説明

拡径掘削機

【課題】岩盤層に構築した水平トンネルに拡径部を効率的に設けることのできる拡径掘削機を提供する。
【解決手段】トンネル軸方向に間隔を存じて配され、トンネル軸方向に延設される一対のメインビーム4,4′と、これらメインビーム4,4′のそれぞれに摺動自在に設けられ、トンネル坑壁に接離自在なグリッパシュー7〜10;7′〜10′を有するグリッパ装置5,5′と、一対のメインビーム4,4′の間にトンネル周方向に旋回自在に設けられる旋回フレーム18と、この旋回フレーム18に支持されるとともに、トンネル半径方向に移動自在に設けられ、トンネル内周面を掘削するカッタホイール23とを備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に岩盤層において既に掘削形成されたトンネルの所定箇所を拡径掘削するのに用いられて好適な拡径掘削機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高レベル放射性廃棄物などの処分法として、地盤の安定した大深度の岩盤層に構築したトンネル内に、廃棄物を半永久的に貯蔵することが検討されている(例えば、特許文献1参照。)。このように岩盤層を利用して廃棄物を貯蔵するにあたっては、水平方向に形成したトンネルに拡径部を設け、この拡径部を利用してプラグを形成することが考えられる。ここで、プラグとは、トンネルと廃棄物が貯蔵された貯蔵区画とを仕切るために設けられる壁のことである。
【0003】
岩盤層に構築される水平トンネルに拡径部を設けるには、特許文献2にて提案されているようなトンネル拡幅装置を用いることが可能である。
【0004】
この特許文献2に係るトンネル拡幅装置は、トンネル内を移動自在なクローラ式の走行台車と、この走行台車上の本体フレームに取着される屈曲ブーム式の掘削機とを備えて構成されている。ここで、前記屈曲ブーム式の掘削機は、自由断面トンネル掘進機におけるものと同様のものであって、走行台車上の本体フレームに基部が枢支された屈曲ブームを備え、この屈曲ブームの先端部に装着される回転ヘッドにより地山を掘削することができるようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−181995号公報
【特許文献2】特開2001−82071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、水平トンネルにほぼ同じ大きさの拡径部を何箇所も設ける必要がある場合には、前記特許文献2に係るトンネル拡幅装置を用いて拡径することは作業効率が悪く好ましくない。
【0007】
本発明は、このような問題点を解消するためになされたもので、岩盤層に構築した水平トンネルに拡径部を効率的に設けることのできる拡径掘削機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明による拡径掘削機は、
岩盤層に水平方向に構築したトンネルに拡径部を掘削形成する拡径掘削機であって、
(a)トンネル軸方向に間隔を存して配され、トンネル軸方向に延設される一対のメインビーム、
(b)これらメインビームのそれぞれに摺動自在に設けられ、トンネル坑壁に接離自在なグリッパシューを有するグリッパ装置、
(c)前記一対のメインビームの間にトンネル周方向に旋回自在に設けられる旋回フレームおよび
(d)この旋回フレームに支持されるとともに、トンネル半径方向に移動自在に設けられ、トンネル内周面を掘削するカッタホイール
を備えることを特徴とするものである(第1発明)。
【0009】
本発明において、前記カッタホイールのトンネル内周面に対する掘削角度が可変とされるのが好ましい(第2発明)。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、グリッパシューをトンネル坑壁に押し付けた状態でグリッパ装置に対しメインビームをトンネル軸方向に摺動させることによってカッタホイールをトンネル軸方向に移動させる運動と、カッタホイールをトンネル半径方向に移動させる運動と、旋回フレームの旋回によってカッタホイールをトンネル周方向に旋回させる運動との組み合わせにより、トンネルに拡径部が掘削形成される。また、メインビームとグリッパ装置との相対的な移動動作を繰り返すことにより、トンネル内において拡径掘削機が自走にて移動される。本発明の拡径掘削機によれば、カッタホイールを地山に押し付ける際の反力を、カッタホイールを支持する旋回フレーム、この旋回フレームの両側に配されるメインビームおよび各メインビームに装備されるグリッパ装置を介してトンネル坑壁にとるようにされているので、かかる反力を安定的かつ十分に確保することができ、また、トンネル内を自走にて移動させることができるので、岩盤層に構築した水平トンネルに拡径部を効率的に設けることができる。
【0011】
また、第2発明の構成を採用することにより、拡径部の隅部をより効率良く掘削形成することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明による拡径掘削機の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1には本発明の一実施形態に係る拡径掘削機の側面図が、図2には同拡径掘削機の平面図が、それぞれ示されている。また、図3には図1におけるA矢視図が示されている。なお、図1および図2にそれぞれに示される拡径掘削機1において図の左側を前側と定めるものとする。
【0014】
本実施形態の拡径掘削機1は、例えば岩盤層において既に水平方向に掘削形成されたトンネル2に拡径部3を掘削形成するものであって、トンネル軸方向に間隔を存して配される一対のメインビーム4,4′を備えている。これらメインビーム4,4′はいずれもその断面が四角筒形状を呈してトンネル軸方向に延設されてなるものであり、各メインビーム4,4′にはグリッパ装置5,5′が摺動可能に装着されている。なお、この拡径掘削機1においては前部と後部とが対称構造を成しているため、以下においては拡径掘削機1の後部の構造を中心に説明することとし、拡径掘削機1の前部については図に「′」(ダッシュ)付きの同一符号を付すに留めてその構造説明を省略することとする。
【0015】
前記グリッパ装置5は、メインビーム4に摺動材を介して組み付けられるグリッパキャリア6を備えている。このグリッパキャリア6の周囲には、図3に示されるように、上下左右にそれぞれグリッパシュー7,8,9,10が配されており、上下のグリッパシュー7,8はグリッパキャリア6の左右それぞれの面に取着されたグリッパジャッキ11によって連結される一方、左右のグリッパシュー9,10はグリッパキャリア6の上下それぞれの面に取着されたグリッパジャッキ12によって連結されている。このグリッパ装置5においては、グリッパジャッキ11,12を伸長させることにより、上下左右のグリッパシュー7〜10がトンネル坑壁に押し付けられる一方、それらグリッパジャッキ11,12を収縮させることにより、上下左右のグリッパシュー7〜10がトンネル坑壁から離脱される。また、上下のグリッパシュー7,8を繋ぐグリッパジャッキ11の上下の伸び量を制御することにより、メインビーム4の上下方向の位置が調節される一方、左右のグリッパシュー9,10を繋ぐグリッパジャッキ12の左右の伸び量を制御することにより、メインビーム4の左右方向の位置が調節される。なお、前記グリッパシュー8には、後述するトンネル内移動動作の際に拡径部3を跨ぐようにトンネル坑壁底部に架け渡される桁13(H形鋼等の形鋼を組み合わせてなるもの)を受け入れ可能な窪み部8aが設けられている。こうして、拡径部3の掘削形成終了後、次の掘削地点への移動の際に、その桁13を用いて拡径部3をスムーズに通過することができるようにされている。
【0016】
前記左右のグリッパシュー9,10とメインビーム4とは、図1および図2にそれぞれ示されるように、スライドジャッキ14によって連結されており、グリッパジャッキ11,12を伸長させてグリッパシュー7〜10をトンネル坑壁に押し付けた状態でスライドジャッキ14を伸縮させると、グリッパ装置5に対しメインビーム4がトンネル軸方向に摺動され、これとは逆にグリッパジャッキ11,12を収縮させてグリッパシュー7〜10をトンネル坑壁から離脱させた状態でスライドジャッキ14を伸縮させると、メインビーム4に対しグリッパ装置5がトンネル軸方向に摺動されるようになっている。
【0017】
前記メインビーム4の後端面には、図3に示されるように、補助ジャッキ15が取着され、この補助ジャッキ15に、その補助ジャッキ15の伸縮によりトンネル坑壁下部に接離自在なサポートシュー16が取着されている。そして、補助ジャッキ15を伸長させてサポートシュー16をトンネル坑壁下部に押し付けることにより、グリッパシュー7〜10がトンネル坑壁から離脱されているときに拡径掘削機1をサポートシュー16にて支えることができるようになっている。
【0018】
前記一対のメインビーム4,4′の間には、図1および図2にそれぞれ示されるように、軸受装置17,17′を介して旋回フレーム18がトンネル周方向に旋回可能に設けられている。前記軸受装置17,17′には油圧モータ19,19′が組み付けられており、この油圧モータ19,19′の回転力がピニオンおよびリングギヤの組み合わせよりなる図示されない動力伝達機構を介して旋回フレーム18に伝達され、これによって旋回フレーム18がトンネル周方向に旋回されるようになっている。
【0019】
前記旋回フレーム18は図1に示される状態において上方に開放された箱形構造体を呈しており、その四隅にはテレスコピック形式の油圧シリンダよりなるスラストジャッキ20が配置されている。これらスラストジャッキ20において、本体部分は旋回フレーム18に固定され、ロッド先端部は後述のカッタホイール23を支持するカッタホイールサポート21とピン22により連結されている。ここで、これら4本のスラストジャッキ20のうち、前側に配される2本のスラストジャッキ20と、後側に配される2本のスラストジャッキ20とを選択的に伸縮させることにより、カッタホイールサポート21が前後方向(図1において左右方向)に傾動され、これによってカッタホイール23のトンネル内周面に対する掘削角度が可変とされている。
【0020】
前記カッタホイールサポート21には、当該カッタホイールサポート21が図1において実線にて示される状態において、トンネル内周面を掘削するカッタホイール23が、トンネル軸心Oと平行な軸心Oの回りに回転可能に取り付けられている。このカッタホイール23は、図4に示されるように、カッタホイールサポート21に軸支されるホイール24と、このホイール24の外周に配置される所要個数のディスクカッタ25とより構成されている。さらに、前記カッタホイールサポート21にはカッタホイール23の回転駆動源としての電動モータ26が組み付けられており、この電動モータ26の回転力が図示されない動力伝達機構を介してホイール24に伝達され、これによってカッタホイール23が軸心Oの回りに回転されるようになっている。
【0021】
本実施形態の拡径掘削機1においては、図1および図2にそれぞれ示されるように、後側のメインビーム4および軸受装置17を貫いてその先端部が旋回フレーム18内に突入されるようにベルトコンベヤ27が配設されている。このベルトコンベヤ27の先端部には、図4に示されるように、周知構造のホッパ28が付設され、このホッパ28に近接配置される可動式ホッパ29が図示されない支持手段を介して旋回フレーム18に取着されている。この可動式ホッパ29は、2枚の板材がスライド機構(図示省略)を介して重畳されてなる側板30を有し、この側板30を構成する下側の板材と上側の板材とがジャッキ31にて連結され、このジャッキ31の伸縮により、側板30が伸縮されるようになっている。この可動式ホッパ29においては、ジャッキ31の伸び量を制御することにより、カッタホイール23の掘削動作の進行に伴いトンネル半径方向に広がっていく掘削断面に側板30の先端を合わせるようにされる。ここで、この可動式ホッパ29は、旋回フレーム18と一緒になってトンネル周方向に旋回されるため、その開口が上方に向いているときには掘削ズリを受け止めてその掘削ズリをホッパ28に導き、一方、その開口が下方に向いているときにはトンネル底部(拡径部3底部)に堆積している掘削ズリを掻き寄せ、更にこの掻き寄せた掘削ズリを掬い上げてその開口が再度上方に向いたときにその掬い上げた掘削ズリをホッパ28へと導く役目を果たすことになる。こうして、可動式ホッパ29からホッパ28を介してベルトコンベヤ27上に落下された掘削ズリは、そのベルトコンベヤ27によって機外に搬出される。なお、側板30の先端部は、トンネル底部(拡径部3底部)に堆積している掘削ズリを掻き寄せて掬い込み易くするために、可動式ホッパ29の内側に向けて若干折り曲げられている。
【0022】
次に、以上に述べたように構成される拡径掘削機1の作動について以下に説明する。
【0023】
(掘削動作:図1および図4参照)
まず、グリッパジャッキ11,12;11′,12′を伸長させることにより、上下左右のグリッパシュー7〜10;7′〜10′をトンネル坑壁に押し付けた状態とする。そして、電動モータ26の作動にてカッタホイール23を回転させながら4本のスラストジャッキ20を伸長させてそのカッタホイール23をトンネル内周面に押し当てるとともに、油圧モータ19,19′の作動にて旋回フレーム18を旋回させてカッタホイール23をトンネル周方向に旋回させ、更に前側に配されるスライドジャッキ14′を伸長/収縮させると同時に後側に配されるスライドジャッキ14を収縮/伸長させることによりカッタホイール23を所定ストロークでトンネル軸方向に移動させる動作を1サイクルの掘削動作として、これを複数回繰り返すことにより、トンネル内周面に所定の幅と深さの拡径部3が掘削形成される。なお、この拡径部3の隅部を掘削形成する際には、前側に配される2本のスラストジャッキ20と後側に配される2本のスラストジャッキ20の伸び量に差を持たせてカッタホイールサポート21を傾動させることにより、カッタホイール23の掘削角度を拡径部3の隅部掘削に適応させるべく変化させる。
【0024】
(排土動作:図4参照)
カッタホイール23の掘削動作の進行に伴いトンネル半径方向に広がっていく掘削断面に側板30の先端を合わせるようにジャッキ31の伸び量を制御することにより、旋回フレーム18と一緒になってトンネル周方向に旋回される可動式ホッパ29の開口が上方に向いているときには掘削ズリが側板30で受け止められてホッパ28へと導かれ、その開口が下方に向いているときにはトンネル底部(拡径部3底部)に堆積している掘削ズリが側板30によって掻き寄せられ、更にこの掻き寄せられた掘削ズリが側板30により掬い上げられてその開口が再度上方に向いたときにその掬い上げられた掘削ズリがホッパ28へと導かれる。こうして、ホッパ28に導かれた掘削ズリは、ベルトコンベヤ27上に落下され、このベルトコンベヤ27によって機外に搬出される。
【0025】
(トンネル内移動動作:図5および図6参照)
掘削動作の終了後、図5(a)に示されるように、上下左右のグリッパシュー7〜10;7′〜10′をトンネル坑壁に押し付けた状態で、サポートシュー16,16′をトンネル坑壁下部から離脱させるとともに、4本のスラストジャッキ20の全縮にてカッタホイール23を旋回フレーム18側に格納する。
【0026】
この状態で、図5(b)に示されるように、前側のスライドジャッキ14′を伸長させると同時に後側のスライドジャッキ14を収縮させることにより、グリッパ装置5′,5に対しメインビーム4′,4をトンネル軸方向前方に摺動させて、旋回フレーム18をトンネル軸方向前方に移動させる。
【0027】
次いで、図5(c)に示されるように、サポートシュー16,16′をトンネル坑壁下部に押し付けて後に、上下左右のグリッパシュー7〜10;7′〜10′をトンネル坑壁から離脱させ、その後、前側のスライドジャッキ14′を収縮させると同時に後側のスライドジャッキ14を伸長させることにより、メインビーム4′,4に対しグリッパ装置5′,5をトンネル軸方向前方に移動させる。
【0028】
次いで、図5(d)に示されるように、桁13をグリッパ装置5における下側のグリッパシュー8の窪み部8a(図3参照)を通して拡径部3を跨ぐようにトンネル坑壁底部に架け渡すとともに、前側のグリッパ装置5′におけるグリッパシュー7′〜10′をトンネル坑壁に押し付ける。その後、サポートシュー16,16′をトンネル坑壁下部から離脱させる。これにより、後側のグリッパ装置5は桁13の上に載置された状態となる。そして、前側のスライドジャッキ14′を伸長させると同時に後側のスライドジャッキ14を収縮させることにより、グリッパ装置5′,5に対しメインビーム4′,4をトンネル軸方向前方に摺動させて、旋回フレーム18をトンネル軸方向前方に移動させる。
【0029】
次いで、図6(a)に示されるように、サポートシュー16,16′をトンネル坑壁下部に押し付けて桁13に対し後側のグリッパ装置5を浮かした状態とし、その後、前側のグリッパ装置5′における上下左右のグリッパシュー7′〜10′をトンネル坑壁から離脱させる。そして、前側のスライドジャッキ14′を収縮させると同時に後側のスライドジャッキ14を伸長させることにより、メインビーム4′,4に対しグリッパ装置5′,5をトンネル軸方向前方に移動させる。
【0030】
次いで、図6(b)に示されるように、前側のグリッパ装置5′におけるグリッパシュー7′〜10′をトンネル坑壁に押し付け、その後、サポートシュー16,16′をトンネル坑壁下部から離脱させる。これにより、後側のグリッパ装置5は桁13の上に載置された状態となる。そして、前側のスライドジャッキ14′を伸長させると同時に後側のスライドジャッキ14を収縮させることにより、グリッパ装置5′,5に対しメインビーム4′,4をトンネル軸方向前方に摺動させて、旋回フレーム18をトンネル軸方向前方に移動させる。
【0031】
次いで、図6(c)に示されるように、サポートシュー16,16′をトンネル坑壁下部に押し付けて桁13に対し後側のグリッパ装置5を浮かした状態とし、その後、前側のグリッパ装置5′における上下左右のグリッパシュー7′〜10′をトンネル坑壁から離脱させる。そして、前側のスライドジャッキ14′を収縮させると同時に後側のスライドジャッキ14を伸長させることにより、メインビーム4′,4に対しグリッパ装置5′,5をトンネル軸方向前方に移動させる。
【0032】
このように、メインビーム4,4′の移動動作とグリッパ装置5,5′の移動動作とを繰り返すことにより、トンネル2内において拡径掘削機1を自走にて移動させることができる。
【0033】
(トンネル曲線部移動動作:図7参照)
例えば、進行方向(図では左方向)に対し左側に曲がったトンネル曲線部2aにおいて拡径掘削機1を移動させる場合、トンネル坑壁に押し付けた状態にある左右のグリッパシュー9,10;9′,10′を繋ぐグリッパジャッキ12;12′の左右の伸び量を調整して、後側のメインビーム4を進行方向右側に変位量tだけ寄せるとともに、前側のメインビーム4′を進行方向左側に変位量tだけ寄せ、その後、前側のスライドジャッキ14′を伸長させると同時に後側のスライドジャッキ14を収縮させることにより、グリッパ装置5′,5に対しメインビーム4′,4をトンネル軸方向前方に摺動させ、旋回フレーム18をトンネル軸方向前方に移動させる。つまり、旋回フレーム18とグリッパ装置5,5′とを交互に移動させる動作にグリッパ装置5,5′によるメインビーム4,4′の左右方向位置調節動作を盛り込むことにより、トンネル曲線部2aにおいて拡径掘削機1をスムーズに移動させることができる。なお、同様の要領にて、進行方向に対し右側に曲がったトンネル曲線部においても拡径掘削機1をスムーズに移動させることができるのは言うまでもない。
【0034】
本実施形態の拡径掘削機1によれば、カッタホイール23を地山に押し付ける際の反力を、旋回フレーム18、この旋回フレーム18の両側に軸受装置17,17′を介して接続される一対のメインビーム4,4′および各メインビーム4,4′に装備されるグリッパ装置5,5′を介してトンネル坑壁にとるようにされているので、かかる反力を安定的かつ十分に確保することができ、またカッタホイール23のトンネル内周面に対する掘削角度を変化させることができ、更にトンネル2内を自走にて移動させることができるので、岩盤層における既設トンネル2の所定箇所に拡径部3を効率良く掘削形成することができる。
【0035】
なお、本実施形態においては、後側のグリッパ装置5が拡径部3を通過する際に桁13を利用する例を示したが、メインビーム4を延長し、それに合わせてスライドジャッキ14の伸縮ストロークを延長して、グリッパ装置5の移動ストロークを拡径部3の幅寸法よりも十分に大きくとることが可能な場合には、言い換えれば機長を長くとることが可能な場合には、桁13を用いることなくグリッパ装置5が拡径部3を通過することができるので、桁13は不要であり、当然にグリッパシュー8における窪み部8aも不要である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る拡径掘削機の側面図
【図2】本実施形態の拡径掘削機の平面図
【図3】図1におけるA矢視図
【図4】図1におけるB−B矢視図
【図5】拡径掘削機のトンネル内移動動作説明図(1)
【図6】拡径掘削機のトンネル内移動動作説明図(2)
【図7】拡径掘削機のトンネル曲線部移動動作説明図
【符号の説明】
【0037】
1 拡径掘削機
2 トンネル
3 拡径部
4,4′ メインビーム
5,5′ グリッパ装置
7〜10 グリッパシュー
7′〜10′ グリッパシュー
18 旋回フレーム
23 カッタホイール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
岩盤層に水平方向に構築したトンネルに拡径部を掘削形成する拡径掘削機であって、
(a)トンネル軸方向に間隔を存して配され、トンネル軸方向に延設される一対のメインビーム、
(b)これらメインビームのそれぞれに摺動自在に設けられ、トンネル坑壁に接離自在なグリッパシューを有するグリッパ装置、
(c)前記一対のメインビームの間にトンネル周方向に旋回自在に設けられる旋回フレームおよび
(d)この旋回フレームに支持されるとともに、トンネル半径方向に移動自在に設けられ、トンネル内周面を掘削するカッタホイール
を備えることを特徴とする拡径掘削機。
【請求項2】
前記カッタホイールのトンネル内周面に対する掘削角度が可変とされる請求項1に記載の拡径掘削機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−315144(P2007−315144A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148801(P2006−148801)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】