説明

押釦スイッチ用部材、キーパネルおよび電子機器

【課題】高い輝度を有する金属光沢感を有すると共に、キートップ又はキートップ側の部材と金属光沢感を付与する層との密着性にも優れた押釦スイッチ用部材を提供すること。
【解決手段】光透過性のキートップ10と、該キートップ10の片面側に設けられた光半透過性の金属光沢シート30と、を少なくとも備え、上記金属光沢シート30が、樹脂製基材と、該樹脂製基材の片面に設けられた光半透過性の金属層と、該金属層を被覆すると共に、上記キートップ10側に接着する接着層と、を有することを特徴とする押釦スイッチ用部材100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押釦スイッチ用部材、キーパネルおよび電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
押釦スイッチ用部材としては、ゴム製や樹脂製のものが広く普及している。また、近年では、押釦スイッチ用部材を用いた製品の高級感を強調すべく、キーパネル面の一部やほぼ全面に金属光沢感を付与することも多い。金属光沢感を有する押釦スイッチ用部材としては、(1)キートップ側に、バインダー樹脂中にアルミニウム箔などの金属光沢を有する鱗片状粒子からなる光輝性顔料を分散させた印刷層を設けたタイプ(特許文献1、2参照)や、(2)キートップ側に、金属蒸着層を含むシートをホットスタンプ方式で熱転写したタイプ(特許文献3,4)などが知られている。
【特許文献1】特開2002−210907号公報
【特許文献2】特開2005−5237号公報
【特許文献3】特開2001−312933号公報
【特許文献4】特開2002−298681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したような押釦スイッチ用部材では、金属光沢感を有する以外にも、夜間の屋外などの暗い場所でLED等のバックライトにより照光した場合や、日中の屋外や照明のある場所での個々の押釦の文字・記号等が視認できることも当然、重要である。そして、このような視認性と、金属光沢感とをバランス良く両立させるためには、金属光沢を発揮させる層の光透過性の制御が重要である。しかし、光輝性顔料を分散させた印刷層を設けたタイプでは、印刷層に分散含有させることができる光輝性顔料の量に限界がある。このため、視認性は確保できても、輝度の高い金属光沢感を得ることが困難である。
【0004】
一方、金属蒸着層を含むシートをホットスタンプ方式で熱転写したタイプでは、シートの熱転写時にキートップの熱変形が発生し、シートとキートップ(又はキートップ側の部材)との間で部分的な密着不良が生じやすい。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、高い輝度を有する金属光沢感を有すると共に、キートップ又はキートップ側の部材と金属光沢感を付与する層との密着性にも優れた押釦スイッチ用部材、並びにこれを用いたキーパネルおよび電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は以下の本発明により達成される。
すなわち、本発明の押釦スイッチ用部材は、光透過性のキートップと、該キートップの片面側に設けられた光半透過性の金属光沢シートと、を少なくとも備え、上記金属光沢シートが、樹脂製基材と、該樹脂製基材の片面に設けられた光半透過性の金属層と、該金属層を被覆すると共に、上記キートップ側に接着する接着層と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の押釦スイッチ用部材の一実施態様は、前記金属層が、前記樹脂製基材表面に金属膜が離散的に形成された不連続金属層であることが好ましい。
【0008】
本発明の押釦スイッチ用部材の他の実施態様は、前記不連続金属層が、SnおよびInから選択される少なくとも一方の金属を含むことが好ましい。
【0009】
本発明の押釦スイッチ用部材の他の実施態様は、キートップが、シート状基材と、該シート状基材の前記キートップの前記金属光沢シートが設けられた側と反対側の面に設けられた2つ以上の突起部と、を有し、上記シート状基材の厚みと、上記突起部の厚みとの総和が50μm〜500μmの範囲内であることが好ましい。
【0010】
本発明の押釦スイッチ用部材の他の実施態様は、上記キートップと上記金属光沢シートとの間、及び、上記金属光沢シートの上記キートップが設けられた側と反対側、から選択される少なくとも一方に、加飾層が設けられることが好ましい。
【0011】
本発明のキーパネルは、本発明の押釦スイッチ用部材を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の電子機器は、本発明のキーパネルを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高い輝度を有する金属光沢感を有すると共に、キートップ又はキートップ側の部材と金属光沢感を付与する層との密着性にも優れた押釦スイッチ用部材、並びにこれを用いたキーパネルおよび電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<押釦スイッチ用部材>
本実施形態の押釦スイッチ用部材は、光透過性のキートップと、該キートップの片面側に設けられた光半透過性の金属光沢シートと、を少なくとも備え、上記金属光沢シートが、樹脂製基材と、該樹脂製基材の片面に設けられた光半透過性の金属層と、該金属層を被覆すると共に、上記キートップ側に接着する接着層と、を有することを特徴とする。
【0015】
本実施形態の押釦スイッチ用部材では、金属光沢感を付与する層が、金属材料のみから構成される金属層である。このため、輝度の高い金属光沢感を得ることができる。また、本実施形態の押釦スイッチ用部材では、ホットスタンプ方式を用いずに金属光沢シートが、キートップ側に接着される。このため、接着時に、キートップが熱変形することが無く、金属光沢シートとキートップ側との間で部分的な密着不良も発生しない。なお、「キートップ側」とは、キートップと金属光沢シートとの間に他の層が設けられない場合は、キートップを意味し、キートップと金属光沢シートとの間に他の層が設けられる場合は、当該他の層を意味する。
【0016】
なお、上述したように本実施形態の押釦スイッチ用部材の作製に際しては、キートップ側と、金属光沢シートとは、非ホットスタンプ方式により接着されるものであれば特に限定されない。しかしながら、ホットスタンプ方式と同程度の温度や圧力(一般的に温度が170〜220℃、圧力が0.2〜0.5MPa)よりも低いレベルで、加熱や加圧しながら接着してもよい。接着時の温度としては、40℃以下が好ましく、加熱装置を用いた加熱作業が不要な常温域(15〜35℃)がより好ましい。40℃を超えると、キートップ側と金属光沢シートとの間の密着性が不十分となる場合がある。また、接着時の圧力としては、ロールを用いて加圧を行う場合は0.05〜0.3MPaが好ましい。接着時の圧力が3.0MPaを超えると、ある程度の加熱も行っている場合は、キートップが熱変形して、結果的にキートップ側と金属光沢シートとの間の密着性が不十分となる場合がある。
【0017】
以下、本実施形態の押釦スイッチ用部材の層構成や、各層の具体的構成、製造方法等についてより詳細に説明する。
【0018】
−層構成−
本実施形態の押釦スイッチ用部材は、少なくともキートップと金属光沢シートとを積層したものであるが、この他にも必要に応じて他の層を設けることができる。押釦スイッチ用部材の色調やデザイン性の向上、また、各キーやキー以外の文字、記号、図形などの表示を目的として、キートップと金属光沢シートとの間、及び、金属光沢シートのキートップが設けられた側と反対側、から選択される少なくとも一方に、加飾層を設けることが特に好ましい。また、押圧子を有する押し子シートを、金属光沢シートのキートップが設けられる側と反対側に設けることができる。なお、金属光沢シートのキートップが設けられる側に加飾層が設けられる場合は、この加飾層表面に押し子シートが配置される。図1は、本実施形態の押釦スイッチ用部材の層構成の一例を示す模式断面図である。図1に示す押釦スイッチ用部材100は、押し子シート50上に、加飾層40、金属光沢シート30、加飾層20、キートップ10がこの順に積層された構成を有する。なお、各層の詳細や具体的な構成例については後述する。
【0019】
−金属光沢シート−
金属光沢シートは、樹脂製基材と、樹脂製基材の片面に設けられた光半透過性の金属層と、金属層を被覆すると共に、キートップ側に接着する接着層と、を有するものである。なお、接着層は、キートップ側に接着(あるいは粘着)する機能および金属層を被覆する機能の2つを有するため、各々の機能に特化した2つの層から構成されるものであってもよい。この場合、金属層上に、金属層を被覆する機能に特化した被覆層と、キートップ側に接着する機能に特化した接着剤層とをこの順に積層することができる。また、この金属光沢シートは、光半透過性(すなわち、半光反射性)であり、また、押釦スイッチ用部材に金属光沢を付与する。ここで、本願明細書において「光半透過性」とは、可視光域の波長(約400〜800nm)の光に対する透過率が0.5%〜60%の範囲であることを意味し、1%〜40%の範囲内が好ましい。透過率が0.5%未満では、夜間の屋外などの暗い場所でLED等のバックライトにより押釦スイッチ用部材を裏面側から照光しても、十分な視認性が確保できない。また、透過率が60%を超える場合には、日中の屋外や照明のある場所での視認性が確保できない。なお、金属光沢シートの厚みとしては、特に限定されないが、押釦スイッチ用部材の薄型化への対応や、金属光沢シート自体の強度確保等の実用上の観点からは、30μm〜100μmが好ましい。
【0020】
樹脂製基材としては、公知の樹脂フィルムが利用できる。樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)などを挙げることができる。樹脂フィルムの厚みとしては特に限定されないが、押釦スイッチ用部材の薄型化への対応や、金属光沢シート自体の強度確保等の観点から5μm〜125μmの範囲内が好ましく、20μm〜75μmの範囲内がより好ましい。
【0021】
接着層としては、単層構成であってもよいが、被覆層と接着剤層とから構成されることが好ましい。ここで、被覆層を構成する材料としては、アクリル系樹脂や、イオン交換樹脂を配合したアクリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、メラミン系樹脂等を用いることができる。これらの材料の中でも、金属光沢シートの作製に際しては光硬化性のアクリル系樹脂及びアクリルウレタン系樹脂を用いることが好適である。この理由は、光硬化性のアクリル系樹脂は、コーティング処理直後に硬化させることが可能である上に、コーティング処理に際して有機溶剤等の溶媒や加熱処理が不要であるため、溶媒や加熱処理に伴う金属層の侵食・劣化を確実に抑制できるためである。なお、必要に応じて、樹脂製基材と金属層との間にベース層として、被覆層と同種の材料を用いてベースコート処理を行ってもよい。これにより樹脂製基材と金属層との密着安定性をより向上させることができる。また接着剤層としては、アクリル系接着剤や、アクリルウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、エポキシ系接着剤、塩化ビニル系接着剤、ウレタン系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、シリコーン系接着剤、ブタジエン系接着剤などを用いることができる。被覆層の厚みは特に限定されないが、金属層の腐食防止の観点からは、0.2μm〜10μmの範囲内が好ましく、0.5μm〜1.5μmの範囲内がより好ましい。また、接着剤層の厚みは特に限定されないが、金属層の腐食防止の観点からは、5μm〜75μmの範囲内が好ましく、10μm〜50μmの範囲内がより好ましい。
【0022】
金属層は、その厚みが3nm〜70nmの範囲内が好ましく、5nm〜50nmの範囲内がより好ましい。厚みが上記範囲外である場合、金属光沢シートを光半透過性とすることが困難となる場合がある。金属層を構成する金属材料としては、特に限定されないが、Al、Sn、In、Pb、Au、Ag、Fe、Pt等の金属やこれらの合金が挙げられる。この金属層は、樹脂製基材表面に、蒸着法、スパッタリング法等の真空成膜法や、メッキ法などの公知の金属膜成膜方法を利用して形成される。
【0023】
なお、金属層は、樹脂製基材表面に金属膜が離散的に形成された不連続金属層であることが特に好ましい。不連続金属層は、樹脂製基材表面に金属膜が島状に離散して多数存在している構造を有している。このため、樹脂製基材表面全面を連続的に被覆する金属膜からなる金属層(連続金属層)と異なり、電気的には絶縁性を有する。これに加えて、雰囲気中の水分による腐食劣化が実質的に起こらない。これは、金属光沢シートの端面から水分が金属層に侵入しても、樹脂製基材の平面に対して、金属膜が離散的に存在している上に、金属層の上下面は接着層(又は被覆層)と樹脂製基材で完全に被覆されているため、金属層の腐食が、端面側から内側へと徐々に進行せず、端面近傍のみに限定されるためである。
【0024】
このため、連続金属層を有する押釦スイッチ用部材と比べて、不連続金属層を有する押釦スイッチ用部材では、以下に示す特徴を有する。すなわち、(1)不連続金属層が絶縁性を有することから電磁波を遮蔽することが無い。このため、押釦スイッチ用部材を用いる電子機器が、外部からの電波を受信したり、あるいは、外部とワイヤレス通信を行う場合に、押釦スイッチ用部材が受信や通信を阻害することが無い。また、(2)押釦スイッチ用部材が高湿環境に晒されたり、長期に渡る使用によっても、金属層の腐食が実質的に起こらないため、金属層の腐食に起因する押釦スイッチ用部材の変色を抑制できる。
【0025】
不連続金属層を樹脂製基材表面に形成する場合、その厚みは、3nm〜50nmの範囲内が好ましく、5nm〜40nmの範囲内がより好ましい。厚みが3nm未満では、金属光沢シートを半透過性とすることが困難となる場合がある。また、厚みが50nmを超える場合は、不連続金属層の形成自体が困難となる場合がある。なお、「不連続金属層の厚み」とは、樹脂製基材表面上の金属膜が存在する部分を、金属膜が存在しない部分にも引き延ばすように平均化して1層の平坦な膜とした場合の厚みを意味する。
【0026】
不連続金属層を構成する金属材料としては、上記に列挙した金属材料の中でも、特にSn(融点:231.9℃)やIn(融点:156.4℃)、又は、これらの合金が好ましい。また、不連続金属層の成膜方法としては、真空蒸着法やスパッタリング法が挙げられる。
【0027】
なお、SnやInは、Al(融点:600℃)などの他の金属と異なり、融点が200℃前後と非常に低く、SnやInを含有する金属層を有するシートを、ホットスタンプ用転写箔と同様に200℃前後の高温で熱転写を行うホットスタンプ方式で熱転写することは極めて困難である。ホットスタンプ時の加熱により、SnやInを含む金属層が軟化又は溶融してしまうためである。このため金属層の膜厚が部分的に変動したり、さらに金属層が不連続金属層である場合には導通してしまう可能性がある。しかしながら、本実施形態の押釦スイッチ用部材の作製に際しては、ホットスタンプを用いないため、SnやInといった低融点の金属材料を用いた金属層を利用しても、上述した問題の発生を確実に防ぐことができる。
【0028】
図2は、本実施形態の押釦スイッチ用部材に用いられる金属光沢シートの一例を示す模式断面図であり、金属層が不連続金属層である場合について示した断面図である。図2に示す金属光沢シート30Uは、樹脂製基材32と、この樹脂製基材32の片面に凸部を形成するように離散的に形成された複数の凸状金属膜33から構成される不連続金属層34Uと、凸状金属膜33及び凸状金属膜33で被覆されていない樹脂製基材32の表面を被覆する被覆層36と、この被覆層36表面に設けられた接着剤層38とから構成される。なお、図2に示す金属光沢シート30Uを、図1に示す押釦スイッチ用部材100の金属光沢シート30として用いた場合、凸状金属膜33の山頂側に、キートップ10が位置することになる。
【0029】
−キートップ−
キートップは光透過性を有する。ここで、「光透過性」とは、本願明細書において可視光域の波長(約400〜800nm)の光に対する透過率が60%〜100%の範囲であることを意味し、80%〜100%の範囲内が好ましい。透過率が、60%未満では、夜間の屋外などの暗い場所でLED等のバックライトにより押釦スイッチ用部材を裏面側から照光しても、十分な視認性が確保できない。
【0030】
キートップの厚みとしては特に限定されない。しかしながら、樹脂の射出成型によりキートップを作製する場合は、厚みの下限値は500μmを超えることが好ましい。厚みが400μm以下では、射出成型法を利用してキートップを作製すること自体が困難となる。また、厚みの上限値は特に限定されない。なお、このような射出成型法を利用して作製されるキートップは、通常、1つのキーに対応した部材からなる。また、キートップの作製に用いられる樹脂材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂やABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂)、PMMA樹脂、PBT樹脂、PA樹脂(ポリアミド樹脂)が挙げられる。
【0031】
一方、押釦スイッチ用部材の薄型化に対応するためには、キートップの厚みは500μm以下であることが好ましく、400μm以下が好ましい。なお、厚みの下限値は、強度確保等の観点から100μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましい。このようなキートップとしては、PET樹脂やポリカーボネート樹脂などの樹脂フィルムからなるシート状基材と、このシート状基材の片面に設けられた2つ以上の突起部とを有するキートップが挙げられる。このタイプのキートップは、シート状基材の片面にUV硬化型樹脂を型転写により成形することで、各キーに対応する突起部を形成する。この場合、シート状基材の厚みと、突起部の厚みとの総和がキートップの厚みに該当する。それゆえ、シート状基材の厚みとしては50μm〜100μmの範囲内が好ましい。また、突起部の厚みは、凹凸の認識性確保の観点から10μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましい。一方、厚みの上限値は、薄型化対応の観点から400μm以下が好ましい。
【0032】
なお、上述したような薄型のキートップは、UV硬化型樹脂を用いているため、UV硬化時の収縮変形が起こりやすい上に、シート状基材も非常に薄い。このため、キートップの突起部が設けられた側と反対側の面(裏面)に凹凸が発生しやすく、平滑性に劣る。更に、加熱された際に(厚みが薄いが故に熱容量が小さく)容易に高温となる。それゆえ、厚みが400μmを超えるような射出成型方式のキートップと比べて、結果的により熱変形を起こしやすい。従って、このようなキートップの裏面側に、特許文献3,4等に開示されるようなホットスタンプ方式により金属蒸着層を含むシートを転写しても、キートップ側とシートとの間で部分的な密着不足が発生し易くなる。また、キートップの裏面側に金属層を蒸着法により形成しても、成膜時にキートップ側が大なり小なり加熱されることによるキートップの熱収縮の発生や、成膜後の金属層とキートップ側との熱収縮率の違いなどにより金属層に割れやシワが発生し易い。従って、この場合も密着性を十分に確保できない。
【0033】
しかしながら、本実施形態の押釦スイッチ用部材は、キートップ側の部材に、ホットスタンプ方式を用いずに、予め金属層が形成された金属光沢シートを貼り合わせるため、上述した密着不良を抑制することができる。
【0034】
−加飾層−
加飾層は、キートップと金属光沢シートとの間、及び、金属光沢シートのキートップが設けられた側と反対側に設けられ、1層または2層以上の印刷層の組み合わせから構成される。加飾層を構成する印刷層としては、押釦スイッチ用部材の表面に表示したい内容に応じて、光透過性(又は光不透過性、遮光性)、色調、文字・記号・図形等の表示の為に平面に対して部分的に設けられるか否か(文字等の部分に対応して印刷層が部分的に抜けているのか、あるいは、文字等の部分にのみ対応して印刷層が存在するのか)が適宜選択され、必要に応じて、2層以上の印刷層が組み合わされる。なお、光不透過性や遮光性の印刷層は、バックライト光や、金属層による外光の光反射を全面的に阻害しないように、部分的に設けられる。なお、「光不透過性」又は「遮光性」とは、本願明細書において可視光域の波長(約400〜800nm)の光に対する透過率が、押釦スイッチ用部材を構成する各層を全て積層した状態で、「光不透過性」又は「遮光性」が要求される領域内において0.5%以下であることを意味する。
【0035】
例えば、バックライト光を遮光すると共に、押釦スイッチ用部材の表面に表示される文字等に対応する部分が抜けるように設けられた印刷層(遮光印刷層)を、金属光沢シートの樹脂製基材側の面に設けることができる。また、押釦スイッチ用部材の表面に表示される文字等に対応するように部分的に設けられた有色の印刷層を、キーパッドと金属光沢シートとの間に配置することができる。なお、この有色の印刷層は、光透過性であっても光不透過性であってもよい。但し、遮光印刷層を設ける場合、文字等に対応する部分が抜けた領域の全て或いは一部に対応するように光透過性の有色の印刷層が配置される。また、押釦スイッチ用部材の略全面を、所定のパステル調の色としたい場合には、光透過性の淡色の印刷層をキーパッドと金属光沢シートとの間に配置することができる。なお、キーパッドと金属光沢シートとの間に複数の印刷層が存在する場合、この光透過性の淡色の印刷層は、一番キートップ側に配置されることが好ましい。また、文字等の表現を目的として、1層以上の印刷層がキーパッドと金属光沢シートとの間に配置される場合、無色透明な印刷層又は淡色の印刷層をキーパッドと金属光沢シートとの間であって、且つ、最も金属光沢シート側に配置することが好ましい。
【0036】
−押釦スイッチ用部材の製造方法−
本実施形態の押釦スイッチ用部材は、例えば、以下のように作製することができる。まず、キートップを準備する。このキートップは、既述したように、射出成型により形成したものでもよいし、シート状基材に突起部をUV硬化型樹脂の型転写により形成したものでもよい。なお、必要に応じて、キートップの裏面側に熱可塑性ウレタンエラストマーやPET樹脂等からなる透明な樹脂シートを設けてもよい。続いて、キートップの裏面側に、加飾層を必要に応じて形成する。加飾層が2以上の印刷層から構成される場合は、これら印刷層を順次積層する。印刷層の形成方法としては、スクリーン印刷、オフセット印刷等の公知の印刷方法が利用できる。
【0037】
次に、キートップの裏面(加飾層が設けられている場合は加飾層表面)に、金属光沢シートを貼り合わせて接着する。この場合の貼り合わせは、ローラを用いて金属光沢シートをラミネートすることで行う。なお、この際の圧力や温度は既述した通りである。
【0038】
次に、この金属光沢シートの表面に、必要に応じて加飾層を形成する。この場合も加飾層が2以上の印刷層から構成される場合は、これら印刷層を順次積層する。印刷層の形成方法としては、スクリーン印刷、オフセット印刷等の公知の印刷方法が利用できる。最後に、金属光沢シートの表面(加飾層が積層されている場合は加飾層表面)に、押し子シートを貼り合わせる。この貼り合わせに際しては、接着剤を用いることもできるが、両面テープを用いることが好ましい。
【0039】
−押釦スイッチ用部材の具体例−
次に、本実施形態の押釦スイッチ用部材のより具体的な構成例を、図面を用いて説明する。図3および図4は、本実施形態の押釦スイッチ用部材の他の例を示す模式断面図である。なお、図3中に示す押釦スイッチ用部材110は、図4中に示す押釦スイッチ用部材110と同一のものである。但し、図3に示す押釦スイッチ用部材110については各層の厚み方向の配置関係の理解を容易とするために、部分的に層と層との間を分離した形で示してある。図3および図4に示す押釦スイッチ用部材110は、図1に示す押釦スイッチ用部材100と同様に、押し子シート50上に、加飾層40A、金属光沢シート30、加飾層20A、キートップ10がこの順に積層された構成を有する。
【0040】
ここで、キートップ10は、樹脂フィルムからなるシート状基材12と、このシート状基材12の片面に設けられた複数の突起部14と、シート状基材12の突起部14が設けられた側と反対側に設けられた樹脂シート16とから構成される。突起部14は、シート状基材12の片面にUV硬化型樹脂を型転写により成形される。なお、いずれの部材も光透過性の樹脂材料が用いられる。また、樹脂シート16としては、例えばPET樹脂シートを用いることができる。
【0041】
加飾層20Aは、キートップ10の樹脂シート16側から順に、文字表示の為に設けられた光不透過性有色印刷層23と、文字表示の為に設けられた光透過性有色印刷層22と、淡色印刷層21とがこの順に積層された構成を有する。なお、光不透過性有色印刷層23および光透過性有色印刷層22は、押釦スイッチ用部材110の平面方向に対して、互いに重複しないように部分的に設けられると共に、いずれもが各キーに対応する突起部14が存在する領域内に設けられている。
【0042】
金属光沢シート30は、樹脂製基材32と、金属層34と、被覆層36と、接着剤層38とがこの順に積層されたものであり、例えば、図2に示すように金属層34が不連続金属層であってもよい。この金属光沢シート30は、接着剤層38を介して加飾層20Aと接着される。
【0043】
加飾層40Aは、金属光沢シート30の樹脂製基材32表面に光半透過性の白色印刷層42と、遮光性の遮光印刷層41とが、この順に積層されたものである。これら2つの印刷層41,42は、文字表示の為に押釦スイッチ用部材110の平面方向に対して部分的に設けられた印刷層22,23が存在する領域に対応する部分が、抜けるように設けられている。
【0044】
押し子シート50は、突起部14に対応するように片面にUV硬化型樹脂からなる押圧子54が設けられた樹脂シート56から構成される。樹脂シート56としては、例えばPET樹脂を用いることができる。この押し子シート50は、両面テープ60により、樹脂シート56が設けられた側の面を介して加飾層40Aと接着される。
【0045】
図5および図6は、本実施形態の押釦スイッチ用部材の他の例を示す模式断面図である。なお、図5中に示す押釦スイッチ用部材120は、図6中に示す押釦スイッチ用部材120と同一のものである。但し、図5に示す押釦スイッチ用部材120については各層の厚み方向の配置関係の理解を容易とするために、部分的に層と層との間を分離した形で示してある。図5および図6に示す押釦スイッチ用部材120は、図3および図4に示す押釦スイッチ用部材110と基本的に同様の層構成を有するが、図3および図4に示す押釦スイッチ用部材110に対して、加飾層20および加飾層40を構成する各印刷層の層構成を変更している点で異なっている。
【0046】
ここで加飾層20Bは、キートップ10の樹脂シート16側から順に、光不透過性黒色印刷層27と、淡色印刷層26と、無色透明印刷層25とがこの順に積層された構成を有する。なお、光不透過性黒色印刷層27は、押釦スイッチ用部材110の平面方向に対して、各キーに対応する突起部14が存在する領域内の一部が部分的に抜けるように設けられている。また、淡色印刷層26は、押釦スイッチ用部材110の平面方向に対して、光不透過性黒色印刷層27が部分的に抜けるように設けられている領域を含むように不透過性黒色印刷層27と部分的に重複しながら設けられている。
【0047】
また、加飾層40Bは、金属光沢シート30の樹脂製基材32表面に形成された遮光性の遮光印刷層43から構成される。この遮光印刷層43は、押釦スイッチ用部材110の平面方向に対して、不透過性黒色印刷層27が部分的に抜けるように設けられている領域、又は、淡色印刷層26が存在する領域に対応する部分が抜けるように設けられている。
【0048】
<キーパネル、電子機器>
本実施形態のキーパネルは、少なくとも本実施形態の押釦スイッチ用部材を備えたものである。ここで、本願明細書において、「キーパネル」とは操作スイッチを有する操作盤のことである。キーパネルは、スイッチ操作による操作対象となる電子機器本体と一体に設けられたものであってもよいし、スイッチ操作による操作対象となる電子機器本体と物理的に分離して設けられたものであってもよい。なお、後者の場合は、キーパネルと電子機器とが、有線接続されるタイプであってもよいし、キーパネルと電子機器とが赤外線通信などによって信号のやり取りが可能なワイヤレスタイプであってもよい。代表的な例としては、エアーコンディショナ、インターホン、テレビ等のリモートコントローラ、デスクトップタイプのパソコンのキーボードなどに用いられる操作盤が挙げられる。また、キーパネルを備えた電子機器(キーパネルが電子機器本体と一体化した電子機器)としては、電子辞書、携帯電話、電卓、ノートパソコン、パーソナルディジタルアシスタンス(PDA)、MP3プレーヤ等の音楽再生機能を持つ携帯型プレーヤなどが挙げられる。
【0049】
本実施形態の押釦スイッチ用部材をキーパネルとして利用する場合、押釦スイッチ用部材の裏面(キートップの金属光沢シートが設けられた側の面)又は側面に光源が更に設けられる。ここで、「光源」とは、裏面側を照射するために自らが発光する光源を意味する。なお、光源が押釦スイッチ用部材の側面側に配置される場合は、押釦スイッチ用部材の裏面側に、導光板のように光源から照射される光を裏面側に導く部材を、押釦スイッチ用部材と略平行に配置し、この部材の側面側に光源を配置する。ここで自らが発光する光源としては、LEDやエレクトロルミネッセンスシート(ELシート)等が利用できる。
【0050】
本実施形態の電子機器は、上述したキーパネルを電子機器本体と一体的に有するものであればその用途は特に限定されないが、携帯型の電子機器;例えば、携帯電話や、電子辞書、PDA、ノートパソコンなどであることが好ましく、特に携帯電話であることが最も好ましい。
【実施例】
【0051】
以下、本実施形態の押釦スイッチ用部材について、実施例を挙げてより詳細に説明する。
【0052】
<キートップAの準備>
キートップ形成用の金型とポリカーボネート系樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック社製、H3000R)とを用いて、射出成型によりシート状基材と複数の突起部とが一体的に成形されたキートップAを作製した。このキートップAの厚みは530μmであった。
【0053】
<キートップBの準備>
キートップの突起部に対応する凹部が設けられた金型の表面に、アクリルウレタン系の紫外線硬化樹脂を塗布した。その後、その上面をシート状基材に相当する透明PETシート(東レ社製、ルミラー)により、紫外線硬化樹脂とPETシートとの間に気泡が入り込まないようにローラで押し出しながら被覆した。続いて、PETシートが設けられた面側から紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させた。最後に、金型から剥離することにより、透明PETシート上に複数のアクリルウレタン樹脂製の突起部が形成されたキートップBを得た。このキートップBは、平面方向の形状は、キートップAと同様である。また、このキートップBの厚みは400μm(シート状基材の厚み50μm+突起部の厚み350μm)であった。
【0054】
<押し子シートの準備>
押し子シートは、金型の種類を押し子シート用のものに変え、透明PETシートとしてた東レ社製のルミラー(厚み50μm)を用いた以外は、キートップBと同様にして作製した。なお、押圧子は、高さ500μm、直径1500μmで、押釦スイッチ用部材を作製した際に、各々の突起部に対応する位置に設けた。
【0055】
<金属色シートAの準備>
透明PETシート(東レ社製、ルミラー、厚み25μm)の片面に、膜厚が10nmとなるように真空蒸着法によってSn層を形成した。続いて、Sn層表面にUV硬化型のアクリル系コート剤を厚みが1μmとなるようにリバースロールコートにより塗布し、被覆層を形成した。その後、被覆層表面にアクリルウレタン系粘着剤を厚みが25μmとなるようにラミネート法により塗布し、接着剤層を形成した。これにより金属色シートAを得た。なお、この金属色シートAの断面を透過型電子顕微鏡で観察したところ、Sn層が図2に示されるように不連続構造を有していることが確認された。
【0056】
<金属色シートBの準備>
透明PETシート(東レ社製、ルミラー、厚み25μm)の片面に、膜厚が30nmとなるようにスパッタリング法によってIn層を形成した。続いて、金属色シートAと同様にして被覆層、接着剤層を順次形成した。これにより金属色シートBを得た。なお、この金属色シートBの断面を透過型電子顕微鏡で観察したところ、In層が図2に示されるように不連続構造を有していることが確認された。
【0057】
<金属色シートCの準備>
透明PETシート(東レ社製、ルミラー、厚み25μm)の片面に、膜厚が30nmとなるようにスパッタリング法によってAl層を形成した。続いて、金属色シートAと同様にして被覆層、接着剤層を順次形成した。これにより金属色シートCを得た。なお、この金属色シートCの断面を透過型電子顕微鏡で観察したところ、Al層は図2に示されるような不連続構造ではなく、シートの平面方向において厚みが一定の1つの連続する層であることが確認された。
【0058】
<押釦スイッチ用部材の作製>
(実施例1)
図3に示すものと実質的に同様の層構成を有する押釦スイッチ用部材を以下の手順で作成した。まず、キートップ10としてキートップBを用い、この裏面側に、加飾層20Aとして、光不透過性有色印刷層23、光透過性有色印刷層22および淡色印刷層21を、この順に、スクリーン印刷および熱風乾燥(80℃、5分(光不透過性有色印刷層23、光透過性有色印刷層22の場合)又は30分(淡色印刷層21の場合))を順次繰り返すことにより積層形成した。なお、光不透過性有色印刷層23の形成には黒色インキを用い、光透過性有色印刷層22および淡色印刷層21の形成には複数の有色インキとメジウムの混合品を用いた。なお、用いたインキはいずれも2液硬化型のポリエステル系インキ(セイコーアドバンス社製、GAP新シリーズ)である。
【0059】
続いて、金属光沢シート30として金属色シートAを用い、加飾層20Aと金属色シートAの粘着剤層38とを精度よく位置決めした後、両者の間に気泡が混入しないようにローラを用いたラミネート法により、常温(約22℃前後)で、圧力0.1MPaにて圧着した。
【0060】
次に、金属色シートAの表面に加飾層40として、白色印刷層42と、遮光印刷層41とを、この順に、スクリーン印刷および熱風乾燥(60℃、5分(白色印刷層42の場合)又は30分(遮光印刷層41の場合))順次繰り返すことにより積層形成した。なお、白色印刷層42の形成には白色インキを用い、遮光印刷層41の形成には黒色インキを用いた。なお、用いたインキはいずれも2液硬化型のポリエステル系インキ(セイコーアドバンス社製、GAP新シリーズ)である。
【0061】
最後に、押し子シート50を、両面テープにより加飾層40Aの表面に接着した。これ
により押釦スイッチ用部材を得た。
【0062】
(実施例2)
実施例1の押釦スイッチ用部材の作製に際して、キートップ10として、キートップAの代わりにキートップBを用いた以外は実施例1と同様にして押釦スイッチ用部材を得た。
【0063】
(実施例3)
実施例1の押釦スイッチ用部材の作製に際して、金属色シート30として、金属色シートAの代わりに金属色シートBを用いた以外は実施例1と同様にして押釦スイッチ用部材を得た。
【0064】
(実施例4)
実施例1の押釦スイッチ用部材の作製に際して、金属色シート30として、金属色シートAの代わりに金属色シートCを用いた以外は実施例1と同様にして押釦スイッチ用部材を得た。
【0065】
(比較例1)
キートップAを突起部を下向きにして、突起部に対応する凹部を備えたキートップ固定用治具に、キートップAのシート状基材部分が平坦になるように固定した。続いて、キートップAのシート状基材部分の表面に、実施例1で形成した加飾層20Aと同様の加飾層(第1の加飾層)を実施例1と同様にして形成した。続いて、この加飾層表面にキャリアフィルムとAl金属層とからなるAl金属転写箔シート(Al金属層の厚み100nm(連続層))を、キャリアフィルム側が上面となるように重ねた。この状態で、弾性ゴム製のスタンプのスタンプ面をキャリアフィルムに対して、表面温度200℃で3秒間圧着することによりAl金属層を加飾層表面に転写した。
【0066】
その後、転写されたAl金属層表面に、加飾層(第2の加飾層)を形成した。この加飾層は、白色印刷層、遮光印刷層および透明印刷層から構成される。ここで、キートップの突起部に対する白色印刷層、遮光印刷層の位置関係は、それぞれ図3中の符号42および符号41で示される層と同じとした。また、透明印刷層は、白色印刷層および遮光印刷層の開口部(図3中の符号42および符号41で示される層の開口部に相当)を埋め込むように形成した。これら各層は、スクリーン印刷および熱風乾燥(60℃、5分(白色印刷層の場合)、30分(遮光印刷層の場合)又は30分(透明印刷層の場合))順次繰り返すことにより積層形成した。なお、白色印刷層、遮光印刷層および透明印刷層の形成には、CAV(セイコーアドバンス社製)を用いた。
【0067】
その後、シート状基材部分表面に第1の加飾層、Al金属層および第2の加飾層がこの順に積層され、シート状基材部分で複数の突起部が一体的に形成された部材を、各々の突起部毎に分離独立するように刃治具で切断することで、片面に第1の加飾層、Al金属層および第2の加飾層がこの順に積層された個々のキートップを得た。
【0068】
次に、これら個々のキートップの第2の加飾層側の面を、厚み50μmの熱可塑性ポリウレタンシート(シーダム社製、DUS601)の片面にキートップを設ける位置に対応させてアクリル系両面テープ(日立化成ポリマー社製、ハイボン)が貼りつけられた領域に貼り合わせて接着した。そして最後に熱可塑性ポリウレタンシートのもう片方の面に押し子シートを接着することで押釦スイッチ用部材を得た。
【0069】
(比較例2)
比較例1の押釦スイッチ用部材の作製に際して、キートップ10として、キートップAの代わりにキートップBを用いた以外は比較例1と同様にして押釦スイッチ用部材を得た。
【0070】
(比較例3)
キートップAの代わりにキートップBを用いた以外は同様にして比較例1と同様にして第1の加飾層を形成した。続いて、第1の加飾層表面に、スクリーン印刷によりミラーインク(帝国インキ製造社製、MIR−9100)を印刷して80℃で30分間乾燥させた。なお、このミラーインクは、Alフレーク粉が配合されたインクである。
【0071】
続いて、ミラーインクからなる層の表面に、第2の加飾層を形成した。この第2の加飾層は、印刷材料としてMIB(帝国インキ製造社製)を用いた以外は、比較例1の第2の加飾層と同様の層構成を有するものである。その後は、比較例1と同様に各々の突起部毎に分離独立するように刃治具で切断して個々のキートップを作製し、これを熱可塑性ポリウレタンシートの片面に貼り付けると共にもう片方の面に押し子シートを接着することで押釦スイッチ用部材を得た。
【0072】
<評価>
得られた各実施例および比較例の押釦スイッチ用部材については、密着性、外観、耐湿性および電磁波遮蔽性について評価した。結果を以下の表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
なお、表1中に示す密着性、外観、耐湿性および電磁波遮蔽性の評価方法および評価基準は以下の通りである。
【0075】
−密着性−
密着性は、各実施例および比較例の金属層を形成した直後に、金属層を剥き出しにした状態で、JIS K5600−5−6(塗料のクロスカット法)に基づいて評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:分類0,1
○:分類2
△:分類3
×:分類4,5
【0076】
−外観−
外観は、100個のサンプルについて表面を目視観察した際の外観不良(金属層の割れ、波打ち、ムラ)の有無や程度について評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:外観不良が3個未満
○:外観不良が3個以上10個未満
△:外観不良が10個以上20個未満
×:外観不良が20個以上
【0077】
−耐湿性−
耐湿性は、押釦スイッチ用部材を、高温高湿環境(60℃、90RH%)下に1月間放置し、放置前の押釦スイッチ用部材をリファレンスとして、放置の押釦スイッチ用部材表面の変色度合を目視により評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:放置前後で全く変色が観察されない。
○:端面近傍に部分的にではあるが、若干の変色が観察される。
△:端面の全周囲に渡って、幅1,2mm前後の領域で変色の発生が観察される。
×:端面近傍のみならず、押釦スイッチ用部材のパネル中央付近にまで変色の発生が確認された。
【0078】
−電磁波遮蔽性−
電磁波遮蔽性は、各実施例および比較例の金属層を形成した直後に、金属層を剥き出しにした状態で、表面抵抗値を測定することにより評価した。なお、測定にはデジタルマルチメーターR8340(アドバンテスト社製)を用いた。評価基準は以下の通りである。
◎:表面抵抗が10Ω/cm以上
○:表面抵抗が100Ω/cm以上10Ω/cm未満
△:表面抵抗が30Ω/cm以上100Ω/cm未満
×:表面抵抗が30Ω/cm未満
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本実施形態の押釦スイッチ用部材の層構成の一例を示す模式断面図である。
【図2】本実施形態の押釦スイッチ用部材に用いられる金属光沢シートの一例を示す模式断面図である。
【図3】本実施形態の押釦スイッチ用部材の他の例を示す模式断面図である。
【図4】図3に示す押釦スイッチ用部材について、層間を分離していない完成品の状態を示す模式断面図である。
【図5】本実施形態の押釦スイッチ用部材の他の例を示す模式断面図である。
【図6】図5に示す押釦スイッチ用部材について、層間を分離していない完成品の状態を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0080】
10 キートップ
12 シート状基材
14 突起部
16 樹脂シート
20、20A、20B 加飾層
21 淡色印刷層
22 光透過性有色印刷層
23 光不透過性有色印刷層
25 無色透明印刷層
26 淡色印刷層
27 光不透過性印刷層
30、30U 金属光沢シート
32 樹脂製基材
33 凸状金属膜
34 金属層
34U 不連続金属層
36 被覆層
38 接着剤層
40、40A、40B 加飾層
41 遮光印刷層
42 白色印刷層
43 遮光印刷層
50 押し子シート
54 押圧子
56 樹脂シート
60 両面テープ
100、110、120 押釦スイッチ用部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性のキートップと、
該キートップの片面側に設けられた光半透過性の金属光沢シートと、を少なくとも備え、
上記金属光沢シートが、
樹脂製基材と、
該樹脂製基材の片面に設けられた光半透過性の金属層と、
該金属層を被覆すると共に、上記キートップ側に接着する接着層と、を有することを特徴とする押釦スイッチ用部材。
【請求項2】
前記金属層が、前記樹脂製基材表面に金属膜が離散的に形成された不連続金属層であることを特徴とする請求項1に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項3】
前記不連続金属層が、SnおよびInから選択される少なくとも一方の金属を含むことを特徴とする請求項2に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項4】
キートップが、シート状基材と、該シート状基材の前記キートップの前記金属光沢シートが設けられた側と反対側の面に設けられた2つ以上の突起部と、を有し、
上記シート状基材の厚みと、上記突起部の厚みとの総和が50μm〜500μmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項5】
上記キートップと上記金属光沢シートとの間、及び、上記金属光沢シートの上記キートップが設けられた側と反対側、から選択される少なくとも一方に、加飾層が設けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材を備えたことを特徴とするキーパネル。
【請求項7】
請求項6に記載のキーパネルを備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−146849(P2010−146849A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322855(P2008−322855)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】