説明

排ガス浄化フィルタ

【課題】低温でかつ長期間安定に排ガス中のパティキュレートマター(PM)等の有害物質を除去することができ、耐熱性にも優れた排ガス浄化フィルタを提供すること。
【解決手段】内燃機関から排出される排ガスの排気経路に設けられ、排ガスを浄化する排ガス浄化フィルタ1である。排ガス浄化フィルタ1においては、ハニカム状又はフォーム状のフィルタ基材2に、ゼオライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物又はソーダライトが温度600℃以上で焼成されてなる排ガス浄化触媒4が担持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンエンジン又はディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中のパティキュレートマター(PM)等を除去して排ガスを浄化する排ガス浄化フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関の排ガス中には、パティキュレートマター(PM)、NOx等の有害物質が含まれている。また、直噴ガソリンエンジンでは、理論空燃比よりも薄い混合気で運転(リーンバーン)するエンジンがあり、このようなガソリンエンジンから排出される排ガス中においても、PM及びNOx等の有害物質が含まれている。
このような有害物質は、排ガス経路に設けられた排ガス浄化フィルタにより燃焼除去又は吸着除去されていた。
【0003】
低コストでの浄化を可能にするために、排ガスの浄化は比較的低温で行われることが望まれていた。そのため、燃焼除去にはPM等の有害物質の燃焼を促進する排ガス浄化触媒を基材に担持したDPF等の排ガス浄化フィルタが用いられていた。
【0004】
排ガス浄化触媒としては、例えばPt、Pd、Rh等の貴金属又はその酸化物が一般的に用いられていた。しかし、高価な貴金属を用いた触媒はコストが高くなると共に、資源の枯渇という問題に対する懸念もある。また、PMの燃焼活性が不十分であり、通常の稼働条件では、徐々に未処理のPMが蓄積してしまうという問題があった。蓄積したPMを除去するためには、燃料を用いて排ガスの温度を上昇させるか、又は電気的に加熱することによって、触媒の温度を600℃以上にする必要があった。その結果、排ガス中に含まれる二酸化硫黄が三酸化硫黄や硫酸ミストに転化し、PMの除去は可能でも排ガスの浄化が不完全になるおそれがあった。
【0005】
そこで、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を排ガス浄化触媒として用いる技術が開発されている(特許文献1〜3参照)。このようにアルカリ金属又はアルカリ土類金属を用いることにより、例えば400℃前後という低温でPM等を燃焼除去し、排ガスを浄化することが可能になる。また、これらは、NOxを吸着する作用があり、NOxの吸着除去も可能になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アルカリ金属を用いた排ガス浄化触媒においては、水分の存在下で触媒成分であるアルカリ金属が溶出するおそれがある。したがって、内燃機関からの排ガスのように多くの水蒸気を含む環境下で用いると、長期間安定して排ガスの浄化を行うことができなくなるおそれがあった。また、触媒活性の低下を防止するために、アルカリ金属の溶出を見越して過剰量のアルカリ金属を用いると、該アルカリ金属を担持させるセラミックス等からなる基材を損傷させてしまうおそれがあった。さらに、カリウム等のアルカリ金属は、例えば400℃以上という高温下で溶出し易く、この場合にも溶出したカリウムがコーディエライト等からなる基材を損傷させてしまうおそれがあった。
【0007】
【特許文献1】特開2007−117954号公報
【特許文献2】特開2007−83114号公報
【特許文献3】特開2006−110519号公報
【0008】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、低温でかつ長期間安定に排ガス中のパティキュレートマター(PM)等の有害物質を除去することができ、耐熱性にも優れた排ガス浄化フィルタを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、内燃機関から排出される排ガスの排気経路に設けられ、排ガスを浄化する排ガス浄化フィルタであって、
該排ガス浄化フィルタにおいては、ハニカム状又はフォーム状のフィルタ基材に、ゼオライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物又はソーダライトが温度600℃以上で焼成されてなる排ガス浄化触媒が担持されていることを特徴とする排ガス浄化フィルタにある(請求項1)。
【0010】
本発明の排ガス浄化フィルタにおいて最も注目すべき点は、ゼオライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物又はソーダライトを温度600℃以上で焼成してなる上記排ガス浄化触媒が上記フィルタ基材に担持されている点にある。
上記排ガス浄化触媒は、パティキュレートマター(PM)等の有害物質に対する燃焼促進作用を有するアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属元素を含有する。そのため、上記排ガス浄化フィルタは、上記排ガス浄化触媒により、PM等の有害物質を低温で燃焼除去させることができる。具体的には、上記排ガス浄化触媒は、従来の貴金属触媒と同等又はそれよりも低い温度でPM等の有害物質を燃焼除去させることができる。
また、上記排ガス浄化触媒は、NOxを吸着することもできる。そのため、上記排ガス浄化フィルタは、排ガス中からNOxを吸着除去することもできる。
【0011】
また、温度600℃以上で焼成してなる上記排ガス浄化触媒は、アルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素の保持力が高い。
そのため、水分存在下においても上記アルカリ金属元素及び/又は上記アルカリ土類金属元素が溶出することを防止することができる。それ故、水分存在下でも上記排ガス浄化触媒の性能劣化を防止することができ、上記排ガス浄化フィルタは、長期間安定に排ガスの浄化を行うことができる。
【0012】
また、上記排ガス浄化触媒は、ハニカム状又はフォーム状の上記フィルタ基材に担持されている。そのため、ハニカム状又はフォーム状の上記フィルタ基材の内部にまで上記排ガス浄化触媒を担持させることができる。また、上記排ガス浄化フィルタにおいては、ハニカム状又はフォーム状の上記フィルタ基材の内部に排ガスを通過させることができる。そのため、上記排ガス浄化触媒とPM等の有害物質との接触確率が高くなり、排ガスの浄化効率を向上させることができる。
【0013】
また、上記排ガス浄化触媒においては、上述のごとくアルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素が高い保持力で保持されている。そのため、高温環境下に曝したとしても、アルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素の溶出を抑制することができる。それ故、上記排ガス浄化フィルタは、優れた耐熱性を示し、高温環境下においても排ガスの浄化を行うことができる。
さらに、上記排ガス浄化フィルタにおいては、高価な貴金属触媒を用いなくても、充分に低温で排ガス中からPM等の有害物質を燃焼除去することができる。
【0014】
以上のように、本発明によれば、低温でかつ長期間安定に排ガス中のパティキュレートマター(PM)等の有害物質を除去することができ、耐熱性にも優れた排ガス浄化フィルタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
上記排ガス浄化フィルタにおいて、上記フィルタ基材には、上記のごとく、ゼオライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物又はソーダライトが温度600℃以上で焼成された上記排ガス浄化触媒が担持されている。
上記混合物又はソーダライトの焼成温度が600℃未満の場合には、上記排ガス浄化触媒の耐水性が低下し、上記排ガス浄化フィルタを長期間安定して使用することができなくなるおそれがある。より好ましくは、焼成温度は700℃以上がよく、さらに好ましくは800℃以上がよい。
なお、焼成温度は、上記混合物又はソーダライト自体の温度のことであり、雰囲気温度ではない。したがって、焼成時には、上記混合物又はソーダライト自体の温度が600℃以上になるように焼成を行う。また、焼成時においては、上記焼成温度の焼成を好ましくは1時間以上、より好ましくは5時間以上、さらに好ましくは10時間以上行うことがよい。
【0016】
また、上記排ガス浄化触媒は、上記混合物又はソーダライトを上記温度600℃以上で焼成した後、上記フィルタ基材に担持されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、焼成後に得られる上記排ガス浄化触媒に対して、粉砕等を行うことが可能になる。この粉末状の上記排ガス浄化触媒を上記フィルタ基材に担持させることができるため、上記排ガス浄化フィルタにおいて触媒が担持された面の表面積を大きくすることができる。そのため、触媒活性を向上させることができる。
したがって、上記排ガス燃焼触媒は、上記混合物又は上記ソーダライトの焼成後かつ上記フィルタ基材への担持前に粉砕されてあることが好ましい(請求項3)。
また、粉砕時には、上記排ガス浄化触媒のメジアン径を50μm以下に調整することがよい。メジアン径が50μmを超える場合には、上記排ガス浄化触媒を上記フィルタ基材にコートする際に、目詰まりが起こったり、担持量にばらつきが生じ易くなるおそれがある。より好ましくは、メジアン径は10μm以下であることがよい。
上記排ガス浄化触媒のメジアン径は、例えばレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置あるいは走査電子顕微鏡等により測定することができる。
【0017】
また、粉砕を行う場合には、上記混合物又はソーダライトの焼成時の温度は、1200℃以下であることが好ましい(請求項4)。上記混合物又はソーダライトを1200℃を越える温度で焼成した場合には、一旦溶融状態を経るため、上記排ガス浄化触媒が硬度の高い塊状になってしまうおそれがある。その結果この場合には、上述のごとく粉砕を行って上記排ガス浄化触媒を所望の粒径に調整することが困難になるおそれがある。
【0018】
また、上記排ガス浄化フィルタにおいて、上記排ガス浄化触媒は、上記混合物又はソーダライトを上記フィルタ基材に担持した後に温度600℃以上で焼成して形成することができる(請求項5)。
この場合には、上記混合物又はソーダライトが温度600℃以上で焼成されてなる上記排ガス浄化触媒の生成と、上記フィルタ基材への担持(焼付け)を一度の焼成で行うことが可能になる。また、この場合には、例えば1200℃を越える高温での焼成も可能になる。上述のごとく、1200℃を越える高温で焼成を行うと、一旦溶融状態を経て上記排ガス浄化触媒が硬度の高い塊状になるが、この塊状の上記排ガス浄化触媒も、低温でPM等の有害物質に対する燃焼促進効果を示し、また、耐水性にも優れる。
【0019】
上記排ガス浄化触媒は、上記フィルタ基材に直接担持させることができる(請求項6)。直接担持させるための方法は例えば次のような方法がある。
即ち、まず、上記排ガス浄化触媒とシリカゾルとを含むスラリーに上記フィルタ基材を浸漬し、ハニカム状又はフォーム状の上記フィルタ基材の内部にまで上記排ガス浄化触媒を進入させる。次いで、エアブローにより、余分なスラリーを吹き飛ばした後、例えば温度400℃〜800℃で加熱することにより焼付けを行う。これにより、上記フィルタ基材に上記排ガス浄化触媒を直接接触させて担持させることができる。
この場合には、上記排ガス浄化フィルタの気孔率を高くすることができ、特にPMに対する燃焼効率を向上させることができる。
【0020】
また、上記排ガス浄化触媒は、上記フィルタ基材の表面に形成された担持層に担持させることができる(請求項7)。
この場合には、上記担持層を介して上記排ガス浄化触媒が上記フィルタ基材に担持され、上記排ガス浄化触媒の担持を容易に行うことができる。
具体的には、アルミナ等を含有するウォッシュコート成分と上記排ガス浄化触媒とを混合し、ゾル状又はスラリー状の複合材料を作製し、該複合材料を上記フィルタ基材にコートして例えば温度400℃〜600℃で加熱する。これにより、ウォッシュコート成分により担持層が形成され、該担持層に上記排ガス浄化触媒を担持させることができる。
【0021】
上記担持層は、Al23、ZrO2、TiO2、CeO2、SiO2から選ばれる1種以上の酸化物からなることが好ましい(請求項8)。
この場合には、表面積の大きな上記担持層が形成されやすくなり、上記排ガス浄化フィルタの表面積を大きくすることができる。その結果、上記排ガス浄化触媒とPM等の有害物質とが接触し易くなり、上記排ガス浄化フィルタはより効率よく有害物質の燃焼除去を行うことができる。
【0022】
上記排ガス浄化触媒は、上述のごとく、ゼオライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物、又はソーダライトを温度600℃以上で焼成して得られる。ここで、ゼオライトとしては、ソーダライトを用いることもできる。
即ち、上記排ガス浄化触媒は、ゼオライト(ソーダライトを含む)とアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物を温度600℃焼成することにより得ることができ、また、上記排ガス浄化触媒は、ソーダライトを混合することなく温度600℃以上で燃焼することによっても得ることができる。
【0023】
ソーダライトを除くゼオライトは、一般に、一般式M2/nO・Al23・ySiO2・zH2O(但し、Mは、Na、K、及びHから選ばれる少なくとも1種の元素、y≧2、z≧0である)で表され、本発明においても、上記一般式で表されるゼオライトを採用することができる。ゼオライトとしては、例えばLTA型、FAU(フォージャサイト)型、MOR型、LTL型、FER型、MFI型、及びBEA型等の構造のゼオライトを採用することができる。
また、ソーダライトは、一般式3(Na2O・Al23・2SiO2)・2NaXで表される。Xは、一価の陰イオンとなる原子又は原子団であり、例えばF、Cl、Br、I等のハロゲン、又はOH等である。
【0024】
また、上記ゼオライトは、その組成中のAl231モルに対するSiO2量が200モル未満であることが好ましい(請求項9)。
即ち、ゼオライト組成中のSiO2/Al23(モル比)が200未満のゼオライト、さらに換言すれば、上記一般式M2/nO・Al23・ySiO2・zH2Oにおけるyの値がy<200であるゼオライトを採用することが好ましい。
ゼオライト組成中のAl231モルに対するSiO2量が200モル以上のゼオライト、即ち、上記一般式におけるyの値がy≧200のゼオライトは、所謂ハイシリカゼオライトと呼ばれ、かかるゼオライトを用いた場合には、上記排ガス浄化触媒のPMに対する燃焼促進特性の向上効果が小さくなるおそれがある。
【0025】
上記混合物におけるゼオライトとしては、ソーダライトが採用されていることが好ましい(請求項10)。
この場合には、ソーダライト中のNaと、上記アルカリ金属元素源中のアルカリ金属元素及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属元素とがPM等の有害物質に対する優れた燃焼促進特性を発揮することができる。
【0026】
また、上記ゼオライトとしてソーダライトを用いた場合には、上記混合物においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記ソーダライト中のSi元素1モルに対して2.25モル以下となっていることが好ましい(請求項11)。
上記アルカリ金属元素と上記アルカリ土類金属元素との合計量がソーダライト中のSi元素1モルに対して2.25モルを超える場合には、上記混合物の焼成中に該混合物が溶融し易くなる。その結果、焼成後に得られる上記排ガス浄化触媒は、一旦溶融状態を経るおそれがあるため、その硬度が高くなってしまうおそれがある。そのためこの場合には、焼成後に粉砕を行って上記排ガス浄化触媒を所望の粒径に調整することが困難になるおそれがある。また、この場合には、上記排ガス浄化触媒自体の触媒活性は優れていても、水分による影響を受けやすくなるおそれがある。即ち、水分による触媒活性の低下幅が大きくなるおそれがある。そのため、所定の触媒活性を長期間維持させることが困難になり、上記排ガス浄化フィルタの寿命に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0027】
より好ましくは、上記混合物においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記ソーダライト中のSi元素1モルに対して1モル以下となっていることがよい(請求項12)。
さらに好ましくは、上記混合物においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記ソーダライト中のSi元素1モルに対して0.5モル以下となっていることがよい。
【0028】
上記ゼオライトとして、ソーダライト以外のゼオライトを採用する場合には、上記混合物においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記ゼオライト中のSi元素1モルに対して0.1モル以上かつ2.0モル以下となっていることが好ましい(請求項13)。
ゼオライト中のSi元素1モルに対する上記アルカリ金属元素と上記アルカリ土類金属元素との合計量が0.1モル未満の場合には、上記排ガス浄化触媒の耐水性が悪くなるおそれがある。
一方2.0モルを越える場合にも、水分存在下における上記排ガス浄化触媒の燃焼促進特性が低下し易くなり、その低下幅が非常に大きくなるおそれがある。またこの場合には、上記混合物の焼成中に該混合物が溶融し易くなる。したがって、上記焼成後に得られる上記排ガス浄化触媒は、一旦溶融状態を経るおそれがあるため、その硬度が高くなってしまうおそれがある。その結果この場合には、焼成後に粉砕を行って上記排ガス浄化触媒を所望の粒径に調整することが困難になるおそれがある。
【0029】
より好ましくは、上記混合物においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記アルミノケイ酸塩中のSi元素1モルに対して0.2モル以上かつ1.5モル以下となっていることがよい。
【0030】
また、上述のアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量は、ゼオライトに混合するアルカリ金属元素源中のアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属元素との合計量であり、アルカリ金属元素源及びアルカリ土類金属元素源のうちいずれか一方だけを用いた場合には、もう一方の元素の量は0モルとして算出できる。また、複数のアルカリ金属元素源、複数のアルカリ土類金属元素源を用いた場合には、それらのすべての合計量として算出できる。
【0031】
上記アルカリ金属元素源としては、例えばアルカリ金属の化合物等がある。また、上記アルカリ土類金属元素源としては、例えばアルカリ土類金属の化合物等がある。
上記混合物は、少なくとも上記アルカリ金属元素源を含有することが好ましい(請求項14)。
この場合には、上記排ガス浄化触媒のPM等の有害物質に対する燃焼促進特性をより向上させることができる。
【0032】
上記アルカリ金属元素源は、Na、K、Rb、及びCsから選ばれる1種以上を含有し、上記アルカリ土類金属元素源はMg、Ca、Sr、及びBaから選ばれる1種以上を含有することが好ましい(請求項15)。
この場合にも、上記排ガス浄化触媒のPM等の有害物質に対する燃焼促進特性をより向上させることができる。
より好ましくは、上記ゼオライトとしてソーダライトを用いた場合には、上記アルカリ土類金属元素源としてはCa、Sr、Baを含有する化合物を用いることがよく、ソーダライト以外のゼオライトを用いた場合には、上記アルカリ土類金属元素源としてはBaを含有する化合物を用いることがよい。
【0033】
また、上記アルカリ土類金属元素源は、少なくともBaを含有することがよい(請求項16)。
この場合には、Ba以外の他のアルカリ土類金属元素を含有する上記アルカリ土類金属元素源を用いた場合に比べて、上記排ガス浄化触媒の燃焼促進特性をより向上させることができる。
【0034】
上記ゼオライトと上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源との混合物は、上記ゼオライトと上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とを極性溶媒中で混合し、該極性溶媒を蒸発させて得られる固形分からなることが好ましい(請求項18)。
この場合には、上記ゼオライトと上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源との混合を容易に行うことができ、これらが均一に混合した上記混合物を得ることができる。そのため、焼成後に得られる上記排ガス浄化触媒に触媒活性の偏りが発生することを抑制することができる。
上記極性溶媒としては、例えばメタノール、エタノール等のアルコール、及び水等を用いることができる。また、これらの混合溶媒を用いることができる。
また、上記極性溶媒としては、揮発し易い溶媒を用いることが好ましい。
この場合には、混合後の乾燥を容易に行うことができる。
【0035】
上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源は、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物、酸化物、又は水酸化物であることが好ましい(請求項17)。
この場合には、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源を容易に水等の極性溶媒に混合させることができるため、上記混合物の作製時に、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とゼオライトとを上記極性溶媒中で混合させることにより、これらが均一に分散された上記混合物を容易に得ることができる。
【0036】
より好ましくは、上記アルカリ金属元素源としてはアルカリ金属元素の塩を用い、上記アルカリ土類金属元素源としてはアルカリ土類金属元素の塩を用いることがよい。
この場合には、上記アルカリ金属元素源及び上記アルカリ土類金属元素源は、水等の極性溶媒に対して優れた溶解性で溶解できるため、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とゼオライトとの混合を水等の極性溶媒中で行う場合に、ゼオライトと、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とを簡単かつ均一に混合させることができる。
【0037】
上記フィルタ基材は、多孔質隔壁を多角形格子状に配して軸方向に延びる多数のセルを形成した多孔質基材からなり、上記セルは排ガス流路を形成していることが好ましい(請求項19)。
この場合には、上記排ガス浄化フィルタを排ガスの浄化用により最適な構造にすることができる。
また、全てのセルが両端面に開口した構造体を用いることもできるが、一部のセルがフィルタ基材(ハニカム構造体)両端面に開口し、残りのセルは両端面に形成された栓部によって閉塞された構造体を用いることもできる。
全てのセルが両端面に開口した構造体を用いた場合には、ガソリンエンジン用の排ガス浄化フィルタに好適なものになる。一方、一部のセルが両端面に開口し、残りのセルが栓部によって閉塞された構造体を用いた場合には、ディーゼルエンジン用の排ガス浄化フィルタに好適なもになる。
【0038】
上記フィルタ基材は、コージェライト又はSiCからなることが好ましい(請求項20)。
この場合には、上記排ガス浄化フィルタを排ガスの浄化用により最適なものにすることができる。
【実施例】
【0039】
(実施例1)
本例は、排ガス浄化フィルタに用いられる排ガス浄化触媒を作製し、その特性を評価する例である。
排ガス浄化触媒は、ゼオライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物又はソーダライトを温度600℃以上で焼成して得られる。
本例においては、ゼオライトとしてソーダライトを用い、このソーダライトをアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源と混合した混合物を用いた例について説明する。
【0040】
具体的には、まず、原料となるゼオライトとして、ソーダライト(3(Na2O・Al23・2SiO2)・2NaOH)の粉末を準備した。このソーダライト100重量部と炭酸カリウム5重量部とを水に投入し、水中で混合した。
次いで、混合液を温度120℃で加熱し、水分を蒸発させた。これにより、固形分(ソーダライトと炭酸カリウムとの混合物)を得た。
次に、この固形分を温度800℃で焼成した。具体的には、固形分を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度800℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。
次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、排ガス浄化触媒を得た。これを試料E1とする。
【0041】
次に、本例において作製した排ガス浄化触媒(試料E1)について、PMに対する燃焼促進特性を調べた。また、比較用として、貴金属系触媒(Pt粉末)、炭酸カリウム粉末についても燃焼促進特性を調べた。
【0042】
具体的には、まず、触媒種(試料E1、貴金属系触媒、又は炭酸カリウム粉末)200mgとカーボンブラック(CB;PMの代替として使用)20mgとをそれぞれ電子天秤にて正確に秤量した。これらをメノウ乳鉢を用いて触媒種(重量):CB(重量)=10:1となるように一定時間混合し、各触媒種とカーボンブラックとを含有する3種類の評価サンプルを得た。さらに、触媒種を用いずに、CBのみからなる評価サンプルを比較用として作製した。CB単独の評価サンプルについても、他のサンプルと同様にメノウ乳鉢を用いて一定時間混合したものを用いた。即ち、評価サンプルとしては、CB単独、貴金属系触媒とCBとの混合物、試料E1とCBとの混合物、炭酸カリウムとCBとの混合物という4種類のサンプルを作製した。
【0043】
次いで、熱分析−示差熱重量(TG−DTA)同時測定装置(理学電機社製のTG8120)用いて、各評価サンプル6mgを昇温速度10℃/minにて最高温度900℃まで加熱してCBを燃焼させると共に、このときのDTA発熱ピーク温度、及び温度とTGとの関係を測定した。なお、CB単独からなる評価サンプルについては、0.5mgを用いてDTA発熱ピーク温度の測定を行った。また、加熱は、流束50mL//minで空気を評価サンプルに流通させながら行った。各触媒種を用いたときのDTA発熱ピーク温度の結果を図1に示す。また、温度とTGとの測定結果については、CB単独を用いた結果を図2に示し、触媒種として貴金属系触媒を用いた結果を図3に示し、K2CO3を用いた結果を図4に示し、試料E1を用いた結果を図5に示す。図2〜図5の縦軸は、カーボンブラックの最大燃焼速度を示すDTA発熱ピークを用いている。
【0044】
また、触媒種(試料E1、貴金属系触媒、又は炭酸カリウム粉末)1gを水500cc中に投入し、一昼夜撹拌することにより洗浄した。次に、水洗浄処理後の触媒種をろ過し、ろ過後の触媒種にさらに1500ccの水を流通させて充分に洗浄した後、温度120℃にて乾燥させた。これらの水洗浄処理後の触媒種(試料E1及び貴金属系触媒)200mgとカーボンブラック(CB)20mgとを電子天秤にて正確に秤量した。これらをメノウ乳鉢を用いて触媒種(重量):CB(重量)=10:1となるように一定時間混合し、各触媒種とカーボンブラックとを含有する2種類の評価サンプルを得た。なお、CB単独からなる評価サンプルについては、他のサンプルと同様に洗浄及び乾燥を行い、その後メノウ乳鉢で混合したものを用いた。また、触媒種として炭酸カリウムを用いた評価サンプルは、水洗洗浄処理により水に溶解してしまったため、その後の操作を行うことができなかった。即ち、水洗後の評価サンプルとしては、CB単独、貴金属系触媒とCBとの混合物、試料E1とCBとの混合物という3種類のサンプルを作製した。これらのサンプルについて、再度熱分析−示差熱重量(TG−DTA)同時測定装置によって、DTA発熱ピーク温度の測定を行った。水洗浄処理後のDTA発熱ピーク温度の結果を図1に併記する。
【0045】
図1〜図5より知られるごとく、水洗浄前において、試料E1を用いたサンプル及び炭酸カリウム用いたサンプルは、DTA発熱ピーク温度が低く、比較的低い温度でPM(CB)を燃焼できることがわかる。なお、図1及び図5から知られるごとく、試料E1は、約400℃付近に発熱ピークを有しているが、実際にはこれよりも低い温度(例えば350℃程度)でもカーボンブラックの燃焼は開始されている。
【0046】
図1より知られるごとく、CB単独、貴金属系触媒、及び試料E1については、水洗前後でCBに対する燃焼促進特性はほとんど変化しなかった。これに対して、炭酸カリウムを用いたサンプルは、水洗後に炭酸カリウムが水に溶解し、測定が不可能であった。
【0047】
したがって、試料E1は、PMに対して優れた燃焼促進特性を有し、低温でPMを燃焼除去することができる。また、試料E1は、水分存在下においてもその優れた特性を維持できるため、長期間安定してPMの燃焼を行うことができる。
【0048】
上記試料E1は、上述のごとくソーダライト100重量部と炭酸カリウム5重量部との混合物を温度800℃で10時間焼成することにより作製した触媒である。次に、本例においては、焼成温度による触媒活性への影響を調べるために、異なる温度でソーダライトと炭酸カリウムとの混合物(上記固形分)を焼成して複数の触媒を作製した。
具体的には、まず、ソーダライト100重量部と炭酸カリウム10重量部とを水中で混合し混合液を得た。次いで、混合液を温度120℃で加熱し、水分を蒸発させ、固形分(混合物)を得た。次に、この混合物を温度500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃、1200℃、1300℃で焼成して9種類の触媒を作製した。これらの触媒は、焼成温度を変更した点を除いては互いに同様にして作製した触媒であり、ソーダライトに対する炭酸カリウムの混合割合及び焼成温度を変更した点を除いては、上記試料E1と同様にして作製した触媒である。さらに、温度600℃での焼成については焼成時間の影響を調べるため、上記試料E1と同様に10時間の焼成を行って作製した触媒の他に、焼成時間を5時間にして作製した触媒も準備した。その他の焼成温度で作製した触媒については、上記試料E1と同様に、いずれも10時間焼成を行って作製した。
【0049】
そしてこれらの触媒についても、上記試料E1と同様にPMに対する燃焼促進特性を調べた。このとき、比較用としてソーダライトと炭酸カリウムとの混合物についてもPMに対する燃焼促進特性を調べた。このソーダライトと炭酸カリウムとの混合物としては、焼成を行う代わりに室温(約25℃)で約10時間放置したものを採用した。
燃焼促進特性の測定は、上記試料E1と同様にしてDTA発熱ピーク温度を測定することにより行った。その結果を図6に示す。
【0050】
図6より知られるごとく、温度600℃以上で焼成を行って作製した排ガス浄化触媒のDTA発熱ピークトップ温度は、水洗前及び水洗後においても約460℃以下という非常に低い値を示した。PMに対する燃焼触媒として一般に用いられる貴金属(Pt)触媒のDTA発熱ピーク温度は520℃程度(図1参照)であることから、これらの排ガス浄化触媒は、PMに対して充分に優れた触媒活性を有していることがわかる。
【0051】
これに対し、温度600℃未満で焼成した触媒は、水洗前においては、貴金属(Pt)触媒に比べて充分に低いDTA発熱ピーク温度を示し、優れた触媒活性を示していたが、水洗後においては、DTA発熱ピーク温度は著しく上昇し、貴金属触媒よりも触媒活性が低下していた。また、焼成を行っていないソーダライトと炭酸カリウムとの混合物についても、水洗前には優れた触媒活性を示していたが、水洗後には触媒活性が著しく低下していた。
温度600℃未満で焼成して得られる触媒、及び焼成を行なわずに作製した触媒において、上記のごとく水洗後において触媒活性が著しく低下していた原因は、水洗後にカリウムが溶出したためであると考えられる。
【0052】
したがって、焼成時における焼成温度は600℃以上で行う必要があることがわかる。また、図6より知られるごとく、特に温度700℃〜1200℃で焼成を行うことにより、よりDTA発熱ピーク温度の低い排ガス浄化触媒、即ち触媒活性に優れた排ガス浄化触媒が得られることがわかる。さらに、同図より知られるごとく、5時間で焼成を行った場合に比べて10時間焼成を行った場合の方が、水洗後の触媒活性の低下が抑制されていた。
【0053】
上述の例においては、ソーダライトにK源として炭酸カリウムを混合して排ガス浄化触媒を作製した。本例においては、次に、ソーダライトに混合するカリウム塩の種類を変えて複数の排ガス浄化触媒を作製し、そのDTA発熱ピークトップ温度を調べた。
【0054】
具体的には、ソーダライトに、各カリウム塩(炭酸カリウム、硝酸カリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、リン酸カリウム、又は水酸化カリウム)を混合して混合物を得た。各カリウム塩は、カリウム塩中のカリウム元素量がソーダライト中のSi元素1モルに対して0.225モル又は0.00225モルとなるように混合を行った。また、混合は、上記試料E1と同様に水中で行い、上述のごとく混合液の水分を乾燥させることにより混合物を得た。
【0055】
次に、混合物を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、排ガス浄化触媒を得た。
このようにして得られた各排ガス浄化触媒について、上記試料E1と同様に水洗前後のDTA発熱ピーク温度を測定した。その結果を図7に示す。
【0056】
図7より知られるごとく、いずれのカリウム塩を用いて作製しても、排ガス浄化触媒は、水洗前後において優れた触媒活性を示した。また、カリウム塩の量を減らすと触媒活性は低下するものの、この場合においても水洗前後において450℃以下という非常にDTAピーク発熱トップ温度を維持しており、優れた触媒活性を示していた。
【0057】
上述の例においては、混合時にソーダライトにアルカリ金属元素源(アルカリ金属塩)としてカリウム塩を混合し、排ガス浄化触媒を作製した。次に、本例においては、ソーダライトにカリウム塩の他にも各種アルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源を混合して複数の排ガス浄化触媒を作製し、これらのDTA発熱ピークトップ温度を調べた。
【0058】
具体的には、まず、ソーダライトに、各種アルカリ金属塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、又は炭酸セシウム)、又はアルカリ土類金属塩(水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム)を混合して混合物を得た。各アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、ソーダライト中のSi元素1モルに対する各アルカリ金属塩中のアルカリ金属元素量又はアルカリ土類金属塩中のアルカリ土類金属元素量が0.225モル又は0.00225モルとなるように混合した。また、混合は、上記試料E1と同様に水中で行い、上述のごとく混合液の水分を乾燥させることにより固形分(混合物)を得た。
【0059】
次に、混合物を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、排ガス浄化触媒を得た。
このようにして得られた各排ガス浄化触媒について、上記試料E1と同様に水洗前後のDTA発熱ピーク温度を測定した。その結果を図8に示す。図8において、横軸は、混合時に添加したアルカリ金属元素源中のアルカリ元素種、及びアルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属種を示し、縦軸は、DTA発熱ピーク温度を示す。
【0060】
図8より知られるごとく、ソーダライトに各種アルカリ金属元素(Na、K、Rb、Cs)を混合して作製した排ガス浄化触媒は、いずれのアルカリ金属元素を用いた場合でも、水洗前後において優れた触媒活性を示した。
これに対し、ソーダライトに各種アルカリ土類金属元素(Mg、Ca、Sr、Ba)を混合して作製した排ガス浄化触媒においては、アルカリ土類金属元素としてMgを選択した場合に、若干触媒活性が不十分である場合が認められるものの、いずれの場合においても、実用上問題ないレベルの触媒活性を示した。
このように、K以外にも、その他のアルカリ金属、又はアルカリ土類金属をソーダライトに混合して焼成しても、優れた触媒活性を有する排ガス浄化触媒が得られることがわかる。
【0061】
また、アルカリ土類金属元素源としてMg源を用いた場合について、さらに詳細に説明すると、図8より知られるごとく、Mgをソーダライト中のSi元素1モルに対して0.00225モル加えて得られた触媒は優れた触媒活性を示した。しかし、Mgを0.225モル加えて作製した触媒は、実用に供することは可能であるものの、触媒活性が低下していた。一方、その他のアルカリ土類金属元素(Ca、Sr、Ba)を用いて得られた触媒は、いずれの場合においても優れた触媒活性を示した。
したがって、ソーダライトを用いる場合において、アルカリ土類金属元素源を選択する場合には、Mg以外のアルカリ土類金属元素源を採用することが好ましい。また、Mg源を採用する場合には、Mg源中のMg量がソーダライト中のSi元素1モルに対して0.225モル未満となるように、Mg源とソーダライトとの混合を行うことが好ましい。より好ましくは、0.00225モル以下がよい。
【0062】
上記の例においては、ソーダライトに1種類のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を混合して排ガス浄化触媒を作製した。次に、本例においては、混合時にソーダライトに複数のアルカリ金属元素、アルカリ土類金属を混合して排ガス浄化触媒を作製し、そのDTA発熱ピーク温度を測定した。
【0063】
具体的には、まず、ソーダライトに、炭酸カリウムを加え、さらにアルカリ金属元素源(炭酸ナトリウム、炭酸ルビジウム、又は炭酸セシウム)又はアルカリ土類金属元素源(水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、又は炭酸バリウム)を加えて混合し混合物を得た。このようにして得られた各混合物は、ソーダライトと、炭酸カリウムと、炭酸カリウム以外のアルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源とを含有する。
各混合物は、ソーダライト中のSi元素1モルに対して炭酸カリウム中のカリウム量が0.1125モルとなるようにソーダライトに炭酸カリウム(カリウム源)を加え、さらにソーダライト中のSi元素1モルに対して各アルカリ金属元素源中のアルカリ金属元素量又はアルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属元素量が0.1125モルとなるようにソーダライトに各種アルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源を加えて作製した。
したがって、各混合物においては、ソーダライト中のSi元素1モルに対する炭酸カリウム中のカリウム量と、その他のアルカリ金属元素量又はアルカリ土類金属元素量との合計量は、いずれも0.225モルとなっている。
また、混合は、上記試料E1と同様に水中で行い、上述のごとく混合液の水分を乾燥させることにより混合物を得た。
【0064】
次に、混合物を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持した。これにより混合物の焼成を行った。次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、排ガス浄化触媒を得た。
【0065】
このようにして得られた各排ガス浄化触媒について、上記試料E1と同様に水洗前後のDTA発熱ピーク温度を測定した。その結果を図9に示す。同図において、縦軸はDTA発熱ピーク温度を示し、横軸は、炭酸カリウム以外に添加したアルカリ金属元素源中のアルカリ金属元素種又はアルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属元素種を示す。また、同図には、ソーダライトに炭酸カリウムだけを混合し焼成して作製した排ガス浄化触媒(図9において横軸がKで示されたサンプル)についての水洗前後のDTA発熱ピーク温度を併記する。
【0066】
図9より知られるごとく、ソーダライトにK(カリウム)の他に、さらに各種アルカリ金属元素(Na、Rb、Cs)又はアルカリ土類金属元素(Mg、Ca、Sr、Ba)を混合した場合においても、Kを単独で混合した場合と同様に、優れた触媒活性を有する排ガス浄化触媒が得られた。
このように、混合時に複数のアルカリ金属元素源及びアルカリ土類金属源を用いても、優れた触媒活性を有する排ガス浄化触媒が得られることがわかる。
【0067】
次に、本例においては、アルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源の添加量が排ガス浄化触媒の触媒活性に与える影響を調べるために、ソーダライトに混合するアルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源の添加割合を変えて排ガス浄化触媒を作製し、そのDTA発熱ピーク温度を測定した。
【0068】
まず、ソーダライト100重量部に、炭酸カリウム又は炭酸バリウムを0〜100重量部の添加量で混合し、混合物を得た。
具体的には、後述の表1及び図10に示すごとく、ソーダライト(SOD)100重量部に対して、炭酸カリウムをそれぞれ0重量部、0.1重量部、0.5重量部、1重量部、3重量部、5重量部、10重量部、15重量部、20重量部、40重量部、及び100重量部混合して混合物を作製した。
また、後述の表2及び図11に示すごとく、ソーダライト(SOD)100重量部に対して、炭酸バリウムをそれぞれ0重量部、5重量部、10重量部、15重量部、20重量部、40重量部、70重量部、100重量部、150重量部、200重量部、及び300重量部混合して混合物を作製した。
これらの混合は、上記試料E1と同様に水中で行い、上述のごとく混合液の水分を乾燥させることにより複数の混合物を得た。
【0069】
次に、これらの混合物を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃に達したところで10時間保持した。これにより、混合物の焼成を行った。次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、排ガス浄化触媒を得た。
【0070】
このようにして得られた各排ガス浄化触媒について、上記試料E1と同様に水洗前後のDTA発熱ピーク温度を測定した。
炭酸カリウムを用いて作製した排ガス浄化触媒の水洗前後のDTA発熱ピーク温度の結果を表1及び図10に示し、炭酸バリウムを用いて作製した排ガス浄化触媒の水洗前後のDTA発熱ピーク温度の結果を表2及び図11に示す。
なお、表1には、ソーダライト100重量部に対するKの混合量(重量部)をソーダライト中のSi量(mol)に対するKの混合量(mol)に換算した値を示してある(表1参照)。同様に、表2には、ソーダライト100重量部に対するBaの混合量(重量部)をソーダライト中のSi量(mol)に対するBaの混合量(mol)に換算した値を示してある(表2参照)。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
表1、表2、図10、及び図11より知られるごとく、混合時におけるアルカリ金属元素量及びアルカリ土類金属元素量を変えても、得られる排ガス浄化触媒は優れた触媒活性を示していた。
その一方で、アルカリ金属量又はアルカリ土類金属量を増やすと、水洗前後におけるDTA発熱ピーク温度の差が大きくなっていた。表1及び表2より知られるごとく、混合時に、アルカリ金属元素源(K2CO3)中に含まれるアルカリ金属元素(K)量、アルカリ土類金属元素源(BaCO3)中に含まれるアルカリ土類金属元素(Ba)量がソーダライト中のSi元素1モルに対して2.25モル以下となるように、ソーダライトとアルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源とを混合すれば、水洗前後におけるDTA発熱ピーク温度の差が比較的小さな排ガス浄化触媒、即ち水分に対する耐久性に優れた排ガス浄化触媒を作製できることがわかる。また、上述のアルカリ金属元素量とアルカリ土類金属元素量が2.25モルを超える場合には、混合物が焼成時に一旦溶融し易くなり、焼成後に得られる排ガス浄化触媒の粉砕が困難になる。
同様の観点から、より好ましくは、ソーダライト中のSi元素1モルに対してアルカリ金属元素量(モル)、アルカリ土類金属元素量(モル)は1モル以下がよく、さらにより好ましくは0.5モル以下がよい。
【0074】
以上のように、本例によれば、ソーダライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物を温度600℃以上で焼成することにより、低温でかつ長期間安定にPMを燃焼除去できる排ガス浄化触媒が得られることがわかる。
かかる排ガス浄化触媒は、ハニカム構造体等のフィルタ基材に担持させることにより、排ガス浄化フィルタとして好適に用いることができる。
【0075】
(実施例2)
本例は、ソーダライトを単独で焼成することにより排ガス浄化触媒を作製し、その特性を評価する例である。
具体的には、まず、ソーダライト(3(Na2O・Al23・2SiO2)・2NaOH)の粉末を準備した。
次いで、このソーダライトを温度1000℃で焼成した。具体的には、ソーダライトを昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。次いで、焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、粉末状の排ガス浄化触媒を得た。これを試料E2とする。
【0076】
次に、本例において作製した排ガス浄化触媒(試料E2)について、PMに対する燃焼促進特性を調べた。また、比較用として、貴金属系触媒(Pt粉末)、炭酸カリウム粉末についても燃焼促進特性を調べた。
【0077】
具体的には、まず、実施例1と同様にして、CB単独、貴金属系触媒とCBとの混合物、試料E2とCBとの混合物、炭酸カリウムとCBとの混合物という4種類の評価サンプルを作製した。
次いで、実施例1と同様に、DTA発熱ピーク温度を測定した。各触媒種を用いたときのDTA発熱ピーク温度の測定結果を図12に示す。
【0078】
また、実施例1と同様に、触媒種(試料E2、貴金属系触媒、又は炭酸カリウム粉末)を水で洗浄し、乾燥後の触媒種(試料E2及び貴金属系触媒)とCBとを混合し、各触媒種とカーボンブラックとを含有する2種類の評価サンプルを得た。なお、CB単独からなる評価サンプルについても、実施例1と同様にして調整した。また、触媒種として炭酸カリウムを用いた評価サンプルは、水洗洗浄処理により水に溶解してしまったため、その後の操作を行うことができなかった。即ち、水洗後の評価サンプルとしては、CB単独、貴金属系触媒とCBとの混合物、試料E2とCBとの混合物という3種類のサンプルを作製した。これらのサンプルについて、再度熱分析−示差熱重量(TG−DTA)同時測定装置によって、DTA発熱ピーク温度の測定を行った。水洗浄処理後のDTA発熱ピーク温度の結果を図12に併記する。
【0079】
図12より知られるごとく、水洗浄前において、試料E2を用いたサンプル及び炭酸カリウム用いたサンプルは、DTA発熱ピーク温度が低く、比較的低い温度でPM(CB)を燃焼できることがわかる。なお、図12から知られるごとく、試料E2は、約450℃付近に発熱ピークを有しているが、実際にはこれよりも低い温度(例えば400℃程度)でもカーボンブラックの燃焼は開始されている。
また、図12より知られるごとく、CB単独、貴金属系触媒、及び試料E2については、水洗前後でCBに対する燃焼促進特性はほとんど変化しなかった。これに対して、炭酸カリウムを用いたサンプルは、水洗後に炭酸カリウムが水に溶解し、測定が不可能であった。
【0080】
したがって、試料E2は、PMに対して優れた燃焼促進特性を有し、低温でPMを燃焼除去することができる。また、試料E2は、水分存在下においてもその優れた特性を維持できるため、長期間安定してPMの燃焼を行うことができる。
【0081】
また、本例においては、上記試料E2とは異なる焼成温度でソーダライトを焼成し、さらに3種類の触媒を作製した。
即ち、上記試料E2においては、焼成温度1000℃(保持時間10時間)でソーダライトの焼成を行ったが、これら3種類の触媒は、それぞれ焼成温度700℃(保持時間10時間)、焼成温度600℃(保持時間10時間)又は焼成温度500℃(保持時間10時間)で焼成して作製した。そしてこれら3種類の排ガス浄化触媒についても、上記試料E2と同様にPMに対する燃焼促進特性を調べた。このとき、比較用として排ガス浄化触媒の作製に用いたソーダライト粉末についてもPMに対する燃焼促進特性を調べた。このソーダライトの粉末としては、焼成を行う代わりに室温(約25℃)で約10時間放置したものを採用した。燃焼促進特性の測定は、上記試料E2と同様にしてDTA発熱ピーク温度を測定することにより行った。その結果を図13に示す。なお、同図には、試料E2、即ち焼成温度1000℃で焼成してなる排ガス浄化触媒の結果を併記する。
【0082】
図13より知られるごとく、ソーダライトを温度600℃以上で焼成して得られた排ガス浄化触媒のDTA発熱ピークトップ温度は、500℃以下という非常に低い値を示した。PMに対する燃焼触媒として一般に用いられる貴金属(Pt)触媒のDTA発熱ピーク温度は520℃程度(図1参照)であることから、これらの排ガス浄化触媒は、PMに対して充分に優れた触媒活性を有していることがわかる。
また、温度600℃以上で焼成してなる排ガス浄化触媒は、水洗後においても、貴金属(Pt)触媒のDTA発熱ピーク温度と同程度又はそれより低い温度を示しており、水洗後においても優れた触媒活性を維持できることがわかる。
【0083】
これに対し、温度500℃で焼成して得られた触媒は、水洗前においては、貴金属(Pt)触媒と同程度のDTA発熱ピーク温度(約520℃)を示したが、水洗後においては、DTA発熱ピーク温度は約540℃まで上昇し、貴金属触媒よりも触媒活性が低下していた。また、焼成を行っていないソーダライトにおいては、水洗前後にかかわらずPMの燃焼に対する触媒活性が不十分であった。
【0084】
また、本例においては、上記試料E2の比較用として、ソーダライト(SOD)以外の各種ゼオライトを単独で焼成し、これを触媒として用いて燃焼促進特性を調べた。
具体的には、まず、ソーダライト以外のゼオライトとして、ゼオライト構造(BEA型、FAU(フォージャサイト)型、FER型、LTA型、LTL型、MFI型、及びMOR型)及び/又はゼオライト組成中のSiO2/Al23比が異なる12種類のゼオライトを準備した(表3参照)。これらは、いずれも東ソー(株)製のゼオライトである。これらのゼオライトの製品名、ゼオライト構造の型の種類、及びSiO2/Al23比を表3に示す。なお、表3及び後述の図14におけるゼオライト種の名称は、東ソー(株)製のゼオライトの製品名である。また、表3には試料E2の作製に用いたソーダライト(SOD)についても併記してある。
【0085】
【表3】

【0086】
次に、表3に示す各種ゼオライトを上記試料E2と同様に焼成した。具体的には、各種ゼオライトをそれぞれ昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。次いで、焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、粉末状の触媒を得た。そしてこれらの触媒についても、上記試料E2と同様にPMに対する燃焼促進特性を調べた。なお、これらの触媒については、水洗後の燃焼促進特性の測定は行っていない。その結果を図14に示す。また、図14には、ソーダライトを焼成して得られた上記試料E2の結果「SOD」として併記してある。
【0087】
図14より知られるごとく、ソーダライト以外のゼオライトを焼成してなる物質を触媒として用いた場合には、DTA発熱ピーク温度が非常に高く、PMの燃焼促進特性が不十分であった。これに対し、SODを焼成してなる触媒(試料E2)は、約450℃という非常に低いDTA発熱ピーク温度を示しており、PMを低温で燃焼できる。よって、単独で焼成を行う場合には、ゼオライトの中でもソーダライトを採用することが必要であることがわかる。
【0088】
以上のように、本例によれば、ソーダライトを温度600℃以上で焼成することにより、低温でかつ長期間安定にPMを燃焼除去することができる排ガス浄化触媒が得られることがわかる。
かかる排ガス浄化触媒は、ハニカム構造体等のフィルタ基材に担持させることにより、排ガス浄化フィルタとして好適に用いることができる。
【0089】
(実施例3)
本例は、ソーダライト以外のゼオライトを用いて排ガス浄化触媒を作製し、その特性を評価する例である。
具体的には、まず、ゼオライトとして、LTA型で、Al231モルに対するSiO2量(SiO2/Al23)が2.0モルであるゼオライト(東ソー(株)製の「A−3」)を準備した。また、アルカリ金属元素源として、炭酸カリウムを準備した。
次に、ゼオライト中のSi元素1モルに対する炭酸カリウム中のK量が0.225モルとなる割合でゼオライトと炭酸カリウムとを水に投入し、水中で両者を混合した。
次いで、混合液を温度120℃で加熱し、水分を蒸発させ、固形分(混合物)を得た。
【0090】
次に、固形分を温度1000℃で焼成した。具体的には、固形分を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。
次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、排ガス浄化触媒を得た。これを試料E3とする。
【0091】
次に、本例において作製した排ガス浄化触媒(試料E3)について、PMに対する燃焼促進特性を調べた。また、比較用として、貴金属系触媒(Pt粉末)、炭酸カリウム粉末についても燃焼促進特性を調べた。
【0092】
具体的には、まず、実施例1と同様にして、CB単独、貴金属系触媒とCBとの混合物、試料E3とCBとの混合物、炭酸カリウムとCBとの混合物という4種類の評価サンプルを作製した。
次いで、実施例1と同様に、DTA発熱ピーク温度を測定した。各触媒種を用いたときのDTA発熱ピーク温度の測定結果を図15に示す。
【0093】
また、実施例1と同様に、触媒種(試料E3、貴金属系触媒、及び炭酸カリウム粉末)を水で洗浄し、乾燥後の触媒種(試料E3及び貴金属系触媒)とCBとを混合し、各触媒種とカーボンブラックとを含有する2種類の評価サンプルを得た。なお、CB単独からなる評価サンプルについても、実施例1と同様にして調整した。また、触媒種として炭酸カリウムを用いた評価サンプルは、水洗により水に溶解してしまったため、その後の操作を行うことができなかった。即ち、水洗後の評価サンプルとしては、CB単独、貴金属系触媒とCBとの混合物、試料E3とCBとの混合物という3種類のサンプルを作製した。これらのサンプルについて、再度熱分析−示差熱重量(TG−DTA)同時測定装置によって、DTA発熱ピーク温度の測定を行った。水洗浄処理後のDTA発熱ピーク温度の結果を図15に併記する。
【0094】
図15より知られるごとく、水洗浄前において、試料E3を用いたサンプル及び炭酸カリウム用いたサンプルは、DTA発熱ピーク温度が低く、比較的低い温度でPM(CB)を燃焼できることがわかる。なお、図15から知られるごとく、試料E3は、約410℃付近(水洗前)にDTA発熱ピーク温度を有しているが、実際にはこれよりも低い温度(例えば360℃程度)でもカーボンブラックの燃焼は開始されている。
【0095】
また、図15より知られるごとく、CB単独、貴金属系触媒、及び試料E3については、水洗前後でCBに対する燃焼促進特性はほとんど変化しなかった。これらの中でも試料E3は、水洗後における燃焼促進特性の低下幅が最も大きくなっているが、それでも水洗後のDTA発熱ピーク温度は450℃程度であり、CB単独及び貴金属系触媒に比べて充分低い値を示している。したがって、試料E3は、水洗後においてもPMに対する優れた燃焼促進特性を示すことがわかる。
一方、炭酸カリウムを用いたサンプルは、水洗後に炭酸カリウムが水に溶解し、測定が不可能であった。
【0096】
このように、ソーダライト以外のゼオライトを用いて作製した排ガス浄化触媒(試料E3)も、PMに対して優れた燃焼促進特性を有し、低温でPMを燃焼除去することができる。また、試料E3は、水分存在下においてもその優れた特性を維持できるため、長期間安定してPMの燃焼を行うことができる。また、上記試料E3は、その作製時に高価な貴金属等を必要としないため、低コストで作製することができる。
かかる排ガス浄化触媒(試料E3)は、ハニカム構造体等のフィルタ基材に担持させることにより、排ガス浄化フィルタとして好適に用いることができる。
【0097】
(実施例4)
本例は、組成の異なる複数のゼオライトを用いて排ガス浄化触媒を作製し、水洗前後におけるPMに対する燃焼促進特性を調べる例である。
本例の排ガス浄化触媒は、ゼオライト種を変更する点を除いては、実施例3の上記試料E3と同様にして製造することができる。
【0098】
具体的には、まず、上記試料E3の作製に用いたゼオライト(東ソー株式会社製の「A−3」)を含む、構造及び/又は組成中のSiO2/Al23比(モル比)が異なる9種類のゼオライトを準備した。これらのゼオライトは、LTA型、BEA型、FAU(フォーじゃライト)型、FER型、LTL型、MFI型、又はMOR型の構造を有し(上述の表3参照)、いずれも東ソー(株)製のゼオライトである。具体的には、東ソー(株)製の「A−3」、「A−4」、「F−9」、「642NAA」、「320NAA」、「500KOA」、「720KOA」、「820NAA」、及び「940HOA」を用いた(表3参照)。
【0099】
次に、各種ゼオライトと炭酸カリウムとをそれぞれ混合した。混合は、実施例3と同様に、水中で行い、混合液の水分を蒸発させることにより、固形分を得た。各種ゼオライトと炭酸カリウムとの混合割合は、実施例3と同様に、各種ゼオライト中のSi元素1モルに対する炭酸カリウム中のK量が0.225モルとなる割合とした。
【0100】
次に、各固形分を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。
次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、排ガス浄化触媒を得た。
【0101】
このようにして、上述の各種ゼオライトを用いて9種類の排ガス浄化触媒を作製した。そして、これらの排ガス浄化触媒についても、実施例1の上記試料E1と同様に水洗前後におけるPMに対する燃焼促進特性を調べた。その結果を図16に示す。
【0102】
また、本例においては、焼成の意義を調べるために、焼成前の上記固形分、即ち各種ゼオライトと炭酸カリウムとの混合物を触媒として用い、実施例3の上記試料E3と同様に水洗前後におけるPMに対する燃焼促進特性を調べた。その結果を図17に示す。
【0103】
図16より知られるごとく、いずれのゼオライトを用いて場合においても、排ガス浄化触媒は、水洗浄前において約480℃以下という低いDTA発熱ピーク温度を示した。これは一般にPMの燃焼触媒として用いられている貴金属(Pt)触媒(DTA発熱ピーク温度:約520℃(図15参照))に比べて充分に小さな値である。したがって、各種ゼオライトを用いて作製した排ガス浄化触媒は、PMに対して優れた燃焼促進特性を有し、低温でPMを燃焼除去させることができることがわかる。
【0104】
また、図16より知られるごとく、各種ゼオライトを用いて作製した排ガス浄化触媒は、水洗後においても貴金属(Pt)触媒(DTA発熱ピーク温度:約520℃(図15参照))と同等又はそれよりも小さなDTA発熱ピーク温度を示した。したがって、これらの排ガス浄化触媒は、水分存在下においてもPMに対して優れた燃焼促進特性を維持できることがわかる。
【0105】
また、図17より知られるごとく、焼成を行っていない各種ゼオライトと炭酸カリウムとの混合物は、水洗前においては非常に低いDTA発熱ピーク温度を示した。しかし、水洗後においては、いずれの混合物においてもDTA発熱ピーク温度は顕著に上昇していた。
一方、焼成後においては、上述のごとく、水洗後においてもDTA発熱ピーク温度の上昇が小さくなっていた(図16参照)。したがって、混合物(上記固形分)を焼成することにより、水分に対する耐久性を向上させることができることがわかる。
【0106】
以上のように、本例によれば、様々なゼオライトを用いても、低温でかつ水分存在下でも長期間安定にPMを燃焼除去できる排ガス浄化触媒が得られることがわかる。かかる排ガス浄化触媒は、ハニカム構造体等のフィルタ基材に担持させることにより、排ガス浄化フィルタとして好適に用いることができる。
【0107】
(実施例5)
本例は、ソーダライト以外のゼオライトを用いた場合における焼成温度が触媒活性に与える影響を調べる例である。
即ち、本例においては、異なる複数の焼成温度でゼオライトと炭酸カリウムとの混合物を焼成して複数の排ガス浄化触媒を作製し、これらの触媒のPMに対する燃焼促進特性を調べる。
本例の排ガス浄化触媒は、焼成温度を変更する点を除いては、実施例3と同様にして作製する。
【0108】
具体的には、まず、実施例3と同様にして、LTA型で、SiO2/Al23比(モル比)が2.0のゼオライト(東ソー(株)製の「A−3」)と炭酸カリウムとの混合物(上記固形分)を得た。本例においても、実施例3と同様に、混合は水中で行い、ゼオライトと炭酸カリウムとの混合割合についても、実施例3と同様に、ゼオライト中のSi元素1モルに対する炭酸カリウム中のK量が0.225モルとなる割合とした。
【0109】
次に、混合物を異なる温度で焼成して複数の触媒を作製した。
具体的には、混合物を焼成温度500℃、600℃、800℃、700℃、900℃、1000℃、1100℃、1200℃、1300℃で焼成した。焼成速度は100℃/hとし、各焼成温度で10時間保持することにより焼成を行った。その後、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、異なる温度で焼成された9種類の触媒を得た。
【0110】
そしてこれら9種類の触媒についても、実施例3の上記試料E3と同様にPMに対する水洗前後の燃焼促進特性を調べた。このとき、比較用として、焼成を行っていないゼオライト(A−3)と炭酸カリウムとの混合物についてもPMに対する燃焼促進特性を調べた。このゼオライトと炭酸カリウムとの混合物としては、焼成を行う代わりに室温(約25℃)で約10時間放置したものを採用した。
燃焼促進特性の測定は、実施例3の上記試料E3と同様にしてDTA発熱ピーク温度を測定することにより行った。その結果を図18に示す。
【0111】
図18より知られるごとく、温度600℃以上で焼成を行って作製した排ガス浄化触媒のDTA発熱ピークトップ温度は、水洗前及び水洗後においても500℃を下回っていた。PMに対する燃焼触媒として一般に用いられる貴金属(Pt)触媒のDTA発熱ピーク温度は520℃程度(図15参照)であることから、これらの排ガス浄化触媒は、PMに対して充分に優れた燃焼促進特性を有していることがわかる。
【0112】
これに対し、図18より知られるごとく、温度600℃未満で焼成した触媒は、水洗前においては、貴金属(Pt)触媒に比べて充分に低いDTA発熱ピーク温度を示していたが、水洗後においては、DTA発熱ピーク温度は著しく上昇し、貴金属触媒のDTA発熱ピーク温度(520℃程度(図15参照))よりも大きくなっていた。即ち、水洗後には、PMに対する燃焼促進特性が不十分であった。
また、焼成を行っていないゼオライトと炭酸カリウムとの混合物も、水洗前にはPMに対して優れた燃焼促進特性を示していたが、水洗後には燃焼促進特性が著しく低下していた。
温度600℃未満で焼成して得られる触媒、及び焼成を行なわずに作製した触媒において、上記のごとく水洗後においてPMに対する燃焼促進特性が著しく低下していた原因は、水洗後にカリウムが溶出したためであると考えられる。
【0113】
したがって、本例によれば、焼成時における焼成温度は600℃以上で行う必要があることがわかる。また、図18より知られるごとく、好ましくは温度700℃〜1200℃、より好ましくは、800℃〜1100℃で焼成を行うことにより、燃焼促進特性がより優れると共に耐水性にもより優れた排ガス浄化触媒が得られることがわかる。かかる排ガス浄化触媒は、ハニカム構造体等のフィルタ基材に担持させることにより、排ガス浄化フィルタとして好適に用いることができる。
【0114】
(実施例6)
本例は、混合時にゼオライトに添加するアルカリ金属元素量が触媒活性に与える影響を調べる例である。
即ち、本例においては、ゼオライトに対して異なる複数の混合割合で炭酸カリウムを混合し、複数の排ガス浄化触媒を作製し、これらのPMに対する燃焼促進特性を調べる。
本例の排ガス浄化触媒は、ゼオライトと炭酸カリウムとの混合割合を変更する点を除いては、上記実施例3と同様にして作製する。
【0115】
具体的には、まず、実施例3と同様にして、LTA型で、SiO2/Al23比(モル比)が2.0のゼオライト(東ソー(株)製の「A−3」)を準備した。
次いで、このゼオライト100重量部に炭酸カリウムを0〜100重量部混合し、混合物を得た。
具体的には、後述の表4及び図19に示すごとく、ゼオライト100重量部に対して、炭酸カリウムをそれぞれ0重量部、1重量部、2.5重量部、5重量部、10重量部、20重量部、40重量部、60重量部、80重量部、及び100重量部混合して混合物を作製した。
これらの混合は、実施例3の上記試料E3と同様に水中で行い、上述のごとく混合液の水分を蒸発させることにより、Kの配合割合の異なる複数の混合物(上記固形分)を得た。
【0116】
次に、これらの混合物を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃に達したところで10時間保持した。これにより、各混合物の焼成を行った。次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、Kの配合割合が異なる10種類の排ガス浄化触媒を得た。
【0117】
このようにして得られた各排ガス浄化触媒について、実施例3の上記試料E3と同様にPMに対する水洗前後の燃焼促進特性を調べた。燃焼促進特性の測定は、実施例3の上記試料E3と同様にしてDTA発熱ピーク温度を測定することにより行った。その結果を表4及び図19に示す。
なお、表4には、ゼオライト100重量部に対するKの混合量(重量部)をゼオライト中のSi量(mol)に対するKの混合量「K/Si」(mol)に換算した値を示してある(表4参照)。
【0118】
【表4】

【0119】
表4及び図19より知られるごとく、混合時に、ゼオライト中のSi元素1モルに対して炭酸カリウム中のK量が0.1モル〜2.0モルとなるように、ゼオライトと炭酸カリウムとを混合した場合、即ち本例における混合時にゼオライト100重量部に対して炭酸カリウムを5重量部〜80重量部混合した場合には、水洗前後におけるDTA発熱ピーク温度が低く、燃焼促進特性が優れた排ガス浄化触媒が得られた。
これに対し、上述の0.1モル〜2.0モルという範囲から外れた場合には、特に水洗後の発熱ピーク温度が高くなっており、得られた触媒は、耐水性の低いものであった。
また、好ましくは、ゼオライト中のSi元素1モルに対する炭酸カリウム中のK量を0.2モル以上かつ1.5モル以下にすることにより、より耐水性の優れた排ガス浄化触媒が得られることがわかる(表4、図19参照)。
【0120】
以上のように、本例によれば、混合時に、ゼオライトと炭酸カリウム(アルカリ金属元素源)とを、ゼオライト中のSi元素1モルに対する炭酸カリウム中のK元素(アルカリ金属元素)量が0.1モル〜2.0モルとなるように混合することにより、より耐水性に優れ長期間安定してPMを燃焼除去できる排ガス浄化触媒が得られることがわかる。
かかる排ガス浄化触媒は、ハニカム構造体等のフィルタ基材に担持させることにより、排ガス浄化フィルタとして好適に用いることができる。
【0121】
(実施例7)
本例は、混合時に、ゼオライトに対して種々のアルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源を添加して排ガス浄化触媒を作製し、そのPMに対する燃焼促進特性を調べる例である。
本例の排ガス浄化触媒は、ゼオライトに混合するアルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源を変更する点を除いては、実施例3と同様にして作製する。
【0122】
具体的には、まず、実施例3と同様にして、LTA型で、SiO2/Al23比(モル比)が2.0のゼオライト(東ソー(株)製の「A−3」)を準備した。
次いで、このゼオライトに各種アルカリ金属元素源(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、又は炭酸セシウム)、又は各種アルカリ土類金属元素源(水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、又は炭酸バリウム)を混合した。ゼオライトと各種アルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源との混合割合は、実施例3と同様に、ゼオライト中のSi元素1モルに対するアルカリ土類金属元素源中のアルカリ金属元素量又はアルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属元素量が0.225モルとなる割合とした。
また、本例においても、実施例3と同様に、混合は水中で行い、混合液の水分を蒸発させることにより、ゼオライトと、各種アルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源との混合物(上記固形分)を作製した。
【0123】
次に、これらの混合物を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃に達したところで10時間保持した。これにより、各混合物の焼成を行った。次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、異なるアルカリ金属元素(Na、K、Rb、又はCs)又はアルカリ土類金属元素(Mg、Ca、Sr、又はBa)を含有する8種類の排ガス浄化触媒を得た。
【0124】
このようにして得られた各排ガス浄化触媒について、実施例3の上記試料E3と同様にPMに対する水洗前後の燃焼促進特性を調べた。燃焼促進特性の測定は、実施例3の上記試料E3と同様にしてDTA発熱ピーク温度を測定することにより行った。その結果を図20に示す。なお、図20において、横軸は、混合時に添加したアルカリ金属元素源中のアルカリ金属元素種、及びアルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属元素種を示し、縦軸は、DTA発熱ピーク温度を示す。
【0125】
図20より知られるごとく、各種アルカリ金属元素源、アルカリ土類金属元素源を用いて作製した排ガス浄化触媒は、いずれの場合においても、水洗前後において従来の貴金属触媒とほぼ同等又はそれよりも低いDTA発熱ピーク温度を示した。
特に、アルカリ金属元素源を用いた場合及びアルカリ土類金属元素源としてBa源(炭酸バリウム)を用いた場合には、水洗後においても、DTA発熱ピーク温度が500℃を下回っており、より優れた排ガス浄化触媒が得られることがわかる。
【0126】
このように、本例によれば、混合時に、様々なアルカリ金属元素源、アルカリ土類金属元素源を用いても、低温でかつ水分存在下でも長期間安定にPMを燃焼除去することができる排ガス浄化触媒が得られることがわかる。
かかる排ガス浄化触媒は、ハニカム構造体等のフィルタ基材に担持させることにより、排ガス浄化フィルタとして好適に用いることができる。
【0127】
(実施例8)
本例は、排ガス浄化触媒を用いて排ガス浄化フィルタを作製する例である。
本例の排ガス浄化フィルタは、図25に示すごとく、内燃機関5から排出される排ガスの排気経路54、19に設けられ、排ガスを浄化する。
図21〜24に示すごとく、排ガス浄化フィルタ1においては、ハニカム状又はフォーム状のフィルタ基材2に、ゼオライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物又はソーダライトが温度600℃以上で焼成されてなる排ガス浄化触媒4が担持されている。
【0128】
図21〜図23に示すごとく、本例において、フィルタ基材2は、外周壁21と、この外周壁21の内側においてハニカム状に設けられた隔壁25と、この隔壁25により仕切られた複数のセル3とを有する。セル3は、フィルタ基材2の両端面23、24に部分的に開口している。即ち、各セル3は、フィルタ基材2の一方の端面23(24)に開口し、もう一方の端面24(23)に形成された栓部32によって閉塞している。
【0129】
図21〜図23に示すように、本例においては、セル3の両端面23(24)における開口部31と栓部32とは交互に配置されており、所謂市松模様を形成している。
図23に示すごとく、本例の排ガス浄化フィルタ1においては、排ガス10の入口側となる上流側端面23及び排ガス10の出口となる下流側端面24に位置するセルの端部は、栓部32が配置された部分と配置されていない部分とをそれぞれ交互に有している。隔壁2には多数の空孔が形成され、排ガス10が通過できるようになっている。
そして、図22〜図24に示すごとく、フィルタ基材2の隔壁25には、実施例1で作製した排ガス浄化触媒4(試料E1)が担持されている。
【0130】
また、本例の排ガス浄化フィルタ1の全体サイズは、直径160mm、長さ100mmの円柱状であり、セルサイズは、セル厚さ3mm、セルピッチ1.47mmである。
また、フィルタ基材2はコーディエライトからなり、そのセル3は、断面が四角形状のものを採用した。セル3は、その他にも例えば、三角形、六角形等の様々な断面形状を採用することができる。
【0131】
図25は、エンジンシステムの模式図である。
同図に示すごとく、本例の排ガス浄化フィルタ1は、内燃機関5(ディーゼルエンジン)から排出される排ガス中のパティキュレートを除去するために用いられる。
ディーゼルエンジン車において、エンジン5の吸気ポートには、吸気マニホールド51を介して吸気管52が接続されている。また、排気ポートには、排気マニホールド53を介して排気管54が接続され、これらによって排気通路が構成されている。
【0132】
吸気管52には、過給圧コントロール手段を備えたターボ過給機55のコンプレッサ521と、ターボ過給機55により圧縮された吸気を冷却するインタークーラ522とがそれぞれ設けられている。
また、排気管54にはターボ過給機55のタービン541が設けられている。
ターボ過給機55において、コンプレッサ521の回転翼(図示略)とタービン541の回転翼(図示略)はシャフト(図示略)により連結されている。なお、エンジンから排出される排ガスのエネルギーによりタービン541が回転し、さらにシャフトを介してコンプレッサ521が回転し、このコンプレッサ521の回転により吸気管52内の吸入空気が圧縮されるように構成されている。
【0133】
排気管54の途中には、エンジン側(排ガスの上流側)から順に、白金−アルミナ触媒等からなる酸化触媒15と、排ガス浄化フィルタ(DPF)1とが設けられる。酸化触媒15は、酸化触媒としてだけでなく、NOx触媒としての機能も兼ね備える場合もある。酸化触媒15及び排ガス浄化フィルタ1は、排気管54の直径を拡大した筒状の捕集器19内に収容される。
また、エンジン5には、排気を再び吸気に回して再循環させるためのEGR(Exhaust Gas Recirculation)制御バルブ56が取り付けられている。さらに、排気を再び吸気に回す際に排気を冷却させるEGRクーラ57が取り付けられる。
【0134】
次に、本例の排ガス浄化フィルタの製造方法につき、説明する。
まず、タルク、溶融シリカ、及び水酸化アルミニウムを所望のコーディエライト組成となるように秤量し、造孔剤、バインダー、水等を加え、混合機にて混合撹拌した。そして、得られた粘土質のセラミック材料を成形機にて押出成形し、ハニカム状の成形体を得た。これを乾燥した後、所望の長さに切断し、外周壁と、その内側においてハニカム状に設けられた隔壁と、隔壁により仕切られていると共に両端面に貫通してなる複数のセルとを有する成形体を作製した。次いで、この成形体を温度1400〜1450℃で2〜10時間加熱することにより仮焼して仮焼体(ハニカム構造体)を得た。
【0135】
次に、ハニカム構造体の両端面全体を覆うようにマスキングテープを貼り付けた。そして、セラミックハニカム構造体の両端面の栓詰めすべき位置に対応するマスキングテープにレーザ光を順次照射し、マスキングテープを溶融又は焼却除去して貫通穴を形成した。これにより、セルの端部における栓部により栓詰めすべき部分に貫通穴を形成した。セルの端部のその他の部分はマスキングテープで覆われている。本例においては、セルの両端面に貫通穴とマスキングテープで覆われた部分とが交互に配置するように、マスキングテープに貫通穴を形成した。本例では、マスキングテープとしては、厚さ0.1mmの樹脂フィルムを用いた。
【0136】
次に、栓部の材料である栓材の主原料となるタルク、溶融シリカ、アルミナ、及び水酸化アルミニウムを所望の組成となるように秤量し、バインダー、水等を加え、混合機にて混合撹拌し、スラリー状の栓材を作製した。このとき、必要に応じて造孔材を添加することもできる。そして、スラリー状の栓材を入れた容器を準備した後、貫通孔を部分的に形成したハニカム構造体の端面を浸漬した。これにより、マスキングテープの貫通穴からセルの端部に栓材を適量浸入させた。また、ハニカム構造体のもう一方の端面についても同様の工程を行った。このようにして、栓詰めすべきセルの開口部内に栓材が配置されたハニカム構造体を得た。
【0137】
次に、ハニカム構造体とその栓詰めすべき部分に配置した栓材とを同時に約1400〜1450℃で焼成した。これにより、マスキングテープは焼却除去され、図21に示すごとく、セル3の両端に、その端部を開口する複数の開口部31と、セル3の端部を閉塞する複数の栓部32とが形成されたセラミックハニカム構造体(フィルタ基材)2を作製した。
【0138】
次に、実施例1で作製した排ガス浄化触媒(試料E1)をシリカゾルを5wt%配合したシリカスラリーに混合した。さらに固形分100重量部に対する水分量が400重量部となるように水を加え、スラリー状の排ガス浄化触媒を得た。
次に、スラリー状の排ガス浄化触媒中にフィルタ基材2を浸漬し、フィルタ基材2の多孔質の隔壁25に排ガス浄化触媒を含浸させた。次いで、エアーブローにより余分な水分を吹き飛ばした後、温度500℃で加熱することにより、焼き付けを行った。
このようにして、図21〜図24に示すごとく、排ガス浄化触媒4をフィルタ基材2に担持した排ガス浄化フィルタ1を得た。これを試料X1とする。
【0139】
図21〜図24に示すごとく、本例の排ガス浄化フィルタ1においては、実施例1の排ガス浄化触媒1(試料E1)、即ちゼオライトとアルカリ金属元素源との混合物を温度600℃以上で焼成してなる排ガス浄化触媒4がフィルタ基材2に担持されている。
排ガス浄化触媒4は、パティキュレートマター(PM)等の有害物質に対する燃焼促進作用を有するアルカリ金属を含有する。そのため、排ガス浄化フィルタ1は、排ガス浄化触媒4により、PM等の有害物質を低温で燃焼除去させることができる。具体的には、排ガス浄化触媒4は、従来の貴金属触媒と同等又はそれよりも低い温度でPM等の有害物質を燃焼除去させることができる。
また、排ガス浄化触媒4は、NOxを吸着することもできる。そのため、排ガス浄化フィルタ1は、排ガス中からNOxを吸着除去することもできる。
【0140】
また、温度600℃以上で焼成してなる排ガス浄化触媒4は、アルカリ金属元素の保持力が高い。
そのため、水分存在下においてもアルカリ金属元素が溶出することを防止することができる。それ故、水分存在下でも排ガス浄化触媒4の性能劣化を防止することができ、排ガス浄化フィルタ1は、長期間安定に排ガスの浄化を行うことができる。
【0141】
また、排ガス浄化触媒4は、ハニカム状のフィルタ基材2に担持されている。そのため、ハニカム状のフィルタ基材2の内部にまで排ガス浄化触媒4を担持させることができる。また、排ガス浄化フィルタ1においては、ハニカム状のフィルタ基材2の内部に排ガスを通過させることができる。そのため、排ガス浄化触媒4とPM等の有害物質との接触確率が高くなり、排ガスの浄化効率を向上させることができる。
【0142】
また、排ガス浄化触媒4においては、上述のごとくアルカリ金属元素が高い保持力で保持されている。そのため、高温環境下に曝したとしても、アルカリ金属元素の溶出を抑制することができる。それ故、排ガス浄化フィルタ1は、優れた耐熱性を示し、高温環境下においても排ガスの浄化を行うことができる。
さらに、排ガス浄化フィルタ1においては、高価な貴金属触媒を用いなくても、充分に低温で排ガス中からPM等の有害物質を燃焼除去することができる。
また、排ガス浄化触媒4は、フィルタ基材2の隔壁25に直接担持されている。そのため、排ガス浄化フィルタ1の気孔率を高くすることができ、特にPMに対する燃焼効率を向上させることができる。
【0143】
このように、本例によれば、低温でかつ長期間安定に排ガス中のパティキュレートマター(PM)等の有害物質を燃焼除去することができ、耐熱性にも優れた排ガス浄化フィルタを提供することができる。
【0144】
本例においては、コージェライトからなるフィルタ基材(セラミックハニカム構造体)を用いて排ガス浄化フィルタを作製したが、上記フィルタ基材として、例えばSiC、チタン酸アルミニウム等の多孔質の高耐熱性セラミックスを用いても同様の排ガス浄化フィルタを作製することができる。
また、本例においては、上記フィルタ基材として、セルの端部を閉塞する栓部が形成されたセラミックハニカム構造体を用いたが、例えば圧力損失を抑えるために、栓部を形成していないセラミックハニカム構造体を用いることができる。
【0145】
なお、本例においては、実施例1において作製した排ガス浄化触媒(試料E1)をフィルタ基材に担持させて排ガス浄化フィルタを作製したが、上記試料E1の代わりにその他の実施例で作製した排ガス浄化触媒を用いても、本例と同様の排ガス浄化フィルタを作製することができる。
また、本例においては、フィルタ基材2の隔壁25の全体に排ガス浄化触媒4を担持させた(図22参照)が、排ガスの下流側24から所定の領域に、排ガス浄化触媒4を担持させ、排ガスの上流側23から所定の領域には、HC、COを浄化するための酸化触媒15を担持させることもできる(図26参照)。
【0146】
(比較例)
本例においては、実施例8の排ガス浄化フィルタの比較用として、フィルタ基材に担持させる触媒の種類が異なる2種類の排ガス浄化フィルタ(試料Y1及び試料Y2)を作製した。
試料Y1の作製にあたっては、まず、東ソー製のハイシリカ系のゼオライトを準備し、これに対して5wt%アルミナゾルとアルミナゾルの5倍量(体積)の水とを加えてスラリー化し、コーディエライト製のDPFにコートした。
次いで、温度550℃で焼成した後、酢酸カリウム水溶液をDPFに含浸させ、温度500℃で焼成した。さらに、Ptを5wt%、Rhを1wt%含んだアルミナスラリーをコーティングして排ガス浄化フィルターを作製した。これを試料Y1とする。
【0147】
次に、試料Y2の作製にあたっては、まず、炭酸カリウム(K2CO3)の粉末と、γアルミナ粉末を準備した。次いで、これを触媒として用いて、実施例8と同様にフィルタ基材に担持させて、排ガス浄化フィルタを作製した。これを試料Y2とする。
【0148】
(実験例)
次に、実施例8で作製した試料X1、比較例で作製した試料Y1及び試料Y2の排ガス浄化フィルタについて、PMに対する燃焼促進特性を調べた。燃焼促進特性は、実施例1の試料E1と同様にして測定した。
具体的には、まず、各試料(試料X1、試料Y1、及び試料Y2)の排ガス浄化フィルタを粉末状に粉砕した。次いで、これらの粉末状の各試料とカーボンブラック(CB;PMの代替品)との混合物、CB粉末単独という4種類の評価サンプルを作製した。この評価サンプルを用いて実施例1の上記試料E1と同様にして水洗前後のDTA発熱ピーク温度を測定した。その結果を図27に示す。
【0149】
また、各評価サンプル(但し、CB粉末単独は除く)について以下のようにして耐熱試験を行った。
即ち、電気炉内で、大気雰囲気にて温度1000℃10時間の加熱処理を行った。
この耐熱試験後にDTA発熱ピーク温度を測定した。その結果を図27に示す。
【0150】
図27より知られるごとく、CBを単独で燃焼させる場合には、水洗前及び水洗後においても、600℃を越える高い温度での燃焼が必要になることがわかる。
一方、試料Y1及び試料Y2を用いた場合には、水洗前において、非常に低い温度でCBを燃焼できる。しかし、水洗後及び耐熱試験後においては、燃焼促進特性が低下していた。特に、試料Y2においては、水洗後及び耐熱試験後においては、燃焼促進特性が大きく低下していた。
【0151】
これに対し、ゼオライトとアルカリ金属元素源との混合物を温度600℃以上で焼成してなる排ガス浄化触媒(試料E1)がフィルタ基材に担持された排ガス浄化フィルタ(試料X1)は、400℃程度の低温でCBを燃焼できることがわかる。また、水洗後においてもほぼ同程度の低い温度でCBを燃焼でき、耐水性に優れていることがわかる。また、耐熱性にも優れていた。よって、試料X1は、水分存在下や高温環境下においても低温で安定にCBを燃焼させることができる。
【0152】
以上のように、本例によれば、本発明にかかる排ガス浄化フィルタは、低温でかつ長期間安定に排ガス中のパティキュレートマター(PM)等の有害物質を除去することができ、耐熱性にも優れることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】実施例1にかかる、各触媒種を用いて、又は触媒を用いずに、カーボンブラックを燃焼させたときのDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【図2】実施例1にかかる、触媒を用いずにカーボンブラックを単独で燃焼させた場合における温度とTG及びDTAとの関係を示す線図。
【図3】実施例1にかかる、触媒種として貴金属系触媒を用いてカーボンブラックを燃焼させた場合における温度とTG及びDTAとの関係を示す線図。
【図4】実施例1にかかる、触媒種として炭酸カリウムを用いてカーボンブラックを燃焼させた場合における温度とTG及びDTAとの関係を示す線図。
【図5】実施例1にかかる、触媒種として排ガス浄化触媒(試料E1)を用いてカーボンブラックを燃焼させた場合における温度とTG及びDTAとの関係を示す線図。
【図6】実施例1にかかる、焼成温度と水洗前後における排ガス浄化触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図7】実施例1にかかる、カリウム塩種と水洗前後における排ガス浄化触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図8】実施例1にかかる、アルカリ金属元素種・アルカリ土類金属元素種と水洗前後における排ガス浄化触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図9】実施例1にかかる、カリウム以外のアルカリ金属元素種・アルカリ土類金属元素種と水洗前後における排ガス浄化触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図10】実施例1にかかる、混合工程において混合するカリウム量と水洗前後における排ガス浄化触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図11】実施例1にかかる、混合工程において混合するバリウム量と水洗前後における排ガス浄化触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図12】実施例2にかかる、各触媒種を用いて、又は触媒を用いずに、カーボンブラックを燃焼させたときのDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【図13】実施例2にかかる、焼成温度と水洗前後における排ガス浄化触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図14】実施例2にかかる、ゼオライト種と触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図15】実施例3にかかる、各触媒種を用いて、又は触媒を用いずに、カーボンブラックを燃焼させたときの水洗前後のDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【図16】実施例4にかかる、種々のゼオライトと炭酸カリウムとの混合物を焼成してなる排ガス浄化触媒の水洗前後におけるDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【図17】実施例4にかかる、種々のゼオライトと炭酸カリウムとの混合物を触媒として用いたときの水洗前後におけるDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【図18】実施例5にかかる、種々の異なる焼成温度で作製した排ガス浄化触媒の水洗前後におけるDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【図19】実施例6にかかる、種々の異なる量のカリウムをゼオライトに混合して作製した排ガス浄化触媒の水洗前後におけるDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【図20】実施例7にかかる、種々の異なるアルカリ金属元素種・アルカリ土類金属元素種を用いて作製した排ガス浄化触媒の水洗前後におけるDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【図21】実施例8にかかる、排ガス浄化フィルタを示す説明図。
【図22】実施例8にかかる、排ガス浄化フィルタの断面を示す説明図。
【図23】実施例8にかかる、排ガス浄化フィルタの部分断面を示し、排ガス浄化フィルタ内を排ガスが通過する様子を示す説明図。
【図24】実施例8にかかる、排ガス浄化フィルタの隔壁の拡大断面を示し、隔壁に排ガス浄化触媒が担持された構成を示す説明図。
【図25】実施例8にかかる、排ガス浄化フィルタを組み込んだエンジンシステムを模式的に示した説明図。
【図26】実施例9にかかる、排ガスの上流側に酸化触媒を担持し、下流側に排ガス浄化触媒を担持した排ガス浄化フィルタの断面を示す説明図。
【図27】実験例にかかる、各試料を用いて又は用いずに、カーボンブラックを燃焼させたときのDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【符号の説明】
【0154】
1 排ガス浄化フィルタ
2 フィルタ基材
25 隔壁
3 セル
4 排ガス浄化触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排ガスの排気経路に設けられ、排ガスを浄化する排ガス浄化フィルタであって、
該排ガス浄化フィルタにおいては、ハニカム状又はフォーム状のフィルタ基材に、ゼオライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物又はソーダライトが温度600℃以上で焼成されてなる排ガス浄化触媒が担持されていることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項2】
請求項1において、上記排ガス浄化触媒は、上記混合物又はソーダライトを上記温度600℃以上で焼成した後、上記フィルタ基材に担持されていることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項3】
請求項2において、上記排ガス燃焼触媒は、上記混合物又は上記ソーダライトの焼成後かつ上記フィルタ基材への担持前に粉砕されてあることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項4】
請求項3において、上記混合物又はソーダライトの焼成時の温度は、1200℃以下であることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項5】
請求項1において、上記排ガス浄化触媒は、上記混合物又はソーダライトを上記フィルタ基材に担持した後に温度600℃以上で焼成してなることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、上記排ガス浄化触媒は、上記フィルタ基材に直接担持されていることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項において、上記排ガス浄化触媒は、上記フィルタ基材の表面に形成された担持層に担持されていることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項8】
請求項7において、上記担持層は、Al23、ZrO2、TiO2、CeO2、SiO2から選ばれる1種以上の酸化物からなることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項において、上記ゼオライトは、その組成中のAl231モルに対するSiO2量が200モル未満であることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項において、上記混合物におけるゼオライトとしては、ソーダライトが採用されていることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項11】
請求項10において、上記混合物においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記ソーダライト中のSi元素1モルに対して2.25モル以下となっていることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項12】
請求項11において、上記混合物においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記ソーダライト中のSi元素1モルに対して1モル以下となっていることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか一項において、上記混合物におけるゼオライトとしては、ソーダライト以外のゼオライトが採用されており、上記混合物においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記ゼオライト中のSi元素1モルに対して0.1モル以上かつ2.0モル以下となっていることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項において、上記混合物は、少なくとも上記アルカリ金属元素源を含有することを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項において、上記アルカリ金属元素源は、Na、K、Rb、及びCsから選ばれる1種以上を含有し、上記アルカリ土類金属元素源はMg、Ca、Sr、及びBaから選ばれる1種以上を含有することを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項において、上記アルカリ土類金属元素源は、少なくともBaを含有することを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項において、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源は、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物、酸化物、又は水酸化物であることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項において、上記ゼオライトと上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源との混合物は、上記ゼオライトと上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とを極性溶媒中で混合し、該極性溶媒を蒸発させて得られる固形分からなることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項において、上記フィルタ基材は、多孔質隔壁を多角形格子状に配して軸方向に延びる多数のセルを形成した多孔質基材からなり、上記セルは排ガス流路を形成していることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか一項において、上記フィルタ基材は、コージェライト又はSiCからなることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2009−262076(P2009−262076A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116134(P2008−116134)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】