説明

拡径確認用ツール

【課題】拡径部が適正に形成されているか否かを簡便に確認することができる拡径確認用ツールを提供する。
【解決手段】アンカーボルトを固定する固定孔14の奥部に位置する拡径部16が適正に形成されているか否かを確認するための拡径確認用ツール10であって、固定孔14の内部における拡径部16に対応する位置において少なくとも一部が固定孔14の径方向に往復移動可能なように構成された可動部22と、可動部22を押圧することによって、可動部22の少なくとも一部を拡径部16の内側の空間Sに移動させる押圧部26と、固定孔14の外部に配置され、可動部22を押圧するための力を入力する操作部28とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンカーボルトを固定する固定孔の奥部に拡径部を形成した際に、当該拡径部が適正に形成されているか否かを確認するための拡径確認用ツールに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート躯体等のような基礎に対して設備機器等のような固定対象物を固定する際には、従来より、アンカーボルトを用いる固定方法が採用されている(特許文献1)。この固定方法は、簡単に言えば、(a)基礎に対して所定の深さで固定孔を形成する工程と、(b)固定孔の奥部を拡径して拡径部を形成する工程と、(c)固定孔にアンカーボルトを挿入する工程と、(d)アンカーボルトの端部を拡径部において拡径させる工程と、(e)アンカーボルトとナットとによって固定対象物を固定する工程とをこの記載順に実行するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2544021号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の固定方法によれば、上記(d)工程において、アンカーボルトの端部を拡径部において拡径させていることから、拡径部が適正に形成されている限り、アンカーボルトの拡径された端部を拡径部に係止させることが可能であり、アンカーボルトの抜けを防止することができる。しかし、従来では、「拡径部が適正に形成されているか否か」を確認する簡便な手段が存在せず、この確認作業は行われていなかったため、拡径部の形成不良が看過されるおそれがあり、アンカーボルトの抜けを確実に防止することができないという課題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、拡径部が適正に形成されているか否かを簡便に確認することができる、拡径確認用ツールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係る拡径確認用ツールは、アンカーボルトを固定する固定孔の奥部に位置する拡径部が適正に形成されているか否かを確認するための拡径確認用ツールであって、前記固定孔の内部における前記拡径部に対応する位置において少なくとも一部が前記固定孔の径方向に往復移動可能なように構成された可動部と、前記可動部を押圧することによって、前記可動部の少なくとも一部を前記拡径部の内側の空間に移動させる押圧部と、前記固定孔の外部に配置され、前記押圧部で前記可動部を押圧するための力を入力する操作部とを備える。
【0007】
この構成において、拡径部が適正に形成されている場合には、操作部から入力する力が小さくても、当該力を押圧部から可動部に作用させることによって可動部の少なくとも一部を拡径部の内側の空間にスムーズに移動させることができる。しかし、拡径部が適正に形成されていない場合には、可動部が拡径部の内面に引っ掛かったりするために、適正時にはなかった抵抗力が発生し、当該抵抗力が操作部に伝達されるようになる。したがって、操作部において当該抵抗力を検知すること(手指で感じ取ることを含む。)によって、拡径部が適正に形成されているか否かを確認することができる。たとえば、作業者の手の力を操作部から直接入力する場合には、作業者は操作部に伝達された上記抵抗力から拡径部の状態を瞬時に感じ取ることができる。
【0008】
前記押圧部は、前記固定孔の中心線に対して所定角度で傾斜する傾斜面を有するとともに、前記固定孔の深さ方向に往復移動可能なように構成されており、前記押圧部が前記固定孔の深さ方向に移動される際に前記可動部の少なくとも一部が前記傾斜面に押されて前記拡径部の内側の空間に移動されるものであってもよい。
【0009】
この構成では、固定孔の深さ方向に移動される押圧部から可動部に対して固定孔の径方向外側に向かう押圧力を作用させることができ、当該押圧力によって可動部の少なくとも一部を拡径部の内側の空間に移動させることができる。
【0010】
前記固定孔に挿入される筒状のツール本体と、前記ツール本体の内部に軸方向に移動可能なように配置された操作棒とを備えており、前記可動部は、前記ツール本体の先端部から前記ツール本体の軸方向に延びて、前記ツール本体の径方向に弾性変形可能なように構成されており、前記押圧部は、前記操作棒の先端部に設けられており、前記操作部は、前記操作棒の基端部に設けられているものであってもよい。
【0011】
この構成は、ツール本体に可動部を設けるとともに、操作棒に押圧部および操作部を設けたものであり、ツール本体の内部に操作棒が配置されていることから、装置全体をまとまりよく構成することができる。
【0012】
前記操作部は、人の手指が係止される係止部を有していてもよい。また、前記操作部は、前記ツール本体の外周面に軸方向に移動可能なように配置された環状部材を有しており、前記環状部材が、前記ツール本体に形成された孔を介して前記操作棒に固定されているものであってもよい。さらに、前記ツール本体の基端部側の開口は、人の手のひらを押し当てることができるように封止されていてもよい。
【0013】
これらの構成は、作業者の手の力を操作部から入力する場合に適したものであり、作業者は、手指と手のひらとを用いることによって、拡径確認用ツールを簡単に操作することができる。
【0014】
前記ツール本体の先端部には、前記固定孔の底部に当接される当接部が形成されていてもよい。
【0015】
この構成では、当接部を固定孔の底部に当接させることによって、ツール本体を固定孔の内部に簡単に位置決めすることができるとともに、可動部を拡径部に対応する位置に正確に位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の拡径確認用ツールによれば、アンカーボルトを固定する固定孔の奥部に拡径部を形成した際に、当該拡径部が適正に形成されているか否かを容易に確認することができる。また、構成が簡単であることから、安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明の第1実施形態に係る拡径確認用ツールの構成を示す斜視図である。
【図2】図2は本発明の第1実施形態に係る拡径確認用ツールの構成を示す分解正面図である。
【図3】図3は本発明の第1実施形態に係る拡径確認用ツールの要部の構成を示す斜視図である。
【図4】図4は固定孔の形成工程を示す正面図である。
【図5】図5(A)は拡径部の形成工程を示す正面図であり、図5(B)は当該工程で形成された拡径部を示す断面図である。
【図6】図6(A)は固定孔に第1実施形態に係る拡径確認用ツールを挿入した状態を示す正面図であり、図6(B)は固定孔において当該拡径確認用ツールを操作した状態を示す正面図である。
【図7】図7は固定孔にアンカーボルトを固定した状態を示す正面図である。
【図8】図8は本発明の第2実施形態に係る拡径確認用ツールの構成を示す正面図である。
【図9】図9(A)は固定孔に第3実施形態に係る拡径確認用ツールを挿入した状態を示す正面図であり、図9(B)は固定孔において当該拡径確認用ツールを操作した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
(第1実施形態)
[拡径確認用ツールの構成]
図1は、本発明の第1実施形態に係る拡径確認用ツール10の構成を示す斜視図であり、図2は、拡径確認用ツール10の構成を示す分解正面図であり、図3は、拡径確認用ツール10の要部の構成を示す斜視図である。
【0020】
拡径確認用ツール10は、図5に示すように、アンカーボルト12(図7)を固定する固定孔14の奥部に拡径部16を形成した際に、当該拡径部16が適正に形成されているか否かを確認するためのツールである。ここで、固定孔14の底部14aは、奥側に向かうにつれて縮径する略円錐状に形成されており、拡径部16は、固定孔14の底部14aからやや開口部14b側に離れた位置において、奥側に向かうにつれて拡径するテーパ状に形成されている。拡径確認用ツール10は、このような固定孔14および拡径部16の形状およびサイズに適合するように構成されている。
【0021】
拡径確認用ツール10は、図1および図2に示すように、固定孔14(図5(B))に挿入される筒状のツール本体18と、ツール本体18の内部に軸方向に移動可能なように配置された操作棒20と、ツール本体18の先端部に構成された2つの可動部22と、ツール本体18の先端部に可動部22とは独立して形成された2つの当接部24と、操作棒20の先端部に設けられた押圧部26と、操作棒20の基端部に設けられた操作部28とを備えている。なお、ツール本体18、操作棒20、可動部22、当接部24および押圧部26においては、固定孔14の底部14a(図5(B))側に位置する端部を「先端部」といい、その反対側に位置する端部を「基端部」という。
【0022】
ツール本体18は、図1および図2に示すように、金属またはプラスチック等からなる筒状部材であり、ツール本体18の外径は、固定孔14の内径よりもやや小さく設計されており、ツール本体18の内径は、操作棒20の外径よりもやや大きく設計されている。また、ツール本体18の厚さは、十分な強度を確保するために、可動部22の厚さよりも十分に厚く設計されている。そして、ツール本体18の基端部には、後述するピン30が挿通される2つの孔32が、ツール本体18の軸方向に十分な長さを有して、かつ、互いに対向して形成されており、当該基端部の外周面には、後述する環状部材34の適正位置を示す「標線」となる溝36が周方向(本実施形態では全周)に延びて形成されている。さらに、ツール本体18の基端部側の開口は、人の手のひらを押し当てることができるように封止されており、この封止された部分(以下、「封止部」という。)38は、押し当てた手が痛くならないように球面に仕上げられている。
【0023】
そして、ツール本体18の先端部には、図3に示すように、直管部40aとテーパ部40bとを有する筒状部40が軸方向に連続して構成されており、この筒状部40を軸方向に延びる4本の切込み線Lで分割するようにして、互いに対向する2つの可動部22と互いに対向する2つの当接部24とが構成されている。換言すると、2つの可動部22と2つの当接部24とによって、直管部40aとテーパ部40bとを有する筒状部40が構成されている。したがって、可動部22と当接部24とは互いに補強し合う関係となり、これにより構造的に強度を得難い可動部22の補強が図られている。
【0024】
可動部22は、ツール本体18の先端部からその軸方向に延びて形成された略長方形の板ばねであり、少なくとも一部が固定孔14の径方向に往復移動可能(本実施形態では弾性変形可能)なように構成されている。可動部22の厚さは、押圧部26から付与される押圧力によって可動部22がツール本体18の径方向外側に向けて弾性変形できる程度に設計されている。可動部22のうちテーパ部40bを構成する部分の内面は、押圧部26によって押圧される傾斜面22aとなっており、押圧部26の傾斜面26aが可動部22の傾斜面22aに押し当てられることによって、可動部22(基端部を除く。)が拡径部16(図5(B))の内側の空間Sに移動される。このような可動部22の移動を実現するためには、可動部22の少なくとも先端部が拡径部16と対応して位置している必要があることから、可動部22の長さは、当接部24の長さよりもやや短めに設計されている。さらに、可動部22のうちテーパ部40bを構成する部分の最大外径は、拡径部16の内側の空間Sに可動部22の少なくとも先端部を速やかに移動させることができるように、固定孔14の内径よりも大きくならない範囲で、直管部40aを構成する部分の最大外径よりも十分に大きく設計されている。
【0025】
当接部24は、ツール本体18の先端部からその軸方向に延びて形成された脚部24aと、脚部24aの先端部に形成された頭部24bとを有しており、頭部24bの先端面が固定孔14の底部14a(図5(B))に当接可能なように構成されている。また、頭部24bの厚さは、脚部24aの厚さよりも厚く設計されており、これにより頭部24bの強度が高められている。
【0026】
操作棒20は、金属またはプラスチック等からなる筒状または中実棒状(本実施形態では中実棒状)の部材であり、操作棒20の先端部には、押圧部26が一体的に形成されており、操作棒20の基端部には、ピン30が挿通される貫通孔20aが軸方向に対して直交する方向に延びて形成されている。そして、この基端部に対して操作部28(ピン30を含む。)が設けられている。
【0027】
押圧部26は、図3に示すように、上述の筒状部40の内側に、当該筒状部40の先端側から引き込まれる楔状の部材であり、操作棒20と共に固定孔14の深さ方向に往復移動可能なように構成されている。押圧部26は、図2に示すように、固定孔14(図6)の中心線(図示省略)に対して所定角度で傾斜する2つの傾斜面26aを有しており、これらの傾斜面26aは、押圧部26の基端部側から先端部側に向けて広がるようにテーパ状に形成されている。そして、押圧部26が筒状部40の内側に引き込まれる際に、押圧部26の2つの傾斜面26aが可動部22の2つの傾斜面22aにそれぞれ押し当てられ、これにより可動部22が固定孔14の径方向外側に向けて押圧され、当該可動部22(基端部を除く。)が拡径部16の内側の空間Sに移動される。
【0028】
操作部28は、押圧部26で可動部22を押圧するための力を入力する部分であり、図2に示すように、ツール本体18の外周面に軸方向に移動可能なように配置された環状部材34と、ピン30と、ピン止めねじ42とを有している。環状部材34は、金属またはプラスチック等によって中心に孔を有する円状(すなわちドーナツ状)に形成されており、環状部材34には、ピン30が挿入される貫通孔44aおよび有底孔44bが径方向に延びて直線状に形成されており、貫通孔44aにおける入口側の端部内面には、雌ねじ46が形成されている。そして、環状部材34が、ツール本体18に形成された孔32を介して操作棒20に固定されている。つまり、環状部材34の貫通孔44aおよび有底孔44bと、操作棒20の貫通孔20aと、ツール本体18の2つの孔32とにピン30が挿入されることによって、環状部材34が操作棒20に固定されている。また、環状部材34の雌ねじ46にピン止めねじ42が螺合されることによって、ピン30の脱落が防止されている。
【0029】
この操作部28においては、環状部材34の外周部の全域が、人の手指が係止される係止部34aとなっている。したがって、作業者の手の位置の如何にかかわらず、手指を係止部34aに係止させることが可能であり、高い操作性を得ることができる。
【0030】
なお、操作部28の全体形状は、本実施形態のような環状に限定されるものではなく、棒状または突起状等であってもよいし、手指が挿し込まれる孔を有する形状など、手指を係止させ易い特別な形状であってもよい。また、本実施形態では、可動部22および当接部24を2つずつ形成しているが、これらの数は特に限定されるものではなく、1つまたは3つ以上であってもよい。可動部22の数が変更される場合には、全ての可動部22を均等に押圧することが可能なように押圧部26の形状も適宜変更されることになる。
【0031】
[拡径確認用ツールの使用方法]
図7に示すように、コンクリート躯体等のような基礎50に対して設備機器等のような固定対象物52をアンカーボルト12を用いて固定する際には、まず、図4に示すように、ドリル54を用いて基礎50に対して固定孔14を形成する。続いて、図5(A)に示すように、拡径装置56を用いて固定孔14の奥部を拡径することによって拡径部16を形成する。
【0032】
図5(B)は、拡径工程で形成された拡径部16を示す断面図である。拡径工程(図5(A))において、拡径部16が適正に形成されなければ、アンカーボルト12(図7)の抜けを確実に防止することができないので、施工品質を高めるためには、拡径部16が適正に形成されているか否かを、固定孔14にアンカーボルト12を挿入する前に確認する必要がある。そこで、次の工程では、図6に示すように、拡径確認用ツール10を用いて拡径部16の状態を検査する。
【0033】
すなわち、まず、図6(A)に示すように、拡径確認用ツール10を固定孔14の内部に挿入し、当接部24における頭部24bの先端面を固定孔14の底部14aに当接させ、これにより拡径確認用ツール10の全体を固定孔14の内部において位置決めする。このとき、操作棒20に形成された押圧部26は、未だ筒状部40の内側に引き込まれておらず、可動部22は、自然状態(すなわち弾性変形されていない状態)のままである。
【0034】
拡径確認用ツール10の位置決めが完了すると、図6(B)に示すように、ツール本体18の封止部38に手のひらを当接させることによってツール本体18を固定するとともに、環状部材34の係止部34aに手指を係止させ、その状態で手を握ることによって環状部材34をツール本体18の封止部38側に移動させる。すると、操作棒20に形成された押圧部26が、固定孔14の内部を開口部14b側に移動され、筒状部40の内側に引き込まれる。これにより、押圧部26の2つの傾斜面26aが可動部22の2つの傾斜面22aに押し当てられ、押圧部26から可動部22に固定孔14の径方向外側に向かう押圧力が付与され、当該押圧力によって可動部22(基端部を除く。)が拡径部16の内側の空間Sに移動される。
【0035】
ここで、拡径部16が適正に形成されている場合には、操作部28から入力する力が小さくても、当該力によって可動部22を拡径部16の内側の空間Sにスムーズに移動させることができるため、作業者は、可動部22が開いてその先端が拡径部16の内面に当接するまでは、手指に不自然な抵抗力を感じることはない。一方、拡径部16が適正に形成されていない場合には、可動部22が拡径部16の内面に引っ掛かったりするために、適正時にはなかった抵抗力が発生し、作業者は、適正時よりも早い段階で拡径部16の状態に応じた不自然な抵抗力を感じるようになる。したがって、作業者は、不自然な抵抗力を感じ取るまでに環状部材34が移動した距離(すなわち可動部22が移動した距離)に基づいて、拡径部16が適正に形成されているか否かを判断することができる。本実施形態では、環状部材34の適正位置を示す「標線」となる溝36がツール本体18に形成されているので、溝36を越えた適正位置まで環状部材34をスムーズに移動させることができた場合には、「拡径部16が適正に形成されている。」と判断することができ、環状部材34が溝36を越える前(すなわち適正位置に到達する前)に不自然な抵抗力を感じ取った場合には、「拡径部16が適正に形成されていない。」と判断することができる。
【0036】
拡径部16の検査が完了すると、環状部材34を元の位置に戻して可動部22を自然状態に復元させ、その後、拡径確認用ツール10を固定孔14から引き抜く。そして、拡径部16が適正に形成されていない場合には、拡径装置56で拡径部16を再度形成し(図5(A))、拡径部16が適正に形成されている場合には、図7に示すように、固定孔14にアンカーボルト12を固定する。その後は、従来と同じ手法により、アンカーボルト12とナット58とを用いて固定対象物52を固定する。
【0037】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係る拡径確認用ツール60の構成を示す正面図である。この拡径確認用ツール60は、ツール本体18の基端部側の開口18aから操作棒20を突出させ、この操作棒20の基端部に操作部62を設けるとともに、当該基端部の外周面に「標線」となる溝64を形成したものである。操作部62の形状は、特に限定されるものではないが、第2実施形態では、円盤状に形成されている。
【0038】
(第3実施形態)
図9(A)は固定孔14に第3実施形態に係る拡径確認用ツール70を挿入した状態を示す正面図であり、図9(B)は固定孔14において当該拡径確認用ツール70を操作した状態を示す正面図である。上述の拡径確認用ツール10,60では、押圧部26を固定孔14の底部14a側から開口部14b側に向けて移動させることによって可動部22が開かれるのに対し、第3実施形態に係る拡径確認用ツール70では、可動部22を固定孔14の開口部14b側から底部14a側に向けて移動させることによって当該可動部22が開かれる。そのため、拡径確認用ツール70では、先端部に可動部22が形成されたツール本体18の基端部18bが、可動部22を押圧するための力を入力する(すなわち作業者が手で握って押す)ための「操作部」となっている。また、拡径確認用ツール70では、押圧部26の先端部に固定孔14の底部14aに当接される当接部72が形成されるとともに、押圧部26と一体的に形成された操作棒20の基端部に「標線」となる溝74が形成されており、当該基端部がツール本体18の基端部側の開口18aから突出するようになっている。
【0039】
なお、上述の各実施形態では、「標線」として溝36,64,74を形成しているが、これに代えて、突条または突起を「標線」として形成してもよいし、単に、塗料を用いて「標線」を描いてもよい。また、「可動部」は、固定孔14の径方向に往復移動可能なように構成されていればよく、上述の「略長方形の板ばね」に代えて、たとえば「ツール本体18に回動自在に枢軸支された板状部材と復元用のコイルばねとを備える構成」を採用してもよい。さらに、「押圧部」は、「可動部」を固定孔14の径方向外側に向けて押圧できるように構成されていればよく、上述の「傾斜面を有する楔状部材」に代えて、「カム機構」や「リンク機構」等を利用した他の構成を「押圧部」として用いてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10… 拡径確認用ツール
12… アンカーボルト
14… 固定孔
16… 拡径部
18… ツール本体
18b… 基端部(操作部)
20… 操作棒
22… 可動部
24… 当接部
26… 押圧部
28… 操作部
30… ピン
34… 環状部材
36… 溝
38… 封止部
40… 筒状部
50… 基礎
52… 固定対象物
60… 拡径確認用ツール
62… 操作部
70… 拡径確認用ツール
72… 当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンカーボルトを固定する固定孔の奥部に位置する拡径部が適正に形成されているか否かを確認するための拡径確認用ツールであって、
前記固定孔の内部における前記拡径部に対応する位置において少なくとも一部が前記固定孔の径方向に往復移動可能なように構成された可動部と、
前記可動部を押圧することによって、前記可動部の少なくとも一部を前記拡径部の内側の空間に移動させる押圧部と、
前記固定孔の外部に配置され、前記押圧部で前記可動部を押圧するための力を入力する操作部とを備える、拡径確認用ツール。
【請求項2】
前記押圧部は、前記固定孔の中心線に対して所定角度で傾斜する傾斜面を有するとともに、前記固定孔の深さ方向に往復移動可能なように構成されており、
前記押圧部が前記固定孔の深さ方向に移動される際に前記可動部の少なくとも一部が前記傾斜面に押されて前記拡径部の内側の空間に移動される、請求項1に記載の拡径確認用ツール。
【請求項3】
前記固定孔に挿入される筒状のツール本体と、前記ツール本体の内部に軸方向に移動可能なように配置された操作棒とを備えており、
前記可動部は、前記ツール本体の先端部から前記ツール本体の軸方向に延びて、前記ツール本体の径方向に弾性変形可能なように構成されており、
前記押圧部は、前記操作棒の先端部に設けられており、
前記操作部は、前記操作棒の基端部に設けられている、請求項2に記載の拡径確認用ツール。
【請求項4】
前記操作部は、人の手指が係止される係止部を有している、請求項3に記載の拡径確認用ツール。
【請求項5】
前記操作部は、前記ツール本体の外周面に軸方向に移動可能なように配置された環状部材を有しており、
前記環状部材が、前記ツール本体に形成された孔を介して前記操作棒に固定されている、請求項4に記載の拡径確認用ツール。
【請求項6】
前記ツール本体の基端部側の開口は、人の手のひらを押し当てることができるように封止されている、請求項4または5に記載の拡径確認用ツール。
【請求項7】
前記ツール本体の先端部には、前記固定孔の底部に当接される当接部が形成されている、請求項3ないし6のいずれかに記載の拡径確認用ツール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−275828(P2010−275828A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131944(P2009−131944)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000137845)株式会社ミヤナガ (20)
【Fターム(参考)】