捩れ抵抗がある自己密封式PTFEグラフト
【課題】シーラント層および幾つかの任意選択の追加層がある基体を含む自己密封式人工血管を提供する。
【解決手段】基体12はePTFEでよく、シーラントおよび追加層に使用される材料はポリウレタンでよい。シーラント層および追加層は1つまたは複数のベース層、1つまたは複数の発泡体層、異なるサイズおよび形状のビード18、およびePTFEテープを含んでよい。フレア状カフが、基体の一方端または両端に一体化するか、一方端または両端に取り付けることができる。
【解決手段】基体12はePTFEでよく、シーラントおよび追加層に使用される材料はポリウレタンでよい。シーラント層および追加層は1つまたは複数のベース層、1つまたは複数の発泡体層、異なるサイズおよび形状のビード18、およびePTFEテープを含んでよい。フレア状カフが、基体の一方端または両端に一体化するか、一方端または両端に取り付けることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年8月31日出願の米国仮特許出願第60/605,770号および2005年6月17日出願の米国仮特許出願第60/692,172号に対する優先権を主張し、これはそれぞれ、参照によりここで完全に述べられているかのように本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、捩れ抵抗がある自己密封式PTFEグラフトに関する。
【背景技術】
【0003】
腎機能低下または腎不全を患う患者は、往々にして血液透析治療を受けねばならない。透析中は、血液が患者から引き出されて、血液透析機を通して循環される。機械は、有害な老廃物を除去し、浄化した血液を患者に戻す。通常、透析治療は、腎臓移植処置を実行しない限り、患者の寿命にわたって1週間に3回実行される。成功裏に血液透析治療を実行するために血液は150から600ml/分以上の流量で約3〜4時間にわたって血液透析機に通して循環させなければならない。静脈系からの血液流は、必要な流量を満たすのに不十分であると考えられ、大血管を繰り返し穿刺することは実際的でない。したがって、血液透析機のために血流のアクセスを提供するために、先天性瘻を生成することが多い。
【0004】
先天性瘻が利用できない、または血管透析に使用できない場合は、一般的に発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)の管から作成した人工血管(vasculargraft)を、動脈と静脈の間に外科的に配置する(例えばePTFE AVグラフト)。この処置は、前腕のより伝統的な一次先天性瘻の構造を支持する血管がない患者には、特に有用である。押出成形したePTFEAVグラフトは、織物のAVグラフトより好ましい。これは幾つかの理由で織るか、編むか、組紐状にするか、他の方法で形成され、ePTFEグラフトに与えられたノードおよびフィブリルによって特徴付けられた一意の微細構造を含み、これは組織の内殖を容易にしながら、同時に血液が流れることができる流体の漏れない導管を提供し、さらに必要な強度特徴を保持しながら、グラフトに比較的薄肉を提供する能力を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発泡ポリテトラフルオロエチレンAVグラフトは、少なくとも部分的には(ポリウレタンなどの)他の材料に対するePTFE材料の血液適合性の利点により、AVブリッジ瘻として血液透析治療に広く使用されている。しかし、ePTFEAVグラフトを使用することの潜在的欠点の1つは、植え込み後約14日まで、血液透析用に安全に血液を抜き取るのに使用できないことである。これは、ePTFEの非弾性の性質によるものと考えられ、これは穿刺後に自己密封することができない。したがって、その間に、他の透析手段(例えば血液透析カテーテルなど)を使用しなければならない。14日後には、通常はシーラント層として作用するためにePTFE表面に十分な組織の内殖があり、したがってグラフトは、透析針の除去によって生成される穿刺傷を密封することができる。しかし、このような密封には圧力と止血との組合せが必要であり、これはこのような処置中に存在する多くの変数(透析技術/看護士の技術レベル、作動状態など)のせいで均一にならない。したがって、止血およびそれに伴う付随変数に依存せず、追加の透析方法を使用せずに済むように、植え込み後即座に密封するePTFE人工血管の密封機構を有することが好ましい。
【0006】
したがって、ePTFE AVグラフトに即座に自己密封する特性を提供するために、ePTFE上にエラストマのシーラント層を配置するなどの様々な密封技術、および複合構造が図示または記述されている。様々なタイプのエラストマのシーラント、ePTFEグラフト、自己密封式グラフトおよび複合グラフトの実施例は、以下の米国特許および公開された出願にて開示されたものを含む。つまり、米国特許第(USPN)Re.31,618号、同第4,604,762号、同第4,619,641号、同第4,731,073号、同第4,739,013号、同第4,743,252号、同第4,810,749号、同第4,816,339号、同第4,857,069号、同第4,955,899号、同第5,024,671号、同第5,061,276号、同第5,116,360号、同第5,133,742号、同第5,152,782号、同第5,192,310号、同第5,229,431号、同第5,354,329号、同第5,453,235号、同第5,527,353号、同第5,556,426号、同第5,607,478号、同第5,609,624号、同第5,620,763号、同第5,628,782号、同第5,641,373号、同第5,665,114号、同第5,700,287号、同第5,716,395号、同第5,716,660号、同第5,800,510号、同第5,800,512号、同第5,824,050号、同第5,840,240号、同第5,843,173号、同第5,851,229号、同第5,851,230号、同第5,866,217号、同第5,897,587号、同第5,904,967具、同第5,910,168号、同第5,931,865号、同第5,976,192号、同第6,001,125号、同第6,036,724号、同第6,039,755号、同第6,042,666号、同第6,056,970号、同第6,080,198号、同第6,099,557号、同第6,203,735号、同第6,261,257号、同第6,267,834号、同第6,287,337号、同第6,319,279号、同第6,368,347号、同第6,416,537号、同第6,428,571号、同第6,534,084号、同第6,547,820号、同第6,589,468号、同第6,712,919号、同第6,716,239号、同第6,719,783号、同第6,790,226号、同第6,814,753号、同第6,827,737号、同第6,863,686号、同第6,926,735号、および米国特許出願公開第(USpN)2003/0004559号、同第2003/0027775号、同第2003/0100859号、同第2003/139806号、同第2004/0033364号、同第2004/0049264号、同第2004/0054406号、同第2004/0122507号、同第2004/0182511号、同第2004/0193242号および同第2004/0215337号であり、それぞれが参照により、詳細に述べられているかのように本明細書に組み込まれる。
【0007】
血管透析のためにePTFE AVグラフトにアクセスする前に、通常は皮膚の表面に優しく触れることによってグラフトを通して脈拍を感じて、グラフトを通る血流のチェックを実行する。グラフトを通してパルスを感じる能力は、一般に「触診可能性」と定義される。大部分の商用ePTFE人工血管は良好な触診可能性を提供するが、ePTFE基体の表面にエラストマシーラントの層を配置すると、層が厚すぎる場合はグラフトの触診可能性が損なわれることがある。血管透析にePTFEAVグラフトを使用することの別の潜在的欠点は、植え込み時に、グラフトがループ部位で捩れを形成する傾向があることである。典型的なループ部位の実施例が、図1A(上腕動脈から尺側皮静脈までの前腕のループAVグラフト2)および図1B(大腿動脈から大腿静脈までの大腿部ループAVグラフト4)に図示されている。ループ部位でのグラフトの捩れは血流を閉塞することがあり、その場合は即座の医療介入が必要となる。このような介入は、有害な結果の可能性を高めるので極めて好ましくないことが明白である。残念ながら、エラストマシーラントまたは密封の問題に対応するために形成された他の材料でコーティングしたePTFEグラフトは、容易に捩れを形成できることが発見され、これは恐らくループ領域におけるグラフトの剛性のせいである。
【0008】
ePTFE材料を使用することのこれ以外の1つの潜在的欠点は、自然な血管と比較して半径方向にコンプライアンスがないことである。つまり、血液の拍動がそれを通って流れるにつれて自然な血管を拡張および収縮させる血液の波動が、ePTFEグラフトを通過するにつれて散逸してしまう。この拍動の散逸は、受容者血管に対するコンプライアンスの不一致のような様々な合併症につながることがある。残念ながら、今日まで、自然の血管のコンプライアンスを真似て半径方向にコンプライアンスがあるePTFEグラフトの開発には成功していないと考えられる。したがって、上述した欠点の幾つかまたは全部を克服する自己密封式ePTFEグラフトが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本明細書では有利な特性を提供する人工血管、特にePTFEグラフトおよびePTFEAVグラフトについて説明する。本発明の一態様では、自己密封式人工血管は第1表面および第1表面から隔置された第2表面を有する全体的に管状のePTFE基体を含み、ePTFE基体は、多孔性グラフト、薄肉グラフトおよびその組合せで構成されるグループから選択され、さらに基体の第1および第2表面のうち一方に配置されたシーラントの層を含む。本発明の別の態様では、自己密封式グラフトは管状ePTFE基体を含み、ePTFE基体は多孔性グラフトか薄肉グラフトかその組合せのいずれかで、シーラントの層が基体の少なくとも一部に配置される。本発明のさらに別の態様では、AV瘻として植え込まれるグラフトは、管状ePTFE基体および基体の少なくとも一部に配置されるシーラントの層を含み、シーラント層はその長さに沿って隔置された複数の溝付き区間を有する。
【0010】
本発明の別の態様では、人工血管は基体を囲む外部ポリマーシーラント層およびベース層を含み、複数の発泡体層が基体と外部ポリマー層との間に分散する。本発明の代替態様によれば、人工血管は、第1厚さを有して基体を囲むポリマーの内部シーラント層、および内部シーラント層を囲むポリウレタンの発泡体層を含み、発泡体層は第1厚さの1.5倍ある第2厚さを有する。本発明のさらに別の態様では、人工血管は外壁を含む基体、ポリマーのシーラント材料を備え、基体の長さにわたって配置されたベースシーラント層、ポリマー発泡体材料を備え、ベース層の長さにわたって配置された第1発泡体層、第1発泡体層内に少なくとも部分的に埋め込まれたビード、ポリマー発泡体材料を備え、第1発泡体層およびビードの長さにわたって配置された第2発泡体層、およびポリマーを備える外部層を含む。
【0011】
本発明の代替態様では、半径方向にコンプライアンスがあるグラフトを形成する方法は、ePTFE基体を提供することと、基体を半径方向に膨張することと、コーティングした基体を提供するために、半径方向に膨張した基体上にエラストマ材料の層を配置することと、コーティングした基体を加熱することとを含む。本発明の別の態様では、人工血管を形成する方法は、ePTFE基体を提供することと、基体の長さにわたってポリウレタンの第1層を適用することと、基体を長手方向に圧縮することと、第1ポリウレタン層上に第2ポリウレタン層を適用することと、ポリウレタンでコーティングした基体にePTFEテープの層を巻き付けることとを含み、ePTFEテープは、ある量の溶液がePTFEテープに与えられるように最初に溶液を通過する。本発明のさらに別の態様では、自己密封式カフ式人工血管の作成方法は、ePTFE基体の第1端にカフの首部分を位置決めすることと、基体をシーラント材料にその第2端からカフの首部分まで浸漬することと、基体およびカフの首部分をシーラント材料に浸漬することとを含む。本発明のさらに別の態様では、捩れ抵抗性自己密封式人工血管の作成方法は、全体的に管状のePTFE基体を提供することと、基体の外面の少なくとも一部にシーラントの層を配置することと、シーラント層に溝付き区間を作成することとを含む。
【0012】
本発明のさらなる態様では、自己密封式人工血管は、第1表面および第1表面から隔置された第2表面を有する全体的に管状のePTFE、および第1および第2表面のうち一方に配置されたシーラントの層を含み、シーラントは、シーラント層を通して穿刺部材を挿入しても可塑変形しないポリマー材料を備える。本発明の別の態様では、自己密封式人工血管は、全体的に管状のePTFE基体、基体の少なくとも一部に配置されたシーラントの層、および基体およびシーラントのうち一方の表面の周囲に配置されたビードを含む。
【0013】
本発明のさらに別の態様では、捩れ抵抗性自己密封式人工血管の作成方法は、全体的に管状のePTFE基体を提供することと、基体の外面の少なくとも一部にシーラントの層を配置することと、シーラント層の少なくとも一部にビードを位置決めすることと、カフ式グラフトを人工血管に結合することとを含む。本発明の別の態様では、自己密封式カフ式人工血管の作成方法は、縦軸に沿って延在する第1端および第2端を有する概ね管状のePTFE基体の周囲に、全体的に螺旋状に配置されたビードを取り付けることと、フレア状の血管カフを第1および第2端の一方に結合することと、結合した血管カフと全体的に管状のePTFE基体とを付着することとを含む。本発明のさらなる態様では、自己密封式人工血管の作成方法は、ePTFE基体の外面の長さにわたってエラストマのシーラント層を設けることと、シーラント層の少なくとも一部に発泡体層を配置することとを含み、発泡体層の厚さは、基体の壁の厚さより十分に大きい。本発明の別の代替態様によれば、自己密封式人工血管の作成方法は、ePTFE基体の表面にポリウレタン材料の少なくとも1つの層を配置することと、ePTFE部材に溶媒を適用することによって、ePTFE部材をポリウレタン材料に付着することとを含む。
本発明の以上および他の実施形態、特徴および利点は、先に簡単に説明した本発明の以下のさらに詳細な説明を添付図面と組み合わせて考察することにより、当業者にはさらに明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】患者の前腕に植え込まれたループAVグラフトの図である。
【図1B】患者の大腿部に植え込まれたループAVグラフトの図である。
【図2】自身の周囲に螺旋状になったビードを有する中央部分の両側にシーラント層があるePTFE基体を有するePTFEグラフトの図である。
【図3】シーラント層およびビード上に発泡体層が配置された図2のグラフトの図である。
【図4】ePTFEテープが発泡体層の周囲に巻き付けられた図3のグラフトの図である。
【図5】曲げた形状で図示された図4のグラフトの図である。
【図6】その長さにわたってシーラント層があるePTFE基体を有し、シーラント層が隔置された間隔で切られた溝付き区間を有するePTFEグラフトの図である。
【図7】曲げた形状で図示された図6のグラフトの図である。
【図8】自身の周囲に螺旋状になったビードを有する中央部分の両側にシーラント層があるePTFE基体を有し、シーラント層が、隔置された間隔で切られた溝付き区間を有するePTFEグラフトの図である。
【図9】発泡体層がシーラント層およびビード上に配置され、曲げた形状で図示された図8のグラフトの図である。
【図10】複数の材料の層がある本発明によるePTFE AVグラフトの図である。
【図11】本発明によるePTFE AVグラフトの一実施形態の図である。
【図12】本発明によるePTFE AVグラフトの別の実施形態の図である。
【図13】本発明によるePTFE AVグラフトのさらに別の実施形態の図である。
【図14】本発明によるePTFE AVグラフトのさらに別の実施形態の図である。
【図15】本発明による別のePTFE AVグラフトの図である。
【図16A】ePTFE AVグラフトの第1の好ましい実施形態の中央部分の長手方向断面図である。
【図16B】ePTFE AVグラフトの第2の好ましい実施形態の中央部分の長手方向断面図である。
【図16C】ePTFE AVグラフトの第1の好ましい実施形態の端部設計の長手方向断面図である。
【図16D】ePTFE AVグラフトの第2の好ましい実施形態の端部設計の長手方向断面図である。
【図17】取り付け可能なカフの背面斜視図である。
【図18】カフ付きのePTFE AVグラフトのカフ部分の前面斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下の詳細な説明は図面を参照にして読むものであり、異なる図面にある同様の要素は同じ番号が付けられている。必ずしも同じ縮尺ではない図面は、選択された実施形態を示し、本発明の範囲を制限するものではない。詳細な説明は、例示により、制限的ではなく本発明の原理を示す。この説明は、明らかに当業者が本発明を作成し、使用できるようにするものであり、現在のところ本発明を実施する最善のモードと考えられるものを含め本発明の幾つかの実施形態、改造、変形、代替物および用法について説明する。
【0016】
本明細書に含まれる実施例はePTFE基体を使用する。当技術分野で知られているように、ePTFE基体は、例えば管の押出成形(シームレス)、その後に管に形成されるシートの押出成形(1つまたは複数のシーム)、ePTFEテープを心棒の周囲に螺旋状に巻き付けること(例えば複数のシーム、または好ましくは1本の螺旋状シーム)などを含め、幾つかの方法で製造することができる。本発明でePTFE基体を形成するために使用する好ましい方法は、管を押出成形することであるが、他の形成方法も可能であり、本発明の範囲に入ることを認識されたい。さらに、ePTFEが基体層のために選択された材料であるものとして検討されているが、例えばポリエステル、ポリウレタンおよびパーフルオロエラストマなどのフルオロポリマーを含め、他の材料も基体として使用するのに適切であることが、当業者には認識される。
【0017】
さらに、本明細書で説明するグラフトの自己密封特性は、針をそこから抜くせいで血液が失われることに関するものであるが、自己密封特性は、植え込み中にグラフトに生成される縫合穴の結果失われる血液にも拡大されることを認識されたい。さらに、シーラント層に関して本明細書では特定のポリウレタン材料について検討しているが、これは例示的にすぎず、本発明の制限に使用してはならないことを認識されたい。特に、非ポリウレタンのエラストマシーラント材料のように、多くの異なるタイプのポリウレタン材料が本発明の範囲に入る。本明細書では、エラストマ、エラストマの、シーラントなどの用語は、基体上に施されるかまたは配置される概ね可撓性の材料の1つまたは複数の層に対して交換可能な方法で使用され、大抵の場合は、それに密封特性を与えることができるが、穿刺後に自己密封性になる必要はない。
【0018】
また、本明細書で説明する人工血管を形成する1つまたは複数の材料に、生理活性剤を組み入れてもよい。生理活性剤は、グラフトの内腔(luminal)表面および非内腔(abluminal)表面のうち少なくとも一方に人工非金属材料(例えばダクロン(登録商標)、ポリエステル、PTFE、ePTFE、ポリウレタン、ポリウレタン尿素、シロキサン、およびその組合せ)とともに組み入れるか、グラフトの人工非金属材料全体に分散させるか、それにコーティングするか、それに噴霧コーティングするか、それにグラフトを液浸するか、それに蒸着するか、それにスパッタ堆積させるか、グラフト上に放射線不透過性表面を形成するように使用することができる。使用する材料または材料の組合せ(例えばダクロン(登録商標)、ポリエステル、PTFE、ePTFE、ポリウレタン、ポリウレタン尿素、シロキサン、およびその組合せ)は、表面改質添加剤または他の材料を含むことができる。
【0019】
基体、生理活性剤、シーラント層、発泡体層、他の層および他の設計パラメータの構成または組成の変形を、本明細書で説明するグラフトとともに使用することを強調しておかねばならない。例えば、グラフト中の生理活性剤の重量パーセンテージは、約0.1パーセントから約90パーセントまで変化してよく、約10パーセントから約60パーセントが最も好ましく、生理活性剤の平均粒子サイズは約20ナノメートルから約100ミクロンの範囲でよく、約0.1ミクロンから約5ミクロンが最も好ましく、生理活性剤の粒子は特定の構成では有孔で、他の構成では非有孔でよく、生理活性剤は、グラフトの内腔表面または非内腔表面で100パーセント構成してよく、グラフト本体の全体に均質に分布することができ、生理活性剤は、約10ミクロンから約1000ミクロンの接着剤薄膜で構成してもよい。
【0020】
生理活性剤は、炭素粒子、銀粒子、グラファイト粒子、抗生物質(アメトプリンリファンピンまたはゲンタマイシン)、マクロライド抗生物質、ステロイドまたは消炎剤(例えばエストラジオール)、抗腫瘍薬、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗体、遺伝子配列剤、成長因子阻害剤、血管形成、抗血管形成、プロティナーゼ阻害剤、抗増殖化合物または細胞分裂周期調節剤(ラパマイシン、シロリムス、またはパクリタクセル)などの化合物を含んでよいが、それに制限されない。これらの薬剤は、他の薬剤と結合してよい。例えばハイドロキシアパタイト(HA)、または他の生体適合性カルシウム塩で、これはリン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、およびリン酸カルシウムまたは炭酸カルシウム族の他の化合物を含むが、それに制限されない。記載されたカルシウム塩族の要素のいずれも、その塩がグラフト内で実質的に骨誘導性でない(つまり骨を形成しない)限り、使用することができる。また、ナノサイズの炭素チューブのようなセラミック材料、炭酸カルシウム、および遺伝子またはウイルス物質も、本明細書で述べたグラフト材料の少なくとも1つと組み合わせてよい。
【0021】
HAまたは他の生体適合性カルシウム塩の使用に関して、当業者に知られている様々な方法または技術を使用して、薬物または生理活性化合物をそれに組み入れることができる。例えば、HAグラフト複合体を作成した後に、薬物を添加してよい。有機または水性溶媒系の技術を使用して、薬物または他の生理活性剤をHA粒子内に拡散することができる。あるいは、HA粒子を最初に薬物または他の生理活性剤に装填し、次にグラフトに組み入れてよい。薬物または他の生理活性剤を60分以内に迅速に放出するか、数日から2年かけて制御された方法で放出することができる。HA粒子上の追加のポリマーコーティングまたはセラミックコーティングを使用して、薬物または他の生理活性剤の放出を制御してよい。
【0022】
また、ePTFEをHAと組み合わせて使用する場合、複合HA−ePTFEグラフトは、異なる有孔性およびノード−フィブリル構造を有してよい。ePTFEの有孔性は、約5ミクロンから約100ミクロンの範囲でよく、好ましい有孔性またはノード間距離は約10ミクロンから約40ミクロンの範囲である。発泡倍率、潤滑剤レベル、PTFE樹脂の粒子サイズおよび他のePTFE処理パラメータを制御することにより、様々な有孔性のグラフトを作成して、異なる有孔性の領域があるHA結合グラフトを提供することができる。HA結合グラフトは、ePTFEグラフトチューブの複数の層を使用して作成してもよい。HA系グラフトは、本明細書で述べた追加の特徴も有することができる。例えば開通性を改善する1つまたは複数のカフ、捩れ抵抗を改善するビード、および植え込みまたは他の外科処置中に補助する可視配向線である。HAまたは他の生体適合性カルシウム塩を組み入れたグラフトの以上および他の態様が、2005年6月8日出願の「Graftsand stent grafts having inorganicbio−compatible calciumsalt」と題された米国仮特許出願第60/689,034号に記載され、これは参照によりここで完全に述べられているかのように本明細書に組み込まれる。
【0023】
シーラント層
自己密封式グラフトの好ましい一実施形態では、使用されるシーラント層材料は、低い程度のクリープまたは応力緩和を呈すると考えられる材料である。材料のクリープまたは応力緩和は、その可塑変形のせいで生じ、これは好ましい実施形態の状況では、長期間にわたって材料を通して針を挿入するせいで生じることがある。シーラント層の適切な材料の実施例は、芳香族ポリカーボネートポリウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリエーテル/ポリアミドブロック共重合体、ポリジメチルシロキサンエラストマ、他のシリコーンエラストマなどを含むが、それに制限されない。
【0024】
特に低い程度のクリープまたは応力緩和を呈するポリウレタンのタイプに関して、芳香族ポリウレタンが脂肪族ポリウレタンよりも可塑変形に対して優れた抵抗を提供することが、実験によって実証されている。これは、これらの化合物をさらに詳細に検査することによって、一部は説明することができる。生物医学的用途に使用されるポリウレタンは通常、2段階のプロセスで合成される。第1に、ポリマージオールをジイソシアナート化合物と反応させて、イソシアナート末端基を有するプレポリマーを形成する。次に、分子量が小さいジオールまたはジアミンを使用してプレポリマーを連鎖延長し、ポリウレタンまたはポリウレタン尿素を形成する(アミンとの反応)。異なるタイプのポリマージオール、ジイソシアナートおよび連鎖延長剤を選択することにより、特性が異なる多くのタイプのポリウレタンを作成することができる。特に、ポリカーボネートジオールを使用して作成したポリウレタン(ポリカーボネートポリウレタン)は、植え込み後の生物安定性および優れた力学的特性のせいで、多くの医療器具の用途で使用される。2つの市販されているポリカーボネートポリウレタンの成分が以下の表1に記載され(ポリマーXおよびポリマーYとして掲載)、2つの構造的な違いは、ポリウレタン合成に使用されるジイソシアナートである。
【表1】
【0025】
異なるグラフトで2つのポリマーを使用する実験は、最初にグラフトを通して流体を流し、個々のグラフト上のポリマーシーラント層を通して針を挿入し、ポリマーを通る針の位置を約2時間維持し、針を抜くことによって実行した。ポリマーYシーラント層に生成された穴は、抜いた後にほぼ閉じるが、ポリマーXシーラント層に生成された穴は、抜いた後もほぼ開いたままであった。第2の実験では、所定の位置に約2分間維持しただけの針を抜いた後、穴は両方とも即座に閉じた。第3の実験では、ポリマーXおよびポリマーYでコーティングしたグラフトを、透析セッションを模倣した流体損失試験にかけた。14ゲージの針を個々のグラフトに挿入し、所定の位置に37℃で1時間維持した。針を抜いた後、ポリマーXでコーティングされたグラフトは、約120グラムの流体を失い、ポリマーYでコーティングしたグラフトは、約15グラムの流体を失った。したがって、この1つの実験から、芳香族ジイソシアナートを使用して調製したポリウレタンは、針の滞在時間が比較的長い場合、脂肪族ジイソシアナートを使用して調製したポリウレタンと比較して優れた密封反応を呈するようである。
【0026】
さらに、シーラント層の密封反応は、加熱してポリマーを操作することを通して改善することができ、その結果、シーラント層が呈するクリープまたは応力緩和が低下する。この好ましい反応は、加熱がエラストマ特性の整然とした領域(H結合の配列)を発達させるので、硬質相(芳香族ポリウレタン区域)から軟質相(ポリカーボネート区域)の相分離が改善したことに帰すことができる。以下の表2では、表1のポリマーYでコーティングされたグラフトを様々な熱処理手順にかけ、流体の損失を試験した。その結果のデータは、特定の熱処理がポリマーYのようなポリウレタンに対する優れた密封反応を付与するが、より長期間にわたる熱処理は、少なくとも部分的にはポリウレタンが溶解し始めるせいで、グラフトの密封反応を低下させることを示す。ポリマーYの熱処理に関して最善の密封反応(つまり流体損が最低量)は、ポリウレタンを70℃で4時間加熱した場合に生じた。熱処理は他のシーラント材料では異なり得ることが理解される。
【表2】
【0027】
シーラント層の密封反応は、ポリウレタンテレフタレート(ポリエステル)を含む粒子をシーラント材料に添加することによっても改善することができる。一実施例では、ポリエステルビードを粉砕して篩にかけ、約75ミクロン未満の仮想平均直径を有する粒子を生成した。本明細書で使用する「仮想平均直径」という用語は、(断面積Aが正方形か、長方形か、三角形などかに関係なく)粒子の知られている断面積Aで次の式を解くことによって生成される想像上の直径dを意味する。つまり、A=π*(d/2*d/2)である。次に、これらの粒子を、最初に例えばジメチルアセトアミド(DMSE)、ジメチルホルムアミド、またはテトラヒドロフラン(THF)を含む非プロトン性溶媒のような適切な溶媒に溶解させた上表1のポリマーXのようなポリマーに添加した。次に、ポリマービード溶液/分散物をePTFE基体に加え、グラフトを(例えば70℃で10分間)加熱して溶媒を除去した。追加のコーティングをePTFE基体に加えて、約50〜300ミクロンの厚さを達成し、真空中で(例えば70°で10〜16時間)グラフトを乾燥した。ポリエステル粒子を含まない対照グラフトと比較すると、実験のグラフトは凝固時間が短く、血液と接触したポリエステル表面が、透析後にシーラント反応を補助する止血を促進することを示す(これは恐らく、ポリエステルの高い血栓形成特性によるものである)。止血を促進するために粒子として使用可能な他の材料は、コラーゲン、トロンビン、フィブリノゲンなどを含むが、それに制限されない。
【0028】
シーラントの厚さはグラフトの密封反応に影響し、グラフトの特徴は、グラフトの密封反応の改善に関して上記で検討したプロセス/方法(つまり選択されるシーラントのタイプ、加熱プロセス、粒子の添加など)に加え、シーラントの厚さを変更することによっても操作できることも分かる。
【0029】
自己密封式ePTFEグラフト
本明細書で説明するような自己密封式グラフトは、共通に譲渡され、参照によりここで完全に述べられているかのように本明細書に組み込まれる、Kowligiらの米国特許第5,152,782号に記載されているように、自身上にシーラント層があるePTFE基体を含む。特に、当業者によって高有孔性グラフトまたは薄肉グラフトと分類されるePTFE基体を、シーラント層でコーティングし、標準的な肉厚でシーラント層があるグラフト、さらにシーラント層がない上述したタイプのグラフトと比較した。本明細書で使用する「高有孔性グラフト」という用語は、約30ミクロンから約100ミクロンの範囲のノード間距離(IND)を有するグラフトの意味である。本明細書で使用する「薄肉グラフト」という用語は、約500ミクロン未満の肉厚、より好ましくは約200ミクロンから約500ミクロンの範囲の厚さを有するグラフトの意味である。薄肉グラフトまたは高有孔性グラフト(またはその組合せ)であるePTFE基体を提供することにより、ePTFE基体の壁に十分浸透するようにその上に配置されたシーラント層(例えばポリウレタンなどのエラストマシーラント)は、針が抜かれた後に閉鎖反応を左右する傾向がある。
【0030】
以下の実験Aは、針がそこから抜かれた後の流体の損失に関して、標準的な肉厚で標準的な有孔性のグラフトに対する高有孔性または薄肉グラフトにより提供される利点を示すために実行された。試験したグラフトについては特定の厚さおよびINDを設けたが、本発明の範囲に入る追加の範囲が可能であることを認識されたい。同様に、特定のコーティング材料およびコーティング厚さを使用するが、所望の用途のために意図された特徴を最大限にし、所望に応じてグラフトの触診可能性を維持するために、グラフト上のコーティングのタイプおよびコーティングの厚さを変化させることが可能であることが、当業者には認識される。最後に、以下では噴霧コーティングプロセスについて述べているが、ePTFEグラフトにシーラント層をコーティングするには、例えば浸漬コーティング、射出成形、同時押出成形、ドレープコーティングなどの多くの方法があることが、当業者には認識される(しかし、(カフのような)複雑な形状のグラフトの場合は、現在のところ浸漬コーティングより噴霧コーティングが好ましいことが分かる)。したがって、以下に提供された実施例は、いかなる意味でも本発明の範囲を制限するものではない。
【0031】
実験A
それぞれが6cmの長さおよび6mmの直径を有する標準的肉厚(RW)のグラフトおよび薄肉(TW)グラフトとともに、高有孔性(HP)グラフトを用意した。ジメチルアセトアミド(DMAC)中にBioSpan(登録商標)の分割ポリウレタン(PolymerTechnology Group,Inc.から市販されている)の25%溶液を、DMACを使用して9〜12%の溶液に希釈した。ポリウレタン(PU)を含む希釈溶液を、選択したグラフトに噴霧コーティングした(つまりRWPU、TWPUおよびHPPU(表3参照))。コーティングしたグラフトを70℃の温度の炉の空気で約10分間加熱して、溶媒を除去した。追加のコーティングを加えて、最終的なコーティング厚さを達成した。次に、コーティングしたグラフトを70℃の温度のほぼ真空で約10〜16時間乾燥した。コーティングがない対照RW、TWおよびHPグラフトも用意した。
【表3】
【0032】
内部血圧をシミュレートする専門の装置を使用して、人工血管の自己密封特性を試験した。約40%のグリセリン/60%の水の混合物の1つのような流体、しかし好ましくは水を可撓性チューブ(直径が約6mmでプラスチック、好ましくはシリコーンで作成)に通して循環させ、流れループを作成した。流れループ内の圧力は、蠕動ポンプで維持された。溶液を約37℃に加熱し、約600ml/分、約1.9psiの圧力で循環させた。次に、人工血管を流れループに接続し、16ゲージの血管アクセス針を使用して穿刺した。針を抜いた後、穿刺部位からしみ出した流体を約2分間採取し、計量した。上記で列挙した各グラフトを試験して、流体損を記録し、その結果を表4に要約する。
【表4】
【0033】
コーティングしたグラフトは、コーティングしていない対照グラフトより流体損が大幅に少ないことが明白に分かる。コーティングしていないグラフトの高い流体損は、PTFE熱可塑性樹脂の非弾性の性質に帰される。針の穿刺は穿刺部位に可塑変形を引き起こし、流体が漏れることができる欠陥を残す。コーティングしたグラフトは、針で穿刺した後、自己密封性を実証する。この自己密封能力は、ePTFE外面にコーティングしたエラストマの弾性の性質に帰される。コーティングしたグラフトのうち、高有孔性グラフトおよび薄肉グラフトが、標準的肉厚のグラフトよりはるかに高い自己密封能力を示した。これは、穿刺部位の特性を左右する上でePTFE材料の寄与が少ないことに帰すことができる。本明細書では、いずれの数値に使用する「約」という用語も、好ましい実施形態がそれぞれ自己密封式生物学的植え込み器具として意図された目的のために機能することを可能にする適切な公差範囲を指すことに留意されたい。
【0034】
薄肉グラフトでは、ePTFEの厚さが薄いことにより、エラストマが穿刺したシーラント部位を占有することができる。その結果、密封がさらに効率的になり、したがって流体損が減少する。高有孔性グラフトでは、ePTFEの有孔性が高いので、これもエラストマがコーティング後に穿刺シーラント部位を占有することができ、グラフト表面の孔がエラストマ層で充填され、これが密封部位の特性を左右する。薄肉および/または高有孔性ePTFEグラフトのエラストマ層、特にポリウレタン層の最適厚さは、約10〜1500ミクロンの範囲であることが判明した。好ましい実施形態間の特定の関係が、これまで不可能であった利点を提供することが発見された。特に、ePTFE層の厚さがポリウレタン層の厚さより薄い場合に、グラフトの自己密封特性が強化されることが発見された。さらに、ePTFEの厚さがポリウレタン発泡体層(以下で検討)の約50%以下である場合、自己密封特性は甚だしく強化される。
【0035】
実験Aから得られた結果は、高有孔性ePTFEグラフトと薄肉ePTFEグラフト両方が、エラストマ層でコーティング後の密封特性に関して有利であることを示す。また、高有孔性コーティンググラフトは、薄肉および標準的肉厚のグラフトより触診可能性が高いことが分かった。したがって好ましい実施形態では、高有孔性グラフトまたは薄肉グラフトの基体を有し、基体がエラストマ材料の層でコーティングされた自己密封式ePTFEグラフトが提供される。別の好ましい実施形態では、自己密封式ePTFEグラフトのために、高有孔性と薄肉の組合せのePTFEグラフトにエラストマ材料のコーティングを設ける。
【0036】
別の好ましい実施形態では、二重グラフトが提供され、外部管状ePTFEグラフトが内部ePTFEグラフトの周囲に同軸で位置決めされる。これは多くの方法で遂行することができ、その1つは同時押出成形である。外部ePTFEグラフトは、自身上にエラストマのシーラント層がある薄肉グラフトまたは高有孔性グラフトでよい。内部ePTFEグラフトは、外部ePTFEグラフトに欠陥があった場合に、それを補足するために外部ePTFEグラフトとは異なる特性の任意のタイプのePTFEグラフト(例えば標準的肉厚のグラフト、薄肉グラフト、高有孔性グラフトなど)でよい。例えば、外部ePTFEグラフトが、シーラント層のある高有孔性ePTFEグラフトである場合は、これより低い有孔性を有する内部ePTFEグラフトを使用して、シーラントが血液収縮表面になるのを防止するバリアとして作用させる。また、有孔性が低いグラフトが標準的な臨床グラフトであるので、グラフトの表面積および微細構造を維持しながら、グラフトの外側を密封するという利点を達成することができる。高有孔性の外部ePTFEグラフトとこれより低い有孔性の内部グラフトとの組合せは、1回の押出成形で、高有孔性の内部ePTFEグラフトとこれより低い有孔性の外部ePTFEグラフトとの二重グラフトを作成し、二重グラフトを反転させることによって実験で達成したことは注目に値する。あるいは、反転しない1回の押出成形を使用することができる。
【0037】
1つの実施形態では、高有孔性グラフトを最初に、典型的な有孔性を有する標準的グラフトの内部に同心状に位置決めする二重有孔性グラフトが作成される。グラフトの一区間を切断し、始めは標準的グラフトであったグラフトの非内腔表面がグラフトの内腔表面になる、およびその逆になるように反転させる。反転したグラフトは、非内腔表面として高有孔性グラフトを有しており、上述したようにポリウレタンで(非内腔表面を)コーティングされる。さらに別の好ましい実施形態では、約260ミクロンの厚さで、約100ミクロンのポリウレタンシーラント層、約700ミクロンのポリウレタン発泡体層、および約20ミクロンから約150ミクロンの外部ePTFEラップがあるグラフトが提供される。この実施形態の流体損は、上記で検討した試験装置を使用して測定し、約73グラム以下である。
【0038】
補足的研究を実行して、グラフト端部の順応性を調べるために縫合穴の出血を試験した。使用したePTFEグラフトは、グラフトの端部で肉厚が薄くなる(200ミクロン)ことを特徴とした。約40%のグリセリン/60%の水の混合物を約600ml/分で約2.2〜2.5psiの内圧および約37℃の液体温度で給送する流れループに内に、グラフトを設置した。6番手のプロピレン縫合糸を使用して、穴から糸を抜いた状態で3つの穿刺部を生成した。流体損をトレイ内に合計2分間採取した。次に、天秤を使用して流体損を測定した。対照グラフトは裸のePTFEグラフト(シーラントなしで同じ厚さ)であった。対照グラフトは、2分間の試験期間中に穴1個につき約2グラムの流体を失い、シーラントがあり、合計肉厚が約300ミクロンの実験グラフトは、同じ期間中に穴1個につき約0.13グラムしか失わなかった。
【0039】
ePTFE AVグラフト
シーラントでコーティングしたePTFEグラフトの以上の実施例は、有利な自己密封特性に関して検討している。しかし、ePTFE基体上にシーラント層を使用することは、グラフトの捩れ抵抗を大幅に低下させるという欠点を有することがある。したがって、上述した実施形態は、グラフトを曲げる必要がないような方法でePTFEAVグラフトを植え込む場合に好ましい。(図1Aおよび図1Bの実施例で示すように)植え込むためにePTFEAVグラフトを曲げる必要がある場合、グラフトに捩れ抵抗を与えるために追加の処理ステップが必要となることがある。
【0040】
コーティングしたePTFEグラフトの捩れ抵抗を向上させ、グラフトに長手方向のコンプライアンスも与える処理ステップの第1の実施例は、共通に譲渡され、参照によりここで完全に述べられているかのように本明細書に組み込まれるDellaCornaらの米国特許第4,995,899号に図示され、記載されているように、シーラントでePTFEグラフトをコーティングするステップの前に、ePTFEグラフトを長手方向に圧縮するステップである。ePTFEグラフトの圧縮は、例えばePTFEグラフトを円筒形の心棒に被せ、その縦軸に沿って圧縮力を加えることによって達成することができる。コーティング前にePTFEグラフトを圧縮すると、曲げ部の外径でグラフトが伸延し、曲げ部の内径で圧縮できるようにすることにより、捩れ抵抗を向上させるよう作用する。ePTFEAVグラフトの場合、シーラント層でコーティングする前にePTFEグラフトを長手方向に圧縮させることは、通常、さらなる処理ステップを実行しても、しなくても使用される。
【0041】
ここで、エラストマ材料の層でグラフトをコーティングする前にePTFEグラフト基体を半径方向に膨張させることにより、半径方向のコンプライアンスをePTFEグラフトに与えられることが発見されたことにも留意されたい。好ましい実施形態では、エラストマ材料の層をePTFE基体に加える前に、基体を、基体の元の直径の約1.5倍から約5倍の範囲の膨張直径へと膨張させる。別の好ましい実施形態では、エラストマ材料の層をePTFE基体に加える前に、基体を、基体の元の直径の約4倍から約5倍の範囲の膨張直径へと膨張させる。(エラストマ材料を加えた後に)半径方向の内力を除去し、グラフトを加熱すると、ePTFEコーティンググラフトが、ほぼ元のその直径へと戻る。その後に内力を加え、それを除去すると、ePTFEグラフトは、半径方向のコンプライアンスが与えられ、自然の血管を模倣するように戻る。
【0042】
コーティングしたePTFEグラフトの捩れ抵抗を向上させる処理ステップの第2の実施例は、グラフトの外面にビードを巻き付けるステップである。ビードが配置されるコーティング済みePTFEグラフトの仕様(例えばグラフトの材料特性、グラフトの寸法、シーラントの材料特性、シーラント層の寸法、グラフトの意図された用途、グラフトの意図された配置位置など)に応じて、幾つかのビードのパラメータが可能である。例えば、ビードの厚さ、ビード材料のタイプ、ビードの硬度、ビードの巻きの間隔、ビードの断面形状、およびビードの巻き角度は全て、ePTFEAVグラフトの意図された性能、特にその捩れ抵抗を達成するために変更することができる。さらに、放射線不透過性顔料をビードに組み入れて、X線コントラストのために放射線不透過性を提供することができる。ビードに組み入れられる放射線不透過性材料の実施例は、硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、タングステン、タンタルなどを含むが、それに制限されない。1つの実施形態では、ビードは、放射線不透過性を呈する金属材料を含む。以下に要約された実験Bでは、許容可能な捩れ抵抗を求めて様々なビードのパラメータを試験した。
【0043】
実験B
6mmのePTFEグラフトを用意した。約12グラムのCarbothanePC−3585Aを約88グラムのジメチルアセトアミド(DMAC)に溶解させ、約12%の溶液を準備した。次に、グラフトを最初に長手方向に圧縮した後、ノズル穴の直径が約1mm未満のBinksモデル2001噴霧ガンを使用して、ポリマー溶液をグラフトの外面に噴霧コーティングした。溶媒は、コーティングしたグラフトを約70℃の温度の炉の空気で約10分間加熱して除去した。追加のコーティングを加えて、約50〜300ミクロンの厚さを有するコーティングを実現した。コーティングしたグラフトは、約70℃のほぼ真空で約1〜16時間乾燥した。次に、コーティングしたグラフトのシーラント外面にDMAC(例えばポリウレタンシーラント)を噴霧して、ポリマーコートを軟化した。ここで、外部シーラント層にシリコーン系シーラントを使用する場合は、Pキシレンなどの材料を使用してシーラント層を軟化できることに言及しておく。
【0044】
次に、半径方向に支持するために、ビードをグラフトに螺旋状に巻き付ける。例えば金属(例えば超弾性金属、形状記憶材料、ステンレス鋼など)、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、PTFE、ePTFEなどの様々な材料のビードを用意できるが、この実験に使用するビード材料はePTFE、ニチノール(登録商標)およびポリエステルであった。溶媒を完全に除去した後に、ビードがシーラントに付着し、部分的にシーラント層に埋め込まれた。溶媒または接着剤を使用しない単純な処理ステップ(例えば熱、圧力など)でグラフトにビードを最適に付着させるために、ビードを螺旋状に巻き付けるグラフトの部分は、接触するビードと同じ材料または同様の材料を有することに留意されたい。したがって、ビードを施すべき区間がポリウレタンのシーラントでコーティングされている場合、ビードは同様のポリウレタン材料を含んでいなければならない。同様に、ビードを施す区間がコーティングされていない(つまり接触表面がePTFEである)場合、ビードはePTFEを含んでいなければならない。
【0045】
実験計画(DOE)は、上記の方法により作成されるようなビード付きのePTFEコーティンググラフトの捩れ抵抗の反応を検査するために、市販のソフトウェア(例えばDesignExpert Software)を使用して実行し、解析した。2つの要素を検査した。ビードの間隔(3レベル)およびビードの材料/サイズ(5レベル)である。間隔レベルは0.5mm、1.5mmおよび2.5mmであった。材料/サイズのレベルは、ePTFEIMPRA(登録商標)標準ビード(約0.700mm)、ePTFE IMPRA(登録商標)小型ビード(約0.400mm)、ニチノール(登録商標)線(約0.380mm)、ePTFE Davol(登録商標)ビード(約0.260mm)、およびポリエステルビード(約0.200mm)であった。DOEは、応答局面計画を使用した15回(3×5)で構成された。捩れ半径は1応答で、以下の方法を使用して測定された。一連の異なるサイズ(直径)の心棒および/または円盤を使用して、捩れが発生する前にグラフトを曲げられる半径(インチ)を測定した。心棒のセットは、1インチの厚さおよび1〜8インチの範囲の直径を有する。実験グラフトは、約6インチの長さに切断された。実験グラフトの端部を手で保持し、心棒の壁(傾斜表面)へと長手方向にゆっくり導入する。グラフトは、最大直径から始まって最小直径へと進む状態で、各サイズの心棒に連続して導入する。サンプルに捩れ反応を生じる最初の心棒を記録する。心棒直径を、グラフトの捩れ半径として記録する。
【0046】
この方法を使用して、値を記録し、ソフトウェアに入力する。応答は約0.5インチから約3.5インチの範囲であった。統計モデルは、応答表面線形分析について有意であった(p=0.004)。間隔(ファクタA、P=0.0146)および材料/サイズ(ファクタB、p=0.0055)は有意なモデル項であった。傾斜は、間隔が捩れ半径に対して増加しても、複数のビードタイプで同じであった。これは、間隔が小さいほど捩れ抵抗が良好であることを示した。最も優れた性能の材料/サイズはニチノール(登録商標)(約0.380mm)およびePTFEIMPRA(登録商標)標準ビード(約0.700mm)で、各間隔レベルで同一の応答であった。残りの3つの材料/サイズレベルは、以下の順序で望ましさが低下した。ePTFEIMPRA(登録商標)小型ビード(約0.400mm)、ePTFE Davol(登録商標)ビード(約0.260mm)、およびポリエステルビード(約0.200mm)である。結果は、硬度および大きい直径が捩れ抵抗に重要な役割を果たすことを示すようである。他のビードのタイプは、3つの異なるサイズであるが、硬度に関しては2つの類似した材料(ePTFEおよびポリエステル)で、直径が減少するにつれ増加する捩れを表すような性能であった。ソフトウェアのモデリングを使用し、間隔を約0.1mmへとさらに小さくすることにより、ニチノールとePTFEIMPRA(登録商標)標準ビードの両方が、約0.33インチというさらに優れた捩れ半径を提供できることが示された。ここで、さらなる試験によると、約72ショアDより大きい硬度のポリウレタンエラストマのビードは、優れた捩れ抵抗を呈し、エラストマのシーラント層に容易に接合できることが判明したことに言及しておく。ポリウレタン材料に充填材料を添加することによって、捩れ抵抗を改善できることにも言及しておく。さらに、ビードをグラフトに巻き付けながら、ビードに張力を加えることは、少なくともビードの間隔と同様に重要であると考えられる。
【0047】
コーティングしたePTFEグラフトの捩れ抵抗を向上させる処理ステップの第3の実施例は、シーラント材料をグラフト表面に選択的に配置するステップである。このような選択的配置は、コーティングしたePTFEグラフトの長さの少なくとも一部にわたって、間隔をあけてシーラント材料に分割したレーザアブレーションまたは他の方法で溝を付けることによって達成することができる。溝付けは、CO2レーザまたはシーラント層を通してePTFE基体まで正確な溝を切削できる他の装置を使用して達成することができる。溝は、任意の角度または深さでシーラント層に切り込むことができ、任意の長さで隔置することができる。さらに、溝の角度および/または溝間の長さは、選択された長さに沿って変更することができる。処理ステップとしてコーティングしたePTFEグラフトに溝を付けることは、単独で、または前述した処理ステップおよび/またはコーティングされたePTFEグラフトの捩れ抵抗を向上させる、本明細書で特に言及していない任意の処理ステップとの組合せで使用することができる。また、コーティングしたePTFEグラフトの選択された長さのみに溝を付けることができる(例えば植え込み後にグラフトが曲げられる、コーティング済みePTFEグラフトの中央部分)。以下に要約された実験Cでは、コーティングしたePTFEグラフトで溝付け処理ステップを実行し、溝付きグラフトを捩れ抵抗について試験した。
【0048】
実験C
ポリマーでコーティングしたePTFEグラフトを心棒に被せ、自動回転取付具に配置した2つのチャック間に固定する。CO2レーザとインタフェースをとり、レーザビームを走査して、任意の表面上に図形をエッチングするソフトウェアを使用して、図形を設計した。レーザパラメータを設定し、開始シーケンスを起動すると、レーザがコーティングしたePTFEグラフトのシーラント層に溝を切り込む。レーザビームは、シーラント層に溝のみが生成されるように調節され、したがってePTFEの表面はレーザに影響されない。数タイプの溝を切り込み、捩れ抵抗を評価した。この実験の結果は、溝の間隔を最小限に抑え(つまり約1mmから約5mmの範囲)、かつ/またはシーラント層の表面を通る溝の角度が、グラフトの軸に対して約80〜90°の範囲である(つまり、それに対してほぼ垂直である)場合に、最善の捩れ抵抗になるようであった。
【0049】
コーティングしたePTFEグラフトの捩れ抵抗を向上させる処理ステップの第4の実施例は、発泡体層をコーティングしたePTFEグラフトに載せるステップである。発泡体はポリマー材料を含むことができ、コーティングしたePTFEグラフト(単独で、また組み合わせて上述の処理ステップのいずれかを経験していてもよい)の外面に配置してよい。コーティングしたePTFEグラフトの外面にポリマー発泡体を配置するには多くの方法があることが当業者には認識されるはずであるが、本明細書では、以下のような3つの実施例を提供する(使用する材料の例示的な量を含む)。
1)約16グラムのBionateポリウレタンを約84グラムのジメチルアセトアミドに溶解し、コーティングしたePTFEグラフトの表面にこの溶液を噴霧コーティングし、その後にグラフト全体を即座に約30分、(室温で)水に浸漬するか、入れ、次に約40°の水温に約16時間配置する。析出したポリウレタン発泡体は、その後約24時間、空気乾燥する。
2)塩浸出技術では、乳鉢と乳棒を使用して塩化ナトリウムを粉砕し、300メッシュ(75ミクロン)の篩を使用して篩い分ける。約2.5グラムのBionateポリウレタン、約10グラムのジメチルアセトアミドおよび約7.5グラムの塩化ナトリウムを250mlのプラスチックビーカ内で混合する。ポリマーの完全な溶解が達成されるまで、溶液を攪拌する。次に、ポリマー溶液と塩の分散物をグラフトの表面に噴霧コーティングする。乾燥により溶媒を除去し、塩はグラフトを湯(約60℃)に約16時間浸漬するか入れて除去する。
3)約12グラムのテトラヒドロフラン(THF)および約88グラムのCarbothaneポリウレタンを混合し、透明な溶液が獲得されるまで攪拌する。標準的な噴霧装置を使用して、混合物をグラフト表面に噴霧する。噴霧中にTHFが蒸発し、グラフト表面の周囲に巻き付いたポリウレタンの紐または細長いポリウレタン粒子が残り、その結果、グラフトの周囲には有孔性発泡体状の基体が生じる。
【0050】
前述した技術に関して、下にあるePTFE基体に付着させるポリマー発泡体を生成するために、他のポリマーおよび化合物も同等に効果的であることを認識されたい。例えば、塩浸出技術の別の実施例では、ポリマーが溶液に溶解し(しかし塩ではない)、ポリマー溶液を生成するように、シリコーンまたはウレタンのようなポリマーを細かく粉砕した塩化ナトリウムなどの塩、炭酸水素アンモニウムおよび/または炭酸アンモニウムと組み合わせることができる。次に、この溶液を基体(最初にポリマーのベース層でコーティングしてあってよい)に噴霧またはコーティングして、塩およびポリマーの母材を生成することができる。さらなる処理は、塩の細粒が溶解したポリマー母材に孔が形成されるように、ポリマー溶媒を蒸発できるようにし、水浸出によって塩を除去することを含む。重炭酸アンモニウムおよび/または炭酸アンモニウムを使用する場合は、約30℃の空気温度に設定された炉内で単純にグラフトをゆっくりと加熱することにより、水なしでこれらの塩を除去することができる。
【0051】
捩れ抵抗を提供すること以外に、外部発泡体層を有することの主な利点は、グラフトの密封反応が向上することであるが、さらなる利点は、グラフトに好ましい「感触」を提供することであり、これは発泡体が配置されるグラフトの構成に関係なく(つまり以上の処理ステップを幾つ採用しているかに関係なく)真実である。特に、溝切りを実行してコーティングしたePTFEグラフトに関して、発泡体は溝付き区間に入り、これらの区間の密封および流体損の障害の補助、さらに(細菌汚染の可能性がある溝内の血液蓄積を防止することにより)感染抵抗性を提供する。
【0052】
上記の処理ステップを使用して作成したコーティングしたePTFEグラフトは、単独または組み合わせて、ePTFEテープなどの有孔性材料の外層を巻き付けることにより、ePTFEAVグラフトとして使用するためにさらに準備することができる。外部ラップを追加すると、ePTFEAVグラフトへの組織の内殖を強化して、体組織内へグラフトを係留し、ポリウレタン層への組織流体の曝露を減少させるとも考えられる。外部ラップの厚さおよび密度は、捩れ抵抗および取り扱い性が悪影響を受けないように選択することができる。下にあるポリウレタンなどのPTFE以外の材料にePTFEテープを接着することに関しては、THFのような溶媒の付随使用は、ePTFEテープを下にある材料に付着させる作用があることが発見されている。THFまたは他の溶媒は、テープをグラフトに適用した(つまり螺旋状に巻き付けた)後に噴霧するか、巻き付ける前にテープを溶媒に浸漬することによってePTFEテープに適用することができる。
【0053】
好ましい実施形態では、ePTFEテープは、最初に溶媒配置装置の上、またはその中を通した後に、ポリウレタンなどのシーラント層に巻き付ける。例えば、ePTFEテープをプーリシステム上のスプールから供給しながら、心棒上のグラフトを回転することができ、ePTFEテープは、心棒とプーリシステムの間に配置された配置装置の上を通過する。配置装置は様々な構成にすることができるが、1つの実施形態では、配置すべき溶媒を含む容器に接続された1つまたは複数の口、スリットまたは他の開口がある加圧された管、圧力制御装置および調整器である。配置管の開口の上にはスポンジ、または手順が開始したら溶媒で飽和する同様の機能の品が配置される。ePTFEテープがプーリシステムのスプールから心棒上のグラフトへと供給されると、それは配置管のスポンジ上を通過し、したがって等量の溶媒がePTFEテープに加えられる。
【0054】
表5は、標準的な薄肉ePTFEグラフトを、上記の処理ステップの1つまたは複数を有するePTFEグラフトと比較した場合の捩れ抵抗および流体損に関して得られた結果を示す。シーラント層を有するこれらのグラフトに使用されたシーラントは、約300ミクロンの厚さを有するCarbothanePC−2585Aであった。溝付けは、グラフトに対して約90°の角度でCO2レーザを使用し、約2mmの間隔で実行した。ラップは、約0.096mmの厚さおよび約6mmの幅を有するePTFEテープであった。
【表5】
【0055】
表5の結果は、上述した処理ステップの組合せを使用して準備したePTFEAVグラフト、つまり発泡体層および外部ラップがある溝付きシーラント層は、上述した処理ステップのいずれもないコーティングしたePTFEグラフトと比較して、ほぼ最適な密封レベルを維持しながら、はるかに優れた捩れ抵抗を提供することを示す。
【0056】
実験D
上記で特定した処理ステップの組合せは、ポリマーの弾性能力および/または形状記憶能力を向上させることができる。特に、本発明の1つの実施形態では、長手方向および/または半径方向の圧縮を通じてポリマーの自己密封特性を向上させることができる。というのは、ポリウレタン層は、(例えば挿入した針をそこから抜くなどの)応力の後に、元の形状へとより迅速に回復するからである。さらに、異なる半径方向のゾーンがあるePTFEAVグラフトを作成するために本明細書に記載された処理ステップは、半径方向の各ゾーンのように、グラフトの長さに沿って異なる長手方向ゾーンを作成するためにも使用することができ、長手方向の各ゾーンは、特定の1つまたは複数の特徴(例えば縫合保持強度、自己密封特性、捩れ抵抗など)を呈するように最適に準備されることを理解されたい。
【0057】
実験Dでは、約28グラムのポリウレタンを約372グラムのTHFに溶解させ、その結果の溶液を(約1mm未満のノズル孔径のBinks(登録商標)モデル2001スプレーガンを使用して)約2インチの距離で、回転取付具上で回転するePTFE基体の表面に噴霧した。グラフトの合計肉厚が約50ミクロンになるまで、この第1層を加える。次に、スプレーガンをグラフトから約30インチの距離まで離し、溶液を再びグラフトの回転表面に噴霧したが、この距離は、グラフト表面に到達する前に発泡体構造をポリウレタンに与える。結果のグラフト肉厚が約1mmになるまで、ポリウレタン発泡体を追加した。次に、グラフトを約100℃の空気温度に設定した炉に約2時間入れた。次にグラフトを長手方向に圧縮して、元の長さの約80%にした(例えば元の長さが10インチのグラフトを8インチに圧縮した)。圧縮しながら、上記で検討したようなポリウレタンビードを、約2.5mmから約3.5mmのビード間隔で発泡体層に螺旋状に巻き付けた。次に、ポリウレタン発泡体の別の層をビード上に適用し、ePTFEテープの外部ラップがそれに続き、これはグラフトの外径を約1.9mmから約1.2mmに減少させるために圧縮しながら適用した。結果の生成物を、約100℃の空気温度に設定した炉に約1時間入れて、硬化させた。硬化ステップの後、試験するためにグラフトを4つの等しい部分に切断した。
【0058】
実験Dのグラフトを、同様に作成した2つの異なるセットのグラフトと比較した。ただし、1セットのグラフトは長手方向に圧縮されておらず(しかし半径方向には圧縮されている)、第2セットは長手方向にも半径方向にも圧縮されていない。グラフトを、約1psiから約2psiの内圧の水流ループおよび約600ml/分の流体流を備えたカニューレ挿入取付具に取り付けた。14ゲージの針を各グラフトの壁に通して挿入し、所定の位置に1時間、2時間、3時間または4時間の滞在時間にわたって維持した。同様の滞在時間では、非圧縮セットのグラフトの平均流体損は、半径方向に圧縮したセットのグラフトのそれより大きく、これは実験Dのグラフトのそれより大きく、これは記載された方法で長手方向と半径方向の両方に圧縮すると、ポリウレタン層に向上した自己密封特性を与えることを示す。
【0059】
図2から図9は、上記で特定した処理ステップのうち1つまたは複数を含むコーティングしたePTFEグラフトの図である。図2は、中央部分16に通じるが中央部分16を含まない長さの部分にわたってポリウレタンコーティング14を有するePTFE基体12を示し、中央部分は、自身上に配置されて螺旋状に巻き付けられたPTFEビード18を有する。図3は、図2のePTFEグラフト上のポリマー発泡体層22を示し、図4は、図3の発泡体層22の周囲に螺旋状に巻き付けてePTFEAVグラフト26を生成するePTFEテープ層24の外部ラップを示す。図5は、ループ構成(つまり中央部分16に沿って曲げられた)図4のグラフト26を示し、非常に小さい半径で優れた捩れ抵抗を呈する。図6は、その全長にわたってポリウレタンコーティングを有するePTFE基体を含むグラフト28を示し、コーティングは、グラフトの縦軸に対してほぼ垂直の角度で切り込まれた溝32を有する。グラフト28は、その長さに沿って長手方向に延在する1対の平行方向配向線も有する。図7は、ループ構成の図6のグラフト28を示し、溝32によって提供される捩れ抵抗を実際に示す。図8は、グラフト28と類似しているが、中央部分42にシーラント層がなく、代わりに(図2のように)螺旋状に巻き付けたPTFEビード18を含むグラフト38を示す。図9は、ループ構成の発泡体層44があるグラフト38を示し、これも非常に小さい半径で優れた捩れ抵抗を示す。
【0060】
図10は、本明細に記載されたようなePTFE AVグラフトの様々な材料の層を示す。図10の層の配置は、様々なタイプの層を例示するものであり、相互に対する層の順番を必ずしも反映するものではないことを認識されたい。ePTFE管状基体10は、上記で検討したような薄肉グラフトまたは高有孔性グラフトを含んでよく、ポリウレタンのベースコート20で囲まれる。このベースコート20は、1つの実施形態ではePTFE基体10の全長にわたって配置され、ポリウレタンのような材料で作成してよい。ベースコートの一部はグラフトの壁に浸透する。シーラント層30はベースコート20上に配置され、これもポリウレタン(または上記で検討したように他のタイプの材料)で作成してよく、グラフトの肉厚、シーラントのタイプなどの様々な要素に依存する厚さを有する。しかし、一般的にシーラント層およびベースコートの厚さは、約10〜400ミクロンの範囲であり、好ましくはベースコート20は約20ミクロンから約40ミクロンであり、シーラント層およびベースコートは合計約100ミクロンである。シーラント層30は、グラフトの全長にわたって配置してよいが、1つの実施形態ではグラフトの端部にもグラフトの中央部分にも配置されない。上記で検討したように、シーラント層30は、グラフトの選択された長さに沿って溝を切り、捩れ抵抗を補助することができる。シーラント層30上には発泡体層40が配置され、その後にビード層50、別の発泡体60および外部ラップ層70がある。
【0061】
図11から図14は、ePTFE AVグラフトの他の好ましい実施形態の実施例を示し、それぞれが図10で説明した層の一部または全部を組み込む。図11は、ePTFEAVグラフト100の断面図であり、ePTFE基体10がその長さに沿ってベース層20でコーティングされる。ベース層20の頂部には、軸方向に隔置された位置にシーラント層30があり、発泡体層40がシーラント層30上に配置されて、したがって発泡体層40は、シーラント層30が実質的に欠けている区域でベース層20と接触する。発泡体層40上には、ビードがグラフト100の中央部分の周囲で螺旋状になってビード層50を生成し、別の発泡体層60が加えられる。発泡体層60の周囲には、(上記で検討したような)ePTFEテープなどの材料を巻き付けることによってラップ層70が配置され、これは螺旋状に巻き付けることができる。図12は、ePTFEAVグラフト200の断面図であり、これはePTFE AVグラフト100と類似しているが、違いはシーラント層30にギャップが存在する位置にビードが配置される(つまり、ビードが、シーラント30を含むグラフト200の長さと重ならない)ように、ビード層50が、グラフト200の中央部分の隔置された長さで螺旋状になったビードを含むことである。この実施形態の1つの利点は、まさに吻合部までグラフトの捩れ抵抗を保持しながら、吻合部でグラフト端部を縫合可能にするために、外科医がグラフトのビードの一方端から任意の所望の長さまでほどくことができる能力である。
【0062】
図13は、ePTFE基体10上にベース層20を有するePTFE AVグラフト300の断面図である。この実施形態では、ベース層20上に配置されたシーラント層30が、グラフト300の中央部分に沿って連続的であり、「V」字形溝付き区間32がベース層20に切り込まれている。図示のように、溝付き区間32は、3つの小さい間隔とその後の1つの長い間隔で隔置されている。しかし、このような間隔は、グラフト300の所望の可撓性および捩れ抵抗を達成するために、多くの異なる方法でパターン化することができる。発泡体層40をシーラント層30上に配置し、ラップ層70がそれに続く。図14は、図13のそれと類似したシーラント層30を有するが、グラフト300の中央部分にあるシーラント30の長い間隔の代わりに、グラフト400の中央部分にビード層50が配置されたePTFEAVグラフトの断面図である。
【0063】
上述したグラフトはまた、それぞれ、その外面に沿って1つまたは複数の長手方向配向線(例えば1つまたは複数の青い縞)を組み入れて、植え込み中の適切な位置合わせ(捩れがないこと)を保証できることを認識されたい。1本または複数の配向線は、製造中に(例えば非均質な特徴のグラフトを回避するために)回転する心棒などに装着する場合にグラフトが捩れていないことを保証することにも役立てることができる。例えば、本明細書で検討する自己密封式人工血管のePTFE基体は、1本または複数の着色した(例えば黒、青などの)線を付けて製造することができ、したがって(例えば自己密封式人工血管を構築する際のさらなる処理ステップで)基体が配置される心棒の線を位置合わせすると、グラフトが捩れていないことが製造業者に視覚的に確認される。1本または複数の配向線は、標準的な同時押出成形プロセスを使用して、基体に組み入れることができる。好ましい1本または複数の配向線は、黒、青または緑の生体適合性顔料または染料から作成される。最も好ましい色は青である。自己密封式人工血管の外面に組み入れられる1本または複数の配向線に関して、印刷プロセスを実行することができる。グラフトの基体または外面の1本または複数の線は、グラフトの中心を示すか、グラフトの様々な領域(カニューレ挿入領域など)を示す実線、点線またはその組合せでよい。1本または複数の線ではなく、英数字の識別子または線と英数字識別子の組合せをePTFE表面に印刷するか、他の方法で配置することができる。
【0064】
自己密封式人工血管の外面がePTFEを含む場合は、ePTFE表面に1本または複数の線が確実に付着するように、特殊なインク組成が必要である。1つの実施形態では、ePTFE表面の配向線のインク組成は、ePTFE表面に良好に付着する適切なポリマー結合剤、生体適合性染料または顔料、およびポリマー結合剤を溶解する溶媒を含む。また、インク組成は、(インクの影を調節する)二酸化チタンのような白い無機固体材料および粘度調製剤を含んでよい。配向線の作成には多くの顔料または染料を使用してよいが、人間への植え込みに長い歴史を有する顔料または染料が最も好ましい。インクの好ましい色成分は、フタロシアニナート(2−)銅、D&Cの青9号、D&Cの緑5号、クロロフィリン銅複合体、油溶性物質、クロムコバルトアルミニウム酸化物、クエン酸第二鉄アンモニウム、D&Cの青5号、FD&Cの青2号、D&Cの緑6号、二酸化チタン、炭素、酸化鉄などを含むが、それに制限されない。フタロシアニナート(2−)銅が最も好ましい青の成分である。インクの色(例えば黒、青など)は、約6500°Kの温度を有する光で見て判断してよい。
【0065】
実験E
ePTFE AVグラフトの2つの好ましい実施形態を、予備的な非臨床生体内研究で評価した。グラフトは4匹のヒツジで評価し、各動物に対照グラフトおよび実験グラフトを植え込んだ。対照グラフトは、例えば参照によりここで完全に述べられているかのように本明細書に組み込まれるRobinsonの米国特許第4,604,762号で記載されているように複数の層を有するポリウレタングラフトであった。実験グラフトA−1およびA−2は、本明細書で記載されたようなePTFEAVグラフトであり、その少なくとも一部の特定の構成は、図15に示したものと同様に(外部ラップ層70がない状態で)図示されている。実験グラフトB−1およびB−2は、本明細書で記載されたようなePTFEAVグラフトであり、その少なくとも一部の特定の構成が、(外部ラップ層70のある状態で)図15に図示されている。全ての実験グラフトは、左大腿動脈および静脈に植え込んだ。全ての対照グラフトは、反対側の右大腿動脈および静脈に植え込んだ。
【0066】
動物に麻酔をかけた後、適切な外科技術を使用して、左右の大腿動脈および静脈を外科的に切り離した。次に各グラフトで個々の鼠径領域にループ状にトンネルを通した。動物は、全身にヘパリンを投与し、グラフトは6−0プロレン縫合糸を使用して端部から側部への方法で吻合した。吻合の完了時に血管クランプを外した。両方のグラフト処置の後、16GA透析針を実験グラフトの壁に5分間刺した。次に針を抜き、血液損および止血時間を測定した。次に、透析針の穿刺処置を対照グラフトで実行し、測定値をとった。所望の測定値を記録した後、標準的な方法で切開部を閉じ、動物を麻酔から回復させた。
【0067】
動物に14日間アスピリンを投与した(81mg/日)。7日目にグラフトを(当業者に理解されるような)触診可能な脈拍について評価した。13日目に、動物に麻酔をかけ、皮膚を通して透析針穿刺試験を繰り返し、両方のグラフトで血管造影法を実行した。次に、動物を安楽死させ、グラフトを10%のホルマリンで(生体内)潅流固定し、組織評価のために外殖した。非内腔組織内殖に関する観察を外殖片で実行し、実験グラフトA−1およびA−2にはラップがなく、外部ePTFE層には、組織内殖があっても、非常に少ないことが分かった。(止血までの)カニューレ挿入時間および血液損が、次ページの表6に提示されている。実験グラフトの平均値は対照標準のそれより低かったが、n=6について外殖前の血液損(p=0.7403)に統計学的差はなかった。
【0068】
表6で見られるように、実験グラフトの方が、対照グラフトと比較すると、内殖および外殖処置の両方でカニューレ挿入時間が非常に短く、外殖処置では同様の血液損も達成した。これは、AVグラフトに使用するためにポリウレタン(PU)上のePTFEによって得られる多くの利点があるので非常に重大であり、これは、1)ePTFEは、血液導管として優れた働きをした25年の臨床歴史を有するが、これと比較して米国ではPUの臨床歴史は3年であり、2)ePTFEはPUより優れた劣化抵抗を提供し、3)ePTFEはPUより優れた捩れ抵抗を提供し、4)ePTFEは摩擦係数が低いので、PUより血栓摘出(グラフトから血栓を引き出すこと)が容易であり、5)ePTFEグラフトは外装なしでトンネルを通すことができるが、PUグラフトは、PUの高い摩擦係数のせいで外装とともに使用しなければならないことである。
【表6】
【0069】
次に、提供された説明により作成されたePTFE AVグラフトの1つの好ましい実施例について説明する。炭素で裏打ちした内面があるePTFE基体を、(これも炭素で作成された)配向線とともに押出成形し、最終的なノード間距離(IND)が約10ミクロンから約40ミクロンで、肉厚が約200ミクロンから約300ミクロン、好ましくは約260ミクロンになるように、長手方向に拡張する。ePTFE基体を心棒(例えば約6.3mmの直径を有する)上に位置決めし、ポリカーボネートポリウレタンを2工程適用しながら心棒を回転する。ポリウレタンは、ノズル孔の直径が約1mm未満のBinksモデル2001スプレーガンを使用して適用し、ポリウレタンをスプレーガンのノズルから噴霧すると、ポリウレタンおよびTHFなどの溶媒が(非酸化剤タイプの阻害剤とともに)スプレーガンの頂部から加圧され、周囲空気と混合する(しかし、1つの実施形態では、空気の代わりに窒素を使用する)。ポリウレタンを基体に噴霧する間、スプレーガンは、約2インチから約15インチ、好ましくは約3インチ未満だけePTFE基体から隔置する。第1工程では、心棒を約150rpmから約260rpmで回転し、第2工程では心棒を約350rpmから約675rpm、好ましくは約435rpmで回転する。これは、グラフト上にシーラント層またはコーティングを形成し、好ましくは約100ミクロンの厚さを有する。
【0070】
所望の粘度が達成されるまで、最初に上述したように溶媒に溶解される第1工程のポリウレタン(ポリウレタン紐の長さは粘度とともに変化し、粘度が高いと紐が長くなる)を、約20ミクロンから約40ミクロンの厚さを有するポリウレタンのベースコートが適用されるまで、基体の外壁に適用する(一部のポリウレタンは外壁に浸透する)。状況によっては、ポリカーボネートポリウレタンのようなポリウレタンは、溶媒中で溶解するために最初に加熱しなければならないことに留意されたい。次に、その結果の構造(基体および第1工程のポリウレタン)を(例えば手で)長手方向に圧縮して、第2工程を適用し、ここでポリウレタンシーラント層の合計厚さが約100ミクロンになるまで(レーザマイクロメータを使用して、厚さを検証する)、追加のポリウレタンのコーティングを同じ方法で(しかし心棒をさらに高速で回転して)基体およびポリウレタンのベースコートに適用する。
【0071】
次に、ポリウレタン発泡体層を、約700ミクロンの厚さを有するポリウレタンシーラント層上に適用し、したがって発泡体層を適用した後のグラフト構造の合計肉厚は約1mmから約1.1mmになる。好ましい実施形態では、発泡体層はePTFE基体の厚さと等しい厚さを有するか、さらに好ましい実施形態では、発泡体層はePTFE基体の厚さの2倍の厚さを有し、最も好ましい実施形態では、発泡体層はePTFE基体の厚さの2倍より大きい厚さを有する。発泡体層は、ポリカーボネートポリウレタンをシーラント層上に約12〜20インチの距離、好ましくは約15インチの距離で噴霧することによって適用される。発泡体層を適用した後、グラフト構造を約50℃から約70℃の空気温度に設定した炉に約1時間から約24時間、好ましくは約50℃の空気温度に約15時間入れて硬化させ(つまり破壊された水素結合を再確立し)、その後にポリウレタンと硫酸バリウム(視覚化のために不透明性を提供する)のビードを、硬化したグラフト構造に螺旋状に巻き付ける。ビードは、円形、楕円形などの様々な断面形状を有することができるが、好ましい実施形態では、ビードは長方形の形状を有する。
【0072】
特に、好ましい実施形態ではビードは、アリゾナ州テンペのPolymerEngineering Groupが供給する(剛性を上げるために)硫酸バリウムの充填剤が20%のCarbothanePC−35(硬度は72ショアD)で、長方形の断面形状を有し、長辺は約1mmおよび短辺は約500ミクロンであり、長辺がグラフトの外面に当てて配置されている。ビードをグラフトに適用する好ましい方法では、溶媒の溶液を通してグラフトの外面に巻き付けながら、ビードの隣接する巻線が約1mmから約2mm隔置された状態で、約500重量グラムの張力を加えることにより、ビードに予め負荷をかける。ビードが発泡体層に埋め込まれるように、巻き付けは張力をかけて実行される。次に、別の発泡体層を適用し、その結果、全体的肉厚は約1mmから約5mmになり、最も好ましくはカニューレ挿入すべき区域のビード間隔は約4mmであり、中心の可撓性ビードは約2mmである。この発泡体層上にePTFEテープを適用し、これは縁部が多少重なるように螺旋状に巻き付けることが好ましい。ePTFEテープの巻き付けは、基体と同じIND(つまり約10ミクロンから約100ミクロン)を有するが、肉厚は約90ミクロンから約300ミクロンと、はるかに薄い。ePTFEグラフトの最終的厚さは約1mmから約2mmであり、好ましくは約1.5mmである。
【0073】
ePTFEテープを巻き付けながら、溶媒を同時に適用して、発泡体へのテープの付着を補助する(THFまたは他の中性溶媒はポリウレタンを溶解すると考えられ、したがって巻き付けプロセス中に少量適用すると、その間に力学的結合が生じる)。巻き付けプロセス中に張力(例えば約100重量グラムから約200重量グラム)を加え、その結果、ポリウレタンはePTFE微細構造へと進み、結合を補助する。この実施例では、ePTFEテープの重なる領域が相互に結合せず、代わりに下にあるポリウレタン発泡体に結合し、それによって長手方向のコンプライアンスを可能にすることができる。しかし、別の実施形態では、テープの重なる領域が相互に接着する。張力をかけてビードおよび/またはテープを巻き付けると、グラフトの密封反応を増大させると考えられる。次に、任意選択の配向線をグラフトの長さにわたって長手方向に適用することができる。この時点でまだ覆われていないグラフトの両端を、次にポリウレタンの層で覆い、その後にビードを螺旋状に巻き付け、これは埋め込まれたビード層に影響を及ぼさずに、所望に応じて臨床医がビードを除去できるように、この段階で適用される。ビードは、結合を補助するために溶媒が適用される。
【0074】
次に、他で述べていない限り上述した処理方法および機器を使用する別の好ましい実施形態について説明する。炭素で裏打ちした内面があるePTFE基体を、(これも炭素で作成された)配向線とともに押出成形し、最終的なノード間距離(IND)が約10ミクロンから約40ミクロンで、肉厚が約100ミクロンから約500ミクロン、好ましくは約200ミクロンになるように、長手方向に拡張する。ePTFE基体を心棒上に位置決めし、ポリカーボネートポリウレタンと溶媒の2工程を基体の全長に適用しながら心棒を回転する。第1工程後、基体を長手方向に約20%圧縮させて、この長さに維持しながら、第2工程を基体の全長に適用し、これによって基体はポリウレタンの効果により元の長さの約80%にとどまる。2工程のポリウレタンは、グラフト上にシーラント層を形成し、約10ミクロンから約150ミクロン、好ましくは約100ミクロンの厚さを有する。
【0075】
次に、第1ポリウレタン発泡体層を、上述したようにポリウレタンシーラント層に適用する。この第1発泡体層は、基体の各端部に第1発泡体層がないように、基体の中央部分にしか適用されない。基体の各端部の縁から第1発泡体層までの距離は、最大で約5cmである。第1発泡体層の適用後、ある長さのポリウレタンの第1ビードを硫酸バリウムとともに、第1発泡体層を含む基体の中央部分に(上述したように張力をかけて)螺旋状に巻き付ける。第1ビードは楕円形の断面形状を有し、寸法は高さが約200ミクロンから600ミクロン、幅は200ミクロンから1200ミクロンの範囲である。(例えば周囲温度または熱によって)揮発させて、ビードを巻き付ける前に溶媒を全体的に除去する。次に、ある長さの第2ビードを、基体の縁部から約5cmから基体の縁部から約6cmまで、第1発泡体層の各端部に(上述したように張力をかけて)螺旋状に巻き付ける。この第2ビードも楕円形の断面形状(2つの楕円焦点が同一である場合は円形でよい)を有するが、断面積は第1ビード(例えば約100ミクロンの直径)より小さい。第2ビードを適用した後、第2発泡体層を基体の中央部分に沿って第1発泡体層およびビードに適用し、第2発泡体層は、第1発泡体層を越えて長手方向に延在することなく、第1発泡体層をほぼ覆う。第1および第2発泡体層の組み合わせた合計厚さは約300ミクロンから約1500ミクロン、好ましくは約700ミクロンである。
【0076】
次にePTFE部材、好ましくはある長さのePTFEテープを、組み合わせた発泡体層に張力をかけて巻き付け、テープが組み合わせた発泡体層に接触する前に溶媒をテープに与える配置装置の上、またはその中に通す。テープの縁部は多少重なることが好ましい。ePTFEテープは基体と同じIND(つまり約10ミクロンから約40ミクロン)を有するが、肉厚は約100ミクロンから約300ミクロンと、はるかに薄く、好ましくは約260ミクロンである。次に、別の長さの第2ビードを、基体の縁部からePTFEテープ(組み合わせた発泡体層の上にある)のほぼ縁部まで、または基体の各端部で約6cmの距離にわたって基体の各端部に螺旋状に巻き付ける。次に、基体の2つの端部(つまり各縁から約6cmの長さ)を迅速に溶媒に浸漬する。それぞれが約6cmの長さを有する全体的に管状の2つのePTFEスリーブを準備し、第2ビードが全体的に覆われて、スリーブがePTFEテープの縁部上に部分的に延在するまで、基体の端部に「ねじ込む」(つまり、第2ビードが「ねじ山」として作用する状態で、スリーブが基体の中央部分に向かう方向に動作するように、力を加えて回転させる)。次に、スリーブ付き端部を迅速に溶媒に浸漬し、グラフトを約50℃の空気温度に設定された炉に約14時間から約16時間の範囲の時間入れる。
【0077】
図16Aから図16Dは、ePTFE AVグラフトの実施形態を示し、図16Aおよび図16Cはそれぞれ、現在好ましい中央部分および端部の設計を呈する。図16Bおよび図16Dは、以前に好まれていたePTFEAVグラフトの中央部分および端部設計を示す。最初に図16Aおよび図16Bを参照すると、中央部分はePTFE基体80を含み、その上にシーラント層82(本明細書に記載されたように1つまたは複数の層を含むことができる)が配置され、その上に発泡体層84(これも本明細書に記載されたように1つまたは複数の層を含むことができる)が配置/形成される。発泡体層84にはビード86が埋め込まれ、ePTFE部材88が発泡体層84の表面に接着し、発泡体層84を覆う。図16Aのグラフトは、少なくとも以下の点で図16Bのグラフトとは異なる。つまり、1)ビードの厚さが約16%減少し、2)シーラント層82の厚さが約67%減少し、3)ビード86がシーラント層82に約44%近づき、4)発泡体層の厚さが約26%減少し、5)ビードの巻線間の間隔が約18%増大している。これらの変化の結果、グラフトの輪郭が縮小し、グラフトの機能を改善した。
【0078】
図16Cおよび図16Dに関しては、ePTFE AVグラフトの端部設計も変更され、グラフトの機能および性能を改善した。図16Dで示した以前の端部設計では、第1シーラント層92をePTFE基体90上に配置し、ePTFEテープ層94がそれに続き、第2シーラント層96をePTFEテープ層94に配置した。次に、ビード98を第2シーラント層96に巻き付け、それに接着した。図16Cで示した新しい設計では、ビード98より小さい断面積のビード99を、ePTFE基体90に直接巻き付け、本明細書で説明した方法およびプロセスでそれに接着した。次に、ePTFEテープのラップではなくePTFEスリーブ102をビード99上に押し出すか、ねじ込み、その結果、グラフトの端部の輪郭がはるかに低くなる。ePTFE基体90へのePTFEスリーブ102の接着も、基体90にビード99を螺旋状に巻き付け、スリーブ102をビード99上に配置し、THFなどの適切な溶媒をスリーブ102の外面に噴霧することによって達成することができ、したがって溶媒は外部スリーブ102を通ってビード99へと浸透し、これがビード99のポリウレタン部分を軟化して、スリーブ102および基体90の両方へと結合部を形成する。この技術によって、基体に溶媒を噴霧するか、ビード99を溶媒に浸漬する必要なく、基体90からのスリーブ102の離層を大幅に減少させることができると考えられる。
【0079】
図16Aで提示された実施形態では、シーラントまたはベース層82は約0.04mmの厚さであり、発泡体層84は、発泡体層84の合計が約1.2mmになるように、約0.6mmの第1発泡体層を噴霧して、この第1発泡体を乾燥してから第2発泡体層を噴霧することによって形成される。図16Cで提示された実施形態では、ビード90は、約0.2mmの平均直径を有して、約2mm隔置され、基体90と外部スリーブ102との境界付近に配置され、外部スリーブ102は約500ミクロンである。
【0080】
上述したように、自己密封式人工血管の好ましい実施形態は、ePTFEグラフトが動物試験条件で自己密封の能力を実証するために使用されてきた。以下で動物試験プロトコルの説明をする。
【0081】
この研究には、ヒツジ様(ヒツジ)動物を使用した。調整されたヒツジが広く使用され、一般に人工血管調査のモデルとして受け入れられている(「Invivo patency of endothelial cell−lined ePTFE prosthesesin an ovine model」Artificial Organs 1992年8月号16(4):346〜53;P.Tillmanらの「Plateletfunction and coagulation parameters in sheep duringexperimental vascularsurgery」Lab.Anim Sci1981 31:263〜7;T.Kohlerら「Dialysisaccess failure: A sheep modelof rapid stenosis」JVascSurg 1999 30:744〜51参照)。6mm直径のグラフトについて、良好なサイズ一致を達成することができ、最大35cmのグラフト長さを簡単に頚動脈から頚静脈のモデルに植え込むことができる。首に配置されたグラフトには、脈拍の触診によって容易にアクセスし、手持ち式ドップラで検査することができる。説明された研究によると、6個の実験/試験グラフト(Sedona)および2つの対照グラフト(Vectra(登録商標)AVアクセス競合グラフト)を4匹の動物に植え込んだ。2匹の動物が、右頚動脈から左頚静脈および左頚動脈から右頚静脈を使用して、1個の対照標準(Vectra(登録商標)AVアクセス競合グラフト)と1個の試験グラフト(Sedona)を左右対称に受けた。2匹の動物が、右頚動脈から左頚静脈および左頚動脈から右頚静脈を使用して、2個の試験グラフト(Sedona)を左右対称に受けた。
【0082】
図16Aおよび図16Cに関して説明した方法で作成した6個の実験/試験グラフトを使用する一方、2個の市販のグラフトを使用した(期限切れ状態で殺菌パッケージに入り、商標「Vectra(登録商標)」AVで販売され、内径は6mm、長さは40cm(製品コード#T6040−001))。4匹の動物にアクセスグラフトを配置した(2匹にはそれぞれ、1個の実験グラフトと1個のVectra(登録商標)AVアクセスグラフト、残りの2匹には2個の実験グラフト)。全てのグラフトは同じ内径で、近似の長さであった。植え込み直後にグラフト(実験グラフトおよびVectra(登録商標)グラフト)にアクセスし(14ゲージの針でカニューレ挿入)、次に好ましくは植え込み後最初の24時間以内であるが、最大では植え込み後48時間以内に実行される1つの追加的カニューレ挿入セッションで、異なる位置にアクセスした。全てのグラフトは、植え込み後8週間で外殖し、植え込み後4週間での外殖という選択肢があった。
【0083】
使用した材料は、6個の殺菌実験グラフト、2個の殺菌Vectra(登録商標)AVアクセスグラフト、体重が75〜95kgの4匹のヒツジ、2個の外装付きの2個の120°AVアクセス外装トンネラ、適切な外科用器具、6〜0プロレン縫合糸、2〜0ビクリル縫合糸、14ゲージ透析針、および4×4ゲージパッドを含んでいた。Vectra(登録商標)アクセスグラフトは、このようなグラフトの添付使用情報(IFU)に従って配置し、実験グラフトは、血管処置で訓練を受けた外科医による標準的処置に従って配置した。グラフトの配置およびアクセスは、血管技術の当業者に知られている標準的な処置および技術を使用して、通常の状態で実行した。
【0084】
研究中は、以下のプロトコルに従った。動物は手術前の少なくとも12時間絶食した。一般的な身体検査を実行し、動物に準備処置を施す前に直腸温度および体重を記録し、異常な発見があれば、全て研究コーディネータまたは主研究者に報告した。動物にはケタミン(静脈に10mg/kg)とバリウム(静脈に0.5mg/kg)またはテラゾール(筋肉に6〜8mg/kg)を前投薬した。アトロピン(筋肉、皮下または静脈に0.04〜0.4mg/kg)または同様の薬物を与えて、呼吸分泌を減少させ、徐脈を防止した。静脈カテーテルを配置した。挿管を容易にするために、動物をイソフルランで「マスクダウン」した。気管内挿入管を配置して、カフを膨張させた。手術区域をクリップ留めし、ベタジンなどの殺菌溶液で外科的に準備処置した。動物を手術室に搬送し、手術台に背殿位で配置し、脚を全部固定した。手術部位を準備処置し、殺菌状態で無菌布で覆った。イソフルランで通常の麻酔状態を維持した。等張流体の静脈内滴注を開始し、外科的処置を開始する前にセファゾリン(静脈で1gm)、バイトリル(登録商標)(7.5mg/kg)またはゲントシン(登録商標)(2mg/kg)を筋肉または静脈内で投与した。ベースラインACT(活性血液凝固時間)のために血液を採取し、この時間に、および追加の診断処置のために寿命の間、様々な時点で追加の血液(約5mlから約15ml)を採取している。植え込み後の診断血液抜き取りのために鎮静剤は必要なかった。
【0085】
研究では以下の植え込み処置に従った。試験グラフトまたは対照グラフトを使用して、長さが30cmから40cmのループタイプの動静脈シャントを作成した。提供された120°の外装トンネラを使用して、ループ状にグラフトを皮下に通した。右および左の頚動脈および頚静脈を外科的に分離し、管理した。動物の首の適切な区域で、2個のAVグラフトをループ状に通した。トンネル状にする前に、各グラフトをIFU/一般的植え込みのガイドラインに従って準備した。Sedona/実験グラフトは、血管処置の訓練を受けた外科医によって標準的処置に従い配置された。ACTを250より上に維持するために、必要に応じて動物にヘパリン(静脈で約100u/kg)を投与した。その後も様々な投与量でヘパリン丸薬を与え、目標ACTを維持した。第1頚動脈および頚静脈(右頚動脈および左頚静脈または左頚動脈および右頚静脈)を分離して管理し、6〜0プロレン縫合糸を使用して標準的方法でグラフトを吻合した。第1縫合糸配置から両方の吻合が終了するまでの時間を記録した。静脈逆放血でグラフトから空気を一掃し、その区域から余分な血液および流体を乾燥し、クランプ/ループを外した。グラフトの取り扱いを評価し、別個のデータシートに記録した。第1AVグラフト処置が完了し、グラフトが止血を実証したら、反対側のグラフト植え込みのために、上述した以前のステップを繰り返した。全ての切開部は2−0ビクリル縫合糸で閉じ、その区域を局麻酔で浸潤した。標準的手順に従ってヒツジを回復させ、通常の囲いに戻した。動物は毎日監視し、毎日アスピリン(325mg、経口)を与えた。
【0086】
各植え込みの完了後だが、動物が麻酔から回復する前、および好ましくは植え込み後24時間以内、および最大で植え込み後48時間以内の1回の追加セッション時に、グラフト穿刺部の止血を評価した。実験研究用グラフト(Sedona)およびVectra(登録商標)対照グラフトは、同じ方法でカニューレ挿入した。両植え込みの針穿刺と追加のセッション(好ましくは植え込み後24時間以内)の針穿刺は、全て経皮的であった。カニューレ挿入部位の止血または出血の評価は、この試験では、植え込み時に動物が麻酔から回復する前にカニューレ挿入領域の皮膚を通してグラフトを穿刺して実行した。植え込み時には、このカニューレ挿入セッションは、5秒間放置した2本の針(1本は動脈カニューレ挿入側、1本は静脈カニューレ挿入側)および1時間放置した2本の針(1本は動脈カニューレ挿入側、1本は静脈カニューレ挿入側)で構成された。セッション毎に結果を記録した。第2針穿刺セッション(植え込み後好ましくは24時間以内、最大で植え込み後48時間以内に実行)は、経皮的にグラフトにアクセスした。このカニューレ挿入セッションは、1時間放置された2本の針(1本は動脈カニューレ挿入側、1本は静脈カニューレ挿入側)および3時間放置された2本の針(1本は動脈カニューレ挿入側、1本は静脈カニューレ挿入側)で構成された。セッション毎に結果を記録した。
【0087】
活性血液凝固時間(ACT)を測定して、250より上に維持し、5秒、1時間、または3時間の針を抜く毎に、その前にかかった最も新しいACTを、ACTを得た時間とともに適切に記録した。各針を抜いた時間が記録され、したがって最後のACTの時間と比較することができる。針の各アクセスのために予め計量した4×4のゲージパッドを20個準備し、重量を適切に記録した。手術後の評価のために、グラフトにも触って、膨らみ、汚染および漿液腫などの組織の異常があれば全て書き留めた。選択した動物の組織および/またはグラフトの外観を記録するために、写真を使用してもよかった。植え込み後セッション中に実行した針穿刺試験では、標準的手順に従って動物に麻酔をかけ、次に標準的透析アクセス針セット(14ゲージ)で経皮的にグラフトにアクセスした。以前に針穿刺した部位は回避した。全ての針穿刺試験で、ヘパリンロックを使用し、針を抜く前に、注射器を引き戻してグラフトの開通性を確認し、血液がチューブに引き込まれるか観察した。針は、適切な時間にわたって所定の位置に放置した。グラフトの最も中心の6cm(中心可撓領域)には穿刺しなかった。
【0088】
針は吻合部に向けた(つまり、動脈側では、針は流れに逆らって配向され、静脈側では、針は流れの方向に配向された)。以前に計量した4×4のパッドで同時に圧力を加えながら、各針を抜いた。標準的手順を使用して、4×4のパッドを使用して針穿刺部位に圧力を加え、針を抜いて2分後に止血(針穿刺部位から目に見える出血がないこと)をゲージチェックした。止血が達成されなかった場合は、ゲージでさらに2分間圧力を再び加え、針を抜いてから4分後に止血をチェックした。まだ止血が達成されなかった場合は、さらに1分間ゲージで圧力を再び加え、針を抜いてから5分後、およびその後は毎分、止血をチェックし、止血が達成されるまで、チェックする度に圧力を再び加えた。予め計量した4×4のパッドは、使用したままの状態で交換した。止血の時間を書き留め、記録した(穿刺部位から目に見える出血がない)。4×4ゲージパッドは20個全部を計量し、元の重量を引いて、血液損をグラム単位で求めた。全てのカニューレ挿入が完了するまで、適切な針滞在時間中に、植え込みセッションで、および植え込み後好ましくは24時間、最大で48時間のセッションで、新しい穿刺部位を使用して以上のステップを繰り返した。ACTを250より上に維持するために、必要に応じて投与したヘパリンを再投与した。
【0089】
両方のグラフトで上述した全てのカニューレ挿入が完了するまで、以上のステップを繰り返した。ここで、以上で開示した研究のような研究では、針穿刺セッションの全体的時間を最小限に抑えるために、針の配置はジグザグにすることができ、そうしなければならないことに言及しておく。針の貫入力(forcepenetration)、脈および/または「脈拍」を感じる能力、および容易にカニューレ挿入できる能力など、グラフト毎の違いは全て書き留めておかねばならない。(植え込み時に実行した針穿刺セッションの)全ての切開部を閉じ、区域を局麻酔で浸潤した。標準的処理に従ってヒツジを通常の囲いに戻した。動物は毎日監視した。
【0090】
8週目に、以下のプロトコルに従って、ヒツジに予め麻酔をかけ、上述したような手術の準備をした。ACTを測定し、グラフトに触って、膨らみ、汚染および漿液腫などの組織の異常があれば全て書き留めた。組織および/またはグラフトの外観を記録するために、写真を使用した。動物に10,000単位のヘパリンをヘパリン投与し、実験研究グラフトとVectra(登録商標)対照標準の両方でグラフト開通性の最終評価として、完了時血管造影図を取得した。表7および表8は、研究用に収集したデータを示す。
【表7】
【表8】
【0091】
表7および表8のデータは、以上で、Vectra(登録商標)ポリウレタングラフトのようにePTFEでない自己密封式グラフトと実質的に同様に機能する自己密封式ePTFE複合グラフトを獲得できることが実証されたと考えられる。つまり、データによると、5秒の針滞在では、知られている自己密封ポリウレタングラフトと概ね同じ時間枠で止血が達成され、1時間の針滞在では、針穿刺部の大部分で概ね2分以内に止血が達成され、3時間の針滞在では、針穿刺部の大部分が2分以内に止血を達成した。したがって、第1開口から第2開口へと延在する内部ボリュームを画定するePTFE表面を含む自己密封式ePTFEグラフトを獲得することができる。表面は、動物の動脈および静脈の少なくとも一方と結合する第1開口の周囲と第2開口の周囲を画定して、血液が第1開口および第2開口を通って流れられるようにする。自己密封式グラフトは、表面を穿刺し、約5秒、1時間、および3時間という所定の継続時間にわたって内部ボリュームに配置された14ゲージの針を抜いた後、約2分以内に第1および第2開口を通る血液以外のヒツジの静脈または動脈からの血流の止血を達成する手段を含む。止血を達成する手段は、少なくともポリウレタン発泡体を含むことができる。止血を達成する手段は、複数のポリウレタン層も含むことができる。最も好ましくは、止血を達成する手段は、ePTFE表面の周囲の円形路に構造的支持部材が配置された複数のポリウレタン層を含むことができる。
【0092】
自己密封式カフ式グラフト
本明細書で説明した様々なグラフト構成は、血管への取り付けを補助するために設けられた1つまたは複数のカフを有することもできる。カフがある人工血管、カフの構成、および血管に取り付けるためのこのようなカフおよびカフ式グラフトを作成する方法および装置が、Scholzらの米国特許第同第6,273,912号、Scholzらの同第6,746,480号、Scholzらの米国特許出願公報第2004/0210302号、Randallらの米国特許第6,190,590号、Edwinらの同第6,203,735号、Harrisらの同第5,861,026号、Harrisらの同第6,221,101号、Harrisらの同第6,589,278号、およびHarrisらの米国特許出願公報第US2004/0064181号に記載され、これはそれぞれ共通に譲渡され、参照によりここで完全に述べられているかのように本明細書に組み込まれる。
【0093】
カフは、ePTFEまたは他の材料、例えばシリコーンまたはポリウレタンで作成することができ、ePTFEAVグラフト、またはシリコーン、ポリウレタンまたは他の材料基体を有するグラフトに付着させることができる。グラフトに取り付けるカフの一例が図17に図示され、ここでカフ110の背面図はカフ区間112および首区間114を示し、首区間114はその長さの少なくとも一部に沿って分離され、したがってグラフトの端部へのカフの配置を容易にする。これで、カフ110を、それぞれの材料特性に従ってグラフトに付着させることができる。例えば、カフおよびカフを取り付けるグラフト表面がePTFEである場合、カフは当業者に知られているように加熱して取り付けることができる。上述したePTFEAVグラフトの実施形態に関しては、カフは様々な製造段階でグラフトの一方端または両端に配置することができる。1つの実施形態では、ePTFEテープ巻き付けの適用と同様に、ePTFEカフを、ポリウレタン層がそれに適用されているグラフト(例えばベース層、発泡体など)の端部に配置する。次に、例えばジメチルアセトアミド(DMSE)、ジメチルホルムアミド、THF、またはその混合物を含む非プロトン性溶媒などの適切な溶媒を、カフの首区間に適用して、首区間の下にあるポリウレタンを溶解し、その結果、カフがグラフトに付着する。これで、本明細書で検討したようなビード付けまたは他の処理ステップが、カフ/グラフト結合部上で可能になる。
【0094】
別の実施形態では、カフ式グラフトを、本明細書で説明したようなePTFEAVグラフトとは別個に形成する。次に、カフ式グラフトの管状部分を、管状部分の開放端の壁を(例えば拡張ツールを使用して)伸ばして、ePTFEAVグラフトの一方の端部上に滑動させることにより、ePTFE AVグラフトに取り付ける。1つの実施形態では、ePTFE AVグラフトは外部ビードを有し、カフ式グラフトの管状部分の開放端は、管状部分がePTFEAVグラフトの外部ビード部分に到達するまでePTFE AVグラフト上を滑動し、到達点でカフ式グラフトの管状部分を回転するか、外部ビードに「ねじ込む」。カフ式グラフトの管状部分の内面は、付着を補助するために自身上に接着剤を有してよく、あるいは所望に応じて初期取り付けステップ後にさらなる付着を実行することができる。
【0095】
別の実施形態では、自己密封式カフ式グラフトは、真空蒸着、噴霧コーティング、または当業者に知られているような浸漬コーティング手順により、ポリウレタンまたは同様のポリマーをePTFEカフ式グラフトの微細構造に含浸させて作成することができる。ポリウレタンまたは同様のポリマーが導入されたら、グラフトの外部から余分なポリマーを除去し、ポリウレタンがePTFEのノードとフィブリル間の隙間に形成できるようにする。別の実施形態は、本明細書で検討したように、ポリマーと溶媒の組合せでePTFEカフ式グラフトを噴霧コーティングし、その後にePTFEテープまたはパッチをその上に適用して、ePTFE/ポリマー/ePTFE積層品を作成することを含む。別の実施形態では、首部分を有するカフをグラフトに接続し、グラフトとカフの首部分の間の接続点まで、グラフトをシーラント材料(例えばポリウレタン)で浸漬コーティングし、シーラント材料でグラフトと首部分の両方を(カフまで)浸漬コーティングし、グラフトと首部分の長さにわたってビードをシーラント材料に螺旋状に巻き付け、シーラント材料でビード付きのグラフトおよび首部分を(カフまで)浸漬コーティングすることによって、自己密封式カフ式グラフトを作成する。
【0096】
さらに別の実施形態では、本明細書で説明した様々な処理ステップに、ePTFEカフ式グラフトの管状本体部分をePTFE基体として使用し、自己密封性、捩れ抵抗などをグラフトに与える。ePTFEカフ式グラフトのカフ部分は、グラフトの一方端または両端にあってよく、自身上に適用されたシーラント層を有するか、未処理のままでよい。例えば、カフ部分は、カフ形状を維持するためにポリウレタンのコーティングを有してよい。カフ部分が自身上に適用されたシーラント層を有する場合、シーラント材料(例えばポリマー)はパターン化して適用することができる。1つの実施形態では、ePTFEAVグラフト(カフ付き)のカフ部分へのポリマー適用は、図18に示すようなカフの頂部の「隆起」パターンで、そのように実行される。カフ120の隆起部分122の例えばポリウレタンなどのポリマーは、臨床医が血管に取り付けた後に縫合穴の出血を軽減または防止するための縫合領域を提供する。これらの隆起部分は、例えばポリマーを適用する前にカフにマスクを配置するか、カフに適用した後に、ポリマーに隆起をレーザで切り込むことによって作成することができる。当業者に認識されるように、隆起部分は様々な形状をとり、様々な角度で設定することができる。さらに、1つの実施形態では、隆起の作成に使用される材料は、ePTFEカフの縁部を手術中に容易に識別できるように、自身内に組み入れた放射線不透過性物質を有する。
【0097】
好ましい実施形態を、Polymer Technology Groupから入手可能なCarbothane PC−2585に関して説明してきたが、他の適切なポリウレタン、例えばBionate、93ショアAの硬度のChronoflex C(Cardiotech)、ポリカーボネートジオール(1,6−ヘキサンジオール)、14,4−メチレンビスフェニルジイソシアナートウレタンと1,4−ブタネジオール/ジメチルシラン(ポリウレタンの軟質部分の分子量は約1000から約3000)を使用することができる。適切なポリウレタン(つまりポリマー全体)の重量平均分子量(MW)は、約25,000g/moleから約500,000g/moleの範囲、好ましくは約40,000g/moleから約150,000g/moleの範囲である。1つの好ましい実施形態では、重量平均分子量は約50,000g/moleである。さらに、本明細書で説明したようなスプレーガンを使用するポリウレタンの噴霧は、ポリウレタンをグラフト基体に適用する以外、例えばポリウレタンなどの材料をステントに噴霧して、封入したステントを生産する、ポリウレタンなどの材料をステントの両面に噴霧して、封入ステントを製造する、ポリウレタンなどの材料を枠に噴霧して、フィルタを作成するなどの用途にも使用することができる。1つの実施形態では、血栓材料を発泡体層に組み入れる。別の実施形態では、グラフトを作成するために本明細書で説明した方法、プロセスおよび材料を、縫合穴の出血を減少させるために頚動脈に適用するパッチに適用する。最後に、本明細書で説明したようなグラフト上のビード(例えばその剛性特性)は、透析針または導入器がビードに接触すると、偏向してビードから離れ、グラフトに入るようにすると考えられることに言及しておく。
【0098】
また、自己密封式血管グラフトであって、第1表面および第1表面から隔置された第2表面を有する全体的に管状のePTFE基体を備え、ePTFE基体は、高有孔性グラフト、薄肉グラフトおよびその組合せで構成されたグループから選択され、前記血管グラフトはさらに、基体の第1および第2表面の一方に配置されたシーラントの層を備えてもよい。
また、自己密封式グラフトであって、管状ePTFE基体を備え、ePTFE基体は高有孔性グラフト、薄肉グラフトまたはその組合せのいずれかであり、前記グラフトはさらに、基体の少なくとも一部に配置されたシーラントの層を備えてもよい。
また、AV瘻として植え込まれるグラフトであって、管状ePTFE基体と、基体の少なくとも一部に配置されたシーラントの層とを備え、シーラント層が、その長さに沿って隔置された複数の溝付き区間を有していてもよい。
また、血管グラフトであって、基体およびベース層を囲む外部ポリマー層と、基体と外部ポリマー層との間に分散した複数の発泡体層とを備えてもよい。
また、血管グラフトであって、第1厚さを有し、基体を囲むポリマーの内部シーラント層と、内部シーラント層を囲むポリウレタンの発泡体層とを備え、発泡体層が、第1厚さの1.5倍以上の第2厚さを有してもよい。
また、血管グラフトであって、外壁を含む基体と、ポリマーシーラント材料を備え、基体の長さにわたって配置されたベースシーラント層と、ポリマー発泡体材料を備え、ベース層の長さにわたって配置された第1発泡体層と、第1発泡体層に少なくとも部分的に埋め込まれたビードと、ポリマー発泡体材料を備え、第1発泡体層およびビードの長さにわたって配置された第2発泡体層と、ポリマーを備える外部層とを備えてもよい。
また、上記グラフトのシーラント層が、約10ミクロンから約1500ミクロンの範囲の厚さを有してもよい。
また、上記グラフトの基体の厚さがシーラント層の厚さより薄くてもよい。
また、上記グラフトのシーラント層がエラストマ材料で構成されてもよい。
また、上記グラフトのシーラント層がポリウレタンで構成されてもよい。
また、上記基体が高有孔性グラフトであり、異なる有孔性を有する第2グラフトが、高有孔性グラフト内に同心で位置決めされてもよい。
また、半径方向コンプライアンスが上記基体に与えられてもよい。
また、長手方向のコンプライアンスが上記基体に与えられてもよい。
また、上記基体の外面に位置決めされたビードを備えてもよい。
また、上記ビードが放射線不透過性材料を備えてもよい。
また、上記基体、シーラント層、発泡体層および外部層の少なくとも1つが放射線不透過性材料を含んでもよい。
また、上記放射線不透過性材料が、基本的に硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、タングステン、またはタンタルおよびその組合せで構成されたグループから選択されてもよい。
また、上記シーラント層が、その長さにわたって隔置された複数の溝を備えてもよい。
また、上記シーラント層上に配置された発泡体層を備えてもよい。
また、上記発泡体層に少なくとも部分的に埋め込まれたビードを備えてもよい。
また、ePTFEテープの上記外部層を備えてもよい。
また、上記ePTFEテープまたは発泡体層のいずれか1つの外面に配向線が配置され、したがって配向線がグラフトの外面によって画定された縦軸に沿って延在してもよい。
また、上記配向線が外面に印刷された線を備えてもよい。
また、上記線が少なくとも1本の連続線を備えてもよい。
また、上記線が着色インクを備えてもよい。
また、上記着色インクがポリマー結合剤および生体適合性インクを備えてもよい。
また、上記生体適合性インクが、基本的にフタロシアニナート(2−)銅、D&Cの青9号、D&Cの緑5号、油溶性クロロフィリン銅複合体、クロムコバルトアルミニウム酸化物、クエン酸第二鉄アンモニウム、D&Cの青5号、FD&Cの青2号、D&Cの緑6号、二酸化チタン、炭素、酸化鉄およびその組合せで構成されたグループから選択されてもよい。
また、上記生体適合性インクが、約6500°Kの温度を有する光で見て、概ね青または黒色のうち少なくとも1つであってもよい。
また、上記基体の第1端から延在するフレア状カフを備えてもよい。
また、上記基体、シーラント層、発泡体層および外部層の少なくとも1つに組み入れられる生理活性剤を備えてもよい。
また、上記生理活性剤が、基本的に炭素粒子、銀粒子、グラファイト粒子、抗生物質、マクロライド抗生物質、ステロイド、消炎剤、抗腫瘍薬、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗体、遺伝子配列剤、成長因子阻害剤、血管形成、抗血管形成、プロティナーゼ阻害剤、抗増殖化合物または細胞分裂周期調節剤およびその組合せで構成されたグループから選択されてもよい。
また、上記グラフトの全体的に管状の端部が補綴カフ式グラフトのフレア状端部に結合されてもよい。
また、上記全体的に管状の端部が、補綴カフ式グラフトの全体的に管状の部分にねじ込まれてもよい。
また、上記全体的に管状の端部が、補綴カフ式グラフトの全体的に管状の部分に付着されてもよい。
本発明について説明し、本発明の特定の実施例について描写してきた。本発明を、特定の変形および例示的図に関して説明してきたが、本発明は説明した変形または図に制限されないことが当業者には認識される。例えば、人工血管の自己密封機能を達成するために、ePTFEテープを発泡体層と一緒に使用する必要はない。また、上述した方法およびステップは、特定の事象が特定の順序で生じるよう示しているが、特定のステップの順序は変更してよく、このような変更は本発明の変形に従うことが、当業者には認識される。また、特定のステップは、上述したように順番に実行するばかりでなく、可能な場合、平行プロセスで同時に実行してよい。したがって、本発明の変形が、請求の範囲に見られる本発明の開示または同等物の精神に含まれる程度まで、本特許はこれらの変形も含むものとする。最後に、本明細書で引用した全ての出版物および特許出願は、参照により個々の出版物または特許出願が本明細書で詳細かつ個々に述べられているかのように全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年8月31日出願の米国仮特許出願第60/605,770号および2005年6月17日出願の米国仮特許出願第60/692,172号に対する優先権を主張し、これはそれぞれ、参照によりここで完全に述べられているかのように本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、捩れ抵抗がある自己密封式PTFEグラフトに関する。
【背景技術】
【0003】
腎機能低下または腎不全を患う患者は、往々にして血液透析治療を受けねばならない。透析中は、血液が患者から引き出されて、血液透析機を通して循環される。機械は、有害な老廃物を除去し、浄化した血液を患者に戻す。通常、透析治療は、腎臓移植処置を実行しない限り、患者の寿命にわたって1週間に3回実行される。成功裏に血液透析治療を実行するために血液は150から600ml/分以上の流量で約3〜4時間にわたって血液透析機に通して循環させなければならない。静脈系からの血液流は、必要な流量を満たすのに不十分であると考えられ、大血管を繰り返し穿刺することは実際的でない。したがって、血液透析機のために血流のアクセスを提供するために、先天性瘻を生成することが多い。
【0004】
先天性瘻が利用できない、または血管透析に使用できない場合は、一般的に発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)の管から作成した人工血管(vasculargraft)を、動脈と静脈の間に外科的に配置する(例えばePTFE AVグラフト)。この処置は、前腕のより伝統的な一次先天性瘻の構造を支持する血管がない患者には、特に有用である。押出成形したePTFEAVグラフトは、織物のAVグラフトより好ましい。これは幾つかの理由で織るか、編むか、組紐状にするか、他の方法で形成され、ePTFEグラフトに与えられたノードおよびフィブリルによって特徴付けられた一意の微細構造を含み、これは組織の内殖を容易にしながら、同時に血液が流れることができる流体の漏れない導管を提供し、さらに必要な強度特徴を保持しながら、グラフトに比較的薄肉を提供する能力を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発泡ポリテトラフルオロエチレンAVグラフトは、少なくとも部分的には(ポリウレタンなどの)他の材料に対するePTFE材料の血液適合性の利点により、AVブリッジ瘻として血液透析治療に広く使用されている。しかし、ePTFEAVグラフトを使用することの潜在的欠点の1つは、植え込み後約14日まで、血液透析用に安全に血液を抜き取るのに使用できないことである。これは、ePTFEの非弾性の性質によるものと考えられ、これは穿刺後に自己密封することができない。したがって、その間に、他の透析手段(例えば血液透析カテーテルなど)を使用しなければならない。14日後には、通常はシーラント層として作用するためにePTFE表面に十分な組織の内殖があり、したがってグラフトは、透析針の除去によって生成される穿刺傷を密封することができる。しかし、このような密封には圧力と止血との組合せが必要であり、これはこのような処置中に存在する多くの変数(透析技術/看護士の技術レベル、作動状態など)のせいで均一にならない。したがって、止血およびそれに伴う付随変数に依存せず、追加の透析方法を使用せずに済むように、植え込み後即座に密封するePTFE人工血管の密封機構を有することが好ましい。
【0006】
したがって、ePTFE AVグラフトに即座に自己密封する特性を提供するために、ePTFE上にエラストマのシーラント層を配置するなどの様々な密封技術、および複合構造が図示または記述されている。様々なタイプのエラストマのシーラント、ePTFEグラフト、自己密封式グラフトおよび複合グラフトの実施例は、以下の米国特許および公開された出願にて開示されたものを含む。つまり、米国特許第(USPN)Re.31,618号、同第4,604,762号、同第4,619,641号、同第4,731,073号、同第4,739,013号、同第4,743,252号、同第4,810,749号、同第4,816,339号、同第4,857,069号、同第4,955,899号、同第5,024,671号、同第5,061,276号、同第5,116,360号、同第5,133,742号、同第5,152,782号、同第5,192,310号、同第5,229,431号、同第5,354,329号、同第5,453,235号、同第5,527,353号、同第5,556,426号、同第5,607,478号、同第5,609,624号、同第5,620,763号、同第5,628,782号、同第5,641,373号、同第5,665,114号、同第5,700,287号、同第5,716,395号、同第5,716,660号、同第5,800,510号、同第5,800,512号、同第5,824,050号、同第5,840,240号、同第5,843,173号、同第5,851,229号、同第5,851,230号、同第5,866,217号、同第5,897,587号、同第5,904,967具、同第5,910,168号、同第5,931,865号、同第5,976,192号、同第6,001,125号、同第6,036,724号、同第6,039,755号、同第6,042,666号、同第6,056,970号、同第6,080,198号、同第6,099,557号、同第6,203,735号、同第6,261,257号、同第6,267,834号、同第6,287,337号、同第6,319,279号、同第6,368,347号、同第6,416,537号、同第6,428,571号、同第6,534,084号、同第6,547,820号、同第6,589,468号、同第6,712,919号、同第6,716,239号、同第6,719,783号、同第6,790,226号、同第6,814,753号、同第6,827,737号、同第6,863,686号、同第6,926,735号、および米国特許出願公開第(USpN)2003/0004559号、同第2003/0027775号、同第2003/0100859号、同第2003/139806号、同第2004/0033364号、同第2004/0049264号、同第2004/0054406号、同第2004/0122507号、同第2004/0182511号、同第2004/0193242号および同第2004/0215337号であり、それぞれが参照により、詳細に述べられているかのように本明細書に組み込まれる。
【0007】
血管透析のためにePTFE AVグラフトにアクセスする前に、通常は皮膚の表面に優しく触れることによってグラフトを通して脈拍を感じて、グラフトを通る血流のチェックを実行する。グラフトを通してパルスを感じる能力は、一般に「触診可能性」と定義される。大部分の商用ePTFE人工血管は良好な触診可能性を提供するが、ePTFE基体の表面にエラストマシーラントの層を配置すると、層が厚すぎる場合はグラフトの触診可能性が損なわれることがある。血管透析にePTFEAVグラフトを使用することの別の潜在的欠点は、植え込み時に、グラフトがループ部位で捩れを形成する傾向があることである。典型的なループ部位の実施例が、図1A(上腕動脈から尺側皮静脈までの前腕のループAVグラフト2)および図1B(大腿動脈から大腿静脈までの大腿部ループAVグラフト4)に図示されている。ループ部位でのグラフトの捩れは血流を閉塞することがあり、その場合は即座の医療介入が必要となる。このような介入は、有害な結果の可能性を高めるので極めて好ましくないことが明白である。残念ながら、エラストマシーラントまたは密封の問題に対応するために形成された他の材料でコーティングしたePTFEグラフトは、容易に捩れを形成できることが発見され、これは恐らくループ領域におけるグラフトの剛性のせいである。
【0008】
ePTFE材料を使用することのこれ以外の1つの潜在的欠点は、自然な血管と比較して半径方向にコンプライアンスがないことである。つまり、血液の拍動がそれを通って流れるにつれて自然な血管を拡張および収縮させる血液の波動が、ePTFEグラフトを通過するにつれて散逸してしまう。この拍動の散逸は、受容者血管に対するコンプライアンスの不一致のような様々な合併症につながることがある。残念ながら、今日まで、自然の血管のコンプライアンスを真似て半径方向にコンプライアンスがあるePTFEグラフトの開発には成功していないと考えられる。したがって、上述した欠点の幾つかまたは全部を克服する自己密封式ePTFEグラフトが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本明細書では有利な特性を提供する人工血管、特にePTFEグラフトおよびePTFEAVグラフトについて説明する。本発明の一態様では、自己密封式人工血管は第1表面および第1表面から隔置された第2表面を有する全体的に管状のePTFE基体を含み、ePTFE基体は、多孔性グラフト、薄肉グラフトおよびその組合せで構成されるグループから選択され、さらに基体の第1および第2表面のうち一方に配置されたシーラントの層を含む。本発明の別の態様では、自己密封式グラフトは管状ePTFE基体を含み、ePTFE基体は多孔性グラフトか薄肉グラフトかその組合せのいずれかで、シーラントの層が基体の少なくとも一部に配置される。本発明のさらに別の態様では、AV瘻として植え込まれるグラフトは、管状ePTFE基体および基体の少なくとも一部に配置されるシーラントの層を含み、シーラント層はその長さに沿って隔置された複数の溝付き区間を有する。
【0010】
本発明の別の態様では、人工血管は基体を囲む外部ポリマーシーラント層およびベース層を含み、複数の発泡体層が基体と外部ポリマー層との間に分散する。本発明の代替態様によれば、人工血管は、第1厚さを有して基体を囲むポリマーの内部シーラント層、および内部シーラント層を囲むポリウレタンの発泡体層を含み、発泡体層は第1厚さの1.5倍ある第2厚さを有する。本発明のさらに別の態様では、人工血管は外壁を含む基体、ポリマーのシーラント材料を備え、基体の長さにわたって配置されたベースシーラント層、ポリマー発泡体材料を備え、ベース層の長さにわたって配置された第1発泡体層、第1発泡体層内に少なくとも部分的に埋め込まれたビード、ポリマー発泡体材料を備え、第1発泡体層およびビードの長さにわたって配置された第2発泡体層、およびポリマーを備える外部層を含む。
【0011】
本発明の代替態様では、半径方向にコンプライアンスがあるグラフトを形成する方法は、ePTFE基体を提供することと、基体を半径方向に膨張することと、コーティングした基体を提供するために、半径方向に膨張した基体上にエラストマ材料の層を配置することと、コーティングした基体を加熱することとを含む。本発明の別の態様では、人工血管を形成する方法は、ePTFE基体を提供することと、基体の長さにわたってポリウレタンの第1層を適用することと、基体を長手方向に圧縮することと、第1ポリウレタン層上に第2ポリウレタン層を適用することと、ポリウレタンでコーティングした基体にePTFEテープの層を巻き付けることとを含み、ePTFEテープは、ある量の溶液がePTFEテープに与えられるように最初に溶液を通過する。本発明のさらに別の態様では、自己密封式カフ式人工血管の作成方法は、ePTFE基体の第1端にカフの首部分を位置決めすることと、基体をシーラント材料にその第2端からカフの首部分まで浸漬することと、基体およびカフの首部分をシーラント材料に浸漬することとを含む。本発明のさらに別の態様では、捩れ抵抗性自己密封式人工血管の作成方法は、全体的に管状のePTFE基体を提供することと、基体の外面の少なくとも一部にシーラントの層を配置することと、シーラント層に溝付き区間を作成することとを含む。
【0012】
本発明のさらなる態様では、自己密封式人工血管は、第1表面および第1表面から隔置された第2表面を有する全体的に管状のePTFE、および第1および第2表面のうち一方に配置されたシーラントの層を含み、シーラントは、シーラント層を通して穿刺部材を挿入しても可塑変形しないポリマー材料を備える。本発明の別の態様では、自己密封式人工血管は、全体的に管状のePTFE基体、基体の少なくとも一部に配置されたシーラントの層、および基体およびシーラントのうち一方の表面の周囲に配置されたビードを含む。
【0013】
本発明のさらに別の態様では、捩れ抵抗性自己密封式人工血管の作成方法は、全体的に管状のePTFE基体を提供することと、基体の外面の少なくとも一部にシーラントの層を配置することと、シーラント層の少なくとも一部にビードを位置決めすることと、カフ式グラフトを人工血管に結合することとを含む。本発明の別の態様では、自己密封式カフ式人工血管の作成方法は、縦軸に沿って延在する第1端および第2端を有する概ね管状のePTFE基体の周囲に、全体的に螺旋状に配置されたビードを取り付けることと、フレア状の血管カフを第1および第2端の一方に結合することと、結合した血管カフと全体的に管状のePTFE基体とを付着することとを含む。本発明のさらなる態様では、自己密封式人工血管の作成方法は、ePTFE基体の外面の長さにわたってエラストマのシーラント層を設けることと、シーラント層の少なくとも一部に発泡体層を配置することとを含み、発泡体層の厚さは、基体の壁の厚さより十分に大きい。本発明の別の代替態様によれば、自己密封式人工血管の作成方法は、ePTFE基体の表面にポリウレタン材料の少なくとも1つの層を配置することと、ePTFE部材に溶媒を適用することによって、ePTFE部材をポリウレタン材料に付着することとを含む。
本発明の以上および他の実施形態、特徴および利点は、先に簡単に説明した本発明の以下のさらに詳細な説明を添付図面と組み合わせて考察することにより、当業者にはさらに明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】患者の前腕に植え込まれたループAVグラフトの図である。
【図1B】患者の大腿部に植え込まれたループAVグラフトの図である。
【図2】自身の周囲に螺旋状になったビードを有する中央部分の両側にシーラント層があるePTFE基体を有するePTFEグラフトの図である。
【図3】シーラント層およびビード上に発泡体層が配置された図2のグラフトの図である。
【図4】ePTFEテープが発泡体層の周囲に巻き付けられた図3のグラフトの図である。
【図5】曲げた形状で図示された図4のグラフトの図である。
【図6】その長さにわたってシーラント層があるePTFE基体を有し、シーラント層が隔置された間隔で切られた溝付き区間を有するePTFEグラフトの図である。
【図7】曲げた形状で図示された図6のグラフトの図である。
【図8】自身の周囲に螺旋状になったビードを有する中央部分の両側にシーラント層があるePTFE基体を有し、シーラント層が、隔置された間隔で切られた溝付き区間を有するePTFEグラフトの図である。
【図9】発泡体層がシーラント層およびビード上に配置され、曲げた形状で図示された図8のグラフトの図である。
【図10】複数の材料の層がある本発明によるePTFE AVグラフトの図である。
【図11】本発明によるePTFE AVグラフトの一実施形態の図である。
【図12】本発明によるePTFE AVグラフトの別の実施形態の図である。
【図13】本発明によるePTFE AVグラフトのさらに別の実施形態の図である。
【図14】本発明によるePTFE AVグラフトのさらに別の実施形態の図である。
【図15】本発明による別のePTFE AVグラフトの図である。
【図16A】ePTFE AVグラフトの第1の好ましい実施形態の中央部分の長手方向断面図である。
【図16B】ePTFE AVグラフトの第2の好ましい実施形態の中央部分の長手方向断面図である。
【図16C】ePTFE AVグラフトの第1の好ましい実施形態の端部設計の長手方向断面図である。
【図16D】ePTFE AVグラフトの第2の好ましい実施形態の端部設計の長手方向断面図である。
【図17】取り付け可能なカフの背面斜視図である。
【図18】カフ付きのePTFE AVグラフトのカフ部分の前面斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下の詳細な説明は図面を参照にして読むものであり、異なる図面にある同様の要素は同じ番号が付けられている。必ずしも同じ縮尺ではない図面は、選択された実施形態を示し、本発明の範囲を制限するものではない。詳細な説明は、例示により、制限的ではなく本発明の原理を示す。この説明は、明らかに当業者が本発明を作成し、使用できるようにするものであり、現在のところ本発明を実施する最善のモードと考えられるものを含め本発明の幾つかの実施形態、改造、変形、代替物および用法について説明する。
【0016】
本明細書に含まれる実施例はePTFE基体を使用する。当技術分野で知られているように、ePTFE基体は、例えば管の押出成形(シームレス)、その後に管に形成されるシートの押出成形(1つまたは複数のシーム)、ePTFEテープを心棒の周囲に螺旋状に巻き付けること(例えば複数のシーム、または好ましくは1本の螺旋状シーム)などを含め、幾つかの方法で製造することができる。本発明でePTFE基体を形成するために使用する好ましい方法は、管を押出成形することであるが、他の形成方法も可能であり、本発明の範囲に入ることを認識されたい。さらに、ePTFEが基体層のために選択された材料であるものとして検討されているが、例えばポリエステル、ポリウレタンおよびパーフルオロエラストマなどのフルオロポリマーを含め、他の材料も基体として使用するのに適切であることが、当業者には認識される。
【0017】
さらに、本明細書で説明するグラフトの自己密封特性は、針をそこから抜くせいで血液が失われることに関するものであるが、自己密封特性は、植え込み中にグラフトに生成される縫合穴の結果失われる血液にも拡大されることを認識されたい。さらに、シーラント層に関して本明細書では特定のポリウレタン材料について検討しているが、これは例示的にすぎず、本発明の制限に使用してはならないことを認識されたい。特に、非ポリウレタンのエラストマシーラント材料のように、多くの異なるタイプのポリウレタン材料が本発明の範囲に入る。本明細書では、エラストマ、エラストマの、シーラントなどの用語は、基体上に施されるかまたは配置される概ね可撓性の材料の1つまたは複数の層に対して交換可能な方法で使用され、大抵の場合は、それに密封特性を与えることができるが、穿刺後に自己密封性になる必要はない。
【0018】
また、本明細書で説明する人工血管を形成する1つまたは複数の材料に、生理活性剤を組み入れてもよい。生理活性剤は、グラフトの内腔(luminal)表面および非内腔(abluminal)表面のうち少なくとも一方に人工非金属材料(例えばダクロン(登録商標)、ポリエステル、PTFE、ePTFE、ポリウレタン、ポリウレタン尿素、シロキサン、およびその組合せ)とともに組み入れるか、グラフトの人工非金属材料全体に分散させるか、それにコーティングするか、それに噴霧コーティングするか、それにグラフトを液浸するか、それに蒸着するか、それにスパッタ堆積させるか、グラフト上に放射線不透過性表面を形成するように使用することができる。使用する材料または材料の組合せ(例えばダクロン(登録商標)、ポリエステル、PTFE、ePTFE、ポリウレタン、ポリウレタン尿素、シロキサン、およびその組合せ)は、表面改質添加剤または他の材料を含むことができる。
【0019】
基体、生理活性剤、シーラント層、発泡体層、他の層および他の設計パラメータの構成または組成の変形を、本明細書で説明するグラフトとともに使用することを強調しておかねばならない。例えば、グラフト中の生理活性剤の重量パーセンテージは、約0.1パーセントから約90パーセントまで変化してよく、約10パーセントから約60パーセントが最も好ましく、生理活性剤の平均粒子サイズは約20ナノメートルから約100ミクロンの範囲でよく、約0.1ミクロンから約5ミクロンが最も好ましく、生理活性剤の粒子は特定の構成では有孔で、他の構成では非有孔でよく、生理活性剤は、グラフトの内腔表面または非内腔表面で100パーセント構成してよく、グラフト本体の全体に均質に分布することができ、生理活性剤は、約10ミクロンから約1000ミクロンの接着剤薄膜で構成してもよい。
【0020】
生理活性剤は、炭素粒子、銀粒子、グラファイト粒子、抗生物質(アメトプリンリファンピンまたはゲンタマイシン)、マクロライド抗生物質、ステロイドまたは消炎剤(例えばエストラジオール)、抗腫瘍薬、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗体、遺伝子配列剤、成長因子阻害剤、血管形成、抗血管形成、プロティナーゼ阻害剤、抗増殖化合物または細胞分裂周期調節剤(ラパマイシン、シロリムス、またはパクリタクセル)などの化合物を含んでよいが、それに制限されない。これらの薬剤は、他の薬剤と結合してよい。例えばハイドロキシアパタイト(HA)、または他の生体適合性カルシウム塩で、これはリン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、およびリン酸カルシウムまたは炭酸カルシウム族の他の化合物を含むが、それに制限されない。記載されたカルシウム塩族の要素のいずれも、その塩がグラフト内で実質的に骨誘導性でない(つまり骨を形成しない)限り、使用することができる。また、ナノサイズの炭素チューブのようなセラミック材料、炭酸カルシウム、および遺伝子またはウイルス物質も、本明細書で述べたグラフト材料の少なくとも1つと組み合わせてよい。
【0021】
HAまたは他の生体適合性カルシウム塩の使用に関して、当業者に知られている様々な方法または技術を使用して、薬物または生理活性化合物をそれに組み入れることができる。例えば、HAグラフト複合体を作成した後に、薬物を添加してよい。有機または水性溶媒系の技術を使用して、薬物または他の生理活性剤をHA粒子内に拡散することができる。あるいは、HA粒子を最初に薬物または他の生理活性剤に装填し、次にグラフトに組み入れてよい。薬物または他の生理活性剤を60分以内に迅速に放出するか、数日から2年かけて制御された方法で放出することができる。HA粒子上の追加のポリマーコーティングまたはセラミックコーティングを使用して、薬物または他の生理活性剤の放出を制御してよい。
【0022】
また、ePTFEをHAと組み合わせて使用する場合、複合HA−ePTFEグラフトは、異なる有孔性およびノード−フィブリル構造を有してよい。ePTFEの有孔性は、約5ミクロンから約100ミクロンの範囲でよく、好ましい有孔性またはノード間距離は約10ミクロンから約40ミクロンの範囲である。発泡倍率、潤滑剤レベル、PTFE樹脂の粒子サイズおよび他のePTFE処理パラメータを制御することにより、様々な有孔性のグラフトを作成して、異なる有孔性の領域があるHA結合グラフトを提供することができる。HA結合グラフトは、ePTFEグラフトチューブの複数の層を使用して作成してもよい。HA系グラフトは、本明細書で述べた追加の特徴も有することができる。例えば開通性を改善する1つまたは複数のカフ、捩れ抵抗を改善するビード、および植え込みまたは他の外科処置中に補助する可視配向線である。HAまたは他の生体適合性カルシウム塩を組み入れたグラフトの以上および他の態様が、2005年6月8日出願の「Graftsand stent grafts having inorganicbio−compatible calciumsalt」と題された米国仮特許出願第60/689,034号に記載され、これは参照によりここで完全に述べられているかのように本明細書に組み込まれる。
【0023】
シーラント層
自己密封式グラフトの好ましい一実施形態では、使用されるシーラント層材料は、低い程度のクリープまたは応力緩和を呈すると考えられる材料である。材料のクリープまたは応力緩和は、その可塑変形のせいで生じ、これは好ましい実施形態の状況では、長期間にわたって材料を通して針を挿入するせいで生じることがある。シーラント層の適切な材料の実施例は、芳香族ポリカーボネートポリウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリエーテル/ポリアミドブロック共重合体、ポリジメチルシロキサンエラストマ、他のシリコーンエラストマなどを含むが、それに制限されない。
【0024】
特に低い程度のクリープまたは応力緩和を呈するポリウレタンのタイプに関して、芳香族ポリウレタンが脂肪族ポリウレタンよりも可塑変形に対して優れた抵抗を提供することが、実験によって実証されている。これは、これらの化合物をさらに詳細に検査することによって、一部は説明することができる。生物医学的用途に使用されるポリウレタンは通常、2段階のプロセスで合成される。第1に、ポリマージオールをジイソシアナート化合物と反応させて、イソシアナート末端基を有するプレポリマーを形成する。次に、分子量が小さいジオールまたはジアミンを使用してプレポリマーを連鎖延長し、ポリウレタンまたはポリウレタン尿素を形成する(アミンとの反応)。異なるタイプのポリマージオール、ジイソシアナートおよび連鎖延長剤を選択することにより、特性が異なる多くのタイプのポリウレタンを作成することができる。特に、ポリカーボネートジオールを使用して作成したポリウレタン(ポリカーボネートポリウレタン)は、植え込み後の生物安定性および優れた力学的特性のせいで、多くの医療器具の用途で使用される。2つの市販されているポリカーボネートポリウレタンの成分が以下の表1に記載され(ポリマーXおよびポリマーYとして掲載)、2つの構造的な違いは、ポリウレタン合成に使用されるジイソシアナートである。
【表1】
【0025】
異なるグラフトで2つのポリマーを使用する実験は、最初にグラフトを通して流体を流し、個々のグラフト上のポリマーシーラント層を通して針を挿入し、ポリマーを通る針の位置を約2時間維持し、針を抜くことによって実行した。ポリマーYシーラント層に生成された穴は、抜いた後にほぼ閉じるが、ポリマーXシーラント層に生成された穴は、抜いた後もほぼ開いたままであった。第2の実験では、所定の位置に約2分間維持しただけの針を抜いた後、穴は両方とも即座に閉じた。第3の実験では、ポリマーXおよびポリマーYでコーティングしたグラフトを、透析セッションを模倣した流体損失試験にかけた。14ゲージの針を個々のグラフトに挿入し、所定の位置に37℃で1時間維持した。針を抜いた後、ポリマーXでコーティングされたグラフトは、約120グラムの流体を失い、ポリマーYでコーティングしたグラフトは、約15グラムの流体を失った。したがって、この1つの実験から、芳香族ジイソシアナートを使用して調製したポリウレタンは、針の滞在時間が比較的長い場合、脂肪族ジイソシアナートを使用して調製したポリウレタンと比較して優れた密封反応を呈するようである。
【0026】
さらに、シーラント層の密封反応は、加熱してポリマーを操作することを通して改善することができ、その結果、シーラント層が呈するクリープまたは応力緩和が低下する。この好ましい反応は、加熱がエラストマ特性の整然とした領域(H結合の配列)を発達させるので、硬質相(芳香族ポリウレタン区域)から軟質相(ポリカーボネート区域)の相分離が改善したことに帰すことができる。以下の表2では、表1のポリマーYでコーティングされたグラフトを様々な熱処理手順にかけ、流体の損失を試験した。その結果のデータは、特定の熱処理がポリマーYのようなポリウレタンに対する優れた密封反応を付与するが、より長期間にわたる熱処理は、少なくとも部分的にはポリウレタンが溶解し始めるせいで、グラフトの密封反応を低下させることを示す。ポリマーYの熱処理に関して最善の密封反応(つまり流体損が最低量)は、ポリウレタンを70℃で4時間加熱した場合に生じた。熱処理は他のシーラント材料では異なり得ることが理解される。
【表2】
【0027】
シーラント層の密封反応は、ポリウレタンテレフタレート(ポリエステル)を含む粒子をシーラント材料に添加することによっても改善することができる。一実施例では、ポリエステルビードを粉砕して篩にかけ、約75ミクロン未満の仮想平均直径を有する粒子を生成した。本明細書で使用する「仮想平均直径」という用語は、(断面積Aが正方形か、長方形か、三角形などかに関係なく)粒子の知られている断面積Aで次の式を解くことによって生成される想像上の直径dを意味する。つまり、A=π*(d/2*d/2)である。次に、これらの粒子を、最初に例えばジメチルアセトアミド(DMSE)、ジメチルホルムアミド、またはテトラヒドロフラン(THF)を含む非プロトン性溶媒のような適切な溶媒に溶解させた上表1のポリマーXのようなポリマーに添加した。次に、ポリマービード溶液/分散物をePTFE基体に加え、グラフトを(例えば70℃で10分間)加熱して溶媒を除去した。追加のコーティングをePTFE基体に加えて、約50〜300ミクロンの厚さを達成し、真空中で(例えば70°で10〜16時間)グラフトを乾燥した。ポリエステル粒子を含まない対照グラフトと比較すると、実験のグラフトは凝固時間が短く、血液と接触したポリエステル表面が、透析後にシーラント反応を補助する止血を促進することを示す(これは恐らく、ポリエステルの高い血栓形成特性によるものである)。止血を促進するために粒子として使用可能な他の材料は、コラーゲン、トロンビン、フィブリノゲンなどを含むが、それに制限されない。
【0028】
シーラントの厚さはグラフトの密封反応に影響し、グラフトの特徴は、グラフトの密封反応の改善に関して上記で検討したプロセス/方法(つまり選択されるシーラントのタイプ、加熱プロセス、粒子の添加など)に加え、シーラントの厚さを変更することによっても操作できることも分かる。
【0029】
自己密封式ePTFEグラフト
本明細書で説明するような自己密封式グラフトは、共通に譲渡され、参照によりここで完全に述べられているかのように本明細書に組み込まれる、Kowligiらの米国特許第5,152,782号に記載されているように、自身上にシーラント層があるePTFE基体を含む。特に、当業者によって高有孔性グラフトまたは薄肉グラフトと分類されるePTFE基体を、シーラント層でコーティングし、標準的な肉厚でシーラント層があるグラフト、さらにシーラント層がない上述したタイプのグラフトと比較した。本明細書で使用する「高有孔性グラフト」という用語は、約30ミクロンから約100ミクロンの範囲のノード間距離(IND)を有するグラフトの意味である。本明細書で使用する「薄肉グラフト」という用語は、約500ミクロン未満の肉厚、より好ましくは約200ミクロンから約500ミクロンの範囲の厚さを有するグラフトの意味である。薄肉グラフトまたは高有孔性グラフト(またはその組合せ)であるePTFE基体を提供することにより、ePTFE基体の壁に十分浸透するようにその上に配置されたシーラント層(例えばポリウレタンなどのエラストマシーラント)は、針が抜かれた後に閉鎖反応を左右する傾向がある。
【0030】
以下の実験Aは、針がそこから抜かれた後の流体の損失に関して、標準的な肉厚で標準的な有孔性のグラフトに対する高有孔性または薄肉グラフトにより提供される利点を示すために実行された。試験したグラフトについては特定の厚さおよびINDを設けたが、本発明の範囲に入る追加の範囲が可能であることを認識されたい。同様に、特定のコーティング材料およびコーティング厚さを使用するが、所望の用途のために意図された特徴を最大限にし、所望に応じてグラフトの触診可能性を維持するために、グラフト上のコーティングのタイプおよびコーティングの厚さを変化させることが可能であることが、当業者には認識される。最後に、以下では噴霧コーティングプロセスについて述べているが、ePTFEグラフトにシーラント層をコーティングするには、例えば浸漬コーティング、射出成形、同時押出成形、ドレープコーティングなどの多くの方法があることが、当業者には認識される(しかし、(カフのような)複雑な形状のグラフトの場合は、現在のところ浸漬コーティングより噴霧コーティングが好ましいことが分かる)。したがって、以下に提供された実施例は、いかなる意味でも本発明の範囲を制限するものではない。
【0031】
実験A
それぞれが6cmの長さおよび6mmの直径を有する標準的肉厚(RW)のグラフトおよび薄肉(TW)グラフトとともに、高有孔性(HP)グラフトを用意した。ジメチルアセトアミド(DMAC)中にBioSpan(登録商標)の分割ポリウレタン(PolymerTechnology Group,Inc.から市販されている)の25%溶液を、DMACを使用して9〜12%の溶液に希釈した。ポリウレタン(PU)を含む希釈溶液を、選択したグラフトに噴霧コーティングした(つまりRWPU、TWPUおよびHPPU(表3参照))。コーティングしたグラフトを70℃の温度の炉の空気で約10分間加熱して、溶媒を除去した。追加のコーティングを加えて、最終的なコーティング厚さを達成した。次に、コーティングしたグラフトを70℃の温度のほぼ真空で約10〜16時間乾燥した。コーティングがない対照RW、TWおよびHPグラフトも用意した。
【表3】
【0032】
内部血圧をシミュレートする専門の装置を使用して、人工血管の自己密封特性を試験した。約40%のグリセリン/60%の水の混合物の1つのような流体、しかし好ましくは水を可撓性チューブ(直径が約6mmでプラスチック、好ましくはシリコーンで作成)に通して循環させ、流れループを作成した。流れループ内の圧力は、蠕動ポンプで維持された。溶液を約37℃に加熱し、約600ml/分、約1.9psiの圧力で循環させた。次に、人工血管を流れループに接続し、16ゲージの血管アクセス針を使用して穿刺した。針を抜いた後、穿刺部位からしみ出した流体を約2分間採取し、計量した。上記で列挙した各グラフトを試験して、流体損を記録し、その結果を表4に要約する。
【表4】
【0033】
コーティングしたグラフトは、コーティングしていない対照グラフトより流体損が大幅に少ないことが明白に分かる。コーティングしていないグラフトの高い流体損は、PTFE熱可塑性樹脂の非弾性の性質に帰される。針の穿刺は穿刺部位に可塑変形を引き起こし、流体が漏れることができる欠陥を残す。コーティングしたグラフトは、針で穿刺した後、自己密封性を実証する。この自己密封能力は、ePTFE外面にコーティングしたエラストマの弾性の性質に帰される。コーティングしたグラフトのうち、高有孔性グラフトおよび薄肉グラフトが、標準的肉厚のグラフトよりはるかに高い自己密封能力を示した。これは、穿刺部位の特性を左右する上でePTFE材料の寄与が少ないことに帰すことができる。本明細書では、いずれの数値に使用する「約」という用語も、好ましい実施形態がそれぞれ自己密封式生物学的植え込み器具として意図された目的のために機能することを可能にする適切な公差範囲を指すことに留意されたい。
【0034】
薄肉グラフトでは、ePTFEの厚さが薄いことにより、エラストマが穿刺したシーラント部位を占有することができる。その結果、密封がさらに効率的になり、したがって流体損が減少する。高有孔性グラフトでは、ePTFEの有孔性が高いので、これもエラストマがコーティング後に穿刺シーラント部位を占有することができ、グラフト表面の孔がエラストマ層で充填され、これが密封部位の特性を左右する。薄肉および/または高有孔性ePTFEグラフトのエラストマ層、特にポリウレタン層の最適厚さは、約10〜1500ミクロンの範囲であることが判明した。好ましい実施形態間の特定の関係が、これまで不可能であった利点を提供することが発見された。特に、ePTFE層の厚さがポリウレタン層の厚さより薄い場合に、グラフトの自己密封特性が強化されることが発見された。さらに、ePTFEの厚さがポリウレタン発泡体層(以下で検討)の約50%以下である場合、自己密封特性は甚だしく強化される。
【0035】
実験Aから得られた結果は、高有孔性ePTFEグラフトと薄肉ePTFEグラフト両方が、エラストマ層でコーティング後の密封特性に関して有利であることを示す。また、高有孔性コーティンググラフトは、薄肉および標準的肉厚のグラフトより触診可能性が高いことが分かった。したがって好ましい実施形態では、高有孔性グラフトまたは薄肉グラフトの基体を有し、基体がエラストマ材料の層でコーティングされた自己密封式ePTFEグラフトが提供される。別の好ましい実施形態では、自己密封式ePTFEグラフトのために、高有孔性と薄肉の組合せのePTFEグラフトにエラストマ材料のコーティングを設ける。
【0036】
別の好ましい実施形態では、二重グラフトが提供され、外部管状ePTFEグラフトが内部ePTFEグラフトの周囲に同軸で位置決めされる。これは多くの方法で遂行することができ、その1つは同時押出成形である。外部ePTFEグラフトは、自身上にエラストマのシーラント層がある薄肉グラフトまたは高有孔性グラフトでよい。内部ePTFEグラフトは、外部ePTFEグラフトに欠陥があった場合に、それを補足するために外部ePTFEグラフトとは異なる特性の任意のタイプのePTFEグラフト(例えば標準的肉厚のグラフト、薄肉グラフト、高有孔性グラフトなど)でよい。例えば、外部ePTFEグラフトが、シーラント層のある高有孔性ePTFEグラフトである場合は、これより低い有孔性を有する内部ePTFEグラフトを使用して、シーラントが血液収縮表面になるのを防止するバリアとして作用させる。また、有孔性が低いグラフトが標準的な臨床グラフトであるので、グラフトの表面積および微細構造を維持しながら、グラフトの外側を密封するという利点を達成することができる。高有孔性の外部ePTFEグラフトとこれより低い有孔性の内部グラフトとの組合せは、1回の押出成形で、高有孔性の内部ePTFEグラフトとこれより低い有孔性の外部ePTFEグラフトとの二重グラフトを作成し、二重グラフトを反転させることによって実験で達成したことは注目に値する。あるいは、反転しない1回の押出成形を使用することができる。
【0037】
1つの実施形態では、高有孔性グラフトを最初に、典型的な有孔性を有する標準的グラフトの内部に同心状に位置決めする二重有孔性グラフトが作成される。グラフトの一区間を切断し、始めは標準的グラフトであったグラフトの非内腔表面がグラフトの内腔表面になる、およびその逆になるように反転させる。反転したグラフトは、非内腔表面として高有孔性グラフトを有しており、上述したようにポリウレタンで(非内腔表面を)コーティングされる。さらに別の好ましい実施形態では、約260ミクロンの厚さで、約100ミクロンのポリウレタンシーラント層、約700ミクロンのポリウレタン発泡体層、および約20ミクロンから約150ミクロンの外部ePTFEラップがあるグラフトが提供される。この実施形態の流体損は、上記で検討した試験装置を使用して測定し、約73グラム以下である。
【0038】
補足的研究を実行して、グラフト端部の順応性を調べるために縫合穴の出血を試験した。使用したePTFEグラフトは、グラフトの端部で肉厚が薄くなる(200ミクロン)ことを特徴とした。約40%のグリセリン/60%の水の混合物を約600ml/分で約2.2〜2.5psiの内圧および約37℃の液体温度で給送する流れループに内に、グラフトを設置した。6番手のプロピレン縫合糸を使用して、穴から糸を抜いた状態で3つの穿刺部を生成した。流体損をトレイ内に合計2分間採取した。次に、天秤を使用して流体損を測定した。対照グラフトは裸のePTFEグラフト(シーラントなしで同じ厚さ)であった。対照グラフトは、2分間の試験期間中に穴1個につき約2グラムの流体を失い、シーラントがあり、合計肉厚が約300ミクロンの実験グラフトは、同じ期間中に穴1個につき約0.13グラムしか失わなかった。
【0039】
ePTFE AVグラフト
シーラントでコーティングしたePTFEグラフトの以上の実施例は、有利な自己密封特性に関して検討している。しかし、ePTFE基体上にシーラント層を使用することは、グラフトの捩れ抵抗を大幅に低下させるという欠点を有することがある。したがって、上述した実施形態は、グラフトを曲げる必要がないような方法でePTFEAVグラフトを植え込む場合に好ましい。(図1Aおよび図1Bの実施例で示すように)植え込むためにePTFEAVグラフトを曲げる必要がある場合、グラフトに捩れ抵抗を与えるために追加の処理ステップが必要となることがある。
【0040】
コーティングしたePTFEグラフトの捩れ抵抗を向上させ、グラフトに長手方向のコンプライアンスも与える処理ステップの第1の実施例は、共通に譲渡され、参照によりここで完全に述べられているかのように本明細書に組み込まれるDellaCornaらの米国特許第4,995,899号に図示され、記載されているように、シーラントでePTFEグラフトをコーティングするステップの前に、ePTFEグラフトを長手方向に圧縮するステップである。ePTFEグラフトの圧縮は、例えばePTFEグラフトを円筒形の心棒に被せ、その縦軸に沿って圧縮力を加えることによって達成することができる。コーティング前にePTFEグラフトを圧縮すると、曲げ部の外径でグラフトが伸延し、曲げ部の内径で圧縮できるようにすることにより、捩れ抵抗を向上させるよう作用する。ePTFEAVグラフトの場合、シーラント層でコーティングする前にePTFEグラフトを長手方向に圧縮させることは、通常、さらなる処理ステップを実行しても、しなくても使用される。
【0041】
ここで、エラストマ材料の層でグラフトをコーティングする前にePTFEグラフト基体を半径方向に膨張させることにより、半径方向のコンプライアンスをePTFEグラフトに与えられることが発見されたことにも留意されたい。好ましい実施形態では、エラストマ材料の層をePTFE基体に加える前に、基体を、基体の元の直径の約1.5倍から約5倍の範囲の膨張直径へと膨張させる。別の好ましい実施形態では、エラストマ材料の層をePTFE基体に加える前に、基体を、基体の元の直径の約4倍から約5倍の範囲の膨張直径へと膨張させる。(エラストマ材料を加えた後に)半径方向の内力を除去し、グラフトを加熱すると、ePTFEコーティンググラフトが、ほぼ元のその直径へと戻る。その後に内力を加え、それを除去すると、ePTFEグラフトは、半径方向のコンプライアンスが与えられ、自然の血管を模倣するように戻る。
【0042】
コーティングしたePTFEグラフトの捩れ抵抗を向上させる処理ステップの第2の実施例は、グラフトの外面にビードを巻き付けるステップである。ビードが配置されるコーティング済みePTFEグラフトの仕様(例えばグラフトの材料特性、グラフトの寸法、シーラントの材料特性、シーラント層の寸法、グラフトの意図された用途、グラフトの意図された配置位置など)に応じて、幾つかのビードのパラメータが可能である。例えば、ビードの厚さ、ビード材料のタイプ、ビードの硬度、ビードの巻きの間隔、ビードの断面形状、およびビードの巻き角度は全て、ePTFEAVグラフトの意図された性能、特にその捩れ抵抗を達成するために変更することができる。さらに、放射線不透過性顔料をビードに組み入れて、X線コントラストのために放射線不透過性を提供することができる。ビードに組み入れられる放射線不透過性材料の実施例は、硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、タングステン、タンタルなどを含むが、それに制限されない。1つの実施形態では、ビードは、放射線不透過性を呈する金属材料を含む。以下に要約された実験Bでは、許容可能な捩れ抵抗を求めて様々なビードのパラメータを試験した。
【0043】
実験B
6mmのePTFEグラフトを用意した。約12グラムのCarbothanePC−3585Aを約88グラムのジメチルアセトアミド(DMAC)に溶解させ、約12%の溶液を準備した。次に、グラフトを最初に長手方向に圧縮した後、ノズル穴の直径が約1mm未満のBinksモデル2001噴霧ガンを使用して、ポリマー溶液をグラフトの外面に噴霧コーティングした。溶媒は、コーティングしたグラフトを約70℃の温度の炉の空気で約10分間加熱して除去した。追加のコーティングを加えて、約50〜300ミクロンの厚さを有するコーティングを実現した。コーティングしたグラフトは、約70℃のほぼ真空で約1〜16時間乾燥した。次に、コーティングしたグラフトのシーラント外面にDMAC(例えばポリウレタンシーラント)を噴霧して、ポリマーコートを軟化した。ここで、外部シーラント層にシリコーン系シーラントを使用する場合は、Pキシレンなどの材料を使用してシーラント層を軟化できることに言及しておく。
【0044】
次に、半径方向に支持するために、ビードをグラフトに螺旋状に巻き付ける。例えば金属(例えば超弾性金属、形状記憶材料、ステンレス鋼など)、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、PTFE、ePTFEなどの様々な材料のビードを用意できるが、この実験に使用するビード材料はePTFE、ニチノール(登録商標)およびポリエステルであった。溶媒を完全に除去した後に、ビードがシーラントに付着し、部分的にシーラント層に埋め込まれた。溶媒または接着剤を使用しない単純な処理ステップ(例えば熱、圧力など)でグラフトにビードを最適に付着させるために、ビードを螺旋状に巻き付けるグラフトの部分は、接触するビードと同じ材料または同様の材料を有することに留意されたい。したがって、ビードを施すべき区間がポリウレタンのシーラントでコーティングされている場合、ビードは同様のポリウレタン材料を含んでいなければならない。同様に、ビードを施す区間がコーティングされていない(つまり接触表面がePTFEである)場合、ビードはePTFEを含んでいなければならない。
【0045】
実験計画(DOE)は、上記の方法により作成されるようなビード付きのePTFEコーティンググラフトの捩れ抵抗の反応を検査するために、市販のソフトウェア(例えばDesignExpert Software)を使用して実行し、解析した。2つの要素を検査した。ビードの間隔(3レベル)およびビードの材料/サイズ(5レベル)である。間隔レベルは0.5mm、1.5mmおよび2.5mmであった。材料/サイズのレベルは、ePTFEIMPRA(登録商標)標準ビード(約0.700mm)、ePTFE IMPRA(登録商標)小型ビード(約0.400mm)、ニチノール(登録商標)線(約0.380mm)、ePTFE Davol(登録商標)ビード(約0.260mm)、およびポリエステルビード(約0.200mm)であった。DOEは、応答局面計画を使用した15回(3×5)で構成された。捩れ半径は1応答で、以下の方法を使用して測定された。一連の異なるサイズ(直径)の心棒および/または円盤を使用して、捩れが発生する前にグラフトを曲げられる半径(インチ)を測定した。心棒のセットは、1インチの厚さおよび1〜8インチの範囲の直径を有する。実験グラフトは、約6インチの長さに切断された。実験グラフトの端部を手で保持し、心棒の壁(傾斜表面)へと長手方向にゆっくり導入する。グラフトは、最大直径から始まって最小直径へと進む状態で、各サイズの心棒に連続して導入する。サンプルに捩れ反応を生じる最初の心棒を記録する。心棒直径を、グラフトの捩れ半径として記録する。
【0046】
この方法を使用して、値を記録し、ソフトウェアに入力する。応答は約0.5インチから約3.5インチの範囲であった。統計モデルは、応答表面線形分析について有意であった(p=0.004)。間隔(ファクタA、P=0.0146)および材料/サイズ(ファクタB、p=0.0055)は有意なモデル項であった。傾斜は、間隔が捩れ半径に対して増加しても、複数のビードタイプで同じであった。これは、間隔が小さいほど捩れ抵抗が良好であることを示した。最も優れた性能の材料/サイズはニチノール(登録商標)(約0.380mm)およびePTFEIMPRA(登録商標)標準ビード(約0.700mm)で、各間隔レベルで同一の応答であった。残りの3つの材料/サイズレベルは、以下の順序で望ましさが低下した。ePTFEIMPRA(登録商標)小型ビード(約0.400mm)、ePTFE Davol(登録商標)ビード(約0.260mm)、およびポリエステルビード(約0.200mm)である。結果は、硬度および大きい直径が捩れ抵抗に重要な役割を果たすことを示すようである。他のビードのタイプは、3つの異なるサイズであるが、硬度に関しては2つの類似した材料(ePTFEおよびポリエステル)で、直径が減少するにつれ増加する捩れを表すような性能であった。ソフトウェアのモデリングを使用し、間隔を約0.1mmへとさらに小さくすることにより、ニチノールとePTFEIMPRA(登録商標)標準ビードの両方が、約0.33インチというさらに優れた捩れ半径を提供できることが示された。ここで、さらなる試験によると、約72ショアDより大きい硬度のポリウレタンエラストマのビードは、優れた捩れ抵抗を呈し、エラストマのシーラント層に容易に接合できることが判明したことに言及しておく。ポリウレタン材料に充填材料を添加することによって、捩れ抵抗を改善できることにも言及しておく。さらに、ビードをグラフトに巻き付けながら、ビードに張力を加えることは、少なくともビードの間隔と同様に重要であると考えられる。
【0047】
コーティングしたePTFEグラフトの捩れ抵抗を向上させる処理ステップの第3の実施例は、シーラント材料をグラフト表面に選択的に配置するステップである。このような選択的配置は、コーティングしたePTFEグラフトの長さの少なくとも一部にわたって、間隔をあけてシーラント材料に分割したレーザアブレーションまたは他の方法で溝を付けることによって達成することができる。溝付けは、CO2レーザまたはシーラント層を通してePTFE基体まで正確な溝を切削できる他の装置を使用して達成することができる。溝は、任意の角度または深さでシーラント層に切り込むことができ、任意の長さで隔置することができる。さらに、溝の角度および/または溝間の長さは、選択された長さに沿って変更することができる。処理ステップとしてコーティングしたePTFEグラフトに溝を付けることは、単独で、または前述した処理ステップおよび/またはコーティングされたePTFEグラフトの捩れ抵抗を向上させる、本明細書で特に言及していない任意の処理ステップとの組合せで使用することができる。また、コーティングしたePTFEグラフトの選択された長さのみに溝を付けることができる(例えば植え込み後にグラフトが曲げられる、コーティング済みePTFEグラフトの中央部分)。以下に要約された実験Cでは、コーティングしたePTFEグラフトで溝付け処理ステップを実行し、溝付きグラフトを捩れ抵抗について試験した。
【0048】
実験C
ポリマーでコーティングしたePTFEグラフトを心棒に被せ、自動回転取付具に配置した2つのチャック間に固定する。CO2レーザとインタフェースをとり、レーザビームを走査して、任意の表面上に図形をエッチングするソフトウェアを使用して、図形を設計した。レーザパラメータを設定し、開始シーケンスを起動すると、レーザがコーティングしたePTFEグラフトのシーラント層に溝を切り込む。レーザビームは、シーラント層に溝のみが生成されるように調節され、したがってePTFEの表面はレーザに影響されない。数タイプの溝を切り込み、捩れ抵抗を評価した。この実験の結果は、溝の間隔を最小限に抑え(つまり約1mmから約5mmの範囲)、かつ/またはシーラント層の表面を通る溝の角度が、グラフトの軸に対して約80〜90°の範囲である(つまり、それに対してほぼ垂直である)場合に、最善の捩れ抵抗になるようであった。
【0049】
コーティングしたePTFEグラフトの捩れ抵抗を向上させる処理ステップの第4の実施例は、発泡体層をコーティングしたePTFEグラフトに載せるステップである。発泡体はポリマー材料を含むことができ、コーティングしたePTFEグラフト(単独で、また組み合わせて上述の処理ステップのいずれかを経験していてもよい)の外面に配置してよい。コーティングしたePTFEグラフトの外面にポリマー発泡体を配置するには多くの方法があることが当業者には認識されるはずであるが、本明細書では、以下のような3つの実施例を提供する(使用する材料の例示的な量を含む)。
1)約16グラムのBionateポリウレタンを約84グラムのジメチルアセトアミドに溶解し、コーティングしたePTFEグラフトの表面にこの溶液を噴霧コーティングし、その後にグラフト全体を即座に約30分、(室温で)水に浸漬するか、入れ、次に約40°の水温に約16時間配置する。析出したポリウレタン発泡体は、その後約24時間、空気乾燥する。
2)塩浸出技術では、乳鉢と乳棒を使用して塩化ナトリウムを粉砕し、300メッシュ(75ミクロン)の篩を使用して篩い分ける。約2.5グラムのBionateポリウレタン、約10グラムのジメチルアセトアミドおよび約7.5グラムの塩化ナトリウムを250mlのプラスチックビーカ内で混合する。ポリマーの完全な溶解が達成されるまで、溶液を攪拌する。次に、ポリマー溶液と塩の分散物をグラフトの表面に噴霧コーティングする。乾燥により溶媒を除去し、塩はグラフトを湯(約60℃)に約16時間浸漬するか入れて除去する。
3)約12グラムのテトラヒドロフラン(THF)および約88グラムのCarbothaneポリウレタンを混合し、透明な溶液が獲得されるまで攪拌する。標準的な噴霧装置を使用して、混合物をグラフト表面に噴霧する。噴霧中にTHFが蒸発し、グラフト表面の周囲に巻き付いたポリウレタンの紐または細長いポリウレタン粒子が残り、その結果、グラフトの周囲には有孔性発泡体状の基体が生じる。
【0050】
前述した技術に関して、下にあるePTFE基体に付着させるポリマー発泡体を生成するために、他のポリマーおよび化合物も同等に効果的であることを認識されたい。例えば、塩浸出技術の別の実施例では、ポリマーが溶液に溶解し(しかし塩ではない)、ポリマー溶液を生成するように、シリコーンまたはウレタンのようなポリマーを細かく粉砕した塩化ナトリウムなどの塩、炭酸水素アンモニウムおよび/または炭酸アンモニウムと組み合わせることができる。次に、この溶液を基体(最初にポリマーのベース層でコーティングしてあってよい)に噴霧またはコーティングして、塩およびポリマーの母材を生成することができる。さらなる処理は、塩の細粒が溶解したポリマー母材に孔が形成されるように、ポリマー溶媒を蒸発できるようにし、水浸出によって塩を除去することを含む。重炭酸アンモニウムおよび/または炭酸アンモニウムを使用する場合は、約30℃の空気温度に設定された炉内で単純にグラフトをゆっくりと加熱することにより、水なしでこれらの塩を除去することができる。
【0051】
捩れ抵抗を提供すること以外に、外部発泡体層を有することの主な利点は、グラフトの密封反応が向上することであるが、さらなる利点は、グラフトに好ましい「感触」を提供することであり、これは発泡体が配置されるグラフトの構成に関係なく(つまり以上の処理ステップを幾つ採用しているかに関係なく)真実である。特に、溝切りを実行してコーティングしたePTFEグラフトに関して、発泡体は溝付き区間に入り、これらの区間の密封および流体損の障害の補助、さらに(細菌汚染の可能性がある溝内の血液蓄積を防止することにより)感染抵抗性を提供する。
【0052】
上記の処理ステップを使用して作成したコーティングしたePTFEグラフトは、単独または組み合わせて、ePTFEテープなどの有孔性材料の外層を巻き付けることにより、ePTFEAVグラフトとして使用するためにさらに準備することができる。外部ラップを追加すると、ePTFEAVグラフトへの組織の内殖を強化して、体組織内へグラフトを係留し、ポリウレタン層への組織流体の曝露を減少させるとも考えられる。外部ラップの厚さおよび密度は、捩れ抵抗および取り扱い性が悪影響を受けないように選択することができる。下にあるポリウレタンなどのPTFE以外の材料にePTFEテープを接着することに関しては、THFのような溶媒の付随使用は、ePTFEテープを下にある材料に付着させる作用があることが発見されている。THFまたは他の溶媒は、テープをグラフトに適用した(つまり螺旋状に巻き付けた)後に噴霧するか、巻き付ける前にテープを溶媒に浸漬することによってePTFEテープに適用することができる。
【0053】
好ましい実施形態では、ePTFEテープは、最初に溶媒配置装置の上、またはその中を通した後に、ポリウレタンなどのシーラント層に巻き付ける。例えば、ePTFEテープをプーリシステム上のスプールから供給しながら、心棒上のグラフトを回転することができ、ePTFEテープは、心棒とプーリシステムの間に配置された配置装置の上を通過する。配置装置は様々な構成にすることができるが、1つの実施形態では、配置すべき溶媒を含む容器に接続された1つまたは複数の口、スリットまたは他の開口がある加圧された管、圧力制御装置および調整器である。配置管の開口の上にはスポンジ、または手順が開始したら溶媒で飽和する同様の機能の品が配置される。ePTFEテープがプーリシステムのスプールから心棒上のグラフトへと供給されると、それは配置管のスポンジ上を通過し、したがって等量の溶媒がePTFEテープに加えられる。
【0054】
表5は、標準的な薄肉ePTFEグラフトを、上記の処理ステップの1つまたは複数を有するePTFEグラフトと比較した場合の捩れ抵抗および流体損に関して得られた結果を示す。シーラント層を有するこれらのグラフトに使用されたシーラントは、約300ミクロンの厚さを有するCarbothanePC−2585Aであった。溝付けは、グラフトに対して約90°の角度でCO2レーザを使用し、約2mmの間隔で実行した。ラップは、約0.096mmの厚さおよび約6mmの幅を有するePTFEテープであった。
【表5】
【0055】
表5の結果は、上述した処理ステップの組合せを使用して準備したePTFEAVグラフト、つまり発泡体層および外部ラップがある溝付きシーラント層は、上述した処理ステップのいずれもないコーティングしたePTFEグラフトと比較して、ほぼ最適な密封レベルを維持しながら、はるかに優れた捩れ抵抗を提供することを示す。
【0056】
実験D
上記で特定した処理ステップの組合せは、ポリマーの弾性能力および/または形状記憶能力を向上させることができる。特に、本発明の1つの実施形態では、長手方向および/または半径方向の圧縮を通じてポリマーの自己密封特性を向上させることができる。というのは、ポリウレタン層は、(例えば挿入した針をそこから抜くなどの)応力の後に、元の形状へとより迅速に回復するからである。さらに、異なる半径方向のゾーンがあるePTFEAVグラフトを作成するために本明細書に記載された処理ステップは、半径方向の各ゾーンのように、グラフトの長さに沿って異なる長手方向ゾーンを作成するためにも使用することができ、長手方向の各ゾーンは、特定の1つまたは複数の特徴(例えば縫合保持強度、自己密封特性、捩れ抵抗など)を呈するように最適に準備されることを理解されたい。
【0057】
実験Dでは、約28グラムのポリウレタンを約372グラムのTHFに溶解させ、その結果の溶液を(約1mm未満のノズル孔径のBinks(登録商標)モデル2001スプレーガンを使用して)約2インチの距離で、回転取付具上で回転するePTFE基体の表面に噴霧した。グラフトの合計肉厚が約50ミクロンになるまで、この第1層を加える。次に、スプレーガンをグラフトから約30インチの距離まで離し、溶液を再びグラフトの回転表面に噴霧したが、この距離は、グラフト表面に到達する前に発泡体構造をポリウレタンに与える。結果のグラフト肉厚が約1mmになるまで、ポリウレタン発泡体を追加した。次に、グラフトを約100℃の空気温度に設定した炉に約2時間入れた。次にグラフトを長手方向に圧縮して、元の長さの約80%にした(例えば元の長さが10インチのグラフトを8インチに圧縮した)。圧縮しながら、上記で検討したようなポリウレタンビードを、約2.5mmから約3.5mmのビード間隔で発泡体層に螺旋状に巻き付けた。次に、ポリウレタン発泡体の別の層をビード上に適用し、ePTFEテープの外部ラップがそれに続き、これはグラフトの外径を約1.9mmから約1.2mmに減少させるために圧縮しながら適用した。結果の生成物を、約100℃の空気温度に設定した炉に約1時間入れて、硬化させた。硬化ステップの後、試験するためにグラフトを4つの等しい部分に切断した。
【0058】
実験Dのグラフトを、同様に作成した2つの異なるセットのグラフトと比較した。ただし、1セットのグラフトは長手方向に圧縮されておらず(しかし半径方向には圧縮されている)、第2セットは長手方向にも半径方向にも圧縮されていない。グラフトを、約1psiから約2psiの内圧の水流ループおよび約600ml/分の流体流を備えたカニューレ挿入取付具に取り付けた。14ゲージの針を各グラフトの壁に通して挿入し、所定の位置に1時間、2時間、3時間または4時間の滞在時間にわたって維持した。同様の滞在時間では、非圧縮セットのグラフトの平均流体損は、半径方向に圧縮したセットのグラフトのそれより大きく、これは実験Dのグラフトのそれより大きく、これは記載された方法で長手方向と半径方向の両方に圧縮すると、ポリウレタン層に向上した自己密封特性を与えることを示す。
【0059】
図2から図9は、上記で特定した処理ステップのうち1つまたは複数を含むコーティングしたePTFEグラフトの図である。図2は、中央部分16に通じるが中央部分16を含まない長さの部分にわたってポリウレタンコーティング14を有するePTFE基体12を示し、中央部分は、自身上に配置されて螺旋状に巻き付けられたPTFEビード18を有する。図3は、図2のePTFEグラフト上のポリマー発泡体層22を示し、図4は、図3の発泡体層22の周囲に螺旋状に巻き付けてePTFEAVグラフト26を生成するePTFEテープ層24の外部ラップを示す。図5は、ループ構成(つまり中央部分16に沿って曲げられた)図4のグラフト26を示し、非常に小さい半径で優れた捩れ抵抗を呈する。図6は、その全長にわたってポリウレタンコーティングを有するePTFE基体を含むグラフト28を示し、コーティングは、グラフトの縦軸に対してほぼ垂直の角度で切り込まれた溝32を有する。グラフト28は、その長さに沿って長手方向に延在する1対の平行方向配向線も有する。図7は、ループ構成の図6のグラフト28を示し、溝32によって提供される捩れ抵抗を実際に示す。図8は、グラフト28と類似しているが、中央部分42にシーラント層がなく、代わりに(図2のように)螺旋状に巻き付けたPTFEビード18を含むグラフト38を示す。図9は、ループ構成の発泡体層44があるグラフト38を示し、これも非常に小さい半径で優れた捩れ抵抗を示す。
【0060】
図10は、本明細に記載されたようなePTFE AVグラフトの様々な材料の層を示す。図10の層の配置は、様々なタイプの層を例示するものであり、相互に対する層の順番を必ずしも反映するものではないことを認識されたい。ePTFE管状基体10は、上記で検討したような薄肉グラフトまたは高有孔性グラフトを含んでよく、ポリウレタンのベースコート20で囲まれる。このベースコート20は、1つの実施形態ではePTFE基体10の全長にわたって配置され、ポリウレタンのような材料で作成してよい。ベースコートの一部はグラフトの壁に浸透する。シーラント層30はベースコート20上に配置され、これもポリウレタン(または上記で検討したように他のタイプの材料)で作成してよく、グラフトの肉厚、シーラントのタイプなどの様々な要素に依存する厚さを有する。しかし、一般的にシーラント層およびベースコートの厚さは、約10〜400ミクロンの範囲であり、好ましくはベースコート20は約20ミクロンから約40ミクロンであり、シーラント層およびベースコートは合計約100ミクロンである。シーラント層30は、グラフトの全長にわたって配置してよいが、1つの実施形態ではグラフトの端部にもグラフトの中央部分にも配置されない。上記で検討したように、シーラント層30は、グラフトの選択された長さに沿って溝を切り、捩れ抵抗を補助することができる。シーラント層30上には発泡体層40が配置され、その後にビード層50、別の発泡体60および外部ラップ層70がある。
【0061】
図11から図14は、ePTFE AVグラフトの他の好ましい実施形態の実施例を示し、それぞれが図10で説明した層の一部または全部を組み込む。図11は、ePTFEAVグラフト100の断面図であり、ePTFE基体10がその長さに沿ってベース層20でコーティングされる。ベース層20の頂部には、軸方向に隔置された位置にシーラント層30があり、発泡体層40がシーラント層30上に配置されて、したがって発泡体層40は、シーラント層30が実質的に欠けている区域でベース層20と接触する。発泡体層40上には、ビードがグラフト100の中央部分の周囲で螺旋状になってビード層50を生成し、別の発泡体層60が加えられる。発泡体層60の周囲には、(上記で検討したような)ePTFEテープなどの材料を巻き付けることによってラップ層70が配置され、これは螺旋状に巻き付けることができる。図12は、ePTFEAVグラフト200の断面図であり、これはePTFE AVグラフト100と類似しているが、違いはシーラント層30にギャップが存在する位置にビードが配置される(つまり、ビードが、シーラント30を含むグラフト200の長さと重ならない)ように、ビード層50が、グラフト200の中央部分の隔置された長さで螺旋状になったビードを含むことである。この実施形態の1つの利点は、まさに吻合部までグラフトの捩れ抵抗を保持しながら、吻合部でグラフト端部を縫合可能にするために、外科医がグラフトのビードの一方端から任意の所望の長さまでほどくことができる能力である。
【0062】
図13は、ePTFE基体10上にベース層20を有するePTFE AVグラフト300の断面図である。この実施形態では、ベース層20上に配置されたシーラント層30が、グラフト300の中央部分に沿って連続的であり、「V」字形溝付き区間32がベース層20に切り込まれている。図示のように、溝付き区間32は、3つの小さい間隔とその後の1つの長い間隔で隔置されている。しかし、このような間隔は、グラフト300の所望の可撓性および捩れ抵抗を達成するために、多くの異なる方法でパターン化することができる。発泡体層40をシーラント層30上に配置し、ラップ層70がそれに続く。図14は、図13のそれと類似したシーラント層30を有するが、グラフト300の中央部分にあるシーラント30の長い間隔の代わりに、グラフト400の中央部分にビード層50が配置されたePTFEAVグラフトの断面図である。
【0063】
上述したグラフトはまた、それぞれ、その外面に沿って1つまたは複数の長手方向配向線(例えば1つまたは複数の青い縞)を組み入れて、植え込み中の適切な位置合わせ(捩れがないこと)を保証できることを認識されたい。1本または複数の配向線は、製造中に(例えば非均質な特徴のグラフトを回避するために)回転する心棒などに装着する場合にグラフトが捩れていないことを保証することにも役立てることができる。例えば、本明細書で検討する自己密封式人工血管のePTFE基体は、1本または複数の着色した(例えば黒、青などの)線を付けて製造することができ、したがって(例えば自己密封式人工血管を構築する際のさらなる処理ステップで)基体が配置される心棒の線を位置合わせすると、グラフトが捩れていないことが製造業者に視覚的に確認される。1本または複数の配向線は、標準的な同時押出成形プロセスを使用して、基体に組み入れることができる。好ましい1本または複数の配向線は、黒、青または緑の生体適合性顔料または染料から作成される。最も好ましい色は青である。自己密封式人工血管の外面に組み入れられる1本または複数の配向線に関して、印刷プロセスを実行することができる。グラフトの基体または外面の1本または複数の線は、グラフトの中心を示すか、グラフトの様々な領域(カニューレ挿入領域など)を示す実線、点線またはその組合せでよい。1本または複数の線ではなく、英数字の識別子または線と英数字識別子の組合せをePTFE表面に印刷するか、他の方法で配置することができる。
【0064】
自己密封式人工血管の外面がePTFEを含む場合は、ePTFE表面に1本または複数の線が確実に付着するように、特殊なインク組成が必要である。1つの実施形態では、ePTFE表面の配向線のインク組成は、ePTFE表面に良好に付着する適切なポリマー結合剤、生体適合性染料または顔料、およびポリマー結合剤を溶解する溶媒を含む。また、インク組成は、(インクの影を調節する)二酸化チタンのような白い無機固体材料および粘度調製剤を含んでよい。配向線の作成には多くの顔料または染料を使用してよいが、人間への植え込みに長い歴史を有する顔料または染料が最も好ましい。インクの好ましい色成分は、フタロシアニナート(2−)銅、D&Cの青9号、D&Cの緑5号、クロロフィリン銅複合体、油溶性物質、クロムコバルトアルミニウム酸化物、クエン酸第二鉄アンモニウム、D&Cの青5号、FD&Cの青2号、D&Cの緑6号、二酸化チタン、炭素、酸化鉄などを含むが、それに制限されない。フタロシアニナート(2−)銅が最も好ましい青の成分である。インクの色(例えば黒、青など)は、約6500°Kの温度を有する光で見て判断してよい。
【0065】
実験E
ePTFE AVグラフトの2つの好ましい実施形態を、予備的な非臨床生体内研究で評価した。グラフトは4匹のヒツジで評価し、各動物に対照グラフトおよび実験グラフトを植え込んだ。対照グラフトは、例えば参照によりここで完全に述べられているかのように本明細書に組み込まれるRobinsonの米国特許第4,604,762号で記載されているように複数の層を有するポリウレタングラフトであった。実験グラフトA−1およびA−2は、本明細書で記載されたようなePTFEAVグラフトであり、その少なくとも一部の特定の構成は、図15に示したものと同様に(外部ラップ層70がない状態で)図示されている。実験グラフトB−1およびB−2は、本明細書で記載されたようなePTFEAVグラフトであり、その少なくとも一部の特定の構成が、(外部ラップ層70のある状態で)図15に図示されている。全ての実験グラフトは、左大腿動脈および静脈に植え込んだ。全ての対照グラフトは、反対側の右大腿動脈および静脈に植え込んだ。
【0066】
動物に麻酔をかけた後、適切な外科技術を使用して、左右の大腿動脈および静脈を外科的に切り離した。次に各グラフトで個々の鼠径領域にループ状にトンネルを通した。動物は、全身にヘパリンを投与し、グラフトは6−0プロレン縫合糸を使用して端部から側部への方法で吻合した。吻合の完了時に血管クランプを外した。両方のグラフト処置の後、16GA透析針を実験グラフトの壁に5分間刺した。次に針を抜き、血液損および止血時間を測定した。次に、透析針の穿刺処置を対照グラフトで実行し、測定値をとった。所望の測定値を記録した後、標準的な方法で切開部を閉じ、動物を麻酔から回復させた。
【0067】
動物に14日間アスピリンを投与した(81mg/日)。7日目にグラフトを(当業者に理解されるような)触診可能な脈拍について評価した。13日目に、動物に麻酔をかけ、皮膚を通して透析針穿刺試験を繰り返し、両方のグラフトで血管造影法を実行した。次に、動物を安楽死させ、グラフトを10%のホルマリンで(生体内)潅流固定し、組織評価のために外殖した。非内腔組織内殖に関する観察を外殖片で実行し、実験グラフトA−1およびA−2にはラップがなく、外部ePTFE層には、組織内殖があっても、非常に少ないことが分かった。(止血までの)カニューレ挿入時間および血液損が、次ページの表6に提示されている。実験グラフトの平均値は対照標準のそれより低かったが、n=6について外殖前の血液損(p=0.7403)に統計学的差はなかった。
【0068】
表6で見られるように、実験グラフトの方が、対照グラフトと比較すると、内殖および外殖処置の両方でカニューレ挿入時間が非常に短く、外殖処置では同様の血液損も達成した。これは、AVグラフトに使用するためにポリウレタン(PU)上のePTFEによって得られる多くの利点があるので非常に重大であり、これは、1)ePTFEは、血液導管として優れた働きをした25年の臨床歴史を有するが、これと比較して米国ではPUの臨床歴史は3年であり、2)ePTFEはPUより優れた劣化抵抗を提供し、3)ePTFEはPUより優れた捩れ抵抗を提供し、4)ePTFEは摩擦係数が低いので、PUより血栓摘出(グラフトから血栓を引き出すこと)が容易であり、5)ePTFEグラフトは外装なしでトンネルを通すことができるが、PUグラフトは、PUの高い摩擦係数のせいで外装とともに使用しなければならないことである。
【表6】
【0069】
次に、提供された説明により作成されたePTFE AVグラフトの1つの好ましい実施例について説明する。炭素で裏打ちした内面があるePTFE基体を、(これも炭素で作成された)配向線とともに押出成形し、最終的なノード間距離(IND)が約10ミクロンから約40ミクロンで、肉厚が約200ミクロンから約300ミクロン、好ましくは約260ミクロンになるように、長手方向に拡張する。ePTFE基体を心棒(例えば約6.3mmの直径を有する)上に位置決めし、ポリカーボネートポリウレタンを2工程適用しながら心棒を回転する。ポリウレタンは、ノズル孔の直径が約1mm未満のBinksモデル2001スプレーガンを使用して適用し、ポリウレタンをスプレーガンのノズルから噴霧すると、ポリウレタンおよびTHFなどの溶媒が(非酸化剤タイプの阻害剤とともに)スプレーガンの頂部から加圧され、周囲空気と混合する(しかし、1つの実施形態では、空気の代わりに窒素を使用する)。ポリウレタンを基体に噴霧する間、スプレーガンは、約2インチから約15インチ、好ましくは約3インチ未満だけePTFE基体から隔置する。第1工程では、心棒を約150rpmから約260rpmで回転し、第2工程では心棒を約350rpmから約675rpm、好ましくは約435rpmで回転する。これは、グラフト上にシーラント層またはコーティングを形成し、好ましくは約100ミクロンの厚さを有する。
【0070】
所望の粘度が達成されるまで、最初に上述したように溶媒に溶解される第1工程のポリウレタン(ポリウレタン紐の長さは粘度とともに変化し、粘度が高いと紐が長くなる)を、約20ミクロンから約40ミクロンの厚さを有するポリウレタンのベースコートが適用されるまで、基体の外壁に適用する(一部のポリウレタンは外壁に浸透する)。状況によっては、ポリカーボネートポリウレタンのようなポリウレタンは、溶媒中で溶解するために最初に加熱しなければならないことに留意されたい。次に、その結果の構造(基体および第1工程のポリウレタン)を(例えば手で)長手方向に圧縮して、第2工程を適用し、ここでポリウレタンシーラント層の合計厚さが約100ミクロンになるまで(レーザマイクロメータを使用して、厚さを検証する)、追加のポリウレタンのコーティングを同じ方法で(しかし心棒をさらに高速で回転して)基体およびポリウレタンのベースコートに適用する。
【0071】
次に、ポリウレタン発泡体層を、約700ミクロンの厚さを有するポリウレタンシーラント層上に適用し、したがって発泡体層を適用した後のグラフト構造の合計肉厚は約1mmから約1.1mmになる。好ましい実施形態では、発泡体層はePTFE基体の厚さと等しい厚さを有するか、さらに好ましい実施形態では、発泡体層はePTFE基体の厚さの2倍の厚さを有し、最も好ましい実施形態では、発泡体層はePTFE基体の厚さの2倍より大きい厚さを有する。発泡体層は、ポリカーボネートポリウレタンをシーラント層上に約12〜20インチの距離、好ましくは約15インチの距離で噴霧することによって適用される。発泡体層を適用した後、グラフト構造を約50℃から約70℃の空気温度に設定した炉に約1時間から約24時間、好ましくは約50℃の空気温度に約15時間入れて硬化させ(つまり破壊された水素結合を再確立し)、その後にポリウレタンと硫酸バリウム(視覚化のために不透明性を提供する)のビードを、硬化したグラフト構造に螺旋状に巻き付ける。ビードは、円形、楕円形などの様々な断面形状を有することができるが、好ましい実施形態では、ビードは長方形の形状を有する。
【0072】
特に、好ましい実施形態ではビードは、アリゾナ州テンペのPolymerEngineering Groupが供給する(剛性を上げるために)硫酸バリウムの充填剤が20%のCarbothanePC−35(硬度は72ショアD)で、長方形の断面形状を有し、長辺は約1mmおよび短辺は約500ミクロンであり、長辺がグラフトの外面に当てて配置されている。ビードをグラフトに適用する好ましい方法では、溶媒の溶液を通してグラフトの外面に巻き付けながら、ビードの隣接する巻線が約1mmから約2mm隔置された状態で、約500重量グラムの張力を加えることにより、ビードに予め負荷をかける。ビードが発泡体層に埋め込まれるように、巻き付けは張力をかけて実行される。次に、別の発泡体層を適用し、その結果、全体的肉厚は約1mmから約5mmになり、最も好ましくはカニューレ挿入すべき区域のビード間隔は約4mmであり、中心の可撓性ビードは約2mmである。この発泡体層上にePTFEテープを適用し、これは縁部が多少重なるように螺旋状に巻き付けることが好ましい。ePTFEテープの巻き付けは、基体と同じIND(つまり約10ミクロンから約100ミクロン)を有するが、肉厚は約90ミクロンから約300ミクロンと、はるかに薄い。ePTFEグラフトの最終的厚さは約1mmから約2mmであり、好ましくは約1.5mmである。
【0073】
ePTFEテープを巻き付けながら、溶媒を同時に適用して、発泡体へのテープの付着を補助する(THFまたは他の中性溶媒はポリウレタンを溶解すると考えられ、したがって巻き付けプロセス中に少量適用すると、その間に力学的結合が生じる)。巻き付けプロセス中に張力(例えば約100重量グラムから約200重量グラム)を加え、その結果、ポリウレタンはePTFE微細構造へと進み、結合を補助する。この実施例では、ePTFEテープの重なる領域が相互に結合せず、代わりに下にあるポリウレタン発泡体に結合し、それによって長手方向のコンプライアンスを可能にすることができる。しかし、別の実施形態では、テープの重なる領域が相互に接着する。張力をかけてビードおよび/またはテープを巻き付けると、グラフトの密封反応を増大させると考えられる。次に、任意選択の配向線をグラフトの長さにわたって長手方向に適用することができる。この時点でまだ覆われていないグラフトの両端を、次にポリウレタンの層で覆い、その後にビードを螺旋状に巻き付け、これは埋め込まれたビード層に影響を及ぼさずに、所望に応じて臨床医がビードを除去できるように、この段階で適用される。ビードは、結合を補助するために溶媒が適用される。
【0074】
次に、他で述べていない限り上述した処理方法および機器を使用する別の好ましい実施形態について説明する。炭素で裏打ちした内面があるePTFE基体を、(これも炭素で作成された)配向線とともに押出成形し、最終的なノード間距離(IND)が約10ミクロンから約40ミクロンで、肉厚が約100ミクロンから約500ミクロン、好ましくは約200ミクロンになるように、長手方向に拡張する。ePTFE基体を心棒上に位置決めし、ポリカーボネートポリウレタンと溶媒の2工程を基体の全長に適用しながら心棒を回転する。第1工程後、基体を長手方向に約20%圧縮させて、この長さに維持しながら、第2工程を基体の全長に適用し、これによって基体はポリウレタンの効果により元の長さの約80%にとどまる。2工程のポリウレタンは、グラフト上にシーラント層を形成し、約10ミクロンから約150ミクロン、好ましくは約100ミクロンの厚さを有する。
【0075】
次に、第1ポリウレタン発泡体層を、上述したようにポリウレタンシーラント層に適用する。この第1発泡体層は、基体の各端部に第1発泡体層がないように、基体の中央部分にしか適用されない。基体の各端部の縁から第1発泡体層までの距離は、最大で約5cmである。第1発泡体層の適用後、ある長さのポリウレタンの第1ビードを硫酸バリウムとともに、第1発泡体層を含む基体の中央部分に(上述したように張力をかけて)螺旋状に巻き付ける。第1ビードは楕円形の断面形状を有し、寸法は高さが約200ミクロンから600ミクロン、幅は200ミクロンから1200ミクロンの範囲である。(例えば周囲温度または熱によって)揮発させて、ビードを巻き付ける前に溶媒を全体的に除去する。次に、ある長さの第2ビードを、基体の縁部から約5cmから基体の縁部から約6cmまで、第1発泡体層の各端部に(上述したように張力をかけて)螺旋状に巻き付ける。この第2ビードも楕円形の断面形状(2つの楕円焦点が同一である場合は円形でよい)を有するが、断面積は第1ビード(例えば約100ミクロンの直径)より小さい。第2ビードを適用した後、第2発泡体層を基体の中央部分に沿って第1発泡体層およびビードに適用し、第2発泡体層は、第1発泡体層を越えて長手方向に延在することなく、第1発泡体層をほぼ覆う。第1および第2発泡体層の組み合わせた合計厚さは約300ミクロンから約1500ミクロン、好ましくは約700ミクロンである。
【0076】
次にePTFE部材、好ましくはある長さのePTFEテープを、組み合わせた発泡体層に張力をかけて巻き付け、テープが組み合わせた発泡体層に接触する前に溶媒をテープに与える配置装置の上、またはその中に通す。テープの縁部は多少重なることが好ましい。ePTFEテープは基体と同じIND(つまり約10ミクロンから約40ミクロン)を有するが、肉厚は約100ミクロンから約300ミクロンと、はるかに薄く、好ましくは約260ミクロンである。次に、別の長さの第2ビードを、基体の縁部からePTFEテープ(組み合わせた発泡体層の上にある)のほぼ縁部まで、または基体の各端部で約6cmの距離にわたって基体の各端部に螺旋状に巻き付ける。次に、基体の2つの端部(つまり各縁から約6cmの長さ)を迅速に溶媒に浸漬する。それぞれが約6cmの長さを有する全体的に管状の2つのePTFEスリーブを準備し、第2ビードが全体的に覆われて、スリーブがePTFEテープの縁部上に部分的に延在するまで、基体の端部に「ねじ込む」(つまり、第2ビードが「ねじ山」として作用する状態で、スリーブが基体の中央部分に向かう方向に動作するように、力を加えて回転させる)。次に、スリーブ付き端部を迅速に溶媒に浸漬し、グラフトを約50℃の空気温度に設定された炉に約14時間から約16時間の範囲の時間入れる。
【0077】
図16Aから図16Dは、ePTFE AVグラフトの実施形態を示し、図16Aおよび図16Cはそれぞれ、現在好ましい中央部分および端部の設計を呈する。図16Bおよび図16Dは、以前に好まれていたePTFEAVグラフトの中央部分および端部設計を示す。最初に図16Aおよび図16Bを参照すると、中央部分はePTFE基体80を含み、その上にシーラント層82(本明細書に記載されたように1つまたは複数の層を含むことができる)が配置され、その上に発泡体層84(これも本明細書に記載されたように1つまたは複数の層を含むことができる)が配置/形成される。発泡体層84にはビード86が埋め込まれ、ePTFE部材88が発泡体層84の表面に接着し、発泡体層84を覆う。図16Aのグラフトは、少なくとも以下の点で図16Bのグラフトとは異なる。つまり、1)ビードの厚さが約16%減少し、2)シーラント層82の厚さが約67%減少し、3)ビード86がシーラント層82に約44%近づき、4)発泡体層の厚さが約26%減少し、5)ビードの巻線間の間隔が約18%増大している。これらの変化の結果、グラフトの輪郭が縮小し、グラフトの機能を改善した。
【0078】
図16Cおよび図16Dに関しては、ePTFE AVグラフトの端部設計も変更され、グラフトの機能および性能を改善した。図16Dで示した以前の端部設計では、第1シーラント層92をePTFE基体90上に配置し、ePTFEテープ層94がそれに続き、第2シーラント層96をePTFEテープ層94に配置した。次に、ビード98を第2シーラント層96に巻き付け、それに接着した。図16Cで示した新しい設計では、ビード98より小さい断面積のビード99を、ePTFE基体90に直接巻き付け、本明細書で説明した方法およびプロセスでそれに接着した。次に、ePTFEテープのラップではなくePTFEスリーブ102をビード99上に押し出すか、ねじ込み、その結果、グラフトの端部の輪郭がはるかに低くなる。ePTFE基体90へのePTFEスリーブ102の接着も、基体90にビード99を螺旋状に巻き付け、スリーブ102をビード99上に配置し、THFなどの適切な溶媒をスリーブ102の外面に噴霧することによって達成することができ、したがって溶媒は外部スリーブ102を通ってビード99へと浸透し、これがビード99のポリウレタン部分を軟化して、スリーブ102および基体90の両方へと結合部を形成する。この技術によって、基体に溶媒を噴霧するか、ビード99を溶媒に浸漬する必要なく、基体90からのスリーブ102の離層を大幅に減少させることができると考えられる。
【0079】
図16Aで提示された実施形態では、シーラントまたはベース層82は約0.04mmの厚さであり、発泡体層84は、発泡体層84の合計が約1.2mmになるように、約0.6mmの第1発泡体層を噴霧して、この第1発泡体を乾燥してから第2発泡体層を噴霧することによって形成される。図16Cで提示された実施形態では、ビード90は、約0.2mmの平均直径を有して、約2mm隔置され、基体90と外部スリーブ102との境界付近に配置され、外部スリーブ102は約500ミクロンである。
【0080】
上述したように、自己密封式人工血管の好ましい実施形態は、ePTFEグラフトが動物試験条件で自己密封の能力を実証するために使用されてきた。以下で動物試験プロトコルの説明をする。
【0081】
この研究には、ヒツジ様(ヒツジ)動物を使用した。調整されたヒツジが広く使用され、一般に人工血管調査のモデルとして受け入れられている(「Invivo patency of endothelial cell−lined ePTFE prosthesesin an ovine model」Artificial Organs 1992年8月号16(4):346〜53;P.Tillmanらの「Plateletfunction and coagulation parameters in sheep duringexperimental vascularsurgery」Lab.Anim Sci1981 31:263〜7;T.Kohlerら「Dialysisaccess failure: A sheep modelof rapid stenosis」JVascSurg 1999 30:744〜51参照)。6mm直径のグラフトについて、良好なサイズ一致を達成することができ、最大35cmのグラフト長さを簡単に頚動脈から頚静脈のモデルに植え込むことができる。首に配置されたグラフトには、脈拍の触診によって容易にアクセスし、手持ち式ドップラで検査することができる。説明された研究によると、6個の実験/試験グラフト(Sedona)および2つの対照グラフト(Vectra(登録商標)AVアクセス競合グラフト)を4匹の動物に植え込んだ。2匹の動物が、右頚動脈から左頚静脈および左頚動脈から右頚静脈を使用して、1個の対照標準(Vectra(登録商標)AVアクセス競合グラフト)と1個の試験グラフト(Sedona)を左右対称に受けた。2匹の動物が、右頚動脈から左頚静脈および左頚動脈から右頚静脈を使用して、2個の試験グラフト(Sedona)を左右対称に受けた。
【0082】
図16Aおよび図16Cに関して説明した方法で作成した6個の実験/試験グラフトを使用する一方、2個の市販のグラフトを使用した(期限切れ状態で殺菌パッケージに入り、商標「Vectra(登録商標)」AVで販売され、内径は6mm、長さは40cm(製品コード#T6040−001))。4匹の動物にアクセスグラフトを配置した(2匹にはそれぞれ、1個の実験グラフトと1個のVectra(登録商標)AVアクセスグラフト、残りの2匹には2個の実験グラフト)。全てのグラフトは同じ内径で、近似の長さであった。植え込み直後にグラフト(実験グラフトおよびVectra(登録商標)グラフト)にアクセスし(14ゲージの針でカニューレ挿入)、次に好ましくは植え込み後最初の24時間以内であるが、最大では植え込み後48時間以内に実行される1つの追加的カニューレ挿入セッションで、異なる位置にアクセスした。全てのグラフトは、植え込み後8週間で外殖し、植え込み後4週間での外殖という選択肢があった。
【0083】
使用した材料は、6個の殺菌実験グラフト、2個の殺菌Vectra(登録商標)AVアクセスグラフト、体重が75〜95kgの4匹のヒツジ、2個の外装付きの2個の120°AVアクセス外装トンネラ、適切な外科用器具、6〜0プロレン縫合糸、2〜0ビクリル縫合糸、14ゲージ透析針、および4×4ゲージパッドを含んでいた。Vectra(登録商標)アクセスグラフトは、このようなグラフトの添付使用情報(IFU)に従って配置し、実験グラフトは、血管処置で訓練を受けた外科医による標準的処置に従って配置した。グラフトの配置およびアクセスは、血管技術の当業者に知られている標準的な処置および技術を使用して、通常の状態で実行した。
【0084】
研究中は、以下のプロトコルに従った。動物は手術前の少なくとも12時間絶食した。一般的な身体検査を実行し、動物に準備処置を施す前に直腸温度および体重を記録し、異常な発見があれば、全て研究コーディネータまたは主研究者に報告した。動物にはケタミン(静脈に10mg/kg)とバリウム(静脈に0.5mg/kg)またはテラゾール(筋肉に6〜8mg/kg)を前投薬した。アトロピン(筋肉、皮下または静脈に0.04〜0.4mg/kg)または同様の薬物を与えて、呼吸分泌を減少させ、徐脈を防止した。静脈カテーテルを配置した。挿管を容易にするために、動物をイソフルランで「マスクダウン」した。気管内挿入管を配置して、カフを膨張させた。手術区域をクリップ留めし、ベタジンなどの殺菌溶液で外科的に準備処置した。動物を手術室に搬送し、手術台に背殿位で配置し、脚を全部固定した。手術部位を準備処置し、殺菌状態で無菌布で覆った。イソフルランで通常の麻酔状態を維持した。等張流体の静脈内滴注を開始し、外科的処置を開始する前にセファゾリン(静脈で1gm)、バイトリル(登録商標)(7.5mg/kg)またはゲントシン(登録商標)(2mg/kg)を筋肉または静脈内で投与した。ベースラインACT(活性血液凝固時間)のために血液を採取し、この時間に、および追加の診断処置のために寿命の間、様々な時点で追加の血液(約5mlから約15ml)を採取している。植え込み後の診断血液抜き取りのために鎮静剤は必要なかった。
【0085】
研究では以下の植え込み処置に従った。試験グラフトまたは対照グラフトを使用して、長さが30cmから40cmのループタイプの動静脈シャントを作成した。提供された120°の外装トンネラを使用して、ループ状にグラフトを皮下に通した。右および左の頚動脈および頚静脈を外科的に分離し、管理した。動物の首の適切な区域で、2個のAVグラフトをループ状に通した。トンネル状にする前に、各グラフトをIFU/一般的植え込みのガイドラインに従って準備した。Sedona/実験グラフトは、血管処置の訓練を受けた外科医によって標準的処置に従い配置された。ACTを250より上に維持するために、必要に応じて動物にヘパリン(静脈で約100u/kg)を投与した。その後も様々な投与量でヘパリン丸薬を与え、目標ACTを維持した。第1頚動脈および頚静脈(右頚動脈および左頚静脈または左頚動脈および右頚静脈)を分離して管理し、6〜0プロレン縫合糸を使用して標準的方法でグラフトを吻合した。第1縫合糸配置から両方の吻合が終了するまでの時間を記録した。静脈逆放血でグラフトから空気を一掃し、その区域から余分な血液および流体を乾燥し、クランプ/ループを外した。グラフトの取り扱いを評価し、別個のデータシートに記録した。第1AVグラフト処置が完了し、グラフトが止血を実証したら、反対側のグラフト植え込みのために、上述した以前のステップを繰り返した。全ての切開部は2−0ビクリル縫合糸で閉じ、その区域を局麻酔で浸潤した。標準的手順に従ってヒツジを回復させ、通常の囲いに戻した。動物は毎日監視し、毎日アスピリン(325mg、経口)を与えた。
【0086】
各植え込みの完了後だが、動物が麻酔から回復する前、および好ましくは植え込み後24時間以内、および最大で植え込み後48時間以内の1回の追加セッション時に、グラフト穿刺部の止血を評価した。実験研究用グラフト(Sedona)およびVectra(登録商標)対照グラフトは、同じ方法でカニューレ挿入した。両植え込みの針穿刺と追加のセッション(好ましくは植え込み後24時間以内)の針穿刺は、全て経皮的であった。カニューレ挿入部位の止血または出血の評価は、この試験では、植え込み時に動物が麻酔から回復する前にカニューレ挿入領域の皮膚を通してグラフトを穿刺して実行した。植え込み時には、このカニューレ挿入セッションは、5秒間放置した2本の針(1本は動脈カニューレ挿入側、1本は静脈カニューレ挿入側)および1時間放置した2本の針(1本は動脈カニューレ挿入側、1本は静脈カニューレ挿入側)で構成された。セッション毎に結果を記録した。第2針穿刺セッション(植え込み後好ましくは24時間以内、最大で植え込み後48時間以内に実行)は、経皮的にグラフトにアクセスした。このカニューレ挿入セッションは、1時間放置された2本の針(1本は動脈カニューレ挿入側、1本は静脈カニューレ挿入側)および3時間放置された2本の針(1本は動脈カニューレ挿入側、1本は静脈カニューレ挿入側)で構成された。セッション毎に結果を記録した。
【0087】
活性血液凝固時間(ACT)を測定して、250より上に維持し、5秒、1時間、または3時間の針を抜く毎に、その前にかかった最も新しいACTを、ACTを得た時間とともに適切に記録した。各針を抜いた時間が記録され、したがって最後のACTの時間と比較することができる。針の各アクセスのために予め計量した4×4のゲージパッドを20個準備し、重量を適切に記録した。手術後の評価のために、グラフトにも触って、膨らみ、汚染および漿液腫などの組織の異常があれば全て書き留めた。選択した動物の組織および/またはグラフトの外観を記録するために、写真を使用してもよかった。植え込み後セッション中に実行した針穿刺試験では、標準的手順に従って動物に麻酔をかけ、次に標準的透析アクセス針セット(14ゲージ)で経皮的にグラフトにアクセスした。以前に針穿刺した部位は回避した。全ての針穿刺試験で、ヘパリンロックを使用し、針を抜く前に、注射器を引き戻してグラフトの開通性を確認し、血液がチューブに引き込まれるか観察した。針は、適切な時間にわたって所定の位置に放置した。グラフトの最も中心の6cm(中心可撓領域)には穿刺しなかった。
【0088】
針は吻合部に向けた(つまり、動脈側では、針は流れに逆らって配向され、静脈側では、針は流れの方向に配向された)。以前に計量した4×4のパッドで同時に圧力を加えながら、各針を抜いた。標準的手順を使用して、4×4のパッドを使用して針穿刺部位に圧力を加え、針を抜いて2分後に止血(針穿刺部位から目に見える出血がないこと)をゲージチェックした。止血が達成されなかった場合は、ゲージでさらに2分間圧力を再び加え、針を抜いてから4分後に止血をチェックした。まだ止血が達成されなかった場合は、さらに1分間ゲージで圧力を再び加え、針を抜いてから5分後、およびその後は毎分、止血をチェックし、止血が達成されるまで、チェックする度に圧力を再び加えた。予め計量した4×4のパッドは、使用したままの状態で交換した。止血の時間を書き留め、記録した(穿刺部位から目に見える出血がない)。4×4ゲージパッドは20個全部を計量し、元の重量を引いて、血液損をグラム単位で求めた。全てのカニューレ挿入が完了するまで、適切な針滞在時間中に、植え込みセッションで、および植え込み後好ましくは24時間、最大で48時間のセッションで、新しい穿刺部位を使用して以上のステップを繰り返した。ACTを250より上に維持するために、必要に応じて投与したヘパリンを再投与した。
【0089】
両方のグラフトで上述した全てのカニューレ挿入が完了するまで、以上のステップを繰り返した。ここで、以上で開示した研究のような研究では、針穿刺セッションの全体的時間を最小限に抑えるために、針の配置はジグザグにすることができ、そうしなければならないことに言及しておく。針の貫入力(forcepenetration)、脈および/または「脈拍」を感じる能力、および容易にカニューレ挿入できる能力など、グラフト毎の違いは全て書き留めておかねばならない。(植え込み時に実行した針穿刺セッションの)全ての切開部を閉じ、区域を局麻酔で浸潤した。標準的処理に従ってヒツジを通常の囲いに戻した。動物は毎日監視した。
【0090】
8週目に、以下のプロトコルに従って、ヒツジに予め麻酔をかけ、上述したような手術の準備をした。ACTを測定し、グラフトに触って、膨らみ、汚染および漿液腫などの組織の異常があれば全て書き留めた。組織および/またはグラフトの外観を記録するために、写真を使用した。動物に10,000単位のヘパリンをヘパリン投与し、実験研究グラフトとVectra(登録商標)対照標準の両方でグラフト開通性の最終評価として、完了時血管造影図を取得した。表7および表8は、研究用に収集したデータを示す。
【表7】
【表8】
【0091】
表7および表8のデータは、以上で、Vectra(登録商標)ポリウレタングラフトのようにePTFEでない自己密封式グラフトと実質的に同様に機能する自己密封式ePTFE複合グラフトを獲得できることが実証されたと考えられる。つまり、データによると、5秒の針滞在では、知られている自己密封ポリウレタングラフトと概ね同じ時間枠で止血が達成され、1時間の針滞在では、針穿刺部の大部分で概ね2分以内に止血が達成され、3時間の針滞在では、針穿刺部の大部分が2分以内に止血を達成した。したがって、第1開口から第2開口へと延在する内部ボリュームを画定するePTFE表面を含む自己密封式ePTFEグラフトを獲得することができる。表面は、動物の動脈および静脈の少なくとも一方と結合する第1開口の周囲と第2開口の周囲を画定して、血液が第1開口および第2開口を通って流れられるようにする。自己密封式グラフトは、表面を穿刺し、約5秒、1時間、および3時間という所定の継続時間にわたって内部ボリュームに配置された14ゲージの針を抜いた後、約2分以内に第1および第2開口を通る血液以外のヒツジの静脈または動脈からの血流の止血を達成する手段を含む。止血を達成する手段は、少なくともポリウレタン発泡体を含むことができる。止血を達成する手段は、複数のポリウレタン層も含むことができる。最も好ましくは、止血を達成する手段は、ePTFE表面の周囲の円形路に構造的支持部材が配置された複数のポリウレタン層を含むことができる。
【0092】
自己密封式カフ式グラフト
本明細書で説明した様々なグラフト構成は、血管への取り付けを補助するために設けられた1つまたは複数のカフを有することもできる。カフがある人工血管、カフの構成、および血管に取り付けるためのこのようなカフおよびカフ式グラフトを作成する方法および装置が、Scholzらの米国特許第同第6,273,912号、Scholzらの同第6,746,480号、Scholzらの米国特許出願公報第2004/0210302号、Randallらの米国特許第6,190,590号、Edwinらの同第6,203,735号、Harrisらの同第5,861,026号、Harrisらの同第6,221,101号、Harrisらの同第6,589,278号、およびHarrisらの米国特許出願公報第US2004/0064181号に記載され、これはそれぞれ共通に譲渡され、参照によりここで完全に述べられているかのように本明細書に組み込まれる。
【0093】
カフは、ePTFEまたは他の材料、例えばシリコーンまたはポリウレタンで作成することができ、ePTFEAVグラフト、またはシリコーン、ポリウレタンまたは他の材料基体を有するグラフトに付着させることができる。グラフトに取り付けるカフの一例が図17に図示され、ここでカフ110の背面図はカフ区間112および首区間114を示し、首区間114はその長さの少なくとも一部に沿って分離され、したがってグラフトの端部へのカフの配置を容易にする。これで、カフ110を、それぞれの材料特性に従ってグラフトに付着させることができる。例えば、カフおよびカフを取り付けるグラフト表面がePTFEである場合、カフは当業者に知られているように加熱して取り付けることができる。上述したePTFEAVグラフトの実施形態に関しては、カフは様々な製造段階でグラフトの一方端または両端に配置することができる。1つの実施形態では、ePTFEテープ巻き付けの適用と同様に、ePTFEカフを、ポリウレタン層がそれに適用されているグラフト(例えばベース層、発泡体など)の端部に配置する。次に、例えばジメチルアセトアミド(DMSE)、ジメチルホルムアミド、THF、またはその混合物を含む非プロトン性溶媒などの適切な溶媒を、カフの首区間に適用して、首区間の下にあるポリウレタンを溶解し、その結果、カフがグラフトに付着する。これで、本明細書で検討したようなビード付けまたは他の処理ステップが、カフ/グラフト結合部上で可能になる。
【0094】
別の実施形態では、カフ式グラフトを、本明細書で説明したようなePTFEAVグラフトとは別個に形成する。次に、カフ式グラフトの管状部分を、管状部分の開放端の壁を(例えば拡張ツールを使用して)伸ばして、ePTFEAVグラフトの一方の端部上に滑動させることにより、ePTFE AVグラフトに取り付ける。1つの実施形態では、ePTFE AVグラフトは外部ビードを有し、カフ式グラフトの管状部分の開放端は、管状部分がePTFEAVグラフトの外部ビード部分に到達するまでePTFE AVグラフト上を滑動し、到達点でカフ式グラフトの管状部分を回転するか、外部ビードに「ねじ込む」。カフ式グラフトの管状部分の内面は、付着を補助するために自身上に接着剤を有してよく、あるいは所望に応じて初期取り付けステップ後にさらなる付着を実行することができる。
【0095】
別の実施形態では、自己密封式カフ式グラフトは、真空蒸着、噴霧コーティング、または当業者に知られているような浸漬コーティング手順により、ポリウレタンまたは同様のポリマーをePTFEカフ式グラフトの微細構造に含浸させて作成することができる。ポリウレタンまたは同様のポリマーが導入されたら、グラフトの外部から余分なポリマーを除去し、ポリウレタンがePTFEのノードとフィブリル間の隙間に形成できるようにする。別の実施形態は、本明細書で検討したように、ポリマーと溶媒の組合せでePTFEカフ式グラフトを噴霧コーティングし、その後にePTFEテープまたはパッチをその上に適用して、ePTFE/ポリマー/ePTFE積層品を作成することを含む。別の実施形態では、首部分を有するカフをグラフトに接続し、グラフトとカフの首部分の間の接続点まで、グラフトをシーラント材料(例えばポリウレタン)で浸漬コーティングし、シーラント材料でグラフトと首部分の両方を(カフまで)浸漬コーティングし、グラフトと首部分の長さにわたってビードをシーラント材料に螺旋状に巻き付け、シーラント材料でビード付きのグラフトおよび首部分を(カフまで)浸漬コーティングすることによって、自己密封式カフ式グラフトを作成する。
【0096】
さらに別の実施形態では、本明細書で説明した様々な処理ステップに、ePTFEカフ式グラフトの管状本体部分をePTFE基体として使用し、自己密封性、捩れ抵抗などをグラフトに与える。ePTFEカフ式グラフトのカフ部分は、グラフトの一方端または両端にあってよく、自身上に適用されたシーラント層を有するか、未処理のままでよい。例えば、カフ部分は、カフ形状を維持するためにポリウレタンのコーティングを有してよい。カフ部分が自身上に適用されたシーラント層を有する場合、シーラント材料(例えばポリマー)はパターン化して適用することができる。1つの実施形態では、ePTFEAVグラフト(カフ付き)のカフ部分へのポリマー適用は、図18に示すようなカフの頂部の「隆起」パターンで、そのように実行される。カフ120の隆起部分122の例えばポリウレタンなどのポリマーは、臨床医が血管に取り付けた後に縫合穴の出血を軽減または防止するための縫合領域を提供する。これらの隆起部分は、例えばポリマーを適用する前にカフにマスクを配置するか、カフに適用した後に、ポリマーに隆起をレーザで切り込むことによって作成することができる。当業者に認識されるように、隆起部分は様々な形状をとり、様々な角度で設定することができる。さらに、1つの実施形態では、隆起の作成に使用される材料は、ePTFEカフの縁部を手術中に容易に識別できるように、自身内に組み入れた放射線不透過性物質を有する。
【0097】
好ましい実施形態を、Polymer Technology Groupから入手可能なCarbothane PC−2585に関して説明してきたが、他の適切なポリウレタン、例えばBionate、93ショアAの硬度のChronoflex C(Cardiotech)、ポリカーボネートジオール(1,6−ヘキサンジオール)、14,4−メチレンビスフェニルジイソシアナートウレタンと1,4−ブタネジオール/ジメチルシラン(ポリウレタンの軟質部分の分子量は約1000から約3000)を使用することができる。適切なポリウレタン(つまりポリマー全体)の重量平均分子量(MW)は、約25,000g/moleから約500,000g/moleの範囲、好ましくは約40,000g/moleから約150,000g/moleの範囲である。1つの好ましい実施形態では、重量平均分子量は約50,000g/moleである。さらに、本明細書で説明したようなスプレーガンを使用するポリウレタンの噴霧は、ポリウレタンをグラフト基体に適用する以外、例えばポリウレタンなどの材料をステントに噴霧して、封入したステントを生産する、ポリウレタンなどの材料をステントの両面に噴霧して、封入ステントを製造する、ポリウレタンなどの材料を枠に噴霧して、フィルタを作成するなどの用途にも使用することができる。1つの実施形態では、血栓材料を発泡体層に組み入れる。別の実施形態では、グラフトを作成するために本明細書で説明した方法、プロセスおよび材料を、縫合穴の出血を減少させるために頚動脈に適用するパッチに適用する。最後に、本明細書で説明したようなグラフト上のビード(例えばその剛性特性)は、透析針または導入器がビードに接触すると、偏向してビードから離れ、グラフトに入るようにすると考えられることに言及しておく。
【0098】
また、自己密封式血管グラフトであって、第1表面および第1表面から隔置された第2表面を有する全体的に管状のePTFE基体を備え、ePTFE基体は、高有孔性グラフト、薄肉グラフトおよびその組合せで構成されたグループから選択され、前記血管グラフトはさらに、基体の第1および第2表面の一方に配置されたシーラントの層を備えてもよい。
また、自己密封式グラフトであって、管状ePTFE基体を備え、ePTFE基体は高有孔性グラフト、薄肉グラフトまたはその組合せのいずれかであり、前記グラフトはさらに、基体の少なくとも一部に配置されたシーラントの層を備えてもよい。
また、AV瘻として植え込まれるグラフトであって、管状ePTFE基体と、基体の少なくとも一部に配置されたシーラントの層とを備え、シーラント層が、その長さに沿って隔置された複数の溝付き区間を有していてもよい。
また、血管グラフトであって、基体およびベース層を囲む外部ポリマー層と、基体と外部ポリマー層との間に分散した複数の発泡体層とを備えてもよい。
また、血管グラフトであって、第1厚さを有し、基体を囲むポリマーの内部シーラント層と、内部シーラント層を囲むポリウレタンの発泡体層とを備え、発泡体層が、第1厚さの1.5倍以上の第2厚さを有してもよい。
また、血管グラフトであって、外壁を含む基体と、ポリマーシーラント材料を備え、基体の長さにわたって配置されたベースシーラント層と、ポリマー発泡体材料を備え、ベース層の長さにわたって配置された第1発泡体層と、第1発泡体層に少なくとも部分的に埋め込まれたビードと、ポリマー発泡体材料を備え、第1発泡体層およびビードの長さにわたって配置された第2発泡体層と、ポリマーを備える外部層とを備えてもよい。
また、上記グラフトのシーラント層が、約10ミクロンから約1500ミクロンの範囲の厚さを有してもよい。
また、上記グラフトの基体の厚さがシーラント層の厚さより薄くてもよい。
また、上記グラフトのシーラント層がエラストマ材料で構成されてもよい。
また、上記グラフトのシーラント層がポリウレタンで構成されてもよい。
また、上記基体が高有孔性グラフトであり、異なる有孔性を有する第2グラフトが、高有孔性グラフト内に同心で位置決めされてもよい。
また、半径方向コンプライアンスが上記基体に与えられてもよい。
また、長手方向のコンプライアンスが上記基体に与えられてもよい。
また、上記基体の外面に位置決めされたビードを備えてもよい。
また、上記ビードが放射線不透過性材料を備えてもよい。
また、上記基体、シーラント層、発泡体層および外部層の少なくとも1つが放射線不透過性材料を含んでもよい。
また、上記放射線不透過性材料が、基本的に硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、タングステン、またはタンタルおよびその組合せで構成されたグループから選択されてもよい。
また、上記シーラント層が、その長さにわたって隔置された複数の溝を備えてもよい。
また、上記シーラント層上に配置された発泡体層を備えてもよい。
また、上記発泡体層に少なくとも部分的に埋め込まれたビードを備えてもよい。
また、ePTFEテープの上記外部層を備えてもよい。
また、上記ePTFEテープまたは発泡体層のいずれか1つの外面に配向線が配置され、したがって配向線がグラフトの外面によって画定された縦軸に沿って延在してもよい。
また、上記配向線が外面に印刷された線を備えてもよい。
また、上記線が少なくとも1本の連続線を備えてもよい。
また、上記線が着色インクを備えてもよい。
また、上記着色インクがポリマー結合剤および生体適合性インクを備えてもよい。
また、上記生体適合性インクが、基本的にフタロシアニナート(2−)銅、D&Cの青9号、D&Cの緑5号、油溶性クロロフィリン銅複合体、クロムコバルトアルミニウム酸化物、クエン酸第二鉄アンモニウム、D&Cの青5号、FD&Cの青2号、D&Cの緑6号、二酸化チタン、炭素、酸化鉄およびその組合せで構成されたグループから選択されてもよい。
また、上記生体適合性インクが、約6500°Kの温度を有する光で見て、概ね青または黒色のうち少なくとも1つであってもよい。
また、上記基体の第1端から延在するフレア状カフを備えてもよい。
また、上記基体、シーラント層、発泡体層および外部層の少なくとも1つに組み入れられる生理活性剤を備えてもよい。
また、上記生理活性剤が、基本的に炭素粒子、銀粒子、グラファイト粒子、抗生物質、マクロライド抗生物質、ステロイド、消炎剤、抗腫瘍薬、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗体、遺伝子配列剤、成長因子阻害剤、血管形成、抗血管形成、プロティナーゼ阻害剤、抗増殖化合物または細胞分裂周期調節剤およびその組合せで構成されたグループから選択されてもよい。
また、上記グラフトの全体的に管状の端部が補綴カフ式グラフトのフレア状端部に結合されてもよい。
また、上記全体的に管状の端部が、補綴カフ式グラフトの全体的に管状の部分にねじ込まれてもよい。
また、上記全体的に管状の端部が、補綴カフ式グラフトの全体的に管状の部分に付着されてもよい。
本発明について説明し、本発明の特定の実施例について描写してきた。本発明を、特定の変形および例示的図に関して説明してきたが、本発明は説明した変形または図に制限されないことが当業者には認識される。例えば、人工血管の自己密封機能を達成するために、ePTFEテープを発泡体層と一緒に使用する必要はない。また、上述した方法およびステップは、特定の事象が特定の順序で生じるよう示しているが、特定のステップの順序は変更してよく、このような変更は本発明の変形に従うことが、当業者には認識される。また、特定のステップは、上述したように順番に実行するばかりでなく、可能な場合、平行プロセスで同時に実行してよい。したがって、本発明の変形が、請求の範囲に見られる本発明の開示または同等物の精神に含まれる程度まで、本特許はこれらの変形も含むものとする。最後に、本明細書で引用した全ての出版物および特許出願は、参照により個々の出版物または特許出願が本明細書で詳細かつ個々に述べられているかのように全体が本明細書に組み込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己密封式血管グラフトであって、
第1表面および第1表面から隔置された第2表面を有する、全体的に管状のePTFE基体と、
第1および第2表面の1つに配置されたシーラントの層であって、シーラントが、シーラント層を通して穿刺部材を挿入しても可塑変形しないポリマー材料を備えるシーラントの層と、
前記シーラントの層上に配置される第1発泡体層と、
前記ePTFE基体の長手軸に沿って設けられる前記第1発泡層上に螺旋状に巻き付けられたPTFEビードと、
前記PTFEビード上に配置される第2発泡体層と、
前記第2発泡体層上に配置される外部層とを備える、血管グラフト。
【請求項2】
シーラントが、基本的に芳香族ポリカーボネートポリウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリエーテル/ポリアミドブロック共重合体、ポリジメチルシロキサンエラストマ、または他のシリコーンエラストマおよびその組合せで構成されたグループから選択された材料を備える、請求項1に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項3】
シーラントが熱処理した芳香族ポリカーボネートポリウレタンを備える、請求項1に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項4】
ポリウレタンが、約50,000g/moleの重量平均分子量(MW)を含む、請求項1に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項5】
シーラントが、基本的にポリエステル、コラーゲン、トロンビン、またはフィブリノゲンおよびその組合せで構成されたグループから選択された材料の粒子を備える、請求項1から4のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項6】
粒子がそれぞれ、約75ミクロン未満の平均仮想直径を有する、請求項5に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項7】
ePTFE基体が、高有孔性グラフト、薄肉グラフトおよびその組合せで構成されたグループから選択される、請求項1から6のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項8】
半径方向のコンプライアンスが基体に与えられている、請求項1から7のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項9】
基体が半径方向に膨張直径へと膨張して、その後に加熱し、基体を膨張直径より小さい直径へと戻す、請求項1から8のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項10】
長手方向のコンプライアンスが基体に与えられている、請求項1から9のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項11】
基体が、シーラント層の付着前に長手方向に圧縮される、請求項1から10のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項12】
さらに、基体の外面に位置決めされたビードを備える、請求項1から11のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項13】
ビードが放射線不透過性材料を備える、請求項12に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項14】
放射線不透過性材料が、基本的に硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、タングステン、またはタンタルおよびその組合せで構成されたグループから選択される、請求項13に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項15】
シーラント層が、基体の長さにわたって隔置された複数の溝を備える、請求項1から14のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項16】
さらに、シーラント層上に配置された発泡体層を備える、請求項1から15のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項17】
さらに、発泡体層に少なくとも部分的に埋め込まれたビードを備える、請求項16に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項18】
さらに、ePTFEテープの外部層を備える、請求項1から17のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項19】
ePTFEテープまたは発泡体層のいずれか1つの外面に配向線が配置され、したがって配向線がグラフトの外面によって画定された縦軸に沿って延在する、請求項18に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項20】
配向線が外面に印刷された線を備える、請求項19に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項21】
線が少なくとも1本の連続線を備える、請求項20に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項22】
線が着色インクを備える、請求項20に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項23】
着色インクがポリマー結合剤および生体適合性インクを備える、請求項22に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項24】
生体適合性インクが、基本的にフタロシアニナート(2−)銅、D&Cの青9号、D&Cの緑5号、油溶性クロロフィリン銅複合体、クロムコバルトアルミニウム酸化物、クエン酸第二鉄アンモニウム、D&Cの青5号、FD&Cの青2号、D&Cの緑6号、二酸化チタン、炭素、酸化鉄およびその組合せで構成されたグループから選択される、請求項23に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項25】
生体適合性インクが、約6500°Kの温度を有する光で見て、概ね青または黒色のうち少なくとも1つである、請求項23に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項26】
さらに、基体、シーラント層、発泡体層および外部層の少なくとも1つに組み入れられる生理活性剤を備える、請求項1から25のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項27】
生理活性剤が、基本的に炭素粒子、銀粒子、グラファイト粒子、抗生物質、マクロライド抗生物質、ステロイド、消炎剤、抗腫瘍薬、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗体、遺伝子配列剤、成長因子阻害剤、血管形成、抗血管形成、プロティナーゼ阻害剤、抗増殖化合物または細胞分裂周期調節剤およびその組合せで構成されたグループから選択される、請求項26に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項28】
グラフトの全体的に管状の端部が補綴カフ式グラフトのフレア状端部に結合される、請求項1から27のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項29】
全体的に管状の端部が、補綴カフ式グラフトの全体的に管状の部分にねじ込まれる、請求項28に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項30】
全体的に管状の端部が、補綴カフ式グラフトの全体的に管状の部分に付着される、請求項28に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項31】
自己密封式血管グラフトであって、
全体的に管状のePTFE基体と、
基体の少なくとも一部に配置されたシーラントの層と、
基体およびシーラントの一方の表面に配置されたビードとを備える、自己密封式血管グラフト。
【請求項32】
基体の肉厚が約200ミクロンから約300ミクロンの範囲である、請求項31に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項33】
シーラント層が約10ミクロンから300ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項31から32のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項34】
ビードが表面の周囲に螺旋状に位置決めされる、請求項31から33のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項35】
ビードが長辺および短辺がある長方形の断面形状を有し、長辺が約1mmの長さを有して、短辺が約500ミクロンの長さを有する、請求項31から34のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項36】
ビードの長辺がグラフトの外面に当てて位置決めされ、螺旋状に位置決めされたビードの隣接する巻線の間隔が約1mmから約2mmの範囲である、請求項35に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項37】
さらに、シーラント層に配置された発泡体の層を備え、ビードが発泡体層に埋め込まれる、請求項31から36のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項38】
さらに、ePTFEテープの外部層を備える、請求項31から37のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項39】
ePTFEテープまたは発泡体層のいずれか1つの外面に配向線が配置され、したがって配向線がグラフトの外面によって画定された縦軸に沿って延在する、請求項38に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項40】
配向線が外面に印刷された線を備える、請求項39に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項41】
線が少なくとも1本の連続線を備える、請求項40に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項42】
線が着色インクを備える、請求項40に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項43】
着色インクがポリマー結合剤および生体適合性インクを備える、請求項42に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項44】
生体適合性インクが、基本的にフタロシアニナート(2−)銅、D&Cの青9号、D&Cの緑5号、油溶性クロロフィリン銅複合体、クロムコバルトアルミニウム酸化物、クエン酸第二鉄アンモニウム、D&Cの青5号、FD&Cの青2号、D&Cの緑6号、二酸化チタン、炭素、酸化鉄およびその組合せで構成されたグループから選択される、請求項43に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項45】
生体適合性インクが、約6500°Kの温度を有する光で見て、概ね青または黒色のうち少なくとも1つである、請求項43に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項46】
ビードが、基本的に硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、タングステン、またはタンタルおよびその組合せで構成されたグループから選択される放射線不透過性材料を備える、請求項31から45のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項47】
基体、シーラント層、発泡体層および外部層の少なくとも1つが、基本的に硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、タングステン、またはタンタルおよびその組合せで構成されたグループから選択される放射線不透過性材料を備える、請求項31から46のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項48】
ビードが、基本的に形状記憶材料、超可塑性金属、ステンレス鋼、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、PTFEまたはePTFEおよびその組合せから構成されるグループから選択される材料を備える、請求項31から47のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項49】
ビードがシーラントのそれと同様の材料のコーティングを備える、請求項31から48のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項50】
ビードの各区画が隣接する区画から約0.5mmから約2.5mmの範囲の距離だけ隔置される、請求項31から49のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項51】
さらに、基体の第1端から延在する補綴カフを備える、請求項31から50のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項52】
カフがその近位端から延在する管状部分を備え、少なくとも一部がビード上に位置決めされるように管状部分が、グラフト上で位置決めされる、請求項51に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項53】
半径方向コンプライアンスが基体に与えられている、請求項31から52のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項54】
長手方向のコンプライアンスが基体に与えられている、請求項31から53のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項55】
半径方向にコンプライアンスがあるグラフトの形成方法であって、
ePTFE基体を提供することと、
基体を半径方向に膨張させることと、
コーティングした基体を提供するために、半径方向に膨張した基体にエラストマ材料の層を配置することと、
コーティングした基体を加熱することとを含む、方法。
【請求項56】
血管グラフトを形成する方法であって、
ePTFE基体を提供することと、
基体の長さにわたってポリウレタンの第1層を適用することと、
基体を長手方向に圧縮することと、
ポリウレタンの第1層にポリウレタンの第2層を適用することと、
ポリウレタンでコーティングした基体にePTFEテープの層を巻き付けることとを含み、ePTFEテープが最初に溶液中を通り、したがってある量の溶液がePTFEテープに適用される、方法。
【請求項57】
自己密封式カフ式血管グラフトの作成方法であって、
ePTFE基体の第1端にカフの首部分を位置決めすることと、
基体をその第2端からカフの首部分までシーラント材料に浸漬することと、
基体およびカフの首部分をシーラント材料に浸漬することとを含む、方法。
【請求項58】
さらに、基体および首部分にビードを巻き付けることと、ビード付き基体および首部分をシーラント材料に浸漬することとを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
捩れ抵抗性自己密封式血管グラフトの作成方法であって、
全体的に管状のePTFE基体を提供することと、
基体の外面の少なくとも一部にシーラントの層を配置することと、
シーラント層に溝付き区間を作成することとを含む、方法。
【請求項60】
作成することが、シーラント層の区間を除去することを含み、区間がグラフトの長さに沿って隔置される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
区間がグラフトの中央部分からのみ除去される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
作成することが、区間を約0.5mmから約5.0mmの範囲の距離だけ隔置することを含む、請求項59から61のいずれかに記載の方法。
【請求項63】
捩れ抵抗性自己密封式血管グラフトの作成方法であって、
全体的に管状のePTFE基体を提供することと、
基体の外面の少なくとも一部にシーラントの層を配置することと、
シーラント層の少なくとも一部にビードを位置決めすることと、
カフ式グラフトを血管グラフトに結合することとを含む、方法。
【請求項64】
結合することが、管状部分の近位端がビードの端部に隣接するように、カフ式グラフトの管状部分を血管グラフトの第1端上に位置決めすることと、カフ式グラフトをビードの一部上で近位方向に移動するために、管状部分を回転することとを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
さらに、管状部分の内面に接着剤を適用することによって、カフ式グラフトを血管グラフトに付着させることを含む、請求項63から64のいずれかに記載の方法。
【請求項66】
自己密封式カフ式血管グラフトの作成方法であって、
縦軸に沿って延在する第1端および第2端を有する実質的に管状のePTFE基体の周囲に全体的に螺旋状に配置されたビードを取り付けることと、
第1および第2端の一方にフレア状血管カフを結合することと、
結合した血管カフと全体的に管状のePTFE基体を付着させることとを含む、方法。
【請求項67】
結合することが、近位方向に力を加えながら、ビード上でカフの全体的に管状の近位部分を回転させることを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
付着させることが非プロトン性溶媒を適用することを含む、請求項66から67のいずれかに記載の方法。
【請求項69】
付着させることが、カフおよび基体の一方または両方にテトラヒドロフラン(THF)を適用することを含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
自己密封式血管グラフトの作成方法であって、
ePTFE基体の外面の長さにわたってエラストマシーラント層を設けることと、
シーラント層の少なくとも一部に発泡体層を配置することとを含み、
発泡体層の厚さが基体の肉厚より実質的に厚い、方法。
【請求項71】
発泡体層の厚さが、基体の肉厚の約2倍である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
配置することが、シーラント層にポリウレタンおよびジメチルアセトアミドの溶液をコーティングすることと、コーティングしたグラフトを水に浸漬することとを含む、請求項70から71のいずれかに記載の方法。
【請求項73】
溶液が、約16グラムのポリウレタンを約84グラムのジメチルアセトアミドに溶解することによって準備される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
コーティングしたグラフトを最初にほぼ室温で約30分間、水に浸漬するか、入れ、その後にコーティングしたグラフトを約40℃の水に約16時間入れる、請求項72から73のいずれかに記載の方法。
【請求項75】
さらに、グラフトを約24時間、空気乾燥することを含む、請求項72から74のいずれかに記載の方法。
【請求項76】
配置することが、シーラント層を塩溶液でコーティングすることと、コーティングしたグラフトを乾燥することと、乾燥したコーティング済みグラフトを水に入れることとを含む、請求項70に記載の方法。
【請求項77】
水が約60℃の温度に設定され、乾燥したコーティング済みグラフトが水に約16時間入れられる、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
塩溶液が、ポリウレタンの実質的な溶解が達成されるまで、約2.5グラムのポリウレタンと約10グラムのジメチルアセトアミドと約7.5グラムの塩化ナトリウムとを混合することによって準備される、請求項76から77のいずれかに記載の方法。
【請求項79】
配置することが、シーラント層をポリマー溶液でコーティングすることと、ポリマー溶液中で溶媒を消散させることと、ポリマー溶液中の塩を除去することとを含む、請求項70に記載の方法。
【請求項80】
ポリマー溶液が、ポリマーを塩溶液と組み合わせることによって準備され、塩溶液中の塩が、基本的に塩化ナトリウム、重炭酸アンモニウムまたは炭酸アンモニウム、およびその組合せで構成されたグループから選択される、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
塩を除去することが、コーティングしたグラフトを水に浸漬するか、入れることを含む、請求項79から80のいずれかに記載の方法。
【請求項82】
塩を除去することが、コーティングしたグラフトを加熱することを含む、請求項79から80のいずれかに記載の方法。
【請求項83】
配置することが、ポリマー溶液をシーラント層に噴霧することを含み、ポリマー溶液がテトラヒドロフラン(THF)を含む、請求項70に記載の方法。
【請求項84】
ポリマー溶液がポリカーボネートポリウレタンを備え、溶液を噴霧することが、ノズルがあるスプレーガンを使用することと、ポリウレタンの発泡体層がグラフト上に提供されるように、噴霧中にグラフトとノズル間の距離を約12インチから約20インチの範囲に維持することとを含む、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
ポリマー溶液を準備することが、THFと混合する前にポリカーボネートポリウレタンを加熱することを含む、請求項83から84のいずれかに記載の方法。
【請求項86】
ポリマー溶液を準備することが、重量で約88%のポリカーボネートポリウレタンをTHFに添加することを含む、請求項83から85のいずれかに記載の方法。
【請求項87】
さらに、約50℃から約70℃の範囲の温度に設定された炉に約1時間から約24時間の範囲の時間長さにわたってグラフトを配置することを含む、請求項83から86のいずれかに記載の方法。
【請求項88】
さらに、ビードを発泡体層に埋め込むために、張力を加えてビードをグラフトの周囲に螺旋状に巻き付けることを含む、請求項70から87のいずれかに記載の方法。
【請求項89】
ビードが、基本的に硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、タングステン、またはタンタルおよびその組合せで構成されたグループから選択された放射線不透過性材料を備える、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
ビードが、基本的に形状記憶材料、超可塑性金属、ステンレス鋼、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、PTFEまたはePTFEおよびその組合せから構成されるグループから選択される材料を備える、請求項88から89のいずれかに記載の方法。
【請求項91】
張力の力が約500グラムであり、螺旋状に巻き付けることが、ビードをグラフトに接触させる前にTHFを含む溶液にビードを通すことを含む、請求項88から90のいずれかに記載の方法。
【請求項92】
さらに、基体の壁、シーラント層、発泡体層および第2発泡体層の組合せ厚さが、約1mmから約2mmの範囲であるように、第2発泡体層を発泡体層上に配置することを含む、請求項70から91のいずれかに記載の方法。
【請求項93】
さらに、テープの隣接する巻線の縁部が重なるように、ポリマーテープを第2発泡体層に螺旋状に巻き付けることを含む、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
ポリマーテープがePTFEを備え、テープを螺旋状に巻き付けることが、THFをテープに適用することを含む、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
ポリマーテープがePTFEを備え、テープを螺旋状に巻き付けることが、テープに張力を加えることを含む、請求項93から94のいずれかに記載の方法。
【請求項96】
さらに、シーラント層を設ける前に、基体を膨張直径へと半径方向に膨張させることと、シーラント層を設けた後であるが、発泡体層を配置する前に、膨張直径より小さい直径に基体を戻すために基板を加熱することを含む、請求項70から95のいずれかに記載の方法。
【請求項97】
膨張するステップが、基体を、基体の元の直径の約1.5倍から約5倍の範囲の膨張直径まで基体を膨張させることを含む、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
膨張するステップが、基体の元の直径の約4倍から5倍の範囲の膨張直径まで基体を膨張させることを含む、請求項96に記載の方法。
【請求項99】
さらに、シーラント層を配置する前に基体を長手方向に圧縮することを含む、請求項70から98のいずれかに記載の方法。
【請求項100】
基体の第1端が、発泡体層がないシーラント層を備え、さらに、基体の第1端にフレア状カフ部材の首部分を位置決めすることと、溶媒を首部分に適用することとを含む、請求項70から99のいずれかに記載の方法。
【請求項101】
基体が第1端から延在するフレア状一体カフを備え、シーラント層を設けることが、カフの外面にシーラント材料を設けることを含む、請求項70から99のいずれかに記載の方法。
【請求項102】
カフの外面にシーラント材料を設けることが、カフにシーラント材料を設ける前にシーラント材料に放射線不透過性物質を添加することを含む、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
カフの外面にシーラント材料を設けることが、シーラント材料を設ける前にカフにマスクを配置することを含み、マスクが開口のパターンを含む、請求項101から102のいずれかに記載の方法。
【請求項104】
さらに、カフ上にシーラント材料のパターンを作成するためにシーラント材料の区間を除去することを含む、請求項101から102のいずれかに記載の方法。
【請求項105】
さらに、基体、シーラント層または発泡体層のうち少なくとも1つに1つまたは複数の生理活性剤を組み入れることを含む、請求項70から104のいずれかに記載の方法。
【請求項106】
さらに、基体とePTFEの外部層との間に配置されたビードを備える第1ゾーン、および基体とePTFEの外部層との間にビードがない第2ゾーンで、少なくとも2つの長手方向に別個のゾーンを形成することを含む、請求項70から105のいずれかに記載の方法。
【請求項107】
第1ゾーンの層の少なくとも1つが、第2ゾーンの対応する層より大きい厚さを有する、請求項71に記載の方法。
【請求項108】
自己密封式血管グラフトの作成方法であって、
ポリウレタン材料の少なくとも1つの層をePTFE基体の表面に配置することと、
ePTFE部材をポリウレタン材料に付着させることとを含む、方法。
【請求項109】
付着させることが、ポリウレタン材料と接触させる前にePTFE部材を溶媒に浸すことを含む請求項108に記載の方法。
【請求項110】
付着させることが、ePTFE部材をポリウレタン材料に位置決めした後に、ePTFE部材の溶媒を噴霧することを含む、請求項108に記載の方法。
【請求項111】
付着させることが、ポリウレタン材料に接触させる直前にePTFE部材を溶媒に通すことを含む、請求項108に記載の方法。
【請求項112】
通すことが、自身の壁に1つまたは複数の開口がある加圧された管、および1つまたは複数の開口上に位置決めされた品目を備える配置装置を通してePTFE部材を移動させることを含み、加圧された管が、溶媒を含む容器、圧力制御装置および調整器に接続され、ほぼ同量の溶媒がePTFE部材に適用されるように、ePTFE部材が、最初に溶媒で飽和した品目上を通過する、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
ePTFE部材がプーリシステム上のスプールから供給され、グラフトの回転中にグラフトの表面に適用される、請求項108から112のいずれかに記載の方法。
【請求項114】
溶媒がテトラヒドロフラン(THF)を備える、請求項109から113のいずれかに記載の方法。
【請求項115】
ePTFE部材がある長さのePTFEテープである、請求項108から114のいずれかに記載の方法。
【請求項116】
ポリウレタン材料の少なくとも1つの層が、第1および第2ベース層を備え、さらに、ある長さの基体に第1ベース層を配置することと、第1ベース層とともに基体を長手方向に圧縮することと、第1層上に第2層を配置することとを含む、請求項108から115のいずれかに記載の方法。
【請求項117】
第1ベース層とともに基体を長手方向に圧縮することが、基体の長さの約20%を圧縮することを含む、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
ポリウレタン材料の少なくとも1つの層が、第1発泡体層を備え、第1発泡体層は、基体の各端部から最大約5.0cmの長さに第1発泡体層がないように、基体の中央部分に配置される、請求項108から117のいずれかに記載の方法。
【請求項119】
さらに、第1発泡体層上に配置された第2発泡体層を備える、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
さらに、ポリウレタン材料の少なくとも1つの層の周囲に位置決めされた少なくとも1つのビードを備える、請求項108から119のいずれかに記載の方法。
【請求項121】
少なくとも1つのビードが、個々の断面積がある第1ビードおよび第2ビードを備え、第1ビードの断面積が第2ビードの断面積より大きい、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
第1ビードが基体の中央部分の周囲に位置決めされ、第2ビードが基体の各端の周囲に位置決めされる、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
さらに、カフを基体の端部に取り付けることを含む、請求項108から122のいずれかに記載の方法。
【請求項124】
取り付けることが、近位方向に力を加えながら、基体の端部上でカフの全体的に管状の近位部分を回転させることを含む、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
さらに、基体の各端部上にePTFEスリーブを位置決めすることを含む、請求項108から124のいずれかに記載の方法。
【請求項126】
ePTFE基体が、自身上に少なくとも1つのポリウレタン層が配置される前に、膨張直径へと半径方向に膨張し、少なくとも1つのポリウレタン層の配置後に、基体が膨張直径より小さい直径へと戻るように加熱される、請求項108から125のいずれかに記載の方法。
【請求項127】
さらに、基体、ePTFE部材および少なくとも1つのポリウレタン層のうち少なくとも1つに生理活性剤を組み入れることを含む、請求項108から126のいずれかに記載の方法。
【請求項128】
生理活性剤が、基本的に炭素粒子、銀粒子、グラファイト粒子、抗生物質、マクロライド抗生物質、ステロイド、消炎剤、抗腫瘍薬、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗体、遺伝子配列剤、成長因子阻害剤、血管形成、抗血管形成、プロティナーゼ阻害剤、抗増殖化合物または細胞分裂周期調節剤およびその組合せで構成されたグループから選択される、請求項127に記載の方法。
【請求項1】
自己密封式血管グラフトであって、
第1表面および第1表面から隔置された第2表面を有する、全体的に管状のePTFE基体と、
第1および第2表面の1つに配置されたシーラントの層であって、シーラントが、シーラント層を通して穿刺部材を挿入しても可塑変形しないポリマー材料を備えるシーラントの層と、
前記シーラントの層上に配置される第1発泡体層と、
前記ePTFE基体の長手軸に沿って設けられる前記第1発泡層上に螺旋状に巻き付けられたPTFEビードと、
前記PTFEビード上に配置される第2発泡体層と、
前記第2発泡体層上に配置される外部層とを備える、血管グラフト。
【請求項2】
シーラントが、基本的に芳香族ポリカーボネートポリウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリエーテル/ポリアミドブロック共重合体、ポリジメチルシロキサンエラストマ、または他のシリコーンエラストマおよびその組合せで構成されたグループから選択された材料を備える、請求項1に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項3】
シーラントが熱処理した芳香族ポリカーボネートポリウレタンを備える、請求項1に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項4】
ポリウレタンが、約50,000g/moleの重量平均分子量(MW)を含む、請求項1に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項5】
シーラントが、基本的にポリエステル、コラーゲン、トロンビン、またはフィブリノゲンおよびその組合せで構成されたグループから選択された材料の粒子を備える、請求項1から4のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項6】
粒子がそれぞれ、約75ミクロン未満の平均仮想直径を有する、請求項5に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項7】
ePTFE基体が、高有孔性グラフト、薄肉グラフトおよびその組合せで構成されたグループから選択される、請求項1から6のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項8】
半径方向のコンプライアンスが基体に与えられている、請求項1から7のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項9】
基体が半径方向に膨張直径へと膨張して、その後に加熱し、基体を膨張直径より小さい直径へと戻す、請求項1から8のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項10】
長手方向のコンプライアンスが基体に与えられている、請求項1から9のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項11】
基体が、シーラント層の付着前に長手方向に圧縮される、請求項1から10のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項12】
さらに、基体の外面に位置決めされたビードを備える、請求項1から11のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項13】
ビードが放射線不透過性材料を備える、請求項12に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項14】
放射線不透過性材料が、基本的に硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、タングステン、またはタンタルおよびその組合せで構成されたグループから選択される、請求項13に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項15】
シーラント層が、基体の長さにわたって隔置された複数の溝を備える、請求項1から14のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項16】
さらに、シーラント層上に配置された発泡体層を備える、請求項1から15のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項17】
さらに、発泡体層に少なくとも部分的に埋め込まれたビードを備える、請求項16に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項18】
さらに、ePTFEテープの外部層を備える、請求項1から17のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項19】
ePTFEテープまたは発泡体層のいずれか1つの外面に配向線が配置され、したがって配向線がグラフトの外面によって画定された縦軸に沿って延在する、請求項18に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項20】
配向線が外面に印刷された線を備える、請求項19に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項21】
線が少なくとも1本の連続線を備える、請求項20に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項22】
線が着色インクを備える、請求項20に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項23】
着色インクがポリマー結合剤および生体適合性インクを備える、請求項22に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項24】
生体適合性インクが、基本的にフタロシアニナート(2−)銅、D&Cの青9号、D&Cの緑5号、油溶性クロロフィリン銅複合体、クロムコバルトアルミニウム酸化物、クエン酸第二鉄アンモニウム、D&Cの青5号、FD&Cの青2号、D&Cの緑6号、二酸化チタン、炭素、酸化鉄およびその組合せで構成されたグループから選択される、請求項23に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項25】
生体適合性インクが、約6500°Kの温度を有する光で見て、概ね青または黒色のうち少なくとも1つである、請求項23に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項26】
さらに、基体、シーラント層、発泡体層および外部層の少なくとも1つに組み入れられる生理活性剤を備える、請求項1から25のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項27】
生理活性剤が、基本的に炭素粒子、銀粒子、グラファイト粒子、抗生物質、マクロライド抗生物質、ステロイド、消炎剤、抗腫瘍薬、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗体、遺伝子配列剤、成長因子阻害剤、血管形成、抗血管形成、プロティナーゼ阻害剤、抗増殖化合物または細胞分裂周期調節剤およびその組合せで構成されたグループから選択される、請求項26に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項28】
グラフトの全体的に管状の端部が補綴カフ式グラフトのフレア状端部に結合される、請求項1から27のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項29】
全体的に管状の端部が、補綴カフ式グラフトの全体的に管状の部分にねじ込まれる、請求項28に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項30】
全体的に管状の端部が、補綴カフ式グラフトの全体的に管状の部分に付着される、請求項28に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項31】
自己密封式血管グラフトであって、
全体的に管状のePTFE基体と、
基体の少なくとも一部に配置されたシーラントの層と、
基体およびシーラントの一方の表面に配置されたビードとを備える、自己密封式血管グラフト。
【請求項32】
基体の肉厚が約200ミクロンから約300ミクロンの範囲である、請求項31に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項33】
シーラント層が約10ミクロンから300ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項31から32のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項34】
ビードが表面の周囲に螺旋状に位置決めされる、請求項31から33のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項35】
ビードが長辺および短辺がある長方形の断面形状を有し、長辺が約1mmの長さを有して、短辺が約500ミクロンの長さを有する、請求項31から34のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項36】
ビードの長辺がグラフトの外面に当てて位置決めされ、螺旋状に位置決めされたビードの隣接する巻線の間隔が約1mmから約2mmの範囲である、請求項35に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項37】
さらに、シーラント層に配置された発泡体の層を備え、ビードが発泡体層に埋め込まれる、請求項31から36のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項38】
さらに、ePTFEテープの外部層を備える、請求項31から37のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項39】
ePTFEテープまたは発泡体層のいずれか1つの外面に配向線が配置され、したがって配向線がグラフトの外面によって画定された縦軸に沿って延在する、請求項38に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項40】
配向線が外面に印刷された線を備える、請求項39に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項41】
線が少なくとも1本の連続線を備える、請求項40に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項42】
線が着色インクを備える、請求項40に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項43】
着色インクがポリマー結合剤および生体適合性インクを備える、請求項42に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項44】
生体適合性インクが、基本的にフタロシアニナート(2−)銅、D&Cの青9号、D&Cの緑5号、油溶性クロロフィリン銅複合体、クロムコバルトアルミニウム酸化物、クエン酸第二鉄アンモニウム、D&Cの青5号、FD&Cの青2号、D&Cの緑6号、二酸化チタン、炭素、酸化鉄およびその組合せで構成されたグループから選択される、請求項43に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項45】
生体適合性インクが、約6500°Kの温度を有する光で見て、概ね青または黒色のうち少なくとも1つである、請求項43に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項46】
ビードが、基本的に硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、タングステン、またはタンタルおよびその組合せで構成されたグループから選択される放射線不透過性材料を備える、請求項31から45のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項47】
基体、シーラント層、発泡体層および外部層の少なくとも1つが、基本的に硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、タングステン、またはタンタルおよびその組合せで構成されたグループから選択される放射線不透過性材料を備える、請求項31から46のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項48】
ビードが、基本的に形状記憶材料、超可塑性金属、ステンレス鋼、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、PTFEまたはePTFEおよびその組合せから構成されるグループから選択される材料を備える、請求項31から47のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項49】
ビードがシーラントのそれと同様の材料のコーティングを備える、請求項31から48のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項50】
ビードの各区画が隣接する区画から約0.5mmから約2.5mmの範囲の距離だけ隔置される、請求項31から49のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項51】
さらに、基体の第1端から延在する補綴カフを備える、請求項31から50のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項52】
カフがその近位端から延在する管状部分を備え、少なくとも一部がビード上に位置決めされるように管状部分が、グラフト上で位置決めされる、請求項51に記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項53】
半径方向コンプライアンスが基体に与えられている、請求項31から52のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項54】
長手方向のコンプライアンスが基体に与えられている、請求項31から53のいずれかに記載の自己密封式血管グラフト。
【請求項55】
半径方向にコンプライアンスがあるグラフトの形成方法であって、
ePTFE基体を提供することと、
基体を半径方向に膨張させることと、
コーティングした基体を提供するために、半径方向に膨張した基体にエラストマ材料の層を配置することと、
コーティングした基体を加熱することとを含む、方法。
【請求項56】
血管グラフトを形成する方法であって、
ePTFE基体を提供することと、
基体の長さにわたってポリウレタンの第1層を適用することと、
基体を長手方向に圧縮することと、
ポリウレタンの第1層にポリウレタンの第2層を適用することと、
ポリウレタンでコーティングした基体にePTFEテープの層を巻き付けることとを含み、ePTFEテープが最初に溶液中を通り、したがってある量の溶液がePTFEテープに適用される、方法。
【請求項57】
自己密封式カフ式血管グラフトの作成方法であって、
ePTFE基体の第1端にカフの首部分を位置決めすることと、
基体をその第2端からカフの首部分までシーラント材料に浸漬することと、
基体およびカフの首部分をシーラント材料に浸漬することとを含む、方法。
【請求項58】
さらに、基体および首部分にビードを巻き付けることと、ビード付き基体および首部分をシーラント材料に浸漬することとを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
捩れ抵抗性自己密封式血管グラフトの作成方法であって、
全体的に管状のePTFE基体を提供することと、
基体の外面の少なくとも一部にシーラントの層を配置することと、
シーラント層に溝付き区間を作成することとを含む、方法。
【請求項60】
作成することが、シーラント層の区間を除去することを含み、区間がグラフトの長さに沿って隔置される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
区間がグラフトの中央部分からのみ除去される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
作成することが、区間を約0.5mmから約5.0mmの範囲の距離だけ隔置することを含む、請求項59から61のいずれかに記載の方法。
【請求項63】
捩れ抵抗性自己密封式血管グラフトの作成方法であって、
全体的に管状のePTFE基体を提供することと、
基体の外面の少なくとも一部にシーラントの層を配置することと、
シーラント層の少なくとも一部にビードを位置決めすることと、
カフ式グラフトを血管グラフトに結合することとを含む、方法。
【請求項64】
結合することが、管状部分の近位端がビードの端部に隣接するように、カフ式グラフトの管状部分を血管グラフトの第1端上に位置決めすることと、カフ式グラフトをビードの一部上で近位方向に移動するために、管状部分を回転することとを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
さらに、管状部分の内面に接着剤を適用することによって、カフ式グラフトを血管グラフトに付着させることを含む、請求項63から64のいずれかに記載の方法。
【請求項66】
自己密封式カフ式血管グラフトの作成方法であって、
縦軸に沿って延在する第1端および第2端を有する実質的に管状のePTFE基体の周囲に全体的に螺旋状に配置されたビードを取り付けることと、
第1および第2端の一方にフレア状血管カフを結合することと、
結合した血管カフと全体的に管状のePTFE基体を付着させることとを含む、方法。
【請求項67】
結合することが、近位方向に力を加えながら、ビード上でカフの全体的に管状の近位部分を回転させることを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
付着させることが非プロトン性溶媒を適用することを含む、請求項66から67のいずれかに記載の方法。
【請求項69】
付着させることが、カフおよび基体の一方または両方にテトラヒドロフラン(THF)を適用することを含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
自己密封式血管グラフトの作成方法であって、
ePTFE基体の外面の長さにわたってエラストマシーラント層を設けることと、
シーラント層の少なくとも一部に発泡体層を配置することとを含み、
発泡体層の厚さが基体の肉厚より実質的に厚い、方法。
【請求項71】
発泡体層の厚さが、基体の肉厚の約2倍である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
配置することが、シーラント層にポリウレタンおよびジメチルアセトアミドの溶液をコーティングすることと、コーティングしたグラフトを水に浸漬することとを含む、請求項70から71のいずれかに記載の方法。
【請求項73】
溶液が、約16グラムのポリウレタンを約84グラムのジメチルアセトアミドに溶解することによって準備される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
コーティングしたグラフトを最初にほぼ室温で約30分間、水に浸漬するか、入れ、その後にコーティングしたグラフトを約40℃の水に約16時間入れる、請求項72から73のいずれかに記載の方法。
【請求項75】
さらに、グラフトを約24時間、空気乾燥することを含む、請求項72から74のいずれかに記載の方法。
【請求項76】
配置することが、シーラント層を塩溶液でコーティングすることと、コーティングしたグラフトを乾燥することと、乾燥したコーティング済みグラフトを水に入れることとを含む、請求項70に記載の方法。
【請求項77】
水が約60℃の温度に設定され、乾燥したコーティング済みグラフトが水に約16時間入れられる、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
塩溶液が、ポリウレタンの実質的な溶解が達成されるまで、約2.5グラムのポリウレタンと約10グラムのジメチルアセトアミドと約7.5グラムの塩化ナトリウムとを混合することによって準備される、請求項76から77のいずれかに記載の方法。
【請求項79】
配置することが、シーラント層をポリマー溶液でコーティングすることと、ポリマー溶液中で溶媒を消散させることと、ポリマー溶液中の塩を除去することとを含む、請求項70に記載の方法。
【請求項80】
ポリマー溶液が、ポリマーを塩溶液と組み合わせることによって準備され、塩溶液中の塩が、基本的に塩化ナトリウム、重炭酸アンモニウムまたは炭酸アンモニウム、およびその組合せで構成されたグループから選択される、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
塩を除去することが、コーティングしたグラフトを水に浸漬するか、入れることを含む、請求項79から80のいずれかに記載の方法。
【請求項82】
塩を除去することが、コーティングしたグラフトを加熱することを含む、請求項79から80のいずれかに記載の方法。
【請求項83】
配置することが、ポリマー溶液をシーラント層に噴霧することを含み、ポリマー溶液がテトラヒドロフラン(THF)を含む、請求項70に記載の方法。
【請求項84】
ポリマー溶液がポリカーボネートポリウレタンを備え、溶液を噴霧することが、ノズルがあるスプレーガンを使用することと、ポリウレタンの発泡体層がグラフト上に提供されるように、噴霧中にグラフトとノズル間の距離を約12インチから約20インチの範囲に維持することとを含む、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
ポリマー溶液を準備することが、THFと混合する前にポリカーボネートポリウレタンを加熱することを含む、請求項83から84のいずれかに記載の方法。
【請求項86】
ポリマー溶液を準備することが、重量で約88%のポリカーボネートポリウレタンをTHFに添加することを含む、請求項83から85のいずれかに記載の方法。
【請求項87】
さらに、約50℃から約70℃の範囲の温度に設定された炉に約1時間から約24時間の範囲の時間長さにわたってグラフトを配置することを含む、請求項83から86のいずれかに記載の方法。
【請求項88】
さらに、ビードを発泡体層に埋め込むために、張力を加えてビードをグラフトの周囲に螺旋状に巻き付けることを含む、請求項70から87のいずれかに記載の方法。
【請求項89】
ビードが、基本的に硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、タングステン、またはタンタルおよびその組合せで構成されたグループから選択された放射線不透過性材料を備える、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
ビードが、基本的に形状記憶材料、超可塑性金属、ステンレス鋼、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、PTFEまたはePTFEおよびその組合せから構成されるグループから選択される材料を備える、請求項88から89のいずれかに記載の方法。
【請求項91】
張力の力が約500グラムであり、螺旋状に巻き付けることが、ビードをグラフトに接触させる前にTHFを含む溶液にビードを通すことを含む、請求項88から90のいずれかに記載の方法。
【請求項92】
さらに、基体の壁、シーラント層、発泡体層および第2発泡体層の組合せ厚さが、約1mmから約2mmの範囲であるように、第2発泡体層を発泡体層上に配置することを含む、請求項70から91のいずれかに記載の方法。
【請求項93】
さらに、テープの隣接する巻線の縁部が重なるように、ポリマーテープを第2発泡体層に螺旋状に巻き付けることを含む、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
ポリマーテープがePTFEを備え、テープを螺旋状に巻き付けることが、THFをテープに適用することを含む、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
ポリマーテープがePTFEを備え、テープを螺旋状に巻き付けることが、テープに張力を加えることを含む、請求項93から94のいずれかに記載の方法。
【請求項96】
さらに、シーラント層を設ける前に、基体を膨張直径へと半径方向に膨張させることと、シーラント層を設けた後であるが、発泡体層を配置する前に、膨張直径より小さい直径に基体を戻すために基板を加熱することを含む、請求項70から95のいずれかに記載の方法。
【請求項97】
膨張するステップが、基体を、基体の元の直径の約1.5倍から約5倍の範囲の膨張直径まで基体を膨張させることを含む、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
膨張するステップが、基体の元の直径の約4倍から5倍の範囲の膨張直径まで基体を膨張させることを含む、請求項96に記載の方法。
【請求項99】
さらに、シーラント層を配置する前に基体を長手方向に圧縮することを含む、請求項70から98のいずれかに記載の方法。
【請求項100】
基体の第1端が、発泡体層がないシーラント層を備え、さらに、基体の第1端にフレア状カフ部材の首部分を位置決めすることと、溶媒を首部分に適用することとを含む、請求項70から99のいずれかに記載の方法。
【請求項101】
基体が第1端から延在するフレア状一体カフを備え、シーラント層を設けることが、カフの外面にシーラント材料を設けることを含む、請求項70から99のいずれかに記載の方法。
【請求項102】
カフの外面にシーラント材料を設けることが、カフにシーラント材料を設ける前にシーラント材料に放射線不透過性物質を添加することを含む、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
カフの外面にシーラント材料を設けることが、シーラント材料を設ける前にカフにマスクを配置することを含み、マスクが開口のパターンを含む、請求項101から102のいずれかに記載の方法。
【請求項104】
さらに、カフ上にシーラント材料のパターンを作成するためにシーラント材料の区間を除去することを含む、請求項101から102のいずれかに記載の方法。
【請求項105】
さらに、基体、シーラント層または発泡体層のうち少なくとも1つに1つまたは複数の生理活性剤を組み入れることを含む、請求項70から104のいずれかに記載の方法。
【請求項106】
さらに、基体とePTFEの外部層との間に配置されたビードを備える第1ゾーン、および基体とePTFEの外部層との間にビードがない第2ゾーンで、少なくとも2つの長手方向に別個のゾーンを形成することを含む、請求項70から105のいずれかに記載の方法。
【請求項107】
第1ゾーンの層の少なくとも1つが、第2ゾーンの対応する層より大きい厚さを有する、請求項71に記載の方法。
【請求項108】
自己密封式血管グラフトの作成方法であって、
ポリウレタン材料の少なくとも1つの層をePTFE基体の表面に配置することと、
ePTFE部材をポリウレタン材料に付着させることとを含む、方法。
【請求項109】
付着させることが、ポリウレタン材料と接触させる前にePTFE部材を溶媒に浸すことを含む請求項108に記載の方法。
【請求項110】
付着させることが、ePTFE部材をポリウレタン材料に位置決めした後に、ePTFE部材の溶媒を噴霧することを含む、請求項108に記載の方法。
【請求項111】
付着させることが、ポリウレタン材料に接触させる直前にePTFE部材を溶媒に通すことを含む、請求項108に記載の方法。
【請求項112】
通すことが、自身の壁に1つまたは複数の開口がある加圧された管、および1つまたは複数の開口上に位置決めされた品目を備える配置装置を通してePTFE部材を移動させることを含み、加圧された管が、溶媒を含む容器、圧力制御装置および調整器に接続され、ほぼ同量の溶媒がePTFE部材に適用されるように、ePTFE部材が、最初に溶媒で飽和した品目上を通過する、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
ePTFE部材がプーリシステム上のスプールから供給され、グラフトの回転中にグラフトの表面に適用される、請求項108から112のいずれかに記載の方法。
【請求項114】
溶媒がテトラヒドロフラン(THF)を備える、請求項109から113のいずれかに記載の方法。
【請求項115】
ePTFE部材がある長さのePTFEテープである、請求項108から114のいずれかに記載の方法。
【請求項116】
ポリウレタン材料の少なくとも1つの層が、第1および第2ベース層を備え、さらに、ある長さの基体に第1ベース層を配置することと、第1ベース層とともに基体を長手方向に圧縮することと、第1層上に第2層を配置することとを含む、請求項108から115のいずれかに記載の方法。
【請求項117】
第1ベース層とともに基体を長手方向に圧縮することが、基体の長さの約20%を圧縮することを含む、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
ポリウレタン材料の少なくとも1つの層が、第1発泡体層を備え、第1発泡体層は、基体の各端部から最大約5.0cmの長さに第1発泡体層がないように、基体の中央部分に配置される、請求項108から117のいずれかに記載の方法。
【請求項119】
さらに、第1発泡体層上に配置された第2発泡体層を備える、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
さらに、ポリウレタン材料の少なくとも1つの層の周囲に位置決めされた少なくとも1つのビードを備える、請求項108から119のいずれかに記載の方法。
【請求項121】
少なくとも1つのビードが、個々の断面積がある第1ビードおよび第2ビードを備え、第1ビードの断面積が第2ビードの断面積より大きい、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
第1ビードが基体の中央部分の周囲に位置決めされ、第2ビードが基体の各端の周囲に位置決めされる、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
さらに、カフを基体の端部に取り付けることを含む、請求項108から122のいずれかに記載の方法。
【請求項124】
取り付けることが、近位方向に力を加えながら、基体の端部上でカフの全体的に管状の近位部分を回転させることを含む、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
さらに、基体の各端部上にePTFEスリーブを位置決めすることを含む、請求項108から124のいずれかに記載の方法。
【請求項126】
ePTFE基体が、自身上に少なくとも1つのポリウレタン層が配置される前に、膨張直径へと半径方向に膨張し、少なくとも1つのポリウレタン層の配置後に、基体が膨張直径より小さい直径へと戻るように加熱される、請求項108から125のいずれかに記載の方法。
【請求項127】
さらに、基体、ePTFE部材および少なくとも1つのポリウレタン層のうち少なくとも1つに生理活性剤を組み入れることを含む、請求項108から126のいずれかに記載の方法。
【請求項128】
生理活性剤が、基本的に炭素粒子、銀粒子、グラファイト粒子、抗生物質、マクロライド抗生物質、ステロイド、消炎剤、抗腫瘍薬、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗体、遺伝子配列剤、成長因子阻害剤、血管形成、抗血管形成、プロティナーゼ阻害剤、抗増殖化合物または細胞分裂周期調節剤およびその組合せで構成されたグループから選択される、請求項127に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図17】
【図18】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−136178(P2011−136178A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8916(P2011−8916)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【分割の表示】特願2007−530364(P2007−530364)の分割
【原出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(591018693)シー・アール・バード・インコーポレーテッド (106)
【氏名又は名称原語表記】C R BARD INCORPORATED
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【分割の表示】特願2007−530364(P2007−530364)の分割
【原出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(591018693)シー・アール・バード・インコーポレーテッド (106)
【氏名又は名称原語表記】C R BARD INCORPORATED
【Fターム(参考)】
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