説明

拘束鉄筋

【課題】 被拘束鉄筋を容易に拘束することができるとともに、定着プレートの強度を外観で判断できる構成とし、また、配置される個所に応じてスペーサを装着することのできる拘束鉄筋を提供する。
【解決手段】 拘束鉄筋Aは両端に定着プレート2,3を備えている。定着プレート2,3は、拘束鉄筋本体1を遊嵌できる鉄筋連結孔21と、これに隣接して設けられた棒状部材連結孔22と、この棒状部材連結孔に挿通されつつ固定されてなる棒状部材4,5とを備えている。拘束鉄筋本体は、先端から適宜間隔を有した個所を周方向に膨出させた第一の膨出部11,12と、先端を周方向に膨出させた第二の膨出部13,14とを備えている。定着プレートの鉄筋連結孔に拘束鉄筋本体を挿通しつつ、拘束鉄筋本体の第一の膨出部と第二の膨出部との中間に定着プレートを配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拘束鉄筋に関し、特に、定着プレートを先端に備えた拘束鉄筋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常の拘束鉄筋は、両端をU字状に湾曲させ、この湾曲部の内側に主筋または帯筋を配置することで、当該主筋または帯筋の拡張を防止する構成となっていた。この種の拘束鉄筋は、予め両端を上記形状に湾曲させるときには主筋または帯筋を拘束鉄筋の内側に配設できなくなるため、鉄筋湾曲装置を使用していた(特許文献1)。しかしながら、主筋または帯筋を配設した後に拘束鉄筋を配設しながら先端を湾曲させることは、無数の拘束鉄筋すべてについて鉄筋湾曲装置によって先端を湾曲させなければならず、非常に煩瑣であった。
【0003】
そこで、かかる問題点を解決するため、従来の拘束鉄筋は、鉄筋の一端を予め湾曲させるとともに、他端に掛止板(これが定着プレートに相当する)を設ける構成としたもの(特許文献2)、鉄筋の両端に熱間据込を施して拡径部(これが定着プレートに相当する)を形成したもの(特許文献3)、および、鉄筋の両端に定着プレートを固定するとともに、この定着プレートに棒状部材を取り付ける構成としたもの(特許文献4)があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−85843号公報(3−5頁、図1)
【特許文献2】特開平10−196120号公報(3頁、図1)
【特許文献3】特開2000−257209号公報(4−5頁、図1・図8)
【特許文献4】特開2005−42425号公報(5−6頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のうち、第一の従来例(特許文献2)は、鉄筋の他端に定着プレートを設けるための構成として、当該鉄筋他端付近に雄ネジを刻設するとともに、当該定着プレートに当該雄ネジ部分を挿入するための穴を設け、この穴に挿入されて定着プレート表面から突出する上記雄ネジ部分に螺合するナットによって締着できるようにしたものであった。
【0006】
しかしながら、かかる構成の拘束鉄筋は、当該鉄筋の他端に雄ネジを螺刻するため、その雄ネジ部分のピッチ径が鉄筋本体部分の外径よりも小さくなり、拘束鉄筋が保有すべき強度を維持させ得るかという点に疑問が残るものであった。そして、強度を保持させるための方策として考えられることは、少なくとも雄ネジ部分のネジ溝の径が拘束鉄筋に要求される外径以上とすることであり、そのためには、通常よりも太い拘束鉄筋を使用しなければならないという問題点が予想されるところであった。
【0007】
また、第二の従来例(特許文献3)は、鉄筋の両端を熱間据込加工することにより定着プレートを形成するものであり、鉄筋本体部分との一体化により強度に関しては問題ないものの、鉄筋両端には施工前に定着プレートが形成されているため、特に、当該定着プレートの周縁部に係止突起を設ける構成の場合には、被拘束鉄筋(主筋または帯筋)を拘束させる際、当該被拘束鉄筋が係止突起を乗り越えるために、当該被拘束鉄筋を弾性変形の範囲内で撓ませる必要があり、被拘束鉄筋が既に拘束されている個所の近傍や、他の鉄筋と結束による固定が終了している個所の付近などにおいては、容易に弾性変形させることができず、作業性に問題が残るものとなっていた。
【0008】
さらに、第三の従来例(特許文献4)は、定着プレートと拘束鉄筋とを熱間据込加工または摩擦圧接によって固定する構成であった。しかし、据込鍛造加工により定着プレートを構成する場合には、その後に保持孔を穿設することは作業上困難となり、また、摩擦圧接によるときには、その圧接程度によって固着力が異なるため、熟練した技術者による作業を要することとなるものであった。なお、溶接による固定に関しては、溶接技術が必要であるうえに、強度保持の検査は外観で判断できず、品質管理上の困難性を内在するものとなっていた。
【0009】
そして、上記いずれの従来例においても、定着プレートからかぶり厚を確保するための提案がなされておらず、おそらくは、従来どおりのスペーサを主筋または帯筋等に設置することが前提であるものと推察することができる。しかし、従来のスペーサは、鉄筋構築後に適宜設置されるが、その固定力が十分でなく、コンクリートの打設時に、流入圧によって離脱することが予想されるものであった。
【0010】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、被拘束鉄筋を容易に拘束することができるとともに、定着プレートの強度を外観で判断できる構成とし、また、配置される個所に応じてスペーサを装着することのできる拘束鉄筋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明は、定着プレートを両端に備えた拘束鉄筋において、上記定着プレートは、拘束鉄筋本体を遊嵌できる鉄筋連結孔と、この鉄筋連結孔に隣接して設けられた棒状部材連結孔と、この棒状部材連結孔に挿通されつつ固定されてなる棒状部材とを備え、上記拘束鉄筋本体は、先端から適宜間隔を有した個所を径方向に膨出させた第一の膨出部と、先端を径方向に膨出させた第二の膨出部とを備え、上記定着プレートの鉄筋連結孔が上記拘束鉄筋本体に挿通されつつ、該拘束鉄筋本体の第一の膨出部と第二の膨出部との中間に配置されてなることを特徴とする拘束鉄筋を要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、定着プレートは、鉄筋先端において、第一の膨出部と第二の膨出部とによって挟まれた状態となるため、当該鉄筋の先端において固定されることとなる。なお、第一の膨出部と第二の膨出部は、当初から形成されるものではなく、第二の膨出部が形成された後に、定着プレートの鉄筋連結孔を鉄筋先端に挿通させたうえで、第一の膨出部を形成することによって、上記構成を実現できることとなる。
【0013】
また、本発明は、定着プレートを両端に備えた拘束鉄筋において、上記定着プレートは、拘束鉄筋本体を遊嵌できる鉄筋連結孔と、この鉄筋連結孔に隣接して設けられた棒状部材連結孔と、この棒状部材連結孔に挿通されつつ固定されてなる棒状部材と、この棒状部材の先端に設けられたスペーサとを備え、上記拘束鉄筋本体は、先端から適宜間隔を有した個所を径方向に膨出させた第一の膨出部と、先端を径方向に膨出させた第二の膨出部とを備え、上記定着プレートの鉄筋連結孔が上記拘束鉄筋本体に挿通されつつ、該拘束鉄筋本体の第一の膨出部と第二の膨出部との中間に配置されてなることを特徴とする拘束鉄筋をも要旨としている。
【0014】
上記構成によれば、鉄筋両端に固定される定着プレートから突出する棒状部材にスペーサが設けられており、このスペーサの先端から定着プレートまでの長さをかぶり厚寸法に合致させることで、所定のかぶり厚を保持することが可能となる。このとき、スペーサは、拘束鉄筋に固定された定着プレートによって保持されるから、コンクリートの打設時における流入厚によってもスペーサが離脱することを回避し得る。
【0015】
上記各発明において、棒状部材としては、雄ネジを螺刻してなる雄ネジ部と、この雄ネジ部に螺合する二つのナットとを備えた構成の棒状部材とすることができ、この場合、当該棒状部材の雄ネジ部を定着プレートの棒状部材連結孔に挿通しつつ、定着プレートの両側から二つのナットを締め付けることで固定することとなる。
【0016】
上記構成によれば、棒状部材が定着プレートから突出する長さは、二つのナットが定着プレートを締め付ける位置によって変化させることができる。このとき、棒状部材は、表面に雄ネジが螺刻されるが、定着プレートの棒状部材連結孔に挿通可能であるため、棒状部材そのものを回転させる必要なく突出長を変更できるものである。従って、被拘束鉄筋を拘束するために拘束鉄筋本体部分に平行に突出させるときには、適宜長さに突出させることができ、また、スペーサを設けた構成においては、かぶり厚に合致するように突出長を調整することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、棒状部材を拘束鉄筋の本体部分に平行に突出させることにより、拘束鉄筋本体および定着プレートによって拘束される被拘束鉄筋に対し、当該被拘束鉄筋が定着プレートから離脱することを防止できる。これにより、被拘束鉄筋の拘束を容易にすることができる。
【0018】
また、拘束鉄筋本体と定着プレートとの固定部分は、当該定着プレートが拘束鉄筋本体の第一の膨出部と第二の膨出部とで挟まれる状態であるから、この両膨出部の状態を観察すること、すなわち、膨出の程度および厚みを観察することにより、定着プレートの固定強度を外観で判断できる。
【0019】
さらに、棒状部材のスペーサを設けた構成によれば、スペーサを必要とする個所の拘束鉄筋に使用することにより、当該個所のスペーサ設置を同時に行うことができる。そして、このように設置されたスペーサは、拘束鉄筋の一部を構成する定着プレートに連続することとなるから、主筋または帯筋等に個別に固定されるスペーサに比較して、強固な固定力を発揮することとなり、コンクリートの打設時における流下圧等によって移動等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は本発明の第一の実施形態を示す説明図であり、(b)は本発明の第二の実施形態を示す説明図である。
【図2】(a)は定着プレートの平面図であり、(b)は正面図である。
【図3】定着プレートを拘束鉄筋本体に装着する手順を示す説明図である。
【図4】第一の実施形態の使用態様を示す説明図である。
【図5】第二の実施形態の使用態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1(a)は、第一の実施形態の概略図であり、図1(b)は、第二の実施形態の概略図である。この図において示されているように、これらの実施形態は、拘束鉄筋本体1の両端に定着プレート2,3を備えた拘束鉄筋Aに関するものである。いずれの実施形態においても、定着プレート2,3は、拘束鉄筋本体1の第一の膨出部11,12と、第二の膨出部13,14の中間に配置されており、当該定着プレート2,3は、この位置において固定的に装着されるものである。なお、この装着方法については後述する。
【0022】
第一の実施形態は、図1(a)に示すように、定着プレート2,3に棒状部材4,5を固定した構成の拘束鉄筋である。本実施形態では、棒状部材としてボルト4,5が使用されている。ボルト4,5は、ネジ部41,51に雄ネジが刻設されており、このネジ部41,51を定着プレート2,3に挿通し、当該定着プレート2,3の両側からナット42,43,52,53を螺合させて固定される。すなわち、定着プレート2,3には、ボルト4,5のネジ部41,51が挿通できる程度の直径を有する円形の貫通孔(これを棒状部材連結孔という)22,32が設けられており、この棒状部材連結孔22,32をネジ部41,51が貫通するようにボルト4,5を配置することができる。そこで、当該ネジ部41,51には、ストッパとして機能する第一のナット42,52を予め所定の位置に螺合させることによって、このナット42,52が定着プレート2,3の表面に当接する位置において、ボルト4,5の突出長X1,X2が決定するようになっている。そして、この第一のナット42,52が定着プレート2,3に当接するまで、ネジ部41,51の先端から棒状部材連結孔22,32に挿入することにより、定着プレート2,3の反対側表面には、ネジ部41,51の先端部分が突出することとなる。この突出部分に第二のナット43,53を螺合させることにより、定着プレート2,3を挟む状態で二種のナット42,43,52,53が配置されることとなるから、第二のナット43,53を螺進させることによって、この二種のナット42,43,52,53が定着プレート2,3を挟持することとなり、ボルト4,5を定着プレート2,3に固定することができるものである。
【0023】
ここで、ボルト4,5は、上記のとおり定着プレート2,3に固定されるものであり、ボルト4,5の突出長は、第一のナット42,52の位置、すなわち、ネジ部41,51が棒状部材連結孔22,32に挿入させるべき長さによって、容易に変更することができる。従って、拘束すべき鉄筋(これを被拘束鉄筋という)の大きさ(径)に応じて、第一のナット42,52の位置を調整することにより、必要な突出長X1,X2を得ることができるのである。
【0024】
第二の実施形態は、図1(b)に示すように、定着プレート2,3に棒状部材4,5を固定し、さらに、その先端にスペーサ6,7を設けた構成の拘束鉄筋である。本実施形態では、第一の実施形態と同様に棒状部材としてボルト4,5が使用されている。スペーサ6,7はコンクリート製のものを採用し、ボルト4,5の頭部がスペーサ6,7の内部に埋没するように構成されている。つまり、スペーサ6,7の製造段階で、所定形状の型の内部に打設されたコンクリート表面からボルト4,5の頭部を埋没させ、その状態でコンクリートを固化することによって構成されるのである。
【0025】
このような構成においても、ボルト4,5のネジ部41,51は、定着プレート2,3の棒状部材連結孔22,32に挿通することができるため、このネジ部41,51を棒状部材連結孔22,32に貫通させた状態でナット32,43,52,53によって固定することができるのである。なお、ここで使用するスペーサ6,7は、かぶり厚を確保するためのものであるため、定着プレート2,3から外向きに突出するようにボルト4,5が装着されるものである。そして、ナット42,43,52,53によるボルト4,5の固定は、上記第一の実施形態と同様であり、第一のナット42,52は、定着プレート2,3の外側表面に当接するように配置される。また、定着プレート2,3の外側表面からスペーサ6,7の先端までの突出長Y1,Y2が、所定のかぶり厚の寸法に一致させるように、上記第一のナット42,52の位置が調整されている。
【0026】
次に、上記両実施形態に使用される定着プレート2,3について説明する。図2(a)は定着プレート2,3の平面図であり、図2(b)は定着プレート2,3の正面図である。これらの図において明らかなとおり、定着プレート2(,3)には、二つの貫通孔21,22(,31,32)が設けられている。このうち内径の大きい貫通孔21(,31)は、拘束鉄筋本体1が挿通できる鉄筋連結孔であり、内径の小さい貫通孔22(,32)が棒状部材連結孔である。
【0027】
鉄筋連結孔21(,31)は、拘束鉄筋本体1に使用される鉄筋が挿通できる内径を有しており、当該鉄筋を貫挿されることで、当該鉄筋の任意の位置まで移動させることができるものである。従って、膨出部11,12,13,14を構成すべき周辺の所望位置まで自在に移動させることができるのである。また、鉄筋連結孔21(,31)の周辺には、厚肉部23が構成されており、拘束鉄筋本体1との連結時における強度を確保することができるとともに、被拘束鉄筋を拘束するとき、当該被拘束鉄筋から受ける反力に耐え得る強度をも確保できる構造である。
【0028】
棒状部材連結孔22(,32)は、既述のとおり、棒状部材(ボルトの雄ネジ部)41,51が挿通できる内径を有している。この棒状部材連結孔22(,32)の中心線は、鉄筋連結孔21(,31)の中心線と平行になっており、この棒状部材連結孔22(,32)に挿入・固定されるボルト4,5は、拘束鉄筋本体1と平行な状態が維持されることとなる。また、棒状部材連結孔22(,32)は、鉄筋連結孔21(,31)から適宜間隔を有しており、被拘束鉄筋を拘束する際には、拘束鉄筋本体1と棒状部材4,5との中間に被拘束鉄筋が配置できるようになっている。
【0029】
次に、上記定着プレート2,3を拘束鉄筋本体1に固定する方法について説明する。図3に示すように、拘束鉄筋本体1としては異形鉄筋が使用され、その両端を膨出させて第一および第二の膨出部11,12,13,14を構成するのである。
【0030】
そこで、まず、図3(a)に示すように、拘束鉄筋本体1の先端1aから第一の膨出部11,12を構成すべき個所(図中矢印部分)の周囲を加熱するのである。この加熱位置は、定着プレート2,3の肉厚に相当する長さおよび第二の膨出部13,14を構成することができる長さを合算した範囲Zを先端1a側に残した位置を選定する。そして、上記個所が十分に加熱された後、図3(b)に示すように、拘束鉄筋本体1の軸線方向に圧縮力を付加することにより、加熱部分が長さ方向に収縮されることに伴って、余分な部分が周辺に膨出して鍔状を構成することとなるのである。これにより、第一の膨出部11,12が形成されるのである。
【0031】
次に、図3(c)に示すように、定着プレート2,3の鉄筋連結孔21,31を拘束鉄筋本体1の先端1aから挿通させ、定着プレート2,3が第一の膨出部11,12に到達するように配置したうえで、さらに、この定着プレート2,3よりも先端1a側に位置する拘束鉄筋本体1を加熱するのである。この定着プレート2,3よりも先端側の拘束鉄筋本体1が第二の膨出部13,14を構成すべき個所(図中矢印部分)であり、当該個所が十分に加熱された後、図3(d)に示すように、再び拘束鉄筋本体1を先端1aから軸線方向に圧縮することによって、当該加熱部分が収縮することに伴い、周辺に膨出する鍔状部分を形成することとなるのである。この鍔状部分が第二の膨出部13,14である。
【0032】
なお、上記方法に代えて、予め定着プレート2,3を拘束鉄筋本体1に挿通させたうえで、先に、第二の膨出部13,14を形成し、定着プレート2,3を第二の膨出13,14に当接させつつ、第一の膨出部11,12を形成する方法を採用することも可能である。この方法の場合は、第一の膨出部11,12を形成する際、既に第二の膨出部13,14が形成されているため、膨出させるべき位置の選定が容易となる。
【0033】
このようにして、定着プレート2,3を第一および第二の膨出部11,12,13,14によって挟むことにより、定着プレート2,3は、拘束鉄筋本体1の挿通を受けつつ、しかし軸線方向に移動することができないこととなるため、拘束鉄筋本体1と一体化した構成となり得る。さらに、膨出部11,12,13,14による定着プレート2,3の固定状態は、当該膨出部11,12,13,14の膨出の状態を外部から観察することによって判断することが可能となる。なお、拘束鉄筋Aとして機能させるためには、第二の膨出部13,14による定着プレート2,3の保持力が重要となるため、第一の膨出部11,12は、定着プレート2,3の位置固定および角度固定に資するためのものということができ、第一の膨出部13,14に比較して僅かに小さな膨出状態であってもよい。
【0034】
本発明の第一および第二の実施形態の構成は上記のとおりであるから、第一の実施形態を使用する場合には、図4に示すように、被拘束鉄筋100,200を拘束手金本体1と棒状部材4,5の中間に位置させるのである。このとき、被拘束鉄筋100,200は、連続する長尺な鉄筋であるため、配置前に棒状部材4,5を定着プレート2,3に装着するときには、被拘束鉄筋100,200を拘束することが困難となる。
【0035】
そこで、棒状部材4,5が装着されない状態、つまり、拘束鉄筋本体1および定着プレート2,3のみの状態において、定着プレート2,3が被拘束鉄筋100,200に当接するように配置するのである(図4(a))。そして、その後において、棒状部材4,5を装着することにより、被拘束鉄筋100,200が定着プレート2,3から離脱できないこととなるのである(図4(b))。つまり、基本的には、被拘束鉄筋100,200は、定着プレート2,3によって拘束されるものであり、この拘束状態が崩れる場合(被拘束鉄筋100,200が拘束鉄筋1から離れる状態となる場合)には、被拘束鉄筋100,200が定着プレート2,3の表面上を移動することとなるが、ボルト(棒状部材)4,5によって移動範囲が制限され、定着プレート2,3から離脱することを防止できるのである。
【0036】
なお、ボルト(棒状部材)4,5が、定着プレート2,3から対向する方向に突出すべき長さは、被拘束鉄筋の大きさ等によって異ならせるため、予め、第一のナット42,52の螺合位置を調整しておくことにより、被拘束鉄筋を拘束させた状態で、容易かつ円滑にボルト(棒状部材)4,5を装着することができることとなる。
【0037】
また、第二の実施形態を使用する場合においても、図5に示すように、被拘束鉄筋100,200を定着プレート2,3によって拘束する。このとき、スペーサ6,7を事前に装着するときには、装着のための第二のナット43,53およびネジ部41,51の先端部分が、定着プレート2,3の内側表面から突出するため、被拘束鉄筋100,200の拘束が困難になる。
【0038】
そこで、本実施形態においても、スペーサ6,7の装着は被拘束鉄筋100,200を拘束した後に行うのである(図5(a))。このとき、スペーサ6,7は、定着プレート2,3の対向面ではなく、その反対面(外側表面)から外方に突出して設けられるため、ボルト(棒状部材)4,5は、定着プレート2,3の外側から挿入されるのである。また、その際、スペーサ6,7の突出長をかぶり厚に合わせるため、予め第一のナット42,52の螺合位置を調整することにより、装着時の調整を省略することができ、容易かつ円滑な装着が実現できる。
【0039】
なお、上記のような使用態様により、被拘束鉄筋100,200は、拘束鉄筋本体1と第二のナット43,53の中間に位置することとなるから、被拘束鉄筋100,200の拘束状態が崩れる場合(被拘束鉄筋100,200が拘束鉄筋1から離れる状態となる場合)には、被拘束鉄筋100,200が定着プレート2,3の内側表面に沿って移動することとなるが、当該第二のナット43,53(場合によってはボルト4,5の先端)において掛かり止められることとなり、上記拘束状態を維持する機能を発揮することとなる(図5(b))。また、上記のような使用態様により、スペーサ6,7は、定着プレート2,3に強固に装着されることとなり、コンクリート打設時においてコンクリートの流圧が作用しても、この定着プレート2,3から容易に離脱することはない。そして、定着プレート2,3は、拘束鉄筋本体1を介して被拘束鉄筋100,200に固定されることとなるから、この拘束鉄筋本体1が被拘束鉄筋100,200との拘束状態が崩壊しない限りにおいて、スペーサ6,7がこれら鉄筋群から離脱することがないのである。
【0040】
本発明の実施形態は上記のとおりであるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様をとることができる。例えば、上記実施形態においては、棒状部材としてボルト4,5を使用した例を示したが、このボルト4,5の材質や外径およびネジピッチ等は規格によって定められており、必ずしも実施に最適であるとは限らない。そこで、本発明の実施に必要な材質・外径等を有する棒状部材を使用する場合には、適宜寸法の棒状部材を使用し、その一部にネジ部41,51を構成したものを採用することができる。また、スペーサ6,7の形状は、かぶり厚等によって適宜変更可能である。
【0041】
なお、定着プレート2,3の棒状部材連結孔22,32に雌ねじを刻設する構成も考えられるが、この場合、棒状部材4,5の装着には、棒状部材4,5の全体を回転させなければならず、しかも、突出長の調整には棒状部材4,5そのものを変更するか、装着時における螺合状態を適宜調整するなどの手段を講じなければならず、単一の棒状部材4,5を使用して突出長を自由に選択することができるためには、定着プレート2,3に雌ねじを刻設しない構造とする必要がある。さらに、定着プレート2,3に雌ねじを刻設するためには、定着プレート2,3の加工時にネジ切り工程が必要となり、加工コストの増加を招くおそれもあるため、本発明のように貫通孔とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0042】
1 拘束鉄筋本体
2,3 定着プレート
4,5 ボルト(棒状部材)
6,7 スペーサ
11,12 第一の膨出部
13,14 第二の膨出部
21,31 鉄筋連結孔
22,32 棒状部材連結孔
41,51 ネジ部
42,52 第一のナット
43,53 第二のナット
100,200 被拘束鉄筋
A 拘束鉄筋


【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着プレートを両端に備えた拘束鉄筋において、上記定着プレートは、拘束鉄筋本体を遊嵌できる鉄筋連結孔と、この鉄筋連結孔に隣接して設けられた棒状部材連結孔と、この棒状部材連結孔に挿通されつつ固定されてなる棒状部材とを備え、上記拘束鉄筋本体は、先端から適宜間隔を有した個所を径方向に膨出させた第一の膨出部と、先端を径方向に膨出させた第二の膨出部とを備え、上記定着プレートの鉄筋連結孔が上記拘束鉄筋本体に挿通されつつ、該拘束鉄筋本体の第一の膨出部と第二の膨出部との中間に配置されてなることを特徴とする拘束鉄筋。
【請求項2】
定着プレートを両端に備えた拘束鉄筋において、上記定着プレートは、拘束鉄筋本体を遊嵌できる鉄筋連結孔と、この鉄筋連結孔に隣接して設けられた棒状部材連結孔と、この棒状部材連結孔に挿通されつつ固定されてなる棒状部材と、この棒状部材の先端に設けられたスペーサとを備え、上記拘束鉄筋本体は、先端から適宜間隔を有した個所を径方向に膨出させた第一の膨出部と、先端を径方向に膨出させた第二の膨出部とを備え、上記定着プレートの鉄筋連結孔が上記拘束鉄筋本体に挿通されつつ、該拘束鉄筋本体の第一の膨出部と第二の膨出部との中間に配置されてなることを特徴とする拘束鉄筋。
【請求項3】
前記棒状部材は、雄ネジを螺刻してなる雄ネジ部と、この雄ネジ部に螺合する二つのナットとを備えた棒状部材であり、上記棒状部材の雄ネジ部を前記定着プレートの棒状部材連結孔に挿通しつつ、該定着プレートの両側から上記ナットを締め付けてなる請求項1または2に記載の拘束鉄筋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−29015(P2013−29015A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−218130(P2012−218130)
【出願日】平成24年9月28日(2012.9.28)
【分割の表示】特願2008−37978(P2008−37978)の分割
【原出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(594065515)株式会社ディビーエス (10)
【Fターム(参考)】