説明

排ガス浄化フィルタ及びその製造方法

【課題】PM及びCOを浄化でき、低コストで製造できる排ガス浄化フィルタ及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】排ガス浄化フィルタ1は、外周壁21と、セル壁22と、複数のセル23とを有するハニカム構造体2を備える。セル壁22にはPM燃焼触媒31と酸化触媒41とが担持されている。排ガス浄化フィルタ1は、酸化触媒41を担持することなくPM燃焼触媒31が担持されたPM燃焼領域3と酸化触媒41が担持された酸化領域4とを有する。PM燃焼領域3は排ガスの流れ方向100における上流側に配置され、酸化領域4は下流側に配置される。排ガス浄化フィルタの製造にあたっては、PM燃焼触媒担持工程と酸化触媒担持工程とを行なう。酸化触媒担持工程においては、ハニカム構造体2の端面(B)29から酸化領域4を形成する位置までを酸化触媒分散液に浸漬し、端面(A)28からPM燃焼領域3を形成する位置までは浸漬させない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される排ガスを浄化するための排ガス浄化フィルタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中には、パティキュレート(PM)等の有害物質が含まれる。そのため、排ガス管には、PMを捕集して排ガスの浄化を行う排ガス浄化フィルタが装備されている。該排ガス浄化フィルタは、多数の細孔を有する多孔質のセル壁と、該セル壁により仕切られたセルとを有するハニカム構造体を有している。
【0003】
上記排ガス浄化フィルタを用いて排ガスを浄化する際には、排ガスを上記セル内に導入し、多孔質の上記セル壁を通過させて隣のセルへ移動させる。このとき、上記排ガス中のパティキュレートが上記セル壁に捕集され、上記排ガスが浄化される。また、上記セル壁にPM燃焼触媒を担持させておくことにより、捕集したパティキュレートを触媒反応により分解除去することができる。
【0004】
PM燃焼触媒としては、Pt等の貴金属が用いられていた。ところが、Pt触媒は、PMの自燃温度よりわずかに低い温度(570〜580℃)でしかPMを燃焼することができない。したがって、実際には、PMの自燃温度である600℃以上にまで排ガスを加熱してPMを燃焼させていた。その結果、排ガス温度を上昇させるために必要な燃料噴射量が増大し、燃費が悪化してしまう。また、Pt等の高価な貴金属を用いると排ガス浄化フィルタの製造コストが増大するという問題があった。
【0005】
そこで、PM燃焼触媒としてAgを含有する排ガス浄化フィルタが開発されている(特許文献1及び2参照)。金属触媒成分としてAgを含有するPM燃焼触媒は、Ptを含有する触媒に比べて、PMの燃焼温度を低下させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−45584号公報
【特許文献2】特開2007−296518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、PMの燃焼時には有害なCOやHCが発生し、PM燃焼触媒自体はこれらを除去できない。特に、Ag/Al23系のPM燃焼触媒においては、COが発生し易くなる。
近年の排ガス規制に対する要求から、PMだけでなく、COを十分に浄化できる排ガス浄化フィルタが望まれている。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、PM及びCOを浄化でき、低コストで製造できる排ガス浄化フィルタ及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、内燃機関から排出される排ガス中のパティキュレートを捕集して排ガスの浄化を行なう排ガス浄化フィルタであって、
外周壁と、該外周壁内に多角形格子状に配設された多孔質のセル壁と、該セル壁内に区画されてなる複数のセルとを有するハニカム構造体を備えた排ガス浄化フィルタにおいて、
上記セルは、いずれか一方の開口部に栓部を設けてなり、上記ハニカム構造体の端面においては、上記開口部に上記栓部を設けたセルの閉塞部と、上記栓部を設けていないセルの開口部とが交互に配置されており、
上記セル壁には、Agを含有するPM燃焼触媒と、上記排ガス中の少なくともCOを酸化させる酸化触媒とが担持されており、
上記排ガス浄化フィルタは、上記酸化触媒を担持することなく上記PM燃焼触媒が担持されたPM燃焼領域と、少なくとも上記酸化触媒が担持された酸化領域とを有し、
上記PM燃焼領域と上記酸化領域とは、排ガスの流れ方向に沿って配置されており、上記PM燃焼領域は上記排ガスの流れ方向における上流側に配置され、上記酸化領域は上記排ガスの流れ方向における下流側に配置されていることを特徴とする排ガス浄化フィルタにある(請求項1)。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明の排ガス浄化フィルタの製造方法において、
上記PM燃焼触媒を分散したPM燃焼触媒分散液中に上記ハニカム構造体を浸漬し、乾燥後に焼成するPM燃焼触媒担持工程と、
上記酸化触媒を分散した酸化触媒分散液中に上記ハニカム構造体を浸漬し、乾燥後に焼成する酸化触媒担持工程とを有し、
上記PM燃焼触媒担持工程においては、上記ハニカム構造体の全体、又は上記ハニカム構造体の両端面のうち一方の端面(A)から任意の位置までを上記PM燃焼触媒分散液中に浸漬し、
上記酸化触媒担持工程においては、上記ハニカム構造体の他方の端面(B)から上記酸化領域を形成する位置までを上記酸化触媒分散液に浸漬し、上記一方の端面(A)から上記PM燃焼領域を形成する位置までは上記酸化触媒分散液には浸漬させないことを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法にある(請求項9)。
【発明の効果】
【0011】
本発明の排ガス浄化フィルタにおいて最も注目すべき点は、上記酸化触媒を担持することなく上記PM燃焼触媒が担持されたPM燃焼領域と、少なくとも上記酸化触媒が担持された酸化領域とを有し、上記PM燃焼領域と上記酸化領域とは、排ガスの流れ方向に沿って配置されており、上記PM燃焼領域は上記排ガスの流れ方向における上流側に配置され、上記酸化領域は上記排ガスの流れ方向における下流側に配置されていることにある。
上記排ガス浄化フィルタにおいては、上記排ガスの流れ方向における上流側の上記PM燃焼領域において、パティキュレート(PM)を燃焼させることができ、このPMの燃焼によって発生するCOを下流側の上記酸化領域において酸化させて浄化することができる。したがって、上記排ガス浄化フィルタにおいては、PM及びCOのいずれをも浄化することができる。
【0012】
また、上記排ガス浄化フィルタは、Agを含有するPM燃焼触媒を備えている。そのため、例えば550℃程度の低温でも十分にPMを燃焼除去することができる。
【0013】
また、上記排ガス浄化フィルタにおいては、上記酸化触媒を上記酸化領域のみに担持させる。そのため、上記酸化触媒として、例えばPt等の高価な貴金属を使用しても製造コストが増大することを防止することができる。
また、上記のように上記酸化触媒を担持させる領域を上記酸化領域のみに限定しても、本発明においては、上記のごとく、上記PM燃焼領域と上記酸化領域との配置関係をそれぞれ上流側及び下流側という機能的な配置構成にしているため、上記排ガス浄化フィルタにおいては、PMだけでなくCOを十分に除去することが可能になる。
また、上記酸化触媒は、COだけでなく排ガス中のHCを酸化により浄化することができる。
【0014】
このように、第1の発明によれば、PM及びCOを浄化でき、低コストで製造できる排ガス浄化フィルタを提供することができる。
【0015】
次に、上記第2の発明においては、上記PM燃焼触媒担持工程と上記酸化触媒担持工程とを行なう。
上記PM燃焼触媒担持工程においては、上記PM燃焼触媒を分散したPM燃焼触媒分散液中に上記ハニカム構造体を浸漬し、乾燥後に焼成する。このとき、上記ハニカム構造体の全体、又は上記ハニカム構造体の両端面のうち一方の端面(A)から任意の位置までを上記PM燃焼触媒分散液中に浸漬する。これにより、上記ハニカム構造体に、少なくとも上記PM燃焼触媒を担持させることができる。
【0016】
また、上記酸化触媒担持工程においては、上記酸化触媒を分散した酸化触媒分散液中に、上記ハニカム構造体を浸漬し、乾燥後に焼成する。このとき、上記ハニカム構造体の他方の端面(B)から上記酸化領域を形成する位置までを上記酸化触媒分散液に浸漬し、上記一方の端面(A)から上記PM燃焼領域を形成する位置までは上記酸化触媒分散液には浸漬させない。これにより、上記ハニカム構造体に、少なくとも上記酸化触媒が担持された酸化領域を形成することができると共に、上記酸化触媒分散液には浸漬させない領域に、上記PM燃焼領域を形成することができる。このようにして、上記第1の発明の排ガス浄化フィルタを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1における、排ガス管の途中に配置された排ガス浄化フィルタを示す説明図。
【図2】実施例1における、排ガス浄化フィルタの全体を示す説明図。
【図3】実施例1における、排ガス浄化フィルタの断面を示す説明図。
【図4】実施例1における、PM燃焼触媒及び酸化触媒が担持されたセル壁を拡大して示す説明図。
【図5】実施例1における、ハニカム構造体をPM燃焼触媒分散液に浸漬した状態を示す説明図。
【図6】実施例1における、ハニカム構造体の端面から所定の領域を酸化触媒分散液に浸漬した状態を示す説明図。
【図7】実施例1における、PM燃焼触媒担持量と、PM燃焼速度との関係を示す説明図。
【図8】実施例1における、ハニカム構造体全長に対する酸化領域の長さと、排ガス浄化フィルタを通って排出された排ガス中のCO濃度との関係を示す説明図。
【図9】入りガス側セルの断面形状と出ガス側セルの断面形状を非対称としたハニカム構造体を一方の端面側を観察した様子を示す説明図(a)及びもう一方の端面側から観察した様子を示す説明図(b)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の好ましい実施形態について説明する。
上記排ガス浄化フィルタにおいては、上記のごとく、上記PM燃焼領域と上記酸化領域とは、排ガスの流れ方向に沿って配置されており、上記PM燃焼領域は上記排ガスの流れ方向における上流側に配置され、上記酸化領域は上記排ガスの流れ方向における下流側に配置されている。
上記PM燃焼領域は、上記酸化触媒を担持することなく上記PM燃焼触媒が担持された領域である。一方、上記酸化領域は、少なくとも上記酸化触媒が担持された領域であり、上記PM燃焼触媒が担持されていても担持されていなくてもよい。
【0019】
好ましくは、上記酸化領域は、上記ハニカム構造体の下流側端面から上記ハニカム構造体全長の1/2以下かつ1/5以上の領域であるがよい(請求項2)。
この場合には、高価な酸化触媒を用いてもより低コストで上記排ガス浄化フィルタを製造することができる。また、上記酸化領域を上記下流側端面から上記ハニカム構造体全長の1/2以下の領域に配置することにより、上流側の上記PM燃焼領域で発生するCOを効率的に酸化して浄化することができる。その結果、上記ハニカム構造体全長の1/2以下という短い領域にしてもCOを十分に浄化することができる
【0020】
上記酸化領域が上記下流側端面から1/2の領域を超える場合には、酸化触媒量が増え、コストが増大するおそれがある。そのため、例えばPt等の高価な貴金属触媒を酸化触媒として用いることが困難になる。COに対する浄化性能を十分に発揮しつつより酸化触媒量を小さくしてコストを下げるという観点から、上記酸化領域は、上記下流側端面から上記ハニカム構造体全長の1/3以下の領域とすることがより好ましい。
また、COに対する浄化性能を十分に確保するという観点から、上述のごとく上記酸化領域は、上記下流側端面から上記ハニカム構造体全長の1/5以上の領域とすることが好ましい。
なお、上記排ガス浄化フィルタを排ガス流路に配置したときに、上記ハニカム構造体の両端面の内、内燃機関に近い側の端面を上流側端面とすると、上記下流側端面は、内燃機関から遠い側の端面である。また、ハニカム構造体の全長は、ハニカム構造体のセルの伸長方向の長さである。
【0021】
上記PM燃焼触媒は、層状アルミナにAgを分散してなる触媒材料からなることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記ハニカム構造体への上記PM燃焼触媒の担持量を減らすことができるため、圧損を小さくすることができる。一方、この場合には、PM燃焼時におけるCOの発生量が増大し易い。しかし、本発明の排ガス浄化フィルタは、上記酸化領域を有しているため、例えCOが発生してもこれを十分に浄化することができる。したがって、上記のごとく、上記PM燃焼触媒として層状アルミナにAgを分散してなる触媒材料を用いた場合には、PMだけでなくCOを浄化できるという本発明の作用効果がより一層顕著になる。
【0022】
上記PM燃焼触媒の担持量は10〜50g/Lであることが好ましい(請求項4)。
上記PM燃焼触媒の担持量が10g/L未満の場合には、PMに対する燃焼促進効果が小さくなるおそれがある。一方、50g/Lを超える場合には、圧損が大きくなるおそれがある。
より好ましくは、上記PM燃焼触媒の担持量は15g/L以上がよく、30g/L以下がよい。例えば上記PM燃焼触媒として層状アルミナにAgを分散してなる触媒材料を用いると、上記PM燃焼触媒の担持量を例えば30g/L以下にしても十分にPMを燃焼させることが可能になり、圧損も小さくできる。
【0023】
上記酸化触媒としては、COに対して酸化作用を有する物質を用いることができる。
COに対する酸化作用は、例えば次のようにして調べることができる。
即ち、まず、酸化触媒の候補となる物質をガス管中に配置する。そして、例えば温度550℃の条件下でガス管の上流からCOを流し、下流から出てくるガスを90%以上CO2に酸化できる物質を酸化触媒として採用することができる。
かかる酸化触媒としては、例えば貴金属触媒、貴金属以外の金属触媒、酸化物触媒、炭化物触媒等の公知の酸化触媒を用いることができる。
【0024】
具体的には、貴金属触媒としては、Pt、Pd、及びRhから選ばれる1種以上がある。
また、貴金属以外の金属触媒としては、例えばCo、Ni、Re、Ag、W、及びMoから選ばれる1種以上がある。
【0025】
また、酸化物触媒としては、単一酸化物、ペロブスカイト構造又はスピネル構造の金属複合酸化物等を用いることができる。より具体的には、単一酸化物としては、例えばCo、W、Mo、Mn、Fe、Cr、Cu、Zn、V、Re、Sb、又はBiの酸化物を採用することができる。また、金属複合酸化物としては、希土類金属及び/又はアルカリ土類金属等と遷移金属との複合酸化物を採用することができる。
炭化物触媒としては、例えばMo2C、WC、TiC、ZrC、HfC、VC、NbC、及びTaCから選ばれる1種以上がある。
【0026】
好ましくは、上記酸化触媒は、Pt、Pd、及びRhから選ばれる1種以上からなることがよい(請求項5)。
この場合には、Pt、Pd、及びRhが有する優れた酸化特性を生かして、上記排ガス浄化フィルタにおけるCOに対する浄化特性をより向上させることができる。
【0027】
上記酸化触媒として貴金属を用いた場合には、上記PM燃焼触媒の担持量をQAg/Lとし、上記酸化触媒の担持量をQBg/Lとすると、0.01≦QB/QA≦0.1であることが好ましい(請求項6)。
B/QA>0.1の場合には、貴金属等の高価な酸化触媒を用いたときに、製造コストが増大してしまうおそれがある。一方、0.01未満の場合には、COに対する浄化効果が小さくなるおそれがある。同様の観点から酸化触媒の担持量は0.1〜1g/Lが好ましい。また、酸化触媒として、貴金属以外の金属触媒を用いた場合においても、0.01≦QB/QA≦0.1であることが好ましい。
また、酸化物触媒として、酸化物、又は炭化物を用いた場合には、貴金属の場合と同様の理由から、0.1≦QB/QA≦10であることが好ましい。
【0028】
次に、上記ハニカム構造体としては、コーディエライト、SiC、チタン酸アルミ、アルミナ、ムライト、又は窒化珪素のいずれかからなるものを用いることができる(請求項7)。
上記ハニカム構造体の形状は、種々の形状を採用することができるが、例えば円柱形状等とすることができる。
また、上記セルの断面形状としては、種々の形状を採用することができるが、例えば三角形、四角形、六角形等の多角形とすることができる。
【0029】
また、上記ハニカム構造体においては、全てのセルの断面形状を同じ形状にすることもできるが、1つのハニカム構造体内でセルの断面形状を変更することもできる。例えば、図2には、全てのセル230の断面形状を同じ形状(四角形)としたハニカム構造体2の例を示し、図9(a)及び(b)には、ハニカム構造体内部のセル630の断面形状を異なる形状(六角形と三角形)としたハニカム構造体5の例を示す。
【0030】
図2に示すハニカム構造体2においては、排ガスを流入させる流入側通路となる入りガス側セルの断面形状と、セル壁22を通過した排ガスを排出させる排出側通路となる出ガス側セルの断面形状は同じ形状(四角形状)となり、ハニカム構造体2の一方の端面28に開口するセルの断面形状と、他方の端面29に開口するセル230の断面形状は互いに対称となっている。
また、図9(a)及び(b)に示すハニカム構造体5においては、入りガス側セル630aの断面形状が六角形で、出ガス側セル630bの断面形状が三角形であり、ハニカム構造体5の一方の端面68に開口するセル630(630a)の断面形状と、他方の端面69に開口するセル630(630b)の断面形状は互いに非対称である。
このように、本発明においては、上記ハニカム構造体としては、全てのセルの断面形状を同じ形状のものを採用することができるが、セルの断面形状が異なるものを採用することもできる。
【0031】
上記排ガス浄化フィルタは、上記PM燃焼触媒担持工程と上記酸化触媒担持工程とを行なうことにより製造することができる。
上記PM燃焼触媒担持工程においては、上記PM燃焼触媒を分散したPM燃焼触媒分散液中に上記ハニカム構造体を浸漬し、乾燥後に焼成する。
上記PM燃焼触媒分散液は、PM燃焼触媒やハニカム構造体と化学反応等を起こさない水などの溶媒に、上記PM燃焼触媒を分散させて作製することができる。
【0032】
また、上記PM燃焼触媒担持工程においては、上記ハニカム構造体の全体、又は上記ハニカム構造体の両端面のうち一方の端面(A)から任意の位置までを上記PM燃焼触媒分散液中に浸漬する。また、上記酸化触媒担持工程においては、上記ハニカム構造体の他方の端面(B)から上記酸化領域を形成する位置までを上記酸化触媒分散液に浸漬し、上記一方の端面(A)から上記PM燃焼領域を形成する位置までは上記酸化触媒分散液には浸漬させない。
上記PM燃焼触媒担持工程において、上記ハニカム構造体の全体を上記PM燃焼触媒分散液に浸漬すると、上記PM燃焼触媒を上記ハニカム構造体全体に担持させることができる。そして、上記酸化触媒担持工程後には、上記PM燃焼触媒と上記酸化触媒との両方を含有する上記酸化領域を形成することができる。
【0033】
また、上記PM燃焼触媒担持工程において、上記ハニカム構造体の上記一方の端面(A)からセルの伸長方向に任意の位置までを上記PM燃焼触媒分散液に浸漬すると、上記酸化触媒工程後には、上記酸化触媒のみを含有する領域を少なくとも含む上記酸化領域を形成することができる。
【0034】
上記酸化触媒担持工程においては、上述のごとく、上記ハニカム構造体の上記他方の端面(B)から上記酸化触媒分散液に浸漬するため、上記ハニカム構造体のセルの伸長方向において上記他方の端面(B)側に上記酸化領域を形成し、上記一方の端面(A)側に上記PM燃焼領域を形成することができる。したがって、上記PM燃焼触媒担持工程と上記酸化触媒担持工程とを行なって得られる上記排ガス浄化フィルタは、上記一方の端面(A)側を排ガスの流れ方向における上流側に配置し、上記他方の端面(B)側を排ガスの流れ方向における下流側に配置して用いることができる。
【0035】
上記酸化触媒担持工程においては、上記ハニカム構造体の上記他方の端面(B)から該ハニカム構造体全長の1/3以下までを上記酸化触媒分散液中に浸漬することが好ましい(請求項9)。
この場合には、上記ハニカム構造体の上記他方の端面(B)から該ハニカム構造体全長の1/3以下までの領域に上記酸化領域を形成させることができるため、高価な酸化触媒を用いても低コストで上記排ガス浄化フィルタを製造することが可能になる。
1/3を超える領域まで浸漬した場合には、担持する酸化触媒量が増え、製造コストが増大するおそれがある。そのため、例えばPt等の高価な貴金属触媒を酸化触媒として用いることが困難になる。
【0036】
上記PM燃焼触媒担持工程及び上記酸化触媒担持工程においては、上記ハニカム構造体として、その端面において上記開口部に上記栓部を設けたセルの閉塞部と、上記栓部を設けていないセルの開口部とが交互に配置されたものを用いることができる。また、上記ハニカム構造体として、端面にセルを設けておらず全てのセルが両端面に開口するものを採用することもできる。全てのセルが両端面に開口するハニカム構造体を採用する場合には、上記PM燃焼触媒担持工程及び上記酸化触媒担持工程後に上記栓部を形成することができる。上記栓部は公知の方法により形成することができる。
【0037】
また、上記PM燃焼触媒分散液及び上記酸化触媒分散液としては、粘度100mPa・s以下のものを採用することが好ましい(請求項10)。
粘度が100mPa・sを超える場合には、上記ハニカム構造体の上記セル壁の細孔が塞がり、圧損が高くなるおそれがある。また、必要量以上の触媒が担持され易くなり、製造コストが増大し易くなるおそれがある。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
次に、本発明の実施例にかかる排ガス浄化フィルタについて図1〜図8を用いて説明する。
図1に示すごとく、排ガス浄化フィルタ1は、内燃機関8から排出される排ガスが通る排ガス管80の途中に配設されて、排ガス中のパティキュレートを捕集して排ガスの浄化を行なうために用いられる。同図において、排ガス浄化フィルタ1は、排ガス管80の直径を拡大した筒状の捕集器85内に収容されている。
図2及び図3に示すごとく、排ガス浄化フィルタ1は、外周壁21と、該外周壁21内に四角形格子状に配設された多孔質のセル壁22と、該セル壁22内に区画されてなる多数のセル23とを有するハニカム構造体2を備える。本例において、ハニカム構造体2は、コーディエライトからなり、その全体形状は、直径160mm、高さ(長さ)100mmの円柱状である。
【0039】
各セル23は、ハニカム構造体2の両端面28、29のうちいずれか一方の端面28(29)に開口する開口部230を有し、もう一方の端面29(28)には、開口部に栓部を設けてなる閉塞部231が形成されている。ハニカム構造体2の端面28、29においては、栓部を設けてなる閉塞部231と、栓部を設けていない開口部230とが交互に配置される。
【0040】
セル壁22には、Agを含有するPM燃焼触媒31と、排ガス中のCOを酸化させる酸化触媒41とが担持されており、排ガス浄化フィルタ1は、酸化触媒41を担持することなくPM燃焼触媒31が担持されたPM燃焼領域3と、少なくとも酸化触媒41が担持された酸化領域4とを有する。本例においては、図4に示すごとく、多孔質のセル壁22におけるPM燃焼領域3には、酸化触媒を担持することなくPM燃焼触媒31が担持されており、酸化領域4には、酸化触媒41とPM燃焼触媒31とが担持されている。酸化領域4においては、セル壁22にPM燃焼触媒31が担持されており、その上に酸化触媒41が担持されている。
【0041】
図3及び図4に示すごとく、PM燃焼領域3と酸化領域4とは、排ガスの流れ方向100に沿って配置されており、PM燃焼領域3は排ガスの流れ方向100における上流側に配置され、酸化領域4は排ガスの流れ方向100における下流側に配置されている。
本例において、酸化領域4は、排ガス浄化フィルタ1を排ガス管80に配置した際に(図1参照)、図3に示すごとく、排ガスの流れ方向100の下流側に配置される端面29、即ち下流側端面29からハニカム構造体全長の1/5の領域まで形成してある。
【0042】
また、本例において、PM燃焼触媒31は、層状アルミナにAgを分散してなる触媒材料(Ag/Al23触媒)からなる
また、酸化触媒41はPtからなる。
ハニカム構造体2には、PM燃焼触媒31が7g/L担持されており、酸化触媒41が0.2g/L担持されている。
【0043】
本例の排ガス浄化フィルタ1は、PM燃焼触媒担持工程と酸化触媒担持工程とを行なって製造することができる。
PM燃焼触媒担持工程においては、図5に示すごとく、ハニカム構造体2の全体、又は上記ハニカム構造体の両端面のうち一方の端面(A)から任意の位置までを、PM燃焼触媒を分散したPM燃焼触媒分散液30中に浸漬し、乾燥後に焼成する。本例においては、ハニカム構造体2の全体をPM燃焼触媒分散液30に浸漬する。
【0044】
また、酸化触媒担持工程においては、図6に示すごとく、ハニカム構造体2の他方の端面(B)29から上記酸化領域を形成する位置までを酸化触媒分散液40に浸漬し、上記一方の端面(A)28から上記PM燃焼領域を形成する位置までは酸化触媒分散液には浸漬させないでおく。本例においては、ハニカム構造体2の端面(B)29から該ハニカム構造体2の全長の1/5までを酸化触媒分散液40中に浸漬する。そして、ハニカム構造体2を乾燥後に焼成する。
【0045】
以下、本例の排ガス浄化フィルタの製造方法について、詳細に説明する。
まず、以下のようにして、PM燃焼触媒分散液を作製した。
即ち、出発原料としてのθアルミナ(Al23)と酸化銀I(Ag2O)、及び添加剤としての酢酸を水に混合した。混合は、θアルミナの濃度が0.1mol/L、酸化銀の濃度が0.1mol/L、酢酸の濃度が0.4mol/Lとなるように行なった。混合液を圧力容器中に入れ、温度175℃、大気圧条件で24時間反応させた。これにより、アルミナに対するAgのモル比率が50%のPM燃焼触媒を得た。このPM燃焼触媒を水に分散させて、PM燃焼触媒分散液を得た。PM燃焼触媒分散液の粘度は、50mPa・sである。
【0046】
次に、端面28、29の開口部230を交互に閉塞した閉塞部231を有する、コーディエライトからなるハニカム構造体2(図2参照)を準備した。ハニカム構造体2としては、気孔率50%、平均気孔径12μmのものを採用した。そして、ハニカム構造体2の全体を、図5に示すごとく、PM燃焼触媒分散液30中に完全に浸漬させた。その後、エアーでハニカム構造体2に付着する過剰のPM燃焼触媒分散液を吹き飛ばした。
【0047】
次いで、ハニカム構造体2を大気雰囲気にて温度150℃で3時間乾燥させ、温度1000℃で3時間焼成した。これにより、ハニカム構造体2に、PM燃焼触媒31を7g/L担持させた(図3及び図4参照)。
【0048】
次に、Pt粒子を水に分散させて酸化触媒分散液を準備した。酸化触媒分散液中のPt濃度は0.01mol/Lである。酸化物分散液の粘度は、50mPa・sである。
そして、図6に示すごとく、PM燃焼触媒を担持させたハニカム構造体2を、その端面(B)29から酸化触媒分散液40に浸漬した。このとき、端面(B)29から1/5の領域を酸化触媒分散液40中に浸漬させた。その後、エアーでハニカム構造体2に過剰に付着した酸化触媒分散液を吹き飛ばした。
【0049】
次いで、ハニカム構造体2を大気雰囲気にて温度150℃で3時間乾燥させ、温度600℃で3時間焼成した。これにより、ハニカム構造体2の端面(B)29(下流側端面29)から1/5の領域にPtからなる酸化触媒41を0.2g/L担持させた。
このようにして、図2〜図4に示すごとく、排ガス浄化フィルタ1を得た。これを試料S1とする。
【0050】
また、本例においては、上記試料S1とはPM燃焼触媒の担持量が異なるさらに5種類の排ガス浄化フィルタ(試料S2〜試料S6)を作製した。
PM燃焼触媒の担持量は、PM燃焼触媒分散液中のPM燃焼触媒の濃度又は担持回数を変更することにより調整することができる。
【0051】
試料S1は、上述のごとく、PM燃焼触媒の担持量が7g/Lの排ガス浄化フィルタである。PM燃焼触媒の担持量をQAg/Lとし、酸化触媒の担持量をQBg/Lとすると、試料S1においては、QB/QA=約0.029である。
試料S2は、PM燃焼触媒の担持量を15g/Lに変更した点を除いては上記試料S1と同様にして作製した排ガス浄化フィルタである。試料S2においてはQB/QA=約0.013である。
【0052】
試料S3は、PM燃焼触媒の担持量を30g/Lに変更した点を除いては上記試料S1と同様にして作製した排ガス浄化フィルタである。試料S3においてはQB/QA=約0.0067である。
試料S4は、PM燃焼触媒の担持量を45g/Lに変更した点を除いては上記試料S1と同様にして作製した排ガス浄化フィルタである。試料S4においてはQB/QA=約0.0044である。
【0053】
試料S5は、PM燃焼触媒の担持量を90g/Lに変更した点を除いては上記試料S1と同様にして作製した排ガス浄化フィルタである。試料S5においてはQB/QA=約0.0022である。
試料S6は、PM燃焼触媒担持工程を行なわずに、酸化触媒担持工程だけを行なって作製したものであり、PM燃焼触媒の担持量0g/Lの排ガス浄化フィルタである。
【0054】
次に、試料S1〜試料S6の排ガス浄化フィルタについて、PM燃焼速度を以下のようにして測定した。
まず、直径160mm、長さ100mm、セル密度300cpsi、壁厚12milのハニカム構造体に上述のごとくPM燃焼触媒及び酸化触媒を担持させた排ガス浄化フィルタ(試料S1〜試料S6)の重量を測定した。次に、各試料の排ガス浄化フィルタを用いたエンジンベンチにてディーゼルエンジンを、吸気量20g/s、回転数1800rpm、排ガス浄化フィルタ温度300℃、スモーク値15%の条件で90分間作動させ、重量測定を行いPMを各試料に8g/L堆積させた。再び各試料の排ガス浄化フィルタをエンジンにセットし、吸気量30g/s、回転数2400rpm、排ガス浄化フィルタ温度550℃、スモーク値5%の条件で25分間作動させ、、各試料が担持するPMを燃焼させた。その後、各試料の重量を測定した。重量の測定結果からPM燃焼量を求め、以下に示す式によってPM燃焼速度を求めた。
PM燃焼速度(g/L・min)=PM燃焼量(g/L)/PM燃焼時間(min)
その結果を図7に示す。図7においては、横軸はPM燃焼触媒の担持量(g/L)を示し、縦軸は温度550℃におけるPM燃焼速度(g/L・min)を示す。
【0055】
図7より知られるごとく、Agを含有するPM燃焼触媒を担持した試料S1〜試料S5は、いずれも温度550℃という低温でPMに対する燃焼促進効果を示すことがわかる。また、同図より知られるごとく、30g/Lを超えて担持させてもPMに対する燃焼促進効果はもはやほとんど向上しないため、PM燃焼触媒の担持量は30g/L以下が好ましいことがわかる。また、十分な燃焼促進効果を得るためには、PM燃焼触媒の担持量は10g/L以上が好ましく、15g/L以上がより好ましいことがわかる。
【0056】
また、本例においては、上記試料S1とは酸化領域の長さを変更した6種類の排ガス浄化フィルタ(試料S7〜試料S12)を作製した。
酸化領域の長さは、酸化触媒担持工程において、酸化触媒分散液40中に浸漬するハニカム構造体2の端面29からの距離を変えることにより調整することができる(図6参照)。なお、試料S7〜試料S12におけるPM燃焼触媒の担持量は、試料S1と同様に7g/Lである。
【0057】
試料S1は、上述のごとく、端面29からハニカム構造体2の全長の1/5までを酸化触媒分散液40中に浸漬させて作製した排ガス浄化フィルタであり、ハニカム構造体全長に対する酸化領域の長さ比が1/5(0.2)の排ガス浄化フィルタである。試料S1における酸化触媒の担持量は、上述のごとく0.2g/Lである。そして、試料S1においては上述のごとくQB/QA=約0.029である。
【0058】
また、試料S7は、端面29からハニカム構造体2の全長の1/3までを酸化触媒分散液40中に浸漬させて作製した排ガス浄化フィルタであり、ハニカム構造体全長に対する酸化領域の長さ比が1/3(約0.33)の排ガス浄化フィルタである。試料S7における酸化触媒の担持量は、約0.33g/Lである。そして、試料S7においてはQB/QA=約0.047である。
【0059】
試料S8は、端面29からハニカム構造体2の全長の1/2までを酸化触媒分散液40中に浸漬させて作製した排ガス浄化フィルタであり、ハニカム構造体全長に対する酸化領域の長さ比が1/2(0.5)の排ガス浄化フィルタである。試料S8における酸化触媒の担持量は、0.5g/Lである。そして、試料S8においてはQB/QA=約0.071である。
【0060】
試料S9は、端面29からハニカム構造体2の全長の3/5までを酸化触媒分散液40中に浸漬させて作製した排ガス浄化フィルタであり、ハニカム構造体全長に対する酸化領域の長さ比が3/5(0.6)の排ガス浄化フィルタである。試料S9における酸化触媒の担持量は、0.6g/Lである。そして、試料S9においてはQB/QA=約0.086である。
【0061】
試料S10は、端面29からハニカム構造体2の全長の9/10までを酸化触媒分散液40中に浸漬させて作製した排ガス浄化フィルタであり、ハニカム構造体全長に対する酸化領域の長さ比が9/10(0.9)の排ガス浄化フィルタである。試料S10における酸化触媒の担持量は、0.9g/Lである。そして、試料S10においてはQB/QA=約0.13である。
【0062】
試料S11は、ハニカム構造体全体2の全体を酸化触媒分散液40中に完全に浸漬させて作製した排ガス浄化フィルタであり、ハニカム構造体全長に対する酸化領域の長さ比が1の排ガス浄化フィルタである。試料S11における酸化触媒の担持量は、1g/Lである。そして、試料S10においてはQB/QA=約0.14である。
【0063】
試料S12は、ハニカム構造体全体を酸化触媒分散液に浸漬させずに作製した排ガス浄化フィルタであり、酸化領域を有していない。即ち、ハニカム構造体全長に対する酸化領域の長さ比が0の排ガス浄化フィルタである。試料S12における酸化触媒の担持量は、0g/Lである。
これらの試料S7〜S12は、酸化領域の長さを上記のごとく変更した点を除いては上記試料S1と同様にして作製した排ガス浄化フィルタである。
【0064】
次に、図1〜図3に示すごとく、排ガスの流れ方向100において、PM燃焼領域3が上流側に、酸化領域4が下流側になるように試料S1及び試料S7〜試料S12の排ガス浄化フィルタ1を排ガス管80内に配置し、排ガス浄化フィルタ1を通過した後の排ガス中に含まれるCO濃度を以下のようにして測定した。
【0065】
具体的には、上述のPM燃焼速度測定法と同様にエンジンベンチでの評価を行った。エンジンベンチ付属の分析計にて、排ガス浄化フィルタ(試料S1及び試料S7〜試料S12)の後流側のCO濃度を測定した。
その結果を図8に示す。同図において、横軸はハニカム構造体全長に対する酸化領域の長さを示し、縦軸は温度550℃の条件下で各排ガス浄化フィルタ(試料S1、試料S7〜試料S12)を通過した排ガス中に含まれるCO濃度(ppm)を示す。
【0066】
図8より知られるごとく、PM燃焼領域が上流側に配置され、酸化領域が下流側に配置された試料S1及び試料S7〜試料S11の排ガス浄化フィルタは、COを十分に浄化できることがわかる。これに対し、酸化領域を形成していない試料S12は、COを浄化できず、下流から150ppmを超えるCOが検出された。
【0067】
また、ハニカム構造体の下流側端面から全長の1/2を超えて酸化領域を形成しても、高価な酸化触媒の担持量が増大するだけで、CO浄化性能はほとんど向上していない(試料X8〜試料S11参照)。よって、酸化領域は、上記下流側端面から上記ハニカム構造体全長の1/2以下が好ましいことがわかる。さらに、図8より知られるごとく、下流側端面から1/3を超える領域まで酸化領域を形成しても、高価な酸化触媒担持量の増加に見合ったCO浄化の向上効果は得られない(試料S7〜試料S11参照)。したがって、酸化領域は、上記下流側端面から上記ハニカム構造体全長の1/3以下がより好ましいことがわかる。
【0068】
さらに、同図より知られるごとく、COに対する浄化性能をより確実に得るためには、酸化領域は、上記下流側端面から上記ハニカム構造体全長の1/5以上であることがより好ましい(試料S1、試料S7〜試料S11)。
【0069】
以上のように、本例によれば、PM及びCOを浄化でき、低コストで製造できる排ガス浄化フィルタ及びその製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 排ガス浄化フィルタ
100 排ガスの流れ方向
2 ハニカム構造体
21 外周壁
22 セル壁
23 セル
230 開口部
231 閉塞部
3 PM燃焼領域
31 PM燃焼触媒
4 酸化領域
41 酸化触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排ガス中のパティキュレートを捕集して排ガスの浄化を行なう排ガス浄化フィルタであって、
外周壁と、該外周壁内に多角形格子状に配設された多孔質のセル壁と、該セル壁内に区画されてなる複数のセルとを有するハニカム構造体を備えた排ガス浄化フィルタにおいて、
上記セルは、いずれか一方の開口部に栓部を設けてなり、上記ハニカム構造体の端面においては、上記開口部に上記栓部を設けたセルの閉塞部と、上記栓部を設けていないセルの開口部とが交互に配置されており、
上記セル壁には、Agを含有するPM燃焼触媒と、上記排ガス中の少なくともCOを酸化させる酸化触媒とが担持されており、
上記排ガス浄化フィルタは、上記酸化触媒を担持することなく上記PM燃焼触媒が担持されたPM燃焼領域と、少なくとも上記酸化触媒が担持された酸化領域とを有し、
上記PM燃焼領域と上記酸化領域とは、排ガスの流れ方向に沿って配置されており、上記PM燃焼領域は上記排ガスの流れ方向における上流側に配置され、上記酸化領域は上記排ガスの流れ方向における下流側に配置されていることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載の排ガス浄化フィルタにおいて、上記酸化領域は、上記ハニカム構造体の下流側端面から上記ハニカム構造体全長の1/2以下かつ1/5以上の領域であることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の排ガス浄化フィルタにおいて、上記PM燃焼触媒は、層状アルミナにAgを分散してなる触媒材料からなることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項4】
請求項3に記載の排ガス浄化フィルタにおいて、上記PM燃焼触媒の担持量は10g/L〜50g/Lであることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の排ガス浄化フィルタにおいて、上記酸化触媒は、Pt、Pd、及びRhから選ばれる1種以上からなることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項6】
請求項5に記載の排ガス浄化フィルタにおいて、上記PM燃焼触媒の担持量をQAg/Lとし、上記酸化触媒の担持量をQBg/Lとすると、0.01≦QB/QA≦0.1であることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の排ガス浄化フィルタにおいて、上記ハニカム構造体は、コーディエライト、SiC、チタン酸アルミ、アルミナ、ムライト、又は窒化珪素のいずれかからなることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の排ガス浄化フィルタの製造方法において、
上記PM燃焼触媒を分散したPM燃焼触媒分散液中に上記ハニカム構造体を浸漬し、乾燥後に焼成するPM燃焼触媒担持工程と、
上記酸化触媒を分散した酸化触媒分散液中に上記ハニカム構造体を浸漬し、乾燥後に焼成する酸化触媒担持工程とを有し、
上記PM燃焼触媒担持工程においては、上記ハニカム構造体の全体、又は上記ハニカム構造体の両端面のうち一方の端面(A)から任意の位置までを上記PM燃焼触媒分散液中に浸漬し、
上記酸化触媒担持工程においては、上記ハニカム構造体の他方の端面(B)から上記酸化領域を形成する位置までを上記酸化触媒分散液に浸漬し、上記一方の端面(A)から上記PM燃焼領域を形成する位置までは上記酸化触媒分散液には浸漬させないことを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の製造方法において、上記酸化触媒担持工程においては、上記ハニカム構造体の上記他方の端面(B)から該ハニカム構造体全長の1/3以下までを上記酸化触媒分散液中に浸漬することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の製造方法において、上記PM燃焼触媒分散液及び上記酸化触媒分散液としては、粘度100mPa・s以下のものを採用することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−218294(P2011−218294A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90303(P2010−90303)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】