説明

押出成形装置及び押出成形方法

【課題】導電性ゴムローラのクロスヘッドダイを用いた製造装置において、ウエルドラインに起因する電気抵抗値のむらを解消するための製造装置および製造方法を提供する。
【解決手段】導電性ゴム組成物を押出すための押出機と、クロスヘッドダイ310とを有し、該クロスヘッドダイ310は、電気的に互いに絶縁された内側ダイ312および外側ダイ315を有しており、該内側ダイの外周面401と該外側ダイの内周面402とで構成されている、該押出機から押し出される該導電性ゴム組成物を円筒状に形成する環状流路317を有しており、該内側ダイ312は、該環状流路317の中心軸と同じ向きに該導電性基体が装着される貫通孔314を有しており、該環状流路317は、その出口が該貫通孔314に面しており、さらに該内側ダイの外周面401および該外側ダイの内周面402の間に導電性ゴム組成物を介して電圧を印加するための手段を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性のゴムローラまたはゴムチューブを成形するための押出成形装置および押出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式のプリンター、複写機および静電記録装置等の画像形成は、帯電、露光、現像、転写、定着プロセスから成り立っている。導電性ゴムローラは、感光ドラム表面を帯電させる帯電ローラ、感光ドラム表面の静電潜像をトナー像に現像する現像ローラ、感光ドラム表面上のトナー像を転写する転写ローラとして使用されている。
【0003】
図2に示すように、導電性ゴムローラ201は、少なくとも導電性基体202とその外周面に導電性ゴム円筒体である導電性層203を有する。導電性ゴムローラは感光ドラムに押圧されて使用されることが多く、導電性層は感光ドラムと当該導電性ゴムローラ間で均一なニップを得るために低硬度であることなどが求められる。さらに感光ドラムを均一に帯電するために適切な電気抵抗値であることが求められる。
【0004】
導電性ゴムローラの製法としては、次に示す方法が知られている。押出成形により中空円筒状のゴムチューブを成形してから、さらに該ゴムチューブを加硫する。次いで、当該ゴムチューブの貫通孔に金属や樹脂などから成る導電性基体を挿入して、円筒研削盤による研削や紫外線照射などに代表される表面処理などの二次工程を経て導電性ゴムローラを得る。
【0005】
また、より安価に導電性ゴムローラを製造するために、ゴムチューブの貫通孔に金属や樹脂などから成る導電性基体を挿入する工程を省略する方法が知られている。すなわち、図3に示されるようにクロスヘッドダイによる被覆押出成形を用いて導電性基体上に導電性ゴム組成物を被覆して導電性ゴムローラを得る方法が多用されている。
【0006】
クロスヘッド押出成形装置は、図3のように押出機300、クロスヘッドダイ310から構成され、アダプター304によって、押出機300とクロスヘッドダイ310とは連結されている。
【0007】
クロスヘッド押出成形装置を用いて導電性ゴムローラを得る方法について図3を用いて説明する。押出機300から排出された導電性ゴム組成物341は、アダプター304とクロスヘッドダイ310の導入口311を経由して、内側ダイ312の外周面と外側ダイ315の内周面から構成される環状流路317にて筒状に形成されて導電性ゴムローラの導電性層である導電性ゴム円筒体203となる。前記導電性ゴム円筒体203は、予め内側ダイ312の貫通孔314に設置された導電性基体202に被覆されて、導電性ゴムローラ201として口金318から排出される。次いで、前記導電性ゴムローラを加硫して、導電性ゴム円筒体の外周面へ外径研磨や表面処理などの二次加工を施すなどして、帯電ローラなどとして使用される。
【0008】
クロスヘッドダイ310では、押出機300から排出された導電性ゴム組成物341は環状流路317において、図5に示すように内側ダイ312にて分割されてから、外側ダイ315にて再び繋ぎ合わされて導電性ゴム円筒体203となる。このとき、導電性ゴム円筒体203にはウエルドライン204と呼ばれる導電性ゴム円筒体の継ぎ目が生じる。
【0009】
ウエルドライン204は導電性ゴムローラにおいて図2のように現われ、電気抵抗値が非ウエルドライン領域と異なるため、導電性ゴム円筒体の周方向における電気抵抗値のむらを生じる場合がある。導電性ゴム円筒体の周方向における電気抵抗値のむらが大きくなると、例えば、帯電ローラの場合は、感光ドラムを適切に帯電することができなくなり、画像上にスジ状の模様が生じる場合がある。
【0010】
ウエルドラインが導電性ゴム円筒体において、非ウエルドライン領域と比較して電気抵抗値が異なる原因は次のように推察している。
【0011】
導電性ゴム組成物は、押出機から排出された後、アダプターとクロスヘッドダイの導入口を経由して、分流されたのち、再び合流してウエルドラインを構成しながら導電性ゴム円筒体を形成する。このとき、ウエルドラインを構成する導電性ゴム組成物は、アダプターやクロスヘッドダイの導入口における流路の壁面及び前記流路の壁面近傍を経由した導電性ゴム組成物である。
【0012】
アダプターやクロスヘッドダイの導入口などの流路を流れる導電性ゴム組成物は、前記流路の壁面との間に摩擦を生じながら口金に向かって流れる。前記流路壁面に接触している導電性ゴム組成物は、前記流路壁面との間に生じる摩擦によって、前記導電性ゴム組成物中の導電剤の分散状態が変化する。このため、前記流路壁面と接触している部分の導電性ゴム組成物は、前記流路壁面と接触していない導電性ゴム組成物と導電剤の分散状態が異なる。導電性ゴム組成物において、導電剤の分散状態が変化すれば、前記導電性ゴム組成物の電気抵抗値は変化する。
【0013】
以上の理由から、導電性ゴム円筒体において、ウエルドラインは非ウエルドライン領域と比較して電気抵抗値が異なると考えられる。
【0014】
ウエルドラインは、クロスヘッドダイにおいて導電性ゴム組成物を円筒状に形成する工程で生じるため、特許文献1のように押出機シリンダ中にて導電性ゴム組成物の電気抵抗を調整する方法では、ウエルドラインの発生を抑制することは難しい。また、特許文献2のように、クロスヘッドダイの環状流路にて、前記環状流路に設置された羽根車で導電性ゴム組成物を攪拌して、ウエルドラインを拡散分解する方法が知られている。しかし特許文献2による方法は、ウエルドラインを構成する導電性ゴム組成物を拡散するため、電気抵抗値が非ウエルド部と異なる導電性ゴム組成物を、導電性ゴム円筒体中に拡散する。このため、導電性ゴム円筒体の電気抵抗が不均一になる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2008−55821号公報
【特許文献2】特許第3578755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、電子写真装置に用いる導電性ゴムローラのクロスヘッドダイを用いた製造装置において、ウエルドラインに起因する電気抵抗値のむらを解消するための製造装置および製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
すなわち、本発明によれば、導電性基体と、該導電性基体を被覆している導電性ゴムとを有する導電性ゴムローラの製造装置であって、
導電性ゴム組成物を押出すための押出機と、クロスヘッドダイと、導電性基体を該クロスヘッドダイに供給する手段とを有し、
該クロスヘッドダイは、電気的に互いに絶縁された内側ダイおよび外側ダイを有しており、該内側ダイの外周面と該外側ダイの内周面とで構成されている、該押出機から押し出される該導電性ゴム組成物を円筒状に形成する環状流路を有しており、該内側ダイは、該環状流路の中心軸と同じ向きに該導電性基体が装着される貫通孔を有しており、該環状流路は、その出口が該貫通孔に面しており、さらに該内側ダイの外周面および該外側ダイの内周面の間に導電性ゴム組成物を介して電圧を印加するための手段を有している導電性ゴムローラの製造装置が提供される。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、導電性ゴムローラの周方向の電気抵抗値のむらを低減することが可能となり、前記電気抵抗値のむらに起因するスジ状画像の発生を抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の電子写真装置の一つの実施の形態の断面模式図である。
【図2】導電性ゴムローラの外観を示す模式図である。
【図3】従来のクロスヘッド押出成形装置の一つの実施の形態の断面模式図である。
【図4】(a)、(b)、(c)および(d)は、本発明のクロスヘッド押出成形装置の一つの実施の形態の断面模式図である。
【図5】クロスヘッドダイにおける導電性ゴム組成物の流れを示す断面模式図である。
【図6】帯電ローラの周方向の電気抵抗値のむらを測定する装置の模式図である。
【図7】本発明のプロセスカートリッジの一つの実施の形態の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る押出成形装置の一例を図4を参照して説明する。
【0021】
図4(a)および図4(b)は、本発明に係る導電性ゴムローラの製造装置を示している。押出機300と電圧印加手段を有するクロスヘッドダイ310から構成される。押出機300は導電性ゴム組成物341を投入する図示しない投入口と前記導電性ゴム組成物341を可塑化混練しながら搬送するシリンダ301とスクリュー302と、前記導電性ゴム組成物341を排出するための排出口303を有している。前記スクリュー302は図示しないモータに接続され、回転力を付与される。排出口303には導電性ゴム組成物341の混練促進と異物除去などを目的としたメッシュを装着することができる。押出機300の排出口はアダプター304を介してクロスヘッドダイ310の導入口311と接続されている。アダプター304は押出機300とクロスヘッドダイ310を連結するための部材である。
また、314は、クロスヘッドダイ310と同軸に形成されてなる、導電性基体202の通路となる貫通孔である。貫通孔314には、クロスヘッドダイ310の後端(図4(a)の上側)から、導電性基体202の供給手段としての送りロール321によって導電性基体202が連続的に供給されてくる。そして、クロスヘッドダイ310の先端(図4(a)の下側)から、導電性ゴム組成物によって周面が被覆された導電性基体202が押し出されてくる。
【0022】
クロスヘッドダイ310は内側ダイ312の外周面401と外側ダイ315の内周面402から構成される環状流路317を備える。該内側ダイ312の外周面401は該環状流路317の内壁面となり、該外側ダイ315の内周面402は環状流路317の外壁面となる。
【0023】
該内側ダイ312の外周面401と該外側ダイ315の内周面402は、一方が接地され、他方は電位を有して接続され、互いに電気的に絶縁された状態で電位差を有することができる。
【0024】
該内側ダイ312は、該環状流路317の中心軸と同じ向きに導電性基体202が装着される貫通孔314を設置することを許容する。
【0025】
本発明のクロスヘッド押出成形装置で導電性ゴムチューブを製造する場合は、図4(c)のように、前記貫通孔314の前記環状流路317と接する開口部にマンドレル319を設置する。マンドレル319は導電性の有無については特に限定されるものではない。
【0026】
内側ダイの外周面および外側ダイの内周面を構成する材質は、特に制限を受けず、公知のクロスヘッドダイに使用される材質を用いることができるが、導電性を備えていることが肝要である。通電や導電性ゴム組成物との接触による腐食等を考慮すると、ステンレス鋼など、耐腐食性の高い材質が好適に用いられる。また、導電性ゴム組成物の滞留抑制や、耐食性の向上の観点で、内側ダイの外周面と外側ダイの内周面の表面には、導電性を阻害しない範囲の表面処理が適用可能である。具体的には、ハードクロムメッキやニッケルメッキなどの公知の表面処理が許容される。
【0027】
内側ダイ312の外周面401への電圧印加は、図4(a)のように電源403から内側ダイ312の外周面401へ印加する方法や、図4(b)のように電源403から導電性基体202を経由して内側ダイ312の外周面401へ印加することも許容される。
【0028】
内側ダイの外周面と外側ダイの内周面の表面形状としては、平滑なものやスパイラル溝形状など、公知の形状を用いることが出来る。
【0029】
環状流路317の先端には口金318が取り付けられており、導電性ゴム円筒体203を導電性基体202に被覆した導電性ゴムローラ201が該口金318から排出される。
【0030】
図4に示すクロスヘッド押出成形装置を用いた導電性ゴムローラの製造方法について説明する。
【0031】
押出機300の投入口に投入された導電性ゴム組成物341はシリンダ301内にてせん断力を受けて、可塑化および混練されて押出機の排出口へ搬送される。次いで、アダプター304を通過して、クロスヘッドダイの導入口311へ搬送される。
【0032】
搬送された前記導電性ゴム組成物341は、前記導入口311から環状流路317に搬送され、内側ダイ312にて分割された後に、再び繋ぎ合わされて導電性ゴム円筒体203を形成する。
【0033】
係る後、前記導電性ゴム円筒体203は、内側ダイ312の外周面401と外側ダイ315の内周面402の間で電圧を印加されて、その内部に電流が流される。
【0034】
前記導電性ゴム円筒体203は、あらかじめ内側ダイ312の貫通孔314に設置された導電性基体202に被覆されて、口金318にて所望の外周面寸法に調整された導電性ゴムローラ201となり、排出される。
【0035】
得られた導電性ゴムローラ201を熱風炉などで加硫して、研磨や表面処理などの二次工程を経て、帯電ローラや転写ローラなどの電子写真用の導電性ゴムローラを得る。
【0036】
導電性ゴムチューブを得る場合は、図4(c)に一例を示すような装置を用いる。図4(c)では、図4(a)や図4(b)に一例を示す製造装置において、導電性基体202を設置する代わりに、マンドレル319を設置する。前記マンドレル319は、内側ダイ312の先端に、環状流路の中心軸状に前記中心軸と同じ向きに設置し、上述の導電性ゴムローラの製造と同様にして導電性ゴムチューブを得る。
【0037】
本発明の押出成形装置および押出成形方法によって、ウエルドラインに起因する導電性ゴムローラの電気抵抗値のむらが低減される機構については次のように推察される。
【0038】
本発明では、環状流路にて導電性ゴム組成物を円筒状に形成した後に、導電性ゴム円筒体を介して前記内側ダイと前記外側ダイの間に電圧を印加する。円筒体に形成された直後の導電性ゴム円筒体は、ウエルドラインと非ウエルドライン部で導電性ゴム組成物の導電剤の分散状態は互いに異なっている。
【0039】
導電性ゴム円筒体を介して前記環状流路に電圧を印加すると、導電性ゴム円筒体中に電流が流れて、前記導電性ゴム円筒体中の導電剤は前記電流の方向に沿って配向する。このとき、導電剤の配向が生じてウエルドラインと非ウエルドライン部における導電剤の分散状態のむらが低減して、導電性ゴムローラの電気抵抗値の周方向におけるむらは抑制される。その結果、前記導電性ゴムローラを加硫して得られる導電性ゴムローラの電気抵抗値の周方向におけるむらは低減する。
【0040】
[導電性基体]
本発明の帯電部材に用いられる導電性基体は、導電性を有し、その上に設けられる導電性弾性体層等を支持する機能を有するものである。材質としては、例えば、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等の金属やその合金を挙げることができる。
【0041】
[導電性ゴム組成物]
本発明で使用される導電性ゴム組成物の原料としては、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッソゴム、を含むゴムを挙げることができる。
【0042】
前記ポリマー原料中に分散させる導電剤として機能する導電性粒子としては、ケッチェンブラックEC、アセチレンブラック、ゴム用カーボン、酸化処理を施したカラー(インク)用カーボン、および、熱分解カーボンなどの導電性のカーボンを用いることができる。ゴム用カーボンとして、具体的には、Super Abrasion Furnace(SAF:超耐摩耗性)、Intermediate Super Abrasion Furnace(ISAF:準超耐摩耗性)、High Abrasion Furnace(HAF:高耐摩耗性)、Fast Extruding Furnace(FEF:良押し出し性)、General Purpose Furnace(GPF:汎用性)、Semi Rein Forcing Furnace(SRF:中補強性)、Fine Thermal(FT:微粒熱分解)およびMedium Thermal(MT:中粒熱分解)などの各ゴム用カーボンが挙げられる。
【0043】
また、天然グラファイトおよび人造グラファイトなどのグラファイトを用いることもできる。また、TiO、SnO、ZnOなどの金属酸化物、ZnOとAlの固溶体などの複酸化物、Cu、Agなどの金属粉等を始めとして、公知の各種のものが使用でき、それらの単体もしくは複数種をブレンドして使用してもよい。
【0044】
また導電性ポリマー、イオン導電剤などを前記導電性粒子と併用して導電性を付与しても良い。また上記ポリマーに、加硫剤、加硫促進剤、導電剤、帯電制御剤、可塑剤、老化防止剤等を適宜に添加することもできる。さらに、帯電防止剤、紫外線吸収剤、補強剤、充填剤、滑剤、離型剤、顔料、染料、難燃剤等を必要に応じて適宜に添加することもできる。
【0045】
[電子写真装置]
本発明の装置を用いて製造される導電性ゴムローラを適用できる電子写真装置の1例の概略構成を図1に示す。電子写真装置は、感光体、感光体を帯電する帯電装置、露光を行う潜像形成装置、トナー像に現像する現像装置、転写材に転写する転写装置、感光体上の転写トナーを回収するクリーニング装置、トナー像を定着する定着装置等から構成されている。感光体101は、導電性基体上に感光層を有する回転ドラム型である。感光体は矢示の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。
【0046】
帯電装置は、感光体101に所定の押圧力で当接されることにより接触配置される接触式の帯電ローラ102を有する。帯電ローラ102は、感光体の回転に従い回転する従動回転であり、帯電用電源112から所定の電圧を印加することにより、感光体を所定の電位に帯電する。感光体101に静電潜像を形成する潜像形成装置107は、例えばレーザービームスキャナーなどの露光装置が用いられる。一様に帯電された感光体に画像情報に対応した露光を行うことにより、静電潜像が形成される。現像装置は、トナー供給ローラ110、規制ブレード109、及び感光体101に近接又は接触して配設される現像部材103を有する。感光体帯電極性と同極性に静電的処理されたトナーを反転現像により、静電潜像をトナー像に可視化現像する。
【0047】
転写装置は、接触式の転写部材104を有する。感光体からトナー像を普通紙などの転写材114(転写材は、搬送部材を有する給紙システムにより搬送される。)に転写する。
【0048】
クリーニング装置は、ブレード型のクリーニング部材106、回収容器を有し、転写した後、感光体上に残留する転写残トナーを機械的に掻き落とし回収する。
ここで、現像装置にて転写残トナーを回収する現像同時クリーニング方式を採用することにより、クリーニング装置を省くことも可能である。
【0049】
定着装置105は、加熱されたローラ等で構成され、転写されたトナー像を転写材114に定着し、機外に排出する。
【0050】
[プロセスカートリッジ]
感光体、帯電装置、現像装置、クリーニング装置等を一体化し、電子写真装置に着脱可能に設計された図7に示すようなプロセスカートリッジを用いることもできる。
すなわち、帯電ローラ102が被帯電体である感光体101と少なくとも一体化され、電子写真装置本体に着脱自在に構成されているプロセスカートリッジであり、該帯電ローラが上記の導電性ゴムローラである。
また、電子写真装置は、少なくとも、プロセスカートリッジ、露光装置及び現像装置を有し、該プロセスカートリッジが上記のプロセスカートリッジである。
【実施例】
【0051】
[製造例1]
【表1】

上記原料を25℃に冷却した二本ロール機にて20分間混練して、導電性ゴム組成物1を得た。
【0052】
〔製造例2〕
【表2】

上記原料を25℃に冷却した二本ロール機にて20分間混練して、導電性ゴム組成物2を得た。
【0053】
〔製造例3〕
【表3】

上記原料を25℃に冷却した二本ローラ機にて10分間混練して、導電性ゴム組成物3を得た。
【0054】
〔製造例4〕
【表4】

上記原料を25℃に冷却した二本ローラ機にて10分間混練して、導電性ゴム組成物4を得た。
【0055】
〔製造例5〕
【表5】

上記原料を25℃に冷却した二本ローラ機にて10分間混練して、導電性ゴム組成物5を得た。
【0056】
〔製造例6〕
【表6】

上記原料を25℃に冷却した二本ローラ機にて10分間混練して、導電性ゴム組成物6を得た。
【0057】
〔製造例7〕
【表7】

上記原料を25℃に冷却した二本ローラ機にて10分間混練して、導電性ゴム組成物7を得た。
【0058】
〔製造例8〕
【表8】

上記原料を25℃に冷却した二本ローラ機にて10分間混練して、導電性ゴム組成物8を得た。
【0059】
〔製造例9〕
【表9】

上記原料を25℃に冷却した二本ローラ機にて10分間混練して、導電性ゴム組成物9を得た。
【0060】
[実施例1]
直径6mm、長さ252.5mmのステンレス製棒に、カーボンブラックを4%含有させた熱硬化性接着剤を塗布し、乾燥したものを導電性基体202として準備した。
【0061】
導電性ゴム組成物1を用いて、図4(a)に示す内側ダイの外周面へ電圧を印加する構造のクロスヘッドダイ1を有する押出成形装置を用いて導電性ゴムローラを製作した。前記押出成形装置の押出機はシリンダ内径がφ50mm、スクリュー有効長L/Dが22であるベント式押出機を用いた。スクリューのフライト形状は、ベントゾーンを除く箇所についてフルフライト形状とした。
【0062】
クロスヘッドダイの環状流路の形状は、押出流れ方向に垂直な断面を円環状とした。環状流路は、図4(d)に示すように、押出機側の入口側は内径aがφ68mm、外径Aがφ102mmであり、口金側は内径bがφ68mm、外径Bがφ82mmである、一様に円環の断面積が減少するテーパ型とした。環状流路の長さは50mmとした。
【0063】
環状流路においては、外側ダイの外周面を接地して、内側ダイの内周面を+50Vとして電圧を印加した。
【0064】
内側ダイ312の貫通孔314の一端には、導電性基体202をクロスヘッドダイに連続的に供給する手段としての送りローラ321を設置した。前記送りローラは図示しないモータに接続されて回転力を付与されている。
【0065】
クロスヘッドダイの先端には、内径がφ9.2mmの口金318を装着した。
【0066】
押出成形温度はシリンダ、クロスヘッドダイ、口金において90℃として、押出機のスクリュー回転数は10r.p.m.とし、φ9mmの導電性ゴム円筒体外周面を有する導電性ゴムローラを得た。
【0067】
次いで、得られた導電性ゴムローラを160℃の熱風炉で1時間加硫した。本実施例では導電性ゴムローラの導電性ゴム円筒体の長さが230mmになるように前記導電性ゴム円筒体の両端部を切断した。さらに、当該ゴム部を回転砥石で研摩し、導電性ゴム円筒体を端部直径8.3mm、中央部8.5mmのクラウン形状とした。前記ゴムローラを波長250nm近傍の紫外線ランプを当該ローラ軸方向と平行に設置して、当該ローラを円周方向に回転させながら紫外線を2分間照射して、表面に高加硫層を形成した上で、導電性ローラ1を得た。なお、紫外線照射にはハリソン東芝ライティング(株)製の低圧水銀ランプを用いた。
【0068】
[電気抵抗値の周方向におけるむらの評価]
導電性ローラの周方向における電気抵抗値のむらを以下に示す方法で算出した。すなわち、図6に示すように導電性ローラ1である導電性ゴムローラ201の両端を、図示しない軸受けにより感光体と同じ曲率の金属製円柱601に、平行になるように当接させる。この状態で、モータ(不図示)により金属製円柱601を回転させ、当接した導電性ローラ1を従動回転させながら安定化電源603から直流電圧−200Vを印加し、この時に基準抵抗602に流れる電流を電流計604で測定した。電流計604で計測した電流値の最大値と最小値から、その比(最大値÷最小値)を求めて電気抵抗値の周方向におけるむらとした。荷重は各4.9Nとし、金属製円柱は直径φ30mm、金属製円柱の回転は周速45mm/secとした。
導電性ローラ1の電気抵抗値の周方向におけるむらは1.85であった。
【0069】
[スジ画像の評価]
図1に示す構成を有する電子写真装置として、ヒューレット・パッカード社製カラーレーザージェットプリンター(HP Color LaserJet 4700dn)を記録メディアの出力スピード200mm/sec(A4縦出力)に改造して用いた。画像の解像度は、600dpi、1次帯電の出力は直流電圧−1100Vである。
【0070】
図7に示す構成を有するプロセスカートリッジとして、上記プリンター用のプロセスカートリッジを用いた(ブラック用)。
【0071】
上記プロセスカートリッジから帯電ローラを取り外し、本実施例の導電性ローラ1を帯電ローラとしてセットした。帯電ローラは、感光体に対し、一端で4.9N、両端で合計9.8Nのバネによる押し圧力で当接させた。
【0072】
次に、プロセスカートリッジを23℃、50%RHの環境で6時間放置した後に、前記電子写真装置に装着し、同様の環境にてハーフトーン画像(感光体の回転方向と垂直方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描く画像)を出力した。出力した画像についてスジ画像の評価を行った。ここで、評価の基準は以下の通りである。
ランク1;スジ画像の発生はなし。
ランク2;軽微なスジ状の画像が認められる。
ランク3;一部にスジ状の画像が帯電ローラのピッチで確認できるが、実用上問題の無い画質である。
ランク4;スジ状の画像が目立ち、画質の低下が認められる。
画像評価の結果は、ランク1であり、スジ画像の発生はなかった。
【0073】
〔実施例2〕
導電性ゴム組成物2を用いて、図4(b)に示すように、導電性基体を経由して内側ダイの外周面へ電圧を印加する構造のクロスヘッドダイ2を有する押出成形装置を用いて、導電性ゴムローラを製作した。クロスヘッドダイ2の環状流路は、押出機側内径aがφ50mm、外径Aがφ120mm、口金側内径bがφ50mm、外径Bがφ120mm、長さが100mmである。
【0074】
環状流路への電圧印加は、外側ダイの外周面を接地して、内側ダイの内周面を+100Vとして実施した。
【0075】
口金の内径はφ10.5mm、押出成形温度はシリンダ、クロスヘッドダイ、口金において90℃として、押出機のスクリュー回転数は14r.p.m.とし、φ10.2mmの導電性ゴム円筒体を有する導電性ゴムローラを得た。
【0076】
次いで、得られた導電性ゴムローラを160℃の熱風炉で1時間静置の上、加硫発泡させて、φ13mmの導電性スポンジゴムローラを得た。実施例1と同様に導電性ゴム円筒体の加工を行い、導電性ゴム円筒体を長さが232mmで端部直径11.9mm、中央部12mmのクラウン形状とした。次いで実施例1と同様に紫外線照射を施して、導電性ローラ2を得た。導電性ローラ2の電気抵抗値の周方向におけるむらは3.52で、画像ランクは2で軽微なスジ状の画像が認められた。
【0077】
〔実施例3〕
導電性ゴム組成物1を用いて、図4(c)に示す内側ダイの先端に円柱状マンドレルを該環状流路の中心軸状に前記中心軸と同じ向きに具備するクロスヘッドダイ3を有する押出成形装置を用いて、導電性ゴムローラを製作した。
【0078】
クロスヘッドダイ3の環状流路は、押出機側内径aがφ50mm、外径Aがφ120mm、口金側内径bがφ49mm、外径Bがφ100mm、長さが100mmとした。円柱状マンドレルの外径はφ5mm、長さは20mmとした。
【0079】
環状流路における電圧印加は、外側ダイの外周面を接地して、内側ダイの内周面を−100Vとして実施した。
【0080】
口金の内径はφ11mm、押出成形温度はシリンダ、クロスヘッドダイ、口金において95℃として、押出機のスクリュー回転数は21r.p.m.とし、外径がφ10.8mm、内径がφ4.8mmの導電性ゴムチューブを得た。
【0081】
次いで、得られた導電性ゴムチューブを160℃の熱風炉で1時間静置した。本実施例では導電性ゴムローラの導電性ゴム円筒体の長さが230mmになるように前記導電性ゴム円筒体の両端部を切断して、実施例1と同様の導電性基体を前記ゴムチューブの内周面に嵌合して導電性ゴムローラとした。さらに当該スポンジゴム部を回転砥石で研摩し、導電性ゴム円筒体を端部直径10.2mm、中央部10.5mmのクラウン形状とし、実施例1と同様に紫外線照射を施して、導電性ローラ3を得た。
【0082】
導電性ローラ3の電気抵抗値のむらは5.20であり、画像ランクは3で一部にスジ状の画像が帯電ローラのピッチで確認できるが、実用上問題の無い画質であった。
【0083】
〔実施例4〕
導電性ゴム組成物3を用いて、表10に示す製造条件で実施例1と同様にして導電性ローラ4を得た。評価結果を表10に示す。
【0084】
〔実施例5〕
導電性ゴム組成物4を用いて、表10に示す製造条件で実施例3と同様にして導電性ローラ5を得た。評価結果を表10に示す。
【0085】
〔実施例6〕
導電性ゴム組成物3を用いて、表10に示す製造条件で実施例1と同様にして導電性ローラ6を得た。評価結果を表10に示す。
【0086】
〔実施例7〕
導電性ゴム組成物5を用いて、表10に示す製造条件で実施例3と同様にして導電性ローラ7を得た。評価結果を表10に示す。
【0087】
〔実施例8〕
導電性ゴム組成物6を用いて、表10に示す製造条件で実施例1と同様にして導電性ローラ8を得た。評価結果を表10に示す。
【0088】
〔実施例9〕
導電性ゴム組成物6を用いて、表10に示す製造条件で実施例1と同様にして導電性ローラ9を得た。評価結果を表10に示す。
【0089】
〔実施例10〕
導電性ゴム組成物7を用いて、表10に示す製造条件で実施例1と同様にして導電性ローラ10を得た。評価結果を表10に示す。
【0090】
〔実施例11〕
導電性ゴム組成物8を用いて、表10に示す製造条件で実施例2と同様にして導電性ローラ11を得た。評価結果を表10に示す。
【0091】
〔実施例12〕
導電性ゴム組成物7を用いて、表10に示す製造条件で実施例3と同様にして導電性ローラ12を得た。評価結果を表10に示す。
【0092】
〔実施例13〕
導電性ゴム組成物9を用いて、交流を重畳して電圧を印加した。重畳した交流電圧の振幅は1800Vで、周波数は700Hzとした。それ以外は表10に示す製造条件で実施例3と同様にして導電性ローラ13を得た。評価結果を表10に示す。
【0093】
〔比較例1〕
導電性ゴム組成物9を用いて、環状流路に電圧を印加せずに、表10に示す製造条件で実施例1と同様にして導電性ローラ14を得た。評価結果を表10に示す。
【0094】
〔比較例2〕
導電性ゴム組成物9を用いて、環状流路に電圧を印加せずに、表10に示す製造条件で実施例1と同様にして導電性ローラ15を得た。評価結果を表10に示す。
【0095】
〔比較例3〕
導電性ゴム組成物8を用いて、環状流路に電圧を印加せずに、表10に示す製造条件で実施例3と同様にして導電性ローラ16を得た。評価結果を表10に示す。
【0096】
【表10】

【符号の説明】
【0097】
201‥‥導電性ゴムローラ
202‥‥導電性基体
203‥‥導電性ゴム円筒体
204‥‥ウエルドライン
300‥‥押出機
301‥‥シリンダ
302‥‥スクリュー
303‥‥メッシュ
304‥‥アダプター
310‥‥クロスヘッドダイ
311‥‥導入口
312‥‥内側ダイ
314‥‥貫通孔
315‥‥外側ダイ
317‥‥環状流路
318‥‥口金
319‥‥マンドレル
312‥‥送りローラ
401‥‥内側ダイ外周面
402‥‥外側ダイ内周面
403‥‥電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と、該導電性基体を被覆している導電性ゴムとを有する導電性ゴムローラの製造装置であって、
導電性ゴム組成物を押出すための押出機と、クロスヘッドダイと、導電性基体を該クロスヘッドダイに供給する手段とを有し、
該クロスヘッドダイは、電気的に互いに絶縁された内側ダイおよび外側ダイを有しており、該内側ダイの外周面と該外側ダイの内周面とで構成されている、該押出機から押し出される該導電性ゴム組成物を円筒状に形成する環状流路を有しており、該内側ダイは、該環状流路の中心軸と同じ向きに該導電性基体が装着される貫通孔を有しており、該環状流路は、その出口が該貫通孔に面しており、さらに該内側ダイの外周面および該外側ダイの内周面の間に導電性ゴム組成物を介して電圧を印加するための手段を有していることを特徴とする製造装置。
【請求項2】
導電性ゴムチューブの製造装置であって、導電性ゴム組成物を押出すための押出機と、クロスヘッドダイとを有し、該クロスヘッドダイは、電気的に互いに絶縁された内側ダイおよび外側ダイを有しており、該内側ダイの外周面と該外側ダイの内周面とで構成されている、該押出機から押し出される該導電性ゴム組成物を円筒状に形成する環状流路を有しており、該内側ダイの外周面および該外側ダイの内周面の間に導電性ゴム組成物を介して電圧を印加するための手段を有していることを特徴とする製造装置。
【請求項3】
請求項1に記載の製造装置を用いた、導電性基体と該導電性基体を被覆している導電性弾性体とを有する導電性ゴムローラの製造方法であって、
(1)前記クロスヘッドダイの貫通孔に導電性基体を供給する工程と、
(2)前記押出機から前記クロスヘッドダイに、導電性ゴム組成物を供給し、該貫通孔に供給された該導電性基体の周面を、前記環状流路によって円筒状に形成された該導電性ゴム組成物で被覆する工程とを有し、
該工程(2)は、前記環状流路において、該内側ダイの外周面および該外側ダイの内周面の間に導電性ゴム組成物を介して電圧を印加する工程を含むことを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載の製造装置を用いた、導電性ゴムチューブの製造方法であって、
前記押出機から前記クロスヘッドダイに、導電性ゴム組成物を供給し、前記環状流路によって円筒状に形成する工程を有し、
該工程は、前記環状流路において、該内側ダイの外周面および該外側ダイの内周面の間に導電性ゴム組成物を介して電圧を印加する工程を含むことを特徴とする導電性ゴムチューブの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−148530(P2012−148530A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10532(P2011−10532)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】