説明

押し型成形用石膏型及びそれを使用した成形方法

【課題】セラミックスの成形体に穴を簡単に、精度よく成形する石膏型及びそれを使用したセラミックスや陶磁器の成形方法を提供する。
【解決手段】穴を開ける芯材を設置する窪みを石膏型の対向する部分に設けた石膏型を使用し、片方の石膏型の窪みに芯材を設置して、その周りに坏土を設置し、他方の石膏型を押し付けて、余分な坏土を排出しながら成形し、その後、芯材を抜いて穴を開ける成形方法を提供する。操作が簡単で、精度のよい穴を開けることができ、穴は軸に沿って大きさを変えることができ、円錐や星型など円形以外の穴を開けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックスや陶磁器の成形を行なう石膏型において、該石膏型に、穴を簡単に精度よく成形するための石膏型とそれを使用した成形方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミックスや陶磁器の成形方法には、押し型成形、鋳込み成形、ロクロ成形、プレス成形、押し出し成形などがあり、製品の形状、機能、生産量などによって使い分けられている。押し型成形は、金属、プラスチックス、紙あるいはガラスなどの成形に用いられているが、セラミックスや陶磁器の成形の押し型成形とは自ずと技術内容が異なっている。セラミックスや陶磁器の押し型成形は、通常2枚の石膏型を使用し、一方の型に必要量の坏土を設置し、片方の型を押し付け、余分の坏土を排出しながら成形する。形状が単純で、生産量が少ない場合には、大型の設備が必要でなく簡易的に成形できる方法である。押し型成形法については、例えば特許公開2004−139793ショートアーク放電ランプ装置において、凹面反射鏡を作成する際に、粉体または液体を鋳込み成形、若しくは押し型成形をして成形体を作成し、その時と同時か、若しくはその後に、該成形体のフランジ付近に、ランプが破損した時の破片が通過不可能な大きさの通気孔を複数箇所設けるため、穴開け加工を行い、その後に焼成して反射鏡生地とし反射鏡とすることが記載されている。この場合、製品の穴あけ加工は芯材を使用せず、成形後行なっている。芯材を使用する例として、特許公開2002−255628陶磁器製造方法において、加熱すると焼失する素材を用いて形成した芯材を石膏型7内にセットし、石膏型内に泥漿を注入して芯材の露出面が泥漿で被覆された陶磁器原器を形成し、石膏型内の泥漿を排出して石膏型から取り出した陶磁器原器を加熱、焼成して、空隙を挟む二層構造の隔壁が形成された陶磁器1を製造する方法が記載されている。この方法では、芯材が石膏の中に使用されているが、可燃性のものであり、本発明の型及び成形方法とは異なる。
【特許文献1】特許公開2004−139793
【特許文献2】特許公開2002−255628
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
セラミックスや陶磁器の成形において、製品に穴がある場合、通常は成形後、ある程度乾燥して、素地の強度が発現した後に、ドリルなどで穴を成形する。この場合、穴の位置を精密に決めなければ精度よく開けることができず、また、その過程でクラックや変形などの不良が発生することが多かった。本発明の石膏型を使用すると、貫通孔は位置や大きさのばらつきが少なく、クラックや変形などの問題がなく、成形時間はほとんどかからない方法である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従来方法のこれらの課題を解決するために、石膏型に芯材を設置する窪みを設けた石膏型を使用し、一方の型に必要量の坏土を設置し、片方の型を押し付け、余分の坏土を排出しながら成形する。成形後、芯材を抜くと、芯材の通りの穴が形成される。坏土の周囲は石膏型で拘束されているために、芯材を抜く場合にも、不均質なストレスが発生しないために、クラックが発生したり、変形が生じることは少ない。芯材は、芯軸に垂直な断面の大きさが異なること(例えば円錐形)が可能である。また、芯材の軸に垂直な断面の形状は、必ずしも円形でなく、四角形や楕円形あるいは星形などでも可能である。芯材は木材、金属、プラスチックスなどで作製できるが、成形時に変形せずに、坏土が粘着せず離型が容易なものが好ましい。
【発明の効果】
【0005】
本発明の石膏型を使用すると、セラミックスや陶磁器に、ボール盤や研削機やプレス機などの大型設備を使用しなくても、穴が開いたセラミックスや陶磁器を容易に形成することができ、穴の位置や大きさのばらつきが少なく、クラックや変形などの問題が少なく、成形時間はほとんどかからない。珪藻土セラミックス、窒化珪素、炭化珪素、アルミナやジルコニアなどのセラミックス製品や陶磁器製品に容易に穴を設けることが可能であり、ミニ一輪挿し花瓶や、換気扇や蛍光灯の引き紐に取り付ける部材や装飾品などの製品に適用することができ、産業上の貢献は大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の石膏型を得るためには、製品の穴に対して、乾燥収縮、焼成収縮を考慮して芯材を作成し、芯材が精度よく固定できる窪みを設ける。製品求められる穴の寸法精度に応じて窪みの大きさ、位置精度を設定する。石膏型の設ける芯材を設置する窪みは芯材の大きさによって決定するが、通常は芯材とのクリアランスが100ミクロン以下であれば、押し型成形時に坏土が型から押し出されることはない。芯材がスムーズに引き抜かれるためには、対向する窪みは中心軸が一致していることが好ましく、引き抜く側の芯材の大きさは他方と同じか、それより大きいことが必要であり、窪みもそれに応じた大きさにしておくことが必要である。芯材の軸に対する断面の形状が円形でない場合、芯材の形状に合わせた窪みの形状であることが必要である。
【0007】
本発明の石膏型を使用して、セラミックスや陶磁器を成形する場合、成形する製品よりも少し多い坏土を取り、石膏型の片面に押し付けて設置するか、芯材に巻きつけてそれを片方の型に設置する。芯材を設置の窪みに合わせて、坏土の上から、他方の石膏型を押し付ける。十分押し付けた後に、芯材を抜く。芯材が円柱の場合は、少し芯材を回転させながら抜くのがいい。芯材の表面にシリコン系などの離型材を塗布することも有効である。芯材を抜いた後、型をはずし、バリを取って仕上げ、必要に応じて施釉し、焼成する。
【実施例1】
【0008】
直径36mmの球形に、穴径6.5mmの穴を開けた磁器製品(ミニ一輪挿し花瓶)を作成するために、直径44mmの球形の空洞を持つ石膏型に、直径8mmの窪みを型の上部とそれに対応する下部に設けた。球形の下部約30mmの部分は転がり防止のために平面とした。型の球形の周りは、余分の坏土の溜めとするために10mm幅の溝を設けた(石膏型A)。比較のために、芯材を設置する窪みのない同形の石膏型(石膏型B)を作成した。
【0009】
水分26%で調整した白磁用坏土約150gを手でまるめておおよそ球形に成形し、そこへ芯材として直径8mmのステンレス棒を差し込み、石膏型の窪みに芯材が合うように設置した。片方の型を坏土の上から押し付け、余分な坏土を型の球形部分から排出しながら押し付けた。上方の型が下方の型に密着するまで、押し付け、その状態で芯材を抜いた。型をはずし、成形体を型から取り外した。その間、約30秒であった。成形体は室内で自然乾燥1日、40℃の恒温槽で1日乾燥後、施釉して、1300℃の焼成窯で焼成した。ここまでの工程で成形した10個の製品に欠陥製品は発生せず、歩留まりは100%であった。これに対して、石膏型Bで作成した製品は1日の自然乾燥と40℃の恒温槽による加熱乾燥の後に、約7mm径にボール盤で穴を開け、端部を仕上げて施釉して同様に焼成した。穴あけ加工に1個約60秒の時間を費やした。焼成後、10個の製品について、穴端部を観察したところ、2個に大きなクラックが発生し、3個に微細なクラックが発生しており、不良品とした。歩留まりは50%であった。
【実施例2】
【0010】
株式会社シリックス製珪藻土80重量%と丸仙陶器原料製特級がいろ目粘土20重量%と分散材としてセルナD−305(中央油脂株式会社製)を外配で0.3重量%、バインダーとしてバインドセラムWA310(三井化学株式会社製)を外配で3重量%して、水分を23%の坏土を調整した。これを上部10mm、下部15mm、高さ15mm、上部内径3mm、下部内径10mmになるような石膏型を作成した。石膏型の上部の窪みは3mm、下部は10mmになるようにし、上部の厚さは、3mmになるように芯材の位置を調整できるように上部の石膏型の端部に止め部を設けた。
【0011】
水分を27%となるように調整した坏土を使用して、約6gの坏土を取り、丸く丸めて、芯材を中心に通し、芯材が型の所定の窪みに合うように石膏型に設置した。その上から片方の型を押し付け、余分な坏土を排出しながら、押し型成形を行なった。両方の型が密着したところで、芯材をゆっくり引き抜き、型をはずした。その後、室内で1日の自然乾燥の後に、40℃の恒温槽で加熱乾燥した後、800℃で1時間保持する焼成を行なった。欠陥はなく良好な製品が得られた。これらは、換気扇の紐の端につける部材とした。珪藻土セラミックスは料理の過程で発生するオイルミストを吸収する性質があり、オイルミストの中で使用しても、オイルが付着し、表面にオイルが溜まることがなく、これまでのプラスチックス製の部材より良好な部材となった。このように、簡単な成形方法で、使用用途にあった珪藻土セラミックス部品を作成することができた。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の石膏型の石膏型下の斜視図を示す。
【図2】本発明の石膏型の石膏型上の斜視図を示す。
【図3】成形に用いる坏土を芯材の周りに設置した斜視図を示す。
【図4】本発明の石膏型によって成形した穴付き製品の図を示す。
【図5】石膏型下のA-Aの断面図を示す。
【図6】石膏型上のB-Bの断面図を示す。
【符号の説明】
【0013】
1 石膏型
1−1 石膏型下
1−2 石膏型上
2 芯材を設置する窪み
2−1 石膏型下の芯材を設置する窪み
2−2 石膏型上の芯材を設置する窪み
3 坏土逃がし溝
4 製品
5 芯材
6 成形前の坏土

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石膏型を用いた押し型成形において、成形体に穴を開ける芯材を設置する窪みを石膏型の対向する部分に設けたことを特徴とする石膏型。
【請求項2】
請求項1の石膏型を用いて、片面の石膏型に芯材を、芯材を設置する窪みに配置し、その周りに坏土を設置し、片方の石膏型を坏土に押し付けて余分の坏土を排出しながら成形した後、芯材を抜いて穴を開けることを特徴とする押し型成形法。
【請求項3】
請求項1の石膏型を用いて、軸方向において芯材の大きさが異なり、大きさの異なる穴を成形する請求項2の押し型成形法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−260181(P2008−260181A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−103592(P2007−103592)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(503380065)
【Fターム(参考)】