説明

排ガス浄化装置

【課題】滅菌装置等から導出された排ガス中の窒素酸化物を簡単な構成で効果的に除去することができる排ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】高濃度の窒素酸化物を含むガスを使用して所定の処理を行う処理装置1の排ガスを浄化する排ガス浄化装置50であって、還元ガスを供給する還元ガス供給部53と、当該還元ガス供給部53から供給された還元ガスをプラズマ化するとともに、前記処理装置1から導出された排ガス中の窒素酸化物と反応させることにより窒素酸化物を還元して無害化するプラズマ反応部(プラズマノズル31)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度の窒素酸化物を含むガスを使用して所定の処理を行う処理装置の排ガスを浄化する排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、プラズマ発生器により生成したプラズマ状の希ガス等からなる殺菌因子を、密閉チャンバ内に配置された医療用器具や食品包装材等の被処理物に接触させることにより、被処理物を高度に滅菌するように構成された滅菌装置において、前記密閉チャンバからの排ガス中に残存する殺菌因子による環境への影響を低減するための排ガス浄化装置を設けることが行われている。
【0003】
また、特許文献2に示すように、燃焼炉から排出される燃焼ガスから窒素酸化物(NOx)を除去する脱硝システムおいて、脱硝性能を備えた触媒に還元剤としてアンモニア(NH)を注入し、アンモニアと前記燃焼ガス中の窒素酸化物とを反応させる選択接触還元法(所謂SCR法)により、大気中に排出される窒素酸化物量を極力低減することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3106695号公報
【特許文献2】特開2000−70676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された滅菌装置用の殺菌因子として二酸化窒素ガスを使用する場合、二酸化窒素を排ガス浄化装置に導入すると共に、排ガス浄化装置にオゾン(O)を供給し、これらを反応させることにより生成された硝酸(HNO)を吸着フィルタで吸着する構成を採用すれば、滅菌装置から排出される排ガス中の窒素酸化物濃度を効果的に低下することが可能である。しかし、前記の構成を備えた排ガス浄化装置では、オゾンを供給するための高価なオゾン発生手段(オゾナイザ)が必要であり、製造コストが高くなることが避けられない。
【0006】
一方、特許文献2に開示されたSCR法により排ガス中の窒素酸化物(NOx)を除去するように構成した場合には、前記オゾナイザを使用したものに比べて装置の製造コストを安価に抑えることが可能である。しかし、前記SCR法は、排ガス中における窒素酸化物の濃度が例えば数百ppm程度である場合に、充分なNOx除去効果が得られるものである。これに対して滅菌装置からは、極めて高濃度、例えば数万ppm程度の窒素酸化物を含む排ガスが排出されるため、高濃度の窒素酸化物をSCR法により充分に除去することは困難であった。
【0007】
本発明は、前記の点に鑑み、高濃度の窒素酸化物を含むガスを使用する処理装置から導出された排ガス中の窒素酸化物を簡単な構成で効果的に除去することができる排ガス浄化装置を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成する本発明の一つの局面に係る排ガス浄化装置は、高濃度の窒素酸化物を含むガスを使用して所定の処理を行う処理装置の排ガスを浄化するものであって、還元ガスを供給する還元ガス供給部と、当該還元ガス供給部から供給された還元ガスをプラズマ化するとともに、前記処理装置から導出された排ガス中の窒素酸化物と反応させることにより窒素酸化物を還元して無害化するプラズマ反応部とを備えることを特徴とする(請求項1)。
【0009】
この構成によれば、排ガス浄化装置の製造コストが高くなることを防止しつつ、処理装置から極めて高濃度の窒素酸化物を含む排ガスが排出された場合においても、この排出ガス中の窒素酸化物を効率よく還元して無害化した状態で排出することが可能となる。
【0010】
前記構成において、プラズマ反応部は、還元ガス供給部から供給された水素ガスからなる還元ガスをプラズマ化するとともに、排ガス中の窒素酸化物とを反応させることにより窒素酸化物を還元し、当該還元反応により生成されたアンモニアを吸着するアンモニアフィルタを備える構成とすることができる(請求項2)。
【0011】
この構成によれば、排ガス中の窒素酸化物を効果的に還元して無害化できると共に、この還元反応により生成されたアンモニアが外部に排出されるのを確実に防止することが可能となる。
【0012】
前記構成において、前記処理装置は、被処理物に二酸化窒素を反応させて該被処理物の滅菌を行う処理部と、空気が導入される密閉空間を有する貯留部と、当該貯留部内の空気をプラズマ化して窒素酸化物を生成するプラズマ発生部と備え、当該プラズマ発生部を排ガス浄化用のプラズマ反応部として利用する構成とすることが望ましい(請求項3)。
【0013】
この構成によれば、滅菌用の窒素酸化物を生成するためのプラズマ発生部に、排ガス浄化装置用のプラズマ反応部としての機能を兼ね備えさせることができるため、装置の構造を効果的に簡略化して小型化できるという利点がある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、処理装置から極めて高濃度の窒素酸化物を含む排ガスが排出された場合においても、排ガス中の窒素酸化物を効果的に除去して無害化できると共に、オゾナイザを使用するものに比べて製造コストが高価になるのを防止できる排ガス浄化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る排ガス浄化装置を備えた処理装置の一例を示すブロック図である。
【図2】マイクロ波供給装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】導波管に取り付けられた状態のプラズマノズルを示す断面図である。
【図4】NO変換部の詳細構成を示すブロック図である。
【図5】排ガス浄化装置の構成を示す詳細説明図である。
【図6】処理装置の電気的な制御系を示すブロック図である。
【図7】処理装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図8】ポンプの制御状態を示す表形式の図である。
【図9】電磁弁の制御状態を示す表形式の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る排ガス浄化装置50を備えた処理装置1の一例を示している。この処理装置1は、例えばメス、鉗子、カテーテル等の医療用器具や、包装シート、トレイ、ボトル等の食品包装材を被処理物とし、これらに滅菌ガスを作用させて滅菌処理を施すための装置である。本実施形態では、滅菌ガスとして二酸化窒素(NO)を用いる例を示す。
【0017】
処理装置1は、メインチャンバ(処理部)11、サブチャンバ(貯留部)12、吸気系統20、循環系統30及び連係系統40と、本発明に係る排ガス浄化装置50とを有している。これら系統20〜40及び排ガス浄化装置50の適所には、第1〜第8電磁弁V1〜V8と、第1ポンプP1〜第4ポンプP4とが配置されている。
【0018】
メインチャンバ11は、被処理物が収容される密閉空間を提供するチャンバであり、例えばステンレス鋼等で構成され、高度の真空引きに対応できる耐圧構造を備えた大容量のチャンバである。図示は省略しているが、メインチャンバ11には被処理物を搬入出するためのドアが備えられ、その内部には、被処理物を積載するための処理トレイが備えられている。
【0019】
メインチャンバ11には、滅菌ガスの濃度を計測する第1濃度センサ111と、チャンバ内の圧力を検出する第1圧力センサ112とが備えられている。第1濃度センサ111は、滅菌ガスとしての二酸化窒素(NO)の濃度を計測するもので、滅菌処理後にメインチャンバ11内のガスを排気するに当たり、この第1濃度センサ111の計測値が参照される。第1圧力センサ112は、メインチャンバ11内の減圧状態を計測するセンサである。この他、温度センサ、湿度センサ、或いはオゾンセンサ等の各種物理量センサを備えた構成としてもよい。
【0020】
サブチャンバ12は、滅菌ガスを生成するためのチャンバであり、例えばステンレス鋼等で構成され、メインチャンバ11と同様に、高度の真空引きに対応できる耐圧構造を備えた比較的小容量のチャンバである。後述するように、サブチャンバ12内において常圧下で所定濃度のNOガスが生成され、減圧下にあるメインチャンバ11内に当該NOガスが導入される。
【0021】
サブチャンバ12内にも、NO濃度を計測する第2濃度センサ121と、チャンバ内の圧力を検出する第2圧力センサ122とが備えられている。第2濃度センサ121の計測値は、例えばNOガスをメインチャンバ11へ導入する前に、サブチャンバ12内で所定濃度のNOガスが生成されているか否かを確認するために参照される。
【0022】
吸気系統20は、サブチャンバ12、若しくはサブチャンバ12及びメインチャンバ11の双方に乾燥した外気(空気)を導入させるための配管系統である。吸気系統20は、第1ポンプP1、エアドライヤ21、湿度センサ22、第1電磁弁V1、第1常圧配管201及び第1真空配管202を含む。第1常圧配管201は、第1ポンプP1と第1電磁弁V1との間を接続する配管であり、その経路中にエアドライヤ21及び湿度センサ22が配置されている。第1真空配管202は、第1電磁弁V1とサブチャンバ12との間を接続している。
【0023】
第1ポンプP1は、減圧状態にあるサブチャンバ12、若しくはサブチャンバ12及びメインチャンバ11の双方を常圧に戻すときに動作されるポンプである。第1ポンプP1は、外気を吸入し、第1常圧配管201及び第1真空配管202を介してサブチャンバ12内に外気を送り込む。エアドライヤ21は、外気に含まれる水分を除去するもので、例えば電熱ヒータを備えた乾燥装置が適用される。このエアドライヤ21を通過した空気は、ほぼ湿度がゼロとなる。湿度センサ22は、第1常圧配管201内を流通する空気の湿度を検出する。この湿度センサ22は、専らエアドライヤ21の故障検知のために用いられる。
【0024】
第1電磁弁V1は、第1ポンプP1の稼働時に連動して「開」とされるバルブである。すなわち、第1電磁弁V1は、メインチャンバ11及びサブチャンバ12を含む系統を、外気圧と遮断する必要があるときに「閉」とされ、これを常圧に復帰させるときに「開」とされる。このため、第1電磁弁V1よりも吸気方向下流側は、真空引きに耐性を有する第1真空配管202が用いられている。
【0025】
循環系統30は、主に吸気系統20によりサブチャンバ12に導入された乾燥空気をプラズマで電離して、滅菌ガスとしてのNOガスを生成する際に稼働される系統である。循環系統30は、第2電磁弁V2、第3電磁弁V3、プラズマノズル31、ガス流量計32、第2ポンプP2、NO変換部33、第2真空配管301、第3真空配管302、及び第2常圧配管303を含む。
【0026】
第2真空配管301の一端側はサブチャンバ12内に連通し、他端側は第2電磁弁V2を介して第2常圧配管303の一端側に接続されている。第3真空配管302の一端側はサブチャンバ12内に連通し、他端側は第3電磁弁V3を介して第2常圧配管303の他端側に接続されている。これにより、サブチャンバ12と連通する、第2真空配管301の一端側を起点として第3真空配管302の一端側に戻るループ管路が形成されている。本実施形態では、第2真空配管301側が、当該ループ管路内を流れる空気流の上流側となる。第2常圧配管303に対して、上流側から順にプラズマノズル31、ガス流量計32、第2ポンプP2及びNO変換部33が配置されている。
【0027】
第2電磁弁V2及び第3電磁弁V3は、サブチャンバ12が減圧状態にあるときに「閉」とされ、後述する常圧状態でのNOガスの生成時に「開」とされる弁である。このため、第2電磁弁V2及び第3電磁弁V3とサブチャンバ12とを接続する配管として、第2真空配管301及び第3真空配管302が適用されている。
【0028】
プラズマノズル31は、プラズマ(電離気体)を発生させるための電界集中部を提供する。第2常圧配管303を流通する空気(窒素及び酸素を含むガス)は、プラズマノズル31の前記電界集中部を通過することで電離され、二酸化窒素(NO)ガスや一酸化窒素(NO)ガスを含む窒素酸化物(NOx)ガスに変換される。このようなプラズマを発生させるために、本実施形態では、マイクロ波エネルギーが用いられている。当該マイクロ波エネルギーは、マイクロ波供給装置60からプラズマノズル31に与えられる。
【0029】
図2は、マイクロ波供給装置60の構成を概略的に示すブロック図である。マイクロ波供給装置60は、マイクロ波エネルギーを発生すると共に、これをプラズマノズル31に供給するための装置であって、マイクロ波を発生するマイクロ波発生装置61と、前記マイクロ波を伝搬させる導波管62とを含む。この導波管62には、プラズマノズル31が取り付けられている。また、マイクロ波発生装置61と導波管62との間には、アイソレータ63、カプラ64及びチューナ65が備えられている。
【0030】
マイクロ波発生装置61は、例えば2.45GHzのマイクロ波を発生するマグネトロン等のマイクロ波発生源と、このマイクロ波発生源にて発生したマイクロ波の強度を所定の出力強度に調整するアンプとを含む。本実施形態では、例えば1W〜3kWのマイクロ波エネルギーを出力できる連続可変型のマイクロ波発生装置61が好適に用いられる。
【0031】
導波管62は、アルミニウム等の非磁性金属からなり、断面矩形の長尺管状を呈し、マイクロ波発生装置61により発生されたマイクロ波を、その長手方向に伝搬させる。導波管62の遠端側には、スライディングショート621がフランジ部622を介して取り付けられている。スライディングショート621は、マイクロ波の反射位置を変化させて定在波パターンを調整するための部材である。
【0032】
アイソレータ63は、導波管62からの反射マイクロ波のマイクロ波発生装置61への入射を抑止する機器であり、サーキュレータ631とダミーロード632とを含む。サーキュレータ631は、マイクロ波発生装置61で発生されたマイクロ波を導波管62に向かわせる一方で、反射マイクロ波をダミーロード632に向かわせる。ダミーロード632は、反射マイクロ波を吸収して熱に変換する。カプラ64は、マイクロ波エネルギーの強度を計測する。チューナ65は、導波管62に突出可能なスタブを含み、反射マイクロ波が最小となるような調整、つまりプラズマノズル31でのマイクロ波エネルギーの消費が最大となる調整を行うための機器である。カプラ64は、この調整の際に利用される。
【0033】
図3は、導波管62に取り付けられた状態のプラズマノズル31を示す断面図である。プラズマノズル31は、中心導体311、外部導体312、スペーサ313及び保護管314を備えている。中心導体311は、良導電性の金属から構成された棒状部材からなり、その上端部311B側の部分が導波管62の内部に所定長さだけ突出している。この突出した上端部311Bは、導波管62内を伝搬するマイクロ波を受信するアンテナ部として機能する。
【0034】
外部導体312は、良導電性の金属から構成され、中心導体311を収納する筒状空間312H(プラズマ発生空間)を有する筒状体である。中心導体311は、この筒状空間312Hの中心軸上に配置されている。外部導体312は、導波管62の下面板に一体的に取り付けられた円筒型の金属フランジ板623に嵌め込まれ、ネジ624で締め付けられることにより、導波管62に固定されている。導波管62がアース電位とされる結果、外部導体312もアース電位とされる。
【0035】
また、外部導体312は、その外周壁から筒状空間312Hに貫通するガス供給孔312Nを有する。このガス供給孔312Nには、第2常圧配管303の上流側が接続されている。他方、筒状空間312Hの下端部には、絶縁性の配管315が接続されている。なお、この配管315は、第2常圧配管303の一部を構成する。これにより、第2常圧配管303内を流通する気体は、筒状空間312H内を経由することになる。
【0036】
スペーサ313は、中心導体311を保持すると共に、導波管62内の空間と筒状空間312Hとの間をシールする。スペーサ313としては、例えばポリテトラフルオロエチレン等の耐熱性樹脂材料やセラミック等からなる絶縁性部材を用いることができる。外部導体312の筒状空間312Hの上端部分には段差部が設けられ、当該段差部でスペーサ313が支持されている。スペーサ313で保持された中心導体311は、外部導体312とは絶縁された状態となる。保護管314は、所定長さの石英ガラスパイプ等からなり、外部導体312の下端縁312Tにおける異常放電(アーキング)を防止するために、筒状空間312Hの下端部分に嵌め込まれている。
【0037】
前記のように構成されたプラズマノズル31によれば、中心導体311が導波管62を伝搬するマイクロ波を受信すると、アース電位の外部導体312との間に電位差が生じる。特に、中心導体311の下端部311Tと外部導体312の下端縁312Tとの近傍に電界集中部が形成されるようになる。かかる状態で、ガス供給孔312Nから酸素分子と窒素分子とを含むガス(空気)が筒状空間312Hへ供給されると、ガスが励起されて中心導体311の下端部311T付近においてプラズマ(電離気体)が発生する。当該プラズマは、NOxとフリーラジカルを含んでいる。また、このプラズマは、電子温度が数万度であるものの、ガス温度は外界温度に近い反応性プラズマ(中性分子が示すガス温度に比較して、電子が示す電子温度が極めて高い状態のプラズマ)であって、常圧下で発生するプラズマである。
【0038】
図1に戻って、ガス流量計32は、第2常圧配管303内を流通する気体の流量を計測する。第2ポンプP2は、NOガスの生成時に、サブチャンバ12と循環系統30のループ管路とで構成される一つの空間内において、ガスを循環させるためのポンプである。プラズマノズル31が動作している状態で第2ポンプP2が稼働されると、プラズマを発生させる筒状空間312Hを繰り返しガスが通過し、徐々にNO濃度が上昇してゆくことになる。第2ポンプP2は、NOx等に耐性を持つ耐薬品性のポンプが用いられる。
【0039】
NO変換部33は、プラズマノズル31からなるプラズマ発生部を通過し、様々な物質を含んだ状態のガスから、NOを抽出する機能を有する。図4は、NO変換部33の詳細構成を示すブロック図である。NO変換部33は、プラズマノズル31から送り出されるガス中から硝酸(HNO)を吸着するフィルタ331と、フィルタ331を通過したガス中のNOxを一酸化窒素(NO)に変換する第1変換部332と、続いてそのNOをNOに変換する第2変換部333とを備えている。
【0040】
プラズマノズル31において空気が電離されると、NO(一酸化窒素)、O(オゾン)が生成される。これらは次式に反応により段階的に酸化され、最終的にはエアドライヤ21で除去しきれずに僅かに残存する水分との反応により一部がHNO(硝酸)に転換する。
【0041】
NO+O→NO+O
2NO+O→N+O
+HO→2HNO
フィルタ331は、前記の反応で生成されるHNOを吸着する機能を有している。このフィルタ331としては、例えばセラミック製のハニカム構造を備えた基材に、硝酸吸着性のコーティング層を施したフィルタを用いることができる。硝酸吸着性のコーティング層としては、例えばゼオライト、アルミナ、シリカゲル等の珪素吸着剤を用いることができる。
【0042】
第1変換部332は、フィルタ331を通過したガスに含まれる、NO以外のNOxをNOに変換する。第1変換部332としては、例えばセラミック製のハニカム構造を備えた基材に、白金やパラジウム等を含有するコーティング層が形成された触媒と、当該触媒の温度を調整するヒータとを備えた触媒装置を用いることができる。
【0043】
第2変換部333は、第1変換部332を通過したガス中に含まれるNOをNOに変換する。第2変換部333としては、同様に、セラミック製のハニカム構造を備えた基材に、白金やパラジウム等を含有するコーティング層が形成された触媒と、当該触媒の温度(第1変換部332の触媒とは異なる温度)を調整するヒータとを備えた触媒装置を用いることができる。
【0044】
次に、連係系統40は、メインチャンバ11とサブチャンバ12との間を連通させるための系統である。連係系統40は、第4電磁弁V4、第5電磁弁V5、第3ポンプP3、第4真空配管401及び第5真空配管402を含む。
【0045】
第4真空配管401の一端(上流端)はサブチャンバ12に接続され、他端(下流端)はメインチャンバ11に接続されている。この第4真空配管401の上流側に第3ポンプP3が配置され、下流側に第4電磁弁V4が配置されている。第3ポンプP3は、耐薬品性のポンプであって、サブチャンバ12を真空引きする際、サブチャンバ12からNOガスをメインチャンバ11に導入(循環)して滅菌処理を行う際、及びメインチャンバ11内を排出して無害化処理する際にそれぞれ動作する。第4電磁弁V4は、この第3ポンプP3が動作する際に「開」とされる弁である。
【0046】
第5真空配管402の一端側(上流端)はメインチャンバ11に接続され、他端側(下流端)はサブチャンバ12に接続されている。第5電磁弁V5は、第5真空配管402に取り付けられている。この第5電磁弁V5は、滅菌処理を行う際、メインチャンバ11及びサブチャンバ12を常圧に復帰させる際に「開」とされる弁である。
【0047】
処理装置1は、滅菌処理に用いたNOガスを無害化した後に外部に排出する排ガス浄化装置50を備えている。排ガス浄化装置50は、図5に示すように、メインチャンバ11に接続された第1、第2排出管51、52と、第1排出管51に設けられた第6電磁弁V6及び第4ポンプP4と、水素ガス(H)等を含有する還元ガスを前記プラズマノズル31のプラズマ発生空間に供給する還元ガス供給部53と、第2排出管52に設けられた天然ゼオライト等からなるアンモニアフィルタ54及び第7、第8電磁弁V7、V8とを有している。
【0048】
第1排出管51に配設された第6電磁弁V6は、メインチャンバ11及びサブチャンバ12の減圧時に「開」とされる弁である。第1排出管51は、第6電磁弁V6の設置部よりも上流側部分が真空配管とされると共に、その下流側部分が常圧配管とされている。第1排出管51の下流端には、メインチャンバ11及びサブチャンバ12を真空引きすると共に排気時に排ガスを外気に放出する真空ポンプからなる第4ポンプP4が配設されている。
【0049】
第2排出管52は、第7電磁弁V7の設置部よりも上流側に位置する真空配管521と、第7電磁弁V7の下流側に位置すると共に下流端が前記プラズマ発生空間の下流部に連通する排ガス供給管522と、プラズマノズル31の下流部に設けられた方向制御弁523と、この方向制御弁523に接続された処理ガス導出管524とからなっている。この処理ガス導出管524には、アンモニアフィルタ54及び第8電磁弁V8が配設されている。
【0050】
処理ガス導出管524は、その下流端が前記第4ポンプPの上流側部において第1排出管51に接続されている。プラズマノズル31から導出された処理ガスは、方向制御弁523を介して処理ガス導出管524側に導出されることにより、この処理ガス導出管524を介して第1排出管51に導出され、第4ポンプP4を介して外部に排出される。
【0051】
還元ガス供給部53は、水素ガス(H)またはその他の還元性を有するガス、例えば炭化水素ガス(HC)等を含有する還元ガスを収容する還元ガスタンク531と、還元ガスタンク531内の還元ガスをプラズマノズル31のプラズマ発生空間に供給する還元ガス供給管532と、還元ガス供給管532に設けられた開閉弁533とを有している。
【0052】
本実施形態では、約4%の水素ガス(H)と約96%の窒素ガス(N)との混合ガスからなる還元ガスが圧縮状態で還元ガスタンク531内に収容されている。そして、開閉弁533が「開」とされることにより、還元ガスタンク531内の還元ガスがその圧力に応じ、還元ガス供給管532を通ってプラズマノズル31のプラズマ発生空間に供給され、上記還元ガスがプラズマ化されるようになっている。なお、水素ガスの濃度を前記の値(約4%)に設定しているのは、防爆のためである。
【0053】
メインチャンバ11及びサブチャンバ12から導出された排ガスの無害化処理時には、第1排出管51の第6電磁弁V6が「閉」とされるとともに、第2排出管52の第7、第8電磁弁V7、V8が「開」とされ、かつ方向制御弁523によりプラズマノズル31からの処理ガスの導出方向が処理ガス導出管524側に切り換えられる。この状態で、第4ポンプP4が作動状態となることにより、前記排ガスが第2排出管52を介してプラズマノズル31のプラズマ発生空間の下流部に供給される。
【0054】
また、還元ガス供給部53の開閉弁533が「開」とされることにより、還元ガス供給管532を介して供給されたH等からなる還元ガスが、前記プラズマノズル31のプラズマ発生空間でプラズマ化されるとともに、その下流部において前記排ガス中のNO等からなる窒素酸化物と上記プラズマ化された還元ガスとが反応することにより、NHとHOとが生成される。
【0055】
2NO+7H→2NH+4H
このようにして窒素酸化物(NOx)が還元されることにより浄化された排ガスは、当該排ガス中のアンモニア(NH)成分がアンモニアフィルタ54により除去された後、処理ガス導出管524から第1排出管51に導出され、この第1排出管51を介して外部に排出される。なお、前記還元反応に応じて生成された水(HO)を吸収するシリカゲル等の乾燥剤を処理ガス導出管524に設けた構造としてもよい。
【0056】
続いて、処理装置1の電気的な制御構成を図6に基づいて説明する。処理装置1には、当該処理装置1の動作を電気的に制御するための制御装置70(図1では図示せず)が設けられている。制御装置70は、図6に示すように、全体制御部71、ポンプ制御部72、電磁弁制御部73、プラズマ制御部74、ロック制御部75、ドライヤ制御部76及び排ガス浄化制御部77を備えている。
【0057】
全体制御部71は、処理装置1の全体的な動作モードを管理し、各個別の制御部72〜77に対して動作モードの変更及び維持を通知する制御信号を与える。第1及び第2濃度センサ111、121が計測するメインチャンバ11及びサブチャンバ12内のNO濃度のデータ、第1及び第2圧力センサ112、122が計測するメインチャンバ11及びサブチャンバ12内の圧力データは、全体制御部71に入力される。全体制御部71は、これら濃度データ及び圧力データ、図略のタイマー装置から与えられるタイムデータ等に基づいて、処理装置1の動作モードを管理する。
【0058】
ポンプ制御部72は、第1〜第4ポンプP1〜P4に対し、各動作モードに応じてポンプ動作の実行及びその停止を個別に制御する制御信号を与える。電磁弁制御部73は、第1〜第8電磁弁V1〜V8に対し、動作モードに応じて個別に「開」又は「閉」とする制御信号を与える。
【0059】
プラズマ制御部74は、マイクロ波供給装置60に、その起動又は停止を制御する制御信号を与える。すなわちプラズマ制御部74は、プラズマノズル31においてプラズマを発生させる期間を制御する。
【0060】
ロック制御部75は、チャンバロック装置13の動作を制御する。チャンバロック装置13は、メインチャンバ11が備える被処理物の搬入出用の開閉ドアをインターロックする装置である(図1では図示省略)。メインチャンバ11の前記ドアは、被処理物に対する一連の滅菌処理工程中は、安全確保のためチャンバロック装置13でロックされる。
【0061】
ドライヤ制御部76は、エアドライヤ21のON−OFF動作を制御する。湿度センサ22により計測された湿度データが、ドライヤ制御部76に出力される。ドライヤ制御部76は、前記湿度データが、エアドライヤ21が動作障害を起こしていることを示す異常値であるときに、異常信号を全体制御部71に出力し、ユーザにその異常を報知させる。
【0062】
排ガス浄化制御部77は、メインチャンバ11から導出された排ガス中のNOxを除去して無害化する処理時に、還元ガス供給部53の開閉弁533を「開」として還元ガスタンク531内の還元ガスをプラズマノズル31の設置部に供給する制御を実行するものである。
【0063】
図7は、制御装置70により制御される処理装置1の動作を示すタイミングチャートである。また、図8は、第1〜第4ポンプP1〜P4の制御状態を示す表形式の図、図9は、第1〜第8電磁弁V1〜V8の制御状態を示す表形式の図である。図8において○印はポンプが動作し、×印はポンプが停止している状態をそれぞれ示し、図9において○印は電磁弁が「開」とされ、×印は「閉」とされている状態をそれぞれ表している。なお、図7の横欄の一つの「工程の内容」欄と、図8及び図9の最左縦欄の「工程」欄とがリンクしている。
【0064】
時刻T1は、ユーザにより処理装置1のスタートボタンが押下され、一連の滅菌処理工程が開始される時刻である。滅菌処理工程は、図7に示されているように、被処理物を乾燥させる第1乾燥工程、滅菌ガスとしてのNOガスを生成する滅菌準備工程、被処理物をNOガスと接触させて被処理物を滅菌する滅菌工程、滅菌処理後に残留したNOガスを浄化して排出する排ガス無害化工程、及び被処理物を再度乾燥させる第2乾燥工程とを含む。なお、時刻T1の前に、医療用器具等の被処理物がメインチャンバ11内に収容されていることが前提となる。
【0065】
第1乾燥工程は、メインチャンバ11及びサブチャンバ12内を高度に真空引きする排気工程と、一定時間だけ状態を維持する保持工程と、サブチャンバ12内にNOガスの生成原料となる乾燥空気を導入する吸気工程とからなる。
【0066】
制御装置70の全体制御部71は、時刻T1に、まずメインチャンバ11の開閉ドアのロック指示をロック制御部75に与える。これを受けてロック制御部75は、チャンバロック装置13を駆動し、メインチャンバ11の開閉ドアをインターロックする。併せて、前記排気工程の実行のため、動作モードを「排気モード」に設定し、各個別の制御部72〜77にそのモード設定信号を通知する。
【0067】
排気モードが設定されると、ポンプ制御部72は、第3、第4ポンプP3、P4を動作させ、電磁弁制御部73は、第4、第6電磁弁V4、V6を「開」とする。これら電磁弁のみが「開」とされることにより、サブチャンバ12から、第4真空配管401、メインチャンバ11及び第1排出管51を経て第4ポンプP4に至る排気路が形成される。そして、第3、第4ポンプP3、P4が駆動されることにより、メインチャンバ11及びサブチャンバ12内は真空引きされる。
【0068】
全体制御部71は、第1、第2圧力センサ112、122から圧力データを所定のサンプリング周期毎に受け取り、メインチャンバ11及びサブチャンバ12の圧力を監視する。圧力データに基づき、時刻T2で所定の真空度(図7では1Torrを例示)に達したと判定すると、全体制御部71は、前記保持工程の実行のため、動作モードを「保持モード」に設定する。
【0069】
保持モードは、第1〜第4ポンプP1〜P4の全てが停止され、第1〜第8電磁弁V1〜V8の全てが「閉」とされるモードである。なお、図8及び図9では、この保持モードに対応する保持工程の状態の記載は省いている。従って、保持モードが設定されると、ポンプ制御部72は、第3、第4ポンプP3、P4を停止させ、電磁弁制御部73は、第4、第6、第7、第8電磁弁V4、V6、V7、V8を「閉」とする。全体制御部71は、時刻T2からタイマー装置に計時を開始させ、所定時間が経過する時刻T3まで保持モードを維持する。この保持工程が一定時間継続されることで、メインチャンバ11の内部並びにそこに収容されている被処理物、及びサブチャンバ12の内部が乾燥状態とされる。また、メインチャンバ11及びサブチャンバ12内の真空状態が安定する。
【0070】
時刻T3になると、全体制御部71は、前記吸気工程の実行のため動作モードを「吸気モード」に設定する。吸気工程は、減圧下にあるサブチャンバ12内に乾燥空気を導入することを目的とするので、ポンプ制御部72が第1ポンプP1のみを動作させ、電磁弁制御部73が第1電磁弁V1のみを「開」とする。また、ドライヤ制御部76は、エアドライヤ21を稼働させる。かかる状態とされることで、第1ポンプP1により外部から吸引された空気が、エアドライヤ21で高度に乾燥されながら、第1常圧配管201と第1真空配管202とを通して、サブチャンバ12内に導入される。なお、メインチャンバ11内は、この吸気工程の間(及び次の滅菌準備工程の間)も乾燥工程が継続される。
【0071】
吸気モードの間、全体制御部71は、第2圧力センサ122から圧力データをサンプリング周期毎に受け取りサブチャンバ12の圧力を監視する。圧力データに基づき、時刻T4で常圧(760Torr)に達したと判定すると、全体制御部71は吸気モードを終了する。また、ドライヤ制御部76は、エアドライヤ21を停止させる。
【0072】
続いて、滅菌準備工程が実行される。この工程は、サブチャンバ12内を所定濃度の滅菌ガスで充満させるために、プラズマで空気を電離してNOガスを生成するプラズマ工程からなる。
【0073】
時刻T4に全体制御部71は、前記プラズマ工程の実行のため動作モードを「プラズマモード」に設定する。プラズマモードが設定されると、ポンプ制御部72は、第2ポンプP2のみを動作させ、電磁弁制御部73は、第2、第3電磁弁V2、V3を「開」とする。これにより、サブチャンバ12、第2真空配管301、第2常圧配管303及び第3真空配管302で構成される一つの密閉空間が形成され、当該密閉空間内を空気(NOガス)が循環することが可能状態となる。
【0074】
また、時刻T4で、プラズマ制御部74はマイクロ波供給装置60を動作させる。これによりマイクロ波供給装置60はプラズマノズル31にマイクロ波エネルギーを供給し、プラズマノズル31でプラズマが発生する。このとき、第2ポンプP2の動作に伴って筒状空間312Hが大気圧よりも減圧された状態となるので、プラズマの点灯性が良好となり、またその点灯状態が良好に維持される。プラズマノズル31を経由して循環する空気は電離され、さらにNO2変換部33を通過することでNOガスに変換される。この状態が継続されることで、サブチャンバ12内の空気は、徐々にNOガスに変換されてゆく。
【0075】
プラズマモードの間、全体制御部71は、第2濃度センサ121からNO濃度のデータをサンプリング周期毎に受け取り、サブチャンバ12のNO濃度を監視する。濃度データに基づき、時刻T5でNO濃度が所定値に達したと判定すると、全体制御部71は、プラズマモードを終了する。これに伴い、プラズマ制御部74は、マイクロ波供給装置60の動作を停止させる。
【0076】
次に、滅菌工程が実行される。滅菌工程は、常圧下でサブチャンバ12内に充満しているNOガスを、被処理物を収容し高真空下にあるメインチャンバ11内に、両チャンバ11、12の圧力差を利用して一気に導入すると共に、NOガスを充分な滅菌に適した一定時間だけ被処理物に接触させる工程である。
【0077】
時刻T5で全体制御部71は、前記滅菌工程の実行のため動作モードを「循環モード」に設定する。循環モードが設定されると、ポンプ制御部72は、第3ポンプP3のみを動作させ、電磁弁制御部73は、第4、第5電磁弁V4、V5を「開」とする。これにより、メインチャンバ11とサブチャンバ12とは、第4真空配管401及び第5真空配管402とで繋がれた、一つの密閉空間となる。
【0078】
この結果、減圧下のメインチャンバ11内には急激にNOガスが入り込み、メインチャンバ11内の被処理物が良好にNOガスに曝される。例えば被処理物がカテーテルのような細長いチューブであっても、そのチューブ内の微小空間にまでNOガスが行き渡り、被処理物の良好な殺菌が行われることになる。
【0079】
NOガスのメインチャンバ11への導入が進むに連れ、メインチャンバ11とサブチャンバ12との圧力差は減少してゆく。そして、ある時刻T51で、両チャンバ11、12の圧力は平衡することになる。時刻T51以降は、専ら第3ポンプP3の動作によって、サブチャンバ12のNOガスがメインチャンバ11に送られる。全体制御部71は、時刻T5からタイマー装置に計時を開始させ、所定時間が経過する時刻T6まで循環モードを維持する。
【0080】
このような滅菌工程により、被処理物は滅菌された状態となるが、メインチャンバ11及びサブチャンバ12内にはNOガスや、滅菌反応により生成された物質が残存している。これらを浄化するため、排ガス無害化工程が実行される。この工程は、メインチャンバ11及びサブチャンバ12内を常圧に復帰させる復帰工程と、残留NOガス等を浄化する浄化工程とからなる。
【0081】
時刻T6になると、全体制御部71は、前記復帰工程の実行のため動作モードを「復帰モード」に設定する。復帰モードが設定されると、ポンプ制御部72は、第1ポンプP1を新たに動作させ、第3ポンプP3の運転を継続させる。電磁弁制御部73は、第1、第4電磁弁V1、V4を「開」とする。この結果、減圧状態にあるメインチャンバ11及びサブチャンバ12内に、第1常圧配管201、第1真空配管202及び第4真空配管401を介して外気が導入される。
【0082】
復帰モードの間、全体制御部71は、第1、第2圧力センサ112、122から圧力データをサンプリング周期毎に受け取りメインチャンバ11及びサブチャンバ12の圧力を監視する。圧力データに基づき、時刻T7で両チャンバ内が常圧に達したと判定すると、全体制御部71は、復帰モードを終了する。
【0083】
時刻T7で全体制御部71は、浄化工程の実行のために動作モードを「浄化モード」に設定する。浄化モードが設定されると、ポンプ制御部72は、第3、第4ポンプP3、P4を動作状態とし、電磁弁制御部73は、第1、第4、第7、第8電磁弁V1、V4、V7、V8を「開」とするとともに、第2、第3、第5、第6電磁弁V2、V3、V5、V6を「閉」とする。
【0084】
浄化工程で、第3、第4ポンプP3、P4が駆動されることにより、メインチャンバ11及びサブチャンバ12内の残留NOガス等は、第2排出管51を通ってプラズマノズル31の還元反応部に供給される。また、排ガス浄化制御部77は、還元ガス供給部53の開閉弁533を「開」とし、プラズマ制御部74は、マイクロ波供給装置60を動作させる。これにより、還元ガスタンク531内からプラズマノズル31の設置部に供給される還元ガスを利用して、前記排ガス中のNO等からなる窒素酸化物を還元することにより無害化する処理が実行される。
【0085】
以上のような浄化モードの処理が実行されることにより、排ガス中のNOxが還元されて除去されるとともに、排ガス中に残存するNHがアンモニアフィルタ54により吸着されて除去された後、第8電磁弁V8及び第4ポンプP4を経て大気中に放出される。
【0086】
前記浄化モードの終了後に、滅菌処理後の被処理物を乾燥させると共に、メインチャンバ11及びサブチャンバ12内を排出し、且つ残留物を除去するための排気工程、保持工程及び復帰工程からなる第2乾燥工程の処理が実行される。
【0087】
すなわち、時刻T8で電磁弁制御部73は、第7、第8電磁弁V7、V8を「閉」とし、第6電磁弁V6を「開」とする。これにより、メインチャンバ11及びサブチャンバ12内の気体が真空引きされ、浄化後の清浄な気体が排出管51から外部に排出される。なお、この「排気モード」の際、第2、第3電磁弁V2、V3を「閉」とすることで、真空に対する耐性が比較的弱いプラズマノズル31を保護することができる。
【0088】
全体制御部71は、第1、第2圧力センサ112、122から圧力データをサンプリング周期毎に受け取り、メインチャンバ11及びサブチャンバ12の圧力を監視する。圧力データに基づき、時刻T9で所定の真空度に達したと判定すると、全体制御部71は、前記保持工程の実行のため、動作モードを「保持モード」に設定する。これにより、第1〜第4ポンプP1〜P4の全てが停止され、第1〜第8電磁弁V1〜V8の全てが「閉」とされる。
【0089】
全体制御部71は、時刻T9からタイマー装置に計時を開始させ、所定時間が経過する時刻T10まで保持モードを維持する。この保持工程が一定時間継続されることで、被処理物が乾燥状態とされ、またメインチャンバ11及びサブチャンバ12の内部が清浄化される。
【0090】
時刻T10になると、全体制御部71は、動作モードを「復帰モード」に設定する。復帰モードが設定されると、ポンプ制御部72は、第1、第3ポンプP1、P3を動作させ、電磁弁制御部73は、第1、第4、第5電磁弁V1、V4、V5を「開」とする。この結果、減圧状態にあるメインチャンバ11及びサブチャンバ12内に外気が導入される。
【0091】
復帰モードの間、全体制御部71は、第1、第2圧力センサ112、122から圧力データをサンプリング周期毎に受け取りメインチャンバ11及びサブチャンバ12の圧力を監視する。圧力データに基づき、時刻T11で両チャンバ内が常圧に達したと判定すると、全体制御部71は、復帰モードを終了する。さらに、ロック制御部75を介してチャンバロック装置13を駆動し、メインチャンバ11の開閉ドアのインターロックを解除する。このインターロックの解除によって、ユーザは被処理物をメインチャンバ11から取り出せるようになる。
【0092】
以上説明した処理装置1によれば、高濃度の窒素酸化物(NOx)を含むガスを使用してメインチャンバ11内の被処理物を滅菌することができる。そして、処理装置1のメインチャンバ11からの排ガスを浄化する排ガス浄化装置50に、還元ガスを供給する還元ガス供給部53と、当該還元ガス供給部53から供給された還元ガスをプラズマ化するとともに、前記処理装置1から導出された排ガス中の窒素酸化物と反応させることにより窒素酸化物を還元して無害化するプラズマ反応部とを設けたため、処理装置1から極めて高濃度の窒素酸化物を含む排ガスが排出された場合においても排ガス中の窒素酸化物を、簡単な構成で効果的に除去して無害化することが可能となる。
【0093】
すなわち、本実施形態では、処理装置1のメインチャンバ11から導出された排ガスと、還元ガス供給部53の還元ガスタンク531から供給された水素ガス(H)を含有する還元ガスとを、循環系統30に設けられたプラズマノズル31等からなるプラズマ反応部に供給し、水素ガス(H)をプラズマ化するとともに、排ガス中のNO等からなる窒素酸化物(NOx)と反応させるように構成したため、高価なオゾナイザ等を使用することなく、排ガス中のNO等からなる窒素酸化物を効果的に還元することができる。したがって、排ガス浄化装置50の製造コストが高くなることを防止しつつ、処理装置1から極めて高濃度の窒素酸化物を含む排ガスが排出された場合においても、この排出ガス中の窒素酸化物を効率よく還元して無害化した状態で外部に排出できるという利点がある。
【0094】
また、本実施形態に示すように、還元ガス供給部53から供給された水素ガス(H)からなる還元ガスを、プラズマ化するとともに、排ガス中の窒素酸化物(NOx)と反応させることにより、排ガス中のNO等を還元するように構成された排ガス浄化装置において、当該還元反応により生成されたアンモニア(NH)を吸着するアンモニアフィルタ54を備えた構成した場合には、排ガス中のNO等を効果的に還元して無害化できると共に、この還元反応により生成されたアンモニアが外部に排出されるのを確実に防止できるという利点がある。
【0095】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば下記(1)〜(6)の変形実施形態を取ることができる。
【0096】
(1)前記実施形態では、本発明に係る排ガス浄化装置50が、滅菌処理を施すための処理装置1に適用される例を示した。これら以外に、基板等の表面清浄、改質、エッチング、薄膜形成及び除去等の用途にも本発明を適用可能である。
【0097】
(2)前記実施形態では、メインチャンバ11内を減圧した状態で滅菌処理を行う例を示したが、常圧で滅菌処理を行うようにしてもよい。
【0098】
(3)上記実施形態では、メインチャンバ11及びサブチャンバ12の2つのチャンバを用いる例を示した。サブチャンバ12を省略し、NOガスが封入されたボンベ等から、メインチャンバ11にNOガスを供給するようにしても良い。
【0099】
(4)前記実施形態では、メインチャンバ11とサブチャンバ12とが1:1で設けられる例を示した。これに代えて、1つのサブチャンバ12から複数のメインチャンバ11に滅菌ガスを供給可能な構成としてもよい。逆に、1つのメインチャンバ11に複数のサブチャンバ12から滅菌ガスを供給する構成としてもよい。この場合、異種の滅菌ガスを各サブチャンバ12からメインチャンバ11に供給するように構成することもできる。
【0100】
(5)前記実施形態では、処理装置1のメインチャンバ11から排ガス中の窒素酸化物をプラズマ反応部(プラズマノズル31)で還元することにより、排気ガスを浄化処理した後、第4ポンプP4を介して直ちに排出するように構成した例について説明した。これに代えて、上記プラズマ反応部で浄化処理された排ガスをプラズマ反応部の上流部に還流する還流管を設け、例えばプラズマ反応部の下流部に設けられた濃度センサの出力信号等に応じて排ガス中のNOx濃度が所定値以下に低下したことが確認されるまで、前記プラズマ反応部による還元浄化処理を繰り返すようにしてもよい。
【0101】
(6)還元ガス供給部53の還元ガスタンク531から供給された水素ガス(H)を含有する還元ガスを、循環系統30に設けられたプラズマノズル31等からなるプラズマ反応部でプラズマ化した後、処理装置1のメインチャンバ11から導出された排ガス中の窒素酸化物(NOx)と反応させるように構成した前記実施形態に代え、循環系統30用とは別体のプラズマノズル等を備えたプラズマ反応部を排ガス浄化装置50の専用品として設けた構造としてもよい。しかし、前記実施形態に示すように、プラズマノズル31に、滅菌用の窒素酸化物を生成する循環系統30用のプラズマ発生部としての機能と、排ガス浄化装置50用のプラズマ反応部としての機能とを兼ね備えた構成した場合には、装置の構造を効果的に簡略化して小型化できる等の利点がある。
【符号の説明】
【0102】
1 処理装置
11 第1チャンバ(処理部)
12 第2チャンバ(貯留部)
31 プラズマノズル(プラズマ反応部)
50 排気浄化装置
53 還元ガス供給部
54 アンモニアフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素酸化物を含むガスを使用して所定の処理を行う処理装置の排ガスを浄化する排ガス浄化装置であって、
還元ガスを供給する還元ガス供給部と、
当該還元ガス供給部から供給された還元ガスをプラズマ化するとともに、前記処理装置から導出された排ガス中の窒素酸化物と反応させることにより窒素酸化物を還元して無害化するプラズマ反応部とを備えることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項2】
プラズマ反応部は、還元ガス供給部から供給された水素ガスからなる還元ガスをプラズマ化するとともに、排ガス中の窒素酸化物と反応させることにより窒素酸化物を還元し、
当該還元反応により生成されたアンモニアを吸着するアンモニアフィルタを備えることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記処理装置は、被処理物に二酸化窒素を反応させて該被処理物の滅菌を行う処理部と、空気が導入される密閉空間を有する貯留部と、当該貯留部内の空気をプラズマ化して窒素酸化物を生成するプラズマ発生部と備え、
当該プラズマ発生部を排ガス浄化用のプラズマ反応部として利用することを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−50819(P2011−50819A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200457(P2009−200457)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(310017552)株式会社サイアン (17)
【Fターム(参考)】