説明

指紋認識装置

【課題】指紋センサに指の腹が接触し、さらに接地電極に指が確実に接触するようにして、常に理想的な状態で高精度の指紋認識を可能とすること。
【解決手段】指紋を検出する指紋センサ10と、指紋検出時に対向電極となる指を接地電位とするための接地電極3と、前記指紋センサ10と前記接地電極3が取り付けられる絶縁性の基板1とを備え、指紋の検出を行うとき、前記基板1を指紋を検出する指と他の指とで挟む構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指紋を特定するため効果的な指紋検出を行うことができる指紋認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報処理装置において、本人以外のオペレーションを排除するためのセキュリティ対策として数々の方式が存在するが、指紋認識装置は小型で簡単な方式であること、安価であることから、広く一般に普及してきている。
【0003】
指紋認識装置では、一般には指紋センサは水平に設置されており、その上に指をおいて指紋を検知する。静電式指紋センサの場合は、指は接地された電極としての役目を果たす(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図5は従来の指紋センサの説明図である。図5において、静電式のセンサである指紋センサ10には、二酸化シリコン等の絶縁体(基板)の中に複数の検出素子12が等間隔に配列されている。接地させた指16を指紋センサ10の表面に接触させると、指の指紋の山18が検出素子12に近づき、近づいた検出素子12の電極との間で容量変化が生じる。この容量変化は指紋の山18の部分で大きく、谷19の部分で小さくなる。このため、この容量変化を2次元画像として検出して、指紋認識が行われる。
【0005】
図6は従来の指紋認識装置の説明図(1)である。図6において、指紋認識装置の断面を示しており、指紋認識装置には、絶縁基板1の中央に指紋センサ10があり、指紋センサ10の周囲を囲うように接地電極3が配置される。この図6(断面図)のように指が接地電極3に接触するように置くことが前提となる。指を指紋センサ10の検出面に平行に置くことで、指紋認識装置の接地電極3が指16で接触して正常な動作が行われ、同時に指16の腹の部分が指紋センサ10のセンサ面に密接し、精度の高い指紋の認識が行える。このように指紋認識を行うには、指紋認識を行う指16が指紋センサ10と接地電極3に同時に接触する必要があった(例えば、特許文献2、3参照)。
【0006】
図7は従来の指紋認識装置の説明図(2)である。図7において、指紋認識装置の認識精度が低下する場合の説明であり、指紋認識を行う指16が接地電極3に接触していないものである。
【0007】
また、指紋認識装置をマウスに取り付けたタイプがある(例えば、特許文献4、5参照)。さらに、光学式では、指を斜面部に置く構造としたものも考えられていた(例えば、特許文献3の図8参照)。
【特許文献1】米国特許第6016355号明細書
【特許文献2】特開平11−155837号公報
【特許文献3】特開2000−222555号公報
【特許文献4】特開平10−143270号公報
【特許文献5】特開2000−284905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来のものは、指を置く位置の構造も様々あるが、個人個人の指の置き方も様々であり、例えば図7に示したように指紋センサ10に指先を置くだけの時もある。この場合は、指がアース(接地電極3)に接触しないのみならず、指紋データも指先だけとなり認識精度が著しく低下するものであった。
【0009】
通常人が指先を机上に置く動作は、指先を置くのが普通の動作である。即ち、図7に示した状態である。しかし、単体の指紋認識装置は指紋センサを水平に置き、指をセンサ面に沿って水平に置くことを期待して配置されている。この理由は、指紋認識装置がコンパクトにできるからであった。
【0010】
静電式の指紋センサを使用した指紋認識装置に関して、指紋センサ周囲に配置されたアース(接地電極)をいかに精度よく指に接触させるか重要となる。したがって、本発明は、指紋認識を行う指と他の指とで指紋認識装置を挟んでセンサ面に所望の指を置くことで、常に理想的な状態、つまり指紋センサに指の腹が接触し、さらに指紋センサ周囲に配設された接地電極に確実に接触するようにして、高精度の指紋認識が行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
図1は本発明の指紋認識装置の説明図である。図1中、1は基板(本体基板)、2は台、3は接地電極、10は指紋センサ、16は指紋を検出する指である。
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するため次のように構成した。
【0013】
(1):指紋を検出する指紋センサ10と、指紋検出時に対向電極となる指を接地電位とするための接地電極3と、前記指紋センサ10と前記接地電極3が取り付けられる絶縁性の基板1とを備え、指紋の検出を行うとき、前記基板1を指紋を検出する指と他の指とで挟む構造とする。このため、指紋センサに指の腹が接触し、さらに指紋センサの周囲や裏面に配設された接地電極に指が接触するので、常に理想的な状態で高精度の指紋認識が可能となる。
【0014】
(2):前記(1)の指紋認識装置において、前記接地電極3は、前記基板1の同一平面で前記指紋センサ10の周囲に配置される。このため、基板を指紋を検出する指と他の指とで挟んだ時、指紋センサの周囲に配設された接地電極に指が接触するので、確実に指が接地され高精度の指紋認識が可能となる。
【0015】
(3):前記(1)の指紋認識装置において、前記接地電極3は、前記指紋センサ10が配置されている前記基板1の裏面に配置される。このため、指紋センサに指の腹が接触し、さらに指紋センサの裏面に配設された接地電極に指(例えば、親指)が接触するので、さらに確実に指が接地され高精度の指紋認識が可能となる。
【0016】
(4):前記(1)〜(3)の指紋認識装置において、前記基板1は、垂直に固定される。このため、人間が、例えば親指と指紋を検出する他の指で基板を挟むときは必然的に他の指の腹を当てるようになり、指紋検出には望ましい状態となり、しかもある程度の力で挟むので、接地電極に必ず接触する状態が自然の動作の中からできる(使いやすい構造となる)。
【0017】
(5):前記(1)〜(4)の指紋認識装置において、前記接地電極3を押圧することにより作動するスイッチを備え、前記スイッチが作動した時、指紋の検出を開始する。このため、必要な時のみ指紋認識動作をさせることができ、雑音等による誤動作を防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば次のような効果がある。
【0019】
(1):指紋の検出を行うとき、基板を指紋を検出する指と他の指とで挟む構造とするため、指紋センサに指の腹が接触し、さらに指紋センサの周囲や裏面に配設された接地電極に指が接触するので、常に理想的な状態で高精度の指紋認識が可能となる。
【0020】
(2):接地電極は、基板の同一平面で指紋センサの周囲に配置されるため、基板を指で挟んだ時、指紋センサの周囲に配設された接地電極に指が接触するので、確実に指が接地され高精度の指紋認識が可能となる。
【0021】
(3):接地電極は、指紋センサが配置されている基板の裏面に配置されるため、基板を指で挟んだ時、指紋センサに指の腹が接触し、さらに指紋センサの裏面に配設された接地電極に指が接触するので、より確実に指が接地され高精度の指紋認識が可能となる。
【0022】
(4):基板が、垂直に固定されるため、人間が、例えば親指と指紋を検出する他の指で基板を挟むときは必然的に他の指の腹を当てるようになり、指紋検出には望ましい状態となり、しかもある程度の力で挟むので、接地電極に必ず接触する状態が自然の動作の中からできる(使いやすくなる)。
【0023】
(5):接地電極を押圧することにより作動するスイッチを備え、スイッチが作動した時、指紋の検出を開始するため、必要な時のみ指紋認識動作をさせることができ、雑音等による誤動作を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
通常、人が指を机上に置くのは指先を接触させる動作が普通である。これは手先の構造上水平に置くのは無理があるからである。従って、静電式センサを使用し指でアースを取ることが要求される指紋認識装置に関しては、自然な指の動作に合わせた検出が行われるのが望ましい。
【0025】
このような観点から、本発明は指紋認識装置の縦型構成を提案するものである。縦型に配置された指紋センサを親指と挟んでセンサ面に所望の指を置くので、常に理想的な状態、つまり指紋センサに指の腹が接触し、さらに指紋センサ周囲に配設された接地電極に接触するので高精度の指紋認識が可能となる。
【0026】
(1):指紋認識装置の説明
図1は本発明の指紋認識装置の説明図であり、図1(a)は指紋認識装置の説明、図1(b)は指紋認識の説明である。図1(a)において、指紋認識装置は、本体の基板1が台2に固定されており、基板1には中央に指紋センサ10があり、指紋センサ10の周囲に接地電極3が配置されている。基板1は、絶縁性で台2に固定されるものである。台2は、指紋認識装置の基板1を固定するものである。接地電極3は、指紋センサ10の周囲を囲うように配置されるものである。指紋センサ10は、複数の検出素子が複数等間隔に配列された図5と同様の静電式のセンサである。
【0027】
図1(b)において、指紋センサ10と周囲に配置された接地電極3は、ほぼ同一面で垂直に配置され、指紋検出時に親指と指紋検出する指16(例えば、同じ腕の人差し指)とで挟む構造とする。人間が親指と他の指で物を挟むときは必然的に他の指の腹を当てるようになる。従って、指紋検出には、望ましい状態であり、しかもある程度の力で挟むので、センサ周囲の接地電極に必ず指が接触する状態が自然の動作の中からできることとなる。
【0028】
(2):指紋センサ面と反対面に接地電極を設ける場合の説明
図2は指紋センサ面と反対面に接地電極を設ける説明図であり、図2(a)は指紋認識装置の説明、図2(b)は指紋認識の説明である。図2(a)において、指紋認識装置は、指紋センサ10が取付けられた本体の基板1の裏面に接地電極3が取り付けられている。他の構造は図1と同じである。
【0029】
指紋を検出する指16と反対側である親指側に接地電極3が設けられている。この場合は、図2(b)のように、指紋検出時に親指と指紋検出する指16(例えば、人差し指)とで挟むことにより、より確実に指が接地されることとなる。
【0030】
図3は接地電極を裏面全体に設ける場合の説明図である。図3において、指紋認識装置は、指紋センサ10が取付けられた本体の基板1の裏面の全面に接地電極3が取り付けられている。この場合は、指紋検出時に親指と指紋検出する指16とで、基板1を挟む(指紋センサ10と接地電極3を挟む)ことにより、親指は基板1の裏面のどこと接触してもよいため、さらに確実に指が接地されることとなる。
【0031】
(3):動作開始スイッチを設ける場合の説明
図4は動作開始スイッチを設ける場合の説明図である。図4において、指紋認識装置の本体の基板1の中央部に指紋センサ10が設けてあり、基板1の裏面には接地電極3が絶縁性の板4に固定して配置されている。また、板4は、弾性体5を介して基板1に取り付けられている。接地電極3には、指紋認識動作開始スイッチ6を構成する一方の接点があり、基板1側に他方の接点がある。
【0032】
指紋認識動作開始スイッチ6は、接地電極3が押圧されることにより、弾性体5が圧縮されるため、接地電極3側の接点と基板1側の接点が接触してオン(閉)となる。これにより、指紋認識装置の指紋の認識動作が行われる。
【0033】
上記では弾性体5は、板4に固定される説明をしたが、接地電極3と基板1の間に固定するようにしてもよい。また、弾性体5は、コイルバネ、板バネ、ゴム等で構成することができる。このように、接地電極3にかかる圧力を感知して動作する指紋認識動作開始スイッチ6を設けることにより、必要な時のみ指紋認識動作をさせることができ、雑音等による誤動作を防止することができる。
【0034】
なお、前記の例では、指紋認識動作開始スイッチ6は、基板1の裏面に接地電極3を設けた指紋認識装置に取り付ける説明をしたが、指紋センサ10と接地電極3が同一面に配置されるものにも適用することができる。
【0035】
また、接地電極3をアース電位に接続する説明をしたが、他の電位(基準電位)と接続するようにしてもよい。
【0036】
さらに、親指を指紋検出する指16とする場合は、親指を指紋センサ10に接触させ、他の指(人差し指等)で基板1を挟むようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の指紋認識装置の説明図である。
【図2】本発明の指紋センサ面と反対面に接地電極を設ける説明図である。
【図3】本発明の接地電極を裏面全体に設ける場合の説明図である。
【図4】本発明の動作開始スイッチを設ける場合の説明図である。
【図5】従来の指紋センサの説明図である。
【図6】従来の指紋認識装置の説明図(1)である。
【図7】従来の指紋認識装置の説明図(2)である。
【符号の説明】
【0038】
1 基板(本体基板)
2 台
3 接地電極
10 指紋センサ
16 指紋を検出する指

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指紋を検出する指紋センサと、
指紋検出時に対向電極となる指を接地電位とするための接地電極と、
前記指紋センサと前記接地電極が取り付けられる絶縁性の基板とを備え、
指紋の検出を行うとき、前記基板を指紋を検出する指と他の指とで挟む構造とすることを特徴とする指紋認識装置。
【請求項2】
前記接地電極は、前記基板の同一平面で前記指紋センサの周囲に配置されることを特徴とした請求項1記載の指紋認識装置。
【請求項3】
前記接地電極は、前記指紋センサが配置されている前記基板の裏面に配置されることを特徴とした請求項1記載の指紋認識装置。
【請求項4】
前記基板は、垂直に固定されることを特徴とした請求項1〜3のいずれかに記載の指紋認識装置。
【請求項5】
前記接地電極を押圧することにより作動するスイッチを備え、
前記スイッチが作動した時、指紋の検出を開始することを特徴とした請求項1〜4のいずれかに記載の指紋認識装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−14908(P2006−14908A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195108(P2004−195108)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】