説明

排ガス浄化用触媒

【課題】NOxの浄化に関して優れた触媒活性を有する排ガス浄化用触媒を提供する。
【解決手段】基材上に排ガス上流側の第1触媒層と排ガス下流側の第2触媒層とを有し、前記第1及び第2触媒層がNOx保持物質を含み、それぞれRhを含む下層とPd及びPtを含む上層とを有し、Pdの濃度が前記第2触媒層よりも前記第1触媒層で高く、Ptの濃度が前記第1触媒層よりも前記第2触媒層で高いことを特徴とする、排ガス浄化用触媒が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒、より詳しくはNOx吸蔵還元型の排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素(CO2)による地球温暖化現象が問題となっており、自動車においてもCO2の排出量を低減させることが課題となっている。燃費性能に優れた希薄燃焼エンジンは、自動車から排出されるCO2の低減に役立つことから、地球温暖化対策の1つとして注目されている。希薄燃焼においては、排気が酸素過多となり、理論空燃比A/F=14.5付近で使用される従来の三元触媒ではNOxを十分に浄化することができない。このため、このような条件下でも高いNOx浄化性能を有する触媒としてNOx吸蔵還元型の排ガス浄化用触媒が開発され、実用化されている。
【0003】
このようなNOx吸蔵還元型排ガス浄化用触媒としては、コージェライト等のハニカム基材の上に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の触媒金属を含む触媒層を形成し、当該触媒層にアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素等の元素を含むNOx保持物質を担持したものが一般的に知られている。
【0004】
上記のNOx吸蔵還元型排ガス浄化用触媒による排ガスの浄化においては、Pt、Pd等の触媒金属によってNOxが酸化され、硝酸塩としてNOx保持物質に吸蔵された後、瞬間的に空燃比をリッチにする(リッチスパイクを発生させる)ことで当該NOx保持物質から放出されたNOxがRh等の触媒金属によって還元浄化される。このため、従来のNOx吸蔵還元型排ガス浄化用触媒では、一般的にPt、Pd及びRh等の触媒金属とNOx保持物質とが同じ触媒層に担持されている。しかしながら、触媒成分としてのRhを他の金属、特にはPtと同じ触媒層において使用すると、Rhと他の金属が部分的に合金化して触媒のNOx浄化性能が低下するという問題がある。
【0005】
一方で、近年、コールドエミッション(内燃機関の始動)時の排ガスに対しても規制が厳しくなっており、触媒自体が十分に暖められる前に内燃機関から排出された比較的低温の排ガスに対しても高い触媒活性を発揮できる排ガス浄化用触媒が求められている。
【0006】
特許文献1では、多孔質粒子に少なくともRhを担持した第1粉末と、多孔質粒子に少なくともPtとNOx吸蔵材を担持した第2粉末とを混在させてなる排ガス浄化用触媒であって、該第1粉末の近傍に炭化水素の吸着性を有する吸着材を設けたことを特徴とする排ガス浄化用触媒が記載され、このような触媒によれば、RhがPtと分離して担持されるので、Rhの近接によりPtの酸化能が低下することを防ぐことができると記載されている。
【0007】
特許文献2では、担体基材と、該担体基材に形成された触媒担持層と、該触媒担持層に担持されたPt、Pd、RhおよびNOx吸蔵材とを有する排ガス浄化触媒であって、Rhは、排ガス流の下流側に配置される前記担体基材の下流部で高濃度担持されていることを特徴とする排ガス浄化触媒が記載され、このような触媒によれば、基材の上流部で還元しきれずに下流側へ排出されたNOxを基材の下流部で効果的に還元することができると記載されている。
【特許文献1】特開平10−225636号公報
【特許文献2】特開2006−231204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の排ガス浄化用触媒では、RhとPtがそれぞれ担持されている第1粉末と第2粉末が同じ触媒層にコートされており、耐久後のRhとPtの合金化等による触媒活性の低下に関して改善の余地があった。また、Ptは低温における炭化水素(HC)等の酸化活性が低く、触媒の低温活性についても依然として改善の余地があった。
【0009】
特許文献2は、担持される触媒金属の濃度を基材の上流部と下流部で変化させた排ガス浄化用触媒を記載しているが、これら触媒金属が担持される触媒層を2層構造とすること及びその効果については何ら記載も示唆もしていない。
【0010】
そこで、本発明は、新規な構成により、NOxの浄化に関して優れた触媒活性を有する排ガス浄化用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明は下記にある。
(1)基材上に排ガス上流側の第1触媒層と排ガス下流側の第2触媒層とを有し、前記第1及び第2触媒層がNOx保持物質を含み、それぞれRhを含む下層とPd及びPtを含む上層とを有し、Pdの濃度が前記第2触媒層よりも前記第1触媒層で高く、Ptの濃度が前記第1触媒層よりも前記第2触媒層で高いことを特徴とする、排ガス浄化用触媒。
(2)Pdが前記第1触媒層にのみ担持され、Ptが前記第2触媒層にのみ担持されたことを特徴とする、上記(1)に記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、NOx吸蔵能及びNOx浄化性能の顕著に改善された排ガス浄化用触媒を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の排ガス浄化用触媒は、基材上に排ガス上流側の第1触媒層と排ガス下流側の第2触媒層とを有し、前記第1及び第2触媒層がNOx保持物質を含み、それぞれRhを含む下層とPd及びPtを含む上層とを有し、Pdの濃度が前記第2触媒層よりも前記第1触媒層で高く、Ptの濃度が前記第1触媒層よりも前記第2触媒層で高いことを特徴としている。
【0014】
本発明者らは、NOx吸蔵還元型排ガス浄化用触媒において、基材上の触媒層を2層構造とし、当該触媒層の下層にRhを担持し、上層にPt及び/又はPdを担持することで、得られる触媒のNOx吸蔵能及びNOx浄化性能を顕著に改善することができることを見出した。
【0015】
図1は、本発明の排ガス浄化用触媒における触媒層の断面を示す模式図である。本発明の排ガス浄化用触媒10は、基材11と、下層12及び上層13からなる2層構造の触媒層とによって構成され、当該触媒層はNOx保持物質を含み、下層12が触媒金属としてRhをさらに含み、上層13が触媒金属としてPt及び/又はPdをさらに含む。
【0016】
NOx吸蔵還元型の排ガス浄化用触媒による排ガスの浄化においては、Pt、Pd等の触媒金属によってNOxが酸化され、硝酸塩としてNOx保持物質に吸蔵された後、瞬間的に空燃比をリッチにすることで当該NOx保持物質から放出されたNOxがRh等の触媒金属によって還元浄化される。したがって、このようなNOxの吸蔵還元における一連の反応を円滑に行うために、従来、これらの触媒金属やNOx保持物質は互いにある程度接近して担持することが必要であると一般に考えられてきた。それゆえ、本発明の排ガス浄化用触媒のように、NOxの酸化活性が高い触媒金属であるPt及びPdとNOxの還元活性が高い触媒金属であるRhとをそれぞれ上層と下層に分離して担持することで、得られる排ガス浄化用触媒のNOx吸蔵能及びNOx浄化性能が向上するということは極めて意外なことであり、驚くべきことである。
【0017】
また、Rhは他の金属、特にはPtと同じ触媒層において使用されると、Rhと他の金属が部分的に合金化して触媒の活性を低下させる場合があることが一般的に知られている。本発明の排ガス浄化用触媒によれば、触媒成分であるPt及びPdとRhがそれぞれ上層と下層に分離して担持されるため、上記のようなRhと他の金属による合金化の問題を避けることができると考えられる。
【0018】
何ら特定の理論に束縛されることを意図するものではないが、本発明の排ガス浄化用触媒では、例えば、以下のようにしてNOxが還元浄化されると考えられる。すなわち、まず、上層のPtやPdによって酸化されたNOxが同じ層に存在するNOx保持物質に硝酸塩として吸蔵される。その後、リッチスパイクによって当該NOx保持物質から放出されたNOxが拡散等により上層から下層へ移動し、そこでRhにより還元浄化される。したがって、酸化活性の高いPtやPdと還元活性の高いRhをそれぞれ上層と下層に分離して担持した場合でも、NOxの吸蔵還元に関する一連の反応が阻害されないと考えられる。しかも、本発明の排ガス浄化用触媒では、上記のとおり、このような分離担持によってRhとPtなどの合金化が抑制されるので、酸化活性の高い触媒金属と還元活性の高い触媒金属が同じ触媒層に担持された従来のNOx吸蔵還元型排ガス浄化用触媒に比べて、NOx吸蔵能及びNOx浄化性能を顕著に改善することができると考えられる。
【0019】
本発明者らは、先に記載した触媒層の2層化に加えて、Pdを基材の排ガス下流部よりも排ガス上流部で多く担持することにより、得られる触媒のNOx吸蔵能及びNOx浄化性能をさらに向上させることができることを見出した。
【0020】
図2は、本発明の排ガス浄化用触媒を示す斜視図である。本発明の排ガス浄化用触媒20は、多数のセルを有する円柱状のハニカム基材21と、当該ハニカム基材21のセル表面にコートされた触媒層とから構成される。当該触媒層は、図1で示される上層と下層からなる2層構造を有し、さらにハニカム基材21の上流部22に形成される第1触媒層と下流部23に形成される第2触媒層とに分けられる。
【0021】
Pdは、排ガス浄化用触媒の触媒成分として同様に用いられるPtやRhに比べて、炭化水素(HC)等の酸化に対して高い低温活性を有することが一般に知られている。したがって、Pdを基材の排ガス上流部で多く担持することにより、すなわち、本発明の排ガス浄化用触媒の基材上流部22に形成される第1触媒層の上層にPdを高濃度で担持することにより、比較的低温の排ガスに対してもその中に含まれるHCを効果的に酸化することが可能である。また、このようなHCの酸化反応で生じた熱によって基材下流部23の触媒層に担持された触媒成分を活性化することができ、したがって、触媒全体の浄化性能を向上させることが可能になる。
【0022】
理論に拘束される訳ではないが、本発明の排ガス浄化用触媒においてNOx吸蔵能及びNOx浄化性能が向上したのは、触媒成分であるPt及びPdとRhをそれぞれ上層と下層に分離して担持したことにより、これら触媒金属の合金化が抑制されたこと、並びに第1触媒層の上層にPdを高濃度で担持したことにより、低温時における触媒の浄化能が向上し、結果として触媒全体の性能が向上したことによるものと考えられる。
【0023】
本発明によれば、基材としては、特に限定されないが、一般に排ガス浄化用触媒において用いられる任意の材料を使用することができる。具体的には、基材としては、多数のセルを有するハニカム形状の材料を使用することができ、例えば、コージェライト(2MgO・2Al23・5SiO2)、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素等の耐熱性を有するセラミックス材料や、ステンレス鋼等の金属箔からなるメタル材料を使用することができる。本発明の排ガス浄化用触媒では、このようなハニカム基材の排ガス上流部と排ガス下流部の各セル表面に、下層及び上層からなる2層構造の第1触媒層と第2触媒層がそれぞれコートされる。
【0024】
本発明によれば、上記の第1及び第2触媒層における下層及び上層を構成する触媒担体としては、特に限定されないが、一般に触媒担体として用いられる任意の多孔質担体を使用することができる。好ましい触媒担体としては、アルミナ、セリア、ジルコニア、シリカ、チタニア及びそれらの組み合わせからなる群より選択される金属酸化物が挙げられる。
【0025】
本発明によれば、上記触媒層の下層に触媒金属としてRhが担持される。本発明の排ガス浄化用触媒においては、Rhは、主としてNOx保持物質から放出されたNOxを還元浄化する機能を有する。したがって、本発明の他の態様として、触媒の性能が損なわれない範囲内で、Rhの一部を同様にNOxの還元活性が高い他の金属、例えば、Ir、Ru等の金属に置き換えることも可能である。なお、本発明の排ガス浄化用触媒においては、Rhは上記触媒層の下層にのみ担持されることが好ましい。
【0026】
本発明によれば、上記触媒層の上層に触媒金属としてPt及び/又はPdが担持される。本発明の排ガス浄化用触媒においては、Pdは基材の下流部よりも上流部で高濃度担持され、Ptは基材の上流部よりも下流部で高濃度担持されていればよい。それゆえ、PdとPtを上流部と下流部で併用してもよいが、触媒の低温活性をより高めるためには、Pdを第1触媒層にのみ担持し、Ptを第2触媒層にのみ担持することがより好ましい。また、Ptは、主としてCO、HC及びNOxを酸化する機能を有する。したがって、本発明の他の態様として、触媒の性能が損なわれない範囲内で、Ptの一部をこのような酸化活性の高い他の金属、例えば、Os、Au等の金属に置き換えることも可能である。
【0027】
本発明によれば、第1及び第2触媒層はNOx保持物質をさらに含む。
【0028】
本発明において用いられる「NOx保持物質」という語は、NOxをそのままの形態であるか又は別の形態、例えば、硝酸塩等の形態で保持することができる任意の材料を包含することを意図するものであり、「保持」という語は「吸着」又は「吸蔵」を包含するものである。
【0029】
本発明によれば、NOx保持物質としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)などのアルカリ金属、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)などのアルカリ土類金属、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、ジスプロシウム(Dy)、イッテルビウム(Yb)などの希土類元素の化合物、及びそれらの化合物の組み合わせを挙げることができる。このような化合物としては、上記金属の炭酸塩、硝酸塩、酸化物等が挙げられる。
【0030】
基材上に上層と下層からなる2層構造の第1触媒層と第2触媒層を有する本発明の排ガス浄化用触媒は、当業者に公知の任意の方法によって製造することができる。
【0031】
例えば、まず、コージェライト等のハニカム基材上に触媒担体とRhを含む層が公知のウォッシュコート法等によってコートされ、その後、乾燥及び焼成することにより基材上に下層が形成される。なお、ウォッシュコート法を用いて触媒担体とRhを含む下層を形成する場合、例えば、触媒担体の層をウォッシュコート法によって形成した後、得られた触媒担体の層に公知の含浸法等によってRhを担持してもよいし、あるいはまた、予め含浸法等によってRhを担持した触媒担体の粉末を用いてウォッシュコートを行ってもよい。後者の方法によれば、ウォッシュコート後にRhを含浸担持する場合に比べてRhを触媒層中により均一に分散させて担持することができる。
【0032】
次いで、得られた下層の上に触媒担体とPt及び/又はPdを含む上層が形成される。本発明の排ガス浄化用触媒は、基材の排ガス上流部と排ガス下流部にそれぞれコートされる第1触媒層と第2触媒層の各上層でPdとPtの担持濃度が異なる。このような触媒層の製造においては、例えば、先に形成した下層の上に上層を構成する触媒担体の層をウォッシュコート法によって形成した後、第1触媒層に担持される量に応じた所定濃度のPdとPtの各金属塩を含む混合溶液を、上層の触媒担体層が形成された基材の上流部のみに含浸し、その後、乾燥及び焼成等することにより第1触媒層を形成し、次いで、同様にして基材下流部の第2触媒層にPdとPtを担持することができる。あるいはまた、排ガスの上流部と下流部でそれぞれ別々のハニカム基材を用意し、これら2つのハニカム基材に上記のウォッシュコート法や含浸法等によって第1触媒層と第2触媒層をそれぞれ形成して排ガスの上流側と下流側に配置してもよい。
【0033】
第1触媒層と第2触媒層がそれぞれ形成される基材の上流部と下流部の比は、所望とする排ガス浄化性能に応じて任意に決定することができる。例えば、上流部の割合を大きくするとPdの担持量が増加するので、得られる触媒の低温活性をより高めることができる。また、Pdは排ガス中のオレフィン系炭化水素の酸化に優れ、一方で、Ptはパラフィン系炭化水素の酸化に優れていることが一般に知られている。それゆえ、基材の上流部と下流部の比は、浄化すべき排ガスの組成等に応じて適宜決定すればよい。一般的には、基材の上流部と下流部の比は、1:10〜10:1の範囲とすることが好ましい。
【0034】
基材に対する上層及び下層のコート量についても同様に、所望とする排ガス浄化性能に応じて任意に決定することができ、例えば、100〜350g/基材−L(基材1リットル当たり)の量でコートすることができる。また、Pt、Pd及びRhの各触媒金属は、例えば、1〜10g/基材−Lの担持量において上層及び下層にそれぞれ担持することができる。
【0035】
上記のようにして基材上に下層と上層を形成した後、NOx保持物質を構成する金属の塩、例えば、酢酸塩又は硝酸塩等を所定の濃度で含有する溶液を用いて公知の含浸法等によりNOx保持物質を触媒層に担持することができる。NOx保持物質は、例えば、0.2〜1.0mol/基材−Lの担持量において触媒層に担持することができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
本実施例では、下層にRhを担持し、上層にPdを担持した第1触媒層と、下層にRhを担持し、上層にPtを担持した第2触媒層とを有する排ガス浄化用触媒を調製し、そのNOx浄化性能及びNOx吸蔵能について調べた。
【0038】
[実施例1]
基材として、直径130mm、長さ77.5mmのコージェライト製ハニカム基材(1.0リットル)を用意した。
【0039】
まず、ZrO2−Al23−TiO2の複合金属酸化物粉末(ZrO2:Al23:TiO2=3:8:1(重量比))に硝酸ロジウム水溶液を含浸させて200℃で乾燥して水分を除去し、これを空気中450℃で2時間焼成してRh/ZrO2−Al23−TiO2の粉末Aを得た。
【0040】
次いで、得られた粉末A100gをイオン交換水1580gに分散させ、このイオン交換水にバインダー成分としてアルミナゾル320gを加えて撹拌しスラリーを調製した。次いで、得られたスラリーをウォッシュコート法によりハニカム基材にコートし、200℃で2時間乾燥した後、空気中400℃で4時間焼成し、ハニカム基材のセル表面にコート量210g/基材−L(厚さ58μm)の下層を形成した。なお、Rhの担持量は0.4g/基材−Lであった。
【0041】
次に、Al23−CeO2の複合金属酸化物粉末(Al23:CeO2=70:30(重量比))100gをイオン交換水1580gに分散させ、このイオン交換水にバインダー成分としてアルミナゾル320gを加えて撹拌しスラリーを調製した。次いで、得られたスラリーを下層が形成されたハニカム基材上にウォッシュコート法によりコートし、200℃で2時間乾燥した後、空気中400℃で4時間焼成し、下層上にコート量60g/基材−L(厚さ22μm)の上層を形成した。
【0042】
次に、上層を形成したハニカム基材に所定濃度の硝酸パラジウム水溶液を含浸させて200℃で2時間乾燥した後、空気中400℃で4時間焼成し、ハニカム基材のセル表面に第1触媒層を形成した。なお、Pdの担持量は0.64g/基材−Lであった。
【0043】
次に、第1触媒層が形成されたハニカム基材に、酢酸カリウム(CH3COOK)、酢酸バリウム((CH3COO)2Ba)及び酢酸リチウム(CH3COOLi)を溶解した水溶液を含浸し、200℃で2時間乾燥した後、空気中450℃で2時間焼成して、基材1リットル当たりK、Ba及びLiを合計で0.45mol担持した。こうして得られた触媒を上流部触媒とした。
【0044】
次に、別の同じハニカム基材を用意し、上と同様にして下層及び上層を形成した後、当該ハニカム基材に所定濃度のジニトロジアンミン白金硝酸水溶液を含浸させて200℃で2時間乾燥した後、空気中400℃で4時間焼成し、ハニカム基材のセル表面に第2触媒層を形成した。なお、Ptの担持量は2.0g/基材−Lであった。次いで、第2触媒層が形成されたハニカム基材に、上と同様にして、基材1リットル当たりK、Ba及びLiを合計で0.45mol担持した。こうして得られた触媒を下流部触媒とした。
【0045】
排ガスの上流側から上流部触媒、下流部触媒となるよう配置したものを本発明の排ガス浄化用触媒とした。
【0046】
[比較例1]
基材として、直径130mm、長さ155mmのコージェライト製ハニカム基材(2.0リットル)を用意した。
【0047】
実施例1で調製した粉末A100gをイオン交換水1580gに分散させ、このイオン交換水にバインダー成分としてアルミナゾル320gを加えて撹拌しスラリーを調製した。次いで、得られたスラリーをウォッシュコート法によりハニカム基材にコートし、200℃で2時間乾燥した後、空気中400℃で4時間焼成し、ハニカム基材上にコート量270g/基材−L(厚さ100μm)の触媒層を形成した。なお、Rhの担持量は0.4g/基材−Lであった。
【0048】
次いで、触媒層を形成したハニカム基材に所定濃度のジニトロジアンミン白金硝酸水溶液を含浸させて200℃で2時間乾燥した後、空気中400℃で4時間焼成し、触媒層にPtを担持した。なお、Ptの担持量は2.0g/基材−Lであった。
【0049】
次いで、上記の触媒層を有するハニカム基材に、実施例1と同様にして基材1リットル当たりK、Ba及びLiを合計で0.45mol担持し、1層構造の触媒層を有する排ガス浄化用触媒を得た。
【0050】
[比較例2]
実施例1の2倍長さのハニカム基材を使用したこと以外は、実施例1の下流部触媒の調製方法と同様にして、下層にRhを担持し、上層にPtを担持した2層構造の触媒層を有する排ガス浄化用触媒を得た。
【0051】
[NOx浄化性能の評価]
上で調製した各排ガス浄化用触媒について、それらのNOx浄化性能を評価した。試験は、排気量3.5リットルのガソリンエンジンからの排ガスを各排ガス浄化用触媒に供給し、触媒出口側における排ガス中のNOx量を測定することにより行った。その結果を図3に示す。
【0052】
図3は、実施例及び比較例の各排ガス浄化用触媒に関するNOx浄化率を示すグラフである。図3から明らかなように、1層構造の触媒層を有する比較例1の排ガス浄化用触媒に対し、PtとRhをそれぞれ上層と下層に分離して担持した2層構造の触媒層を有する比較例2の排ガス浄化用触媒においてそのNOx浄化率が大きく向上した。また、下層にRhを担持し、上層にPdを担持した排ガス上流側の第1触媒層と、下層にRhを担持し、上層にPtを担持した排ガス下流側の第2触媒層とを有する本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1)では、比較例2の排ガス浄化用触媒よりもさらにNOx浄化率を向上させることができた。
【0053】
[NOx吸蔵能の評価]
上で調製した各排ガス浄化用触媒について、それらのNOx吸蔵能を評価した。試験は、排気量3.5リットルのガソリンエンジンからの排ガスを70g/sの速度で各排ガス浄化用触媒に供給し、触媒出口側における排ガス中のNOx量を測定することにより行った。試験開始当初は排ガス中のNOxは触媒によって吸蔵されるので、触媒出口側での排ガス中のNOx量はゼロである。しかしながら、そのNOx吸蔵量が触媒の飽和吸蔵量に近づくにつれて触媒出口側での排ガス中のNOx量が増加する。この触媒出口側のNOx量が触媒入口側のNOx量とほぼ同じ値になるまでの時間、すなわち、各排ガス浄化用触媒のNOx吸蔵量が飽和に達するまでの時間を測定し、それまでに処理した排ガス量を各排ガス浄化用触媒のNOx吸蔵能として評価した。その結果を図4に示す。
【0054】
図4は、実施例及び比較例の各排ガス浄化用触媒に関するNOx吸蔵能を示すグラフである。なお、図4では、比較例1の排ガス浄化用触媒のNOx吸蔵能を100として、実施例1及び比較例2の各排ガス浄化用触媒のNOx吸蔵能を示している。
【0055】
図4から明らかなように、1層構造の触媒層を有する比較例1の排ガス浄化用触媒に対し、PtとRhをそれぞれ上層と下層に分離して担持した2層構造の触媒層を有する比較例2の排ガス浄化用触媒においてそのNOx吸蔵能が約1.6倍に向上した。一方、この比較例2の排ガス浄化用触媒の排ガス上流側に担持されるPtを低温活性の高いPdで置換した本発明の排ガス浄化用触媒では、比較例2の排ガス浄化用触媒よりもNOx吸蔵能が約1.5倍に向上した。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の排ガス浄化用触媒における触媒層の断面を示す模式図である。
【図2】本発明の排ガス浄化用触媒を示す斜視図である。
【図3】実施例及び比較例の各排ガス浄化用触媒に関するNOx浄化率を示すグラフである。
【図4】実施例及び比較例の各排ガス浄化用触媒に関するNOx吸蔵能を示すグラフである。
【符号の説明】
【0057】
10 排ガス浄化用触媒
11 基材
12 下層
13 上層
20 排ガス浄化用触媒
21 ハニカム基材
22 上流部
23 下流部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に排ガス上流側の第1触媒層と排ガス下流側の第2触媒層とを有し、前記第1及び第2触媒層がNOx保持物質を含み、それぞれRhを含む下層とPd及びPtを含む上層とを有し、Pdの濃度が前記第2触媒層よりも前記第1触媒層で高く、Ptの濃度が前記第1触媒層よりも前記第2触媒層で高いことを特徴とする、排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
Pdが前記第1触媒層にのみ担持され、Ptが前記第2触媒層にのみ担持されたことを特徴とする、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−101252(P2009−101252A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272800(P2007−272800)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000104607)株式会社キャタラー (161)
【Fターム(参考)】