説明

捩り振動減衰装置

【課題】同一の剛性を有する1種類の弾性部材を用いて正側と負側とで捩り剛性を変更できるようにして、製造コストが増大するのを防止することができる捩り振動減衰装置を提供すること。
【解決手段】捩り振動減衰装置1は、ハブプレート5の収容孔7Aが、コイルスプリング4の一端部を支持するスプリングシート8が当接し、半径方向中心軸Lに対して鈍角に傾斜する正側側面7aと、コイルスプリング4の他端部を支持するスプリングシート9が当接し、正側側面7aに対して半径方向外方に位置して半径方向中心軸Lに対して鋭角に傾斜する負側側面7bとを備えることにより、コイルスプリング4を半径方向に傾斜して収容するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捩り振動減衰装置に関し、特に、車両の内燃機関と駆動伝達装置との間に介装され、第1の回転部材と第2の回転部材との間で捩り振動を吸収しつつトルクが伝達されるように第1の回転部材と第2の回転部材とを弾性部材を介して相対回転自在に連結した捩り振動減衰装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から内燃機関と変速歯車組を有する駆動伝達装置とを連結して内燃機関からの回転トルクを伝達するとともに、内燃機関と駆動伝達装置との間の捩り振動を吸収する捩り振動減衰装置が知られている。
【0003】
この捩り振動減衰装置は、例えば、変速歯車組を有する駆動伝達装置(以下、トランスミッションという)の入力軸に連結される第1の回転部材と、内燃機関側のフライホイールに締結および解放される第2の回転部材と、第1の回転部材および第2の回転部材を円周方向に弾性的に連結する弾性部材とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
第1の回転部材は、トランスミッションの入力軸に回転不能にかつ軸線方向に移動可能に連結されたハブプレートから構成されており、第2の回転部材は、クラッチディスクの半径方向に内方に位置し、ハブプレートを挟んで入力軸の軸線方向に対向する一対のディスクプレートから構成されている。
【0005】
ハブプレートは、入力軸にスプライン係合する筒状のボスおよびボスから半径方向外方に広がる円板状のフランジを有している。また、弾性部材は、単独のコイルスプリングから構成されており、コイルスプリングは、フランジに形成された窓孔内に収容されて円周方向両端部が支持されているとともに、一対のディスクプレートに形成された窓孔に円周方向両端部が支持されている。
【0006】
このような構成を有する捩り振動減衰装置にあっては、クラッチディスクおよび一対のディスクプレートとハブプレートとが相対回転すると、コイルスプリングがクラッチディスクおよび一対のディスクプレートとハブプレートとの間で円周方向に圧縮されることにより、ディスクプレートからハブプレートに入力される捩り振動をコイルスプリングによって、吸収・減衰するようになっている。
【0007】
ところで、捩り振動によって発生するトランスミッション側の騒音としては、車両の加減速中に、内燃機関のトルク変動による回転変動を起振源とした捩り振動や、駆動伝達装置の捩り共振によって変速歯車組の空転歯車対が衝突して生じるジャラジャラという異音、所謂、ジャラ音が知られている。
【0008】
ところで、捩り振動減衰装置の捩り剛性においては、正側(加速側)と負側(減速側) とで、異なる捩り剛性を実現することが望まれている。具体的には、正側では高剛性が好ましく、負側では低剛性が好ましい。
【0009】
図23は、減速時の内燃機関の回転変動を示す図である。図23に示すように、減速時の内燃機関の回転変動(dB)は、内燃機関の高回転領域で大きくなっており、高回転域において内燃機関の回転変動によってトランスミッション(T/M)の回転変動が大きくなると、ジャラ音が発生してしまうため、トランスミッションの回転変動レベルを目標回転変動レベル以下にする必要がある。
【0010】
このため、図24に示すように、捩り振動減衰装置の捩り剛性を小さくすることにより、減速時にトランスミッションの共振周波数を低回転領域側にずらして内燃機関の回転変動が大きい高回転領域で弾性部材の剛性、すなわち、捩り振動減衰装置の捩り剛性を低剛性にすることにより、減衰力を大きくして捩り振動を抑制する必要がある。
【0011】
具体的には、弾性部材の剛性をkとし、トランスミッションの慣性モーメントをIとすると、捩り共振周波数fは、式(6)のようになり、弾性部材の剛性に比例することになる。
【数1】

このため、弾性部材の剛性を小さくすると、共振周波数が低周波数側に移行し、ジャラ音の発生領域となる内燃機関の高回転領域で減衰力を大きくすることができ、ジャラ音を抑制することができる。
【0012】
ところが、図25に示すように、加速側では内燃機関の回転変動は、内燃機関の低速回転領域で大きくなっているため、弾性部材の剛性を小さくすると、トランスミッションの捩り共振を通過したときに内燃機関の回転変動がトランスミッションで増幅されてしまい、内燃機関の低回転領域でジャラ音が発生してしまうことになる。
【0013】
このため、加速時と減速時とにおいて、捩り振動減衰装置の捩り剛性を最適に設定し、ジャラ音が発生するのを抑制する必要がある。
【0014】
従来、加速時の捩り振動減衰装置の捩り剛性を高剛性とし、減速側の捩り剛性を低剛性にした捩り振動減衰装置としては、特許文献2に記載されるものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0015】
この捩り振動減衰装置は、軸方向に対向して互いに固定された一対の第1の円板状部材と、一対の第1の円板状部材の間に、一対の第1の円板状部材に相対回転可能に配置された第2の円板状部材と、第1の円板状部材と第2の円板状部材を円周方向に弾性的に連結し、捩れ特性の正側において高剛性を実現するための複数の第1の弾性部材と、第1の円板状部材と第2の円板状部材を円周方向に弾性的に連結して第1の弾性部材に対して円周方向に並んで配置され、捩れ特性の負側において低剛性を実現するための複数の第2の弾性部材とを備えている。
【0016】
この捩り振動減衰装置にあっては、捩れ特性の正側(加速側)で第1の円板部材と第2の円板部材との捩れ角が小さい領域では、高剛性の第1の弾性部材のみが圧縮されて低剛性の捩り剛性となり、第1の円板部材と第2の円板部材との捩れ角が大きい領域では第1の弾性部材の低剛性の第2の弾性部材とが圧縮されて高剛性の捩れ特性となる。
【0017】
また、捩れ特性の負側(減速側)で第1の円板部材と第2の円板部材との捩れ角が小さい領域にあっては、低剛性の第2の弾性部材のみが圧縮されて加速側に比べて低剛性の捩れ特性となり、第1の円板部材と第2の円板部材との捩れ角が大きい領域では高剛性の第1の弾性部材と低剛性の第2の弾性部材とが圧縮されて高剛性の捩れ特性となる。
【0018】
この結果、捩れ特性の正側では捩れ特性を高剛性にして捩り共振周波数通過時の回転速度変動を抑えることができ、捩れ特性の負側では捩れ特性を低剛性にして全体にわたって良好な減衰効果を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2009−174720号公報
【特許文献2】特開2004−60882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、このような従来の捩り振動減衰装置にあっては、剛性の異なる第1の弾性部材と第2の弾性部材とが必要になってしまうため、捩り振動減衰装置の製造コストが増大してしまうという問題があった。
【0021】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、同一の剛性を有する1種類の弾性部材を用いて正側と負側とで捩り剛性を変更できるようにして、製造コストが増大するのを防止することができる捩り振動減衰装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係る捩り振動減衰装置は、上記目的を達成するため、(1)円周方向に離隔する複数の収容孔を有する第1の回転部材と、前記第1の回転部材と同軸上で前記第1の回転部材に対して相対回転自在に設けられ、前記収容孔に対向する位置に窓孔が形成された第2の回転部材と、前記収容孔および前記窓孔に取付けられ、前記第1の回転部材と前記第2の回転部材とが相対回転しない中立位置から前記第1の回転部材が前記第2の回転部材に対して正側の円周方向に相対回転した場合と、負側の円周方向に相対回転した場合とで弾性変形することにより、前記第1の回転部材と前記第2の回転部材との間でトルクを伝達する弾性部材と、前記弾性部材の一端部を支持する第1の支持部材および前記弾性部材の他端部を支持する第2の支持部材とを備えた捩り振動減衰装置であって、前記収容孔は、前記第1の支持部材が当接し、前記第1の回転部材の半径方向中心軸に対して鈍角に傾斜する正側側面と、前記第2の支持部材が当接し、前記正側側面に対して前記半径方向外方に位置して前記半径方向中心軸に対して鋭角に傾斜する負側側面とを備えることにより、前記弾性部材を前記半径方向に傾斜して収容するように構成され、前記窓孔は、前記第1の支持部材が当接する円周方向の一端部と、前記第2の支持部材が当接し、前記円周方向の一端部に対して前記半径方向外方に位置する円周方向の他端部とを備えることにより、前記弾性部材を前記半径方向に傾斜して収容するように構成され、前記第1の支持部材および前記第2の支持部材がそれぞれ前記正側側面および前記負側側面に対して前記半径方向に移動自在であるものから構成されている。
【0023】
この捩り振動減衰装置は、第1の回転部材の収容孔が、弾性部材の一端部を支持する第1の支持部材が当接し、第1の回転部材の半径方向中心軸に対して鈍角に傾斜する正側側面と、弾性部材の他端部を支持する第2の支持部材が当接し、正側側面に対して半径方向外方に位置して半径方向中心軸に対して鋭角に傾斜する負側側面とを備えることにより、弾性部材を半径方向に傾斜して収容するように構成されるので、第1の回転部材の回転中心軸から半径方向外方に設けられた第2の支持部材までの作用点半径が、第1の回転部材の回転中心軸から半径方向内方に設けられた第1の支持部材までの作用点半径よりも大きくなる。
【0024】
このため、中立位置から第1の回転部材が第2の回転部材に対して相対回転したときに、半径方向内方に設けられた第1の支持部材が一定角度変位した場合と半径方向外方に設けられた第2の支持部材が一定角度変位した場合とにおいて、第2の支持部材の変位量が大きくなる。
【0025】
このため、第1の回転部材が第2の回転部材に対して負側に捩れるときには、第1の回転部材と第2の回転部材との間に作用する伝達トルクの作用点が半径方向外方、すなわち、弾性部材の他端部を支持する第2の支持部材になり、第1の回転部材の回転中心軸から第2の支持部材までの作用点半径が大きくなる。
【0026】
このときの弾性部材の単位捩れ角当たりの変位量は、作用点半径が半径方向内方にある場合よりも大きくなり、弾性部材の剛性、すなわち、振動減衰装置の捩り剛性が小さくなる。
【0027】
一方、第1の回転部材が第2の回転部材に対して正側に捩れるときに、第1の回転部材と第2の回転部材との間に作用する伝達トルクの作用点が半径方向内方、すなわち、弾性部材の一端部を支持する第1の支持部材になるため、第1の回転部材の回転中心軸から第1の支持部材までの作用点半径が小さくなり、弾性部材の単位捩れ角当たりの変位量は、作用点半径が外方にある場合よりも小さくなり、弾性部材の剛性が負側に比べて大きくなる。
【0028】
このため、第1の回転部材が第2の回転部材に対して正側に捩れたときと負側に捩れたときとで、振動減衰装置の捩り剛性を変えることができる。
【0029】
また、正側側面が半径方向中心軸に対して鈍角に傾斜するため、第1の回転部材が第2の回転部材に対して正側に捩れたときに、捩れ角が大きくなるにつれて第1の支持部材を介して弾性部材の一端部が正側側面に対して半径方向外方に移動し、第1の回転部材の回転中心軸から第1の支持部材までの作用点半径が大きくなる。
【0030】
このため、第1の回転部材と第2の回転部材との捩れ角が大きくなるにつれて単位捩れ角当たりの弾性部材の変位量が大きくなり、弾性部材の剛性が小さくなる。したがって、捩り振動減衰装置に入力されるトルクが小さく、第1の回転部材と第2の回転部材との捩れ角が小さいときには、弾性部材が高剛性となる。
【0031】
また、捩り振動減衰装置に入力されるトルクが大きく、第1の回転部材と第2の回転部材との捩れ角が大きいときには、弾性部材の単位捩れ角当たりの変位量が大きくなり、弾性部材が低剛性となる。
【0032】
このように正側と負側で弾性部材の剛性の大きさを変えることができるため、例えば、捩り振動減衰装置を内燃機関と変速歯車組を有する駆動伝達装置の間に介装した場合には、第1の回転部材が第2の回転部材に対して負側に捩れる減速時に、弾性部材の剛性を全体的に小さくすることができるため、ジャラ音の発生を抑制することができる。
【0033】
また、第1の回転部材が第2の回転部材に対して正側に捩れる加速時において、弾性部材の単位捩れ角当たりの剛性を捩り振動減衰装置の捩れ角に応じて変更することができる。このため、捩り振動減衰装置の捩り剛性に応じて設定される駆動伝達装置の捩り共振周波数を内燃機関の回転数に応じて変更することができ、捩り振動減衰装置の現在の使用回転域に対して内燃機関の捩り共振周波数が発生する回転領域をずらすことができる。
【0034】
このため、内燃機関の回転変動を減衰することができ、加速時にジャラ音が発生するのを抑制することができる。
【0035】
このように同一の剛性を有する1種類の弾性部材を用いて正側と負側とで捩り振動減衰装置の捩り剛性を変更できるので、捩り振動減衰装置の製造コストが増大するのを防止することができる。
上記(1)の捩り振動減衰装置において、(2)前記第1の回転部材および前記第2の回転部材が前記中立位置にあるときに、前記窓孔の前記半径方向の内端面と前記第1の支持部材とが接触するとともに、前記窓孔の前記半径方向の外端面と前記第1の支持部材との間に隙間が形成され、前記窓孔の前記半径方向の外端面と前記第2の支持部材とが接触するとともに、前記窓孔の前記半径方向の内端面と前記第2の支持部材との間に隙間が形成されるものから構成されている。
【0036】
この捩り振動減衰装置は、第1の回転部材および第2の回転部材が中立位置にあるときに、窓孔の半径方向の内端面と第1の支持部材とが接触するとともに、窓孔の半径方向の外端面と第1の支持部材との間に隙間が形成されるので、第1の回転部材が第2の回転部材に対して正側に捩れ、収容孔の正側側面と窓孔の他端部との間で弾性部材が圧縮されるときに、弾性部材の一端部が鈍角に形成された正側側面に沿って半径方向外方に移動する。
【0037】
このとき、窓孔の半径方向の外端面と第1の支持部材との間の隙間の範囲だけ弾性部材が半径方向外方に移動するのを許容することができ、第1の回転部材および第2の回転部材を円滑に相対回転させることができる。
【0038】
また、第1の回転部材と第2の回転部材との捩れ角が大きくなるにつれて弾性部材の一端部の作用点半径を大きくすることができ、第1の回転部材と第2の回転部材との捩れ角が大きくなるにつれて単位捩れ角当たりの弾性部材の変位量を大きくして弾性部材の剛性を小さくすることができる。
【0039】
また、窓孔の半径方向の外端面と第2の支持部材とが接触するとともに、窓孔の半径方向の内端面と第2の支持部材との間に隙間が形成されるので、第1の回転部材が第2の回転部材に対して負側に捩れ、収容孔の負側側面と窓孔の一端部との間で弾性部材が圧縮されるときに、弾性部材の他端部が鋭角に形成された負側側面に沿って半径方向内方に移動する。このため、第1の回転部材と第2の回転部材とを円滑に相対回転させることができる。
【0040】
上記(1)または(2)の捩り振動減衰装置において、(3)前記第1の支持部材が前記正側側面の周縁に摺動自在に嵌合された第1の嵌合部を有し、前記第2の支持部材が前記負側側面の周縁に摺動自在に嵌合された第2の嵌合部を有するものから構成されている。
【0041】
この捩り振動減衰装置は、第1の支持部材が正側側面の周縁に摺動自在に嵌合された第1の嵌合部を有するので、第1の支持部材を正側側面に沿って半径方向に円滑に移動させることができる。
また、第2の支持部材が負側側面の周縁に摺動自在に嵌合された第2の嵌合部を有するので、第2の支持部材を負側側面に沿って半径方向に円滑に移動させることができる。
【0042】
上記(1)〜(3)の捩り振動減衰装置において、(4)前記第1の支持部材および前記第2の支持部材が、前記収容孔の正側側面と前記窓孔の一端部または前記収容孔の負側側面と前記窓孔の他端部に当接する第1の分割体および前記第1の分割体に対して回動自在に設けられ、前記弾性部材の一端部または他端部を支持する第2の分割体を備えている。
【0043】
この捩り振動減衰装置は、第1の回転部材が第2の回転部材に対して正側および負側に捩れたときに、第2の分割体が第1の分割体に対して回動することにより、第1の保持部材および第2の保持部材の姿勢が変化するのを吸収することができる。このため、収容孔内に傾斜して配列された弾性部材および第2の回転部材に傾斜して形成された窓孔内に位置する弾性部材が屈曲するのを抑制することができる。
【0044】
上記(1)〜(4)の捩り振動減衰装置において、(5)前記第1の回転部材の内周部に車両の駆動伝達装置の入力軸が嵌合され、前記第2の回転部材が、前記第1の回転部材の軸線方向両側に配置され、互いに連結されて一体回転自在な一対のディスクプレートを備え、前記一対のディスクプレートに内燃機関の回転トルクが伝達されるものから構成されている。
【0045】
この捩り振動減衰装置は、第1の回転部材が第2の回転部材に対して負側に捩れる減速時に、弾性部材の剛性を全体的に小さくすることができるため、ジャラ音の発生を抑制することができる。
【0046】
また、第1の回転部材が第2の回転部材に対して正側に捩れる加速時において、弾性部材の単位捩れ角当たりの剛性を捩り振動減衰装置の捩れ角に応じて変更することができる。このため、捩り振動減衰装置の捩り剛性に応じて設定される駆動伝達装置の捩り共振周波数を内燃機関の回転数に応じて変更することができ、捩り振動減衰装置の現在の使用回転域に対して内燃機関の捩り共振周波数が発生する回転領域をずらすことができる。
【0047】
上記(5)の捩り振動減衰装置において、(6)前記車両の加速時に前記第1の回転部材が前記第2の回転部材に対して正側に捩れ、前記車両の減速時に前記第1の回転部材が前記第2の回転部材に対して負側に捩れるものから構成されている。
【0048】
この捩り振動減衰装置は、第1の回転部材が第2の回転部材に対して正側に捩れたときと負側に捩れたときとで、振動減衰装置の捩り剛性を変更して正側と負側とにおいてジャラ音の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、同一の剛性を有する1種類の弾性部材を用いて正側と負側とで捩り剛性を変更できるようにして、製造コストが増大するのを防止することができる捩り振動減衰装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る捩り振動減衰装置の第1の実施の形態を示す図であり、捩り振動減衰装置の正面図である。
【図2】本発明に係る捩り振動減衰装置の第1の実施の形態を示す図であり、図1のA−A方向矢視断面図である。
【図3】本発明に係る捩り振動減衰装置の第1の実施の形態を示す図であり、図1のコイルスプリング部分の拡大図である。
【図4】本発明に係る捩り振動減衰装置の第1の実施の形態を示す図であり、(a)は、一方のスプリングシートの側面図、(b)は、同図(a)のC方向矢視図、(c)は、同図(b)のD−D方向矢視断面図である。
【図5】本発明に係る捩り振動減衰装置の第1の実施の形態を示す図であり、(a)は、他方のスプリングシートの側面図、(b)は、同図(a)のE方向矢視図、(c)は、同図(b)のF−F方向矢視断面図である。
【図6】本発明に係る捩り振動減衰装置の第1の実施の形態を示す図であり、コイルスプリングの作用点半径が半径方向内方にあるときと半径方向外方にあるときの単位捩れ角度当たりのコイルスプリングの変位量を示す模式図である。
【図7】本発明に係る捩り振動減衰装置の第1の実施の形態を示す図であり、ハブプレートがディスクプレートに対して正側に捩れた状態を示す捩り振動減衰装置の正面図である。
【図8】本発明に係る捩り振動減衰装置の第1の実施の形態を示す図であり、図6のコイルスプリング部分の拡大図である。
【図9】本発明に係る捩り振動減衰装置の第1の実施の形態を示す図であり、図7の状態からハブプレートがディスクプレートに対してさらに正側に捩れたときのコイルスプリング部分の拡大図である。
【図10】本発明に係る捩り振動減衰装置の第1の実施の形態を示す図であり、ハブプレートがディスクプレートに対して負側に捩れた状態を示す捩り振動減衰装置の正面図である。
【図11】本発明に係る捩り振動減衰装置の第1の実施の形態を示す図であり、図9のコイルスプリング部分の拡大図である。
【図12】本発明に係る捩り振動減衰装置の第1の実施の形態を示す図であり、図10の状態からハブプレートがディスクプレートに対してさらに負側に捩れたときのコイルスプリング部分の拡大図である。
【図13】本発明に係る捩り振動減衰装置の第1の実施の形態を示す図であり、ハブプレートがディスクプレートに対して正側に捩れたときのコイルスプリングの作用点半径と単位捩れ角度当たりのコイルスプリングの変量を示す図である。
【図14】本発明に係る捩り振動減衰装置の第1の実施の形態を示す図であり、ハブプレートがディスクプレートに対して負側に捩れたときのコイルスプリングの作用点半径と単位捩れ角度当たりのコイルスプリングの変量を示す図である。
【図15】本発明に係る捩り振動減衰装置の第1の実施の形態を示す図であり、捩り振動減衰装置の捩れ角と伝達トルクとの関係を示す捩れ特性図である。
【図16】本発明に係る捩り振動減衰装置の第1の実施の形態を示す図であり、減速時のエンジン回転数(rpm)とエンジンおよびトランスミッションの回転変動(dB)との関係を示す図である。
【図17】本発明に係る捩り振動減衰装置の第1の実施の形態を示す図であり、減速時のエンジン回転数(rpm)と、エンジンおよびトランスミッションの回転変動(dB)と、エンジントルクとの関係を示す図である。
【図18】本発明に係る捩り振動減衰装置の第2の実施の形態を示す図であり、(a)は、一方のスプリングシートの側面図、(b)は、同図(a)のG方向矢視図、(c)は、同図(b)のH−H方向矢視断面図である。
【図19】本発明に係る捩り振動減衰装置の第1の実施の形態を示す図であり、(a)は、他方のスプリングシートの側面図、(b)は、同図(a)のI方向矢視図、(c)は、同図(b)のJ−J方向矢視断面図である。
【図20】本発明に係る捩り振動減衰装置の第2の実施の形態を示す図であり、ハブプレートおよびハブプレートが中立位置にあるときのコイルスプリングの状態を示す図である。
【図21】本発明に係る捩り振動減衰装置の第2の実施の形態を示す図であり、ハブプレートがディスクプレートに対して正側に捩れたときのコイルスプリングの状態を示す図である。
【図22】本発明に係る捩り振動減衰装置の第2の実施の形態を示す図であり、ハブプレートがディスクプレートに対して負側に捩れたときのコイルスプリングの状態を示す図である。
【図23】減速時のエンジン回転数(rpm)とエンジンおよびトランスミッションの回転変動(dB)との関係を示す図である。
【図24】捩れ剛性を小さくしたときの減速時のエンジン回転数(rpm)とエンジンおよびトランスミッションの回転変動(dB)との関係を示す図である。
【図25】捩れ剛性を小さくしたときの加速時のエンジン回転数(rpm)とエンジンおよびトランスミッションの回転変動(dB)との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
(第1の実施の形態)
図1〜図17は、本発明に係る捩り振動減衰装置の第1の実施の形態を示す図である。
まず、構成を説明する。
図1、図2において、捩り振動減衰装置1は、第1の回転部材2と、第1の回転部材2と同一軸線上に設けられ、第1の回転部材2に対して相対回転自在に設けられた第2の回転部材3とを備えている。
【0052】
第2の回転部材3には内燃機関である図示しないエンジンからの回転トルク(エンジントルク)が入力されるようになっており、第1の回転部材2は、第2の回転部材3から入力されるエンジントルクを、変速歯車組を有するトランスミッション等の駆動伝達装置に伝達するようになっている。
【0053】
第1の回転部材2と第2の回転部材3との間には弾性部材としての複数のコイルスプリング4が設けられており、コイルスプリング4は、第1の回転部材2と第2の回転部材3が相対回転したときに第1の回転部材2の円周方向に圧縮されるようになっている。
【0054】
第1の回転部材2は、ハブプレート5から構成されており、このハブプレート5は、トランスミッションの入力軸31がスプライン嵌合されるスプライン部6aを内周面に有するボス6と、ボス6から半径方向外方に延在し、切欠きからなる収容孔7Aを介して円周方向に離隔する複数の突出部7とを備えている。したがって、収容孔7Aも円周方向に離隔している。
【0055】
ハブプレート5の収容孔7Aにはコイルスプリング4が取付けられており、コイルスプリング4の一端部は、第1の支持部材としてのスプリングシート8を介して突出部7の円周方向一側面に当接しているとともに、コイルスプリング4の他端部は、第2の支持部材としてのスプリングシート9を介して突出部7の円周方向他側面に当接している。
【0056】
すなわち、コイルスプリング4は、スプリングシート8、9を介して突出部7の円周方向一側面および他側面に当接するようにして収容孔7Aに装着されている。以後、突出部Aの円周方向一側面を正側側面7aとし、円周方向他側面を負側側面7bとする。
【0057】
図3に示すように、突出部7の正側側面7aにはスプリングシート8が当接しており、正側側面7aは、ハブプレート5の半径方向中心軸Lに対して鈍角(θ1)に傾斜している。突出部7の負側側面7bにはスプリングシート9が当接しており、負側側面7bは、ハブプレート5の半径方向中心軸Lに対して鋭角(θ2)に傾斜している。
【0058】
また、負側側面7bは、正側側面7aに対して半径方向外方に位置しており、コイルスプリング4は、ハブプレート5の半径方向に傾斜して収容孔7Aに取付けられている。
【0059】
図3、図4に示すように、スプリングシート8は、コイルスプリング4の一端部が当接する当接面8aおよび当接面8aからコイルスプリング4の内方に突出する突起8bを有する支持体8Aと、支持体8Aの背面に支持体8Aと一体的に設けられ、正側側面7aの周縁に摺動自在に嵌合された第1の嵌合部としての嵌合部8cを有する四角形状の本体8Bとを備えている。
【0060】
このため、コイルスプリング4の一端部は、スプリングシート8を介して正側側面7aの半径方向に摺動自在となっている。
【0061】
また、図3、図5に示すように、スプリングシート9は、コイルスプリング4の他端部が当接する当接面9aおよび当接面9aからコイルスプリング4の内方に突出する突起9bを有する支持体9Aと、支持体9Aの背面に支持体9Aと一体的に設けられ、負側側面7bの周縁に摺動自在に嵌合された第2の嵌合部としての嵌合部9cを有する四角形状の本体9Bとを備えている。
【0062】
このため、コイルスプリング4の他端部は、スプリングシート9を介して負側側面7bの半径方向に摺動自在となっている。
【0063】
また、図1、図3において、突出部7の正側側面7aの半径方向外方には負側側面7bに向かって突出する突部7cが形成されており、スプリングシート8は、半径方向外方に移動したときに突部7cに当接することにより、半径方向外方への移動が規制される。
【0064】
また、突出部7の負側側面7bの半径方向外方には正側側面7aに向かって突出する突部7dが形成されており、スプリングシート9は、半径方向外方に移動したときに突部7dに当接することにより、半径方向外方への移動が規制される。
【0065】
また、突部7cの半径方向長さは、突部7dの半径方向長さよりも大きくなっているため、正側側面7aは、負側側面7bの半径方向内方に形成されることになる。
【0066】
図1、図2に示すように、第2の回転部材3は、一対のディスクプレート10、11およびクラッチディスク12から構成されている。ディスクプレート10、11は、ハブプレート5を挟み込むようにしてハブプレート5の軸線方向両側に対向しており、ハブプレート5と同軸上で、ハブプレート5と相対回転自在に設けられている。
【0067】
ディスクプレート10、11は、ディスクプレート10、11の外周側がリベット13によって連結されており、クラッチディスク12は、リベット13によってディスクプレート10に連結されている。
【0068】
また、ディスクプレート10、11には収容孔7Aに軸線方向で対向する位置に窓孔10A、11Aが形成されており、コイルスプリング4は、窓孔10A、11Aに取付けられている。
窓孔10A、11Aは、半径方向外方、半径方向内方および円周方向両端部が閉止端となっている。
【0069】
図1、図3に示すように、窓孔10A、11Aの円周方向の一端部10a、11aにはスプリングシート8の支持体8Aの背面が当接しているとともに、窓孔10A、11Aの円周方向の他端部10b、11bにはスプリングシート9の支持体9Aの背面が当接しており、窓孔10A、11Aの他端部10b、11bは、窓孔10A、11Aの一端部10a、11aに対してハブプレート5の半径方向外方に位置するように傾斜している。
【0070】
窓孔10A、11Aは、窓孔10A、11Aの半径方向外方の縁に沿って円周方向に延在する外側支持片10c、11cおよび窓孔10A、11Aの半径方向内方の縁に沿って円周方向に延在する内側支持片10d、11dを備えており、この外側支持片10c、11cおよび内側支持片10d、11dは、ディスクプレート10、11の表面から軸線方向外方に突出している。なお、図3では、説明の便宜上、外側支持片11cおよび内側支持片11dを省略している。
【0071】
この外側支持片10c、11cおよび窓孔10A、11Aとの間に形成される半径方向の隙間は、コイルスプリング4の延在方向と直交する厚さよりも小さくなっており、コイルスプリング4は、外側支持片10c、11cおよび窓孔10A、11Aに支持されて収容孔7Aおよび窓孔10A、11Aから抜け出ないようになっている。
【0072】
なお、ハブプレート5とディスクプレート10、11との円周方向は同一方向であるため、円周方向とはハブプレート5とディスクプレート10、11とのいずれの円周方向であってもよい。また、軸線方向とは、ハブプレート5とディスクプレート10、11の回転中心軸、すなわち、入力軸31の回転中心軸と同方向である。
【0073】
また、クラッチディスク12は、ディスクプレート10の半径方向外方に設けられており、クッショニングプレート14および摩擦材15a、15bを備えている。クッショニングプレート14は、厚み方向に波打つリング状の部材から構成されており、リベット13によってディスクプレート10に固定されている。
【0074】
摩擦材15a、15bは、クッショニングプレート14の両面にリベット16によって固定されており、この摩擦材15a、15bは、エンジンのクランクシャフトに固定された図示しないフライホイールとフライホイールにボルト固定されたクラッチカバーのプレッシャプレートとの間に位置している。
【0075】
そして、摩擦材15a、15bがプレッシャプレートに押圧されてフライホイールとプレッシャプレートに摩擦係合することで、エンジントルクがディスクプレート10、11に入力される。
【0076】
また、図示しないクラッチペダルが踏み込まれると、プレッシャプレートが摩擦材15a、15bを押圧するのを解除し、摩擦材15a、15bがフライホイールから離隔することで、エンジントルクがディスクプレート10、11に入力されない。
【0077】
また、窓孔10A、11Aの半径方向の幅は、コイルスプリング4の厚さおよびスプリングシート8、9の支持体8A、9Aの直径よりも大きくなっており、スプリングシート8、9は、窓孔10A、11Aの一端部10a、11aおよび他端部10b、11bに対して半径方向に移動自在となっている。
【0078】
また、ハブプレート5とディスクプレート10、11とが相対回転していない中立位置にあるときに、窓孔10A、11Aの半径方向の内端面(以下、内端面という)10e、11eとスプリングシート8とが接触するとともに、窓孔10A、11Aの半径方向外端面(以下、外端面という)10f、11fとスプリングシート8との間に隙間が形成されている。
また、ハブプレート5とディスクプレート10、11とが相対回転していない中立位置にあるときに、窓孔10A、11Aの外端面10f、11fとスプリングシート9とが接触するとともに、窓孔10A、11Aの内端面10e、11eとスプリングシート9との間に隙間が形成されている。
【0079】
このようにコイルスプリング4は、ハブプレート5とディスクプレート10、11との間に介装されており、ハブプレート5とディスクプレート10、11とが相対回転しない中立位置からハブプレート5がディスクプレート10、11に対して正側の円周方向(以下、単に正側という)に相対回転した場合と負側の円周方向(以下、単に負側という)に相対回転した場合とでコイルスプリング4が弾性変形することにより、ハブプレート5とディスクプレート10、11との間でエンジントルクを伝達するようになっている。
【0080】
以下、ハブプレート5がディスクプレート10、11に対して正側および負側に相対回転することを、ハブプレート5がディスクプレート10、11に対して正側および負側に捩れると表現することもある。
【0081】
図2に示すように、ハブプレート5とディスクプレート10との間には環状の摩擦プレート17が介装されており、この摩擦プレート17は、ディスクプレート10に取付けられ、ディスクプレート10と一体的に回転する。
【0082】
ハブプレート5とディスクプレート11との間には環状の摩擦プレート18および皿ばね19が介装されており、この摩擦プレート18は、ディスクプレート11に取付けられ、ディスクプレート11と一体的に回転する。
【0083】
また、皿ばね19は、摩擦プレート18をハブプレート5に向かって付勢しており、皿ばね19の付勢力によって摩擦プレート17とハブプレート5とが摩擦接触するとともに、摩擦プレート18とハブプレート5とが摩擦接触することにより、ハブプレート5とディスクプレート10、11との間にヒステリシストルクが発生するようになっている。
【0084】
次に、作用を説明する。
まず、本発明の原理を説明する。
エンジンに接続されるディスクプレート10、11とトランスミッションの入力軸31に接続されるハブプレート5との間で伝達される伝達トルクTは、式(1)で表される。
T=r×F………(1)
ここで、r:作用点半径、F:作用点に働く荷重
【0085】
作用点は、コイルスプリング4の端部(スプリングシート8またはスプリングシート9であるので、作用点半径は、ハブプレート5の回転中心軸O(図1参照)からスプリングシート8またはスプリングシート9までの距離となる。
【0086】
また、作用点に働く荷重Fは、式(2)で表される。
F=k×X………(2)
ここで、k:コイルスプリング4の剛性、X:コイルスプリング4の変位量
また、コイルスプリング4の変位量Xは、式(3)で表される。
X=r×θ………(3)
ここで、θ:ディスクプレート10、11とハブプレート5との捩れ角
よって、式(1)〜(3)から伝達トルクTは、式(4)となる。
T=r2×k×θ………(4)
したがって、式(3)に示すように作用点半径rが変化すると、単位捩れ角θ当たりのコイルスプリング4の変位量Xが変わることが分かる。
【0087】
図6は、r0−r1、r0−r2、r0−r3、r0−r4、r0−r5、r0−r6の6つの作用点半径rと、単位捩れ角θ当たりのばねの変位量Xとをプロットした図である。なお、θは、15°に設定している。
【0088】
図6から明らかなように、r1−r6をばねの自然長とした状態からr6を固定して作用点半径rが大きいr1点からr6点方向に荷重を加えたときの単位捩れ角θ当たりのばねの変位量Xが大きく、r1を固定して作用点半径rが小さいr6点から点r1方向に荷重を加えたときの単位捩れ角θ当たりのばねの変位量Xが小さいことが分かる。
【0089】
また、作用点半径rが大きいr1からばねを圧縮したときの剛性が小さく、作用点半径rがr2点、r3点、r4点、r5点と小さくなるにつれて単位捩れ角θ当たりの剛性が徐々に大きくなることが分かる。
また、作用点半径rが小さいr6からばねを圧縮したときの剛性が大きく、作用点半径rがr5点、r4点、r3点、r2点と小さくなるにつれて単位捩れ角θ当たりの剛性が徐々に小さくなることが分かる。
【0090】
本実施の形態では、この原理を利用し、コイルスプリング4のスプリングシート8をハブプレート5の正側側面7aに当接させ、コイルスプリング4のスプリングシート9を正側側面7aの半径方向外方に位置する負側側面7bに当接させ、コイルスプリング4をハブプレート5の半径方向に傾斜させることにより、ハブプレート5がディスクプレート10、11に対して正側に捩れたときと負側に捩れたときの剛性を変えるようにしたものである。
【0091】
図7〜図12は、ディスクプレート10、11がエンジントルクを受けて図1の状態から時計回転方向(R1方向)に回転している状態を示し、説明の便宜上、ハブプレート5がディスクプレート10、11に対して正側の反時計回転方向(R2方向)および負側の時計回転方向(R1方向)に捩れるものとして説明を行う。
【0092】
なお、図8、図9、図11、図12ではディスクプレート10を図示していないが、ディスクプレート10は、ディスクプレート11と平行移動するので、ディスクプレート10の符号も用いて説明を行う。また、ハブプレート5がディスクプレート10、11に対して正側に捩れるのは、車両の加速時であり、負側に捩れるのは、減速時である。
【0093】
摩擦材15a、15bがプレッシャプレートに押圧されてフライホイールとプレッシャプレートに摩擦係合することで、エンジントルクがディスクプレート10、11に入力される。
【0094】
ここで、ディスクプレート10、11に対してハブプレート5が正側に捩れる場合の動作と、負側に捩れる場合の動作を説明する。
【0095】
車両の加速時にエンジントルクが小さいと、ディスクプレート10、11とハブプレート5との捩れ角が小さく、ハブプレート5がディスクプレート10、11に対して正側(R2)に捩れる。
【0096】
このとき、図7、図8に示すように、突出部7の負側側面7bからスプリングシート9が離隔するとともに、突出部7の正側側面7aが窓孔10A、11Aの他端部10b、11bに近接することにより、コイルスプリング4が圧縮されてディスクプレート10、11からハブプレート5にエンジントルクを伝達する。
【0097】
また、正側側面7aがハブプレート5の半径方向中心軸Lに対して鈍角に傾斜しているため、ハブプレート5が正側に捩れるのに伴ってスプリングシート8が正側側面7aに沿って半径方向外方に移動する。
【0098】
すなわち、加速側では、ハブプレート5がディスクプレート10、11に対して正側に捩れることにより、荷重が加わる作用点がスプリングシート8となって作用点半径がスプリングシート8からハブプレート5の回転中心軸Oまでの距離になる。そして、スプリングシート8が正側側面7aに沿って半径方向外方に移動することにより、作用点半径rが徐々に大きくなる。
【0099】
また、ハブプレート5とディスクプレート10、11が中立位置にあるときに窓孔10A、11Aの外端面10f、11fとスプリングシート8との間に隙間が形成されているため、スプリングシート8が正側側面7aに沿って隙間の範囲内で半径方向外方に移動して、スプリングシート8の移動を許容する。
【0100】
一方、エンジントルクが大きくなると、ディスクプレート10、11とハブプレート5との捩れ角がさらに大きくなり、ハブプレート5がディスクプレート10、11に対して正側(R2)にさらに捩れる。
【0101】
このとき、図9に示すように、突出部7の負側側面7bからスプリングシート9がさらに離隔するとともに、突出部7の正側側面7aが窓孔10A、11Aの他端部10b、11bにさらに近接することにより、コイルスプリング4がさらに圧縮されてディスクプレート10、11からハブプレート5にエンジントルクを伝達する。
【0102】
また、ハブプレート5が正側に捩れるのに伴ってスプリングシート8が正側側面7aに沿って半径方向外方にさらに移動する。このとき、スプリングシート8は、窓孔10A、11Aの外端面10f、11fとスプリングシート8との間に隙間の範囲内で半径方向外方に移動してスプリングシート8の移動を許容する。
【0103】
図13は、ハブプレート5がディスクプレート10、11に対して正側に捩れたときの状態を模式的に示す図であり、ハブプレート5とディスクプレート10、11とが中立位置にあるときのコイルスプリング4の長さをA−r1とし、ハブプレート5の回転中心軸Oからスプリングシート8までの作用点半径をO−r1としたときのスプリングシート8の作用点半径rの変化を示す図である。
【0104】
コイルスプリング4がA−r1にある状態からハブプレート5が正側に捩れると、ハブプレート5の回転中心軸OからA点(スプリングシート8)までの作用点半径が、r2〜r6に示すように徐々に大きくなり、ハブプレート5とディスクプレート10、11との単位捩れ角θ(例えば、5°)当たりのコイルスプリング4の変位量Xは、徐々に大きくなる。
【0105】
このため、図15に示すように、ハブプレート5とディスクプレート10、11との単位捩れ角θ当たりのコイルスプリング4の剛性は、ハブプレート5とディスクプレート10、11との捩れ角θが小さいときに大きく、捩れ角θが大きくなるにつれて徐々に小さくなる非線形の特性となる。
【0106】
一方、車両の減速時にはエンジントルクが小さくなり、エンジンブレーキが発生するため、トランスミッションの入力軸31からハブプレート5に回転トルク(減速トルク)が入力される。
【0107】
減速時にトランスミッションからエンジンに伝達される回転トルクが大きくなると、ディスクプレート10、11とハブプレート5との捩れ角が大きくなり、図10、図11に示すように、突出部7の正側側面7aからスプリングシート8が離隔するとともに、突出部7の負側側面7bが窓孔10A、11Aの一端部10a、11aに近接することにより、コイルスプリング4が圧縮されてハブプレート5からディスクプレート10、11にトランスミッションのトルクが伝達される。
【0108】
また、負側側面7bがハブプレート5の半径方向中心軸Lに対して鋭角に傾斜しているため、ハブプレート5が負側に捩れるのに伴ってスプリングシート9が負側側面7bに沿って半径方向内方に移動する。
【0109】
すなわち、減速側では、ハブプレート5がディスクプレート10、11に対して負側に捩れることにより、荷重が加わる作用点がスプリングシート9となって作用点半径がスプリングシート9からハブプレート5の回転中心軸Oまでの距離となる。このため、減速側では加速側よりも作用点半径rが大きくなり、スプリングシート9が負側側面7bに沿って半径方向内方に移動することにより、作用点半径rが徐々に小さくなる。
【0110】
また、ハブプレート5とディスクプレート10、11が中立位置にあるときに窓孔10A、11Aの内端面10e、11eとスプリングシート9との間に隙間が形成されているため、スプリングシート9が負側側面7bに沿って隙間の範囲内で半径方向内方に移動して、スプリングシート9の移動を許容する。
【0111】
一方、減速トルクがさらに大きくなると、ディスクプレート10、11とハブプレート5との捩れ角が大きくなり、ハブプレート5がディスクプレート10、11に対して負側(R1)にさらに捩れる。
【0112】
このとき、図12に示すように、突出部7の正側側面7aからスプリングシート8がさらに離隔するとともに、突出部7の負側側面7bが窓孔10A、11Aの一端部10a、11aにさらに近接することにより、コイルスプリング4がさらに圧縮されてハブプレート5からディスクプレート10、11に回転トルクが伝達される。
【0113】
また、ハブプレート5が負側に捩れるのに伴ってスプリングシート9が負側側面7bに沿って半径方向内方にさらに移動する。このとき、スプリングシート9は、窓孔10A、11Aの内端面10e、11eとスプリングシート9との間に隙間の範囲内で半径方向内方に移動してスプリングシート9の移動を許容する。
【0114】
図14は、ハブプレート5がディスクプレート10、11に対して負側に捩れたときの状態を模式的に示す図であり、ハブプレート5とディスクプレート10、11とが中立位置にあるときのコイルスプリング4の長さをA−r1とし、ハブプレート5の回転中心軸Oからスプリングシート9までの作用点半径をO−r1としたときのスプリングシート9の作用点半径rの変化を示す図である。
【0115】
コイルスプリング4がA−r1にある状態からハブプレート5が負側に捩れると、ハブプレート5の回転中心軸OからA点(スプリングシート9)までの作用点半径が、r2〜r6に示すように徐々に小さくなり、ハブプレート5とディスクプレート10、11との単位捩れ角θ(例えば、5°)当たりのコイルスプリング4の変位量Xは、徐々に小さくなる。
【0116】
このため、図15に示すように、ハブプレート5とディスクプレート10、11との単位捩れ角θ当たりのコイルスプリング4の剛性は、ハブプレート5とディスクプレート10、11との捩れ角θが小さいときに小さく、捩れ角θが大きくなるにつれて徐々に大きくなる非線形の特性となる。
【0117】
このように本実施の形態では、ハブプレート5の収容孔7Aが、コイルスプリング4の一端部を支持するスプリングシート8が当接し、半径方向中心軸Lに対して鈍角に傾斜する正側側面7aと、コイルスプリング4の他端部を支持するスプリングシート9が当接し、正側側面7aに対して半径方向外方に位置して半径方向中心軸Lに対して鋭角に傾斜する負側側面7bとを備えることにより、コイルスプリング4をハブプレート5の半径方向に傾斜して収容するように構成した。
【0118】
このため、ハブプレート5がディスクプレート10、11に対して正側(加速側)に捩れたときと負側(減速側)に捩れたときのスプリングシート8、9からハブプレート5の回転中心軸Oまでの作用点半径rを異ならせることができる。
【0119】
このため、ハブプレート5がディスクプレート10、11に対して減速側に捩れたときのコイルスプリング4の剛性を加速側に捩れたときよりも小さくすることができ、コイルスプリング4の剛性を加速側と減速側とで異ならせることができる。
【0120】
ここで、図16に示すように、減速時のエンジンの回転変動(dB)は、エンジンの中・高回転領域で大きく、図17に示すように、加速時のエンジンの回転変動は、低回転領域に大きな領域があり、加速時と減速時とで異なる特性を有している。
【0121】
本実施の形態では、図16に示すように、コイルスプリング4の剛性を減速側で全体的に小さくすることができるため、エンジンの回転変動を吸収してエンジンの中・高回転領域、すなわち、ジャラ音が発生する回転領域においてトランスミッションの回転変動レベル(dBレベル)を下げることができ、ジャラ音の発生を抑制することができる。
【0122】
また、トランスミッションの捩り共振周波数は、例えば、エンジンの回転数が2000rpm付近の比較的低い定常回転領域に存在するため、エンジンの定常回転領域のコイルスプリング4の剛性を大きくする必要がある。
【0123】
本実施の形態では、コイルスプリング4の剛性を減速側よりも加速側で大きくすることができるとともに、図15に示すようにハブプレート5とディスクプレート10、11の捩れ角が小さいときの単位捩れ角θ当たりのコイルスプリング4の剛性を大きくし、捩れ角が大きくなるに従って単位捩れ角θ当たりのコイルスプリング4の剛性が徐々に小さくなる非線形の特性にすることができる。
【0124】
ここで、捩り振動減衰装置1を含んだトランスミッションの捩り共振周波数fは、下記の式(5)で表すことができる。
【数2】

但し、k:コイルスプリング4の剛性、I:トランスミッションの慣性モーメント
本実施の形態では、エンジントルクが小さく、ハブプレート5とディスクプレート10、11との捩れ角が小さい場合には、単位捩れ角θ当たりのコイルスプリング4の変位量を小さくしてコイルスプリング4の剛性を大きくすることができるため、図15のZで示す捩れ角θに対して伝達トルクの上昇率が高い領域で捩り振動減衰装置1を使用した場合に、現在の捩り振動減衰装置1の使用回転域に対してトランスミッションの捩り共振周波数を図17のf1で示す高い回転領域にずらすことができる。
【0125】
また、エンジントルクが大きく、ハブプレート5とディスクプレート10、11との捩れ角が大きい場合には、単位捩れ角θ当たりのコイルスプリング4の変位量を大きくしてコイルスプリング4の剛性を小さくすることができる。
このため、図15のZ以上の捩れ角において捩れ角θに対して伝達トルクの上昇率が低い領域で捩り振動減衰装置1を使用することができる。このため、現在の捩り振動減衰装置1の使用回転域に対してトランスミッションの捩り共振周波数を図17のf2で示す低い回転領域にずらすことができる。
【0126】
このため、エンジンの回転変動を減衰することができ、加速時のジャラ音を抑制することができる。さらに、加速時のコイルスプリング4の剛性を大きくすることができるため、自然長で剛性の大きいコイルスプリング4を用いるのを不要にでき、減速時のコイルスプリング4の剛性をより一層小さくすることができる。
【0127】
このように同一の剛性を有する1種類のコイルスプリング4を用いて減速側と減速側とで捩り振動減衰装置1の捩り剛性を変更できるので、捩り振動減衰装置1の製造コストが増大するのを防止することができる。
【0128】
また、本実施の形態では、ハブプレート5およびディスクプレート10、11が中立位置にあるときに、窓孔10A、11Aの内端面10e、11eとスプリングシート8とが接触するとともに、窓孔10A、11Aの外端面10f、11fとスプリングシート8との間に隙間が形成されている。
【0129】
このため、ハブプレート5がディスクプレート10、11に対して加速側に捩れ、収容孔7Aの正側側面7aと窓孔10A、11Aの他端部10b、11bとの間でコイルスプリング4が圧縮されるときに、コイルスプリング4の一端部を正側側面7aに沿って半径方向外方に移動させることができる。
【0130】
このとき、窓孔10A、11Aの外端面10f、11fとスプリングシート8との間の隙間の範囲だけコイルスプリング4が半径方向外方に移動するのを許容することができ、ハブプレート5およびディスクプレート10、11を円滑に相対回転させることができる。
【0131】
また、本実施の形態では、ハブプレート5およびディスクプレート10、11が中立位置にあるときに、窓孔10A、11Aの外端面10f、11fとスプリングシート9とが接触するとともに、窓孔10A、11Aの内端面10e、11eとスプリングシート9との間に隙間が形成されている。
【0132】
このため、ハブプレート5がディスクプレート10、11に対して減速側に捩れ、収容孔7Aの負側側面7bと窓孔10A、11Aの他端部10b、11bとの間でコイルスプリング4が圧縮されるときに、コイルスプリング4の他端部を負側側面7bに沿って半径方向内方に移動させることができる。
【0133】
このとき、窓孔10A、11Aの内端面10e、11eとスプリングシート9との間の隙間の範囲だけコイルスプリング4が半径方向外方に移動するのを許容することができ、ハブプレート5およびディスクプレート10、11を円滑に相対回転させることができる。
【0134】
また、本実施の形態では、スプリングシート8が正側側面7aの周縁に摺動自在に嵌合された嵌合部8cを有するので、スプリングシート8を正側側面7aに沿って半径方向に円滑に移動させることができる。
【0135】
また、スプリングシート9が負側側面7bの周縁に摺動自在に嵌合された嵌合部9cを有するので、スプリングシート9を負側側面7bに沿って半径方向に円滑に移動させることができる。
【0136】
(第2の実施の形態)
図18〜図22は、本発明に係る捩り振動減衰装置の第2の実施の形態を示す図であり、本実施の形態では、スプリングシートの構成が第1の実施の形態と異なるのみであり、第1の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0137】
図18、図19において、第1の支持部材を構成するスプリングシート41は、コイルスプリング4の一端部が当接する当接面42aと当接面42aからコイルスプリング4の内方に突出する突起42bを有する第1の分割体としての支持体42と、支持体42の背面に設けられた第2の分割体としての本体43とを備えている。
【0138】
本体43は、背面が窓孔10A、11Aの一端部に当接する円板43aを備えており、この円板43aは、支持体42の背面に設けられている。また、本体43には正側側面7aの周縁に摺動自在に嵌合された第1の嵌合部としての嵌合部43bが形成されている。このため、コイルスプリング4の一端部は、スプリングシート41を介して正側側面7aの半径方向に摺動自在となっている。
【0139】
また、円板43aにはボール部43cが設けられており、このボール部43cは、支持体42に形成された嵌合溝42cに樹脂からなる摩擦材42dを介して摺動自在に嵌合している。このため、支持体42は、本体43に対して回動自在となっている。
【0140】
また、第2の支持部材を構成するスプリングシート44は、コイルスプリング4の他端部が当接する当接面45aと当接面45aからコイルスプリング4の内方に突出する突起45bを有する第1の分割体としての支持体45と、支持体45の背面に設けられた第2の分割体としての本体46とを備えている。
【0141】
本体46は、窓孔10A、11Aの他端部10b、11bに当接する円板46aを備えており、この円板46aは、支持体45の背面に設けられている。また、本体46には負側側面7bの周縁に摺動自在に嵌合された第2の嵌合部としての嵌合部46bが形成されている。このため、コイルスプリング4の一端部は、スプリングシート44を介して正側側面7aの半径方向に摺動自在となっている。
【0142】
また、円板46aにはボール部46cが設けられており、このボール部46cは、支持体45に形成された嵌合溝45cに樹脂からなる摩擦材45dを介して摺動自在に嵌合している。このため、支持体45は、本体46に対して回動自在となっている。
【0143】
本実施の形態では、スプリングシート41が、収容孔7Aの正側側面7aと窓孔10A、11Aの一端部に当接する支持体42および支持体42に対して回動自在に設けられ、コイルスプリング4の一端部を支持する本体43から構成され、スプリングシート44が、収容孔7Aの正側側面7aと窓孔10A、11Aの一端部に当接する支持体45および支持体45に対して回動自在に設けられ、コイルスプリング4の一端部を支持する本体46から構成されている。
【0144】
このため、ハブプレート5がディスクプレート10、11に対してR2で示す正側(加速側)に捩れたとき(図21参照)と、ハブプレート5がディスクプレート10、11に対してR1で示す負側(減速側)に捩れたとき(図22参照)とにおいて、支持体42、45が本体43、46に対して回動することにより、スプリングシート41、44の姿勢が変化するのを吸収することができる。
【0145】
このため、半径方向に傾斜して収容孔7Aに取付けられたコイルスプリング4およびディスクプレート10、11に傾斜して形成された窓孔10A、11A内に位置するコイルスプリング4が屈曲するのを抑制することができる。
【0146】
なお、上記各実施の形態では、捩り振動減衰装置1を車両のエンジンと変速歯車組を有する駆動伝達装置との間に介装するようにしているが、これに限らず、車両等の駆動伝達装置に設けられる捩り振動減衰装置であれば何でもよい。
【0147】
例えば、ハイブリッド車両にあっては、エンジンの出力軸と、電動機と車輪側出力軸とに動力を分割する動力分割機構との間に介装されるハイブリッドダンパ等の捩り振動減衰装置に適用してもよい。
【0148】
また、トルクコンバータのロックアップクラッチ装置と変速歯車組の間に介装されるロックアップダンパ等の捩り振動減衰装置に適用してもよい。また、ディファレンシャルケースとディファレンシャルケースの外周部に設けられたリングギヤとの間に捩り振動減衰装置を設けてもよい。
【0149】
また、本実施の形態では、ハブプレート5の収容孔7Aを切欠きから構成しているが、収容孔は、半径方向外方、半径方向内方および円周方向両端部が閉止端となっている窓孔から構成されてもよい。
また、本実施の形態では、コイルスプリング4が3つ設けられているが、コイルスプリング4は、少なくとも1つ以上あればよい。
【0150】
以上のように、本発明に係る捩り振動減衰装置は、同一の剛性を有する1種類の弾性部材を用いて正側と負側とで捩り剛性を変更できるようにして、捩り振動減衰装置の製造コストが増大するのを防止することができるという効果を有し、車両の内燃機関と駆動伝達装置との間に介装され、第1の回転部材と第2の回転部材との間で捩り振動を吸収しつつトルクが伝達されるように第1の回転部材と第2の回転部材とを弾性部材を介して相対回転自在に連結した捩り振動減衰装置等として有用である。
【符号の説明】
【0151】
1 捩り振動減衰装置
2 第1の回転部材
3 第2の回転部材
4 コイルスプリング(弾性部材)
5 ハブプレート(第1の回転部材)
7 突出部
7A 収容孔
7a 正側側面
7b 負側側面
8、41 スプリングシート(第1の支持部材)
8c、43b 嵌合部(第1の嵌合部)
9、44 スプリングシート(第2の支持部材)
9c、46b 嵌合部(第2の嵌合部)
10、11 ディスクプレート(第2の回転部材)
10A、11A 窓孔
10a、11a 一端部
10b、11b 他端部
10e、11e 半径方向の内端面
10f、11f 半径方向の外端面
31 入力軸
42、45 支持体(第1の分割体)
43、46 本体(第2の分割体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円周方向に離隔する複数の収容孔を有する第1の回転部材と、
前記第1の回転部材と同軸上で前記第1の回転部材に対して相対回転自在に設けられ、前記収容孔に対向する位置に窓孔が形成された第2の回転部材と、
前記収容孔および前記窓孔に取付けられ、前記第1の回転部材と前記第2の回転部材とが相対回転しない中立位置から前記第1の回転部材が前記第2の回転部材に対して正側の円周方向に相対回転した場合と、負側の円周方向に相対回転した場合とで弾性変形することにより、前記第1の回転部材と前記第2の回転部材との間でトルクを伝達する弾性部材と、
前記弾性部材の一端部を支持する第1の支持部材および前記弾性部材の他端部を支持する第2の支持部材とを備えた捩り振動減衰装置であって、
前記収容孔は、前記第1の支持部材が当接し、前記第1の回転部材の半径方向中心軸に対して鈍角に傾斜する正側側面と、前記第2の支持部材が当接し、前記正側側面に対して前記半径方向外方に位置して前記半径方向中心軸に対して鋭角に傾斜する負側側面とを備えることにより、前記弾性部材を前記半径方向に傾斜して収容するように構成され、
前記窓孔は、前記第1の支持部材が当接する円周方向の一端部と、前記第2の支持部材が当接し、前記円周方向の一端部に対して前記半径方向外方に位置する円周方向の他端部とを備えることにより、前記弾性部材を前記半径方向に傾斜して収容するように構成され、
前記第1の支持部材および前記第2の支持部材がそれぞれ前記正側側面および前記負側側面に対して前記半径方向に移動自在であることを特徴とする捩り振動減衰装置。
【請求項2】
前記第1の回転部材および前記第2の回転部材が前記中立位置にあるときに、前記窓孔の前記半径方向の内端面と前記第1の支持部材とが接触するとともに、前記窓孔の前記半径方向の外端面と前記第1の支持部材との間に隙間が形成され、前記窓孔の前記半径方向の外端面と前記第2の支持部材とが接触するとともに、前記窓孔の前記半径方向の内端面と前記第2の支持部材との間に隙間が形成されることを特徴とする請求項1に記載の捩り振動減衰装置。
【請求項3】
前記第1の支持部材が前記正側側面の周縁に摺動自在に嵌合された第1の嵌合部を有し、前記第2の支持部材が前記負側側面の周縁に摺動自在に嵌合された第2の嵌合部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の捩り振動減衰装置。
【請求項4】
前記第1の支持部材および前記第2の支持部材が、前記収容孔の正側側面と前記窓孔の一端部または前記収容孔の負側側面と前記窓孔の他端部に当接する第1の分割体および前記第1の分割体に対して回動自在に設けられ、前記弾性部材の一端部または他端部を支持する第2の分割体を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1の請求項に記載の捩り振動減衰装置。
【請求項5】
前記第1の回転部材の内周部に車両の駆動伝達装置の入力軸が嵌合され、
前記第2の回転部材が、前記第1の回転部材の軸線方向両側に配置され、互いに連結されて一体回転自在な一対のディスクプレートを備え、
前記一対のディスクプレートに内燃機関の回転トルクが伝達されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1の請求項に記載の捩り振動減衰装置。
【請求項6】
前記車両の加速時に前記第1の回転部材が前記第2の回転部材に対して正側に捩れ、前記車両の減速時に前記第1の回転部材が前記第2の回転部材に対して負側に捩れることを特徴とする請求項5に記載の捩り振動減衰装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2013−15188(P2013−15188A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148435(P2011−148435)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】