説明

拡張現実感表示システム

【課題】電源が不要で携帯性に優れながら多くのパターンを表現できるマーカを用い、各マーカに対応した電子情報を映像に重畳する際に不要な電子情報が映像に重畳されることは回避できる拡張現実感表示システムを提供する。
【解決手段】拡張現実感表示システム1は、表面および裏面の少なくともいずれか一方の少なくとも一部に着色部分が形成され、複数通りの手順で折られることで、着色部分と他の部分とにより複数のパターンを個別に表現可能なシートを有するマーカ4と、マーカ4を含む領域を撮影するカメラ3と、カメラ3で撮影された映像に電子情報を重畳して表示する拡張現実感表示装置2とを備え、拡張現実感表示装置2は、カメラ3で撮影された映像中のマーカ4を検出するマーカ検出部242と、マーカ4のパターンに対応した電子情報を映像に重畳する重畳部243と、電子情報が重畳された映像を表示する表示部23とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡張現実感(AR:Augmented Reality)技術を用いた拡張現実感表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラによって撮影された現実環境(現実空間)の映像にコンピュータグラフィックス(CG)により作成された画像、文字情報等の電子情報を重畳して表示することにより、現実環境の情報を拡張する拡張現実感技術が知られている。
【0003】
この拡張現実感技術において、カメラで撮影された映像に電子情報を重畳するための目印としてマーカを用いる方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この場合に用いられるマーカは、例えば、紙等からなるシートに予め設定された大きさの黒い矩形の枠を印刷等により形成したものである。複数種類のマーカを使用する場合には、枠の内部にマーカの種類を特定するための文字、模様等からなるパターンが設けられる。
【0005】
このようなマーカを用いた拡張現実感表示システムでは、現実環境に置かれたマーカをカメラで撮影し、映像中のマーカの位置、向き、サイズ、パターンを検出する。そして、拡張現実感表示システムは、検出結果に応じて映像に重畳する電子情報の位置、向き、サイズを決定し、マーカのパターンに応じた電子情報を映像に重畳する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−48484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、マーカを用いた拡張現実感表示システムでは、映像に重畳する電子情報を変えるために、複数種類のマーカを用いる。
【0008】
シートの両面にそれぞれ1種類ずつマーカを形成すると、1枚のシートあたりに最大で2種類のマーカしか設けられない。したがって、多くの種類のマーカが必要な場合は、多くの枚数のマーカシートを用意しなければならず、携帯等に不便である。
【0009】
これに対し、1枚のシートの両面にそれぞれ複数種類のマーカを形成すれば、1枚のシートあたりに形成できるマーカの種類を増やすことができる。しかし、このようなマーカシートでは、1つの種類のマーカだけを検出したい場合でも、同じ面上の他のマーカも検出してしまい、その結果、不要な電子情報が映像に重畳されてしまうおそれがある。
【0010】
また、液晶表示装置等の電子表示装置を用いて、複数種類のマーカを切り替え表示可能とする方法もあるが、電子機器のため電源が必要であり、重量やフレキシブル性の点で携帯に不便であるという不都合がある。
【0011】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、電源が不要で携帯性に優れながら多くのパターンを表現できるマーカを用い、各マーカに対応した電子情報を映像に重畳する際に不要な電子情報が映像に重畳されることは回避できる拡張現実感表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る拡張現実感表示システムの第1の特徴は、表面および裏面の少なくともいずれか一方の少なくとも一部に着色部分が形成され、複数通りの手順で折られることで、前記着色部分と他の部分とにより複数のパターンを個別に表現可能なシートを有するマーカと、前記マーカを含む領域を撮影する撮影装置と、前記撮影装置で撮影された映像に電子情報を重畳して表示する拡張現実感表示装置とを備え、前記拡張現実感表示装置は、前記撮影装置で撮影された映像中の前記マーカを検出するマーカ検出部と、前記マーカ検出部で検出した前記マーカのパターンに対応した電子情報を、前記撮影装置で撮影された映像に重畳する重畳部と、前記重畳部で電子情報が重畳された映像を表示する表示部とを備えることにある。
【0013】
本発明に係る拡張現実感表示システムの第2の特徴は、表面および裏面の少なくともいずれか一方の少なくとも一部に着色部分が形成され、複数通りの手順で折られることで、前記着色部分と他の部分とにより複数のパターンを個別に表現可能なシートを有するマーカと、前記マーカを含む領域を撮影する撮影装置と、前記撮影装置で撮影された映像をネットワークを介して取得し、取得した映像に電子情報を重畳するサーバ装置と、前記サーバ装置で電子情報が重畳された映像をネットワークを介して取得して表示する拡張現実感表示装置とを備え、前記サーバ装置は、前記撮影装置で撮影された映像中の前記マーカを検出するマーカ検出部と、前記マーカ検出部で検出した前記マーカのパターンに対応した電子情報を、前記撮影装置で撮影された映像に重畳する重畳部とを備えることにある。
【0014】
本発明に係る拡張現実感表示システムおいて、前記マーカは、前記複数のパターンにより、文字および記号の少なくともいずれか一方を含む文字記号列を表現可能であり、前記重畳部は、前記文字記号列の示す情報に関連する電子情報を映像に重畳することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る拡張現実感表示システムの第1の特徴によれば、折られることで着色部分と他の部分とにより複数のパターンを個別に表現可能なシートを有するマーカを用いるので、マーカは電源が不要で携帯性に優れながら多くのパターンを表現でき、また、所望のパターンが完成したときには、1つのマーカのみが表現されているため、マーカに対応した電子情報を映像に重畳する際に不要な電子情報が映像に重畳されることを回避できる。
【0016】
本発明に係る拡張現実感表示システムの第2の特徴によれば、上記第1の特徴と同様の効果とともに、電子情報を映像に重畳する処理をサーバ装置で行うことで、拡張現実感表示装置には拡張現実感技術に関するソフトウェアをインストールしなくても、電子情報が重畳された映像をユーザに提供できるという効果が得られる。
【0017】
また、マーカのパターンにより文字記号列を表現可能とし、この文字記号列の示す情報に関連する電子情報を映像に重畳するようにすることで、ユーザに電子情報の内容を強く印象付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施の形態に係る拡張現実感表示システムの概略構成図である。
【図2】第1の実施の形態に係る拡張現実感表示システムの機能構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施の形態におけるマーカを形成するためのシートの構成を示す図である。
【図4】第1の実施の形態におけるシートの一例を示す図である。
【図5】第1の実施の形態におけるシートにより形成可能な各パターンの一例を示す図である。
【図6】拡張現実感表示装置のハードウェア構成例を示す図である。
【図7】電子情報が重畳された映像の一例を示す図である。
【図8】第2の実施の形態に係る拡張現実感表示システムの機能構成を示すブロック図である。
【図9】第2の実施の形態におけるマーカの構成を示す図である。
【図10】第2の実施の形態のマーカにおけるシートの折り方の一例を示す図である。
【図11】第2の実施の形態のマーカにおけるシートで表現可能なパターンの具体例を示す図である。
【図12】電子情報が重畳された映像の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る拡張現実感表示システムの概略構成図、図2は、図1に示す拡張現実感表示システムの機能構成を示すブロック図である。
【0021】
図1、図2に示すように、第1の実施の形態に係る拡張現実感表示システム1は、パーソナルコンピュータ(PC)等の情報処理装置からなる拡張現実感表示装置2と、カメラ(撮影装置)3と、拡張現実感技術で用いられるマーカ4とを備える。
【0022】
拡張現実感表示装置2は、図2に示すように、入力部21と、記憶部22と、表示部23と、制御部24と、通信部25とを備える。
【0023】
入力部21は、ユーザによる各種入力操作を受け付け、操作に基づく操作信号を出力する。
【0024】
記憶部22は、マーカ4で表現可能なすべてのパターンに対応する電子情報を記憶している。記憶部22に記憶される電子情報は、拡張現実感表示装置2や外部装置等を用いて予め生成されたものである。電子情報は、記録媒体から読み取って拡張現実感表示装置2に取り込んでもよいし、通信部25によりネットワーク等を介して拡張現実感表示装置2に取り込んでもよい。電子情報としては、コンピュータグラフィックスにより作成された3次元(3D)モデル、実画像、アニメーション、文字情報等を用いることができる。
【0025】
表示部23は、カメラ3で撮影された映像、およびその映像に重畳された電子情報を表示する。
【0026】
制御部24は、拡張現実感表示装置2に接続されたカメラ3を制御するカメラ制御部241と、カメラ3で撮影された映像中のマーカ4を検出するマーカ検出部242と、マーカ検出部242で検出したマーカ4のパターンに対応した電子情報をカメラ3で撮影された映像に重畳する重畳部243と、表示部23の表示を制御する表示制御部244とを備える。
【0027】
通信部25は、拡張現実感表示装置2をインターネット等のネットワークに接続するためのものである。
【0028】
カメラ3は、拡張現実感表示装置2に接続されたウェブカメラ等からなる。カメラ3は、ユーザ操作等に応じて、その撮影する方向を変えられるように構成されている。
【0029】
マーカ4は、黒い矩形の枠と、この枠の内部に表示される文字、模様等からなるパターンとにより構成される。枠内のパターンによりマーカの種類が特定される。
【0030】
本実施の形態におけるマーカ4は、図3に示すようなシート5を用いて構成される。シート5は、紙等の薄いシート状の折り曲げ可能な材質からなり、外形が正方形で、その中央部分がくり抜かれた形状を有する。シート5のくり抜かれた中央部分は、その一辺が外形の一辺の半分の長さの正方形になっている。
【0031】
そして、図3(a),(b)に示すように、シート5の両面それぞれに、図中の破線で区切られる12個の正方形のマス目が形成されている。各マス目を区切る破線は、ユーザによって山折りまたは谷折りにされる折り目線を示す。
【0032】
図中の各マス目に示した「A」〜「F」のアルファベットは、各マス目の対応関係を示している。同じアルファベットのマス目を組み合わせることで、1種類のマーカが形成されるようになっている。
【0033】
例えば、図3(a)における折り目線6a,6c,6f,6hを谷折りし、折り目線6b,6d,6e,6gを山折りすることで、図3(c)に示すような、「A」に対応したマス目を組み合わせたマーカ4が形成される。なお、上記の折り方は一例であり、他の折り方でも「A」に対応したマーカ4を形成可能である。
【0034】
「A」に対応する4つの各マス目には、例えば、図4(a)に示すような図柄が形成されている。図4(a)中において黒く塗られている部分は、シート5において黒く着色された部分であり、着色されていない他の部分は、シート5の地の色である白い部分である。なお、他のアルファベット「B」〜「F」に対応するマス目にも、それぞれに対応したパターンを有するマーカを形成するための着色部分が形成されているが、ここでは図示を省略している。
【0035】
図4(a)のようなシート5を上述の手順で折る作業をユーザが行うことで、図4(b)のような、黒い枠と、その内部に「abcd」という文字からなるパターンを有するマーカ4が形成される。
【0036】
このように、シート5は、ユーザが折る作業を行うことでマーカ4を完成させる折り紙パズルになっている。各マス目に形成された着色部分と他の部分とにより、「A」〜「F」に対応した6種類のマーカ4を1枚のシート5で個別に表現可能である。
【0037】
上記のようなシート5において、折り曲げたシート5の弾性でマーカ4において各マス目に高低差が生じると、光の陰影の影響により拡張現実感表示装置2でマーカ4が検出されにくくなるおそれがある。これを避けるために、無色透明のアクリル板等を用いてマーカ4を挟み込むようにしてもよい。
【0038】
なお、1枚のシート5で表現可能な各パターンを文字または記号とし、各パターンにより、意味のある文字記号列を表現可能であるようにすることが望ましい。さらに、この文字記号列の示す情報に関連する電子情報を映像に重畳するようにすることが望ましい。
【0039】
例えば、シート5で表現可能な各パターンのマーカにより、図5に示すように、「プリンターX」という文字列を表現できるようにする。そして、このようなマーカに対応して映像に重畳される電子情報を、プリンター(印刷装置)に関する情報とする。このようにすることで、ユーザに折り紙パズルの完成の動機付けを与えるとともに、電子情報の内容を強く印象付けることができる。
【0040】
ここで、拡張現実感表示装置2の具体的なハードウェア構成について説明する。図6は、拡張現実感表示装置2のハードウェア構成例を示す図である。
【0041】
図6において、CPU101、RAM102、ROM103、および入出力インタフェース108が、バス109を介して接続されている。入出力インタフェース108には、入力装置104、記憶装置105、表示装置106、および通信制御装置107が接続されている。
【0042】
CPU101は、拡張現実感表示装置2全体を制御する中央演算処理装置であり、図2の制御部24の機能を果たすものである。
【0043】
RAM102は、一時的なデータの保存や演算時におけるCPU101のワークエリアとして使用される。ROM103は、起動時の動作プログラム等を格納する。
【0044】
入力装置104は、キーボードやマウス等からなり、図2の入力部21の機能を果たすものである。
【0045】
記憶装置105は、ハードディスク等からなり、図2の記憶部22の機能を果たすものであり、カメラ3で撮影された映像に重畳する電子情報を記憶する。また、記憶装置105は、拡張現実感技術に関するアプリケーションソフト等の各種のプログラムを格納している。CPU101が記憶装置105からRAM102へプログラムを読み込んで実行すること等により、図2の制御部24のカメラ制御部241、マーカ検出部242、重畳部243、表示制御部244の機能が実現される。
【0046】
表示装置106は、液晶ディスプレイ等からなり、図2の表示部23に該当するものである。
【0047】
通信制御装置107は、図2の通信部25の機能を果たすものであり、拡張現実感表示装置2をインターネット等のネットワークに接続して通信を行うための装置である。
【0048】
次に、第1の実施の形態における拡張現実感表示システム1の動作について説明する。
【0049】
本実施の形態では、図3に示したシート5における「A」〜「F」に対応した手順でユーザが折る作業を行うことにより、図5に示すような「プ」、「リ」、「ン」、「タ」、「ー」、「X」という6つの文字のパターンのマーカ4を形成できるような図柄が、シート5の各マス目に形成されているものとする。また、このようなマーカ4に対応して映像に重畳される電子情報が記憶部22に記憶されているものとする。また、図5のように「プ」→「リ」→「ン」→「タ」→「ー」→「X」の順でマーカを完成させるべきであるものとする。
【0050】
拡張現実感表示システム1において、カメラ3により撮影される領域にマーカ4が置かれていない状態では、カメラ3で撮影された映像が拡張現実感表示装置2の表示部23にそのまま表示される。
【0051】
ユーザが、シート5により「プ」のパターンのマーカ4を完成させ、そのマーカ4をカメラ3で撮影される領域内に置くと、マーカ検出部242は、カメラ3で撮影された映像から、映像上のマーカ4の位置、向き、サイズを検出するとともに、公知のテンプレートマッチングの手法等を用いてマーカ4のパターンを検出する。
【0052】
次いで、重畳部243は、マーカ検出部242で検出したマーカ4のパターンに対応する電子情報を記憶部22から取得し、この電子情報をカメラ3で撮影された映像に重畳する。この際、重畳部243は、マーカ検出部242で検出したマーカ4の位置、向き、サイズに基づいて、拡張現実感技術により、映像に重畳する電子情報の位置、向き、サイズを決定する。
【0053】
そして、表示制御部244は、重畳部243により電子情報が重畳された映像を表示部23に表示するよう制御する。
【0054】
表示部23に表示される電子情報が重畳された映像の一例を図7に示す。なお、図7では、簡略化のため、マーカ4以外の被写体は図示を省略している。
【0055】
本実施の形態では、映像に重畳される電子情報は、印刷装置の新製品である「プリンターX」に関する情報であるものとする。図7に示す映像では、「プ」のパターンに対応する電子情報として、印刷装置の外観を示す画像30と、新製品の案内であることを示す文字情報31とが重畳されている。
【0056】
なお、拡張現実感技術では、撮影中にカメラ3の向きが変わったり、マーカ4が移動されたりしたことにより映像中のマーカの位置、向き、サイズが変動した場合、それに連動して、映像に重畳される電子情報の表示位置等も変動する。特に3Dモデルでは、マーカの向きに応じて3Dモデルのアングルが変動する。そこで、印刷装置の画像30を3Dモデルとすると、ユーザはマーカ4の姿勢を変化させること等により、さまざまなアングルの印刷装置の3Dモデルを見ることができる。
【0057】
「プ」のパターンに対応する電子情報が重畳された画像を確認すると、次にユーザが完成させるべきなのは、「リ」のパターンのマーカ4である。図7に示すように、この順番をユーザに知らせるための文字情報32を映像に重畳するようにしてもよい。
【0058】
ユーザが、「リ」のパターンのマーカ4を完成させ、そのマーカ4をカメラ3で撮影される領域内に置くと、拡張現実感表示装置2は、上記説明と同様の手順により、「リ」のパターンに対応する電子情報を重畳した映像(図示せず)を表示する。以下、「ン」、「タ」、「ー」、「X」の各パターンについても同様である。
【0059】
この例では、各パターンに応じて映像に重畳表示される電子情報は、印刷装置の新製品に関する情報であるが、パターン順に応じて順に表示される各電子情報の内容が、連続性、ストーリー性、規則性等を有するようにすることが望ましい。このようにすることで、ユーザに電子情報の内容をより強く印象付けることができる。
【0060】
以上説明したように、第1の実施の形態によれば、折り紙パズルを構成するシート5を用いることで、少ない枚数のシート5で多くのパターンのマーカ4を形成できる。シート5は紙等で構成されるため、電源が不要で携帯性に優れる。
【0061】
また、ユーザは、折り紙パズルを楽しみつつ、拡張現実感技術により映像に重畳された情報を得ることができる。
【0062】
また、所望のパターンが完成したときには、1つのマーカのみが表現されているため、他のマーカが映像中に検出され、その結果として不要な電子情報が映像に重畳されることを回避できる。
【0063】
(第2の実施の形態)
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る拡張現実感表示システムの機能構成を示すブロック図である。図8に示すように、第2の実施の形態に係る拡張現実感表示システム1Aは、拡張現実感表示装置2Aと、カメラ3と、マーカ4と、サーバ装置6とを備えて概略構成される。拡張現実感表示装置2Aとサーバ装置6とはインターネット等のネットワーク10を介して接続可能である。
【0064】
拡張現実感表示装置2Aは、入力部21と、表示部23と、通信部25と、制御部26とを備える。
【0065】
入力部21、表示部23、および通信部25は、図2に示した第1の実施の形態の拡張現実感表示装置2におけるものと同様である。
【0066】
制御部26は、拡張現実感表示装置2Aに接続されたカメラ3を制御するカメラ制御部261と、ネットワーク10上でサーバ装置6が公開するウェブサイトを閲覧するためのブラウザ部262とを備える。
【0067】
カメラ3は、拡張現実感表示装置2Aに接続されたウェブカメラである。マーカ4は、第1の実施の形態で説明した折り紙パズルを構成するシート5からなる。
【0068】
サーバ装置6は、ネットワーク10を介してアクセスされる拡張現実感表示装置2Aに対し、カメラ3で撮影された映像に拡張現実感技術により電子情報を重畳し、この電子情報が重畳された映像を提供する機能を有している。サーバ装置6は、記憶部61と、制御部62と、通信部63とを備える。
【0069】
記憶部61は、マーカ4で表現可能な各パターンに対応する電子情報を記憶している。
【0070】
制御部62は、拡張現実感表示装置2Aから送られてくるカメラ3で撮影された映像中のマーカ4を検出するマーカ検出部621と、マーカ検出部621で検出したマーカ4のパターンに対応した電子情報をカメラ3で撮影された映像に重畳する重畳部622とを備える。
【0071】
通信部63は、ネットワーク10を介して拡張現実感表示装置2Aとの通信を行い、映像等のデータの送受信を行う。
【0072】
上記のような拡張現実感表示装置2Aおよびサーバ装置6も、図5に示した構成と同等のハードウェア構成で実現可能である。
【0073】
次に、第2の実施の形態における拡張現実感表示システム1Aの動作について説明する。
【0074】
ここでは、業者がダイレクトメールを利用してマーカ4(シート5)をユーザに提供し、マーカ4を用いる拡張現実感技術を利用したサービスを提供するものとする。そして、サーバ装置6は、ダイレクトメールの送付元の業者のウェブサイトを公開するサーバであるとする。
【0075】
拡張現実感表示装置2Aのブラウザ部262は、ユーザの操作に応じて、ダイレクトメールの送付元の業者のウェブサイトにおける、拡張現実感技術による映像を見るためのウェブページにアクセスする。そして、ブラウザ部262は、カメラ3により撮影された映像を、サーバ装置6に送信する。
【0076】
サーバ装置6のマーカ検出部621は、拡張現実感表示装置2Aから受信した映像から、マーカ4を検出する処理を行う。映像中にマーカ4が検出されない場合は、重畳部622による電子情報を重畳する処理は行わず、制御部62は、ウェブページの所定領域に拡張現実感表示装置2Aから受信した映像を加えたデータを拡張現実感表示装置2Aに送信する。
【0077】
サーバ装置6からのデータを受信すると、拡張現実感表示装置2Aのブラウザ部262は、ブラウザ画面中に映像を表示する領域を有するウェブページを表示部23に表示させる。カメラ3により撮影される領域にマーカ4が置かれていない状態では、カメラ3で撮影された映像がそのままブラウザ画面中に表示される。
【0078】
ユーザが、シート5から「プ」のパターンのマーカ4を完成させ、そのマーカ4をカメラ3で撮影される領域内に置くと、サーバ装置6のマーカ検出部621は、拡張現実感表示装置2Aから受信した、カメラ3で撮影された映像から、映像上のマーカ4の位置、向き、サイズを検出するとともに、マーカ4のパターンを検出する。
【0079】
次いで、重畳部622は、マーカ検出部621で検出したマーカ4のパターンに対応する電子情報を記憶部61から取得し、この電子情報をカメラ3で撮影された映像に重畳する。この際、重畳部622は、マーカ検出部621で検出したマーカ4の位置、向き、サイズに基づいて、拡張現実感技術により、映像に重畳する電子情報の位置、向き、サイズを決定する。
【0080】
そして、重畳部622は、電子情報が重畳された映像を、通信部63を介して拡張現実感表示装置2Aに送信する。
【0081】
拡張現実感表示装置2Aのブラウザ部262は、サーバ装置6において重畳部622により電子情報が重畳された映像をブラウザ画面中に表示させる。
【0082】
これにより、第1の実施の形態で示した図7と同様の、電子情報が重畳された映像がブラウザ画面中に表示される。以下、第1の実施の形態と同様に、ユーザが各パターンのマーカ4を順次完成させ、そのマーカ4をカメラ3で撮影される領域内に置くと、それに応じて、各パターンに対応した電子情報が重畳された映像がブラウザ画面中に表示される。
【0083】
このような第2の実施の形態においても、1枚で複数種類のマーカ4を個別に形成できる折り紙パズルからなるシート5を用いることで、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。また、拡張現実感技術より電子情報を映像に重畳する処理をサーバ装置6で行うので、拡張現実感表示装置2Aには拡張現実感技術に関するソフトウェアをインストールしなくても、電子情報が重畳された映像をユーザに提供できる。
【0084】
なお、上記各実施の形態では、図3に示したようなシート5を用いて形成されるマーカ4を用いたが、マーカはこのようなものに限らず、折られることにより、表面および裏面の少なくともいずれか一方の少なくとも一部に形成された着色部分と他の部分とにより複数のパターンを個別に表現可能なシートを有するものであればよい。例えば、図9に示すような、シート7aとマーカ枠7bとにより構成されるマーカ7を用いてもよい。
【0085】
シート7aは、紙等の薄いシート状の折り曲げ可能な材質からなり、図9(a)に示すように、外形が正方形で、一方の面がシート7aの地の色である白になっており、他方の面が黒く着色されている。
【0086】
シート7aを折ることにより、例えば図9(b)に示すようなパターンができる。このパターンに折られたシート7aを、図9(c)に示すように黒い矩形のマーカ枠7bの枠内に置くことで、マーカ7が形成される。
【0087】
マーカ枠7bは、例えば、無色透明のアクリル板に形成し、折り上がったシート7aを、このアクリル板と、白い板との間に挟みこむようにすればよい。これにより、図9(c)に示すように、シート7aの着色部分以外の領域を白くすることができる。
【0088】
図9(b)に示すパターンは、例えば、図10に示す手順でシート7aを折ることにより形成される。まず、シート7aの頂点の1つを図10(a)のように折る。次いで、図10(a)の手順でできたものを裏返し、図10(b)に示すように、図中右側から3分の1だけ折り返す。そして、図10(c)に示すように、図中上側から3分の1だけ折り返すことにより完成する。
【0089】
シート7aのようなシートは、折り方により、さまざまなパターンを形成できる。例えば、折り上がりの外形が正方形で、図11に示すようなさまざまなパターンを形成できる折り方があることが知られている。
【0090】
なお、図11では、各パターンの外形を同じ大きさで描いているが、大きさは同じとは限らない。また、図11に示したような折り上がりが正方形になるパターン以外にもさまざまなパターンが形成可能である。マーカ枠7bの内寸をシート7aの外寸と同程度以上にすれば、どのようなパターンでも折り上がったシート7aをマーカ枠7bの枠内に納めることができる。
【0091】
このようなマーカ7を用いれば、1枚のシート7aから、上記各実施の形態におけるマーカ4よりもさらに多くのパターンを形成できる。拡張現実感表示システム1,1Aにおいては、マーカ7で形成可能な複数のパターン予め設定しておき、これらのパターンに対応する電子情報を、記憶部22,61に記憶しておく。
【0092】
なお、このようなマーカ7は、上記各実施の形態におけるマーカ4のような、各パターンにより意味のある文字記号列を表現する用途に用いることには好適でない。そこで、娯楽としての折り紙パズルをユーザに提供する用途として、マーカ7を用いるようにしてもよい。この場合、例えば、ユーザが所定のパターンを完成した場合に、拡張現実感表示システム1,1Aにおいて、図12に示すような電子情報33を重畳した映像を表示するようにすればよい。
【符号の説明】
【0093】
1,1A 拡張現実感表示システム
2,2A 拡張現実感表示装置
3 カメラ
4,7 マーカ
5,7a シート
7b マーカ枠
6 サーバ装置
21 入力部
22,61 記憶部
23 表示部
24,26,62 制御部
25,63 通信部
241,261 カメラ制御部
242,621 マーカ検出部
243,622 重畳部
244 表示制御部
262 ブラウザ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面および裏面の少なくともいずれか一方の少なくとも一部に着色部分が形成され、複数通りの手順で折られることで、前記着色部分と他の部分とにより複数のパターンを個別に表現可能なシートを有するマーカと、
前記マーカを含む領域を撮影する撮影装置と、
前記撮影装置で撮影された映像に電子情報を重畳して表示する拡張現実感表示装置とを備え、
前記拡張現実感表示装置は、
前記撮影装置で撮影された映像中の前記マーカを検出するマーカ検出部と、
前記マーカ検出部で検出した前記マーカのパターンに対応した電子情報を、前記撮影装置で撮影された映像に重畳する重畳部と、
前記重畳部で電子情報が重畳された映像を表示する表示部と
を備えることを特徴とする拡張現実感表示システム。
【請求項2】
表面および裏面の少なくともいずれか一方の少なくとも一部に着色部分が形成され、複数通りの手順で折られることで、前記着色部分と他の部分とにより複数のパターンを個別に表現可能なシートを有するマーカと、
前記マーカを含む領域を撮影する撮影装置と、
前記撮影装置で撮影された映像をネットワークを介して取得し、取得した映像に電子情報を重畳するサーバ装置と、
前記サーバ装置で電子情報が重畳された映像をネットワークを介して取得して表示する拡張現実感表示装置とを備え、
前記サーバ装置は、
前記撮影装置で撮影された映像中の前記マーカを検出するマーカ検出部と、
前記マーカ検出部で検出した前記マーカのパターンに対応した電子情報を、前記撮影装置で撮影された映像に重畳する重畳部と
を備えることを特徴とする拡張現実感表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−3598(P2012−3598A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139431(P2010−139431)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】