指紋パターンの識別のために全反射を用いる指紋識別組立体
【課題】 指紋パターンの識別に全反射を使用する指紋識別装置を提供する。
【解決手段】 指紋識別組立体は、本体(6)であって該本体の頂部に指先を受けるための対物レンズ(11)を有しまた前記本体(6)の底部に前記対物レンズ(11)からの反射光を受ける第1の反射レンズ(12)を有する本体(6)と、前記第1の反射レンズ(12)に光を放射する光源(4)と、前記本体(6)に一体的に形成された感知装置であって前記第1の反射レンズ(12)からの前記反射光を受ける第2の反射レンズ(14)およびセンサ(10)を有する感知装置とを含み、前記センサがその内部に蓄えられた情報と受光した反射光とを比較すべく前記第2の反射レンズ(14)からの前記反射光を受ける。
【解決手段】 指紋識別組立体は、本体(6)であって該本体の頂部に指先を受けるための対物レンズ(11)を有しまた前記本体(6)の底部に前記対物レンズ(11)からの反射光を受ける第1の反射レンズ(12)を有する本体(6)と、前記第1の反射レンズ(12)に光を放射する光源(4)と、前記本体(6)に一体的に形成された感知装置であって前記第1の反射レンズ(12)からの前記反射光を受ける第2の反射レンズ(14)およびセンサ(10)を有する感知装置とを含み、前記センサがその内部に蓄えられた情報と受光した反射光とを比較すべく前記第2の反射レンズ(14)からの前記反射光を受ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指紋識別組立体に関し、特に、前記組立体の対物レンズの頂部で指紋パターンの全反射が生じこれが前記組立体のセンサによって感知されるように、第1の反射レンズおよび第2の反射レンズを有する指紋識別組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
指紋による本人確認は、おそらく個人を特定する最も古くかつ最も確立した方法の一つであろう。それは、生物測定学すなわち人体の一部の測定あるいは感知によって人を特定する分野のものであり、さまざまな応用に重要である。多くの自動化された技術が、現在、使用されあるいは開発中であり、それは掌紋読み取り、指の気孔読み取り、手のひらの幾何学特定および虹彩、網膜あるいは顔面の認識を含む。それらのうち、指紋による本人確認はかなり簡単であり、それは、現在、制限されたエリアあるいは情報にアクセスするために入力されるパスワード、キーまたは署名に代わる便利で安全な手段であるので、より広く採用されていくことが見込まれる。
【0003】
基本的に、識別作業は、指紋パターンの断片に基づく未知の人の識別の決定、あるいは特定の指紋のパターンに基づく確実なレベルでの既知の人の識別の検証に拘わる。指紋特徴の正確な識別には、普遍的な必要性すなわち異なる複数の機械がその特徴を認識し得ることが望まれる。他方、多くの状況下では、識別は必ずしも普遍的ではなく、明確な決定だけを必要とする。人の指先には、約0.5〜1.0mmの周期および約0.1mmの深さで、曲がった隆線(ridge)の特有のパターンが在る。指の組織は赤色光を約50%の散乱反射率で散乱し、また指の屈折率は約1.51である。それは、普遍的な識別の必要性のために、より多くの識別についての特徴および指の配置についてのより広い許容誤差を提供すべく、最小のひずみでできる限り広い視野を有するのに望ましいであろう。他方、指紋が特定される接触プラットフォームに関して、指紋の有効なサイズは約10mmであるが、システムのサイズはかなり小さく、例えば、携帯電話への応用では、10mmよりも小さくなる。多くの種類の指紋再編成装置が開発されている。それらは、主として、最初に隆線のパターンを記録し、次にソフトウェアが隆線の端や分岐(「マニューシャ (minutia)」と称される)のような特徴の座標と種類とを抽出する。ソフトウェアでひずみを修正することができるが、画像のぼやけは取り除くことが困難である。 また、隆線上には、解析がより困難ではあるが、識別のための詳しい情報を提供するのに使用することができる小さな毛穴の列がある。M. Iwanagaによる米国特許出願番号2002/003892は、携帯電話のために空中での指紋撮像の新規な方法を提案する。しかしながら、空中の指に関して、局所的な光源からの光の鏡面反射によって隆線を見ることができるが、画像のコントラストは、潜在的な散乱と、指先が画面の表面で完全に平坦ではないこととにより、制限を受ける。 指の丸く盛り上がった形は画像に容認できないひずみを引き起こすことがある。対照的に、接触手段を用いると、ユーザは表面(接触プラットホーム)に指先を平たくし、 隆線および谷はそれらの高さの差で区別できる。接触手段を使用する識別が広く用いられてきた。 容量の変化を測定する電子センサがあり、また、透明なプラテンすなわち窓に押し付けられた指を見る光学センサがある。光学接触センサは、CCDやCMOSのセンサ配列のようなセンサ上に描かれた鏡面反射率の変化を記録する。光学接触センサの画素サイズは−5ミクロン小さくなり、また、十分な解像能力のための適当な量の画素を有するセンサをかなり小さくすることができる。
【0004】
ほとんどの指紋識別装置は、明視野の装置であり、すなわち、それらは明るい背景上に暗い指紋の隆線パターンを生じる。容認可能なコントラストの指紋画像を生じるために、均一な明るい背景を生成するための追加的な光学部品が必要となる。この追加部品のため、小型の明るい背景装置を作るのは困難である。1999年5月4日に発行された名称「指紋検知で使用されるレンズ系」のBetenskyによる米国特許5,900,993号は、第3の円柱レンズに組み合わされた第1および第2のレンズが光学ひずみの低減のために用いられたレンズ系を記載する。しかしながら、円柱レンズを使用する手法は、追加部品を必要とし、調和が欠如していると、取り扱いでの調整処理の失敗がレンズ配置に余分な自由度を生じさせるので、本質的にレンズ系の調整を複雑にする。キーボード用のようなコンパクトな指紋による本人確認の必要性を考慮して、Clark等は、2003年11月発行の米国特許第6,643,390号で、焦点レンズ系および暗分野照明を備えるコンパクト設計を示す。
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,900,993号公報
【特許文献2】米国特許第6,643,390号公報
【0006】
切迫した必要性のある民生応用は、最小のひずみの画質をもち、携帯電話、超薄の電子装置または身の回り品などの小さい区画での使用に適合させることができ、生産を容易にするために最小数の部品を含むコンパクトな指紋識別装置である。
【0007】
本発明は、前記した欠点を克服するために、前述の問題を軽減するための改良されたコンパクトな指紋識別装置を提供することに配慮する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主たる目的は、指紋パターンの識別に全反射を使用する指紋識別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態では、指紋識別組立体は、均等に分布した光を放射する光源を有する本体と、ガラスまたはアクリル樹脂のような透明な材料で作られた対物レンズと、前記対物レンズからの反射光を受けて該反射光を外側へ送るための第1の凹レンズと、前記本体に強固に接続される感知装置であって第1の凹レンズに対応する第2の凹レンズおよび該第2の凹レンズからの光を受け指紋の隆線と谷との間の高さの差により前記光を検出するセンサを有する感知装置とを備え、特徴ある光ゾーンが形成され、該光ゾーンは、識別認識のために前記第1の凹レンズ、前記第2の凹レンズおよび前記センサに伝えられる。
【0010】
本発明の他の目的、利点および新規な特徴は、添付の図面に関連する以下の詳述により、より明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
従来よく知られた接触法を用いて、全反射(TIR)によりコントラストを増加させるように、指が斜めに見られる、すなわち、照らされる。 明視野または暗視野の照明を選択することができる。明視野照明では、光は開口絞りに向けられる。 指が接触していなければ、光はプラテン表面から完全に反射する。指が接触していると、TIRは生じず、ほとんどの光は画像経路から散乱し、その結果、指の隆線は暗く見える。暗視野照明では、センサは、指の接触領域からの臨界角を超える散乱光を受ける。接触が無い所では、指はセンサには見えない。 指の隆線は明るく見える。両照明を本発明に適用できる。基本的には、接触プラットホームすなわち接触プラテン上の指紋パターンが輝きの対象として見え、前記レンズは、この「ソース」画像のサイズを適正な画像性能で前記イメージセンサの特性に適するように減少させる。
【0012】
ボリューム寸法の低減を図りかつ十分な解像度を得るために、複数の反射面がレンズで使用される。 好適な実施例を示す図1を参照すると、指紋は、光源(図示せず)により照明を受け、また、第1の表面1から第2の面である裏面および前記イメージセンサに至る連続的な複数の反射面により、前記センサを再照明する。損失を防ぐために、すべての反射面に塗膜が設けられている。2種類の構造が見られる図2に示されるように、前記裏面と像平面との間に付加的な表面を加えることができる。 図2(A)は、偶数個の反射面が対照配置された例であるが、図2(B)は奇数個の反射面が非対称配置された例である。より多数の反射面を設けることにより、レンズの画像性能の向上を図るためのより多くの自由度が提供される。
【0013】
実施例では、光源には720nmの特定の赤色LEDが用いられ、オブジェクトサイズは10mmである。 イメージセンサは、f/#(Fナンバー)=3.5で動作し、 典型的な画像サイズはオブジェクトサイズの4分の1以下である。 一般に、レンズの厚さは10mm未満である。レンズの材料はアクリルである。 非球面のために、垂下(sag)方程式が以下に記載されている。
【0014】
【数1】
【0015】
ここで、cは表面曲率(c=1/r、rは曲率半径)であり、yは軸からの半径距離であり、κは円錐定数であり、AD、AE、AFおよびAGは、第4、第6および第10番目の階数変形係数である。
【0016】
対称配置の具体例を例証するために、表1にはレンズ規定が含まれている。
【0017】
【表1】
【0018】
光線遮蔽ダイヤグラムが図5(A)に示されており、3つの異なる空間周波数(2 lp/mm、6 lp/mmおよび10 lp/mm)における完全なオブジェクトサイズを超えるMTFが図5(B)および図5(C)に示されている。歪曲の影響は、オブジェクト照明に基づく図5(C)に示されている。
【0019】
より短いレンズ寸法による異なるレイアウトおよびレンズ規定が表2に示されている。
【0020】
【表2】
【0021】
光線遮蔽ダイヤグラムが図6(A)に示されており、歪曲の影響がオブジェクト照明に基づく図6(B)に示されている。
【0022】
さらなる改善は、非球面の表面を含むことによって達成できる。表3にはレンズ規定が含まれている。
【0023】
【表3】
【0024】
光線遮蔽ダイヤグラムが図7(A)に示されており、歪曲の影響がオブジェクト照明に基づく図7(B)に示されている。
【0025】
先に例示したレンズでは、指紋対象が接触プラットフォームすなわちプラテンフォーム上にあり、例えばLEDである光源からの光は、指紋を照らす。反射のために、散乱光の一部は反射面により反射され、前記イメージセンサにより集められる。
【0026】
引き続き図1を参照するに、本発明に係る指紋認識装置は、均等に分布した光を放射する光源(4)を有する本体(6)と、前記本体の頂部に取り付けられ、 ガラスまたはアクリル樹脂のような透明な材料で作られた対物レンズ(11)と、前記対物レンズからの反射光を受けるために前記本体(6)の底面に取り付けられ前記反射光を外側へ送る第1の凹レンズ(12)と、前記本体(6)に強固に接続される感知装置(8)であって第1の凹レンズ(12)に対応する第2の凹レンズ(14)および該第2の凹レンズからの光を受け指紋の隆線と谷との間の高さの差により前記光を検出するセンサを有する感知装置(8)とを備え、特徴ある光ゾーンが形成され該光ゾーンは、識別認識のために前記第1の凹レンズ(12)、前記第2の凹レンズ(14)および前記センサ(10)に伝えられる。本願から、対物レンズ(11)が基本面に平行である点に注意されたい。図2Aの記載から、対物レンズ(11)が基本表面に関して傾斜するが、本願の目的は達成し得る点に注意されたい。
【0027】
さらに、指紋の鮮明さを増加するように本発明の構造に付加のレンズを加えることができる。すなわち、使用されるレンズ数は、偶数であっても奇数であっても良い。
【0028】
上記の説明から、光源(4)が点灯されると、光源(4)からの光は第1の凹レンズ(12)によって作られる反射有効領域(13)に進み、対物レンズ(11)に到達することに注意されたい。指が対物レンズ(11)の頂部に置かれるので、異なる光領域、すなわち、明るい領域と暗い領域は、指紋の隆線と谷によって作られる。隆線および谷の結果として、特徴的な反射光が、光損失を防ぐための黒い皮膜を底部に備える第1の凹レンズ(12)に送られる。隔壁(16)は、第1の凹レンズ(12)からの反射光の集束を制御すべく、本体(6)と、感知装置(8)との間で、その結合部間に形成されている。光集束効果を補強するために、隔壁(16)の後面は黒で覆われている。その後、前記光は第2の凹レンズ(14)により前記センサ(10)に向けて反射される。反射光路がTIRに基づいて設計されるので、指紋の特徴的な光は第1の凹レンズ(12)と第2のレンズ(14)とにより全反射され、センサー(10)により受光され、センサー(10)は、指紋が誰のものに一致するかを見分けるように、その受光パターンを記憶装置に蓄積されたそれと比較可能である。
【0029】
光源(4)の位置は、対物レンズ(11)が位置するところから偏っており、第1の凹レンズ(12)の位置は対物レンズ(11)から偏っている。さらに、第2の凹レンズ(14)の位置は、第1の凹レンズ(12)が位置するところから偏っている。これにより、全反射(TIR)が成功裡に達成できる。
【0030】
本発明の多数の特徴および利点が本発明の構成および機能の詳細と共に前記したように記載されたが、図示の例に限られず、添付の請求項の範囲に表現された事項の広く一般的な意味によって示される本発明の本質内で細部、特に形状、寸法および部品の配置に変更を加えることができることが理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の好適な実施例を示す概略図である。
【図2A】本発明の他の実施例を示す概略図である。
【図2B】図2Aの実施例に関連するさらに他の実施例を示す概略図である。
【図2C】本発明の対物レンズの変形例を示す概略図である。
【図3A】本発明の好適な実施例のレンズヘッドを概略的に示すダイヤグラムである。
【図3B】好適な実施例の他のレンズヘッドを概略的に示すダイヤグラムである。
【図3C】好適な実施例のさらに他のレンズヘッドを概略的に示すダイヤグラムである。
【図3D】好適な実施例のさらに他のレンズヘッドを概略的に示すダイヤグラムである。
【図4A】偶数個の反射面を有する好適な実施例のダイヤグラムである。
【図4B】奇数個の反射面を有する好適な実施例のダイヤグラムである。
【図4C】図4Aおよび図4Bに示されたレンズヘッドのダイヤグラムである。
【図5A】光線遮蔽ダイヤグラムである。
【図5B】MTF(振幅伝達関数)ダイヤグラムである。
【図5C】MTF(振幅伝達関数)ダイヤグラムである。
【図5D】表1に示されたレンズ規定の好適な実施例についての歪曲を示す図面である。
【図6A】光線遮蔽ダイヤグラムである。
【図6B】表2に示されたレンズ規定の好適な実施例についての光線遮蔽ダイヤグラムである。
【図7A】光線遮蔽ダイヤグラムである。
【図7B】表3に示されたレンズ規定の好適な実施例についての歪曲を示す図面である。
【図8】光源を備える指紋画像装置の概略図である。
【符号の説明】
【0032】
4 光源
6 本体
8 感知装置
10 センサ
11 対物レンズ
12 第1の凹レンズ
16 隔壁
【技術分野】
【0001】
本発明は、指紋識別組立体に関し、特に、前記組立体の対物レンズの頂部で指紋パターンの全反射が生じこれが前記組立体のセンサによって感知されるように、第1の反射レンズおよび第2の反射レンズを有する指紋識別組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
指紋による本人確認は、おそらく個人を特定する最も古くかつ最も確立した方法の一つであろう。それは、生物測定学すなわち人体の一部の測定あるいは感知によって人を特定する分野のものであり、さまざまな応用に重要である。多くの自動化された技術が、現在、使用されあるいは開発中であり、それは掌紋読み取り、指の気孔読み取り、手のひらの幾何学特定および虹彩、網膜あるいは顔面の認識を含む。それらのうち、指紋による本人確認はかなり簡単であり、それは、現在、制限されたエリアあるいは情報にアクセスするために入力されるパスワード、キーまたは署名に代わる便利で安全な手段であるので、より広く採用されていくことが見込まれる。
【0003】
基本的に、識別作業は、指紋パターンの断片に基づく未知の人の識別の決定、あるいは特定の指紋のパターンに基づく確実なレベルでの既知の人の識別の検証に拘わる。指紋特徴の正確な識別には、普遍的な必要性すなわち異なる複数の機械がその特徴を認識し得ることが望まれる。他方、多くの状況下では、識別は必ずしも普遍的ではなく、明確な決定だけを必要とする。人の指先には、約0.5〜1.0mmの周期および約0.1mmの深さで、曲がった隆線(ridge)の特有のパターンが在る。指の組織は赤色光を約50%の散乱反射率で散乱し、また指の屈折率は約1.51である。それは、普遍的な識別の必要性のために、より多くの識別についての特徴および指の配置についてのより広い許容誤差を提供すべく、最小のひずみでできる限り広い視野を有するのに望ましいであろう。他方、指紋が特定される接触プラットフォームに関して、指紋の有効なサイズは約10mmであるが、システムのサイズはかなり小さく、例えば、携帯電話への応用では、10mmよりも小さくなる。多くの種類の指紋再編成装置が開発されている。それらは、主として、最初に隆線のパターンを記録し、次にソフトウェアが隆線の端や分岐(「マニューシャ (minutia)」と称される)のような特徴の座標と種類とを抽出する。ソフトウェアでひずみを修正することができるが、画像のぼやけは取り除くことが困難である。 また、隆線上には、解析がより困難ではあるが、識別のための詳しい情報を提供するのに使用することができる小さな毛穴の列がある。M. Iwanagaによる米国特許出願番号2002/003892は、携帯電話のために空中での指紋撮像の新規な方法を提案する。しかしながら、空中の指に関して、局所的な光源からの光の鏡面反射によって隆線を見ることができるが、画像のコントラストは、潜在的な散乱と、指先が画面の表面で完全に平坦ではないこととにより、制限を受ける。 指の丸く盛り上がった形は画像に容認できないひずみを引き起こすことがある。対照的に、接触手段を用いると、ユーザは表面(接触プラットホーム)に指先を平たくし、 隆線および谷はそれらの高さの差で区別できる。接触手段を使用する識別が広く用いられてきた。 容量の変化を測定する電子センサがあり、また、透明なプラテンすなわち窓に押し付けられた指を見る光学センサがある。光学接触センサは、CCDやCMOSのセンサ配列のようなセンサ上に描かれた鏡面反射率の変化を記録する。光学接触センサの画素サイズは−5ミクロン小さくなり、また、十分な解像能力のための適当な量の画素を有するセンサをかなり小さくすることができる。
【0004】
ほとんどの指紋識別装置は、明視野の装置であり、すなわち、それらは明るい背景上に暗い指紋の隆線パターンを生じる。容認可能なコントラストの指紋画像を生じるために、均一な明るい背景を生成するための追加的な光学部品が必要となる。この追加部品のため、小型の明るい背景装置を作るのは困難である。1999年5月4日に発行された名称「指紋検知で使用されるレンズ系」のBetenskyによる米国特許5,900,993号は、第3の円柱レンズに組み合わされた第1および第2のレンズが光学ひずみの低減のために用いられたレンズ系を記載する。しかしながら、円柱レンズを使用する手法は、追加部品を必要とし、調和が欠如していると、取り扱いでの調整処理の失敗がレンズ配置に余分な自由度を生じさせるので、本質的にレンズ系の調整を複雑にする。キーボード用のようなコンパクトな指紋による本人確認の必要性を考慮して、Clark等は、2003年11月発行の米国特許第6,643,390号で、焦点レンズ系および暗分野照明を備えるコンパクト設計を示す。
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,900,993号公報
【特許文献2】米国特許第6,643,390号公報
【0006】
切迫した必要性のある民生応用は、最小のひずみの画質をもち、携帯電話、超薄の電子装置または身の回り品などの小さい区画での使用に適合させることができ、生産を容易にするために最小数の部品を含むコンパクトな指紋識別装置である。
【0007】
本発明は、前記した欠点を克服するために、前述の問題を軽減するための改良されたコンパクトな指紋識別装置を提供することに配慮する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主たる目的は、指紋パターンの識別に全反射を使用する指紋識別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態では、指紋識別組立体は、均等に分布した光を放射する光源を有する本体と、ガラスまたはアクリル樹脂のような透明な材料で作られた対物レンズと、前記対物レンズからの反射光を受けて該反射光を外側へ送るための第1の凹レンズと、前記本体に強固に接続される感知装置であって第1の凹レンズに対応する第2の凹レンズおよび該第2の凹レンズからの光を受け指紋の隆線と谷との間の高さの差により前記光を検出するセンサを有する感知装置とを備え、特徴ある光ゾーンが形成され、該光ゾーンは、識別認識のために前記第1の凹レンズ、前記第2の凹レンズおよび前記センサに伝えられる。
【0010】
本発明の他の目的、利点および新規な特徴は、添付の図面に関連する以下の詳述により、より明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
従来よく知られた接触法を用いて、全反射(TIR)によりコントラストを増加させるように、指が斜めに見られる、すなわち、照らされる。 明視野または暗視野の照明を選択することができる。明視野照明では、光は開口絞りに向けられる。 指が接触していなければ、光はプラテン表面から完全に反射する。指が接触していると、TIRは生じず、ほとんどの光は画像経路から散乱し、その結果、指の隆線は暗く見える。暗視野照明では、センサは、指の接触領域からの臨界角を超える散乱光を受ける。接触が無い所では、指はセンサには見えない。 指の隆線は明るく見える。両照明を本発明に適用できる。基本的には、接触プラットホームすなわち接触プラテン上の指紋パターンが輝きの対象として見え、前記レンズは、この「ソース」画像のサイズを適正な画像性能で前記イメージセンサの特性に適するように減少させる。
【0012】
ボリューム寸法の低減を図りかつ十分な解像度を得るために、複数の反射面がレンズで使用される。 好適な実施例を示す図1を参照すると、指紋は、光源(図示せず)により照明を受け、また、第1の表面1から第2の面である裏面および前記イメージセンサに至る連続的な複数の反射面により、前記センサを再照明する。損失を防ぐために、すべての反射面に塗膜が設けられている。2種類の構造が見られる図2に示されるように、前記裏面と像平面との間に付加的な表面を加えることができる。 図2(A)は、偶数個の反射面が対照配置された例であるが、図2(B)は奇数個の反射面が非対称配置された例である。より多数の反射面を設けることにより、レンズの画像性能の向上を図るためのより多くの自由度が提供される。
【0013】
実施例では、光源には720nmの特定の赤色LEDが用いられ、オブジェクトサイズは10mmである。 イメージセンサは、f/#(Fナンバー)=3.5で動作し、 典型的な画像サイズはオブジェクトサイズの4分の1以下である。 一般に、レンズの厚さは10mm未満である。レンズの材料はアクリルである。 非球面のために、垂下(sag)方程式が以下に記載されている。
【0014】
【数1】
【0015】
ここで、cは表面曲率(c=1/r、rは曲率半径)であり、yは軸からの半径距離であり、κは円錐定数であり、AD、AE、AFおよびAGは、第4、第6および第10番目の階数変形係数である。
【0016】
対称配置の具体例を例証するために、表1にはレンズ規定が含まれている。
【0017】
【表1】
【0018】
光線遮蔽ダイヤグラムが図5(A)に示されており、3つの異なる空間周波数(2 lp/mm、6 lp/mmおよび10 lp/mm)における完全なオブジェクトサイズを超えるMTFが図5(B)および図5(C)に示されている。歪曲の影響は、オブジェクト照明に基づく図5(C)に示されている。
【0019】
より短いレンズ寸法による異なるレイアウトおよびレンズ規定が表2に示されている。
【0020】
【表2】
【0021】
光線遮蔽ダイヤグラムが図6(A)に示されており、歪曲の影響がオブジェクト照明に基づく図6(B)に示されている。
【0022】
さらなる改善は、非球面の表面を含むことによって達成できる。表3にはレンズ規定が含まれている。
【0023】
【表3】
【0024】
光線遮蔽ダイヤグラムが図7(A)に示されており、歪曲の影響がオブジェクト照明に基づく図7(B)に示されている。
【0025】
先に例示したレンズでは、指紋対象が接触プラットフォームすなわちプラテンフォーム上にあり、例えばLEDである光源からの光は、指紋を照らす。反射のために、散乱光の一部は反射面により反射され、前記イメージセンサにより集められる。
【0026】
引き続き図1を参照するに、本発明に係る指紋認識装置は、均等に分布した光を放射する光源(4)を有する本体(6)と、前記本体の頂部に取り付けられ、 ガラスまたはアクリル樹脂のような透明な材料で作られた対物レンズ(11)と、前記対物レンズからの反射光を受けるために前記本体(6)の底面に取り付けられ前記反射光を外側へ送る第1の凹レンズ(12)と、前記本体(6)に強固に接続される感知装置(8)であって第1の凹レンズ(12)に対応する第2の凹レンズ(14)および該第2の凹レンズからの光を受け指紋の隆線と谷との間の高さの差により前記光を検出するセンサを有する感知装置(8)とを備え、特徴ある光ゾーンが形成され該光ゾーンは、識別認識のために前記第1の凹レンズ(12)、前記第2の凹レンズ(14)および前記センサ(10)に伝えられる。本願から、対物レンズ(11)が基本面に平行である点に注意されたい。図2Aの記載から、対物レンズ(11)が基本表面に関して傾斜するが、本願の目的は達成し得る点に注意されたい。
【0027】
さらに、指紋の鮮明さを増加するように本発明の構造に付加のレンズを加えることができる。すなわち、使用されるレンズ数は、偶数であっても奇数であっても良い。
【0028】
上記の説明から、光源(4)が点灯されると、光源(4)からの光は第1の凹レンズ(12)によって作られる反射有効領域(13)に進み、対物レンズ(11)に到達することに注意されたい。指が対物レンズ(11)の頂部に置かれるので、異なる光領域、すなわち、明るい領域と暗い領域は、指紋の隆線と谷によって作られる。隆線および谷の結果として、特徴的な反射光が、光損失を防ぐための黒い皮膜を底部に備える第1の凹レンズ(12)に送られる。隔壁(16)は、第1の凹レンズ(12)からの反射光の集束を制御すべく、本体(6)と、感知装置(8)との間で、その結合部間に形成されている。光集束効果を補強するために、隔壁(16)の後面は黒で覆われている。その後、前記光は第2の凹レンズ(14)により前記センサ(10)に向けて反射される。反射光路がTIRに基づいて設計されるので、指紋の特徴的な光は第1の凹レンズ(12)と第2のレンズ(14)とにより全反射され、センサー(10)により受光され、センサー(10)は、指紋が誰のものに一致するかを見分けるように、その受光パターンを記憶装置に蓄積されたそれと比較可能である。
【0029】
光源(4)の位置は、対物レンズ(11)が位置するところから偏っており、第1の凹レンズ(12)の位置は対物レンズ(11)から偏っている。さらに、第2の凹レンズ(14)の位置は、第1の凹レンズ(12)が位置するところから偏っている。これにより、全反射(TIR)が成功裡に達成できる。
【0030】
本発明の多数の特徴および利点が本発明の構成および機能の詳細と共に前記したように記載されたが、図示の例に限られず、添付の請求項の範囲に表現された事項の広く一般的な意味によって示される本発明の本質内で細部、特に形状、寸法および部品の配置に変更を加えることができることが理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の好適な実施例を示す概略図である。
【図2A】本発明の他の実施例を示す概略図である。
【図2B】図2Aの実施例に関連するさらに他の実施例を示す概略図である。
【図2C】本発明の対物レンズの変形例を示す概略図である。
【図3A】本発明の好適な実施例のレンズヘッドを概略的に示すダイヤグラムである。
【図3B】好適な実施例の他のレンズヘッドを概略的に示すダイヤグラムである。
【図3C】好適な実施例のさらに他のレンズヘッドを概略的に示すダイヤグラムである。
【図3D】好適な実施例のさらに他のレンズヘッドを概略的に示すダイヤグラムである。
【図4A】偶数個の反射面を有する好適な実施例のダイヤグラムである。
【図4B】奇数個の反射面を有する好適な実施例のダイヤグラムである。
【図4C】図4Aおよび図4Bに示されたレンズヘッドのダイヤグラムである。
【図5A】光線遮蔽ダイヤグラムである。
【図5B】MTF(振幅伝達関数)ダイヤグラムである。
【図5C】MTF(振幅伝達関数)ダイヤグラムである。
【図5D】表1に示されたレンズ規定の好適な実施例についての歪曲を示す図面である。
【図6A】光線遮蔽ダイヤグラムである。
【図6B】表2に示されたレンズ規定の好適な実施例についての光線遮蔽ダイヤグラムである。
【図7A】光線遮蔽ダイヤグラムである。
【図7B】表3に示されたレンズ規定の好適な実施例についての歪曲を示す図面である。
【図8】光源を備える指紋画像装置の概略図である。
【符号の説明】
【0032】
4 光源
6 本体
8 感知装置
10 センサ
11 対物レンズ
12 第1の凹レンズ
16 隔壁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体(6)であって該本体の頂部に指先を受けるための対物レンズ(11)を有し、また前記本体(6)の底部に前記対物レンズ(11)からの反射光を受ける第1の反射レンズ(12)を有する本体(6)と、
前記第1の反射レンズ(12)に光を放射する光源(4)と、
前記第1の反射レンズ(12)からの反射光を受けるべく前記本体(6)に一体的に形成された感知装置と、
前記本体(6)および前記感知装置との間の結合部に取り付けられる隔壁(16)であって後面が黒塗装で覆われた隔壁(16)と、
前記反射光を受けるセンサ(10)であって内部に蓄えられた情報と前記反射光との比較のために前記第1の反射レンズ(12)からの前記反射光を受けるセンサ(10)とを含み、
前記対物レンズ(11)は透明な材料で作られ、
前記対物レンズを作る前記材料はガラスまたはアクリル樹脂から成るグループから選択されている、指紋識別組立体。
【請求項2】
前記第1の反射レンズ(12)および第2の反射レンズ(14)は凹レンズである、請求項1に記載の組立体。
【請求項3】
前記光源(4)の位置は前記対物レンズ(11)が配置されたところから偏っており、前記対物レンズ(11)の位置は第1の反射レンズ(12)が配置されたところから偏っており、前記第1の反射レンズ(12)の位置は前記第2の反射レンズ(14)が配置された位置から偏っている、請求項1または2に記載の組立体。
【請求項1】
本体(6)であって該本体の頂部に指先を受けるための対物レンズ(11)を有し、また前記本体(6)の底部に前記対物レンズ(11)からの反射光を受ける第1の反射レンズ(12)を有する本体(6)と、
前記第1の反射レンズ(12)に光を放射する光源(4)と、
前記第1の反射レンズ(12)からの反射光を受けるべく前記本体(6)に一体的に形成された感知装置と、
前記本体(6)および前記感知装置との間の結合部に取り付けられる隔壁(16)であって後面が黒塗装で覆われた隔壁(16)と、
前記反射光を受けるセンサ(10)であって内部に蓄えられた情報と前記反射光との比較のために前記第1の反射レンズ(12)からの前記反射光を受けるセンサ(10)とを含み、
前記対物レンズ(11)は透明な材料で作られ、
前記対物レンズを作る前記材料はガラスまたはアクリル樹脂から成るグループから選択されている、指紋識別組立体。
【請求項2】
前記第1の反射レンズ(12)および第2の反射レンズ(14)は凹レンズである、請求項1に記載の組立体。
【請求項3】
前記光源(4)の位置は前記対物レンズ(11)が配置されたところから偏っており、前記対物レンズ(11)の位置は第1の反射レンズ(12)が配置されたところから偏っており、前記第1の反射レンズ(12)の位置は前記第2の反射レンズ(14)が配置された位置から偏っている、請求項1または2に記載の組立体。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【公開番号】特開2007−50032(P2007−50032A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−235438(P2005−235438)
【出願日】平成17年8月15日(2005.8.15)
【出願人】(505184573)全量工業股▲ふん▼有限公司 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月15日(2005.8.15)
【出願人】(505184573)全量工業股▲ふん▼有限公司 (2)
【Fターム(参考)】
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