説明

排ガス浄化装置及びその製造方法

【課題】排ガス浄化装置の排気通路の湾曲部においてフィルタに流れる排ガスの流れを均一化するとともにフィルタの変形を防止する。
【解決手段】本発明の排ガス浄化装置(1)は、排ガスが流れる湾曲部(15)を有する排気通路(11)と、排気通路(11)の内部であって湾曲部(15)に設けられ、金属繊維、セラミック繊維、発泡金属及び発泡セラミックのうち1つ以上から構成されて排ガスを浄化する1つ以上のフィルタ(13)と、排気通路(11)の内部であってフィルタ(13)より上流側に設けられ、排ガスを整流するとともに排ガスの圧力を低減する整流減圧手段(12)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される排ガス浄化装置とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の排ガス浄化装置として、平板と波板とを交互に重ねたものを平板が外側となるように多重に巻回することでハニカム構造とし、平板と波板との間の排ガス通路に触媒を担持させたものが知られている。しかし、ハニカム構造は湾曲させると通路の一部がつぶれるので湾曲部への搭載が困難であり、形状の自由度が小さい。
【0003】
そこで、短く切断した金属性ハニカム体を多数排気管中に充填することで湾曲部へ搭載可能とした技術が特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特許第3118519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の技術では湾曲部においてハニカム構造体と排気管の内壁との間に隙間が生じるので、これにより排ガスが当該隙間を通って下流へと流れ排ガスの浄化性能が低下する。そこで、ハニカム構造体の代わりに発泡金属、発泡セラミック、金属繊維の圧縮体又はセラミック繊維の圧縮体をフィルタ材として排気管の内部に充填したものが知られている。
【0005】
しかし、繊維圧縮体は排ガスの圧力により変形する場合がある。また変形を防止するため密度を高めて強度を持たせると排ガスの通気抵抗が大きくなるので排ガスの浄化性能が低下する。さらに、排気管の湾曲部では排ガスの流速分布が均一ではないので排ガスがフィルタ材に対して不均一に流れて排ガスの浄化性能が低下する。
【0006】
本発明は、排ガス浄化装置の排気通路の湾曲部においてフィルタに流れる排ガスの流れを均一化するとともにフィルタの変形を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、排ガスが流れる湾曲部を有する排気通路と、排気通路の内部であって湾曲部に設けられ、金属繊維、セラミック繊維、発泡金属及び発泡セラミックのうち1つ以上から構成されて排ガスを浄化する1つ以上のフィルタと、排気通路の内部であってフィルタより上流側に設けられ、排ガスを整流するとともに排ガスの圧力を低減する整流減圧手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、排気通路の内部であってフィルタの下流側と上流側とからフィルタを保持するフィルタ固定手段を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、フィルタ固定手段が、排気通路の内壁面から径方向内側へと全周にわたって隆起したリング状のリブを有することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、排気通路が、内径が下流側へ向けて段階的に縮径する段部を有し、フィルタ固定手段は段部に当接するように段部の上流側に配置されることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、フィルタ及び整流減圧手段のうち少なくとも一方は触媒を担持していることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、排ガスが流れる湾曲部を有する排気通路を備えた排ガス浄化装置の製造方法であって、金属繊維、セラミック繊維、発泡金属及び発泡セラミックのうち1つ以上から構成されて排ガスを浄化するフィルタを湾曲部に設けることと、フィルタより上流側に排ガスを整流するとともに排ガスの圧力を低減する整流減圧手段を設けることとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、排気通路の湾曲部に設けられるフィルタの上流側に排ガスを整流するとともに排ガスの圧力を低減する整流減圧手段を備えるので、排気通路の湾曲部においてフィルタに流れる排ガスの流れを均一化することができ、さらに排ガスの圧力を低減することができるのでフィルタの変形を防止することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、フィルタの下流側と上流側とからフィルタを保持するフィルタ固定手段を備えるので、排ガスの圧力によりフィルタが下流側へとずれることを防止できるとともに、排ガスの圧力によるフィルタの変形を防止することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、フィルタ固定手段が、排気通路の内壁面から径方向内側へと全周にわたって隆起したリング状のリブを有するので、排気通路の内壁面とフィルタとの隙間に排ガスが流れることを防止でき、排ガスの浄化能力の低下を防止することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、排気通路の内径が下流側へ向けて段階的に縮径する段部を有し、フィルタ固定手段を段部と当接するように段部の上流側に配置するので、フィルタ固定手段の位置決めが容易となり、また段部がフィルタ固定手段を支持するのでより確実にフィルタ及びフィルタ固定手段を保持することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、フィルタ及び整流減圧手段のうち少なくとも一方は触媒を担持しているので、PMに加えて排ガス中のNOx、HC、COなどを浄化することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、フィルタを湾曲部に設け、フィルタより上流側に排ガスを整流するとともに排ガスの圧力を低減する整流減圧手段を設けるので、排気通路の湾曲部においてフィルタに流れる排ガスの流れを均一化することができ、さらに排ガスの圧力を低減することができるのでフィルタの変形を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下では図面を参照して本発明の実施の形態について詳しく説明する。図1は本実施形態における排ガス浄化装置の構成を示す概略構成図である。図1(a)は縦断面図であり、図1(b)はフィルタ固定板を排気通路の軸方向から見た構成図である。
【0020】
排ガス浄化装置10は排気通路11と、ハニカム構造体12と、フィルタ13と、フィルタ固定板14とから構成される。排気通路11は湾曲部15を有し、この湾曲部15にはフィルタ固定板14が所定の間隔をあけて多数配設される。また排ガス浄化用のフィルタ13が隣接するフィルタ固定板14の間に密に充填される。
【0021】
フィルタ13は3次元網目構造体であり、図1(a)に示すように排気通路11の湾曲部15に複数個充填される。フィルタ13は、例えば発泡金属又は発泡セラミックなどの発泡材によって構成してもよいし、金属繊維又はセラミック繊維などの繊維材の圧縮体によって構成してもよい。またフィルタ13には例えば白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、セリウム(Ce)などの成分を含む触媒が担持される。
【0022】
フィルタ固定板14は、フィルタ13の最上流部及び最下流部と各フィルタ13の間とに設けられ、フィルタ13が排ガスの圧力によって下流側へずれることがないようフィルタ13を所定の位置に保持する。フィルタ固定板14は図1(b)に示すように多数の貫通孔16とせき止め部17とから構成される。貫通孔16はフィルタ固定板14の外周部を除く中央に多数配置され、これにより排気通路11を流れる排ガスはこの貫通孔16を貫流して下流へと流れることができる。せき止め部17は排気通路11の内壁面と接するフィルタ固定板14の外周部であって、排気通路11の内壁面から径方向内側へと全周にわたって隆起したリング状のリブとして形成される。これにより、排気通路11を流れる排ガスのうち排気通路11の内壁面近傍を流れる表層流れはこのせき止め部17によってせき止められ、中央の貫通孔16を貫流して下流へと流れる。よって、排気通路11の内壁面とフィルタ13との隙間に排ガスが流れても、フィルタ固定板14において中央よりの貫通孔16から下流へと流れるので、排ガスの浄化能力の低下を防止できる。
【0023】
ハニカム構造体12は、フィルタ13及びフィルタ固定板14の上流側に、最上流部のフィルタ固定板14と所定の間隔をあけて設けられる。ハニカム構造体12は、平板と波板とを交互に重ねたものを平板が外側となるように多重に巻回した構造体であり、ハニカム通路18が排ガスの流動方向と平行になるように設けられる。ハニカム構造体12はハニカム通路18を流れる排ガスを整流して排ガスの流速分布を排気通路11の径方向に均一化するとともに、排ガスの流速を低下させ排圧を低下させる。さらに、ハニカム構造体12は最上流部のフィルタ固定板14との間に所定の間隔を有するので、ハニカム構造体12によって整流及び減圧された排ガスを滞留させて下流に設けられるフィルタ13に均一に流すことができる。なお、ハニカム構造体12にもフィルタ13と同様に触媒を担持することで排ガスの浄化能力を向上させることができる。
【0024】
排ガス浄化装置10は以上のように構成され、排気通路11を流れる排ガス中のPMをフィルタ13によって捕捉することができるとともに、排ガス中のNOx、HC、COなどをフィルタ13やハニカム構造体12に担持された触媒の作用によって浄化することができる。
【0025】
次に上記排ガス浄化装置10の製造方法について説明する。初めに湾曲した排気通路11に最下流側のフィルタ固定板14を溶接などによって固定する。固定されたフィルタ固定板14の上流側へフィルタ13としての発泡材又は繊維材の圧縮体を充填する。なお、発泡材は予め湾曲した排気通路11の形状に合わせて発泡成形してから排気通路11に充填してもよいし、排気通路11に充填してから発泡させてもよい。
【0026】
さらにフィルタ固定板14を排気通路11の上流側から挿入し、既に充填されているフィルタ13に接する位置に溶接などによって固定する。フィルタ13とフィルタ固定板14とを上記のように交互に配置していき、最後に最上流側のフィルタ固定板14を固定する。
【0027】
さらに最上流側のフィルタ固定板14より上流側に当該フィルタ固定板14と所定の間隔をあけてハニカム構造体12を溶接などによって固定する。
【0028】
以上のように本実施形態では、排気通路11の湾曲部15に設けられるフィルタ13の上流側にハニカム構造体12を備えるので、排気通路11の湾曲部15においてフィルタ13に流れる排ガスの流れを均一化することができ、これにより排気通路11の湾曲部15であってもフィルタ13を効率よく使用することができる。さらにハニカム構造体12によって排ガスの圧力が低減されるのでフィルタ13の変形を防止することができ、これによりフィルタ13の密度を小さくしても強度を保つことができ、フィルタ13の有効表面積が増大して排ガスの浄化性能を向上させることができる。
【0029】
また、フィルタ固定板14によってフィルタ13の下流側と上流側とからフィルタ13を保持するので、排ガスの圧力によりフィルタ13が下流側へとずれることを防止できるとともに、排ガスの圧力によるフィルタ13の変形をより確実に防止することができる。
【0030】
さらに、フィルタ固定板14が外周部にせき止め部17を有し、せき止め部17がリング状のリブとして形成されるので、排気通路11の内壁面近傍における表層流れをせき止めて中央へと寄せることができ、排気通路11の内壁面とフィルタ13との隙間に排ガスが流れることを防止して排ガスの浄化能力の低下を防止することができる。
【0031】
さらに、フィルタ13及びハニカム構造体12は触媒を担持しているので、PMに加えて排ガス中のNOx、HC、COなどを浄化することができる。
【0032】
さらに、排気通路11の湾曲部15にフィルタ13を充填し、フィルタ13より上流側にハニカム構造体12を設けるので、排気通路11の湾曲部15においてフィルタ13に流れる排ガスの流れを均一化することができ、さらに排ガスの圧力を低減することができるのでフィルタ13の変形を防止することができる。
【0033】
以上説明した実施形態に限定されることなく、その技術的思想の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
【0034】
例えば、本実施形態ではフィルタ固定板14を溶接などによって排気通路11の内壁に固定しているが、図2に示すように排気通路11を下流へ向けて順に縮径するように複数の段部19を設けた構造とし、フィルタ固定板14を当該段部19と当接するように段部19の上流側に固定してもよい。これにより、フィルタ固定板14の位置決めが容易となり、またフィルタ固定板14が段部に支持されるのでより確実にフィルタ13及びフィルタ固定板14を保持することができる。
【0035】
また、本実施形態ではフィルタ13及びフィルタ固定板14を排気通路11へ順に充填して排ガス浄化装置1を製造しているが、排気通路11を縦方向に半割りにし、半割り状の一方の排気通路11にフィルタ13及びフィルタ固定板14を配設してから他方の半割り状の排気通路11と接合することで排ガス浄化装置1を製造してもよい。
【0036】
さらに、本実施形態ではハニカム構造体12を用いて排ガスの整流及び減圧を行っているが、同様の作用をもたらすものであればハニカム構造以外の構造であってもよい。
【0037】
さらに、本実施形態ではフィルタ固定板14を多数の貫通孔16を有する金属板として説明したが、フィルタ13を固定しながら排気通路11の内壁面とフィルタ13との隙間から排ガスが下流側へと流れることを防止できる構造であればよく、例えばリング状のリブのみによって構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施形態における排ガス浄化装置の構成を示す概略構成図である。
【図2】別実施形態における排ガス浄化装置の構成を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0039】
10 排ガス浄化装置
11 排気通路
12 ハニカム構造体
13 フィルタ
14 フィルタ固定板
15 湾曲部
17 せき止め部
19 段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスが流れる湾曲部(15)を有する排気通路(11)と、
前記排気通路(11)の内部であって前記湾曲部(15)に設けられ、金属繊維、セラミック繊維、発泡金属及び発泡セラミックのうち1つ以上から構成されて排ガスを浄化する1つ以上のフィルタ(13)と、
前記排気通路(11)の内部であって前記フィルタ(13)より上流側に設けられ、排ガスを整流するとともに排ガスの圧力を低減する整流減圧手段(12)とを備えることを特徴とする排ガス浄化装置(10)。
【請求項2】
前記排気通路(11)の内部であって前記フィルタ(13)の下流側と上流側とから前記フィルタ(13)を保持するフィルタ固定手段(14)をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化装置(10)。
【請求項3】
前記フィルタ固定手段(14)は、前記排気通路(11)の内壁面から径方向内側へと全周にわたって隆起したリング状のリブ(17)を有することを特徴とする請求項2に記載の排ガス浄化装置(10)。
【請求項4】
前記排気通路(11)は内径が下流側へ向けて段階的に縮径する段部(19)を有し、前記フィルタ固定手段(14)は前記段部(19)と当接するように前記段部(19)の上流側に配置されることを特徴とする請求項2又は3に記載の排ガス浄化装置(10)。
【請求項5】
前記フィルタ(13)及び前記整流減圧手段(12)のうち少なくとも一方は触媒を担持していることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の排ガス浄化装置(10)。
【請求項6】
排ガスが流れる湾曲部(15)を有する排気通路(11)を備えた排ガス浄化装置(10)の製造方法であって、
金属繊維、セラミック繊維、発泡金属及び発泡セラミックのうち1つ以上から構成されて排ガスを浄化するフィルタ(13)を前記湾曲部に設けることと、
前記フィルタ(13)より上流側に排ガスを整流するとともに排ガスの圧力を低減する整流減圧手段(12)を設けることとを含むことを特徴とする排ガス浄化装置(10)の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−112346(P2010−112346A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287865(P2008−287865)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】