説明

抗血管形成薬として有用なキナゾリン誘導体のマレイン酸塩

本発明は、AZD2171マレイン酸塩、AZD2171マレイン酸塩の具体的な結晶形、それらの製造方法、活性成分としてそれらを含有する医薬組成物、ヒトなどの温血動物での抗血管形成作用および/または血管透過性減少作用の生成に用いるための薬剤の製造におけるそれらの使用、および血管形成および/または増加した血管透過性に関連した疾患状態の処置方法におけるそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、AZD2171マレイン酸塩、AZD2171マレイン酸塩の具体的な結晶形、それらの製造方法、活性成分としてそれらを含有する医薬組成物、ヒトなどの温血動物での抗血管形成作用および/または血管透過性減少作用の生成に用いるための薬剤の製造におけるそれらの使用、および血管形成および/または増加した血管透過性に関連した疾患状態の処置方法におけるそれらの使用に関する。
【0002】
正常な血管形成は、胚発生、創傷治癒およびいくつかの雌性生殖機能成分を含めた種々の過程において重要な役割を果たしている。望ましくないまたは病的な血管形成は、糖尿病性網膜症、乾癬、癌、関節リウマチ、アテローム、カポージ肉腫および血管腫を含めた疾患状態に関連していた(Fan et al, 1995, Trends Pharmacol. Sci. 16: 57-66; Folkman, 1995, Nature Medicine 1: 27-31)。血管透過性の変化は、正常および病的双方の生理学的過程においてある役割を果たしていると考えられる(Cullinan-Bove et al, 1993, Endocrinology 133: 829-837; Senger et al, 1993, Cancer and Metastasis Reviews, 12: 303-324)。酸性および塩基性の線維芽細胞増殖因子(aFGFおよびbFGF)および血管内皮増殖因子(VEGF)を含めた、in vitro 内皮細胞増殖促進活性を有するいくつかのポリペプチドが識別された。その受容体の制限された発現によって、VEGFの増殖因子活性は、FGFのそれとは対照的に、内皮細胞に対して比較的特異性である。最近の立証は、VEGFが、正常および病的双方の血管形成(Jakeman et al, 1993, Endocrinology, 133: 848-859; Kolch et al, 1995, Breast Cancer Research and Treatment, 36:139-155)および血管透過性(Connolly et al, 1989, J. Biol. Chem. 264: 20017-20024)の重要な刺激物質であるということを示している。抗体でのVEGFの隔離によるVEGF作用の拮抗は、腫瘍成長の抑制を引き起こすことがありうる(Kim et al, 1993, Nature 362: 841-844)。
【0003】
受容体チロシンキナーゼ(RTK)は、細胞の原形質膜を越えた生化学的シグナルの伝達に重要である。これら膜貫通分子は、特徴的に、原形質膜中のセグメントを介して細胞内チロシンキナーゼドメインに連通した細胞外リガンド結合ドメインから成る。受容体へのリガンドの結合は、受容体上および他の細胞内分子上双方のチロシン残基のリン酸化に至る受容体関連チロシンキナーゼ活性の刺激を引き起こす。チロシンリン酸化におけるこれら変化は、種々の細胞応答に至るシグナリングカスケードを開始する。これまでに、アミノ酸配列相同性によって規定された少なくとも19種類の異なったRTKサブファミリーが識別された。これらサブファミリーの内の一つは、現在のところ、fms様チロシンキナーゼ受容体Flt−1、キナーゼインサートドメイン含有受容体KDR(Flk−1とも称される)および別のfms様チロシンキナーゼ受容体Flt−4によって構成されている。これら関連したRTKの内のFlt−1およびKDRの二つは、VEGFを高親和性で結合することが分かった(De Vries et al, 1992, Science 255: 989-991; Terman et al, 1992, Biochem. Biophys. Res. Comm. 1992, 187: 1579-1586)。異種細胞中で発現されたこれら受容体へのVEGFの結合は、細胞タンパク質のチロシンリン酸化状態およびカルシウムフラックスの変化に関連していた。
【0004】
VEGFは、脈管形成(vasculogenesis)および血管形成(angiogenesis)に不可欠な刺激薬である。このサイトカインは、内皮細胞増殖、プロテアーゼ発現および遊走、および引き続きの毛細管を形成する細胞の組織化を誘発することによって血管萌芽性表現型を誘発する(Keck, P.J., Hauser, S.D., Krivi, G., Sanzo, K., Warren, T., Feder, J., and Connolly, D.T., Science (Washington DC), 246: 1309-1312, 1989; Lamoreaux, W.J., Fitzgerald, M.E., Reiner, A., Hasty, K.A., and Charles, S.T., Microvasc. Res., 55: 29-42, 1998; Pepper, M.S., Montesano, R., Mandroita, S.J., Orci, L. and Vassalli, J.D., Enzyme Protein, 49: 138-162, 1996.)。更に、VEGFは、有意の血管透過性を誘発して(Dvorak, H.F., Detmar, M., Claffey, K.P., Nagy, J.A., van de Water, L., and Senger, D.R., (Int. Arch. Allergy Immunol., 107: 233-235, 1995; Bates, D.O., Heald, R.I., Curry, F.E. and Williams, B. J. Physiol. (Lond.), 533: 263-272, 2001)、病的血管形成に特徴的である高透過性未成熟血管網の形成を促進する。
【0005】
KDR単独の活性化は、内皮細胞の増殖、遊走および生存を含めたVEGFへの主要な表現型応答の全ておよび血管透過性の誘発を促進するのに充分であるということが分かった(Meyer, M., Clauss, M., Lepple-Wienhues, A., Waltenberger, J., Augustin, H.G., Ziche, M., Lanz, C., Buttner, M., Rziha, H-J., and Dehio, C., EMBO J., 18: 363-374, 1999; Zeng, H., Sanyal, S. and Mukhopadhyay, D., J. Biol. Chem., 276: 32714-32719, 2001; Gille, H., Kowalski, J., Li, B., LeCouter, J., Moffat, B, Zioncheck, T.F., Pelletier, N. and Ferrara, N., J. Biol. Chem., 276: 3222-3230, 2001)。
【0006】
VEGFの作用を抑制する化合物は、癌(白血病、多発性骨髄腫およびリンパ腫を含めた)、糖尿病、乾癬、関節リウマチ、カポージ肉腫、血管腫、急性および慢性の腎症、アテローム、動脈再狭窄、自己免疫疾患、急性炎症、過度の瘢痕形成および癒着、子宮内膜症、リンパ浮腫、不正子宮出血、および黄斑変性を含めた網膜血管増殖を伴う眼疾患のような、血管形成および/または増加した血管透過性に関連した疾患状態の処置に価値がある。
【0007】
VEGF受容体チロシンキナーゼの阻害剤であるキナゾリン誘導体は、WO00/47212号に記載されている。その化合物AZD2171は、WO00/47212号に示されるが(実施例240を参照されたい)、式I:
【0008】
【化1】

【0009】
を有する4−((4−フルオロ−2−メチル−1H−インドール−5−イル)オキシ)−6−メトキシ−7−(3−(ピロリジン−1−イル)プロポキシ)キナゾリンである。
AZD2171は、WO00/47212号および以下に記載されている in vitro の(a)酵素検定および(b)HUVEC検定において優れた活性を示す。酵素検定における単離されたKDR(VEGFR−2)およびFlt−1(VEGFR−1)チロシンキナーゼ活性の阻害についてのAZD2171のIC50値は、それぞれ、<2nMおよび5±2nMであった。AZD2171は、VEGFに刺激された内皮細胞増殖を強力に抑制するが(HUVEC検定において0.4±0.2nMのIC50値)、基底内皮細胞増殖を、>1250倍を超える濃度においてあまり抑制しない(IC50値は>500nMである)。以下に記載の in vivo の(c)充実性腫瘍モデルにおけるCalu−6腫瘍異種移植片の成長は、1.5mg/kg/日、3mg/kg/日および6mg/kg/日のAZD2171での1日1回経口処置の28日後に、それぞれ、49%**、69%***および91%***抑制された(P**<0.01、P***<0.0001;片側t検定)。
【0010】
薬学的に活性な化合物のより安定な形、例えば、より安定な結晶形は、商業規模での製剤化および加工に好適である。これは、用いられる形の安定性が大きいほど、圧縮などの製剤化手順の際にそれが別の形へと変換するリスクが少ないという理由のためである。これは、順次、錠剤の溶解速度、活性成分のバイオアベイラビリティーのような最終製剤の性質についてより大きい予測可能性を与える。より安定な形の活性成分を用いることは、製剤の物理的性質へのより大きい制御を可能にする。
【0011】
AZD2171遊離塩基(4−((4−フルオロ−2−メチル−1H−インドール−5−イル)オキシ)−6−メトキシ−7−(3−(ピロリジン−1−イル)プロポキシ)キナゾリン)は、周囲条件下において結晶性一水和物である。示差走査熱量測定(DSC)分析は、以下に記載の方法にしたがって行われたが、水の減少および融解のために、95℃〜170℃の大きく広範な吸熱を示す(図1)。熱重量測定(TGA)分析(詳細は以下に与えられる)は、80℃〜115℃の間に4.02%の重量減少を示す(図1)。カール・フィッシャー水分分析詳細は以下に与えられる)は、3.9%の数値を生じ、重量減少が全て、水分減少のためであるということを示唆している。
【0012】
DSCの開始/ピーク温度値は、試験機毎にまたは試料毎に僅かに異なることがありうるので、引用された値は、絶対値として解釈されるべきではないということは理解されるであろう。
【0013】
AZD2171遊離塩基は、CuKa放射線を用いて測定された次の2θ値、すなわち、18.3および20.8の内の少なくとも一つを与えることを特徴とする。AZD2171遊離塩基は、図2のようなX線粉末回折図形を与えることを特徴とする。10個の最も顕著なピークを、表1に示す。
【0014】
【表1】

【0015】
AZD2171遊離塩基の試料を、例えば、100℃に加熱することで脱水する場合、その試料は、非晶質になり(図3)、その後、再水和することはないが、以後、非晶質状態のままであるということが判明した。これは、AZD2171遊離塩基が医薬組成物として製剤化された場合、AZD2171遊離塩基は、ある種の工程、例えば、粒度減少(ミリングなど)、バルク薬物の乾燥、製剤化、製造の際に脱水されうるという理由で、問題でありうる。AZD2171遊離塩基を医薬組成物として製剤化するためには、ある時点で粒度を減少させることが必要であると考えられ、これには、脱水のリスクがあり、したがって、非晶質材料の形成のリスクがあると考えられる。これは、AZD2171遊離塩基一水和物の試料に、超微粉砕による粒度減少を施した後、それを、非晶質材料を探すために分析することによって調べられた。図4は、非晶質材料が、AZD2171遊離塩基の粒度減少の際に実際に形成するということを示している。これは、ピークが幅広になること、および非晶質「こぶ(hump)」の形成によって示される。図4を参照されたい。非晶形または半非晶形のAZD2171遊離塩基は、製造上の問題および再現性のないバイオアベイラビリティーを生じることがありうる。
【0016】
遊離塩基とは異なる形および改善された固体状態性質を有する形である別の形のAZD2171の識別は、本発明の課題である。
異なった形の例は、AZD2171の塩である。WO00/47212号において、その発明の化合物の薬学的に許容しうる塩は、このような塩を形成するのに十分に塩基性であるそれら発明の化合物の酸付加塩を包含しうるということが述べられている。このような酸付加塩は、ハロゲン化水素、特に、塩酸または臭化水素酸、または硫酸またはリン酸、またはトリフルオロ酢酸、クエン酸またはマレイン酸のような、薬学的に許容しうる陰イオンを与える無機酸または有機酸との塩を包含すると述べられている。更に、WO00/47212号は、その発明の化合物が十分に酸性である場合、薬学的に許容しうる塩は、薬学的に許容しうる陽イオンを与える無機塩基または有機塩基で形成されてよいということを続けて述べている。無機塩基または有機塩基でのこのような塩は、ナトリウム塩またはカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩またはマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、または例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ピペリジン、モルホリンまたはトリス−(2−ヒドロキシエチル)アミンとの塩を包含すると述べられている。
【0017】
WO00/47212号にある好適な塩は、塩酸塩および臭化水素酸塩、特に、塩酸塩である。
WO00/47212号には、その具体的な化合物の具体的な塩が、驚くほど有益な性質を有するであろうということは、どこにも述べられていない。
【0018】
意外にも且つ驚くべきことに、本発明者は、ここで、AZD2171のマレイン酸塩が、遊離塩基にも、調べられた他の塩にもまさる改善された固体状態性質を有する好都合に安定な形のAZD2171であるということを発見した。
【0019】
AZD2171マレイン酸塩は、容易に結晶化され、きわめて結晶性で非吸湿性であり、そして1:1の薬物対対イオンの再現性のある化学量論的比率を有する。
したがって、AZD2171マレイン酸塩は、容易に結晶化され、きわめて結晶性で非吸湿性であり、そして約1:1の薬物対対イオンの再現性のある化学量論的比率を有する。
【0020】
AZD2171のいくつかの塩を製造したが、7種類、すなわち、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、アジピン酸塩およびリンゴ酸塩は、結晶性であることが判明した。これら7種類の塩の固体状態性質を調べたが、それら結果を表2に示す。
【0021】
【表2】

【0022】
「非吸湿性」という用語は、80%RHにおいて<1%の水分を吸収することを意味する。
AZD2171マレイン酸塩は、驚くべきことに、結晶化することが可能であったそれら7種類の塩の内で、唯一の非吸湿性塩であり、きわめて結晶性であり、そして1:1の薬物対対イオンの再現性のある化学量論的比率を有するということで、他のものより優れていた。
【0023】
したがって、AZD2171マレイン酸塩は、唯一の非吸湿性塩であり、きわめて結晶性であり、そして約1:1の薬物対対イオンの再現性のある化学量論的比率を有するということが判明した。
【0024】
AZD2171マレイン酸塩は、非晶質材料を実質的に含まないので、AZD2171遊離塩基よりも製剤化するのが容易であり且つ一層再現性のある投与結果を与えると予想されうる。「非晶質材料を実質的に含まない」により、非晶質材料の量が、10%未満、好ましくは、5%未満、より好ましくは、2%未満であることを意味する。
【0025】
AZD2171マレイン酸塩は、非吸湿性であり、超微粉砕などの手順の際に活性成分の重量変化に関連したいずれかの問題を予防するまたは減少させるべきである。
本発明により、AZD2171のマレイン酸塩を提供する。AZD2171マレイン酸塩は、A形およびB形の二つの結晶形を有する。
【0026】
本発明により、第一結晶形であるA形のAZD2171のマレイン酸塩を提供する。
AZD2171マレイン酸塩A形は、CuKa放射線を用いて測定された次の2θ値、すなわち、21.5および16.4の内の少なくとも一つを与えることを特徴とする。AZD2171マレイン酸塩A形は、実質的には図5に示されるようなX線粉末回折図形を与えることを特徴とする。10個の最も顕著なピークを、表3に示す。
【0027】
【表3】

【0028】
本発明により、第一結晶形であるA形のAZD2171のマレイン酸塩であって、約2θ=21.5°に少なくとも一つの特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する塩を提供する。
【0029】
本発明により、第一結晶形であるA形のAZD2171のマレイン酸塩であって、約2θ=16.4°に少なくとも一つの特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する塩を提供する。
【0030】
本発明により、第一結晶形であるA形のAZD2171のマレイン酸塩であって、約2θ=21.5°および16.4°に少なくとも二つの特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する塩を提供する。
【0031】
本発明により、第一結晶形であるA形のAZD2171のマレイン酸塩であって、約2θ=21.5°、16.4°、24.4°、20.7°、25.0°、16.9°、12.1°、22.2°、17.4°および17.6°に特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する塩を提供する。
【0032】
本発明により、第一結晶形であるA形のAZD2171のマレイン酸塩であって、図5に示されるX線粉末回折図形と実質的に同じX線粉末回折図形を有する塩を提供する。
本発明により、第一結晶形であるA形のAZD2171のマレイン酸塩であって、2θ=21.5°プラスまたはマイナス0.5°2θに少なくとも一つの特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する塩を提供する。
【0033】
本発明により、第一結晶形であるA形のAZD2171のマレイン酸塩であって、2θ=16.4°プラスまたはマイナス0.5°2θに少なくとも一つの特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する塩を提供する。
【0034】
本発明により、第一結晶形であるA形のAZD2171のマレイン酸塩であって、2θ=21.5°および16.4°(これら値は、プラスまたはマイナス0.5°2θであってよい)に少なくとも二つの特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する塩を提供する。
【0035】
本発明により、第一結晶形であるA形のAZD2171のマレイン酸塩であって、2θ=21.5°、16.4°、24.4°、20.7°、25.0°、16.9°、12.1°、22.2°、17.4°および17.6°(これら値は、プラスまたはマイナス0.5°2θであってよい)に特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する塩を提供する。
【0036】
本発明により、第一結晶形であるA形のAZD2171のマレイン酸塩であって、2θ=21.5°に少なくとも一つの特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する塩を提供する。
【0037】
本発明により、第一結晶形であるA形のAZD2171のマレイン酸塩であって、2θ=16.4°に少なくとも一つの特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する塩を提供する。
【0038】
本発明により、第一結晶形であるA形のAZD2171のマレイン酸塩であって、2θ=21.5°および16.4°に少なくとも二つの特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する塩を提供する。
【0039】
本発明により、第一結晶形であるA形のAZD2171のマレイン酸塩であって、2θ=21.5°、16.4°、24.4°、20.7°、25.0°、16.9°、12.1°、22.2°、17.4°および17.6°に特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する塩を提供する。
【0040】
本発明により、第一結晶形であるA形のAZD2171のマレイン酸塩であって、図5に示されるようなX線粉末回折図形を有する塩を提供する。
DSC分析は、AZD2171マレイン酸塩A形が、198.3℃に融解開始および200.08℃にピークを有する高融点固体であることを示している(図6)。
【0041】
したがって、DSC分析は、AZD2171マレイン酸塩A形が、約198.3℃に融解開始および約200.08℃にピークを有する高融点固体であることを示している。
本発明により、第二結晶形であるB形のAZD2171のマレイン酸塩を提供する。
【0042】
AZD2171マレイン酸塩B形は、CuKa放射線を用いて測定された次の2θ値、すなわち、24.2および22.7の内の少なくとも一つを与えることを特徴とする。AZD2171マレイン酸塩B形は、実質的には図8に示されるようなX線粉末回折図形を与えることを特徴とする。10個の最も顕著なピークを、表4に示す。
【0043】
【表4】

【0044】
本発明により、第二結晶形であるB形のAZD2171のマレイン酸塩であって、約2θ=24.2°に少なくとも一つの特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する塩を提供する。
【0045】
本発明により、第二結晶形であるB形のAZD2171のマレイン酸塩であって、約2θ=22.7°に少なくとも一つの特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する塩を提供する。
【0046】
本発明により、第二結晶形であるB形のAZD2171のマレイン酸塩であって、約2θ=24.2°および22.7°に少なくとも二つの特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する塩を提供する。
【0047】
本発明により、第二結晶形であるB形のAZD2171のマレイン酸塩であって、約2θ=24.2°、22.7°、15.7°、12.0°、27.1°、25.0°、17.7°、15.0°、23.1°および12.6°に特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する塩を提供する。
【0048】
本発明により、第二結晶形であるB形のAZD2171のマレイン酸塩であって、図8に示されるX線粉末回折図形と実質的に同じX線粉末回折図形を有する塩を提供する。
本発明により、第二結晶形であるB形のAZD2171のマレイン酸塩であって、2θ=24.2°プラスまたはマイナス0.5°2θに少なくとも一つの特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する塩を提供する。
【0049】
本発明により、第二結晶形であるB形のAZD2171のマレイン酸塩であって、2θ=22.7°プラスまたはマイナス0.5°2θに少なくとも一つの特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する塩を提供する。
【0050】
本発明により、第二結晶形であるB形のAZD2171のマレイン酸塩であって、2θ=24.2°および22.7°(これら値は、プラスまたはマイナス0.5°2θであってよい)に少なくとも二つの特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する塩を提供する。
【0051】
本発明により、第二結晶形であるB形のAZD2171のマレイン酸塩であって、2θ=24.2°、22.7°、15.7°、12.0°、27.1°、25.0°、17.7°、15.0°、23.1°および12.6°(これら値は、プラスまたはマイナス0.5°2θであってよい)に特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する塩を提供する。
【0052】
本発明により、第二結晶形であるB形のAZD2171のマレイン酸塩であって、2θ=24.2°に少なくとも一つの特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する塩を提供する。
【0053】
本発明により、第二結晶形であるB形のAZD2171のマレイン酸塩であって、2θ=22.7°に少なくとも一つの特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する塩を提供する。
【0054】
本発明により、第二結晶形であるB形のAZD2171のマレイン酸塩であって、2θ=24.2°および22.7°に少なくとも二つの特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する塩を提供する。
【0055】
本発明により、第二結晶形であるB形のAZD2171のマレイン酸塩であって、2θ=24.2°、22.7°、15.7°、12.0°、27.1°、25.0°、17.7°、15.0°、23.1°および12.6°に特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する塩を提供する。
【0056】
本発明により、第二結晶形であるB形のAZD2171のマレイン酸塩であって、図8に示されるようなX線粉末回折図形を有する塩を提供する。
DSC分析は、AZD2171マレイン酸塩B形が、194.43℃に融解開始および195.97℃にピークを有する高融点固体であることを示している(図9)。
【0057】
したがって、DSC分析は、AZD2171マレイン酸塩B形が、約194.43℃に融解開始および約195.97℃にピークを有する高融点固体であることを示している。
B形は、A形に関して準安定性である(B形の融点および融解熱は、A形のそれらより低い)。A形は、熱力学的に一層安定な形である。A形およびB形の混合物は、メタノール中において40℃で4日間スラリーにすると、A形へと変換する(図10)。
【0058】
A形は、B形より好適である。
AZD2171マレイン酸塩は、非吸湿性であり、80%相対湿度において<1%の水分を吸収する(図7)。
【0059】
NMR詳細は、実施例1のマレイン酸塩製造後に与えられており、1:1の比率の化学量論データについて示している。
本発明の別の側面により、AZD2171の二マレイン酸塩を提供する。二マレイン酸塩は、2モルのマレイン酸を1モルのAZD2171遊離塩基に加えることによって形成することができる。
【0060】
本発明が、AZD2171遊離塩基、またはAZD2171マレイン酸塩A形またはAZD2171マレイン酸塩B形の結晶形に関すると述べられている場合、その結晶化度は、好都合には、約60%を超える、より好都合には、約80%を超える、好ましくは、約90%を超える、そしてより好ましくは、約95%を超える。最も好ましくは、結晶化度は約98%を超える。
【0061】
AZD2171マレイン酸塩A形およびB形は、図5および図8にそれぞれ示されるX線粉末回折図形と実質的に同じX線粉末回折図形を与え、そして実質的には、表3および表4にそれぞれ示される10個の最も顕著なピーク(2θ値角度)を有する。X線粉末回折図形の2θ値は、試験機毎にまたは試料毎に僅かに異なることがありうるので、引用された値は、絶対値として解釈されるべきではないということは理解されるであろう。
【0062】
X線粉末回折図形は、測定条件(用いられる装置または試験機など)に依存して一つまたはそれを超える測定誤差を有するが、入手することができるということが知られている。具体的には、概して、X線粉末回折図形の強度は、測定条件に依存して変動することがありうるということが知られている。したがって、本発明のAZD2171マレイン酸塩形は、図5および図8に示されるX線粉末回折図形と同一のX線粉末回折図形を与える結晶、および本発明の範囲内にある図5および図8に示されるのと実質的に同じX線粉末回折図形を与えるいずれかの結晶に制限されるわけではない。X線粉末回折の当業者は、X線粉末回折図形の実質的同一性を判断することができる。
【0063】
X線粉末回折の当業者は、ピークの相対強度が、例えば、試料の分析に影響することがありうる約30ミクロンを超えるサイズの粒子および統一されていないアスペクト比によって影響されることがありうるということを理解するであろう。当業者は、更に、反射位置が、回折計中の試料がある正確な高さおよび回折計のゼロ検定によって影響されることがありうるということを理解するであろう。試料表面の平坦さも、僅かに作用することがありうる。したがって、提示された回折図形データを、絶対値と見なすことはない。(Jenkins, R & Snyder, R.L. ‘Introduction to X-Ray Powder Diffractometry’ John Wiley & Sons 1996; Bunn, C.W. (1948), Chemical Crystallography, Clarendon Press, London; Klug, H. P. & Alexander, L. E. (1974), X-Ray Diffraction Procedures)。
【0064】
概して、X線粉末ディフラクトグラムにおける回折角の測定誤差は、約5%またはそれ未満、具体的には、プラスまたはマイナス0.5°2θであり、このような程度の測定誤差は、図2、図3、図4、図5、図8および図10のX線粉末回折図形を考える場合、および表1、表3および表4を読み取る場合、考慮されるべきである。更に、強度は、実験条件および試料製造(好適な配向)に依存して変動することがありうるということは理解されるはずである。
【0065】
疑わしさを免れるために、「AZD2171マレイン酸塩」および「AZD2171のマレイン酸塩」などの用語は、AZD2171マレイン酸塩の各々のおよびあらゆる形を意味するが、「AZD2171マレイン酸塩A形」は、A形として知られる具体的な結晶形を意味し、「AZD2171マレイン酸塩B形」は、B形として知られる具体的な結晶形を意味する。
【0066】
本発明のもう一つの側面により、医薬組成物であって、本明細書中の前に定義のAZD2171マレイン酸塩を、薬学的に許容しうる賦形剤または担体と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0067】
その組成物は、経口投与用に(例えば、錠剤、舐剤、硬または軟カプセル剤、水性または油状の懸濁剤、乳剤、分散性の散剤または顆粒剤、シロップ剤またはエリキシル剤として)、吸入による投与に(例えば、微粉散剤または液状エアゾル剤として)、吹入による投与に(例えば、微粉散剤として)、非経口注射用に(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、血管内または注入投与用の滅菌液剤、懸濁剤または乳剤として)、局所投与用に(例えば、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、または水性または油状の液剤または懸濁剤として)、または直腸投与用に(例えば、坐剤として)適した形であってよい。好ましくは、AZD2171マレイン酸塩は経口投与される。概して、上の組成物は、慣用的な賦形剤を用いて慣用的な方式で製造することができる。
【0068】
本発明のそれら組成物は、好都合には、単位剤形で与えられる。AZD2171マレイン酸塩は、通常は、温血動物に、その動物の体表面積1平方メートルにつき1〜50mgの範囲内、例えば、ヒトの場合、約0.03〜1.5mg/kgの単位用量で投与されるであろう。例えば、0.01〜1.5mg/kg、例えば、0.05〜0.75mg/kg、好ましくは、0.03〜0.5mg/kgの範囲内の単位用量が考えられるが、これは、通常は、治療的有効量である。錠剤またはカプセル剤などの単位剤形は、通常、例えば、1〜50mgの活性成分を含有するであろう。好ましくは、0.03〜0.5mg/kgの範囲内の1日用量を用いる。特定の疾患状態の治療的または予防的処置に必要な用量サイズは、必然的に、処置される宿主、投与経路および処置されている疾患の重症度に依存して異なるであろう。したがって、最適投与量は、いずれか特定の患者を処置している医療の実務者が決定してよい。
【0069】
本発明のもう一つの側面により、療法によるヒトまたは動物体の処置方法で用いるための、本明細書中の前に定義のAZD2171マレイン酸塩を提供する。
本発明のもう一つの特徴は、薬剤として用いるための、本明細書中の前に定義のAZD2171マレイン酸塩、好都合には、ヒトなどの温血動物で抗血管形成作用および/または血管透過性減少作用を生じるための薬剤として用いるための、本明細書中の前に定義のAZD2171マレイン酸塩である。
【0070】
したがって、本発明のもう一つの側面により、ヒトなどの温血動物での抗血管形成作用および/または血管透過性減少作用の生成に用いるための薬剤の製造における、本明細書中の前に定義のAZD2171マレイン酸塩の使用を提供する。
【0071】
本発明のもう一つの特徴により、抗血管形成作用および/または血管透過性減少作用を生じる処置を必要としているヒトなどの温血動物において抗血管形成作用および/または血管透過性減少作用を生じる方法であって、その動物に、有効量の本明細書中の前に定義のAZD2171マレイン酸塩を投与することを含む方法を提供する。
【0072】
AZD2171マレイン酸塩は、抗血管形成薬および/または血管透過性減少性薬であり、単独療法として用いることができし、またはAZD2171マレイン酸塩に加えて、一つまたはそれを超える他の物質および/または処置を伴うことができる。このような共同処置は、その処置の個々の成分の同時の、逐次的なまたは別々の投与によって達成することができる。医学腫瘍学の分野において、各々の癌患者を処置するのに、異なった形の処置の組合せを用いることは、通常の慣例である。医学腫瘍学において、AZD2171マレイン酸塩に加えたこのような共同処置の一つまたは複数の他の成分は、外科手術、放射線療法または化学療法であってよい。このような化学療法は、次の3種類の主なカテゴリーの治療薬を包含することができる。
【0073】
(i)他の抗血管形成薬であって、血管内皮増殖因子の作用を抑制するもの(例えば、抗血管内皮細胞増殖因子抗体ベヴァシズマブ(bevacizumab)[AvastinTM]、および本明細書中の前に定義のものとは異なった機構によって作用するもの(例えば、リノマイド(linomide)、インテグリンαvβ3機能の阻害剤、アンギオスタチン(angiostatin)、ラゾキシン(razoxin)、サリドマイド)、および血管標的指向薬(例えば、リン酸コンブレタスタチン(combretastatin phosphate)、および国際特許出願WO00/40529号、WO00/41669号、WO01/92224号、WO02/04434号およびWO02/08213号に開示された化合物、および文書の開示がそのまま本明細書中に援用される国際特許出願公開WO99/02166号に記載の血管損傷性薬(例えば、N−アセチルコルチノール−O−ホスフェート))を含めたものなど;
(ii)細胞分裂抑制薬であって、抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン、トレミフェン(toremifene)、ラロキシフェン(raloxifene)、ドロロキシフェン(droloxifene)、ヨードキシフェン(iodoxyfene))、エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(例えば、フルヴェストラント(fulvestrant))、プロゲストゲン(例えば、酢酸メゲストロール)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール(anastrozole)、レトラゾール(letrazole)、ボラゾール(vorazole)、エクセメスタン(exemestane))、抗プロゲストゲン、抗アンドロゲン(例えば、フルタミド、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、酢酸シプロテロン)、LHRHアゴニストおよびアンタゴニスト(例えば、酢酸ゴセレリン、ルプロリド(luprolide)、ブセレリン(buserelin))、5α−レダクターゼの阻害剤(例えば、フィナステリド)、抗浸潤薬(例えば、マリマスタト(marimastat)のようなメタロプロテイナーゼ阻害剤およびウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター受容体機能の阻害剤)、および増殖因子機能の阻害剤(このような増殖因子には、例えば、血小板由来増殖因子および肝細胞増殖因子が含まれる)であって、増殖因子抗体、増殖因子受容体抗体(例えば、抗erbb2抗体トラスツズマブ[HerceptinTM]および抗erbb1抗体セツキシマブ(cetuximab)[C225])、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、上皮増殖因子ファミリーの阻害剤(例えば、N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシ−6−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン−4−アミン(ゲフィチニブ(gefitinib),AZD1839)、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−4−アミン(エルロチニブ(erlotinib),OSI−774)および6−アクリルアミド−N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン−4−アミン(CI 1033)などのEGFRファミリーチロシンキナーゼ阻害剤)およびセリン/トレオニンキナーゼ阻害剤)が含まれるこのような阻害剤など;および
(iii)医学腫瘍学で用いられるような増殖抑制薬/抗腫瘍薬およびそれらの組合せであって、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサートのような葉酸拮抗薬、5−フルオロウラシルのようなフルオロピリミジン類、テガフル、プリンおよびアデノシン類似体、シトシンアラビノシド);抗腫瘍抗生物質(例えば、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシンおよびイダルビシン(idarubicin)のようなアントラサイクリン系、マイトマイシンC、ダクチノマイシン、ミトラマイシン);白金誘導体(例えば、シスプラチン、カルボプラチン);アルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソ尿素、チオテパ);有糸分裂阻止薬(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン(vinorelbine)のようなビンカアルカロイド類、およびタキソールおよびタキソテールのようなタキソイド類(taxoids));トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシドおよびテニポシドのようなエピポドフィロトキシン類、アムサクリン、トポテカン(topotecan)、カンプトテシン、そして更に、イリノテカン(irinotecan));更に、酵素(例えば、アスパラギナーゼ);およびチミジル酸シンターゼ阻害剤(例えば、ラルチトレキセド(raltitrexed))のようなもの。
そして追加のタイプの化学療法薬には、次が含まれる。
【0074】
(iv)生体応答調節剤(例えば、インターフェロン);
(v)抗体(例えば、エドレコロマブ(edrecolomab));
(vi)アンチセンス療法、例えば、ISIS2503、抗rasアンチセンスのような、上に挙げられた標的に向けられているもの;
(vii)遺伝子治療アプローチであって、例えば、異常p53または異常BRCA1またはBRCA2のような異常遺伝子を置き換えるアプローチ;シトシンデアミナーゼ、チミジンキナーゼまたは細菌ニトロレダクターゼ酵素を用いたものなどのGDEPT(遺伝子に支配される酵素プロドラッグ療法(gene-directed enzyme pro-drug therapy))アプローチ;および多剤耐性遺伝子治療のような、化学療法または放射線療法への患者耐性を増加させるアプローチを含めたもの;および
(viii)免疫療法アプローチであって、例えば、インターロイキン2、インターロイキン4または顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子などのサイトカインでのトランスフェクションのような、患者腫瘍細胞の免疫原性を増加させる ex-vivo および in vivo アプローチ;T細胞アネルギーを減少させるアプローチ;サイトカインでトランスフェクションされた樹状細胞のような、トランスフェクションされた免疫細胞を用いたアプローチ;サイトカインでトランスフェクションされた腫瘍細胞系を用いたアプローチ;および抗イディオタイプ抗体を用いたアプローチを含めたもの。
【0075】
例えば、このような共同処置(conjoint treatment)は、本明細書中の前に定義のAZD2171マレイン酸塩と、WO99/02166号に記載のN−アセチルコルチノール−O−ホスフェート(WO99/02166号の実施例1)のような血管標的指向薬の、同時の、逐次的なまたは別々の投与によって達成することができる。
【0076】
WO01/74360号により、抗血管形成薬は、抗高血圧症薬と組み合わせることができるということが知られている。本発明の塩も、抗高血圧症薬との組合せで投与することができる。抗高血圧症薬は、血圧を低下させる物質であり、本明細書中に援用されるWO01/74360号を参照されたい。
【0077】
したがって、本発明により、血管形成に関連した疾患状態の処置方法であって、ヒトなどの温血動物への、本明細書中の前に定義のAZD2171マレイン酸塩と抗高血圧症薬との組合せの有効量の投与を含む方法を提供する。
【0078】
本発明のもう一つの特徴により、ヒトなどの温血動物の血管形成に関連した疾患状態の処置用の薬剤の製造に用いるための、本明細書中の前に定義のAZD2171マレイン酸塩と抗高血圧症薬との組合せの使用を提供する。
【0079】
本発明のもう一つの特徴により、ヒトなどの温血動物の血管形成に関連した疾患状態の処置用の医薬組成物であって、本明細書中の前に定義のAZD2171マレイン酸塩および抗高血圧症薬を含む医薬組成物を提供する。
【0080】
本発明のもう一つの側面により、ヒトなどの温血動物において抗血管形成作用および/または血管透過性減少作用を生じる方法であって、その動物に、有効量の本明細書中の前に定義のAZD2171マレイン酸塩および抗高血圧症薬を投与することを含む方法を提供する。
【0081】
本発明のもう一つの側面により、ヒトなどの温血動物で抗血管形成作用および/または血管透過性減少作用を生じる薬剤の製造のための、本明細書中の前に定義のAZD2171マレイン酸塩と抗高血圧症薬との組合せの使用を提供する。
【0082】
好ましい抗高血圧症薬は、カルシウムチャンネル遮断薬、アンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害剤)、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト(A−IIアンタゴニスト)、利尿薬、βアドレナリン受容体遮断薬(β遮断薬)、血管拡張薬およびαアドレナリン受容体遮断薬(α遮断薬)である。具体的な抗高血圧症薬は、カルシウムチャンネル遮断薬、アンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害剤)、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト(A−IIアンタゴニスト)およびβアドレナリン受容体遮断薬(β遮断薬)、特に、カルシウムチャンネル遮断薬である。
【0083】
上述のように、AZD2171マレイン酸塩は、その抗血管形成作用および/または血管透過性減少作用について興味深い。AZD2171マレイン酸塩は、癌、糖尿病、乾癬、関節リウマチ、カポージ肉腫、血管腫、リンパ浮腫、急性および慢性の腎症、アテローム、動脈再狭窄、自己免疫疾患、急性炎症、過度の瘢痕形成および癒着、子宮内膜症、不正子宮出血、および加齢性黄斑変性を含めた網膜血管増殖を伴う眼疾患を含めた広範囲の疾患状態に有用であると考えられる。癌は、いずれの組織にも影響することがありうるが、それには、白血病、多発性骨髄腫およびリンパ腫が含まれる。具体的には、本発明のこのような化合物は、例えば、結腸、乳房、前立腺、肺および皮膚の原発性および再発性の充実性腫瘍の成長を好都合に遅らせると考えられる。より具体的には、本発明のこのような化合物は、白血病、多発性骨髄腫およびリンパ腫を含めた、VEGFに関連したいずれかの形の癌を抑制する、そして更には、例えば、結腸、乳房、前立腺、肺、脳、外陰部および皮膚のある種の腫瘍を含めた、例えば、VEGFに関連している原発性および再発性の充実性腫瘍、特に、成長および拡散についてVEGFに有意に依存している腫瘍の成長を抑制すると考えられる。
【0084】
治療薬中でのそれらの使用に加えて、本明細書中の前に定義のAZD2171マレイン酸塩は、更に、新しい治療薬の追求の一部分として、ネコ、イヌ、ウサギ、サル、ラットおよびマウスなどの実験動物でのVEGF受容体チロシンキナーゼ活性の阻害剤の作用を評価するための in vitro および in vivo 試験システムの開発および規格化において薬理学的手段として有用である。
【0085】
WO00/47212号に記載され且つAZD2171を調べるのに用いられた検定は、次の通りである。
(a)in vitro 受容体チロシンキナーゼ阻害試験
この検定は、チロシンキナーゼ活性を抑制する試験化合物の能力を決定する。VEGF、FGFまたはEGF受容体細胞質ドメインをコードしているDNAは、全遺伝子合成(total gene synthesis)(Edwards M, International Biotechnology Lab 5(3), 19-25, 1987)によってまたはクローニングによって得ることができる。次に、これらを、適する発現系において発現させて、チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチドを得ることができる。例えば、VEGF、FGFおよびEGF受容体細胞質ドメインを、昆虫細胞中の組換えタンパク質の発現によって得たが、それらは、固有のチロシンキナーゼ活性を示すことが判明した。VEGF受容体Flt−1(Genbank 受託番号X51602)の場合、Shibuya et al(Oncogene, 1990, 5: 519-524)によって記載された、細胞質ドメインの大部分をコードし、メチオニン783で開始し、そして終止コドンを包含している1.7kb DNAフラグメントを、cDNAより単離し、バキュロウイルストランスプレースメントベクター(transplacement vector)(例えば、pAcYM1(The Baculovirus Expression System: A Laboratory Guide, L.A. King and R. D. Possee, Chapman and Hall, 1992 を参照されたい)またはpAc360またはpBlueBacHis(Invitrogen Corporation より入手可能))中にクローン化した。この組換えコンストラクトを、昆虫細胞(例えば、スポドプテラ・フルジペルダ21(Spodoptera frugiperda 21)(Sf21))中にウイルスDNA(例えば、Pharmingen BaculoGold)と共トランスフェクションして、組換えバキュロウイルスを製造した。(組換えDNA分子のアセンブリー方法および組換えバキュロウイルスの製造および使用についての詳細は、標準的な教本、例えば、Sambrook et al, 1989, Molecular cloning - A Laboratory Manual, 2nd edition, Cold Spring Harbour Laboratory Press and O'Reilly et al, 1992, Baculovirus Expression Vectors - A Laboratory Manual, W. H. Freeman and Co, New York に見出されうる)。KDR(Genbank 受託番号L04947)について、メチオニン806より開始する細胞質フラグメントを、同様の方式でクローン化し且つ発現させた。
【0086】
cFlt−1チロシンキナーゼ活性の発現について、Sf21細胞に、プラーク純粋(plaque-pure)cFlt−1組換えウイルスを3の感染多重度で感染させ、48時間後に採取した。採取された細胞を、氷冷リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(10mMリン酸ナトリウムpH7.4、138mM塩化ナトリウム、2.7mM塩化カリウム)で洗浄後、氷冷HNTG/PMSF(20mM Hepes pH7.5、150mM塩化ナトリウム、10%v/vグリセロール、1%v/v Triton X100、1.5mM塩化マグネシウム、1mMエチレングリコールビス(βアミノエチルエーテル)N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、1mM PMSF(フェニルメチルスルホニルフルオリド);PMSFは、新たに調製されたメタノール中100mM溶液より、使用直前に加える)中に、1000万個の細胞につき1mlのHNTG/PMSFを用いて再懸濁させた。その懸濁液を、4℃において13,000rpmで10分間遠心分離し、上澄み(酵素原液)を取り出し、−70℃においてアリコートで貯蔵した。酵素原液の新しいバッチ各々を、検定において、酵素希釈剤(100mM Hepes pH7.4、0.2mMオルトバナジン酸ナトリウム、0.1%v/v Triton X100、0.2mMジチオトレイトール)での稀釈によって滴定した。典型的なバッチについて、原液酵素を酵素希釈剤で1/2000に稀釈し、そして50μlの希薄酵素を、各々の検定ウェルに用いる。
【0087】
基質溶液の原液を、チロシンを含有するランダムコポリマー、例えば、ポリ(Glu,Ala,Tyr)6:3:1(Sigma P3899)より調製し、PBS中の1mg/ml原液として−20℃で貯蔵し、そしてプレートコーティング用にPBSで1/500に稀釈した。
【0088】
検定前日に、100μlの稀釈された基質溶液を、検定プレート(Nunc maxisorp 96ウェルイムノプレート)の全ウェル中に分配し、それらを密封し、4℃で一晩放置した。
検定当日に、その基質溶液を捨て、そして検定プレートウェルを、PBST(0.05%v/v Tween 20を含有するPBS)で1回および50mM Hepes pH7.4で1回洗浄した。
【0089】
試験化合物を、10%ジメチルスルホキシド(DMSO)で稀釈し、そして25μlの稀釈された化合物を、洗浄された検定プレートのウェルに移した。「全」対照ウェルは、化合物の代わりに10%DMSOを含有した。8μMアデノシン−5’−三リン酸(ATP)を含有する40mM塩化マンガン(II)25マイクロリットルを、ATP不含の塩化マンガン(II)が入った「ブランク」対照ウェルを除く全ての試験ウェルに加えた。反応を開始するために、50μlの新たに稀釈された酵素を各ウェルに加え、それらプレートを室温で20分間インキュベートした。次に、液体を捨て、それらウェルをPBSTで2回洗浄した。0.5%w/vウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBSTで1/6000に稀釈されたマウスIgG抗ホスホチロシン抗体(Upstate Biotechnology Inc. 製品05−321)100マイクロリットルを、各ウェルに加え、そしてプレートを室温で1時間インキュベート後、液体を捨て、ウェルをPBSTで2回洗浄した。0.5%w/vBSAを含有するPBSTで1/500に稀釈された西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合ヒツジ抗マウスIg抗体(Amersham 製品NXA931)100マイクロリットルを加え、そしてプレートを室温で1時間インキュベート後、液体を捨て、ウェルをPBSTで2回洗浄した。50mlの新たに調製された50mMリン酸・クエン酸緩衝液pH5.0+0.03%過ホウ酸ナトリウム(100mlの蒸留水につき1個の過ホウ酸ナトリウム含有リン酸・クエン酸緩衝剤(PCSB)カプセル(Sigma P4922)で製造される)中に1個の50mgABTS錠剤(Boehringer 1204 521)を用いて新たに調製された2,2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS)溶液100マイクロリットルを、各ウェルに加えた。次に、プレートを、プレート読み取り用分光光度計を用いて405nmで測定される「全」対照ウェルの光学濃度値が約1.0になるまで、室温で20〜60分間インキュベートした。「ブランク」(ATP不含)および「全」(化合物不含)対照値を用いて、酵素活性の50%阻害を与える試験化合物の稀釈範囲を決定した。
【0090】
(b)in vitro HUVEC増殖検定
この検定は、増殖因子に刺激されたヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)の増殖を抑制する試験化合物の能力を決定する。
【0091】
HUVEC細胞を、MCDB131(Gibco BRL)+7.5%v/vウシ胎児血清(FCS)中で単離し、96ウェルプレート中、MCDB131+2%v/vFCS+3μg/mlヘパリン+1μg/mlヒドロコルチゾン中において1000個/ウェルの細胞濃度で(2〜8継代で)培養した。最低4時間の後、それらに、VEGF(3ng/ml)および化合物を投与した。次に、それら培養物を、37℃において7.5%COで4日間インキュベートした。4日目に、培養物に、1μCi/ウェルのトリチウム化チミジン(Amersham 製品TRA61)を短時間暴露し、そして4時間インキュベートした。細胞を、96ウェルプレートハーベスター(Tomtek)を用いて採取後、トリチウムの取込みについて Beta プレートカウンターで検定した。cpmとして表される細胞中への放射能の取込みを用いて、増殖因子に刺激された細胞増殖の化合物による抑制を測定した。この方法を、更に、基礎的HUVEC成長(すなわち、外因性VEGFの添加を伴わない、MCDB131+2%v/vFCS+3μg/mlヘパリン+1μg/mlヒドロコルチゾン中の内皮細胞増殖)に対する化合物作用を評価するのに用いた。
【0092】
(c)in vivo 充実性腫瘍疾患モデル
この試験は、充実性腫瘍成長を抑制する化合物の能力を測定する。
CaLu−6腫瘍異種移植片を、雌無胸腺 Swiss nu/nuマウスの側腹に、血清不含培地中の50%(v/v)Matrigel 溶液100μl中に1x10個/マウスのCalu−6細胞の皮下注射によって樹立した。細胞植込みから10日後、マウスを8〜10の群に分けて、同等の群平均体積に達するようにした。腫瘍を、バーニアカリパスを用いて測定し、そして体積を、(lxw)xO(lxw)x(π/6)(式中、lは最長径であり、そしてwは、その最長に垂直の直径である)として計算した。試験化合物を、1日1回、最低21日間経口投与し、対照動物には、化合物用希釈剤を与えた。腫瘍を週2回測定した。成長阻害レベルを、対照群対被処置群の平均腫瘍体積の比較により、Student T検定および/または Mann-Whitney Rank Sum Test を用いて計算した。化合物処置の阻害作用は、p<0.05の場合に有意とみなした。
【0093】
本明細書中の前に定義のAZD2171マレイン酸塩は、化学的関連化合物の製造に応用可能であることが知られているいずれかの方法によって製造することができる。このような方法には、例えば、本明細書中に全て援用される国際特許出願WO00/47212号に示されたものが含まれる。このような方法には、更に、例えば、固相合成が含まれる。このような方法は、本発明のもう一つの特徴として提供され、以下に記載の通りである。必要な出発物質は、有機化学の標準法によって得ることができる。AZD2171遊離塩基は、WO00/47212号に記載のいずれかの方法にしたがって製造することができる。WO00/47212号の具体的な実施例240を参照されたい。或いは、必要な出発物質は、有機学者の常套技術の範囲内である、示されたのと同様の手順によって入手可能である。
【0094】
次の方法(a)、(b)および(c)は、本発明の追加の特徴を構成している。
AZD2171マレイン酸塩A形の合成
(a)このような方法は、本発明のもう一つの側面を提供し、そして例えば、
(i)AZD2171遊離塩基を有機溶媒中に溶解させて溶液を形成し;
(ii)マレイン酸の水溶液を加え、またはマレイン酸の有機溶媒中の溶液を加え;
(iii)自然核生成を生じさせ;
(iv)場合により、そのように形成されたAZD2171のA形およびB形の結晶性混合物を単離し;
(v)その混合物を、溶媒、例えば、メタノール中で、(X線粉末回折によって確認されうるように)全てのAZD2171マレイン酸塩がA形になるまでスラリーにし、例えば、これは4日を要することがあり;そして
(vi)そのように形成された結晶性固体を単離する
工程を含む。
【0095】
(b)別のこのような方法は、本発明のもう一つの側面を提供し、そして例えば、
(i)AZD2171遊離塩基を有機溶媒中に溶解させて溶液を形成し;
(ii)マレイン酸の水溶液を加え、またはマレイン酸の有機溶媒中の溶液を加え;
(iii)溶液を、例えば、加熱することまたは追加の溶媒を加えることによって得、そしてAZD2171マレイン酸塩A形の種結晶を加えて、AZD2171マレイン酸塩A形の結晶化を開始させ;そして
(iv)そのように形成された結晶性固体を単離する
工程を含む。
【0096】
(a)および(b)の項目(i)について、混合物は、必要ならば、溶解が達せられるまで加熱して還流させてよい。或いは、混合物は、例えば、溶媒の還流温度未満の温度に加熱してよいが、但し、ほとんど全ての固体材料の溶解が達せられたという条件付きである。少量の不溶性材料は、加温された混合物の濾過によって除去することができるということは理解されるであろう。
【0097】
(a)および(b)の項目(i)について、有機溶媒は、好ましくは、アルコール、例えば、メタノールまたはイソプロパノールである。
(a)および(b)の項目(ii)について、有機溶媒は、好ましくは、アルコール、例えば、メタノールである。
【0098】
(c)AZD2171マレイン酸塩B形の合成
このような方法は、本発明のもう一つの側面を提供し、そして例えば、
(i)AZD2171マレイン酸塩を有機溶媒中に溶解させて溶液を形成し;
(ii)その溶液を、AZD2171マレイン酸塩が、NMP中の場合より低い溶解度を有する溶媒、例えば、トルエンまたは酢酸エチルに加え;
(iii)次に、AZD2171マレイン酸塩B形の結晶化を生じ;そして
(iv)そのように形成された結晶性固体を単離する
工程を含む。
【0099】
(c)において、好ましい有機溶媒は、1−メチル−2−ピロリジノンのような、きわめて可溶性の溶媒である。
(c)の項目(i)について、混合物は、必要ならば、溶解が達せられるまで加熱して還流させてよい。或いは、混合物は、例えば、溶媒の還流温度未満の温度に加熱してよいが、但し、ほとんど全ての固体材料の溶解が達せられたという条件付きである。少量の不溶性材料は、加温された混合物の濾過によって除去することができるということは理解されるであろう。
【0100】
上の(a)、(b)および(c)において、そのように形成された結晶性固体は、いずれかの慣用法によって、例えば、濾過によって単離することができる。
本発明を、次の非制限実施例、データおよび図面によって、以下に詳しく説明するが、ここにおいて、特に断らない限り、
(i)蒸発は、真空中のロータリーエバポレーションによって行ったし、処理手順は、乾燥剤などの残留固体の濾過による除去後に行った;
(ii)収率は、単に例示のために与えられ、必ずしも、達成可能な最大値ではない;
(iii)融点は未補正であるが、Mettler DSC820eを用いて決定した;
(iv)式Iの最終生成物の構造は、核(概して、プロトン)磁気共鳴(NMR)および質量スペクトル技術によって確認した;プロトン磁気共鳴化学シフト値は、δスケールで測定したが、ピーク多重度は、次のように示している、すなわち、s,一重線;d,二重線;t,三重線;m,多重線;br,幅広;q,四重線,quin,五重線;全ての試料を、Bruker DPX 400MHzにおいて、d−DMSO中の300K、16走査、パルス反復時間10秒で実験した;
(v)中間体は、概して、十分に特性決定しなかったが、純度は、NMR分析によって評価した;そして
(vi)次の略語を用いた。
【0101】
DMSO ジメチルスルホキシド
NMP 1−メチル−2−ピロリジノン
【実施例】
【0102】
実施例1:AZD2171マレイン酸塩A形
窒素の不活性雰囲気下において、AZD2171粗製遊離塩基(4.52g)(例えば、WO00/47212号の実施例240に記載のように製造される)を、イソプロパノール(58.8mL)でスラリーにした。その混合物を、還流しながら15分間加熱して、透明な暗色溶液を生じた。混合物を75℃に冷却し、木炭(0.226g)を加えた。混合物を再加熱して還流させ、還流しながら1時間保持した。次に、混合物を熱濾過した。木炭濾過ケーキを、熱イソプロパノール(9mL)で洗浄した。合わせた濾液および洗液の温度を55℃に調整し、そして水(2.71mL)中のマレイン酸(1.173g)の予め濾過された溶液を、5分間にわたって滴加した。予め結晶化した粗製遊離塩基を、その添加中に溶解させた。水(0.9mL)のラインウォッシュ(line wash)を加えた。その混合物を55℃で15分間維持し、そしてAZD2171マレイン酸塩A形の種結晶(0.023g)を加えた。混合物を55℃で4時間保持した。4時間の保持中に、結晶化は確定した状態になった。混合物を0℃に8時間にわたって冷却した。混合物を0℃で最低8時間保持した。混合物を濾過した。濾過ケーキをイソプロパノール(9mL)で洗浄した。固体を真空オーブン中において50℃で乾燥させて、4−([4−フルオロ−2−メチル−1H−インドール−5−イル]オキシ)−6−メトキシ−7−(3−(ピロリジン−1−イル)プロポキシ)キナゾリンマレイン酸塩A形を生じた。
【0103】
H NMRスペクトル:(400 MHz, DMSO): 11.36 (s, 1H), 8.53 (s, 1H), 7.65 (s, 1H), 7.43 (s, 1H), 7.18 (d, 1H), 7.01 (d, 1H), 6.25 (s, 1H), 6.04 (s, 2H), 4.33 (t, 2H), 4.02 (s, 3H), 3.26-3.3.70 (b, 4H), 2.44, (s, 3H), 2.24 (m, 2H), 2.02 (m, 4H)。
【0104】
m.p.:DSC分析:198.3℃で融解開始および200.08℃でピーク。
実施例2:AZD2171マレイン酸塩A形
窒素の不活性雰囲気下において、AZD2171粗製遊離塩基(23.0g)(例えば、WO00/47212号の実施例240に記載のように製造される)を、容器1においてメタノール(223mL)中でスラリーにした。その混合物を、真空下で保持することによって脱気後、窒素で真空を解除した。これを5回繰り返した。次に、そのスラリーを加熱して還流させ、そこで15分間保持して、透明な暗褐色溶液を生じた。その溶液を60℃に冷却後、Celite(登録商標)パッド(4.00g)を介して容器2中へ濾過した。その Celite(登録商標)パッドを、熱(60℃)メタノール(78mL)で洗浄し、濾液を再度、容器2に入れた。
【0105】
次に、容器1に、0℃に冷却されたメタノール(111mL)を入れた。次に、容器1に、マレイン酸(5.50g)を入れ、その混合物を、マレイン酸が全て溶解するまで、0℃で15分間撹拌した。
【0106】
次に、容器1の内容物を、インラインフィルターを介して、52℃を超える温度を維持しながら容器2に入れた。AZD2171マレイン酸塩A形の種結晶(0.0454g)を、容器2に55℃で加え、その混合物を55℃で3時間保持した。次に、混合物を40℃に7時間にわたって冷却後、更に、−5℃に6時間にわたって冷却した。固体を濾過し、そしてメタノール(100mL)で−5℃において洗浄した。生成物を真空オーブン中で24時間乾燥させて、4−([4−フルオロ−2−メチル−1H−インドール−5−イル]オキシ)−6−メトキシ−7−(3−(ピロリジン−1−イル)プロポキシ)キナゾリンマレイン酸塩A形を生じた。
【0107】
実施例3:AZD2171マレイン酸塩B形
AZD2171マレイン酸塩A形(2.31g)を、温(約50℃)NMP中に溶解させた。この溶液を、トルエン(23mL)に周囲温度で2分間にわたって滴加した。次に、固体として最初に沈殿した材料は、油状物になった後、再度固体になった。周囲温度で10分間撹拌後、固体を濾過し、トルエン(10mL)で洗浄した。その固体を、真空オーブン中において周囲温度で一晩乾燥させて、4−((4−フルオロ−2−メチル−1H−インドール−5−イル)オキシ)−6−メトキシ−7−(3−(ピロリジン−1−イル)プロポキシ)キナゾリンマレイン酸塩B形を生じた。
【0108】
m.p.:DSC分析:194.43℃で融解開始および195.97℃でピーク。
用いられた技術の詳細
X線粉末回折
【0109】
【表5】

【0110】
分析用計測器:Siemens D5000
X線粉末回折スペクトルは、結晶性塩の試料を、Siemens 単シリコン結晶(SSC)ウェファーマウント上に載せ、顕微鏡スライドによってその試料を薄層中に広げることによって決定した。その試料を、30回転/分で回転させ(計数統計を改善する)、40kVおよび40mAにおいて1.5406オングストロームの波長で操作される銅ロング・ファインフォーカス管によって発生したX線を照射した。平行X線源を、V20で設定された自動可変発散スリットを介して通過させ、そして反射した放射線を、2mm散乱防止スリットおよび0.2mm検出器スリットを介して方向づけた。試料を、θ−θモードにおいて2°〜40°2θの範囲にわたって0.02°2θ増加分(連続走査モード)につき1秒間暴露した。運転時間は、31分41秒であった。その計測器に、シンチレーション計数管を検出器として装備した。制御およびデータ捕捉は、Diffract+ソフトウェアで操作する Dell Optiplex 686NT4.0 Workstation によった。X線粉末回折の当業者は、ピークの相対強度が、例えば、試料の分析に影響することがありうる約30ミクロンを超えるサイズの粒子および統一されていないアスペクト比によって影響されることがありうるということを理解するであろう。当業者は、更に、反射位置が、回折計中の試料がある正確な高さおよび回折計のゼロ検定によって影響されることがありうるということを理解するであろう。試料表面の平坦さも、僅かに作用することがありうる。したがって、提示された回折図形データを、絶対値と見なすことはない。
【0111】
篩い分け/超微粉砕
AZD2171遊離塩基を、篩い分け後、1mmステンレス鋼製篩を用いて超微粉砕し、その塩基を、生成物採集用におよび超微粉砕機中に直接的に手動供給するのに用いた。
【0112】
約7.5gのAZD2171遊離塩基を篩い分けした。
清浄なS/Sライン2”超微粉砕機を用いた。
手動供給速度:約2/3g/分。
【0113】
粉砕空気圧範囲10/20psi(0.67/1.33気圧)。
ベンチュリ空気圧範囲20/25psi(1.33/1.67気圧)。
動的蒸気収着
分析用計測器:Surface Measurements Systems Dynamic Vapour Sorption Analyser。
【0114】
25℃で石英ホルダー中に入った約5mgの材料を、給湿窒素に、次の相対湿度(RH):0、20、40、60、80、95、80、60、40、20、0%RHで二重に供した。
【0115】
示差走査熱量測定
分析用計測器:Mettler DSC820e。
典型的に、穴あき蓋を装着した40μlアルミニウムパンに入った5mg未満の材料を、25℃〜325℃の温度範囲にわたって10℃/分の一定加熱速度で加熱した。窒素を用いたパージガスを、100ml/分の流速で用いた。
【0116】
熱重量測定分析
分析用計測器:Mettler TG851。
典型的に、70μlアロックス(酸化アルミニウム)るつぼ中に入った3〜12mgの材料を、25℃〜325℃の温度範囲にわたって10℃/分の一定加熱速度で加熱した。ヘリウムを用いたパージガスを、50ml/分の流速で用いた。
【0117】
カール・フィッシャー水分
分析用計測器:Mitsubishi Moisture Meter CA−05。
典型的に、約50mgの材料を用いた。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】図1:AZD2171遊離塩基一水和物のDSCおよびTGAサーモグラム−℃の温度を水平軸上に、そして熱流/損失重量%を鉛直軸上にプロットしている。
【図2】図2:AZD2171遊離塩基のX線粉末回折図形−2θ値を水平軸上にプロットし、そして相対線強度(カウント)を鉛直軸上にプロットしている。
【図3】図3:100℃に加熱されたAZD2171遊離塩基一水和物のX線粉末回折図形−2θ値を水平軸上にプロットし、そして相対線強度(カウント)を鉛直軸上にプロットしている。
【図4】図4:超微粉AZD2171遊離塩基のX線粉末回折図形−2θ値を水平軸上にプロットし、そして相対線強度(カウント)を鉛直軸上にプロットしている。
【図5】図5:AZD2171マレイン酸塩A形のX線粉末回折図形−2θ値を水平軸上にプロットし、そして相対線強度(カウント)を鉛直軸上にプロットしている。
【図6】図6:AZD2171マレイン酸塩A形のDSCサーモグラム−℃の温度を水平軸上にプロットし、そして吸熱熱流(ミリワット(mW))を鉛直軸上にプロットしている。
【図7】図7:AZD2171マレイン酸塩A形の25℃での蒸気収着等温線−目標相対湿度(RH)(%)を水平軸上にプロットし、そして乾燥質量の変化(%)を鉛直軸上にプロットしている。
【図8】図8:AZD2171マレイン酸塩B形のX線粉末回折図形−2θ値を水平軸上にプロットし、そして相対線強度(カウント)を鉛直軸上にプロットしている。
【図9】図9:AZD2171マレイン酸塩B形のDSCサーモグラム−℃の温度を水平軸上にプロットし、そして吸熱熱流(ミリワット(mW))を鉛直軸上にプロットしている。
【図10】図10:AZD2171マレイン酸塩スラリー実験についての、2θ値を水平軸上にプロットし、そして相対線強度(カウント)を鉛直軸上にプロットしているX線粉末回折図形。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
AZD2171のマレイン酸塩。
【請求項2】
A形結晶形の、請求項1に記載のAZD2171のマレイン酸塩。
【請求項3】
B形結晶形の、請求項1に記載のAZD2171のマレイン酸塩。
【請求項4】
A形結晶形の、請求項2に記載のAZD2171のマレイン酸塩であって、約2θ=21.5°に少なくとも一つの特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する該塩。
【請求項5】
A形結晶形の、請求項2に記載のAZD2171のマレイン酸塩であって、約2θ=16.4°に少なくとも一つの特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する該塩。
【請求項6】
A形結晶形の、請求項2に記載のAZD2171のマレイン酸塩であって、約2θ=21.5°および16.4°に少なくとも二つの特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する該塩。
【請求項7】
A形結晶形の、請求項2に記載のAZD2171のマレイン酸塩であって、約2θ=21.5°、16.4°、24.4°、20.7°、25.0°、16.9°、12.1°、22.2°、17.4°および17.6°に特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する該塩。
【請求項8】
A形結晶形の、請求項2に記載のAZD2171のマレイン酸塩であって、図5に示されるX線粉末回折図形と実質的に同じX線粉末回折図形を有する該塩。
【請求項9】
B形結晶形の、請求項3に記載のAZD2171のマレイン酸塩であって、約2θ=24.2°に少なくとも一つの特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する該塩。
【請求項10】
B形結晶形の、請求項3に記載のAZD2171のマレイン酸塩であって、約2θ=22.7°に少なくとも一つの特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する該塩。
【請求項11】
B形結晶形の、請求項3に記載のAZD2171のマレイン酸塩であって、約2θ=24.2°および22.7°に少なくとも二つの特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する該塩。
【請求項12】
B形結晶形の、請求項3に記載のAZD2171のマレイン酸塩であって、約2θ=24.2°、22.7°、15.7°、12.0°、27.1°、25.0°、17.7°、15.0°、23.1°および12.6°に特異的ピークがあるX線粉末回折図形を有する該塩。
【請求項13】
B形結晶形の、請求項3に記載のAZD2171のマレイン酸塩であって、図8に示されるX線粉末回折図形と実質的に同じX線粉末回折図形を有する該塩。
【請求項14】
医薬組成物であって、請求項1に記載のAZD2171のマレイン酸塩を、薬学的に許容しうる賦形剤または担体と一緒に含む医薬組成物。
【請求項15】
AZD2171マレイン酸塩がA形結晶形である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
AZD2171マレイン酸塩がB形結晶形である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
請求項2に記載のA形結晶形のAZD2171のマレイン酸塩の製造方法であって、
(i)AZD2171遊離塩基を有機溶媒中に溶解させて溶液を形成し;
(ii)マレイン酸の水溶液を加え、またはマレイン酸の有機溶媒中の溶液を加え;
(iii)自然核生成を生じさせ;
(iv)その混合物を溶媒中で、全てのAZD2171マレイン酸塩がA形になるまでスラリーにし;そして
(v)そのように形成された結晶性固体を単離すること
を含む方法。
【請求項18】
請求項2に記載のA形結晶形のAZD2171のマレイン酸塩の製造方法であって、
(i)AZD2171遊離塩基を有機溶媒中に溶解させて溶液を形成し;
(ii)マレイン酸の水溶液を加え、またはマレイン酸の有機溶媒中の溶液を加え;
(iii)溶液を得、そしてAZD2171マレイン酸塩A形の種結晶を加えて、AZD2171マレイン酸塩A形の結晶化を開始させ;そして
(iv)そのように形成された結晶性固体を単離すること
を含む方法。
【請求項19】
請求項3に記載のB形結晶形のAZD2171のマレイン酸塩の製造方法であって、
(i)AZD2171マレイン酸塩を有機溶媒中に溶解させて溶液を形成し;
(ii)その溶液を、AZD2171マレイン酸塩が、NMP中の場合より低い溶解度を有する溶媒に加え;
(iii)次に、AZD2171マレイン酸塩B形の結晶化を生じ;そして
(iv)そのように形成された結晶性固体を単離すること
を含む方法。
【請求項20】
ヒトなどの温血動物での抗血管形成作用および/または血管透過性減少作用の生成に用いるための薬剤の製造における、請求項1に記載のAZD2171のマレイン酸塩の使用。
【請求項21】
抗血管形成作用および/または血管透過性減少作用を生じる処置を必要としているヒトなどの温血動物において抗血管形成作用および/または血管透過性減少作用を生じる方法であって、該動物に、有効量の請求項1に記載のAZD2171マレイン酸塩を投与することを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−517008(P2007−517008A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546311(P2006−546311)
【出願日】平成16年12月18日(2004.12.18)
【国際出願番号】PCT/GB2004/005359
【国際公開番号】WO2005/061488
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】