説明

担持メタロセン触媒

アイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーの製造における担持メタロセン触媒組成物を使用する方法。この組成物は、10−40ミクロンの平均粒子サイズ、1.3−1.6ml/gの細孔容積、200−400m/gの表面積を有する粒子状シリカ担体上に担持されたメタロセン成分を含む。アルキルアルモキサン共触媒成分は担体上に組み込まれる。このアイソ特異性メタロセンは、式:B(CpR)(FlR’)MQ(1)または式:B’(Cp’R’R’)(Fl’)M’Q’(2)により特徴付けられる。式CpおよびCp’中で置換シクロペンタジエニル基FlおよびFl’はフルオレニル基であり、BおよびB’は構造的架橋である。Rは2および7位の置換基であり、RおよびR’は架橋に対して遠位の置換基であり、RおよびRは架橋に対して近位である。MおよびM’は遷移金属であり、Q’はハロゲンまたはC−Cアルキル基であり、ならびにn’は0−4の整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーを製造するための触媒および方法と、特にアルモキサン処理されたシリカ担体上に担持された担持架橋シクロペンタジエニル−フルオレニルメタロセン、およびアイソ特異性(isospecific)エチレン−プロピレンコポリマーの重合におけるこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロペンタジエニル−フルオレニルをベースとするメタロセン触媒は、エチレン、プロピレン、高級オレフィンまたは他のエチレン型不飽和モノマーなどのオレフィンモノマーの単独重合または共重合を含む、重合において有効な触媒である。このようなメタロセンは、通常、架橋シクロペンタジエニルおよびフルオレニル基により特徴付けられるメタロセン配位子構造体を有する。例はイソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドである。このシクロペンタジエニル基またはフルオレニル基またはこの両方は、触媒の構造と、最終的には製造されるポリマーの特性を改変する置換基をシクロペンタジエニル環またはフルオレニル基中に含めることにより変成可能である。このように、ポリエチレン、アタクチックまたはアイソタクチックもしくはシンジオタクチックなど立体特異性であり得るポリプロピレン、およびエチレン−プロピレンコポリマーなどのエチレン−高級アルファオレフィンコポリマーなどのオレフィンポリマーが種々の重合条件下でならびに種々の重合触媒を用いて製造可能である。
【0003】
置換もしくは非置換であり得るフルオレンにより置換された、もしくは非置換であり得る6,6−ジメチルフルベンの反応により、架橋シクロペンタジエニルフルオレニル配位子構造体をベースとするメタロセン触媒を作製して、架橋イソプロピリデンシクロペンタジエニルフルオレニル配位子構造体を製造することができる。翻って、この配位子をジルコニウムテトラクロリドなどの遷移金属ハライドと反応させて、架橋ジルコニウムジクロリド化合物が製造される。
【0004】
フルオレニル配位子は、数字9が架橋頭の炭素原子を表示する、フルオレニル配位子に対する付番スキームにより特徴付けられる。置換基の受け入れに利用可能な残りの炭素原子は、フルオレニル配位子の一方のC6環に対しては数1−4により、ならびにフルオレニル配位子の他方のC6環に対しては数5−8により表示される。6,6−ジメチルフルベンにより製造されるシクロペンタジエニル基は、1が架橋頭の炭素原子を表示し、数2および5が近位の炭素原子を、3および4が遠位の原子を表示する、付番スキームにより特徴付けられ得る。
【0005】
バッチ形反応器または連続反応器であり得る重合反応器中で種々の条件下でメタロセン触媒を使用して、アルファオレフィンホモポリマーもしくはコポリマーが製造され得る。連続重合反応器は、通常、ループ形反応器の形状であり、反応器の中にモノマー流が連続的に導入され、ポリマー製品が連続的に引き出される。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンまたはエチレン−プロピレンコポリマーなどのポリマーは、モノマー流を適切な触媒系と共に連続ループ形反応器の中に導入して、所望のオレフィンホモポリマーもしくはコポリマーを製造することを含む。生成するポリマーはループ形反応器から「フラフ(fluff)」の形で引き出され、次に加工されて、ポリマーがペレットまたは顆粒としての粒子状の形の原材料として製造される。プロピレンなどのC3+アルファオレフィン、1−ブテン、4−メチル−l−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンまたはスチレンまたはビニルクロリドなどの置換エチレン型不飽和モノマーの場合には、生成するポリマー製品は、立体規則性、例えば、アイソタクチックポリプロピレンまたはシンジオタクチックポリプロピレンの形により特徴付けられ得る。
【0006】
アイソタクチックポリプロピレンの構造は、連続するモノマー単位の三級炭素原子に結合するメチル基がポリマーの主鎖を通る仮想平面の同一の側に存在するポリプロピレンとして記述可能である。例えば、メチル基はすべてこの面の上または下にある。フィッシャー投影式を用いて、アイソタクチックポリプロピレンの立体化学的シーケンスは次の通り記述される。
【0007】
【化1】

【0008】
上記の式において、各垂直の線分はポリマー骨格の同一の側のメチル基を表示する。この構造を記述するもう一つの方法はNMRの使用によるものである。上記に示すアイソタクチックペンタッドに対するBoveyのNMR命名は...mmmm...である。各「m」は「メソ」ダイアッド、すなわちポリマー鎖の平面の同一の側のメチル基の連続する対を表す。当業界で既知のように、この鎖の構造のいかなる偏倚または反転によっても、ポリマーのアイソチック性および結晶性の程度が低下する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にしたがえば、担持メタロセン触媒組成物と、アイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーの製造においてこのような触媒を用いる方法が提供される。本発明の担持触媒組成物は、10−40ミクロンの平均粒子サイズ、1.3−1.6ml/gの細孔容積、200−400m/gの範囲内の表面積を有する粒子状シリカ担体上に担持されたメタロセン成分を含む。アルキルアルモキサン共触媒成分は、シリカに対するアルモキサンの重量比が0.6−0.8の範囲内となるように前記シリカ担体上に組み込まれる。アイソ特異性メタロセン触媒成分は、前記粒子状シリカ担体上にシリカおよびアルキルアルモキサンの少なくとも0.5重量パーセントの量で担持され、式
B(CpR)(FlR’)MQ (1)
(式中、
Cpは置換シクロペンタジエニル基であり、
Flは2および7位で置換されたフルオレニル基であり、
Bは前記触媒に立体剛直性を賦与するCpとFlの間の構造的架橋であり、
は、架橋に対して遠位の位置にあり、式XR(式中、Xは炭素またはケイ素であり、Rは同一であるか、もしくは異なり、少なくとも1つのRが水素でないという前提で、水素または1−20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される)のかさ高な基を含むシクロペンタジエニル基上の置換基であり、
は、架橋に対して近位であり、遠位の置換基に対して非隣接で配置され、ならびに式YR#(式中、Yはケイ素または炭素であり、各R#は同一であるか、もしくは異なり、水素またはヒドロカルビル基、アルコキシ基、チオアルキル基またはアミノ、1から7個の炭素原子を含有するアルキル基である)であり、置換基Rよりも低かさ高なシクロペンタジエニル環上の置換基であり、
各R’は、同一であるか、もしくは異なり、4−20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、置換Rよりも高かさ高であり、一方のR’がフルオレニル基上2位で置換され、他方のR’がフルオレニル基上7位で置換され、
Mはチタン、ジルコニウム、ハフニウム、およびバナジウムからなる群から選択される遷移金属であり、
QはハロゲンまたはC−Cアルキル基であり、ならびに
nは0−4の整数である)または式
B’(Cp’R’R’)(Fl’)M’Q’(2)
(式中、
Cp’は置換シクロペンタジエニル基であり、
Fl’はフルオレニル基であり、
B’は前記触媒に立体剛直性を賦与するCp’とFl’の間の構造的架橋であり、
R’は、架橋に対して遠位の位置にあり、式XR(式中、Xは炭素またはケイ素であり、Rは同一であるか、もしくは異なり、少なくとも1つのRが水素でないという前提で、水素または1−20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される)のかさ高な基を含むシクロペンタジエニル基上の置換基であり、
R’は、架橋に対して近位であり、遠位の置換基に対して非隣接で配置され、ならびに式YR#(式中、Yはケイ素または炭素であり、各R#は同一であるか、もしくは異なり、水素またはヒドロカルビル基、アルコキシ基、チオアルキル基またはアミノアルキル、または1から7個の炭素原子を含有するアルキル基である)であり、置換基R’よりも低かさ高であるシクロペンタジエニル環上の置換基であり、
M’はチタン、ジルコニウム、ハフニウム、およびバナジウムからなる群から選択される遷移金属であり、
Q’はハロゲンまたはC−Cアルキル基であり、
n’は0−4の整数である)
により特徴付けられる。
前記アルキルアルモキサン成分および前記メタロセン成分は、1−1000の範囲のAl/Mモル比をもたらすような相対的な量で存在する。
【0010】
本発明の更なる局面においては、アイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーを製造するための方法が提供される。本発明の実施においては、上述の式(1)または式(2)により特徴付けられるアイソ特異性メタロセン触媒成分を含む担持メタロセン触媒成分が提供される。このメタロセン触媒成分は、アルキルアルモキサン触媒成分と、10−40ミクロンの平均粒子サイズ、200−400m/gの範囲内の表面積、および1.3−1.6ml/グラムの細孔容積により特徴付けられる粒子状シリカ担体を更に含む。この触媒は、重合反応域中でエチレン−プロピレン混合物中で0.01−20モル%のエチレンの範囲内の量でプロピレンとエチレンの混合物と接触される。この反応域は、前記プロピレンのアイソ特異的重合をもたらすのに有効な温度および圧力条件下で前記エチレンの存在において触媒1グラム当り少なくとも1000グラムのポリマーの生成量で運転される。150℃以下の融解温度を有するアイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーが反応域から回収される。本発明の特定の態様においては、このアルキルアルモキサン共触媒はメチルアルモキサンであり、これは始めにシリカ1グラム当り0.6−0.8グラムの範囲内のメチルアルモキサンの量で前記シリカ担体の中に組み込まれ、続いて前記アイソ特異性メタロセン触媒成分が組み込まれる。本発明の特定の態様においては、このシリカ担体は33ミクロンの平均粒子サイズを有する。
【0011】
本発明の更なる態様においては、アイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーを製造するための前出の方法は、上述の式(2)により特徴付けられるアイソ特異性メタロセン触媒成分を用いて行われる。このメタロセン触媒成分とアルキルアルモキサン共触媒成分は、上述の粒子サイズ、表面積、細孔容積、および細孔直径特性により特徴付けられる粒子状シリカ担体上に担持される。本発明の更なる局面においては、メタロセン成分の置換基R’は、フェニル基または置換フェニル基であるか、もしくはC(CH、C(CHPh、CPh、およびSi(CHからなる群から選択される。特に、置換基R’はtert−ブチル基または置換もしくは非置換フェニル基であり、置換基R’はメチル基またはエチル基である。アイソ特異性メタロセン触媒成分の架橋Bは、1から20個の炭素原子を有するアルキリデン基、ジアルキルゲルマニウムもしくはケイ素もしくはシロキサン、アルキルホスフィンもしくはアミンからなる群から選択される。特に、架橋Bはイソプロピレン基であり、Mはジルコニウムまたはチタンである。
【0012】
本発明の更にもう一つの態様においては、上述の式(1)により特徴付けられるアイソ特異性メタロセン触媒成分を含む担持メタロセン触媒により行われる、アイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーを製造するための方法が提供される。担持メタロセン触媒は、アルキルアルモキサン共触媒成分と粒子状シリカ担体を更に含む。メタロセン触媒成分、アルキルアルモキサン共触媒成分、および粒子状シリカ担体を組み込んだ触媒は、重合反応域中でエチレン−プロピレン混合物中0.01−20モルパーセントのエチレンの範囲内の量でのプロピレンとエチレンの混合物と接触される。前記反応域は、前記プロピレンのアイソタクチック重合をもたらすのに有効な温度および圧力条件下で前記エチレンの存在において触媒1グラム当り少なくとも1000グラムのポリマーの生成量で運転されて、150℃以下の融解温度を有するアイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーが製造される。一つの態様においては、このコポリマーは、20グラム/10分以下のメルトフローレートを有する。場合によっては、この重合法は予備重合相を含むことができる。
【0013】
本発明の更に特定の態様においては、アイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーは、120℃以下の融解温度と、10グラム/10分以下のメルトフローレートを有する。このエチレンは、10重量%エチレン以下のエチレン含量を有するアイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーをもたらす量で反応域に供給される。特に、このエチレン−プロピレンコポリマーは、エチレン含量が2−7重量%の間にある場合には、前記エチレン−プロピレンコポリマーは、10グラム/10分以下のエチレン含量による増分的変動、特に5グラム/10分以下の増分的な変動を有するメルトフローレートを呈する。このように、エチレン−プロピレンコポリマーのエチレン含量が全ポリマーの2から7重量%まで変動するにしたがって、メルトフローインデックス(MI)は、10グラム/10分より上の増分的量、特に5グラム/10分より上の増分で変動しない。
【0014】
本発明のなお更なる局面においては、反応域から回収されるエチレン−プロピレンコポリマーは、2.0−2.9重量%の範囲内のエチレン含量を有する対応するエチレン−プロピレンコポリマーに対するメルトフローレートよりも小さい、3.0−7.0重量%の範囲のエチレン含量に対するメルトフローレートを有する。
【0015】
本発明のもう一つの態様においては、式
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、
は4から20個の炭素原子を含有するかさ高なヒドロカルビル基であり、Rはメチル基またはエチル基であり、R’は4から20個の炭素原子を含有するかさ高なヒドロカルビル基であり、Mはチタン、ジルコニウム、ハフニウム、およびバナジウムからなる群から選択される遷移金属であり、QはハロゲンまたはC−Cアルキル基である)により特徴付けられる架橋シクロペンタジエニルフルオレニル配位子を有するアイソ特異性メタロセン触媒成分を含む担持メタロセン触媒成分の使用を含んでなる、アイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーを製造する方法が提供される。式(3)中ではBはシクロペンタジエニルとフルオレニル基の間に延びる構造的架橋であり、ならびにエチレン基であるか、もしくは式
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、bはC−Cアルキル基またはフェニル基である)
により特徴付けられる。この触媒は、アルキルアルモキサン共触媒成分と粒子状シリカ担体を更に含む。この触媒は、重合反応域中でエチレン−プロピレン混合物中で0.01−20モルパーセントのエチレンの範囲内の量でプロピレンとエチレンの混合物と接触される。この反応域は、エチレンの存在においてプロピレンのアイソタクチック重合をもたらすのに有効な温度および圧力条件下で触媒1グラム当り少なくとも1000グラムのポリマーの活性で運転されて、20グラム/10分以下のメルトフローレートと、120℃以下の融解温度を有するアイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーが製造される。
【0020】
本発明の更なる局面においては、式(3)により特徴付けられるアイソ特異性メタロセン触媒成分は、メチル基である置換基Rと、三級ブチル基である置換基Rにより更に特徴付けられる。置換基R'もまた三級ブチル基でもあり得る。本発明のこの態様においては、架橋置換基bはフェニル基であり、特に架橋Bはジフェニルメチレン基である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】触媒C1もしくはC2と識別される触媒による共重合に対して、横軸上の水素濃度と縦軸上の触媒活性およびポリマーフラフメルトフローの間の関係を示すグラフ表示である。
【図2】横軸上のエチレン注入速度の関数として縦軸上の触媒活性およびポリマーフラフメルトフローを示す、対応するグラフ表示である。
【図3】横軸上の重合時間の関数として縦軸上の触媒活性(kg/PP/g/時)およびポリマーフラフメルトフローレートを示す、対応するグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、しかるべき担持された架橋シクロペンタジエニル−フルオレニルメタロセンと、アイソタクチックポリマーの増殖(propagation)における触媒としてのこれらの使用を含む。用語「架橋メタロセン」は、この明細書中で使用される時シクロペンタジエニル基とフルオレニル基が構造的架橋と一緒になって架橋して、立体剛直性構造をもたらし、3、4もしくは5族の遷移金属または金属ハライド、金属アルキル、金属アルコキシ、金属アリールオキシまたは金属アルコキシハライドアリールなどによりもたらされ得る中心金属イオンに配位した遷移金属配位化合物を表す。配位子構造体のシクロペンタジエニルおよびフルオレニル基は、中心の配位金属原子の面の上下に配向する。シクロペンタジエニル−フルオレニル配位子構造体を相互接続する構造的架橋は、メタロセン錯体に立体剛直性を付与して、遷移金属原子との配位軸の周りでのシクロペンタジエニルおよびフルオレニル基の回転を妨害する。
【0023】
シクロペンタジエニル−フルオレニル配位子は、上下のシクロペンタジエニルおよびフルオレニル基が前述のように化学架橋Bにより相互接続されている構造式
【0024】
【化4】

【0025】
により特徴付けられ得る。
【0026】
式(5)は、シクロペンタジエニル基の架橋頭の炭素原子が1と付番され、フルオレニル基の架橋頭の炭素原子が9と付番される、この明細書中で使用される付番スキームを表示する。フルオレニル基の共役炭素原子は、近位の炭素原子が1および8と付番され、遠位の炭素原子が3、4、5、および6と付番される順番で付番される。付番順序は上記の式(5)に示される。式(5)の垂直な破線により示されるように2個の架橋頭の炭素原子と構造的架橋を通って延びる対称線によりこのような配位子構造体の対称性に言及することは慣用的に行われることである。本発明は、シクロペンタジエニル基に非対称的な立体配置を付与し、フルオレニル基に対称的な立体配置を付与する形で置換されるシクロペンタジエニル−フルオレニルメタロセン構造体を使用する。この立体配置においては、シクロペンタジエニル基は、破線の一方の側では遠位の位置において比較的かさ高な基により置換され、破線の他方の側では非隣接の近位の位置において低かさ高な基により置換される。フルオレニル基は、非置換であるか、もしくは非対称的なシクロペンタジエニル基との組み合わせで2および7位において置換されて、対称的な構造体をもたらす。
【0027】
フルオレニル基上の2、7位の置換基または比較的かさ高なシクロペンタジエニル基上の3位の置換基は、三級ブチル基および置換もしくは非置換可能であるフェニル基を含む。2、7位でフルオレニル配位子に結合する置換フェニル基またはシクロペンタジエニル基上で3位(式1中のRまたは式2中のR’)における置換フェニル基は、2,6−ジメチルフェニルおよび2,6−トリフルオロメチルフェニル基を含む。フェニル基上の他の2、6置換基はエチルおよびイソプロピル基を含む。シクロペンタジエニル基上の5位(架橋に対して近位である)における置換基は、シクロペンタジエニル基上の3位における置換基よりも低かさ高である、前述のヒドロカルビル、アルコキシ、チオアルコキシまたはアミノアルキル基を含むことができる。このような置換基は、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、フラン、およびチオフェンなどの環状構造体を含むことができる。
【0028】
本発明のメタロセンは、原子周期律表IA、IIA、およびIIIB族の金属の有機金属化合物により一般的に特徴付け可能な好適な掃去(scavenging)または重合共触媒と一緒に使用可能である。実際的には、有機アルミニウム化合物が重合反応における共触媒として通常使用される。一部の具体的な例は、トリエチルアルミニウム(TEAL)、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムヒドリドなどを含む。TEALなどの掃去剤に加えて、ファウリング防止剤などの他の添加物が本発明の実施において使用され得る。例えば、BASF Corporationから入手し得るpluronic L121などのファウリング防止剤が触媒系に添加され得る。このような掃去剤およびファウリング防止剤の使用は、Tharappelらへの欧州特許出願EPl316566A3で開示されている。
【0029】
シリカ担体に組み込まれる担持共触媒成分はアルキルアルモキサンである。このような化合物は、Rが概ね1から5個の炭素原子を有するアルキル基である、式
【0030】
【化5】

【0031】
の繰り返し単位を有するオリゴマー形もしくはポリマー形化合物を含む。アルモキサンは当業界で周知であり、他の合成経路が当業者には既知であるが、一般に有機アルミニウム化合物と水とを反応させることにより製造される。アルモキサンは、例えば米国特許第4,404,344号で開示されているように、線状ポリマーであるか、もしくは環状ポリマーであり得る。このように、アルモキサンは、交互のアルミニウム原子と酸素原子の鎖を含有し、アルミニウムがアルキル基などの置換基を担持する、オリゴマー形もしくはポリマー形アルミニウムオキシ化合物である。線状および環状アルモキサンの厳密な構造は知られていないが、環状アルモキサンに対しては一般式−(Al(R)−O−)−、および線状化合物に対してはRAl−O−(Al(R)−O)−AlRにより表されると一般に考えられている。式中、Rは独立に各存在においてC−C10ヒドロカルビル、特にアルキル、またはハライドであり、mは1から約50の範囲の、通常少なくとも約4の整数である。アルモキサンはかご型もしくはクラスター型化合物の立体構造でも存在する。アルモキサンは、通常、水とアルキル基に加えてハライドもしくはアルコキシド基を含有し得る、アルミニウムアルキルの反応生成物である。例えばトリメチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムなどのいくつかの異なるアルミニウムアルキル化合物と水とを反応することによって、いわゆる変成もしくは混合アルモキサンが得られる。特定のアルモキサンは、少量のイソブチルなどの他の高級アルキル基により変成されているメチルアルモキサンを含む、メチルアルモキサンである。アルモキサンは少量ないしは実質的な量の出発アルミニウムアルキル化合物を含有し得る。アルモキサンを製造する非加水分解的な手段も当分野で既知である。
【0032】
本発明の実施において使用されるシリカ担体は、メタロセン成分の性状に依って変わり得る。メタロセン成分が式2にしたがった3,5−置換シクロペンタジエニル基との組み合わせで非置換フルオレニル基を組み込む場合には、シリカ担体は、200−400m/グラムの表面積との組み合わせで20−35ミクロンの中間粒子サイズを有する。シリカ担体は、1.3−1.6ml/グラムの範囲内の細孔容積により更に特徴付けされる。この明細書中で担体Slと表示される具体的な担体は、30−35ミクロンの粒子サイズ、250−350m/gの表面積、および1.4ml/gの細孔容積のパラメーターを有する。このように特徴付けられるシリカ担体は、式1のメタロセン成分により図示されているように、2および7位において置換されたフルオレニル基を組み込んだメタロセン成分と共に本発明の実施においても使用され得る。しかしながら、本発明のこの態様においては他のシリカ担体も本発明の実施において使用され得る。このようなシリカ担体は、前述のシリカ担体に加えて、Gauthierらへの米国特許第6,777,366号、Gauthierらへの第6,777,367号、およびGauthierらへの第6,855,783号で述べられているタイプのシリカ担体を含む。このようなシリカ担体は、概ね、10−100ミクロンの範囲内の粒子サイズ、200−900m/グラムの範囲内の表面積、および0.5−3.5ml/グラムの範囲内の細孔容積を有することを特徴とする。このようなシリカ担体は、20−60ミクロンの範囲内の平均粒子サイズと、100−400Åの範囲内の平均有効細孔直径を有し、米国特許第6,777,366号で述べられているようにシリカ粒子の内部細孔容積内に実質的な量のアルモキサン共触媒を収容する担体材料を含む。本発明のこの局面のための使用に好適な他のシリカ担体は、10−60ミクロンの、特に10−15ミクロンの平均粒子サイズを有し、米国特許第6,777,367号に述べられているように主としてこれらの外部表面上にアルモキサン触媒を組み込んだシリカ担体を含む。本発明のこの局面の実施において使用され得る更なるシリケート担体は、米国特許第6,855,783号に述べられているように、10−50ミクロンの平均粒子サイズと、0.9−2.1ml/グラムの範囲内の細孔容積と共に200−900m/gの範囲内の表面積を有することを特徴とする。
【0033】
本発明のこの局面において使用され得る例示のシリカ担体は、次表に示すように米国特許第6,855,783号に開示されている。表中でこれらは、粒子サイズ、表面積、および細孔容積の特徴的な性質と一緒に担体A、B、C、D、E、およびFと表示されている。
【0034】
【表1】

【0035】
表I中に示されているシリカは商用源から入手可能なものである。このように、シリカ担体AおよびCは、Asahi Glass Companyから名称H−121およびH−122として入手可能なものである。シリカBは、Fuji Silysia Chemical,Ltd.から名称P−10として入手可能なものである。シリカBおよびCに対しては、MAO(メチルアルモキサン)とメタロセンは担体内に優先的に担持されるが、担体Aの場合にはMAOとメタロセンは主として表面担持される。担体A、B、およびCは大体球形の構造のものである。担体DおよびEは、PQ Corporationから名称M.S.−3030およびM.S.−3060として市販されているシリカから配合可能なものである。シリカ担体Fは球形の構造のものであり、Asahi Glass Companyから名称H−202として入手可能なものである。
【0036】
本発明の実施において使用され得るシリカ担体の更なる説明としては、参照により全体の開示がこの明細書中に組み込まれている、前述の米国特許第6,777,366号;第6,777,367号、および第6,855,783号を参照のこと。
【0037】
本発明の担持されたメタロセンは、メチルアルモキサンを始めにシリカ担体上に組み込み、続いてアイソ特異性メタロセン触媒成分を組み込むことにより形成される。アルキルアルモキサン、特にメチルアルモキサンは、シリカ1グラム当り0.4−1グラム、特にシリカ担体1グラム当り0.6−0.8グラムのメチルアルモキサンをもたらすような量でシリカ担体上に組み込まれる。
【実施例】
【0038】
本発明に関する実験においては、式(1)および(2)により特徴付けられるメタロセン成分を例示するメタロセン成分を有する2つの触媒系を用いて、エチレン−プロピレン共重合試験を行った。両方の場合において、シリカ担体1グラム当り約0.7グラムのメチルアルモキサンを与えるようにメチルアルモキサンにより前処理したシリカ担体である、前出の担体S−1上にメタロセンを担持した。この明細書中で触媒C−1と表示した1つの触媒系においては、メタロセン成分はジフェニルメチレン(2−メチル−4−tert−ブチル−シクロペンタジエニル−2,7−ジ−tert−ブチル−1−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドであった。第2の触媒系の触媒C−2においては、触媒C−1の場合と同様にメチルアルモキサンにより前処理された同一のシリカ担体S−1上で式2により図示される成分を例示するメタロセン触媒成分を使用した。この場合、メタロセン触媒はジフェニルメチレン(2−メチル−4−tert−ブチル−シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドであった。両方の場合において、メタロセン成分をメチルアルモキサン処理のシリカ担体上に装填して、約175のジルコニウムに対するアルミニウムのモル比を得た。この実験においては、前述の米国特許第6,855,783号に述べられている触媒作製手順に概ね対応する同一の手順を用いて、担持メタロセン触媒成分C−1およびC−2を形成した。2つの触媒系C1およびC2に対して、この試験の共重合を水素濃度の関数としてのポリマー収率、プロピレン転化率、生産性、および触媒活性の形で表2に要約する。
【0039】
表2に示すように、触媒C1およびC2の両方に対して共重合活性は水素濃度と共に増加した。水素を同伴することによって、0〜60ppmの範囲内で触媒C1の活性は約10倍変わる。C2に対してはこの増加は約3倍である。更には、同一の共重合条件(55℃およびバルク)下で167mg/分(積分すると1時間で10gとなる)のエチレン注入速度で触媒C2はC1よりも少なくとも2倍活性である。活性差は、0から60ppmの初期水素濃度の全範囲にわたって変わる。水素が系中に存在しない場合には、C2はC1の10倍活性であり、水素濃度がほぼ30ppmである場合には差は約2まで縮小する。すなわち3.73対7.16kg/g/時である。その後、水素濃度が増加するにしたがって、この差異は再度拡大する。
【0040】
水素濃度が25ppmよりも低い場合には、触媒C1は、35g/10分のメルトフローに対応する、触媒C2よりも低いコポリマーメルトフローをもたらした。C1はメルトフローに対して強い水素応答を示すので、表2および図1に示すように、水素濃度が25ppm以上である場合にはC1により高メルトフローのランダムコポリマーが得られる。この明細書中に示されるメルトフローレートは、ASTM D1238にしたがって230℃および2.16キログラムで測定されるメルトフローインデックス(MI)に対するものである。
【0041】
【表2】

【0042】
表3に示すように、両方の触媒共重合性能に及ぼすエチレンの影響は顕著である。触媒C1およびC2の両方に対して、共重合活性は、表3に示すように10ppmの同一の初期水素濃度下でエチレン注入速度と共に増加した。エチレンコモノマーの存在によって、335mg/分(系中に1時間で20gを導入)のエチレン注入速度と共にC1活性は約2倍半(すなわち1.33対3.29kg/g/時)変わる。C2に対しても殆ど同一の活性差(すなわち、3.79対8.37kg/g/時)が観察された。更には、触媒C2は、同一の共重合条件(55℃およびバルク)下で約2ないし3倍活性である。全エチレン試験範囲(1時間の注入で1〜25g)に対して、活性差は殆ど同一のままである。触媒C1は、図2に示すように、C2よりも低いコポリマーメルトフローを与える。事実、コポリマーメルトフローは最初エチレン濃度と共に減少し、濃度が15g以上となるにしたがって増加し始める。全体として、コポリマーメルトフローは7g/10分未満であり、ホモポリマー(エントリー1)の19g/10分よりもずっと小さい。他方、触媒C2に対するすべてのコポリマーのメルトフローは、ホモポリマーに対する4.7g/10分の値よりも高い。コモノマー濃度が増加するにしたがって、コポリマーメルトフローは4.7から41g/10分まで増加する。C2は、図2に示すようにC1よりもコポリマーメルトフローに対するずっと強いエチレン応答を示す。
【0043】
【表3】

【0044】
表4は、触媒C1およびC2の両方に対するプロピレン共重合のエチレンとの動力学を示す。試験条件は55℃であり、10ppmの水素濃度下での333mg/分(積分すると1時間で20gとなる)のエチレン注入速度のバルクである。ベンチ観察によって、C2およびC1触媒の両方に対して共重合活性は、反応時間と共に増加するということが示される。試験の後段において、両方の触媒の活性は、初期の期間(<30分)よりも約2倍高い。更には、触媒C2はC1よりも約2ないし3倍高活性である。試験の全時間に対して、活性差は殆ど同一のままである。
【0045】
触媒C1は、図3に示すようにC2よりも低いコポリマーメルトフローを与える。事実、コポリマーメルトフローは最初エチレン濃度と共に減少し、時間が進むにしたがって増加し始める。C2は約20分においてずっと早く開始し、C1は重合の後期(45分)で開始する。全体として、C1に対するコポリマーメルトフローは10g/10分未満であり、C2に対するコポリマーメルトフローは16g/10分よりも高い。C2は、C1よりもコポリマーメルトフローに対する強いエチレン応答を示す。
【0046】
【表4】

【0047】
前出の実験から、触媒C2の単独重合(表3のエントリー1)が触媒C1による単独重合と比較して同一実験室条件下で低い樹脂メルトフローと高い触媒活性を与えるということを観察することができる。エチレン−プロピレン共重合の場合には、触媒C1と触媒C2系の両方に対して、エチレンは活性促進剤として作用する。触媒C1に対しては増強は約3倍であるが、触媒C2による共重合活性を単独重合活性の8倍の高さまで増強することができる。エチレンは、C2タイプの系においては連鎖移動剤として作用するが、C1系においてはそうではない。触媒C2により製造されるコポリマーは、同一の水素条件下で製造される対応するホモポリマーよりも高いメルトフローを与える。それゆえ、触媒C1は低メルトフローコポリマーをもたらす。水素は、触媒C1系を用いるプロピレンとエチレンとの共重合および単独重合工程においては「ゆっくりとした」連鎖移動剤として作用するように見える。対応するホモポリマーに対して低メルトフロー成分が得られる。触媒C2の活性は約2から4倍高いが、同一の共重合条件触媒下で、C1はC2よりも低メルトフロー樹脂(30g/10分未満)をもたらす。
【0048】
本発明で製造されるポリマーを広い範囲の製品の製造において使用することができる。このように、このコポリマーを使用して、フィルム、テープ、および繊維を製造し得る。更には、これらを使用して、射出成形またはブロー成形用途により成形製品を製造し得る。製造される樹脂は、在来のZ−N触媒系と比較して、例えば官能的な品質に対しては有利である、望ましくは低キシレン可溶分レベルを呈する。更には、低い値から高い値までの極めて広い範囲のMF値を生成する能力は、これらの触媒およびこのように製造される樹脂のもう一つの重要な利点である。
【0049】
本発明の特定の態様を述べたが、当業者にはこれらの改変が示唆され得るということは理解されるであろうし、本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲内に入るすべてのこのような改変の範囲にわたるように意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)式
B(CpR)(FlR’)MQ(1)
(式中、
Cpは置換シクロペンタジエニル基であり、
Flは2および7位で置換されたフルオレニル基であり、
Bは前記触媒に立体剛直性を賦与するCpとFlの間の構造的架橋であり、
は、架橋に対して遠位の位置にあり、式XR(式中、Xは炭素またはケイ素であり、Rは同一であるか、もしくは異なり、少なくとも1つのRが水素でないという前提で、水素または1−20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される)のかさ高な基を含むシクロペンタジエニル基上の置換基であり、
は、架橋に対して近位であり、遠位の置換基に対して非隣接で配置され、ならびに式YR#(式中、Yはケイ素または炭素であり、各R#は同一であるか、もしくは異なり、水素または1から7個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基、アルコキシ基、チオアルキル基またはアミノ、アルキル基である)であり、置換基Rよりも低かさ高なシクロペンタジエニル環上の置換基であり、
各R’は、同一であるか、もしくは異なり、4−20個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であり、置換Rよりも高かさ高であり、一方のR’がフルオレニル基上2位で置換され、他方のR’がフルオレニル基上7位で置換され、
Mはチタン、ジルコニウム、ハフニウム、およびバナジウムからなる群から選択される遷移金属であり、
QはハロゲンまたはC−Cアルキル基であり、ならびに
nは0−4の整数である)
または式
B’(Cp’R’R’)(Fl’)M’Q’ (2)
(式中、
Cp’は置換シクロペンタジエニル基であり、
Fl’はフルオレニル基であり、
B’は前記触媒に立体剛直性を賦与するCp’とFl’の間の構造的架橋であり、
R’は、架橋に対して遠位の位置にあり、式XR(式中、Xは炭素またはケイ素であり、Rは同一であるか、もしくは異なり、少なくとも1つのRが水素でないという前提で、水素または1−20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される)のかさ高な基を含むシクロペンタジエニル基上の置換基であり、
R’は、架橋に対して近位であり、遠位の置換基に対して非隣接で配置され、ならびに式YR#(式中、Yはケイ素または炭素であり、各R#は同一であるか、もしくは異なり、水素または1から7個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基、アルコキシ基、チオアルキル基またはアミノ、アルキル基である)であり、置換基R’よりも低かさ高であるシクロペンタジエニル環上の置換基であり、
M’はチタン、ジルコニウム、ハフニウム、およびバナジウムからなる群から選択される遷移金属であり、
Q’はハロゲンまたはC−Cアルキル基であり、
n’は0−4の整数である)
のアイソ特異性メタロセン触媒成分;
(ii)アルキルアルモキサン共触媒成分、および
(iii)20−40ミクロンの粒子サイズ、200−400m/グラムの表面積、および1.3−1.6ml/グラムの範囲内の細孔容積により特徴付けられる粒子状シリカ担体
を含む担持メタロセン触媒を準備すること;
(b)重合反応域中で前記触媒を、前記エチレン−プロピレン混合物中0.01−20モルパーセントのエチレンの範囲内の量でのプロピレンとエチレンの混合物と接触すること;および
(c)前記プロピレンのアイソ特異性重合をもたらすのに有効な温度および圧力条件下で前記エチレンの存在において触媒1グラム当り少なくとも1000グラムのポリマーの生成量で前記反応域を運転して、150℃以下の融解温度を有するアイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーを製造すること
を含んでなる、アイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーを製造するための方法。
【請求項2】
前記アイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーが20グラム/10分以下のメルトフローレートを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルキルアルモキサン共触媒成分がメチルアルモキサンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記メチルアルモキサンが始めにシリカ担体1グラム当り0.6−0.8グラムの範囲内のメチルアルモキサン量で前記シリカ担体上に組み込まれ、続いて前記アイソ特異性メタロセン触媒成分が組み込まれる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記シリカ担体が30−35ミクロンの平均粒子サイズを有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
(a)(i)式
B’(Cp’R’R’)(Fl’)M’Q’(2)
(式中、
Cp’は置換シクロペンタジエニル基であり、
Fl’はフルオレニル基であり、
B’は前記触媒に立体剛直性を賦与するCp’とFl’の間の構造的架橋であり、
R’は、架橋に対して遠位の位置にあり、式XR(式中、Xは炭素またはケイ素であり、Rは同一であるか、もしくは異なり、少なくとも1つのRが水素でないという前提で、水素または1−20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される)のかさ高な基を含むシクロペンタジエニル基上の置換基であり、
R’は、架橋に対して近位であり、遠位の置換基に対して非隣接で配置され、ならびに式YR#(式中、Yはケイ素または炭素であり、各R#は同一であるか、もしくは異なり、水素または1から7個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基、アルコキシ基、チオアルキル基またはアミノ、アルキル基である)であり、置換基R’よりも低かさ高であるシクロペンタジエニル環上の置換基であり、
M’はチタン、ジルコニウム、ハフニウム、およびバナジウムからなる群から選択される遷移金属であり、
Q’はハロゲンまたはC−Cアルキル基であり、ならびに
n’は0−4の整数である)
のアイソ特異性メタロセン触媒成分、
(ii)アルキルアルモキサン共触媒成分、および
(iii)20−35ミクロンの粒子サイズ、200−400m/グラムの表面積、1.3−1.6ml/グラムの範囲内の細孔容積、および200−240Åの範囲内の細孔直径により特徴付けられる粒子状シリカ担体
を含む担持メタロセン触媒を準備すること;
(b)重合反応域中で前記触媒を前記エチレン−プロピレン混合物中0.01−20モルパーセントのエチレンの範囲内の量でのプロピレンとエチレンの混合物と接触すること;および
(c)前記プロピレンのアイソ特異性重合をもたらすのに有効な温度および圧力条件下で前記エチレンの存在において触媒1グラム当り少なくとも1000グラムのポリマーの生成量で前記反応域を運転して、150℃以下の融解温度を有するアイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーを製造すること
を含んでなる、アイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーを製造するための方法。
【請求項7】
前記アイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーが80グラム/10分以下のメルトフローレートを有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記メタロセン成分のR’置換基がフェニル基また置換フェニル基であるか、もしくはC(CH、C(CHPh、CPh、およびSi(CHからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記メタロセン成分の置換基R’aがtert−ブチル基または置換もしくは非置換フェニル基であり、置換基R’がメチル基またはエチル基である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記メタロセン成分の架橋Bが1から20個の炭素原子を有するアルキリデン基、ジアルキルゲルマニウムもしくはケイ素もしくはシロキサン、アルキルホスフィンもしくはアミンからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
Bがイソプロピリデン基である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
Mがジルコニウムまたはチタンである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記シリカ担体が30−35ミクロンの範囲内の粒子サイズと、250−350m/グラムの範囲内の表面積を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
(a)(i)式
B(CpR)(FlR’)MQ(1)
(式中、
Cpは置換シクロペンタジエニル基であり、
Flは2および7位で置換されたフルオレニル基であり、
Bは前記触媒に立体剛直性を賦与するCpとFlの間の構造的架橋であり、
は、架橋に対して遠位の位置にあり、式XR(式中、Xは炭素またはケイ素であり、Rは同一であるか、もしくは異なり、少なくとも1つのRが水素でないという前提で、水素または1−20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される)のかさ高な基を含むシクロペンタジエニル基上の置換基であり、
は、架橋に対して近位であり、遠位の置換基に対して非隣接で配置され、ならびに式YR#(式中、Yはケイ素または炭素であり、各R#は同一であるか、もしくは異なり、水素または1から7個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基、アルコキシ基、チオアルキル基またはアミノ、アルキル基である)であり、置換基Rよりも低かさ高なシクロペンタジエニル環上の置換基であり、
各R’は、同一であるか、もしくは異なり、4−20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、置換Rよりも高かさ高であり、一方のR’がフルオレニル基上2位で置換され、他方のR’がフルオレニル基上7位で置換され、
Mはチタン、ジルコニウム、ハフニウム、およびバナジウムからなる群から選択される遷移金属であり、
QはハロゲンまたはC−Cアルキル基であり、
nは0−4の整数である)
のアイソ特異性メタロセン触媒成分)
(ii)アルキルアルモキサン共触媒成分、および
(iii)粒子状シリカ担体
を含む担持メタロセン触媒を準備すること;
(b)重合反応域中で前記触媒を前記エチレン−プロピレン混合物中0.01−20モルパーセントのエチレンの範囲内の量でのプロピレンとエチレンの混合物と接触すること;および
(c)前記プロピレンのアイソ特異性重合をもたらすのに有効な温度および圧力条件下で前記エチレンの存在において触媒1グラム当り少なくとも1000グラムのポリマーの生成量で前記反応域を運転して、150℃以下の融解温度を有するアイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーを製造すること
を含んでなる、アイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーを製造するための方法。
【請求項15】
前記アイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーが80グラム/10分以下のメルトフローレートを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーが20グラム/10分以下のメルトフローレートを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記アイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーが120℃以下の融解温度を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記アイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーが10グラム/10分以下のメルトフローレートを有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
エチレンが、10重量パーセントエチレン以下のエチレン含量を有するアイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーを製造する量で前記反応域に供給される、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記エチレン含量が2−7重量パーセントの間にある場合、前記エチレン−プロピレンコポリマーが10グラム/10分以下のエチレン含量による増分的変動を有するメルトフローレートを呈する、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記エチレン含量が2−7重量パーセントの間にある場合、前記エチレン−プロピレンコポリマーが5グラム/10分以下のエチレン含量による増分的変動を有するメルトフローレートを呈する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記エチレン−プロピレンコポリマーが2.0−2.9重量%の範囲内のエチレン含量を有する対応するエチレン−プロピレンコポリマーに対するメルトフローレートよりも小さい、3.0−7.0重量%の範囲のエチレン含量に対するメルトフローレートを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記メタロセン成分の置換基Rがtert−ブチル基または置換もしくは非置換フェニル基である、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記メタロセン成分のR置換基がフェニル基また置換フェニル基であるか、もしくはC(CH、C(CHPh、CPh、およびSi(CHからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記メタロセン成分のR置換基がメチル基またはエチル基である、請求項14に記載の方法。
【請求項26】
前記メタロセン成分の架橋Bが1から20個の炭素原子を有するアルキリデン基、ジアルキルゲルマニウムもしくはケイ素もしくはシロキサン、アルキルホスフィンもしくはアミンからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項27】
Bがイソプロピリデン基である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
Mがジルコニウムまたはチタンである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
Qが独立にハロゲンまたはメチル基である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
(a)(i)式
【化1】

(式中、
は4から20個の炭素原子を含有するかさ高なヒドロカルビル基であり、
はメチル基またはエチル基であり、
R’は4から20個の炭素原子を含有するかさ高なヒドロカルビル基であり、
Mはチタン、ジルコニウム、ハフニウム、およびバナジウムからなる群から選択される遷移金属であり、
QはハロゲンまたはC−Cヒドロカルビル基であり、
nは0−4の整数であり、
Bはシクロペンタジエニルとフルオレニル基の間に延びる構造的架橋であり、ならびにエチレン基であるか、もしくは式
【化2】

(式中、bはC−Cアルキル基またはフェニル基である)
により特徴付けられるものである)
により特徴付けられる架橋シクロペンタジエニルフルオレニル配位子を含むアイソ特異性メタロセン触媒成分、
(ii)アルキルアルモキサン共触媒成分、および
(iii)粒子状シリカ担体
を含む担持メタロセン触媒を準備すること;
(b)重合反応域中で前記触媒を前記エチレン−プロピレン混合物中0.01−20モルパーセントのエチレンの範囲内の量でのプロピレンとエチレンの混合物と接触すること;および
(c)前記プロピレンのアイソ特異性重合をもたらすのに有効な温度および圧力条件下で前記エチレンの存在において触媒1グラム当り少なくとも1000グラムのポリマーの活性で前記反応域を運転して、80グラム/10分以下のメルトフローレートと、120℃以下の融解温度を有するアイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーを製造すること
を含んでなる、アイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーを製造するための方法。
【請求項31】
前記アイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーが20グラム/10分以下のメルトフローレートを有する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記アイソタクチックエチレン−プロピレンコポリマーが10グラム/10分未満のメルトフローレートと、2−7パーセントの範囲のエチレン含量を呈する、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記エチレン含量が2−7重量パーセントの間にある場合、前記エチレン−プロピレンコポリマーが5グラム/10分以下のエチレン含量による増分的変動を有するメルトフローレートを呈する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記エチレン−プロピレンコポリマーが2.0−2.9重量%の範囲内のエチレン含量を有する対応するエチレン−プロピレンコポリマーに対するメルトフローレートよりも小さい、3.0−7.0重量%の範囲のエチレン含量に対するメルトフローレートを有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
がメチル基である、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
が三級ブチル基である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
R’が三級ブチル基である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
bがフェニル基である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
Bがジフェニルメチレン基である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記メタロセン触媒成分がジフェニルメチレン(2−メチル−4−tert−ブチル−シクロペンタジエニル−2,7−ジ−tert−ブチル−1−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドである、請求項30に記載の方法。
【請求項41】
a.20−40ミクロンの平均粒子サイズ、1.3−1.6ml/gの範囲内の細孔容積、および200−400m/gの表面積を有する粒子状シリカ担体;
b.0.6−0.8の範囲内のシリカに対するアルモキサンの重量比をもたらすように前記シリカ担体上に組み込まれるアルキルアルモキサン共触媒成分;
c.前記シリカおよび前記アルキルアルモキサンの少なくとも0.3重量パーセントの量で前記粒子状シリカ担体上に担持され、ならびに式
B(CpR)(FlR’)MQ(1)
(式中、
Cpは置換シクロペンタジエニル基であり、
Flは2および7位で置換されたフルオレニル基であり、
Bは前記触媒に立体剛直性を賦与するCpとFlの間の構造的架橋であり、
は、架橋に対して遠位の位置にあり、式XR(式中、Xは炭素またはケイ素であり、Rは同一であるか、もしくは異なり、少なくとも1つのRが水素でないという前提で、水素または1−20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される)のかさ高な基を含むシクロペンタジエニル基上の置換基であり、
は、架橋に対して近位であり、遠位の置換基に対して非隣接で配置され、ならびに式YR#(式中、Yはケイ素または炭素であり、各R#は同一であるか、もしくは異なり、水素または1から7個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基、アルコキシ基、チオアルキル基またはアミノ、アルキル基である)であり、置換基Rよりも低かさ高なシクロペンタジエニル環上の置換基であり、
各R’は、同一であるか、もしくは異なり、4−20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、置換Rよりも高かさ高であり、一方のR’がフルオレニル基上2位で置換され、他方のR’がフルオレニル基上7位で置換され、
Mはチタン、ジルコニウム、ハフニウム、およびバナジウムからなる群から選択される遷移金属であり、
QはハロゲンまたはC−Cアルキル基であり、ならびに
nは0−4の整数である)
または式
B’(Cp’R’R’)(Fl’)M’Q’(2)
(式中、
Cp’は置換シクロペンタジエニル基であり、
Fl’はフルオレニル基であり、
B’は前記触媒に立体剛直性を賦与するCp’とFl’の間の構造的架橋であり、
R’は、架橋に対して遠位の位置にあり、式XR(式中、Xは炭素またはケイ素であり、Rは同一であるか、もしくは異なり、少なくとも1つのRが水素でないという前提で、水素または1−20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される)のかさ高な基を含むシクロペンタジエニル基上の置換基であり、
R’は、架橋に対して近位であり、遠位の置換基に対して非隣接で配置され、ならびに式YR#(式中、Yはケイ素または炭素であり、各R#は同一であるか、もしくは異なり、水素または1から7個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基、アルコキシ基、チオアルキル基またはアミノ、アルキル基である)であり、置換基R’よりも低かさ高であるシクロペンタジエニル環上の置換基であり、
M’はチタン、ジルコニウム、ハフニウム、およびバナジウムからなる群から選択される遷移金属であり、
Q’はハロゲンまたはC−Cアルキル基であり、ならびに
n’は0−4の整数である)
により特徴付けられるアイソ特異性メタロセン触媒成分;
d.1−1000の範囲のAl/Mモル比をもたらすような相対的な量で存在する前記アルキルアルモキサン成分および前記メタロセン成分
を含む、オレフィンの重合において有用な担持メタロセン触媒組成物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−528126(P2010−528126A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508535(P2010−508535)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/063513
【国際公開番号】WO2008/144303
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(391024559)フイナ・テクノロジー・インコーポレーテツド (98)
【氏名又は名称原語表記】FINA TECHNOLOGY, INCORPORATED
【Fターム(参考)】