説明

排ガス浄化用複合モノリス触媒

【課題】140℃〜400℃の広い温度領域でリーンバーン自動車排ガスに含まれるNOxを広範囲の排ガス温度領域において効率的に浄化すること。
【解決手段】排ガス流路の上流側にPtを低濃度で担持した金属酸化物触媒を保持したモノリス触媒を配置し、下流側にPtを高濃度で担持した金属酸化物触媒を保持したモノリス触媒を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は性能が異なる少なくとも2種類のモノリス触媒を組み合わせた複合モノリス触媒に関するものである。本発明の複合モノリス触媒を用いることによってリーンバーン自動車排ガスに含まれるNOxを広範囲の排ガス温度領域において効率よく浄化処理することができる。
【背景技術】
【0002】
従来、ガソリン車の排ガスに含まれるNOx、一酸化炭素、及び炭化水素は、白金族元素からなる三元触媒によって浄化されている。
【0003】
三元触媒は、通常、触媒支持体としてコージェライト製のモノリス成形体を用い、該成形体のガス流路内壁に活性アルミナ粒子を塗布し、該塗布層に白金−パラジウム−ロジウム粒子を担持させた構造となっている。
三元触媒による浄化方法は、空気:燃料の重量混合比である空燃比を理論空燃比(14.7)近傍に制御することで(この燃焼はリッチバーンと呼ばれている)、排ガスに含まれる酸素濃度を1%以下に維持できるので、排ガスに含まれる一酸化炭素及び炭化水素をNOxの還元剤として利用できるという利点を持つ。しかし、この方法は、排ガス中の酸素濃度が数%以上になると触媒の著しい酸化劣化が生じるという問題がある。
一方、ディーゼル車の排NOx処理には三元触媒は使用できない。それは、空燃比がガソリンの空燃比の数倍以上であるので(ディーゼル燃料の燃焼はリーンバーンと呼ばれている)、ディーゼル排ガス中の酸素濃度が通常5%以上であり還元性物質がほとんど含まれていないためである。同様の理由でリーンバーンガソリン車の排ガスも三元触媒では浄化が難しい。
小型ディーゼル車の排NOx処理には、触媒として白金族触媒にNOx吸蔵剤を添加した所謂NOx吸蔵還元触媒が検討されている。
【0004】
この方法は、リーンバーンとリッチバーンのサイクル燃焼を行い、リーンバーン排NOxをNOx吸蔵剤で吸収し、吸収NOxをリッチバーン雰囲気下で放出させ、放出NOxをリッチバーン排ガス中の一酸化炭素、水素、炭化水素等の還元性物質で還元処理するという考えに立脚している。
NOx吸蔵還元触媒を用いた浄化方法は、ガソリン乗用車の排ガス処理に用いられている三元触媒が使用できないような高濃度の酸素雰囲気中でも、250℃付近から600℃付近に渡ってNOxを浄化できる、という利点を持つが、200℃付近以下でのNOx浄化は非常に困難であるという問題と排ガス中の水分及び少量のSOxによってNOx吸蔵剤が著しく劣化するという問題がある。
また、軽油燃料で走行するトラック、バス等の大型ディーゼル車の排ガス処理は、触媒として遷移金属化合物又は白金族元素を用い、還元剤として尿素水を分解して発生させたアンモニアを用いる、所謂尿素SCR法が検討されている。
【0005】
この方法は、100℃付近の比較的低温領域から600℃付近の比較的高温領域に渡ってNOxを効率的に浄化できるという利点を持つが、尿素水のタンクを車載する必要があり、また残存するアンモニアの大気へのリークを避けるため尿素SCR触媒の下流に白金族元素を用いた酸化触媒を組み合わせてアンモニアを窒素と水に酸化する必要があり、装置が煩雑になるという問題がある。
ところで、国内ではディーゼル車の排ガスの温度は過渡走行時でおよそ120℃〜200℃であり、安定走行時でおよそ200℃〜400℃であるが、排出されるNOxの約80%が過渡走行時に排出されている。
【0006】
従って、ディーゼル車の排NOx処理に要求される触媒は、120℃〜400℃の温度領域で高活性を有する触媒であることが望まれている。
【0007】
尿素水を分解させたアンモニアを還元剤に用いる代わりに、燃料自体の炭化水素を還元剤として用いるHC−SCRも検討されている。触媒として白金系触媒、卑金属系触媒、銅−ゼオライト触媒などが検討されており、作用する温度は、触媒によって異なることが知られており、白金系触媒では170〜300℃、卑金属系触媒、銅−ゼオライト触媒では350℃〜600℃である。国内のディーゼル車の排ガス温度に適合するのは白金系触媒のみであるが、この白金系触媒においても十分な活性を持つ温度領域は狭く、200℃±10℃程度の温度領域であった。
【0008】
比表面積が400〜1100m/gという非常に大きな値を有するシリカ、アルミナ、及びシリカアルミナ系のメソポーラス金属酸化物を担体とするHC−SCRの白金系触媒も開発されているが(例えば、特許文献1〜6)、十分な活性を持つ温度領域が狭く、120℃〜400℃の温度領域全体で排NOxを効果的に除去するには、活性がなお不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,143,707号明細書
【特許文献2】特開平8−257407号公報
【特許文献3】特開2001−9275号公報
【特許文献4】特開2002−210369号公報
【特許文献5】特開2002−320850号公報
【特許文献6】特開2003−135963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記の事情に鑑み、リーンバーン排ガスに含まれるNOxの浄化のための新規なモノリス触媒を提供することである。
【0011】
具体的には、従来困難であったディーゼル排NOxを効率的に浄化するために、140℃〜400℃の広い温度領域で排NOxを効果的に除去する複合モノリス触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、金属酸化物触媒を保持したモノリス触媒において、驚くべきことに、その金属酸化物触媒に担持する活性金属の担持濃度が高いと低温側での排NOx浄化作用が高くなること、さらに担持する活性金属の担持濃度が異なる複数のモノリス触媒を組み合わせた場合にNOxの浄化率が各モノリス触媒の浄化率の平均値ではなく、各モノリス触媒の各温度での浄化率の最も高い浄化率に近い浄化率が得られることを見いだした。
【0013】
本発明者らは、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
(1)排ガス流路内壁を有するモノリス成形体、及び
白金を含む活性金属を50m/g以上の比表面積を有する金属酸化物からなる担体に担持した金属酸化物触媒を含み、
該金属酸化物触媒が該モノリス成形体の排ガス流路内壁に保持されているリーンバーン排NOx浄化用複合モノリス触媒であって、
該金属酸化物触媒の、活性金属の金属酸化物への担持濃度が金属酸化物に対して0.01質量%以上40質量%以下であり、かつ、金属酸化物に対する活性金属の担持濃度が相対的に低い金属酸化物触媒が該排ガス流路内壁の上流側に配置され、金属酸化物に対する活性金属の担持濃度が相対的に高い金属酸化物触媒が該排ガス流路内壁の下流側に配置された傾斜構造を有することを特徴とする上記複合モノリス触媒。
(2)前記金属酸化物触媒は、金属酸化物に対する活性金属の担持濃度が相対的に低い金属酸化物触媒と、金属酸化物に対する活性金属の担持濃度が相対的に高い金属酸化物触媒との2種類の金属酸化物触媒であって、
2種類の金属酸化物触媒の内、金属酸化物に対する活性金属の担持濃度が相対的に低い金属酸化物触媒が排ガス流路内壁の上流側に配置され、
金属酸化物に対する活性金属の担持濃度が相対的に高い金属酸化物触媒が排ガス流路内壁の下流側に配置されていることを特徴とする(1)に記載の複合モノリス触媒。
(3)前記金属酸化物触媒の内、金属酸化物に対する活性金属の担持濃度が相対的に低い金属酸化物触媒の担持濃度は0.01質量%以上15質量%未満であり、金属酸化物に対する活性金属の担持濃度が相対的に高い金属酸化物触媒の担持濃度は1.01質量%以上40質量%以下であって、且つ、該担持濃度が相対的に低い金属酸化物触媒と、該担持濃度が相対的に高い金属酸化物触媒の担持濃度との差が、少なくとも1質量%以上である、(2)に記載の複合モノリス触媒。
(4)前記金属酸化物がシリカ、アルミナ、チタニア、及びジルコニアからなる群から選ばれる少なくとも一つの金属酸化物である、(1)〜(3)のいずれか一項に記載の複合モノリス触媒。
(5)前記金属酸化物が実質的に直径2nm以上50nm以下の細孔と100m/g以上の比表面積とを有するメソポーラス金属酸化物であり、その上に担持された白金の平均結晶子径が1nm以上20nm以下である、(1)〜(4)のいずれか一項に記載の複合モノリス触媒。
(6)前記メソポーラス金属酸化物が非晶質メソポーラスシリカ及び非晶質メソポーラスアルミナからなる群から選ばれる少なくとも一つのメソポーラス金属酸化物である、(5)に記載の複合モノリス触媒。
(7)前記白金を含む活性金属が、白金に加えて、ロジウム、イリジウム、及びレニウムから選ばれる少なくとも一つの貴金属を含む、(1)〜(6)のいずれか一項に記載の複合モノリス触媒。
(8)前記金属酸化物触媒の保持量が、モノリス触媒の3質量%以上30質量%以下、かつ、モノリス触媒当たりに換算した白金の保持濃度が0.03質量%以上3質量%以下である、(1)〜(7)のいずれか一項に記載の複合モノリス触媒。
【発明の効果】
【0014】
本発明の複合モノリス触媒は、従来達成できなかったリーンバーン排NOx処理を140℃〜400℃の広い温度領域で極めて効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例6、並びに比較例16、17及び18の結果を温度を横軸にNOx浄化率を縦軸にしたグラフである。
【0016】
ここで、比較例16は、Pt担持濃度が低いメソポーラスシリカ触媒を保持したモノリス触媒を2個連結した場合のNOx浄化率、比較例17は、Pt担持濃度が高いメソポーラスシリカ触媒を保持したモノリス触媒を2個連結した場合のNOx浄化率、比較例18は、Pt担持濃度が中間のメソポーラスシリカ触媒を保持したモノリス触媒を2個連結した場合のNOx浄化率であり、実施例6は、排ガスの上流側にPt担持濃度が低いメソポーラスシリカ触媒を保持したモノリス触媒を配置し、下流側にPt担持濃度が高いメソポーラスシリカ触媒を保持したモノリス触媒を配置した場合のNOx浄化率である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のモノリス触媒は、白金を含む活性金属を金属酸化物に担持した金属酸化物触媒をモノリス成形体上に保持してなるモノリス触媒である。
【0018】
本発明者らは、金属酸化物触媒における白金を含む活性金属の担持濃度を高めることにより、得られたモノリス触媒の低温でのNOx浄化活性が高まることを発見した。白金を含む活性金属を高担持濃度にすることによって低温でのNOx浄化活性が高まる理由は必ずしも明確ではないが、活性金属粒子間の距離が近くなることによって複数の活性金属粒子の協調作用により低温活性が高まるものと考えられる。
【0019】
この白金を含む活性金属を相対的に高濃度で担持した金属酸化物触媒を保持したモノリス触媒と、白金を含む活性金属を相対的に低濃度で担持した金属酸化物触媒を保持したモノリス触媒を組み合わせることによって、140℃〜400℃の広い温度領域において高いNOx浄化活性を持つ複合モノリス触媒が得られることを見いだし本発明を完成した。
【0020】
即ち、本発明の特徴の一つは、排ガス流路の上流側に白金を含む活性金属を相対的に低濃度で担持した金属酸化物触媒を保持したモノリス触媒を配置し、下流側に白金を含む活性金属を相対的に高濃度で担持した金属酸化物を保持したモノリス触媒を配置することである。複合モノリス触媒を構成するモノリス触媒の個数は特に制限はない。排ガス流路の上流側から下流側に、各モノリス触媒に保持された金属酸化物触媒中の白金を含む活性金属の担持濃度が、低濃度から高濃度へと濃度の変化があればよい。
各モノリス触媒は、分割されずに、保持される金属酸化物触媒中の白金を含む活性金属の担持濃度が連続的に排ガスの上流側から下流側に低濃度から高濃度に連続的に変化していてもよい。
【0021】
金属酸化物触媒上の白金を含む活性金属の担持濃度は、0.01質量%以上40質量%以下が好ましい。排ガス流路の上流側から下流側への白金を含む活性金属の担持濃度は、最も上流側で0.01質量%以上15質量%以下が好ましく、最も下流側で1.01質量%以上40質量%以下が好ましい。高比表面積の金属酸化物を担体として用いる場合、40質量%よりも高濃度も可能であるが、担持濃度が過剰になると反応にほとんど寄与しない活性金属が増えるので40質量%以下が好ましい。また、十分な触媒活性を得るには0.01質量%以上が好ましい。活性金属の担持濃度は、排ガスの最上流側に対して最下流側の担持濃度が相対的に高いことが必要であり、最上流側と最下流側の濃度差が少なくとも1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上あることが好ましい。
【0022】
複数のモノリス触媒を組み合わせる場合、通常10個以下のモノリス触媒を用いることにより目的とする広い温度領域における高いNOx浄化活性を得ることができる。更に、2個のモノリス触媒を組み合わせることが簡便に複合モノリス触媒を製作することができるので好ましい。
【0023】
2個のモノリス触媒を組み合わせる場合、上流側のモノリス触媒中の金属酸化物に担持される白金を含む活性金属の担持濃度は、0.01質量%以上15質量%以下が好ましく、下流側の担持濃度は1.01質量%以上40質量%以下が好ましい。上流側の金属触媒中の白金を含む活性金属の担持濃度に対して下流側の担持濃度が高いことが必要であり、濃度差が1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上あることが好ましい。さらに好ましくは、上流側は、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、下流側は、2.1質量%以上30質量%以下である。
【0024】
上流側のモノリス触媒中の白金を含む活性金属が担持された金属酸化物と下流側のモノリス触媒中の白金を含む活性金属が担持された金属酸化物は、同じ金属酸化物であってもよいし、必要に応じて異なる金属酸化物にしてもよい。また、白金以外の金属の種類及び白金に対する比率が上流側と下流側で異なっていてもよい。
【0025】
本発明者らは、驚くべきことに複数のモノリス触媒を組み合わせることによって、複合モノリス触媒のNOx浄化率が各々のモノリス触媒の平均のNOx浄化率ではなく、各々のモノリス触媒の高い側のNOx浄化率に近い浄化率が得られることを見いだし、本発明を完成した。
次に、本発明で用いる活性金属は、白金(Pt)を含む活性金属である。本発明で白金を用いる理由は、白金が排NOxの主成分である一酸化窒素を共存酸素によって二酸化窒素に酸化する触媒能力が高く、同時に、炭素数1から6の低級オレフィン及び低級パラフィン、軽油、又は尿素水の分解によって発生させたアンモニアなどの還元性物質によって二酸化窒素を窒素と水に分解するための触媒活性が低温においても優れているからであり、また、排ガス中という高温の酸素雰囲気中でも化学的に安定であるからである。
【0026】
白金を含む活性金属の粒子の表面積が大きいほど活性金属表面の反応活性点の数が多くなるので、活性金属の重量当たりの活性は高くなる。活性金属の表面積は粒径が小さいほど活性金属の表面積が大きくなることから、粒径が小さいほど触媒活性は高くなる。本発明者らは、本発明のモノリス触媒上の白金をTEM(透過型電子顕微鏡)により測定して得た白金の粒径とX線回折法によって分析し、得られる回折線幅の広がりからScherrerの式を用いて算出して得た白金の平均結晶子径の値がほぼ同じであることを確認した。このことから白金の粒径は、平均結晶子径とほぼ同じであり、白金の平均結晶子径が小さいほど白金の触媒活性は高くなる。本発明における目的のNOx分解浄化処理に対して効果的な活性を示す白金の平均結晶子径は、1nm以上20nm以下の範囲が好ましく、さらに好ましくは、2nm以上10nm以下の範囲である。活性金属の十分なNOx分解活性を得るためには20nm以下が好ましく、また、活性金属表面が酸化されやすくなることを防ぎ、長期の使用に耐えるようにするには1nm以上が好ましい。
【0027】
X線回折法による白金の平均結晶子径の測定は、モノリス触媒上の金属酸化物触媒を削り落とすなどして粉末試料とし、CuKα線をX線源として用いて、回折角(2θ)で39.7°付近に極大を持つ回折線幅の広がりからScherrerの式を用いて算出される。
【0028】
本発明では白金に加えて銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、及びルテニウム(Ru)からなる群から選ばれる1種以上の金属を用いることが好ましい。白金に加えてこれら1種を単独で用いてもよく、これらのうちの2種以上の金属の合金、又は物理的混合物を用いられてもよい。これらの中でも、特にロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、及びレニウム(Re)、からなる群から選ばれる1種以上の貴金属を含む活性金属を用いると、NOx分解活性を高め、また長期間使用時の活性金属粒子の安定性を高める点から好ましい。ロジウム、イリジウム、及びレニウムからなる群から選ばれる1種以上の貴金属は、通常、白金の0.001重量倍から10重量倍用いる。好ましくは、0.002倍量から5倍量であり、更に好ましくは、0.01倍量から1倍量である。0.001倍量より少ないとこれらの貴金属の効果は得られない。また、10倍量を超えて用いてもNOx分解活性の向上は見られない。
本発明の活性金属の主金属である白金に、異なる機能をもつ助触媒的成分を添加することによって、シナジー効果による触媒性能の向上をはかることもできる。このような成分として、例えば、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、バリウム、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、ランタン、セリウム、バリウム、及びこれらの化合物を挙げることができる。
【0029】
これらの中で、不動態化膜になるクロム、鉄、コバルト、ニッケル、還元剤の吸着力が比較的高い銅、中程度の酸化力をもつ酸化セリウムと三二酸化マンガン、SOx被毒防止に有効な銅−亜鉛、鉄−クロム、酸化モリブデン、などは好ましい。この成分の添加量は、通常、白金重量の0.01倍から100倍程度であるが、必要に応じて100倍以上であってもよい。
【0030】
本発明において担体として用いる金属酸化物としては、白金を含む活性金属を高分散で担持するために、50m/g以上の比表面積を持つことが必要である。比表面積が50m/gよりも小さいと活性金属の分散性が悪く、活性金属の粒径が大きくなり十分なNOx浄化活性が得られない。好ましくは、100m/g以上、更に好ましくは300m/g以上である。上限値については特に制限はないが、より好ましくは比表面積が2000m/g以下である。比表面積が2000m/g以下であれば、金属酸化物の構造上の強度が保たれ、金属酸化物触媒調製時に金属酸化物が破壊されることもない。
【0031】
このような金属酸化物としては、アルミニウム、シリコン、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、銅、亜鉛、ジルコニウム、ハフニウム、タングステン、ガリウムなどの金属の酸化物、複合酸化物を用いることができるが、水蒸気が含まれる水熱条件下の排ガス中での長期安定性という点からシリカ、アルミナ、チタニア、及びジルコニアからなる群から選ばれる1種以上が特に好ましい。
【0032】
これらの金属酸化物の平均粒子径は、モノリス成形体に均一に保持するために、0.05μm〜5mmであると好ましく、より好ましくは0.05μm〜30μmである。さらに好ましくは0.05〜10μmである。
【0033】
なお、ここでの平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分析計(例えば、Microtrac社製、製品名「MT3000」)により粒度分布(一定粒度区間内にある粒子の割合)を測定し、その全体積を100%として粒度分布の累積を求め、累積が50%になる点の粒径、すなわち、累積平均径(中心径、Median径)を言う。
【0034】
これらの金属酸化物の中でもその構造として直径2nm以上50nm以下の細孔を持つメソポーラス金属酸化物が次の点から好ましい。即ち、メソポーラス金属酸化物を活性金属の担体に用いることにより、メソポーラス金属酸化物の細孔に活性金属を担持し、その細孔径を制御することで活性金属の好ましい粒径範囲を選択することができること、また活性金属を細孔内に担持することによって活性金属粒子の再凝集を抑制し、活性金属粒子の均一高分散を図れること、などの優れた効果があるからである。細孔の直径が50nm以下であれば、活性金属の再凝集を抑制することができ好ましい。
【0035】
メソポーラス金属酸化物の細孔の大部分は、直径が2nm以上50nm以下の範囲にあり、好ましくは2nm以上20nm以下の範囲にあり、より好ましくは2nm以上10nm以下の範囲にある。ここでいう細孔の大部分とは2nm以上50nm以下の細孔が占める細孔容積が全細孔容積の60%以上であることをいう。細孔径が2nm未満であっても触媒の担持は可能であるが不純物等による汚染の影響を考えると2nm以上が好ましい。50nmを超えると分散担持された触媒が水熱高温条件などによるシンタリングによって巨大粒子に成長し、NOx分解活性が低下しやすくなるので50nm以下が好ましい。
【0036】
なお、本発明における細孔径は、吸脱着の気体として窒素を用いた窒素吸着法によって測定される値であり、BJH法によって求められる1nm以上200nm以下の範囲の細孔分布(微分分布表示)で示される。
【0037】
また、メソポーラス金属酸化物の比表面積は、100m/g以上であることが好ましい。より好ましくは200m/g以上2000m/g以下、さらに好ましくは、300m/g以上1600m/g以下である。比表面積が100m/gより小さいと活性金属を高濃度に担持することが困難になる。また、2000m/g以下であれば、メソポーラス金属酸化物の強度が下がることがなく好ましい。なお、本発明における比表面積は、吸脱着の気体として窒素を用いたBET窒素吸着法によって測定される値である。
【0038】
このようなメソポーラス金属酸化物としては、MCM−41、SBA−15、SBA−2、SBA−11、AMS−9、KSW−2、MCM−50、HMS、MSU−1、MSU−2、MSU−3などを用いることができる。
【0039】
これらのメソポーラス金属酸化物の中でも非晶質メソポーラス金属酸化物が好ましく、特に非晶質メソポーラスシリカ、非晶質メソポーラスアルミナ、非晶質メソポーラスジルコニアが好ましい。さらに好ましくは非晶質メソポーラスシリカ、非晶質メソポーラスアルミナである。
一般に、多孔性材料に存在する空孔は小角X線回折法によって観測することができ、また、透過型電子顕微鏡(TEM)によって直接観察することができる。メソ領域の大きさ(2nm〜50nm)の空孔は、横軸に回折角2θ、縦軸にX線回折強度をとったとき、通常、回折角2θが数度以内の領域でブロードな回折ピークを示す。空孔が多孔性材料の細孔であり、それがある程度の長距離範囲において規則正しく配列している場合には、上記回折角の領域において、一般に、結晶性物質に観測されるような複数本の回折ピークが観測され、そのパターンから、細孔配列の帰属ができる。また、この材料をTEMで観察すると、細孔が秩序よく配列している像を観測することができる。このような規則配列した細孔を有する結晶性メソポーラス材料の例が、二次元六方構造を持つMCM−41である。
【0040】
本発明における非晶質メソポーラス金属酸化物とは、細孔に起因する1本の小角X線回折ピークを持ち、TEM観察によって細孔配列の秩序性がまったく観測されないメソポーラス金属酸化物のことである。
【0041】
非晶質メソポーラス金属酸化物を活性金属の担体として用いると、他の金属酸化物を担体に用いた場合に比較して低温でのNOx浄化率が高くなり好ましい。
【0042】
非晶質メソポーラス金属酸化物としては、細孔構造として虫食い様(ワームホール状)構造を持つHMS、MSU−1、MSU−2、MSU−3などがあり、これらの構造を持つメソポーラスシリカ、メソポーラスアルミナ、メソポーラスジルコニアなどを用いることができる。これらの中でもHMS構造のメソポーラスシリカ、メソポーラスアルミナが比表面積が大きく、熱的安定性にも優れることから好ましい。
なお、本発明で用いる非晶質のメソポーラス金属酸化物は、白金を含む活性金属の高温における熱安定性を高めることができることから必要に応じて、構成元素の一部としてランタノイド族を含む3族元素、13族元素、5族元素、及び6族元素からなる群から選ばれた少なくとも一種類の元素を導入してもよい。
3族元素では、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、サマリウム、ガドリニウムが好ましく、13族元素ではホウ素が好ましく、5族ではニオブ、及びタンタルが好ましく、6族ではクロム、モリブデン、及びタングステンが好ましい。中でも、ホウ素、タングステン、ニオブ、及びセリウムが更に好ましく、これらの元素を導入する効果の持続性の面からはタングステン、及びセリウムが特に好ましい。
これらの元素の導入量は非晶質メソポーラス金属酸化物を構成する主元素に対して1−20モル%が好ましく、より好ましくは1−10モル%である。
本発明のメソポーラス金属酸化物の製造法は特に限定するものでなく、従来の方法である界面活性剤のミセルをテンプレートとして用いるゾル−ゲル法を応用することによって所用の材料を製造することができる。メソポーラス金属酸化物の前駆物質には、通常、金属アルコキシドを用いる。例えばメソポーラスシリカの場合は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン等のアルコキシドを用いることができる。また、水ガラス、コロイド状シリカ、煙状シリカ(フュームドシリカ)を原料としてもよい。
ミセル形成の界面活性剤の種類と塩基性、酸性、中性の合成条件がメソポーラス金属酸化物の構造を決定する上で重要である。例えば、炭素数8〜22の長鎖の4級アンモニウム塩(例:セチルトリメチルアンモニウムブロミドCTAB)を塩基性又は酸性条件で用いることにより種々の結晶性メソポーラス金属酸化物が得られ、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤を酸性条件で用いることによっても結晶性のメソポーラス金属酸化物を得ることができる。また、炭素数8〜22の長鎖のアルキルアミン(例:ドデシルアミン)やアルキルジアミンを中性〜弱塩基性条件で用いると非晶性のメソポーラス金属酸化物を得ることができる。長鎖のアルキルアミンN−オキシド、長鎖のスルホン酸塩等も界面活性剤として用いることができる。
【0043】
溶媒としては、通常、水、アルコール類、ジオールの1種以上が用いられるが、水を含んだ溶媒を用いることが好ましい。
【0044】
反応系に金属への配位能を有する化合物を少量添加すると、反応系の安定性を著しく高めることができる。このような安定剤としては、アセチルアセトン、テトラメチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸、ピリジン、ピコリンなどの金属配位能を有する化合物が好ましい。
前駆物質、界面活性剤、溶媒及び安定剤からなる反応系の組成は、前駆物質/溶媒のモル比が0.01〜0.60、好ましくは0.02〜0.50、前駆物質/界面活性剤のモル比が1〜30、好ましくは1〜10、溶媒/界面活性剤のモル比が1〜1000、好ましくは5〜500、安定化剤/前駆物質のモル比が0.01〜1.0、好ましくは0.2〜0.6である。反応温度は、20〜180℃、好ましくは20〜100℃の範囲である。反応時間は5〜100時間、好ましくは10〜50時間の範囲である。
【0045】
反応生成物は通常、濾過により分離し、十分に水洗、乾燥後、500〜1000℃の焼成によってテンプレートを熱分解除去し、メソポーラス金属酸化物を得ることができる。必要に応じて、焼成前に界面活性剤をアルコールなどで抽出してもよい。
なお、3族元素、5族元素、6族元素、及び/又は13族元素を非晶質メソポーラスシリカのケイ素に代えて導入する場合は、メソポーラスシリカの前駆物質にこれらの元素のアルコキシド、アセチルアセトナート等を適当量加えて、上記メソポーラス金属酸化物の製造法と同様の方法によって製造することができる。
【0046】
本発明のモノリス触媒を調製する方法としては、上記金属酸化物に白金を含む活性金属を担持し、得られた金属酸化物触媒をモノリス成形体に塗布などの方法により保持してもよいし、モノリス成形体にまず金属酸化物を保持した後に白金を含む活性金属を金属酸化物上に担持してもよい。
【0047】
上記金属酸化物に白金を含む活性金属を担持する方法は、公知のものであってもよく、特に制限されるものではないが、例えば、吸着法、イオン交換法、浸せき法、共沈法、乾固法などが例示される。
【0048】
例えば、金属酸化物を触媒原料の水などの溶媒に溶解した溶液に浸漬した後、濾過、乾燥し、必要に応じて溶媒により洗浄を行い、還元剤で還元処理することによって製造することができる。
白金の触媒原料としては、例えば、HPtCl、(NHPtCl、HPtCl、(NHPtCl、HPt(OH)、Pt(NH(NO、Pt(NH(OH)、Pt(NHCl、PtCl、PtCl、白金のアセチルアセトナート錯体、等を用いることができる。
【0049】
必要に応じて白金に添加するロジウム、イリジウム、レニウムの原料としては、例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物、又は硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、あるいは、上記金属を含む各種の錯体(例えば、カルボニル錯体、アセチルアセトナート錯体、アンミン錯体、ヒドリド錯体)、及びかかる錯体から誘導される化合物が挙げられる。これらの金属の化合物は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。白金原料に上記添加する金属の原料を混合して同様にして金属酸化物に担持することができる。
【0050】
本発明の白金を含む活性金属を担持した金属酸化物触媒は、上記白金の化合物を担持した後に還元処理を行うことにより得られる金属白金を含むことが好ましい。還元処理は、白金化合物を担持した金属酸化物をモノリス成形体に保持する前に行うこともできるし、モノリス成形体に保持した後に行ってもよい。白金を含む活性金属の化合物の還元法としては、一般的な還元法、例えば、水素や一酸化炭素などによる接触還元法、又は、ホルマリン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、ヒドラジン、アスコルビン酸、アルコールなどによる化学還元法が挙げられる。還元は、それぞれの還元剤について知られている通常の条件で行えばよい。例えば、水素還元は、ヘリウムなどの不活性ガスで希釈した水素ガス気流下にサンプルを置き、通常、50〜600℃、好ましくは100〜450℃で数時間処理することによって行うことができる。その還元温度が50℃未満であると還元に時間がかかりすぎ、600℃を超えると白金の凝集が進み、白金触媒の活性に悪影響を及ぼしやすくなる傾向にある。なお、白金化合物の還元は気相で行っても液相で行ってもよいが、好ましくは気相還元である。また、水素化ホウ素ナトリウムによる化学還元法の場合、還元温度は100℃以下であることが好ましく、10℃〜60℃であることがより好ましい。これらの還元処理後、必要に応じて、不活性ガス気流下500〜1000℃で数時間熱処理してもよい。
本発明のモノリス成形体とは、成形体の断面が網目状で、軸方向に平行に互いに薄い壁によって仕切られたガス流路を設けている成形体のことである。成形体の外形は、特に限定するものではないが、通常は、円柱形である。材質としては、コージェライト(2MgO・2Al・5SiO)などのセラミックでもよいし、例えば金属組成がFe75%、Cr20%、Al5%である金属製のものを用いることもできる。
【0051】
本発明の複合モノリス触媒とは、白金を含む活性金属を担持した金属酸化物触媒をモノリス成形体のガス流路内壁に保持させた触媒を意味している。金属酸化物触媒の保持量は、3質量%以上30質量%以下が好ましい。30質量%以下であれば、モノリス成形体表面に保持された金属酸化物触媒の厚みが増すこともなく、内部に存在する金属酸化物触媒へのガス拡散が十分であることから好ましい。また、十分なNOx浄化性能を引き出す上で3質量%以上が好ましい。
【0052】
モノリス触媒当たりに換算した白金の保持濃度は、0.03質量%以上3質量%以下が好ましい。
【0053】
上流側のモノリス触媒と下流側のモノリス触媒の白金の保持濃度は必要に応じて同じにしてもよいし、異なっていてもよい。上流側と下流側のモノリス触媒で保持する白金を含む活性金属の使用量に特に制限はない。経済的な観点からモノリス触媒体積あたり10g/L以下であることが望ましい。
本発明のモノリス触媒は、自動車用三元触媒を付着したモノリス成形体の製造方法に準じて製造することができる。
【0054】
例えば、金属酸化物触媒とバインダーとしてのコロイダルシリカを、通常、1:(0.01〜0.2)の質量割合で混合した混合物をつくり、これを水分散することによって通常5〜50質量%のスラリーを調製した後、該スラリーにモノリス成形体を浸漬してモノリス成形体のガス流路の内壁にスラリーを付着させ、乾燥後、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性雰囲気下500〜1000℃で数時間熱処理することによって製造することができる。
コロイダルシリカ以外のバインダーとしては、メチルセルロース、アクリル樹脂、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂、クレゾール樹脂などを適宜用いることもできる。
【0055】
あるいは、モノリス成形体に金属酸化物を上記の方法で付着させた後に白金原料を含む活性金属原料を該金属酸化物に含浸し、還元処理、熱処理を行う方法によっても製造することができる。
また、他の製法としては、スラリーを付着させる代わりに、気体状の金属酸化物の前駆物質を用いて薄膜状の金属酸化物をモノリス成形体表面に直接付着させる化学的蒸着法によって行うこともできる。
【0056】
そして、蒸着によって薄膜状の金属酸化物が付着したモノリス成形体への白金を含む活性金属の担持は、通常、白金原料を含む活性金属原料の水溶液を含浸、乾燥後、還元処理、熱処理を行う方法によって行うことができる。
モノリス成形体に付着させる金属酸化物触媒の厚みは、付着方法によって異なり、前記のスラリーを付着させる方法では、通常、1μm以上100μm以下であるのが好ましく、10μm以上50μm以下の範囲が特に好ましい。100μm以下であれば、反応ガスの拡散が遅くなることもなく好ましい。触媒性能の劣化を抑制するためには1μm以上が好ましい。
【0057】
また、前記の化学的蒸着法では、通常、10nm以上10μm以下の範囲が好ましく、さらに好ましくは100nm以上1μm以下である。10μm以上の厚みにすることは可能であるが、内部への排ガスの拡散が少ないので10μm以下であることが好ましい。
【0058】
また、モノリス成形体に金属酸化物触媒を保持する前に必要に応じてアルミナ、セリア、ジルコニア、酸化ランタン、酸化バリウムなどの金属酸化物をモノリス成形体に保持してもよい。
本発明のモノリス触媒は、自動車、特にディーゼル自動車及びリーンバーンガソリン自動車に搭載することによって、自動車が排出するリーンバーン排NOxを140〜400℃の低温領域において従来よりも高い浄化率で浄化することができる。排NOxの処理には還元剤が必要であるが、乗用車などの小型車の場合には、燃料である軽油に少量含まれている炭素数1から6の低級オレフィン及び低級パラフィンが還元剤となるので、燃料を直接又は改質器を通して触媒上に供給すればよい。
【0059】
リッチバーンの時には酸素濃度が高くリーンバーンの時には酸素濃度が低いので、リッチバーンとリーンバーンを交互に行うことができる小型ディーゼルの排ガス浄化処理のために本発明のモノリス触媒を用いると、140〜400℃の広い温度範囲において効率よく排NOxを浄化処理できる。
【0060】
また、トラックなどの大型車の場合には、通常、尿素水を熱分解して還元剤としてのアンモニアを発生させ触媒上に供給するシステムを利用できるので、尿素供給システムを搭載する大型ディーゼル用の排NOx浄化用触媒としても用いることができる。
【実施例】
【0061】
本発明について、以下具体的に説明する。
実施例中の小角X線回折パターン及び粉末X線回折パターンは理学電機社製RINT2000型X線回折装置によって測定した。
担体の細孔及び触媒は日立製作所製H−9000UHR型透過型電子顕微鏡を用いて直接観察した。
【0062】
透過型電子顕微鏡によって観察した触媒の粒径は、粉末X線回折パターンのメインピークの半値幅をScherrerの式に代入して算出した値と一致することを確認した。
比表面積及び細孔分布は、脱吸着の気体として窒素を用い、カルロエルバ社製ソープトマチック1800型装置を用いて測定した。比表面積はBET法によって求めた。細孔分布は1〜200nmの範囲を測定し、BJH法で求められる微分分布で示した。製造したメソポーラスシリカ、メソポーラスアルミナは特定の細孔直径の位置に細孔容積のピークを示した。このピークを与える細孔直径が細孔径である。
自動車排NOxのモデルガスとして、ヘリウム希釈一酸化窒素、酸素、及び還元性ガス(プロピレン)を用いた。
【0063】
一酸化窒素の処理率は、減圧式化学発光法NOx分析計(日本サーモ株式会社製造:モデル42i−HL及び46C−H)によって処理後のガスに含まれる一酸化窒素を測定し、以下の式(1)によって算出した。
【0064】
[1−(反応後のガスの吸光度/反応前のガスの吸光度)]×100(%) (1)
本発明を実施例に基づいて説明する。
[参考例1]結晶性メソポーラスシリカMCM−41の合成
米国特許第5,143,707号明細書における実施例21の方法に従ってMCM−41タイプの結晶性メソポーラスシリカを作成した。すなわち、29質量%濃度のドデシルトリメチルアンモニウムブロミドの水溶液を陰イオン交換樹脂を充填したカラムを通して、ドデシルトリメチルアンモニウムヒドロオキシドの水溶液243gを得た。これを29質量%濃度のドデシルトリメチルアンモニウムブロミドの水溶液306gと混合し、これにテトラエチルオルトシリケート30g加え、40℃で1時間撹拌した。この溶液を恒温恒湿槽に入れ100℃で48時間放置した。
【0065】
生成した沈殿を濾過、水洗、風乾後、窒素気流中540℃で1時間焼成した後、さらに空気中540℃で6時間焼成した。得られた材料の比表面積は1450m/g、細孔径は2.5nmであった。小角X線回折パターンは4本の回折ピークを示し、それぞれの面間隔(d値)は3.2nm(strong)、1.8nm(weak)、1.6nm(weak)、及び、1.2nm(very weak)であった。
【0066】
上記の小角X線回折パターンは、米国特許第5,143,707号明細書における実施例21に記載のMCM−41のデータと一致することから、MCM−41タイプの結晶性メソポーラスシリカであることが確認された。
[参考例2]非晶性メソポーラスシリカの合成
蒸留水300g、エタノール240g、及びドデシルアミン30gを均一溶液とした。この溶液に撹拌下でテトラエチルオルトシリケート125g加えて25℃で22時間撹拌した。生成物を濾過、水洗、風乾した後、空気下550℃で5時間焼成した。
【0067】
得られたメソポーラスシリカの小角X線回折は、2θ角が2.72度(d=3.25nm)の所に1本のブロードな回折ピークを示した。
また、透過型電気顕微鏡観察の結果、細孔の配列に規則性は観測されず、無秩序に分散している状態であることが確認された。
これらの結果から、製造したメソポーラスシリカは非晶性であることが確認された。
【0068】
また、細孔分布及び比表面積測定の結果、約3.2nmの位置に細孔ピークがあり、比表面積が933m/g、細孔容積が1.35cm/g、2〜50nmの細孔が占める容積は1.34cm/gであった。
[参考例3]非晶性メソポーラスアルミナの合成
蒸留水300g、エタノール240g、及びドデシルアミン30gを均一溶液とした。攪拌下でトリイソプロポキシアルミニウム120gを加えて25℃で22時間攪拌した。生成物を濾過、水洗し、110℃で5時間温風乾燥した後、空気中で550℃5時間焼成して含有するドデシルアミンを分解除去し、メソポーラスアルミナを得た。
【0069】
小角X線回折測定した結果、1本のブロードな回折ピークを示した。また、透過型電子顕微鏡観察の結果、細孔の配列には規則的な配列が観測されず無秩序に分散している状態が観測された。これらの結果から、製造したメソポーラスアルミナ材料は非晶性であることが確認された。
【0070】
細孔分布及び比表面積を測定した結果、約3.2nmの位置に細孔ピークがあり、比表面積が460m/g、細孔容積が1.32cm/g、2〜50nmの細孔が占める容積は1.28cm/gであった。
[参考例4]3質量%Pt−Rh/シリカ触媒の合成
比表面積300m/g(株式会社東海化学工業所製)のシリカ10gを0.796gのHPtCl・6HOと5質量%の硝酸ロジウム[Rh(NO]水溶液0.444gを20gの蒸留水に溶解した水溶液に入れ、蒸発乾固後、120℃で3時間真空乾燥を行った。この試料を石英管に入れ、窒素気流下400℃で3時間加熱処理後、ヘリウム希釈水素ガス(10%v/v)気流下500℃で3時間還元し、白金の含有量が約3質量%のPt−Rh/シリカ触媒を合成した。担持された白金の平均結晶子径は、約4.5nmであった。
【0071】
同様にして比表面積350m/g(ユニオン昭和株式会社製)のアルミナ10gを用いて白金含有量が約3質量%のPt−Rh/アルミナ触媒を合成した。担持された白金の平均結晶子径は、約4.0nmであった。
【0072】
同様にして比表面積250m/g(ユニオン昭和株式会社製)のチタニア10gを用いて白金含有量が約3質量%のPt−Rh/チタニア触媒を合成した。担持された白金の平均結晶子径は、約5.0nmであった。
【0073】
同様にして比表面積100m/g(第一希元素化学工業社製)のジルコニア10gを用いて白金含有量が約3質量%のPt−Rh/ジルコニア触媒を合成した。担持された白金の平均結晶子径は、約6.0nmであった。
[参考例5]6.5質量%Pt−Rh/シリカ触媒の合成
参考例4のHPtCl・6HOの使用量を1.726gに変え、5質量%の硝酸ロジウム水溶液の使用量を0.963gに変えた以外は、参考例4と同様にして白金の含有量が約6.5質量%のPt−Rh/シリカ触媒を合成した。担持された白金の平均結晶子径は、約4.5nmであった。
【0074】
同様にして白金の含有量が約6.5質量%のPt−Rh/アルミナ触媒、約6.5質量%のPt−Rh/チタニア触媒、約6.5質量%のPt−Rh/ジルコニア触媒を合成した。それぞれの担持された白金の平均結晶子径は、約4.3nm、約5.1nm、約6.3nmであった。
[参考例6]4.8質量%Pt−Rh/シリカ触媒の合成
参考例4のHPtCl・6HOの使用量を1.274gに変え、5質量%の硝酸ロジウム水溶液の使用量を0.711gに変えた以外は、参考例4と同様にして白金の含有量が約4.8質量%のPt−Rh/シリカ触媒を合成した。担持された白金の平均結晶子径は、約4.5nmであった。
【0075】
同様にして白金の含有量が約4.8質量%のPt−Rh/アルミナ触媒、約4.8質量%のPt−Rh/チタニア触媒、約4.8質量%のPt−Rh/ジルコニア触媒を合成した。それぞれの担持された白金の平均結晶子径は、約4.1nm、約5.0nm、約6.1nmであった。
【0076】
[参考例7]5質量%Pt−Rh/MCM−41触媒の合成
蒸留水20gにHPtCl・6HOを1.327gと5質量%の硝酸ロジウム水溶液0.740gを溶解した水溶液に参考例1で合成したMCM−41タイプのメソポーラスシリカ10gを加え、蒸発乾固した後、100℃3時間真空乾燥を行った。この試料を石英管に入れ、窒素気流下400℃で3時間加熱処理後、ヘリウム希釈水素ガス(10v/v%)気流下、500℃で3時間還元し、白金の含有量が約5質量%のPt−Rh/MCM−41触媒を合成した。担持された白金の平均結晶子径は、約2.5nmであった。
【0077】
同様にして、MCM−41に変えて、参考例2で合成した非晶性メソポーラスシリカ10gを用いて約5質量%のPt−Rh/非晶質メソポーラスシリカ触媒を合成した。担持された白金の平均結晶子径は、約2.5nmであった。
【0078】
同様にして、MCM−41に変えて、参考例3で合成した非晶性メソポーラスアルミナ10gを用いて約5質量%のPt−Rh/非晶質メソポーラスアルミナ触媒を合成した。担持された白金の平均結晶子径は、約3.0nmであった。
【0079】
[参考例8]10質量%Pt−Rh/MCM−41触媒の合成
参考例7のHPtCl・6HOを2.655gに変え、5質量%の硝酸ロジウム水溶液を1.481gに変えた以外は、参考例7と同様にして白金の含有量が約10質量%のPt−Rh/MCM−41触媒を合成した。担持された白金の平均結晶子径は、約2.5nmであった。
【0080】
同様にして白金の含有量が約10質量%のPt−Rh/非晶質メソポーラスシリカ触媒、Pt−Rh/非晶質メソポーラスアルミナ触媒を合成した。それぞれの担持された白金の平均結晶子径は、約2.5nm、約3.0nmであった。
[参考例9]7.5質量%Pt−Rh/MCM−41触媒の合成
参考例7のHPtCl・6HOを1.991gに変え、5質量%の硝酸ロジウム水溶液を1.11gに変えた以外は、参考例7と同様にして白金の含有量が約7.5質量%のPt−Rh/MCM−41触媒を合成した。担持された白金の平均結晶子径は、約2.5nmであった。
【0081】
同様にして白金の含有量が約7.5質量%のPt−Rh/非晶質メソポーラスシリカ触媒、Pt−Rh/非晶質メソポーラスアルミナ触媒を合成した。それぞれの担持された白金の平均結晶子径は、約2.5nm、約3.0nmであった。
【0082】
[参考例10]Pt−Ir/非晶質メソポーラスシリカ触媒の合成
参考例7の5質量%の硝酸ロジウム水溶液0.740gに変えて、IrCl・3HOを0.045g使用し、MCM−41に変えて参考例2で合成した非晶質メソポーラスシリカ10gを用いた以外は、参考例7と同様にして約5質量%Pt−Ir/非晶質メソポーラスシリカ触媒を合成した。担持された白金の平均結晶子径は、約2.5nmであった。
【0083】
また、HPtCl・6HOを2.655g用い、IrCl・3HOを0.090g用いた以外は、参考例7と同様にして約10質量%Pt−Ir/非晶質メソポーラスシリカ触媒を合成した。担持された白金の平均結晶子径は、約2.5nmであった。
【0084】
更に、HPtCl・6HOを1.991g用い、IrCl・3HOを0.068g用いた以外は、参考例7と同様にして約7.5質量%Pt−Ir/非晶質メソポーラスシリカ触媒を合成した。担持された白金の平均結晶子径は、約2.5nmであった。
【0085】
[参考例11]Pt−Re/非晶質メソポーラスシリカ触媒の合成
参考例7の5質量%の硝酸ロジウム水溶液0.740gに変えて、NHReOを0.137g使用し、MCM−41に変えて参考例2で合成した非晶質メソポーラスシリカ10gを用いた以外は、参考例7と同様にして約5質量%Pt−Re/非晶質メソポーラスシリカ触媒を合成した。担持された白金の平均結晶子径は、約3.0nmであった。
【0086】
また、HPtCl・6HOを2.655g用い、NHReOを0.275g用いた以外は、参考例7と同様にして約10質量%Pt−Re/非晶質メソポーラスシリカ触媒を合成した。担持された白金の平均結晶子径は、約3.0nmであった。
【0087】
また、HPtCl・6HOを1.991g用い、NHReOを0.206g用いた以外は、参考例7と同様にして約7.5質量%Pt−Re/非晶質メソポーラスシリカ触媒を合成した。担持された白金の平均結晶子径は、約3.0nmであった。
[参考例12]3%Pt−Rh/シリカ/モノリス触媒の合成
参考例4の3質量%Pt−Rh/シリカ触媒2gとコロイダルシリカ0.2gを蒸留水20mlに加え、攪拌して、スラリーを調製した。
【0088】
これに、市販のコージェライトモノリス成形体(400 cells/inch、直径118mm×長さ50mm、重量243g)から切り出したミニ成形体(310cells、直径25.4mm×長さ10mm、重量2.25g)を浸漬し、試料を取り出し風乾する操作を繰り返してシリカ触媒を各ミニ成形体に約0.51g付着させた。窒素気流下で500℃3時間熱処理した。
メソポーラス触媒の付着量は、約23質量%であり、ミニ成形体当たりの白金の担持量は約0.7質量%であった。この3%Pt−Rh/シリカ/モノリス触媒等をA−1等と表記する。他のモノリス触媒も同様にして合成した。各モノリス触媒をその略号と共に示す。
【0089】
3%Pt−Rh/シリカ/モノリス触媒 :A−1
3%Pt−Rh/アルミナ/モノリス触媒 :B−1
3%Pt−Rh/チタニア/モノリス触媒 :C−1
3%Pt−Rh/ジルコニア/モノリス触媒 :D−1
各モノリス触媒の表面を削って得たPtを含む金属酸化物のXRD測定からPtの結晶子径は、変化していないことを確認した。
[参考例13]6.5質量%Pt−Rh/シリカ/モノリス触媒の合成
参考例5の6.5質量%Pt−Rh/シリカ触媒2gとコロイダルシリカ0.2gを蒸留水20mlに加え、攪拌して、スラリーを調製し、参考例12と同様にして市販のコージェライトモノリス成形体から切り出したミニ成形体(310cells、直径25.4mm×長さ10mm、重量2.25g)をスラリーに浸漬し、試料を取り出し風乾する操作を繰り返してシリカ触媒を各ミニ成形体に約0.24g付着させた。窒素気流下で500℃3時間熱処理した。
【0090】
メソポーラス触媒の付着量は、約11質量%であり、ミニ成形体当たりの白金の担持量は約0.7質量%であった。この6.5%Pt−Rh/シリカ/モノリス触媒等をA−2等と表記する。他のモノリス触媒も同様にして合成した。各モノリス触媒をその略号と共に示す。
【0091】
6.5%Pt−Rh/シリカ/モノリス触媒 :A−2
6.5%Pt−Rh/アルミナ/モノリス触媒 :B−2
6.5%Pt−Rh/チタニア/モノリス触媒 :C−2
6.5%Pt−Rh/ジルコニア/モノリス触媒:D−2
各モノリス触媒の表面を削って得たPtを含む金属酸化物のXRD測定からPtの結晶子径は、変化していないことを確認した。
[参考例14]4.8質量%Pt−Rh/シリカ/モノリス触媒の合成
参考例6の4.8質量%Pt−Rh/シリカ触媒2gとコロイダルシリカ0.2gを蒸留水20mlに加え、攪拌して、スラリーを調製し、参考例12と同様にして市販のコージェライトモノリス成形体から切り出したミニ成形体(310cells、直径25.4mm×長さ10mm、重量2.25g)をスラリーに浸漬し、試料を取り出し風乾する操作を繰り返してシリカ触媒を各ミニ成形体に約0.32g付着させた。窒素気流下で500℃3時間熱処理した。
【0092】
メソポーラス触媒の付着量は、約14質量%であり、ミニ成形体当たりの白金の担持量は約0.7質量%であった。この6.5%Pt−Rh/シリカ/モノリス触媒等をA−3等と表記する。他のモノリス触媒も同様にして合成した。各モノリス触媒をその略号と共に示す。
【0093】
4.8%Pt−Rh/シリカ/モノリス触媒 :A−3
4.8%Pt−Rh/アルミナ/モノリス触媒 :B−3
4.8%Pt−Rh/チタニア/モノリス触媒 :C−3
4.8%Pt−Rh/ジルコニア/モノリス触媒:D−3
各モノリス触媒の表面を削って得たPtを含む金属酸化物のXRD測定からPtの結晶子径は、変化していないことを確認した。
[参考例15]5質量%Pt−Rh/MCM−41/モノリス触媒の合成
参考例7の5質量%Pt−Rh/MCM−41触媒2gとコロイダルシリカ0.2gを蒸留水20mlに加え、攪拌して、スラリーを調製し、参考例12と同様にして市販のコージェライトモノリス成形体から切り出したミニ成形体(310cells、直径25.4mm×長さ10mm、重量2.25g)をスラリーに浸漬し、試料を取り出し風乾する操作を繰り返してMCM−41触媒を各ミニ成形体に約0.31g付着させた。窒素気流下で500℃−3時間熱処理した。
【0094】
メソポーラス触媒の付着量は、約14質量%であり、ミニ成形体当たりの白金の担持量は約0.7質量%であった。この5%Pt−Rh/MCM−41/モノリス触媒等をE−1等と表記する。他のモノリス触媒も同様にして合成した。各モノリス触媒をその略号と共に示す。
【0095】
5%Pt−Rh/MCM−41/モノリス触媒 :E−1
5%Pt−Rh/非晶性メソポーラスシリカ/モノリス触媒 :F−1
5%Pt−Rh/非晶性メソポーラスアルミナ/モノリス触媒:G−1
5%Pt−Ir/非晶性メソポーラスシリカ/モノリス触媒 :H−1
5%Pt−Re/非晶性メソポーラスシリカ/モノリス触媒 :I−1
各モノリス触媒の表面を削って得たPtを含む金属酸化物のXRD測定からPtの結晶子径は、変化していないことを確認した。
[参考例16]10質量%Pt−Rh/MCM−41/モノリス触媒の合成
参考例8の10質量%Pt−Rh/シリカ触媒2gとコロイダルシリカ0.2gを蒸留水20mlに加え、攪拌して、スラリーを調製し、参考例12と同様にして市販のコージェライトモノリス成形体から切り出したミニ成形体(310cells、直径25.4mm×長さ10mm、重量2.25g)をスラリーに浸漬し、試料を取り出し風乾する操作を繰り返してMCM−41触媒を各ミニ成形体に約0.16g付着させた。窒素気流下で500℃−3時間熱処理した。
【0096】
メソポーラス触媒の付着量は、約7質量%であり、ミニ成形体当たりの白金の担持量は約0.7質量%であった。この10%Pt−Rh/MCM−41/モノリス触媒等をE−2等と表記する。他のモノリス触媒も同様にして合成した。各モノリス触媒をその略号と共に示す。
【0097】
10%Pt−Rh/MCM−41/モノリス触媒 :E−2
10%Pt−Rh/非晶性メソポーラスシリカ/モノリス触媒 :F−2
10%Pt−Rh/非晶性メソポーラスアルミナ/モノリス触媒:G−2
10%Pt−Ir/非晶性メソポーラスシリカ/モノリス触媒 :H−2
10%Pt−Re/非晶性メソポーラスシリカ/モノリス触媒 :I−2
各モノリス触媒の表面を削って得たPtを含む金属酸化物のXRD測定からPtの結晶子径は、変化していないことを確認した。
[参考例17]7.5質量%Pt−Rh/MCM−41/モノリス触媒の合成
参考例9の7.5質量%Pt−Rh/シリカ触媒2gとコロイダルシリカ0.2gを蒸留水20mlに加え、攪拌して、スラリーを調製し、参考例12と同様にして市販のコージェライトモノリス成形体から切り出したミニ成形体(310cells、直径25.4mm×長さ10mm、重量2.25g)をスラリーに浸漬し、試料を取り出し風乾する操作を繰り返してMCM−41触媒を各ミニ成形体に約0.21g付着させた。窒素気流下で500℃−3時間熱処理した。
【0098】
メソポーラス触媒の付着量は、約9.4質量%であり、ミニ成形体当たりの白金の担持量は約0.7質量%であった。この10%Pt−Rh/MCM−41/モノリス触媒等をE−3等と表記する。他のモノリス触媒も同様にして合成した。各モノリス触媒をその略号と共に示す。
【0099】
7.5%Pt−Rh/MCM−41/モノリス触媒 :E−3
7.5%Pt−Rh/非晶性メソポーラスシリカ/モノリス触媒 :F−3
7.5%Pt−Rh/非晶性メソポーラスアルミナ/モノリス触媒:G−3
7.5%Pt−Ir/非晶性メソポーラスシリカ/モノリス触媒 :H−3
10%Pt−Re/非晶性メソポーラスシリカ/モノリス触媒 :I−3
各モノリス触媒の表面を削って得たPtを含む金属酸化物のXRD測定からPtの結晶子径は、変化していないことを確認した。
[実施例1〜10及び比較例1〜27]
複合モノリス触媒と、同触媒による還元剤としてプロピレンを用いたリーンバーンNOx処理
参考例10〜17で製造したモノリス触媒2個を石英製の連続流通式反応管に充填した。
【0100】
ここで実施例では、排ガスを模した模擬ガスの上流側に白金が低担持濃度のモノリス触媒を充填し、下流側に白金が高担持濃度のモノリス触媒を充填した。
【0101】
また比較例では、上流側も下流側も同じモノリス触媒を充填した。
【0102】
被処理ガスの成分モル濃度は、ヘリウムで濃度調整した一酸化窒素250ppm、酸素10%、水蒸気10%、及びプロピレン600ppmとした。反応管へ導入した混合ガスの流量を毎分1L、処理温度を140℃〜400℃とした。排ガス中の一酸化窒素の濃度をオンラインで測定し一酸化窒素処理率を求めた。
【0103】
結果を表1と表2に示す。
表1と表2から、本発明の複合モノリス触媒は、単一濃度のモノリス触媒の場合に比較してNOxを広い温度領域で効率よく浄化できることが明らかである。
表1
上流側に白金低濃度担持の金属酸化物触媒を保持したモノリス触媒を配し、下流側に白金高濃度担持の金属酸化物触媒を保持したモノリス触媒を配した場合の模擬ガスの各温度でのNO処理率
【0104】
【表1】


表2
同じ白金担持濃度の金属酸化物触媒を保持したモノリス触媒を二つ重ねて配した場合の各温度における模擬ガス中のNO処理率
【0105】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の複合モノリス触媒は、ディーゼル車、リーンバーンガソリンエンジン車などの排NOx浄化用触媒として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス流路内壁を有するモノリス成形体、及び
白金を含む活性金属を50m/g以上の比表面積を有する金属酸化物からなる担体に担持した金属酸化物触媒を含み、
該金属酸化物触媒が該モノリス成形体の排ガス流路内壁に保持されているリーンバーン排NOx浄化用複合モノリス触媒であって、
該金属酸化物触媒の、活性金属の金属酸化物への担持濃度が金属酸化物に対して0.01質量%以上40質量%以下であり、かつ、金属酸化物に対する活性金属の担持濃度が相対的に低い金属酸化物触媒が該排ガス流路内壁の上流側に配置され、金属酸化物に対する活性金属の担持濃度が相対的に高い金属酸化物触媒が該排ガス流路内壁の下流側に配置された傾斜構造を有することを特徴とする上記複合モノリス触媒。
【請求項2】
前記金属酸化物触媒は、金属酸化物に対する活性金属の担持濃度が相対的に低い金属酸化物触媒と、金属酸化物に対する活性金属の担持濃度が相対的に高い金属酸化物触媒との2種類の金属酸化物触媒であって、
2種類の金属酸化物触媒の内、金属酸化物に対する活性金属の担持濃度が相対的に低い金属酸化物触媒が排ガス流路内壁の上流側に配置され、
金属酸化物に対する活性金属の担持濃度が相対的に高い金属酸化物触媒が排ガス流路内壁の下流側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の複合モノリス触媒。
【請求項3】
前記金属酸化物触媒の内、金属酸化物に対する活性金属の担持濃度が相対的に低い金属酸化物触媒の担持濃度は0.01質量%以上15質量%未満であり、金属酸化物に対する活性金属の担持濃度が相対的に高い金属酸化物触媒の担持濃度は1.01質量%以上40質量%以下であって、且つ、該担持濃度が相対的に低い金属酸化物触媒と、該担持濃度が相対的に高い金属酸化物触媒の担持濃度との差が、少なくとも1質量%以上である、請求項2に記載の複合モノリス触媒。
【請求項4】
前記金属酸化物がシリカ、アルミナ、チタニア、及びジルコニアからなる群から選ばれる少なくとも一つの金属酸化物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合モノリス触媒。
【請求項5】
前記金属酸化物が実質的に直径2nm以上50nm以下の細孔と100m/g以上の比表面積とを有するメソポーラス金属酸化物であり、その上に担持された白金の平均結晶子径が1nm以上20nm以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合モノリス触媒。
【請求項6】
前記メソポーラス金属酸化物が非晶質メソポーラスシリカ及び非晶質メソポーラスアルミナからなる群から選ばれる少なくとも一つのメソポーラス金属酸化物である、請求項5に記載の複合モノリス触媒。
【請求項7】
前記白金を含む活性金属が、白金に加えて、ロジウム、イリジウム、及びレニウムから選ばれる少なくとも一つの貴金属を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の複合モノリス触媒。
【請求項8】
前記金属酸化物触媒の保持量が、モノリス触媒の3質量%以上30質量%以下、かつ、モノリス触媒当たりに換算した白金の保持濃度が0.03質量%以上3質量%以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合モノリス触媒。

【図1】
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【公開番号】特開2011−92852(P2011−92852A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248640(P2009−248640)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【出願人】(000173924)公益財団法人野口研究所 (108)
【Fターム(参考)】