説明

指向的に凝固させた珪素インゴットの製造方法

本発明は、当初、0.2 ppma〜10 ppmaのホウ素と0.1 ppma〜10 ppmaのリンを含有する珪素供給原料から、太陽電池用のウエファーを製造するための、指向的に凝固させたチョクラルスキー、フロートゾーン又は多結晶質珪素インゴット又は薄いシート又はリボンを製造する方法に関する。珪素供給原料のホウ素含有量がリン含有量より大きい場合には、溶融珪素に非連続的に、連続的に又は実質的に連続的にホウ素を添加して、指向的凝固プロセス中、溶融珪素中のホウ素含有量をリン含有量より高く保持することにより、p−型材料として凝固する、指向的に凝固させたインゴット又は薄いシート又はリボンの部分を伸長させる。珪素供給原料のリン含有量がホウ素含有量より大きい場合には、溶融珪素に非連続的に、連続的に又は実質的に連続的にリンを添加して、指向的凝固プロセス中、溶融珪素中のリン含有量をホウ素含有量より高く保持することにより、n−型材料として凝固するインゴット又は薄いシート又はリボンの部分を伸長させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光電太陽電池(photovoltaic(PV) solar cell)用珪素ウエファーを製造するための、指向的に凝固させた(directionally solidified)チョクラルスキー(Czochralski)、フロートゾーン又は多結晶珪素インゴット、薄い珪素シート又はリボンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光電太陽電池(photovoltaic solar cell)は、電子チップ工業からの適当なスクラップ、切削片(cutting)又は不良品(reject)によって補給される超純粋、未使用(virgin)、電子等級ポリシリコン(polysilicon)(EG−Si)から製造されている。電子工業が最近経験している沈滞の結果として、遊休状態にあるポリシリコン製造能力がPV太陽電池(PV solar cell)の製造に適当な低価格の銘柄を利用し得るようにするために適用されている。このことにより、太陽電池等級珪素原料(solar grade silicon feedstock)(SoG−Si)の品質についての緊迫した需要に対する一時的な救済がもたらされている。電子装置を正常な水準に復帰させる要求について、ポリシリコン製造能力の主要なシェアーが、電子工業を供給するために後方に配置され、PV工業が供給を下回ることが期待されている。SoG−Siの専門的な低価格の供給源が存在せず、その結果として、供給のギャップが発展していることが、現在、PV工業の更なる生長のための最も重大な障害であると考えられている。
【0003】
近年、電子工業の価格連鎖に無関係なSoG−Siについての新規な供給源を開発するために種々の試みがなされている。このための努力は、従来のポリシリコンプロセス工程に新規な技術を導入して価格を大きく低下させること、並びに、豊富に入手される冶金学的等級の珪素(metallurgical grade silicon)(MG−Si)を必要な純度まで精製する冶金学的精製プロセスを開発することを包含している。従来、どの方法も製造コストを大きく低下させ、一方、今日、慣用の珪素供給源品質から製造されるPV太陽電池の性能に適合させるのに必要であると期待される珪素供給源の純度を提供することに成功していない。
【0004】
PV太陽電池を製造する場合、SoG−Si供給原料の装入材料を準備し、溶融させついで特殊な注型炉内で指向的に凝固させ、正方形のインゴットにする。溶融させる前に、SoG−Si供給原料を含有する装入材料にホウ素又はリンをドープして、それぞれ、p−型又はn−型インゴットを製造する。僅かな例外を除いて、今日製造されている市販の太陽電池はp−型珪素インゴット材料に基づいている。単一のドーパント(例えば、ホウ素又はリン)の添加を調節することにより、材料中で、例えば0.5−1.5 オーム cmの範囲の好ましい抵抗率を得る。これは、p−型インゴットが所望されかつ固有の品質の、SoG−Si供給原料(省略し得る量のドーパントを含有する実質的に純粋な珪素)を使用した場合、0.02−0.2 ppmaのホウ素の添加に相当する。ドーピング工程から、他のドーパント(この例ではリン)の含有量は無視し得ると推察される(P<1/10B)。
【0005】
ノルウエー特許出願第20035830号(2003年12月29日出願)には、冶金学的プロセス(metallurgical process)により冶金学的等級の珪素から製造された珪素供給原料材料に基づいて、ウエファーを製造するための、指向的に凝固させたチョクラルスキー、フロートゾーン又は多結晶珪素インゴット、薄い珪素シート又はリボンを製造する方法が開示されている。珪素供給原料は0.2 ppma〜10 ppmaのホウ素と0.1 ppma〜10 ppmaのリンを含有している。ホウ素とリンの含有量のために、ノルウエー特許出願第20035830号に従って製造された珪素インゴットは、珪素供給原料のホウ素とリンの比率に応じて、インゴットの高さ又はシート又はリボンの厚さの40〜99%の位置において、p−型からn−型への特徴的な型の変化を有するであろう。従って、製造されたインゴットはp−型珪素とn−型珪素の両者を含有しているであろう。
【0006】
ホウ素とリンの両者を含有する珪素供給原料からp−型材料のみ又はn−型材料のみを製造することが望ましいが、ノルウエー特許出願第20035830号の実施例においては、インゴットの高さの約3/4でp−型からn−型への変化が生じている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ホウ素とリンの両者を含有する珪素供給原料から製造された指向的に凝固させた珪素インゴット又は薄いシート又はリボンにおいて、p−型材料又はn−型材料の量を増大させる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明は、当初、0.2 ppma〜10 ppmaのホウ素と0.1 ppma〜10 ppmaのリンを含有する珪素供給原料から、太陽電池用のウエファーを製造するための、指向的に凝固させた(directionally solidified)チョクラルスキー、フロートゾーン又は多結晶珪素インゴット又は薄いシート又はリボンを製造する方法において、珪素供給原料のホウ素含有量がリン含有量より大きい場合には、溶融珪素に非連続的に、連続的に又は実質的に連続的にホウ素を添加して、指向的凝固プロセス中、溶融珪素中のホウ素含有量をリン含有量より高く保持することにより、設定された抵抗率を有するか又は設定された抵抗率の範囲にあるp型材料として凝固する、指向的に凝固されたインゴット又は薄いシート又はリボンの部分を伸長させ(extend)、また、珪素供給原料のリン含有量がホウ素含有量より大きい場合には、溶融珪素に非連続的に、連続的に又は実質的に連続的にリンを添加して、指向的凝固プロセス中、溶融珪素中のリン含有量をホウ素含有量より高く保持することにより、設定された抵抗率を有するか又は設定された抵抗率の範囲にあるn−型材料として凝固するインゴット又は薄いシート又はリボンの部分を伸長させることを特徴とする、前記製品の製造方法に関する。
【0009】
本発明の方法によれば、指向的に凝固させたインゴット又は薄いシート又はリボンの部分を、p−型材料からn−型材料への変化又はn−型材料からp−型材料への変化の前に実質的に伸長させることができることが認められた。
【0010】
図1は、従来技術に従って製造した、指向的に凝固させた珪素インゴットの抵抗率を示す図面である。
【0011】
図2は、本発明に従って製造した、指向的に凝固させた珪素インゴットの抵抗率を示す図面である。
【0012】
実施例1(従来技術)
当初、0.8 ppmaのホウ素と3.6 ppmaのリンを含有する珪素供給原料から指向的に凝固させた珪素インゴットを製造した。この珪素インゴット内でのp−型材料のn−型材料への変化は凝固インゴットの約60%の高さで生起した。製造された珪素インゴットの抵抗率は図1に示されており、この図から、p−型材料のn−型材料への変化はインゴットの約60%の高さで生起していることが判る。
【0013】
実施例2(本発明)
実施例1で使用したものと同一の珪素供給原料から指向的に凝固させた珪素インゴットを製造した。インゴットの約50%が凝固したとき、残留溶融珪素にホウ素を連続的に添加した。図2から明らかなごとく、p−型材料のn−型材料への変化は凝固インゴットの90%以上の高さで生起した。珪素溶融物に添加されたホウ素の量も図2に示されている。
【0014】
実施例1と2の結果の比較から、p−型材料のn−型材料への変化は珪素インゴットの高さの約60%から90%以上に移動したことが判る。
【0015】
従って、本発明によれば、p−型材料として又はn−型材料として凝固する、指向的に凝固させた珪素インゴットの部分を実質的に増大させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来技術に従って製造した、指向的に凝固された珪素インゴットの抵抗率を示す図面である。
【図2】本発明に従って製造した、指向的に凝固された珪素インゴットの抵抗率を示す図面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
当初、0.2 ppma〜10 ppmaのホウ素と0.1 ppma〜10 ppmaのリンを含有する珪素供給原料から、太陽電池用のウエファーを製造するための、指向的に凝固させたチョクラルスキー、フロートゾーン又は多結晶質珪素インゴット又は薄いシート又はリボンを製造する方法において、珪素供給原料のホウ素含有量がリン含有量より大きい場合には、溶融珪素に非連続的に、連続的に又は実質的に連続的にホウ素を添加して、指向的凝固プロセス中、溶融珪素中のホウ素含有量をリン含有量より高く保持することにより、p−型材料として凝固する、指向的に凝固させたインゴット又は薄いシート又はリボンの部分を伸長させ、また、珪素供給原料のリン含有量がホウ素含有量より大きい場合には、溶融珪素に非連続的に、連続的に又は実質的に連続的にリンを添加して、指向的凝固プロセス中、溶融珪素中のリン含有量をホウ素含有量より高く保持することにより、n−型材料として凝固するインゴット又は薄いシート又はリボンの部分を伸長させることを特徴とする、前記製品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−525297(P2008−525297A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548115(P2007−548115)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【国際出願番号】PCT/NO2005/000432
【国際公開番号】WO2007/001184
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(507185392)
【Fターム(参考)】