説明

振動抑制機能を備えた数値制御装置

【課題】さまざまな指令回転速度において、記録された最適回転速度への置換えを可能とする。
【解決手段】数値制御装置は、加工プログラムから回転軸の指令回転速度を抽出するプログラム解析部19と、びびり振動を抑制可能な複数個の最適回転速度が記録され
る最適回転速度記録部16と、抽出された指令回転速度に応じて、前記複数個の最適回転速度の中から一つの最適回転速度を選択して、実際の加工で用いる指令回転速度
とする指令回転速度置換え判定部17と、を備える。指令回転速度置換え判定部は、抽出された指令回転速度に基づいて、置換え可能な最適回転速度の範囲である置換回
転速度範囲を求め、前記複数個の最適回転速度のうち当該置換回転速度範囲内にある最適回転速度を、実際の加工で用いる指令回転速度として選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械を制御する数値制御装置に関する。特に工具またはワークを回転させながら加工した際に生じるびびり振動を抑制するための振動抑制機能を備えた数値制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば回転可能な回転軸に工具を支持させ、固定したワークに対して工具を送りながらワークの外周面等に切削加工を施す工作機械が広く知られている。前記工作機械においては、切削加工における切込み量や工具の突出し長さを必要以上に大きくすると、加工中に所謂「びびり振動」が発生して、加工面の仕上げ精度を悪化させてしまうという問題がある。このとき、前記「びびり振動」を抑制するためには、工具やワーク等の「びびり振動」が生じる系の固有振動数や加工中のびびり周波数を求め、固有振動数またはびびり周波数を60倍して、工具刃数及び所定の整数で除した値を回転速度として加工を行えばよいことが知られている。この「びびり振動」を効果的に抑制可能な最適回転速度を求めることができる振動抑制装置がある。
【0003】
例えば特許文献1には、工具又はワークを回転させるための回転軸を備えた工作機械において、前記回転軸を回転させた際に生じるびびり振動を抑制するための振動抑制装置であって、回転中の前記回転軸の時間領域の振動を検出する検出手段と、検出手段により検出された時間領域の振動にもとづいて、びびり振動数及び前記びびり振動数における周波数領域の振動を算出する第1演算手段と、周波数領域の振動、びびり振動数、及び回転軸回転速度を加工情報として記憶する記憶手段と、前記第1演算手段により算出された周波数領域の振動が所定の閾値を超えた場合に、その周波数領域の振動、びびり振動数、及びその時の回転軸回転速度を新たな加工情報として記憶手段に記憶するとともに、当該新たな加工情報と、前記記憶手段に記憶されている過去の加工情報とにもとづき、びびり振動を抑制可能な前記回転軸の最適回転速度を算出する第2演算手段と、前記第2演算手段により算出された最適回転速度にて前記回転軸を回転させる回転速度制御手段とを備えていることを特徴とする技術が開示されている。
【0004】
また従来の前記振動抑制装置においては、このようにして算出された最適回転速度は、最適回転速度が算出されたときに回転軸に支持されていた工具の工具番号および加工プログラムに指令されている回転軸の指令回転速度と共に最適回転速度記録部に記録され、再度同じ工具番号の工具を使用して最適回転速度算出時と同じ指令回転速度で加工をする場合に、指令回転速度に置換えて指令回転速度と共に記録されている以前に算出された最適回転速度で加工することが可能となっている。ただし、この再度同じ工具番号の工具と記録されている最適回転速度を使用しても、例えば工具の磨耗等により工具に作用する切削抵抗が異なるので、必ずしも「びびり振動」が抑制されるとは限らない。
【0005】
ここで、最適回転速度は、対応する回転速度範囲内に一つ存在するという特性がある。そのため、同一工具で複数の指令回転速度で加工を行う場合、複数の指令回転速度が一種類の回転速度範囲内にあるときは、最適回転速度は1つしか存在しないことになる。一方、その複数の指令回転速度が異なる複数種類の回転速度範囲内にある場合、複数種類の回転速度範囲それぞれに対応する最適回転速度が存在することになる。すなわち、同一工具で複数の指令回転速度に対して、指令回転速度の種類数とは異なる種類数の最適回転速度が記録される。
【0006】
このようにして記録された最適回転速度で加工を行うために、加工プログラムで指令された指令回転速度を最適回転速度に置換える従来の方法について以下の通り説明する。
【0007】
図1は、従来の振動抑制機能を備えた数値制御装置の一実施例を示すブロック図である。図1において、工具11を取り付けられた回転軸10を回転させるために、加工プログラム18内の指令回転速度をプログラム解析部19にて抽出し、指令回転速度CMD−Sとして、指令回転速度置換え判定部17に入力される。また、最適回転速度記録部16で記録された最適回転速度LOG−Sも指令回転速度置換え判定部17へ入力される。指令回転速度置換え判定部17では、指令回転速度CMD−Sを記録された最適回転速度LOG−Sへ置換えが可能か否かを判定し、置換えが可能と判定された場合、最適回転速度LOG−Sを指令回転速度CMD−S’として回転速度制御部15へ出力する。
【0008】
次に、指令回転速度を最適回転速度に置換えるときに、置換えが可能か否かを判定する方法について説明する。図3は、従来の指令回転速度置換え判定部のフローチャートである。
【0009】
図3において、まず、回転速度制御部15へ出力する指令回転速度CMD−S’に初期値「0」を設定する(S1)。次に、プログラム解析部19にて抽出された指令回転速度CMD−Sと、最適回転速度記録部16に記録された最適回転速度LOG−Sに対応付けられている指令回転速度(以下「対応回転速度」という)と、を比較する(S3)。ここで、対応回転速度とは、その最適回転速度LOG−Sを算出したときの指令回転速度のことである。比較の結果、指令回転速度CMD−Sと対応回転速度とが、一致したら記録された最適回転速度LOG−S(対応回転速度に対応する最適回転速度)を指令回転速度CMD−S’とする(S4)。
【0010】
ここで、最適回転速度記録部16には複数の最適回転速度が記録されているので、記録されている複数の全ての最適回転速度LOG−Sに対してステップS3とステップS4の処理をしたかどうか確認する(S2)。複数記録された最適回転速度LOG−S全てに対して確認を終えた時点で回転速度制御部15へ出力する指令回転速度CMD−S’が初期値「0」であるかどうか確認(S5)し、その結果、初期値「0」であればプログラムで指定された指令回転速度CMD−Sを回転速度制御部15へ出力する指令回転速度CMD−S’とし(S6)、置換え不可能と判定する(S7)。ステップS5において回転速度制御部15へ出力する指令回転速度CMD−S’が初期値「0」でなければ、回転速度制御部15へ出力する指令回転速度CMD−S’には記録された最適回転速度LOG−Sが設定されているため、置換え可能と判定する(S8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−101495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の技術で述べた指令回転速度置換え判定では、最適回転速度は、ある回転速度範囲に対して1つしか存在しないという特性があるにも関らず、加工プログラムの指令回転速度と最適回転速度記録部で記録された対応回転速度とが一致したときのみ、対応回転速度に対応する最適回転速度への置換えを行う。換言すれば、加工プログラムの指令回転速度の値が、記録されている対応回転速度の値と、たとえ、僅かに異なっていたとしても、置換えは行われないことになり、結果として、記録されている最適回転速度を利用することができない。このため、最適回転速度記録部に複数の対応回転速度が複数記録されていたとしても、例えば、それまでに使用されていない指令回転速度などのさまざまな指令回転速度については、記録された最適回転速度を使用することができない。そして、結果として、同一工具であっても加工プログラムで以前と異なる指令回転速度を設定した加工においては、最適回転速度に置換えが出来ず、びびり振動が発生する可能性があり、その場合、加工面の仕上げ精度が悪化するという課題があった。
【0013】
そこで、本発明では、びびり振動をより効果的に防止でき得る数値制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の数値制御装置は、工具を回転させる回転軸を備える工作機械に搭載され、加工プログラムにしたがって前記工作機械の駆動を制御する数値制御装置であって、前記加工プログラムを解析し、当該加工プログラムから前記回転軸の指令回転速度を抽出するプログラム解析部と、びびり振動を抑制可能な複数個の最適回転速度が記録される最適回転速度記録部と、前記加工プログラムから抽出された指令回転速度に応じて、前記最適回転速度記録部に記録された複数個の最適回転速度の中から一つの最適回転速度を選択して、実際の加工で用いる指令回転速度とする指令回転速度置換え判定部と、を備え、前記指令回転速度置換え判定部は、前記加工プログラムから抽出された指令回転速度に基づいて、置換え可能な最適回転速度の範囲である置換回転速度範囲を求め、前記最適回転速度記録部に記録された複数個の最適回転速度のうち当該置換回転速度範囲内にある最適回転速度を、実際の加工で用いる指令回転速度として選択する、ことを特徴とする。
【0015】
好適な態様では、前記指令回転速度置換え判定部は、前記加工プログラムから抽出された指令回転速度に、予め規定されている上限割合または下限割合を乗じた値を、前記置換回転速度範囲の上限値または下限値として算出する。
【0016】
他の好適な態様では、前記指令回転速度置換え判定部は、前記最適回転速度記録部に記録された複数個の最適回転速度のうち当該置換回転速度範囲内にある最適回転速度が複数存在する場合には、当該複数の最適回転速度のうち、前記加工プログラムから抽出された指令回転速度の差の絶対値が最も小さい最適回転速度を、実際の加工で用いる指令回転速度として選択する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、置換回転速度範囲という、一定の幅をもった値に基づいて、置換する最適回転速度を選択するため、それまでに使用されていない指令回転速度などのさまざまな指令回転速度に対して最適回転速度への置換えが可能となる。その結果、びびり振動が発生し難い回転速度での加工が可能となる。また、設定した範囲外にある複数ある最適回転速度は置換えの候補から外れるため、回転軸回転速度の急増、急減を防ぎ、安全に振動抑制機能を備えた数値制御装置を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来の数値制御装置の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態である数値制御装置のブロック図である。
【図3】従来の指令回転速度置換え判定部のフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態における指令回転速度置換え判定部のフローチャートである。
【図5】最適回転速度記録部の記録データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る実施形態について、以下図面を用いて詳細に説明する。
【0020】
図2は、本発明の実施形態である振動抑制機能を備えた数値制御装置のブロック図である。この数値制御装置においては、工具11を取り付けられた回転軸10を回転させるために、加工プログラム18内の指令回転速度をプログラム解析部19にて抽出し、指令回転速度CMD−Sとして、指令回転速度置換え判定部17に入力する。また、最適回転速度記録部16で記録された最適回転速度LOG−Sも指令回転速度置換え判定部17へ入力される。さらに、本実施形態では、予め設定された任意のパラメータ20の設定値(回転速度範囲上限割合PRMU及び回転速度下限割合PRML)も指令回転速度置換え判定部17に入力される。
【0021】
指令回転速度置換え判定部17は、抽出された指令回転速度CMD−Sと、入力された回転速度範囲上限割合PRMU及び回転速度下限割合PRMLと、を下記式1に代入し、置換え可能な最適回転速度LOG−Sの範囲(以下「置換回転速度範囲」という)を算出する。
(CMD−S×PRML)≦LOG−S≦(CMD−S×PRMU) 式1
【0022】
指令回転速度置換え判定部17は、記録された最適回転速度LOG−Sの中に、この置換回転速度範囲に収まる回転速度があるか否かを判定し、ある場合には、当該置換回転速度範囲内に収まる最適回転速度のうち、指令回転速度CMD−Sに最も近い最適回転速度を、指令回転速度CMD−S’として回転速度制御部15へ出力する。一方、置換回転速度範囲に収まる最適回転速度LOG−Sが記録されていない場合には、加工プログラムにて指定された指令回転速度CMD−Sを、指令回転速度CMD−S’として回転速度制御部15へ出力する。
【0023】
次に、図4に基づき指令回転速度CMD−Sを記録された最適回転速度LOG−Sへ置換え可能か否かを判定する方法を説明する。図4は、本実施形態における指令回転速度置換え判定部のフローチャートである。図4において、まず、回転速度制御部15へ出力する指令回転速度CMD−S’に初期値「0」を設定する(S21)。次に、最適回転速度記録部16で記録された最適回転速度LOG−Sの一つが、上記式1に基づいて算出された置換回転速度範囲に収まるか否かを判定する(S23)。
【0024】
判定の結果、この最適回転速度LOG−Sが置換回転速度範囲内でない場合(S23でNoの場合)には、ステップS22に戻る。ステップS22では、記録されている全ての最適回転速度LOG−Sについて、ステップS23の判定を行ったか否かを判定する。判定の結果、ステップS23の判定を行っていない最適回転速度LOG−Sが残っている場合には、その残っている最適回転速度LOG−Sの一つについてステップS23の判定を行う。残っていない場合には、ステップS27に進む。
【0025】
ステップS23において、対象となっている最適回転速度LOG−Sが、置換回転速度範囲に収まっていると判定された場合(S23でYesの場合)には、ステップS24に進む。ステップS24では、対象となる最適回転速度LOG−Sのうち、指令回転速度CMD−Sに最も近い最適回転速度LOG−Sを特定するために、対象となる最適回転速度LOG−Sと指令回転速度CMD−Sの差を算出する。そして、先回の最適回転速度LOG−Sと、指令回転速度CMD−Sとの差(先回の|CMD−S − LOG−S|)と、現在確認中の最適回転速度LOG−Sと指令回転速度CMD−Sとの差(今回の|CMD−S − LOG−S|)を比較する(S24)。
【0026】
現在確認中の最適回転速度LOG−Sと指令回転速度CMD−Sとの差(今回の|CMD−S − LOG−S|)の方が小さい場合(S24でYesの場合)は、“今回の|CMD−S − LOG−S|”の値を“先回の|CMD−S − LOG−S|”の値とし最も指令回転速度CMD−Sに近い最適回転速度LOG−Sと指令回転速度CMD−Sとの差を更新する(S25)。そして、その時の最適回転速度LOG−Sを回転速度制御部15へ出力する指令回転速度CMD−S’とする(S26)。
【0027】
以上のことを、複数記録された最適回転速度LOG−S全てに対して確認(S22)し、この時点で回転速度制御部15へ出力する指令回転速度CMD−S’が初期値「0」のままであれば(S27でYes)、加工プログラムで指定された指令回転速度CMD−Sを回転速度制御部15へ出力する指令回転速度CMD−S’とし(S28)、置換え不可能と判断する(S29)。回転速度制御部15へ出力する指令回転速度CMD−S’が初期値「0」のままでなければ(S27でNo)、回転速度制御部15へ出力する指令回転速度CMD−S’には指令回転速度CMD−Sに最も近い最適回転速度LOG−Sが設定されているため、置換え可能と判断する(S30)。
【0028】
ここで、置換回転範囲の算出について具体例を用いて説明する。図5は、最適回転速度記録部16の記録データの一例であり、最適回転速度と最適回転速度算出時の指令回転速度がある一つの工具番号に対して、図5のように複数記録されている。
【0029】
この状態において、例えば、任意のパラメータ20の設定値において、回転速度範囲下限割合が“PRML=0.7”、回転速度範囲上限割合が“PRMU=1.4”と設定され、今回、加工プログラムから抽出された指令回転速度CMD−Sが1500であったとする。式1から、置換え可能な最適回転速度の範囲は次のように算出できる。
1500×0.7 ≦ 最適回転速度LOG−S ≦ 1500×1.4
1050 ≦ 最適回転速度LOG−S ≦ 2100
【0030】
つまり、置換回転速度範囲は、1050以上2100以下となる。図5において記録されている最適回転速度のうち、この置換回転速度範囲に収まる最適回転速度は、1056と1988である。これら二つの回転速度は、置換え可能な最適回転速度となり、3014は置換え可能な最適回転数から除外される。
【0031】
次に、この置換回転速度範囲に基づいて、置換すべき最適回転速度LOG−Sを特定する流れについて具体例を用いて説明する。まず、最適回転速度記録部16に記録されている複数の最適回転速度のうち、一つの最適回転速度1056が、置換回転速度範囲内か否かを確認する(S23)。上述の置換回転速度範囲は、1050以上、2100以下であるため、最適回転速度1056は置換え可能範囲内にある(S23でYes)。次にステップS24では、指令回転速度CMD−Sと最適回転速度LOG−Sの差を算出する。この場合、指令回転速度CMD−S=1500なので、今回の|CMD−S − LOG−S|=|1500−1056|=444となる。また、今回は初回のため、先回の最適回転速度LOG−S=「0」とすると、先回の|CMD−S − LOG−S|=|1500−0|=1500となり、先回の絶対差=1500>今回の絶対差=444を満足するので、S24の判定結果は、YESとなる。
【0032】
次にステップS25に進んで、今回の差を先回の差に置換える処理をするので、先回の差は1500から444となる。そして、ステップS26に進み、最適回転速度LOG−Sを回転速度制御部15へ出力する指令回転速度CMD−S‘とするので、CMD−S’=1056として、ステップS22に戻る。ステップS22では、ステップS23の確認を行っていない最適回転速度LOG−Sの有無を確認する。本具体例では、1988、3014・・・などの最適回転速度LOG−Sについては、ステップS23の確認を行っていないので、これらの確認を順次、行う。すなわち、今回は、最適回転速度LOG−S=1988について確認する。ステップS23において、最適回転速度LOG−S=1988は置換回転速度範囲内であることが確認される。次にS24では、先回と同様に指令回転速度CMD−Sと最適回転速度LOG−Sの差を算出する。この場合、指令回転速度CMD−S=1500であるので、今回は、今回|CMD−S − LOG−S|=|1500−1988|=488となる。先回の差=444>今回の差488を満足しないので、ステップS22に戻る。これは、今回の差が先回より大きいので、指令回転速度に最も近い最適回転速度を選定するという条件を満たさないので、今回最適回転速度LOG−S=1988は選択されないことを意味する。次に最適回転速度LOG−S=3014について確認する。S23では最適回転速度LOG−S=3014は前記置換え可能範囲内にないので、ステップS22に戻る。以降も同様の処理を繰り返し、図5の通り記録されている全ての最適回転速度について確認されれば、ステップS27に進む。このとき、回転速度制御部15へ出力する指令回転速度CMD−S’=1056となっている。したがって、ステップS27で、CMD−S’が「0」ではないので、ステップS30に進んで、置換え可能と判定し、処理を終える。そして、実際の加工では、この置換された最適回転速度1056を指令回転速度CMD−S’として制御される。これにより、びびり振動が抑制され、好適な加工が可能となる。
【0033】
本実施形態では、数値制御装置に搭載されている最適回転速度算出部14で算出された最適回転速度を、最適回転速度記録部16に記録しているが、当該数値制御装置で最適回転速度を求めるのではなく、事前に、実験等で求まった最適回転速度を最適回転速度記録部16に記録するようにしてもよい。また、最適回転速度記録部16には、最適回転速度さえ記録されていればよく、当該最適回転速度に対応付けられている指令回転速度(対応回転速度、図5において左側列に記録されているパラメータ)は記録されていなくてもよい。また、本実施形態では、まず、置換え可能な最適回転速度の範囲(置換回転速度範囲)を算出し、この範囲に該当する最適回転速度を求めているが、選択される最適回転速度が、加工プログラムで指令された指令回転速度から求まる一定範囲に収まるのであれば、他の流れで置換する最適回転速度を決定してもよい。例えば、記録部16に記録されている最適回転速度を、順次、加工プログラムで指令された指令回転速度で割り、その値が、予め規定されている下限割合から上限割合の間に含まれているか否かを判定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10 回転軸、11 工具、12 ワーク、13 振動加速度解析部、14 最適回転速度算出部、15 回転速度制御部、16 最適回転速度記録部、17 指令回転速度置換え判定部、18 加工プログラム、19 プログラム解析部、20 パラメータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を回転させる回転軸を備える工作機械に搭載され、加工プログラムにしたがって前記工作機械の駆動を制御する数値制御装置であって、
前記加工プログラムを解析し、当該加工プログラムから前記回転軸の指令回転速度を抽出するプログラム解析部と、
びびり振動を抑制可能な複数個の最適回転速度が記録される最適回転速度記録部と、
前記加工プログラムから抽出された指令回転速度に応じて、前記最適回転速度記録部に記録された複数個の最適回転速度の中から一つの最適回転速度を選択して、実際の加工で用いる指令回転速度とする指令回転速度置換え判定部と、
を備え、前記指令回転速度置換え判定部は、
前記加工プログラムから抽出された指令回転速度に基づいて、置換え可能な最適回転速度の範囲である置換回転速度範囲を求め、前記最適回転速度記録部に記録された複数個の最適回転速度のうち当該置換回転速度範囲内にある最適回転速度を、実際の加工で用いる指令回転速度として選択する、
ことを特徴とする数値制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の数値制御装置であって、
前記指令回転速度置換え判定部は、前記加工プログラムから抽出された指令回転速度に、予め規定されている上限割合または下限割合を乗じた値を、前記置換回転速度範囲の上限値または下限値として算出する、ことを特徴とする数値制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の数値制御装置であって、
前記指令回転速度置換え判定部は、前記最適回転速度記録部に記録された複数個の最適回転速度のうち当該置換回転速度範囲内にある最適回転速度が複数存在する場合には、当該複数の最適回転速度のうち、前記加工プログラムから抽出された指令回転速度の差の絶対値が最も小さい最適回転速度を、実際の加工で用いる指令回転速度として選択する、ことを特徴とする数値制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−171074(P2012−171074A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37799(P2011−37799)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000149066)オークマ株式会社 (476)
【Fターム(参考)】