説明

抵抗溶接用通電ブロック、この通電ブロックを用いた密閉電池の製造方法及び密閉電池

【課題】互いに2分割されている積層された正極芯体露出部及び負極芯体露出部を有する密閉電池において、それぞれの芯体露出部と集電用部材との間の低抵抗化を実現でき、1回の溶接でかつ安定的に抵抗溶接によって溶接することができるようにすること。
【解決手段】2分割された正極芯体露出部14及び負極芯体露出部間に、それぞれ対向する二つの面のそれぞれに突起24bが形成されている金属ブロックからなる通電ブロック24Aを、対向する二つの面のそれぞれの突起24bが積層された正極芯体露出部14又は負極芯体露出部と接するように配置し、正極芯体露出部14及び負極芯体露出部の最外側の両表面にそれぞれ配置されている正極用集電部材16間又は負極用集電部材間に一対の抵抗溶接用電極31、32を当接し、一対の抵抗溶接用電極31、32間に押圧力を印加しながら抵抗溶接を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに2分割されている積層された正極芯体露出部及び負極芯体露出部を有する密閉電池において、それぞれの芯体露出部と集電用部材との間の低抵抗化を実現でき、1回の溶接でかつ安定的に抵抗溶接することができる、抵抗溶接用通電ブロック、この通電ブロックを用いた密閉電池の製造方法及び密閉電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護運動が高まり、二酸化炭素ガス等の温暖化の原因となる排ガスの排出規制が強化されている。そのため、自動車業界では、ガソリン、ディーゼル油、天然ガス等の化石燃料を使用する自動車に換えて、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の開発が活発に行われている。このようなEV、HEV用電池としては、ニッケル−水素二次電池やリチウムイオン二次電池が使用されているが、近年は軽量で、かつ高容量の電池が得られるということから、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池が多く用いられるようになってきている。
【0003】
EV、HEV用途においては、環境対応だけでなく、自動車としての基本性能、すなわち、加速性能や登坂性能等の走行能力の高度化も必要とされる。このような要求を満たすためには、単に電池容量を大きくすることのみならず、高出力の電池が必要である。一般に、EV、HEV用の非水電解質二次電池は、発電要素をアルミニウム系金属製の角形外装缶内に収容した角形密閉電池が多く使用されているが、高出力の放電を行うと電池に大電流が流れるため、電池の内部抵抗を極力低減させる必要がある。そのため、電池の発電要素における電極シートの芯体と集電用部材との間の溶接不良を防止して内部抵抗を低下させることについても種々の改良が行われてきている。
【0004】
発電要素における電極シートの芯体と集電用部材を電気的に接合して集電する方法としては、機械的なカシメ法、溶接法等があるが、高出力が要求される電池の集電方法としては、低抵抗化を実現し易く、しかも経時変化が生じ難いことから、溶接法が適している。また、リチウムイオン二次電池においては、低抵抗化を実現するために、正極シートの芯体材料及び集電用部材の材料としてはアルミニウム又はアルミニウム合金が使用され、負極シートの芯体材料及び集電用部材の材料としては銅又は銅合金が使用されている。しかし、アルミニウム、アルミニウム合金、銅及び銅合金は、その特性として電気抵抗が小さく、熱伝導率が大きいため、溶接するためには非常に大きなエネルギーが必要となる。
【0005】
このような発電要素の電極シートの芯体と集電用部材との間の溶接方法としては、従来から以下の方法が知られている。
(1)レーザ溶接法(下記特許文献1参照)
(2)超音波溶接法(下記特許文献2参照)
(3)抵抗溶接法(下記特許文献3参照)
【0006】
レーザ溶接法においては、被溶接材料であるアルミニウム、アルミニウム合金、銅及び銅合金は、金属溶接用に広く使用されているYAG(イットリウム−アルミニウム−ガーネット)レーザ光に対する反射率が約90%と高いため、高エネルギーのレーザ光が必要である。また、アルミニウム、アルミニウム合金、銅及び銅合金をレーザ溶接すると、表面状態の影響により溶接性が大きく変わること、及び、他材質のレーザ溶接の場合と同様に、スパッタの発生が不可避であるという問題点が存在する。
【0007】
超音波溶接においても、被溶接材料であるアルミニウム、アルミニウム合金、銅及び銅合金の熱伝導率が大きいことから、大きなエネルギーが必要となり、また、溶接時の超音波振動によって正極活物質及び負極活物質の脱落が生じる。そのため、下記特許文献2に開示されている発明では、超音波溶接時に発電要素である電極体を圧縮し、脱落した活物質が電極体内に侵入しないようにしている。
【0008】
更に、抵抗溶接においては、被溶接材料であるアルミニウム、アルミニウム合金、銅及び銅合金の電気抵抗が小さいこと及び熱伝導率が大きいことから、短時間に大電流の投入が必要であること、抵抗溶接時に抵抗溶接用電極棒と集電用部材との融接が発生することがあること、溶接部以外での融解やスパークの発生が生じるという問題点が存在している。
【0009】
上述のように3種類の溶接方法には一長一短があるが、生産性及び経済性を考慮すると、従来から金属間の溶接法として広く使用されている抵抗溶接法を採用することが望ましい。しかしながら、EV、HEV用のリチウムイオン二次電池等の電極体は、正極シートと負極シートとがセパレータを介して巻回ないし積層された構成を備えている。そして、正極シート又は負極シートの芯体露出部は、それぞれ互いに異なる側に位置するように配置され、正極シートの芯体露出部は積層されて正極集電用部材に溶接され、負極シートの芯体露出部も積層されて負極集電用部材に溶接されている。これらの正極芯体露出部及び負極芯体露出部の積層枚数は、EV、HEV用のリチウムイオン二次電池等の容量が大きい場合には、非常に多くなる。
【0010】
そのため、正極シートの芯体露出部に対してアルミニウム又はアルミニウム合金製の集電用部材を、また、負極シートの芯体露出部に対して銅又は銅合金製の集電用部材を、それぞれ確実に抵抗溶接するには多大な溶接エネルギーを必要とする。しかも、抵抗溶接に際して溶接エネルギーを大きくすると、スパッタによるチリの発生が増加し、このチリが電極体内部に移動することによって内部短絡の原因となる可能性が増加する。
【0011】
一方、下記特許文献4には、正極シート及び負極シートがセパレータを介して偏平状に巻回された電極体において、セパレータからはみ出ているそれぞれの電極の芯体露出部の幅を小さくするために、それぞれの電極の芯体露出部を2箇所ずつに分けて集電用部材に溶接した蓄電素子の発明が開示されている。ここで下記特許文献4に開示されている蓄電素子の構成を図8及び図9を用いて説明する。なお、図8Aは下記特許文献4に開示されている蓄電素子としての電気二重層キャパシタの断面図あり、図8Bは図8AのVIIIB−VIIIB線に沿った断面図であり、図8Cは図8AのVIIIC−VIIIC線に沿った断面図である。また、図9は図8における電極の芯体露出部と集電用部材との間の溶接工程を示す図である。
【0012】
この蓄電素子50は、図8A〜図8Cに示したように、正極シート及び負極シートがセパレータ(何れも図示省略)を介して偏平状に巻回された巻回電極体51を備えており、この巻回電極体51は角形のアルミニウム製の外装缶52内に配置されている。また、この蓄電素子50の正極用集電部材53a及び負極用集電部材53bは、それぞれ一方側の端部にコ字状の翼部54aないし54bが形成されてそれぞれ正極シートの芯体露出部55aないし負極シートの芯体露出部55bに接続され、他方側の端部はそれぞれ正極端子56aないし負極端子56bに接続されている。そして、正極シートの芯体露出部55aは束ねられて2分割され、それぞれ一方のコ字状の翼部54aの外面側の2箇所に溶接されており、また、負極シートの芯体露出部55bも2分割されてそれぞれ他方のコ字状の翼部54bの外面側の2箇所に溶接されている。
【0013】
この溶接は、例えば正極シート側であれば、図9に示したように、2分割された正極シートの芯体露出部55aのうちの一方をコ字状の翼部54aの外面に配置し、この芯体露出部55aの外表面に超音波溶接装置(図示省略)のホーン57を当接し、コ字状の翼部54aの内面側にアンビル58を配置することにより、超音波溶接が行われている。なお、2分割された正極シートの芯体露出部55aの他方に対しても同様の方法で超音波溶接が行われており、また、負極シート側においても同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2001−160387号公報
【特許文献2】特開2007−053002号公報
【特許文献3】特開2006−310254号公報
【特許文献4】特開2003−249423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記特許文献4に開示されている発明によれば、正極芯体露出部及び負極芯体露出部の露出幅を小さくできるため、蓄電装置の容積効率が良好となるという効果を奏する。しかしながら、この発明では、正極シートないし負極シートに正極用集電部材ないし負極用集電部材を溶接するためにはそれぞれ複数回の溶接が必要であり、更に、巻回電極体の中央部には溶接するための正極用集電部材ないし負極用集電部材のコ字状の翼部を配置するための開口空間を必要とすること、超音波溶接時にコ字状の翼部の内部にアンビルを配置する必要があること等、製造設備が複雑化するという問題点が存在している。
【0016】
また、上記特許文献4には、電極シートを接続する工程は超音波溶接法を用いることが特に好ましいと記載されているが、実施例での巻回数は16回(2分割した片側では8回)であり、積層厚みは320μmとなっている。それに対し、EV、HEV用のリチウムイオン二次電池等の容量が大きい密閉電池では、正極芯体露出部及び負極芯体露出部の積層枚数は上記特許文献4に開示されている発明の場合よりも非常に多くなっていると共に、積層厚みも遙かに厚くなっている。
【0017】
そのため、EV、HEV用のリチウムイオン二次電池等の容量が大きい密閉電池では、積層された正極芯体露出部及び負極芯体露出部と集電用部材との間の溶接方法として超音波溶接法を採用して安定して溶接するためには、積層された正極芯体露出部及び負極芯体露出部をそれぞれ集電用部材に密着させるための大きな加圧と、超音波振動を積層された正極芯体露出部及び負極芯体露出部の他端側まで到達させるための大きなエネルギーが必要となる。上記特許文献4に開示されている発明では、コ字状の集電用部材の内部に配置されたアンビルで加圧及び超音波エネルギーを受ける必要があるため、アンビルに相応の剛性が必要となり、しかも、コ字状の集電用部材の内部に供給できる大きさのアンビルで大きな加圧を受けつつ更に安定した溶接条件を見出すことは技術的に非常に困難である。
【0018】
一方、2分割した正極シート、もしくは負極シートを抵抗溶接する場合は、分割したシート片側ずつを溶接する方法、もしくは、分割したシートを同時に溶接するシリーズスポット溶接が検討されているが、溶接回数の削減を考慮するとシリーズスポット溶接が好ましい。従来のシリーズスポット溶接技術では、図10に示したように、溶接用の一対の抵抗溶接用電極棒71及び72と同軸上で被溶接部材73及び74を2点溶接する場合には、コ字状の溶接用部品75を中間に介在させて、コ字状の溶接用部品75の上下を溶接する方法が主に用いられていた。この方法は、コ字状の溶接用部品75は、板状の金属板から容易に製作できること、抵抗溶接を容易かつ安定化させるためのプロジェクションの作製が容易なことから広く一般的に用いられている。しかし、この方法では、溶接用の電極棒71及び72による加圧によるコ字状の溶接用部品75の歪みをなくすために、コ字状の溶接用部品の内部に加圧受け76や通電用として金属ブロックの供給を行うなどの対策が必要となり、溶接設備の複雑化の課題があった。
【0019】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであり、互いに2分割されている積層された正極芯体露出部及び負極芯体露出部を、それぞれの芯体露出部と集電用部材との間の低抵抗化を実現でき、1回の溶接でかつ安定的に抵抗溶接することができる、抵抗溶接用通電ブロック、この通電ブロックを用いた密閉電池の製造方法及び密閉電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するため、本発明の抵抗溶接用の通電ブロックは、金属ブロックの対向する二つの面のそれぞれに突起が形成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明の抵抗溶接用の通電ブロックによれば、抵抗溶接時に押圧力を印加しても金属ブロック部分が変形し難く、しかも、金属ブロックの対向する二つの面のそれぞれに突起が形成されているので、抵抗溶接時にこの突起部分がプロジェクションとして作用するために、電流が集中して発熱し易くなるので、溶接性が安定化し、しかも、溶接部分の品質が良好となる。なお、本発明の抵抗溶接用の通電ブロックの形状は、円柱状、角柱状、楕円柱状等、変形し難い任意の形状を採用し得る。
【0022】
また、本発明の抵抗溶接用の通電ブロックにおいては、前記金属ブロックの前記対向する2つの面と側面との間の角部は面取りされていることが好ましい。
【0023】
本発明の抵抗溶接用の通電ブロックによれば、金属ブロックの対向する二つの面と側面との間の角部が面取りされているので、通電ブロックを例えば積層された芯体露出部の間に挿入する場合等、柔軟な被溶接部と当接させる際にも被溶接部に損傷を与えることが少なくなり、容易に被溶接部と当接させることができるようになるので、溶接性が向上する。
【0024】
また、本発明の抵抗溶接用の通電ブロックにおいては、前記面取りされている面は平面とされていることが好ましい。
【0025】
本発明の抵抗溶接用の通電ブロックにおいては、面取りされている面は曲面及び平面の両態様をとることができる。しかしながら、面取りされている面を平面とすると、角部を面取りされている面と突起が形成された面との間が被溶接部に対して必ず鈍角となるので、本発明の抵抗溶接用の通電ブロックを被溶接物と接触させる際、被溶接物と突起とが接触し易くなるので、溶接性が向上する。
【0026】
この場合においては、前記突起が設けられている2つの面は、それぞれ互いに平行な平面部分が設けられていることが好ましい。
【0027】
抵抗溶接用の通電ブロックにおいて、対向する2つの面と側面との間の角部が面取りされている場合、突起が設けられている2つの面に平坦部分が設けられていないと、抵抗溶接時に抵抗溶接用電極で加圧された際に通電ブロックが変形し易くなり、しかも。抵抗溶接時に溶融した突起部の一部あるいは溶融した被溶接部材の一部が通電ブロックの側面側に流れ易くなる。それに対し、本発明の抵抗溶接用の通電ブロックにおいては、突起が設けられている2つの面に平坦部分が設けられているので、抵抗溶接時に抵抗溶接用電極で加圧された際に通電ブロックが変形し難くなり、また、抵抗溶接時に溶融変形した突起部の一部あるいは溶融した被溶接部材の一部がこの平坦部に留まって通電部ブロックの側面方向に流れ出ることを抑制することができ、しかも、平坦部が被溶接部材と接する面となるため通電ブロックが安定化される。そのため、本発明の抵抗溶接用の通電ブロックによれば、信頼性の高い抵抗溶接部が得られるようになる。
【0028】
また、本発明の抵抗溶接用の通電ブロックにおいては、前記突起は円錐台状又は角錐台状であることが好ましい。
【0029】
本発明の抵抗溶接用の通電ブロックによれば、抵抗溶接時に円錐台状又は角錐台状の突起の先端側に電流が集中してプロジェクションとして作用するため、より発熱し易くなり、溶接性がより安定化し、しかも、溶接部分の品質がより良好となる。
【0030】
また、本発明の抵抗溶接用の通電ブロックにおいては、前記突起には開口が形成されていることが好ましい。
【0031】
突起に開口が形成されていないと、突起部において発生した熱が金属ブロック全体に拡散するので、突起の先端の温度が上昇し難くなる。それに対し、突起に開口が形成されていると、その分だけ突起部に電流が集中するため突起部において集中的に発熱し易くなり、しかも、突起部において発生した熱が金属ブロック全体に拡散することを妨げられるため、突起部及びその近傍が局部的に温度上昇するので、良好に溶接接続することができるようになる。加えて、突起に開口が形成されていると、抵抗溶接時に押圧力を強くすると、突起の開口が潰れて内部に空洞が形成されると共に潰れた部分は突起の中央部に集まるため、抵抗溶接時に流れる電流は一旦突起の開口の周囲に分散された後に通電ブロックの中央部に集中するので、突起部分だけでなく、突起の中央部分でも良好に発熱することができ、より良好に抵抗溶接することができるようになる。
【0032】
また、本発明の抵抗溶接用の通電ブロックにおいては、前記開口は前記金属ブロックの内部にまで延在されていることが好ましい。
【0033】
開口が金属ブロックの内部にまで延在されていると、溶接時に抵抗溶接用電極棒で強く挟み込んで突起の先端が潰れる状態とした場合でも、より確実に突起あるいは金属ブロックの内部に空洞が存在する状態となる。そのため、突起部において発生した熱が拡散することを防ぎ、突起部及びその近傍を局部的に高温にすることができる。また、突起近傍の金属ブロックの内部に空洞が存在することにより、突起部において発生した熱が金属ブロック全体に拡散することを効果的に防ぐことができる。従って、本発明の抵抗溶接用の通電ブロックによれば、より良好にかつ確実に抵抗溶接することができるようになる。
【0034】
また、本発明の抵抗溶接用の通電ブロックにおいては、前記開口は前記金属ブロックを貫通しているものとすることができる。
【0035】
抵抗溶接用の通電ブロックは、突起部分以外は抵抗溶接時の押圧力によっても変形し難く、しかも抵抗が小さければよい。本発明の抵抗溶接用の通電ブロックによれば、開口は前記金属ブロックを貫通しているので、金属ブロックは筒状となっているので、軽量でありながら容易に上記効果を奏する通電ブロックが得られる。
【0036】
また、本発明の抵抗溶接用の通電ブロックにおいては、前記突起の周囲には環状に絶縁シール材が形成されていることが好ましい。
【0037】
抵抗溶接用の通電ブロックの突起の周囲に環状に絶縁シール材が形成されていると、抵抗溶接時にスパッタされた高温のチリが発生しても、この高温のチリを絶縁シール材と突起との間ないし絶縁シール材自体で捕獲することができる。そのため、本発明の抵抗溶接用の通電ブロックによれば、抵抗溶接時にスパッタされた高温のチリが通電ブロックの周囲に飛散し難くなるため、スパッタされた高温のチリに起因する被溶接物の損傷ないし周囲に与える悪影響が抑制される。
【0038】
なお、絶縁シール材は、スパッタされた高温のチリの捕獲特性を向上させるために、絶縁性熱溶着性樹脂で形成するとよい。絶縁シール材として絶縁性熱溶着性樹脂を使用すると、抵抗溶接時に発生するスパッタされた高温のチリは、固体の絶縁性熱溶着性樹脂を部分的に溶融することによって熱を奪われ、急速に冷却されて温度が下がるので、容易に固体の絶縁性熱溶着性樹脂中に捕獲される。なお、抵抗溶接時には、電流を流す時間は短く、しかも、電流が流れる範囲は狭いので、絶縁性熱溶着性樹脂の全てが同時に溶融することは少ない。そのため、抵抗溶接時に発生したスパッタされたチリはより絶縁性熱溶着性樹脂から飛散することが少なくなる。なお、絶縁性熱溶着性樹脂は、溶着温度が70〜150℃程度であり、溶解温度は200℃以上のものが望ましい。
【0039】
また、本発明の抵抗溶接用の通電ブロックにおいては、前記絶縁シール材は、高さが前記突起よりも低くされていることが好ましい。
【0040】
抵抗溶接部に際しては、被溶接物は抵抗溶接用電極によって通電ブロック側に向かって押圧されるため、通電ブロックの突起は被溶接部側に食い込む状態となる。本発明の抵抗溶接用通電ブロックによれば、絶縁シール材は、高さが突起よりも低くされているので、抵抗溶接時には被溶接物と接するようになり、スパッタされた高温のチリが通電ブロックの周囲に飛び出さないようになると共に、被溶接物が軟質のものであっても絶縁シール材と接することによって被溶接物に過度の変形が生じ難くなる。
【0041】
更に、上記目的を達成するため、本発明の密閉電池の製造方法は、以下の(1)〜(5)の工程を含むことを特徴とする。
(1)正極シートと負極シートとをセパレータを介して巻回又は積層することにより両端部にそれぞれ複数枚の正極芯体露出部及び負極芯体露出部が形成された偏平形電極体を作製する工程、
(2)前記積層された正極芯体露出部及び負極芯体露出部の内、少なくともどちらか一方の芯体露出部を2分割する工程、
(3)前記2分割された芯体露出部の最外側の両表面にそれぞれ集電部材又は溶接受け部材を配置すると共に、前記2分割された芯体露出部間に、金属ブロックの対向する二つの面のそれぞれに突起が形成されている通電ブロックを、前記対向する二つの面のそれぞれの突起が前記2分割された芯体露出部と接するように配置する工程、
(4)前記2分割された芯体露出部の最外側の両表面にそれぞれ配置されている集電部材又は溶接受け部材間に一対の抵抗溶接用電極を当接する工程、
(5)前記一対の抵抗溶接用電極間に押圧力を印加しながら抵抗溶接を行う工程。
【0042】
本発明の密閉電池の製造方法においては、積層された正極芯体露出部及び負極芯体露出部の少なくともどちらか一方を2分割し、この2分割された芯体露出部の最外側の両表面にそれぞれ集電部材又は溶接受け部材を配置し、2分割された芯体露出部間に、それぞれ金属ブロックの両端に突起が形成されている通電ブロックを、両端の突起が2分割された芯体露出部と接するように配置し、芯体露出部の最外側の両表面にそれぞれ配置されている集電部材又は溶接受け部材間に一対の抵抗溶接用電極を当接し、一対の抵抗溶接用電極間に押圧力を印加しながら抵抗溶接を行う工程を含んでいる。このような抵抗溶接工程では、抵抗溶接電流は集電部材又は溶接受け部材→芯体露出部→通電ブロック→芯体露出部→集電部材又は溶接受け部材へと流れるので、一度の抵抗溶接で一方の電極シート側の芯体露出部と集電部材とを溶接することができる。
【0043】
しかも、通電ブロックには突起が形成されているから、抵抗溶接時にこの突起部分に電流が集中するために発熱し易くなるので、それぞれ電極シートの集電部材又は溶接受け部材と芯体露出部との間及び芯体露出部と通電ブロックの間(それぞれ2箇所)の抵抗溶接部分を良好に抵抗溶接することができるようになる。なお、本発明においては、それぞれの電極シートの2分割された芯体露出部の最外側の両表面にそれぞれ配置されているものが溶接受け部材であれば、通電ブロックを集電部材として、接続部材などを用いて外部端子と電気的に接続すればよい。そのため、本発明の密閉電池の製造方法によれば、それぞれの電極シートの芯体露出部と集電部材との間の電気抵抗が低くなるので、内部抵抗が小さい密閉電池を製造することができるようになる。
【0044】
加えて、本発明の密閉電池の製造方法においては、複数枚の正極芯体露出部ないし負極芯体露出部は積層されて2分割されているため、一つの抵抗溶接箇所で溶接しなければならない正極芯体露出部ないし負極芯体露出部の積層枚数は半減されており、より少ない電力で抵抗溶接できるようになる。なお、2分割された芯体露出部の最外側の両表面にそれぞれ集電部材又は溶接受け部材を配置する工程と、2分割された芯体露出部間に、金属ブロックの対向する二つの面のそれぞれに突起が形成されている通電ブロックを、対向する二つの面のそれぞれの突起が2分割された芯体露出部と接するように配置する工程とは、どちらが先であっても、どちらが後であってもよく、また、上記(2)〜(5)の各工程は、正極側及び負極側の双方に適用しても良く、どちらか一方にのみ適用してもよい。
【0045】
また、本発明の密閉電池の製造方法においては、前記通電ブロックとして、前記金属ブロックの前記対向する2つの面と側面との間の角部は面取りされているものを用いることが好ましい。
【0046】
本発明の密閉電池の製造方法によれば、通電ブロックを積層された芯体露出部の間に挿入する際に積層された芯体露出部に損傷を与えることが少なくなり、容易に積層された芯体露出部の溶接位置にまで挿入させることができるようになり、溶接性が向上する。
【0047】
また、本発明の密閉電池の製造方法においては、前記通電ブロックとして、前記金属ブロックの前記面取りされている部分が平面とされているものを用いることが好ましい。
【0048】
本発明の密閉電池の製造方法によれば、角部を面取りされている面及び突起が形成された面と積層された芯体露出部との間が必ず鈍角となるため、通電ブロックを積層された芯体露出部の間に挿入する際に積層された芯体露出部と突起とが接触し易くなるので、溶接性が向上する。
【0049】
また、本発明の密閉電池の製造方法においては、前記通電ブロックとして、前記金属ブロックの前記突起が設けられている2つの面にはそれぞれ互いに平行な平面部分が設けられているものを用いることが好ましい。
【0050】
本発明の密閉電池の製造方法によれば、抵抗溶接時に抵抗溶接用電極で加圧された際に通電ブロックが変形し難くなり、また、抵抗溶接時に溶融変形した突起部の一部あるいは溶融した芯体の一部がこの平坦部に留まって通電部ブロックの側面方向に流れ出ることを抑制することができ、しかも、平坦部が被溶接部材と接する面となるため通電ブロックが安定化されため、信頼性の高い抵抗溶接部が得られるようになる。
【0051】
また、本発明の密閉電池の製造方法においては、前記通電ブロックとして、突起が円錐台状又は角錐台状のものを使用することが好ましい。
【0052】
本発明の密閉電池の製造方法によれば、抵抗溶接時に円錐台状又は角錐台状の突起の先端側に電流が集中するため、より発熱し易くなり、溶接性がより安定化し、しかも、溶接部分の品質がより良好な密閉電池を製造することができるようになる。
【0053】
また、本発明の密閉電池の製造方法においては、前記通電ブロックとして、前記突起に開口が形成されているものを使用することが好ましい。
【0054】
突起に開口が形成されていると、その分だけ突起部に電流が集中するため、突起部において集中的に発熱し易くなる。そのため、本発明の密閉電池の製造方法によれば、より内部抵抗が小さく、しかも、溶接部分の品質が良好な密閉電池を製造することができるようになる。
【0055】
また、本発明の密閉電池の製造方法においては、前記通電ブロックとして、前記開口が前記金属ブロックの内部にまで延在されているものを使用することが好ましい。
【0056】
開口が金属ブロックの内部にまで延在されていると、溶接時に抵抗溶接用電極棒で強く挟み込んで突起の先端が潰れる状態とした場合でも、抵抗溶接時に突起の先端部が溶融した場合でも、より確実に突起あるいは金属ブロックの内部に空洞が存在する状態となる。そのため、突起部において発生した熱が拡散することを防ぎ、突起部及びその近傍を局部的に高温にすることができる。また、突起近傍の金属ブロックの内部に空洞が存在することにより、突起部において発生した熱が金属ブロック全体に拡散することを効果的に防ぐことができる。従って、本発明の密閉電池の製造方法によれば、より内部抵抗が小さく、しかも、溶接部分の品質が良好な密閉電池を製造することができるようになる。
【0057】
また、本発明の密閉電池の製造方法においては、前記通電ブロックとして、前記開口が前記金属ブロックを貫通しているものを使用することができる。
【0058】
開口が金属ブロックを貫通している場合、金属ブロックは筒状となるので、軽くなる。しかも、筒状の金属ブロックは、開口の中心軸方向に沿った方向に加わる力に対しては、強度が強く、変形し難い。そのため、本発明の密閉電池の製造方法によれば、軽量でありながら容易に上記効果を奏する密閉電池を製造することができるようになる。
【0059】
また、本発明の密閉電池の製造方法においては、前記通電ブロックとして、前記突起の周囲に環状に絶縁シール材が形成されているものを用いることが好ましい。
【0060】
抵抗溶接用の通電ブロックの突起の周囲に環状に絶縁シール材が形成されていると、抵抗溶接時にスパッタされた高温のチリが発生しても、この高温のチリを絶縁シール材と突起との間ないし絶縁シール材自体で捕獲することができる。そのため、本発明の密閉電池の製造方法によれば、抵抗溶接時にスパッタされた高温のチリが通電ブロックの周囲に飛散し難くなるため、スパッタされた高温のチリに起因する密閉電池の内部短絡が生じ難くなる。
【0061】
なお、絶縁シール材は、スパッタされた高温のチリの捕獲特性を向上させるために、絶縁性熱溶着性樹脂で形成するとよい。絶縁シール材として絶縁性熱溶着性樹脂を使用すると、抵抗溶接時に発生するスパッタされた高温のチリは、固体の絶縁性熱溶着性樹脂を部分的に溶融することによって熱を奪われ、急速に冷却されて温度が下がるので、容易に固体の絶縁性熱溶着性樹脂中に捕獲される。なお、抵抗溶接時には、電流を流す時間は短く、しかも、電流が流れる範囲は狭いので、絶縁性熱溶着性樹脂の全てが同時に溶融することは少ない。そのため、抵抗溶接時に発生したスパッタされたチリは絶縁性熱溶着性樹脂から飛散して偏平形電極体の内部へ入り込むことが少なくなるので、より内部短絡の発生が少なく、信頼性の高い密閉電池が得られる。なお、絶縁性熱溶着性樹脂は、溶着温度が70〜150℃程度であり、溶解温度は200℃以上のものが望ましく、更には電解液等に対する耐薬品性を備えていることが望ましい。
【0062】
また、本発明の密閉電池の製造方法においては、前記絶縁シール材は、高さが前記突起よりも低くされているものを用いることが好ましい。
【0063】
抵抗溶接部に際しては、積層された芯体露出部は抵抗溶接用電極によって通電ブロック側に向かって押圧されるため、通電ブロックの突起は積層された芯体露出部に食い込む状態となる。本発明の密閉電池の製造方法によれば、絶縁シール材は、高さが突起よりも低くされているので、抵抗溶接時には積層された芯体露出部と接するようになり、スパッタされた高温のチリが飛散して偏平形電極体の内部へ入り込むことが少なくなるとともに、抵抗溶接部以外の積層された芯体露出部の過度の変形が少なくなり、より内部短絡の発生が少なく、信頼性の高い密閉電池が得られるようになる。
【0064】
また、本発明の密閉電池の製造方法においては、前記通電ブロックとして、前記正極芯体露出部間及び前記負極芯体露出部間ではそれぞれ前記突起の形状が異なるものを用いることが好ましい。
【0065】
例えばリチウムイオン二次電池では、正極芯体としてはアルミニウム又はアルミニウム合金が使用され、負極芯体としては銅又は銅合金が使用されているように、一般的な密閉電池の正極芯体及び負極芯体はそれぞれ異なる金属材料が使用されている。銅又は銅合金はアルミニウム又はアルミニウム合金に比べて電気抵抗が小さいため、負極芯体露出部側の抵抗溶接は、正極芯体露出部側の抵抗溶接よりも困難であって、積層された負極芯体露出部内に溶融し難い部分が生じやすい。
【0066】
本発明の密閉電池の製造方法においては、通電ブロックとして、正極芯体露出部間及び負極芯体露出部間ではそれぞれ突起の形状が異なるものを用いるようにしているおり、正極芯体露出部側及び負極芯体露出部側でそれぞれ最適な形状の者を選択して使用し得る。例えば、正極芯体形成材料としてアルミニウム又はアルミニウム合金が使用されており、負極芯体形成材料として銅又は銅合金が使用されている場合には、負極芯体露出部間に使用する通電ブロックの突起の形状としては、溶接電流を集中させて抵抗溶接を行い易くするため、突起に開口が形成されているものを使用すればよく、また、正極芯体露出部間に使用する通電ブロックの突起の形状としては、抵抗溶接が容易に進行するため、通電ブロックがより変形し難くなるようにするために突起に開口が形成されていないものを使用すればよい。
【0067】
また、本発明の密閉電池の製造方法においては、前記一対の抵抗溶接用電極間に押圧力を印加しながら抵抗溶接を行う工程において、前記開口が半つぶし状態となるよう押圧力を印加することが好ましい。
【0068】
突起に形成されている開口を半つぶし状態にすると、突起の開口が潰れて内部に空洞が形成されると共に潰れた部分は突起の中央部に集まるので、抵抗溶接時に流れる電流は一旦突起の開口の周囲に分散された後に突起の中央部に集中する。そのため、本発明の密閉電池の製造方法によれば、突起に形成されている開口を半つぶし状態にしない場合に比べて、突起の周囲部分だけでなく突起の中央部分でも良好に発熱することができるので、より良好に上記効果を奏する密閉電池を製造することができるようになる。なお、溶接時に加圧することによって、突起に形成されている開口部分を全つぶし状態、つまり突起あるいは通電ブロックの内部に空洞が形成されない状態にしてしまうと、突起に開口を形成することの効果が少なくなるので、好ましくない。
【0069】
更に、上記目的を達成するため、本発明の密閉電池は、前記いずれかの密閉電池の製造方法によって製造されたことを特徴とする。
【0070】
本発明の密閉電池によれば、従来例の密閉電池と比して、正極芯体露出部ないし負極芯体露出部と正極用集電部材ないし負極用集電部材との間の抵抗溶接部分の電気抵抗が低くなって、より内部抵抗が小さい密閉電池となる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1Aは実施形態1の非水電解質二次電池の断面図であり、図1Bは図1AのIB−IB線に沿った断面図であり、図1Cは図1AのIC−IC線に沿った断面図である。
【図2】図2Aは実施形態1の正極用通電ブロックの平面図であり、図2Bは図2AのIIB−IIB線に沿った断面図であり、図2Cは正面図である。
【図3】実施形態1の溶接状態を示す側面図である。
【図4】図3の溶接部分の拡大図である。
【図5】図5Aは突起が正極芯体露出部と接触している部分が円環状の場合の抵抗溶接電流が流れる経路を示す図であり、図5Bは図5Aの発熱が強い部分を示す図であり、図5Cは突起が正極芯体露出部と接触している部分が円状の場合の抵抗溶接電流が流れる経路を示す図であり、図5Dは図5Cの発熱が強い部分を示す図である。
【図6】図6Aは実施形態2の通電ブロックの正面図であり、図6Bは実施形態2の変形例の通電ブロックの正面図であり、図6Cは実施形態3の通電ブロックの正面図である。
【図7】図7Aは実施形態4の通電ブロックの正面図であり、図7Bは図7Aの断面図であり、図7Cは環状絶縁シール材の平面図である。
【図8】図8Aは従来の蓄電素子としての電気二重層キャパシタの断面図あり、図8Bは図8AのVIIIB−VIIIB線に沿った断面図であり、図8Cは図8AのVIIIC−VIIIC線に沿った断面図である。
【図9】図8における電極の芯体露出部と集電用部材との間の溶接工程を示す図である。
【図10】従来のシリーズスポット溶接法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下に本願発明を実施するための幾つかの形態を例示し、詳細に説明する。ただし、以下に示す各実施形態は、本発明の技術思想を理解するために例示するものであって、本発明をこれらの実施形態に特定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお本発明で使用し得る発電要素は、正極シートと負極シートとをセパレータを介して巻回又は積層することにより、両端部にそれぞれ複数枚の正極芯体露出部及び負極芯体露出部が形成された偏平状のものであるが、以下においては、巻回電極体に代表させて説明する。
【0073】
[実施形態1]
最初に本発明の実施形態1の密閉電池の一例として、角形の非水電解質二次電池を図1を用いて説明する。なお、図1Aは実施形態1の非水電解質二次電池の断面図であり、図1Bは図1AのIB−IB線に沿った断面図であり、図1Cは図1AのIC−IC線に沿った断面図である。この非水電解質二次電池10は、正極シートと負極シートとがセパレータ(何れも図示省略)を介して巻回された偏平状の巻回電極体11を有している。
【0074】
正極シートは、アルミニウム箔からなる正極芯体の両面に、帯状のアルミニウム箔が露出している正極芯体露出部14が形成されるように正極活物質合剤を塗布し、乾燥後に圧延することにより作製されている。また、負極シートは、銅箔からなる負極芯体の両面に、帯状の銅箔が露出している負極芯体露出部15が形成されるように負極活物質合剤を塗布し、乾燥後に圧延することによって作製されている。そして、偏平状の巻回電極体11は、正極シート及び負極シートを、巻回軸方向の両端部に複数枚の正極芯体露出部14及び負極芯体露出部15がそれぞれ露出するように、例えばポリエチレン製の多孔質セパレータを介して偏平状に巻回することにより作製されている。
【0075】
複数枚の正極芯体露出部14は積層されて正極用集電部材16を介して正極端子17に接続され、同じく複数枚の負極芯体露出部15は積層されて負極用集電部材18を介して負極端子19に接続されている。なお、正極端子17、負極端子19はそれぞれ絶縁部材20、21を介して封口板13に固定されている。この実施形態の角形の非水電解質二次電池10は、上述のようにして作製された偏平状の巻回電極体11を角形の電池外装缶12内に挿入した後、封口板13を電池外装缶12の開口部にレーザ溶接し、その後、電解液注液孔22から非水電解液を注液し、この電解液注液孔22を密閉することにより作製されている。
【0076】
偏平状の巻回電極体11は、正極シート側では、積層された複数枚の正極芯体露出部14が2分割されてその間に正極用通電ブロック24Aが挟まれており、同じく負極シート側では、積層された複数枚の負極芯体露出部15が2分割されてその間に負極用通電ブロック25が挟まれている。また、正極用通電ブロック24Aの両側に位置する正極芯体露出部14の最外側の両側の表面にはそれぞれ正極用集電部材16が配置されており、負極用通電ブロック25の両側に位置する負極芯体露出部15の最外側の両側の表面にはそれぞれ負極用集電部材18が配置されている。なお、正極用通電ブロック24Aは正極芯体と同じ材料であるアルミニウム製であり、負極用通電ブロック25は負極芯体と同じ材料である銅製であるが、正極用通電ブロック24A及び負極用通電ブロック25の形状は共に実質的に同一のものを使用し得る。
【0077】
これらの正極用集電部材16と正極芯体露出部14との間及び正極芯体露出部14と正極用通電ブロック24Aとの間(それぞれ2箇所)は共に抵抗溶接されており、また、負極用集電部材18と負極芯体露出部15との間及び負極芯体露出部15と負極用通電ブロック25との間(それぞれ2箇所)は、共に抵抗溶接によって接続されている。
【0078】
以下、正極用通電ブロック24A及び負極用通電ブロック25の形状、正極芯体露出部14、正極用集電部材16、正極用通電ブロック24A間の抵抗溶接方法、及び、負極芯体露出部15、負極用集電部材18、負極用通電ブロック25間の抵抗溶接方法を図2〜図5を用いて詳細に説明する。しかしながら、実施形態1においては、正極用通電ブロック24A及び負極用通電ブロック25の形状は実質的に同一であり、しかも、正極芯体露出部14、正極用集電部材16、正極用通電ブロック24A間の抵抗溶接方法及び負極芯体露出部15、負極用集電部材18、負極用通電ブロック25間の抵抗溶接方法は、正極シート側のものであっても負極シート側であっても同様であるので、以下においては正極シート側のものに代表させて説明することとする。
【0079】
実施形態1の正極用通電ブロック24Aを図2を用いて説明する。なお、図2Aは正極用通電ブロック24Aの平面図であり、図2Bは図2AのIIB−IIB線に沿った断面図であり、図2Cは正面図である。この正極用通電ブロック24Aは、円柱状の本体24aの対向する二つの面24eのそれぞれに例えば円錐台状の突起24bが形成されている。そして、この円錐台状の突起24bの中央部には、先端側から円柱状の本体24aの内部まで開口24cが形成されており、また、円柱状の本体24aの対向する二つの面24eと側面との間に角部24fが形成されている。
【0080】
この円錐台状の突起24bの高さHは、抵抗溶接部材に一般的に形成されている突起(プロジェクション)と同程度、すなわち、数mm程度であればよい。また、開口24cの深さDは、ここでは円錐台状の突起24bの高さHよりも大きくされ、開口24cは突起24bが設けられた円柱状の本体24aの面24eから突起24bの高さHの深さよりも浅い位置まで形成されている(開口24cの深さDは2Hよりも小さい)ことが好ましく、突起24bが設けられた円柱状の本体24aの表面から突起24bの高さHの1/2の深さよりも浅い位置まで形成されている(開口24cの深さDは3/2Hよりも小さい)ことがより好ましい。あまり開口24cの深さが深すぎると、円柱状の本体24aの径が小さい場合には円柱状の本体24aの導電性が低下する虞があるので好ましくない。
【0081】
また、円柱状の本体24aの径及び長さは、偏平状の巻回電極体11や電池外装缶12(図1参照)によっても変化するが、3mm〜数10mm程度であればよい。なお、ここでは正極用通電ブロック24Aの本体24aの形状は円柱状のものとして説明したが、角柱状、楕円柱状等、金属製のブロック状のものであれば任意の形状のものを使用することができる。また、正極用通電ブロック24Aの形成材料としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、タングステン、モリブデン等からなるものを使用することができ、更に、これらの金属からなるもののうち、突起24bにニッケルメッキを施したもの、突起24bとその根本付近までをタングステンもしくはモリブデン等の発熱を促する金属材料に変更し、銅、銅合金、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる正極用通電ブロック24Aの本体24aにロー付け等によって接合したもの等も使用し得る。
【0082】
次いで、実施形態1の密閉電池の具体的製造方法を説明する。図3に示したように、偏平状の巻回電極体11のアルミニウム箔からなる正極芯体露出部14を積層し、この積層した正極芯体露出部14を巻回中央部分から両側に2分割し、電極体厚みHの1/4Hを中心として正極芯体露出部14を集結させた。そして、正極芯体露出部14の最外周側の両側に正極用集電部材16、内周側に正極用通電ブロック24Aを、正極用通電ブロック24Aの両側の円錐台状の突起24bがそれぞれ正極芯体露出部14と当接するように、配置した。ここで、集結させたアルミニウム箔の厚さは片側約660μmであり、総積層数は88枚(片側44枚)である。また、正極用集電部材16は厚さ0.8mmのアルミニウム板を打ち抜き、曲げ加工等にて製作した。なお、この正極用集電部材16はアルミニウム板から鋳造等にて製作しても良い。
【0083】
次いで、図3に示したように、上下に配置された一対の抵抗溶接用電極棒31及び32間に正極用集電部材16及び正極用通電ブロック24Aが配置されたされた偏平状の巻回電極体11を配置し、一対の抵抗溶接用電極棒31及び32をそれぞれ正極芯体露出部14の最外周側の両側に配置された正極用集電部材16に当接させる。そして、一対の抵抗溶接用電極棒31及び32間に適度の圧力を印加し、予め定めた一定の条件で抵抗溶接を実施する。
【0084】
突起24bには開口24cが形成されているため、突起の先端部に電流が集中し易く、更に突起の先端が芯体露出部に食い込み易くなるため、開口24cが形成されていない場合よりも溶接性が向上する。そして、突起24bの先端部が半つぶし状態になり、突起24bが正極芯体露出部14と接触している部分が円環状から円状に変化するように圧力を加えて抵抗溶接を行うと、より安定的に溶接を行える。
【0085】
従って、正極用通電ブロック24Aの突起24bの形状は、図4に示すように、突起24bの先端部が半つぶし状態になり、突起24bが正極芯体露出部14と接触している部分が円環状から円状に変化しているようにすることが望ましい。なお、図4は図3の溶接部分の拡大図である。この場合、突起24bの内部には空洞24dが形成されている必要がある。これは、突起24bの正極芯体露出部14との接触部を円状にすることにより正極用通電ブロック24A中心からの発熱を促して、さらに安定した溶接が可能となる。
【0086】
なお、突起24bが正極芯体露出部14と接触している部分が、半つぶし状態となるか円環状となるかは、主に溶接時の加圧力に依存することがわかっており、溶接加圧力が弱い場合は突起先端が環状となり、溶接加圧力が強い場合は突起先端が半つぶれ状となる傾向にある。また、その他には、突起24bの高さが高く且つ開口24cの深さが深いほど半つぶし状態となり易く、開口の深さが浅い場合は、突起24cの先端が環状のまま芯体露出部に食い込む状態となり易いものと考えられる。
【0087】
また、この抵抗溶接時には、一対の抵抗溶接用電極棒31及び32と正極用通電ブロック24Aの中心軸が一致していることが望ましく、正極用通電ブロック24Aは加圧等により位置ずれをしないように保持されていることが望ましい。また、抵抗溶接機としては周知のトランジスタ等を用いた半導体式溶接電源を使用し得る。
【0088】
ここで、上記の突起24bが正極芯体露出部14と接触している部分が円環状の場合と円状の場合で、発熱状態に差異が生じる理由について、図5を用いて説明する。なお、図5Aは突起24bが正極芯体露出部14と接触している部分が円環状の場合の抵抗溶接電流が流れる経路を示す図であり、図5Bは図5Aの発熱が強い部分を示す図であり、図5Cは突起24bが正極芯体露出部14と接触している部分が円環状の場合の抵抗溶接電流が流れる経路を示す図であり、図5Dは図5Cの発熱が強い部分を示す図である。
【0089】
電流は最も抵抗値の少ない箇所を流れるため、抵抗溶接用電極棒31及び32の内部ではその中心が最も電流が流れる部分部分となる。突起24bが正極芯体露出部14と接触している部分が円環状の場合、図5Aに示しように、溶接電流Iは、例えば上側の抵抗溶接用電極棒31から上側の正極用集電部材16及び正極芯体露出部14を経て、正極用通電ブロック24Aの上側の突起24bの円環状の先端部から円環状に分流されて正極用通電ブロック24Aの本体24a内へ流れ、更に、正極用通電ブロック24Aの下側の突起24bの円環状の先端部を通って電流が集中され、下側の正極芯体露出部14及び正極用集電部材16を経て、下側の抵抗溶接用電極棒32に流れる。
【0090】
そのため、突起24bが正極芯体露出部14と接触している部分が円環状の場合、突起24bの中心には電流が流れないので、図5Bに示したように、円環状に溶接の起点が発生することになり、溶接の起点が多数になる。
【0091】
それに対し、突起24bが正極芯体露出部14と接触している部分が半つぶし状態となって円状となっている場合、突起24の内部には空洞24dが形成されているから、図5Cに示すように、溶接電流Iは、例えば上側の抵抗溶接用電極棒31から上側の正極用集電部材16及び正極芯体露出部14を経て、正極用通電ブロック24Aの上側の突起24bの円状の先端部の中心から円環状に分流されて正極用通電ブロック24Aの本体24a内へ流れ、更に、正極用通電ブロック24Aの下側の突起24bの円状の先端部の中心を通って電流が集中され、下側の正極芯体露出部14及び正極用集電部材16を経て、下側の抵抗溶接用電極棒32に流れる。
【0092】
この例では、溶接電流Iは、突起24b部分において空洞24d部分を避けて円環状に電流が分流されるが、円状の先端部の中心の内部に空洞24dが存在しているため、金属の溶融に伴う吸熱が少なくなるので、突起24bの円状の先端部の中心の付近が最も発熱し易くなる。そのため、突起24bが正極芯体露出部14と接触している部分が円状の場合、突起24bの円状の先端部の中心に電流が集中するため、溶接電流Iによって強く発熱する部分の形状は、図5Dに示したように球状となるので、より安定した溶接状態となり、しかも、溶接強度も強くなる。
【0093】
なお、上記実施形態1では、正極用通電ブロック24Aとして柱状の本体24aを有し、突起24bとして開口24c形成されている円錐台状のものを用いた例を示した。しかしながら、本発明においては、突起24bは開口が形成されていないものであっても、角錐台状のもの、すなわち、三角錐台状のものや四角錐台状のものや更に多角錐台状のものも使用することができる。
【0094】
突起24bに開口が形成されていない場合、突起24bの作用は従来の抵抗溶接時のプロジェクションと同様となるが、この場合でも良好に正極用集電部材16、積層された複数枚の正極芯体露出部14及び正極集電ブロック24との間の抵抗溶接を行うことができる。電流、通電時間、加圧圧力を変化させない一定の条件下では、突起の有無により抵抗溶接部分の溶接状態は大きく変化する。例えば、突起を有する場合に溶接できる一定の条件(溶接箇所の破壊試験で、10kgf程度で破壊される条件)で、突起のない正極用通電ブロックを用いた場合には、全く溶接できず、正極用通電ブロックが外れてしまう。
【0095】
また、正極集電ブロック24として、円柱状の本体24aを有するものを使用した例を示したが、正極集電ブロック24の本体24aとしては角柱状、楕円柱状等の金属製のブロック状のものであればよく、更には開口24c(図2参照)が本体24aを貫通しているものも使用し得る。特に、開口24c(図2参照)が本体24aを貫通している場合は、正極用通電ブロック24Aの本体24aは筒状のものとなるが、この場合は、本体24aの両端部を成形してあるいはそのまま突起として兼用させることができる。
【0096】
なお、上記実施形態1では、積層された複数枚の正極芯体露出部14を2分割し、正極用集電部材16及び正極用通電ブロック24Aを用いて抵抗溶接する場合について述べたが、正極用通電ブロック24Aを正極用集電部材に兼用してこの正極用通電ブロック24Aを正極端子17に接続してもよい。この場合、上記実施形態1で使用されている正極用集電部材に換えて、正極用通電ブロック24Aと同じ材料で形成された薄板材からなる溶接受け部材を用いればよい。
【0097】
[実施形態2]
上記実施形態1の正極用通電ブロック24Aとしては、図2に示したように、円柱状の本体24aの対向する二つの面24eのそれぞれに例えば円錐台状の突起24bが形成されているものを示した。このように、本体24aが円柱状であると、円柱状の本体24aの対向する二つの面24eと側面との間に角部24fが形成される。そのため、図3に示すように、正極用通電ブロック24Aを積層された正極芯体露出部14を2分割してその内側に配置し、正極用通電ブロック24Aの両側の円錐台状の突起24bがそれぞれ積層された正極芯体露出部14と当接するようにする際、角部24fが積層された正極芯体露出部14と接触し易いため、正極芯体露出部14が変形され易くなる。
【0098】
そこで、実施形態2の正極用通電ブロック24Bとしては、実施形態1の円柱状の本体24aの対向する二つの面24eと側面との間の角部24fに面取りされている面24gを形成した。この実施形態2の正極用通電ブロック24Bを図6Aを用いて説明する。なお、図6Aは実施形態2の正極用通電ブロック24Bの正面図である。
【0099】
このように面取りされている面24gを形成した実施形態2の正極用通電ブロック24Bによれば、積層された正極芯体露出部14を2分割してその内側に正極用通電ブロック24Bの両側の円錐台状の突起24bがそれぞれ正極芯体露出部14と当接するように配置する際、積層された正極芯体露出部14に損傷を与えることが少なくなり、容易に積層された正極芯体露出部14の溶接位置にまで挿入させることができるようになり、溶接性が向上する。
【0100】
なお、実施形態2の正極用通電ブロック24Bにおける面取りされている面24gは、曲面及び平面のどちらをも採用することができるが、面取りされている面24gを平面状とすると、面取りされている面24gと突起24bが形成された面との間が積層された正極芯体露出部14に対して必ず鈍角となるので、正極用通電ブロック24Bを積層された正極芯体露出部14と接触させる際に正極芯体露出部14と突起24bとが接触し易くなるので、より溶接性が向上する。
【0101】
また、実施形態2の正極用通電ブロック24Bにおいては、図6Bに変形例として示した正極用通電ブロック24Cのように、面取りされている面24gが突起24bの形成部分にまで延在されており、実施形態2の正極用通電ブロック24Bの本体24aにおけるそれぞれ互いに平行な2つの平面からなる面24eが存在しない形状も取り得るが、正極用通電ブロック24Bの突起24bが設けられている2つの面24eがそれぞれ露出している状態、すなわち、正極用通電ブロック24Bの本体24aにそれぞれ互いに平行な2つの平面からなる面24eが形成されている状態とすると、抵抗溶接時に抵抗溶接用電極で加圧された際に正極用通電ブロック24Bが変形し難くなり、また、抵抗溶接時に溶融変形した突起24bの一部あるいは溶融した正極芯体露出部14の一部がこの面24eに留まって正極用通電ブロック24Bの側面方向に流れ出ることが抑制され、しかも、面24eが正極芯体露出部14と接する面となることで正極用通電ブロック24Bの位置が安定化されて、より信頼性の高い抵抗溶接部が得られるようになるため、より好ましい。
【0102】
[実施形態3]
また、実施形態2の正極用通電ブロック24Bとしては、実施形態1の円柱状の本体24aの対向する二つの面24eと側面との間の角部24fに面取りされている面24gを形成すると共に、突起24bに開口部が形成されていない例を示した。また、実施形態1の正極用通電ブロック24Aとしては、突起24bに形成した開口24cの深さDを突起24bの高さHよりも大きくした例を示した(図2B参照)。しかしながら、突起24bに形成する開口24cの深さDは突起24bの高さHよりも小さくしてもよい。このような実施形態3の正極用通電ブロック24Dの構成を図6Cに示す。なお図6Cは実施形態3の正極用通電ブロック24Dの正面図である。
【0103】
実施形態3の正極用通電ブロック24Dによれば、積層された正極芯体露出部14を2分割してその内側に正極用通電ブロック24Dの両側の円錐台状の突起24bがそれぞれ正極芯体露出部14と当接するように配置する際、積層された正極芯体露出部14に損傷を与えることが少なくなり、容易に積層された正極芯体露出部14の溶接位置にまで挿入させることができるようになり、溶接性が向上する。加えて、円錐台状の突起24bの内部に開口24cを形成したため、抵抗溶接時に円錐台状の突起24bの先端側に電流が集中するため、より発熱し易くなり、溶接性がより安定化し、しかも、溶接部分の品質がより良好な密閉電池を製造することができるようになる。
【0104】
[実施形態4]
実施形態4の正極用通電ブロック24Eを図7を用いて説明する。なお、図7Aは実施形態4の通電ブロックの正面図であり、図7Bは図7Aの断面図であり、図7Cは環状絶縁シール材の平面図である。
【0105】
実施形態4の正極用通電ブロック24Eは、図6Aに示した実施形態2の正極用通電ブロック24Bの円錐台状の突起24bの周囲に、環状の絶縁性熱溶着性樹脂で形成された絶縁シール材26を形成したものである。この絶縁シール材26の高さは円錐台状の突起24bの高さHよりも低くされている。
【0106】
この実施形態4の正極用通電ブロック24Eを積層された正極芯体露出部14を2分割してその内側に配置し、正極用通電ブロック24Eの両側の円錐台状の突起24bがそれぞれ積層された正極芯体露出部14と当接するように配置すると、正極用通電ブロック24Eには面取りされている面24gが形成されているため、積層された正極芯体露出部14を2分割してその内側に正極用通電ブロック24Eの両側の円錐台状の突起24bがそれぞれ正極芯体露出部14と当接するように配置する際、積層された正極芯体露出部14に損傷を与えることが少なくなり、容易に積層された正極芯体露出部14の溶接位置にまで挿入させることができるようになり、溶接性が向上する。
【0107】
また、実施形態4の正極用通電ブロック24Eにおいては、両側の円錐台状の突起24bの周囲に環状の絶縁性熱溶着性樹脂で形成された絶縁シール材26が形成されている。抵抗溶接に際しては、積層された正極芯体露出部14は抵抗溶接用電極によって正極用通電ブロック24E側に向かって押圧されるので、正極用通電ブロック24Eの突起24bは、積層された正極芯体露出部14に食い込む状態となるため、積層された正極芯体露出部14と接するようになる。このように正極用通電ブロック24Eの突起24bの周囲に環状に絶縁シール材26が形成されていると、抵抗溶接時にスパッタされた高温のチリが発生しても、この高温のチリは絶縁シール材26によって遮られ、絶縁シール材26内ないし突起24bと絶縁シール材24bとの間に捕獲することができる。
【0108】
しかも、実施形態4の正極用通電ブロック24Eにおいては、絶縁シール材26を絶縁性熱溶着性樹脂で形成したため、抵抗溶接時に発生するスパッタされた高温のチリは、固体の絶縁性熱溶着性樹脂を部分的に溶融することによって熱を奪われ、急速に冷却されて温度が下がるので、容易に固体の絶縁性熱溶着性樹脂からなる絶縁シール材26中に捕獲される。なお、抵抗溶接時には、電流を流す時間は短く、しかも、電流が流れる範囲は狭いので、絶縁性熱溶着性樹脂からなる絶縁シール材26の全てが同時に溶融することは少ない。そのため、抵抗溶接時に発生したスパッタされたチリは絶縁シール材26から飛散して偏平形電極体の内部へ入り込むことが少なくなるので、より内部短絡の発生が少なく、信頼性の高い密閉電池が得られるようになる。
【0109】
なお、上記絶縁性熱溶着性樹脂としては、溶着温度が70〜150℃程度であり、溶解温度は200℃以上のものが望ましく、更には電解液等に対する耐薬品性を備えていることが望ましい。例えば、ゴム系シール材、酸変性ポリプロピレン、ポリオレフィン系熱溶着性樹脂等を使用し得る。更に、絶縁シール材は、糊材付き絶縁テープとして、ポリイミドテープ、ポリプロピレンテープ、ポリフェニレンサルファイドテープ等を使用することができ、また、全体が絶縁性熱溶着製樹脂からなるものであっても、あるいは、絶縁性熱溶着製樹脂層を有する複層構造のものであってもよい。
【0110】
なお、上記実施形態1〜4では、正極側について述べたが、負極側においても、負極芯体露出部15、負極用集電部材18及び負極用通電ブロック25の材料の物性が相違する他は実質的に同様の作用・効果を奏する。更に、本発明にかかる抵抗溶接用通電ブロックは、密閉電池のみならず、様々な集電構造、溶接構造に利用可能である。また、本発明は、正極側及び負極側のいずれか一方にのみ適用してもよい。
【0111】
また、本発明においては、密閉電池の製造に際しては、正極用通電ブロック24及び負極用通電ブロック25としてそれぞれ突起24bの形状が異なるものを用いることもできる。例えばリチウムイオン二次電池では、正極芯体としてはアルミニウム又はアルミニウム合金が使用され、負極芯体としては銅又は銅合金が使用されているように、一般的な密閉電池の正極芯体及び負極芯体はそれぞれ異なる金属材料が使用されている。アルミニウム又はアルミニウム合金に比べて銅又は銅合金は電気抵抗が小さいため、負極芯体露出部側の抵抗溶接は、正極芯体露出部側の抵抗溶接よりも困難であって、積層された負極芯体露出部内に溶融し難い部分が生じやすい。
【0112】
このような場合には、負極芯体露出部間に使用する負極用通電ブロック25の突起の形状としては、溶接電流を集中させて抵抗溶接を行い易くするため、突起に開口が形成されているものを使用すればよく、また、正極芯体露出部間に使用する正極用通電ブロック24の突起の形状としては、抵抗溶接が容易に進行するため、正極用通電ブロック24がより変形し難くなるようにするために突起24bに開口が形成されていないものを使用すればよい。
【0113】
なお、上記各実施形態及び図面においては、説明を簡潔にするため、一方の電極芯体に対して一つの通電ブロックを溶接している例で示したが、当然のことながら通電ブロックの数は複数個とすることができ、電池の要求出力等に応じて適宜調整すれば良い。
【符号の説明】
【0114】
10…非水電解質二次電池 11…偏平状の巻回電極体 12…電池外装缶 13…封口板 14…正極芯体露出部 15…負極芯体露出部 16…正極用集電部材 17…正極端子 18…負極用集電部材 19…負極端子 20、21…絶縁部材 22…電解液注液孔 24A〜24E…正極用通電ブロック 24a…(正極用通電ブロックの)本体 24b…(正極用通電ブロックの)突起 24c…(正極用通電ブロックの)開口 24d…(正極用通電ブロックの)空洞 24e…(正極用通電ブロックの)面 24f…(正極用通電ブロックの)角部 24g…(正極用通電ブロックの)面取り部 25…負極用通電ブロック 26…絶縁シール材 31、32…抵抗溶接用電極棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ブロックの対向する二つの面のそれぞれに突起が形成されていることを特徴とする抵抗溶接用の通電ブロック。
【請求項2】
前記金属ブロックの前記対向する二つの面と側面との間の角部は面取りされていることを特徴とする請求項1に記載の抵抗溶接用の通電ブロック。
【請求項3】
前記面取りされている面は平面とされていることを特徴とする請求項2に記載の抵抗溶接用の通電ブロック。
【請求項4】
前記突起が設けられている二つの面は、それぞれ互いに平行な平面部分が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の抵抗溶接用の通電ブロック。
【請求項5】
前記突起は円錐台状又は角錐台状であることを特徴とする請求項1に記載の抵抗溶接用の通電ブロック。
【請求項6】
前記突起には開口が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の抵抗溶接用の通電ブロック。
【請求項7】
前記開口は前記金属ブロックの内部にまで延在されていることを特徴とする請求項6に記載の通電ブロック。
【請求項8】
前記開口は前記金属ブロックを貫通していることを特徴とする請求項7に記載の抵抗溶接用の通電ブロック。
【請求項9】
前記突起の周囲には環状に絶縁シール材が形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の抵抗溶接用の通電ブロック。
【請求項10】
前記絶縁シール材は、高さが前記突起よりも低くされていることを特徴とする請求項9に記載の通電ブロック。
【請求項11】
以下の(1)〜(5)の工程を含むことを特徴とする密閉電池の製造方法。
(1)正極シートと負極シートとをセパレータを介して巻回又は積層することにより両端部にそれぞれ複数枚の正極芯体露出部及び負極芯体露出部が形成された偏平形電極体を作製する工程、
(2)前記積層された正極芯体露出部及び負極芯体露出部の内、少なくともどちらか一方の芯体露出部を2分割する工程、
(3)前記2分割された芯体露出部の最外側の両表面にそれぞれ集電部材又は溶接受け部材を配置すると共に、前記2分割された芯体露出部間に、金属ブロックの対向する二つの面のそれぞれに突起が形成されている通電ブロックを、前記対向する二つの面のそれぞれの突起が前記2分割された芯体露出部と接するように配置する工程、
(4)前記2分割された芯体露出部の最外側の両表面にそれぞれ配置されている集電部材又は溶接受け部材間に一対の抵抗溶接用電極を当接する工程、
(5)前記一対の抵抗溶接用電極間に押圧力を印加しながら抵抗溶接を行う工程。
【請求項12】
前記通電ブロックとして、前記金属ブロックの前記対向する二つの面と側面との間の角部は面取りされているものを用いたことを特徴とする請求項11に記載の密閉電池の製造方法。
【請求項13】
前記通電ブロックとして、前記金属ブロックの前記面取りされている部分が平面とされているものを用いたことを特徴とする請求項12に記載の密閉電池の製造方法。
【請求項14】
前記通電ブロックとして、前記金属ブロックの前記突起が設けられている二つの面にはそれぞれ互いに平行な平面部分が設けられているものを用いたことを特徴とする請求項12に記載の密閉電池の製造方法。
【請求項15】
前記通電ブロックとして、突起が円錐台状又は角錐台状のものを使用したことを特徴とする請求項11に記載の密閉電池の製造方法。
【請求項16】
前記通電ブロックとして、前記突起に開口が形成されているもの使用したことを特徴とする請求項11に記載の密閉電池の製造方法。
【請求項17】
前記通電ブロックとして、前記開口が前記金属ブロックの内部にまで延在されているものを使用したことを特徴とする請求項16に記載の密閉電池の製造方法。
【請求項18】
前記通電ブロックとして、前記開口が前記金属ブロックを貫通しているものを使用したことを特徴とする請求項17に記載の抵抗溶接用の記載の密閉電池の製造方法。
【請求項19】
前記通電ブロックとして、前記突起の周囲に環状に絶縁シール材が形成されているものを用いたことを特徴とする請求項11に記載の密閉電池の製造方法。
【請求項20】
前記通電ブロックとして、前記絶縁シール材は、高さが前記突起よりも低くされているものを用いたことを特徴とする請求項19に記載の密閉電池の製造方法。
【請求項21】
前記通電ブロックとして、前記正極芯体露出部側及び前記負極芯体露出部間ではそれぞれ前記突起の形状が異なるものを用いたことを特徴とする請求項11に記載の密閉電池の製造方法。
【請求項22】
前記一対の抵抗溶接用電極間に押圧力を印加しながら抵抗溶接を行う工程において、前記開口が半つぶし状態となるよう押圧力を印加することを特徴とする請求項16〜18のいずれかに記載の密閉電池の製造方法。
【請求項23】
請求項11〜22の何れかに記載の密閉電池の製造方法によって製造されたことを特徴とする密閉電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−92995(P2011−92995A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149609(P2010−149609)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】