説明

抗酸化剤

【課題】活性酸素消去が高く、安定性に優れた抗酸化剤を提供すること。
【解決手段】2種以上の貴金属合金コロイドを有効成分とする抗酸化剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗酸化剤に関し、更に詳細には、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品等の分野で応用できる貴金属合金コロイドを利用した抗酸化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オゾンホールの出現による太陽紫外線の増加は生体内に様々な影響を与えている。特に皮膚は直接外界と接する器官であるため紫外線の影響を受け易く、紫外線により発生する活性酸素の働きにより様々な疾患を生じやすい。例えば、活性酸素を原因として、皮膚表面における皮脂の過酸化がおこり過酸化脂質が生成され、この過酸化脂質が皮膚のタルミや皺といった変化を生じさせ老化現象を引き起こすことが知られている。また、活性酸素は脳卒中、動脈硬化、心筋梗塞、リウマチ、炎症、胃潰瘍、白内障およびガン等の疾病との関連性も示唆されている。
【0003】
よって活性酸素を除去・消去することにより過酸化脂質の生成を抑制することは、種々の疾患を抑制するのに有効であるとされ、そのため活性酸素を抑制する抗酸化剤の研究開発がなされている。
【0004】
従来まで、抗酸化剤としてはビタミンA、ビタミンC、ビタミンE等のビタミン類が主に使用されてきた(非特許文献1)。また近年、金コロイドを抗酸化剤として使用する技術も提案されている(特許文献1)。しかしながら、これらの抗酸化剤はその安定性や機能において満足できるものではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2004−285166号公報
【非特許文献1】「化粧品の有用性」、薬事日報社、P237〜241、2001年3月31日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の課題は、活性酸素消去が高く、しかも安定性に優れた抗酸化剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、貴金属合金コロイドに優れた抗酸化機能があり、これを利用すれば優れた作用を有する抗酸化剤が得られることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は少なくとも2種類以上の貴金属からなる貴金属合金コロイドを有効成分とする抗酸化剤である。
【0009】
また、本発明は上記抗酸化剤を含有する組成物である。
【0010】
更に、本発明は上記抗酸化剤を含有する外用剤である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の抗酸化剤は、2種以上の貴金属を合金化した貴金属合金コロイドを有効成分とするものであり、従来提供された抗酸化剤に比べ、優れた抗酸化能と安定性を有するものである。
【0012】
従って、本発明の抗酸化剤は、活性酸素を原因とする皮膚のたるみおよび皺や、脳卒中、動脈硬化、心筋梗塞、リウマチ、炎症、胃潰瘍、白内障およびガン等の疾病の予防や治療に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の抗酸化剤の有効成分となる貴金属合金コロイドは、2種以上の貴金属からなる貴金属合金、好ましくは金、白金およびパラジウムから選ばれる貴金属の2種以上からなる貴金属合金微粒子が、溶液中、好ましくは水溶液中にコロイド状態で存在するものをいう。
【0014】
前記貴金属合金コロイドは、貴金属塩を溶解ないしは懸濁した水溶液ないし懸濁液中で、これを還元することのできる還元剤で還元処理することにより得られる。
【0015】
前記貴金属塩としては、貴金属を含有するものであれば特に制限されないが、貴金属が金であれば塩化金(III)酸4水和物(HAuCl・4HO)、白金であれば塩化白金(IV)酸6水和物(HPtCl・6HO)、パラジウムであれば塩化パラジウム(II)ナトリウム(2NaCl・PdCl)等を好ましいものとして例示することができる。これら貴金属塩の配合割合は特に限定はされないが、各貴金属に含まれる貴金属のモル比で1:10〜10:1が好ましく、1:7〜7:1が更に好ましく、3:1〜1:3が最も好ましい。
【0016】
また、貴金属塩の還元に用いられる還元剤としては、前記貴金属塩を還元できるものであれば特に制限されないが、例えば、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、クエン酸およびクエン酸ナトリウム等のクエン酸塩、アスコルビン酸およびその誘導体が好ましいものとして挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの還元剤の中でも特にヒドラジンおよび水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。これら還元剤の添加量は特に制限されるものではなく、貴金属塩を還元するのに足りる量であればよい。
更に、これら還元を行う際にはpHが調整されていてもよく、この場合のpHは貴金属塩や保護剤の種類あるいは合金に用いる貴金属の組み合わせによって適宜選択すればよい。具体的に金とパラジウムとの合金を調製する場合には、パラジウム水溶液をpH2〜5、好ましくはpH3程度にすればよい。また、金と白金との合金を調製する場合には、白金水溶液をpH4〜6、好ましくはpH5程度にすればよい。
【0017】
本発明の抗酸化剤は、その有効成分である貴金属合金コロイドを、好ましくは、抗酸化剤中での濃度として0.005〜5.0mM、更に好ましくは、0.01〜1.0mM、特に、0.05〜0.5mM配合することにより調製されるが、この貴金属合金コロイドを更に保護し、安定化するために、保護剤を配合することが好ましい。保護剤がない状態においては、貴金属合金コロイドは、その重さにより沈殿することがある。
【0018】
この保護剤としては、電荷物質、水溶性高分子等が挙げられる。これらの保護剤のうち電荷物質は、貴金属合金コロイド表面に付着し、電荷的反発により沈殿を防止することができるが、塩(電解質)等の共存下においては凝集、沈殿を起こしてしまうことがある。これに対し、水溶性高分子ではこのような現象が起きにくいので、本発明の抗酸化剤には保護剤として水溶性高分子を配合し安定化することがより好ましい。
【0019】
上記保護剤として使用される水溶性高分子は特に限定されないが、その好ましい例としては、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カチオン化セルロース、キサンタンガム、グァーガム、ヒアルロン酸ナトリウム、カラギーナン、デンドリマー等が挙げられる。これら水溶性高分子の抗酸化剤における配合量は〔貴金属合金コロイド〕:〔水溶性高分子〕のモル比で、10:1〜1:100、好ましくは1:1〜1:50、更に好ましくは1:5〜1:20である。
【0020】
上記の水溶性高分子の中でも特に好ましいものは、デンドリマーである。このデンドリマーとは、樹木のように規則的に枝分かれした構造を持つ3次元の多分岐高分子であり、表面や内部に様々な官能基を持ち、その官能基を置換することで機能性を持たせることができる高分子物質である。このデンドリマーを構成する骨格としては、特に制約されるものではないが、ポリアミドアミン、ポリトリメチレンイミン、ポリプロピレンアミン、ポリエーテル等が好ましいものとして挙げられる。このようなデンドリマーは、公知文献記載(高分子、47巻、11月号、1998、p803〜807;Dendrimers and Other Dendric Polymers(Wiley Series in Polymer Science), pp.587-604, 2001)の方法により調製することができる。これらのデンドリマーの重合度(世代)は様々な分子量に調製することができ、その大きさに関して、特に限定されないが、2〜10世代のデンドリマーが好ましく、特に3〜5.5世代のデンドリマーが好ましい。また、デンドリマーの末端基は、水酸基、アミノ基、カルボキシル基が好ましく、特にカルボキシル基が好ましい。
【0021】
本発明の抗酸化剤に用いられる貴金属合金コロイドの調製の好ましい態様を示せば次の通りである。
【0022】
まず、金属種類の異なる貴金属塩、例えば、塩化金(III)酸4水和物(HAuCl・4HO)、塩化白金(IV)酸6水和物(HPtCl・6HO)、塩化パラジウム(II)ナトリウム(2NaCl・PdCl)等の貴金属塩の2種以上を精製水に、所望の貴金属のモル比で溶解する。この貴金属塩のモル比は特に制約されるものではないが、例えば、2種の貴金属を使用する場合は、それらのモル比で3:1〜1:3程度とすればよい。次に、これら貴金属塩を溶解した水溶液に水溶性高分子であるデンドリマーを、貴金属とデンドリマーがモル比で10:1〜1:100となるように添加し、溶解または分散させて、貴金属塩と水溶性高分子の混合水溶液または混合水懸濁液とする。最後に、この混合水溶液ないし懸濁液を水素化ホウ素ナトリウムで還元することにより貴金属合金コロイドが得られる。
【0023】
上記のようにして得られる貴金属合金コロイドを有効成分とする本発明の抗酸化剤は、例えば、従来の貴金属単独のコロイドと比べて抗酸化能が高く、安定なものであり、化粧品、医薬部外品、医薬品、食品等の様々な分野で用いられる組成物に配合することができる。また、これら組成物の中でも特に化粧品、医薬部外品、医薬品が好ましく、特に化粧品、医薬部外品等の外用剤に好ましく配合される。これら組成物への本発明の抗酸化剤の配合量は特に限定されないが、例えば0.01〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%である。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0025】
参 考 例 1
デンドリマーの製造:
公知文献(Dendrimers and Other Dendric Polymers(Wiley Series in Polymer Science), pp.587-604, 2001)に記載の方法に従い、ポリアミドアミンを使用して末端基がアミノ基で世代が3.0(G3.0)および5.0(G5.0)のものと、末端基がカルボキシル基で世代が3.5(G3.5)および、5.5(G5.5)のポリアミドアミンデンドリマー(PAMAM)を製造した。
【0026】
実 施 例 1
合金コロイドの調製:
(1)金−パラジウム合金コロイドの調製
まず、0.4mMの塩化金(III)酸4水和物(HAuCl・4HO)水溶液、0.4mMの塩化パラジウム(II)ナトリウム(2NaCl・PdCl)水溶液および16mMのデンドリマー(ポリアミドアミン)水溶液をそれぞれ調製した。デンドリマー水溶液には参考例1で製造した末端基がアミノ基で世代が3.0(G3.0)および5.0(G5.0)のデンドリマーと、末端基がカルボキシル基で世代が3.5(G3.5)および、5.5(G5.5)のデンドリマーをそれぞれ用いた。
【0027】
上記塩化金水溶液とデンドリマーを用い、金の最終濃度が0.2mMで、金とデンドリマーのモル比が1:5、1:10、1:20となるようにそれぞれ混合し、金−デンドリマー水溶液を調製した。パラジウムについても上記塩化パラジウム溶液を用いて同様の操作を行い、パラジウムとデンドリマーのモル比が1:5、1:10、1:20であるパラジウム−デンドリマー水溶液をそれぞれ調製した。
【0028】
上記で調製した金−デンドリマーの水溶液とパラジウム−デンドリマーの水溶液について、同じデンドリマー比の金−デンドリマー水溶液およびパラジウム−デンドリマー水溶液を、金とパラジウムのモル比が1:3、1:1、3:1となるように混合し、30分間窒素バブリング中で攪拌し、種々のデンドリマー比および種々の金−パラジウム比の溶液を調製した。そして各溶液の攪拌速度をゆるめ、これに20mM水素化ホウ素ナトリウムを加え、金とパラジウムを還元した。還元後は、窒素を5分間溶液表面に流したのち、攪拌を止め、1日放置して還元剤を消滅させて金−パラジウム合金コロイド液を得た。
【0029】
(2)金−白金合金コロイドおよび白金−パラジウム合金コロイドの調製
金−白金合金コロイドおよび白金−パラジウム合金コロイドを上記と同様に調製した。白金−デンドリマー水溶液の調製には塩化白金(IV)酸6水和物(HPtCl・6HO)を使用した。
【0030】
実 施 例 2
貴金属合金コロイドの抗酸化能の測定:
(1)DPPHによる評価
貴金属合金コロイドの抗酸化能を、ラジカルである1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl:DPPH)を用いるDPPH法により評価した。すなわち、DPPHは、520nmに最大吸収波長を持つが、このラジカルが還元されたものは、520nmの吸収波長が消失する。これを利用して520nmの吸光度を測定することにより、貴金属合金コロイドのラジカル消去率を測定した。なお、ラジカル消去率は以下のようにして測定した。
【0031】
10mm×10mmの石英セル中に緩衝溶液を0.3mL、DPPHエタノール溶液(母液0.8mM)を0.3mLおよびエタノールを1.2mL添加した。そこに被検合金コロイド水溶液を(母液0.2mM)1.2mL添加した。つまりDPPHと被検合金コロイドの最終濃度が同じ0.08mMになるように調整した。ラジカル消去の時間変化(30分)は520nmの吸光度により測定した。また測定は25℃で行った。経時的(30分)に520nmで測定した吸光度をプロットすると、吸光度は時間と共に減少する傾向が確認できた。次に、これらの吸光度のプロットから半減期τを求め、その逆数1/τから触媒活性を算出した。金−白金合金コロイド(G3.5)のラジカル消去活性を表1に示した。また、金−パラジウム合金コロイド(G3.5またはG3.0)のラジカル消去活性を表2および表3に示した。更に、白金−パラジウム合金コロイド(G5.5)のラジカル消去活性を表4に示した。
【0032】
【表1】

【0033】
〔金〕:〔白金〕=1:3、〔貴金属合金コロイド〕:〔デンドリマー(G3.5)〕=1:20のとき最もラジカル消去活性が高い値となった。
【0034】
【表2】

【0035】
〔金〕:〔パラジウム〕=3:1、〔貴金属合金コロイド〕:〔デンドリマー(G3.5)〕=1:20のとき最もラジカル消去活性が高い値となった。
【0036】
【表3】

【0037】
〔金〕:〔パラジウム〕=1:3、〔貴金属合金コロイド〕:〔デンドリマー(G3.0)〕=1:10のとき最もラジカル消去活性が高い値となった。
【0038】
【表4】

【0039】
〔白金〕:〔パラジウム〕=3:1、〔貴金属合金コロイド〕:〔デンドリマー(G5.5)〕=1:10のとき最もラジカル消去活性が高い値となった。
【0040】
(2)ESRによる評価
実施例1で調製した、デンドリマー比が1:20で、白金−パラジウム合金コロイド(白金とパラジウムのモル比がそれぞれ1:0.3、1:1および3.0:1である白金−パラジウム合金コロイドを所定の濃度(1/6、1/8、1/16、1/32倍)に希釈し、被験試料とした。
【0041】
一方、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)の5.5mM水溶液、過酸化水素の0.2mM水溶液および5,5−ジメチル−1−ピロリン−N−オキシド(DMPO)の88mM水溶液をそれぞれ調整した。このDTPA水溶液を溶媒に用いて、硫酸第一鉄が10mMとなるように溶液を調整し、それを測定直前に100倍希釈した。
【0042】
表5に記載の濃度に希釈した白金−パラジウム合金コロイド溶液、DMPO水溶液、希釈した硫酸第一鉄水溶液、過酸化水素水をそれぞれ100μlずつESR測定用試料容器に加えて攪拌し、過酸化水素を加えてから60秒後に電子スピン共鳴(ESR)を測定した。
【0043】
このとき、フェントン(Fenton)反応がおこりスピンアダクトによるピークが確認される。得られたESRスペクトルのピークをマンガンマーカーに対する相対強度にして、計算により各濃度の白金−パラジウム合金コロイド溶液のヒドロキシラジカル消去活性を求めた。すなわち系内の活性酸素消去反応はスピントラップ試薬によるラジカル補足(速度定数K)と貴金属合金コロイド(S)によるラジカル補足(速度定数K)との競争反応であり、その反応率R(K/K)は次式のように計算される。
【0044】
[数1]
R(=K/K)=F〔DMPO〕/(1−F)〔S〕
(ここでRは反応率、FはスピンアダクトESR信号強度減少率、〔DMPO〕及び
〔S〕はスピントラップ試薬及び抗酸化剤(貴金属合金コロイド水溶液)の初濃度。)
[数2]
F/(1−F)=R〔S〕/〔DMPO〕
【0045】
各被験試料について、F/(1−F)を縦軸に〔S〕/〔DMPO〕を横軸にとり、その傾きからRを求めた結果を表5に示す。既知のスピントラッピング試薬の反応速度Kと実験的に求めたR値から抗酸化剤の反応速度定数Kが算出され、K値が大きいほど活性酸素消去能が大きいと評価されるから、本試験では、R値が大きいほど抗酸化力が大きいといえる。
【0046】
【表5】

【0047】
〔白金〕:〔パラジウム〕=1:1、デンドリマー=G5.0のとき最もヒドロキシラジカル消去活性が高い値となった。
【0048】
実 施 例 3
化粧水の製造:
貴金属合金コロイドを含有する化粧水を以下の処方および調製方法で製造した。
処方 質量%
1.精製水 残部
2.濃グリセリン 2.00
3.1,3−ブチレングリコール 2.00
4.1,2−ペンタンジオール 2.00
5.エタノール 8.00
6.パラオキシ安息香酸メチル 0.10
7.貴金属合金コロイド 5.00
(金:白金=3:1、
〔貴金属合金コロイド〕:〔デンドリマー(G3.0)〕=1:20)
8.ヒアルロン酸Na 0.03
9.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.40
10.香料 0.10
11.酢酸dl−α−トコフェロール 0.05
12.エデト酸二ナトリウム 0.10
13.グレチルレチン酸ジカリウム 0.10
【0049】
(調製方法)
1〜4を順次混合し攪拌する。6を5に加え溶解し1〜4に加える。7、8を順次加える9〜11を混合し約70℃で加熱溶解する。溶解した9〜11を1〜8の混合物に攪拌しながらゆっくりと加える。その後12、13を順次加える。
【0050】
得られた化粧水は使用感等において良好なものであった。
【0051】
試 験 例 1
貴金属合金コロイドと貴金属混合溶液のDDPHラジカル消去活性の比較:
実施例1と同様に、金と白金のモル比が1:0、1:3、1:1、3:1、0:1である金−白金合金コロイド(金−白金合金コロイドとデンドリマー(G=3.5)の配合比は1:20)溶液を作製し、その溶液のDDPHラジカル消去活性を測定した。また、比較として、前記合金に用いられたのと同量の金と白金並びにデンドリマーを単に攪拌しただけの混合溶液を作製し、その溶液のDDPHラジカル消去活性を測定した。各溶液のDDPHラジカル消去活性を図1に示した。その結果、金−白金合金コロイド溶液と金−白金混合溶液ではDDPHラジカル消去活性に明らかな差があった。
【0052】
なお、DDPHラジカル消去活性の測定は、次のようにして行った。まず、貴金属合金コロイドとDPPHを含有する溶液の520nmの吸光度を経時的に測定し、それをプロットする。次に、そのプロットにあてはまる1次反応速度式を作成した。
[数3]
y=y+a・exp(−bt)
(ここで、yは時間tにおける520nmの吸光度、yは測定開始時(t=0)の520nmの吸光度、aは初濃度、bは減少した濃度)
【0053】
次に上記式で求められたbを以下の式にあてはめ半減期(τ)を求め、更に、その逆数をDDPHラジカル消去活性の値とした。
[数4]
τ=ln2/b
(ここで、τは半減期、bは上記式と同じ意味を有する。)
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の、少なくとも2種以上の貴金属を合金化した貴金属合金コロイドを有効成分とする抗酸化剤は、貴金属単独のコロイドより優れた抗酸化能を有し、医薬品、医薬部外品、化粧品および食品等において利用可能である。そしてこれを使用することにより、活性酸素を原因とする、皮膚のたるみや皺及びまた脳卒中、動脈硬化、心筋梗塞、リウマチ、炎症、胃潰瘍、白内障およびガン等の疾病を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、金−白金合金コロイド溶液と金−白金混合溶液の抗酸化能を測定した結果を示す図面である。 以 上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上の貴金属合金コロイドを有効成分とする抗酸化剤。
【請求項2】
貴金属合金コロイドが、2種以上の貴金属塩を、クエン酸およびその塩、アスコルビン酸およびその誘導体、水素化ホウ素ナトリウムまたはヒドラジンから選ばれる1種または2種以上の還元剤で還元して得られるものである請求項第1項記載の抗酸化剤。
【請求項3】
貴金属が金、白金およびパラジウムから選ばれるものである請求項第1項または第2項記載の抗酸化剤。
【請求項4】
更に、貴金属合金コロイドの保護剤として水溶性高分子を含むものである請求項第1項ないし第3項の何れかの項記載の抗酸化剤。
【請求項5】
水溶性高分子がデンドリマーである請求項第4項項記載の抗酸化剤。
【請求項6】
請求項第1項ないし第5項の何れかの項記載の抗酸化剤を含有する組成物。
【請求項7】
請求項第1項ないし第5項の何れかの項記載の抗酸化剤を含有する外用剤。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−282654(P2006−282654A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−24251(P2006−24251)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000006884)株式会社ヤクルト本社 (132)
【Fターム(参考)】