、選択した凝血塊中の血小板およびフィブリンの相対量を評価した。PPACKナノ粒子処置後に形成した凝血塊の染色は、ほんの僅かな血小板の塊を伴うフィブリンの優勢を示す(図10)。コントロールナノ粒子の存在下で形成した凝血塊について、血小板染色はより濃く相互に連結していた(1.66%のPPACK処理凝血塊に対して凝血塊領域の7.28%まで)(図11)。
【0074】
実施例1−3についての考察
上記実施例の目的は、成長中の血栓に対する特有の標的化を有する治療上活性なナノ粒子を作成することであった。その活性成分として共有結合したPPACKを特徴とするPFCナノ粒子抗凝固剤を合成し、実施した。PPACK自体は抗血栓薬として臨床的に有用でないが[2, 27]、該実施例により、PPACKナノ粒子は静脈内で有効な抗凝固剤であることが示された。ローズベンガル血栓症モデルを、広範な抗凝固剤に対してその提示された感度に対して選択した。このモデルにおける動脈閉塞までの時間は、有名なトロンビン阻害剤による処置に感受性を示した[32]。ローズベンガルモデルにより、PPACKナノ粒子は出血時間に対する全身的影響を最小としながら局所的な閉塞性血栓症を遅らせることができるということが示される。
【0075】
該粒子コアにより与えられる画像造影により示されることは、該粒子が本質的に血栓症部位の範囲に制限されており、高度に標的化された治療効果を説明するということである。磁気共鳴、超音波、光学およびSPECT造影を提供するための、血栓症部位への該粒子の共局在化およびPFC粒子の広範な従前の用途を示したので[29, 33-35]、PPACKナノ粒子は、血栓症の診断上マッピングのためのツールとしての可能性を示す。凝血塊中のフィブリンについて以前に示されたとおり[36, 37]、PFCコアからの19Fのサインを、モル濃度で定量して、この場合に血栓症部位での結合の指標であるその局所濃度の正味の評価を提供する。
【0076】
官能化PFCナノ粒子の薬物動態が、薬物送達および画像適用においてかかる粒子の使用を探索する先の研究にて確立されてきた[28, 29]。これらの研究および輸血における使用についての長い歴史から[28]、イン・ビボでの安全性およびPFCエマルジョンの安定性は確立されている。共有結合した標的化リガンドの安定な付着もまた示された[38-40]。この研究の集積により、抗血栓性ナノ粒子は、循環中および血栓症が発生している部位での保持の際にその表面上に直接トロンビン阻害剤を提示する。基本的には該粒子上で異なるイン・ビボのPPACKの挙動は、延長された循環および血栓部位の封鎖両方に寄与し得る。
【0077】
PPACK粒子の存在下で形成した血栓閉塞の分析は、その治療的影響の一部として、該抗血栓薬粒子が血小板沈着に影響することを示す。該粒子は、PAR解裂を介して血小板を活性化するトロンビンの能力を阻害するようである[17-21]。Carstair染色(図10)およびTEM(図9)により評価したとおり、PPACK粒子処置後に形成した凝血塊の形態学は、僅かな血小板分布および低下した充填密度により区別される。トロンビン不活性化は、抗血小板物質治療に対して伝統的な経路ではないが、抗血小板物質活性はトロンビン標的化の有用な効果である。このように、該処置における血小板沈着の明らかな低下は、抗血栓薬および抗血小板剤の組合せとして該粒子についての可能な広い臨床学的用途の証拠となる。
【0078】
トロンビン阻害をメカニズムの基礎とした抗凝固剤は、標準的な臨床的実施に多い。中でも注目すべきは、ヘパリン結合は、抗トロンビンおよびヘパリンコファクターIIによりトロンビンの阻害を劇的に促進する[31]。しかし、抗トロンビンまたはヘパリンコファクターIIの欠失は十分に実証されている[7、41-43]。さらなる証拠は、阻害剤複合体が成長中の血栓に結合する場合に、抗トロンビンヘパリン活性は有意に低下されることを示す[44]。直接的な、高親和性、および特異的な阻害剤を用いるトロンビン阻害についての支持が近年おきている。
【0079】
特異的かつ強力な直接トロンビン阻害剤の設計は、多くの研究者から注目をあつめている。しかし、特異性、毒性、および許容できない循環半減期の問題は、多くの別の有望なリード化合物を悩ませてきた[3、45]。直接トロンビン阻害剤のなかでは、PPACKを、本明細書ではPFCナノ粒子を、複合体化するために合理的で、安価で、小さく、かつ無毒な薬剤[27]として使用した。しかし、他の既知のトロンビン阻害剤も用いることができる。非常に多くの連結基とスペーサーを有するジホスホリピドは、容易に購入できることを考慮すれば、柔軟性のある結合スキームは多い。様々な阻害剤濃度もまた試験できる。PFCナノ粒子のトロンビン阻害剤モデルは、恐らく、様々な阻害剤部分への適応により、その顕著な利点を保持するであろう。
【0080】
粒子に結合された薬剤に拘わらず、該抗血栓薬のナノ粒子は、それ自体で独特な阻害剤として作用するよう設計される。アンタゴニストを、トロンビン標的に送達するビヒクルとして機能するというよりもむしろ、該粒子は、該阻害剤上に保持し、トロンビン標的を位置決めした後に無効にしない局所的トロンビン吸着表面を維持することにより血栓形成に対して作用する。
【0081】
最近の臨床試験において、毒性(可逆的トロンビン阻害剤のキシメラガトロン[45]の場合には)または不明確な患者の発病(P2Y12 阻害剤 Ticragelor の場合には[46])の問題は、有効性および急性冠動脈症候群に使用される別の有望な抗凝固剤における分類についての疑問を引き起こしている。急性冠動脈症候群[10-12]、卒中[13]、血管の血栓症[11, 14]、およびステント留置[47, 48]における血栓症の処置のために最小毒性を有する新規の強力かつ高度に特異的な抗血栓薬についての必要性が継続して存在する。本明細書で開発された該粒子を、外来患者の経口治療への橋渡しとして役立つ改善された安全なプロファイルを有する強力でより有効な局所治療として急性処置に使用できる。
【0082】
実施例4.ビバリルジン(Bivalirudin)による官能化されたナノ粒子
ビバリルジン(Hirulog)は、特異的かつ可逆的な直接トロンビン阻害剤(DTI)である。ビバリルジンは、循環性のおよび凝血塊結合したトロンビンのアニオン結合非活性部位I(図12A)および活性部位の両方に特異的に結合することにより(図12B)トロンビンを阻害する。ビバリルジンは、間接トロンビン阻害剤、例えばヘパリンを用いて見られる多くの制限を克服する。ビバリルジンは、トロンビン媒介性の血小板活性化および凝集を阻害するが、循環性および凝血塊結合したトロンビン両方を阻害する短い合成のペプチドである。ビバリルジンは、作用の迅速な開始および短い半減期を示す。それは血漿タンパク質(トロンビン以外)または赤血球細胞に結合しない。従って、それは、予測可能な抗血栓薬応答を示す。ヘパリン誘導性の血小板減少症/ヘパリン誘導性の血栓症-血小板減少症候群(HIT/HITTS)に対するリスクがなく、抗トロンビンなどの結合コファクターを必要とせず、血小板を活性化しない。これらの特徴により、ビバリルジンは、ヘパリンに代わる理想的な代替え物となる。
【0083】
ビバリルジンを、上記実施例1−3のための材料および方法に記述した方法を用いて、N末端にてカルボキシ-PEG官能化ナノ粒子と連結した。ビバリルジンの連結後、ナノ粒子を試験して、安定性を評価し、実施例1-3に記述したPPACK粒子と同様のカップリングおよび安定な特徴を有することを見出した(図13AおよびB)。
【0084】
トロンビンのビバリルジンおよびビバリルジンナノ粒子阻害を評価し、PPACKによるトロンビン阻害を比較した(図14)。この結果は、ビバリルジンが低い活性であるが、PPACKよりもより特異的であることを示す。さらに、PPACKと同様にビバリルジン活性は、該粒子上で有意に減少しなかった。
【0085】
上記実施例1-3に記述したとおり、ビバリルジンナノ粒子のイン・ビボでの効果を測定し、PPACKナノ粒子と比較した(図15)。投与用量にて、ビバリルジンは、有意に閉塞時間を延長しないが、ビバリルジンナノ粒子は延長した。一方で、PPACKナノ粒子は、同一用量を用いた場合には両方のビバリルジン処置よりも優れていた。ビバリルジンは、フィブリン-結合トロンビン(非活性部位Iに対する活性)に対してより有効な作用を提供することが示されるとしても、ビバリルジン粒子は、トロンビンによる阻害剤の解裂により標的から離脱され易い傾向がある。
【0086】
19F磁気共鳴映像法および分光法を使用して、PFCナノ粒子の保持に起因する、選択された動脈中のパーフルオロ 15-クラウン-5-エーテル(CE)NMRシグナルの存在を評価した(図16)。
【0087】
ヒトフィブリン凝血塊を、以前に記述したとおり(Morawski AM et al (2004) 52: 1255-1262.)、トロンビンおよび500mM CaClを用いて、クエン酸血液血漿の活性化により形成した。トロンビン-標的化粒子について、凝血塊を、洗浄前および定量的19F分光法の前に、回転式プラットフォーム振盪器上で1:15希釈のエマルジョンと共に37℃で2時間インキュベートした。フィブリン標的化と同様に、凝血塊を、トロンビン標的化による37℃でアビジン-官能化ナノ粒子とインキュベーションする前に、ビオチン化1H10抗体(125ug)と共に4℃で12時間インキュベートした(図17)。
【0088】
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【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗血栓性ナノ粒子であって、該ナノ粒子の外側が、該ナノ粒子を対象に投与した後に該ナノ粒子の外側に実質的に保持される少なくとも一つの高親和性凝固阻害剤を含んでおり、該ナノ粒子が、抗血栓性であるが、該対象の血漿の凝固時間を実質的に変更させない、抗血栓性ナノ粒子。
【請求項2】
該ナノ粒子が、抗血小板剤をさらに含む、請求項1記載の抗血栓性ナノ粒子。
【請求項3】
該ナノ粒子が、抗血小板活性を有する、請求項1記載の該抗血栓性ナノ粒子。
【請求項4】
該ナノ粒子が、アンチトロンビン活性を有する、請求項1記載の抗血栓性ナノ粒子。
【請求項5】
該高親和性凝固阻害剤が、トロンビン阻害剤である、請求項1記載の抗血栓性ナノ粒子。
【請求項6】
該高親和性凝固阻害剤が、PPACKである、請求項1記載の抗血栓性ナノ粒子。
【請求項7】
抗血栓性ナノ粒子であって、該ナノ粒子の半減期が、対象において約2〜約4時間の間であり、該ナノ粒子の外側が、該ナノ粒子を対象に投与した後に該ナノ粒子の外側に実質的に保持される少なくとも一つの高親和性凝固阻害剤を含んでおり、該ナノ粒子の二次反応速度定数が、該高親和性凝固阻害剤自体の二次反応速度定数よりも大きい、抗血栓性ナノ粒子。
【請求項8】
該ナノ粒子が、抗血小板剤をさらに含む、請求項7記載の抗血栓性ナノ粒子。
【請求項9】
該ナノ粒子が、抗血小板活性を有する、請求項7記載の抗血栓性ナノ粒子。
【請求項10】
該ナノ粒子が、アンチトロンビン活性を有する、請求項7記載の抗血栓性ナノ粒子。
【請求項11】
該高親和性凝固阻害剤が、トロンビン阻害剤である、請求項7記載の抗血栓性ナノ粒子。
【請求項12】
該高親和性凝固阻害剤が、PPACKである、請求項7記載の抗血栓性ナノ粒子。
【請求項13】
下記物質を含む組成物:
a.複数の血小板、
b.フィブリン、および
c.少なくとも一つのナノ粒子、ここで該ナノ粒子の外側が、該ナノ粒子をイン・ビボで投与した後に該ナノ粒子の外側に実質的に保持される少なくとも一つの高親和性凝固阻害剤を含んでいる。
【請求項14】
ナノ粒子を対象に投与することを含む該対象における血栓形成を低下させる方法であって、該ナノ粒子の半減期が、対象において約2〜約4時間の間であり、該ナノ粒子の外側が、該ナノ粒子を対象に投与した後に該ナノ粒子の外側に実質的に保持される少なくとも一つの高親和性凝固阻害剤を含んでおり、該ナノ粒子の二次反応速度定数が、該高親和性凝固阻害剤自体の二次反応速度定数よりも大きい、方法。
【請求項15】
該ナノ粒子が、抗血小板剤をさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
該ナノ粒子が、抗血小板活性を有する、請求項14記載の方法。
【請求項17】
該ナノ粒子が、アンチトロンビン活性を有する、請求項14記載の方法。
【請求項18】
該高親和性凝固阻害剤が、トロンビン阻害剤である、請求項14記載の方法。
【請求項19】
該高親和性凝固阻害剤が、PPACKである、請求項14記載の方法。
【請求項20】
ナノ粒子を対象に投与することを含む該対象における血栓形成を予防する方法であって、該ナノ粒子の半減期は、該対象において約2〜約4時間の間であり、該ナノ粒子の外側が、該ナノ粒子を対象に投与した後に該ナノ粒子の外側に実質的に保持される少なくとも一つの高親和性凝固阻害剤を含んでおり、該ナノ粒子の二次反応速度定数が、該高親和性凝固阻害剤自体の二次反応速度定数よりも大きい、方法。
【請求項21】
該ナノ粒子が、抗血小板剤をさらに含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
該ナノ粒子が、抗血小板活性を有する、請求項20記載の方法。
【請求項23】
該ナノ粒子が、アンチトロンビン活性を有する、請求項20記載の方法。
【請求項24】
該高親和性凝固阻害剤が、トロンビン阻害剤である、請求項20記載の方法。
【請求項25】
該高親和性凝固阻害剤が、PPACKである、請求項20記載の方法。
【請求項26】
ナノ粒子を対象に投与することを含む該対象における血栓の画像化方法であって、該ナノ粒子の半減期が、対象において約2〜約4時間の間であり、該ナノ粒子の外側が、該ナノ粒子を対象に投与した後に該ナノ粒子の外側に実質的に保持される少なくとも一つの高親和性凝固阻害剤を含んでおり、該ナノ粒子の二次反応速度定数が、該高親和性凝固阻害剤自体の二次反応速度定数よりも大きい、方法。
【請求項27】
該ナノ粒子が、抗血小板剤をさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
該ナノ粒子が、抗血小板活性を有する、請求項26記載の方法。
【請求項29】
該ナノ粒子が、アンチトロンビン活性を有する、請求項26記載の方法。
【請求項30】
該高親和性凝固阻害剤が、トロンビン阻害剤である、請求項26記載の方法。
【請求項31】
該高親和性凝固阻害剤が、PPACKである、請求項26記載の方法。

【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2013−514999(P2013−514999A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544911(P2012−544911)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/061103
【国際公開番号】WO2011/084700
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(597025806)ワシントン・ユニバーシティ (26)
【氏名又は名称原語表記】Washington University
【Fターム(参考)】