説明

拡幅掘削装置及び杭坑拡幅方法

【課題】 拡幅掘削角度の調整可能な範囲を広くし、拡幅幅を独立に調整することにより、設計の自由度を広げる。
【解決手段】 回転体に取り付けられて用いられ、場所打ちコンクリート杭の杭坑を拡幅するための杭坑拡幅装置1であって、屈伸自在に連結される上ビット17と下ビット20とからなる掘削ビット16と、掘削ビット16の上ビット17又は下ビット20の何れか一方を押圧することにより、上ビット17と下ビット20とを所定の角度に屈曲させるアクチュエータ35とを備える。アクチュエータ35と上ビット17又は下ビット20との間は回動可能に連結され、上ビット17と下ビット20を屈曲させた状態で回転体と共に回転させることにより、その屈曲角度に応じた角度で杭坑の内壁面を拡幅掘削することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡幅掘削装置及び杭坑拡幅方法に関し、特に、杭坑の内壁面を拡幅掘削して所定の角度の壁面を有する節部を形成するのに有効な拡幅掘削装置及び杭坑拡幅方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、場所打ちコンクリート杭の地盤に対する支持力を高めるために、様々なタイプの杭が提案されており、例えば、坑の底部を拡幅した拡底杭や杭の中間部を拡幅した節杭等が提案されている。
【0003】
このような構成の拡底杭や節杭は、掘削機によって地盤に所定の径の杭坑を掘削した後に、拡幅掘削装置を杭坑内に挿入し、拡幅掘削装置を作動させて杭坑の所定の位置を拡幅掘削し、その後に杭坑内にコンクリートを打設することにより、杭坑の形状に合致した形状に形成される。
【0004】
上記のような構成の拡底杭や節杭の形成に用いられる拡幅掘削装置の一例が特許文献1に記載されている。この拡幅掘削装置は、油圧ジャッキの作動により連結ロッドを介して拡幅翼を押し広げながら、ケリーバを介して拡幅掘削装置を回転駆動させることにより、拡幅翼の突出量に応じた深さ、拡幅翼の傾斜角度に応じた角度の節部を杭坑の内壁面に形成するように構成したものである。
【0005】
また、拡幅掘削装置の他の例が特許文献2に記載されている。この拡幅掘削装置は、油圧ジャッキの作動により掘削ビットを押し広げながら、ケリーバを介して拡幅装置を回転駆動させることにより、掘削ビットの突出量に応じた深さ、掘削ビットの傾斜角度に応じた角度の節部を杭坑の内壁面に形成するように構成したものである。
【特許文献1】特開2001−193376号公報
【特許文献2】特許第1628648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような構成の拡幅掘削装置のうち、特許文献1に記載されている拡幅掘削装置は、節部の内壁面の傾斜角度を変更する場合に、その角度に応じた拡幅翼に交換しなければならいため、その交換作業に手間がかかり、拡幅掘削作業の効率が悪くなる。また、傾斜角度を異ならせた複数の拡幅翼を用意しておかなければならないため、設備費が高くついてしまう。さらに、拡幅幅を独立して調整することができない。
【0007】
また、特許文献2記載に記載されている拡幅掘削装置も、特許文献1に記載されているものと同様に、節部の内壁面の傾斜角度を変更する場合に、その角度に応じた掘削ビットに交換しなければならいため、その交換作業に手間がかかり、拡幅掘削作業の効率が悪くなる。また、傾斜角度を異ならせた複数の掘削ビットを用意しておかなければならないため、設備費が高くついてしまう。さらに、拡幅幅を独立して調整することができない。
【0008】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、節部の壁面の角度及び拡幅幅を変更する場合に、部品を交換することなく容易にその角度及び拡幅幅の変更に対応することができるとともに、変更可能な角度及び拡幅幅の範囲が広く、設計の自由度を広げることができる各種の構造物等の杭の杭坑に適用可能な汎用性の高い拡幅掘削装置及び杭坑拡幅方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、請求項1に係る発明は、回転体に取り付けられて用いられ、場所打ちコンクリート杭の杭坑を拡幅するための杭坑拡幅装置であって、屈伸自在に連結される上ビットと下ビットとからなる掘削ビットと、該掘削ビットの上ビット又は下ビットの何れか一方を押圧することにより、上ビットと下ビットとを所定の角度に屈曲させるアクチュエータとを備え、前記アクチュエータと前記上ビット又は下ビットとの間が回動可能に連結されており、前記上ビットと下ビットを屈曲させた状態で前記回転体と共に回転させることにより、その屈曲角度に応じた角度で杭坑の内壁面を拡幅掘削することを特徴とする。
本発明による拡幅掘削装置によれば、アクチュエータによって掘削ビットの上ビット又は下ビットの何れか一方を押圧することにより、上ビットと下ビットとが所定の角度に屈曲され、この状態で上ビット及び下ビットを回転体と共に回転させることにより、屈曲角度に応じた角度で杭坑の内壁面が拡幅掘削されることになる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の拡幅掘削装置であって、前記掘削ビットの上ビット又は下ビットの少なくとも何れか一方を、少なくとも二つに分割し、隣接する分割ビット間を角度調整機構を介して屈曲可能に連結したことを特徴とする。
本発明による拡幅掘削装置によれば、掘削ビットの上ビット又は下ビットの少なくとも何れか一方は二つに分割され、隣接する分割ビット間が角度調整機構によって屈曲可能に連結されているので、上ビットと下ビットとの間に屈曲角度、上ビット分割ビット間の屈曲角度、及び下ビットの分割ビット間の角度を調整することが可能になり、内壁面を拡幅掘削する際に、傾斜角度の調整可能な範囲を広くとることができる。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の拡幅掘削装置であって、前記角度調整機構は、一方の分割ビットと他方の分割ビットとを相対的に回動自在に連結する連結治具と、一方の分割ビットと他方の分割ビットとを伸長した状態に固定する固定治具とを備えていることを特徴とする。
本発明による拡幅掘削装置によれば、上ビット又は下ビットの隣接する分割ビット間は、角度調整機構の固定治具によって伸長した状態に固定されるとともに、固定治具を取り外すことにより連結治具を介して相対的に回動自在な状態となる。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1から3のうち何れか1項に記載の拡幅掘削装置を用いて場所打ちコンクリート杭の杭坑を拡幅するための杭坑拡幅方法であって、前記拡幅掘削装置を前記回転体に取り付け、前記杭坑内の拡幅部掘削位置まで前記拡幅掘削装置を降下させ、前記回転体を回転させながら、前記アクチュエータによって前記上ビットと前記下ビットとの屈曲角度を増加させていくことにより、拡幅掘削を行うことを特徴とする。
本発明による杭坑拡幅方法によれば、杭坑内の拡幅部掘削位置まで拡幅掘削装置を下降させ、回転体を回転させながら、アクチュエータによって上ビットと下ビットとの屈曲角度を増加させていくことにより、拡幅掘削部の内壁面が所定の角度で拡幅掘削されることになる。
【発明の効果】
【0013】
以上、説明したように、本発明による拡幅掘削装置及び杭坑拡幅方法によれば、掘削ビットの上ビット又は下ビットの何れか一方をアクチュエータで押圧することにより、上ビットと下ビットとの間を所定の角度に屈曲させることができ、その屈曲角度で杭坑の拡幅部の内壁面を拡幅掘削することができる。従って、掘削ビットの上ビット及び下ビットによって拡幅掘削される部分の傾斜角度の調整範囲を広くとることができるので、設計の自由度を広げることができ、適用可能な杭の範囲を広げることができ、各種の構造物等の杭坑の拡幅掘削作業に適用することができる。また、拡幅掘削部分の傾斜角度を変更する場合に、その角度に対応した部品に取り替える必要がないので、作業効率を大幅に高めることができるとともに、設備費を削減することもできる
また、上ビット又は下ビットの少なくとも何れか一方は、少なくとも二つに分割されて、隣接する分割ビット間が角度調整機構によって屈曲可能に連結されているので、上ビットと下ビットとの間の屈曲角度、上ビットの分割ビット間の屈曲角度、及び下ビットの分割ビット間の屈曲角度をそれぞれ調整して、所定の屈曲角度に調整することにより、さらに調整可能な傾斜角度を広くとすることができ、設計の自由度をさらに広げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図6には、本発明による拡幅掘削装置の一実施の形態が示されていて、図1は拡幅掘削装置の全体を示す正面図、図2は図1の内部構造を示す説明図、図3は図2のA−A線断面図、図4〜図6は図2の部分拡大図である。
【0015】
すなわち、本実施の形態に示す拡幅掘削装置1は、図1及び図2に示すように、センターロッド2と、センターロッド2に一体に連結されるケーシング4と、ケーシング4に設けられる掘削手段15とを備えている。
【0016】
ケーシング4は、図1及び図2に示すように、筒状の周壁5と、周壁5の下端開口部を閉塞する下蓋7と、周壁5の上端開口部に水平に架設される上フレーム8と、周壁5の下端部内面側に水平に架設される下フレーム9と、上フレーム8の下方の周壁5の内面側の部分に、水平にかつ上下方向に移動可能に設けられる中フレーム10と、周壁5の内面側に設けられて、中フレーム10を上下方向に移動自在に支持する一対の案内ガイド11、11とから構成されている。
【0017】
周壁5の一部には、図1に示すように、周壁5内外を貫通する縦長の窓6が対向した状態で一対設けられ、各窓6を介してケーシング4内から後述する掘削手段15の上ビット17及び下ビット20が出没可能に構成されている。
【0018】
ケーシング4の周壁5と下フレーム9と下蓋7とによって囲まれる部分には、図1及び図2に示すように、下端が閉塞された筒状の空間であるバケット12が設けられ、このバケット12内に掘削手段15の上ビット17及び下ビット20によって掘削された掘削土の一部が収容される。
【0019】
ケーシング4の中心部には、図1及び図2に示すように、軸線を一致させた状態でセンターロッド2が一体に設けられ、このセンターロッド2の上端部にケリーバ3が連結される。この場合、センターロッド2は、上フレーム8、中フレーム10及び下フレーム9の中心部を貫通した状態で、上端部が上フレーム8に一体に連結され、下端部が下フレーム9に一体に連結され、これにより、センターロッド2と一体にケーシング4及び掘削手段15が回転駆動することになる。
【0020】
ケーシング4の中フレーム10の中心部には、図3に示すように、筒状の案内ガイド13が一体に設けられ、この案内ガイド13の内側の部分をセンターロッド2が相対的にスライド自在に挿通している。従って、中フレーム10は、この案内ガイド13と前述した周壁5内面の一対の案内ガイド11、11との協働により、センターロッド2の軸線に沿って水平状態を維持したまま、上下方向に移動可能となる。
【0021】
掘削手段15は、図2に示すように、ケーシング4内にセンターロッド2を中心として左右対称に対向して設けられるとともに、各々がセンターロッド2の軸線と直交する方向に屈伸可能な一対の掘削ビット16、16と、両掘削ビット16、16を屈伸させる一対のアクチュエータ35、35と、各掘削ビット16の屈伸角度を調整する屈伸角度調整機構25と、各掘削ビット16の屈曲角度を制限する屈曲角度制限治具41とを備えている。
【0022】
アクチュエータ35としては、油圧、空圧等によって掘削ビット16を屈伸させる動力を得ることができるものであれば特に制限はなく、本実施の形態において、油圧ジャッキを用いている。
【0023】
アクチュエータ35は、シリンダ36とシリンダ36から出没可能なロッド37とを有し、シリンダ36が第1スライド用治具38を介してケーシング4の上フレーム8に取り付けられ、ロッド37が第2スライド用治具39を介してケーシング4の中フレーム10に取り付けられている。
【0024】
第1スライド用治具38は、図2及び図4に示すように、上フレーム8にスライド可能、かつ所定の位置にボルト45によって固定可能に取り付けられ、第1スライド用治具38の下端部にアクチュエータ35のシリンダ36の後端部がピン40を介して取り付けられている。
【0025】
第2スライド用治具39は、図2及び図5に示すように、中フレーム10にスライド可能、かつ所定の位置にボルト45によって固定可能に取り付けられ、第2スライド用治具39の上端部にアクチュエータ35のロッド37が取り付けられている。
第1スライド用治具38及び第2スライド用治具39をそれぞれ上フレーム8及び中フレーム10に沿ってスライドさせることにより、一対のアクチュエータ35、35の間隔が調整され、両掘削ビット16の上端間の間隔が調整される。
【0026】
各掘削ビット16は、図1、図2及び図5に示すように、一端部が第1ピン18又は第2ピン19の一方又は両方を介して各第2スライド用治具39に取り付けられる上ビット17と、上ビット17の他端にピン21を介して回動自在に連結されるとともに、他端がケーシング4の下フレーム9にピン21を介して回動自在に連結される下ビット20とから構成されている。なお、下ビット20の下フレーム9に対する連結位置は調整可能に構成され、これにより、両掘削ビット16、16の下端間の間隔が調整される。
【0027】
図5に示すように、第2スライド用治具39と上ビット17との間を第1ピン18と第2ピン19の両方によって連結した場合には、両者間が固定された状態となり、上ビット17の後述する第1上ビット23の軸線とアクチュエータ35の軸線とが一致する。また、第1ピン18又は第2ピン19の一方を取り外し、第2スライド用治具39と上ビット17との間を第1ピン18又は第2ピン19によって連結した場合には、両者間が回動自在となる。
【0028】
上ビット17及び下ビット20の外面側(周壁5の窓6に対向する部分)には、図1及び図2に示すように、それぞれ上下方向に所定の間隔ごとに複数の掘削刃22が一体に又は着脱自在に取り付けられ、この掘削刃22を杭坑の内壁面に圧接させることにより、杭坑の内壁面の掘削を行うことができる。
【0029】
図2に示すように、アクチュエータ35を作動させて、シリンダ36からロッド37を出没させることにより、ロッド37に追従して中フレーム10がセンターロッド2に沿って上下方向に移動し、中フレーム10に追従して第2スライド用治具39を介して掘削ビット16の上ビット17と下ビット20とがピン21を介して相対的に回動して屈曲又は伸長する。この場合、アクチュエータ35のロッド36のストロークを調整することにより、中フレーム10の上下方向の位置を調整することができ、中フレーム10の位置に応じて掘削ビット16の屈曲角度を調整することができる。
【0030】
各掘削ビット16の上ビット17は、図1、図2及び図6に示すように、長手方向に第1上ビット23と第2上ビット24の2つにそれぞれ分割され、第1上ビット23と第2上ビット24との間は、屈曲角度調整機構25を介して相対的に屈伸可能、かつ、伸長した状態に固定可能に構成されている。
【0031】
屈曲角度調整機構25は、図6に示すように、第1上ビット23と第2上ビット24とをそれらの軸線と直交する方向に相対的に回動自在に連結する連結治具26と、第1ビット23と第2ビット24とを伸長した状態に固定する固定治具32とから構成されている。
【0032】
連結治具26は、図6(a)に示すように、第1上ビット23の下端部に設けられる下方及び両側面が開口する溝部28を有する第1連結部27と、第2上ビット24の上端部に設けられるとともに、第1連結部27の溝部28内に相対的に回動自在に挿着される突部30を有する第2連結部29と、第1連結部27と第2連結部29とを相対的に回動自在に連結する連結ピン31とから構成されている。
【0033】
固定治具32は、図6(b)に示すように、第1上ビット23の第1連結部27及び第2上ビット24の第2連結部29の一側面間に掛け渡されて、第1連結部27と第2連結部29との相対的な回動を規制する固定板33と、固定板33の一端部を第1上ビット23側に、他端部を第2上ビット24側にそれぞれ固定するボルト34とから構成されている。
【0034】
図1及び図2に示すように、ケーシング4の下フレーム9の長手方向の両端部には、各掘削ビット16の屈曲角度を制限するための屈曲角度制限治具41がそれぞれ設けられ、各屈曲角度制限治具41に各掘削ビット16の各下ビット20の外面側を当接させることにより、各掘削ビット16のそれ以上の屈曲が制限される。屈曲角度制限治具41は、下フレーム9に沿って移動可能、所定の位置に固定可能に構成されている。
【0035】
次に、図7及び図8を参照しながら、本発明の拡幅掘削装置1の作用について説明する。
(1) 上部壁面;15〜25°、下部壁面;45°の節部の拡幅掘削、
拡幅幅;300〜500mm
この条件の拡幅掘削を行うには、図7(a)(b)に示すように、第2スライド用治具39と上ビット17との間を第1ピン18(又は第2ピン19)のみによって回動自在に連結し、上ビット17の第1上ビット23と第2上ビット24との間を固定治具32によって固定した状態とする。
【0036】
そして、各第1スライド用治具38及び各第2スライド用治具39を上フレーム8及び中フレーム10に沿ってスライドさせて、各アクチュエータ35を所定の位置に位置決め、固定し、ケリーバ3にセンターロッド2を介して拡幅掘削装置1を取り付け、図8(a)に示すように、拡幅掘削装置1を杭坑内に挿入し、節部を掘削する位置まで下降させる。
【0037】
そして、図8(b)に示すように、アクチュエータ35を作動させて中フレーム10を下降させ、中フレーム10に追従させて両掘削ビット16、16を下方に押し下げ、各掘削ビット16の上ビット17と下ビット20との間を径方向外方に屈曲させる。そして、アクチュエータ35の作動と同時にケリーバ3を回転させて、センターロッド2を介して拡幅掘削装置1を回転駆動させ、各掘削ビット16の上ビット17と下ビット20との屈曲角度を徐々に強めながら、上ビット17と下ビット20の掘削刃22によって杭坑の内壁面の掘削を開始する。
【0038】
そして、図8(c)に示すように、下ビット20の外面側が屈曲角度制限治具41に当接するまで、上ビット17と下ビット20との間の屈曲角度を強めることにより、上ビット17及び下ビット20に対応する内壁面の部分が拡幅掘削され、所定の角度の上壁面、下壁面、所定の拡幅幅に形成される。この状態でケリーバを回転させながらケリーバを押し下げることにより垂直面が形成され、図8(c)の状態になる。
この場合、上壁面は鉛直線に対しての傾きが約15〜25°、下壁面は鉛直線に対しての傾きが約45°になるまで拡幅掘削される。また、両アクチュエータ35、35の間隔を調整することにより、拡幅幅を300〜500mmの範囲内で調整できる。
【0039】
上記の(1)の条件の下での拡幅掘削作業においては、上壁面及び下壁面の鉛直線に対する傾き、拡幅幅は、アクチュエータ35の上フレーム8及び中フレーム10に対する取り付け位置、下ビット20の下フレーム9に対する固定位置、屈曲角度制限治具41の下フレーム9に対する固定位置を調整することにより、所定の範囲内で変更できる。但し、図10(a)に示すように、油圧シリンダ35がセンターロッド2と干渉しない範囲内に制限される。
【0040】
(2) 上部壁面;30〜45°、下部壁面;45°の節部の拡幅掘削、
拡幅幅300〜500mm
この条件の拡幅掘削を行うには、図9(a)に示すように、第2スライド用治具39と上ビット17との間を第1ピン18及び第2ピン19によって連結して、第2スライド用治具39と上ビット17との間を固定状態とするとともに、上ビット17の第1上ビット23と第2上ビット24との間から固定治具32を取り外し、上ビット17の第1上ビット23と第2ビット24との間を連結治具26によって回動自在に連結した状態とする。
【0041】
そして、図9(b)に示すように、各第1スライド用治具38及び各第2スライド用治具39を上フレーム8及び中フレーム10に沿ってスライドさせて、各アクチュエータ35を所定の位置に位置決め、固定し、ケリーバ3にセンターロッド2を介して拡幅掘削装置1を取り付け、拡幅掘削装置1を杭坑内に挿入し、節部を掘削する位置まで下降させる。
【0042】
そして、アクチュエータ35を作動させて中フレーム10を下降させ、中フレーム10に追従させて両掘削ビット16、16を下方に押し下げ、各掘削ビット16の上ビット17と下ビット20との間を径方向外方に屈曲させ、上ビット17の第1ビット23と第2ビット24との間を径方向内方に屈曲させる。
【0043】
そして、アクチュエータ35の作動と同時にケリーバ3を回転させて、センターロッド2を介して拡幅掘削装置1を回転駆動させ、各掘削ビット16の上ビット17と下ビット20との屈曲角度、及び第1上ビット23と第2上ビット24との間の屈曲角度を徐々に強めながら、上ビット17と下ビット20の掘削刃22によって杭坑の内壁面の掘削を開始する。
【0044】
そして、下ビット20の外面側が屈曲角度制限治具41に当接するまで、上ビット17と下ビット20との間の屈曲角度、及び第1上ビット23と第2上ビット24との間の屈曲角度を強めることにより、上ビット17及び下ビット20に対応する内壁面の部分が拡幅掘削され、所定の角度の上壁面及び下壁面に形成される。この場合、上壁面は鉛直線に対しての傾きが約30〜45°、下壁面は鉛直線に対しての傾きが約45°になるまで拡幅掘削される。また、両アクチュエータ35、35の間隔を調整することにより、拡幅幅を300〜500mmの範囲内で調整できる。
【0045】
なお、上壁面及び下壁面の鉛直線に対する傾きは、アクチュエータ35の上フレーム8及び中フレーム10に対する取り付け位置、下ビット20の下フレーム9に対する固定位置、屈曲角度制限治具41の下フレーム9に対する固定位置を調整することにより、所定の範囲内で変更できる。但し、図10(b)に示すように、アクチュエータ35がセンターロッド2と干渉しない範囲内に制限される。
【0046】
上記のように構成した本実施の形態による拡幅掘削装置1にあっては、掘削手段15の両掘削ビット16を、上ビット17と下ビット20とによって構成して、両ビット17、20をピン21を介して屈伸自在に回動自在に連結するとともに、上ビット17を第1上ビット23と第2上ビット24とに分割して、両ビット23、24を屈曲角度調整機構25を介して回動可能、かつ伸長状態に固定可能に連結し、さらに、上ビット17の一端を第1ピン18及び第2ピン19を介してアクチュエータ35側の第2スライド用治具39に回動可能、かつ固定可能に連結し、そして、アクチュエータ35の上フレーム及び中フレームに対する取付け位置を調整可能、下ビットの下フレームに対する取付け位置を調整可能、屈曲角度制限治具の下フレームに対する取付け位置を調整可能としたので、拡幅掘削対象箇所の上壁面の傾き、下壁面の傾きを広い角度範囲内で任意に設定することができる。従って、設計の自由度を大幅に高めることができる。
【0047】
また、拡幅掘削対象部分の拡幅角度に応じてビットを交換する必要がないので、設備費を大幅に削減することができるとともに、拡幅掘削作業の効率を大幅に高めることができ、工費を大幅に削減することができる。さらに、両アクチュエータ35、35間の間隔を調整することにより、拡幅幅を独立して調整することができる。
【0048】
なお、前記の説明においては、掘削ビットの上ビットを第1上ビットと第2上ビットの2つに分割して、両者を回動可能かつ伸長した状態に固定可能に連結したが、上ビットを3つ以上に分割して、隣接する分割ビット間を回動可能かつ伸長した状態に固定可能に連結してもよい。また、上ビットの代わりに、下ビットを2つ以上に分割して、隣接する分割ビットを間を回動可能かつ伸長した状態に固定可能に連結してもよい。さらに、上ビットと下ビットの両方を2つ以上に分割して、各ビットの隣接する分割ビット間を回動可能かつ伸長した状態に固定可能に連結してもよい。さらに、上ビット及び下ビットは、分割しなくてもよい。さらに、前記の説明においては、上ビット側にアクチュエータを設けたが、下ビット側にアクチュエータを設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明による拡幅掘削装置の一実施の形態の全体を示す正面図である。
【図2】図1の内部構造を示す説明図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図2の第1スライド用治具付近の拡大図である。
【図5】図2の第2スライド用治具付近の拡大図である。
【図6】図2の部分拡大図であって、(a)は第1上ビットと第2上ビットとを回動自在に連結した状態を示し、(b)は第1上ビットと第2上ビットとを伸長状態に固定した状態を示す説明図である。
【図7】本発明による拡幅掘削装置の動作を示す説明図であって、(a)は拡幅掘削装置の掘削ビットを15〜25°の屈曲角度に設定した状態を示し、(b)は(a)の状態から掘削ビットの屈曲角度を強めた状態を示す説明図である。
【図8】本発明による拡幅掘削装置の動作を示す説明図であって、(a)は拡幅掘削装置の掘削ビットを15〜25°の拡幅掘削用に設定した状態を示し、(b)は拡幅掘削開始直後の状態を示し、(c)は拡幅掘削終了直後の状態を示す説明図である。
【図9】本発明による拡幅掘削装置の動作を示した説明図であって、(a)は拡幅掘削装置の掘削ビットを35〜45°の拡幅掘削用に設定した状態を示し、(b)は(a)の状態から掘削ビットの屈曲角度を強めた状態を示す説明図である。
【図10】本発明による拡幅掘削装置の掘削ビットの屈曲角度とアクチュエータとの位置関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 拡幅掘削装置 2 センターロッド
3 ケリーバ 4 ケーシング
5 周壁 6 窓
7 下蓋 8 上フレーム
9 下フレーム 10 中フレーム
11 案内ガイド 12 バケット
13 案内ガイド 15 掘削手段
16 掘削ビット 17 上ビット
18 第1ピン 19 第2ピン
20 下ビット 21 ピン
22 掘削刃 23 第1上ビット
24 第2上ビット 25 屈曲角度調整機構
26 連結治具 27 第1連結部
28 溝部 29 第2連結部
30 突部 31 連結ピン
32 固定治具 33 固定板
34 ボルト 35 アクチュエータ
36 シリンダ 37 ロッド
38 第1スライド用治具 39 第2スライド用治具
40 ピン 41 屈曲角度制限治具
45 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体に取り付けられて用いられ、場所打ちコンクリート杭の杭坑を拡幅するための杭坑拡幅装置であって、
屈伸自在に連結される上ビットと下ビットとからなる掘削ビットと、
該掘削ビットの上ビット又は下ビットの何れか一方を押圧することにより、上ビットと下ビットとを所定の角度に屈曲させるアクチュエータとを備え、
前記アクチュエータと前記上ビット又は下ビットとの間が回動可能に連結されており、前記上ビットと下ビットを屈曲させた状態で前記回転体と共に回転させることにより、その屈曲角度に応じた角度で杭坑の内壁面を拡幅掘削することを特徴とする拡幅掘削装置。
【請求項2】
前記掘削ビットの上ビット又は下ビットの少なくとも何れか一方を、少なくとも二つに分割し、隣接する分割ビット間を角度調整機構を介して屈曲可能に連結したことを特徴とする請求項1に記載の拡幅掘削装置。
【請求項3】
前記角度調整機構は、一方の分割ビットと他方の分割ビットとを相対的に回動自在に連結する連結治具と、一方の分割ビットと他方の分割ビットとを伸長した状態に固定する固定治具とを備えていることを特徴とする請求項2に記載の拡幅掘削装置。
【請求項4】
請求項1から3のうち何れか1項に記載の拡幅掘削装置を用いて場所打ちコンクリート杭の杭坑を拡幅するための杭坑拡幅方法であって、
前記拡幅掘削装置を前記回転体に取り付け、
前記杭坑内の拡幅部掘削位置まで前記拡幅掘削装置を降下させ、
前記回転体を回転させながら、前記アクチュエータによって前記上ビットと前記下ビットとの屈曲角度を増加させていくことにより、拡幅掘削を行うことを特徴とする杭坑拡幅方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−219867(P2006−219867A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−33056(P2005−33056)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(504365799)株式会社特殊構工法計画研究所 (26)
【出願人】(000157289)丸五基礎工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】