説明

押しボタンスイッチ

【課題】本発明は、静電気の放電を防止することができる十字ボタンスイッチ20を提供することを目的とする。
【解決手段】プレイヤーの押下を許容する十字ボタン40と、十字ボタン40の押下に対する信号を出力する基板70と、基板70に載置して十字ボタン40を出没可能に弾性支持する押下部材60と、前記各部材を収容するスイッチケース50とで構成した十字ボタンスイッチ20であって、押下部材60を、絶縁性を有する弾性素材で形成するとともに、十字ボタン40を弾性支持する弾性支持部63と、基板70の上面側と対面する平面対面部61と、基板70の側面と対面する側面対面部62とで一体に形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば遊技機においてプレイヤーの各種選択入力を受け付ける十字ボタンスイッチのような押しボタンスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種遊技機において、娯楽性を高めるため様々な演出が施されているが、これら演出は、遊技の進行に応じて自動的に発生していた。昨今では、これら演出にもプレイヤーの選択操作や決定操作を受け付けることで、各種遊技機の娯楽性をより向上させている。
【0003】
このようなプレイヤーの各種選択入力を受け付ける手段の一つとして、様々な形状の押しボタンスイッチがある。プレイヤーは、これら押しボタンスイッチの押しボタンを押下することで、演出の選択や決定などを行うことができる。
【0004】
ところで、プレイヤーが押しボタンを押下した際、プレイヤーに帯電した静電気が押しボタンスイッチ内部に侵入することがある。そして、押しボタンスイッチ内部に侵入した静電気が、遊技機の制御基板に到達すると、各種遊技機の誤動作や故障の要因となるおそれがある。そこで、押しボタンスイッチに対して、例えば、特許文献1のような静電気対策が提案されている。
【0005】
特許文献1に記載の押しボタンスイッチでは、押しボタンを押下可能に保持する弾性部材と、押しボタンスイッチを取り付けた操作パネルの導電性部分とをアース部材で接続することで、押しボタンから流れる静電気を操作パネルの導電性部分に逃がすことができるとされている。しかしながら、特許文献1では、スイッチ機能とは関係ないアース部材だけでなく、操作パネルにも導電性部分を別途設ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−66098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑み、静電気の放電を防止することができる押しボタンスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、プレイヤーの押下を許容する少なくとも1つの押しボタンと、該押しボタンの押下に対する信号を出力する基板と、該基板に載置して前記押しボタンを出没可能に弾性支持する押下部材と、前記各部材を収容するスイッチケースとで構成した押しボタンスイッチであって、前記押下部材を、絶縁性を有する弾性素材で形成するとともに、前記押しボタンを弾性支持する弾性支持部と、前記基板の押しボタン側平面と対面する平面対面部と、前記基板の側面と対面する側面対面部とで一体に形成したことを特徴とする。
上記押下部材は、絶縁性を有するゴム系素材、あるいは絶縁性を有する軟質樹脂素材などとすることができる。
【0009】
この発明により、静電気の放電を防止できる押しボタンスイッチを構成することができる。
【0010】
具体的には、プレイヤーが押しボタンスイッチに近接、あるいは接触して静電気が放電した場合、静電気は、各部材の表面を這うようにして導電性部材である基板に向かって流れる。しかしながら、プレイヤーに蓄積された静電気は、押しボタンから基板に至る静電気が流れる経路の距離、所謂、沿面距離を延ばすことで放電しなくなる。例えば、30kvの静電気を放電させないためには、沿面距離を30mm以上とすることが好ましい。
【0011】
そこで、押下部材に基板の側面を覆う側面対面部を備えたことにより、静電気が流れた場合の経路は、押しボタンから押下部材の弾性支持部及び平面対面部を伝わって、さらに側面対面部の表面及び裏面を経由して基板に到達する経路とすることができる。
【0012】
すなわち、側面対面部の表面及び裏面を経由する経路とすることで、押しボタンから押下部材を介して基板に至る沿面距離を長く延ばすことができるので、プレイヤーに帯電した静電気の放電を防止することができる。
さらに、押しボタンと基板との直線距離を抑えたまま沿面距離のみを長く延ばすことができるので、押しボタンスイッチは、静電気の放電を防止することができ、かつ全長を抑えて薄型化することができる。
【0013】
従って、押下部材に基板の側面を覆う側面対面部を備えた押しボタンスイッチは、静電気の放電を防止することができる。
【0014】
この発明の態様として、前記基板を収容して保持するとともに、前記スイッチケースに嵌合固定する基板取付部材と、前記押しボタンの出没可能な開口部を有するとともに、前記スイッチケースに嵌合固定するボタンカバーとを備え、前記スイッチケースに、前記押下部材の前記弾性支持部及び前記押しボタンの挿入を許容するとともに、前記押しボタンの出没をガイドする出没ガイド部を形成することができる。
【0015】
この発明により、押しボタンスイッチは、静電気の放電をより確実に防止することができる。
【0016】
具体的には、基板は、基板取付部材の所定の位置に組付けることができる。そして、基板に載置した押下部材の弾性支持部をスイッチケースの出没ガイド部に挿入することで、押下部材は、スイッチケースに対して適切な位置及び向きで組付けることができる。さらに、基板取付部材とスイッチケースとが嵌合することで、押下部材と基板とを適切な位置及び向きで組付けることができる。
【0017】
また、押しボタンは、スイッチケースの出没ガイド部に挿入することで、スイッチケースに対して適切な位置及び向きで組付けることができる。そして、ボタンカバーとスイッチケースとが嵌合するとともに、ボタンカバーの開口部によって、ボタンカバーは、スイッチケースに対して適切な位置及び向きで組付けることができる。
【0018】
このように組付けることにより、押下部材は、基板あるいはスイッチケースに対する取付け位置を決める位置決め孔のような特別な開口を設けることなく、適切な位置及び向きで組付けることができる。このため、位置決め孔のような開口によって、沿面距離が短くなることを防止できる。すなわち、プレイヤーに蓄積した静電気が放電することをより確実に防止できる。さらに、押下部材は、位置決め孔のような開口を設けていないので、押下に対する耐久性を向上させることができる。
【0019】
従って、位置決め孔のような開口を設けない押下部材により、沿面距離を確実に確保できるので、押しボタンスイッチは、より確実に静電気の放電を防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、静電気の放電を防止できる押しボタンスイッチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】パチンコ遊技機の盤面表側の外観を示す外観斜視図。
【図2】十字ボタンスイッチの外観を示す外観斜視図。
【図3】十字ボタンスイッチの正面を示す正面図。
【図4】十字ボタンスイッチの構成を示す上面側からの分解斜視図。
【図5】十字ボタンスイッチの構成を示す底面側からの分解斜視図。
【図6】十字ボタンスイッチの平面を示す平面図。
【図7】図2中のA−A矢視断面図。
【図8】図6中のB−B矢視断面図。
【図9】十字ボタンスイッチ内部に静電気が流れた場合の経路を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
本実施形態では、一例として遊技ホールに設置されるパチンコ遊技機10を用いて説明する。
なお、図1は、パチンコ遊技機10の盤面表側の外観斜視図を示している。
また、本明細書において上面側とは、プレイヤーと対向する方向を示し、底面側もしくは底面方向とは、上面側を示す方向と逆向きの方向を示している。
【0023】
パチンコ遊技機10の盤面表側には、図1に示すように、上部に遊技面1が設けられ、その下部に、遊技球を打ち出し用に貯留させる上皿4と、払い出し用に遊技球を貯留させる下皿5とを上下に配設している。下皿5の左部上面には、十字ボタンスイッチ20を設けている。さらに、パチンコ遊技機10の右下側には、プレイヤーの回転操作によって遊技球の打撃力を調整させる遊技球発射用の発射ハンドル6を備えている。
【0024】
また、遊技面1には、発射された遊技球を搬送する搬送レール2と、遊技進行に応じて各種演出画面を表示する演出画面表示部3が設けられている。
【0025】
このような構成のパチンコ遊技機10をプレイヤーが遊技利用する際、プレイヤーは、発射ハンドル6を回転操作して遊技球を発射する。この際、パチンコ遊技機10は、発射ハンドル6の回転量に応じて、盤面裏側の発射装置(図示省略)より遊技球を1球ずつ発射させる。発射された遊技球は、搬送レール2に沿って遊技面1へと供給されて遊技が開始される。
【0026】
そして、演出画面表示部3には、遊技の進行に応じて各種演出画面が表示される。そして、演出画面表示部3にプレイヤーの選択操作を要求する演出画面が表示されると、遊技利用中のプレイヤーは、十字ボタンスイッチ20にて選択操作を行う。
【0027】
このような十字ボタンスイッチ20について、図2から図8を用いて詳しく説明する。
なお、図2は十字ボタンスイッチ20の外観斜視図を示し、図3は十字ボタンスイッチ20の正面図を示し、図4は十字ボタンスイッチ20の上面側からの分解斜視図を示し、図5は底面側からの分解斜視図を示し、図6は十字ボタンスイッチ20の平面図を示し、図7は図2中のA−A矢視断面図を示し、図8は図6中のB−B矢視断面図を示している。また、図7及び図8において、パチンコ遊技機10の下皿5における上面の断面を二点鎖線にて図示している。
【0028】
十字ボタンスイッチ20は、図2及び図3に示すように、プレイヤーの操作を受け付けるスイッチ本体21と、スイッチ本体21を下皿5に固定するナット90とで構成している。
【0029】
具体的には、スイッチ本体21は、図4及び図5に示すように、ボタンカバー30、十字ボタン40、及びスイッチケース50で構成している。さらに、スイッチケース50の内部には、押下部材60、基板70、及び基板取付部材80を収容して構成している。
【0030】
ボタンカバー30は、プレイヤーと対面する対表面部31、及びスイッチケース50に嵌合する4つの嵌合脚部32で一体に構成している。
【0031】
対表面部31は、図6に示すように、平面視において直線部31aと曲線部31bとで構成した外周縁を有する略俵状の平板で形成している。さらに、対表面部31には、図4から図6に示すように、後述する十字ボタン40に対応する平面視略三角形状に開口した開口部Xを四方に配置している。
【0032】
嵌合脚部32は、略平板状であって、対表面部31の曲線部31bから底面方向に向けて形成している。さらに、嵌合脚部32の底面側端部近傍には、スイッチケース50(後述するスイッチケース50のカバー嵌合爪部56)と嵌合するカバー嵌合開口部32aを設けている。
【0033】
また、十字ボタン40は、上下左右に独立した4方向ボタンであって、略三角柱状に形成した上ボタン41、下ボタン42、左ボタン43、及び右ボタン44の4つのボタンで構成している。さらに、各ボタンには、それぞれの底面側外周縁において外側に向けて突設した鍔部41a、42a、43a、及び44aを形成している。加えて、各ボタンの底面には、底面方向に延びる略円筒状のボタン軸部41b、42b、43b、及び44bを備えている。
【0034】
また、スイッチケース50は、図3から図7に示すように、プレイヤーと対面するケース平面部51、ケース平面部51から底面方向に延設したケース胴部53、及びケースネジ山部57で一体に構成している。
【0035】
ケース平面部51は、平面視略円状の平板であって、略中央にボタンカバー30の対表面部31を載置可能な略俵状の開口を有する形状に形成している。さらに、ケース平面部51の開口縁において、ボタンカバー30の曲線部31bに対応する位置に、嵌合脚部32を挿入可能に開口した挿入開口部52を設けている。
【0036】
ケース胴部53は、挿入開口部52が外周面の外側に位置する大きさの平面視略俵状の筒形状であって、ケース平面部51の開口縁から底面方向に延設している。さらに、ケース胴部53の内部には、十字ボタン40のボタン軸部41b、42b、43b、及び44bが挿入可能な内周径を有する略円筒状のガイド筒部54を平面視において四方に配置している。
【0037】
そして、ケース胴部53の内部には、ボタンカバー30の対表面部31と対面して、4つのガイド筒部54の外周面とケース胴部53の内周面とを繋ぐように略平板状の内平面部55を形成している。さらに、内平面部55の略中央には、図7に示すように、底面方向に向けて形成した略円筒状の形状であって、後述する押下部材60の支持突部64の挿入を許容する突部挿入部59を設けている。
【0038】
加えて、ケース胴部53の外周面には、挿入開口部52から底面側の離間した位置に、ボタンカバー30の嵌合脚部32と嵌合する4つのカバー嵌合爪部56を外側に向けて形成している。
【0039】
ケースネジ山部57は、ケース胴部53から底面方向に延設した略円筒状の形状であって、外周面にナット90と螺合するネジ山を形成している。さらに、ケースネジ山部57の外周面における底面側端部近傍には、基板取付部材80(後述する基板取付部材80の嵌合爪部83)と嵌合する2つの嵌合部58を、径方向において対向する位置に開口している。
【0040】
また、押下部材60は、平面対面部61、側面対面部62、4つの弾性支持部63、及び支持突部64で一体に構成している。なお、押下部材60は、弾性を有するとともに、絶縁性を有するゴム系素材で形成されているものとする。さらに、押下部材60は、弾性の反発力により十字ボタン40をガイド筒部54に沿って出没させるとともに、後述する基板70と後述する押下部材60の接触端子部63aが接触することで通電を確立させる機能を有している。
【0041】
平面対面部61は、スイッチケース50の内平面部55と対面するとともに、基板70(後述する基板70の基板本体71)を覆う大きさの平面視略円状に形成している。
側面対面部62は、平面対面部61の外周縁から底面方向に向けて形成した略円筒状の形状に形成している。
【0042】
弾性支持部63は、略円柱状の形状であって、平面対面部61上においてスイッチケース50のガイド筒部54と対応するように四方に配置している。さらに、各弾性支持部63の底面側底部には、導電性を有する接触端子部63aを備えている。
【0043】
なお、弾性支持部63は、図7に示すように、断面視において、接触端子部63aと基板70とが離間するように配置するとともに、断面ハの字状の傾斜面65を介して平面対面部61と一体に形成している。この傾斜面65は、十字ボタン40を押下した際のクリック感をだすとともに、弾性による反発力により十字ボタン40を出没可能にする機能を有している。
【0044】
支持突部64は、平面対面部61上の略中央において、スイッチケース50の突部挿入部59に挿入可能な外周径を有する略円柱状に形成している。
【0045】
また、基板70は、各種電子部品を載置した基板本体71、及び基板本体71の底面側に備えたコネクタ72で構成している。
【0046】
基板本体71は、平面視略円状の電子基板であって、押下部材60の4つの接触端子部63aと対面する位置に、接触端子部63aが接触することで通電する被接触端子部71aを備えている。
コネクタ72は、略箱状の形状であって、パチンコ遊技機10内部の制御機器などから引き出された配線(図示省略)と接続している。
【0047】
また、基板取付部材80は、図4及び図5に示すように、取付部材筒部81、及び取付部材筒部81の内部に形成した基板取付部82で一体に構成している。
【0048】
取付部材筒部81は、図7に示すように、スイッチケース50のケースネジ山部57の内周径より小さく、かつ基板70の基板本体71を載置可能な外周径を有する略円筒状の形状に形成している。さらに、取付部材筒部81の外周面には、スイッチケース50の嵌合部58と嵌合する2つの嵌合爪部83を、径方向で対向する位置において外側に向けて形成している。
【0049】
基板取付部82は、取付部材筒部81の軸方向に延びる平板で、基板70のコネクタ72の挿入を許容する平面視略矩形の開口を有する略井桁状の形状に形成している。
【0050】
また、ナット90は、スイッチケース50のケースネジ山部57と螺合可能な内周径を有する形状に形成している。なお、ナット90の上面側平面には、略半円柱状の回り止めリブ91を放射状に複数配置している。
【0051】
このような構成のボタンカバー30、十字ボタン40、スイッチケース50、押下部材60、基板70、及び基板取付部材80をそれぞれ挿入あるいは嵌合して組付けることでスイッチ本体21を構成している。そして、スイッチ本体21は、下皿5の取付け孔に挿入して底面側からナット90にて係止して下皿5に固定する。
【0052】
具体的には、基板取付部材80の基板取付部82に、上面側から基板70のコネクタ72を挿入して組付ける。このとき、基板本体71を、図7に示すように、取付部材筒部81の上面側端部に載置するように組付ける。さらに、押下部材60を、基板70に上面側から被覆するように載置して組付ける。
【0053】
そして、押下部材60及び基板70を組付けた基板取付部材80をスイッチケース50の底面側から挿入して組付ける。このとき、押下部材60を、図7に示すように、弾性支持部63がスイッチケース50のガイド筒部54に挿入できるように回転させて位置を合わせる。その後、基板取付部材80の嵌合爪部83が、付勢力によってスイッチケース50の嵌合部58にしっかりと嵌合するまで、基板取付部材80をスイッチケース50に挿入して組付ける。
【0054】
また、十字ボタン40を、図4に示すように、スイッチケース50の上面側からガイド筒部54に挿入して組付ける。この際、上ボタン41、下ボタン42、左ボタン43、及び右ボタン44の各ボタンを、それぞれの方向に応じた位置に合わせるとともに、ボタン軸部41b、42b、43b、及び44bをガイド筒部54に挿入して組付ける。
【0055】
その後、ボタンカバー30を、図4に示すように、スイッチケース50の上面側から組付ける。この際、ボタンカバー30の嵌合脚部32を、図8に示すように、スイッチケース50の挿入開口部52に挿入して組付ける。そして、嵌合脚部32のカバー嵌合開口部32aを、カバー嵌合爪部56に外側から嵌め合わせるとともに、付勢力によってしっかりと嵌合させて組付ける。
【0056】
このように各部材を組付けて構成したスイッチ本体21を、図7に示すように、パチンコ遊技機10の下皿5の取付け孔に上面側から挿入する。そして、スイッチ本体21の底面側からスイッチケース50のケースネジ山部57にナット90を螺合して、下皿5にスイッチ本体21を固定する。
【0057】
このようにして下皿5に取付けた十字ボタンスイッチ20において、仮にプレイヤーに帯電した静電気が放電して、十字ボタンスイッチ20内部に静電気が流れた場合の経路を、図9を用いて説明する。
【0058】
なお、図9は十字ボタンスイッチ20内部に静電気が流れた場合の経路を説明する説明図を示している。また、図9では簡略化のため下皿5、スイッチケース50、及びナット90の図示を省略している。
【0059】
図9に示すように、帯電したプレイヤーの指先Fが、例えば、左ボタン43に接近する、あるいは接触したとする。このとき、プレイヤーの指先Fから静電気が放電した場合、左ボタン43から基板70に至る静電気が流れる経路として、まず、静電気は、矢印L1に示すように、左ボタン43の表面を這うようにして、ボタンカバー30と左ボタン43との隙間から十字ボタンスイッチ20の内部に向けて流れる。
【0060】
そして、ボタンカバー30と左ボタン43の隙間から十字ボタンスイッチ20の内部に侵入した静電気は、矢印L2に示すように、鍔部43aからボタン軸部43bの表面を這うようしてさらに内部に流れる。
【0061】
さらに、静電気は、矢印L3に示すように、押下部材60の表面を這うようにして流れて、導電性部材である基板70の基板本体71に到達する経路を辿る。
【0062】
詳述すると、静電気は、押下部材60の弾性支持部63の表面を這うようにして平面対面部61に向けて流れる。そして、平面対面部61に到達した静電気は、平面対面部61の上面側平面を伝って側面対面部62に流れたのち、側面対面部62の外周面を底面方向に向けて流れる。さらに、静電気は、側面対面部62の底面側端部で折り返して、側面対面部62の内周面を基板70に向けて流れて基板70の基板本体71に到達する経路を辿る。
【0063】
以上のように静電気が流れた場合の経路を長く延ばすことが実現できる上述の構成の十字ボタンスイッチ20は、静電気の放電を防止することができる。
【0064】
具体的には、帯電したプレイヤーの指先Fが十字ボタンスイッチ20に近接、あるいは接触して放電した場合、静電気は、各部材の表面を這うようにして導電性部材である基板70に向かって流れる。しかしながら、蓄積された静電気は、十字ボタン40から基板70に至る沿面距離を延ばすことで放電しなくなる。
【0065】
そこで、押下部材60に側面対面部62を備えたことにより、静電気が流れた場合の経路は、十字ボタン40から押下部材60の弾性支持部63及び平面対面部61を伝わって、さらに側面対面部62の外周面及び内周面を経由して基板70に到達する経路とすることができる。
【0066】
すなわち、側面対面部62の外周面及び内周面を経由する経路とすることで、十字ボタン40から押下部材60を介して基板70に至る沿面距離(図9中において矢印L1、L2、及びL3で示す距離)を長く延ばすことができるので、プレイヤーに帯電した静電気の放電を防止することができる。
【0067】
さらに、十字ボタン40と基板70との直線距離を抑えたまま沿面距離のみを長く延ばすことができるので、十字ボタンスイッチ20は、静電気の放電を防止することができ、かつ全長を抑えて薄型化することができる。
【0068】
従って、押下部材60に基板70の側面を覆う側面対面部62を備えた十字ボタンスイッチ20は、静電気の放電を防止することができる。
【0069】
また、基板70を収容するとともに、スイッチケース50に嵌合固定する基板取付部材80と、スイッチケース50に嵌合固定するボタンカバー30とを備え、スイッチケース50に、押下部材60の弾性支持部63及び十字ボタン40の挿入を許容するとともに、十字ボタン40の出没をガイドするガイド筒部54を形成したことにより、十字ボタンスイッチ20は、静電気の放電をより確実に防止することができる。
【0070】
具体的には、基板70は、基板取付部材80の基板取付部82に組付けることができる。そして、基板70に載置した押下部材60の弾性支持部63をスイッチケース50のガイド筒部54に挿入することで、押下部材60は、スイッチケース50に対して適切な位置及び向きで組付けることができる。さらに、基板取付部材80とスイッチケース50とが嵌合することで、押下部材60と基板70とを適切な位置及び向きで組付けることができる。
【0071】
また、十字ボタン40は、スイッチケース50のガイド筒部54に挿入することで、スイッチケース50に対して適切な位置及び向きで組付けることができる。そして、ボタンカバー30とスイッチケース50とが嵌合するとともに、ボタンカバー30の開口部Xによって、ボタンカバー30は、スイッチケース50に対して適切な位置及び向きで組付けることができる。
【0072】
このように各部材を組付けることにより、押下部材60は、基板70あるいはスイッチケース50に対する取付け位置を決める位置決め孔のような特別な開口を設けることなく、適切な位置及び向きで組付けることができる。このため、位置決め孔のような開口によって、沿面距離が短くなることを防止できる。すなわち、プレイヤーに蓄積した静電気が放電することをより確実に防止できる。さらに、押下部材60は、位置決め孔のような特別な開口を設けていないので、押下に対する耐久性を向上させることができる。
【0073】
従って、位置決め孔のような開口を設けない押下部材60により、沿面距離を確実に確保することができるので、十字ボタンスイッチ20は、より確実に静電気の放電を防止することができる。
【0074】
また、十字ボタン40及び押下部材60の弾性支持部63をガイド筒部54に挿入したことにより、プレイヤーが十字ボタン40を押下した際、十字ボタン40がスムーズに出没することができる。
【0075】
さらに、押下部材60の支持突部64をスイッチケース50の突部挿入部59に挿入することにより、押下部材60を支持することができる。これにより、プレイヤーが十字ボタン40を押下した際、バランス変化によって押下部材60の弾性支持部63が倒れることを抑制できる。
【0076】
なお、本実施形態では、4方向の十字ボタン40としたが、これに限定せず、用途に応じた適宜の数のボタンとしてもよい。例えば、上下もしくは左右の2方向ボタン、1つのボタン、あるいは2方向もしくは4方向ボタンと1つのボタンとを組み合わせた構成であってもよい。
【0077】
また、押下部材60は、弾性を有するとともに絶縁性を有するゴム系素材としたが、これに限定せず、弾性を有するとともに絶縁性を有する軟質樹脂素材などとしてもよい。
【0078】
また、押下部材60の接触端子部63aが基板70の被接触端子部71aに接触することで通電する構成としたが、これに限定せず、押下部材60と基板70との接触構造は、適宜の構成としてもよい。
【0079】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の押しボタンスイッチは、実施形態の十字ボタンスイッチ20に対応し、
以下同様に、
押しボタンは、十字ボタン40に対応し、
出没ガイド部は、ガイド筒部54に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、遊技機だけでなく、選択あるいは決定操作を利用者に要求する様々な機器に対して利用することができる。
【符号の説明】
【0081】
20…十字ボタンスイッチ
30…ボタンカバー
40…十字ボタン
50…スイッチケース
54…ガイド筒部
60…押下部材
61…平面対面部
62…側面対面部
63…弾性支持部
70…基板
80…基板取付部材
X…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレイヤーの押下を許容する少なくとも1つの押しボタンと、
該押しボタンの押下に対する信号を出力する基板と、
該基板に載置して前記押しボタンを出没可能に弾性支持する押下部材と、
前記各部材を収容するスイッチケースとで構成した押しボタンスイッチであって、
前記押下部材を、
絶縁性を有する弾性素材で形成するとともに、
前記押しボタンを弾性支持する弾性支持部と、
前記基板の押しボタン側平面と対面する平面対面部と、
前記基板の側面と対面する側面対面部とで一体に形成したことを特徴とする
押しボタンスイッチ。
【請求項2】
前記基板を収容して保持するとともに、前記スイッチケースに嵌合固定する基板取付部材と、
前記押しボタンの出没可能な開口部を有するとともに、前記スイッチケースに嵌合固定するボタンカバーとを備え、
前記スイッチケースに、
前記押下部材の前記弾性支持部及び前記押しボタンの挿入を許容するとともに、前記押しボタンの出没をガイドする出没ガイド部を形成した
請求項1に記載の押しボタンスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−226975(P2012−226975A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93613(P2011−93613)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】