説明

排ガス処理方法

【課題】排ガス処理設備の稼動率、エネルギー消費量および大気環境負荷の低減を解決しようとするものであり、低コストで地球環境の観点からも優れた耐炎化繊維または炭素繊維の製造工程における排ガス処理方法を提供すること。
【解決手段】前駆体繊維を加熱された酸化性気体によって耐炎化する耐炎化炉を有する耐炎化繊維の製造工程、および/または耐炎化繊維の製造工程の後、耐炎化繊維を加熱された不活性気体によって炭化する炭化炉を有する炭素繊維の製造工程において、前記炉内の排ガスおよび/または前記炉周辺雰囲気の排ガスを収集して分解処理する、耐炎化繊維、および/または炭素繊維の製造工程における排ガス処理方法であって、前記排ガスのうち、耐炎化炉の炉内排ガス、耐炎化炉の炉周辺雰囲気の排ガス、および炭化炉の炉周辺雰囲気の排ガスの少なくとも一部を蓄熱式排ガス処理設備で分解処理することを特徴とする排ガス処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐炎化繊維または炭素繊維の製造工程における排ガス処理方法に関する。さらに詳しくは、排ガスの少なくとも一部を蓄熱式排ガス処理設備で排ガス処理を施す排ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐炎化繊維は通常、前駆体であるアクリル系繊維やピッチ系繊維等のプリカーサーを耐炎化炉または不融化炉などと呼ばれる熱処理炉(以下、本発明では総称して耐炎化炉と記載する)内にて200〜400℃の空気等の酸化性気体中で加熱処理(以下、耐炎化処理と総称する)することで得られ、また炭素繊維は、耐炎化繊維を炭化炉内にてさらなる高温に保たれた窒素、アルゴンなどの不活性気体中で加熱して炭化することにより製造されている。なお、炭素繊維を製造する場合は、該耐炎化繊維の製造工程(以下、耐炎化工程)とその後の炭素繊維の製造工程(以下、炭化工程)は通常連続したラインで製造されているが、別のラインで切り離して製造することもある。また耐炎化工程の耐炎化炉と炭化工程の炭化炉においては、各々1つの炉とは限らず、複数に分割した炉で処理することもある。
【0003】
ここで、耐炎化工程で排出される排ガス(以下、耐炎化排ガス)および炭化工程で排出される排ガス(以下、炭化排ガス)は、耐炎化炉、炭化炉の炉本体から抜き出した排ガスと、場合によっては炉本体の被処理物出入口から漏れ出たガスを捕集することを目的に炉周辺雰囲気ガスを集めた排ガスで構成されるが、この排ガスの中には、前駆体繊維自身および付与されている油剤の熱分解に起因する多種多様な化合物、アンモニア、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、シアン化水素、気化したタール成分等が含まれており、このような化合物を含む排ガスは、環境衛生等の面から無害化してから大気に放出する必要がある。よって特許文献1では耐炎化排ガスと炭化排ガスをそれぞれ耐炎化炉と炭化炉の外に導き混合させ、混合したガスを酸化触媒式または直接燃焼式の排ガス処理設備において、ガスの中に含まれる有害成分を分解処理してから大気に放出している。
【0004】
しかしながら、この内の酸化触媒式は、処理によって析出した固形物が経時によって触媒を閉塞するため、排ガス中に含まれる被処理化合物の量によってはメンテナンス周期が短く、製造工程の稼動率に影響してしまうことがある。特に、該耐炎化工程では前駆体繊維にシリコン系油剤が付与されていた場合、耐炎化排ガスに耐炎化炉内の熱分解に起因する多量のシリコン系化合物が含有する。また、炭化工程でも炭化炉内にて耐炎化炉内よりはるかに高い雰囲気温度で加熱するため、前駆体繊維に大きな加熱減量が起り、炭化排ガスに多量の熱分解物が含有する。該熱分解物は、炭化炉の外に出て温度が低下するとタール成分として凝縮し酸化触媒機器の劣化速度を飛躍的に高めてしまう。したがって耐炎化繊維または炭素繊維の製造工程における排ガス処理方法としては、直接燃焼式の排ガス処理設備を用いるのが通常である(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
一方、直接燃焼式においては、灯油、LNG、LPGなどの燃料を常時燃やし、高温雰囲気下(約750℃以上)で排ガスの分解処理を施すため、エネルギー消費量および燃料燃焼により発生し大気に放出する二酸化炭素、窒素化合物の量が膨大となる。したがって特許文献2または特許文献3のように燃焼後の排ガスの廃熱をチューブ式、多管式、プレート式などの熱交換器で回収して燃焼前の排ガスの予熱、該耐炎化炉の給気用エアの予熱などに利用しているが、設備構造上熱伝達の表面積が大きく取るためには設備サイズを大きく取る必要があり、工業的な設備費採算性を視野に入れた機器サイズでは廃熱回収は充分でなく依然エネルギー消費量は大きい。
【0006】
なお、他の方式の排ガス処理設備として、一般的には例えば特許文献4に開示されるような蓄熱式排ガス処理設備が知られている。蓄熱式は直接燃焼式と類似しているが、排ガスを燃焼するための燃焼領域の前の予熱熱交として、蓄熱材を収容した複数の蓄熱領域を備えているのが特徴である。排ガスを複数の蓄熱領域のうち何れか一つに通過させて燃焼領域へと導入し、該燃焼領域にて分解処理した後、他の蓄熱領域を出口として排出するように運転されるものである。出口となる蓄熱領域に収容された蓄熱材は、暫く運転を継続すると次第に高温になるため、入口となる蓄熱領域と出口となる蓄熱領域とを所定時間毎に順次切り替え、高温となった蓄熱領域から排ガスが導入されるように運転される。このように、該蓄熱式排ガス処理設備は、燃焼後の排ガスによって持ち出されるエネルギーを最小限に抑え、かつそのエネルギーを排ガスの予熱に有効利用しながら排ガスの分解処理を行うものである。また、蓄熱領域の蓄熱材は例えばハニカム状といったように熱伝達の表面積を大きくとった構造をしており、直接燃焼式排ガス処理設備のチューブ式、多管式、プレート式などの熱交換器と比べ、機器サイズあたりの熱交換量が大きいため、廃熱回収率が高く、エネルギー消費量を大きく抑えることができる方式となっている。
【0007】
蓄熱式排ガス処理設備の蓄熱領域は、前記の酸化触媒方式と比べると閉塞の問題は非常に小さいが、それでも排ガス中に含まれる化合物の固形量によっては長期間運転が困難になるため、耐炎化繊維または炭素繊維の製造工程の排ガス処理に直接適用する例は知られていなかった。特に、従来の蓄熱式排ガス処理設備を耐炎化糸製造工程や炭化糸製造工程にそのまま適用すると、該炭化排ガスに含まれるタール成分の凝縮物が、該蓄熱領域の閉塞を起こしメンテナンス周期を極端に低下させてしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭59−142826号公報
【特許文献2】特開2009−174078号公報
【特許文献3】特開2010−223471号公報
【特許文献4】特開平9−264521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、前記従来技術の問題点である排ガス処理設備の稼動率、エネルギー消費量および大気環境負荷の低減を解決しようとするものであり、低コストで地球環境の観点からも優れた耐炎化繊維または炭素繊維の製造工程における排ガス処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は前記課題を解決するために次の構成を有する。すなわち、
(1)前駆体繊維を加熱された酸化性気体によって耐炎化する耐炎化炉を有する耐炎化繊維の製造工程、および/または耐炎化繊維の製造工程の後、耐炎化繊維を加熱された不活性気体によって炭化する炭化炉を有する炭素繊維の製造工程において、前記炉内の排ガスおよび/または前記炉周辺雰囲気の排ガスを収集して分解処理する、耐炎化繊維、および/または炭素繊維の製造工程における排ガス処理方法であって、前記排ガスのうち、耐炎化炉の炉内の排ガス、耐炎化炉の炉周辺雰囲気の排ガス、および炭化炉の炉周辺雰囲気の排ガスの少なくとも一部を蓄熱式排ガス処理設備で分解処理することを特徴とする排ガス処理方法。
【0011】
(2)前記炭素繊維の製造工程の後工程に、サイジング処理液を付着した炭素繊維を熱風で乾燥させる乾燥機を有する乾燥工程を有しており、前記乾燥機の排ガスの少なくとも一部を前記蓄熱式排ガス処理設備で分解処理する、請求項1に記載の排ガス処理方法。
【0012】
(3)前記排ガスのうち、前記蓄熱式排ガス処理設備で処理する排ガスを除いた他の排ガスを、直接燃焼式排ガス処理設備で分解処理する、(1)または(2)に記載の排ガス処理方法。
【0013】
(4)前記蓄熱式排ガス処理設備の導入側に、前記直接燃焼式排ガス処理設備で排ガスの分解処理を可能とするライン、および前記蓄熱式排ガス処理設備で排ガスの分解処理を可能とするラインの両ラインを切り替える切替手段を有する、(3)に記載の排ガス処理方法。
【0014】
(5)前記蓄熱式排ガス処理設備の導入前に、排ガス中に含まれるシリコン系化合物の固形物を捕集する手段が設けられている、(1)〜(4)のいずれかに記載の排ガス処理方法。
【0015】
(6)前記排ガス中に含まれるシリコン系化合物の固形物を捕集する手段としてバグフィルタを用いる、(5)に記載の排ガス処理方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、排ガス処理設備の稼動率を損なうことなく、排ガス処理後の廃熱回収率を大きく向上させることが可能となり、エネルギー燃料の消費を抑え、燃料費の削減による低コスト化が実現可能となる。また同時に燃料燃焼によって発生する二酸化炭素、窒素化合物の量も小さくなり、大気環境負荷の低減によるエコロジーの観点から優れた製造が実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施態様に係る熱処理炉の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施態様に係る熱処理炉の概略構成図である。
【図3】本発明の一実施態様に係る熱処理炉の概略構成図である。
【図4】従来用いられてきた熱処理炉の一般的な概略構成図である。
【図5】本発明の一実施態様に係る熱処理炉の概略構成図である。
【図6】従来用いられてきた別の一態様に係る熱処理炉の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に示す実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明が図面に記載された実施態様に限定されるものではない。
【0019】
図1は、本発明の一実施態様に係る排ガス処理方法の概略構成図である。
【0020】
前駆体繊維1は、加熱された酸化性気体雰囲気の耐炎化炉2と、さらに加熱された不活性気体雰囲気の炭化A炉3と炭化B炉4の順に案内され、そこで通常の加熱焼成が行われることで耐炎化繊維5,炭素繊維6が製造される。ここで、耐炎化炉2による処理を耐炎化工程、炭化A炉3ないし炭化B炉4による処理を炭化工程と区分されるが、それぞれの工程において別段炉の数は限らず、さらに複数に分割した炉で処理しても良い。耐炎化工程は200〜400℃の加熱焼成、炭化工程は最大1800℃程度、特定の品種によってはさらに最大3000℃程度の加熱焼成を施すこともできる。
【0021】
また耐炎化炉2、炭化A炉3、炭化B炉4は、酸化性気体の耐炎化給気7と不活性気体の炭化A炉給気8、炭化B炉給気9により給気され、耐炎化炉内排ガス10、炭化A炉内排ガス11、炭化B炉内排ガス12で排気され、炉内のクリーン化を行っている。さらに耐炎化炉2、炭化A炉3、炭化B炉4における前駆体繊維1の出入り口から炉内ガスが漏れ出てきて、この該ガスの中には、前駆体繊維自身および付与されている油剤の熱分解に起因する多種多様な化合物、有害成分、気化したタール成分等が含まれているため、作業環境面等への影響を防ぐために耐炎化炉周辺雰囲気排ガス13、炭化A炉周辺雰囲気排ガス14、炭化B炉周辺雰囲気排ガス15で局所排気している。ここで、耐炎化炉周辺雰囲気排ガス13、炭化A炉周辺雰囲気排ガス14、炭化B炉周辺雰囲気排ガス15は、炉体から外部の密閉されていない空間の局所排気のことを指し、シールボックス・シール管のような炉体と接続して密閉された空間の排気は、耐炎化炉内排ガス10、炭化A炉内排ガス11、炭化B炉内排ガス12の方に入る。なお、該耐炎化炉内排ガス10、炭化A炉内排ガス11、炭化B炉内排ガス12、耐炎化炉周辺雰囲気排ガス13、炭化A炉周辺雰囲気排ガス14、炭化B炉周辺雰囲気排ガス15の流量は、図示していないが手動調整ダンパ、さらに好ましくは流量検知のフィードバック制御による自動調整ダンパを用いて個別にコントロール可能にすれば生産管理上望ましい。
【0022】
また耐炎化炉内排ガス10、炭化A炉内排ガス11、炭化B炉内排ガス12、耐炎化炉周辺雰囲気排ガス13、炭化A炉周辺雰囲気排ガス14、炭化B炉周辺雰囲気排ガス15は、屋外に導いて大気に放出させるが、大気放出前に有害成分の分解処理を行う。ここで各排ガスの特性、具体的には排ガス中に含まれる化合物の特性・量によって、処理する排ガス処理設備を分類する。本実施態様においては、耐炎化炉内排ガス10と耐炎化炉周辺雰囲気排ガス13、炭化A炉周辺雰囲気排ガス14、炭化B炉周辺雰囲気排ガス15のうち少なくとも一部を蓄熱式排ガス処理設備16にて処理し、その他のガスを直接燃焼式排ガス処理設備17にて処理するようにする。蓄熱式排ガス処理設備16で処理される排ガスの流量、および直接燃焼式排ガス処理設備17で処理される排ガスの流量のコントロールは、直接燃焼式行きダンパ18のような切替手段で行うことができる。直接燃焼式行きダンパ18は手動調整ダンパであっても良いが、流量検知のフィードバック制御による自動調整ダンパにする方が生産管理上好ましい。
【0023】
蓄熱式排ガス処理設備16で処理する排ガスは、蓄熱式行きAライン19の排ガスラインで蓄熱式A熱交20を経由して蓄熱式燃焼領域21で燃料を燃焼させ高温雰囲気下で排ガス中の有害成分の分解処理を施す。処理後の高温の排ガスは蓄熱式B熱交22にて熱交換して温度が低下した後、蓄熱式排ガスブロワ23を経て大気に放出する。なおその後、蓄熱式行きライン切り替えダンパ24にて蓄熱式行きAライン19と蓄熱式行きBライン25を切り替え、蓄熱式行きBライン25は高温となった蓄熱式B熱交22から導入され熱交換により充分に予熱された後蓄熱式燃焼領域21で分解処理を行い、今度は蓄熱式A熱交20にて熱交換して温度が低下した後、蓄熱式排ガスブロワ23を経て大気に放出するようにする。さらにその後も蓄熱式行きAライン19と蓄熱式行きBライン25を交互に切り替えることで、蓄熱式行き排ガスの予熱は常時行われ、蓄熱式燃焼領域21の燃料消費量は少量に抑制することができる。なお、ラインを交互に切り替えるタイミングとしては、未処理排ガスの導入方向および処理済み排ガスの排出方向を、所定間隔(例えば60秒)毎に反転させる(例えば、特許文献4参照)など、所定時間毎の切り替え方式が採用可能であるが、蓄熱式A熱交20、蓄熱式B熱交22の前後付近の排ガス温度、蓄熱材の温度の変化を計測し、その出力によるフィードバックによる切り替えが好ましい。
【0024】
一方、直接燃焼式排ガス処理設備17では、耐炎化炉内排ガス10と耐炎化炉周辺雰囲気排ガス13、炭化A炉周辺雰囲気排ガス14、炭化B炉周辺雰囲気排ガス15のうち、蓄熱式排ガス処理設備16で処理した以外の排ガスと、炭化A炉内排ガス11、炭化B炉内排ガス12の分解処理を施す。
【0025】
炭化A炉3と炭化B炉4は耐炎化炉2よりはるかに高い雰囲気温度で加熱するため、耐炎化繊維5は重量基準で大きな加熱減量が起り、多量の熱分解物が発生する。炭化A炉内排ガス11、炭化B炉内排ガス12のなかの該熱分解物は、炉の外に出た際にタール成分として凝縮し、この凝縮物は蓄熱式排ガス処理設備16の蓄熱式A熱交20、蓄熱式B熱交22の閉塞を促進しメンテナンス周期を極端に落としてしまう。よって炭化A炉内排ガス11、炭化B炉内排ガス12は、蓄熱式排ガス処理設備16で処理するのには適さないため蓄熱式以外の排ガス処理設備、好ましくは本実施例にあるように、その中でも排ガス中に含まれる化合物の影響を受けにくい直接燃焼式排ガス処理設備17を用いて処理することが好ましい。
【0026】
また炭化A炉内排ガス11、炭化B炉内排ガス12は主成分が不活性気体であるため、直接燃焼式排ガス処理設備17で燃焼するに際し、酸化性気体が必要である。このため新たに外気等の空気を供給しても良いが、本実施態様においては、さらなる省エネのため耐炎化炉内排ガス10と耐炎化炉周辺雰囲気排ガス13、炭化A炉周辺雰囲気排ガス14、炭化B炉周辺雰囲気排ガス15で代用することとしている。炭化A炉周辺雰囲気排ガス14、炭化B炉周辺雰囲気排ガス15においては不活性気体を含有しているが、同時に外気も吸い込んで混合しているため酸化性気体として活用できる。なお、直接燃焼式排ガス処理設備17に持っていく耐炎化炉内排ガス10と耐炎化炉周辺雰囲気排ガス13、炭化A炉周辺雰囲気排ガス14、炭化B炉周辺雰囲気排ガス15の量は、炭化A炉内排ガス11、炭化B炉内排ガス12を燃焼するのに必要な酸化性気体分のみとし、なるべく燃料消費量が少ない蓄熱式排ガス処理設備16に多く排ガス量を持っていく方が省エネの観点から好ましい。また、必要な酸化性気体の少なくとも一部を、上記排ガスを使用せず外部からの取り込み、例えば大気とすることも可能である。直接燃焼式排ガス処理設備17に導入する耐炎化炉内排ガス10と耐炎化炉周辺雰囲気排ガス、炭化A炉周辺雰囲気排ガス14と炭化B炉周辺雰囲気排ガス15の量は、直接燃焼式排ガス処理設備で処理する全体の排ガス中の酸素濃度を19体積%以下、13%体積以上とするのが好ましく、さらに好ましくは、17体積%以下、15体積%以上である。なお、酸素濃度は19体積%以下とすることで、省エネ効率を高めることが可能となり、13体積%以上とすることによって燃焼性を確保できる。前記した直接燃焼式排ガス処理設備17で処理する耐炎化炉内排ガス10と耐炎化炉周辺雰囲気排ガス13、炭化A炉周辺雰囲気排ガス14、炭化B炉周辺雰囲気排ガス15の一部の量は、直接燃焼式行きダンパ18で流量コントロールして、直接燃焼式行きAライン26の排ガスラインで直接燃焼式熱交27を経由して直接燃焼式燃焼領域28で燃料を燃焼させて高温雰囲気下で排ガス中の有害成分の分解処理を施す。直接燃焼式熱交27にて燃焼後の排ガスとの熱交換により、直接燃焼式行きAライン26の排ガスは予熱されることで、直接燃焼式燃焼領域28での燃料消費量を抑制することができる。
【0027】
一方、炭化A炉内排ガス11、炭化B炉内排ガス12は、前記したように前駆体繊維の多量の熱分解物が含有されているので、タール成分の凝縮を減らすため、直接燃焼式行きBライン29に炭化炉内排ガス用電気ヒーター30で加熱保温して、直接燃焼式燃焼領域28に送るようにする。炭化炉内排ガス用電気ヒーター30の加熱保温は200℃以上、より好ましくは500℃以上の設定が望ましい。なお直接燃焼式行きBライン29は、排ガス中のタール成分の凝縮物による直接燃焼式熱交27への閉塞を防止するため、直接燃焼式行きAライン26のように直接燃焼式熱交27を経由せずに直接燃焼式燃焼領域28に接続するのが好ましい。直接燃焼式燃焼領域28に送られた直接燃焼式行きAライン26の排ガスと、直接燃焼式行きBライン29の排ガスは、混合して高温雰囲気下で排ガス中の有害成分の分解処理を施された後、直接燃焼式排ガスブロワ31を経て大気に放出する。
【0028】
図2は、本発明の別の実施態様に係る排ガス処理方法の概略構成図である。蓄熱式排ガス処理設備16のメンテナンスの際に、蓄熱式行きダンパ32を全閉にし、直接燃焼式行きダンパ18を全開にすることで全ての排ガスを直接燃焼式排ガス処理設備17で処理するよう直接燃焼式排ガス処理設備17の排ガス処理能力を設定・設計するようにすれば、生産を連続しながら蓄熱式排ガス処理設備16のメンテナンスを行うことが可能となり好ましい。なお、その際直接燃焼式燃焼領域行きダンパ33で流量調整することで、設置スペースと設備費などから決定された適切な直接燃焼式熱交27の機器サイズによる流量上限までは排ガスを直接燃焼式行きAライン26に通し、それ以上の流量の排ガスは直接燃焼式燃焼領域28に接続するようにすれば、極力廃熱の回収を考慮した省エネの観点で好ましい運転形態となる。また、直接燃焼式燃焼領域行きダンパ33は手動調整ダンパであっても良いが、流量検知のフィードバック制御による自動調整ダンパにする方が生産管理上好ましい。
【0029】
図3は、本発明のさらに別の実施態様に係る排ガス処理方法の概略構成図である。前駆体繊維1にシリコン系油剤が付与されており、耐炎化炉内排ガス10には油剤の熱分解に起因する多量のシリコン系化合物の固形物が含有している場合に特に好ましい態様である。ここで、前記したシリコン系化合物の固形物による蓄熱式A熱交20、蓄熱式B熱交22の閉塞を防止するために、耐炎化炉内排ガス10は蓄熱式排ガス処理設備16ではなく、直接燃焼式排ガス処理設備17で処理するようラインを構成し、さらに耐炎化炉内排ガスダンパ34で直接燃焼式熱交27行きと直接燃焼式燃焼領域28行きの流量も調整可能なようにすれば、直接燃焼式熱交27への閉塞または前記の直接燃焼式行きAライン26の流量上限への回避も可能となりより好ましくなる。また、耐炎化炉内排ガスダンパ34は手動調整ダンパであっても良いが、流量検知のフィードバック制御による自動調整ダンパにする方が生産管理上好ましい。
【0030】
さらに耐炎化炉周辺雰囲気排ガス13でもシリコン系化合物の固形物が多少含有していることを想定し、蓄熱式行きダンパ32の後で、かつ蓄熱式行きAライン19と蓄熱式行きBライン25の分岐する前にダスト捕捉手段35を設置する。なお、ダスト捕捉手段35は電気集塵機、遠心分離機、バグフィルタ等あるが、設置スペース、設備費の観点からバグフィルタが最も望ましい。バグフィルタは一般のボイラなどに用いられるもので構わないが、耐熱温度200℃以上、集塵効率99%以上であり、定期的に圧空などにより堆積したダストを払い落とし別途破棄することが可能なものであればバグフィルタの長寿命化が期待出来、より好ましい。
【0031】
図5は、本発明のさらに別の実施態様に係る排ガス処理方法の概略構成図である。図5は、図1の炭化工程の後に、高次加工性を高めるためサイジング処理液を付与した炭素繊維を乾燥する乾燥機36を有するものであり、特に好ましい態様のひとつである。乾燥機36は、ドラム式乾燥機や熱風式乾燥機など、機器から排出される排ガスを収集可能な構造を有していれば良く、また乾燥機の数に特段の制約はなく、複数に分割した乾燥機であっても良い。なお乾燥工程は、酸化性気体雰囲気において100℃〜400℃で行うことが好ましい。
【0032】
なお、乾燥機内排ガス38は、屋外に導いて大気に放出されるが、大気放出前に有害成分の分解処理を行うことが望ましい。乾燥機内排ガス38の中には、サイジング処理液の蒸発によって生じる有害成分、気化したタール成分等が含まれるため、図5の乾燥機内排ガス38以外の他の排ガスと同様に、排ガス処理設備においてガスの中に含まれる有害成分を分解処理してから大気に放出するのが望ましい。本実施態様においては、乾燥機内排ガス38のうち少なくとも一部を他の排ガスと同じく蓄熱式排ガス処理設備16にて処理するようにする。前記した直接燃焼式排ガス処理設備17で処理する乾燥機内排ガス38の一部の量は、乾燥機排ガスダンパ42で流量コントロールして、直接燃焼式行きAライン26の排ガスラインで直接燃焼式熱交27を経由して直接燃焼式燃焼領域28で燃料を燃焼させて高温雰囲気下で排ガス中の有害成分の分解処理を施す。
【0033】
また、図5の配管の接続方法は、乾燥機排ガスダンパ42により乾燥機内排ガス38の蓄熱式排ガス処理設備16と直接燃焼式排ガス処理設備17への流量をコントロール可能な機構となっているが、配管分岐点41の前に乾燥機内排ガス38を接続し、直接燃焼式行きダンパ18と蓄熱式行きライン切り替えダンパ24により流量をコントロールしても良く、図5において具体的に開示される態様に限定される訳ではない。
【0034】
乾燥機内排ガス38の中には、前記したようにサイジング処理液の蒸発によって生じる有害成分、気化したタール成分等が含有されているため、それらの凝縮を減らすため、直接燃焼式行きCライン40、蓄熱式行きCライン39、蓄熱式行きCライン39が蓄熱式行きBライン25に接続した後の蓄熱式燃焼領域21までのライン、直接燃焼式行きCライン40が直接燃焼式行きAライン26に接続した後の蓄熱式燃焼領域28までのラインを乾燥機内排ガス用電気ヒーター43で加熱保温し、直接燃焼式燃焼領域28と蓄熱式燃焼領域21に送るようにする。乾燥機内排ガス用電気ヒーター43の加熱保温は100℃以上、より好ましくは200℃以上の設定が望ましい。その他態様は図1と同様である。
【0035】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0036】
[実施例1]
太さ1.1デシテックスのPAN系のプリカーサー単糸を12,000本束ねた糸条を図2のような工程フローにて耐炎化および炭化処理を行った。ただし耐炎化炉2の炉数は2つで、炭化A炉3、炭化B炉4の炉数は各1つである。また耐炎化炉2の雰囲気気体は空気を用い、炭化A炉3と炭化B炉4の雰囲気気体は窒素を用いている。各排ガス量は耐炎化炉内排ガス10で2炉併せ12,000Nm/hr、炭化A炉内排ガス11は1,000Nm/hr、炭化B炉内排ガス12は500Nm/hrでコントロールされ、耐炎化炉周辺雰囲気排ガス13、炭化A炉周辺雰囲気排ガス14、炭化B炉周辺雰囲気排ガス15はすべて合わせて16,000Nm/hrである。なお炭化A炉内排ガス11と炭化B炉内排ガス12は、炭化炉内排ガス用電気ヒーター30で500℃に加熱保温している。
【0037】
蓄熱式行きダンパ32は全開、直接燃焼式行きダンパ18は流量自動調整式にし、直接燃焼式行きAライン26の流量を5,000Nm/hr、蓄熱式行きAライン19または蓄熱式行きBライン25の流量、すなわち蓄熱式排ガス処理設備16にて処理する排ガス量を23,000Nm/hrに設定した。なお、蓄熱式行きライン切り替えダンパ24は、蓄熱式行きAライン19と蓄熱式行きBライン25を60秒ごとに切り替えるよう自動制御している。一方直接燃焼式排ガス処理設備17にて処理する排ガスは、炭化A炉内排ガス11と炭化B炉内排ガス12の流量1,500Nm/hrと前記直接燃焼式行きAライン26の流量5,000Nm/hrで合計6,500Nm/hrとなる。なお、直接燃焼式燃焼領域行きダンパ33は全閉にし、前記直接燃焼式行きAライン26の流量5,000Nm/hrはすべて直接燃焼式熱交27を経由し予備加熱されてから直接燃焼式燃焼領域28で処理されている。
【0038】
蓄熱式燃焼領域21と直接燃焼式燃焼領域28の内部雰囲気温度は800℃設定となるよう、燃料は灯油を用いて燃焼させ、該運転条件にて30日間の連続運転を行い、各炉の燃料消費量を実測し、排ガス環境負荷と設備の内部状態を観察した。結果を表1に示す。
【0039】
[実施例2]
シリコン系油剤が付与された、太さ1.1デシテックスのPAN系のプリカーサー単糸を12,000本束ねた糸条を図3のような工程フローにて耐炎化および炭化処理を行った。このとき直接燃焼式行きダンパ18は全閉、蓄熱式行きダンパ32を全開にし、耐炎化炉周辺雰囲気排ガス13、炭化A炉周辺雰囲気排ガス14、炭化B炉周辺雰囲気排ガス15はすべて蓄熱式排ガス処理設備16にて処理するようにした。ただし蓄熱式行きダンパ32の後で、かつ蓄熱式行きAライン19と蓄熱式行きBライン25の分岐する前のダスト捕捉手段35は、何も設けなかった。その他耐炎化炉内排ガスダンパ34で耐炎化炉内排ガス10の9割程度を直接燃焼式熱交27、残りの1割を直接燃焼式燃焼領域28に振り分けている。
【0040】
その他の条件はすべて実施例1と同じにし、蓄熱式排ガス処理設備16にて処理する排ガス量を16,000Nm/hr、直接燃焼式排ガス処理設備17にて処理する排ガスを13,500Nm/hrとした。該運転条件にて30日間の連続運転を行い、各炉の燃料消費量を実測した。結果を表1に示す。
【0041】
なお実施例2の30日間の連続運転の後、蓄熱式A熱交20と蓄熱式B熱交22の内部をチェックしたが、一部シリコン系化合物の固形物による閉塞状態が見られ、これ以上の連続運転にはメンテナンスを要する可能性があることが確認された。
【0042】
[実施例3]
実施例2と同じ条件で、ダスト捕捉手段35として耐熱温度200℃以上、集塵効率99%以上であり、定期的に圧空などにより堆積したダストを払い落とし別途破棄することが可能なバグフィルタを設置した。該運転条件で30日間の連続運転を行い、各炉の燃料消費量を実測した。結果を表1に示す。
【0043】
なお実施例2と同じく、30日間の連続運転の後、蓄熱式A熱交20と蓄熱式B熱交22の内部をチェックしたが、シリコン系化合物の固形物は微量見られた程度でメンテナンス周期としては充分に余裕があることが確認された。
【0044】
[実施例4]
図5のような乾燥機36を含む工程フローで連続運転を行った。ただし乾燥機36の機数は1つである。また乾燥機36の雰囲気気体は空気を用いている。乾燥機内排ガス38の排ガス量は7,000Nm/hrでコントロールされる。なお乾燥機内排ガス38は乾燥機内排ガス用電気ヒーター43で200℃に加熱保温している。
【0045】
その他の条件はすべて実施例1と同じにし、乾燥機排ガスダンパ42は全閉、直接燃焼式行きダンパ18は流量自動調整式にし、蓄熱式行きAライン19または蓄熱式行きBライン25の流量、すなわち蓄熱式排ガス処理設備16にて処理する排ガス量を30,000Nm/hrに設定した。
【0046】
該運転条件にて30日間の連続運転を行い、各炉の燃料消費量を実測し、排ガス環境負荷と設備の内部状態を観察した。結果を表2に示す。
【0047】
[比較例1]
太さ1.1デシテックスのPAN系のプリカーサー単糸を12,000本束ねた糸条を、図4のような工程フローにて耐炎化および炭化処理を行った。発生した排ガスはすべて直接燃焼式排ガス処理設備17に持っていって燃焼処理している。直接燃焼式燃焼領域行きダンパ33で耐炎化炉内排ガス10の8割程度を直接燃焼式熱交27、残りの2割を直接燃焼式燃焼領域28に振り分けた。その他の条件はすべて実施例1と同じにした。該運転条件にて30日間の連続運転を行い、各炉の燃料消費量を実測した。結果を表1に示す。
【0048】
[比較例2]
太さ1.1デシテックスのPAN系のプリカーサー単糸を12,000本束ねた糸条を、図6のような工程フローにて耐炎化および炭化処理を行った。発生した排ガスはすべて直接燃焼式排ガス処理設備17に持っていって燃焼処理している。直接燃焼式燃焼領域行きダンパ33で耐炎化炉内排ガス10の8割程度を直接燃焼式熱交27、残りの2割を直接燃焼式燃焼領域28に振り分けた。その他の条件はすべて実施例4と同じにした。該運転条件にて30日間の連続運転を行い、各炉の燃料消費量を実測した。結果を表2に示す。
【0049】
実施例1と実施例2は、前駆体繊維にシリコン系油剤が含まれているかどうかで蓄熱式排ガス処理設備の熱交の閉塞を防止するため運転条件を変えている。対し比較例1は、排ガス中に含まれるシリコン系化合物の直接燃焼式排ガス処理設備への影響は小さいため、前駆体繊維にシリコン系油剤が含まれていてもいなくても運転条件は同一であり、一定の灯油消費量と環境負荷を示す。表1から実施例1、実施例2ともに蓄熱式排ガス処理設備の活用により、比較例1と比較して灯油の消費量は大きく削減され、またそれにより環境負荷も大きく低下していることが確認される。特に実施例1では前駆体繊維にシリコン系油剤が含まれていないため、蓄熱式排ガス処理設備を積極的に活用でき、前記効果は大きい。さらに実施例3では実施例2にダスト補足手段を設けることで、メンテナンス周期を大きく延長させることが可能となり、さらにシリコン系化合物の付着による熱交性能の低下も防げるため、若干ではあるが灯油の消費量もさらに低下し、より好ましい運転形態となっている。
【0050】
さらに実施例4では実施例1に加え、乾燥機を有する工程フローからの排ガスを蓄熱式排ガス処理設備にて処理することで、比較例2と比較して灯油の消費量は大きく削減され、またそれにより環境負荷も大きく低下していることが確認される。なお、実施例1と比較例1を比較した効果と実施例4と比較例2を比較した効果では、実施例4における効果がより大きく、実施例1に比べ、灯油消費量及び環境負荷量の観点から、より好ましい運転形態となっている。
【0051】
このように、本発明によって、耐炎化炉の炉内排ガス、耐炎化炉周辺雰囲気の排ガス、炭化炉の炉周辺雰囲気の排ガスの少なくとも一部、またはこれに加え乾燥機内排ガスの少なくとも一部を蓄熱式排ガス処理設備で処理し、ダスト捕捉手段を設けることで、排ガス処理設備の稼動率を損なうことなく、燃焼エネルギーの燃料を大きく削減でき、エネルギー燃料によって発生される環境負荷の量も削減することができるといえる。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る排ガス処理方法は、耐炎化繊維または炭素繊維の製造工程に用いて好適なものである。
【符号の説明】
【0055】
1:前駆体繊維
2:耐炎化炉
3:炭化A炉
4:炭化B炉
5:耐炎化繊維
6:炭素繊維
7:耐炎化給気
8:炭化A炉給気
9:炭化B炉給気
10:耐炎化炉内排ガス
11:炭化A炉内排ガス
12:炭化B炉内排ガス
13:耐炎化炉周辺雰囲気排ガス
14:炭化A炉周辺雰囲気排ガス
15:炭化B炉周辺雰囲気排ガス
16:蓄熱式排ガス処理設備
17:直接燃焼式排ガス処理設備
18:直接燃焼式行きダンパ
19:蓄熱式行きAライン19
20:蓄熱式A熱交
21:蓄熱式燃焼領域
22:蓄熱式B熱交
23:蓄熱式排ガスブロワ
24:蓄熱式行きライン切り替えダンパ
25:蓄熱式行きBライン
26:直接燃焼式行きAライン
27:直接燃焼式熱交
28:直接燃焼式燃焼領域
29:直接燃焼式行きBライン
30:炭化炉内排ガス用電気ヒーター
31:直接燃焼式排ガスブロワ
32:蓄熱式行きダンパ
33:直接燃焼式燃焼領域行きダンパ
34:耐炎化炉内排ガスダンパ
35:ダスト捕捉手段
36:乾燥機
37:乾燥機給気
38:乾燥機内排ガス
39:蓄熱式行きCライン
40:直接燃焼式行きCライン
41:配管分岐点
42:乾燥機排ガスダンパ
43:乾燥機内排ガス用電気ヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前駆体繊維を加熱された酸化性気体によって耐炎化する耐炎化炉を有する耐炎化繊維の製造工程、および/または耐炎化繊維の製造工程の後、耐炎化繊維を加熱された不活性気体によって炭化する炭化炉を有する炭素繊維の製造工程において、前記炉内の排ガスおよび/または前記炉周辺雰囲気の排ガスを収集して分解処理する、耐炎化繊維、および/または炭素繊維の製造工程における排ガス処理方法であって、前記排ガスのうち、耐炎化炉の炉内の排ガス、耐炎化炉の炉周辺雰囲気の排ガス、および炭化炉の炉周辺雰囲気の排ガスの少なくとも一部を蓄熱式排ガス処理設備で分解処理することを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項2】
前記炭素繊維の製造工程の後工程に、サイジング処理液を付着した炭素繊維を熱風で乾燥させる乾燥機を有する乾燥工程を有しており、前記乾燥機の排ガスの少なくとも一部を前記蓄熱式排ガス処理設備で分解処理する、請求項1に記載の排ガス処理方法。
【請求項3】
前記排ガスのうち、前記蓄熱式排ガス処理設備で処理する排ガスを除いた他の排ガスを、直接燃焼式排ガス処理設備で分解処理する、請求項1または2に記載の排ガス処理方法。
【請求項4】
前記蓄熱式排ガス処理設備の導入側に、前記直接燃焼式排ガス処理設備で排ガスの分解処理を可能とするライン、および前記蓄熱式排ガス処理設備で排ガスの分解処理を可能とするラインの両ラインを切り替える切替手段を有する、請求項3に記載の排ガス処理方法。
【請求項5】
前記蓄熱式排ガス処理設備の導入前に、排ガス中に含まれるシリコン系化合物の固形物を捕集する手段が設けられている、請求項1〜4のいずれかに記載の排ガス処理方法。
【請求項6】
前記排ガス中に含まれるシリコン系化合物の固形物を捕集する手段としてバグフィルタを用いる、請求項5に記載の排ガス処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−32608(P2013−32608A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−142713(P2012−142713)
【出願日】平成24年6月26日(2012.6.26)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】