説明

抗酸化組成物

【課題】生薬抽出エキスおよび水溶性糖類を有効成分とする新規な抗酸化組成物の提供。
【解決手段】花椒(Zanthoxyli bungeanum)、五倍子(Gallae Rhois)、槐花(Sophorae Flos)、辛夷(Magnoliae Flos)、山茱萸(Corus officinalis Sieb.et Zucc.)および山椒(Zanthoxyli Fruit)から選ばれる1種または2種以上の生薬の抽出エキスと、水溶性糖類とを含有することを特徴とする、皮膚外用剤、化粧料、飲食品およびこれらの添加剤のような抗酸化組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた抗酸化機能を有する医療用皮膚外用剤、化粧料、飲食品またはそれらに使用する添加剤として有用な抗酸化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、抗酸化物質としては、種々の物質が提案されているが、アスコルビン酸などは、高い抗酸化力を有するものの、低濃度では、逆に酸化力を有するものとして作用するなど、化学物質では、安定して抗酸化力を提供しない可能性が示唆されてきた。また、単離した化学物質では、アスコルビン酸に見られるように、温度、pHなど諸条件に対して不安定であることも、利用上、不便なものであった。これに比べ、天然物の抽出物は、混合物であるがため、物質的に安定であり、例えば、特許文献1に列挙されるように、種々のものが美白に有効であると示されてきた。ただし、これらは、美白に対して有効な科学的根拠が示されたわけでもなく、また、美白作用がどこにあるのかも解明されていないものであった。
【特許文献1】特開2003−246722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、ある種の生薬の抽出エキスと、水溶性糖類を有効成分とする新規な抗酸化組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、優れた抗酸化機能を有する医療用皮膚外用剤、化粧料、飲食品等を得るべく、アスコルビン酸なみの抗酸化力を有し、物質的に安定な天然由来の抽出物を検討した結果、これらと、さらに、本水溶性抽出物に糖類を配合することで安定、かつ効果的な抗酸化組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)花椒(Zanthoxyli bungeanum)、五倍子(Gallae Rhois)、槐花(Sophorae Flos)、辛夷(Magnoliae Flos)、山茱萸(Corus officinalis Sieb.et Zucc.)および山椒(Zanthoxyli Fruit)から選ばれる1種または2種以上の生薬の抽出エキスと、水溶性糖類とを含有することを特徴とする抗酸化組成物、
(2)水溶性糖類が、グルコース、マルトース、シュークロース、ラクトース、デキストリンおよび短鎖オリゴ糖から選ばれる1種または2種以上である上記(1)記載の抗酸化組成物、
(3)水溶性糖類を0.01〜10重量%含有する上記(1)記載の組成物、
(4)医療用皮膚外用剤である上記(1)記載の組成物、
(5)化粧料である上記(1)記載の組成物、
(6)化粧料添加剤である上記(1)記載の組成物、
(7)飲食品である上記(1)記載の組成物、
(8)飲食品添加剤である上記(1)記載の組成物
などを提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明で用いる生薬抽出エキスは、優れた抗酸化作用を示し、それと水溶性糖類とを組み合わせるとその作用がさらに高められる。また、当該生薬は。いずれも従来から使用されており、その安全性が確認されているものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明で用いる花椒、五倍子、槐花、辛夷、山茱萸および山椒は、いずれも公知の生薬であり、本発明においては、これら生薬の1種または2種以上の抽出エキスを使用する。2種以上の生薬を使用する場合は、個々の生薬の抽出エキスを組み合わせても、任意の割合で混合した生薬を抽出したエキスでもよい。
抽出エキスは、自体公知の方法で製造したものでよく、例えば、水、メタノール、エタノール等のアルコール類またはこれらの混合溶媒のような抽出溶媒を用いて、常温抽出または加熱抽出することにより製造でき、必要により、減圧または加圧してもよい。得られた抽出エキスは、そのまま使用することも可能であるが、通常、濃縮または乾固したものを使用する。
【0007】
用いる水溶性糖類としては、例えば、グルコース、マルトースのような単糖類、シュークロース、ラクトースのような二糖類、短鎖オリゴ糖、イヌリンのようなオリゴ糖およびデキストリンが挙げられ、これらは単独でも2種以上を組み合わせてもよい。本発明の組成物における糖類の配合量は、適宜選択できるが、通常、組成物全量に対して0.01〜10重量%、好ましくは、0.01〜5重量%とする。
【0008】
本発明の組成物は、所望の成分を混合、溶解する等の自体公知の方法で、粉末、顆粒、錠剤等の固体、ペースト状、軟膏等の半固体、溶液、懸濁液、乳化液等の液体のような剤形の医療用皮膚外用剤、化粧料、化粧料添加物、食品、食品添加物等とすることができ、他の配合成分は特に限定するものではない。
例えば、生薬抽出エキスと水溶性糖類を混合して、抗酸化剤、抗菌剤としての化粧料添加剤や食品添加剤とすることができ、これらは、化粧料や食品に適宜の量、例えば、生薬抽出エキスの乾燥固形分換算として、0.001〜10重量%、好ましくは、0.01〜5重量%程度添加することができる。
また、皮膚機能改善用の薬効成分や、化粧料有効成分、飲食用成分と、要すれば界面活性剤、増粘剤、甘味料、着色料、香料等の添加剤とを、これら生薬抽出エキス、水溶性糖類と共に配合して医療用皮膚外用剤、化粧料、飲食品のような組成物とすることができる。これら組成物には、生薬抽出エキスの乾燥固形分換算として、0.001〜10重量%、好ましくは、0.01〜5重量%程度配合することができる
以下実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。以下の実施例における%は、特に断らない限り、重量%を示す。
【実施例1】
【0009】
アスコルビン酸と花椒エキス、五倍子エキス、各々のDPPH(ジフェニルピクリルヒドラジル)ラジカルの酸化消去能を測定し、その濃度勾配ごとの抗酸化力を比較した。
アスコルビン酸の1mMに対して、花椒エキス、五倍子エキス各1%を対照とし、そこから、下表において右向きに倍倍希釈し、最終6回目は4倍まで希釈。
花椒エキス、五倍子エキスは原料を粉砕後、含水エタノールに浸し、2週間放置。その後、抽出液をろ過、若しくは遠心分離し、固形分を分離後、減圧蒸留をかけて濃縮したものを用いた。
結果を図1に示す。
図1から明らかなごとく、花椒エキス、五倍子エキスの抗酸化能が確認された。
【実施例2】
【0010】
糖類添加による安定性比較のため、花椒、五倍子、大棗、槐花、辛夷、ガジュツ、呉茱萸、7種類の漢方エキスを0.1%精製水に添加した水溶液と同じく7種類の漢方エキスを0.1%添加した水溶液に3%のブドウ糖を加えた水溶液に関して、約1ヶ月間常温保管し、各々のDPPHラジカル消去能を測定し、比較した。なお、各々の漢方原料からのエキスは下記注に示す方法で製造した。
結果を表1に示す。
【表1】

表1から明らかなごとく、7種の漢方エキスにブドウ糖を加えた水溶液は、エキス単体の水溶液に対して、保存期間を通して、高い抗酸化能を示した。
【実施例3】
【0011】
五倍子エキス0.1%、グルコースを0.05%、マルトースを0.02%添加した水溶液の適量を、アクネ患者に皮膚外用剤として、1日1回、3日間使用し、表2に示す結果を得た。
【表2】

【実施例4】
【0012】
花椒エキス0.1%、グルコースを0.05%、マルトースを0.02%添加した水溶液の適量を、アクネ患者に皮膚外用剤として、1日1回、3日間使用し、表3に示す結果を得た。
【表3】

【実施例5】
【0013】
五倍子エキス0.05%、グルコースを0.05%、マルトースを0.02%添加した水溶液の適量を、アトピー患者に皮膚外用剤として、1日1回、10日間使用し、表4に示す結果を得た。
【表4】

【実施例6】
【0014】
花椒エキス0.1%、グルコースを0.05%、マルトースを0.02%添加した水溶液の適量を、アトピー患者に皮膚外用剤として、1日1回、10日間使用し、表5に示す結果を得た。
【表5】

【実施例7】
【0015】
ほうじ茶として熱湯抽出したお茶に、花椒の水抽出物だけを0.1%を混入したものと、同じくほうじ茶に、花椒の水抽出物を0.1%混入したものと、グルコースを0.02%、マルトースを0.01%混入した水溶液を製造、その日持ちを確認した。
花椒エキスのみを混入したものは、7日経過後に混濁した沈殿物を確認したが、さらに糖類を混入したものは、3ヶ月後も沈殿物を生成しなかった。
【実施例8】
【0016】
食品保存料の有効性確認のため、その抗菌力を測定した。
花椒の水抽出物を2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、128倍、256倍、512倍、1024倍、2048倍、4096倍、8192倍に希釈した液を5μl、大腸菌群、サルモネラ菌を培養した寒天培地に添加後、37℃で24時間培養結果、その抗菌力を見た。
その結果、2倍から8倍希釈の抽出エキスは各々の菌に対して抗菌力を示した。
同様に、10倍、100倍、100倍、5000倍希釈した花椒の水抽出物を5μl、大腸菌群、サルモネラ菌を培養した寒天培地に添加後、37℃で24時間培養結果、その抗菌力を見た。
その結果、10倍希釈のもので、各々の菌に対して抗菌力を示した。
【産業上の利用可能性】
【0017】
以上記載したごとく、本発明によれば、優れた抗酸化機能を有する皮膚外用剤、化粧料、飲食品およびこれらの添加剤として有用な組成物が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】アスコルビン酸と花椒エキス、五倍子エキスの抗酸化力を比較した結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
花椒(Zanthoxyli bungeanum)、五倍子(Gallae Rhois)、槐花(Sophorae Flos)、辛夷(Magnoliae Flos)、山茱萸(Corus officinalis Sieb.et Zucc.)および山椒(Zanthoxyli Fruit)から選ばれる1種または2種以上の生薬の抽出エキスと、水溶性糖類とを含有することを特徴とする抗酸化組成物。
【請求項2】
水溶性糖類が、グルコース、マルトース、シュークロース、ラクトース、デキストリンおよび短鎖オリゴ糖から選ばれる1種または2種以上である請求項1記載の抗酸化組成物。
【請求項3】
水溶性糖類を0.01〜10重量%含有する請求項1記載の組成物。
【請求項4】
医療用皮膚外用剤である請求項1記載の組成物。
【請求項5】
化粧料である請求項1記載の組成物。
【請求項6】
化粧料添加剤である請求項1記載の組成物。
【請求項7】
飲食品である請求項1記載の組成物。
【請求項8】
飲食品添加剤である請求項1記載の組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2007−119360(P2007−119360A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−309946(P2005−309946)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(500264375)株式会社ゲオ (11)
【Fターム(参考)】