説明

振動抑制装置

【課題】加工開始時から一度もびびり振動を発生させることなく加工を終了させることが可能な振動抑制装置を提供する。
【解決手段】演算手段において算出された安定回転速度を、該安定回転速度が含まれる回転速度域に対応付けて記憶する記憶手段を備えており、回転軸を回転させて加工が開始されるに際し、回転軸の回転速度となる指令回転速度が入力される(S1)と、演算手段は、指令回転速度が回転速度域に含まれるか否かを判断し(S2、S11)、回転速度域に含まれる場合には安定回転速度を読み出し、該安定回転速度を指令回転速度に代えてNC装置へと出力し(S3)、安定回転速度にて加工を開始させる(S4)ようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具又はワークを回転させながら加工を行う工作機械において、加工中に発生するびびり振動を抑制するための振動抑制装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば工具を回転させてワークの表面を研削加工するような工作機械においては、工具の剛性が低い等の理由により、加工中にびびり振動が発生することがある。そこで、本件出願人は、加工中にびびり振動の発生を検出すると、該びびり振動のびびり周波数を算出するとともに、そのびびり周波数を用いてびびり振動を抑制可能な安定回転速度を算出し、工具の回転速度を安定回転速度へと変更するような振動抑制装置(たとえば特許文献1や特許文献2に記載の振動抑制装置)を考案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−44852号公報
【特許文献2】特開2008−290118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の振動抑制装置は、あくまでびびり振動を検出してから安定回転速度へと変更するものであるため、一度工具の回転を中止させた後に再び工具を回転させて加工を開始するような場合、また加工開始時の指令回転速度にて工具を回転させ、びびり振動の検出をもって安定回転速度へと変更するといった制御が実行されることになる。したがって、加工を開始する度に、ワークの表面等にびびり振動によるびびりマークが生じてしまい、加工効率が悪い、加工面精度に劣る等といった問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、加工開始時から一度もびびり振動を発生させることなく加工を終了させることが可能な振動抑制装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、工具又はワークを回転させるための回転軸を備えた工作機械において、前記回転軸に生じるびびり振動の発生を検出する検出手段と、前記検出手段による検出値をもとに前記びびり振動を抑制可能な安定回転速度を算出する演算手段と、前記回転軸の回転速度を制御する回転速度制御手段とを備えた振動抑制装置であって、前記演算手段において算出された安定回転速度を、該安定回転速度が含まれる回転速度域に対応付けて記憶する記憶手段を備えており、前記回転軸を回転させて加工が開始されるに際し、前記回転軸の回転速度となる指令回転速度が入力されると、前記演算手段は、前記指令回転速度が前記回転速度域に含まれるか否かを判断し、前記回転速度域に含まれる場合には前記安定回転速度を読み出し、該安定回転速度を前記指令回転速度に代えて前記回転速度制御手段へと出力し、前記安定回転速度にて加工を開始させることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記読み出した安定回転速度にて加工中、前記検出手段によりびびり振動の発生が検出されると、前記演算手段は、今回検出したびびり振動に係る検出値をもとに新たな安定回転速度を算出し、前記回転軸の回転速度を前記新たな安定回転速度へ変更するように前記回転速度制御手段へ指令するとともに、前記新たな安定回転速度を前記回転速度域に対応付けて前記記憶手段へ記憶し、次回、前記回転速度域に含まれる指令回転速度が入力された場合には、前記新たな安定回転速度を前記回転速度制御手段へ出力することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記検出手段は、前記回転軸の回転に伴う時間領域の振動を検出するとともに、前記時間領域の振動にもとづき、前記回転軸の周波数と、その周波数における周波数領域の振動加速度とを求めており、前記周波数領域の振動加速度と所定の閾値とを比較し、前記周波数領域の振動加速度が前記所定の閾値を超えるとびびり振動が発生していると判断するとともに、前記演算手段は、前記びびり振動が発生していると判断した際の前記周波数領域の振動加速度を前記記憶手段に記憶することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記演算手段は、前記検出手段による検出値をもとに前記びびり振動を抑制可能な複数の安定回転速度を算出し、そのうち前記回転速度域に含まれる安定回転速度と共に前記回転速度域に含まれない安定回転速度も前記記憶手段に記憶することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、演算手段において算出された安定回転速度を、該安定回転速度が含まれる回転速度域に対応付けて記憶する記憶手段を備えており、回転軸を回転させて加工が開始されるに際し、回転軸の回転速度となる指令回転速度が入力されると、演算手段は、指令回転速度が回転速度域に含まれるか否かを判断し、回転速度域に含まれる場合には安定回転速度を読み出し、該安定回転速度を指令回転速度に代えて回転速度制御手段へと出力し、安定回転速度にて加工を開始させる。したがって、指令回転速度よりは「びびり振動」を発生させる可能性の低い安定回転速度で加工を開始するため、一度も「びびり振動」を発生させることなく、加工を終了させる可能性が高くなり、びびりマークが残っていない高精度な加工面に仕上げることが可能で、加工効率や加工面精度の向上を図ることができる。
また、請求項2に記載の発明によれば、安定回転速度での加工中にも「びびり振動」の発生を検出しており、「びびり振動」が検出されると新たな安定回転速度を算出し、該新たな安定回転速度にて加工を継続するとともに、次回の加工については指令回転速度に代えて新たな安定回転速度を採用するため、「びびり振動」を一層効果的に抑制することができる。
さらに、請求項3及び4に記載の発明によれば、「びびり振動」として検出した周波数領域の振動加速度の最大値や回転速度域外の安定回転速度をも記憶手段に記憶させるため、それらの履歴を参照することにより、加工条件変更の履歴を容易に把握することができる。したがって、条件変更を管理することができるし、工具摩耗を推定したり工具の寿命を予測したりすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】振動抑制装置のブロック構成を示した説明図である。
【図2】振動抑制の対象となる回転軸ハウジングを側方から示した説明図である。
【図3】回転軸ハウジングを軸方向から示した説明図である。
【図4】振動抑制装置による「びびり振動」の振動抑制制御を示したフローチャート図である。
【図5】記憶手段に記憶されている安定回転速度や周波数領域の振動加速度の最大値等を表形式で示した説明図である。
【図6】時間領域の振動加速度のフーリエ解析結果の一例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態となる振動抑制装置について、図面にもとづき詳細に説明する。
【0010】
図1は、振動抑制装置10のブロック構成を示した説明図である。図2は、振動抑制の対象となる回転軸ハウジング1を側方から示した説明図であり、図3は、回転軸ハウジング1を軸方向から示した説明図である。
振動抑制装置10は、回転軸ハウジング1にC軸周りで回転可能に備えられた回転軸3に生じる「びびり振動」を抑制するためのものであって、回転中の回転軸3に生じる振動に伴う特性値である時間領域の振動加速度(時間軸上の振動加速度を意味する)を検出するための振動センサ2a〜2cと、該振動センサ2a〜2cによる検出値を解析して「びびり振動」の発生の有無を判断し、その判断結果に基づいて回転軸3の回転速度を制御する制御装置5とを備えてなる。
【0011】
振動センサ2a〜2cは、図2及び図3に示す如く回転軸ハウジング1に取り付けられており、一の振動センサは、他の振動センサに対して直角方向への時間領域の振動加速度を検出するようになっている(たとえば、振動センサ2a〜2cにて、それぞれ直交するX軸、Y軸、Z軸方向での時間領域の振動加速度を検出するように取り付ける)。
【0012】
一方、制御装置5は、振動センサ2a〜2cから検出される時間領域の振動加速度をもとにした解析を行うことにより周波数領域の振動加速度(周波数軸上の振動加速度)を求め、その最大値が所定の閾値を超えたことをもって「びびり振動」の発生を検出するびびり振動検出手段11と、びびり振動が検出された際に、周波数領域の振動加速度が最大値をとるびびり周波数を用いて後述する演算式により安定回転速度を算出する演算手段12と、算出された安定回転速度を記憶する記憶手段13と、回転軸3の回転速度を変更したりして回転軸ハウジング1における加工を制御するNC装置14とを備えている。尚、安定回転速度を算出するために用いる工具の刃数や加工を開始するに際しての指令回転速度といった加工情報、「びびり振動」検出のための閾値等の各種データは作業者により入力可能となっている。
【0013】
ここで、振動抑制装置10による「びびり振動」の振動抑制制御について、図4のフローチャート及び図5の表、図6のグラフ等にしたがい説明する。
まず、指令回転速度が入力されると(S1)、演算手段12は、入力された指令回転速度が記憶手段13に記憶されている範囲1若しくは範囲2内にあるか否かを判断する(S2及びS11)。そして、指令回転速度が範囲1内である(S2でYESと判断)若しくは範囲2内である(S11でYESと判断)場合にはS3へ進むものの、範囲1内若しくは範囲2内での加工が1回目である場合、記憶手段13には安定回転速度が記憶されていないため、S3において、演算手段12は指令回転速度をそのままNC装置14へ出力し、NC装置14による制御のもと、回転軸ハウジング1では指令回転速度で回転軸3を回転させ、加工を開始する(S4)。一方、指令回転速度が範囲1内及び範囲2内のどちらでもない場合(S2及びS11のどちらでもNOと判断)、演算手段12は入力された指令回転速度をそのままNC装置14へ出力し(S12)、加工が終了するまで指令回転速度で加工する(S13)。尚、S2及びS11で判断に使用する範囲とは所定の回転速度域であって、範囲1は6000min−1〜9000min−1として、範囲2は15000min−1〜21000min−1として予め設定されている。また、該範囲1と範囲2とは、最も頻繁に指令される指令回転速度を含むような範囲とされており、上記S12やS13を実行することは稀で、たとえば低速回転(4000min−1以下)のようなびびり振動が発生するおそれのない加工に限られている。
【0014】
また、S4において加工を開始すると、振動検出手段11は、回転中に常時検出される振動センサ2a〜2cにおける時間領域の振動加速度のフーリエ解析を行い、図6に示すような、回転軸3の周波数と、その周波数における回転軸3の周波数領域の振動加速度(周波数軸上の振動加速度)との関係を解析するとともに、周波数領域の振動加速度の最大値(最大加速度)が予め設定されている所定の閾値を超えたか否かを監視して、「びびり振動」の発生を検出する(S5)。そして、周波数領域の振動加速度の最大値が閾値を超えた場合(S5でYESと判断)には、回転軸3に抑制すべき「びびり振動」が生じているとして、最大値となる回転軸3の周波数(すなわち「びびり周波数」であって、図6における振動6)を用い、下記演算式(1)により安定回転速度を算出する(S6)。
安定回転速度={60×びびり周波数/工具刃数×(k値+1)} ・・・(1)
尚、「工具刃数」は、回転軸3に装着されている工具の刃数であり、予め安定回転速度演算手段12に入力されているものとする。また、k値は、0以上となる整数値であって、k=0、1、2、3、4・・と順に代入して安定回転速度を算出する。
【0015】
また、k=0から順に算出される安定回転速度のうち、現在の回転速度が範囲1内である場合には範囲1内の数値をとる第1安定回転速度、及び該第1安定回転速度の前後にある安定回転速度(すなわち、第1安定回転速度を算出するに際してのk値がk=nであった場合、k=n−1及びk=n+1を用いて算出される安定回転速度)を、図5に示すような態様で記憶手段に記憶する(S7)。一方、現在の回転速度が範囲2内である場合には範囲2内の数値をとる第2安定回転速度、及び該第2安定回転速度の前後にある安定回転速度(第1安定回転速度と同様、第2安定回転速度を算出するに際してのk値がk=mであった場合、k=m−1及びk=m+1を用いて算出される安定回転速度)を、図5に示すような態様で記憶手段13に記憶する(S7)。そして、S1で入力された指令回転速度が範囲1内である場合には今回算出した第1安定回転速度へ、範囲2内である場合には今回算出した第2安定回転速度へ回転軸3の回転速度を変更する(S8)。尚、S7においては、図5に示すように閾値を超えた周波数領域の振動加速度の最大値も記憶手段13に記憶する。
【0016】
その後、変更した安定回転速度で加工を継続し(S9)、加工が終了する(S10でYES)まではS5〜S8における「びびり振動」の検出及び検出時における回転速度の変更を繰り返す。したがって、「びびり振動」が検出される度、該「びびり振動」のびびり周波数を用いて演算式(1)により新たな第1安定回転速度又は第2安定回転速度を算出し、それらを記憶手段13に記憶するとともに、最新の第1安定回転速度(若しくは第2安定回転速度)へと回転速度を変更して加工を継続する。また、「びびり振動」が検出されないようであれば、その安定回転速度から回転速度を変更することなく加工を継続する。そして、加工の終了をもってエンドとなる。尚、新たな第1安定回転速度及び第2安定回転速度を記憶手段13に記憶するに際して、それ以前の第1安定回転速度や第2安定回転速度等を消去することはなく、図5に示すように、新たな第1回転速度等を付け足して記憶する。また、この第1回転速度等の履歴は、図示しない表示手段に表示させたり、紙媒体等として出力させたりすることができる。
【0017】
次に、範囲1内若しくは範囲2内での加工が2回目以降となる場合、指令回転速度が入力されると(S1)、上記1回目の時と同様、演算手段12は、入力された指令回転速度が記憶手段13に記憶されている範囲1若しくは範囲2内にあるか否かを判断する(S2及びS11)。そして、指令回転速度が範囲1内である(S2でYES)と、指令回転速度ではなく、記憶手段13に記憶されている第1安定回転速度のうち最新の第1安定回転速度をNC装置14へ出力し(S3)、第1安定回転速度で回転軸3を回転させて加工を開始する(S4)。また、指令回転速度が範囲2内である(S11でYES)と、指令回転速度ではなく、記憶手段13に記憶されている第2安定回転速度のうち最新の第2安定回転速度をNC装置14へ出力し(S3)、第2安定回転速度で回転軸3を回転させて加工を開始する(S4)。
【0018】
また、加工開始後は、上記1回目の加工と同様に、加工が終了するまでS5〜S8における「びびり振動」の検出及び検出時における回転速度の変更を繰り返し、第1安定回転速度や第2安定回転速度で回転軸3を回転させているにも拘わらず、「びびり振動」が検出されるような場合には、その「びびり振動」のびびり周波数を用いて演算式(1)により、新たな第1安定回転速度若しくは第2安定回転速度を算出し、記憶手段13に記憶するとともに、今回算出した新たな第1安定回転速度(若しくは第2安定回転速度)へと回転速度を変更して加工を継続する。
【0019】
以上のような振動抑制制御を実行する振動抑制装置10によれば、加工を開始するに際して指令回転速度を入力した際、該指令回転速度が範囲1内若しくは範囲2内であれば、前回の加工時に算出した第1安定回転速度若しくは第2安定回転速度へと指令回転速度を変更し、その第1安定回転速度若しくは第2安定回転速度で回転軸3を回転させて加工を開始する。したがって、指令回転速度よりは「びびり振動」を発生させる可能性の低い安定回転速度で加工を開始するため、一度も「びびり振動」を発生させることなく、加工を終了させる可能性が高くなり、びびりマークが残っていない高精度な加工面に仕上げることが可能で、加工効率や加工面精度の向上を図ることができる。
また、第1安定回転速度若しくは第2安定回転速度での加工中にも「びびり振動」が発生しているか否かを検出しており、「びびり振動」の発生を検出した場合には、新たな第1安定回転速度(若しくは第2安定回転速度)を算出し、該新たな第1安定回転速度(若しくは第2安定回転速度)で加工を継続するとともに、その新たな第1安定回転速度(若しくは第2安定回転速度)を記憶手段13に記憶し、次回加工を開始するに際しては、該新たな第1安定回転速度(若しくは第2安定回転速度)で加工を開始する。したがって、「びびり振動」を一層効果的に抑制することができる。
【0020】
さらに、記憶手段13には、最新の第1安定回転速度のみではなく、それ以前の第1安定回転速度等を記憶させるとともに、「びびり振動」として検出した周波数領域の振動加速度の最大値や範囲1外若しくは範囲2外の安定回転速度(すなわち、上記k=n−1等を用いて算出される回転速度)をも記憶させるため、それらの履歴を参照することにより、加工条件変更の履歴を容易に把握することができる。したがって、条件変更を管理することができるし、工具摩耗を推定したり工具の寿命を予測したりすることも可能である。
【0021】
なお、本発明に係る振動抑制装置は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、検出手段、制御装置、及び制御装置における振動抑制の制御等に係る構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0022】
たとえば、上記実施形態では、1回目の加工時には範囲1内若しくは範囲2内の指令回転速度をそのまま出力するように構成しているが、インパルス加振により機械系の動特性を求めて安定限界線図を作成する等して、予め第1安定回転速度及び第2安定回転速度を求め、記憶手段13に記憶させておき、1回目に関してもS3において指令回転速度を該第1安定回転速度(若しくは第2安定回転速度)へ変更するように構成することも可能である。
また、上記実施形態では、振動センサにより回転軸の振動加速度を検出するよう構成しているが、振動による回転軸の変位や音圧を検出し、当該変位や音圧にもとづいて最適回転速度を算出するように構成することも可能である。
【0023】
さらに、第1安定回転速度や第2安定回転速度を記憶するに際し、周波数領域の振動加速度の最大値や範囲外の安定回転速度を記憶するか否か等についても適宜変更可能であるし、びびり振動の検出に際し、周波数領域の振動加速度が最大値を示す波形のみではなく、周波数領域の振動加速度の値が上位となる複数(たとえば、3つ)の波形を用いるようにし、「びびり振動」の抑制効果の更なる向上を図ってもよい。
加えて、上記実施形態では、工作機械の回転軸における振動を検出する構成としているが、回転しない側(固定側)の振動を検出し、最適回転速度を算出するように構成してもよいし、工具を回転させるマシニングセンタに限らず、ワークを回転させる旋盤等といった工作機械にも適用可能である。尚、検出手段の設置位置や設置数等を、工作機械の種類、大きさ等に応じて適宜変更してもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0024】
1・・回転軸ハウジング、2a、2b、2c・・振動センサ(検出手段)、3・・回転軸、5・・制御装置、10・・振動抑制装置、11・・振動検出手段(検出手段)、12・・演算手段、13・・記憶手段、14・・NC装置(回転速度制御手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具又はワークを回転させるための回転軸を備えた工作機械において、前記回転軸に生じるびびり振動の発生を検出する検出手段と、前記検出手段による検出値をもとに前記びびり振動を抑制可能な安定回転速度を算出する演算手段と、前記回転軸の回転速度を制御する回転速度制御手段とを備えた振動抑制装置であって、
前記演算手段において算出された安定回転速度を、該安定回転速度が含まれる回転速度域に対応付けて記憶する記憶手段を備えており、
前記回転軸を回転させて加工が開始されるに際し、前記回転軸の回転速度となる指令回転速度が入力されると、前記演算手段は、前記指令回転速度が前記回転速度域に含まれるか否かを判断し、前記回転速度域に含まれる場合には前記安定回転速度を読み出し、該安定回転速度を前記指令回転速度に代えて前記回転速度制御手段へと出力し、前記安定回転速度にて加工を開始させることを特徴とする振動抑制装置。
【請求項2】
前記読み出した安定回転速度にて加工中、前記検出手段によりびびり振動の発生が検出されると、前記演算手段は、今回検出したびびり振動に係る検出値をもとに新たな安定回転速度を算出し、前記回転軸の回転速度を前記新たな安定回転速度へ変更するように前記回転速度制御手段へ指令するとともに、前記新たな安定回転速度を前記回転速度域に対応付けて前記記憶手段へ記憶し、次回、前記回転速度域に含まれる指令回転速度が入力された場合には、前記新たな安定回転速度を前記回転速度制御手段へ出力することを特徴とする請求項1に記載の振動抑制装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記回転軸の回転に伴う時間領域の振動を検出するとともに、前記時間領域の振動にもとづき、前記回転軸の周波数と、その周波数における周波数領域の振動加速度とを求めており、前記周波数領域の振動加速度と所定の閾値とを比較し、前記周波数領域の振動加速度が前記所定の閾値を超えるとびびり振動が発生していると判断するとともに、
前記演算手段は、前記びびり振動が発生していると判断した際の前記周波数領域の振動加速度を前記記憶手段に記憶することを特徴とする請求項1又は2に記載の振動抑制装置。
【請求項4】
前記演算手段は、前記検出手段による検出値をもとに前記びびり振動を抑制可能な複数の安定回転速度を算出し、そのうち前記回転速度域に含まれる安定回転速度と共に前記回転速度域に含まれない安定回転速度も前記記憶手段に記憶することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の振動抑制装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−56072(P2012−56072A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204683(P2010−204683)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000149066)オークマ株式会社 (476)
【Fターム(参考)】