説明

抗Aβ抗体とその利用法

【課題】アミロイド関連障害を処置するための手段および方法を提供する。
【解決手段】第1の領域が特定のアミノ酸配列AEFRHDSGYまたはその断片を含み、第2の領域が別の特定アミノ酸配列VHHQKLVFFAEDVGまたはその断片を含有してなるβ-A4ペプチド/Aβ4の2つの領域を特異的に認識することができる抗体分子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、β-A4ペプチドの2つの領域:配列番号:1に示されたアミノ酸配列AEFRHDSGYを含む第一の領域またはその断片、および配列番号:2に示されたアミノ酸配列VHHQKLVFFAEDVGを含有する第二の領域またはその断片を特異的に認識し得る抗体分子に関する。さらに、本発明の抗体分子をコードする核酸分子、ならびに前記核酸分子を含有するベクターおよび宿主が開示される。また、本発明は、本発明の化合物を含有する組成物、好ましくは医薬または診断用組成物、ならびに本発明の抗体分子、核酸分子、ベクターおよび宿主の特定の利用方法を提供する。
【0002】
本明細書の文中には、多数の文書が引用されている。本明細書中に引用する各文書(あらゆる製造業者の仕様書、使用説明書等を含む)は、参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
痴呆の全症例中の約70%は、認知に重要な脳の領域および神経回路の選択的な損傷を伴うアルツハイマー病に因る。アルツハイマー病は、特に海馬の錐体ニューロンで起こる神経原線維変化、ならびに大部分がアミロイドの蓄積からなる高密度の核および分離した暈を含む非常に多くのアミロイドの斑によって特徴付けられる。
【0004】
細胞外の神経炎の斑は、「アミロイドβ」、「Aベータ」、「Aβ4」、「β-A4」、あるいは「Aβ」と称される多量の優勢な原線維のペプチドを含む; Selkoe (1994), Ann. Rev. Cell Biol. 10, 373-403, Koo (1999), PNAS Vol. 96, pp. 9989-9990, US 4,666,829 またはGlenner (1984), BBRC 12, 1131参照。このアミロイドβは「アルツハイマー前駆体タンパク質/β-アミロイド前駆体タンパク質」(APP)に由来する。APPは内在性膜糖タンパク質であり(Sisodia (1992), PNAS Vol. 89, pp. 6075参照)、細胞膜プロテアーゼであるα-セクレターゼによって、Aβ配列内で、その内部を切断される(Sisodia (1992), loc. cit.参照)。さらに、セクレターゼ活性、特にβ-セクレターゼおよびγ-セクレターゼの活性は、39アミノ酸(Aβ39)、40アミノ酸(Aβ40)、42アミノ酸(Aβ42)、または43アミノ酸(Aβ43)のいずれかを含有するアミロイド-βの細胞外放出を導く;Sinha (1999), PNAS 96, 11094-1053; Price (1998), Science 282, 1078-1083; WO 00/72880またはHardy (1997), TINS 20, 154参照。
【0005】
注目すべき点は、Aβは天然に存在する型をいくらか有する点であり、ヒト型は上述のAβ39、Aβ40、Aβ41、Aβ42、およびAβ43と呼ばれている。最も顕著な型であるAβ42は、アミノ酸配列(N末端から):DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIA(配列番号:27)を有する。Aβ41、Aβ40、Aβ39はそれぞれC末端のアミノ酸A、IA、VIAを欠いている。Aβ43型では、上述の配列(配列番号:27)のC末端に、さらにスレオニン残基が1つついている。
【0006】
Aβ40原線維を凝集させるのに要する時間はAβ42原線維を凝集させるのに要する時間よりかなり長いことが示されている; Koo, loc. cit.およびHarper (1997), Ann. Rev. Biochem. 66, 385-407参照。Wagner (1999), J. Clin. Invest. 104, 1239-1332の概説のように、Aβ42は神経炎の斑に関わっていることがより頻繁に認められており、インビトロではより原線維を生成すると考えられている。Aβ42は、規則正しい非結晶性Aβペプチドの核形成依存的な重合において「種(seed)」として働くとも提唱されている; Jarrett (1993) Cell 93, 1055-1058。
【0007】
強調すべき点は、修飾されたAPPのプロセシングおよび/またはタンパク質様の沈着物を含む細胞外の斑の産生はアルツハイマーの病理だけでなく他の神経および/または神経変性障害の患者からも見られることである。このような障害には、特に、ダウン症候群、アミロイドーシスオランダ型を伴う遺伝性脳出血、パーキンソン病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、クロイツフェルト‐ヤーコブ病、HIV関連の痴呆および運動ニューロパシーが含まれる。
【0008】
アミロイド斑の病的な沈着に関連する障害および/または疾患を予防、処置および/または寛解するために、β-アミロイド斑形成を妨げ、Aβ凝集を防ぐことができ、かつ/またはすでに形成されたアミロイドの沈着またはアミロイドβの凝集の脱重合に有用な手段および方法が開発されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、修飾された、かつ/または病的なアミロイドの生物学の重篤な欠陥を考慮すると、アミロイド関連障害を処置するための手段および方法が強く望まれる。特に、病的なアミロイド凝集を妨げるか、凝集したAβを脱重合させ得る効果的な薬が望まれる。さらに、特にアミロイド斑検出する診断手段が望まれる。
【0010】
そのため、本発明の技術的課題は、上記の必要性に応じることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要旨は、
〔1〕第1の領域が配列番号:1に示されるアミノ酸配列AEFRHDSGYまたはその断片を含み、第2の領域が配列番号:2に示されるアミノ酸配列VHHQKLVFFAEDVGまたはその断片を含有してなるβ-A4ペプチド/Aβ4の2つの領域を特異的に認識することができる抗体分子、
〔2〕前記抗体分子がβ-A4の2つの領域内の少なくとも2つの連続したアミノ酸を認識する〔1〕記載の抗体分子、
〔3〕前記抗体分子が、第1の領域においてAEFRHD、EF、EFR、FR、EFRHDSG、EFRHDまたはHDSGを含むアミノ酸を認識し、第2の領域においてHHQKL、LV、LVFFAE、VFFAEDまたはVFFA、FFAEDVを含むアミノ酸配列を認識する〔1〕または〔2〕記載の抗体分子、
〔4〕前記抗体分子が、配列番号:3、5もしくは7からなる群より選ばれる配列番号に示される核酸分子によりコードされる可変VH-領域または配列番号4、6もしくは8からなる群より選ばれる配列番号に示される可変VH-領域を含有してなる〔1〕〜〔3〕いずれか記載の抗体分子、
〔5〕前記抗体分子が、配列番号:9、11および13からなる群より選ばれる配列番号に示される核酸分子によりコードされる可変VL-領域または配列番号10、12および14からなる群より選ばれる配列番号に示される可変VL-領域を含有してなる〔1〕〜〔3〕いずれか記載の抗体分子、
〔6〕配列番号15、17もしくは19に示される核酸分子によりコードされるVL-領域の少なくとも1つのCDR3、または配列番号:16、18もしくは20に示されるVL-領域の少なくとも1つのCDR3アミノ酸配列を含有してなり、および/または配列番号:21、23または25に示される核酸分子によりコードされるVH-領域の少なくとも1つのCDR3または配列番号:22、24もしくは26に示されるVH-領域の少なくとも1つのCDR3アミノ酸配列を含有してなる〔1〕〜〔5〕いずれか記載の抗体分子、
〔7〕前記抗体が、MSR-3、-7および-8または親和性-成熟バージョンのMSR-3、-7もしくは-8からなる群より選ばれる〔1〕〜〔6〕いずれか記載の抗体分子、
〔8〕全長抗体(免疫グロブリン)、F(ab)-断片、F(ab)2-断片、単鎖抗体、キメラ抗体、CDR-グラフト抗体、二価抗体構築物、合成抗体またはクロスクローニング抗体である〔1〕〜〔7〕いずれか記載の抗体分子、
〔9〕前記β-A4の少なくとも2つの領域が立体配座エピトープまたは不連続エピトープを形成する〔1〕〜〔8〕いずれか記載の抗体分子、
〔10〕クロスクローニング抗体が、
MS-R#3.3H1 x 3.4L9;
MS-R#3.6H5 x 3.6L2;
MS-R#3.6H8 x 3.6L2;
MS-R#7.4H2 x 7.2L1;
MS-R#7.9H2 x 7.12L2;
MS-R#7.9H4 x 7.12L2;
MS-R#7.11H1 x 7.11L1;
MS-R#7.11H1 x 7.2L1;
MS-R#3.3H1 x 3.4L1;
MS-R#3.4H1 x 3.4L9;
MS-R#3.4H3 x 3.4L7;
MS-R#3.4H3 x 3.4L9;
MS-R#3.4H7 x 3.4L9;
MS-R#3.4H7 x 3.4L7;
MS-R#3.6H5 x 3.6L1;
MS-R#7.2H2 x 7.2L1;
MS-R#7.4H2 x 7.12L2;
MS-R#7.9H2 x 7.2L1;
MS-R#7.9H2 x 7.12L1;
MS-R#7.11H2 x 7.2L1;
MS-R#7.11H2 x 7.9L1;
MS-R#7.11H2 x 7.12L1または
MS-R#8.1H1 x 8.2L1
からなる群より選ばれる〔8〕または〔9〕記載の抗体分子、
〔11〕〔1〕〜〔10〕いずれか記載の抗体分子をコードする核酸分子、
〔12〕〔11〕記載の核酸分子を含有してなるベクター、
〔13〕〔12〕記載のベクターを含有してなる宿主細胞、
〔14〕〔1〕〜〔10〕いずれか記載の抗体分子の合成を許容する条件下で〔13〕記載の宿主細胞を培養する工程および該培養から抗体分子を回収する工程を含む、〔1〕〜〔10〕いずれか記載の抗体分子の調製方法、
〔15〕〔1〕〜〔10〕いずれか記載の抗体分子または〔14〕記載の方法により製造された抗体分子を含有してなる組成物、
〔16〕医薬組成物または診断用組成物である〔15〕記載の組成物、
〔17〕アミロイド形成および/またはアミロイド斑形成に関連する疾患の予防および/または処置のための医薬組成物の調製のための、〔1〕〜〔10〕いずれか記載の抗体分子もしくは〔14〕記載の方法により製造された抗体分子、〔11〕記載の核酸分子、〔12〕記載のベクターまたは〔13〕記載の宿主の使用、
〔18〕アミロイド形成および/またはアミロイド斑形成に関連する疾患の検出のための診断用組成物の調製のための、〔1〕〜〔10〕いずれか記載の抗体分子または〔14〕記載の方法により製造された抗体分子の使用、
〔19〕β-アミロイド斑の分解のための医薬組成物の調製のための、〔1〕〜〔10〕いずれか記載の抗体分子または〔14〕記載の方法により調製された抗体分子の使用、
〔20〕β-アミロイド斑形成に対する受動免疫のための医薬組成物の調製のための、〔1〕〜〔10〕いずれか記載の抗体分子または〔14〕記載の方法により製造された抗体分子の使用、
〔21〕前記疾患が、痴呆、アルツハイマー病、運動性ニューロパシー、ダウン症候群、クロイツフェルトヤーコブ病、アミロイドーシスオランダ型を伴う遺伝性脳溢血、パーキンソン病、HIV-関連痴呆、ALSまたは加齢に関連する神経障害である〔17〕または〔18〕記載の請求項の使用、
〔22〕〔1〕〜〔10〕いずれか記載の抗体分子、〔16〕記載の核酸分子、〔17〕記載のベクターまたは〔18〕記載の宿主細胞を含有してなるキット、
〔23〕(a)配列番号:21、23もしくは25に示される核酸分子によりコードされるVH-領域の少なくとも1つのCDR3または配列番号:22、24もしくは26に示されるVH-領域の少なくとも1つのCDR3アミノ酸配列を含有する抗体に由来する多様化したFab抗体断片のライブラリーを構築する工程、
(b)得られたFab最適化ライブラリーをAβ/Aβ4に対するパニングにより試験する工程;
(c)最適化クローンを同定する工程;および
(d)選択した、最適化クローンを発現させる工程
を含む〔1〕〜〔10〕いずれかに規定される抗体分子の最適化方法、
〔24〕工程(ca)をさらに含み、それにより最適化クローンがカセット変異誘発によりさらに最適化される〔23〕記載の方法、
〔25〕前記工程(b)のAβ/Aβ4が凝集Aβ/Aβ4である〔23〕または〔24〕記載の方法、
〔26〕前記工程(c)の同定がKoffランク付けにより行われる〔23〕〜〔25〕いずれか記載の方法、
〔27〕(a)〔23〕〜〔26〕いずれか記載の方法による抗体の最適化の工程;および
(b)最適化された抗体/抗体分子と生理学的に許容されうるキャリアとを製剤化する工程
を含む医薬組成物の調製方法、
〔28〕〔27〕記載の方法により調製された医薬組成物
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって、アミロイド関連障害を処置するための手段および方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1−1】図1は、HuCAL(登録商標)-Fab1ライブラリーの配列の概要を示す。 番号付けは、VLλの9位におけるギャップを除き、VBASEに従っている。VBASEでは、ギャップは10位に配置されている(Chothiaら, 1992)。配列の概要には、一定に維持されたすべてのCDR3残基を示す。HuCAL-Fab1ライブラリーに使用した対応配列を添付の配列表に示す。 A: アミノ酸配列 B: DNA配列
【図1−2】図1は、HuCAL(登録商標)-Fab1ライブラリーの配列の概要を示す。 番号付けは、VLλの9位におけるギャップを除き、VBASEに従っている。VBASEでは、ギャップは10位に配置されている(Chothiaら, 1992)。配列の概要には、一定に維持されたすべてのCDR3残基を示す。HuCAL-Fab1ライブラリーに使用した対応配列を添付の配列表に示す。 A: アミノ酸配列 B: DNA配列
【図1−3】図1は、HuCAL(登録商標)-Fab1ライブラリーの配列の概要を示す。 番号付けは、VLλの9位におけるギャップを除き、VBASEに従っている。VBASEでは、ギャップは10位に配置されている(Chothiaら, 1992)。配列の概要には、一定に維持されたすべてのCDR3残基を示す。HuCAL-Fab1ライブラリーに使用した対応配列を添付の配列表に示す。 A: アミノ酸配列 B: DNA配列
【図1−4】図1は、HuCAL(登録商標)-Fab1ライブラリーの配列の概要を示す。 番号付けは、VLλの9位におけるギャップを除き、VBASEに従っている。VBASEでは、ギャップは10位に配置されている(Chothiaら, 1992)。配列の概要には、一定に維持されたすべてのCDR3残基を示す。HuCAL-Fab1ライブラリーに使用した対応配列を添付の配列表に示す。 A: アミノ酸配列 B: DNA配列
【図1−5】図1は、HuCAL(登録商標)-Fab1ライブラリーの配列の概要を示す。 番号付けは、VLλの9位におけるギャップを除き、VBASEに従っている。VBASEでは、ギャップは10位に配置されている(Chothiaら, 1992)。配列の概要には、一定に維持されたすべてのCDR3残基を示す。HuCAL-Fab1ライブラリーに使用した対応配列を添付の配列表に示す。 A: アミノ酸配列 B: DNA配列
【図2−1】図2は、FabディスプレイベクターpMORPH(登録商標)18#Fabを示す。 制限部位を含むベクター地図およびDNA配列
【図2−2】図2は、FabディスプレイベクターpMORPH(登録商標)18#Fabを示す。 制限部位を含むベクター地図およびDNA配列
【図2−3】図2は、FabディスプレイベクターpMORPH(登録商標)18#Fabを示す。 制限部位を含むベクター地図およびDNA配列
【図2−4】図2は、FabディスプレイベクターpMORPH(登録商標)18#Fabを示す。 制限部位を含むベクター地図およびDNA配列
【図2−5】図2は、FabディスプレイベクターpMORPH(登録商標)18#Fabを示す。 制限部位を含むベクター地図およびDNA配列
【図2−6】図2は、FabディスプレイベクターpMORPH(登録商標)18#Fabを示す。 制限部位を含むベクター地図およびDNA配列
【図2−7】図2は、FabディスプレイベクターpMORPH(登録商標)18#Fabを示す。 制限部位を含むベクター地図およびDNA配列
【図2−8】図2は、FabディスプレイベクターpMORPH(登録商標)18#Fabを示す。 制限部位を含むベクター地図およびDNA配列
【図2−9】図2は、FabディスプレイベクターpMORPH(登録商標)18#Fabを示す。 制限部位を含むベクター地図およびDNA配列
【図3−1】図3は、Fab発現ベクターpMORPH(登録商標)x9#Fabを示す。 制限部位を含むベクター地図およびDNA配列
【図3−2】図3は、Fab発現ベクターpMORPH(登録商標)x9#Fabを示す。 制限部位を含むベクター地図およびDNA配列
【図3−3】図3は、Fab発現ベクターpMORPH(登録商標)x9#Fabを示す。 制限部位を含むベクター地図およびDNA配列
【図3−4】図3は、Fab発現ベクターpMORPH(登録商標)x9#Fabを示す。 制限部位を含むベクター地図およびDNA配列
【図3−5】図3は、Fab発現ベクターpMORPH(登録商標)x9#Fabを示す。 制限部位を含むベクター地図およびDNA配列
【図3−6】図3は、Fab発現ベクターpMORPH(登録商標)x9#Fabを示す。 制限部位を含むベクター地図およびDNA配列
【図3−7】図3は、Fab発現ベクターpMORPH(登録商標)x9#Fabを示す。 制限部位を含むベクター地図およびDNA配列
【図3−8】図3は、Fab発現ベクターpMORPH(登録商標)x9#Fabを示す。 制限部位を含むベクター地図およびDNA配列
【図4−1】図4は、親Fab断片MS-Roche-3、MS-Roche-7およびMS-Roche 8の配列を示す。 A: アミノ酸配列 B: DNA配列
【図4−2】図4は、親Fab断片MS-Roche-3、MS-Roche-7およびMS-Roche 8の配列を示す。 A: アミノ酸配列 B: DNA配列
【図4−3】図4は、親Fab断片MS-Roche-3、MS-Roche-7およびMS-Roche 8の配列を示す。 A: アミノ酸配列 B: DNA配列
【図4−4】図4は、親Fab断片MS-Roche-3、MS-Roche-7およびMS-Roche 8の配列を示す。 A: アミノ酸配列 B: DNA配列
【図4−5】図4は、親Fab断片MS-Roche-3、MS-Roche-7およびMS-Roche 8の配列を示す。 A: アミノ酸配列 B: DNA配列
【図5】図5は、ヒト側頭皮質のクリオスタット切片由来のアミロイド-斑の間接免疫蛍光を示す。斑を、ストリンジェントブロッキング条件下、MS-R # 3.2 Fab(上パネル)およびMS-R # 7.4 Fab(下パネル)で、20μg/ml(左パネル)および5μg/ml(右パネル)にて標識した。結合したMS-R Fabをヤギ抗-ヒト-Cy3により顕現した。
【図6】図6は、ヒト側頭皮質のクリオスタット切片由来のアミロイド-斑の間接免疫蛍光を示す。斑を、ストリンジェントブロッキング条件下、MS-R # 3.3 IgG1(上パネル)およびMS-R # 7.12 IgG1(下パネル)で、0.05μg/ml(左パネル)および0.01μg/ml(右パネル)にて標識した。結合したMS-R IgG1抗体をヤギ抗-ヒト(H+L)-Cy3により顕現した。
【図7】図7は、最終アフィニティー成熟後の抗体を用いた、ヒト側頭皮質のクリオスタット切片由来のアミロイド-斑の間接免疫蛍光を示す。斑を、MS-R # 7.9.H7 IgG1(MAB 31、上パネル)、MS-R # 7.11.H1x7.2.L1 IgG1(MAB 11、中央パネル)およびMS-R # 3.4.H7、下パネル)で標識した。抗体は、ストリンジェントブロッキング条件下、0.05μg/ml(左パネル)および0.01μg/ml(右パネル)で使用した。結合したMS-R IgG1抗体をヤギ抗-ヒト(H+L)-Cy3により顕現した。 縮尺: 8.5 mm = 150μm.
【図8】図8は、重合アッセイを示す。抗-Aβ抗体は、予め形成されたAβ凝集塊へのビオチン化Aβの結合を抑制する。
【図9−1】図9は、解重合アッセイを示す。抗-Aβ抗体は、凝集Aβからのビオチン化Aβの放出を誘導する。
【図9−2】図9は、解重合アッセイを示す。抗-Aβ抗体は、凝集Aβからのビオチン化Aβの放出を誘導する。
【図9−3】図9は、解重合アッセイを示す。抗-Aβ抗体は、凝集Aβからのビオチン化Aβの放出を誘導する。
【図9−4】図9は、解重合アッセイを示す。抗-Aβ抗体は、凝集Aβからのビオチン化Aβの放出を誘導する。
【図10】図10は、1mg MS-Roche IgG #7.9.H2 x 7.12.L2の静脈内注射後のAPP/PS2 二重トランスジェニックマウスにおけるアミロイド斑のインビボ修飾(decoration)を示す。3日後、マウスをリン酸緩衝生理食塩水で灌流し、屠殺した。前頭皮質由来のクリオスタット切片をヤギ抗-ヒトIgG-Cy3コンジュゲートで標識した後、アミロイド斑に結合したヒトIgGの存在を共焦点顕微鏡検査により顕現した(パネルB)。同じ切片を抗-Aβマウスモノクローナル抗体(BAP-2-Alexa488コンジュゲート、パネルA)で対比染色し、アミロイド斑の位置を可視化した。個々の赤(パネルB)および緑(パネルA)チャネル、合成(merged)図(パネルD)および同時局在(パネルC)シグナルを示す。 縮尺: 1 cm = 50μm
【図11】図11は、1mg MS-Roche IgG #7.9.H4 x 7.12.L2の静脈内注射後のAPP/PS2 二重トランスジェニックマウスにおけるアミロイド斑のインビボ修飾を示す。実験条件および染色手順は図10の説明に記載のものと同じにした。 縮尺: 1.6 cm = 50μm
【図12】図12は、1mg MS-Roche IgG #7.11.H1 x 7.2.L1 (MAB 11)の静脈内注射後のAPP/PS2 二重トランスジェニックマウスにおけるアミロイド斑のインビボ修飾を示す。実験条件および染色手順は図10の説明に記載のものと同じにした。 縮尺: 1.4 cm = 70μm
【図13】図13は、第0日、第3日および第6日に2 mg MS-Roche IgG #7.9.H7 (MAB 31)静脈内注射後のAPP/PS2 二重トランスジェニックマウスにおけるアミロイド斑のインビボ修飾を示す。9日後、マウスをリン酸緩衝生理食塩水で灌流し、屠殺した。前頭皮質由来のクリオスタット切片をヤギ抗-ヒトIgG-Cy3コンジュゲートで標識した後、アミロイド斑に結合したヒトIgGの存在を共焦点顕微鏡検査により顕現した(パネルB)。同じ切片を抗-Aβマウスモノクローナル抗体(BAP-2-Alexa488コンジュゲート、パネルA)で対比染色し、アミロイド斑の位置を可視化した。個々の赤(パネルB)および緑(パネルA)チャネル、合成図(パネルD)および同時局在(パネルC)シグナルを示す。 縮尺: 1.6 cm = 80μm (パネルA, B, C); 1.0 cm = 50μm (パネルD)
【図14】図14は、第0日、第3日および第6日に2 mg MS-Roche IgG #7.11.H1 x 7.2.L1 (MAB 11)の静脈内注射後のAPP/PS2 二重トランスジェニックマウスにおけるアミロイド斑のインビボ修飾を示す。実験条件および染色手順は図13の説明に記載のものと同じにした。 縮尺: 1.6 cm = 80μm
【図15−1】図15は、抗-Aβ抗体の細胞表面APPへの結合解析を示す。ヒトAPP-トランスフェクトHEK293細胞および非トランスフェクト対照細胞への抗体結合をフローサイトメトリーにより解析した。
【図15−2】図15は、抗-Aβ抗体の細胞表面APPへの結合解析を示す。ヒトAPP-トランスフェクトHEK293細胞および非トランスフェクト対照細胞への抗体結合をフローサイトメトリーにより解析した。
【図15−3】図15は、抗-Aβ抗体の細胞表面APPへの結合解析を示す。ヒトAPP-トランスフェクトHEK293細胞および非トランスフェクト対照細胞への抗体結合をフローサイトメトリーにより解析した。
【図15−4】図15は、抗-Aβ抗体の細胞表面APPへの結合解析を示す。ヒトAPP-トランスフェクトHEK293細胞および非トランスフェクト対照細胞への抗体結合をフローサイトメトリーにより解析した。
【発明を実施するための形態】
【0014】
したがって、本発明は、β-A4/Aβ4ペプチドの2つの領域:アミノ酸配列AEFRHDSGY(配列番号:1)を含有する第一の領域またはその断片、およびアミノ酸配列VHHQKLVFFAEDVG(配列番号:2)を含有する第二の領域またはその断片を特異的に認識し得る抗体分子に関する。
【0015】
本発明に関して、「抗体分子」という用語は、免疫グロブリン分子全体、好ましくはIgM、IgD、IgE、IgAまたはIgG、さらに好ましくはIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3またはIgG4に関し、またこのような免疫グロブリン分子の一部であるFabフラグメントまたはVL、VH、またはCDR領域のような部分にも関する。さらに、この用語は、キメラまたはヒト化抗体のような、組換えおよび/または変性抗体分子にも関する。この用語はまた、組換えまたは変性モノクローナルまたはポリクローナル抗体にも関し、また組換えあるいは合成によって産生/合成された抗体にも関する。この用語はまた、完全な抗体、および分離したL鎖やH鎖、Fab、Fab/c、Fv、Fab'、F(ab')2のような抗体の断片/部分にも関する。「抗体分子」という用語はまた、一本鎖Fvs(scFv)、二重特異性scFvまたは抗体融合タンパク質のような抗体の誘導体、二機能性の抗体、抗体構築物も含む。本発明における「抗体分子」という用語に関して、以下にさらに詳細に示す。
【0016】
「特異的に認識する」という用語は、本発明に関して、抗体分子が、本明細書中で規定されたβ-A4の2つの各領域の2つ以上のアミノ酸と特異的に反応および/または結合することを意味する。前述の用語は、抗体分子の特異性、つまり本明細書中で規定されたβ-A4ペプチドの特定の領域と、β-A4ペプチドまたは他に関する領域ではない、またはAPP関連タンパク質/ペプチド/(非関連)テストペプチドではない他の領域とを識別することができる能力に関する。したがって、特異性は、実験的に、当該分野で公知の方法および本明細書中に開示し説明する方法を用いて求められ得る。かかる方法としては、ウエスタンブロット、ELISA、RIA、ECL、IRMAテストおよびペプチドスキャンが挙げられるが、これらに限定されない。かかる方法としてはまた、特に添付の実施例に説明されているKD値の測定が挙げられる。ペプチドスキャン(pepspotアッセイ)はポリペプチド抗原のリニアエピトープをマッピングするのに慣例的に用いられる。ポリペプチドの一次配列は活性化セルロース上で、オーバーラップするペプチドによって連続的に合成される。特定の抗原/エピトープを検出または認識する能力を量られる抗体による特定のペプチドの認識は、慣例的な呈色(ホースラディッシュペルオキシダーゼおよび4-クロロナフトールおよび過酸化水素を付加した二次抗体)、化学発光反応または類似した当該分野で公知の手段によって点数がつけられる。特に化学発光反応の場合には、反応は定量化され得る。抗体がある組のオーバーラップするペプチドと反応すると、反応に必須なアミノ酸の最少の配列を推測することができる;実施例6および添付の表2参照。
同様のアッセイは、2つの離れた反応性ペプチドの集合を明らかにすることができる。これは、抗原性ポリペプチドの不連続、つまり立体配座エピトープ(Geysen(1886), Mol. Immunol. 23 709-715)の認識を示す。
【0017】
pepspotアッセイに加え、標準的なELISAアッセイを実施し得る。添付の実施例に説明されているように、小さいヘキサペプチドをタンパク質に結合させてイムノプレートを覆い、テスト対象の抗体と反応させることができる。点数づけは、標準的な呈色(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼを付加した二次抗体と、過酸化水素を付加したテトラメチルベンジジン)によって行なわれ得る。特定のウェル中での反応を、例えば450 nmにおける、吸光度によって点数づける。典型的なバックグラウンド(陰性反応)は0.1 ODであり得、典型的な陽性反応は1 ODであり得る。これは、陽性/陰性の差(比)が10倍より大きくなり得ることを意味する。さらなる詳細は、添付の実施例に示されている。特異性や、本明細書中に規定されたβ-A4ペプチドの2つの領域を「特異的に認識する」能力を測定する定量的な方法を以下にさらに示す。
【0018】
「β-A4ペプチドの2つの領域」という用語は、β-A4ペプチドのN末端のアミノ酸2〜10および中央のアミノ酸12〜25に関する配列番号:1および2に示されるアミノ酸配列によって規定される2つの領域に関する。「β-A4ペプチド」という用語は、本発明においては、上記Aβ39、Aβ41、Aβ43、好ましくはAβ40およびAβ42に関する。Aβ42はまた、添付の配列番号:27にも記されている。注目すべき点は、「β-A4ペプチドの2つの領域」という用語はまた、「エピトープ」および/または、本明細書中に規定されるβ-A4ペプチドの2つの領域またはその一部を含有する「抗原決定基」にも関することである。本発明に関して、前述のβ-A4ペプチドの2つの領域は、β-A4ペプチドの一次構造において、少なくとも1アミノ酸、好ましくは少なくとも2アミノ酸、さらに好ましくは少なくとも3アミノ酸、さらに好ましくは少なくとも4アミノ酸、さらに好ましくは少なくとも5アミノ酸、さらに好ましくは少なくとも6アミノ酸、さらに好ましくは少なくとも9アミノ酸、最も好ましくは少なくとも12アミノ酸によって(アミノ酸配列レベルで)離れている。本明細書中に示されるように、また添付の実施例に付記されているように、本発明の抗体分子は、本明細書中に規定されるようなβ-A4ペプチドの2つの領域を検出し/それらと相互作用し、および/またはそれらに結合し、それによって前述の2つの領域は、少なくとも1つのアミノ酸によって(アミノ酸配列の一次構造レベルで)分離され、前述の2つの領域/エピトープを分離させる配列は、10以上、好ましくは14以上、さらに好ましくは15または16以上のアミノ酸を含み得る。例えば、(本発明の抗体分子として)MSR-3 Fabはβ-A4ペプチドの2つの領域を検出し、/それらと相互作用し、前述の第一の領域にはアミノ酸3および4(EF)が含まれ、前述の第二の配列にはアミノ酸18〜23(VFFAED)が含まれる。したがって、検出/認識される領域/エピトープの間を分離する配列は、一次アミノ酸配列構造上13個のアミノ酸を有する。同様に、MSR-3由来であり、IgG1骨格に含まれ、最適化され、成熟した抗体分子MSR #3.4H7 IgG1は、本明細書中に規定されたようにβ-A4の第一の領域の1位〜4位(DAEF)および第二の領域の19位〜24位(FFAEDV)を含有するβ-A4の2つのエピトープ/領域を検出/と相互作用/結合する。したがって、MSR #3.4H7 IgG1は、一次アミノ酸配列レベルにおいて14個のアミノ酸によって隔てられた、一次アミノ酸配列上の2つのエピトープ/領域を認識/検出/と結合する。添付の実施例に詳述されているように、一価の発明のFabフラグメントの、全長のIgG1抗体への親和性の成熟および転換は、pepspot アッセイ、ELISAアッセイ等で検出されるエピトープ/領域を拡張することになる。したがって、本発明の抗体分子は、同時に、および独立して、配列番号:1に示されるアミノ酸配列(またはその部分)および配列番号:2に示されるアミノ酸配列(またはその一部)を含む領域である、2つのβ-A4ペプチド/Aβ4の領域を認識することができる。しかしながら、本明細書中に詳述されるエピトープが広幅化する可能性により、配列番号:1および2の配列に極めて近接しているアミノ酸を検出/認識すること、すなわち、さらなるアミノ酸が、検出/認識される2つの領域の一部になることも考えられる。したがって、例えば本明細書中に規定されるAβ(1-42)の一つ目のアミノ酸、すなわちD(アスパラギン酸)が検出/認識されるエピトープの一部になることや、配列番号:2で規定されるAβ(1-42)の後に位置するアミノ酸が検出/認識されることも考えられる。前述のさらなるアミノ酸は、例えば、配列番号:27(βA4/Aβ(1-42))の26位にあるアミノ酸、つまりS(セリン)であり得る。
【0019】
この用語はまた、前述の2つの領域またはその部分を含む立体配座エピトープ、構造エピトープまたは不連続エピトープにも関する; Geysen (1986), loc. cit.参照。本発明において、立体配座エピトープは、ポリペプチドが折り畳まれてナイーブタンパク質になったときに一緒に表面に現れる一次構造上分離される2つ以上の別々のアミノ酸配列によって規定される(Sela,(1969), Science 166, 1365 およびLaver, (1990) Cell 61, 553-6)。本発明の抗体分子は、下記に記されているβ-A4の2つの領域または以下に開示されるそれらの部分からなり、かつ/またはそれらの領域または部分を含有する立体配座/構造エピトープと特異的に結合/相互作用すると考えられる。本発明の「抗体分子」は、(a)β-A4のアミノ酸2〜10を含有する範囲(またはその一部)および(b)β-A4のアミノ酸12〜25を含有する範囲(またはその一部)(配列番号:27)に対する同時の、または独立した2つの特異性を含むと考えられる。このような範囲の断片または部分には、2つ以上、さらに好ましくは3つ以上のアミノ酸が含まれる。好ましい断片または部分は、配列番号:27の第一の領域/範囲ではアミノ酸配列AEFRHD、EF、EFR、FR、EFRHDSG、EFRHDまたはHDSGであり、配列番号:27の第二の領域/範囲ではアミノ酸配列HHQKL、LV、LVFFAE、VFFAED、VFFAまたはFFAEDVである。上で述べたように、上述の断片はさらなるアミノ酸を含有することができるか、または本明細書中に規定される断片の部分であり得る。具体例はDAE、DAEF、FRHまたはRHDSGである。
【0020】
Aβ抗体を特異的に認識する多数の抗体が当該分野において述べられてきた。これらの抗体は主に、一般的な技術を用いて、動物をAβ1-40もしくはAβ1-42またはその断片で免疫することで得られてきた。公表されたデータによると、完全なAβペプチド(1-40または1-42)を用いた免疫によって産生されたモノクローナル抗体は、AβのN末端に近接するエピトープを排他的に認識する。さらに、マウスをAβ1-40で免疫することで得られ、Aβペプチドの中のより大きいアミノ酸4-6を認識する抗体BAP-1およびBAP-2(Brockhaus、未発表)が例として挙げられる;添付の実施例7、表2および実施例12、表7参照。Aβの中央部分を認識する抗体はより小さいペプチドを用いた免疫によって得られる。例えば、抗体4G8はAβペプチド1-24を用いた免疫によって産生され、配列17-24を排他的に認識する(Kim, (1988) Neuroscience Research Communications 2, 121-130)。マウスをAβ由来断片で免疫することによって、他にも多くのモノクローナル抗体が作られてきた。また、ELISAアッセイ、ウエスタンブロットおよび免疫組織化学分析を用いて体液中または組織内の対応するAβペプチドを識別し、定量するために、Aβ1-40およびAβ1-42のC末端を認識する抗体が広く用いられている(Idaら, (1996) J. Biol. Chem. 271, 22908-22914; Johnson-Woodら, (1997), Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1994), 1550-1555; Suzukiら, (1994), Science 264, 1336-1340; Brockhaus (1998). Neuro Rep. 9, 1481-1486)。BAP-17は、マウスをAβ断片35-40で免疫することで得られてきたマウスモノクローナル抗体である。これはAβ1-40のC末端を特異的に認識する(Brockhaus (1998) Neuroreport 9, 1481-1486)。
T細胞依存性の抗原(しばしば弱い免疫原)を用いた免疫は、抗原提示細胞のエンドソームにある抗原の、タンパク質分解による切断を必要とする。免疫後の、親和性の高い抗体のインビボでの選択は、ヘルパーT細胞の、抗原提示細胞への接触によって行なわれる。抗原提示細胞は、短いペプチドだけを提示し、サイズの大きいポリペプチドは提示しない。したがって、これらの細胞は、抗原を取り込み、エンドソーム中で抗原を分解し、選択されたペプチドと適切なMHCクラスII分子を結合させ、ペプチド‐MHC複合体を細胞表面に輸送する、複雑な(しかし周知の)機構を有する。これにより、B細胞の成熟を助けるために、T細胞による抗原特異的な認識が起こる。T細胞の助けのほとんどを得るB細胞は、抗原分泌細胞に分化し、増殖する見込みが最も高い。このことは、タンパク質分解による抗原のプロセシングが、インビボで親和性の高い抗体の応答を得るために重要なステップであることを示し、先行技術の、免疫によって得られるモノクローナルおよびポリクローナル抗体のN末端Aβエピトープの優越を説明し得る。
対照的に、本発明の抗体分子の選択は、Fab発現ファージの抗原への物理的接着によってなされる。このインビトロの選択プロセスでは、抗原の分解は起こらない。抗原に対して最も高い親和性を有するFabを発現するファージが選択され、増殖する。本発明に関して特異的な抗体分子を得るために選択された添付の実施例で用いられている合成ライブラリーは、免疫されたB細胞由来のライブラリーでしばしば見られる、単一の連続したエピトープへのいかなる偏りも避けるために特に適している。
【0021】
注目すべき点は、従来の技術では、不連続/構造/立体配座エピトープを特異的に認識し、かつ/または同時、および独立してAβ4の2つの領域/エピトープを認識することができる、Aβの2つの別々の領域を認識する抗体分子について記されてこなかったことである。変異ヒトAPPV717Fを過剰発現しているトランスジェニックマウス(PDAPPマウス)を、Aβ1-42を用いてワクチン接種すると、若い個体で処理を始めた場合、すなわち神経障害の発病の前では、脳でのアミロイドの沈着がほぼ完全に防がれたが、老いた個体では、すでに形成されていた斑の減少が見られ、抗体を介した斑の除去が示唆された(Schenkら, (1999), Nature 400, 173-177)。この免疫処理によって産生された抗体は、アミノ酸3-7周辺のエピトープに渡るAβ4のN末端に反応性があった(Schenkら, (1999), loc. cit.; WO 00/72880)。Aβ1-42を用いた能動免疫により、アルツハイマー病の種々のトランスジェニックモデル系で、行動障害および記憶障害が減少した(Janusら, (2000) Nature 408, 979-982; Morganら, (2000) Nature 408, 982-985)。それにつづく、末梢に投与した抗体を用いた研究、すなわち受動免疫法によって、APPトランスジェニックマウス(PDAPPマウス)において、抗体は中枢神経に進入し、斑を装飾し、既存のアミロイド斑の除去を引き起こすことができることが確かめられた(Bardら, (2000) Nat. Med. 6, 916-919; WO 00/72880)。これらの研究では、インビボおよびエキソビボでの潜在的な効果の最も高い抗体(外因性ミクログリア細胞の食作用を引き起こす)はAβ4のN末端エピトープ1-5(mab 3D6、IgG2b)または3-6(mab 10D5、IgG1)を認識するものだった。同様に、Aβ1-42を用いた免疫後にマウス、ウサギまたはサルから単離されたポリクローナル抗体は、同様のN末端エピトープ特異性を示し、また、食作用およびインビボでの斑の除去の誘導に有効であった。対照的に、Aβ1-40またはAβ1-42に高い親和性をもって結合するC末端特異的な抗体は、エキソビボアッセイで食作用を引き起こさず、インビボで有効ではなかった(WO 00/72880)。モノクローナル抗体m266(WO 00/72880)は、Aβ13-28(Aβの中央ドメイン)に対して引き起こされ、エピトープマッピングによって抗体特異性がAβ配列のアミノ酸16〜24に渡ることが確かめられた。この抗体は、凝集したAβやアミロイド沈着にうまく結合せず、可溶性(単量体の)Aβとだけ反応する。これはすなわち,同じエピトープを認識する、他の周知で市販のモノクローナル抗体(4G8; Kim, (1998) Neuroscisnce Research Communications 2, 121-130; Signet Laboratories Inc. Dedham, MA, USAより購入可能)に類似する特性である。
【0022】
最近、インビボで、m266抗体が末梢への注射後のPDAPPマウスにおいてAβ沈着物を著しく減少させることがわかった(DeMattos, (2001) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98, 8850-8855)。しかし、N末端特異的な抗体とは対照的に、m266はインビボでアミロイド斑を修飾しなかった。そのため、CNSと血漿Aβとの間の均衡が、抗体によって変化を引き起こされ、末梢においてm266に固く複合体化した脳由来Aβの蓄積を生じることにより、脳のAβの負荷が減少したという仮説が立てられた(DeMattos, (2001) loc. cit.)。
【0023】
本発明の抗体/抗体分子は、(例えば本明細書中に記されているβA4のN末端および中央の領域によって形成される構造/立体配座エピトープのように)同時に、または(例えば添付の実験パートに付記されているpepspotアッセイのように)独立してN末端および中央のエピトープに結合することによって、N末端特異的な抗体と中央のエピトープ特異的な抗体の特性を一つの分子中で結びつける。本発明に記述されているような、2つのエピトープに対する特異性を有する抗体は、インビボで、例えばアミロイド斑の負荷またはアミロイドの発生の減少やアミロイド沈着および斑の検出といった、特に医療および診断の場面では、より有効だと考えられている。Aβ4凝集およびアミロイド沈着のプロセスでコンフォメーションの変化が起こり、中央のエピトープは可溶性Aβ4中では容易に得られるが、沈着または線維化したAβ4中では隠れてしまい、反応性が低いようだということがよく知られている。中央の/中間のエピトープ特異的な抗体m266はインビボで有効であるという事実から、可溶性Aβ4の中和もまた重要なパラメータであり得ることが示唆される。本発明の抗体分子は、2つのエピトープに対する特異性によって、線維状および可溶性Aβ4のどちらにも同様の効能をもって結合することができ、そのため可溶性Aβ4の中和をするだけでなくアミロイド斑と反応することもできる。本発明の抗体分子に関して本明細書中で用いられる「同時に、および独立してAβ4のN末端および中央/中間エピトープに結合する」という用語は、本明細書中に記されている抗体/抗体分子がエピトープを(例えばN末端エピトープ(またはその部分)によって形成された立体配座/構造エピトープと本明細書中に特定されているβA4の中央のエピトープ(またはその部分)上で)同時に検出および/または結合でき、しかし同じ抗体分子がまた、特に実施例に示されているpepspotアッセイで説明されるように、特定されている各エピトープを検出/に独立して結合できるという事実に関する。
【0024】
PDAPPマウスにおける、抗体を脳に直接塗布した後のインビボでのアミロイド斑の除去は、IgGサブタイプと独立してはおらず、Fcを介していない機序に関与している、つまり、活性化されたミクログリアは斑の除去に関与していないようである(Bacskai, (2001), Abstract Society for Neuroscience 31st Annual Meeting, November 10-15, 2001, San Diego)。この観察は、Bard (2000), loc. cit.によるこれ以前の研究で仮定されていたことと対照的である。
【0025】
他の研究では、Aβ1-28およびAβ1-16ペプチドに対して惹起された抗体が、インビトロでのAβ原線維の脱凝集に有効であることがわかったが、Aβ13-28に特異的な抗体はこのアッセイでは活性がかなり低かった(Solomon, (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94, 4109-4112)。抗Aβ1-28抗体(AMY-33)によるAβ凝集の予防もまた報告されている(Solomon, (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 452-455)。同研究において、Aβ断片8-17に対して誘導された抗体6F/3DはZn2+に誘導されるAβ凝集をわずかに阻害したが、他の凝集誘導因子による自己凝集には効果がなかった。
これらのインビトロアッセイにおける様々な抗体の効果は、Aβ4凝集でのエピトープへの接近可能性と互いに関係がある。中央の領域とC末端は隠れていて容易に接近することはできず、そのためこれらのエピトープに対する抗体は効果がずっと低いのに対し、N末端は露出しており、N末端特異的な抗体は明らかに脱重合を誘導する。
抗体の、エピトープへの接近可能性に関する調査で、中間および中央のエピトープは隠れたままなのに対し、凝集したAβではN末端が露出しており、BAP-1抗体と反応すること、すなわち、4G8抗体の結合が見られなかったことが示された。しかし、単量体のAβではどちらのエピトープも隠されておらず、従来の技術によるどちらの抗体によっても同様に認識される。
【0026】
対照的に、本発明では、驚くべきことに、本明細書中に記載された抗体分子が2つの不連続なアミノ酸配列、例えばAβペプチド上の立体配座/構造エピトープを認識することが分かった。本発明に関して、「2つの不連続なアミノ酸配列」は、それぞれN末端および中央/中間のエピトープを形成する前述の2つのアミノ酸配列がβ-A4上で、一次構造上どちらのエピトープにも属さない少なくとも2つのアミノ酸によって分離されていることを意味する。
【0027】
抗体Fab(=パラトープ)は、分子表面の大きさの約30×30Åを占める(Laver, Cell 61 (1990), 553-556)。これは、いくらかの表面のループに現れ得る15〜22個のアミノ酸と接触するのに十分である。本発明の抗体分子によって認識される不連続エピトープは、N末端(2〜10残基またはその一部)と中間のAβペプチド配列(12〜25残基またはその一部)とが極めて接近しているところの立体配座と類似している。この立体配座においてのみ、最大数の抗原-抗体接触および最小の自由エネルギーが得られる。
エネルギーの計算を元に、5〜6残基の小さいサブタイプが、周囲の残基は相補的な配列を構成し得るだけなのに対し、リニアーの配列をもたず、エピトープ表面に分散していて、結合エネルギーのほとんどに寄与していることが示唆された(Laver (1990) loc. cit.)。
【0028】
本発明の抗体/抗体分子は、凝集したAβに結合し、AD患者の脳のアミロイド斑と強く反応することができる(添付の実施例に付記)。また、本発明の抗体分子は、アミロイド凝集を脱重合/分解することができる。
【0029】
理論に縛られることなく、(本明細書中に記載されるAβ4の2つの領域またはその領域の一部によって構成される)立体配座/構造エピトープは、凝集したAβ中で、部分的に露出していると考えられている。しかし、中央の/第二のエピトープ/領域の大部分へだけは、Aβ集合体中で自由に接近することができない(中央のエピトープ特異的抗体4G8およびm266の反応性が弱いため)。一方、上記のことを考慮すると、中間の領域の1つまたはいくらかの残基は立体配座エピトープの化合物であり、またN末端領域の残基と結合して、本発明の抗体に接近することができ、そのため抗体-Aβ4相互作用の結合エネルギーに有意に寄与している。したがって、本発明の抗体分子の、凝集したAβ中の立体配座エピトープとの反応性は、独特であり、先行技術で記されてきたα-A4抗体と明らかに異なっている。さらに、上で指摘したように、本発明の抗体/抗体分子のさらに独特な特性は、本明細書中および添付の実施例で規定されるように、同時におよび独立してβ-A4上の2つの離れたエピトープに結合/を認識できる点である。
【0030】
本発明の好適な態様において、本発明の抗体分子は、その抗体によって特異的に認識される、β-A4の最小の2つの領域が、立体配座/構造エピトープまたは不連続エピトープを形成する抗体分子である;Geysen (1986), loc.cit.; Ghoshal (2001), J. Neurochem. 77, 1372-1385; Hochleitner (2000), J. Imm. 164, 4156-4161; Laver (1990), loc. cit.。「不連続エピトープ」という用語は、本発明においては、ポリペプチド鎖の離れた部分の残基が集まってできたリニアーでないエピトープを意味する。これらの残基は、ポリペプチド鎖が折り畳まれて三次元構造になり立体配座/構造エピトープを作ると、一緒に表面に現れる。本発明は、β-A4内の好ましく、意外なエピトープを提供し、それゆえ、これらのエピトープと特異的に相互作用できる特異的な抗体分子の独創的な生産につながる。本発明のこれらの抗体/抗体分子は、効果の上昇、および副作用の可能性の低下を提供する。しかし、上で指摘したように、本発明の抗体はまた、例えば添付の実施例に付記されたようなPepspotアッセイのように、特定したβ-A4の2つの領域/エピトープのそれぞれと独立して反応することができる。
【0031】
したがって、本発明は、インビボおよびインビトロで凝集したAβ原線維の脱重合に用いられ得、Aβ単量体の立体配座エピトープを安定化および/または中和することができ、それゆえ病的なAβの凝集を妨げることができる独特の手段を提供する。
【0032】
さらに、本発明の抗体分子は、アミロイド斑、特にアルツハイマーの脳のアミロイド斑の縁でAβ集合体に結合し、病的なプロトフィブリル(protofibril)および原線維の溶解に有効であると考えられる。
【0033】
好適な態様において、本発明の抗体分子は、本明細書中で規定されたAβ4の2つの領域内で少なくとも2つの連続したアミノ酸を認識し、さらに好ましくは、前述の抗体分子は、第一の領域ではアミノ酸:AEFRHD、EF、EFR、FR、EFRHDSG、EFRHDまたはHDSGを含有するアミノ酸配列または、第二の領域ではアミノ酸:HHQKL、LV、LVFFAE、VFFAED、VFFAまたはFFAEDVを含有するアミノ酸配列を認識する。他の断片または拡張された部分に、DAE、DAEF、FRHまたはRHDSGが含まれる。
【0034】
本発明の抗体分子が配列番号:3、5または7に示されるような核酸分子によってコードされる可変VH領域または配列番号:4、6または8に記されるようなアミノ酸配列に示される可変VH領域を含有することが特に好ましい。配列番号:3および4に示される配列は、それぞれ本発明の、親抗体MSR-3(MS-Roche 3)のVH領域のコーディング領域およびアミノ酸配列を示しており、配列番号:5および6の配列は、それぞれ本発明の、親抗体MSR-7(MS-Roche 7)のVH領域のコーディング領域およびアミノ酸配列を示しており、かつ配列番号:7および8は、それぞれ本発明の、親抗体MSR-8(MS-Roche 8)のVH領域のコーディング領域およびアミノ酸配列を示している。したがって、本発明はまた、配列番号:9、11または13からなる群から選択された配列番号に示される核酸分子によってコードされる可変VL領域、または配列番号:10、12または14に記されているアミノ酸配列に示される可変VL領域を含有する抗体分子を提供する。配列番号:9および10は、MSR-3のVL領域に対応し、配列番号:11および12はMSR-7のVL領域に対応し、配列番号:13および14はMSR-8のVL領域に対応する。添付の実施例に説明されているように、親抗体MSR-3、-7および-8はさらに良い特性および/または結合親和性を有する、最適化された抗体分子をさらに産生するために用いられる。対応する、可能性のあるストラテジーのいくつかを、添付の実施例に例示する。
【0035】
添付の実施例に例示されるような最適化のストラテジーによって、複数の本発明の最適化された抗体が得られる。これらの最適化された抗体は、親抗体とVH領域のCDR-3ドメインを共有する。(添付の図1に示されるような)元の骨格領域は同じであるが、成熟した/最適化された抗体分子CDR1、CDR2および/またはVLでは、CDR3領域は変化する。最適化された抗体分子の、例証となる改変配列モチーフを、添付の表1に示す。したがって、本明細書中で開示されるMSR-3、-7および-8由来および本明細書中で規定されたβ-A4ペプチドの2つの領域と特異的に反応/それを特異的に認識できる最適化された抗体分子も、本発明の範囲に含まれる。特に、本明細書中で規定されているCDR領域、好ましくはCDR1、さらに好ましくはCDR1およびCDR2、最も好ましくはCDR1、CDR2およびCDR3はさらに本発明の抗体分子を生産するため、特に当該分野で公知のCDR-グラフト法によって生産するために用いられ得る; Jones (1986), Nature 321, 522-515またはRiechmann (1988), Nature 332, 323-327参照。最も好ましくは、本発明の抗体/抗体分子および抗体の断片または誘導体は本明細書中で開示された親抗体に由来し、かつ、上述のように、前述の親抗体のうち少なくとも1つとVH領域のCDR-3領域を共有する。以下に説明するように、クロスクローニング抗体は本発明の最適化された/成熟した抗体/抗体分子であるとみなされるように作られると考えられる。したがって、好ましい抗体分子はまた、配列番号:32から45のいずれかに示されるVH領域または配列番号:46から59に示されるVL領域によって特徴付けられる抗体/抗体分子または配列番号:60から87のいずれかで規定されるCDR-3領域を含有し得る抗体分子を含有、またはこれらに由来し得る。特に好適な態様では、本発明の最適化された抗体分子はそれぞれ配列番号:88/89および90/91に記されているVH領域およびVL領域、またはそれらの部分を含有する。それらとは別に、CDR領域、好ましくはCDR-3領域があり得る。最適化されたタイプの特に好ましい抗体分子は、配列番号:92または93で特徴付けられるH-CDR3および/または配列番号:94または95で特徴付けられるL-CDR3を含有する。本発明の抗体/抗体分子はβ-A4および/または前述のβ-A4由来のペプチドとの特異的な反応性によって特徴付けられることが好ましい。例えば、ELISA法での吸光度は、添付の実施例に説明されているように、確定されることができ、吸光度の比は元のまたは最適化された抗体の特異的な反応性を特定するために用いられ得る。したがって、本発明の好ましい抗体は、ELISA法でβ-A4と反応し、450 nmで測定した吸光度がβ-A4なしで測定した吸光度の10倍、すなわちバックグラウンドを10倍超える抗体である。好ましくは、吸光度の測定は、呈色反応終了後、シグナル対バックグラウンド比を最適化するために数分間(例えば1、2、3、4、5、6または7分)行なわれる。
【0036】
特に好適な態様において、本発明の抗体分子は、配列番号:15、17または19に示されるような核酸分子によってコードされるVL領域のCDR3を少なくとも1つ、または配列番号:16、18または20に示されるようなVL領域のCDR3アミノ酸配列を少なくとも1つ含有し、かつ/または前述の抗体分子は、配列番号:21、23または25に示されるような核酸分子によってコードされるようなVH領域のCDR3を少なくとも1つ、または配列番号:22、24または26に示されるようなVH領域のCDR3アミノ酸配列を少なくとも1つ含有する。本明細書中に規定されたようなVH領域のCDR3を少なくとも1つ含有する抗体が最も好ましい。上述のCDR-3ドメインは、本発明の、実例となる親抗体分子MSR-3、-7または-8に関する。しかしながら、添付の表1、8または10に説明されているように、添付の実施例で開示された方法によって得られた、成熟した、および/または最適化された抗体分子は、修飾されたVH、VL、CDR1、CDR2およびCDR3領域を含有し得る。したがって、本発明の抗体分子は、好ましくはMSR-3、-7および-8からなる群またはMSR-3、-7または-8の、親和性の成熟したバージョンから選択される。MSR-3、-7および-8の、親和性の成熟した、およびクロスクローニングされたバージョンは、特に、表1または8に示されるようなCDR1、CDR2および/またはCDR3領域を含有する抗体分子、または配列番号:15〜20、21〜26、60〜74、75〜87、92および93または94および95の中のいずれか、および配列番号:354〜413で特徴付けられる抗体分子を含む。最も好ましくは、添付の表1、8に示されるように、または添付の表10に付記されているように、本発明の抗体は、CDR、好ましくはCDR1、さらに好ましくはCDR2、最も好ましくはCDR3を少なくとも1つ含有する。
【0037】
注目すべき点は、親和性の成熟技術は当該分野で公知であり、添付の実施例および、特にKnappik (2000), J. Mol. Biol. 296, 55; Krebs (2000), J. Imm. Meth. 254, 67-84; WO 01/87337; WO 01/87338; US 6,300,064; EP 96 92 92 78.8および以下に引用されるさらなる参考に記されていることである。
【0038】
本発明のさらに好適な態様において、抗体分子は抗体全体(IgG1、IgG2、IgG2b、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgDまたはIgEのような免疫グロブリン)、F(ab)、Fabc、Fv、Fab'、F(ab')2断片、一本鎖抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、二価の抗体構築物、抗体融合タンパク質、クロスクローニング抗体または合成抗体である。免疫グロブリン遺伝子の遺伝子バリアントも考えられる。例えば免疫グロブリン重G鎖サブクラス1(IgG1)の遺伝子バリアントは、CH1ドメインのG1m(17)またはG1m(3)アロタイプマーカー、またはCH3ドメインのG1m(1)またはG1m(非1)アロタイプマーカーを含有し得る。本発明の抗体分子はまた、Fc受容体結合または補体活性が高められた、または弱められた変異IgGのような、修飾された、または変異の抗体を含む。本発明の抗体は、哺乳類、好ましくはマウスへの、本明細書中で規定されるようなβA4の2つの領域を含有するペプチド、例えば(a)β-A4のアミノ酸2〜10(またはその一部)および(b)β-A4のアミノ酸12〜25(またはその一部)を含有するアミノ酸ストレッチ(配列番号:27)を含有するN末端および中央の領域/エピトープを用いた免疫によって作られた特異的なモノクローナル抗体の産生といった従来の方法によって産生されるとも考えられる。したがって、当業者は、かかるペプチドに対するモノクローナル抗体を産生することができ、得られた抗体の、本明細書中に規定されるようなβA4のN末端および中央の領域/エピトープに同時に、および独立して、結合/と反応する能力をスクリーニングすることができる。対応するスクリーニングの方法は、添付の実施例に開示されている。
【0039】
添付の実施例に説明されているように、本発明の抗体/抗体分子は、容易におよび好ましく組換え構築され、発現される。好ましくは、本発明の抗体分子は、本明細書中に規定された親抗体MSR-3、MSR-7またはMSR-8のCDR、または前述の親抗体由来の親和性の成熟した/最適化された抗体のCDRを、少なくとも1つ、さらに好ましくは少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、さらに好ましくは少なくとも4つ、さらに好ましくは少なくとも5つ、最も好ましくは6つ含有する。注目すべき点は、組換えによって生産された本発明の抗体には、6つを超えるCDRが含まれ得ることである。当業者は、親の、および親和性が最適化された抗体の対応するCDRを推測するために、添付の実施例中に示されている情報を容易に用いることができる。親抗体の成熟/最適化によって得られた、最適化された抗体の例は、特に添付の表1に示されている。成熟した/最適化された本発明の抗体分子は、例えば、本明細書中に添付されている配列によっても特徴付けられ、配列番号:88〜95を含有し、MSR 7.9H7のVH領域(配列番号:88および89)、MSR 7.9H7のVL領域(配列番号:90および91)、MSR 7.9H7のH-CDR3(配列番号:92および93)およびMSR 7.9H7のL-CDR3(配列番号:94および95)を表すMSR 7.9H7である。実例となる抗体分子7.9H7は、親抗体MSR7由来であり、最適化された/成熟した本発明の抗体分子の、特に、好適な本発明の例である。この抗体分子は、例えばクロスクローニングの形態で、本発明にしたがってさらに改変され得る。下記および添付の実施例参照。
【0040】
添付の実施例に付記されているように、本発明の抗体はまた、クロスクローニング抗体、すなわち本明細書に記されているような、親の、または親和性が最適化された抗体の1つ以上に由来する異なる抗体領域(例えばCDR領域)を含有する抗体を含む。これらのクロスクローニング抗体は、多数の異なる骨格を有する抗体であり得る。最も好ましい骨格はIgG骨格であり、さらに好ましくはIgG1、IgG2aまたはIgG2b骨格である。前述の抗体の骨格が哺乳類の、最も好ましくはヒトの骨格であることが特に好ましい。L鎖およびH鎖上のドメインは、同じ一般的な構造を有し、各ドメインは4つの骨格領域を含有し、それらの配列は、相補性決定領域(CDR1-3)として知られる3つの超可変領域によってつながれ、比較的保存されている。
【0041】
本明細書中で用いられているように、「ヒトの骨格領域」は、実質的に(約85%以上、通常90〜95%以上)、自然に発生するヒト免疫グロブリンの骨格領域と一致している骨格領域に関する。抗体の骨格領域は、構成するL鎖およびH鎖の結び付けられた骨格領域であり、CDRを配置、整列させる働きをする。CDRはエピトープへの抗原の結合を主として担っている。注目すべき点は、本明細書中に記されたクロスクローニング抗体だけが好ましい(ヒトの)抗体の骨格に現れ得るのではなく、特に本明細書中に記されるような親抗体MSR-3、-7または-8の、または前述の親抗体由来の成熟した抗体のCDRを含有する抗体分子が免疫グロブリンの骨格に取り入れられ得ることである。好ましい骨格は、IgG1、IgG2aおよびIgG2bである。最も好ましいのは、ヒトの骨格およびヒトIgG1の骨格である。
【0042】
添付の実施例に示されるように、特に、当該分野で公知の遺伝子技術によって、L鎖全体を、最適化されたドナークローンから、最適化されたレシピエントクローンへ移すことが可能である。最適化されたドナークローンの例は、例えばL-CDR1(L1)であり、最適化されたレシピエントクローンの例はH-CDR2(H2)である。エピトープ特異性は、同じH-CDR-3領域を有する、結合しているクローンによって保存され得る。実例となる実施例13に、さらに詳細を示す。
本発明の好ましいクロスクローニング抗体分子は、MS-R #3.3H1×3.4L9、MS-R #3.4H1×3.4L9、MS-R #3.4H3×3.4L7、MS-R #3.4H3×3.4L9、MS-R #3.4H7×3.4L9、MS-R #3.4H7×3.4L7、MS-R #3.6H5×3.6L1、MS-R #3.6H5×3.6L2、MS-R #3.6.H8×3.6.L2、MS-R #7.2H2×7.2L1、MS-R #7.4H2×7.2L1、MS-R #7.4H2×7.12L2、MS-R #7.9H2×7.2L1(L1)、MS-R #7.9H2×7.12L1、MS-R #7.9H2×7.12L2、MS-R #7.9H2×7.12L2(L1+2)、MS-R #7.9H4×7.12.L2、MS-R #7.11H1×7.2L1、MS-R #7.11H1×7.11L1、MS-R #7.11H2×7.2L1(L1)、MS-R #7.11H2×7.9L1、MS-R #7.11H2×7.12L1またはMS-R #8.1H1×8.2L1からなる群から選択される。
【0043】
クロスクローニング抗体の生産はまた、添付の実施例に説明されている。上述の好ましいクロスクローニング抗体/抗体分子は、本明細書中で開示された親抗体、特にMSR-3およびMSR-7由来の最適化された/成熟した抗体分子である。さらに、クロスクローニング抗体分子のさらに特徴的なCDR領域およびV領域を、配列番号:32、33、46および47(MSR 3.6H5×3.6L2; VH、VL領域); 34、35、48および49(MSR 3.6H8×3.6.L2; VH、VL領域); 36、37、50および51(MSR 7.4H2×7.2.L1; VH、VL領域); 38、39、52および53(MSR 7.9H2×7.12.L2; VH、VL領域); 40、41、54および55(MSR # 7.9H4×7.12.L2; VH、VL領域); 42、43、56および57(MSR # 7.11H1×7.11.L1; VH、VL領域); および44、45、58および59(MSR # 7.11H1×7.2.L1; VH、VL領域)に示す。これらの特定の好ましいクロスクローニング抗体分子の対応するCDR3領域は、配列番号:60〜87に示されている。さらなるMSR抗体分子として、VH、VL、CDR領域が、添付の表8または10から、および、特にMS-R抗体/抗体分子 #3.6H5×3.6L2、#3.6H8×3.6L2、#7.4H2×7.2L1、#7.9H2×7.12L2、#7.9H4×7.12L2、#7.11H1×7.11L1、#7.11H1×7.2L1および#7.9H7に対する配列番号:32〜95、またはMSR-R抗体/抗体分子MS-R #3.3H1×3.4L9、#3.4H1×3.4L9、#3.4H3×3.4L7、#3.4H3×3.4L9、#3.4H7×3.4L9、#3.4H7×3.4L7、#3.6H5×3.6L1、#7.2H2×7.2L1、#7.4H2×7.12L2、#7.9H2×7.2L1、#7.9H2×7.12L1、#7.11H2×7.2L1、#7.11H2×7.9L1、#7.11H2×7.12L1または#8.1H1×8.2L1に対する配列番号:294〜413を載せている添付の配列から推測され得る。したがって、上で規定されたVH領域の他に、本発明の好ましい抗体分子は、配列番号:294〜323のいずれかで規定されるようなVH領域を含有し得る。同様に、配列番号:324〜353は、上で規定されたVL領域の他で、本発明の抗体分子に含まれ得る好ましいVL領域を示している。対応するCDR-3領域は、配列番号:354〜413に示される追加の配列と共に上に規定されている。
【0044】
本発明の抗体分子は、特に、当該分野で公知の組換えの方法によって、容易に充分量生産され得る。例として、Bentley, Hybridoma 17 (1998), 559-567; Racher, Appl. Microbiol. Biotechnol. 40 (1994), 851-856; Samuelsson, Eur. J. Immunol. 26 (1996), 3029-3034参照。
【0045】
理論上、可溶性β-A4(単量体/多量体)では、N末端および中央のエピトープは、どちらも抗体との相互作用において接近可能であり、本発明の抗体分子は、N末端または中間のエピトープに別々に結合し得るが、このような条件下では、最大の親和性は得られない。しかし、両方のエピトープへ同時に結合することで抗体のパラトープへの最適な接触がより得られそうであり、これはすなわち、凝集したβ-A4との相互作用と同様である。したがって、本発明の抗体は、(N末端と中央のエピトープとの相互作用を介して)凝集したβ-A4に結合するという点で、独特な抗Aβ抗体であり、同時にまた、可溶性β-A4中の立体配座エピトープを安定化および中和することができる。これらの抗体は、従来の技術の抗体とは異なっている。
【0046】
Aβまたは規定されたその断片に対する親和性を、KD値2000 nM未満で、好ましくは100 nM未満で、さらに好ましくは10 nM未満で、最も好ましくは1 nM未満で有する本発明の抗体分子が最も好ましい。かかる親和性の測定は、実施例に説明される方法および当該分野で公知の方法によって行われ得る。かかる方法としては、BIACORETMアッセイ(www.biacore.com; Malmquist (1999), Biochem.Soc. Trans 27, 335-340)および標識抗体または標識Aβを用いた固相アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
好ましくは、本発明の抗体分子は、アルツハイマー病のようなアミロイド関連の障害の患者のインビトロの(死後の)脳切片においてアミロイド斑を修飾し/それと反応/それに結合し得る。さらに、添付の実施例で説明されるように、本発明の抗体/抗体分子がAβ凝集を、インビボおよびインビトロアッセイで防止することが好ましい。同様に、本発明の抗体分子は、実施例に示されるインビボおよび/またはインビトロアッセイでAβ凝集を脱重合させることが好ましい。本発明の抗体/抗体分子のこの能力は、医療の場面、特に下記の医薬組成物で、特に用いられ得る。
【0048】
本発明はまた、本明細書中で規定されるような本発明の抗体分子をコードする核酸分子をも提供する。
【0049】
前述の核酸分子は、天然の核酸分子および組換え核酸分子であり得る。したがって、本発明の核酸分子は、天然起源のもの、合成または半合成されたものであり得る。これはDNA、RNAおよびPNAを含むことができ、そのハイブリッドでもあり得る。
【0050】
当業者にとって、本発明の核酸分子に、調節領域が加えられ得ることは明らかである。例えば、プロモーター、転写活性化因子および/または、本発明のポリヌクレオチドの発現の誘導を可能にする配列が用いられ得る。適した誘導システムの例として、例えば、Gossen and Bujard (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 (1992), 5547-5551)およびGossenら (Trends Biotech. 12 (1994), 58-62)によって記されているような、テトラサイクリン調節遺伝子発現系、または例えばCrook (1989) EMBO J. 8, 513-519によって記されているような、デキサメタゾン誘導遺伝子発現系がある。
【0051】
さらに、さらなる目的のために、核酸分子が、例えばチオエステル結合および/またはヌクレオチドアナログを含有し得ることが考えられる。前述の修飾は、核酸分子の、細胞内のエンドおよび/またはエキソヌクレアーゼに対する安定化に有用であり得る。前述の核酸分子は、前述の核酸分子の、細胞内での転写を可能にするキメラ遺伝子を含む、適切なベクターによって転写され得る。この点で、本発明のポリヌクレオチドが、「ジーンターゲティング」または「遺伝子治療の」アプローチに用いられ得ることもわかる。他の態様では、前述の核酸分子は標識される。核酸を検出するための方法は、当該分野で周知であり、例として、サザンおよびノーザンブロッティング、PCRまたはプライマー伸長法がある。この態様は、遺伝子治療アプローチ中に、本発明の核酸分子の導入が成功したことを確かめるためのスクリーニング法に有用であり得る。
【0052】
本発明の核酸分子は、前述の核酸分子のいずれかを単独で、または組み合わせて含有する、組換えによって作られたキメラ核酸分子であり得る。好ましくは、本発明の核酸分子は、ベクターの一部である。
【0053】
したがって、本発明はまた、本発明の核酸分子を含有するベクターに関する。
本発明のベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージ、または、例えば一般的に遺伝子操作に用いられている他のベクターであり得、適切な宿主細胞中および適切な条件下での、前述のベクターの選択を可能にするマーカー遺伝子のような、さらに他の遺伝子を含み得る。
さらに、本発明のベクターは、本発明の核酸配列に加えて、発現調節因子を含み得、適切な宿主中でのコーディング領域の適切な発現を可能にする。かかる調節因子は、当業者に公知であり、プロモーター、スプライスカセット、翻訳開始コドン、ベクターに挿入物を導入するための翻訳および挿入部位を含み得る。好ましくは、本発明の核酸分子は、前述の、真核または原核細胞中で発現を可能にする発現調節配列に、作動可能に連結される。
【0054】
真核および原核細胞での発現を確実にする調節因子は、当業者に周知である。上述のように、それらは通常、転写の開始を確実にする調節配列、および任意に、転写の終了と転写産物の安定化を確実にするポリ-Aシグナル含有する。他の調節因子も、転写および翻訳エンハンサーおよび/または元々関連している、または異種のプロモーター領域を含み得る。例えば哺乳類宿主細胞で発現を可能にする、可能性のある調節因子は、CMV-HSVチミジンキナーゼプロモーター、SV40、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、ヒト伸長因子1αプロモーター、糖質コルチコイド誘導MMTV(モロニーマウス腫瘍ウイルス)プロモーター、メタロチオネインもしくはテトラサイクリン誘導性プロモーターまたは、CMVエンハンサーもしくはSV40エンハンサーのようなエンハンサーを含む。神経細胞中での発現には、PGDF、NSE、PrPまたはthy-1プロモーターが用いられ得ると考えられる。前述のプロモーターは当該分野で公知であり、特に、Charron (1995), J. Biol. Chem. 270, 25739-25745に記されている。原核細胞中での発現には、例えば、tac-lacプロモーターまたはtrpプロモーターを含む多数のプロモーターが記されてきた。転写の開始を担う因子の他には、かかる調節因子は、SV40-ポリ-A部位またはtk-ポリ-A部位のような転写終了のシグナルを、ポリヌクレオチドの下流に含有し得る。この文脈においては、適切な発現ベクターは当該分野で公知であり、例として、Okayama-Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia)、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(In-vitrogene)、pSPORT1(GIBCO BRL)、pX(Pagano(1992) Science 255, 1144-1147)、pEG202およびdpJG4-5(Gyuris (1995) Cell 75, 791-803)のような酵母ツーハイブリッド用ベクター、またはλgt11またはpGEX(Amercham-Pharmacia)のような原核発現ベクターがある。本発明の核酸分子の他に、ベクターはさらに、分泌シグナルをコードする核酸配列を含有し得る。かかる配列は、当業者に周知である。さらに、用いられる発現系に応じて、本発明のペプチドを細胞区画に向わせることができるリーダー領域を、本発明の核酸分子のコーディング領域に付加することができ、またこれらは当該分野で周知である。リーダー配列は、適切な時期に翻訳、開始および終結配列、および好ましくは、翻訳されたタンパク質またはそのタンパク質を、細胞周辺腔または細胞外の培地へ分泌させるリーダー配列と会合する。任意に、異種の配列は、例えば発現された組換え産物の安定化または単純化された精製といった所望の特性を与える、CまたはN末端識別ペプチドを含む融合タンパク質をコードし得る。一旦ベクターが適切な宿主に組み込まれると、宿主は、ヌクレオチド配列の高レベルな発現に適した条件下で維持され、所望のように、本発明の抗体分子またはその断片の採集および精製がそれに続く。したがって、本発明はまた、本明細書中で規定されるベクターを含む宿主/宿主細胞に関する。かかる宿主は、抗体/抗体分子を得るためのプロセスおよび医療/医薬の場面で有用であり得る。前述の宿主細胞はまた、神経幹細胞、好ましくは成体の神経幹細胞のような、トランスダクトまたはトランスフェクトされたニューロン細胞を含み得る。かかる宿主細胞は移植治療に有用であり得る。
【0055】
さらに、本発明のベクターはまた、発現、遺伝子導入、またはジーンターゲティングベクターであり得る。遺伝子治療は、治療用の遺伝子の細胞へのエキソビボまたはインビボ技術による導入に基づくが、遺伝子導入の最も重要な応用の一つである。神経成長因子に対する中和抗体を発現しているトランスジェニックマウスが、「神経抗体」技術を用いて作られてきた; Capsoni, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97 (2000), 6826-6831およびBiocca, Embo J. 9 (1990), 101-108。インビトロまたはインビボ遺伝子治療に適切なベクター、方法または遺伝子送達系は、文献に記されており、当業者に公知である;例として、Giordano, Nature Medicine 2 (1996), 534-539; Schaper, Circ. Res. 79 (1996), 911-919; Anderson, Science 256 (1992), 808-813, Isner, Lancet 348 (1996), 370-374; Muhlhauser, Circ. Res. 77 (1995), 1077-1086; Onodua, Blood 91 (1998), 30-36; Verzeletti, Hum. Gene Ther. 9 (1998), 2243-2251; Verma, Nature 389 (1997), 239-242; Anderson, Nature 392 (Supp. 1998), 25-30; Wang, Gene Therapy 4 (1997), 393-400; Wang, Nature Medicine 2 (1996), 714-716; WO 94/29469; WO 97/00957; US 5,580,859; US 5,589,466; US 4,394,448またはSchaper, Current Opinion in Biotechnology 7 (1996) 635-640およびこれらに引用された参考文献参照。特に、前述のベクターおよび/または遺伝子の伝達系はまた、神経学的組織/細胞(特に、Blomer, J. Virology 71 (1997) 6641-6649参照)の、また視床下部(特に、Geddes, Front Neuroendocrinol. 20 (1999), 296-316またはGeddes, Nat. Med. 3 (1997), 1402-1404参照)の遺伝子治療アプローチにおいて記されている。神経学的細胞/組織に用いるための、さらに適切な遺伝子治療用構築物は当該分野で公知であり、例えば、Meier (1999), J. Neuropathol. Exp. Neurol. 58, 1099-1110に記されている。本発明の核酸分子およびベクターは、直接導入するために、またはリポソーム、(例えばアデノウイルス、レトロウイルスの)ウイルス性ベクター、エレクトロポレーション、発射(例えばジーンガン)または細胞への他の送達系を介して導入するために設計され得る。さらに、バキュロウイルス系を、本発明の核酸分子の真核発現系として用い得る。導入および遺伝子治療アプローチは、好ましくは、本発明の機能的な抗体分子の発現を導くべきであり、前述の発現した抗体分子は、異常なアミロイド合成、集合および/または凝集に関連した、アルツハイマー病等のような神経学的障害の処置、寛解および/または予防に、特に有用である。
【0056】
したがって、本発明の核酸分子および/または上述の本発明のベクター/宿主は、特に医薬組成物として有用であり得る。前述の医薬組成物は、遺伝子治療アプローチに用いられ得る。この文脈では、本発明の核酸分子および/またはベクターは、本発明の抗体分子またはその断片の、(細胞の)発現および/または濃度を調節、変化および/または修正するために用いられ得ると考えられる。
【0057】
遺伝子治療への応用のために、本発明のペプチドまたはその断片をコードする核酸は、ウイルス、および感染に用いられ、かつ感染した細胞または器官で、病気の寛解または治療の効果を提供するウイルスのような遺伝子送達系へクローニングされ得る。
【0058】
本発明はまた、本発明のベクターを用いてトランスフェクトまたは形質転換された宿主細胞、または本発明のベクターを保有する非ヒト宿主に関する、すなわち、例えば、本発明の核酸分子を用いて、またはかかる核酸分子を含有するベクターを用いて遺伝的に改変された宿主細胞または宿主に関する。「遺伝的に改変された」という用語は、宿主細胞または宿主が、その天然のゲノムに加えて、細胞または宿主に、またはその先祖/親のうちの一つに導入された本発明の核酸分子またはベクターを含有するということである。核酸分子またはベクターは遺伝的に改変された宿主細胞または宿主中に、ゲノム外の独立した分子として、好ましくは複製できる分子として存在してもよいし、宿主細胞または宿主のゲノムに安定して組み込まれてもよい。
【0059】
本発明の宿主細胞は、任意の原核または真核細胞であり得る。適切な原核細胞は、大腸菌または枯草菌のような一般的にクローニングに用いられるものである。さらに、真核細胞は、例えば、菌類細胞または動物細胞を含む。適切な菌類細胞の例は、酵母細胞、好ましくはサッカロミケス属のもの、最も好ましくはSaccharomyces cervisiae種のものである。適切な動物細胞は、例えば、昆虫細胞、脊椎動物細胞、好ましくは、例えばHEK293、NSO、CHO、MDCK、U2-OSHela、NIH3T3、MOLT-4、Jurkat、PC-12、PC-3、IMR、NT2N、Sk-n-sh、CaSki、C33Aのような哺乳類細胞である。これらの宿主細胞は、例えば、CHO細胞であり、リーダーペプチドの除去、H鎖およびL鎖の折り畳みおよび会合、分子の正しい側でのグリコシル化および機能的な分子の分泌を含む、本発明の抗体分子への翻訳後修飾を提供しうる。当該分野で公知の、さらに適切な細胞系は、American Type Culture Collection(ATCC)のような細胞系の寄託機関から得られる。本発明に関して、さらに、初代細胞培養は、宿主細胞として機能し得ると考えられる。前述の細胞は、特に(ショウジョウバエまたはトウヨウゴキブリの種の昆虫のような)昆虫、または(ヒト、ブタ、マウスまたはラットのような)哺乳類由来である。前述の宿主細胞はまた、神経芽細胞腫細胞系のような細胞系の、および/または由来の細胞を含み得る。上述の初代培養細胞は当該分野で周知であり、特に初代星状膠細胞、(混合)脊髄培養物または海馬培養物を含む。
【0060】
さらに好適な態様では、本発明のベクターを用いて形質転換された宿主細胞は、ニューロン細胞、神経幹細胞(例えば、成体の神経幹細胞)、脳細胞またはそれら由来の細胞(系)である。しかし、本発明の核酸分子を含有するCHO細胞もまた、宿主として特に有用であり得る。このような細胞は、発現された分子に正しい二次修飾を提供し、すなわち、本発明の抗体分子を提供する。これらの修飾は、特に、グリコシル化およびリン酸化である。
【0061】
宿主は、非ヒト哺乳類、最も好ましくはマウス、ラット、ヒツジ、仔ウシ、イヌ、サルまたは類人猿であり得る。前述の哺乳類は、治療、好ましくは本明細書中で挙げられた神経および/または神経変性障害の治療の開発のために不可欠であり得る。さらに、本発明の宿主は、本発明の抗体分子(またはその断片)の生産に特に有用であり得る。前述の抗体分子(またはその断片)が前述の宿主から単離されると考えられる。特に、本明細書中に記載された核酸分子およびまたはベクターが、組換え発現のための配列に組み込まれると考えられる。本発明の核酸分子のトランスジーンとしての、非ヒト宿主への導入およびそれに続く発現は、本発明の抗体の生産に用いられ得る。例えば、かかるトランスジーンの、トランスジェニック動物の乳中での発現は、本発明の抗体分子を多量に得られる手段を提供する;特に、US 5,741,957, US 5,304,489またはUS 5,849,992参照。この点で有用なトランスジーンは、本発明の核酸分子、例えば本明細書中に記された抗体分子のL鎖およびH鎖に対するコーディング領域を含有し、カゼインまたはβ-ラクトグロブリンのような、哺乳類の腺特異的遺伝子のプロモーターおよび/またはエンハンサー構造に作動可能に連結されている。
【0062】
本発明はまた、本発明の抗体分子の合成が可能な条件下で上述の宿主細胞を培養する工程、および前述の培養物から前述の抗体分子を収集する方法を含む本発明の抗体分子の調整方法も提供する。
【0063】
本発明はまた、本発明の抗体分子を含む、または上述の方法によって生産された組成物、本発明の抗体分子をコードする核酸分子、前述の核酸分子を含有するベクターまたは本明細書中に規定されるような宿主細胞に関し、かつ、例えばアミロイド斑の形成を阻害できる、またはすでに形成されたアミロイド斑を脱重合できる分子のような、単独または組み合わせた任意の他の分子に関する。本明細書中で用いられる「組成物」という用語は、少なくとも1つの本発明の化合物を含有する。好ましくは、このような化合物は、医薬用または診断用組成物である。
【0064】
組成物は、固体または液体のかたちで存在し得、特に、粉末、錠剤、溶液またはエアロゾルのかたちで存在し得る。前述の組成物は、本発明の抗体/抗体分子1つ以上、または本発明の核酸分子、ベクターまたは宿主を含有する。また、前述の組成物は、本発明の抗体分子または前述の抗体分子をコードする核酸分子を少なくとも2つ、好ましくは3つ、さらに好ましくは4つ、最も好ましくは5つ含有するとも考えられる。前述の組成物はまた、以下および添付の実施例に記される方法によって得られる、最適化された、本発明の抗体/抗体分子を含有し得る。
【0065】
前述の医薬組成物は、薬学的に許容され得るキャリアおよび/または希釈剤を任意に含有することが好ましい。本明細書中に開示される医薬組成物は、神経および/または神経変性障害の治療に特に有用であり得る。前述の障害としては、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アミロイドーシスオランダ型を伴う遺伝性脳出血、ダウン症候群、HIV痴呆、パーキンソン病および加齢に関連した神経障害が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物は、特に、アミロイド斑形成の強力な阻害剤、またはアミロイド斑の脱重合の強力な刺激剤であると考えられる。したがって、本発明は、本発明の化合物を含有する、病的なAPPタンパク質分解および/またはアミロイド斑形成に関連する疾患/障害の処置に用いられる医薬組成物を提供する。
【0066】
適切な医薬用キャリア、賦形剤および/または希釈剤の例は、当該分野で周知であり、リン酸緩衝食塩溶液、水、油/水エマルジョンのようなエマルジョン、様々なタイプの湿潤剤、無菌溶液等を含む。かかるキャリアを含有する組成物は、周知の、従来の方法によって処方される。これらの医薬組成物は、患者に適切な量投与され得る。適切な組成物の投与は、種々の方法、例えば、静脈内、腹膜内、皮下、筋肉内、局所、皮内、鼻腔内または気管支内への投与によってなされ得る。前述の投与は、例えば脳の動脈の部位または直接脳組織への注射および/または送達によって行われ得る。本発明の組成物はまた、標的の部位、例えば生物分解による送達によって脳のような外部または内部の標的の部位へ直接投与され得る。投薬療法は、治療を行う医師および臨床の要因によって決定される。医療技術分野で周知のように、どの患者への投与量も、患者のサイズ、体の表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与の時間および経路、通常の健康、および、同時に投与される他の薬を含む多くの要因による。タンパク質様の、薬学的に活性のある物質は、1回の投与あたり1 ng〜10 mg/体重kg存在し得るが、特に前述の要素を考慮すると、この模範的な範囲を下回ったり超えたりした投薬量が考えられる。療法が継続的な注入である場合も、それは1分あたり1 μg〜10 mgユニット/体重kgの範囲になる。
進行は、定期的な評価によってモニターされ得る。本発明の組成物は、局所的に、または全身に投与され得る。注目すべき点は、末梢に投与された抗体が、中枢神経系に進入し得ることである。特に、Bard (2000), Nature Med. 6, 916-919参照。非経口投与用調整物には、無菌の水溶液または非水性溶液、懸濁液およびエマルジョンが挙げられる。非水性溶液の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物性油、およびオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルである。水性のキャリアには、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョンまたは懸濁液が挙げられ、生理食塩水および緩衝化溶媒が含まれる。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸化リンガー液または固定されたオイルを含む。静脈内の媒体は、流体および栄養補充剤、(リンガーデキストロースを元にしたもののような)電解質補充剤等を含む。防腐剤および他の添加物は、例えば、抗微生物剤、酸化防止剤、キレート剤および不活性気体等のようにして存在し得る。さらに、本発明の医薬組成物は、医薬組成物の、意図とする使用法によってさらにまた薬剤を含有し得る。前述の薬剤には、神経保護因子、コリンエステラーゼ阻害剤、M1 ムスカリン受容体のアゴニスト、ホルモン、酸化防止剤、炎症の阻害剤等のような、中枢神経に作用する薬であり得る。前述の医薬組成物は、他にも、例えば神経伝達物質および/または神経伝達物質の代用の分子、ビタミンEまたはα-リポ核酸のような薬剤をさらに含有するのが、特に好ましい。
【0067】
医療用組成物は、本発明の方法または下記の本発明の使用法と同様に、今まで知られていなかった、または病的なAPP凝集または病的なAPPプロセシングに関する、または依存する全ての種類の病気の治療に用いられ得る。それらはアルツハイマー病および細胞外のアミロイド-β沈着が関与していると考えられる他の疾患の処置に特に有用であり得る。それらは望ましくヒトに用いられ得る。一方で、動物の処置もまた本明細書中に記された方法、使用法および組成物に含まれる。
【0068】
本発明の好適な態様において、上で開示されたような本発明の組成物は、適切な診断用手段を任意にさらに含む診断用組成物である。診断用組成物は、前述の本発明の化合物を1つ以上含有する。
前述の診断用組成物は、本発明の化合物を含有し得、特に、また好ましくは、本発明の抗体分子を可溶性の形態/液相で含有し得るが、前述の化合物はまた、固相支持体に結合/付着および/または連結されるとも考えられる。
【0069】
固相支持体は、本明細書中で規定されたような診断用組成物と組み合わせて用いられ得、または本発明の化合物は直接前述の固相支持体に結合され得る。このような担体は当該分野で周知であり、特に市販のカラム素材、ポリスチレンビーズ、ラテックスビーズ、磁気ビーズ、コロイド金属粒子、ガラスおよび/またはシリコンのチップおよび表層、ニトロセルロース片、膜、シート、ジュラサイト(duracyte)、反応トレーのウェルおよび壁、プラスチックチューブ等を含む。本発明の化合物、特に本発明の抗体は、多数の様々な媒体に結合され得る。周知の媒体の例としては、ガラス、ポリスチレン、塩化ポリビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、デキストラン、ナイロン、アミロース、天然または変性したセルロース、ポリアクリルアミド、アガロースおよび磁鉄鉱が含まれる。キャリアの性質は、本発明の目的のためには、可溶性または不溶性であり得る。標識化のための適切な標識および標識方法は、上で特定されており、下でさらに述べる。前述の本発明の化合物を固定する/動かなくするための適切な方法は周知であり、イオン、疎水性、共有結合性相互作用等があるが、これらに限定されない。
【0070】
特に好ましいのは、本発明の診断用組成物が、APPおよび/または、アミロイド-βのようなAPPプロセシング産物の検出および/または定量化に、または病的な、および/または(遺伝的に)改変されたAPP切断面の検出および/または定量化に用いられることである。
【0071】
添付の実施例に説明されているように、本発明の化合物、特に本発明の抗体分子は、アルツハイマー病患者の脳切片中の真性のヒトアミロイド斑の、間接免疫抗体による検出における診断用試薬として特に有用である。
【0072】
前述の、診断用組成物に用いられる本発明の化合物が、検出可能なように標識されるのが好ましい。様々な技術が標識化生体分子として入手可能であり、当業者に周知であり、かつ本発明の範囲内であると考えられる。かかる技術は、例えばTijssen, "Practice and theory of enzyme immuno assays", Burden, RHおよびvon Knippenburg (編), Volume 15 (1985), "Basic methods in molecular biology"; Davis LG, Dibmer MD; Battey Elsevier (1990), Mayerら, (編) "Immunochemical methods in cell and molecular biology" Academic Press, London (1987)または"Methods in Enzymology"シリーズ, Academic Press Inc.に記されている。
【0073】
当業者に公知の標識、および標識化の方法は、様々なものが多数ある。本発明に用いられ得る標識のタイプの例としては、酵素、放射性同位体、コロイド金属、蛍光化合物、化学蛍光化合物および生体発光化合物が挙げられる。
【0074】
一般的に用いられる標識としては、特に、(フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド等のような)蛍光色素、(ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼのような)酵素、(32Pまたは125Iのような)放射性同位体、ビオチン、ジゴキシゲニン、コロイド金属、(ジオキシエタン、ルミノールまたはアクリジニウムのような)化学または生体発光化合物が挙げられる。標識化の手段としては、酵素またはビオチン基の、共有結合によるカップリング、ヨウ化、リン酸化、ビオチン化等があり、当該分野で周知である。
検出方法としては、オートラジオグラフィー、蛍光顕微鏡検査法、直接および間接酵素反応等が挙げられるが、これらに限定されない。一般的に用いられる検出アッセイとしては、放射性同位体または非放射性同位体を用いた方法が挙げられる。これらには、特に、ウエスタンブロッティング、オーバーレイアッセイ、RIA(ラジオイムノアッセイ)、およびIRMA(免疫放射定量アッセイ)、EIA(酵素免疫アッセイ)、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、FIA(蛍光免疫アッセイ)およびCLIA(化学発光免疫アッセイ)が含まれる。
【0075】
さらに、本発明は、アミロイド形成および/またはアミロイド斑形成に関連する疾患の予防、処置および/または診断のための医薬用組成物または診断用組成物の調製のための本発明の抗体分子、または本発明の方法によって生産された抗体分子、本発明の核酸分子、ベクターまたは宿主の使用を提供する。本明細書中で記された化合物、特に本発明の抗体分子は、修飾された、または異常なAPPプロセシングおよび/またはアミロイド産生の関わる神経病理学の予防および/または治療に用いられるのがさらに好ましい。抗体分子、例えばIgG骨格、特にIgG-1骨格を有する抗体のような、(操作された)免疫グロブリンのかたちの、またはキメラ抗体、二重特異性抗体、一本鎖Fv(scFv)または二重特異性scFv等のかたちのもので、本明細書中で提供される医薬組成物の調製に用いられ得る。さらに、本発明の抗体分子はAβ4および/またはアミロイド沈着/斑と特異的に相互作用するので、抗体分子はまた、添付の実施例に付記されているような診断の場面でも有用である。
【0076】
したがって、本発明の化合物の独創的な使用は、寛解、例えばβアミロイド斑の分解、アミロイド(斑)除去またはβ-アミロイド斑形成に対する受動免疫による寛解を必要とする神経障害に対する医薬組成物の調合に用いることである。添付の実施例に説明されているように、本発明の抗体分子はAβ凝集の予防およびすでに形成されたアミロイド凝集の脱重合において特に有用である。したがって、本発明の抗体分子は、病的なアミロイド沈着/斑の減少、アミロイド斑前駆体の除去、またニューロンの保護に用いられ得る。本発明の抗体分子がアミロイド斑のインビボでの予防および既存のアミロイド斑/凝集のインビトロでの除去に用いられることが、特に考えられる。さらに、本発明の抗体分子は、Aβ4に対する受動免疫法アプローチに用いられ得る。Aβ4/Aβ4沈着の除去は、特に、Fc部位を含有する本発明の抗体の医療での使用によってなされ得る。前述の、抗体のFc部位は、Fc受容体を介した免疫応答、例えばマクロファージ(食細胞および/またはミクログリア)および/またはヘルパー細胞の誘引に特に有用であり得る。Fc部位関連免疫応答を仲介するために、本発明の抗体分子は、好ましくは(ヒト)IgG1骨格を有する。本明細書中で述べられるように、本発明の抗体分子、それをコードする核酸分子またはそれらの一部、本発明のベクターまたは本発明の宿主細胞を用いて治療されるのに好ましい被験体は、ヒトの被験体である。本発明の抗体分子についてはIgG2aまたはIgG2b骨格のような他の骨格もまた考えられる。IgG2aおよびIgG2bのかたちを有する免疫グロブリン骨格は、マウスの場合、例えば本発明の抗体分子の科学的な使用法、例えば(ヒト)野生型または変異APP、APP断片および/またはAβ4を発現しているトランスジェニックマウスに関する検査において、特に想定される。
【0077】
アミロイド産生および/またはアミロイド斑形成の関連した上記の病気には、痴呆、アルツハイマー病、運動ニューロパシー、パーキンソン病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、スクレイピー、HIV関連の痴呆およびクロイツフェルト‐ヤーコブ病、アミロイドーシスオランダ型を伴う遺伝性脳出血、ダウン症候群および加齢に伴うニューロンの障害が含まれるが、これらに限定されない。本発明の抗体分子および本明細書中で提供される組成物はまた、アミロイド産生および/またはアミロイド斑形成に関連した炎症プロセスの寛解および/または予防に有用あり得る。
【0078】
したがって、本発明はまた、前述の神経および/または神経変性障害の被験体および/または前述の神経および/または神経変性障害になりやすい患者へ、本発明の抗体分子、本発明の核酸分子および/または上で規定した組成物を投与することを含む、神経および/または神経変性障害の処置、予防および/または遅延のための方法を提供する。
【0079】
さらに他の態様として、本発明は、本発明の少なくとも1つの抗体分子、少なくとも1つの核酸分子、少なくとも1つのベクターまたは少なくとも1つの宿主細胞を含有するキットを提供する。有利な点として、本発明のキットは、任意にバッファー、貯蔵液および/または残存試薬、または医療用、科学的または診断用アッセイおよび目的を行うのに必要な材料をさらに含む。さらに、本発明のキットのパーツは、個々にバイアルまたは瓶に、または組み合わせてコンテナまたはマルチコンテナユニットに、詰められ得る。
【0080】
本発明のキットは、特に本発明の方法を実施するのに有利に用いられ得、また本明細書中に述べられている様々な応用、例えば診断用キットとして、研究用ツールまたは医療用ツールとして用いられ得る。さらに、本発明のキットは、科学的、医療用および/または診断用の目的に適した検出のための手段を含み得る。キットの製造は、好ましくは当業者に公知の、標準的な手順にしたがう。
【0081】
本発明はまた、下記の工程を含む、本明細書中で規定されるような抗体分子の最適化のための方法を提供する。
(a)配列番号:21、23または25に示されるような核酸分子にコードされるVH領域の少なくとも1つのCDR3を、または配列番号:22、24または26に示されるようなVH領域の少なくとも1つのCDR3アミノ酸配列を含有する抗体由来の、多様なFab抗体断片のライブラリーの構築;
(b)得られたFab最適化ライブラリーの、Aβ/Aβ4のパニングによる検査;
(c)最適化されたクローンの同定;および
(d)選択された、最適化されたクローンの発現。
本発明の抗体/抗体分子の最適化はまた、添付の実施例に付記されており、例えば、本明細書中で規定されているようなβ-A4の領域/エピトープの一方または両方に対する親和性の高さによる選択、または発現の増加による選択等を含み得る。ある態様では、前述の、β-A4の領域/エピトープの一方または両方に対する親和性の高さによる選択は、(a)β-A4のアミノ酸2〜10を含有するアミノ酸ストレッチ(またはその部分)および/または(b)β-A4のアミノ酸12〜25を含有するアミノ酸ストレッチ(またはその一部)(配列番号:27)に対する親和性の高さによる選択を含む。
【0082】
当業者は、本発明の教示を用いて、本発明の方法を容易に実施しうる。抗体の最適化プロトコールは、当該分野で公知である。これらの最適化プロトコールは、特に、本明細書中に開示され、またYang (1995), J. Mol. Biol. 25, 392-403; Schier (1996), J. Mol. Biol. 263, 551-567; Barbas (1996), Trends. Biotech 14, 230-34またはWu (1998), PNAS 95, 6037-6042; Schier (1996), Human Antibodies Hybridomas 7, 97; Moore (1997), J. Mol. Biol. 272, 336に記されているようなCDR walking変異導入法を含む。
「パニング」技術はまた当業者に公知である。例として、Kay (1993), Gene 128, 59-65参照。さらに、Borrebaeck (1995), "Antibody Engineering", Oxford University, 229-266; McCafferty (1996), "Antibody Engineering", Oxford University Press; Kay (1996), A Laboratory Manual, Academic Pressのような出版物によって、本発明に従って改変され得る最適化プロトコールが提供される。
【0083】
最適化の方法は、さらにステップ(ca)を含み得、それによって最適化されたクローンは、添付の実施例に説明されているように、カセット変異導入法によってさらに最適化される。
【0084】
本明細書中に記される抗体分子の最適化のための方法は、添付の実施例に、ベータ-A4ペプチド/Aベータ4/Aβ/Aβ4/βA4の2つの領域を特異的に認識し得る元の抗体分子の親和性の成熟として、さらに説明されている。
好ましくは、上述の方法のステップ(b)における前述のAβ/Aβ4(本発明においてはβA4とも書かれている)は、凝集したAβ/Aβ4である。前述のパニングは、(添付の実施例に記されているように)結合のストリンジェンシーの増加を伴って実施され得る。ストリンジェンシーは、特に、Aβ/Aβ4濃度を減らすこと、または(アッセイの)温度を上げることによって増大し得る。パニングによる最適化ライブラリーの検査は、当業者に公知であり、Kay (1993), loc. cit.に記されている。好ましくは、ステップ(c)における同定は、最低のKD値による順位付けによって行われる。
【0085】
最も好ましくは、ステップ(c)における前述の同定は、Koffの順位付けによって行われる。Koffの順位付けは、当業者に公知であり、Schier (1996), loc. cit.; Shier (1996), J. Mol. Biol. 255, 28-43またはDuenas (1996), Mol. Immunol. 33, 279-286に記されている。さらに、Koffの順位付けは、添付の実施例で説明されている。オフレート定数は、添付の実施例に記されているように測定し得る。
【0086】
上述のように、同定されたクローンは、さらに評価するために、発現され得る。発現は、公知の方法、特に添付の実施例で説明されている方法によって行われ得る。発現は、特に、Fab断片、scFv、二重特異性免疫グロブリン、二重特異性抗体分子、Fabおよび/またはFv融合タンパク質またはIgG、特にIgG1のような抗体全体の発現を導き得る。
【0087】
最適化された抗体、特に最適化されたFabまたは最適化されたIgGは、好ましくはIgG1は、添付の実施例で説明されるような方法によって検査され得る。このような方法としては、結合親和性の検査、KD値の測定、pepspot分析、ELISA法、RIA法、CLIA法、(免疫)組織学的研究(例えばアミロイド斑の染色)、脱重合アッセイまたは抗体依存的なβ-A4食作用が挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
本発明のさらに他の態様では、cross-cloningによって最適化された抗体が生産されるような方法を提供する。この方法もまた、添付の実施例で説明されており、別々に最適化されたCDR領域を結びつけるステップ、例えば別々に最適化された、成熟したクローンのH-CDR2およびL-CDR2と、H-CDR3、好ましくは同じH-CDR3を結びつけるステップを含む。
【0089】
好適な実施例において、本発明は、以下の工程を含む医薬組成物の調合のための方法に関する。
(a)本明細書中に記されている方法、および添付の実施例で説明されている方法による抗体の最適化;および
(b)最適化された抗体分子の、上述のような生理学的に許容され得る媒体を用いた製剤化。
したがって、本発明はまた、本明細書中で開示された方法によって調製され、かつ、上述のように、ベータ-A4ペプチド/Aベータ4/Aβ/A4β/βA4の2つの領域を特異的に認識し得る、さらに最適化された抗体分子を含有する医薬組成物を提供する。
【0090】
本明細書に記載の例示的配列:
配列番号:1
AEFRHDSGY
β-A4ペプチドの第1領域、「N-末端領域/エピトープ」
【0091】
配列番号:2
VHHQKLVFFAEDVG
β-A4ペプチドの第2領域、「中心/中央領域/エピトープ」
【0092】
配列番号:3
MS-Roche#3のVH-領域(核酸配列)
CAGGTGCAATTGGTGGAAAGCGGCGGCGGCCTGGTGCAACCGGGCGGCAGCCTGCGTCTGAGCTGCGCGGCCTCCGGATTTACCTTTAGCAGCTATGCGATGAGCTGGGTGCGCCAAGCCCCTGGGAAGGGTCTCGAGTGGGTGAGCGCGATTAGCGGTAGCGGCGGCAGCACCTATTATGCGGATAGCGTGAAAGGCCGTTTTACCATTTCACGTGATAATTCGAAAAACACCCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGCGTGCGGAAGATACGGCCGTGTATTATTGCGCGCGTCTTACTCATTATGCTCGTTATTATCGTTATTTTGATGTTTGGGGCCAAGGCACCCTGGTGACGGTTAGCTCAGC (配列番号:3)
【0093】
配列番号:4
MS-Roche#3のVH-領域(アミノ酸配列)
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARLTHYARYYRYFDVWGQGTLVTVSS (配列番号:4)
【0094】
配列番号:5
MS-Roche#7のVH-領域(核酸配列)
CAGGTGCAATTGGTGGAAAGCGGCGGCGGCCTGGTGCAACCGGGCGGCAGCCTGCGTCTGAGCTGCGCGGCCTCCGGATTTACCTTTAGCAGCTATGCGATGAGCTGGGTGCGCCAAGCCCCTGGGAAGGGTCTCGAGTGGGTGAGCGCGATTAGCGGTAGCGGCGGCAGCACCTATTATGCGGATAGCGTGAAAGGCCGTTTACCATTTCACGTGATAATTCGAAAAACACCCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGCGTGCGGAAGATACGGCCGTGTATTATTGCGCGCGTGGTAAGGGTAATACTCATAAGCCTTATGGTTATGTTCGTTATTTTGATGTTTGGGGCCAAGGCACCCTGGTGACGGTTAGCTCAGC (配列番号:5)
【0095】
配列番号:6
MS-Roche#7のVH-領域(アミノ酸配列)
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGKGNTHKPYGYVRYFDVWGQGTLVTVSS (配列番号:6)
【0096】
配列番号:7
MS-Roche#8のVH-領域(核酸配列)
CAGGTGCAATTGGTGGAAAGCGGCGGCGGCCTGGTGCAACCGGGCGGCAGCCTGCGTCTGAGCTGCGCGGCCTCCGGATTTACCTTTAGCAGCTATGCGATGAGCTGGGTGCGCCAAGCCCCTGGGAAGGGTCTCGAGTGGGTGAGCGCGATTAGCGGTAGCGGCGGCAGCACCTATTATGCGGATAGCGTGAAAGGCCGTTTTACCATTTCACGTGATAATTCGAAAAACACCCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGCGTGCGGAAGATACGGCCGTGTATTATTGCGCGCGTCTTCTTTCTCGTGGTTATAATGGTTATTATCATAAGTTTGATGTTTGGGGCCAAGGCACCCTGGTGACGGTTAGCTCAGC (配列番号:7)
【0097】
配列番号:8
MS-Roche#8のVH-領域(アミノ酸配列)
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARLLSRGYNGYYHKFDVWGQGTLVTVSS (配列番号:8)
【0098】
配列番号:9
MS-Roche#3のVL-領域(核酸配列)
GATATCGTGCTGACCCAGAGCCCGGCGACCCTGAGCCTGTCTCCGGGCGAACGTGCGACCCTGAGCTGCAGAGCGAGCCAGAGCGTGAGCAGCAGCTATCTGGCGTGGTACCAGCAGAAACCAGGTCAAGCACCGCGTCTATTAATTTATGGCGCGAGCAGCCGTGCAACTGGGGTCCCGGCGCGTTTTAGCGGCTCTGGATCCGGCACGGATTTTACCCTGACCATTAGCAGCCTGGAACCTGAAGACTTTGCGGTTTATTATTGCCAGCAGGTTTATAATCCTCCTGTTACCTTTGGCCAGGGTACGAAAGTTGAAATTAAACGTACG (配列番号:9)
【0099】
配列番号:10
MS-Roche #3のVL-領域(アミノ酸配列)
DIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGVPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQVYNPPVTFGQGTKVEIKRT (配列番号:10)
【0100】
配列番号:11
MS-Roche#7のVL-領域(核酸配列)
GATATCGTGCTGACCCAGAGCCCGGCGACCCTGAGCCTGTCTCCGGGCGAACGTGCGACCCTGAGCTGCAGAGCGAGCCAGAGCGTGAGCAGCAGCTATCTGGCGTGGTACCAGCAGAAACCAGGTCAAGCACCGCGTCTATTAATTTATGGCGCGAGCAGCCGTGCAACTGGGGTCCCGGCGCGTTTTAGCGGCTCTGGATCCGGCACGGATTTTACCCTGACCATTAGCAGCCTGGAACCTGAAGACTTTGCGACTTATTATTGCTTTCAGCTTTATTCTGATCCTTTTACCTTTGGCCAGGGTACGAAAGTTGAAATTAAACGTACG (配列番号 11)
【0101】
配列番号:12
MS-Roche#7のVL-領域(アミノ酸配列)
DIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGVPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFATYYCFQLYSDPFTFGQGTKVEIKRT (配列番号:12)
【0102】
配列番号:13
MS-Roche#8のVL-領域(核酸配列)
GATATCGTGCTGACCCAGAGCCCGGCGACCCTGAGCCTGTCTCCGGGCGAACGTGCGACCCTGAGCTGCAGAGCGAGCCAGAGCGTGAGCAGCAGCTATCTGGCGTGGTACCAGCAGAAACCAGGTCAAGCACCGCGTCTATTAATTTATGGCGCGAGCAGCCGTGCAACTGGGGTCCCGGCGCGTTTTAGCGGCTCTGGATCCGGCACGGATTTTACCCTGACCATTAGCAGCCTGGAACCTGAAGACTTTGCGACTTATTATTGCCAGCAGCTTTCTTCTTTTCCTCCTACCTTTGGCCAGGGTACGAAAGTTGAAATTAAACGTACG (配列番号:13)
【0103】
配列番号:14
MS-Roche#8のVL-領域(アミノ酸配列)
DIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGVPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFATYYCQQLSSFPPTFGQGTKVEIKRT (配列番号:14)
【0104】
配列番号:15
MSR-3のVL-領域のCDR3(核酸配列)
CAG CAG GTT TAT AAT CCT CCT GTT │
(配列番号:15)
【0105】
配列番号:16
MSR-3のVL-領域のCDR3(アミノ酸配列)
QQVYNPPV (配列番号:16)
【0106】
配列番号:17
MSR-7のVL-領域のCDR3(核酸配列)
TTT CAG CTT TAT TCT GAT CCT TTT│
(配列番号:17)
【0107】
配列番号:18
MSR-7のVL-領域のCDR3(アミノ酸配列)
FQLYSDPF (配列番号 18)
【0108】
配列番号:19
MSR-8のVL-領域のCDR3(核酸配列)
CAG CAG CTT TCT TCT TTT CCT CCT
(配列番号 19)
【0109】
配列番号:20
MSR-8のVL-領域のCDR3(アミノ酸配列)
QQLSSFPP (配列番号:20)
【0110】
配列番号:21
MSR-3のVH-領域のCDR(核酸配列)
CTT ACT CAT TAT GCT CGT TAT TAT CGT TAT TTT GAT GTT
(配列番号:21)
【0111】
配列番号:22
MSR-3のVH-領域のCDR(アミノ酸配列)
LTHYARYYRYFDV (配列番号:22)
【0112】
配列番号:23
MSR-7のVH-領域のCDR(核酸配列)
GGT AAG GGT AAT ACT CAT AAG CCT TAT GGT TAT GTT CGT TAT TTT GAT GTT
(配列番号:23)
【0113】
配列番号:24
MSR-7のVH-領域のCDR(アミノ酸配列)
GKGNTHKPYGYVRYFDV (配列番号:24)
【0114】
配列番号:25
MSR-8のVH-領域のCDR(核酸配列)
CTT CTT TCT CGT GGT TAT AAT GGT TAT TAT CAT AAG TTT GAT GTT
(配列番号 25)
【0115】
配列番号:26
MSR-8のVH-領域のCDR(アミノ酸配列)
LLSRGYNGYYHKFDV (配列番号:26)
【0116】
配列番号:27 Aβ4 (アミノ酸1〜42)
DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIA (配列番号:27)
【0117】
配列番号:28 プライマー
5'-GTGGTGGTTCCGATATC-3´ (配列番号:28)
【0118】
配列番号:29 プライマー
5´- AGCGTCACACTCGGTGCGGCTTTCGGCTGGCCAAGAACGGTTA-3´ (配列番号:29)
【0119】
配列番号:30 プライマー
5´-CAGGAAACAGCTATGAC-3´ (配列番号:30)
【0120】
配列番号:31 プライマー
5´-TACCGTTGCTCTTCACCCC-3´ (配列番号:31)
【0121】
配列番号:32 MS-Roche#3.6H5 x 3.6L2のVH; DNA; 人工配列
CAATTGGTGGAAAGCGGCGGCGGCCTGGTGCAACCGGGCGGCAGCCTGCGTCTGAGCTGCGCGGCCTCCGGATTTACCTTTAGCAGCTATGCGATGAGCTGGGTGCGCCAAGCCCCTGGGAAGGGTCTCGAGTGGGTGAGCGCTATTTCTGAGTCTGGTAAGACTAAGTATTATGCTGATTCTGTTAAGGGTCGTTTTACCATTTCACGTGATAATTCGAAAAACACCCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGCGTGCGGAAGATACGGCCGTGTATTATTGCGCGCGTCTTACTCATTATGCTCGTTATTATCGTTATTTTGATGTTTGGGGCCAAGGCACCCTGGTGACGGTTAGCTCA (配列番号:32)
【0122】
配列番号 33: MS-Roche#3.6H5 x 3.6L2のprot VH領域; タンパク質/1; 人工配列
QLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISESGKTKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARLTHYARYYRYFDVWGQGTLVTVSS (配列番号:33)
【0123】
配列番号:34 MS-Roche#3.6H8 x 3.6L2のVH領域; DNA; 人工配列
CAATTGGTGGAAAGCGGCGGCGGCCTGGTGCAACCGGGCGGCAGCCTGCGTCTGAGCTGCGCGGCCTCCGGATTTACCTTTAGCAGCTATGCGATGAGCTGGGTGCGCCAAGCCCCTGGGAAGGGTCTCGAGTGGGTGAGCGCTATTTCTGAGTATTCTAAGTTTAAGTATTATGCTGATTCTGTTAAGGGTCGTTTTACCATTTCACGTGATAATTCGAAAAACACCCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGCGTGCGGAAGATACGGCCGTGTATTATTGCGCGCGTCTTACTCATTATGCTCGTTATTATCGTTATTTTGATGTTTGGGGCCAAGGCACCCTGGTGACGGTTAGCTCA (配列番号:34)
【0124】
配列番号:35 MS-Roche#3.6H8 x 3.6L2のprot VH領域; タンパク質/1; 人工配列
QLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISEYSKFKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARLTHYARYYRYFDVWGQGTLVTVSS (配列番号:35)
【0125】
配列番号:36 MS-Roche#7.4H2 x 7.2L1のVH領域; DNA; 人工配列
CAATTGGTGGAAAGCGGCGGCGGCCTGGTGCAACCGGGCGGCAGCCTGCGTCTGAGCTGCGCGGCCTCCGGATTTACCTTTAGCAGCTATGCGATGAGCTGGGTGCGCCAAGCCCCTGGGAAGGGTCTCGAGTGGGTGAGCGCTATTAATTATAATGGTGCTCGTATTTATTATGCTGATTCTGTTAAGGGTCGTTTTACCATTTCACGTGATAATTCGAAAAACACCCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGCGTGCGGAAGATACGGCCGTGTATTATTGCGCGCGTGGTAAGGGTAATACTCATAAGCCTTATGGTTATGTTCGTTATTTTGATGTTTGGGGCCAAGGCACCCTGGTGACGGTTAGCTCA (配列番号:36)
【0126】
配列番号:37 MS-Roche#7.4H2 x 7.2L1のprot VH領域; タンパク質/1; 人工配列
QLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAINYNGARIYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGKGNTHKPYGYVRYFDVWGQGTLVTVSS (配列番号:37)
【0127】
配列番号:38 MS-Roche#7.9H2 x 7.12 L2のVH領域; DNA; 人工配列
CAATTGGTGGAAAGCGGCGGCGGCCTGGTGCAACCGGGCGGCAGCCTGCGTCTGAGCTGCGCGGCCTCCGGATTTACCTTTAGCAGCTATGCGATGAGCTGGGTGCGCCAAGCCCCTGGGAAGGGTCTCGAGTGGGTGAGCGCTATTAATGCTGATGGTAATCGTAAGTATTATGCTGATTCTGTTAAGGGTCGTTTTACCATTTCACGTGATAATTCGAAAAACACCCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGCGTGCGGAAGATACGGCCGTGTATTATTGCGCGCGTGGTAAGGGTAATACTCATAAGCCTTATGGTTATGTTCGTTATTTTGATGTTTGGGGCCAAGGCACCCTGGTGACGGTTAGCTCA (配列番号:38)
【0128】
配列番号:39 MS-Roche#7.9H2 x 7.12 L2のprot VH領域; タンパク質/1; 人工配列
QLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAINADGNRKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGKGNTHKPYGYVRYFDVWGQGTLVTVSS (配列番号:39)
【0129】
配列番号:40 MS-Roche#7.9H4 x 7.12L2のVH領域; DNA; 人工配列
CAATTGGTGGAAAGCGGCGGCGGCCTGGTGCAACCGGGCGGCAGCCTGCGTCTGAGCTGCGCGGCCTCCGGATTTACCTTTAGCAGCTATGCGATGAGCTGGGTGCGCCAAGCCCCTGGGAAGGGTCTCGAGTGGGTGAGCGCTATTAATGCTGTTGGTATGAAGAAGTTTTATGCTGATTCTGTTAAGGGTCGTTTTACCATTTCACGTGATAATTCGAAAAACACCCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGCGTGCGGAAGATACGGCCGTGTATTATTGCGCGCGTGGTAAGGGTAATACTCATAAGCCTTATGGTTATGTTCGTTATTTTGATGTTTGGGGCCAAGGCACCCTGGTGACGGTTAGCTCA (配列番号:40)
【0130】
配列番号:41 MS-Roche#7.9H4 x 7.12L2のprot VH領域; タンパク質/1; 人工配列
QLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAINAVGMKKFYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGKGNTHKPYGYVRYFDVWGQGTLVTVSS (配列番号:41)
【0131】
配列番号:42 MS-Roche#7.11H1 x 7.11L1のVH領域; DNA; 人工配列
CAATTGGTGGAAAGCGGCGGCGGCCTGGTGCAACCGGGCGGCAGCCTGCGTCTGAGCTGCGCGGCCTCCGGATTTACCTTTAGCAGCTATGCGATGAGCTGGGTGCGCCAAGCCCCTGGGAAGGGTCTCGAGTGGGTGAGCGGTATTAATGCTGCTGGTTTTCGTACTTATTATGCTGATTCTGTTAAGGGTCGTTTTACCATTTCACGTGATAATTCGAAAAACACCCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGCGTGCGGAAGATACGGCCGTGTATTATTGCGCGCGTGGTAAGGGTAATACTCATAAGCCTTATGGTTATGTTCGTTATTTTGATGTTTGGGGCCAAGGCACCCTGGTGACGGTTAGCTCA (配列番号:42)
【0132】
配列番号 43 MS-Roche#7.11H1 x 7.11L1のprot VH領域; タンパク質/1; 人工配列
QLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSGINAAGFRTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGKGNTHKPYGYVRYFDVWGQGTLVTVSS (配列番号:43)
【0133】
配列番号:44 MS-Roche#7.11H1 x 7.2L1のVH領域; DNA; 人工配列
CAATTGGTGGAAAGCGGCGGCGGCCTGGTGCAACCGGGCGGCAGCCTGCGTCTGAGCTGCGCGGCCTCCGGATTTACCTTTAGCAGCTATGCGATGAGCTGGGTGCGCCAAGCCCCTGGGAAGGGTCTCGAGTGGGTGAGCGGTATTAATGCTGCTGGTTTTCGTACTTATTATGCTGATTCTGTTAAGGGTCGTTTTACCATTTCACGTGATAATTCGAAAAACACCCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGCGTGCGGAAGATACGGCCGTGTATTATTGCGCGCGTGGTAAGGGTAATACTCATAAGCCTTATGGTTATGTTCGTTATTTTGATGTTTGGGGCCAAGGCACCCTGGTGACGGTTAGCTCA (配列番号:44)
【0134】
配列番号:45 MS-Roche#7.11H1 x 7.2L1のprot VH領域; タンパク質/1; 人工配列
QLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSGINAAGFRTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGKGNTHKPYGYVRYFDVWGQGTLVTVSS (配列番号:45)
【0135】
配列番号:46 MS-Roche#3.6H5 x 3.6L2のVL領域; DNA; 人工配列
GATATCGTGCTGACCCAGAGCCCGGCGACCCTGAGCCTGTCTCCGGGCGAACGTGCGACCCTGAGCTGCAGAGCGAGCCAGTTTCTTTCTCGTTATTATCTGGCGTGGTACCAGCAGAAACCAGGTCAAGCACCGCGTCTATTAATTTATGGCGCGAGCAGCCGTGCAACTGGGGTCCCGGCGCGTTTTAGCGGCTCTGGATCCGGCACGGATTTTACCCTGACCATTAGCAGCCTGGAACCTGAAGACTTTGCGGTTTATTATTGCCAGCAGACTTATAATTATCCTCCTACCTTTGGCCAGGGTACGAAAGTTGAAATTAAACGTACG (配列番号:46)
【0136】
配列番号:47 MS-Roche#3.6H5 x 3.6L2のprot VL領域; タンパク質/1; 人工配列
DIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQFLSRYYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGVPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQTYNYPPTFGQGTKVEIKRT (配列番号:47)
【0137】
配列番号:48 MS-Roche#3.6H8 x 3.6L2のVL領域; DNA; 人工配列
GATATCGTGCTGACCCAGAGCCCGGCGACCCTGAGCCTGTCTCCGGGCGAACGTGCGACCCTGAGCTGCAGAGCGAGCCAGTTTCTTTCTCGTTATTATCTGGCGTGGTACCAGCAGAAACCAGGTCAAGCACCGCGTCTATTAATTTATGGCGCGAGCAGCCGTGCAACTGGGGTCCCGGCGCGTTTTAGCGGCTCTGGATCCGGCACGGATTTTACCCTGACCATTAGCAGCCTGGAACCTGAAGACTTTGCGGTTTATTATTGCCAGCAGACTTATAATTATCCTCCTACCTTTGGCCAGGGTACGAAAGTTGAAATTAAACGTACG (配列番号:48)
【0138】
配列番号:49 MS-Roche#3.6H8 x 3.6L2のprot VL領域; タンパク質/1; 人工配列
DIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQFLSRYYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGVPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQTYNYPPTFGQGTKVEIKRT (配列番号:49)
【0139】
配列番号:50 MS-Roche#7.4H2 x 7.2L1のVL領域; DNA; 人工配列
GATATCGTGCTGACCCAGAGCCCGGCGACCCTGAGCCTGTCTCCGGGCGAACGTGCGACCCTGAGCTGCAGAGCGAGCCAGTATGTTGATCGTACTTATCTGGCGTGGTACCAGCAGAAACCAGGTCAAGCACCGCGTCTATTAATTTATGGCGCGAGCAGCCGTGCAACTGGGGTCCCGGCGCGTTTTAGCGGCTCTGGATCCGGCACGGATTTTACCCTGACCATTAGCAGCCTGGAACCTGAAGACTTTGCGACTTATTATTGCCAGCAGATTTATTCTTTTCCTCATACCTTTGGCCAGGGTACGAAAGTTGAAATTAAACGTACG (配列番号:50)
【0140】
配列番号:51 MS-Roche#7.4H2 x 7.2L1のprot VL領域; タンパク質/1; 人工配列
DIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQYVDRTYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGVPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFATYYCQQIYSFPHTFGQGTKVEIKRT (配列番号:51)
【0141】
配列番号:52 MS-Roche#7.9H2 x 7.12 L2のVL領域; DNA; 人工配列
GATATCGTGCTGACCCAGAGCCCGGCGACCCTGAGCCTGTCTCCGGGCGAACGTGCGACCCTGAGCTGCAGAGCGAGCCAGCGTTTTTTTTATAAGTATCTGGCGTGGTACCAGCAGAAACCAGGTCAAGCACCGCGTCTATTAATTTCTGGTTCTTCTAACCGTGCAACTGGGGTCCCGGCGCGTTTTAGCGGCTCTGGATCCGGCACGGATTTTACCCTGACCATTAGCAGCCTGGAACCTGAAGACTTTGCGGTTTATTATTGCCTTCAGCTTTATAATATTCCTAATACCTTTGGCCAGGGTACGAAAGTTGAAATTAAACGTACG (配列番号:52)
【0142】
配列番号:53 MS-Roche#7.9H2 x 7.12 L2のprot VL領域; タンパク質/1; 人工配列
DIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQRFFYKYLAWYQQKPGQAPRLLISGSSNRATGVPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCLQLYNIPNTFGQGTKVEIKRT (配列番号:53)
【0143】
配列番号:54 MS-Roche#7.9H4 x 7.12L2のVL領域; DNA; 人工配列
GATATCGTGCTGACCCAGAGCCCGGCGACCCTGAGCCTGTCTCCGGGCGAACGTGCGACCCTGAGCTGCAGAGCGAGCCAGCGTTTTTTTTATAAGTATCTGGCGTGGTACCAGCAGAAACCAGGTCAAGCACCGCGTCTATTAATTTCTGGTTCTTCTAACCGTGCAACTGGGGTCCCGGCGCGTTTTAGCGGCTCTGGATCCGGCACGGATTTTACCCTGACCATTAGCAGCCTGGAACCTGAAGACTTTGCGGTTTATTATTGCCTTCAGCTTTATAATATTCCTAATACCTTTGGCCAGGGTACGAAAGTTGAAATTAAACGTACG (配列番号:54)
【0144】
配列番号:55 MS-Roche#7.9H4 x 7.12L2のprot VL領域; タンパク質/1; 人工配列
DIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQRFFYKYLAWYQQKPGQAPRLLISGSSNRATGVPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCLQLYNIPNTFGQGTKVEIKRT (配列番号:55)
【0145】
配列番号:56 MS-Roche#7.11H1 x 7.11L1のVL領域; DNA; 人工配列
GATATCGTGCTGACCCAGAGCCCGGCGACCCTGAGCCTGTCTCCGGGCGAACGTGCGACCCTGAGCTGCAGAGCGAGCCAGCGTATTCTTCGTATTTATCTGGCGTGGTACCAGCAGAAACCAGGTCAAGCACCGCGTCTATTAATTTATGGCGCGAGCAGCCGTGCAACTGGGGTCCCGGCGCGTTTTAGCGGCTCTGGATCCGGCACGGATTTTACCCTGACCATTAGCAGCCTGGAACCTGAAGACTTTGCGACTTATTATTGCCAGCAGGTTTATTCTCCTCCTCATACCTTTGGCCAGGGTACGAAAGTTGAAATTAAACGTACG (配列番号:56)
【0146】
配列番号:57 MS-Roche#7.11H1 x 7.11L1のprot VL領域; タンパク質/1; 人工配列
DIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQRILRIYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGVPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFATYYCQQVYSPPHTFGQGTKVEIKRT (配列番号:57)
【0147】
配列番号:58 MS-Roche#7.11H1 x 7.2L1のVL領域; DNA; 人工配列
GATATCGTGCTGACCCAGAGCCCGGCGACCCTGAGCCTGTCTCCGGGCGAACGTGCGACCCTGAGCTGCAGAGCGAGCCAGTATGTTGATCGTACTTATCTGGCGTGGTACCAGCAGAAACCAGGTCAAGCACCGCGTCTATTAATTTATGGCGCGAGCAGCCGTGCAACTGGGGTCCCGGCGCGTTTTAGCGGCTCTGGATCCGGCACGGATTTTACCCTGACCATTAGCAGCCTGGAACCTGAAGACTTTGCGACTTATTATTGCCAGCAGATTTATTCTTTTCCTCATACCTTTGGCCAGGGTACGAAAGTTGAAATTAAACGTACG (配列番号:58)
【0148】
配列番号:59 MS-Roche#7.11H1 x 7.2L1のprot VL領域; タンパク質/1; 人工配列
DIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQYVDRTYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGVPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFATYYCQQIYSFPHTFGQGTKVEIKRT (配列番号:59)
【0149】
配列番号:60 MS-Roche#3.6H5 x 3.6L2のHCDR3領域; DNA; 人工配列
CTTACTCATTATGCTCGTTATTATCGTTATTTTGATGTT (配列番号:60)
【0150】
配列番号:61 MS-Roche#3.6H5 x 3.6L2のprot HCDR3領域; タンパク質/1; 人工配列
LTHYARYYRYFDV (配列番号:61)
【0151】
配列番号:62 MS-Roche#3.6H8 x 3.6L2のHCDR3領域; DNA; 人工配列
CTTACTCATTATGCTCGTTATTATCGTTATTTTGATGTT (配列番号:62)
【0152】
配列番号:63 MS-Roche#3.6H8 x 3.6L2のprot HCDR3領域; タンパク質/1; 人工配列
LTHYARYYRYFDV (配列番号:63)
【0153】
配列番号:64 MS-Roche#7.4H2 x 7.2L1のHCDR3領域; DNA; 人工配列
GGTAAGGGTAATACTCATAAGCCTTATGGTTATGTTCGTTATTTTGATGTT (配列番号:64)
【0154】
配列番号:65 MS-Roche#7.4H2 x 7.2L1のprot HCDR3領域; タンパク質/1; 人工配列
GKGNTHKPYGYVRYFDV (配列番号:65)
【0155】
配列番号:66 MS-Roche#7.9H2 x 7.12 L2のHCDR3領域; DNA; 人工配列
GGTAAGGGTAATACTCATAAGCCTTATGGTTATGTTCGTTATTTTGATGTT (配列番号:66)
【0156】
配列番号:67 #MS-Roche 7.9H2 x 7.12 L2のprot HCDR3領域; タンパク質/1; 人工配列
GKGNTHKPYGYVRYFDV (配列番号:67)
【0157】
配列番号:68 MS-Roche#7.9H4 x 7.12L2のHCDR3領域; DNA; 人工配列
GGTAAGGGTAATACTCATAAGCCTTATGGTTATGTTCGTTATTTTGATGTT (配列番号:68)
【0158】
配列番号:69 MS-Roche#7.9H4 x 7.12L2のprot HCDR3領域; タンパク質/1; 人工配列
GKGNTHKPYGYVRYFDV (配列番号:69)
【0159】
配列番号:70 MS-Roche#7.11H1 x 7.11L1のHCDR3領域; DNA; 人工配列
GGTAAGGGTAATACTCATAAGCCTTATGGTTATGTTCGTTATTTTGATGTT (配列番号:70)
【0160】
配列番号:71 MS-Roche#7.11H1 x 7.11L1のprot HCDR3領域; タンパク質/1; 人工配列
GKGNTHKPYGYVRYFDV (配列番号:71)
【0161】
配列番号:72 MS-Roche#7.11H1 x 7.2L1のHCDR3領域; DNA; 人工配列
GGTAAGGGTAATACTCATAAGCCTTATGGTTATGTTCGTTATTTTGATGTT (配列番号:72)
【0162】
配列番号:73 MS-Roche#7.11H1 x 7.2L1のprot HCDR3領域; タンパク質/1; 人工配列
GKGNTHKPYGYVRYFDV (配列番号:73)
【0163】
配列番号:74 MS-Roche#3.6H5 x 3.6L2のLCDR3領域; DNA; 人工配列
CAGCAGACTTATAATTATCCTCCT (配列番号:74)
【0164】
配列番号:75 MS-Roche#3.6H5 x 3.6L2のprot LCDR3領域; タンパク質/1; 人工配列
QQTYNYPP (配列番号:75)
【0165】
配列番号:76 MS-Roche#3.6H8 x 3.6L2のLCDR3領域; DNA; 人工配列
CAGCAGACTTATAATTATCCTCCT (配列番号:76)
【0166】
配列番号:77 MS-Roche#3.6H8 x 3.6L2のprot LCDR3領域; タンパク質/1; 人工配列
QQTYNYPP (配列番号:77)
【0167】
配列番号:78 MS-Roche#7.4H2 x 7.2L1のLCDR3領域; DNA; 人工配列
CAGCAGATTTATTCTTTTCCTCAT (配列番号:78)
【0168】
配列番号:79 MS-Roche#7.4H2 x 7.2L1のprot LCDR3領域; タンパク質/1; 人工配列
QQIYSFPH (配列番号:79)
【0169】
配列番号:80 MS-Roche#7.9H2 x 7.12 L2のLCDR3領域; DNA; 人工配列
CTTCAGCTTTATAATATTCCTAAT (配列番号:80)
【0170】
配列番号:81 MS-Roche#7.9H2 x 7.12 L2のprot LCDR3領域; タンパク質/1; 人工配列
LQLYNIPN (配列番号:81)
【0171】
配列番号:82 MS-Roche#7.9H4 x 7.12L2のLCDR3領域; DNA; 人工配列
CTTCAGCTTTATAATATTCCTAAT (配列番号:82)
【0172】
配列番号:83 MS-Roche#7.9H4 x 7.12L2のprot LCDR3領域; タンパク質/1; 人工配列
LQLYNIPN (配列番号:83)
【0173】
配列番号:84 MS-Roche#7.11H1 x 7.11L1のLCDR3領域; DNA; 人工配列
CAGCAGGTTTATTCTCCTCCTCAT (配列番号:84)
【0174】
配列番号:85 MS-Roche#7.11H1 x 7.11L1のprot LCDR3領域; タンパク質/1; 人工配列
QQVYSPPH (配列番号:85)
【0175】
配列番号:86 MS-Roche#7.11H1 x 7.2L1のLCDR3領域; DNA; 人工配列
CAGCAGATTTATTCTTTTCCTCAT (配列番号:86)
【0176】
配列番号:87 MS-Roche#7.11H1 x 7.2L1のprot LCDR3領域; タンパク質/1; 人工配列
QQIYSFPH (配列番号:87)
【0177】
配列番号:88 MS-Roche#7.9H7のVH領域; DNA; 人工配列
Caggtgcaattggtggaaagcggcggcggcctggtgcaaccgggcggcagcctgcgtctgagctgcgcggcctccggatttacctttagcagctatgcgatgagctgggtgcgccaagcccctgggaagggtctcgagtgggtgagcgctattaatgcttctggtactcgtacttattatgctgattctgttaagggtcgttttaccatttcacgtgataattcgaaaaacaccctgtatctgcaaatgaacagcctgcgtgcggaagatacggccgtgtattattgcgcgcgtggtaagggtaatactcataagccttatggttatgttcgttattttgatgtttggggccaaggcaccctggtgacggttagctca (配列番号:88)
【0178】
配列番号:89 MS-Roche#7.9H7のprot VH領域; タンパク質/1; 人工配列
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAINASGTRTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGKGNTHKPYGYVRYFDVWGQGTLVTVSS (配列番号:89)
【0179】
配列番号:90 MS-Roche#7.9H7のVL領域; DNA; 人工配列
Gatatcgtgctgacccagagcccggcgaccctgagcctgtctccgggcgaacgtgcgaccctgagctgcagagcgagccagagcgtgagcagcagctatctggcgtggtaccagcagaaaccaggtcaagcaccgcgtctattaatttatggcgcgagcagccgtgcaactggggtcccggcgcgttttagcggctctggatccggcacggattttaccctgaccattagcagcctggaacctgaagactttgcgacttattattgccttcagatttataatatgcctattacctttggccagggtacgaaagttgaaattaaacgtacg (配列番号:90)
【0180】
配列番号:91 MS-Roche#7.9H7のprot VL領域; タンパク質/1; 人工配列
DIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGVPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFATYYCLQIYNMPITFGQGTKVEIKRT (配列番号:91)
【0181】
配列番号:92 MS-Roche#7.9H7のHCDR3領域; DNA; 人工配列
Ggtaagggtaatactcataagccttatggttatgttcgttattttgatgtt (配列番号:92)
【0182】
配列番号:93 MS-Roche#7.9H7のprot HCDR3領域; タンパク質/1; 人工配列
GKGNTHKPYGYVRYFDV (配列番号:93)
【0183】
配列番号:94 MS-Roche#7.9H7のLCDR3領域; DNA; 人工配列
Cttcagatttataatatgcctatt (配列番号:94)
【0184】
配列番号:95 MS-Roche#7.9H7のprot LCDR3領域; タンパク質/1; 人工配列
LQIYNMPI (配列番号:95)
【0185】
さらなる実例配列を、添付の配列表に示し、添付の表、特に表1、8および10にも示す。
【実施例】
【0186】
実施例により本発明を説明する。
【0187】
実施例1: ヒトコンビナトリアル抗体ライブラリー(HuCAL(登録商標)-Fab 1)の構築およびスクリーニング
HuCAL(登録商標)-Fab 1のクローニング
HuCAL(登録商標)-Fab 1は、Fab抗体断片形式の完全に合成のモジュール(modular)ヒト抗体ライブラリーである。HuCAL(登録商標)-Fab 1は、単鎖形式の抗体ライブラリー(HuCAL(登録商標)-scFv; Knappik,(2000), J. Mol. Biol. 296, 57-86)から始めて合成した。
Vλ 1位および2位。オリジナルのHuCAL(登録商標)マスター遺伝子を、その真正N-末端: VLλ1: QS (CAGAGC)、VLλ2: QS (CAGAGC)およびVLλ3: SY (AGCTAT)を用いて構築した。これらのアミノ酸を含有する配列は国際公開公報WO 97/08320に示されている。HuCAL(登録商標)ライブラリー構築の際、ライブラリークローニングを容易にするために最初の2つのアミノ酸をDIに置換した(EcoRI部位)。すべてのHuCAL(登録商標)ライブラリーは、5’-末端にEcoRV部位 GATATC (DI)を有するVLλ遺伝子を含有する。すべてのHuCAL(登録商標)κ遺伝子(マスター遺伝子およびライブラリー内のすべての遺伝子)は5’-末端にDIを含有する(図1AおよびB)。
VH 1位。オリジナルのHuCAL(登録商標)マスター遺伝子を、その真正 N-末端: 第1アミノ酸としてQ (=CAG)を有するVH1A、VH1B、VH2、VH4およびVH6ならびに第1アミノ酸としてE (=GAA)を有するVH3およびVH5を用いて構築した。これらのアミノ酸を含有する配列は国際公開公報WO 97/08320に示されている。HuCAL(登録商標)-Fab1ライブラリーのクローニングの際、すべてのVH遺伝子においてVHの1位のアミノ酸をQ (CAG)に置換した(図1AおよびB)。
CDRライブラリーの設計
Vκ1/Vκ3 85位。CDR3ライブラリーを誘導するために使用したカセット式変異誘発手順(Knappik, (2000), 前出)のため、Vκ1およびVκ3の85位は、TまたはVのいずれかであり得る。したがって、HuCAL(登録商標)-scFv1ライブラリー構築の際、Vκ1およびVκ3の85位を以下のように変化させた: Vκ1オリジナル、85T(コドンACC); Vκ1ライブラリー、85Tまたは85V(TRIMコドンACTまたはGTT); Vκ3オリジナル、85V(コドンGTG); Vκ3ライブラリー、85Tまたは85V(TRIM コドンACTまたはGTT); 同じことをHuCAL(登録商標)-Fab1にも適用する。
CDR3設計。すべてのCDR3残基は一定に維持されており、図1AおよびBに示す。
CDR3長さ。設計したCDR3の長さの分布は以下の通りである。変化させた残基は図1において大括弧(x)で示す。VκCDR3は、8個のアミノ酸残基(89〜96位)(7-10残基の場合がある)で、Q89、S90およびD92は一定;およびVH CDR3は、5〜28個のアミノ酸残基(95〜102位)(4-28の場合がある)で、D101は一定。
【0188】
HuCAL(登録商標)-Fab 1を、ファージミド発現ベクターpMORPH(登録商標)18#Fab1(図2)内にクローニングした。このベクターは、C-末端で繊維状ファージの第IIIタンパク質の切断型遺伝子に融合したphoAシグナル配列を有するFd断片を含有し、ompAシグナル配列を有する軽鎖VL-CLをさらに含有する。両鎖は、lacオペロンの制御下にある。定常ドメインCλ CκおよびCH1は、HuCAL(登録商標)のモジュール系(Knappik, (2000), 前出)に充分適合性のある合成遺伝子である。
全VH鎖(MunI/StyI-断片)を、β-ラクタマーゼ転写単位(bla)を含有する1205 bp ダミー断片と置き換え、それによりベクター断片調製のための次の工程を容易にし、かつ完全VH取出しの選択を可能にした。
VH-置換後、VLλをEcoRI/DraIIIにより、またVLκをEcoRI/BslWIにより取出し、細菌性アルカリホスファターゼ(bap)遺伝子断片(1420 bp)と置換した。軽鎖の変異性(variability)は重鎖よりも低いため、クローニングは軽鎖ライブラリーから始めた。HuCAL(登録商標)-scFvライブラリー(Knappik, (2000), 前出)のために作製した、L-CDR3を多様に変化させたVLλおよびVLκ軽鎖ライブラリーもまた、HuCAL(登録商標)-Fab1のクローニングに使用した。λの場合、それらは、λ1-、λ2-およびλ3-HuCAL(登録商標)-フレームワークから構成され、5.7×106の全変異性を有した。VLλ?断片を、プライマー 5'-GTGGTGGTTCCGATATC-3´(配列番号:28)および5´- AGCGTCACACTCGGTGCGGCTTTCGGCTGGCCAAGAACGGTTA-3´(配列番号:29)を用いた15 PCRサイクル(Pwo-ポリメラーゼ)により増幅した。PCR-産物をEcoRV/DraIIIで消化し、ゲル精製した。VLλ-ライブラリーの場合では、bap-ダミーをEcoRV/DraIIIによりライブラリーベクターから除去した。2μgのゲル精製ベクターを3倍モル過剰のVLλ鎖と16時間16℃でライゲートし、ライゲーション混合物を800μl 大腸菌TOP10F細胞(Invitrogen)内にエレクトロポレーションし、全部で4.1×108の独立コロニーを得た。形質転換体を、2×YT/1%グルコース/34μg/ml クロラムフェニコール/100μg/ml アンピシリン中で約2000倍に増幅し、回収し、20%(w/v)グリセロール中に?80℃で保存した。
κライブラリーは、κ1-、κ2-、κ3-およびκ4-HuCAL(登録商標)マスター遺伝子を含有し、5.7×106の全変異性を有する。VLκ鎖は、EcoRV/BsiWIでの制限消化により得、ゲル精製した。VLκ-ライブラリーの場合では、bap-ダミーをEcoRV/BslWIによりライブラリーベクターから除去した。2μgのゲル精製ベクターを5倍モル過剰のVLκ鎖と混合した。ライゲーションおよび大腸菌TOP10F細胞(Invitrogen)への形質転換は、VLλ鎖で記載のようにして行ない、全部で1.6×108の独立コロニーを得た。
2つの軽鎖ライブラリーのDNAを調製し、bla-ダミーをMunI/StyIにより除去し、それによりVHサブライブラリーの挿入のための2つのベクターを作製した。HuCAL(登録商標)-Fab1の作製のため、HuCAL(登録商標)-scFvのVHライブラリーを使用した。HuCAL(登録商標)-scFvのVHライブラリーは、個々にCDR3長さが異なる2つのVH-CDR3トリヌクレオチドライブラリーカセットにより多様に変化させたマスター遺伝子VH1A/B-6 から構成され、各VH-ライブラリーをVLκ-およびVLλ-ライブラリーと結合した。HuCAL(登録商標)-Fab1の作製のため、これらのVH-ライブラリー由来のDNA を、オリジナルの変異性を維持したまま調製した。DNAをMunI/StyIで消化し、ゲル精製した。5倍モル過剰のVH鎖を3μgのVLλ-ライブラリーベクターおよび3μgのVLκ-ライブラリーベクターに4時間22℃でライゲートした。各ベクターについて、ライゲーション混合物を1200μlの大腸菌TOP10F細胞(Invitrogen)内にエレクトロポレーションし、全部で2.1×1010の独立コロニーを得た。形質転換体を、2×YT/1%グルコース/34μg/ml クロラムフェニコール/10μg/ml テトラサイクリン中で約4000倍に増幅し、回収し、20%(w/v)グリセロール中に-80℃で保存した。
品質対照として、単一クローンの軽鎖および重鎖を配列決定すると、それぞれ5´-CAGGAAACAGCTATGAC-3´(配列番号:30)および5´-TACCGTTGCTCTTCACCCC-3´(配列番号:31)であった。
【0189】
ファージミドレスキュー、ファージ増幅および精製
HuCAL(登録商標)-Fab 1を、34μg/ml クロラムフェニコール、10μg/ml テトラサイクリンおよび1%グルコースを含有する2×TY培地(2×TY-CG) 中で増幅した。約0.5のOD600で37℃でのヘルパーファージ感染(VCSM13)、遠心分離および2×TY/34μg/ml クロラムフェニコール/50μg/ml カナマイシン中への再懸濁後、細胞を30℃で一晩増殖させた。ファージを上清みからPEG-沈殿させ(Ausubel, (1998), Current protpcols in molecular biology. John Wiley & Sons, Inc., New York, USA)、PBS/20%グリセロール中に再懸濁し、?80℃で保存した。2回のパニング間でのファージ増幅は、以下のようにして行なった。対数期中期のTG1-細胞を溶出ファージに感染させ、1%のグルコースおよび34μg/mlのクロラムフェニコールを添加したLB-寒天にプレーティングした。30℃で一晩インキュベーションした後、コロニーを削り取り、OD600を0.5に調整し、上記のようにしてヘルパーファージを添加した。
【0190】
実施例2: 固相パニング
MaxiSorpTM マイクロタイタープレートF96 (Nunc)のウェルを、NaN3(0.05% v/v)含有TBSに溶解した2.5μMヒトAβ(1-40)ペプチド(Bachem) 100μlでコートし、密閉したプレートを3日間37℃でインキュベートした。この場合、ペプチドはプレート上で凝集する傾向がある。5%無脂肪粉乳を含むTBSでのブロッキング後、上記のようにして精製した1〜5×1012 HuCAL(登録商標)-Fabファージを1時間20℃で添加した。数回の洗浄工程後、結合したファージを500 mM NaCl、100 mMグリシン pH 2.2を用いたpH-溶出により溶出し、続いて1M TRIS-Cl pH 7で中和した。3回のパニングを行ない、各回間では上記のようにしてファージ増幅行ない、洗浄ストリンジェンシーは各回毎に増大させた。
【0191】
実施例3: 発現のための選択Fab断片のサブクローニング
可溶性Fabの迅速発現を促進するため、選択したHuCAL(登録商標)-Fab断片のFabコード挿入物を発現ベクターpMORPH(登録商標)x7#FS内にサブクローニングした。選択したHuCAL(登録商標)-Fab クローンのDNA調製物をXbaI/EcoRIで消化し、Fabコード挿入物(ompA-VLおよびphoA-Fd)をかくして切出した。予めscFv挿入物を保有したXbaI/EcoRI切断ベクターpMORPH(登録商標)x7内への精製挿入物のサブクローニングは、pMORPH(登録商標)x9#Fab1(図3)で表されるFab発現ベクターをもたらす。このベクターで発現されるFabは、検出および精製のための2つのC-末端タグ(FLAGおよびStrep)を保有する。
【0192】
実施例4: ELISAによるAβ-結合Fab断片の同定
MaxisorpTMマイクロタイタープレートF384 (Nunc)のウェルを、NaN3(0.05% v/v)を含有するTBSに溶解した2.5μMヒトAβ(1-40)ペプチド(Bachem)20μlでコートし、密閉したプレートを3日間37 ℃でインキュベートした。この場合、ペプチドはプレート上で凝集する傾向がある。個々のFabの発現を、1 mM IPTGにより16時間22℃で誘導した。可溶性Fabを、BEL溶解(ホウ酸、NaCl、EDTAおよびリゾチーム含有バッファー pH 8)により大腸菌から抽出し、ELISAにおいて使用した。Fab断片は、アルカリホスファターゼ結合ヤギ抗-Fab抗体(Dianova/Jackson Immuno Research)により検出した。340 nmで励起後、AttoPhos 蛍光基質(Roche Diagnostics)の添加後に535 nm での発光を読み取った。
【0193】
実施例5: 抗体断片の至適化
選択したAβ結合抗体断片の結合親和性を至適化するため、いくつかのFab断片、MS-Roche-3 (MSR-3)、MS-Roche-7 (MSR-7)およびMS-Roche-8 (MSR-8) (図4)を使用し、親VLκ3鎖を、HuCAL(登録商標)ライブラリー(Knappikら, 2000)由来のCDR3を多様に変化させたすべてのκ鎖κ1〜3のプールと置き換えることにより、Fab抗体断片のライブラリーを構築した。
Fab断片MS-Roche-3、7および8をXbaI/EcoRIにより、pMORPH(登録商標)x9 #FSから、Fab断片のファージディスプレイ用ファージミド系ベクターであるpMORPH(登録商標)18にクローニングし、pMORPH(登録商標)18#Fab1 (図2)を作製した。κ鎖プールをXbaI/SphI 制限部位によりpMORPH(登録商標)18#Fab1内にクローニングした。
【0194】
得られたFab 至適化ライブラリーを、実施例2に記載のようにして固相にコートされた凝集ヒトAβ(1〜40)ペプチド対するパニングによりスクリーニングした。至適化クローンを、実施例8に記載のようなBiacoreアッセイにおけるkoff-ランキングにより同定した。至適化されたクローンMS-Roche-3.2、3.3、3.4、3.6、7.2、7.3、7.4、7.9、7.11、7.12、8.1、8.2をさらに特性付けすると、断片MS-Roche-3、MS-Roche-7およびMS-Roche-8 (図4)から始めたものと比べ、向上したアフィニティーおよび生物学的活性が示された。列挙したCDRは、HuCAL(登録商標)コンセンサスベース抗体遺伝子VH3κ3を示す。Fab断片MS-Roche-7.12は、親クローンMS-R 7のHCDR3をHuCAL(登録商標)-Fabライブラリーにクローニングし、Knappikら, 2000に記載のCDR3カセットに関するものと同一の設計手順を用いてすべての6つのCDR領域に多様性をもたせることにより得た。ライブラリーカセットは、既知の天然のアミノ酸分布に強く偏向させ、Allazikani (Allazikaniら, 1997)により確立された正統なCDR コンホメーションの概念にしたがって設計した。しかしながら、HuCAL(登録商標)マスター遺伝子とは対照的に、クローンMS-Roche 7.12は、VL鎖の49位にアミノ酸Sを含有する(添付の表1参照)。
【0195】
第1回目のアフィニティー成熟後の至適化Fabは、MS-Roche-3、MS-Roche-7およびMS-Roche-8クローン(図4)から始めたものより向上した特性を示した。Aβ1-40およびAβ1-42に対する成熟Fabの結合親和性は、850〜1714 nMの親クローンと比べ、22〜240 nMの範囲の有意に増加したKD値をもたらした(表3)。また、ヒトAD脳切片におけるアミロイド斑の免疫組織化学解析により、成熟クローンの有意に増加した染色プロフィールが示された、すなわち、良好なシグナル対バックグラウンド比が得られ、陽性斑染色が比較的低い成熟Fab濃度で検出された(図5)。
【0196】
さらなる至適化のため、L-CDR3至適化MS-Roche-3、-7および-8(表1; 図4)由来の抗体断片の組のVH CDR2領域およびVL CDR1領域を、トリヌクレオチド特異的変異誘発(Virnekaesら, 1994)を用いたカセット式変異誘発により至適化した。したがって、トリヌクレオチドベースHCDR2カセットおよびトリヌクレオチドベースLCDR1カセットを、Knappikら, 2000に記載のCDR3カセットに関するものと同一の設計手順を用いて構築した。ライブラリーカセットは、既知の天然のアミノ酸分布に強く偏向させ、Allazikani (Allazikaniら, 1997)により確立された正統なCDR コンホメーションの概念にしたがって設計した。最初に選択した抗体断片の至適化に使用したプロトコルは、自然な免疫応答の際に観察される体細胞超変異によるアフィニティー成熟のプロセスを模倣し得る。
【0197】
得られたライブラリーを、上記のようにして別々にスクリーニングし、H-CDR2またはL-CDR1領域のいずれかが至適化されたクローンをもたらした。Biacoreにおけるkoff-ランキング後、Aβ1-40-線維に対する改良koffにより上記のようにしてすべてのクローンを同定し、対応する親クローンと比較すると、Aβ1-40もしくはAβ-42のいずれかまたは両方に対して向上したアフィニティーを示した(表3)。表1は、親および至適化されたクローンの配列の特徴を含む。列挙したCDRはHuCAL(登録商標)コンセンサスベース抗体遺伝子VH3κ3を示す。
例えば、Ab1-40に対するMS-Roche-7親Fabのアフィニティーは、表3に示すように、L-CDR3至適化後(MS-Roche-7.9)1100 nMから31 nMまで35倍を超えて向上し、H-CDR2至適化後(MS-Roche-7.9H2)5 nMまでさらに向上した。
H-CDR2およびL-CDR1至適化手順はアフィニティーを増大させただけでなく、いくつかのクローンでは、MS-Roche 7.9H2および7.9H3で特に見られるようなAD脳切片におけるアミロイド斑の有意に向上した染色がもたらされた。
【0198】
【表1−1】


【表1−2】


【表1−3】


【表1−4】


【表1−5】

【0199】
実施例6
HuCAL(登録商標)免疫グロブリン発現ベクターの構築
重鎖クローニング。リーダー配列(NheI/EcoRI)、VH-ドメイン(MunI/)および免疫グロブリン定常領域(BlpI/ApaI)のライゲーションのため、pcDNA3.1+(invitrogen)のマルチ(multiple)クローニングサイトを除去し(NheI/ApaI)、HuCAL(登録商標)設計に使用した制限部位に適合性のあるstufferを挿入した。リーダー配列(EMBL 83133)に、コザック配列(Kozak, 1987)をつけた。ヒトIgGの定常領域(PIR A02146)、IgG4の定常領域(EMBL K01316)および血清IgA1の定常領域(EMBL J00220)の定常領域を、約70塩基長のオーバーラップオリゴヌクレオチドに細分した。HuCAL(登録商標)設計には不適当な制限部位を除去するため、サイレント変異を誘導した。オリゴヌクレオチドを重複伸長-PCRによりスプライシングした。
FabからIgGへのサブクローニングの際、FabのVH DNA配列をMfe I/Blp Iにより切出し、EcoR I/Blp Iにより開裂したIgG ベクターにライゲートした。EcoR I (g/aattc)およびMfe I (c/aattg)は、適合性付着性末端(aatt)を共有し、IgG発現ベクターへのライゲーション後、FabのオリジナルMfe I部位のDNA配列はc/aattgからg/aattgに変化し、それにより、Mfe IおよびEcoR I部位の両方が破壊され、したがって、Q(コドン: caa)からE(コドン: gaa)へのアミノ酸変化ももたらされる。
軽鎖クローニング。pcDNA3.1/Zeo+(Invitrogen)のマルチクローニングサイトを、2つの異なるstufferで置換した。κ-stufferは、κ-リーダー(NheI/EcoRV)、HuCAL(登録商標)-scFv Vκ-ドメイン(EcoRV/BsiWI)およびκ鎖定常領域 (BsiWI/ApaI)の挿入のための制限部位を提供した。λ-stufferにおける対応制限部位は、NheI/EcoRV(λ-リーダー)、EcoRV/HpaI(Vλ-ドメイン)およびHpaI/ApaI (λ鎖定常領域)であった。κ-リーダー(EMBL Z00022)およびλ-リーダー(EMBL J00241)の両方に、コザック配列をつけた。ヒトκ鎖の定常領域(EMBL L00241)およびλ鎖の定常領域(EMBL M18645)を、上記の重複伸長-PCRにより合成した。
IgG-発現CHO-細胞の作製。CHO-K1細胞を、IgGの重鎖発現ベクターおよび軽鎖発現ベクターの等モル混合物で同時トランスフェクトした。二重耐性トランスフェクタントを600μg/ml G418および300μg/ml Zeocin (Invitrogen)により、続いて限界希釈により選択した。単一クローンの上清みをIgG発現について捕捉-ELISAにより評価した。陽性クローンを、10%超低IgG-FCS (Life Technologies)を添加したRPMI-1640培地中で拡大した。上清みのpHを8.0に調整し、滅菌濾過した後、溶液を標準タンパク質Aカラムクロマトグラフィー(Poros 20 A、PE Biosystems)に供した。
【0200】
実施例7: デカペプチドを用いたpepspot解析
Aβ(1-42)を含む以下のアミノ酸配列を、1アミノ酸のフレームシフトを伴う43個のオーバーラップデカペプチドに分割した。
ISEVKM1DAEF RHDSGYEVHH QKLVFFAEDV GSNKGAIIGL MVGGVVI42ATV IV (配列番号:414)。したがって、含有されている(enclosed)DAEF RHDSGYEVHH QKLVFFAEDV GSNKGAIIGL MVGGVVIA(配列番号:27)はAβ4/β-A4ペプチドのアミノ酸1〜42を示す。
43個のデカペプチドを、N-末端アセチル化および市販業者(Jerini BioTools, Berlin)のセルロースシート("pepspot")へのC-末端共有結合により合成した。セルロースシートを、振動台上で2時間、モノクローナル抗体(2μg/ml)含有ブロッキングバッファー(50 mM Tris.HCl、140 mM NaCl、5 mM NaEDTA、0.05% NP40 (Fluka)、0.25%ゼラチン(Sigma)、1% ウシ血清アルブミン第V画分(Sigma)、pH 7.4)とともにインキュベートする。振動台上でシートをTBS (10 mM Tris.HCl、150 mM NaCl、pH 7.5)で3回3分間洗浄する。次いで、それをカソードバッファー(25 mM Tris塩基、40 mM 6-アミノヘキサン酸、0.01% SDS、20%メタノール)で湿らせ、ペプチド側を同じ大きさのPVDF膜(Biorad)に向けて半乾燥ブロットスタック(stack)に移す。
半乾燥ブロットスタックは、ペプチドシートよりやや大きな、新たに湿らせたろ紙(Whatman No.3):
カソードバッファーで湿らせた3枚の紙
ペプチドシート
メタノールで湿らせたPVDF膜1枚
アノードバッファー 1 (30mM Tris塩基、20%メタノール)で湿らせた3枚の紙
アノードバッファー 2 (0.3 mM Tris塩基、20%メタノール)で湿らせた3枚の紙
から構成される。
【0201】
トランスファーは、セルロースシートから抗体のほとんどを溶出させ、PVDF膜にそれを沈着させるのに十分である負電極と正電極との間の0.8mA/cm2の電流密度で40分間行われる。次いで、PVDF膜を第2のPVDF膜に交換し、さらに40分間トランスファーし、セルロースシートからの完全な溶出を確実にする。
PVDF膜をブロッキングバッファーに10分間浸す。次いで、HRP標識抗ヒトIg H+L(Pierce)を1:1000の希釈度で添加し、膜を前後に揺れるプラットフォーム上で1時間インキュベートする。これをTBST(0.005%Tween20を有するTBS)で3×10分洗浄する。41mlのPBS(20mM リン酸Na、150mM NaCl、pH7.2)10μl 30%過酸化水素(Merk)を有する9mlのメタノールに溶解した3mgの4-クロロナフトールからなる溶液に膜を浸すことにより呈色する。暗青色の反転が生じた後、膜を水で十分洗浄し、乾燥させる。
抗体反応性pepspotの割当を、透明なスポットマトリックスを介する視覚検査により行う。目的の抗体のエピトープを反応性ペプチド中の最小のアミノ酸配列として規定する。比較のために、マウスモノクローナル抗体(BAP-2、BAP-1、BAP-17、BAP-21、BAP-24、および4G8)を、抗ヒトIgの代わりにHRP-標識抗-マウスIgを使用すること以外は、同じ方法で解析する。
【0202】
注目すべきことに、親和性成熟および全長IgG1抗体への単価Fab断片の転換は、pepspotおよびELISA解析により示されるエピトープ認識配列のいくらかの広幅化を通常生じる。これは、親和性の結果としての抗体-抗原相互作用におけるより多い接触ポイントの漸加、または隣接するアミノ酸との弱い相互作用が検出されうるような最小のエピトープへのより強い結合に関しうる。後者は、Aβ-由来ペプチドが全長IgG抗体でプローブされる場合でありうる。pepspot解析に関して表2に示されるように、N-末端および中央のエピトープの認識配列は、親Fabおよび対応する完全に成熟したIgG抗体が比較される場合、3アミノ酸まで拡大される。しかし、10ペプチドが、C-末端アミノ酸での共有結合に関して修飾され、このアミノ酸が、それゆえ、立体障害のために全長抗体に容易には接近できないことに留意しなければならない。この場合、最後のC-末端アミノ酸がエピトープ認識配列に有意には寄与せず、C-末端の1つのアミノ酸による最小の認識配列の潜在的な減少が本発明で使用されるpepspot解析において考慮されなければならない。
【0203】
【表2】

【0204】
表2:セルロースシート上の10ペプチドへのFabおよび全長IgG抗体の結合のpepspot解析。番号は、抗体の最適な結合のために10ペプチド中に存在するはずであるAβ1-40配列由来の必須アミノ酸を表す。低ペプチド反応性、それゆえ、エピトープへの弱い寄与は括弧で示される。
【0205】
実施例8:表面プラスモン共鳴(SPR)によるAβ1-40およびAβ1-42線維へのMS-R FabおよびMS-R IgG1抗体のKD値の決定
原線維Aβへの抗Aβ抗体(FabおよびIgG1)の結合を、表面プラスモン共鳴(SPR)によりオンラインで測定し、分子相互作用の親和性を、Johnson, Anal.Biochem. 1991, 198, 268-277、およびRichalet-Secordel, Anal.Biochem. 1997, 249, 165-173により記載されるように測定した。Biacore2000およびBiacore3000機器をこれらの測定のために使用した。Aβ1-40およびAβ1-42線維を、10mM酢酸Naバッファー(pH4.0)中に200μg/mlの濃度で合成ペプチドを37℃で3日間インキュベートすることによりインビトロで作製した。電子顕微鏡解析により、主により短い(<1ミクロン)線維を示すAβ1-40および主により長い(>1ミクロン)線維を有するAβ1-42の両方のペプチドの原線維構造を確認した。これらの線維は、無構造の凝集体および非構造沈殿物の曖昧な混合物よりも綿密に凝集した、ヒトAD脳中の凝集Aβペプチドを表すと考えられる。製造業者の指示説明書(BIAapplication Handbook, バージョン AB, Biacore AB, Uppsala, 1998)に記載されるように線維を1:10に希釈し、「Pioneer Sensor Chip F1」に直接結合させた。最初の実験において、選択したMS-Roche Fabがその反応速度論において実質的に異なり、それ故データ解析の様式を選択しなければならないことを見出した。緩徐な速度論を有する結合剤について、KD値を、時間依存性センサー応答のカーブフィッティング、すなわち、Koff/Konの比から計算した。迅速な速度論を有する結合剤を、平衡状態(吸着-等温線)で濃度依存センサー応答をフィッティングさせることにより解析した。KD値を、タンパク質アッセイにより測定される総Fab濃度に基づいてBiacore sensogramから計算した。第1および第2の親和性成熟サイクルに由来するクローンについて、各調製物中の活性Fabの含量を、Christensen, Analytical Biochemistry (1997) 249, 153-164により記載される方法に従ってBiacore中で測定した。手短には、Biacoreチップに固定化されたAβ1-40線維への時間依存性タンパク質結合を種々の流速の分析溶液で質量制限条件下での会合相の間測定した。大量のAβ線維(2300応答単位)を測定チャネルのチップ表面に固定化し、比較的低い解析濃度、すなわち、160nM (総Fabタンパク質濃度に基づいて)で作動させることにより、質量制限の条件を実現した。
第1および第2の親和性成熟サイクル後、HuCALライブラリーの最初のスクリーニングにおいて同定され、選択したMS-Rocheクローンおよびその対応する成熟誘導体のKD値の要約を表3に示す。第1親和性成熟サイクルにおいて、重鎖CDR3(VH-CDR3)を一定に保ち、最適化を軽鎖CDR(VL-CDR3)の多様化に焦点を合わせた。第2の親和性サイクルにおいて、VL-CDR1およびVH-CDR2の多様化を行った。第1の成熟サイクルに由来する結合剤のいくつかを、実施例6に記載のMorphoSysにより開発された技術に従って全長ヒトIgG1抗体に変換し、KD値を上記のBiacoreにおいて決定した。Aβ1-40およびAβ1-42線維への全長IgG1結合のKD値を表4に示す。
【0206】
第2の成熟サイクル後のL-CDR1およびH-CDR2ライブラリーの両方に由来する成熟誘導体を同定し、軽鎖および重鎖の組み合わせを可能にした。クロスクローニングストラテジーを実施例13に記載する。軽鎖全体、LCDR1またはL-CDR1+2のいずれかを交換した。選択されたクロスクローニングFabのKD値を表8に示す。
【0207】
第1および第2の成熟サイクルならびにクロスクローニングした結合剤由来のFabのいくつかを実施例6に記載のMorphoSysにより開発された技術に従って全長ヒトIgG1抗体に変換した。Aβ1-40およびAβ1-42線維へのIgGの結合のKD値を、Biacoreにおいて測定した。手短には、二価複合体の段階形成に関する速度論モデルを使用し、KD値を平衡結合のScatchard型解析(スキル、親)により計算した。低抗体濃度での非常に緩徐な会合プロセスのために(平衡に達するまで数時間)、平衡結合データを長期間の間隔への会合カーブの外挿により得た。一価および二価複合体の形成のためのオンおよびオフ測度を、カーブフィット手順により測定し、外挿のために使用した。これらのReq値に基づき、Scatchard解析を行い、一価および二価複合体の形成のためのKD値を決定した。データを表5に要約する。曲線Scatchardプロットから、高(二価)および低(一価)親和性相互作用は、MS-R IgGの第2の親和性成熟サイクルおよびクロスクローンに由来した。これらの2つの親和性は、表5に示される範囲の下方および上方KD値を表す。
【0208】
【表3】

【0209】
表3:Biacoreにおいて測定されたAβ1-40およびAβ1-42線維へのMS-R結合のKD値。第1および第2の親和性成熟サイクルに由来するクローンに関して、値は、本文に記載される各実施例に存在する活性Fabの含量に関して補正されている。a、平衡での濃度依存性センサー応答から値を計算した;n.d.、測定せず。
【0210】
【表4】

【0211】
表4:Biacoreで測定したAβ1-40およびAβ1-42線維へのMS-R IgG1結合に関するKD値。IgGは、第1の親和性成熟サイクル後に選択下MS-R Fabに由来した。値は、本文中に記載されているように各サンプルに存在する活性MS-R IgGの含量に関して補正されている。
【0212】
【表5】

【0213】
表5:Biacoreで決定したAβ1-40およびAβ1-42線維へのMS-R IgG1結合に関するKD値。IgGは、第1および第2の親和性成熟サイクル後に選択されたMS-R FabおよびクロスクローニングしたFabに由来した。値は、本文中に記載のように各サンプル中に存在する活性MS-R IgGの含量に関して補正されている。第2の親和性成熟工程およびクロスクローニングした結合剤に由来するMS-R IgGについて得られた2つのKD値は、曲線Scatchardプロットから計算した高親和性および低親和性を表す。多数のさらなるMS-R IgG(例えば、MS-R IgG 7.9.、H2x7.12.L2およびMS-R IgG)7.9.H4×7.12.L2)により、複雑な曲線Scatchardブロットを得、それ故KD値の決定は不可能であった。
【0214】
実施例9:間接免疫蛍光によるアルツハイマー病患者の脳切片中の真正ヒトアミロイドプラークの染色
選択したMS−Roche Fabおよび全長IgG1を、免疫組織化学解析によりβ−アミロイド斑への結合について試験した。ヒト側頭皮質に由来する未固定組織クリオスタット切片(アルツハイマー病について陽性と診断された患者から死後に得られた)を、種々の濃度のMS−Roche Fabまたは全長ヒトIgG1抗体を用いて間接的な免疫蛍光法により標識した。FabおよびIgG1抗体は、それぞれCy3に結合したヤギ抗ヒト親和性精製F(ab’)2断片およびCy3に結合したヤギ抗ヒト(H+L)により表された。両方の二次試薬を、Jackson lmmuno Researchから得た。対照は、無関係のFabおょび二次抗体のみを含み、これらは全て陰性結果を示した。選択されたMS−Roche FabおよびMS−Roche IgG1抗体での斑染色の典型的な例は図5〜7に示される。
【0215】
実施例10:重合アッセイ:Aβ凝集の防止
合成Aβは、水性バッファー中で数日間インキュベートされた場合、自発的に凝集し、アルツハイマー病患者の脳のアミロイド沈着物に見られるものに類似する原線維構造を形成する。我々は、抗−Aβ抗体およびアルブミン等の他のAβ一結合タンパク質(Bohrmannら、1999,J.Biol.Chem.274,15990−15995)のAβ中和能力を解析するために、プレフォームAβ凝集体へのビオチン化Aβの取り込みを測定するためのインビトロアッセイを関発した。Aβ凝集における小分子の効果もまた、このアッセイで解析されうる。
【0216】
実験手順:
NUNC Maxisorb マイクロタイタープレート(MTP)をAβ1−40およびAβ1−42(各々2μM、ウェル毎に100μ1)の1:1混合物で37℃にて3日間被覆する。これらの条件下で、高度に凝集した原線維Aβをウェルの表面に吸着させ、固定化する。次いで、被覆溶液を除去し、プレートを室温で2〜4時間乾燥させる(乾燥プレートを−20℃で保存しうる)。残液結合部位を、0.05%Tween20(T−PBS)および1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有する300μ1/ウェルリン酸緩衝化生理食塩水を添加することによりブロックする。室温で1〜2時間のインキュベーション後、プレートを1×300μ1 T−PBSで洗浄する。0.05%NaN3および段階希釈した抗体を含む20mM Tris−HCl、150mM NaCl pH7.2(TBS)中の20nMビオチン化Aβ1−40の溶液を添加し(100μ1/ウェル)、37℃で一晩インキュベートする。300μ1のT−PBSで3回洗浄後、1%BSAを含有するT−PBSに1:1000で希釈したストレプトアビジンーPODコンジュゲート(Roche Molecular Biochemicals)を添加し(100μ1/ウェル)、室温で2時間インキュベートする。ウェルをT−PBSで3回洗浄し、100μ1/ウェルの新しく調製したテトラメチルーベンジジン(TMB)溶液を添加する。[TMB溶液の調製:10mlの30mMクエン酸pH4.1(KOHで調整)+0.5mlのTMB(1m1アセトン+9mlメタノール中に12mg TMB)+0.0lmlの35%H22]。100μ1/ウェルのIN H2S04を添加することにより反応を停止させ、吸光度をマイクロタイタープレートリーダーで450nmにて読み取る。
【0217】
結果:
図8は、M−Roche IgG1抗体が、プレフオームAβ1−40/Aβ1−42凝集体へのビオチン化Aβ1−40の取り込みを防止したことを示す。これらの全長ヒトlgGのAβ一中和能力は、標準的な免疫手順により作製され、実施例7に記載のPepspot技術により解析した場合、Aβペプチドのアミノ酸残基4〜6を特異的に認識するマウスモノクローナル抗体BAP−1に類似した。アミノ酸4〜6とも排他的に反応するマウスモノクローナル抗体BAP−2(Brockhaus、未公表)は、このアッセイにおいて有意に活性が低かった。さらに低い活性は、Aβ1−40 C一末端特異的抗体BAP−17(Brockhaus,Neuroreport 9(1998),1481−1486)およびAβ配列の17〜24位のエピトープを認識するモノクローナル抗体4G8(Kim,1988,Neuroscience Research Communication Vol.2,121−130)で見出された。10μg/mlまでの濃度のBSAは、ビオチン化Aβの取り込みに影響せず、陰性対照として使用した。しかし、高濃度、すなわち、>100μg/mlでは、BSAは、プレフオームAβ繊維へのビオチン化Aβの結合を阻害し(Bohrmann,(1999)J BioChem 274(23),15990−5)、BSAとAβとの相互作用は高親和性ではないことを示す。
【0218】
実施例11:脱重合アッセイ:凝集Aβからのピオチン化Aβの放出
類似した実験設定において、我々は、凝集Aβの脱重合を誘導するMS−Roche IgG抗体の能力を試験した。まず、種々の抗−Aβ抗体での処置前に、ビオチン化Aβ1−40をプレフォームAβ1−40/Aβ1−42線維に取り込ませた。ビオチン化Aβの遊離を、重合アッセイに記載したのと同じアッセイを用いて測定した。
【0219】
実験手順:
NUNC Maxisorb マイクロタイタープレート(MTP)を、重合アッセイに記載したようにAβ1−40およびAβ1−42の1:1混合物で被覆する。ビオチン化Aβの取り込みのために、被覆プレートを、0.05% NaN3を含有するTBS中の200μI/ウェルの20nMビオチン化Aβ1−40とともに37℃で一晩インキュベートする。3×300μ1/ウェルのT−PBSでプレートを洗浄した後、0.05%NaN3を含有するTBS中に段階希釈した抗体を添加し、37℃で3時間インキュベートした。プレートを洗浄し、上記のようにビオチン化Aβ1−40の存在について解析した。
【0220】
結果:
図9A〜Dは、本発明の抗体が、組み込まれたビオチン化Aβ1−40の放出により測定される凝集Aβの説重合を誘導したことを示す。MS−R抗体およびマウスモノクローナル抗体BAP−1は同様に活性であったが、BAP−2、BAP−17および4G8抗体は、固定化されたAβ凝集体のバルクからビオチン化Aβを遊離することにおいて明らかに効率が低かった。BAP−1は、細胞表面全長APPとの反応性によりMS−R抗体とは明らかに区別され得(図15参照)、かかる特性を有するBAP−1のような抗体は、潜在的な自己免疫反応が誘導されうるので治療適用には有用ではない。BAP−2が、凝集したAβに曝されるアミノ酸残基4〜6に対する特異性にも関わらず、このアッセイでは明らかに低い活性を有することに注目することは興味深く、全てのN−末端特異的抗体が先天的にプレフォーム凝集体からAβを放出することにおいて同様に効率的ではないことを示す。MS−Roche lgGは、脱重合活性に関してBAP−2よりも明らかに優れる。このアッセイにおける、BAP−17(C−末端−特異的)および4G8(アミノ酸残基16〜24−特異的)の比較的低い効力は、凝集したAβのこれらの2つのエピトープの潜在的性質による。重合アッセイで既に記載したように、ここで使用される濃度のBSAは、凝集したAβに対して効果を有さなかった。
【0221】
第2の親和性成熟サイクルおよびクロスクローニングバインダーに由来するMS−R抗体は、一般に、脱重合アッセイにおいてより高い効率を示し(図9Aと図9BおよびCとの比較)、これらの抗体の結合親和性の増大と一致する(表3〜5参照)。モノクローナル抗体AMY−33および6F/3Dは、所定の実験条件下でインビトロでAβ凝集を妨げることが報告された(Solomon,(1996)Proc.Nathl.Acad.Sci.USA 93,452−455;AMY−33および6F/3D抗体をZymed Laboratories Inc.,San Francisco(注文番号M13−0100)およびDako Diagnostics AG,Zug,Switzerland(注文番号M087201)、それぞれから得た)。図9Dに示されるように、これらの抗体の両方は脱重合アッセイにおいて完全に不活性であった。
【0222】
実施例12:ペプチド結合物におけるELISAによるエピトープ解析
以下のヘプタペプチド(一文字コード)を、固相合成により得、当該分野で公知の技術を用いて液体クロマトグラフィー精製した。
【化1】


【化2】

【0223】
ペプチドをDMSOに溶解させ、l0mMの濃度を達成した。
【0224】
ウシアルブミン(本質的には脂肪酸非含有BSA,Sigma Lot 112F−9390)を10mg/mlの0.1M炭酸水素ナトリウムに溶解させ、1m1当たり50μ1のDMSO中のN−サクシンミジル(succinmidyl)−マレインイミドプロピオネート(NSMP,Pierce)の26mg/ml溶液の添加により活性化した。室温で15分間の反応後、活性化BSAを、溶媒として0.1%アジドナトリウムを有するPBS中でのゲル濾過(NAP−10,Pharmacia)により精製した。50μlのNSMP活性化BSA(6.7mg/ml)を50μlのPBSで希釈し、0.1%アジドナトリウムおよび10μlのペプチド溶液(DMSO中に1mM)を添加した。陰性対照として活性化BSAを、ペプチド添加なしで模擬処理した。室温で4時間後、反応を10μ1のl0mMシステインの添加により停止した。結合反応混合物のアリコートを1:100で0.1M炭酸水素ナトリウムバッファーで希釈し、ELISAプレート(Nunc Immuno−Plate)のゥェルに速やかに充填した。4℃で16時間静置した後、100μ1のブロッキングバッファー(上記のように)を各ウェルに添加し、さらに30分間インキュベートした。プレートを2×300μ1/TBST(上記)で洗浄し、ブロッキングバッファー中に10μg/mlまたは2μg/mlで100μ1の抗体を充填した。プレートを4℃で16時間維持し、2×300μlのTBSTで洗浄した。100μl/ウェルのHRP結合抗ヒトIg H+L(Pierce,ブロッキングバッファーで1:1000に希釈)を添加し、外界温度で1時間インキュベートした。プレートを300μl/ウェルTBSTで3回洗浄した。100μ1のテトラ−メチルベンジジン/過酸化水素試薬の添加により呈色を開始した。5分後に、1000μ1/ウェルの1Mスルホン酸の添加により反応を停止し、吸光度を、吸光度計(Microplate Reader 3550,BioRad)で450nmにて測定した。比較のために、マウスモノクローナル抗体を、抗ヒトIgの代わりに提示剤(revealing agent)としてHRP−標識抗マウスlgを使用した以外は同じ方法で解析した。
【0225】
Aβに由来する上記のヘプタペプチドの特異性を使用して、特異的ELISA一試験を上記のように行った。好ましくは、本発明の抗体は、A−β由来ペプチド(AEFRHD;A−βのアミノ酸2〜7)との反応性がBSAのような無関係のタンパク質/ペプチドと比較した場合、吸光度により測定されるように、バックグラウンドに対するシグナルの比が「10」よりも高い抗体を含む。最も好ましくは、吸光度の比は、以下の3つのAβ由来ペプチド:(VFFAED; Aβのアミノ酸18〜23)または(FFAEDV; Aβのアミノ酸19〜24)または(LVFFAE;Aβのアミノ酸17〜22)の少なくとも1つとの対応する反応について約「5」より高い。
本発明の親および/または成熟抗体に関する対応する結果を以下の2つの表に示す。
【0226】
【表6−1】


【表6−2】

【0227】
表6: BSA一結合Aβヘプタペプチド2〜7(AEFRHD)、17〜22(LVFFAE)、18〜23(VFFAED)および19〜24(FFAEDV)とのMS−R Fabの反応性。ペプチド−結合および非結合BSAで得られたELISA読み取り(吸光度)の比を示す。2〜7ペプチドに関して17〜22、18〜23および19〜24ペプチドで得られたシグナル強度もまた示す。
【0228】
【表7】

【0229】
表7:BSA−結合Aβヘプタペプチド2〜7(AEFRHD)、17〜22(LVFFAE)、18〜23(VFFAED)および19〜24(FFAEDV)とのMS−R lgGおよびマウスモノクローナル抗体BAP−1、BAP−2、4G8、6E10、Amy−33および6F/3Dの反応性。ペプチド結合および非結合BSAを用いて得られたELISA読み取り(吸光度)の比を示す。また、2〜7ペプチドに関する17〜22、18〜23および19〜24ペプチドで得られたシグナル強度を示す。*この抗体は、配列8〜17に対して特異的であり、N−末端または中央のエピトープ配列を認識しない。
【0230】
実施例13:クロス−クローニングによる最適化されたH−CDR2およびL−CDR1の組み合わせ
HuCALライブラリーのモジュラーデザインは、単一クローニングエ程において、2つの異なるFabをコードする遺伝子の相補性決定領域(CDR)の交換を可能にする。親和性のさらなる改善のために、同じH−CDR3を有する成熟クローンに由来する独立して最適化されたH−CDR2およびL−CDRIを組み合わせる。なぜなら、この組み合わせが親和性のさらなる獲得を導きうる確率が高いからである(Yangら、1995.J.Mol.Biol.254,392−403:Schierら、1996b,J.Mol.Biol.263.551−567:Chenら、1999,J.Mol.Biol.293,865−881)。軽鎖全体、またはその断片を、L−CDRI最適化ドナークローンからH−CDR2最適化レシピエントクローンに移した。ドナーおよびレシピエントクローンが両方とも同一のH−CDR3配列を保有する場合、ドナーおよびレシピエントクローンのみを組み合わせた。全てのドナーおよびレシピエントクローンは、VH3−Vκ3フレームワークを保有していた。
これは、L−CDR1−最適化ドナークローンからH−CDR2−最適化レシピエントクローンに軽鎖全体を移すことにより達成した。クローンと同じH−CDR3とを組み合わせた場合にのみエピトープ特異性が保存された。クローンと同じL−CDR3との間で交換が起こった場合、軽鎖交換により、H−CDR2−最適化クローンは、最適化L−CDRIのみを得た。組み合わせるクローンのL−CDR3が異なる場合、H−CDR2−最適化クローンは、最適化L−CDR1に加えて、別のL−CDR3(L−CDR2は、HuCALコンセンサス配列を残存した(Knappikら、2000))を獲得し、MS−Roche#7.12の誘導体を軽鎖のドナーとして使用した場合、L−CDR1、2および3は、H−CDR2−最適化アクセプタークローンにおいて交換された。
3つの異なるストラテジーを使用した:
1)制限エンドヌクレアーゼXbalおよびSphIを使用して、抗体軽鎖全体の断片をプラスミド1(例えば、pMx9_Fab_MS−Roche#7. 11.H1_FS)から切り出し、それにより次いで得られたベクター骨格を、XbalおよびSphI消化により作製されたプラスミド2(例えば、pMx9_Fab_MS−Rochef#7.2.L1_FS)の軽鎖断片に連結した。それにより、親クローン#7.2.LIのL−CDR1,2,3および親クローン#7.11.H1のH−CDR1,2,3をコードする新規プラスミド(命名:pMx9_Fab_MS−Roche#7.11.Hlx7.2.L1_FS)を作製した。
【0231】
2)制限エンドヌクレアーゼXbalおよびAcc651を用いて、L−CDRコード断片をプラスミド1(例えば、pMx9_Fab_MS−Roche#7.11.H2_FS)およびそれにより、得られたベクター骨格を、次いでXbalおよびAcc651により作製されるプラスミド2のL−CDR1断片(例えば、pMx9_Fab_MS−Roche#7.12.LI_FS)に連結した。それにより、親クローン#7.12.LIのL−CDRIをコードし、一方、L−CDR2,3およびH−CDR1,2,3は親クローン#7.11.H2に由来する新規プラスミド(命名:pMx9_Fab_MS−Roche#7.11.H2×7.12.L1(L−CDR1)_FS)を作製した。
【0232】
3)制限エンドヌクレアーゼXbalおよびBamHIを用いて、L−CDR1およびL−CDR2コード断片をプラスミド1(例えば、pMx9_Fab_MS−Roche#7.11.H2_FS)から切り出し、次いでそれにより得られたベクター骨格をXbalおよびBamHI消化により作製したプラスミド2(例えば、pMx9_Fab_MS−Roche#7.12.L1_FS)のL−CDRIおよびL−CDR2断片に連結した。それにより、親クローン#7.12.LIのL−CDRIおよびL−CDR2をコードし、L−CDR3およびH−CDR1,2,3は親クローン#7.11.H2に由来する新規プラスミド(命名:pMx9_Fab_MS−Roche#7.11.H2x7.12.L1(L−CDR1+2)_FS)を作製した。
【0233】
種々のクローニングストラテジーおよび配列ドナーおよびレシピエントクローンの説明に役立つ実例を表8に示す。
大規模な発現および精製後、それらの親和性は、Aβ(1−40)線維において測定した。さらに、選択したクロスークローンMS−R Fab/抗体のKD値を付随する表9に示す。
【0234】
【表8−1】


【表8−2】


【表8−3】


【表8−4】


【表8−5】


表8 矢印は対応するプラスミドを消化するために使用した制限酵素の位置を示す。
【0235】
【表9】


表9:Aβ140およびAβ1−42線維に結合するクロスクローニングしたMS−R FabのKD値をBiacoreで測定した。クロスクローニングしたFabの調製を実施例13に記載する。KD値を速度論カーブフィッティングにより測定し、本文に記載される各サンプル中に存在する活性Fabの含量に関して補正した。いくらかのFabをサイズ排除クロマトグラフィーまたは調製的超遠心によりさらに精製し、凝集した物質を除去した。(LI)、H−CDR2−成熟アクセプタークローンは、L−CDR1改良ドナークローンからL−CDR1のみを受け取った;(L1+2)、H−CDR2−成熟アクセプタークローンは、L−CDRI改善ドナークローンに由来するL−CDRI+2を受け取った。
【0236】
実施例14:共焦点レーザー走査型顕微鏡および共存解析により示されるアルツハイマー病のマウスモデルにおけるインビボアミロイド斑装飾
選択したMS−R IgG1抗体を、インビポでのアミロイド斑装飾に関してAPP/PS2二重トランスジェニックマウス(参照:Richardsら、Soc.neurosci.Abstr.,Vol.27,Program NO.5467,2001)において試験した。抗体(1mg/マウス)をi.v.投与し、3日後、脳を生理食塩水で濯流し、凍結切片を調製した。別の研究において、マウスを高濃度の抗体、すなわち、0、3、および6日目に2mgをi.v.注射し、9日目に屠殺した。アミロイド斑に結合した抗体の存在を、Cy3(#109−165−003、Jackson Immuno Research)続いてBAP−2−Alexa488免疫複合体のいずれかに連結したヤギ抗−ヒトIgG(H+L)を用いる二重標識間接免疫蛍光により未固定クリオスタット薄切において評価した。画像化を、共焦点レーザー顕微鏡により行い、共存の定量的検出のための画像処理をIMARISおよびCOLOCALIZATIONソフトウェア(Bitplane,Switzerland)により行った。典型的な例を図10〜14に示す。いくらかの可変性が認められるが、試験したMS−R抗体の全てがインビボでのアミロイド斑の免疫修飾において陽性であることがわかった。
【0237】
実施例15:HEK293細胞の表面上のアミロイド前駆体タンパク質(APP)への種々のモノクローナル抗体の結合の研究:
APPは、中枢神経系において広範に発現される。細胞表面APPへの抗体の結合は、健康な脳領域における補体活性化および細胞破壊を導きうる。それゆえ、治療用A−β抗体がAPPに対する反応性を欠くことは必須である。A−β(例えば、BAP−1、BAP−2)のN末端に対する高親和性抗体は、APPのフレームワークにおける反応性エピトープをも認識する。対照的に、中央のエピトープ(例えば、4G8)に対する抗体、および本発明の抗体は、驚くことに細胞表面APPを認識することができない。従って、A−βを装飾するが、インビボでAPPを装飾しない本発明の抗体は、非選択性抗体よりも優位である。
【0238】
フローサイトメトリーの方法は、当該分野で周知である。フローサイトメトリーにより測定される蛍光の相対ユニット(FLI−H)は、各々の抗体の細胞表面結合を示す。未トランスフェクトHEK293細胞と比べたAPPトランスフェクトHEK293における蛍光シフトは、細胞表面APPとの不必要な反応を示す。例として、N−末端ドメインに対する抗体BAP−1およびBAP−2は、未トランスフェクトHEK293細胞(破線)と比べたHEK293/APP(濃い線)におけるFL−1シグナルの実質的なシフトを示す。4G8抗体(中央のA−βエピトープに特異的)および本発明の全ての抗体(N−末端および中央のA−βエピトープに特異的)は、蛍光の有意なシフトを示さない。HE293/APP細胞とHEK293細胞との間の基底蛍光の差異は、細胞サイズの差に因る。FACScan装置をCellquest Pro Software Package(両方ともBecton Dickinson)と組み合わせて使用した。
【0239】
実施例16:本発明の抗体分子に関連する同定した配列番号のリスト
付随する表10は、いくつかの特異的な本発明の抗体分子に関して本明細書中に規定される配列に関する。
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の領域が配列番号:1に示されるアミノ酸配列AEFRHDSGYまたはその断片を含み、第2の領域が配列番号:2に示されるアミノ酸配列VHHQKLVFFAEDVGまたはその断片を含有してなるβ-A4ペプチド/Aβ4の2つの領域を特異的に認識することができる抗体分子。
【請求項2】
前記抗体分子がβ-A4の2つの領域内の少なくとも2つの連続したアミノ酸を認識する請求項1記載の抗体分子。
【請求項3】
前記抗体分子が、第1の領域においてAEFRHD、EF、EFR、FR、EFRHDSG、EFRHDまたはHDSGを含むアミノ酸を認識し、第2の領域においてHHQKL、LV、LVFFAE、VFFAEDまたはVFFA、FFAEDVを含むアミノ酸配列を認識する請求項1または2記載の抗体分子。
【請求項4】
前記抗体分子が、配列番号:3、5もしくは7からなる群より選ばれる配列番号に示される核酸分子によりコードされる可変VH-領域または配列番号4、6もしくは8からなる群より選ばれる配列番号に示される可変VH-領域を含有してなる請求項1〜3いずれか記載の抗体分子。
【請求項5】
前記抗体分子が、配列番号:9、11および13からなる群より選ばれる配列番号に示される核酸分子によりコードされる可変VL-領域または配列番号10、12および14からなる群より選ばれる配列番号に示される可変VL-領域を含有してなる請求項1〜3いずれか記載の抗体分子。
【請求項6】
配列番号15、17もしくは19に示される核酸分子によりコードされるVL-領域の少なくとも1つのCDR3、または配列番号:16、18もしくは20に示されるVL-領域の少なくとも1つのCDR3アミノ酸配列を含有してなり、および/または配列番号:21、23または25に示される核酸分子によりコードされるVH-領域の少なくとも1つのCDR3または配列番号:22、24もしくは26に示されるVH-領域の少なくとも1つのCDR3アミノ酸配列を含有してなる請求項1〜5いずれか記載の抗体分子。
【請求項7】
前記抗体が、MSR-3、-7および-8または親和性-成熟バージョンのMSR-3、-7もしくは-8からなる群より選ばれる請求項1〜6いずれか記載の抗体分子。
【請求項8】
全長抗体(免疫グロブリン)、F(ab)-断片、F(ab)2-断片、単鎖抗体、キメラ抗体、CDR-グラフト抗体、二価抗体構築物、合成抗体またはクロスクローニング抗体である請求項1〜7いずれか記載の抗体分子。
【請求項9】
前記β-A4の少なくとも2つの領域が立体配座エピトープまたは不連続エピトープを形成する請求項1〜8いずれか記載の抗体分子。
【請求項10】
クロスクローニング抗体が、
MS-R#3.3H1 x 3.4L9;
MS-R#3.6H5 x 3.6L2;
MS-R#3.6H8 x 3.6L2;
MS-R#7.4H2 x 7.2L1;
MS-R#7.9H2 x 7.12L2;
MS-R#7.9H4 x 7.12L2;
MS-R#7.11H1 x 7.11L1;
MS-R#7.11H1 x 7.2L1;
MS-R#3.3H1 x 3.4L1;
MS-R#3.4H1 x 3.4L9;
MS-R#3.4H3 x 3.4L7;
MS-R#3.4H3 x 3.4L9;
MS-R#3.4H7 x 3.4L9;
MS-R#3.4H7 x 3.4L7;
MS-R#3.6H5 x 3.6L1;
MS-R#7.2H2 x 7.2L1;
MS-R#7.4H2 x 7.12L2;
MS-R#7.9H2 x 7.2L1;
MS-R#7.9H2 x 7.12L1;
MS-R#7.11H2 x 7.2L1;
MS-R#7.11H2 x 7.9L1;
MS-R#7.11H2 x 7.12L1または
MS-R#8.1H1 x 8.2L1
からなる群より選ばれる請求項8または9記載の抗体分子。
【請求項11】
請求項1〜10いずれか記載の抗体分子をコードする核酸分子。
【請求項12】
請求項11記載の核酸分子を含有してなるベクター。
【請求項13】
請求項12記載のベクターを含有してなる宿主細胞。
【請求項14】
請求項1〜10いずれか記載の抗体分子の合成を許容する条件下で請求項13記載の宿主細胞を培養する工程および該培養から抗体分子を回収する工程を含む、請求項1〜10いずれか記載の抗体分子の調製方法。
【請求項15】
請求項1〜10いずれか記載の抗体分子または請求項14記載の方法により製造された抗体分子を含有してなる組成物。
【請求項16】
医薬組成物または診断用組成物である請求項15記載の組成物。
【請求項17】
アミロイド形成および/またはアミロイド斑形成に関連する疾患の予防および/または処置のための医薬組成物の調製のための、請求項1〜10いずれか記載の抗体分子もしくは請求項14記載の方法により製造された抗体分子、請求項11記載の核酸分子、請求項12記載のベクターまたは請求項13記載の宿主の使用。
【請求項18】
アミロイド形成および/またはアミロイド斑形成に関連する疾患の検出のための診断用組成物の調製のための、請求項1〜10いずれか記載の抗体分子または請求項14記載の方法により製造された抗体分子の使用。
【請求項19】
β-アミロイド斑の分解のための医薬組成物の調製のための、請求項1〜10いずれか記載の抗体分子または請求項14記載の方法により調製された抗体分子の使用。
【請求項20】
β-アミロイド斑形成に対する受動免疫のための医薬組成物の調製のための、請求項1〜10いずれか記載の抗体分子または請求項14記載の方法により製造された抗体分子の使用。
【請求項21】
前記疾患が、痴呆、アルツハイマー病、運動性ニューロパシー、ダウン症候群、クロイツフェルトヤーコブ病、アミロイドーシスオランダ型を伴う遺伝性脳溢血、パーキンソン病、HIV-関連痴呆、ALSまたは加齢に関連する神経障害である請求項17または18記載の請求項の使用。
【請求項22】
請求項1〜10いずれか記載の抗体分子、請求項16記載の核酸分子、請求項17記載のベクターまたは請求項18記載の宿主細胞を含有してなるキット。
【請求項23】
(a)配列番号:21、23もしくは25に示される核酸分子によりコードされるVH-領域の少なくとも1つのCDR3または配列番号:22、24もしくは26に示されるVH-領域の少なくとも1つのCDR3アミノ酸配列を含有する抗体に由来する多様化したFab抗体断片のライブラリーを構築する工程、
(b)得られたFab最適化ライブラリーをAβ/Aβ4に対するパニングにより試験する工程;
(c)最適化クローンを同定する工程;および
(d)選択した、最適化クローンを発現させる工程
を含む請求項1〜10いずれかに規定される抗体分子の最適化方法。
【請求項24】
工程(ca)をさらに含み、それにより最適化クローンがカセット変異誘発によりさらに最適化される請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記工程(b)のAβ/Aβ4が凝集Aβ/Aβ4である請求項23または24記載の方法。
【請求項26】
前記工程(c)の同定がKoffランク付けにより行われる請求項23〜25いずれか記載の方法。
【請求項27】
(a)請求項23〜26いずれか記載の方法による抗体の最適化の工程;および
(b)最適化された抗体/抗体分子と生理学的に許容されうるキャリアとを製剤化する工程
を含む医薬組成物の調製方法。
【請求項28】
請求項27記載の方法により調製された医薬組成物。


【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図1−5】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図2−5】
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【図2−6】
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【図2−7】
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【図2−8】
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【図2−9】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図3−5】
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【図3−6】
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【図3−7】
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【図3−8】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図4−4】
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【図4−5】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【図9−4】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図15−3】
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【図15−4】
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【公開番号】特開2009−171972(P2009−171972A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53951(P2009−53951)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【分割の表示】特願2003−569667(P2003−569667)の分割
【原出願日】平成15年2月20日(2003.2.20)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【出願人】(504315886)モルフォシス アーゲー (4)
【Fターム(参考)】