説明

挿入実装部品搭載回路基板およびその製造方法

【課題】熱容量の大きなTHDの搭載や鉛フリー半田を用いた実装に対しても、確実な半田接続信頼性を有したTHD搭載回路基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】電子部品10の外部端子であるリード11が、回路基板40に設けられたスルーホール41に貫通して挿入され、スルーホール41の側面から回路基板40の上下面にかけて形成されたスルーホール導電層42に半田接続されてなる挿入実装部品(THD)搭載回路基板40aであって、回路基板40を貫通するビアホール43が、スルーホール41に隣接して設けられ、ビアホール43の側面から回路基板40の上面にかけて形成されたビアホール導電層44が、回路基板40の上面において、スルーホール導電層42に連結されてなるTHD搭載回路基板40aとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の外部端子であるリードが回路基板に設けられたスルーホールに貫通して挿入され、スルーホールの側面から回路基板の上下面にかけて形成されたスルーホール導電層に半田接続されてなる挿入実装部品搭載回路基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板に搭載される電子部品は、その実装方式により、挿入実装部品(THD、Through Hole mount Device)と表面実装部品(SMD、Surface Mount Device)に大別できる。コネクタやコンデンサ等のTHDは、外部端子であるリードを回路基板に設けられたスルーホールに貫通して挿入し、半田フロー工程(噴流半田)でリードをスルーホールに形成されているスルーホール導電層に半田付けすることにより回路基板に実装する。一方、チップ部品等のSMDは、回路基板の表面に形成された配線パターンに直接半田付けして実装できるようにした電子部品である。SMDは、回路基板の配線パターン上に予め半田ペーストを塗布し、加熱により該半田ペーストをリフローさせてSMD表面の電極パターンやリードを半田接続し、回路基板に実装する。
【0003】
前者のTHDを搭載したTHD搭載回路基板およびその製造方法が、例えば、特開2005−252198号公報(特許文献1)に開示されている。
【0004】
図7と図8は、従来のTHD搭載回路基板20aおよびその製造方法を説明する図である。図7(a)は、THD10の模式的な断面図であり、図7(b)は、THD10を搭載するための回路基板20の模式的な断面図であり、図7(c)は、THD10が搭載されたTHD搭載回路基板20aの模式的な断面図である。また、図8は、THD搭載回路基板20aの製造において、THD10を回路基板20に半田付けする際の様子を示した模式的な断面図である。
【0005】
図7(a)に示すTHD10は、例えばコンデンサやコネクタ等の電子部品で、外部端子であるリード11を有している。また、図7(b)に示すTHD10を搭載するための回路基板20には、リード11を通すためのスルーホール21が設けられており、該スルーホール21の側面から回路基板20の上下面にかけて、スルーホール導電層22が形成されている。そして、図7(c)のTHD搭載回路基板20aに示すように、THD10のリード11がスルーホール21に貫通して挿入され、スルーホール導電層22に半田30で接続される。
【0006】
上記リード11のスルーホール導電層22への半田接続は、一般的に、図8に示す半田フロー工程により行われる。すなわち、スルーホール21にリード11を挿入して、THD10を回路基板20上に配置する。そして、リード11の先端側である回路基板20の下面側から噴流半田ノズルN30を近づけ、噴流半田ノズルN30内の溶融半田30aをスルーホール導電層22に当接させる。図中には、黒塗り矢印で熱の流れを、また白抜き矢印で溶融半田30a流れを示してある。上記溶融半田30aのスルーホール導電層22への当接によって、熱が回路基板20におけるスルーホール導電層22の上面側に伝達するのに伴って、溶融半田30aがスルーホール21内のリード11との隙間を回路基板20の上面側に吸い上げられる。これによって、最終的に、図7(c)に示したリード11とスルーホール導電層22の半田接続が形成される。
【特許文献1】特開2005−252198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
THD搭載回路基板において半田接続の信頼性を十分に確保するためには、図7(c)のTHD搭載回路基板20aで図示したように、半田30がスルーホール21の上面まで上がり、回路基板20におけるスルーホール導電層22の上面にまで半田30が濡れ広がる必要がある。特に、車載用のECU(Electronic ControlUnit)に用いられるTHD搭載回路基板のように、耐振動性が要求される場合には、上記半田接続の信頼性確保が不可欠である。
【0008】
一方、図9は、半田接続信頼性の低いTHD搭載回路基板20bの模式的な断面図である。図9のTHD搭載回路基板20bにおいては、図7(c)のTHD搭載回路基板20aと異なり、半田30がスルーホール21の途中で留まり、回路基板20におけるスルーホール導電層22の上面にまで濡れ広がっていない。このような不具合は、コンデンサやコネクタ等の熱容量の大きなTHD10で発生し易く、熱がリード11を介してTHD10の本体側に引かれるため、スルーホール導電層22の上面側の温度が上がり難いことが原因していると考えられる。
【0009】
また、半田には、例えば鉛(Pb)−錫(Sn)共晶半田等の鉛を含有した鉛入り半田と、錫(Sn)を主体とし鉛を含有しない鉛フリー半田(例えばSn−Ag系、Sn−Ag−Cu系、Sn−Cu系)とがある。前者の鉛入り半田は、鉛成分が自然環境に対して影響を及ぼすおそれがあり、近年の環境規制で、後者の鉛フリー半田への代替が社会的に強く要請されている。しかしながら、鉛フリー半田は、従来の鉛入り共晶半田に較べて、融点が高い材料である。従って、半田付けには高い温度を必要とするにも拘らず、周辺電子部品やプリント回路基板との関係で半田付け温度が制限さるため、良好な接合状態を得るのが容易でない。また、鉛フリー半田は、鉛入り共晶半田に較べて、濡れ広がり性が劣る欠点もある。このため、THDを鉛フリー半田で回路基板に実装すると、熱容量の小さなTHD10においても、図9に示した不具合が発生し易い。
【0010】
そこで本発明は、熱容量の大きなTHDの搭載や鉛フリー半田を用いた実装に対しても、確実な半田接続信頼性を有したTHD搭載回路基板およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、電子部品の外部端子であるリードが、回路基板に設けられたスルーホールに貫通して挿入され、前記スルーホールの側面から回路基板の上下面にかけて形成されたスルーホール導電層に半田接続されてなる挿入実装部品(THD)搭載回路基板であって、前記回路基板を貫通するビアホールが、前記スルーホールに隣接して設けられ、前記ビアホールの側面から前記回路基板の上下面にかけて形成されたビアホール導電層が、前記電子部品の搭載面である該回路基板の上面において、前記スルーホール導電層に連結されてなることを特徴としている。
【0012】
上記THD搭載回路基板においては、THDのリードを挿入するためのスルーホールだけでなく、それに隣接したビアホールが設けられている。また、上記ビアホールに形成されているビアホール導電層は、回路基板の上面において、スルーホールに形成されているスルーホール導電層と連結されている。上記ビアホールは、THDの半田付けに際して、回路基板の上面側におけるスルーホール導電層への熱伝達を補うために形成したものである。すなわち、回路基板の下面側において、噴流半田をスルーホール導電層とビアホール導電層に同時に接触させることで、リードが挿入されていないビアホール導電層を介して、噴流半田の熱を回路基板の上面側におけるスルーホール導電層へ効率よく伝達することができる。これにより、上記ビアホールを形成しない場合に較べて回路基板の上面側におけるスルーホール導電層の温度が高められ、スルーホールでの半田上がりが向上するため、半田接続信頼性を高めることができる。
【0013】
以上のようにして、上記THD搭載回路基板は、確実な半田接続信頼性を有したTHD搭載回路基板とすることができる。
【0014】
上記THD搭載回路基板におけるビアホールは、前述したように、THDの半田付けに際してスルーホール導電層の上面側への熱伝達を補うために形成したものである。従って、請求項2に記載のように、前記ビアホール導電層は、熱逃げの要因となる他の配線パターン等に連結されることなく、前記スルーホール導電層にのみ連結されていることが好ましい。
【0015】
上記THD搭載回路基板における前記ビアホールは、請求項3に記載のように、1つのスルーホールに対して1個に限らず、複数個設けるようにしてもよい。これにより、1つのスルーホールに対して複数個の熱源が接続されることとなり、スルーホール導電層の上面側への熱伝達をより高めることができる。
【0016】
回路基板において、THDの複数のリードに対応するそれぞれスルーホール間は、一般的に、配線パターンのデッドスペースとなる。従って配置可能であれば上記デッドスペースを利用して他の配線パターンの妨げとならないよう、前記ビアホールは、請求項4に記載のように、前記スルーホールとそれに隣接する前記電子部品の別のリードを挿入するための別のスルーホール間に設けられることが好ましい。
【0017】
上記THD搭載回路基板における前記ビアホール導電層とスルーホール導電層は、請求項5に記載のように、前記スルーホールの直径より広い幅のパターンで連結されてなる構成としてもよい。これによれば、ビアホール導電層とスルーホール導電層を細い配線パターンで連結する場合に較べて、スルーホール導電層の上面側への熱伝達をより高めることができる。
【0018】
上記THD搭載回路基板は、請求項6に記載のように、前記ビアホールの直径を、前記スルーホールの直径と前記リードの直径の差より小さく設定し、前記ビアホールに半田が供給されない構成とすることができる。すなわち、上記ビアホールを熱伝達の補完だけに利用し、不必要な部分に半田を残さないようにすることができる。
【0019】
一方、上記THD搭載回路基板は、請求項7に記載のように、前記ビアホールの直径を、前記スルーホールの直径と前記リードの直径の差以上に設定し、前記ビアホールの該回路基板における下面側から、該回路基板の上面における前記スルーホール導電層に亘って、半田が供給される構成とすることも可能である。すなわち、上記ビアホールを、熱伝達の補完だけでなく、スルーホール導電層の上面側への半田の供給にも利用することができる。
【0020】
上記THD搭載回路基板において噴流半田の熱を回路基板の上面側に効率よく伝達するためには、請求項8に記載のように、前記ビアホール導電層が、該回路基板の下面においても、前記スルーホール導電層に連結されてなることが好ましい。
【0021】
この場合、噴流半田の熱を回路基板の上面側に効率よく伝達するためには、請求項9に記載のように、前記ビアホール導電層が、該回路基板の下面において、前記スルーホール導電層にのみ連結されてなることがより好ましい。
【0022】
また、請求項10に記載のように、前記ビアホール導電層とスルーホール導電層が、該回路基板の下面において、前記スルーホールの直径より広い幅のパターンで連結されてなる
構成としてもよい。これによっても、細い配線パターンで連結する場合に較べて、噴流半田の熱を回路基板の上面側に効率よく伝達することができる。
【0023】
上記THD搭載回路基板において、請求項11に記載のように、前記回路基板が、絶縁基材中に内部配線層を有する多層回路基板である場合には、前記ビアホール導電層とスルーホール導電層が、前記内部配線層においても連結されてなる構成とすることができる。これによれば、多層回路基板の内部配線層を介して、適宜、ビアホール導電層とスルーホール導電層を連結させることで、スルーホールの側壁における必要部分の熱伝達を、適宜補完することができる。
【0024】
以上説明したように、上記THD搭載回路基板は、スルーホールに隣接する上記ビアホールを設けていないTHD搭載回路基板に較べて、より確実な半田接続信頼性を有したTHD搭載回路基板とすることができる。
【0025】
従って、上記THD搭載回路基板は、請求項12に記載のように、前記半田が、鉛入り共晶半田に較べて高融点で濡れ広がり性が劣る、鉛フリー半田である場合に好適である。該鉛フリー半田を用いたTHDの実装に対しても、十分な半田接続信頼性を確保することができる。
【0026】
また、上記THD搭載回路基板における前記電子部品は、例えば請求項13に記載のように、コンデンサ、コイルまたはコネクタである場合に好適であり、大きな熱容量で熱がリードから本体側に引かれ易いコンデンサ、コイルおよびコネクタの実装に対しても、十分な半田接続信頼性を確保することができる。
【0027】
また、上記THD搭載回路基板は高い半田接続信頼性を有しているため、請求項14に記載のように、特に耐振動性が要求される車載用のTHD搭載回路基板として好適である。
【0028】
請求項15〜17に記載の発明は、上記したTHD搭載回路基板の製造方法に関する発明である。
【0029】
請求項15に記載の発明は、電子部品の外部端子であるリードが、回路基板に設けられたスルーホールに貫通して挿入され、前記スルーホールの側面から該回路基板の上下面にかけて形成されたスルーホール導電層に半田接続されてなる挿入実装部品搭載回路基板の製造方法であって、前記回路基板を貫通するビアホールを、前記スルーホールに隣接して設け、前記ビアホールの側面から前記回路基板の上下面にかけて形成されたビアホール導電層が、前記電子部品の搭載面である該回路基板の上面において、前記スルーホール導電層に連結するように該回路基板を構成し、前記スルーホールに前記リードを挿入して、前記電子部品を該回路基板上に配置し、前記リードの先端側である該回路基板の下面側から、噴流半田ノズルを前記スルーホール導電層と前記ビアホール導電層に当接させて、前記スルーホール導電層に前記リードを半田接続することを特徴としている。
【0030】
上記製造方法により、前述したように、高い半田接続信頼性を有した上記THD搭載回路基板を製造することができる。
【0031】
また、上記製造方法において、請求項16に記載のように、前記噴流半田ノズルの当接前において、該回路基板の上面における前記スルーホール導電層上および/または前記ビアホール導電層上に、予めリフロー半田を配置しておくようにしてもよい。これによれば、スルーホールの下から吸い上げられる噴流半田ノズル内の溶融半田だけでなく、上記リフロー半田によってもスルーホール導電層の上面側へ半田を供給することができるため、より確実な半田接続信頼性を確保することができる。
【0032】
前述した理由で、請求項17に記載のように、上記製造方法は、前記半田が、鉛フリー半田である場合に特に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図に基づいて説明する。
【0034】
図1と図2は、本発明の一例である挿入実装部品(THD、Through Hole mount Device)搭載回路基板40aおよびその製造方法を説明する図である。図1(a)は、THD10を搭載するための回路基板40の模式的な上面図であり、図1(b)は、回路基板40の模式的な断面図であり、図1(c)は、THD10が搭載されたTHD搭載回路基板40aの模式的な断面図である。また、図2は、THD搭載回路基板40aの製造において、THD10を回路基板40に半田付けする際の様子を示した模式的な断面図である。尚、図1と図2に示すTHD搭載回路基板40aにおいて、それぞれ図7と図8に示したTHD搭載回路基板20aと同様の部分については、同じ符号を付した。
【0035】
図1に示すTHD搭載回路基板40aにおいて、回路基板40に搭載されているTHD10は、図7(a)に示したTHD10と同じものである。すなわち、THD10は、例えばコンデンサやコネクタ等の電子部品で、外部端子であるリード11を有している。
【0036】
また、図1に示す回路基板40には、図7(b)に示した回路基板20と同様に、リード11を通すためのスルーホール41が設けられており、該スルーホール41の側面から回路基板40の上下面にかけて、スルーホール導電層42が形成されている。そして、 THD搭載回路基板40aにおいても、図1(c)に示すように、THD10のリード11がスルーホール41に貫通して挿入され、スルーホール導電層42に半田30で接続されている。
【0037】
一方、図1の回路基板40においては、図7(b)に示した回路基板20と異なり、該回路基板40を貫通するビアホール43が、スルーホール41に隣接して設けられている。そして、図1(a),(b)に示すように、ビアホール43の側面から該回路基板40の上下面にかけて形成されたビアホール導電層44が、THD10の搭載面である該回路基板40の上面において、スルーホール導電層42に連結されている。尚、図1に示すTHD搭載回路基板40aでは、ビアホール導電層44が、該回路基板40の下面においても、スルーホール導電層42に連結されている。
【0038】
上記ビアホール43は、後述するように、THD10の半田付けに際して、回路基板40の上面側におけるスルーホール導電層42への熱伝達を補うために形成したものである。これによって、該ビアホール43を形成しない場合に較べて、回路基板40の上面側におけるスルーホール導電層42の温度が上がるため、半田実装性(半田上がり)が向上する。また、特にTHD搭載回路基板40aにおいては、図1(c)に示すように、ビアホール43の直径d1を、スルーホール41の直径dTとリード11の直径dLの差より小さく設定し、ビアホール43に半田30が供給されないようにしている。すなわち、ビアホール43を熱伝達の補完だけに利用し、不必要な部分に半田30を残さないようにしている。
【0039】
THD10のリード11のスルーホール導電層42への半田接続は、図2に示す半田フロー工程により行われる。すなわち、スルーホール41にリード11を挿入して、THD10を回路基板40上に配置する。そして、リード11の先端側である回路基板40の下面側から噴流半田ノズルN30を近づけ、噴流半田ノズルN30内の溶融半田30aをスルーホール導電層42に当接させる。図中には、黒塗り矢印で熱の流れを、また白抜き矢印で溶融半田30a流れを示してある。
【0040】
図2に示すTHD搭載回路基板40a製造のための半田フロー工程においても、図8に示した半田フロー工程と同様に、溶融半田30aの熱が回路基板40におけるスルーホール導電層42の上面側に伝達するのに伴って、溶融半田30aがスルーホール41内のリード11との隙間を回路基板40の上面側に吸い上げられる。これによって、最終的に、図1(c)に示したリード11とスルーホール導電層42の半田接続が形成される。
【0041】
一方、図2に示す熱伝達を補うためのビアホール43を有した回路基板40の半田フロー工程においては、図8の半田フロー工程と異なり、回路基板40の下面側において、噴流半田ノズルN30内の溶融半田30aをスルーホール導電層42とビアホール導電層44に同時に接触させる。これにより、スルーホール導電層42だけでなく、リード11が挿入されていないビアホール導電層44を介して、噴流半田30aの熱を回路基板40の上面側におけるスルーホール導電層42へ効率よく伝達することができる。従って、ビアホール43を形成しない図8の場合に較べて、回路基板40の上面側におけるスルーホール導電層42の温度が高められ、スルーホール41での半田上がりが向上するため、半田接続信頼性を高めることができる。尚、前述したように、図1のTHD搭載回路基板40aでは、ビアホール導電層44が、該回路基板40の下面においても、スルーホール導電層42に連結されている。これにより、ビアホール導電層44とスルーホール導電層42を該回路基板40の下面で連結させない場合に較べて、噴流半田の熱を回路基板40の上面側に効率よく伝達することができる。
【0042】
以上のようにして、図1と図2で例示したTHD搭載回路基板およびその製造方法は、確実な半田接続信頼性を有したTHD搭載回路基板およびその製造方法とすることができる。
【0043】
尚、本発明のTHD搭載回路基板におけるビアホールは、前述したように、THDの半田付けに際してスルーホール導電層の上面側への熱伝達を補うために形成したものである。従って、該ビアホール導電層は、図1(a)に示すビアホール導電層44のように、熱逃げの要因となる他の配線パターン等に連結されることなく、スルーホール導電層42にのみ連結されていることが好ましい。また、該回路基板40の下面で連結させる場合も同様で、噴流半田の熱を回路基板40の上面側に効率よく伝達するためには、ビアホール導電層44が、該回路基板40の下面において、スルーホール導電層42にのみ連結されてなることが好ましい。
【0044】
図3は、別のTHD搭載回路基板の例を説明する図で、図3(a)〜(c)は、それぞれ、THD10を搭載するための回路基板50〜52の模式的な上面図である。尚、図3(a)〜(c)の回路基板50〜52において、それぞれ図1(a)の回路基板40と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0045】
図3(a)に示すTHD10を搭載するための回路基板50には、スルーホール41に隣接して4個のビアホール43a〜43dが設けられている。そして、各ビアホール43a〜43dのビアホール導電層44a〜44dが、回路基板50の上面において、スルーホール導電層42に連結されている。このように、熱伝達を補うために形成するビアホールは、1つのスルーホールに対して1個に限らず、複数個設けるようにしてもよい。これにより、1つのスルーホールに対して複数個の熱源が接続されることとなり、スルーホール導電層の上面側への熱伝達をより高めることができる。
【0046】
図3(b)に示す回路基板51に形成されているビアホール43eは、ビアホール導電層44eが連結するスルーホール41とそれに隣接するTHD10の別のリード11を挿入するための別のスルーホール41a間に設けられている。同様に、回路基板51に形成されているビアホール43fも、ビアホール導電層44fが連結するスルーホール41aとTHD10の別のリード11を挿入するためのスルーホール41間に設けられている。
【0047】
回路基板において、THDの複数のリードに対応するそれぞれスルーホール間は、一般的に、配線パターンのデッドスペースとなる。従って、配置可能であれば上記デッドスペースを利用して、他の配線パターンの妨げとならないよう、ビアホールは、図3(b)に示すビアホール43e,43fのように、該ビアホール導電層が連結するスルーホールとそれに隣接するTHDの別のリードを挿入するための別のスルーホール間に設けられることが好ましい。
【0048】
図3(c)に示す回路基板52に形成されているビアホール43のビアホール導電層44とスルーホール41のスルーホール導電層42は、スルーホール41の直径d1より広い幅d2のパターン45で連結されている。これによれば、前述した回路基板40,50,51のようにビアホール導電層44とスルーホール導電層42を細い配線パターンで連結する場合に較べて、スルーホール導電層42の上面側への熱伝達をより高めることができる。
【0049】
また、ビアホール導電層とスルーホール導電層を該回路基板の下面で連結させる場合も、図3(c)と同様に、噴流半田の熱を回路基板の上面側に効率よく伝達するため、ビアホール導電層とスルーホール導電層が、該回路基板の下面において、スルーホールの直径より広い幅のパターンで連結するようにしてもよい。
【0050】
図4は、別のTHD搭載回路基板53aおよびその製造方法を説明する図で、THD搭載回路基板53aの製造において、THD10を回路基板53に半田付けする際の様子を示した模式的な断面図である。尚、図4のTHD搭載回路基板53aにおいて、図2のTHD搭載回路基板40aと同様の部分については、同じ符号を付した。また、図2と同様に、黒塗り矢印で熱の流れを、また白抜き矢印で溶融半田30a流れを示してある。
【0051】
図1と図2に示したTHD搭載回路基板40aでは、ビアホール43の直径d1を、スルーホール41の直径dTとリード11の直径dLの差より小さく設定し、ビアホール43に半田30が供給されないようにしていた。これに対して、図4に示すTHD搭載回路基板53aでは、ビアホール43g(従って、ビアホール導電層44g)の直径d2を、スルーホール41の直径dTとリード11の直径dLの差以上に設定している。そして、白抜き矢印で示したように、ビアホール43gの回路基板53における下面側から、該回路基板53の上面におけるスルーホール導電層42に亘って、溶融半田30aが供給されるようにしている。すなわち、図4に示すTHD搭載回路基板53aでは、図2に示したTHD搭載回路基板40aと異なり、ビアホール43gを、熱伝達の補完だけでなく、スルーホール導電層42の上面側への半田の供給にも利用している。
【0052】
図1のTHD搭載回路基板40aでは、THD10を搭載する回路基板40として、絶縁基材中に内部配線層を有する多層回路基板が用いられている。本発明においてTHD10を搭載するために用いられる回路基板は、上記多層回路基板に限らず、内部配線層を有していない回路基板であってもよい。
【0053】
図5は、別のTHD搭載回路基板54aおよびその製造方法を説明する図で、THD搭載回路基板54aの製造において、THD10を回路基板54に半田付けする際の様子を示した模式的な断面図である。
【0054】
図5に示すTHD搭載回路基板54aにおいても、図1のTHD搭載回路基板40aと同様に、THD10を搭載する回路基板54として、絶縁基材中に内部配線層を有する多層回路基板が用いられている。一方、図5に示す回路基板54では、図1に示した回路基板40と異なり、ビアホール導電層44hとスルーホール導電層42hが、表面配線層46aだけでなく、内部配線層46b、46cにおいても連結されている。これによって、黒塗り矢印で示したように、回路基板54の上面だけでなく、回路基板54の内部においてもビアホール導電層44hからスルーホール導電層42hへの熱伝達経路が構成され、スルーホール41の側壁の温度を上昇させることができる。このように、THDを搭載する回路基板として多層回路基板を用いる場合には、例えば半田実装性(半田上がり)状況に応じて、内部配線層を介してビアホール導電層とスルーホール導電層を適宜連結させることで、スルーホールの側壁における必要部分の熱伝達を適宜補完することができる。
【0055】
図6は、別のTHD搭載回路基板55aの製造方法を説明する図で、THD10を回路基板40に半田付けする際の様子を示した模式的な断面図である。
【0056】
図6に示すTHD搭載回路基板55aの製造方法においては、図2に示したTHD搭載回路基板40aの製造方法と異なり、噴流半田ノズルN30の当接前において、回路基板40の上面におけるスルーホール導電層42上および/またはビアホール導電層44上に、予めリフロー半田31を配置している。これによって、噴流半田ノズルN30内の溶融半田30aを回路基板40の下面に当接して半田付けする際には、該リフロー半田31が、ビアホール43を介した熱伝達で溶融する。従って、図6に示すTHD搭載回路基板55aの製造方法においては、スルーホール41の下から吸い上げられる噴流半田ノズルN30内の溶融半田30aだけでなく、リフロー半田31の溶融によっても、スルーホール導電層42の上面側へ半田を供給することができる。このため、より確実な半田接続信頼性を確保することができる。
【0057】
以上説明したように、図1〜図6で例示したTHD搭載回路基板およびその製造方法は、いずれも、スルーホールに隣接する上記ビアホールを設けていないTHD搭載回路基板に較べて、より確実な半田接続信頼性を有したTHD搭載回路基板およびその製造方法となっている。
【0058】
従って、上記THD搭載回路基板およびその製造方法は、前記半田が、鉛入り共晶半田に較べて高融点で濡れ広がり性が劣る、鉛フリー半田である場合に好適である。上記THD搭載回路基板およびその製造方法によれば、該鉛フリー半田を用いたTHDの実装に対しても、十分な半田接続信頼性を確保することができる。
【0059】
また、上記THD搭載回路基板は、前記電子部品は任意であってよいが、例えば、コンデンサ、コイルまたはコネクタである場合に好適である。大きな熱容量で熱がリードから本体側に引かれ易いコンデンサ、コイルおよびコネクタの実装に対しても、十分な半田接続信頼性を確保することができる。
【0060】
また、上記THD搭載回路基板は高い半田接続信頼性を有しているため、請求特に耐振動性が要求される車載用のTHD搭載回路基板として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一例であるTHD搭載回路基板40aおよびその製造方法を説明する図で、(a)は、THD10を搭載するための回路基板40の模式的な上面図であり、(b)は、回路基板40の模式的な断面図であり、(c)は、THD10が搭載されたTHD搭載回路基板40aの模式的な断面図である。
【図2】本発明の一例であるTHD搭載回路基板40aおよびその製造方法を説明する図で、THD搭載回路基板40aの製造において、THD10を回路基板40に半田付けする際の様子を示した模式的な断面図である。
【図3】別のTHD搭載回路基板の例を説明する図で、(a)〜(c)は、それぞれ、THD10を搭載するための回路基板50〜52の模式的な上面図である。
【図4】別のTHD搭載回路基板53aおよびその製造方法を説明する図で、THD搭載回路基板53aの製造において、THD10を回路基板53に半田付けする際の様子を示した模式的な断面図である。
【図5】別のTHD搭載回路基板54aおよびその製造方法を説明する図で、THD搭載回路基板54aの製造において、THD10を回路基板54に半田付けする際の様子を示した模式的な断面図である。
【図6】別のTHD搭載回路基板55aの製造方法を説明する図で、THD10を回路基板40に半田付けする際の様子を示した模式的な断面図である。
【図7】従来のTHD搭載回路基板20aおよびその製造方法を説明する図で、(a)は、THD10の模式的な断面図であり、(b)は、THD10を搭載するための回路基板20の模式的な断面図であり、(c)は、THD10が搭載されたTHD搭載回路基板20aの模式的な断面図である。
【図8】従来のTHD搭載回路基板20aおよびその製造方法を説明する図で、THD搭載回路基板20aの製造において、THD10を回路基板20に半田付けする際の様子を示した模式的な断面図である。
【図9】半田接続信頼性の低いTHD搭載回路基板20bの模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0062】
10 THD(挿入実装部品)
11 リード
20a,20b,40a,53a,54a,55a THD搭載回路基板
20,40,50〜54 回路基板
21,41,41a スルーホール
22,42 スルーホール導電層
43,43a〜43h ビアホール
44,44a〜44h ビアホール導電層
45 ランドパターン
46b、46c 内部配線層
30 半田
N30 噴流半田ノズル
30a 溶融半田
31 リフロー半田

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の外部端子であるリードが、回路基板に設けられたスルーホールに貫通して挿入され、前記スルーホールの側面から回路基板の上下面にかけて形成されたスルーホール導電層に半田接続されてなる挿入実装部品搭載回路基板であって、
前記回路基板を貫通するビアホールが、前記スルーホールに隣接して設けられ、
前記ビアホールの側面から前記回路基板の上下面にかけて形成されたビアホール導電層が、前記電子部品の搭載面である該回路基板の上面において、前記スルーホール導電層に連結されてなることを特徴とする挿入実装部品搭載回路基板。
【請求項2】
前記ビアホール導電層が、前記スルーホール導電層にのみ連結されてなることを特徴とする請求項1に記載の挿入実装部品搭載回路基板。
【請求項3】
前記ビアホールが、複数個設けられてなることを特徴とする請求項1または2に記載の挿入実装部品搭載回路基板。
【請求項4】
前記ビアホールが、前記スルーホールとそれに隣接する前記電子部品の別のリードを挿入するための別のスルーホール間に設けられてなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の挿入実装部品搭載回路基板。
【請求項5】
前記ビアホール導電層とスルーホール導電層が、前記スルーホールの直径より広い幅のパターンで連結されてなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の挿入実装部品搭載回路基板。
【請求項6】
前記ビアホールの直径が、前記スルーホールの直径と前記リードの直径の差より小さく設定され、
前記ビアホールに半田が供給されていないことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の挿入実装部品搭載回路基板。
【請求項7】
前記ビアホールの直径が、前記スルーホールの直径と前記リードの直径の差以上に設定され、
前記ビアホールの該回路基板における下面側から、該回路基板の上面における前記スルーホール導電層に亘って、半田が供給されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の挿入実装部品搭載回路基板。
【請求項8】
前記ビアホール導電層が、該回路基板の下面においても、前記スルーホール導電層に連結されてなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の挿入実装部品搭載回路基板。
【請求項9】
前記ビアホール導電層が、該回路基板の下面において、前記スルーホール導電層にのみ連結されてなることを特徴とする請求項8に記載の挿入実装部品搭載回路基板。
【請求項10】
前記ビアホール導電層とスルーホール導電層が、該回路基板の下面において、前記スルーホールの直径より広い幅のパターンで連結されてなることを特徴とする請求項8または9に記載の挿入実装部品搭載回路基板。
【請求項11】
前記回路基板が、絶縁基材中に内部配線層を有する多層回路基板であり、
前記ビアホール導電層とスルーホール導電層が、前記内部配線層においても連結されてなることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の挿入実装部品搭載回路基板。
【請求項12】
前記半田が、鉛フリー半田であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の挿入実装部品搭載回路基板。
【請求項13】
前記電子部品が、コンデンサ、コイルまたはコネクタであることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の挿入実装部品搭載回路基板。
【請求項14】
前記挿入実装部品搭載回路基板が、車載用であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の挿入実装部品搭載回路基板。
【請求項15】
電子部品の外部端子であるリードが、回路基板に設けられたスルーホールに貫通して挿入され、前記スルーホールの側面から該回路基板の上下面にかけて形成されたスルーホール導電層に半田接続されてなる挿入実装部品搭載回路基板の製造方法であって、
前記回路基板を貫通するビアホールを、前記スルーホールに隣接して設け、
前記ビアホールの側面から前記回路基板の上下面にかけて形成されたビアホール導電層が、前記電子部品の搭載面である該回路基板の上面において、前記スルーホール導電層に連結するように該回路基板を構成し、
前記スルーホールに前記リードを挿入して、前記電子部品を該回路基板上に配置し、
前記リードの先端側である該回路基板の下面側から、噴流半田ノズルを前記スルーホール導電層と前記ビアホール導電層に当接させて、前記スルーホール導電層に前記リードを半田接続することを特徴とする挿入実装部品搭載回路基板の製造方法。
【請求項16】
前記噴流半田ノズルの当接前において、該回路基板の上面における前記スルーホール導電層上および/または前記ビアホール導電層上に、予めリフロー半田を配置しておくことを特徴とする請求項15に記載の挿入実装部品搭載回路基板の製造方法。
【請求項17】
前記半田が、鉛フリー半田であることを特徴とする請求項15または16に記載の挿入実装部品搭載回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−109010(P2010−109010A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277269(P2008−277269)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】